06/12/08 厚生科学審議会科学技術部会ヒト胚研究に関する専門委員会 第9回議事録 第8回科学技術・学術審議会 生命倫理・安全部会 生殖補助医療研究専門委員会 第9回厚生科学審議会 科学技術部会 ヒト胚研究に関する専門委員会 議事録 日時:平成18年12月8日(金)16:00〜18:00 場所:厚生労働省5階共用第7会議室 議事: ○笹月座長  それでは、時間になりましたので、まだおそろいでない方もいらっしゃいますけれど も、第8回生殖補助医療研究専門委員会と第9回ヒト胚研究に関する専門委員会を開催 いたします。事務局から資料の確認その他、よろしくお願いいたします。 ○根本補佐  先生方のお手元に1枚物の議事次第というものがございます。そこの下のほうの4. に今回の配布資料の一覧がございます。  資料1の「検討事項(たたき台)」でございますが、これは前回までにご議論いただい た内容を整理したものでございます。資料2以降が今回ご議論いただく資料でございま す。資料2−1と2−2がございまして、今回ご議論いただきます「検討のためのたた き台(ヒト受精胚の作成・利用のための配偶子・ヒト受精胚の入手方法について)」が2 −1でございまして、その関連で、2−2といたしまして、「生殖補助医療目的で採取さ れた未受精卵・非受精卵の取扱いについて(案)」ということで、1枚物の図がございま す。資料3でございますが、「『配偶子・ヒト受精胚の提供に係るインフォームド・コン セントのあり方について』の検討にあたっての整理すべき事項」ということで、1枚物 の資料がございます。あと、参考で、委員名簿等、参考5までございます。  以上でございます。 ○笹月座長  どうもありがとうございました。それでは、まず、前回の委員会で合意した事項につ きまして、事務局から簡単にご説明をお願いいたします。 ○梅澤課長補佐  それでは、前回の委員会で議論した範囲につきましてご説明させていただきます。  資料1でございますけれども、事前に委員の方々に送付済みではございますけれども、 前回のポイントにつきましてお話しさせていただきます。  まず、「検討事項(たたき台)」という資料でございますけれども、2ページ目の一番 上の太枠で囲まれた部分を読み上げさせていただきます。  ●胚の体内への移植を行うもの(移植を前提に行うが、有効性や安全性を議論の上、 結果的に移植をしない場合もある。)は、本ガイドラインで検討する範囲外とする。留意 事項としまして、※胚の胎内への移植を行うものについては、今後厚生労働省において、 その規制のあり方等について必要に応じて検討を行うこととする。  3ページにまいりまして、太枠のところでございます。II、各論的に検討が必要な事 項、1.ヒト受精胚の作成・利用における研究の目的についてでございます。(1)認め られる研究の範囲。  ●本指針の対象とする生殖補助医療研究とは、当面のところ「作成・利用した胚を胎 内に戻さないことを前提として行われる、生殖補助医療の向上に資する研究」と定義す る。留意事項として、※定義については、各論の検討を終えた後に再度検討する。  ●生殖補助医療の向上を目指した研究であり、得られるであろう研究成果が将来的に 生殖補助医療への貢献が見込まれるものは、「生殖補助医療の向上に資する」と考え、認 められる研究の範囲とする。  ●研究当初から生殖補助医療の向上を目的とせずに行おうとするものは、認めないこ ととする。例えば、単純に生物学的な発生の比較を行うといった研究は、ヒト受精胚の 作成・利用の目的として認めないこととする。  ●研究の範囲については、生殖補助医療の向上に資するものであって、正常な受精ま たは受精率の向上を目的とする受精メカニズムに関する研究。正常な胚の発生及び胚の 発育の補助を目的とする胚発生・胚発育に関する研究。胚の着床率の向上を目的とする 着床のメカニズムに関する研究。配偶子及び胚の保存効率の向上を目的とする配偶子・ 胚の保存に関する研究(配偶子の保存に関する研究については新たに胚を作成すること までを一連のプロセスと考える研究に限る)とする。  ●現時点で、一般的に検査目的で胚を作成するような場合は想定されない。(そのよう な検査は一般化されていない)というご議論がございました。  しかしながら、例えば、受精能を確認する目的で胚を作成するような場合があるが、 これについては、このガイドラインの適用の対象となる「正常な受精または受精率の向 上を目的とする受精メカニズムに関する研究」として取り扱うこととなる。  4ページの上の方の太枠です。  ●作成・利用した胚の凍結については、例えば凍結技術の向上を目的とした研究等は、 認めることとする。留意事項として、※当該研究の終了後、胚を保存する目的で凍結す ること、保存目的で凍結していた胚を他の研究者が違う研究目的で使用することを認め るか否かについては、研究実施の要件について検討する際に再度検討することとする。  あわせて、上記を認めることとした場合、どのようなインフォームド・コンセントを とるべきか等についても、再度検討することとする。  4ページの下のほうの太枠でございます。こちらは(2)の胚と配偶子に加えてはな らない操作として、その次の段落で、遺伝子治療研究に関する段落がございますけれど も、そのことについての留意事項として太枠で囲んでございます。  ※上記のような遺伝子治療を目的として行う遺伝子操作は、基礎的研究においても、 ヒト受精胚に対して行うことは科学的合理性及び社会的妥当性が認められない。  細胞核に含まれる遺伝情報の改変を伴う操作について。  ●生殖補助医療の向上を目的として細胞核に含まれる遺伝情報の改変を伴う操作につ いては、当該技術そのものではなく、研究の結果得られた知見が将来の治療法に応用さ れることから、その科学的合理性と社会的妥当性を十分に検討を行った上で実施するこ とを認めることとする。  細胞核に含まれる遺伝情報の改変を伴わない操作について。5ページの上からになり ます。  ●生殖補助医療の向上を目的とする核置換や細胞質置換といった細胞核に含まれる遺 伝情報の改変を伴わない操作については、その研究の結果得られた知見が将来の治療法 に応用されることから、科学的合理性と社会的妥当性を十分に検討を行った上で実施す ることを認めることとする。  遺伝子に変異を起こすおそれのある物理的及び科学的な操作について。  ●胚への紫外線等の照射等遺伝子に変異を起こすおそれのある物理的な操作及び培養 液のpH変化等化学的な操作については、生殖補助医療の向上を目的とする研究であっ て、その研究の実施に当たって当該操作が必要不可欠な場合に限り、その科学的合理性 と社会的妥当性を十分に検討を行った上で実施することを認めることとする。  以上が前回の委員会におきまして議論をされた範囲でございます。  さらなる指摘事項等がございます場合は、委員会の最後に改めてご指摘いただければ と存じます。 ○笹月座長   どうもありがとうございました。一応、これは前回確認されたこととしての話であり ますので、特段、ご質問とかコメントがなければ、先へ進みたいと思います。 ○星委員   5ページの、遺伝子に変異を起こすおそれのある物理的及び科学的な操作について、 この科学の「科」は化学の「化」ですね。 ○梅澤課長補佐   あ、わかりました。ご指摘のとおりでございます。 ○笹月座長   下から4行目ですか、どこですか。 ○梅澤課長補佐   いや、タイトルのところ、上から5行目でございまして、遺伝子に変異を起こすおそ れのある物理的及び科学の「科」が。 ○笹月座長   そうですね、わかりました。ありがとうございます。  それでは、議事につきまして、(1)ヒト受精胚の作成・利用のための配偶子・ヒト受精 胚の入手方法についてというところにいきたいと思います。事務局で検討のためのたた き台を用意していただいていますので、これを見ながら議論したいと思いますので、事 務局からご説明をよろしくお願いいたします。 ○長野安全対策官   それでは、資料2−1に基づきましてご説明申し上げます。この資料2−1につきま しては、前回お出しした資料に若干書き加えたものになってございます。順番としまし て、胚、精子、卵子の入手という順番でまとめられてございます。  まず最初に胚でございますけれども、1ページ目の(1)、最初にございますが、これ につきましては、生殖補助医療で利用されなかった凍結受精胚で廃棄が決定されたもの ということについて、適切なインフォームド・コンセントを受けて提供を受けることと してよいかとしてございます。これにつきましては、既に指針としてまとめられてござ います、右側に参考としてございますが、ヒトES細胞の樹立及び使用に関する指針と してありますけれども、このヒトES細胞の樹立に供されるヒト胚というのは、第6条 第1項第一号のところにございますが、生殖補助医療に用いる目的で作成されたヒト受 精胚であって、当該目的に用いる予定がないもののうち、提供する者による当該ヒト受 精胚を滅失させることについての医師、これは漢字の間違いでございます。本人の意思 という字でございますが、意思が確認されているものであることとなってございます。 こちらが参考で示されてございます。  それから次に(2)としまして、胚の作成に用いる精子でございますが、それにつき まして、入手の方法について、ここでは場合分けを全体で5つ用意してございますが、 まず最初の1番目としまして、生殖補助医療で不要となったものの提供ということで、 そこは2つに分かれてございまして、最初が、生殖補助医療において利用されなかった 精子ということで、実はここでは個別には場合分けをしていなかったのでございますが、 考え方としましては、生殖補助医療において利用されずに将来のために凍結保存されて いて、最終的には不要となったもの、また、それ以外のものとしましては、実際、生殖 補助医療で使われようとしたときに、例えば精子の質が悪いとかその他の理由などによ って廃棄されることとなったものというものが考えられるかと思います。それから次に 2番目としまして、疾患の治療のために精子の保存目的で凍結保存されていた精子のう ちで最終的に不要となったものについて、これら2つの場合について適切なインフォー ムド・コンセントを受けて提供を受けるということでよろしいかというふうにしてござ います。  次が2番目のケースでございます。2ページ目になりますが、これにつきましては、 手術などで摘出された精巣また精巣切片からの提供ということで、それにつきましては、 1番目で泌尿器疾患等、ここに例がございますが、そのような疾患等の手術により摘出 された精巣または精巣切片というものがございまして、そのほかの区分としましては、 ほかの疾患の治療のために精子を温存するということで、保存する目的で摘出・保存さ れた精巣または精巣切片のうち、最終的には不要となったもの、これら2つの場合がご ざいますが、これらについて適切なインフォームド・コンセントを受けて提供を受ける こととしてよいかというふうにしてございます。この際、留意事項としましては、ある 疾患の治療ということでございますので、その提供者の身体的な負担、精神的な負担と いうのを伴ってございますその疾患という治療という過程において負担があるという状 況で提供となることを考慮する必要があるというふうに留意事項を挙げてございます。  次に3番目の場合でございますが、外来検査の受診の後に不要となったものからの提 供ということで、これについては適切なインフォームド・コンセントを受けて提供を受 けることとしてよいかとしてございます。  それから4番目でございますが、こちらはアンダーラインが入っておりますけれども、 生殖補助医療目的で採取された精子の一部利用についてはどのように考えるかというこ とでございますが、ほかにも、この後もいろいろございますが、アンダーラインを引い たものは、事務局としては、よりご議論いただいたほうがいい場合分けかと思いまして アンダーラインを引いてございますが、この精子の一部利用については、適切なインフ ォームド・コンセントを受けて提供を受けることとしていいか。または、生殖補助医療 の治療に優先して使用されるものであるということを考えますと、その提供の対象とし て不適切なので、提供を受けないこととするかという、これを2つの選択肢として挙げ てございます。  それから最後の場合分けですが、無償ボランティアからの提供ということで、この精 子の無償ボランティアからの提供ということにつきましては、従来から行われていると いうふうに聞いてございますが、そのような観点から認めることとして、自発的な提供 の申し出がある場合に限り認めることとするか、または、こちら側から依頼をする形で 提供を受けることも認めるとするかということで、こちらも2つの選択肢を挙げてござ います。  ここまでが胚の作成に用いる精子の提供に係るものでございます。  次が3ページ目になりますけれども、(3)胚の作成に用いる卵子でございますが、こ の卵子の入手につきましては、右側に総合科学技術会議の意見、平成16年に出されまし た「ヒト胚の取扱いに関する基本的考え方」で、1つの考え方が示されてございまして、 その一番最初のところに書いてございますが、ヒト受精胚を作成し、これを利用する生 殖補助医療研究では、必ず未受精卵を入手するが、未受精卵の女性からの採取には提供 する女性の肉体的侵襲や精神的負担が伴うとともに、未受精卵の採取が拡大し、広範に 行われるようになれば、人間の道具化・手段化といった懸念も強まるといった基本的な 考え方が示されております。これを一応参考に挙げてございます。  それから具体的な場合分けになりますが、ここでの場合分けは全体に4つございます けれども、まず、生殖補助医療におけるものでございますが、これにつきましては、資 料2−2のほうで、生殖補助医療目的で採取された未受精卵・非受精卵の取扱いについ てということで、卵子、未受精卵・非受精卵はどのような流れで出てくるかというとこ ろをまとめたものがございます。  まず、生殖補助医療からの提供の中で、まず前提としまして、医療機関において治療 の過程における卵子の取り扱いが異なるということがあって、その未受精・非受精卵と いうのが、途中ですぐさま凍結される場合と凍結されない場合があるということを前提 として場合分けをしているというものでございます。それから、最初に(1)としまして、 生殖補助医療における非受精卵となってございますが、この非受精卵というのは、実際 に媒精したものの受精しなかった卵子でございますが、この生殖補助医療研究において 胚の作成に用いるといったものとしてまず対象とするかどうか、こういう1つの論点を 挙げさせていただいております。それから、その用として非受精卵を使う場合には、ま ず凍結されたものを利用する場合、不要となった後に適切なインフォームド・コンセン トを受けて利用することを認めてよいか。また、凍結せずに利用される場合は、生殖補 助医療の治療の過程ということになりますので、すなわち、施術の前に何らかの形で提 供のためのインフォームド・コンセントをとるということになりますので、自発的な提 供の申し出がある場合に限って認めることとするかということになります。留意事項と しましては、これを考えるに当たっては、提供者の身体的負担、精神的負担を伴う生殖 補助医療の過程での提供となることを考慮する必要があるということでございまして、 この場合、さらに適切なインフォームド・コンセントを受けて、みずからの意思で提供 に同意していることを確認するということについてどのように担保するかという留意点 も挙げてございます。  それから次の場合としまして(2)でございますが、生殖補助医療において利用されなか った未受精卵ということで、体外受精の場合には、原則として採取された未受精卵はす べて媒精されることになりますが、顕微授精の場合に、採卵された未受精卵のうち、形 態学的に明らかに異常があるものというものの選別は可能であるということで、実際に 選別を行っている場合があるというふうに考えられてございます。  そういうことを踏まえまして、次の4ページにまとめてございますが、形態学的に異 常があって利用されなかった未受精卵について、まず凍結されているものを利用する場 合には、不要となった場合には、適切なインフォームド・コンセントを受けて利用する ことについて認めることとするか。あと、凍結せずに利用する場合ですが、先ほどと同 様に、生殖補助医療の治療の過程でのことですので、自発的な提供の申し出がある場合 に限って認めることとするかという同様なことがございます。それから、同様に留意事 項についても、提供者の身体的負担及び精神的負担を伴う医療の過程での提供となるこ とが留意点となってございまして、この場合、適切なインフォームド・コンセントを受 けて、みずからの意思で提供に同意していることの確認についてどのように担保するか という点がございます。  それから(3)の卵子でございますが、これは今ほどのとは少し違うのですけれども、疾 患の治療のために卵子の保存をするという目的で凍結保存しておく場合がございますが、 その凍結保存しておいた未受精卵のうち、最終的には不要となったものというものでご ざいまして、実際に将来の妊娠に備えて凍結された未受精卵について、本人の生殖補助 医療にはもう利用しないことが決定された後に、適切なインフォームド・コンセントを 受けて利用することについて認めることとするかというふうにしてございます。  それから、4番目、生殖補助医療の中では最後でございますが、その他としまして、 採取された未受精卵のうち、顕微授精の場合に、精子の数の関係で媒精させる未受精卵 の数が限定される場合は、卵子の形態学的な異常はありませんが、生殖補助医療に利用 しなかったものの提供を受けるということについて認めることとするか。次のページに なりますが、この場合、生殖補助医療の過程で行う媒精されなかった未受精卵の提供に 係るICは精神的に大きな負担を与えることが考えられることから、自発的な提供の申 し出がある場合に限って認めることとするか。また、他の場合と同様ですが、みずから の意思で提供に同意していることの確認についてどのように担保するかといったことを 示してございます。  次の場合でございますが、2番目としましては、手術等で摘出された卵巣または卵巣 切片からの提供でして、これにつきましては、2つの場合分けにしてございますが、1 つ目としては、婦人科疾患等の手術により摘出された卵巣または卵巣切片ということで、 疾患のため手術等により摘出された卵巣や卵巣切片からの未受精卵の採取ということが あり得るとするならば、可能な場合があれば、適切なインフォームド・コンセントを受 けてみずからの意思で提供に同意することが確認できれば、摘出した卵巣や卵巣切片か ら得られる未受精卵を利用することについて認めることとしてよいかということ。  それから、若干違う疾患でございますが、性同一性障害の治療のため卵巣が摘出され る場合があるということで、その場合に摘出される卵巣については、当該治療の過程に おいて摘出された卵巣から得られる未受精卵の利用を認めることとするかというふうに 挙げてございます。これらにつきましても、精巣の場合と同様に、留意点としまして、 これを考えるに当たっては、提供者の身体的負担、精神的負担を伴う疾患治療の過程で の提供となることを考慮する必要があるという留意点を挙げてございます。  それから次の2番目ですが、その疾患そのものではなくて、他の疾患の治療のために 卵子を保存するという目的で摘出・保存された卵巣または卵巣切片のうち不要となった ものとして、他の疾患の治療のため、将来の妊娠に備えて凍結保存された卵巣で、最終 的に不要となったものについては、適切なインフォームド・コンセントを受けて利用す ることについて認めることとしていいかというふうに挙げてございます。  それから、最後の6ページ目でございますが、3)の場合でございまして、一番最初 にあった生殖補助医療の過程になるのですが、少し考え方を変えまして、生殖補助医療 目的で採取された未受精卵の一部をそのまま利用することについてどのように考えるか といった提示でございます。例えば、1つあり得ますのは、自発的な申し出のある場合 に限ることとして、適切なインフォームド・コンセントを受けて、みずからの意思で提 供に同意していることが確認できれば認めることとするのかという提起をしてございま す。その際、成熟した未受精卵採取のために排卵誘発剤等のホルモン剤の投与による卵 巣刺激、排卵誘発の合併症を挙げられてございますが、そのリスクについてどのように 考えるかということで、留意事項としまして、現状として、生殖補助医療の過程におい て、過剰排卵を避けるための工夫ということが最近なされている場合があると聞いてご ざいますので、仮に生殖補助医療目的で採取された未受精卵の一部を生殖補助医療研究 へ利用することを認めた場合には、過剰排卵を抑制する工夫ということが、もしかする となされなくなるということによって、合併症のリスクが増加するということを考慮す る必要があるのではないかということで留意点として挙げてございます。この自発的な 提供という考え方のほかに、最後にポツで書いてございますが、自発的な申し出によら ず、採取された数に応じてその一部利用を認めるといった卵子の一部利用はここでは認 めないこととしてよいかというふうに挙げてございます。  それから最後、4)ですが、無償ボランティアについてですけれども、これにつきま しては、参考としまして、右側に総合科学技術会議の意見として挙げてございますが、 いわゆる無償ボランティアからの未受精卵の採取については、自発的な提供を望む気持 ちはとうといものとして尊重するとしても、一報で、これも漢字が違いますが、一方で、 関係者などである女性に未受精卵の提供が過大に期待される環境が形成され、ほんとう の意味での自由意思からの提供とならない場合も考えられるため、原則、認めるべきで はないというふうな考え方が示されてございます。このようなことを受けまして、ここ では原則認めるべきではないとされる無償ボランティアの例外的取り扱いということに ついて何らかの検討をされるかどうかということについて提示をさせていただいてござ います。  以上でございます。 ○笹月座長   どうもありがとうございました。  それでは、ただいまのたたき台をもとに、委員の方のご意見を伺っていきたいと思い ます。  まず、胚、それから胚の作成に用いる精子、卵子という、この資料の順に従ってご意 見いただき、議論したいと思いますが、胚のところで、何かまずご質問あるいはご意見 ございますでしょうか。 ○安達委員  ちょっとよろしいでしょうか。この生殖補助医療で利用されなかった凍結受精胚の中 には、廃棄をするのに、本人の意思による廃棄というのもあるのですけれども、例えば、 お二方の夫婦のうちどちらかが亡くなったために受精胚を廃棄するというようなことも あります。そういう場合もこれに含まれるとすると、二人の意思が確認できなくても適 切なインフォームド・コンセントのもとに提供を受けることとしてよいか、どのように 考えたらよろしいのでしょうか。 ○笹月座長  それは、2人の同意が亡くなったために得られない、そういうことを考慮しておられ るわけですか。 ○安達委員  そういうことも事態としてはあるかと思うのです。そういう場合も研究に提供しても らえる可能性を残すということにもっていこうとしているのかどうか。 ○笹月座長  生殖補助医療には使わないということが2人の意思で決定した、あるいはもう1人が 亡くなっていれば、生存している方の意思で決定したものについて、しかるべきインフ ォームド・コンセントで利用してよろしいか、こういうことですね。  先生のご意見は、それでどういうことですか。 ○安達委員  これはここだけで決められることではないのかもしれないのですけれども、そういう ものは一応廃棄するというのが学会の考え方です。実際に、ご夫婦で凍結受精胚があっ て、片方の方が亡くなられたような場合にはそれは廃棄になっていきますので、そうし ますと……。 ○笹月座長  廃棄になって……必ずしもそうですか。 ○安達委員  これは廃棄という形を一応とることになっています。吉村先生、どうなのでしょうか。 ○笹月座長  例えば、ご夫婦でご主人が亡くなられて、その後でもその胚を使って子供が欲しいと いうようなことはないのですか。 ○安達委員  それは、原則、受精卵に関しては認めないという形になると思います、どちらかが亡 くなられた場合には。 ○笹月座長  それは認めないのですか。 ○加藤委員  その廃棄するというのは、その卵を使ったりして赤ちゃんをつくる危険があるから廃 棄するということですよね。それで、この、私たちが今議論している場合には、赤ちゃ んをつくる段階には絶対に到達しないという場合なのですよね。ですから、そちらの場 合に必ず廃棄することになっているから、この場合にも必ず廃棄しなきゃならないとい うふうには必ずしも言えないんじゃないかと思うのです。 ○笹月座長  先生がおっしゃったのは卵の話ですね。 ○加藤委員  はい、卵の場合。 ○笹月座長  今は受精胚の話ですね。 ○加藤委員  ええ、胚ね。いや、胚でも同じことだと思うのですけれども。 ○笹月座長  いや、その前に、ご主人が亡くなったら、もうその胚は破棄と決めているという、そ こがちょっと私には理解できないのですが。 ○安達委員  つまり、どういう場合に廃棄するかということの中に、一つは、もう子供はつくらな いから要らないという場合もあるでしょうし、……。 ○吉村委員  これはES細胞のときも同じように問題になりました。夫婦の余剰胚をいただいてE S細胞を樹立するときに、18ページのES細胞の指針においては、夫婦のどちらかが死 亡しているなど、双方の同意が得られないヒト受精胚を用いることについては、それら を用いる合理性、必要性がないため除外することとするという規定がございます。だか ら、ES細胞樹立のためにそういった胚を使うことはできないということにはなってい ます。ご夫婦のうちどちらかが死亡すれば、できない。 ○石原委員  連絡がとれない場合も同様に? ○吉村委員  いや、それはちょっとわからないですけれども、死亡した場合は使えないと。ですか ら、もし研究で使うということであれば、今、加藤先生がおっしゃったように、研究で 使うんだからいいということを決めないと。ES細胞に関しては、どちらか、夫婦の一 部が亡くなった方の胚を用いてES細胞の樹立はできないということが決まっている。 ○石原委員  実際の臨床の場では、亡くなるという例よりも、転居などで連絡がつかなくなってい る場合の凍結胚がそのままになっているというのが相当数あるのですが、それはこの場 合にはどうすればよろしいのでしょうか。 ○加藤委員  それはあらゆる臓器の利用について常に問題になることで、たしか、一応、連絡をと るように努力して、返事が得られなかった場合には、何らかの該当する倫理委員会で利 用していいかどうかを決定するというガイドラインがどこかでつくられていると思いま すけれども。 ○町野委員  ESの樹立のときの受精胚の提供と同じルールでここでやるということが前提かです ね、まず。 ○石原委員  ええ、そうですね。 ○町野委員  それを別にする理由はないので、同じに考えるべきだろうと思います。ES指針の本 文でははっきりとは書いてないのです。ただ、夫婦双方の同意を得ることとあって、そ のコメントの中で、例えば死亡した場合とか、片方の同意が得られないような場合につ いては、これは認めないとされています。それを維持するかどうかでしょうね。 ○笹月座長  もちろん、この委員会でESで決めたルールを変えようなんていう気はありませんが、 そのESで決めたルールに従わなきゃいけないということもないわけですよね。ESの 場合には、いうなれば未来永劫その細胞は生きていくわけですね、維持すれば。ところ が、こっちは、もう2週間で破棄しなきゃいけないということですから、その気持ちと いいますか、提供した側の気持ちというのは随分違うんだろうと思うのですね。ですか ら必ずしも、同じなんだから、もうそれでよろしいということには、私はいかないんじ ゃないかと思いますけれども。 ○町野委員  受精胚というヒトの生命を滅失することがいつできるかという問題です。ES細胞樹 立のときもそうですし、今回のときもそうです。だから、ヒトの生命をいつ滅失するこ とが許されるかという問題については同じはずだろうと私は思います。 ○中辻委員  いや、そういうふうに言われると、廃棄することも滅失することなんですよ。ですか ら、廃棄することもできなくなってしまうわけですよね。 ○町野委員  今の問題点というのはESのときにかなり議論いたしましたので、もう一回ここで議 論するのはなかなか大変だと思いますけれども、もう一回それをやりますとESのポリ シーは、一回廃棄することを決定したが、その後でそれを使うことを認めようというも のです。基本的に廃棄する、人の生命を滅失することが許されないということではなく て、人の生命を滅失することが許されるのはこういう場合だと決めたということです。 ○笹月座長  ほかの方は何かありますか。 ○吉村委員  ちなみに、日本産科婦人科学会では、胚をよく使って研究するのですけれども、その 際には、この見解からは、亡くなったら使ってはいけないということは厳密には書いて ないですね。ですから、ここに書いてあるのは、精子、卵子及び受精卵は、提供者の承 諾を得た上、提供者のプライバシーを守って研究に使用することができるということし か書いてありません。ですから、亡くなったら絶対使ってはいけないのかというふうに は、一応はとれません。しかしES指針では、使わないようにしますということは明確 に述べております。 ○中辻委員  多分、吉村先生が読み上げられた中に、あえて両方の夫婦からインフォームド・コン セントを得られないようなものを使う合理的理由がないからというふうに書いてありま したよね。ですから、ES細胞の研究の場合には、今、廃棄されることが決定した胚の うち、あえてそういうマイノリティーの胚を使わなくてもいいだろうということで決ま ったし、それと、笹月先生がおっしゃったように、細胞としては存在し続けるから、そ のことに対して違和感を持つか、反対する意思を持つような人の意見もあり得るから、 それが亡くなった配偶者であれば、そのことを考慮しなきゃいけないということだと思 うのですね。  今回は、だから、廃棄という言葉の定義なのですけれども、研究に使った後、廃棄さ れるわけですね。そのことに対して、そのまま研究に使わずに廃棄するのか、研究に使 った後に廃棄するのかについて強い反対意見があり得るのかという、廃棄することは決 まっているけれどもということですね、亡くなった配偶者の方が。ということで、もう 1つ具体的に研究現場で実際に実施しようとした場合に、これがどれぐらいの障害にな り得るのかということもあると思います。 ○笹月座長  その大前提として、今、中辻委員がおっしゃった、凍結された胚は、例えばご主人が 亡くなった場合には破棄する、それが大前提だったですね、おっしゃったのは。違いま すか。 ○安達委員   これは凍結胚、卵も精子もそういうことだと思うのですけれども、どういうときに廃 棄しなければならないかという議論があって、学会では会員へのお知らせとかそういう ものの中に、夫婦のうちどちらかが亡くなった場合には廃棄するという、そういう考え 方が示されています。私は、適切なインフォームド・コンセントを受けて研究への提供 を受けることとしてよいという意見はいいと思ったのですが、インフォームド・コンセ ントを受けるということは、夫婦両方から受けるということがその前提にあるだろうと いうことです。1人亡くなっている場合は1人から受ければいいのかどうかという考え もあるとは思います。学会としては、凍結胚は、1人が亡くなった場合には廃棄という 形になりますので、そのときに、生前、研究に使っていいという意思があったら、また 考え方が変わるのかもしれませんけれども、そこを一応考えて、亡くなったときどう考 えるかというふうにお聞きしました。 ○位田委員  私も町野委員の意見に賛成なのですけれども、これはES細胞の話ですが、ES細胞 は、法律上の夫婦から提供を受けて、かつ、そのときには夫婦双方の同意が必要である という明確な基準があるわけですね。それは確かにES細胞をつくるという目的ではあ るのですけれども、じゃ、生殖補助医療研究に使うときに、ES研究のときとどう違う のか、つまり、1人の同意だけでいいという理由は、単に生き続けるからという思いだ けでは合理的な理由には私はならないと思います。 ○笹月座長  いかがですか。はい、どうぞ。 ○町野委員  この指針をつくったときのおぼろげな記憶ですが、生殖補助医療を頼むときは夫婦で 来なきゃいけないということになっていますから、それでまず、受精胚の提供が生殖補 助医療から来るときについては夫婦間ということに限られるわけです。それがまずスタ ートのところであるわけです。受精胚については、それぞれの配偶子の提供者が権利を 持つという考え方ですから、片方の方から同意が得られない以上、それが死亡した場合 であっても、やはりこれはだめなんだということでコメントは書かれています。そこま でする合理性があるかについては、私としては、あまりそのときは議論しなかった覚え があります。したがいまして、このルールをここで変更するかどうかです。私はそれだ けの必要性があるとは思えませんし、その理由もあるとはちょっと思えないので、この ままでいいのではないかというのが私が申し上げたことです。 ○石原委員  安達先生のおっしゃったお話というのは、むしろ、死後生殖との関係の、その文脈で の話だと思うのです、その同意が得られる得られないという話は。今回のお話というの は、ES細胞とも死後生殖の話とも異なりまして、本来廃棄すべき、あるいは廃棄され ることが決定していた胚について、その研究利用を認めるかどうかというお話だと思い ますので、必ずしもESと同じである必要は僕はないというふうに思いますが。 ○町野委員   その点は、やはり私は同じに考えなきゃいけないと思います。先ほど言いましたとお り、生命を滅失することができるのがいつかという議論からスタートしたわけですよ。 両方とも研究目的で使うということですから、今のところ、ES細胞の樹立というのも そうでしょう、研究目的です。今回の場合も研究目的のうちの1つですから、その点に おいても相違はないのです。違うからということだとすると、区別する理由があるかと いうことが問題です。 ○石原委員  もしそういうことであるとすると、やはり、胚はすべて廃棄してはいけないという話 になってしまうんじゃないかと私は思うのですけれども、そうであれば非常に話はわか りやすいし、イタリアのように、作成した胚はすべて子宮内に戻さなければいけないと いう法をつくったわけですね。イタリアでは、そのために受精させることのできる胚は 3個までにしたわけで、卵の段階なら捨ててもいい。それは非常にわかりやすいロジカ ルな話で、私はその話というのは、いい悪いは別としまして、理解はできる話だと思う のですが、一たんできて胚となっているものが凍結されて存在しているところで、町野 先生のおっしゃる違いというのがいまひとつ理解できないのですが。 ○町野委員  それが理解できないという人はおられるとは思いますけれども、先ほども中辻先生が おっしゃいましたとおり、結局、問題は、ヒトの胚というのは生命である、受精胚は人 の生命である、それを研究目的で滅失できるかということからスタートしているわけで す。それが絶対だめだということになると、先ほどのような問題になる。イタリアのよ うにするか、単純にそのまま置いておけという話になるか、どちらかわかりませんけれ ども、そういうことになります。しかし、そのときに、研究目的である場合には認めよ うという話になったわけです。そうして、じゃあどういうときに認めるかというと、最 初から廃棄が予定されていて、もうそれが決まったものについてだけ認めようと。なぜ かというと、そうしないと、研究目的でわざわざ受精胚をつくるということが出てくる からだということです。そのために、一たん廃棄が決定されたものについてだけ、ある 範囲で研究目的でそれを認めようという議論です。その限りでは私は極めてわかりやす い議論だと思います。ただやはり、今のところで、受精胚が人の生命だと言いながらそ の廃棄を認めるのはおかしいという理屈をとるならば、それはそれで1つの理屈ですけ れども、そっちもわかりやすいですけれども、こちらも同様にわかりやすいなと私は思 いますけれども。 ○笹月座長  もしそうだとしますと、ご主人が亡くなって、もう破棄することが決まっている胚を 研究に用いてということになって、生命の萌芽とかいうこととはまた別の視点で、要す るに、例えば血液でもDNAでもそれを提供した人が亡くなった後、それを使ってよろ しいかというのと、ほとんどそれは同じ議論として検討することが私は必要なんじゃな いかと思いますが。 ○町野委員  どういうことですか。 ○笹月座長  要するに、破棄が決まったもの、もう利用しない胚というものは、インフォームド・ コンセントのもとに、この研究には利用していいだろうということですよね。ところが、 夫婦でご主人が亡くなったというものについてはだめかどうかということの検討のとき には、その残されたものがDNAであるか、あるいはリンパ球であるか、受精胚である かということの差があるのかどうかというのが私の疑問です。 ○町野委員  受精胚であるということに差はないと思います。 ○笹月座長  そうすると、例えば臨床研究指針なんかによると、さっき加藤委員が言われたように、 本人が亡くなった場合に、それはもう使ってはいけませんというふうにはなってないと 思うのですが、いかがですか、その倫理指針では。 ○町野委員  臨床研究の倫理指針は、ヒト胚についてのものではないのです。 ○笹月座長  いや、だから、さっき私が言ったように、胚とかリンパ球とかDNAとかを区別する のかどうかと私がさっき質問したら、いや、する必要はないとおっしゃったので。 ○町野委員  受精胚とそれとは区別はしなきゃいけないと申し上げたつもりです。受精胚という点 で区別がないから同じルールに従えということなのです。廃棄が決定されたら、もうそ れは物になったということだとお考えになっているのかもしれませんが、それはそうで はないのです。やはり依然として受精胚です。 ○笹月座長  もう1つは、ES細胞の研究のときには、やたらにそれをたくさんつくる必要はない わけでしょう。利用できるESがあればそれでいいわけですよ。だから、そんなにたく さん受精胚というものを要求しないわけですよね、一たん確立されれば。ところが、こ の生殖補助医療というのは、その都度受精胚をつくらなければいけない。その都度、自 分の研究に必要な新しい受精胚を手にしなければいけない。そうすると、そういう破棄 されることが決まっているようなものも利用していいじゃないかという要求は当然出て くると思うのです。だからそこは、いわゆるESにおける胚の話とここにおける胚の話 は違うと思うのです。 ○町野委員  私は、胚の性質は違わないだろうと思いますけれどもね。 ○笹月座長  もちろんそうだと思います。 ○町野委員  笹月先生がおっしゃられたのは、受精胚の研究のほうについては、もうちょっと受精 胚が必要だと。だから、もうちょっと間口を広くしよう、そういうことですよね。その ように理解してよろしいですか。 ○笹月座長  そうです。そういう視点が違うんじゃないかということです。 ○町野委員  ええ、ですから、胚としての性質による相違じゃなくて、研究の必要性が違う、それ は理解できます。もしそのような判断でしたら、そういうことはあり得るだろうと思い ますが、それがESの時の考え方を変更する理由となりうるかは、議論の必要がありま す。 ○位田委員  出発点は、生命科学技術会議時代の生命倫理委員会のヒト胚に関する報告書だと思う のですけれども、あれはヒト胚というのは人の生命の萌芽であるという位置づけをして、 町野委員がおっしゃったように、ヒト胚というのは生命だという位置づけをして、その 生命は、夫と妻と両方から来てでき上がる存在である。それは生命の萌芽だから、それ を研究目的でつくり出してはいけない。例えば、生殖補助医療で体外受精ででき上がっ た場合に、使わない胚は当然廃棄するということが前提なのですね。それは、ESだか ら、ESに使うからという話ではなくて、基本的にそういうことで、ヒト胚については 取り扱ってきた。しかし例外があり得て、人の生命の萌芽だけれども、廃棄することが 決まっている場合には、それを使って難病の治療に使うことはできるでしょう。それが ESの話ですよね。生殖補助医療も、難病ではないかもしれないけれども、そういうラ インで例外として今回認める。そのときにやはり考えられたのは、ESだから夫婦両方 の同意が要るという話ではなくて、受精胚というのは夫婦でつくったものだから、当然、 夫婦両方の同意が要ります、そういうことで話が始まっているので、廃棄していいとか 悪いとかという話ではないんですよね。この場合に、夫婦両方の同意がないのに、研究 に必要だからといって使っていいのかということが問題で、少なくとも、これまでの生 命倫理委員会、それから文科省になってからのさまざまな委員会での議論は、必要性が あるから、片方の同意だけでいいというような議論はしてこなかった。もし、片方の同 意だけでいいのだということであれば、それを理由づける合理的な理由というのを明ら かにしないと、単にESは残るからとか、もしくは生殖補助医療は捨ててしまうとかと いう話では終わらないと思うのですね。 ○加藤委員  今の位田先生のお話、よくわかりました。だから、この委員会で、ES細胞について 決めた決定を、今、変更しないほうがいいんじゃないかと。ここで少しずつ少しずつ変 更していきますと、それこそスリッパリー・スロープ・アーギュメントで、どこまで変 更するかわかりませんから、ともかく、前に決めたことを、多少不満や不合理があると 思われても、それを踏襲する必要はあるんじゃないかと思います。 ○位田委員  私は特に不合理性はないと思いますが、基本的に町野委員と一緒で、ヒトの受精胚の 取り扱いについては、受精胚であるということに関しては同じなので、なぜ必要性があ るからこっちは片方でよくて、ESだったら両方でいいかというのは、私は納得できる ようなご説明を聞いたとは思っていない。 ○笹月座長  というよりも、そこの視点じゃなくて、私がもう1つ言いたいのは、亡くなった人、 片一方でいいというと、2人いて片一方が反対しているというような印象を与えますけ れども、そうじゃなくて、片一方が亡くなってしまった、そうすると、もうとりようが ない、その場合にどう考えるのか。もう少しジェネラルにして、そこで臨床研究での例 はどうなっているのかをちょっと参考にして、それでも受精胚でなくても、例えばDN Aとかリンパ球であっても、本人が亡くなったものについては使えないと言っているの かとか、それを知りたいのですが。 ○長野安全対策官  臨床研究に関する倫理指針、それから幹細胞を用いた臨床研究に関する指針、これは どちらも厚生労働省の指針ではございますが、どちらについても、一応、死亡した方の 細胞、組織等について利用できることにはなってございます。 ○位田委員  死んだ人のですか。受精胚ではないですよね。 ○長野安全対策官  ええ、受精胚ではないです。 ○後藤委員  私も受精胚については、やはり両親というか、両方のインフォームド・コンセントが あったときのみ使うということのほうがいいんじゃないかと思います。それから、一方 が亡くなった場合はということになりますと、今度は離婚したらどうだということにも なりますし、だんだん拡大していくということもありますし、受精胚がそういう両親を 持つという機会は少ないと思いますし、そういう提供される機会というのは。だからや はり両方のインフォームド・コンセントがあったときのみ使うということのほうがいい と思います。 ○笹月座長  いかがですか。そうすると、今度はもっと突き詰めると、受精胚だから一方が亡くな っているともう使えませんよという、そこがそうなのかなという疑問が。 ○中辻委員   もう一回整理すると、受精胚というのは生命の萌芽ですね。それを廃棄することに関 しては、一方が亡くなれば、一方の意思だけで決められるというルールですでにあるわ けです。 ○位田委員  関係ない、それは関係ない。 ○中辻委員  でも、研究に使うことに関しては廃棄とは異なって、必ず両方の同意が必要という根 拠はあるのでしょうか。 ○笹月座長  なぜ受精胚だと亡くなった人のものが使えないのか、生存者はイエスと言っている。 本人が出したリンパ球、DNAというふうなものは本人が亡くなった場合には、もうし ようがない、インフォームド・コンセントをまた取り直したりできないから、それは使 ってよろしいと。ところが受精胚だと、残っている生存者はイエスと言っているのに亡 くなっている人がいるのでもうだめですということが、何か1つちょっとぴんとこない、 腑に落ちないですけれどもね。 ○位田委員  いや、そこはもうESの議論をしたときにさんざんやりとりをしたのですが……。 ○笹月座長  だから、どういう理由ですか。 ○位田委員  受精胚と体細胞は違う、もしくはES細胞と体細胞は違うという取り扱いで……。 ○笹月座長  ええ、もちろん違いますけれども、なぜ違うからだめかということ。 ○位田委員  だから、それは受精胚が人の生命の萌芽であるから、単なる体細胞とは違う地位が与 えられている、そういう理由づけですよね。 ○笹月座長  だから、インフォームド・コンセント云々にそれがどう影響を及ぼすか。 ○位田委員  それは2人の精子と卵子によってつくられた生命の萌芽であるので、両方の要素が入 っている以上は両方の同意が必要だと。 ○笹月座長  いや、それだったら、本人が出した、まさに本人そのものが出したDNA、リンパ球 は亡くなっても使えるのに、本人の同意がない……。 ○位田委員  ですからそれは受精胚ではなくて、単なる人の細胞であるという取り扱いですよね。 ○笹月座長  それはへ理屈にしか聞こえないですね。 ○中辻委員  具体的に問題点が生じていて、例えば不妊治療を始めるときに、患者さんとクリニッ クが話し合って、不妊治療で使わなくなったものに関しては廃棄するときに研究に使っ てもらって結構ですという同意書を夫婦両方が署名していたときにはどうなるんでしょ う。 ○吉村委員  我々の意見としては、どちらかというと位田先生と町野先生に近いのですよ。それは どうしてかと申しますと、胚というのは両方からできているのです。その胚を使うとき に、例えば一方の方が亡くなりますと、これは婚姻関係が切れてしまうのですね。当然 ですね、亡くなるわけですから。そうすると、同意が得られない。それは要するに、生 前同意ではそういったものを使用できないというのを原則に我々は今まではしていたの です。要するに、以前に同意があったから。そうなりますと、生殖医療ってすべてそう いったことがいろいろな大きな問題点になってくるのです。それを許してしまいますと、 例えば、精子がどこかに凍結してある。奥さんがその精子を使いたい。でもそのご主人 が亡くなってしまった。黙ってそれを持ってきて体外受精をして子供をつくるといった ようなことまで拡大解釈がされてしまう。我々としては、死んだときにはその人の同意 はとれないので、そういったものは一切使わないほうが安全であるという考え方からこ ういったことになっているのです。例えば、いや、死後の人の同意はとれないのだけれ ども、もう1人の方の同意があるんだから、どうせ廃棄することを決めたんだから、そ れは使ってもよろしいという判断でもおかしくはないとは思いますが、今までは、産婦 人科学会はそのようなスタンスで、死後の同意はとれないので、そういったものはあえ て使うのはやめましょうと。それはどうしてかと申しますと、胚というのは、未受精卵 に比べると比較的使えるものが今まではあったので、あまり大きな問題点にはならなか ったといった経緯がございます。ですから、今、ご議論されて、いや、研究には使って いいということであれば、私たちとしてもそういったものは使いたいとは思っています。 ○笹月座長  前半のところは医療ですから、その精子を使って妊娠しようというのは。だから、そ れはそうなんでしょうけれども、これは研究ですので、先生おっしゃるように、先生が きちんと切り分けられたように、ちょっと違うと思いますよね。  ちょっとこれは次回へ送りましょう。要するに、終わらないと思いますね。済みませ ん、先へ進ませてください。終わらないというのは、私がどうも納得できないので。 ○加藤委員  ちょっと何か文章か何か書いてもらったほうがいいんじゃないかとは思いますが、後 でゆっくり読むのに。 ○木下委員  私は、先生のおっしゃったことが極めて合理的だと思っております。吉村先生が言わ れたのはあくまで医療でして、死後というのは本来廃棄すべきものであるというわけで すから、これは医療とは全く関係ない話なのであって、研究でありますから、そこで、 それを使ってはいけない理由は全くない話だと思います。あまり複雑にしなければ、そ う難しいことはないと思います。 ○笹月座長  ありがとうございました。それでは、これはちょっとペンディングといいますか、あ とにしていただいて、(2)胚の作成に用いる精子についての入手の方法というところに 行きたいと思います。生殖補助医療で不要になったものの提供、生殖補助医療において 利用されなかった精子、それから凍結保存されていた精子のうち不要となったもの、こ れらについては、適切なインフォームド・コンセントのもとに提供を受けるということ でいかがでしょうかということでありますが、どなたかご意見ありますか。  このインフォームド・コンセントの中身とかとり方というのは、またインフォームド・ コンセントのところで議論するとして、プリンシプルとしてこれはよろしいでしょうか。 何かコメントあれば出してください。 ○加藤委員  この、「精子保存目的で凍結保存されていた」って、これはどういう意味なのですか。 何か無意味なというか、よくわからない。「精子保存目的で凍結保存されていた精子」と いう言い方。 ○笹月座長  ああ、言い方ですか。「精子保存目的で凍結されていた」でしょうね。 ○石原委員  これは例えば悪性腫瘍の患者さんで抗がん剤をたくさん使わなきゃいけないとか、放 射線をかける場合に、その前に精子を保存しておいて治療するという場合を想定してい るんだと思います。 ○加藤委員  いや、この表現が何かむだな言葉のような気がするのですけれども。 ○笹月座長  保存というのが要らないんじゃないかという。 ○加藤委員  だから、「凍結保存されていた精子」と書いても同じことになりませんか。 ○石原委員  同じことです。おっしゃるとおりです。 ○笹月座長  これはよろしいですか。特にご意見ございませんでしょうか。では、もし何かお気づ きの点があれば、また後で。  その次の2ページ、手術などで摘出された精巣または精巣切片からの提供。それから、 他の疾患の治療のため精子を保存する目的で摘出・保存されていた精巣または精巣切片 のうちで不要になったもの。これらは適切なインフォームド・コンセントを受けて提供 を受けることとしてよろしいかということですけれども、いかがですか。これも特段問 題はございませんか。――よろしいですか。  それから外来検査受診の後、不要となったもの。――これもよろしいですか。  それでは、次に、4)生殖補助医療目的で採取された精子の一部利用についてはいか がですかということですが、これは初めから、生殖補助医療を目的に精子をとります、 そのときに、一部は研究に使わせてくださいということを説明して、適切なインフォー ムド・コンセントをとればそれでよろしいかということですが、いかがでしょうか。 ○中辻委員  想像では多分、精子の場合には、こういう場合に大過剰を入手できるという場合があ ると思うのですね。それは病気の治療のためですけれども、そういう場合にそれを利用 するというのは極めて合理的だという気がするのです。  もう1つ、ほかにも何回も出てくるのですけれども……あ、ここはそれで結構です。 ○笹月座長  よろしいでしょうか、これは。特に問題はなさそうですが。  それから、無償ボランティアの提供……。 ○町野委員  ちょっとよろしいですか。先ほど、事務局の方が下線を引いたところはしっかり議論 してもらいたいということを言われていたので、これでいいんですか。 ○長野安全対策官  1点確認させていただきたいのですが、精子側、男性側のほうに全く問題がない状態 で、精子を生殖補助医療の中でとられて、それを一部利用するという場合と、そうでは なくて、精子のほうに何らかの問題がある場合で生殖補助医療で採取したときに、一部 利用ということをどう考えるかというのは若干違うかと思うのです。例えば精子の数が 少ない場合、そこについては特段の配慮か何かということについてあるかということも ご議論いただければと思います。 ○笹月座長  ですけれども、それは生殖補助医療がもちろん最優先でありますので、それに使う量 がとれてないのに研究に回せなんていうことはあり得ないですよね。 ○加藤委員  これは初めから、生殖医療目的で採取された精子のうち、生殖医療目的に障害のない 限りで一部利用していいかという、そういう趣旨ですよね。 ○笹月座長  そうですね。 ○加藤委員  だから、医療目的に障害のない限りでという言葉を入れたほうがわかりやすいんじゃ ないかとは思うのですが。 ○笹月座長  そうですね。よろしいですか、それで。  それでは、5)無償ボランティアからの提供ということで。 ○中辻委員  この部分の表現で、多分、クローン胚のときに議論されていたのでしょうけれども、 自発的な提供の申し出がある場合というのが、具体的にどういうことを想定しているか。 唯一合理的に考えると、例えば、診療室とか患者さんの待合室に、何か治験のボランテ ィア募集みたいなものが張ってあって、それを見た患者さんが、じゃあ自分はいいよと 自発的に申し出るということなのかなと。つまり、自発的ということが、どこまでそう いうチャンスを増やすようにできるのかというのがよくわからないですね。あとずっと 出てきて、ここのところは実はあまり問題ないと思うのです、精子だから。ほかのとこ ろはちょっと問題が出てくるけれども。 ○笹月座長   これも例えば、献血あるいは骨髄移植のためのボランティアを募るようなポスターが ありますね。何かそんな形、ほんとうに一生懸命やろうとすれば何かそういう広報活動 ということになろうかと思います。 ○中辻委員   ですから、多分、この場合は、実は私は自発的じゃなくてもいいような気もするので すが、提供を受ける立場の臨床医の人は、提供してくださいと言ってはだめなわけです よね、自発的という場合には。でも、ポスターを待合室に張っておくということがどこ までそれが許容されるようなことを想定された意味として自発的な申し出がある場合と いうふうに議論しているのかが少しわからなくて、はっきりする必要があると思うので す。 ○笹月座長   そういう献血を促すような、あるいは骨髄のボランティアを募るようなポスターがあ りますね、ああいう形の何か広報があったときに、それを見て申し出てきた人が、まさ に自発的なボランティアですよね。あと、今度は、そうじゃなくて、こちらからお願い しますということがもう一ついいのかどうかということが次の問題かと思うのですが、 自発的なというところはボランティアでよろしいということは、そこはいいですか。 ○加藤委員   ちょっと質問なのですけれども、研究目的で、例えば、何々人の精子を提供してくだ さいとか、身長が2メートル以上の人の精子を提供してくださいとか、血液型が何とか の人の精子を提供してくださいとか、そういうふうに何か特別な条件をつけて精子の提 供を求めたいという、そういう要望は研究所はあるのでしょうか。 ○星委員   ないわけではありません。私自身の昔の研究成果に照らしてみても、受精能の獲得過 程について日本人と欧米人の精子では随分と異なっているとの印象があるものですから、 おそらく特定の集団の精子を使って研究したいという要望は存在すると思います。 ○安達委員   4)に含まれるのかもしれないのですが、これはずっとここまでは生殖補助医療とい うのは夫婦間のことを想定していると思うのですけれども、例えば、非配偶者間人工授 精で提供してもらったような精子は、多分、何回か使った後はもう使わないという規定 ができていると思うのです。そうすると、廃棄をする。非配偶者間人工授精で提供して いただいたような、何人かの女性に使った後という形になるのかもしれませんが、凍結 していたものを廃棄することがあると思うのです。そういうものもこの4)に含むと考 えてよろしいのでしょうか。拡大解釈すれば、生殖補助医療目的で採取された精子の一 部利用ですから、この中に入るのかなとも思うのですけれども。 ○笹月座長   これはいかがでしょう。今のような特殊な例も確かにあろうかと思いますが、これも 適切なインフォームド・コンセントがとってあればよろしいのかどうかということでし ょう。いかがでしょう。 ○吉村委員   それは初めから術前にとることは不可能だと思うのですね。それはどうしてかと申し ますと、AIDのケースをいったら、その場合には、当然のことながら治療に使う目的 で、研究に使うことを想定していません。ですから、たまたま10人が生まれてしまった。 今は凍結してありますから、すべてが凍結精子を使っていますから、当然、余る場合が あるのですけれども、そういった場合はみんな廃棄しているのです。ですから、それは その後に同意をとるしかないですね。ですから、初めは、初めから研究に使うこともあ るかもしれませんからといってわざわざ我々はしておりませんので、それは後からとい うことになります。  それから、この4)は、後からということのほうが多いと思いますね。要するに、生 殖補助医療で使って、それはもう全くこれ以上は使う必要がなくなったといった場合に、 凍結精子は比較的簡単にできますから、そういったときに研究に使わせていただきたい というようなインフォームド・コンセントのとり方になるのがほとんどだと思います。 初めから生殖補助医療に使うので一部の精子を使わせていただけますかなんて言う必要 もないし、そんなに精子は困らないですから。精液検査に来られる人の一部は、検査し たらもう使わない、捨てるわけですから、そういったものがいっぱいありますから、そ んなに厳密にならなくてもいいような感じはいたしますね。ですから、4)はみんな医 療が終わった後ということでいいと思いますね。 ○町野委員   4)のところでちょっと気になったのですけれども、この2ページの4)のところと、 6ページの3)ですね。6ページのほうは未受精卵の提供ですね。これとパラレルなお 考えなのですか。私は、未受精卵の場合のエッグシェアリングの問題と同じようにこっ ちを考えているというぐあいに私は受け取ったのですけれども、そのおつもりだとする なら、今、吉村先生のご理解とはかなり違いますよね。ですから、これはやっぱりはっ きりはさせる必要がやはりあるでしょうね、これだけで書いちゃうのじゃなくて。つま り、エッグシェアリングと同じ場合だとすると、余計に最初からもらうという前提でや って、それでその人からもらうということなのですけれども、それをする必要がないと 言われるなら、それをはっきりとやはり書くべきだろうと思います。そして、後の方の 6ページのほうの3)のほうは、また別の書き方をするということにならざるを得ない と思いますけれども。 ○長野安全対策官   事務局としまして、ここでの整理の仕方は、2ページの4)は、あらかじめ一部利用 ということでいいですかということをインフォームド・コンセントをとるということで したので、ですから、今、吉村委員がおっしゃったような、後で不要となったものとい う整理は、ここの中では1ページ目の下のほうに書いてあります1)の(1)というふうに 整理させていただいておりましたので、ちょっとここはまた精査させていただいてもい いかと思いますけれども。 ○笹月座長   吉村委員のお話に戻りますが、これは生殖補助医療ということでインフォームド・コ ンセントを最初にとられるわけですよね。そうすると、そのときに、また後で取り直す よりも、そのときに、その一部は、もちろん余剰、生殖補助医療に使った残りのものは 研究に使わせてくださいということを初めから言っておいたほうが我々から見ると簡単 じゃないかなと思いますけれども、そうでもないのですか。 ○吉村委員   あまり精子に関してそういうことは、私は卵子と違いまして必要はないような感じが しますけれども。生殖補助医療で余ったものを使うという、それは保存してあって、例 えばもうほんとうに要らなくなって、そういったものを使うというケースのためだけで 私はよろしいのではないか。あえて初めから医療をするときに、研究に使うこともあり ますなんて、私は精子に関してはそれをとる必要はないと思います。卵子に関しては私 はあるかもしれませんけれども。 ○笹月座長   その場合に使うということのインフォームド・コンセントはいつとることになるので すか、その検査の場合に。 ○吉村委員   それは終わってからとることになります。例えば、凍結保存されますかということを 聞くこともありますし、検査というのは何回も来られますから、例えばそれを凍結保存 しておくこともあります。それを将来的に医療に使うということになるのですけれども、 それは終わってから、もう子供さんができてしまって必要ないということはもちろんで きてくるわけですし、それから先ほど言われたAIDの場合もあります。AIDの場合 に、初めから研究にも使わせていただくことがありますなんて言っては、普通はとれな いですね。 ○星委員   私も1)で十分だと思いますけれども。 ○笹月座長   どれですか。 ○星委員   (2)の1)で十分じゃないかと思いますけれども。4)は要らないような気が。 ○吉村委員   もし事務局がお考えになっているようなことであるならば、私はいいのではないかと いうふうに思います。1)だけで精子は十分ではないかと。 ○笹月座長   わかりました。現実の問題として、もうこれで十分、必要な量が手に入りますという、 そういうことですね。いかがですか。 ○吉村委員   こういったプロジェクトを組んだときには、例えば3)みたいな外来検査受診の際、 不要となった、こういう場合には、たくさんのいろいろなパターンの精子を集めたいと いうときには、外来検査のときに、同時にインフォームド・コンセントをとります。そ れはそのインフォームド・コンセントのとり方というところでお話をされればいいと。 検査のものを使いたいというときには、そのときにインフォームド・コンセントはとり ますから。 ○笹月座長  例えば1)でよろしいという場合には、それはもう凍結精子ということになりますよ ね。そうじゃなくて、フレッシュな精子を使いたいというような場合には……。 ○吉村委員   フレッシュな精子を使いたいという場合には、外来検査の場合を用いることのほうが 多いです。 ○笹月座長   ただ、その外来検査を受けるという人は、そもそも何か不妊、まあ、相手が不妊の場 合もある……。 ○吉村委員   不妊症の場合は、前提が、ご主人が正常であっても何であっても精液検査はいたしま すので、精液に関して材料に困るということは、私たちの経験としてはありません。 ○笹月座長   わかりました。ということでございますが、いかがですか。フレッシュなものも手に 入るということですね。もし何か後でお気づきの点があればとして、ここは、じゃあそ ういうことでいきたいと思います。  それから、無償ボランティアからの提供で、ほんとうに自発的意思の場合と、依頼を してもよろしいかというのはいかがですか。 ○星委員  精子の研究をする場合には、やはり依頼して使いたいというのが結構ありますので、 依頼してというのは必要だと思いますけれども。 ○笹月座長  その依頼してというのは。 ○星委員  無償はもちろん大切ですが、精子の性質についてはかなりの個人差があるものですか ら、特定の精子を使ってもう少しこの実験を続けたいということがあります。特定のボ ランティアに複数回協力をお願いすることは必要であろうと思います。 ○吉村委員   そう思います。 ○笹月座長   依頼するその必然性をもう一回ちょっと言っていただけますか。 ○吉村委員   要するに全然動かない精子を使って受精研究をするとか、そういった場合にはその人 にお頼みしないと、正常な方のをもらっていくらやってもあまり意味がないということ がありますね。特殊なこういったケースが出てくるだろうと思うのです。そういった場 合には自発的というよりは、研究にお願いできませんでしょうかというふうな形、それ は本人の治療にもつながっていくわけですから。例えば奇形精子もございます。そうい った特殊な方に関しては、ご依頼をしていただくという、それは十分インフォームド・ コンセントをとって、今までそういった精子はいただいております。 ○笹月座長   そうすると、それはまたインフォームド・コンセントのとり方、あるいは主治医がい きなり依頼していいのか、第三者に依頼してもらうのかとか、いろいろなことが問題に なると思いますが、それはまたインフォームド・コンセントのところで議論いたしまし ょう。 ○位田委員  済みません、今おっしゃったケースですが、この無償ボランティアからの提供という のは、どういう特徴を持っている人かはわからない段階で精子を提供していただいてと いう話なんだろうと思うので、先生がおっしゃったように、特殊な性質を持った精子で あるというのは、むしろ、例えば3)で外来検査を受診した後にお願いをするという、 そういう話ではないのでしょうか。 ○吉村委員  そうですね、3)番でそれは通常の方だったらいいと思いますが、特殊なケースの方 に関しては、この無償ボランティアというところの中に入ってもいいのではないかなと いうふうに思っただけです。 ○中辻委員  多分それは、3)番の外来検査受診というのは、その方がそれこそ自発的に治療を受 けようとして来た人からですよね。そうじゃなくて……。 ○吉村委員  いや、そうじゃなくて、この外来検査の人は全く正常な方でも調べますので。 ○中辻委員  いや、でも、その人が訪れなかったらやりようがないですよね。クリニックを訪れな ければ。 ○吉村委員  我々は、不妊症だといって奥様が見えれば、ご主人には必ず来てもらいますので。 ○中辻委員  多分、その無償ボランティアを残しておいたほうがいいかもしれない状態というのは、 ある特殊な性質を持った精子を持っているが、その人は別に不妊治療をその夫婦は受け ると思ってはいない、そういう人についても道を残したいということはないのでしょう か。 ○吉村委員  そういうことはあるかもしれませんが、どういったケースかはあまり思いつかないの ですが、あるかもしれませんので、残しておいていただいて結構だと思います。 ○笹月座長  ですから、これは、例えばある疾患の原因を追究しようとして、例えばゲノム解析を しようと思えば、その患者さんにお願いして血液をもらわなきゃいけないわけですよね、 それと同じことですよね。というような理解でよろしいですか。 ○位田委員  言葉遣いとして、ボランティアというのかなというのがちょっと。つまり、こういう くくりで、無償ボランティアというくくりで依頼してというのは、少し趣旨が違うかな という気はしますけれども。 ○笹月座長   だから、それはちょっと言葉の問題で、現実的なポイントとしては、極端にいえば患 者さんにお願いして精子を提供していただく。それは血液も欲しいというようなことも あろうかと思いますし。特に私は問題ないと思うのですが、いかがでしょうか。インフ ォームド・コンセントのとり方はちょっと後で議論するということです。 ○長野安全対策官  事務局から確認させていただきたいのですが、その場合は、提供いただく精子は、患 者さんに限られるのでしょうか。それとも、そうではない一般の方も入るということな のでしょうか。 ○笹月座長  それは、先ほどの話でいえば、もう精子は、極端なことを言えば自由ふんだんにある ので、特にそういう理由がなければ特にだれかを特定する理由がないんじゃないかと思 いますけれども。それをさっき私はお伺いして、特定する理由は何ですかといったら、 そういう特殊な奇形があったり病気であるということで、それはそれで納得できると思 うのですけれども。 ○石原委員  例えば、これまでやられている研究では、ある一定の人口あるいはポピュレーション あるいは地域での精子数が一体どれくらいだとかということを調べるために、これはま た違う、今の精子とか生殖医療研究とはちょっとニュアンスが違いますが、そういう集 団にお願いをして精子の提供を受ける。日本でやられているのは、例えば自衛隊の方に 提供してもらって、精子数を数えてとかという、そういう研究があるわけですね。ある いは、もっと別なことを言いますと、精子の運動を非常に阻害されている病気で、精子 の繊毛の異常であるカルタゲナー症候群ということがわかっている人の精子が欲しいと か、そういう場合もあり得るので、ですから、お願いしてちょうだいできる手法という のは残しておく必要があるかと思います。 ○星委員  そのとおりだと思いますね。はっきり言えば、妊孕性が確認されている精子が欲しい という場合がもちろんあるわけですね。そういうものは患者さんじゃないわけです。そ れから年齢の違いによって見たいというときもあるし、それから、インターバルをどの くらいにとった精子がほしいとか、いろいろなパターンがあるわけです。ですから、ボ ランティアだけで、行き当たりばったりで研究ができるというのは絶対あり得ないこと であって、こういうタイプの精子が欲しい、こういう人の精子が欲しいということは必 ず出てくることなので、そういうものはやはり残しておかないと大変困ると思います。 ○笹月座長  さっきのご質問は、それでも全く健康な人にもお願いする場合があるんですかという 質問ですよね。そういうこともあり得るわけでしょう、現実には。 ○星委員  もちろんそうです。 ○笹月座長  だからそれも別に、まさに相手が了解してくれればそれでよろしいということでいい んじゃないかと思いますが。  時間がおくれてしまいましたが、続きまして、3ページの胚の作成に用いる卵子につ いて、ご議論願いたいと思います。1)の生殖補助医療からの提供、(1)生殖補助医療に おける非受精卵、これについてご意見はどうでしょうか。凍結されたもの、それから凍 結せずに利用する場合と。 ○星委員  この(1)のポツのところにアンダーラインが引いてあるのは、この意味はどういうこと なのでしょうか。 ○長野安全対策官  事務局からご説明申し上げます。ここでお示ししましたのは、非受精卵というのは、 そもそも生殖補助医療の過程で受精できなかった卵子ですので、その非受精卵を使って、 研究では胚の作成に用いるということで対象とするのかどうかということで、もちろん、 考えられることとしては、医療の過程では受精しなかった卵子についても何らかの作用 をすることによって胚を作成することを目指すという研究もあるかもしれないというこ とも含めまして、ここで提示させていただいたことでございます。 ○星委員  なるほど。まさにこれは受精しない卵子ということですよね。何故受精しなかったの かという理由・原因をみつけることが非常に重要なことですから、このような卵は貴重 であると私は思います。 ○笹月座長  それと、この場合の非受精卵というのは、卵が悪かったとは限りませんね。精子がぐ あいが悪かったということもありますから、卵そのものは正常だったかもしれないとい うこともあって、いろいろな意味で、いわゆる生殖補助医療に資する研究の対象にはな り得るわけですよね。ですから、こういうものは適切なインフォームド・コンセントを 受けて利用することはいかがでしょうかということですが、特にコメントございません か。 ○吉村委員  私はこれでもう十分だと思いますが、クローン胚研究に関しては、この(1)、(2)などは 全く意味ないだろうというふうに私は個人的には考えておりました。しかし、この生殖 医療の研究においては、なぜ非受精になったかというようなことを研究するのは大変意 味があると思いますので、クローン胚ではこういったものを除いてもらってもいいぐら いですけれども、こういったものは入れていただきたい。 ○笹月座長  そうですね、ありがとうございます。  その次の、凍結せずに利用する場合、これはいかがでしょうか。凍結せずに置いてお いてどれくらいまでインビトロで大丈夫なものなのですか、この未受精卵、非受精卵と いうのは。 ○星委員   一応、24時間といわれています。 ○笹月座長   そうすると、その非受精卵であることがわかって、それからというのは、あまり時間 的な余裕がもうないということですね。 ○星委員   そうですね。 ○笹月座長   あまり現実的ではないですね。  それにしても、どうしてもそれを使うような場合があるとして、どのようにしておく かということですが、自発的な提供の申し出がある場合に限って認める。それこそ、こ こでいう自発的な申し出というのは、どういう場合にあり得るのか。これも何か診療室 にポスターか何かが張ってあって、もう非受精のものは使っていただいて結構ですよと いうのか。この辺のところは現実的には現場ではどんなものでしょうか。吉村委員、何 かございますか。 ○吉村委員   いやこれは自発的はなかなか難しいと思いますね。未受精だったから、これは体内に もどしても赤ちゃんにはなり得ないので、研究に使わせていただきたいというような言 い方でしかないと思います。それをポスターで示すということは、結構至難のわざだと 思いますから。 ○後藤委員   例えば、患者さんから非受精になった原因を確かめてほしいというような、そういう ことはあり得ると……。 ○吉村委員  そうですね、そういうことはあるかもしれませんね。 ○笹月座長   そうすると、これは、みずからの意思というか、主治医なりから説明を受けて同意す ればよろしいかと。いわゆるほんとうに自発的なボランティアではなくて、主治医から、 先ほど吉村委員がおっしゃったように、もう非受精ですので、赤ちゃんをつくるという ことには使えません、だから研究に使わせてくださいという、あるいは非受精の理由を 研究したいのでというようなことで……。 ○星委員   顕微授精をやるほどの患者さんは、もうとにかく妊娠を望んでいますので、向こうか ら自発的に、余った卵をどうしてもいいですよということは絶対言わないと思うのです よね。ですから、今、吉村先生が言ったように、主治医のほうから説明をして、これは 今回は使えないということを言うことのほうが多いと思いますから、それを、実際の治 療にもう使えない卵ですので研究に使わせてくださいというような言い方のほうが多い ですよね。それでいいと思うのですけれども。 ○笹月座長   いかがでしょうか。 ○石原委員   ですから、現実には非受精だった場合には、顕微授精できないんですかとかと言われ るわけですね、翌日になって。実際にICSIしてもあまりうまくいかないのですね。 それは我々随分やってきましたけれども。そういうとはだんだんやらなくなってくると 思いますので、そういう意味で、こういう卵を使わせていただく必要性というのは非常 に高いんじゃないかと思いますので、そのあたりの自発的云々のところについては、ち ょっと書き方をかなり微妙にニュアンスを変えていただいたほうがいいかもしれないと 思いました。 ○位田委員  自発的かどうかというのはなかなか難しいのですけれども、前提条件は、自発的に申 し出ができるような環境を整えるということだと思うのですね。ですから、まず、生殖 補助医療の研究を今やっています、それは単にポスターを張るという話だけではなくて、 産科婦人科学会なり研究者の方がいろいろなところで、非常に重要な研究なんですよと いうメッセージを社会に投げかけていただかないといけないのですね。それなしに自発 的なことはなかなか難しいからと言われても、社会の側は受け入れられない。  それから同時に、やはりお医者さんのほうから、これは受精していないから研究に使 わせてくださいといったときに、その患者さんのほうがそれを断れるだけの地位にある かどうかということも問題になるかと思うのですね。そういう意味で自発的という言葉 が書いてあるので、非受精だから依頼をして研究してもいいでしょうというだけでは、 おそらく納得はできないのだろうと思いますが、そこをどうするかだと思います。それ がないと、結局は、女性の保護というのがないがしろにされる気がしますけれども。 ○笹月座長   わかりました。それは説明の仕方、それからインフォームド・コンセントのとり方、 それからそのもっと前から言えば、先ほど申しましたように広報活動、学会が主体にな るのか、どこが主体になるのか、日ごろの広報活動も十分でなければいけないだろうと いうご指摘だと思いますが。 ○木下委員   確かに、お話はわかるのですが、自発的ということで、ほんとうに皆様が納得される ような形になるかというと、難しい問題があると思います。我々が積極的に働きかけた 上で納得していただいた後でやった場合と、自発的な場合とで何が違うかというと、や はり我々が説明をして正確な情報も入れた方が、理解もすると思います。こういった研 究の内容は生命の萌芽としての受精卵ではないわけですし、しかも、生殖補助医療をや っている人たちにとって資するような研究に準ずるものになると思いますので、必ずし も自発的ということばかりを強調しない方が、スムーズにいくのではないでしょうか。 ○位田委員   研究の重要性はよく理解できますけれども、しかし、女性の保護という観点からどこ まで譲るかという話なので、お医者さんと患者さんという関係は、もともと強者と弱者 の関係ですから、確かに説明をしないとわからないのですけれども、自発的に申し出が あったとしても、それはそのときに説明はしてもらうわけですよね。ですから、一番最 初にどちらが言い出すかという話がここの一番重要な点だと思うのですよ。 ○木下委員   自発的ということは、あらかじめかなりの知識を持った上でないと、難しいのではな いかと思いますが……。 ○位田委員   それは患者さんがという意味ですか。 ○木下委員   そうです。 ○位田委員   いや、それは必ずしもそうじゃないんじゃないでしょうか。だから、私は、あらかじ めそういう広報活動とかポスターとかいった形で周知をさせておいて、その上で、非受 精卵が出てくることがありますと、要するに、不特定多数に言っておいて、特定のAさ んが、じゃあ私という話になるのだろうと思うのですね。 ○木下委員   そういう考えもわかるのですが、こういう自発的にやるということと女性保護という ことと結びつけるというのが、私には理解しがたいのです。つまり、この研究が女性の 保護とどうつながるかということから考えますと、一般的な話とはちょっと違うのでは ないかという気がします。 ○小幡委員   なかなか法律家としては、位田先生のおっしゃることはよくわかるのですが、ただ、 確かにほかの皆さんがおっしゃるように、自発的というところがほんとうにどちらが言 い出すかということを、厳しく要求して、必ず、つまり女性の側、患者の側のほうから 言い出さなければ絶対できないというと、おそらく実際上は難しいということにならざ るを得ないと思うのですね。ですから、位田先生のおっしゃるのは、侵襲があって受精 卵が出ているわけですから、お医者さんとの関係で、本人が実は嫌でも結局研究のため だと言われたら同意せざるを得ないような状態に置かれやすいというところが一番問題 なのだということなので、そうすると、最終的にはインフォームド・コンセントが通常 考えられたインフォームド・コンセントで大丈夫かという、そこのとり方の問題になる ように思います。ほんとうに全くきっかけもなく自発的に言い出すといっても、多分無 理なのだろうと思うのですね。ですから、そこのあたりは多少誘因というか、説明とい うか、何かはせざるを得ない上で、自由意思で考えていただくというところで、あまり に厳しく、確かに自発といってもおそらくは無理だろうと、そこは理解しているのです が。 ○笹月座長   そうですね、いわゆる研究の場合にも必ず相手が自発的に言うということはあり得な いわけですよね。こちらが研究の目的なり意義を説明して、そして相手に依頼して、相 手がそれを理解して、納得して、提供していただくという形なので、私はこういう研究 をしていますと言っただけで糖尿病の患者が私は血液出しますなんていうことはあり得 ないので、やはりその患者さんにこちらが最初に説明をして、それを納得して協力して いただくという構図だと思いますので、やはり言い出すのは当然私は主治医のほうで構 わないと思うのですけれども。そうじゃないとそれはあり得ないんじゃないですか。 ○位田委員   いや、おそらく、実際には主治医の先生と話をしている間に、こういう研究もあるん だよという話になるんだろうと思うので、そのときには、じゃあ使ってくださいとか、 私の卵がなぜ非受精だったのかというのを調べてくださいという話にはなるんだろうと 思うのです。だけど、最初から研究をするから提供をしてくれと言ってしまうと、やは り女性の患者さんの立場としては弱い立場にありますから、そこはある意味ではバラン スの問題だと思いますけれども。 ○笹月座長   それは説明の仕方、あるいは第三者が説明するのか、そしてインフォームド・コンセ ントがどんなものかという、インフォームド・コンセントのとり方、説明の仕方という ところでまた議論を改めてしたいと思います。 ○長野安全対策官   済みません、事務局から確認させていただきたいのですが、ここで場合分けで、凍結 されたもの、それから凍結せずに利用するものとあったときに、インフォームド・コン セントを受けるタイミングと施術をされるタイミングとの関係を考えますと、凍結され たものを利用する場合には、施術といいますか、卵子の採取があって、受精をさせてみ て実際に非受精卵でした、その後凍結します。凍結して、その後改めてインフォームド・ コンセントをとるということが可能になる。それに比べまして、今、この自発的という ところでご議論になったわけですが、凍結せずに利用する場合には、そもそも凍結せず に研究に利用しようとする場合には、非受精卵とわかったところからもう1日程度しか ないわけですから、そこから考えると、通常は、インフォームド・コンセントはその前 に、例えば治療方針のお話をする場合ですとか、どのタイミングになるかわからないの ですが、事前にインフォームド・コンセントをとる必要があるのではないかということ を考えますと、どうなるかということもあるかと思うのですけれども、またそのインフ ォームド・コンセントのタイミングということもあるかもしれません。 ○笹月座長   それは先ほどの精子のときと同じ問題で、例えば、採取するときに、一部は研究に使 いますよということは、精子の場合には必要なかろうと、それはふんだんにあるのでと いうことも理由だったと思いますが、この場合には、非受精卵が出たときには、それを 研究に使ってよろしいかというのを前もってとっておくという、そういうことですか。 ○長野安全対策官   現実的にはそうしないと、非受精卵とわかってから凍結せずに使うということですの で、そのようになるのではないかというふうに考えるのですが。 ○笹月座長   時間的な余裕から見てね。そうすると、受精卵を研究に使ってよろしいかというイン フォームド・コンセントをとるのを、医療の始まるときにとるインフォームド・コンセ ントと同時にとっておかないと間に合わないんじゃないかという不安ですが、そういう ことに関してはいかがですか。あるいは、これは凍結した場合でも、医療を始める前に、 やっていいのなら、凍結とか非凍結とか言わないで同じことになろうかと思うのですけ れども、それは現場ではいかがですか。 ○吉村委員   現実的には、これは文科省のほうはクローン胚のほうから同じようなものを持ってき ておられるのですね。例えば、非受精卵を凍結するというようなことはまずないのです。 しかし、そういった場合があるといけない。だから、限りなく可能性は少ないのだけれ ども、すべてのものを使うようにして、できる限り患者さんにご迷惑がかからない状況 下の中でということで、このiは出てきたのですね。iiに関しては、これもそのときに 問題になったのですけれども、私はそのときにも言わなかったのですが、クローン胚で も非受精卵の凍結しないというものは、ほとんどこれは利用価値がないのです。しかし、 そういったものも使えたほうがいいだろう。未知数が多いので。ただ、生殖補助医療の 研究に関しては、生殖補助医療をやるという立場からしますと、あなたは非受精卵が出 ますよと、そのときに研究に使わせてくれますかということをあらかじめ言っておくと 言うことは、これはまず不可能、医療を行う上においては。患者さんに対して失礼に当 たります。と僕は思うのですね。となりますと、凍結せずに利用する場合はどうなるか と申しますと、具体的に言いますと、1日目、受精をしました。受精して1日目に判定 しましたら、通常では受精していませんでした、精子をかけただけでは。では次の日、 ではICSIをやりますねと言うと、患者さんはみんなやってくださいと言いますから、 ICSIをします。それでも非受精だ、やっぱりだめでしたねと。じゃ、これをなぜ受 精しなかったかどうか研究に使わせてもらえますかと、初めてそこで患者さんとお話が できるというのが、実際の臨床だと思うのですね。ですから、それを初めから、あなた、 これは受精しない場合があります、こういった場合もあります、そして受精しなかった から、そのときに研究に使わせてくださいということは、我々臨床医としては、患者さ んに対しては、とてもじゃないけど、やはり言えないですね。五、六回やられて、そう いったケースが非常に多いから、あなた、じゃ、次回のときにはそうしてくれますかと いうことは言えるかもしれないけれども。だから、そこら辺は、一般の臨床の難しさだ と思うのですね。 ○笹月座長   石原先生、安達先生のほうからは。 ○石原委員   吉村先生のおっしゃっていただいたことと全く同じだと思います。実際の現場でこの お話を持ち出せるのは、非受精であったということが判明した時点にならざるを得ない と思いますので、凍結したものと凍結せずに利用する場合というのは、その後で凍結す るかしないかが決まるのであって、この時点では、このiとiiに分けられないのだと思 うのですね。 ○笹月座長   厳密に言えば、非受精卵が出た場合には、それは凍結保存しますよというのだって、 ほんとうはインフォームド・コンセントか何かで確認しておかなきゃいけないわけでし ょうから、前もってのインフォームド・コンセントがなしには無理でしょう。だから、 非受精卵が出たときに凍結しますがいいですかとか、研究に使わせてくださいとか、そ ういうことが出てくるのでしょうね。  時間が随分とられて、予定が進みませんでしたけれども、時間がまいりましたので、 一応、この非受精卵というところまでにして、研究に使うのは結構だろうと。そうする と、それをインフォームド・コンセントのとり方、説明の仕方、だれがどのように説明 するのかというのは、そのインフォームド・コンセントのところでもう一度議論しまし ょうということで、原則として研究には利用していただくということでよろしいですね。  いろいろ議論がありまして、予定が進みませんでしたが、きょうはもう時間になりま したので、ここまでにさせていただきたいと思いますが、事務局から何かございますか。 ○長野安全対策官   それでは、次回でございますが、1月19日、金曜日になりますでしょうか、2時から 4時で予定してございます。会場などが決定しましたら、またご案内いたします。 ○笹月座長   それでは、またきょうの議論のところはまとめをつくっていただいて、委員の方には お送りいただくということで、次回は未受精卵のところからスタートしたいと思います ので、よろしくお願いいたします。  それでは、2つの合同の委員会、これで終わりにさせていただきます。きょうはどう もありがとうございました。 −終了−  事務局:文部科学省研究振興局ライフサイエンス課生命倫理・安全対策室       電話:03−6734−4108(直通)      厚生労働省雇用均等・児童家庭局母子保健課       電話:03−5253−1111(内線7938)