資料1

コンプライアンスと内部統制


2006年12月19日

桐蔭横浜大学コンプライアンス研究センター
郷原 信郎



コンプライアンス = 法令遵守

の誤り



1.コンプライアンス=法令遵守の背景


自由競争法令遵守の組合せですべてが解決する

企業の目的は法令に違反しない範囲で利潤を追求すること

[前提]

社会的要請はすべて法令に反映されている

司法が経済社会において十分に機能している



2.日米における司法の違い


日本 アメリカ
成文法 判例法
違憲立法審査 消極的 積極的
弁護士数
(人口10万人当たり)
15人 345人
法人に対する罰金
の上限
7億円 利益・損失にスライド
損害賠償 実額賠償 懲罰的賠償



3.社会的要請と法令遵守


図



4.コンプライアンスとは


Complyの本来の語義
     充足する、調和する

工学上のコンプライアンスの意味
     物体のしなやかさ

Compliance
 組織に向けられた社会的要請に応えて
  しなやかに鋭敏に反応し目的を実現していくこと

社会的要請に対する鋭敏さ(sensitivity
目的実現に向けての協働関係(collaboration



5.フルセット・コンプライアンスの基本的な考え方


社会的要請に組織としてどのように適応していくか
フルセット・コンプライアンス

【5要素】
 (1) 方針の明確化
 (2) 組織の構築
 (3) 予防的コンプライアンス
 (4) 治療的コンプライアンス
 (5) 環境整備コンプライアンス



6.ムシ型違法行為とカビ型違法行為


アメリカでの違法行為 ⇒ ムシ
 ◎個人的利益が目的
 ◎単発的
対処方法 ⇒ 個人に厳しいペナルティを科す(殺虫剤の散布)

日本での違法行為 ⇒ カビ
 ◎組織の利益が目的
 ◎継続的・恒常的(ポストに随伴)・・・背景に構造的要因
対処方法 ⇒ 原因となっている構造的要因(汚れ・湿気)を除去



7.企業に関する法の再構築


憲法(民法・刑法)を中心とする法秩序と企業の関係

  個人中心の法体系 ⇒ 法人・組織中心の法体系の構築

企業法相互の関係

 会社法、証券取引法、独占禁止法、知的財産法、労働法

  それぞれの背後に社会的要請 ⇒ 相互調整



8.企業法の体系


図



9.内部統制と法令遵守


内部統制の法的義務化
会社法
取締役会での決議事項(グループ会社も含む)
法令遵守も含む
金融商品取引法
財務情報に関する内部統制報告書
法令違反リスクの顕在化は会計上重大な影響

法令遵守と内部統制
法令と実態の乖離・・・従来はエンフォースメントで調整
法令遵守の義務化⇒遵守困難な法令違反リスクが重要な問題に

トップへ