06/12/12 労働政策審議会職業安定分科会 第42回議事録 第42回 労働政策審議会 職業安定分科会 1 日 時 平成18年12月12日(火)13:00〜15:00 2 場 所 厚生労働省職業安定局第1会議室 3 出席者 委 員(公益代表)            諏訪分科会長、大橋委員、椎谷委員、宮本委員           (労働者代表)            有村委員、市川委員、徳茂委員、成瀬委員、長谷川委員、            堀委員           (使用者代表)            石原委員、紀陸委員、成宮委員、山極委員、            尾崎委員代理(吉免氏)、       事務局  鳥生職業安定局次長、荒井審議官、生田総務課長、            楪葉雇用政策課長、宮川雇用保険課長、            尾形外国人雇用対策課長、菅野参事官(地域担当)、            阿部若年者雇用対策室長 4 議 題 (1)人口減少下における雇用対策の検討について (2)その他 5 議事内容 ○諏訪分科会長 皆様、こんにちは。定刻となりましたので第42回「職業安定分科会」 を開催します。 (出欠状況報告)  議事に入ります。本日の議題は「人口減少下における雇用対策の検討について」です。 8月24日の第40回職業安定分科会において、厚生労働省より検討依頼のあったこの テーマにつきましては、まず雇用対策基本問題部会で議論していただくこととされてい たわけです。その検討状況については11月14日の本分科会に報告され、本分科会で もご議論いただいたところです。その議論を踏まえ、基本問題部会において更に議論を 重ねていただきました。去る12月8日に開催された基本問題部会において、基本問題 部会としての報告が取りまとめられました。  そこで本日は、これについて皆様にご議論いただきたいと存じます。前回の分科会に おいて、年内に分科会としての考え方をまとめるということでご了解いただいていまし たので、本日は円滑なご審議にご協力いただければと願っています。なお、基本問題部 会の報告ですが、私が雇用対策基本問題部会長を兼ねていますので、その中身について は事務局からご報告をお願いします。 ○総務課長 お手元に資料No.1、資料No.2があると思いますが、No.1を用いてご報告さ せていただきます。資料No.1の表紙に「人口減少下における雇用対策について(報告)」 ということで、この表紙以下に具体的な報告内容が整理されています。基本問題部会で は今年9月27日以降、6回にわたって精力的にご議論いただき、このように報告が取 りまとめられたということです。この内容に従って厚生労働大臣に建議すべきであると いう報告になっています。次の頁で別添の報告内容ですが、これについては正確を期す 意味で読み上げさせていただきます。  人口減少下における雇用対策について(報告)  最近の雇用失業情勢をみると、全般的には改善が進んでいるものの、特に、今後の我 が国経済社会を支える若年層における高い失業率、雇用情勢の地域格差の拡大等の問題 が見られる。  また、平成17年(2005年)から人口が減少に転じるとともに、平成19年(2 007年)以降、団塊の世代が短期間に職業生活からの引退過程に入るなど、我が国の 経済社会が大きな転換点を迎え、産業・企業活動、社会保障制度、地域社会等のあらゆ る分野に影響を与えることが見込まれる。  このため、今後とも我が国の経済社会の安定等を図る観点から、人口減少下における 経済社会の変化に的確に対応した雇用政策を講じていく必要がある。 1 今後の雇用対策の基本的方向  人口減少下においては、働く希望を持つすべての若者、女性、高齢者、障害者等が就 業しやすい環境を整備し、全員参加型の社会を作ることが重要である。  このことは、働く意欲はあるが困難な状況に直面している人、及び新たなチャレンジ を目指す若者、女性、高齢者、障害者等の再チャレンジの支援にも資するものである。  このため、雇用対策に係る基本法である雇用対策法(昭和41年法律第132号) において、働く希望を持つすべての人の就業促進を法目的に追加するほか、同法第4条 第1項において、若者、女性、高齢者、障害者等の就業促進対策や地域雇用対策につい て、次のような方向で施策の充実を図ることを国の重要な施策として、位置づけること が適当である。 (1) 職業意識の喚起、実践的な職業能力の開発、その他若者の就業の促進に係る施策  の充実 (2) 労働力の確保及び良好な雇用機会の創出のための雇用管理の改善に係る施策の充実 (3) 妊娠、出産若しくは育児を理由として休業又は退職した女性労働者の雇用の継続又  は円滑な再就職の促進、母子家庭の母及び寡婦の雇用の促進、その他女性の就業の促  進に係る施策の充実 (4) 定年の引上げ、継続雇用の制度の導入の円滑な実施、再就職の促進、多様な就業機  会の確保、その他高齢者等に係る年齢に関わらない就業の促進に係る施策の充実 (5) 障害者を雇用する事業主、障害者等に対する援助、障害者の特性に配慮した職業リ  ハビリテーションに係る施策の充実 (6) 雇用機会が不足している地域等における労働者の就業の促進に係る施策の充実 (7) 専門的、技術的分野の外国人労働者の活用促進、適正・円滑な需給調整や能力発揮  のための雇用管理の改善、外国人労働者の再就職の促進に係る施策の充実 (8) 不安定な雇用状態の是正を図るための雇用・就業形態等の改善に係る施策の充実 (9) 事業活動の縮小等に伴う失業の予防に係る施策の充実  なお、同項に規定する施策の方向性に沿った措置内容については、個別法の規定によ り効力が生ずるものであるが、今回の改正においては、併せて、上記の若者対策、地域 雇用対策及び外国人労働者対策の方向性に沿った具体的な措置内容として、2以下の内 容を雇用対策法及び地域雇用開発促進法に規定することが適当である。 2 若者の雇用機会の確保等の推進 (1)基本的な考え方  若者は、将来の我が国の経済社会を担う者であり、フリーター等の状況が継続する場 合には、若者本人の職業能力の蓄積がなされず、中長期的にも競争力や生産性の低下な ど産業経済基盤に影響を与えるとともに、社会保障システムの脆弱化、少子化の進展等 の社会問題を惹起しかねない。このことからも、フリーター等の若者の雇用問題の解決 は喫緊の課題である。  このため、国としても、「若者の自立・挑戦のためのアクションプラン(平成18年 1月改訂)」等に基づき、関係府省連携の下、ハローワークやジョブカフェ等における きめ細かな就職支援や日本版デュアルシステム等実践的な能力開発等を行う「フリー ター25万人常用雇用化プラン」、実践的な能力評価・公証制度の活用促進等を推進し ているが、年齢が高くなるにつれ、正社員としての雇用機会が少なくなる傾向が見られ るなど、いわゆる年長フリーター(25歳以上のフリーター)をはじめ若者の安定した 雇用を促進するためには、国における取組に加え、雇用機会の確保等を図る観点から企 業における募集・採用の在り方についても見直し等を進めることが重要である。  また、こうした取組は労働力人口の減少が見込まれる中で、企業における人材確保や 職場定着の観点からも有益である。 (2)若者の雇用機会の確保等に係る事業主の努力義務及び指針  上記を踏まえ、現行法における、再就職の援助、募集・採用時の年齢制限の緩和につ いての事業主の努力義務に、若者の能力を正当に評価するための募集方法の改善、採用 後の実践的な職業訓練の実施その他の雇用管理の改善を図ることにより、雇用機会の確 保等を図ることを加えるとともに、国は事業主が適切に対処するために必要な指針(大 臣告示)を策定することが適当である。  当該指針については、法改正後に改めて検討されるべきであるが、当該指針において、 人物本位(就業等を通じて培われた能力、経験についての、過去の就業形態、離職状況 にとらわれない正当な評価)による採用が行われるべき旨明記するとともに、定着促進 の観点も含め、次のような事項について盛り込むことが考えられる。 ・ 採用基準や職場で求められる能力・資質の明確化 ・ 求人の応募可能年齢の引上げ、応募資格の既卒者への開放 ・ 通年採用の導入 ・ トライアル雇用の活用等有期雇用から正社員への登用制度の導入 ・ 職業能力開発の推進  なお、当該指針の検討、周知等今後の施策の推進に関して、以下のような意見が提 出・報告された。 ・ 中小企業においては、採用に係る事務負担も大きく、また、採用人数も少ないこと などから、通年採用が普及していないなどの状況にあり、これらの企業における採用実 務を十分に踏まえて、指針の具体的な規定ぶりを検討するとともに、施策の推進を図る ことが重要である。 ・ 若者の能力評価を行う際にはその将来性も含め判断することが望ましい。また、国 においては、引き続き若者の職業能力開発のための施策を強力に推進していくことが必 要である。 ・ 一部の正社員について、労働時間が長い等働き方が魅力的でないことや、就職後し ばらくの間においてキャリア形成が実感しにくい定型的な業務にしか従事できないこと 等が、若者の早期離職や職業能力の蓄積の阻害要因となっている場合があることに留意 が必要である。 3 地域雇用対策の重点化 (1)基本的な考え方  全国的には雇用情勢が改善するー方で、依然として厳しい雇用情勢が続いている地域 が存在するなど、地域差が生じている中で、地域雇用対策について、雇用情勢が特に厳 しい地域と、雇用創造に向けた市町村等の意欲が高い地域に支援を重点化するため、地 域雇用開発促進法(昭和62年法律第23号)を改正することが適当である。  具体的には、現在4つある同法の地域類型(雇用機会増大促進地域、求職活動援助地 域、能力開発就職促進地域及び高度技能活用雇用安定地域)を、(1)雇用情勢が特に厳し い地域(雇用開発促進地域(仮称))と、(2)雇用創造に向けた市町村等の意欲が高い地 域(雇用創造推進地域(仮称))の2類型に再編するとともに、これらの地域における 事業主への助成や、市町村等の創意を生かした委託事業等を行うことが適当である。 (2)雇用開発促進地域の要件  雇用開発促進地域については、地域内に求職者の割合が高く、求職者の総数に比べて 著しく雇用機会が不足しているため、求職者の地域内における就職が著しく困難な状況 にあること、また、その状態が相当期間にわたり継続することが見込まれることを要件 とすることが適当である。  なお、区域は、労働市場圏を形成するハローワークの管轄区域を基本とすることが適 当である。 (3)雇用創造推進地域の要件  雇用創造推進地域については、地域内に居住する求職者の総数に比べて相当程度に雇 用機会が不足しているため、求職者の地域内における就職が困難な状況にあり、また、 その状態が相当期間にわたり継続することが見込まれること、さらに地域において重点 的に雇用機会の創出を図る事業分野を設定し、これに係る施策を実施しているか又は実 施することが明確であることを要件とすることが適当である。  なお、区域は、市町村の区域(複数の市町村の区域も含む。)とすることが適当であ る。 (4)計画の同意  国は、雇用開発促進地域及び雇用創造推進地域における地域雇用開発の促進に係る指 針を策定し、同指針に基づき、都道府県は地域雇用開発計画(仮称)を、市町村は地域 雇用創造計画(仮称)を作成して、厚生労働大臣に協議し、その同意を求めることが適 当である。 (5)支援措置  厚生労働大臣の同意を得た雇用開発促進地域及び雇用創造推進地域については、以下 の支援策を講ずることが適当である。  なお、以下の支援策は事業主拠出の雇用保険3事業により行われるものであることに かんがみ、支援策の効果について、適切に評価することにより、さらに効率的な運用を 図るべきであるとの意見があった。  ア 雇用開発促進地域  (1) 事業所の設置・整備と雇入れへの助成   事業所の設置・整備を行い、地域求職者を雇い入れる事業主に対し、設置等費用及   び雇入れ規模に応じ助成。  (2) 中核人材の受入れへの助成   中核的人材(新事業の展開、拡大等に資する高度技能労働者、管理職等)を受け入   れ、併せて地域求職者を雇い入れる事業主に対し助成。  (3) 能力開発への助成   地域求職者を雇い入れた事業主が、職業訓練を受けさせる場合に助成。  イ 雇用創造推進地域  雇用創造推進地域に関しては、市町村、経済団体等から構成される協議会から提案さ れた事業(能力開発、就職促進等)の中から、コンテスト方式により雇用 創造効果が高いものを選抜し、当該協議会等に委託するほか、厚生労働大臣の同 意を得た地域雇用創造計画に基づき市町村等が無料の職業紹介事業を行う場合等 において、手続の簡素化を図る特例措置を設けることが適当である。 (6)全国指針及び地方方針の策定  雇用対策法において、雇用対策基本計画は終了させた上で、次のように対応すること が適当である。  (1) 地域の実情に合わせ、かつ、機動的に雇用施策を実施するため、都道府県労働局 長が、毎年度、都道府県知事の意見を聞いて、雇用施策の実施に関する方針(地方方針) を策定することとする。  また、地方方針の実施について、都道府県知事は都道府県労働局長に対し、必要な要 請を行うことができることとする。  (2) 厚生労働大臣は、地方方針の策定に資するため、毎年度、雇用施策の実施に関 する指針(全国指針)を策定することとする。 4 外国人労働者の適正な雇用管理の推進等 (1)基本的な考え方  外国人労働者については、単純労働者は今後も受入れを認めないという基本方針は堅 持しつつも、専門的・技術的分野の労働者、技能実習生、日系人等国内労働市場におい て影響が無視できない存在となりつつあることから、その適正な雇用管理を推進等する ことが必要と考えられる。  このため、雇用対策法における事業主の努力義務に、外国人労働者の雇用管理の改善 及び再就職の促進を加えるとともに、外国人雇用状況報告制度の義務化について規定す ることが適当である。  外国人雇用状況報告で把握した事項については、入管行政との連携強化等も視野に、 関係省庁においても活用することとする。これにより、事業主に報告義務が重複して課 されることのないようにすべきである。その際、個人情報の取扱いに十分留意すべきで ある。 (2)外国人雇用状況報告の義務化  労働市場に悪影響を及ぼすことから労働政策としても重要な不法就労の防止や、外国 人労働者の雇用管理の改善、再就職の促進等を図るため、次のとおり、外国人労働者を 雇用する事業主が、外国人労働者(特別永住者を除く外国人労働者)の雇用状況を公共 職業安定所に報告する制度を設けることが適当である。  報告は、事業主の負担軽減を図る観点から、雇用保険被保険者資格取得届・喪失届 (以下「得喪届」という。)提出時に併せて行うこととするほか、施行に向けての省令 等の検討に当たっては、さらに手続面で配慮すべきである。また、電子申請にも対応す ることが適切である。  報告内容は、外国人労働者の国籍及び在留資格・在留期限(得喪届を提出しない外国 人労働者については、上記の他、氏名、生年月日及び性別)について報告することが適 当である。  また、報告をしない場合及び虚偽報告をした場合については、罰金を課すことが適当 である。  なお、外国人労働者については、中小企業に雇用されていることも多いと考えられる ことから、報告制度の周知が重要であるとの意見があった。 (3)外国人労働者に係る指針  現在、通達となっている外国人労働者の雇用・労働条件に関する指針に規定されてい る事項のうち、必要な事項について、法的根拠を持つ指針(大臣告示)に位置づけるこ とが適当である。  なお、この指針には、外国人雇用状況報告を行うべき場合、外国人労働者であること の確認の程度等について、明確に、わかりやすく盛り込むべきである。  以上です。 ○諏訪分科会長 ご苦労さまでした。それでは、ただいまの説明を巡りまして、ご質問、 ご意見がありましたらお願いします。 ○市川委員 部会で相当ご議論いただいたということですので、この報告の中身につい てどうのこうのということではなくて、今後、こういうことはできないのかという要望 というか、これを読んだ感想めいたことでもありますが、この雇用対策法という法律の 性格というのは、これを読んでいて一体どういうものなのかと思います。対策と雇用政 策という位置づけもあると思いますが、1頁の1の上から7行目くらいで、「雇用対策 に係る基本法である雇用対策法」と説明があります。基本法という書き方をすると、通 常理解する基本法というと、原則のようなものを決めて、そこで決めた方向性によって、 各個別法によって、そちらが影響を受けてというのでしょうか、あるいは具体的に実施 するために個別法が設けられて施策が行われる印象を持ちます。  これまで入っていなかった、若者、女性、高齢者、障害者というのが、ここのところ で抜けていたので位置づけたということですが、例えばここには女性の雇用の問題があ るけれども、これは例えば均等法でやりましょうとか、そういうことなのでしょうが、 ここに書いたからといって、何か新しい、さらに施策の充実の議論が始まるというわけ でもどうもなさそうである。既に個別法で対策が打たれていることを、後追いの根拠づ けとしてここに入れたと理解しています。  そういうのではなく、研究会報告にありましたように、かなり幅広に、あるいは横串 を刺したというのか、トータルな形で今後の日本における雇用政策の在り方はどうすべ きかという、本当の意味での政策上の基本法といったものが必要になってくるのではな いか。研究会報告の内容と、今回出された報告の個別的な対策を補充したものを比べる と、もっと高らかに謳うような雇用政策の在り方を示す基本法といったものが、必要な のではないかという気がしています。  少し関連しますが、5頁の(6)に全国指針と地方方針の策定ということで、これま での雇用対策基本計画は終了させて、もっと機動的にやるように年度ごとに指針をやる と、これはこれでよろしいかと思います。そういう機動的に対策を打つことも必要だけ れども、5年ぐらいのスパンであるべき姿を示していくような基本的な考え方というの も、どこかで示せないのか。そんな感想を持ちましたので、一言述べておきたいと思い ます。 ○諏訪分科会長 ほかにいかがですか。特にございませんか。よろしいですか。それで は部会から報告を受けたこの報告について、本分科会として部会報告をご了解していた だくということで、労働政策審議会に対しては、これを分科会報告として提出すること にしたいと思います。そのような措置でよろしいですか。 (異議なし) ○諏訪分科会長 ありがとうございます。それでは報告文案の配付をお願いします。 (報告文(案)配付) ○諏訪分科会長 報告文(案)はお手元に配付していただいたとおりですが、このよう な報告文(案)により労働政策審議会長宛、報告するということでよろしいですか。 (異議なし) ○諏訪分科会長 ありがとうございます。それでは、そのような取扱いをさせていただ きます。 ○職業安定局次長 局長が国会用務のために欠席ですので、私から局長の代わりにお礼 を一言申し述べます。委員の皆様方には8月以降、人口減少下における雇用対策につき まして精力的にご議論いただきまして、本日、報告として取りまとめていただきました。 本当にありがとうございます。  今回の報告につきましては、経済社会が変化する中で、今後の雇用対策の基本的方向 に係る非常に重要な報告であると認識しています。私どもこの内容につきまして、報告 書の内容あるいは分科会・部会でのご議論も踏まえまして、今後、雇用対策を進めてい きたいと思っています。具体的にはその内容の実現に向けて、これから雇用対策法、地 域雇用対策促進法の改正作業を進める、あるいはそれを実施に移すための政省令・指針 等の策定を進めるといった作業を鋭意進めていきたいと思っています。また、その過程 で皆様方のご意見をお伺いしながら進めるということになるということですので、今後 ともよろしくお願いしたいと思います。本当にありがとうございました。 ○諏訪分科会長 次の議題に移ります。次の議題は「その他」ですが、雇用保険と船員 保険の見直しについてご説明があります。 ○雇用保険課長 私のほうから2点、雇用保険の見直しと船員保険の見直しについて、 それぞれご説明させていただきます。第1点目の雇用保険の見直しについては特段の資 料はありません。8月24日の当分科会に雇用保険部会の中間報告をご説明申し上げま したが、9月以降、部会のほうで5回ほど議論をしていただき、11月30日に素案が 提出され、年内取りまとめに向けて現在議論中というところです。これについては年内 取りまとめの方向でお願いしていますが、取りまとめが済めば、年明けの当分科会に部 会の報告書の報告を行い、同日に関係法案の諮問を行わせていただく予定にしています ので、ご了解いただきたいと思います。  2点目は船員保険の見直しについてです。これについては本日No.2の資料を用意して いますので、これを使って説明させていただきます。No.2の資料は第31回の雇用保険部 会に提出した資料をそのまま使わせていただいていますが、1頁に「船員保険の概要」 があります。ご承知のように船員保険は船員を対象とする保険で、保険給付としては真 ん中の(1)(2)(3)です。疾病保険給付、失業保険給付、災害補償保険給付ということで、概 ねそれぞれ健康保険、雇用保険、労災保険に相当するようなものを総合的に行っている ものですが、海上労働者の特殊性を考慮した給付を行っているということで、特別の給 付も行っているものです。  2頁が「船員保険制度の概要」です。ここにありますように、真ん中の失業給付部門 が雇用保険法に相当するもので、内容も概ね雇用保険に相当するものが給付として行わ れます。この表にはありませんが、実は福祉事業という事業があります。これは私ども の雇用保険3事業、労災保険の労働福祉事業、健康保険の福祉事業と、これらを総合的 に行っている事業が福祉事業としてあります。  3頁ですが、これについては特別会計改革の中で、昨年の12月24日の閣議決定に おいて、3の(2)のウの(3)にありますように、今後1年程度の間、これは昨年から1 年程度の間ということですので平成18年度内ということですが、制度見直しの詳細に ついて検討した上で、平成22年度を目途に、船員保険事業のうち健康保険制度に相当 する部分は、社会保険庁改革に伴い発足する新たな公法人等に移管し、労災保険制度及 び雇用保険制度に相当する部分は、労働保険特別会計のそれぞれの制度に統合するもの とする、ということで決まっています。この内容に沿った行政改革推進法が平成18年、 昨年の法律47号として成立しているところです。  これらを受けて、この制度は厚生労働省の社会保険庁で所管しているところですが、 制度の検討ということで、4頁を開けてください。昨年12月に、船員保険制度の在り 方に関する検討会を社会保険庁保険局で行っていますが、これはそこで取りまとめた内 容の概要です。右側の「検討の視点」にありますように、財政の長期安定性の確保、制 度分立による不都合の解消、船員労働者の特殊性の配慮などが挙がっています。制度分 立による不都合の解消の1つに、船員保険の失業部門と私ども雇用保険との間で、被保 険者期間を通算できないなどの検討の視点が挙げられています。  「今後の基本的な方向」としては、先ほど申し上げたような形で労災保険、雇用保険 に相当する部分は、それぞれのところに統合するという内容です。統合に当たっての留 意事項が4点ほど挙がっています。雇用保険に直接関わるものは福祉事業の取扱いで若 干ありますが、特段ありません。それで先ほど申し上げたように、いちばん下にありま すけれども、「今後1年程度の期間をかけて関係者で協議・検討し合意形成を図る」と なっていたところです。  これについては5頁を開けてください。船員保険事業運営懇談会というのがあります。 メンバーについては6頁を開けてください。公益、被保険者側、船舶所有者側というこ とで、公益委員の岩村先生に座長になっていただき、被保険者側として海員組合の方々 及び連合から、船舶所有者側としてそれぞれの船主団体及び日本経団連から、それぞれ 委員が参集しているものです。  5頁にありますように、第1回(平成18年4月)以降、第3回の9月26日の後も 第4回、第5回と開かれている状況です。内容的には先ほど申しましたように、雇用保 険、労災保険にそれぞれの部分は引き継ぎ、残った部分を船員保険として船員労働者に 特殊な観点からの給付や、健康保険に相当するものを行うという整理をしているところ です。そういう意味で今後この内容について、私どもの雇用保険法の関係する部分の改 正も必要になると思っています。  具体的には、どのような点が雇用保険関係でポイントになるかと申しますと、7頁以 降に船員保険事業運営懇談会に提出された資料の中の論点が載っています。細かい論点 もありますが、大きな点だけかいつまんでご説明させていただきます。これは失業部門 のところだけ抜粋したものですが、1は適用対象年齢です。私どもは65歳のところま で適用しますが、船員保険のほうは60歳になっているのが大きな違いで、ここをどう するか先ほどの運営懇談会の中で議論されているところです。  3の給付の基礎となる賃金日額ですが、私どもは原則失業前6ヶ月の賃金で行うのに 対し、船員保険は社会保険制度の仕組みの経緯などから標準報酬方式をとっています。 それをなぜとるかというと、3の「被保険者側」の意見のところにありますように、船 員の方は乗船時と下船時で賃金が大きく異なるということで、単純に6ヶ月の賃金の平 均では、きちんとした賃金を反映できないという考え方があります。これに対しては6 ヶ月の平均が適当でない場合には、雇用保険制度においても出来高払制などの例外規定 もありますので、これらを活用したらいいのではないかという点が、これに対する回答 として用意されているところです。  4の高齢雇用継続給付も、船員保険制度では60〜65歳の制度ではなく、55〜6 0歳までの制度になっています。これをどうするかというのが、先ほどの60歳か65 歳かという議論の詰まり具合によるところです。そのほかの論点として福祉事業をどう するのかという論点もありますが、概ね雇用保険の世界の問題点はあまりないと考えて います。このような内容がまとまれば、来年の次期通常国会に関係法案を提出する方向 で、いま検討していると聞いていますので、雇用保険関係部分については、いずれ当分 科会に諮問させていただこうと考えています。また、その際には雇用保険部会でも議論 していただくことを予定しています。 ○諏訪分科会長 ただいまの雇用保険課長からの説明について、何かご質問なりご意見 がありますか。 ○長谷川委員 これ、来年の通常国会ということになると、いま12月ですよね。これ 確実に来年の通常国会に上程されるのですか。 ○雇用保険課長 私ども、保険局のほうから聞いている話では、次期通常国会に提出す る方向で、船員関係労使と議論を詰めているというふうに聞いています。 ○諏訪分科会長 この件はよろしいですか。では雇用保険部会の進め方についても、た だいま説明があったような形でよろしいですか。 (異議なし) ○諏訪分科会長 そのように取り計らうこととします。本日の議題は以上です。これに 関わりまして、あるいはそれ以外でも結構ですので、何かご意見等ございますか。 ○長谷川委員 先ほど、市川委員が意見というか感想ということでしたが、ある意味で は現在、非常に雇用就業形態の多様化が進んでいるわけで、いろいろな働き方を労働者 のほうもしているし、企業のほうにはそういうことを要請しているのだろうと思います。 今回、雇用対策法で、これはこれでいいのですが、もう少し我が国の雇用政策がどうあ るべきなのかについて、私は基本法が本当はあるべきだと思います。雇用対策法が出て 直ちにとはならないと思いますが、ある一定の時期に基本的に雇用政策を打つというこ とであれば、雇用基本法なるものの制定を検討すべきではないかということは、意見と して申し上げておきたいと思います。 ○諏訪分科会長 この点は、先ほど市川委員もご発言がありましたが、何か事務局から 現段階でありますか。 ○総務課長 今回、ご議論いただいて、雇用対策法の改正について一定の仕切りを付け ていただいたわけですが、今後とも雇用政策については当分科会でもご議論いただくこ とになるでしょうし、そのような中で、どういう政策を雇用対策法の中に盛り込んでい ったらいいかについては、今後の課題として取り組んでいきたいと考えています。 ○諏訪分科会長 ほかに何かございますか。 ○紀陸委員 終わってしまって申し訳ないですが、先ほどの資料1の4頁、地域の雇用 対策で(5)の支援措置の中にありますけれども、この事業を行う財源として雇用保険 3事業の費用を用いるとなっています。いつも私どはどういうふうに整理していいのか 迷う点があって、こういうものは雇用保険3事業の費用でやるのか、あるいは一般財源 でやるのかです。この問題だけでなく、いろいろな雇用対策を行う場合に保険事業のお 金でやるのか一般財源でやるのか、そういうものの仕切りというのは、どういうふうに 区分けして運用しておられるのですか。前に、地域雇用開発の基金か何かありましたが、 ああいうものは使われないのですか、どうなのですか。 ○雇用保険課長 雇用保険3事業との関係でということですので、私のほうから説明さ せていただきます。ご承知のように雇用保険制度の見直しの中でも、雇用保険3事業の 見直しというのは1つの大きな課題となっています。この関係については、雇用保険3 事業の見直し検討会というものを、平成18年の初めから7月にかけて行わせていただ きました。その中で今後の3事業、具体的に言えば今後は2事業にしようという方向で 考えているわけです。失業等給付は私どもの雇用保険の給付の抑制に資する観点から、 さまざまな問題を見ていくべきであろうと。残る雇用安定事業及び能力開発事業の2事 業については、既存事業の規模の縮減とか、各個別事業についての不断の見直しという 中で、必要な事業に絞っていく形のものを考えているところです。  また、その中で人口減少下における経済社会の停滞の回避とか、あるいは働く意欲と 能力のある方々が可能な限り働き続けられる社会の構築など、今回の建議の内容に沿っ た内容のものですが、こういうものを重点化すべき方向もあります。またそういう形の 中で保険料負担者であり、利用者である事業主の方々の意見も十分踏まえて、事業の運 営に当たっていくという考えです。 ○総務課長 いま、紀陸委員からご指摘があった雇用創出についての基金ですが、これ につきましては、雇用情勢が急激に悪化した際に不良債権処理という目的のために、一 般会計で基金上の手当がされたところです。その基金については、そういう時期が終わ ったということもあって終了する予定になっています。もともと地域雇用対策の関係に ついては、地域間で雇用情勢が良い所も悪い所もあるのが、今後どうなるのか予測がつ かない中で、事業主の方々の助け合いという思想で支援するという考え方で整理されて います。もともと雇用勘定だったのですが、一定期間、不良債権処理という緊急事態に 対応して、一般会計の措置がなされていました。それがなくなる中では、本来の姿に戻 させていただきたいということです。  ただ、地域雇用対策については、全体的には雇用情勢が良くなっているという中です ので、全体額として当然圧縮し、本当に支援が必要な地域に対策を重点化するという形 の見直しをさせていただき、相当な金額をカットする形で今回対応させていただいてい るところです。 ○諏訪分科会長 ほかに、ご質問なりご意見がありますか。よろしいですか。それでは ほかにないようでしたら、本日の分科会は以上をもちまして終了とさせていただきます。 (署名委員指名)  本日の会議は終了とさせていただきます。ありがとうございました。                        (照会窓口)                        厚生労働省職業安定局総務課総務係                         TEL:03-5253-1111(内線 5711)