資 料 2




新医師確保総合対策


新医師確保総合対策(H18・8・31)のポイント

【医師数に関する全体状況】

  1. 日本全体の需給の見通し:
    平成34年(2022年)に需要と供給が均衡し、マクロ的には必要医師数が充足。
    ※医療施設従事の医師数の推移:平成10年 23.7万人 → 平成16年 25.7万人(毎年3500〜4000人程度純増)
    医療施設従事の医師数の推計:平成34年 30.5万人・・・バランス
  2. 地域間・診療科間あるいは病院・診療所間の問題状況:
    • 地域間・診療科間の偏在問題がある。
      ※地域間偏在:西高東低の傾向。(対人口10万人) ・・・東北地方平均 187.6人最高 徳島県 282.4人  最低 埼玉県 134.2人 全国平均 211.7人 ※診療科間偏在:
      1. 小児科:総数は増加【平成10年 13,989人 平成16年 14,677人】 小児1万人当たり数も増加【平成10年 7.3人 平成16年 8.3人】
      2. 産科:総数は減少【平成10年 11,269人 平成16年 10,594人】出生1千人当たり数は横ばい【平成10年 9.4人 平成16年 9.5人】
    • 病院勤務医の繁忙感が深刻化し、病院・診療所間で医師の偏在がある。(今後偏在が拡大する可能性あり)
      (例)小児科医数の推移 〔平成10年→平成16年〕
      勤務医   4.6%増  ※ただし、〔平成14年→平成16年〕:0.4%減
      開業医   5.3%増
      総  数   4.9%増
       

【近年の医師不足に関する指摘の背景(主なもの)】

医師の意識に起因
○ 病院を辞め開業医が増加、さらに、特徴や魅力の乏しい病院の医師不足
− 特定の病院の診療科の激務や訴訟リスクに耐え難い
− 魅力あるキャリアパスを示す医療機関の選択が増加など
大学を取り巻く環境の変化に起因
卒後臨床研修制度の実施(平成16年度〜)
− 大学病院における若手医師の減少(例)大学病院における研修医数:(H13(71.2%) → H18(44.7%))
大学における体制確保(平成16年度〜)
− 国立大学の法人化や研修医への指導体制の確保のため、中堅医師等を確保

大学が従来のように地域の医療機関等からの医師紹介の要請に応じることが困難

【 対  策 】 

短期的対応

19年度概算要求への反映

医局に代わって、都道府県が中心となった医師派遣体制の構築

※県中心に、大学、公的医療機関、地域の医療機関等が参画する協議会
※取組例:県あるいは関係機関に医師をプールし、不足病院に派遣(長崎県)

国レベルでの病院関係者からなる中央会議設置により都道府県の医師派遣などの取組をサポート

※主要メンバー:自治医大、公的医療機関(日赤、済生会 等)、大学病院
※助言・指導 → 改善方策の提示 → (医師確保が極めて困難な場合)
緊急避難的医師派遣

小児救急電話相談事業(短縮ダイヤル「♯8000」)の普及と充実

 ・・・ (1)携帯電話からも、(2)深夜帯も
※保護者から、子どもの容態が心配なときいつでも、電話相談を受け付け、医師や看護師が助言を行う。→ 軽症患者の不安解消・病院への集中緩和
※各県で実施(平成18年7月1日現在 31都道府県)

小児科・産科をはじめ急性期の医療をチームで担う拠点病院づくり
 ・・・ 集約化・重点化を都道府県中心に推進(現状把握 → 平成18年内目標に集約化計画 → 医療計画に反映)

開業医の役割の明確化と評価
 ・・・ 往診や夜間対応など、開業医の役割の明確化とそれに応じた評価の直し → 軽症患者の不安解消・病院への集中緩和

○分娩時に医療事故に遭った患者に対する救済制度の検討

長期的対応

医学部卒業生の地域定着

・・・ (1)都道府県による地域定着を条件とした奨学金の積極的活用(医学部における地域枠)(2)医師不足深刻県における暫定的な定員増(対象10県で最大10人を10年間。 医師養成の前倒しという趣旨から、地域定着が図られない場合の見直しを条件)(3)医師不足の都道府県への自治医科大学の暫定的な定員増(最大10人を10年間)

 



新医師確保総合対策



平成18年8月31日
地域医療に関する関係省庁連絡会議

【緊急に取り組む対策】


  1. 都道府県による取組の一層の支援
    • <小児科・産科をはじめ急性期の医療をチームで担う拠点病院づくり>
    • 病院への小児科医・産科医の広く薄い配置を改善し、病院勤務医の勤務環境の改善、医療安全の確保を図るため、以下の手順により、集約化・重点化を一層推進する。

      →都道府県での集約化・重点化の進捗状況のフォローアップ調査を実施(平成18年7月公表)
      →「集約化・重点化計画策定の手順」を都道府県に対して提示(平成18年7月)
      →平成18年末までに都道府県において集約化・重点化計画を立案するよう引き続きフォローアップを実施
    • 集約化・重点化について、以下の取組により推進を支援する。

      • *病棟の転換(他科への病棟転換や病棟の閉鎖を含む。)整備に対する補助金や融資による支援
      • *集約化・重点化による病床削減に伴う医療機能転換に係る経過的な支援
      • *都道府県の先駆的取組を推奨・紹介するモデル事業の実施
      • *医師派遣を行った臨床研修病院等に対する支援
      • *小児科・産科医療体制整備事業の推進

    • <小児救急電話相談事業(♯8000)の一層の普及>
    • 平成16年度より実施し、現在31都道府県で展開されている小児救急電話相談事業の更なる普及を図るため、
      1. 全ての都道府県で実施すること。
      2. 携帯電話においても短縮ダイヤル#8000が利用できるようにすること。
      3. 地域の実情に応じて深夜帯の電話相談体制を実施することを推進する。

      *以下の点の明確化も含め、都道府県に取扱いを通知(平成18年7月)
      1. 看護師による相談に対し小児科医師が支援する体制をとっている場合
      2. 電話による健康相談を行っている民間事業者を活用する場合であっても、当該事業の対象となること。

      *都道府県の取組に対する支援
      *小児救急電話相談事業の周知を行うため、国民向けのポスターを作成する。

    • <都道府県における地域医療対策協議会の活性化>
    • 地域医療対策協議会を活用し、大学を含む地域内の医療機関や関係者が参加して、地域に必要な医師の確保の調整や、医師のキャリア形成を行うシステムを構築する。
      都道府県のこのような取組を推進するため、
      *大学や異なる開設者との調整を通じて地域医療の在り方を助言するアドバイザーの派遣
      *国からのアドバイザー派遣とあいまった地方厚生局による実地指導等
      都道府県の先駆的な取組に対する支援(再掲) を行う。
    • 地域医療対策協議会を通じた都道府県の取組について、医師配置の状況等に関する調査分析、医師派遣等の需給調整システムの構築のための取組等についての支援を検討する。
    • 都道府県の取組の好事例の収集・紹介、手順の明確化等技術的助言を行う。

    • <地域医療提供体制の再編・ネットワーク化等>
    • 地域医療の望ましい在り方を検討するに当たり、国として、都道府県が官と民の役割分担を含めた地域の医療提供体制の在り方を検討するためのガイドラインを整備する。また、公立病院の在り方や民間医療機関等との連携を念頭に置いた地域の公立病院等の再編・ネットワーク化についても、先進事例を踏まえつつ検討方向を示す。
    • 上記とともに、小児救急医療や周産期医療など地域に必要な医療を確保する観点から、医療資源の集約化・重点化に資する措置について検討する。

    • <都道府県マップによる進捗状況のフォロー>
    • 医師確保に関連する各都道府県の施策の取組状況等についての一覧表示(マップ)について、充実に努めるとともに、継続して進捗状況のフォローを行い、厚生労働省ホームページ等で公表する。
    • あわせて、都道府県による取組の好事例の継続的把握、紹介を行う。

  2. 都道府県のみでは対応困難な地域に対する緊急対策
    • <医師派遣(紹介)・キャリア形成システムの再構築>
    • 厚生労働省に地域医療支援中央会議(仮称)を設置する。 自治体病院(全国自治体病院協議会)、自治医科大学、大学病院(全国医学部長病院長会議)、国立病院機構、日本赤十字社、社会福祉法人恩賜財団済生会、日本医師会等の参画を得て中央会議を設け、都道府県からの要請に対応した緊急避難的医師派遣等を含め、従来は大学が中心となって担っていた医師派遣(紹介)・キャリア形成システムの構築の支援等を検討する。
    • 医師のキャリア形成システムの再構築として、都道府県、上記中央会議に参画する主体、複数の公立病院の共同等による、地域医療経験に配慮した医師の研修プログラムに係る取組を推進する。

    • <地域医療を担う医師の養成の推進>
    • 「医学教育モデル・コア・カリキュラム」における地域医療に関する内容を充実するなど、大学医学部の地域医療に関する教育の充実を図る。
    • 地域における医療体制の確保のために、定年退職した医師や子育て等の理由により退・休職した女性医師に対する復帰支援について、大学の取組の充実を図る。
    • 大学病院における臨床研修や専門医研修の研修プログラムの工夫・改善等、地域医療に貢献する医師のキャリア形成への支援を図る。
    • 「地域医療等社会的ニーズに対応した質の高い医療人養成推進プログラム」等により、地域医療を担う人材養成に関する大学の取組に対する支援を図るとともに優れた医療人養成プログラムの紹介・普及を行う。

    • <医学部における地域枠の拡充>
    • 医学部の入学者選抜における地元出身者のための入学枠(いわゆる地域枠)の拡充と、出身地にとらわれず、将来地域医療に従事する意志を有する者を対象とした入学枠の設定を推進する。また、これらの入学枠(以下「地域枠等」という。)で入学した学生に対する、地域医療への関心と意欲を高めるためのカリキュラム開発や地域医療機関と連携した学ぶ機会の提供等地域医療に関する教育の充実を図る。
      さらに、卒後一定期間地元の医療機関で医療に従事することを条件とする都道府県の奨学金の拡充と地域枠等との連動を一体的に推進する。

    • <医師不足県における医師養成数の暫定的な調整の容認>
    • 地域間の偏在により一部の地域における医師の不足が深刻な現下の状況にかんがみ、医師の不足が特に深刻と認められる県において、当該県内への医師の定着を目的として、一定期間、将来の医師の養成を前倒しするとの趣旨の下、現行の当該県内における医師の養成数に上乗せする暫定的な調整の計画を容認する。
      この場合には、以下を条件とする。
      • (イ) 当該県が、奨学金の拡充など実効性ある医師の地域定着策を実施すること。
      • (ロ) この措置に基づき暫定的な養成数の調整を行った県において、養成増に見合って医師の定着数の増加が図られたと認められる場合に限り、前倒しの趣旨にかかわらず、当該暫定措置の終了後も、当該県における現行の養成数(暫定措置を講じる前の養成数)を維持できること。
    • この方針の下での当該県の取組を前提として、関係審議会において、大学の具体的な定員の在り方について検討を行った上で大学の定員増の申請の審査を行う。
      (別紙1参照)

    • <自治医科大学における暫定的な定員の調整の容認>
    • 自治医科大学において、医療に恵まれない離島・へき地をはじめとした地方における医療の確保という同大学の設立趣旨にかんがみ、全国知事会及び自治医科大学による地域定着率の向上策など更なる地域医療貢献策の実施を条件として、一定期間、現定員(100人)に上乗せする暫定的な調整に係る申請を容認する。 この場合において、医学部生の暫定的な定員増は、医師不足が認められる都道府県に対し行うものとする。
    • 具体的には、関係審議会において、大学の具体的な定員の在り方について検討を行った上で大学の定員増の申請の審査を行う。
      (別紙2参照)

    • <交付金等の重点配分>
    • 医療提供体制施設整備交付金及び医療提供体制推進事業費補助金(統合補助金)について、人口10万人対医師数(都道府県別)を基本として、医師数が特に少ない都道府県を中心に、医師確保対策や医療連携体制の構築に向けた取組状況を踏まえ、重点配分による支援を検討する。

  3. 人材の有効活用、救急及びへき地・離島医療の推進

    • <出産、育児等に対応した女性医師の多様な就業の支援>
    • 院内保育所について、医師が利用対象者となっていない事例があること等を踏まえ、利用者を看護職に限定することなく医師の利用も促すこと等、子育てと診療の両立のための支援の実施を各医療機関に促す趣旨の通知を発出するとともに、現行4人以上の利用を対象とするなどの基準を緩和する。
    • 女性医師の子育てと診療の両立支援のために必要な環境づくりについて病院事業者等への啓発普及を行う。
    • 女性医師バンク(仮称)の委託事業について、実施主体となる公的団体に運営委託し、できるだけ速やかに女性医師バンク(仮称)を創設することにより、事業の適切な運用を図る。

    • <助産師の活用>
    • 地域において安心・安全な出産ができる体制を確保する上で、産科医師との適切な役割分担・連携の下、正常産を扱うことのできる助産師や助産所を活用する体制の整備を進める。 このため、平成18年度に都道府県委託事業として創設した、助産師の産科診療所での就業を促進する「助産師確保総合対策事業」について充実を行う。
    • 限られた医療資源を活用するため周産期医療の集約化・重点化が必要であり、この観点からも助産師を活用することが重要であることから、今後地域の事情に応じた周産期医療体制の整備を進める中で、先進事例とその要因を周知し、活用の推進を図る。

    • <小児救急病院の夜間配置の充実>
    • 小児救急医療を行う輪番病院又は拠点病院の夜間の人員配置を充実する。

    • <出産前小児保健指導事業の推進>
    • 出産前小児保健指導事業(プレネイタル・ビジット事業。妊産婦やその家族に対して、産婦人科医と小児科医が連携して、小児科医が育児指導や育児相談を行うことにより、産まれてくる子どものかかりつけ医師の確保を図る事業)を行う市町村への支援を推進する。
    • <ヘリコプターによる救急搬送の充実>
    • ドクターヘリ、防災ヘリ等を含めたヘリコプターによる搬送の具体的な手順を早急に整理し、関係者で共有する。
      *第1段階として、ヘリコプターによる救急搬送について、ドクターヘリに限らず、消防・防災ヘリ、海上保安庁のヘリ、自衛隊のヘリなどの活用状況を調査。

    • <臨床研修における地域医療や小児科・産婦人科での研修への支援>
    • 医師不足地域や小児科・産婦人科における臨床研修の実施について、以下の取組により支援を行う

      *へき地・離島の診療所等における地域保健・医療の研修に対する一層の支援
      *医師不足地域の病院及び小児科・産婦人科における宿日直研修や指導医の資質の向上のための講習会の開催に対する支援
    • <その他のへき地・離島医療の支援充実>
    • へき地保健医療対策の充実において、へき地、離島の診療を支援する以下の取組を行う

      *専門医配置による電話等での診療相談体制の充実
      *ヘリコプターを活用した離島の巡回診療に対する支援
      *離島の住民が遠方の産科医療機関等に受診する場合の宿泊支援
    • 画像等診断応援等、大学病院の遠隔医療によるへき地・離島医療への支援を行う。

【制度創設等についての中期的検討】



(別紙1)


医師不足県における暫定的医師養成増について

  1. 対象県、期間、増員幅
    • 地域における医師不足の現状にかんがみ、将来の医師の養成を前倒しするとの趣旨の下、(2)から(4)までに掲げる条件の下、下記の表に掲げる10県において、最大10人、期間は平成20年度からの最大10年間に限り、現行の当該県内における医師の養成数に上乗せする暫定的な調整の計画を容認する。

      対象県の基準 平成16年の人口10万対医師数が200未満 ただし、同年の100平方Km当たり医師数60以上の県を除外
      対象県 青森、岩手、秋田、山形、福島、新潟、山梨、長野、岐阜、三重
      注:全国の人口10万対医師数211.7、東京及び大阪を除く全国の100平方Km当たり医師数59.1
  2. 対象県が講ずべき措置
    • ア 当該県の増員後の医学部定員の5割以上の者を対象として、同一県内又は医師不足県での特に医師確保が必要な分野(救急医療等確保事業)における一定期間の従事を条件とする奨学金の設定。この場合、地元出身者以外の奨学金被貸与者の割合の上限は6割とする。
    • イ 養成増を必要とする県が、奨学金を貸与する医師の卒業後の活用・配置の計画を策定し、国(厚生労働省)に協議
    • ウ 地域に必要な医師の確保の調整も含めた医療計画と医療費適正化計画の国への事前協議
  3. 県の措置の実施状況が(2)のアからウに適合しなくなった場合は、(1)の養成増の必要性が見直されたものとみなす。
  4. 暫定的な養成数の調整を行った県において、養成増に見合って医師の定着数の増加が図られたと認められる場合に限り、前倒しの趣旨にかかわらず、当該暫定措置の終了後も、当該県における現行の養成数(暫定措置を講じる前の養成数)を維持できることとする。
  5. これらの方針の下での当該県の取組を前提として、関係審議会において、大学の具体的な定員の在り方について検討を行った上で大学の定員増の申請の審査を行う。
  6. 定員増(学士編入学を含む。)を申請する大学は、地域医療を担う医師養成のプログラムを策定し、実施するものとする。

(別紙2)


自治医科大学の暫定的定員増に係る枠組みについて

  1. 全国知事会及び自治医科大学において検討する、地元定着率の向上策等更なる地域医療貢献策への取組(※)が適切である場合において、最大10人、期間は平成20年度からの最大10年間に限り、定員に上乗せする暫定的な調整に係る申請を容認する。
    (※)地域医療支援中央会議による緊急医師派遣等の枠組みへの参加を含む。
  2. この場合において、医学部生の暫定的な定員増は、医師不足が認められる都道府県に対し行うものとする 。
  3. 全国知事会及び自治医科大学は、地域医療貢献についての計画を作成し、その計画について定期的に検証することとし、当該計画の内容・実施状況が不適切であることが明らかになった場合は、定員増の必要性がなくなったものとみなす。

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