06/12/01 第17回労働政策審議会労働条件分科会最低賃金部会議事録 第17回労働政策審議会労働条件分科会最低賃金部会議事録 1 日 時  平成18年12月1日(金)9:35〜10:20 2 場 所  厚生労働省専用第21会議室 3 出席者   【委員】 公益委員   今野部会長、石岡委員、武石委員、中窪委員 労働者側委員  勝尾委員、加藤委員、高石委員、高橋委員、中野委員、 横山委員        使用者側委員  池田委員、川本委員、杉山委員、原川委員   【事務局】厚生労働省   青木労働基準局長、青木勤労者生活部長、                熊谷総務課長、前田勤労者生活課長                藤井主任中央賃金指導官、吉田副主任中央賃金指導官、                吉田勤労者生活課長補佐 4 議事次第  (1)今後の最低賃金制度の在り方について  (2)その他 5 議事内容 ○今野部会長  ただ今から第17回最低賃金部会を開催いたします。本日は、勝委員、田島委員、竹口 委員、前田委員が御欠席です。  それでは、早速今日の議題に移りたいと思います。前回の部会では、公益委員試案再 修正案について労使各側から御意見をいただいたところです。その意見を踏まえて改め て公益委員としての考え方を整理してまいりました。それがお手元にある資料1です。 今日は私の方からその資料1について説明をさせていただいて、改めて御意見をいただ くことにしたいと思います。前回部会でいただいた御意見によりますと、これまで議論 してきた公益委員試案では、部会としての合意は非常に困難な状況になっております。 とりわけ職種別設定賃金については、公益委員としては、今後の労働市場や賃金決定の 在り方も考慮して必要と考えたわけですが、残念ながら労使の意見の一致には至らなか ったと考えております。しかしながら、これまでの部会での議論を踏まえ、何とか部会 としての合意を得たいと考え、実態も十分踏まえつつ、改めて公益委員で議論をいたし まして、最低賃金制度の在り方について考え方をとりまとめました。それが本日配付し ています資料1ということです。この案は、最低賃金制度が今後とも賃金の低廉な労働 者の労働条件の下支えとして十全に機能するよう、地域別最低賃金について必要な見直 しを行い、安全網としての役割は地域別最低賃金が果たすということを前提に、産業別 最低賃金等については、関係労使のイニシアティブにより設定するという観点から、在 り方を見直すということを柱にしております。そこで、資料1を見ながら話を聞いてい ただきたいと思います。  まず1番目の「見直しの趣旨」ですが、ここは今、私が申し上げました基本的な考え 方を書いております。その次の「2基本的考え方」の(1)は、最低賃金制度の第一義 的な役割は、すべての労働者について賃金の最低限を保障する安全網であり、その役割 は地域別最低賃金が果たすべきことから、法律上すべての地域において地域別最低賃金 を決定しなければならないとするものです。  次の(2)は、最低賃金の安全網としての役割は地域別最低賃金が果たすということ を前提に、産業別最低賃金等については、企業内における賃金水準を設定する際の労使 の取組みを補完し、公正な賃金決定に資する面があることを評価しつつ、安全網とは別 の役割を果たすものとして、民事的なルールに改めるものであると述べている部分です。  次の(3)は、労働政策と社会保障政策との連携がより求められているところであり、 最低賃金制度についても、社会保障政策との整合性を考慮することが必要になっている という認識の下、具体的には、地域別最低賃金については様々な要素を総合的に勘案し て、地方最低賃金審議会で審議し、決定されているところですが、その際に考慮すべき 要素の1つとして生計費があり、その生計費のうちの1つの要素として生活保護がある ということを明確にするという趣旨の部分です。  次の(4)は、最低賃金の安全網としての役割は地域別最低賃金に特化するというこ とですから、地域別最低賃金の決定に当たっては、地域の労働者の賃金実態を考慮する ということ、派遣労働者の増加に対応し、派遣労働者には派遣先の最低賃金が適用され ることとすること、パートタイム労働者の増加等就業形態の多様化に対応して、最低賃 金の表示単位を時間額に一本化すること、といった見直しを行うということを述べたも のです。  以上が基本的な考え方で、それに基づきまして、以下では具体的な内容について整理 がされております。  まず1頁目の一番下の、「3具体的内容」の「1地域別最低賃金の在り方について」 という所を見ていただきたいと思います。この部分については、基本的にはこれまでの 公益委員試案の内容と同様です。  まず(1)の「必要的設定」ですが、現行の最低賃金法においては、地域別最低賃金 も産業別最低賃金も、厚生労働大臣又は都道府県労働局長が必要と認めたときに決定を することができるということとされていますが、最低賃金制度の第一義的な役割は、す べての労働者について賃金の最低限を保障する安全網であり、その役割は、地域別最低 賃金が果たすべきものであるということから、法律上行政機関に対してすべての地域に おいて地域別最低賃金を決定することを義務付けることとするというものです。  次に、「(2)決定基準の見直し」の最初のポツの所です。現行の最低賃金法におい ては、「最低賃金は、労働者の生計費、類似の労働者の賃金及び通常の事業の賃金支払 能力を考慮して定められなければばならない」と規定され、決定基準として3つの要素 が挙げられています。安全網としての役割は、地域別最低賃金に特化することを前提に、 地域別最低賃金の決定基準としては、これらの3要素は、いずれも当該地域におけるも のを考慮すべきことであることから、3つの要素すべてが地域におけるものであること を明確にする部分です。なお、現行の最低賃金法では、地域別最低賃金だけでなく、産 業別最低賃金や職業別最低賃金も前提として決定基準が規定されております。したがっ て、産業別最低賃金であれば、同じ産業の労働者、職業別最低賃金であれば、同じ職業 の労働者、地域別最低賃金であれば、同じ地域の労働者という意味で「類似の労働者の 賃金」と表現されていますが、安全網としての役割は、地域別最低賃金に特化すること を前提とすると、地域別最低賃金の決定基準については、「類似の労働者」とあえて表 現する必要はなく、「地域における労働者」という表現で足りると考えております。  次に、2つ目のポツの部分です。地域別最低賃金については、「地域における労働者 の生計費及び賃金並びに通常の事業の賃金支払能力」を考慮して定めるものですが、地 方最低賃金審議会においてこれらの様々な要素を総合的に勘案するに当たって、その様 々な要素の1つとして生計費があり、さらに、生計費の1つの要素として生活保護があ るということを明確にするという趣旨です。なお、地域別最低賃金は、地方最低賃金審 議会で様々な要素を総合的に勘案して審議され、決定されるものであり、例えば生活保 護基準から機械的に最低賃金が決定されるものではありませんが、地方最低賃金審議会 の審議において勘案する様々な要素の1つとして、生計費があり、さらに生計費の1つ の要素として生活保護があるということです。  次に、その下の「(3)減額措置の導入」について説明をさせていただきます。現行 の最低賃金法においては、精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い者、試用期 間中の者等については、個別の許可により最低賃金の適用を除外することとしています が、これは、これらの労働者に最低賃金を適用することとなるとかえって雇用機会を奪 うことにもなるということから、著しく労働能力の低い者等については、最低賃金の適 用を除外できるとしているものです。しかしながら、実際の運用においては、適用除外 の許可を受けたからといって、極端に妥当性を欠く低賃金になることがないよう、例え ば精神又は身体の障害により著しく労働能力が低い者については、支払う金額が、最低 賃金額から労働能率が低い割合に対応する金額を減じた額を下回ってはならないという 運用、すなわち減額措置という運用が行われているところです。ただし、法律上は適用 除外と規定されており、適用除外を受ければ、極端に妥当性を欠く低賃金とすることが できるよう誤解を招くおそれがあることから、今般の見直しにおいては、実際の運用に 合わせて、法律上も減額措置に改めるものということです。  次の「(4)罰則の強化等」についての1つ目のポツの所ですが、現行制度では、最 低賃金法第5条違反に係る罰金額は2万円以下であり、労働基準法第24条違反に係る罰 金額30万円以下に比べて低くなっております。これは最低賃金法制定当時は、最低賃金 法第5条違反に係る罰金額の上限は1万円以下、労働基準法第24条違反に係る罰金額の 上限は5千円以下でしたが、その後、労働基準法については罰金額の見直しが行われてき たものの、最低賃金法については法律改正がなく、見直しが行われなかったことから、 このような状況になっているものです。このように最低賃金法の罰則については、昭和 34年の法律制定以来、罰金額の見直しが行われておりませんが、この間の物価上昇に応 じた調整が必要になってきております。また、最低賃金を支払わないという行為は、契 約した賃金を支払わないという債務不履行である労働基準法第24条違反に比べても悪質 であるのに、最低賃金法第5条違反に係る罰金額が、労働基準法第24条違反に係る罰金 額より低いという現状においては、最低賃金法第5条違反の罰則が機能する場面が実質 的にはないという状態になっています。したがって、地域別最低賃金違反に係る罰金額 は、少なくとも、労働基準法第24条違反に係る罰金額よりも高くすることが必要と考え ております。  その次の2つ目のポツを見てください。労働基準法、労働安全衛生法など、労働基準 関係法令においては、法違反について労働者が監督機関に申告できること及び申告に伴 う不利益取扱いを禁止する旨の規定が置かれていますが、現行の最低賃金法には、この ような規定がないのです。最低賃金法も、労働基準法から派生した法律であるというこ とから、今般の見直しにおいては、他の法律と同様、監督機関に対する申告、申告に伴 う不利益取扱いの禁止及び不利益取扱いの禁止に違反した場合の罰則というものを整備 するというものです。  最後の3つ目のポツを見てください。ここは最低賃金法第19条に規定する周知義務違 反、同法第35条に規定する報告の懈怠や虚偽の報告、同法第38条第1項に規定する労働 基準監督官の臨検拒否等に係る罰金額は、最低賃金法制定以来、5千円以下とされていま すが、これについても、物価上昇や労働基準法等の同様の規定との均衡を考慮して見直 すというものです。  その次、「2産業別最低賃金等の在り方について」です。そのうちの「(1)産業別 最低賃金」という所を見てください。従来の公益委員試案は、産業別最低賃金を廃止し、 別の法律で職種別設定賃金を創設することとしておりましたが、職種別設定賃金につい ては、現状からいって部会としての合意が難しい状況にあります。一方、産業別最低賃 金については、賃金水準を設定する際の労使の取組みを補完し、公正な賃金決定に資す るという面で一定の評価をすることはできますので、そういった実態を踏まえつつ、そ の在り方を見直すというものです。なお、産業別最低賃金という枠組みは維持するとい うことですから、従来の公益委員試案とは異なり、これについては最低賃金法の中で措 置するということを考えております。  「(1)産業別最低賃金」の1つ目のポツを見てください。地域別最低賃金について は、安全網として法律上行政機関に設定を義務付ける一方、産業別最低賃金については、 関係労使のイニシアティブにより設定されることを法律上も明確にするものです。なお、 現行の最低賃金法第16条の4に、最低賃金の決定に関する関係労使の申出について規定 されており、これを参考にして書いてあります。また、現行の最低賃金法においては、 一定の事業、職業又は地域について最低賃金の決定をすることができると規定されてお り、このうちの「地域」については、地域別最低賃金の決定を義務付けるというふうに しますので、法律上は「一定の事業又は職業について」というふうに規定するというこ とです。  その次の2つ目のポツです。産業別最低賃金については、関係労使からの申出を受け て、必要であると認められるときに最低賃金審議会の意見を聴いて決定することができ るとするものです。  その次の3つ目のポツです。産業別最低賃金については、関係労使のイニシアティブ により設定されるものであり、安全網とは別の役割を果たすものであるということから、 最低賃金法の罰則の適用がない民事的ルールに改めるものです。  最後の4つ目のポツです。産業別最低賃金の運用については、これまでの中央最低賃 金審議会の答申や全員協議会報告において、その詳細が決定されているところであり、 今般の見直しにおいても、これらを踏襲するということを明らかにした部分です。  次の「(2)労働協約拡張方式」についてです。最低賃金の安全網としての役割は、 地域別最低賃金に特化し、地域別最低賃金を全国に設定することを義務付けるとともに、 関係労使の申出により産業別最低賃金を設定することができることを前提とすることか ら、関係労使のイニシアティブによる産業別最低賃金と同趣旨の制度である労働協約拡 張方式は廃止するとしているところです。  最後に、「3その他」です。従来の公益委員試案は、最低賃金法が地域別最低賃金に 特化することを前提としていましたので、ここに記述している内容は、地域別最低賃金 の見直しの中に含んでいた部分です。しかし、産業別最低賃金が最低賃金法の中に残る ことを前提にいたしますと、地域別最低賃金と産業別最低賃金、両制度に共通する事項 と考えられることから、「3その他」という部分を記述しています。  まず、1つ目のポツは、派遣労働者に関する最低賃金の適用についてです。派遣労働 者については、賃金の支払責任が派遣元にあることから、労働者派遣法の施行時から、 派遣元の事業所に適用する最低賃金を適用しているところです。しかしながら、このよ うな取扱いについては、派遣先の事業所がある地域と派遣元の事業所がある地域が異な る場合や、派遣先の事業所において産業別最低賃金が適用され、派遣元の事業所におい て産業別最低賃金が適用されていない場合に、派遣労働者は、派遣先の他の労働者と同 じ場所で同じ使用者の指揮命令を受けて働いているにもかかわらず、派遣先の事業所の 地域別最低賃金や産業別最低賃金が適用されないといった問題があります。この点につ いては、平成14年12月26日の労働政策審議会の建議においても今後検討すべきというふ うにされているところです。派遣労働者は、現に指揮命令を受けて業務に従事している のが派遣先であり、賃金の決定に際しては、どこでどういう仕事をしているかを重視す べきであるということから、最低賃金の適用については、派遣先の最低賃金を適用する ことが適当であると考え、今回このような取扱いに変更しております。  最後のポツの部分、これは最低賃金の表示単位についての部分です。現行の最低賃金 法においては、最低賃金額は、時間額、日額、週額又は月額によって定められるとされ ておりますが、運用上は地域別最低賃金については、賃金の支払形態、所定労働時間な どの異なる労働者についての最低賃金適用上の公平の観点から、あるいは、就業形態の 多様化への対応の観点から、さらにはわかりやすさの観点から、平成14年度から時間額 表示に一本化され、産業別最低賃金についても大部分が時間額単独方式に移行している ところです。したがって、今般の見直しに合わせて、法律上も時間額表示に一本化する というものです。なお、現行の最低賃金法においては、所定労働時間の特に短い者につ いて最低賃金の適用を除外することができる旨が規定されていますが、これは最低賃金 額を、日額、週額、月額で定めた場合に初めて意味があるものであり、最低賃金額が時 間額に一本化された場合には意味がないということから、法律上表示単位を時間額に一 本化することに伴い、所定労働時間の特に短い者についての適用除外を削除するという ものです。  以上が、少し長くなりましたが、資料1の説明です。あと、もう1つ、資料2という のがお手元にあると思います。これは、前々回の部会で、最低賃金と生活保護との関係 についての参考データを提出し、その際、使用者側委員から、生活保護についての一番 低い地域のデータもあっていいのではないかという御意見があったので、3枚目に、生 活保護について県内の最下級地でとった場合のデータを追加したものです。  以上が私からの説明です。前回の意見を踏まえて、公益委員が検討し、改めて資料1 のような案を提出いたしました。それについての内容を説明させていただきました。内 容についての質問、あるいは、御意見でも結構ですが、ございますか。まず内容につい て何かございますでしょうか。 ○加藤委員  公益委員の皆様には、前回の部会以降、労使の意見一致に向けて御尽力をいただいて いることに、御礼申し上げたいと思います。今、資料1についての御説明をいただいた わけですが、これまでの部会における議論というのは、部会長から御説明のあったとお り、産業別最低賃金を廃止して、これに代わって別の法的根拠を設けて職種別設定賃金 を設定するという枠組みを前提にしたものであったと思います。これに対して、本日提 案された最低賃金制度の見直し案は、産業別最低賃金を含めて、最低賃金法の下での制 度見直しが一応基本になっておりまして、これまでの公益委員試案の枠組みとは明らか に異なるものだと、一応解釈されます。したがって、これまで既に部会の質疑で確認さ れてきた内容等もありますが、これまでの議論等の枠組みの変更が前提ですので、改め て確認の意味で3点ほど御質問させていただきたいと思います。  まず1点目は、労働協約拡張適用方式の問題です。産業別最低賃金は、一応民事的な ルールに改めて、最低賃金法の中に残るという内容になっていますが、一応そうした中 で、ただ今の御説明では、関係労使のイニシアティブによる産業別最低賃金があるとい うことと、それと同趣旨の制度であるということで、11条、つまり、労働協約拡張適用 方式を定めた最低賃金法の11条については、一応廃止するということを提案されている わけですが、その廃止をする理由をもう少し補足的に説明していただけるとありがたい。  2点目は、以前にも、最初の方の部会だったと思いますが、労働者側から、質問をし て、一応見解はいただいておりますが、今回の提案が最低賃金法の見直しという新たな 提案なので改めてお伺いします。船員法に基づく最低賃金は、最低賃金法の中では、40 条から42条に定められておりますが、これは今回の最低賃金法見直しの対象にしないと いうことを確認させてもらってよろしいかどうかということ、それが2点目です。  3点目は、現行の最低賃金法の下で既に設定されている産業別最低賃金がおよそ240 件余り存在しているわけですが、これについては、そのまま改正最低賃金法の中で現存 する最低賃金として引き継がれるものと考えてよいのかどうか。その点の御確認をお願 いしたい。 ○今野部会長  それでは今3点ありましたので、順番は逆ですが、後ろの方から回答いたします。現 行の産業別最低賃金が法改正があっても引き継がれるかどうか。これについては、現在 の産業別最低賃金について、法改正後も引き継がれるよう、すなわち、法改正後改めて 新設するということではなく、既に設定されているものを改正していくという扱いにす るよう措置をしたいと考えております。  次に船員の最低賃金についてです。船員については所管が国土交通省でして、船員に ついては労働関係が特殊であるということから、国土交通省としては今回の見直しの対 象としては考えていないというふうに聞いております。  一番最初の労働協約拡張方式の廃止の理由について説明の補足をします。現行の最低 賃金法は多元的な最低賃金の設定方式を前提としているわけです。地域別最低賃金や産 業別最低賃金は、行政機関が必要と認めたときに決定することはできるとしつつ、それ とは別に、労働協約が一定程度適用されている場合の関係労使の申出による労働協約拡 張方式が設けられているという、そんな仕掛けになっているわけです。今回の見直しに おいては、法律上地域別最低賃金はすべての地域で決定することを義務付けるとともに、 産業別最低賃金は、関係労使の申出を契機に、必要があると認められたときに決定する ことができるということに改めておりますので、それを前提とするならば、関係労使の イニシアティブにより設定されるという意味で、同趣旨となる産業別最低賃金と労働協 約拡張方式については、より現状になじんでいる産業別最低賃金に特化することとして、 労働協約拡張方式は廃止するものとするというふうに考えているところです。ちょっと 早くしゃべってしまって申し訳ないのですが、これでよろしいですか。  それでは、今労働者側から質問を受けましたので、もし使用者側からあれば。 ○池田委員  今朝の朝日新聞に、「最低賃金引き上げへ、生活保護水準を考慮」ということで、今 お話いただいたことがもう新聞に出てまして、これは厚生労働省の方針として最低賃金 を引き上げるということがボーンと出たわけですけれども、これでは何のための審議会 なのか、この辺は御説明していただかないと。公益委員が今までの意見を踏まえて案を 出したのに、もう厚生労働省は引き上げる方針を固めたということで記事が出ますと、 何かこれ、審議をやる意味があるのかなと。そういう方針を我々が妥協するのかどうか ということです。あくまで生活保護のために最低賃金を引き上げるというような方針が 出ているわけですから、この辺はどういう整合性があるのか、これはちょっと御説明し ていただかないと。審議会で何か言っても、国がそういう方針でやるなら審議会の意味 がない。最低賃金というのは我々が審議の中で、企業の生産性を基にいろいろとデータ をとって決めているんだと思うのですが、一方、生活保護というのは国の方でお決めに なっている。行政の方で。やはりこれは、国民の生活の問題、人権の問題を含めて決め ると。国の決めたものと企業が決めたものを比べて、国の決めた生活保護の方が高いの だから、こちらも引き上げろとか、そういう方針を先に出されること自体、おかしいの であって、さらにその上、罰則を強化するぞといったら、これはまた何をかいわんやで あって、企業は生活保護のために上げろ、上げない所は、今度最低賃金法を改正して、 罰則強化するんだぞといったら、何のために企業が一生懸命高く上げようという努力を しているのか。何かおかしいですよね。何か国が決めたものを上げなかったら、罰則強 化するぞというのは。根本的な今回の審議会の内容は、そのたびに何か理由付けをする みたいな見解を要する。ただ、そういうことをまずはっきりとしていただきたいと、個 人的にはそう思います。  同時に、今お話しましたように、生活保護というのは、国が払うものと、それから、 最低賃金は、我々が払うものであって、やはり払う側が違うんだということ。それから、 都道府県別に見れば、差があり、Dランクのように非常に低い所もあるわけです。我々 は国の税金を払っているわけですから、極端な話、低い地域に行ってよということにな れば、それですぐ生活保護、できることはあるだろうし、やはり基本的に生活保護を受 けている人に対して、国の方は、仕事に就きなさいという大方針があるはずですから、 なるべく、企業は受け入れてくださいと、それが努力目標であって、常に高い所と低い 所があるし、それを一方的にそちらに近づけろという大きな方針を出せるのは、どうな のかなという感じがいたします。 ○今野部会長  私、申し訳ないですが、今日、公益委員として方針を変えたものですから、御説明す るのに正確にしなければいけないと思って、いろいろ勉強をしていたものですから、新 聞を読む時間がなくて読んでおりません。今の御質問は、事務局で答えていただくのか な。それしかないですよね。 ○前田勤労者生活課長  朝日新聞に、厚生労働省の方針として、「最低賃金引き上げへ」というような見出し で、本日記事が出ているわけですが、これは誤った報道でありまして、厚生労働省がそ ういう方針を決めたということはございません。ここの記事が何を基に書かれたかとい うことについては我々は関知していないという状況です。 ○池田委員  全国の経営者がこれを見たらそうは思いませんよね。その方針で引上げをするんだと。 それで、後から、審議会において、こういうのは皆さんどうですかと検討したら、何か おかしなことになってしまうのではないかと。 ○今野部会長  少なくとも審議会では決めていない。事務方は決めていないと言っている。そのよう に新聞に出てしまうと影響が出るのですが、経営者の方たちには、そういうふうには決 めてないというふうに説明していただく以外にはないのですかね。いずれにしても、別 に決めた訳ではありませんので。 ○原川委員  生活保護の問題は、今、池田委員がおっしゃったとおり、私もそれに全面的に同意見 です。私から申し上げたいのは、ずっと前、この部会が始まるときにも提案したと思い ますけれども、下方硬直性の問題です。これまで最低賃金制度においては、民間の賃金 動向など、一般の経済実態に照らして最低賃金額の改定を行ってきたということですけ れども、最低賃金の改定という場合に、その改定には、当然その引上げ、据え置きとい うのと、引下げという概念が、制度にはそういう引下げという概念が含まれるというふ うに我々は考えるわけですけれども、それについて、この正式な場では明確にされてき ていないということがあります。前の試案には、「地域別最低賃金の在り方について」 の一番最後で、「目安制度の今後の取扱い」というようなところで検討するというふう になっていたと思いますが、今回の案からはこれが落ちているということです。この2 年やってきまして、この最低賃金部会というのは最低賃金制度の在り方にも関係するも のですので、是非、我々としては、制度として引下げもあり得るということを明確にし ていただきたいと思うのです。この案を見る限り、そういうことを読める所はない。こ の扱いについて御質問すると同時に、是非この部会において明確にしていただきたいと 要望いたします。 ○今野部会長  今、原川委員がおっしゃった、最低賃金の引下げが可能かどうかについては、従来の 公益委員試案では「目安制度の今後の取扱い」という項目の中に含まれていると、そう いう説明を我々はしてきたのです。今回の案では、産業別最低賃金の運用が、従来の運 用を踏襲することとしておりますし、地域別最低賃金についての運用の詳細についても、 あえて引き続き検討する旨という記述は必要ないと考え、運用の詳細については今回の 案からは削除しました。その関係で、先ほど言いました従来の公益委員試案の中にあっ た「目安制度の今後の取扱い」という項目は落ちているということです。いずれにして も、今御質問されたことについては、我々としては次回までの宿題にさせていただけれ ばと考えます。他にございますでしょうか。今回また新しい案を出したみたいで、改め てまた検討しなければいけないのですが。よろしいですか。それでは御質問を受けまし たので、もし御意見があれば。 ○加藤委員  意見ではないのですが、今回初めて新しいお考えをお示しいただいたので、これをち ょっと持ち帰って検討させていただきたいと思います。 ○川本委員  前回の部会におきまして、私どもは、使用者側として再修正案は賛同できない旨を表 明いたしまして、今後労使の一致に向けてさらに実態を踏まえて御再考いただくよう要 望させていただいたところです。その要望に応えていただき、本日「最低賃金制度の見 直しについて」と題する新たな提案がなされたものと、こう理解しておりますとともに、 公益委員の皆様方の御尽力に、まずは感謝を申し上げる次第です。今回の新たな提案の 内容については、部会長より先ほど御説明をいろいろしていただきましたけれども、私 どもとしては、今後、地方経営者協会あるいは業種団体などの意見を伺って、その意見 の集約を行った上で、次回以降の部会においてその検討結果を表明してまいりたいと思 っております。したがいまして、本日は新提案がありましたことを深く受け止めて、持 ち帰り、検討させていただきたいと考えております。 ○今野部会長  それでは、労使各側には、本日公益委員からお示しした案を持ち帰って検討していた だき、次回の部会で労使の御意見をお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。 私としては、年内にとりまとめられるようにできる限り頑張りたいと思っておりますの で、労使ともに特段の御協力をお願いしたいと思います。次回の日程については、改め て調整をした上で事務局から連絡をしていただきますので、よろしくお願いします。労 使とも、御検討をされる時間の問題がありますので、そんなことも踏まえて、必要であ れば調整をするということにさせていただきます。それでは本日の会議はこれで終了い たします。議事録の署名は、中野委員と池田委員にお願いをしたいと思います。それで は終わります。ありがとうございました。 【本件お問い合わせ先】    厚生労働省労働基準局勤労者生活部                        勤労者生活課最低賃金係    電話:03−5253−1111            (内線5532)