06/11/30 薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会 平成18年11月30日議事録 薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会 議事録 1.日時及び場所   平成18年11月30日(木) 14:00〜   厚生労働省共用第8会議室 2.出席委員(13名)五十音順    飯 沼 雅 朗、 岩 崎   学、 川 西   徹、 堺   英 人、    澤 田 純 一、○首 藤 紘 一、 谷川原 祐 介、 土 屋 文 人、   ◎永 井 良 三、 長谷川 紘 司、 早 川   浩、 樋 口 輝 彦、    村 勢 敏 郎 (注) ◎部会長 ○部会長代理   欠席委員(1名)    井 上 和 秀 3.行政機関出席者   黒 川 達 夫(大臣官房審議官)、   中 垣 俊 郎(審査管理課長)、 伏 見  環(安全対策課長)、    豊 島   聰(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長)、    川 原   章(独立行政法人医薬品医療機器総合機構安全管理監)、   森   和 彦(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役)、    佐 藤 岳 幸(独立行政法人医薬品医療機器総合機構新薬審査第一部長)、   坂 本   純(独立行政法人医薬品医療機器総合機構新薬審査第二部長)、   望 月   靖(独立行政法人医薬品医療機器総合機構新薬審査第三部長)、  田 中 克 平(独立行政法人医薬品医療機器総合機構生物系審査部長)他 4.備  考   本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。 ○審査管理課長 本日は御出席いただきまして誠にありがとうございます。定刻になり ましたので、「薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会」を開催いたします。当部会委員 数14名中、13名の委員に御出席いただいておりますので、定足数に達しておりますこ とを御報告いたします。早速ですが、部会長の永井先生、議事進行をよろしくお願いい たします。 ○永井部会長 まず、事務局から配付資料の確認、資料作成に関与された委員の報告を お願いいたします。 ○事務局 まず資料の確認をいたします。いつものように本日の議事次第、座席表、委 員名簿を配付しております。資料1〜11はあらかじめお送りした資料です。本日、資料 No.12として審議品目の薬事分科会における取扱い等の(案)の表、資料No.13として専門委 員のリストをお配りしております。資料番号は打っていないのですが、前回当部会にお いて審議されたセレコックス錠について、添付文書等に御意見をいただきましたので、 本日添付文書等の改訂版を配付いたしましたが、これについては議事の最後に報告いた します。平成13年1月23日の薬事分科会申し合わせに基づく資料作成に関係した委員 の確認ですが、本日の審議品目については関与委員はいらっしゃいません。 ○永井部会長 本日の審議事項は9議題、報告事項は2議題です。早速、議題1につい て機構から説明をお願いいたします。 ○機構 議題1、資料1の医薬品ソマバート皮下注用10mg他の輸入承認の可否等につい て、医薬品医療機器総合機構より御説明申し上げます。本剤は、有効成分ペグビソマン ト(遺伝子組換え)のタンパク質部分として、初回に40mg、2日目以降は10mgを1日1 回皮下投与し、血清中IGF-I値及び症状に応じて、1日量30mgを上限として5mgず つ適宜増減して皮下投与する、注射用凍結乾燥製剤でございます。本薬は、先端巨大症 の主要な原因が成長ホルモン(GH)分泌過剰であることに着目し、GH受容体拮抗作用 を有するものとして分子生物学的に探索された、アミノ酸配列中9か所が置換されたヒ ト成長ホルモン誘導体にポリエチレングリコール(PEG)を共有結合させることで、血 中濃度を長時間高く維持することを期待して開発された化合物でございます。  また、1999年3月には希少疾病用医薬品に指定されております。なお、本剤の申請時 には日本人患者における使用成績がございませんでしたので、日本人患者における有効 性及び安全性を確認するための臨床試験が追加で実施され、試験成績が提出された時点 で審査を再開いたしました。海外では、2002年11月に欧州で承認されたのを初めとし て、2006年10月現在、41の国と地域で承認されております。本品目の専門協議では本 日の資料No.13に示しますような方々が専門委員として指名されております。  本剤の規格及び試験方法については、本部会用資料提出直前に申請者より申請書並び に申請資料の内容変更が提出され、その正誤表が資料概要の前に添付されております。 内容的には本剤の品質自体に問題はないと考えておりますが、申請者には十分な内容確 認を怠ったことを厳重注意した上で、変更点等の詳細について今後確認することとさせ ていただきたいと思います。その他、本剤の安定性、薬理、薬物動態及び毒性について、 提出された資料に特段問題となる事項はございませんでしたので、臨床試験成績につい て述べさせていただきます。  臨床試験は自己注射による皮下投与で実施されております。まず有効性に関してです が、日本人先端巨大症患者18例を対象とした非盲検非対照試験において、主要評価項目 である「血清IGF-I値のベースラインからの変化率」は、投与12週後において−54.7 %であり、ベースラインからの有意な低下が認められ、本剤の有効性が示されました。  次に安全性に関しては、国内臨床試験において18例中3例(16.7%)で肝機能検査値異 常がみられており、肝機能検査を定期的に実施するよう添付文書で注意喚起するととも に、製造販売後調査において確認することとしております。また、手術により十分な腫 瘍摘出ができなかった患者で腫瘍増大が懸念されることから、頭部MRIによる定期的 な検査を行うとともに、製造販売後調査の中で更に検討する必要があると考えておりま す。  以上のとおり、医薬品医療機器総合機構での審査の結果、本薬の先端巨大症に対する 有効性及び安全性は認められ、製造販売後の全例調査の実施を条件に承認して差し支え ないとの結論に達し、医薬品第一部会で審議されることが妥当と判断いたしました。本 剤は希少疾病用医薬品であることから、再審査期間は10年とすることが適当であると判 断しております。原体及び製剤ともに劇薬に該当し、生物由来製品及び特定生物由来製 品に該当しないと判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。御審議 のほど、よろしくお願い申し上げます。 ○永井部会長 早速、御質問、御討論をお願いいたします。 ○岩崎委員 臨床試験の副次的な評価項目について、臨床症状のスコアがあまり動いて いないという気がしているのですが、特に問題はないでしょうか。 ○機構 有効性に関しては、IGF-I値の変化率でみることとしており、そちらの方で 認められたということをもって本剤の有効性はあるものと判断しております。 ○村勢委員 本剤の承認ということとは別ですが、有害事象に関連して一言コメントと いうか、注意しておきたいと思います。本剤の薬理作用として注意しなければならない ことの一つに、血清のGH濃度が上がる、上昇を引き起こすということがありますが、 このことと糖尿病との関連について一言付け加えておきたいと思います。先端巨大症に 伴う代謝異常として、最も重要なことは糖尿病の合併であり、それがいろいろと心血管 障害を引き起こすことでしょう。その頻度ですが、糖尿病の合併頻度は大体30〜50%ぐ らいと言われていますし、耐糖能異常で見ると、大体7、8割ぐらいが異常を伴うもの のようです。本薬剤の臨床治験における有害事象を見ると、ト-61に書いてあるのです が、糖尿病の発現例は16例中の1例で意外に少ないという感じを受けます。新しく発現 した発現例と書いてありましたので、おそらく新しく発現した糖尿病だと思いますが、 悪化例については全然言及されていないのです。同じくト-42、ト-61の項目を見ると、 GHは基礎値が20ng/mLから長期で30から40ぐらいに、倍ぐらいに増加していますの で、おそらく糖尿病があって、それが悪化した例ということになると、結構たくさんい るのではないかと思うのです。治験では糖代謝についてあまり言及されていないという か、注目されていないように思いますし、添付書類の注意事項の中でもその辺にほとん ど触れていないのですが、先端巨大症の非常に大切な合併症であるし、承認後、発売後 調査では特にこの点について注意が必要ではないかと思いますので、一言追加しておき ます。発現例というのは、そのようなことでよろしいのでしょうか。悪化例はあまり注 目して行われていないのですか。 ○機構 御指摘ありがとうございます。添付文書の慎重投与の項において、「インスリ ンまたは経口血糖降下剤による治療を受けている患者」ということで記載されておりま す。また、相互作用の項においても、併用注意として「インスリン製剤、経口血糖降下 剤」ということが記載されております。製造販売後の調査においては、低血糖症状とい うものに注目して調査を行うこととしております。 ○村勢委員 そこのところに「インスリン製剤、経口血糖降下薬で本剤投与により成長 ホルモンの作用が抑制されることに伴い、インスリン感受性が高くなる」といった表現 があるのですが、そうなのかなということで、逆に低血糖の方を心配しているのかと思 うのですが、普通は糖尿病の悪化の方が強いのではないかと思います。確かにインスリ ンは使うのでしょうが、インスリンの使用量はどんどん多くなるのが普通ですから、G Hが低下すればそうでしょうが、これは逆ではないかと思います。一般にインスリンや 血糖降下薬を使っていない人に関して、特にその辺を注意しなくてはいけないというこ とだろうと思います。どっち道、治療になかなか成功していなかった例ですので、GH が結構高いのでしょうね。20という高い値ですから、それがもっと悪くなるのではない かということで、糖尿病の悪化ということが非常に懸念されるのです。 ○永井部会長 ソマトメジンを介さない経路があるということですか。 ○村勢委員 インスリンの抵抗性を介してという理解がされていると思います。大体こ の中でも言われていますが、IGF-Iを下げるということで、ネガティブフィードバッ クで上がってくるといったことが言われているわけです。 ○永井部会長 その点について、添付文書等に記載を。 ○機構 臨床試験が18例しかなく、症例数が少なかったので十分な検討ができていると までは言い切れないところもありますので、製造販売後の調査において確認をしていき たいと思います。 ○永井部会長 そのようなことでよろしいですか。 ○村勢委員 結構です。添付文書も少し触れてあるだけという印象ですし、その辺が合 併症あるいは予後の心血管障害につながるものとして非常に大切ですので、もう少し慎 重にと言おうか、添付書類もきちんと書いた方がいいのではないかと思いましたので追 加いたしました。 ○永井部会長 さらに検討していただくということでよろしいでしょうか。 ○機構 検討させていただきます。 ○永井部会長 それでは、この件に関しては承認可、ということで分科会報告させてい ただきます。次に議題2に入ります。医薬品レミケード点滴静注用の輸入承認事項につ いて、機構から説明をお願いいたします。 ○機構 議題2、資料2の医薬品レミケード点滴静注用100の輸入承認事項一部変更承 認の可否等について、医薬品医療機器総合機構より御説明いたします。本剤の有効成分 であるインフリキシマブ(遺伝子組換え)は、ヒトTNFαに特異的なマウスモノクロー ナル抗体由来の可変領域と、ヒトIgG1抗体の定常領域を有するキメラ抗体です。ベーチ ェット病による網膜ぶどう膜炎の病態形成にTNFαの関与が示唆されていることか ら、本剤の開発が進められました。  今般申請者は、ベーチェット病による難治性網膜ぶどう膜炎を有し、既存治療で効果 不十分な日本人患者に本剤を投与したところ、眼発作頻度の軽減が認められると判断し、 本剤の効能・効果を追加する一部変更承認申請を行ったものです。なお、本剤は平成14 年3月にベーチェット病による難治性網膜ぶどう膜炎に関して、希少疾病用医薬品に指 定されております。本剤は既に国内において2002年1月17日に、「中等度から重度の 活動期にあるクローン病患者及び外瘻を有する患者」、2003年7月17日に「関節リウ マチ患者」に対する効能・効果が承認されております。海外におきましては2006年10 月現在、本剤は米国、欧州各国を含む世界83か国において、関節リウマチ、クローン病 等に対する効能・効果が承認されていますが、本申請効能を対象とした開発は行われて おりません。本品目の専門協議では、本日の配付資料No.13に示されるような方々が専門 委員として指名されております。  審査内容について簡単に御説明いたします。薬理・薬物動態に関して提出された資料 内容については、特段の問題はないと判断しております。臨床成績の有効性についてで すが、シクロスポリンで効果不十分なベーチェット病による難治性網膜ぶどう膜炎を有 する日本人患者12例を対象にして実施された第III相試験において、本剤5mg/kgを0、 2及び6週の計3回静脈内投与することにより、主要評価項目である投与開始後14週間 の眼発作の頻度は、投与開始前の観察期間と比較して有意に減少し、その後の継続投与 試験では本剤5mg/kgを8週間隔で静脈内投与することにより、眼発作抑制効果が維持 されております。  次に安全性についてですが、本申請効能及び既承認効果を対象とした国内臨床試験で の副作用発現率は安全性解析対象381例中334例、87.7%であり、主な副作用は鼻咽頭 炎、発熱、頭痛、発疹、咳嗽等が発現しております。ベーチェット病による難治性網膜 ぶどう膜炎患者では、既承認疾患患者と比較して投与時反応の発現率に高い傾向が認め られましたが、多くは軽度であり、重篤及び中止に至った投与時反応に疾病による違い は認められておりません。また、その他の有害事象に関しましても、疾病による大きな 違いは認められておりませんが、国内臨床試験の症例数が限られていること、及び国内 では本剤5mg/kgの長期使用の経験が限られていることから、安全性については製造販 売後も注意が必要と考えております。  本剤では結核などの感染症、投与時反応等の重篤な副作用が知られていることから、 本剤を使用する場合にはベーチェット病による網膜ぶどう膜炎の診断・治療経験のある 眼科医と、本剤の副作用に対する対処が可能である内科医等との連携が確認できる施設 に本剤の納入を限定することとしております。また、患者手帳等を作成し、併診先の受 診内容が診療科間で共有できるようにし、その他の配付資材においても、医療関係者の みならず、患者に対しても本剤投与によるリスクを十分理解させることとしており、内 科等の併診の必要性が啓発されることになります。さらに、製造販売後調査では一定期 間全例登録し、安全性及び有効性の情報を収集し、医療現場に速やかに還元される体制 を整える予定です。  以上の審査を踏まえ、製造販売後の全例調査を条件に本剤の既存治療で効果不十分な ベーチェット病による難治性網膜ぶどう膜炎に対する適用を承認して差し支えないとの 結論に達し、本第一部会で御審議いただくことが適当と判断いたしました。本剤の再審 査期間は10年間と判断しております。なお、薬事分科会には報告を予定しております。 よろしく御審議のほどお願いいたします。 ○永井部会長 御意見、御討論をお願いいたします。 ○土屋委員 本体のことではないのですが販売方法で、眼科と内科医の連携が取れる所 にかなり制限的に入れて行くというものの、ほかのことで既に入っている薬について、 実効性と言いますか、そのようなことはどうするのか、現実問題としてどうするのかと いう気がするのです。話としては非常に重要なことですが、ほかで使っているからとい うことからすると、どうするのかというのが心配です。 ○機構 御指摘のとおり、本剤に関しては既に納入されている施設があります。現在納 入されているものは、関節リウマチ、クローンにおいてもメーカーの方で納入先を把握 しているということもあり、薬剤部等に協力を依頼するとしております。総合病院で既 に入っているような所では薬剤部を通して、今まで納入されていないような診療科から 新しい処方依頼があった場合には、薬剤部からメーカーの方に問合せをして、その後メ ーカーから、新規に依頼している担当医師に本剤の使用に関して説明を行う、という形 を取りたいと説明されています。 ○土屋委員 形としては、現在使用している所に対して、この用途で使う場合は薬剤部 がチェックをして、そのような連絡をしなさいといったお知らせが回る、そのようなイ メージでしょうか。 ○機構 薬剤部はその治療効能に関しては分からないので、診療科として新しい診療科 等から依頼があった場合に、その旨をメーカーに連絡をしていただけるよう依頼する予 定であると説明を受けております。 ○永井部会長 よろしいでしょうか。他にいかがですか。よろしければ、これも分科会 報告、承認可、ということにさせていただきます。それでは議題3に入ります。機構か らミレーナの輸入承認の可否について説明をお願いいたします。 ○機構 資料3、医薬品ミレーナについて医薬品医療機器総合機構より御説明いたしま す。なお、販売名は含量を付記して「ミレーナ52mg」等、別の販売名に変更される予定 となっております。本剤は長期間の避妊を目的とする製剤で、銅付加子宮内避妊用具の 構成部品として臨床使用経験のあるT型フレームに薬剤放出部を付加し、既承認の経口 避妊薬の成分であるレボノルゲストレルを子宮内に直接投与する製剤として開発されま した。  海外臨床試験で5年間の装着期間における有効性が確認されており、国内で実施され た1年間の装着による臨床試験及び同様のプロトコルで実施された米国臨床試験との比 較検討に基づき、国内外臨床試験5試験を主要な評価資料として、日本シエーリング社 より避妊を効能・効果とする承認申請がなされました。本剤は平成18年7月現在、米国 及びEU諸国を含む世界108か国で承認されております。本品目の審査に関しまして、 専門委員として配付資料No.13に記載されております委員が指名されました。  提出された資料及び機構における審査の概略を御説明いたします。品質、毒性、薬理 及び薬物動態に関しては、審査の過程において申請者から適切な対応がなされ、特に問 題はないと判断いたしました。なお、製剤の特性上、in vitroで長期間の放出速度試験 が行われ、有効成分であるレボノルゲストレルの5年間の放出挙動について確認してお ります。  臨床試験成績について御説明いたします。国内で実施された第III相試験では経産婦 482例を対象に、本剤の1年間装着時の有効性及び安全性について検討が行われました。 有効性の主要評価項目とした妊娠率は、100婦人年当たりの妊娠数であるパール指数に ついて0.46、またKaplan-Meier推定による妊娠率については0.56%であり、1年間装 着における本剤の有効性は認められると判断いたしました。  安全性について、国内第III相試験における有害事象は、本剤装着後の比較的早期に多 く見られ、主なものは月経異常や卵巣嚢胞等であり、1年間装着時の安全性の成績は、 海外での報告との間に重大な相違は認められていないと判断いたしました。さらに、薬 理作用や既承認経口避妊薬等の報告より、有効成分であるレボノルゲストレルの避妊効 果は明確であること、参考となる5年間装着の海外臨床試験成績が存在し、5年間のレ ボノルゲストレルの放出挙動についても、放出速度試験により確認されておりますこと から、市販後に予定される、装着期間の有効性及び安全性の情報収集、並びに妊娠例の 追跡調査も含めた十分な検討を行う必要はありますが、提出された資料に基づき、5年 を超えない継続使用期間を設定して、国内で本剤の使用を認めることは可能であると判 断いたしました。  以上のような検討を行った結果、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、医薬 品第一部会において御審議いただくことが適当であると判断いたしました。本剤は毒薬 又は劇薬、生物由来製品又は特定生物由来製品に該当せず、新投与経路医薬品に該当す ることから再審査期間は6年とするのが適当であると判断しております。薬事分科会へ は報告を予定しております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。 ○永井部会長 御質問等をよろしくお願いいたします。 ○澤田委員 教えていただきたいのですが、この種のものは医療用具か医薬品か、ちょ うど中間的な性質が非常に強いのではないかという感じがします。その仕切りはどのよ うに考えているのか、徐放剤だから医薬品という定義でよろしいのでしょうか。 ○事務局 先ほどの説明にもありましたように、IUDそのものや銅が付加されたIU Dについては、医療用具として過去にも承認され、用いられております。今回の本剤を 全体から見ると、レボノルゲストレルという医薬品が効果にかなり寄与しているという 判断をしまして、今回は医薬品として申請をしていただき、審査をしてきたという経緯 があります。 ○永井部会長 今、循環器で薬剤徐放性ステントというのがありますが、あれはむしろ 医療器材になるわけです。これは医薬品の作用がかなり表に立っているということのよ うですが、いかがでしょうか。 ○土屋委員 同じような話ですが、そうするとこれは処方せん医薬品の指定になるとい うことですか。 ○事務局 事務局としましては、処方せん医薬品に指定する予定です。本剤については、 医師の診断に基づいて治療方法が検討され、使用方法がなかなか難しい等のために、患 者の病状や体質等に応じて適切に選択されなければ安全かつ有効に使用できないといっ た処方せん医薬品の一つの基準があり、それに該当するのではないかと考えております ので、承認時には処方せん医薬品に指定する予定です。 ○土屋委員 間違えるはずがないからいいのですが、ニレーナという薬が世の中には既 に出ておりますので、そのような意味で処方せん医薬品では嫌だと。それは先ほどの話 で、これは医薬品なのかということもあるのですが、類似性がどうのこうのという話に なると、名前としてはそれでいいという気はしますが、処方せん医薬品を処方せんで出 さないというと、つい最近もそれで違反になったのも出てきておりましたので、その辺 が難しいと思いながらも、一応そのような形だということでよろしいと。 ○審査第二部長 本剤の取扱いは専門家が行う必要がありますので、重要な基本的注意 に、本剤の取扱いは、産婦人科医、括弧として母体保護法指定医又は日本産科婦人科学 会認定医が行うことと記載しております。少し特殊な医薬品であることは間違いありま せん。 ○土屋委員 このようなものをデータに登録するときに、剤型というところがいつも気 になるのです。このようなものは剤型としては、その他というものを作るしかないので しょうか。 ○審査第二部長 基本的におっしゃるとおりになるのではないかと思います。 ○永井部会長 よろしいでしょうか。他にいかがですか。よろしければ、これに関して も承認可、ということで分科会報告をさせていただきます。次に議題4に入ります。機 構から審査の概要の説明をお願いいたします。 ○機構 議題4、資料4の医薬品モディオダール錠100mgの製造承認の可否等について、 医薬品医療機器総合機構の方から御説明申し上げます。本剤の有効成分はモダフィニル でフランスのLafon社、今のCephalon社でございますが、そこにより見出された化合物 で、今般の申請はナルコレプシーに伴う日中の過度の眠気を効能・効果とするものでご ざいます。2006年2月現在、本剤は米国、英国等34か国でナルコレプシーに対する適 用が承認されております。本邦では2000年1月に希少疾病用医薬品に指定されている薬 剤でございます。本申請の専門委員としては、資料No.13に記載されております12名の 委員を指名させていただきました。  審査内容でございますが、品質、毒性、薬理、薬物動態に関しましては特に大きな問 題はないと判断しております。なお、本剤の作用機序については未解明な部分がござい ますが、今のところ結節乳頭核を介したヒスタミン神経系の活性化と、GABA神経系 の抑制等によって覚醒促進作用を発現すると考えられております。臨床成績でございま すが、国内では睡眠障害国際診断分類(ICSD)に基づき、ナルコレプシーと診断され た患者を対象としたプラセボ対照二重盲検群間比較試験が実施され、主要評価項目であ ります治療期終了時の覚醒維持検査(MWT)における平均睡眠潜時が本剤群では6.8 分、プラセボ群では4分ということで、本剤群で有意な延長が認められております。ま た、副次評価項目でありますエプワースの眠気尺度スコア、日中の過度の眠気というよ うな自覚的な評価におきましても、プラセボ群に比して本剤群で有意な改善が認められ ております。さらに、長期にわたる改善の維持も確認されており、海外でも同様の結果 が得られております。  安全性についてですが、主な有害事象は頭痛、動悸、口渇等でございますが、特に重 篤な事象は認められておりません。また、本剤につきましては依存性が示唆されており ますが、国内外で実施された依存性の調査結果から、精神依存形成能を有するものの、 強さはアンフェタミンやメチルフェニデートといった薬剤よりも弱いと考えられてお り、身体依存形成能はないと考えられております。なお、本剤は本邦で既に第一種向精 神病薬に指定されております。  最後に、樋口委員より事前に御指摘いただいている点について、機構の考え方を説明 させていただきます。まず樋口委員の御指摘にもありますが、本剤が乱用される可能性 があるということで、我々としてもそのことを危惧しております。安易な処方を避ける ことが望ましいと考えておりますので、適切な診断を促し、安易な処方を避けるために も、ICSDといったような診断基準を用いて診断する必要性を注意喚起する、という ことが重要ではないかということで添付文書の効能・効果に関連する使用上の注意にそ の事項を記載させていただいております。また、依存性、乱用の可能性につきましては、 製造販売後の長期特定使用成績調査の中で引き続き検討する予定となっており、その辺 の可能性についても市販後に十分検討していきたいと考えております。  以上の審査を踏まえまして、本剤の製造を承認して差し支えないとの結論に達し、本 第一部会で御審議いただくことが適切と判断いたしました。本剤は希少疾病用医薬品で あることから再審査期間は10年、原体及び製剤はいずれも劇薬に該当し、生物由来製品 及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しております。薬事分科会には報 告を予定しております。よろしく御審議のほどお願いいたします。 ○永井部会長 御質問、御討論をお願いいたします。 ○樋口委員 既に回答と言いますか、いただいておりまして、基本的にはその内容で了 解いたしました。なぜ、このような質問をしたかと言えば、一つには覚醒作用があるの で、メチルフェニデート、ご承知のリタリンですが、適応外の違法な使われ方をしてき て、社会的に非常に大きな問題となっているということがあります。それに比べると、 確かに、この中でもモダフィニルは依存性が弱いと言われているので、ある意味メチル フェニデートに置き換わっていくような役割を果たしてくれるかといった期待も大きい のですが、まだ依存性の可能性について十分な結論がこの中では出ていなくて、市販後 調査に委ねられているということがあるので、市販後調査の結果を待ってからでもいい わけですし、場合によっては何らかのしっかりした縛りをかけることが必要になるかも しれない、全体を読んでそのような印象を持ちました。  もう一つはそれに関わることで、ナルコレプシー患者を対象にして、診断基準に基づ いて確定診断をしてということですが、それをどのように確認するのかがないわけです ので、診断をしたと言ったらそれでおしまいということにもなりかねないわけです。取 りあえずはこの注意喚起ということで、厳密な診断をする、市販後はそういった指導を すると答えていただきましたのでそれで結構ですが、そのような点でも少し注意深く見 ていく必要があると思って質問いたしました。 ○機構 少し補足いたしますが、どのようにしてICSDの診断基準を満たしているか という点については、使用成績調査の調査表の中に具体的に基準を書いておりますので、 先生方にチェック項目を実行していただき、それが記録として残るような形を今考えて おります。乱用に関しては、先生の御指摘どおりですので、これからも海外状況等も踏 まえて考えていきたいと思います。 ○永井部会長 他にいかがでしょうか。リタリンに比べ、依存性が弱いことの根拠はま だないということですか。 ○機構 今のところ根拠となっているのは、まずは動物での毒性試験で、自己投与試験 では明らかにメチルフェニデートよりは弱いという結果が得られていること。例えば海 外で2年間投与したとき、質問表ですがアンケートの調査結果から、薬物識別質問表に よって少し乱用の可能性があると考えられた患者の割合が、この薬物の方がメチルフェ ニデートよりも低かったといった結果はあります。ただし、調査表ですので、最終的な 転帰や患者の依存性形成がどのぐらいであったかという点については、まだ明確になっ ていない状況です。 ○永井部会長 樋口先生、このようなものは当然依存性が起こり得ると思っていた方が 無難だということですか。 ○樋口委員 一応懸念としては持っていた方がいいだろうと。メチルフェニデートほど ではないという根拠も、今の話のようにはっきりとエビデンスを持っているわけではな いと思いますので。 ○永井部会長 管理についての注意は、添付文書に書かれている程度で大体十分という ことでよろしいのでしょうか。 ○機構 添付文書の注意喚起については、基本的に今のメチルフェニデートと同様の注 意喚起のレベルになっております。もう一つは第一種の向精神病薬に指定されていると いうことで、現場では厳格な管理がなされるべき薬剤と位置づけられていると考えてお ります。 ○永井部会長 よろしいでしょうか。それでは承認可、ということで進めさせていただ きます。続きまして、議題5について機構より概要の説明をお願いいたします。 ○機構 議題5、資料5のコムタン錠100mgにつきまして御説明申し上げます。コムタ ン錠の有効成分エンタカポンは、レボドパの代謝酵素の一つであるカテコール-O-メチ ル基転移酵素(以下COMT)を末梢選択的に阻害する新規な作用機序のパーキンソン病 治療薬です。パーキンソン病治療は、黒質線条体のドパミン含量低下を補うためのドパ ミン前駆体であるレボドパ補充が中心ですが、経口投与されたレボドパの大部分はドパ 脱炭酸酵素及びCOMTにより末梢で代謝されてしまいます。本薬はレボドパ/ドパ脱炭 酸酵素阻害薬の配合剤とともに投与されることにより、レボドパの生物学的利用率を増 大させ、パーキンソン病患者のwearing-off現象を改善いたします。本邦ではノバルテ ィスファーマ株式会社により開発され、今般、臨床試験成績に基づき、レボドパ/ドパ脱 炭酸酵素阻害薬の配合剤であるレボドパ・カルビドパ又はレボドパ・塩酸ベンセラジド と併用する経口剤として製造販売承認の申請がなされたものでございます。なお、本剤 は平成18年3月現在アメリカ等75か国以上で承認されております。本品目の審査に関 しまして、専門委員として資料No.13に記載されております委員を指名させていただきま した。  臨床試験成績を中心に、本品目の審査の概略について説明させていただきます。レボ ドパ・カルビドパ又はレボドパ・塩酸ベンセラジドによる治療を受け、かつwearing-off 現象が認められるパーキンソン病患者を対象とした国内外の臨床試験におきまして、本 剤はレボドパ・カルビドパ又はレボドパ・塩酸ベンセラジドとの併用投与により、症状 日誌によるON時間を延長し、wearing-off現象の改善効果を示しました。しかしなが ら、wearing-off現象を有さない日本人パーキンソン病患者における有効性、安全性は 評価されていないこと。また、国内臨床試験においては精神機能、行動及び気分や日常 生活動作や運動能力検査に関する指標であるパーキンソン病統一スケールのUPDRS Part I、II、IIIにつきまして改善効果が認められなかったことから、wearing-off現象を有 する患者が本剤の投与対象となると判断いたしました。  また、本剤1回100mgから200mgの投与で有効性が確認され、長期投与試験では1回 投与量を100mgから200mgに増量した後にON時間が延長した症例もみられました一方 で、有害事象発現率が用量の増加に伴って増加していたこと等から、推奨用量を1回 100mgとし、効果不十分で、かつ安全性に問題のない症例においては1回200mgへの増 量投与も可能とすることが妥当と判断いたしました。  安全性に関しましては、先ほど御説明申し上げましたとおり、本剤による副作用は1 回100mg群での52.2%に比べて、1回200mg群では72.8%と多く発現し、特に胃不快感、 ジスキネジー増悪等のレボドパ作用増強によると考えられる副作用の発現が高頻度にみ られ、増量時には注意が必要ですが、レボドパ/ドパ脱炭酸酵素阻害薬配合剤を減量した ほとんどの被験者では治験の継続が可能でした。また、悪性症候群等の重大な副作用も 報告されましたが、添付文書で注意喚起されており、適正に使用されれば、承認の可否 に影響するような重大な懸念は認められないと判断いたしました。  以上より、効能・効果として「レボドパ・カルビドパ又はレボドパ・塩酸ベンセラジ ドとの併用によるパーキンソン病における症状の日内変動(wearing-off現象)の改善」 として承認して差し支えないと判断いたしました。なお、製造販売後には本剤を100mg/ 回から200mg/回へ増量した場合の有効性及び安全性と、本剤を200mg/回に増量した場合 の判断理由及び増量効果がみられた症例の背景因子等の情報等を収集する製造販売後調 査が実施される予定でございます。  本剤は新有効成分含有医薬品であり、再審査期間は6年とすることが適当であると判 断いたしております。また、原体及び製剤は毒薬又は劇薬に該当せず、生物由来及び特 定生物由来製品に該当しないと判断しております。薬事分科会では審議を予定しており ます。御審議のほど、よろしくお願いいたします。 ○永井部会長 それでは御質問、御討議をお願いいたします。 ○谷川原委員 本剤はCOMTの阻害剤ということで、添付文書の相互作用、併用注意 のところに、カテコラミンと書かれておりますが、COMTの阻害剤によって、エピネ フリンやノルエピネフリンといった辺りがどれぐらいの影響を受けるのでしょうか。併 用注意と書かれていますが、どれぐらいのリスクがあるのか、そのデータはあるのでし ょうか。 ○機構 今、確認中ですが、基本的には、機序から考えられる注意喚起であって、量的 な検討が細かくなされてはいないと思います。 ○谷川原委員 質問しましたのは、審査報告書の37ページに薬物相互作用に関する記載 があるのですが、ここで機構と議論されているのが、あくまでも抗パーキンソン病薬と の相互作用ですので、添付文書にあるカテコラミンとの相互作用は実際にはどれぐらい の影響があるのか、ないのか、そのデータはいかがでしょうか。 ○機構 審査報告書45ページの海外25試験ではイソプロテレノールとエピネフリンの 同時投与で相乗効果が検討されております。例数としては、さほど多くはないのですが、 特に臨床上何か重大なことが起こっているというようなデータではないと判断しており ます。 ○審査第二部長 非臨床面について、安全性薬理試験などでも特別何か出ているという ことはありません。申請者の提出資料CTDでは、2-4-3のページ10ですが、臨床的に 問題となりうる副作用は予測されなかったということです。基本的には理論的に可能性 に関する注意喚起ですが、データをもう少し整理して改めて報告させていただきたいと 思います。 ○谷川原委員 機序的には影響がありそうですが、実際は注意のレベルでいいのか、も う少し高いレベルの注意を喚起するのかというのは、あくまでもデータに基づいて判断 しなければいけないので、そこを伺いたかったのです。 ○審査第二部長 臨床試験等において特に何等かの事象があったということではなかっ たわけで、特別大きい問題が検出されていたからという話ではないということは申し上 げられます。 ○谷川原委員 市販後、引き続きモニターしていただければと思います。 ○永井部会長 よろしいですか。その他、御意見があればお願いいたします。COMT 阻害薬というのは初めての薬剤だということですね。 ○機構 この酵素を阻害する薬は国内初です。 ○永井部会長 薬事分科会報告で審議が必要になってくるということですね。初めての 酵素阻害薬ということですので、分科会の方で審議を進めるということで挙げさせてい ただきます。それでは議題6に入ります。サーティカン錠の製造販売承認について説明 をお願いいたします。 ○機構 議題6、資料6の医薬品サーティカン錠0.25mg、同0.5mg、同0.75mgについて 機構より御説明申し上げます。エベロリムス(以下本薬)はスイスノバルティスファーマ 社により、1992年にシロリムスから誘導されたマクロライド系免疫抑制剤でございま す。細胞内においてFK-506結合タンパク-12と複合体を形成し、この複合体が哺乳類 におけるシロリムスの標的タンパクであるmTORに結合することにより、T細胞増殖 を抑制し、免疫抑制作用を示すと考えられており、同様に、FK-506結合タンパク-12 に結合するタクロリムスやシクロフィリンに結合するシクロスポリンといったカルシニ ューリン阻害剤とは異なる作用機序を有するとされております。  本薬の申請効能であります心移植においては、術後急性期に高頻度で発現する急性拒 絶反応のほか、遠隔期においては移植心冠動脈病変、いわゆるCAVに代表される慢性 拒絶反応がみられ、患者の長期的予後に大きな影響が与えられることが知られておりま す。CAVは血管平滑筋細胞の増殖により、移植心の冠動脈内膜が肥厚するもので、遠 隔期における死亡又は心移植片廃絶の原因となります。日本よりも心移植に早期に着手 した欧米においては、既にCAVを防止するためにmTOR阻害剤が注目され、類薬で あるシロリムス製剤において、米国では心移植に適用がないにもかかわらず、心移植の 維持免疫抑制療法における使用が徐々に増加している傾向を示しているとの報告もあり ます。  本薬においてもin vitro、in vivoの試験において、血管平滑筋細胞の増殖抑制効果 が確認されており、本薬により心移植患者の移植後の冠血管内構造を正常に維持するこ とが期待されております。本薬は心移植及び腎移植の拒絶反応抑制に対して、2003年7 月にスウェーデンにおいて承認を取得した後、ドイツ、フランス、スイス等、 2006年 9月15日現在59か国で承認されてございます。なお、米国、英国、カナダでは承認さ れておりません。本邦における心移植の施行件数は極めて限られているものの、本薬が 承認されている欧州で心移植を行い、本薬による免疫抑制治療を受けている渡航移植患 者が帰国する可能性があり、また国内移植例においても、遠隔期の主たる死亡原因であ るCAVを防ぐ手立てを取る必要があるとして、2004年3月に日本心臓移植研究会等よ り厚生労働省へmTOR阻害薬の国内導入に関する要望書が提出されております。また 本薬は、厚生労働省未承認薬使用問題検討会議において、検討対象薬剤の一つとして挙 げられており、平成17年8月9日には優先審査品目に指定されております。本品目の専 門協議では本日配付資料No.13に示すような先生方を指名させていただいております。本 剤において規格及び試験方法、毒性、薬理、吸収・分布・代謝・排泄等に関して提出さ れた資料内容は、妥当と判断されましたので、臨床試験成績について述べさせていただ きます。  患者を対象とした臨床試験成績としては、新規心移植患者を対象とした海外第III相試 験成績及びその継続試験成績を提出されております。また用法・用量の補足資料として、 新規腎移植患者を対象とした海外第III相試験成績が提出されています。機構は本申請に 当たり、提出された臨床試験成績がすべて海外臨床試験で実施された試験であることに ついて、心移植を欧米と比較して、国内での施行数が極めて限られており、国内臨床試 験の実施は困難であると考えられること。心移植に対する治療環境には、日本と欧米と では大きな差がないと考えられること。高度医療であり、患者は専門医の管理下に置か れ、個々に治療法が検討される領域であること等を考慮すると、海外の臨床試験成績か ら本薬の有効性、安全性を評価し、本邦の患者への適用可能性を考察することに問題は ないと判断しました。  まず、有効性に関しては、新規心移植患者634例を対象としたシクロスポリン及びス テロイドの併用下で、アザチオプリン並びに本薬1日用量1.5mg及び3mgの有効性及び 安全性を比較した2年間の海外第III相二重盲検比較試験において、主要評価項目の移植 後6か月後の「効果不十分」、死亡又は追跡調査不能、移植心廃絶等のものを含んだ複 合評価項目ですが、「効果不十分」の発現率において、アザチオプリン群と比較して有 意な低下が認められ、アザチオプリンに対する優越性が認められました。また引き続き 行った2年間の継続投与試験においても、その効果は維持されて、アザチオプリン群に 対して有意差が認められております。なお本薬の特色とされている血管内膜の肥厚抑制 効果については、副次的項目として評価されており、効果を示唆する結果が得られてい ますが、その評価自身は必ずしも十分ではなく、また移植心関連イベント及び生存率等 への長期予後の改善について、提出された資料から十分に確認することができませんで した。これについては機構としては本薬の心移植後の長期予後に対する有用性は、現時 点では不明であるものの、免疫抑制剤の第一義的の目的である急性拒絶反応の発現を含 む複合評価項目において、本薬はアザチオプリンに対して有意に高い抑制効果を示して いることから、本薬の有効性は認められたと判断しております。  安全性については、移植後48か月の安全性において、副作用で1.5mg/日群、3mg/ 日群、アザチオプリン群でそれぞれ74.6%、75.8%及び69.6%に認められ、移植後1,530 日目までには96例の死亡が認められましたが、いずれも各群間での大きな差は認められ ませんでした。なお本薬の悪性腫瘍患者を対象とした試験において、本申請用量よりも 高用量を投与した患者において、高頻度で肺臓炎の発現が認められており、腎及び心移 植についての第III相試験でも最大1.4%程度の頻度で肺臓炎が認められていること、肺 臓炎発現リスク因子も明らかにされていないことを鑑みて、呼吸器系の異常には注意が 必要であると考えられ、添付文書に重要な基本的な注意として記載するとともに、製造 販売後調査において、重点項目に挙げて調査することを考えております。  最後に用法・用量については、海外第III相試験においては、1日用量として1.5mg、 3mgの固定用量で実施されております。本申請においては事後的な解析結果により、ト ラフ濃度で管理する方法が提案されております。機構は第III相試験の有効性及び安全性 に係る解析の結果を踏まえ、目標トラフ濃度3〜8ng/mLとし、患者ごとに投与量を調 整することは妥当であると判断しました。また製造販売後において、本薬及び本薬に併 用するシクロスポリンについては、治療薬物濃度モニタリングを必須とし、製造販売後 調査において情報を集積するよう申請者に指示しています。なお開始用量については、 申請時には1日用量として1.5mgとされておりましたが、個体差が大きいこと、目標ト ラフ濃度への迅速な到達のために、3mgまで投与を可能とし、第III相試験における投与 量とトラフ濃度の推移を添付文書で情報提供した上で、開始用量を1.5〜3mgとしたと ころです。以上のとおり機構での審査の結果、新規心移植患者を対象とした海外第III相 試験において、拒絶反応抑制効果が認められ、注意すべき有害事象はあるものの、安全 性について受認可能であると考えられたことから、効能・効果を「心移植における拒絶 反応の抑制」として承認して差し支えないと判断し、医薬品第一部会で審議されること が妥当であると判断しました。また国内では心移植患者を対象とした臨床試験が実施さ れておらず、国内患者数も極めて限られていることから、製造販売後の全例調査を承認 条件として設定する予定です。なお原薬は毒薬に、製剤は劇薬に該当し、生物由来製品 にも特定生物由来製品にも該当しないと判断しています。また再審査期間は対象患者は 少なく、本剤における長期予後への影響について確認する必要があることから、10年が 適当であると判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。御審議のほ どよろしくお願いします。 ○永井部会長 いかがでしょうか。土屋委員どうぞ。 ○土屋委員 よく分からなかったのが、用量の関係と、この規格の3規格ですが、もち ろん計算をしながらやっていくので、微調整でいろいろな規格があるのだろうと想像は つくのですが、そうすると今度はこの刻みで計算したときに、計算式は出ていましたが、 逆に言えばこの刻みで大丈夫なのか。その辺りが比較数が多く、ただ単純にここを読め ば0.75mgなどそういうところでやれる話になっているので、その下に二つの規格がある ことの意味、それが本当にこれくらいの刻みでないと、用量調整をしたいときにうまく いかないということなのですか。 ○機構 御説明します。1日用量ですので、1.5mgを使用するということは、1回当た り0.75mgに相当することになります。そうすると1日2回の投与になるので片方だけ 0.25落とす、あるいは両方0.25落とすということで、0.5mg。さらに片方が0.25mgに 落とすと0.25と0.25と。ですから最大1mgを0.25mgずつ落としていけるという形にな っております。このような刻みで実際にコントロールできたかに関しては、腎移植患者 についての試験結果が出ており、この製剤についてはトラフ濃度3以上にするという上 限はなかったわけですが、3以上で設定する2306試験と2307試験という結果が出てお りますので、そういう意味ではこの刻みで実際にコントロールできているという実績は、 腎移植患者の例ではデータがあります。先ほどアメリカでは承認されていないと申し上 げましたが、アメリカにおいては実際に二つのターゲット、トラフ濃度をおいて、臨床 試験をこの精度で行っていますので、そういう意味ではこれより細かい刻みというのは、 海外においても存在していないと考えています。 ○永井部会長 谷川原委員どうぞ。 ○谷川原委員 TDMは必須ということで、添付文書によく書かれている本薬の目標の トラフ、ターゲット濃度、シクロスポリンと併用したときに、シクロスポリン側のター ゲットの目標濃度も、非常に分かりやすく書かれておりますので、このように明確に添 付文書に書いていただくと非常に助かります。それに関して質問ですが、TDMは必須 なのですが、この薬剤のTDMをやったときに、保険適用は同時に大丈夫なのですか。 特定薬剤治療料は中に。 ○機構 TDMが実施できるような薬剤は存在しており、海外でもあるものが日本にも 入ることになっています。 ○谷川原委員 測定法の承認ということと、医療現場でそれをTDMをやったときに、 診療報酬として、検査に診療報酬は付くという場合の二つの面があり、それを同時に整 備していただかないと、ここでいくら縛りをつけても医療現場では困ってしまうものが あります。 ○審査管理課長 このものの承認をするということになると、薬価基準に収載するかど うか。すなわち保険局との協議を始めるということになります。したがって本日この部 会において、承認をすることで差し支えないという結論が出た際に、保険局とその点も 踏まえて、協議に入りたいと思っています。 ○谷川原委員 ではお願いですので、是非、整合性をもった形で決着させていただけれ ばと思います。よろしくお願いします。 ○澤田委員 今のお話は、キットで量ることを前提にしているということですか。いわ ゆる体外診断薬で。 ○機構 はい、そのとおりです。ただ体外診断薬とおっしゃいましたが、現時点では体 外診断薬の承認はもっていません。 ○谷川原委員 保険は別問題で、外注検査であってもキットであっても、一応診療報酬 が付けばできるのですが、それがないとなかなか現場では難しいということです。 ○機構 キットは海外で承認されているものはあります。 ○審査管理課長 国内で直ちにアベイラブルな状況ではなさそうですが、先ほど谷川原 委員から御発言があった件というのは、血中濃度のコントロールを医療保険の中でやる ときに、ある特定の薬剤については、特別の診療報酬がセットされている。このものに ついてもそのようなことが必要だと判断するのなら、それがこの薬剤の保険適用に当た って、血中濃度測定というのも、医療保険の中でカバーができるようにという御意見だ ろうと思います。 ○谷川原委員 おっしゃるとおりです。 ○審査管理課長 そういうことで申し入れをしたいと考えております。 ○永井部会長 そのほかいかがでしょうか。 ○谷川原委員 シクロスポリンの併用時に、腎障害増強ということがあったのですが、 薬物動態学的には、本薬を併用してもシクロスポリンの動態、血中濃度が上がるわけで はないのですが、シクロスポリンの腎障害は増強するということは、何か薬力学的な相 互作用ということですか。腎臓に対する、輸入細動脈等に対する影響があるのですか。 ○機構 おっしゃるとおり動態的には影響を受けるのは、むしろ本薬側が濃度変化を受 ける形になりますが、実際にはシクロスポリン側は濃度の変化は受けない。ただ実際に 観察されている腎毒性は増強してしまう。実際にほかの試験でシクロスポリンをテーパ リングする、要するに減量する試験でその比較をしている試験が、何本か出ております。 今、進行中の海外の試験もそうですが、シクロスポリン量をむしろ落としていくことに より、この腎毒性を落とすということが見えていますので、そういう意味では薬理学的 なものと推察されております。実際に添付文書で注意喚起をしておりますが、現在、本 薬を使わないシクロスポリン療法においての、各病院で設定されたシクロスポリン量よ りも、必ず落として使ってくださいということを注意喚起させていただき、その辺りは 安全対策に努めたいと考えております。 ○永井部会長 そのほかいかがでしょうか。実際に渡航移植を受けた方で、この薬を使 っていらっしゃる方というのは、今、日本にいるのですか。 ○機構 数例いらっしゃいます。 ○永井部会長 それは個人輸入で対応しているのですか。 ○機構 そういうことになると思います。 ○永井部会長 よろしいですか。ほかに御質問がなければ承認可、ということで分科会 報告させていただきます。ありがとうございました。次に議題7です。機構から御説明 お願いします。 ○機構 議題7、医薬品フォリスチム注50及び同75について機構より御説明いたしま す。本剤の有効成分であるフォリトロピンベータは、オランダ・オルガノン社により開 発された、遺伝子組換え技術の応用により製造された卵胞刺激ホルモンです。フォリス チム注75については、平成17年4月11日に「複数卵胞発育のための調節卵巣刺激」の 効能・効果で承認されております。今回の申請は、「視床下部-下垂体機能障害に伴う無 排卵及び希発排卵における排卵誘発」の効能・効果の取得を目的としており、既承認の 効能・効果と用法・用量が異なることから、既承認製剤であるフォリスチム注75の他、 同50も申請されております。本邦では既に排卵誘発を目的とした尿由来の下垂体性性腺 刺激ホルモン製剤が用いられておりますが、本剤は遺伝子組換え技術を応用して製造さ れることから、大量生産及び安定供給が可能であること、ヒト由来のウイルスやタンパ ク質等の不純物を含まないこと等の利点があり、申請者は本剤の承認を得た後、自社の 既承認のヒト尿由来下垂体性性腺刺激ホルモン製剤については、本剤への早期切替えを 行う意向を示しております。なお本剤は、黄体形成ホルモンを含有しないことから、既 承認のヒト尿由来製剤では、投与対象とされる黄体形成ホルモンの基礎分泌がない患者 に対しては、無効である旨を適切に情報提供するとともに、申請者は□□□□□□□□ □□□□等の開発を進める方針も示しております。  海外においては、平成17年6月現在、本剤と同じ注射液剤はEU諸国、日本を含む世 界72か国で承認されております。また注射液剤以外に凍結乾燥製剤も米国を含む世界 91か国で承認されております。本品目の審査に関して、専門委員として配付資料No.13 に記載されている委員が指名されました。機構における審査の概略を御説明します。臨 床試験について、国内第III相試験として2試験が行われ、精製下垂体性性腺刺激ホルモ ンとの比較並びに本剤の増量幅を25又は50国際単位とした投与方法が検討され、排卵 率を主要評価項目とした成績から、視床下部-下垂体機能障害に伴う無排卵及び希発排卵 における排卵誘発に関する本剤の有効性は示されていると判断しました。  また本剤の用法・用量を検討した国内外の臨床試験において、50国際単位よりも25 国際単位の増量幅で増量した場合の方が、有効性及び安全性の面で優れており、国内臨 床試験では比較的少数例の検討しか行われておらず、製造販売後に十分な情報収集は必 要とは考えますが、本剤の用法・用量における増量幅は原則として25国際単位が妥当と 判断しました。  安全性については、製造販売後に卵巣過剰刺激症候群、多胎妊娠、出生児等に関し更 なる情報収集は必要と考えますが、臨床試験において、特に臨床使用上大きな問題とな る有害事象は発現しておらず、承認の可否に影響するような重大な懸念は認められない と判断しました。  以上のような検討を行った結果、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、医薬 品第一部会において、御審議いただくことが適当であると判断しました。なお、製剤は 毒薬及び劇薬には該当せず、生物由来製品に該当し、再審査期間は既承認時に指定され た6年間の残余期間である平成23年4月10日までとすることが適当であると判断して おります。薬事分科会へは報告を予定しております。御審議のほどよろしくお願いいた します。 ○永井部会長 では御質問、御討論をお願いします。 ○永井部会長 黄体形成ホルモンの違いはあるけれども、尿由来のものと効能は全く変 わらないということでよろしいのですね。多少は何か構造上の違い等はあるのですか。 ○機構 お答えします。効能は変わりませんが、対象患者について、LHの分泌がほと んどない患者は、本剤の対象ではないので、使用上の注意の対象外患者の中に、注意喚 起として記載しております。 ○永井部会長 よろしければ承認可、ということで分科会報告させていただきます。あ りがとうございました。次に議題8です。機構から概要の御説明をお願いします。 ○機構 それでは議題8、資料8、医薬品プログラフカプセル0.5mg、同1mgの製造販 売承認事項一部変更承認の可否等について御説明します。本剤は免疫抑制剤であるタク ロリムス水和物を有効成分として含有するカプセル剤です。本邦では現在までに移植領 域、「全身型重症筋無力症」及び「関節リウマチ」の効能・効果について、既に承認を 取得しております。本申請はステロイド剤だけでは治療困難なループス腎炎患者に対し て、免疫抑制剤を投与する効能・効果を追加する一部変更承認申請です。ループス腎炎 の適応については、2002年12月に希少疾病用医薬品に指定されております。本効能に ついて海外では承認されておらず、現時点で海外での開発予定はないとのことです。本 品目の専門協議では本日の配付資料No.13に示すような方々が、専門委員として指名され ております。本剤の品質、薬理、薬物動態及び毒性については、既承認申請時にも評価 されており、その他特段問題となる事項はありませんでしたので、臨床試験成績につい て述べさせていただきます。  まず、有効性に関しては、ステロイド剤単独ではコントロールできないループス腎炎 患者63例を対象とした国内第III相プラセボ対照二重盲検試験において、主要評価項目で ある「ループス腎炎の活動性所見の合計スコアの投与前値からの変化率」は本剤群-32.9 %、プラセボ群2.3%であり、両群間に統計学的有意差が認められました。また個々の 活動所見でみても、ループス腎炎治療において、臨床的に意義があるとされている1日 尿蛋白量の減少及び補体値の上昇について、本剤群ではプラセボ群に比べて、有意な効 果が認められており、本剤のループス腎炎に対する有効性は確認されたと判断しており ます。  次に安全性に関しては、検討された症例数が少ないものの、既承認効能の安全性プロ ファイルと比較して新たな問題は認められていませんが、第III相試験においてクレアチ ニンクリアランスの低下が認められていることから、定期的に血中濃度を測定するとと もに、腎機能検査値の推移には特に注意を払い、ループス腎炎の治療法に精通している 医師のもとで使用することとしております。また長期投与による有効性(腎不全、透析 への移行阻止)及び安全性等については、製造販売後の特定使用成績調査において、本 剤投与が確認できた全症例を対象に、1症例あたり10年間の観察期間で確認する予定で す。  以上のとおり医薬品医療機器総合機構での審査の結果、ステロイド剤だけでは治療困 難なループス腎炎に対する本剤の有効性及び安全性は認められ、承認して差し支えない との結論に達し、医薬品第一部会で審議されることが妥当と判断しました。本剤は希少 疾病用医薬品であることから、再審査期間は10年とすることが適当であると判断してお ります。薬事分科会では報告を予定しております。御審議のほどよろしくお願いいたし ます。 ○永井部会長 御質問、御討論をお願いします。 ○堺委員 質問ではなく要望です。以前に私が専門委員として発言したことと冒頭一部 重複します。ループス腎炎は普通の糸球体腎炎と違い、腎生検の組織型の経過が途中で 変わることが知られております。一方、ループス腎炎の予後は組織型に非常に密接に関 連しているということも知られており、今回の計画の中の製造販売後調査基本計画の中 では、本剤投与前の腎生検実施状況という項目があります。ここは是非、お願いしたい と思うのですが、組織型が変わる可能性がある疾患ですので、できるだけ本剤投与前に 近いところで、腎生検がなされているということが望ましいと思います。実際にはなか なか難しいことですし、どのくらい近ければいいのかということもまだ定まっておりま せんが、例えば1年以内など、なるべく近いところの腎生検をお願いすることを今後御 指導いただければと思います。よろしくお願いします。 ○機構 御指摘ありがとうございます。臨床試験では69例中18例、21.4%で投与開始 1年前の時点で腎生検が実施されております。おそらくこれが承認後においてもあまり 変わることはないとは思うのですが、実際に再燃されたり、あるいは腎機能が悪化した ときには、通常の治療の中においても腎生検がおそらく実施されるものと考えますので、 若干これよりは頻度が上がるのではないかと思っております。申請者にもその旨、十分 に確認していくようにということを指導したいと思います。 ○永井部会長 そういうことでよろしいですか。 ○堺委員 はい。 ○永井部会長 そのほかいかがでしょうか。 ○谷川原委員 血中濃度モニタリングのことですが、先ほどの心移植は非常に明快だっ たのですが、今回のは添付文書を読むと、確かに用法・用量に関連する使用上の注意の 所で、血中濃度を測定しというのは、これはおそらく主に安全性面からということです ね。腎毒性の発現を防ぐためになのですが、ターゲットをどの辺りにするかということ は、添付文書に書いていないのです。いろいろ見ると、実際の薬物動態という所に、ル ープス腎炎患者25例で治験をしたときは、こういう値であったということが書いてある のですが、これをターゲットにするのか、いわゆるもう少し通常自己免疫疾患で使われ ているターゲットで同じでいいのか。その辺りが非常に読み取りにくいのですが、どう なのでしょうか。 ○機構 実際の血中濃度と有害事象発現との相関性は、必ずしも本疾患においては明ら かになっていないということがあります。そこで敢えてここでは数値を挙げてはおりま せんが、移植領域では20ng/mLが目安になっており、少なくとも20ng/mLを越えた時点 で、問題があるであろうということはあります。ただ本疾患においては、先ほど申し上 げたような有害事象と血中濃度の関連は明確ではないということです。 ○谷川原委員 確かに移植の場合はGVHD等を防ぐためもあり、結構高めに設定して いると思うのですが、20を越えると本当にそれはかなり副作用リスクが高くなります。 ただこういうほかの自己免疫疾患の場合は、もう少し低めの所に実態として、例えば5 〜10ぐらいを目標にして、実際の医療現場のTDMではやっていると思うのです。です から同じように効果ではなく、安全性のモニターであるならば、同じような考え方を使 っていいのではないかと思うのです。敢えてわずか20例ぐらいのループス腎炎だけで、 その結果を出すというのは、土台無理だと思いますから、やはり今アベイラブルな情報 を総合的に判断して、そこまで添付文書に書き込むほどしっかりしたエビデンスがなけ れば、また別の形で医療現場に情報提供するなり何なり、使用上の注意の解説などとい う冊子もありますし、そういう形でもう少し明確に出していただいたほうがよろしいの ではないかと思います。 ○機構 御指摘ありがとうございます。実際に使用上の注意の解説等につきましては、 臨床試験成績等を十分に反映させるようにということで、以前より指導しております。 本剤についてはループス腎炎の治療に十分精通している医師のもとで、使用するように ということもありますので、その辺については危惧するべきものは少ないのではないか と考えております。また製造販売後において、血中濃度についても、測定することとし ておりますので、もう少し、市販後において確認していくことも考えております。 ○谷川原委員 それはお願いしたいと思います。市販後にもう少しデータの厚みを増し ていただくことは大事ですし、この適応だけではなく、例えば関節リウマチ、重症筋無 力症などほかの領域で今まで一体どれくらいの蓄積があるのかということが、やはり一 つの安全性に関しては、疾患領域を越えて考えればいいのではないかと思います。 ○審査管理課長 正直申し上げて、使用上の注意に「血中濃度を測定し、投与量を調節 することが望ましい」と書くわけですから、そこに参考となる情報が何もないというこ とでは、ここに書く意義が問われるわけだろうと。ですから限られたループス腎炎の中 での議論というのがしっかりしたデータではないので、なかなか数字が出せないと機構 から繰り返しお答え申し上げておるわけですが、谷川原委員がおっしゃっているように、 もっと安全性の面だから広く考えてもいいのではないかという御質問をいただいており ますから、その辺りも踏まえて、企業とどういった形であれば情報提供ができるのか、 いずれにしても測定することが望ましいと言いながら、何もないというのもあまりにひ どい話ですので、そこはそれでやってみたいと思っております。 ○谷川原委員 よろしくお願いします。ありがとうございました。 ○審査第三部長 いまの谷川原委員の御指摘は、非常に例数が少ないことから、非常に 難しいところもあり、少しこちらで検討させていただきたいと思います。 ○永井部会長 臨床成績でいちばん有効性が出たのは、尿蛋白ですか。 ○審査第三部長 基本的に有効性は、尿蛋白と血中の補体で有効性が示されております。 それで有効性が出ております。 ○永井部会長 堺委員、大体それを見ればいいということでしょうか。 ○堺委員 ループス腎炎の場合は、確かに補体C3がいちばん活動度をよく反映します。 一般に腎炎の場合は薬を投与すると、最初に変化してくるのが蛋白尿です。しかしやは り最終的な目標は腎機能の保全ですので、長期的には腎機能の追跡が必要になります。 ただ最初に戻りますが、ループス腎炎の活動度という点では、補体を参考にします。 ○永井部会長 そのほか何か御意見ございますか。よろしいでしょうか。それではこれ も承認可、ということで分科会報告させていただきます。ありがとうございました。次 に議題9、希少疾病用医薬品の指定の説明をお願いします。 ○事務局 イデュルスルファーゼを希少疾病用医薬品として、指定することの可否に関 して、資料9に基づき説明します。資料9のいちばん上にある審査報告書のタブを御覧 ください。医薬品医療機器総合機構が事前評価を取りまとめておりますので、対象患者 数、医療上の必要性、開発の可能性の3点に関して御説明します。品目の名称は、イデ ュルスルファーゼ、対象疾患がムコ多糖症II型(ハンター症候群)。申請者がジェンザイ ム・ジャパン株式会社です。まず、対象疾患については、ムコ多糖症II型の国内におけ る患者数については、平成17年度の厚生科学研究において、2006年までの26年間で265 名程度の患者の存在が推定されております。さらに本疾病は効果的な治療法がなく、患 者の寿命が短いことを考慮すると、その半数が死亡していることが考えられることから、 現時点における国内の患者数は120〜140名程度と推定しており、希少疾病用医薬品の指 定要件である5万人以下を満たすと判断しております。  次に医療上の必要性は、ムコ多糖症II型は、ムコ多糖を分解するリソソーム酵素の一 つであるイズロン酸-2-スルファターゼの欠損や酵素活性の不足により起こる疾病で、 ムコ多糖の分解が阻害され、全身組織の細胞内リソソームに分解されないムコ多糖が蓄 積されることにより、機能障害を引き起こします。その多くは10〜15歳ごろまでに死亡 するとされております。現在の治療法としては、骨髄移植や対症療法がありますが、骨 髄移植では移植に伴う危険性等の問題もあり、対症療法では臨床症状の進行を防げない など、確立した治療法とはされていないということです。本剤は欠損した酵素を補充す ることを目的で開発された、遺伝子組換え技術により作られた酵素製剤であり、ムコ多 糖症II型の治療法として、医療上の必要性があると判断しております。  三つ目に開発の可能性については、海外で日本人患者が4名参加した臨床試験が実施 されており、歩行障害等の機能障害の回復など改善が認められており、米国でも本年7 月に承認されておりますので、本邦においても開発の可能性はあると判断しております。 以上、対象患者数、医療上の必要性、開発の可能性の3点を考えると、本剤については 希少疾病用医薬品としての要件を満たすと判断しております。御審議のほどよろしくお 願いします。 ○永井部会長 それでは御審議をお願いします。 ○早川委員 早川です。やっと子供の薬が出てきましたので、一言発言させていただき ます。今、御説明がありましたように、これは先天代謝異常症の特殊なもので、非常に 重症で大抵は死んでしまうという子供の病気です。従来治療法がなく、対症療法にたよ っておりました。骨髄移植はほとんど難しく、チャンスもございませんし、なかなか実 際的には行われません。したがって酵素の補充と申しますか、置換療法が非常に期待さ れており、患者は大変少なく、私はまだ見たことがあるかないかという程度の患者です。 1年に10名以上は全国では出ていますので、是非、御承認いただきたいと思います。一 言だけ申し上げました。 ○永井部会長 御意見いかがでしょうか。これは類効薬は特にないわけですか。初めて ですね。 ○機構 はい、そうです。 ○永井部会長 よろしいでしょうか。それでは希少疾病用医薬品の指定可で進めさせて いただきます。ありがとうございました。では報告事項に移ります。二つありますので、 続けて御説明お願いします。 ○機構 それでは議題1、医薬品ボンアルファハイ軟膏20μg/gの製造承認事項一部変 更承認について報告します。資料10、本剤は活性型ビタミンD3誘導体であるタカルシ トールを含有する外用剤であり、現在、尋常性乾癬(ただし他の外用療法で十分な効果 が認められない皮疹あるいは難治性の皮疹)の効能・効果で承認されております。今般 帝人ファーマ株式会社から、効能・効果の「ただし」以下の限定を削除する製造承認事 項一部変更承認の申請がなされたものです。総合機構における審査の結果、本剤を承認 して差し支えないと判断しました。  続いて議題2、医療用医薬品の再審査結果について報告します。資料11の医薬品再審 査確認等結果通知書、「塩酸ペンタゾシン」を御覧ください。これらの品目について市 販後の使用成績調査の成績等に基づいて、再審査申請が行われ審査の結果、薬事法第14 条第2項各号に掲げられている承認拒否事由のいずれにも該当しないこと、すなわち、 効能・効果、用法・用量等の承認事項については変更の必要はない「カテゴリー1」と 判定したものです。以上です。 ○永井部会長 ありがとうございます。もし御質問等ございましたら、よろしくお願い します。よろしければこの2件については御確認いただいたということで進めさせてい ただきます。  議題は以上ですが、前回10月の当部会で審議を行ったセレコックス錠、COX-2阻害薬、 セレコキシブ錠ですが、これについて資料が配付されております。事務局から御説明お 願いします。 ○事務局 簡単に御報告いたします。前回10月の当部会において、セレコックス錠につ いて御審議をいただいた際に、使用上の注意等の使用期間に関する記載などについて御 質問、御意見をいただきました。その後、申請者とも協議をして、本日、添付文書の改 訂版という形で配付させていただきました。配付資料の前半部分が添付文書の改訂版で、 改訂した所に下線を引いております。後半が前回お配りしたものとの新旧対照表となっ ております。主な変更点は3ページ、枠囲いの中の用法・用量に関連する使用上の注意 において、(2)本剤の投与開始後2〜4週間経過しても改善が認められない場合は、他 の治療法の選択について考慮する。ここは新たに追加しております。(3)の前回の部会 でお配りしたときには、本剤の1年を超える長期投与時の安全性は確立されていないと いう、そういうところで切っておりましたが、その背景を詳しく下線の所を加えており ます。その下の1、慎重投与の(1)心血管系疾患又はその既往歴がある患者ということ ですが、これは前回のときはもう少し下の(5)辺りに書いてありましたが、本剤の今ま での御議論でいちばん重要なものを冒頭に書くということで、順番の変更をしておりま す。ほかにも細かい改訂をしておりますが、主にはそういうところです。  それから前回、院外処方をされたときに、特に内服経口薬ですので、安全性上の対策 についても、御意見、御議論があり、こちらについては調剤薬局内の薬剤師に対して情 報提供を十分にやるということで、日本薬剤師会にも御協力をお願いして、そこからネ ットワークを使って、本剤の適正使用の情報等を周知徹底するということで、申請者の 企業、薬剤師会とに話をしているところですので、本剤を売り出すときまでにはその辺 りをきちんと調整をした上で、やっていきたいと思っております。以上です。 ○永井部会長 いかがでしょうか。 ○谷川原委員 前回いろいろ指摘、意見があった品目ですが、ここで出た意見に対して、 適切に対応していただきまして、どうもありがとうございました。ただ今後は、ここで 議論したことが、本当に医療現場における情報提供というものに、適切に反映されるよ うに是非、お願いしたいと思います。以上です。 ○永井部会長 ほかにございますか。 ○長谷川委員 先月私は欠席したので、タイミングがまずいのかもしれませんが、この 添付文書の8ページのその他の副作用の消化器、頻度不明という欄に、歯の障害という 記載があります。もともと頻度不明の欄ですので、特異性と言いますか、曖昧さという のは避けがたいのだろうと思うのですが、歯の障害というと非常に広い概念で、なおか つそれに含まれるものの頻度が非常に多い用語です。こういうように記載されると情報 そのものの価値が逆にあまりない感じもします。おそらく外国の報告なのかもしれませ んが、もう少し特異的に記載ができるものならば、そうしていただいたほうが、ありが たいと思います。これはもともと頻度不明の所に入っていることから、なかなか難しさ もあろうかと思いますが、もし可能ならばということでお願いしたいと思います。 ○永井部会長 いかがでしょうか。 ○審査管理課長 企業とも相談して、そのような形で処理させていただきたいと思いま す。 ○永井部会長 ほかにございますか。それではこの件については御了解いただいたとい うことで進めさせていただきます。ほかに事務局から御連絡がありましたらお願いしま す。 ○事務局 御報告がございます。まず、一点が過去に当部会で御審議をいただいた品目 の承認についての御報告です。9月22日の薬事分科会を経て、10月20日に今から申し 上げる11の医薬品について承認をしております。レキップ錠、塩酸ロピニロール、パー キンソン病の薬です。アルチバ静注用、レミフェンタニル、これは全身麻酔の導入・維 持の鎮痛の薬です。それからソナゾイド注射用、これはペルフルブタンというもので、 肝腫瘤性病変の造影に使うものです。それからリプレガル点滴静注用、ファブリー病に 使う薬です。それからプレミネント錠、これはロサルタン、ヒドロクロロチアジドの配 合剤の高血圧の薬です。注射用オノアクト、ランジオロールの手術後の頻脈性不整脈の 効能追加。ル・エストロジェル、これはエストラジオールの外用剤です。アレグラ錠の 小児用量の追加。タケプロン静注用、これはランソプラゾールの注射剤です。それから オキノーム散、オキシコドンの速効性の製剤です。最後にアウドラザイム点滴静注液、 これはムコ多糖症I型に対する薬です。以上11の薬について10月20日に承認しており ます。  次回の部会の予定は、来年1月31日(水)午後2時から開催させていただきますので、 よろしくお願いいたします。 ○審査管理課長 最後になりますが、薬事・食品衛生審議会の委員の方々の任期は、来 年1月22日までとなっております。この部会についてはこのメンバーで部会を開催いた しますのは、本日が最後になっております。今後の予定については、個別に委員の方々 に連絡を取らせていただいておりますが、委員の選出の規準に通算した任期の制限など の規定があり、一部の委員におかれては、本日の部会をもって退任していただかざるを 得ない状況です。誠に長い間ありがとうございました。この部会を離れても、直接、間 接にまた御指導を賜る機会もあると思いますし、お気づきの点があればどしどし教えて いただければありがたいと考えております。本当にありがとうございました。 ○永井部会長 それでは本日これで終了いたします。どうもありがとうございました。 ( 了 ) 連絡先: 医薬食品局 審査管理課 課長補佐 山本(内線2746)