資料3

ボイラー等の自主検査制度の導入の可否に関する検討会

これまでの意見のまとめ


 石油業界の検査技術力、管理能力について
 製油所等で第三者検査が実施されていない設備で事故が発生しており、その原因をみると、工学的に未知又は予測不能であるものは少なく、大部分は過去の経験・知見の集積により損傷や腐食の防止・管理を適切に行えば防げた事故と考えられる。
 社内検査を経たボイラー等に対する第三者検査機関の性能検査において、製油所の社内検査後の補修等が十分でないことから補修等を求められた例が少なからずある。
 また、連続運転のボイラー等において余寿命予測の測定箇所でない箇所で事業場の想定外の腐食などが起こり、予定外の補修、主要構造部分の取替え等を行ったものがあり、損傷の発生しやすい箇所等を必ずしも特定できていない状況が認められる。
 これらの事実は、設備の保守点検を確実に行うことについて業界に不十分な点があることを示しており、また、このような事故がないように自主検査により設備を維持する技術力、管理能力があることを示せていないのではないか。

 連続運転認定の事前審査委員会における各社の取組をみると、他社の事故等から損傷の情報を得て自社内検査の同種機器の管理に活かしていない例もあり、十分な水平展開ができているとはいえない。石油業界として取組を行い、各社での経年損傷等による事故防止対策を向上させるべきである。
 また、業界は、経年損傷による事故を起こさず運転する能力があることを実績で示す必要がある。

 現行のボイラー等の連続運転の制度の運用実績は、事故が少なく、安全性も担保しつつ外国と比べて遜色ない程度に経済性を実現しているという認識は、業界もほぼ共有している。
 今後も連続運転に伴う精緻な検査及び管理の質が落ちないことが必要不可欠であるが、自主検査とすると検査及び管理のレベルを維持できないのではないか。

 機器の開放の機会は年に一回もないから、社内検査の担当者について、性能検査を専門に行っている第三者検査機関の検査員に比べて遜色がない程度に問題を発見できるよう養成・確保していくことは困難ではないか。

 検査の公正性・独立性について
 経営や競争が厳しくなったときにも、行うべき検査の水準を下げないための仕組みが必要であるが、検査部門が経営から独立した判断を下すことを確保するのは難しい。
 業界が提案している経営トップによる意思表明や企業倫理委員会は、一定の効果はあると考えられるが、それだけでは不正に対する担保とするのは難しい。
 業界からは、自主検査としても検査の水準を維持し安全性を損なうことがないことの十分な担保が示されていない。

 事故及び不正事案の発生の状況からは、決められた社内検査等がきちんと行われていない例が少なからず見られるのに、自主検査が第三者検査に代えられるほどの信頼性があるといえるか。

 業界は定められた検査手順・方法が守られないような事案が発生しないことを自らが実績で示す必要があるのではないか。

 主要国では、自主検査が可能な制度を導入している国も多い。
 しかし、そうした国で自主検査を行っている検査員は、専門技術者としての高位の資格を有し専門家集団組織で保護されており、経営者や工場の運転部門とは独立した判断をすることができる仕組みとなっており、そうしたシステムがあるところで初めて自主検査が機能するものである。このシステムが無い点で日本の事情は大いに異なり、日本でこのような国の仕組みを導入することは困難である。

 社会的環境について
 最近、第三者機関の監査の必要性が見直される気運がある例(建築構造確認制度、企業の会計監査)、第三者機関の監査の有効性を示す例(銀行・証券・保険会社の監査と営業停止)、第三者の監査の必要性を示す例(自動車のリコール、瞬間湯沸かし器、原子炉機器の不具合)が続いているが、自主検査化することが社会的に受け入れられる余地があるか。

 本来やるべきことをやっていず防げていない事故及び不正事案は大変な問題。
 企業行動の安全性、信頼性について、企業の社会的責任の観点から厳しく批判される時代になっているから、その点を認識して検討を進めるべきである。

 石油業界要望では、設備を停止しての工事工程の短縮は1,2日であるとしており、連続運転の実現による約30日の短縮に比べればかなり小さいことから、第三者検査があることにより緊張感が維持され、適正な整備及び検査により安全が確保されている意義を失ってまで、第三者検査制度を廃止する必要があるか。

 現行のボイラー等の連続運転の制度の運用実績は事故が少なく、安全性を担保しつつ、外国と比べて遜色ない程度に経済性を実現しているという認識である。
 第三者検査機関の検査を利用して公開制、透明性、緊張感を確保すること及び既知の原因による事故を相当減らすことにより社会的受容性を向上させることが必要ではないか。そうして長期連続運転の認定を得ることがメリットがある。

 ボイラー等の検査は第三者検査機関による検査により長年かかって今のレベルまで減ってきている。これを外すのでは、事故を起こす芽を摘まなければならないのにそれを残してしまうことになり、危険。

 事故があった場合に被害を受けるのは弱者である現場の社員であるから、強者である経営側とのアンバランスを補うには、第三者検査のような社会的な制度が必要。

 安全を前提としたコスト削減策について
 石油業界の要望で述べられている自主検査のメリットのうち、回答1の(1)及び回答2の(1)は日程調整不要、準備工程の簡素化が可能となる、(2)は受検の待ちの解消が可能となるというものであるが、第三者検査機関側が検査日時を柔軟に変更可能とすること、24h-7日対応を可能とすること等により、解決できるのではないか。

 回答1のメリット(3)及び回答2の(2)は担当者立会い(場合によって10名以上)での拘束が解消されるというものであるが、第三者検査機関によると現状で検査時には製油所側運転と保全の2名程度の立ち会いで可としている。
 また、連続運転の認定事業場においても検査機関による指摘・改善の勧奨を受けたものも含めると少なからぬ数に上ることから、第三者検査機関の検査員の判断から学び社内での整備の向上に繋げる機会ととらえることが必要。

 回答1のメリット(4)は検査後の講評待ちの解消が可能になるというものであるが、第三者検査機関によると合格の内示を原則現場で出すようにしており、復旧工事にすぐかかれるようにしている。

 各社の経営者はどのように考えているのか、真に自主検査化を要望しているのか不明である。経営者が社会情勢等を考慮したうえで意識を持って提案したものであるか確認が必要。

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