資 料 2 |
新医師確保総合対策
新医師確保総合対策(H18・8・31)のポイント |
【医師数に関する全体状況】
【近年の医師不足に関する指摘の背景(主なもの)】
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【 対 策 】
19年度概算要求への反映 ○医局に代わって、都道府県が中心となった医師派遣体制の構築 ○国レベルでの病院関係者からなる中央会議設置により都道府県の医師派遣などの取組をサポート ○小児救急電話相談事業(短縮ダイヤル「♯8000」)の普及と充実 ○小児科・産科をはじめ急性期の医療をチームで担う拠点病院づくり ○開業医の役割の明確化と評価 ○分娩時に医療事故に遭った患者に対する救済制度の検討
○医学部卒業生の地域定着 |
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新医師確保総合対策
平成18年8月31日 地域医療に関する関係省庁連絡会議 |
【緊急に取り組む対策】
- 都道府県による取組の一層の支援
- <小児科・産科をはじめ急性期の医療をチームで担う拠点病院づくり>
- 病院への小児科医・産科医の広く薄い配置を改善し、病院勤務医の勤務環境の改善、医療安全の確保を図るため、以下の手順により、集約化・重点化を一層推進する。
→都道府県での集約化・重点化の進捗状況のフォローアップ調査を実施(平成18年7月公表)
→「集約化・重点化計画策定の手順」を都道府県に対して提示(平成18年7月)
→平成18年末までに都道府県において集約化・重点化計画を立案するよう引き続きフォローアップを実施 - 集約化・重点化について、以下の取組により推進を支援する。
- *病棟の転換(他科への病棟転換や病棟の閉鎖を含む。)整備に対する補助金や融資による支援
- *集約化・重点化による病床削減に伴う医療機能転換に係る経過的な支援
- *都道府県の先駆的取組を推奨・紹介するモデル事業の実施
- *医師派遣を行った臨床研修病院等に対する支援
- *小児科・産科医療体制整備事業の推進
- <小児救急電話相談事業(♯8000)の一層の普及>
- 平成16年度より実施し、現在31都道府県で展開されている小児救急電話相談事業の更なる普及を図るため、
- 全ての都道府県で実施すること。
- 携帯電話においても短縮ダイヤル#8000が利用できるようにすること。
- 地域の実情に応じて深夜帯の電話相談体制を実施することを推進する。
- 看護師による相談に対し小児科医師が支援する体制をとっている場合
- 電話による健康相談を行っている民間事業者を活用する場合であっても、当該事業の対象となること。
*小児救急電話相談事業の周知を行うため、国民向けのポスターを作成する。 - <都道府県における地域医療対策協議会の活性化>
- 地域医療対策協議会を活用し、大学を含む地域内の医療機関や関係者が参加して、地域に必要な医師の確保の調整や、医師のキャリア形成を行うシステムを構築する。
都道府県のこのような取組を推進するため、
*大学や異なる開設者との調整を通じて地域医療の在り方を助言するアドバイザーの派遣
*国からのアドバイザー派遣とあいまった地方厚生局による実地指導等
都道府県の先駆的な取組に対する支援(再掲) を行う。 - 地域医療対策協議会を通じた都道府県の取組について、医師配置の状況等に関する調査分析、医師派遣等の需給調整システムの構築のための取組等についての支援を検討する。
- 都道府県の取組の好事例の収集・紹介、手順の明確化等技術的助言を行う。
- <地域医療提供体制の再編・ネットワーク化等>
- 地域医療の望ましい在り方を検討するに当たり、国として、都道府県が官と民の役割分担を含めた地域の医療提供体制の在り方を検討するためのガイドラインを整備する。また、公立病院の在り方や民間医療機関等との連携を念頭に置いた地域の公立病院等の再編・ネットワーク化についても、先進事例を踏まえつつ検討方向を示す。
- 上記とともに、小児救急医療や周産期医療など地域に必要な医療を確保する観点から、医療資源の集約化・重点化に資する措置について検討する。
- <都道府県マップによる進捗状況のフォロー>
- 医師確保に関連する各都道府県の施策の取組状況等についての一覧表示(マップ)について、充実に努めるとともに、継続して進捗状況のフォローを行い、厚生労働省ホームページ等で公表する。
- あわせて、都道府県による取組の好事例の継続的把握、紹介を行う。
- 都道府県のみでは対応困難な地域に対する緊急対策
- <医師派遣(紹介)・キャリア形成システムの再構築>
- 厚生労働省に地域医療支援中央会議(仮称)を設置する。 自治体病院(全国自治体病院協議会)、自治医科大学、大学病院(全国医学部長病院長会議)、国立病院機構、日本赤十字社、社会福祉法人恩賜財団済生会、日本医師会等の参画を得て中央会議を設け、都道府県からの要請に対応した緊急避難的医師派遣等を含め、従来は大学が中心となって担っていた医師派遣(紹介)・キャリア形成システムの構築の支援等を検討する。
- 医師のキャリア形成システムの再構築として、都道府県、上記中央会議に参画する主体、複数の公立病院の共同等による、地域医療経験に配慮した医師の研修プログラムに係る取組を推進する。
- <地域医療を担う医師の養成の推進>
- 「医学教育モデル・コア・カリキュラム」における地域医療に関する内容を充実するなど、大学医学部の地域医療に関する教育の充実を図る。
- 地域における医療体制の確保のために、定年退職した医師や子育て等の理由により退・休職した女性医師に対する復帰支援について、大学の取組の充実を図る。
- 大学病院における臨床研修や専門医研修の研修プログラムの工夫・改善等、地域医療に貢献する医師のキャリア形成への支援を図る。
- 「地域医療等社会的ニーズに対応した質の高い医療人養成推進プログラム」等により、地域医療を担う人材養成に関する大学の取組に対する支援を図るとともに優れた医療人養成プログラムの紹介・普及を行う。
- <医学部における地域枠の拡充>
- 医学部の入学者選抜における地元出身者のための入学枠(いわゆる地域枠)の拡充と、出身地にとらわれず、将来地域医療に従事する意志を有する者を対象とした入学枠の設定を推進する。また、これらの入学枠(以下「地域枠等」という。)で入学した学生に対する、地域医療への関心と意欲を高めるためのカリキュラム開発や地域医療機関と連携した学ぶ機会の提供等地域医療に関する教育の充実を図る。
さらに、卒後一定期間地元の医療機関で医療に従事することを条件とする都道府県の奨学金の拡充と地域枠等との連動を一体的に推進する。 - <医師不足県における医師養成数の暫定的な調整の容認>
- 地域間の偏在により一部の地域における医師の不足が深刻な現下の状況にかんがみ、医師の不足が特に深刻と認められる県において、当該県内への医師の定着を目的として、一定期間、将来の医師の養成を前倒しするとの趣旨の下、現行の当該県内における医師の養成数に上乗せする暫定的な調整の計画を容認する。
この場合には、以下を条件とする。- (イ) 当該県が、奨学金の拡充など実効性ある医師の地域定着策を実施すること。
- (ロ) この措置に基づき暫定的な養成数の調整を行った県において、養成増に見合って医師の定着数の増加が図られたと認められる場合に限り、前倒しの趣旨にかかわらず、当該暫定措置の終了後も、当該県における現行の養成数(暫定措置を講じる前の養成数)を維持できること。
- この方針の下での当該県の取組を前提として、関係審議会において、大学の具体的な定員の在り方について検討を行った上で大学の定員増の申請の審査を行う。
(別紙1参照) - <自治医科大学における暫定的な定員の調整の容認>
- 自治医科大学において、医療に恵まれない離島・へき地をはじめとした地方における医療の確保という同大学の設立趣旨にかんがみ、全国知事会及び自治医科大学による地域定着率の向上策など更なる地域医療貢献策の実施を条件として、一定期間、現定員(100人)に上乗せする暫定的な調整に係る申請を容認する。 この場合において、医学部生の暫定的な定員増は、医師不足が認められる都道府県に対し行うものとする。
- 具体的には、関係審議会において、大学の具体的な定員の在り方について検討を行った上で大学の定員増の申請の審査を行う。
(別紙2参照) - <交付金等の重点配分>
- 医療提供体制施設整備交付金及び医療提供体制推進事業費補助金(統合補助金)について、人口10万人対医師数(都道府県別)を基本として、医師数が特に少ない都道府県を中心に、医師確保対策や医療連携体制の構築に向けた取組状況を踏まえ、重点配分による支援を検討する。
- 人材の有効活用、救急及びへき地・離島医療の推進
- <出産、育児等に対応した女性医師の多様な就業の支援>
- 院内保育所について、医師が利用対象者となっていない事例があること等を踏まえ、利用者を看護職に限定することなく医師の利用も促すこと等、子育てと診療の両立のための支援の実施を各医療機関に促す趣旨の通知を発出するとともに、現行4人以上の利用を対象とするなどの基準を緩和する。
- 女性医師の子育てと診療の両立支援のために必要な環境づくりについて病院事業者等への啓発普及を行う。
- 女性医師バンク(仮称)の委託事業について、実施主体となる公的団体に運営委託し、できるだけ速やかに女性医師バンク(仮称)を創設することにより、事業の適切な運用を図る。
- <助産師の活用>
- 地域において安心・安全な出産ができる体制を確保する上で、産科医師との適切な役割分担・連携の下、正常産を扱うことのできる助産師や助産所を活用する体制の整備を進める。 このため、平成18年度に都道府県委託事業として創設した、助産師の産科診療所での就業を促進する「助産師確保総合対策事業」について充実を行う。
- 限られた医療資源を活用するため周産期医療の集約化・重点化が必要であり、この観点からも助産師を活用することが重要であることから、今後地域の事情に応じた周産期医療体制の整備を進める中で、先進事例とその要因を周知し、活用の推進を図る。
- <小児救急病院の夜間配置の充実>
- 小児救急医療を行う輪番病院又は拠点病院の夜間の人員配置を充実する。
- <出産前小児保健指導事業の推進>
- 出産前小児保健指導事業(プレネイタル・ビジット事業。妊産婦やその家族に対して、産婦人科医と小児科医が連携して、小児科医が育児指導や育児相談を行うことにより、産まれてくる子どものかかりつけ医師の確保を図る事業)を行う市町村への支援を推進する。
- <ヘリコプターによる救急搬送の充実>
- ドクターヘリ、防災ヘリ等を含めたヘリコプターによる搬送の具体的な手順を早急に整理し、関係者で共有する。
*第1段階として、ヘリコプターによる救急搬送について、ドクターヘリに限らず、消防・防災ヘリ、海上保安庁のヘリ、自衛隊のヘリなどの活用状況を調査。 - <臨床研修における地域医療や小児科・産婦人科での研修への支援>
- 医師不足地域や小児科・産婦人科における臨床研修の実施について、以下の取組により支援を行う
*へき地・離島の診療所等における地域保健・医療の研修に対する一層の支援
*医師不足地域の病院及び小児科・産婦人科における宿日直研修や指導医の資質の向上のための講習会の開催に対する支援 - <その他のへき地・離島医療の支援充実>
- へき地保健医療対策の充実において、へき地、離島の診療を支援する以下の取組を行う
*専門医配置による電話等での診療相談体制の充実
*ヘリコプターを活用した離島の巡回診療に対する支援
*離島の住民が遠方の産科医療機関等に受診する場合の宿泊支援 - 画像等診断応援等、大学病院の遠隔医療によるへき地・離島医療への支援を行う。
【制度創設等についての中期的検討】
- <医療事故に係る死因究明制度>
- 医療事故が発生した場合に、裁判によって解決を図るという現状では、医療従事者が萎縮し、高度先進医療や産科医療等、リスクの高い医療を担う医師がいなくなるとの懸念がある。
このため、医療事故に係る死因究明の在り方について、平成18年度内を目途に厚生労働省から試案を提示し、平成19年度に有識者による検討会を開催し、その議論を踏まえ必要な措置を講ずる。 - <分娩に係る医療事故に遭った患者に対する救済制度(いわゆる無過失補償制度)>
- 分娩時の医療事故では、過失の有無の判断が困難な場合が多く、裁判で争われる傾向があり、このような紛争が多いことが産科医不足の理由の一つであると指摘されている。
このため、安心して産科医療を受けられる環境整備の一環として、分娩に係る医療事故により障害等が生じた患者(例:新生児の脳性麻痺)に対して救済する仕組みについて検討する。 - <地域医療確保の観点に立った臨床研修プログラムの改善>
- 臨床研修については、「臨床研修に関する調査」の最終報告も踏まえ、秋以降開催予定の医道審議会臨床研修部会において、地域医療確保の観点に立った臨床研修プログラムの改善を検討課題の一つに位置付けて検討する。
- <開業医の役割の明確化>
- 小児救急医療について、夜間・休日に病院に患者が集中することによる病院勤務医の厳しい勤務環境といった問題があることを踏まえ、診療時間外でも患者の病態に応じて連絡が取れるようにするとともに、あらかじめ病院との連携体制を構築するなどの適切な対応等、小児科医をはじめとする開業医が地域において期待される役割について明確化する。
- <医療施設体系の在り方の検討>
- 今般の医療制度改革による医療計画制度の見直しとあいまって、医療施設体系の在り方を検討する中で、急性期医療を担う病院勤務医の勤労条件の改善、質・量両面からの確保といった観点に留意しつつ、大病院における外来診療の在り方、病院との連携を含めたかかりつけ医の在り方、専門医の育成の在り方等について検討を行う。また、これらの医療施設体系の在り方を踏まえた診療報酬上の評価についても検討する。
- <プライマリケア(総合診療)に係る専門性についての検討>
- 地域における医療連携体制の中で、在宅医療を含めたプライマリケアを担う医師の役割や位置付けについて検討する。
- <医師の専門性・資質の向上>
- 各学会の専門医制度の質の確保に関する国あるいは公的な第三者の支援の在り方を検討する。なお、歯科医師の専門医制度についてもあわせて検討する。
- 医学部入学時から、教育、国家試験、臨床研修、さらに生涯教育にわたる一貫した取組について検討する。
- <医師の業務の効率化や質の向上の観点からの医療関係職種の役割分担の在り方の検討>
- 医師が行っている事務作業など業務の内容を確認し、事務職など他の職種で対応できる業務の見直しによる医師が本来の業務に専念できるような体制の構築や、チーム医療を推進するために医師の業務の効率化や質の向上を図る観点から関係職種(歯科医師、看護職員、事務職)との役割分担の在り方を検討する。
- 特に看護職員については、引き続きその確保を図るとともに、医療の高度化・専門化等にあわせて資質の向上を図る必要がある。このため、現在行っている看護基礎教育の充実を図るための看護職員の養成の在り方についての検討を着実に進めるとともに、平成19年度には、新人看護職員に対する研修の在り方について検討する。
(別紙1)
医師不足県における暫定的医師養成増について
- 対象県、期間、増員幅
- 地域における医師不足の現状にかんがみ、将来の医師の養成を前倒しするとの趣旨の下、(2)から(4)までに掲げる条件の下、下記の表に掲げる10県において、最大10人、期間は平成20年度からの最大10年間に限り、現行の当該県内における医師の養成数に上乗せする暫定的な調整の計画を容認する。
対象県の基準 平成16年の人口10万対医師数が200未満 ただし、同年の100平方Km当たり医師数60以上の県を除外 対象県 青森、岩手、秋田、山形、福島、新潟、山梨、長野、岐阜、三重
- 地域における医師不足の現状にかんがみ、将来の医師の養成を前倒しするとの趣旨の下、(2)から(4)までに掲げる条件の下、下記の表に掲げる10県において、最大10人、期間は平成20年度からの最大10年間に限り、現行の当該県内における医師の養成数に上乗せする暫定的な調整の計画を容認する。
- 対象県が講ずべき措置
- ア 当該県の増員後の医学部定員の5割以上の者を対象として、同一県内又は医師不足県での特に医師確保が必要な分野(救急医療等確保事業)における一定期間の従事を条件とする奨学金の設定。この場合、地元出身者以外の奨学金被貸与者の割合の上限は6割とする。
- イ 養成増を必要とする県が、奨学金を貸与する医師の卒業後の活用・配置の計画を策定し、国(厚生労働省)に協議
- ウ 地域に必要な医師の確保の調整も含めた医療計画と医療費適正化計画の国への事前協議
- 県の措置の実施状況が(2)のアからウに適合しなくなった場合は、(1)の養成増の必要性が見直されたものとみなす。
- 暫定的な養成数の調整を行った県において、養成増に見合って医師の定着数の増加が図られたと認められる場合に限り、前倒しの趣旨にかかわらず、当該暫定措置の終了後も、当該県における現行の養成数(暫定措置を講じる前の養成数)を維持できることとする。
- これらの方針の下での当該県の取組を前提として、関係審議会において、大学の具体的な定員の在り方について検討を行った上で大学の定員増の申請の審査を行う。
- 定員増(学士編入学を含む。)を申請する大学は、地域医療を担う医師養成のプログラムを策定し、実施するものとする。
(別紙2)
自治医科大学の暫定的定員増に係る枠組みについて
- 全国知事会及び自治医科大学において検討する、地元定着率の向上策等更なる地域医療貢献策への取組(※)が適切である場合において、最大10人、期間は平成20年度からの最大10年間に限り、定員に上乗せする暫定的な調整に係る申請を容認する。
(※)地域医療支援中央会議による緊急医師派遣等の枠組みへの参加を含む。 - この場合において、医学部生の暫定的な定員増は、医師不足が認められる都道府県に対し行うものとする 。
- 全国知事会及び自治医科大学は、地域医療貢献についての計画を作成し、その計画について定期的に検証することとし、当該計画の内容・実施状況が不適切であることが明らかになった場合は、定員増の必要性がなくなったものとみなす。