06/11/30 疫学研究指針の見直しに関する専門委員会 第3回議事録 第3回     科学技術・学術審議会生命倫理・安全部会 疫学指針の見直しに関する専門委員会     厚生科学審議会科学技術部会 疫学研究指針の見直しに関する専門委員会 議 事 録 文部科学省研究振興局ライフサイエンス課 厚生労働省大臣官房厚生科学課 第3回 科学技術・学術審議会生命倫理・安全部会疫学指針の見直しに関する専門委員会     厚生科学審議会科学技術部会疫学指針の見直しに関する専門委員会 日時 平成18年11月30日(木) 16:00〜 場所 厚生労働省 省議室 ○林研究企画官  傍聴の皆様におかれましては、傍聴に当たって、すでにお配りしてある注意事項をお守りくだ さるようお願いいたします。  ただいまから「第3回科学技術・学術審議会生命倫理・安全部会役学指針の見直しに関する専 門委員会」及び「厚生科学審議会科学技術部会疫学指針の見直しに関する専門委員会」を開催い たします。まず第1回、第2回の委員会にご欠席でいらっしゃいました委員を紹介させていただ きます。社団法人日本医師会常任理事の飯沼雅朗委員、東北大学大学院医学系研究課教授の辻一 郎委員です。本日は位田委員から欠席の連絡をいただいております。また、小幡委員、新保委員、 永井委員より遅れる旨のご連絡を受けております。以降の議事進行を矢崎座長にお願いいたしま す。 ○矢崎座長  今日は第3回目です。議論の目途をある程度立てて進行させていただきたいと思いますので、 よろしくお願いします。会議時間も、普通は2時間なのに3時間でお疲れになるかもしれません が、もし早く議事が進むようでしたら、少し前でも閉じたいと思います。  はじめに配布資料の説明をお願いいたします。 ○吉川課長補佐  本日の配布資料は、資料1「検討すべき事項」、資料2「疫学倫理指針の適用範囲に関する考 察」、これは川村委員からの説明資料です。また、参考資料として、生命倫理安全部会疫学指針 見直しに関する専門委員会名簿、科学技術部会疫学研究指針に関する専門委員会名簿をお付けし てあります。また、第2回委員会の議事録(案)をお手元に配布してありますので、ご確認をい ただき、訂正等ございましたら12月8日(金)までに、文部科学省生命倫理安全対策室にまで ファックスにてお知らせください。厚生労働省の委員につきましても文部科学省のほうで一括に て受付をいたします。資料の不足がございましたらお知らせください。 ○矢崎座長   それでは資料1に沿って議事を進めていただきたいと存じます。前回に引き続いて指針の見直 しを進めていくわけですが、本日は、できれば指針の適用範囲の論点まで進めたらと思っており ますので、なにとぞよろしくお願いいたします。では、資料1につきまして、まず事務局から説 明をお願いいたします。なお大学、特に大学院の実習などに関して指針の適用について前回の最 後のほうでご議論いただきましたが、本件の取扱いについても併せて説明していただきます。 ○二階堂専門官   資料1は、基本的には前回の資料を引き継いだものです。しかしながら、前回の議論を踏まえ て数点変更を加えたところがありますので、その点を中心に説明いたします。   最初に論点1「多施設共同研究における倫理審査」及び論点2「資料提供機関における疫学研 究指針の適用」については、前回ご議論いただいてある程度の方向性が見えてきたと私どもは考 えておりますので、見直しの方向性について記載いたしました。  次に、前回論点3として挙げておりました「倫理審査委員会の付議を必要としない疫学研究」に ついては、前回の議論を踏まえますと、単独で議論するよりもむしろ、前回論点10として挙げ ておりました「指針の適用範囲」と一緒に議論したほうが、より深い議論がなされるのではない かと私どもとしては考えまして、論点を後半に移行しました。すなわち、例えばある事例があっ たときに、その事例が疫学研究に該当するのか否かという論点から判断すべきものなのか、ある いは、疫学研究には該当するが、疫学指針の対象とすべきか否かという論点から判断すべきもの なのか、あるいは、疫学指針の対象とはなるが、倫理審査委員会の付議を必要とするのか、しな いのかという論点から判断すべきものなのか、こうした論点については、これらの論点を一体的 に議論すべきではないかという判断によります。それで最後に、前回提言をいただいた「教育を 目的とした疫学研究」については論点11として追加いたしました。後半部分にこの論点を持っ てきた理由ですが、前回の議論で、教育を目的とした疫学研究については倫理審査委員会の付議 を必要としないのではないかという提言をいただきましたので、まず、この論点の前に倫理審査 委員会に付議するのか、しないのかという論点をきちんと議論した後で教育の論点にいったほう がいいのではないかと判断いたしました。その他若干文言の訂正を行っている箇所がありますが、 いずれも内容について踏み込むものではありませんので、ここでは説明を割愛させていただきま す。 ○矢崎座長   いま大変簡潔にまとめていただきました。前回、大学における実習については別個の指針が必 要ではないかという議論がありましたが、いまのご説明のように論点を整理して、論点の10と 11として改めて議論していただくということで、今回、その結論はペンディングにさせていた だきます。論点の1と2については、大体ご議論いただいた内容でまとめさせていただきました。 これについて何かご意見があれば、先ほど申し上げた事務局まで寄せていただければと思います。 本日は論点3から討論を進めさせていただきますが、まず事務局から説明をお願いいたします。 ○吉川課長補佐   資料の12頁をご覧ください。論点3は「国際共同研究における指針の運用の考え方」につい てです。ここでは、相手国に指針がない場合、もしくは相手国の指針の内容が異なっている場合、 すなわち相手国の指針の内容が緩いということをお示ししておりますが、その場合の我が国の指 針の適用の考え方について規定を整備する必要があるのではないかということです。すでにゲノ ム指針と臨床研究指針については、その考え方の整備がなされており、疫学研究指針がいま取り 残されているという状況になっていますので、ほかの2つの指針と同様に、今回整備を行っては どうかということです。   下の「検討のポイント」をご覧ください。相手国に指針等がない場合や、相手国の基準が疫学 研究指針よりも緩い場合の指針の適用についての規定ということです。規定の骨子としては、ゲ ノム指針、それから臨床研究指針と同様に、(1)相手国の疫学研究指針の基準が我が国のものより も緩やかである場合には、我が国の疫学研究指針の遵守を原則とする。(2)として、しかしながら 相手国の社会的な実情等を鑑みて指針の適用が困難であると考えられる場合には、相手国におい て適切に研究が実施されることについて、我が国の研究機関の倫理審査委員会が承認し、研究機 関の長が適当と判断した場合に研究を実施することができることとしてはどうか、とございます。   13頁に具体的にすでにゲノム指針で規定されているものを引用してありますが、13頁の中ほ ど、4の(2)のような規定の骨子に沿って今回整備してはどうかと考えております。 ○矢崎座長    国際共同研究について、すでにゲノム指針及び臨床研究指針では規定の改正を行っておりまし て、いま事務局から申し上げた検討のポイントのような改訂が大筋で行われておりますが、疫学 指針においては、このような方向で改正してよろしいかどうかをお諮りしたいと思います。どな たかご意見がございますか。国際共同研究ですので、従来のゲノム指針及び臨床研究指針との整 合性をとって、先ほど述べた検討のポイントの(1)と(2)で改正の方向に向けて検討したいのですが、 お認めいただけますでしょうか。 ○丸山委員   確認なのですが、13頁のゲノム指針の細則も同じように、疫学指針の改正に当たって取り込 むと理解してよろしいですか。そうだろうとは思うのですが。 ○矢崎座長    細則で変えるようなことは特にないでしょう。 ○吉川課長補佐   現状、特にこれ以上何かということではなくて、このようなものをそっくり疫学にも入れて、 細則も含めて整備をしたいと考えております。 ○森崎委員   特にゲノム指針等と横並びにするということについて異論があるわけではありませんが、左側 の「考え方」の中の現行の事例、問題点の中に含まれていることに関連して伺います。「文書に よるインフォームド・コンセントを受けることができない」と書いてありますが、ゲノム指針で は、細則で「インフォームド・コンセントが得られること」という記載で、その部分は必ずしも 文書によるとは書いてありません。また、ゲノム指針に比べると疫学研究は、時としてより広い 範囲の対象の方、つまり違う環境の方、違う文化の方が対象になるものもあり得るのではないか と考えると、それをどう解釈するかということに踏み込む必要はないかもしれません。国際的に もインフォームド・コンセントがどういうものであるべきかということはまだ煮詰まったもので はなく、UNESCOでも今議論しているところです。「問題点」に書いてある、文書によるイ ンフォームド・コンセントが受けられるかどうかということにまで踏み込んだ形のものでこれを 拠りどころにするというより、現時点では、この文言を捉えて理解するというぐらいになるのか なと理解していますが、その辺でいいのかどうか、皆さんに確認をお願いしたいと思います。 ○矢崎座長   いまのご指摘について、いかがでしょうか。では、そういう議論があったことを議事録に残し ていただいて、いまの点は「検討のポイント」の(2)の中で読み込んでいただくということで、い かがでしょうか。 ○吉川課長補佐   事務局より補足させていただきます。ここは支障があったということを何らかの事例で紹介し ようということで、文字によるインフォームド・コンセントといったようなことが事例としてあ りましたので挙げたものです。森崎委員からありましたとおり、そこまで深くということではな くて、いろいろな事情があってできない部分もあるということの一例として挙げたものです。 ○矢崎座長    よろしいでしょうか。それでは論点4「資料の保存及び廃棄」について、事務局から説明をお 願いします。 ○吉川課長補佐   資料の14頁です。ここでは「資料の保存及び廃棄に関する規定を盛り込むべきか(ゲノム指 針との整合性)」と書いてありますが、ゲノム指針では規定されているものが疫学指針ではない 部分が一部ありますので、こういったところも踏まえて整備をしてはどうかということです。  この点で問題とする点は、事例にも書きましたが、過去に収集された資料が倫理的な配慮なく使 われるということになると、資料の取扱いとして不適切ではないかということがあります。そこ で、そういうことが生じないように一定の規定を整備してはどうかということです。   下の「検討のポイント」で、資料が研究終了後にそのまま放置されることがないように、資料 の適切な管理が行われるために、保存に関する規定を指針に盛り込んではどうかということです。               骨子としては、(1)として、研究計画書及びインフォームド・コンセントの説明事項に資料の保 存方法、保存期限、廃棄方法等、例えば匿名化すること、ヒト由来試料は不活化すること等を記 載することとしてはどうか。(2)として、資料の保存期限が過ぎた場合又は提供者から資料の廃棄 の要求があった場合は、原則として匿名化して、資料を廃棄するとしてはどうか。この(1)と(2)に ついて既にゲノム指針では規定がなされております。   15頁に移ります。(3)として、資料の保存期限を定めない場合については、当該資料の所在が 把握できるよう資料の保管場所を研究機関の長に報告することとしてはどうか、という3つの骨 子を提案させていただきました。 ○矢崎座長   疫学研究においても資料の保存・廃棄についてはしっかり管理しないといけないということで 規定を盛り込むべきだということです。その内容は「検討のポイント」の(1)〜(3)ですが、いかが でしょうか。これはゲノム指針との整合性をとって項目を入れたわけですが、特に変更はない、 そのとおりですね。 ○吉川課長補佐  ゲノム指針との整合性は(1)と(2)でして、(3)は、今回疫学指針で新たにこういったところまで設 けたらどうかという内容です。 ○矢崎座長    疫学指針では(3)が加えられたということですね。 ○吉川課長補佐    はい。 ○小幡委員   資料の保存というのは研究期間とずれる場合もあろうかと思いますので、こういうことの規定 は必要だと私も思います。(3)の場合は、たぶん研究期間終了後もずっと資料だけ保存されるとい う状態を考えているのだと思いますので「所在が把握できるような資料の保管場所」だけでいい のかなという感じがしています。匿名化がどんなふうになされている状態かとか、バンクとか、 そんなことまで考えると複雑になってくるのですが、いろいろな状態があるのです。保管場所を 報告するのは当然のことなのですが、完全な連結不活化匿名化されていない場合は、当然、漏洩 等についてさまざまな措置をしなければいけないということですね。ですから、保管場所の報告 も必要ですが、それだけでよろしいのかなという感じがしますが、それは後でもう少し加えると いうことでしょうか。 ○吉川課長補佐   委員からそのようなご意見がございましたら、例えば場所ではなくて、どういった資料かとい うところも含めて把握できるような内容を追加するということで考えたいと思います。 ○矢崎座長   いまのご指摘は、問題点に述べているような事例についてはこのように保管している、という ことではないのですね。 ○小幡委員    そうではないのです。 ○辻委員   ゲノム指針との整合性ということなのですが、ゲノム指針で言うところの「試料」と疫学倫理 指針で言うところの「試料」は漢字が違うのです。ゲノム指針のほうは、同じシリョウでも「試 料」、疫学指針のシリョウは「資料」と字が違うのです。そうなると、定義も違ってくると思う のです。ゲノム指針で言うところの試料は、いわゆるサンプル、ゲノムが含まれた検体だと思う のですが、疫学指針で言うところの資料は、検体もありますし、血清もありますし、尿のような 生物試料もありますが、疫学ですので、さらに調査票等さまざまな紙ベースの、本当に資料と言 えるようなものも含まれるわけで、その辺をきれいに分けておかないと混乱するのではないかと 思うのですが、いかがでしょうか。 ○吉川課長補佐   いまのシリョウの点ですが、実は、ゲノム指針のほうは「試料等」で、いわゆる人体の試料プ ラスアルファ診療情報等の情報の資料といったことも含めて「試料等」という形で定義しており ます。一方で疫学のほうは「資料」。こちらのほうも内容は大体同じです。ヒトの試料、それか ら診療情報や健康に関する情報等情報系のものも含む。疫学のほうが情報系の資料が多いといっ たようなことも当時勘案したのだと思いますが、定義としては大体同様の内容のものが書き込ま れているということです。 ○山縣委員   こういう長期保管、要するに研究者そのものがいなくなって資料だけ残っているというケース は講座などではよくあることです。しかし、誰が責任を持って保管しているか、責任者が誰なの かということが明確になっていないといけないと思うのです。例えば継続されている研究であれ ば、研究代表者が代わったり、研究者が代わったりすれば、それはマイナーチェンジかもしれま せんが、申請をし直すということで責任者がはっきりしていくわけですが、基本的には研究が終 わったものに関しては、それを誰がきちんと保管するのかということが明確になっていないとい けないような気がします。   実際今理研で行われている研究で、そういった資料で海外などに流出しているものをきちんと 食い止めてそれを活用しようというようなことが行われているように、この手のことに関しては、 こういう倫理指針だけではなくて、むしろ我が国が持っている研究のリソースとしての側面から も考えていかなければいけないことだと思います。 ○矢崎座長    確かにご指摘のとおりですが、いかがでしょうか。 ○小幡委員   先ほど矢崎座長がおっしゃったことに関連して発言しますが、(3)の資料の保存期限を定めない 場合というのは、まずない。今までも普通はそうだと思います。研究計画のときに、いつまで保 存すると明記するということは、通常であれば倫理審査委員会で言いますので、これからも、き ちんとした研究計画であれば、そこは書き込まれているので、保存期限の定めがないということ はまずない。とすれば、この問題状況で過去にあったものの名残が見つかったという場合、それ だけを考えればよいということであれば、状況は全く分からないようなものがあると思いますの でこういう報告をという話になるのかもしれませんが、大事なことは、保存期間の所をきちんと 審査することだろうと思います。 ○矢崎座長   ですから新しい指針は、いまご指摘のとおり、きちんと保存期間を明示するということがポイ ント(1)なのですが、事例の問題のように、過去に残ってしまっているようなものを(3)でどうすべ きかという対応をいまご検討いただいているわけです。所在だけではなく、責任者を明確にすべ きではないかというご指摘だと思いますが。 ○森崎委員   保存期限を定めない場合というのが、医学研究すべてとは言いませんし、どのような研究プラ ンによるのかということもありますが、蓄積した情報を含めて、有期限で切ってしまってよいの かということを踏まえて考えると、長期間保存する、それも5年とか10年で切るものと、先々 まで保存することを含めて同意を求める場合も当然あるのだろう。そう考えると、期限を定めな い場合が今後ないとは決して言えないと私は理解しているのです。逆に言いますと、そういった 場合に、後にたぶん議論がだいぶあると思いますが、どのような目的でここでいう資料を用いる のかということにも関わってきて、集めたものを処分するのは良いのか悪いのか、それが認めら れるのかどうかということにも関わる問題ではないか。逆に言うと、研究者が責任を持って、そ の人が施設を離れたら、いずれにしても研究としては終了するので廃棄処分しなければならない と考えるのか、先ほど言ったリソースという考え方に基づいて、集めたものをどのような形で管 理するのか、その管理の仕方をここに明示するのかというところを少し考える必要もあるのでは ないかと思います。 ○吉川課長補佐   15頁の(3)ですが、事務局からの文章の説明が足りない部分がありまして今委員の皆さんにご 指摘を受けているところですが、(1)と(2)に書かれているとおり、保存期限を定めるということに ついては、一定の管理下にあるだろうという理解のもとです。逆に、有用な資料であるので保存 期限を定めないという場合、いわゆる永久的な保存ということにもなろうかと思いますが、いつ までと期限を限るのではなくて、研究機関としてその資料を保存しておくということになります と長期間保存され得るということになります。しかし、では一体どこにどういう資料が保存され ているのだろうかというのは、担当者がいなくなってしまうと、いつの間にか分からなくなって しまうということがございましたので、(3)のようなものを付け加えてはどうかという提案をさせ ていただきました。 ○矢崎座長    いかがでしょうか。 ○小幡委員   文書にせよ、サンプルにせよ、識別可能な情報であるとすれば、それがある以上は放っておく わけにはいかないのです。もし永久保存と決めた場合に、管理体制をきちんとしておくというこ とが最初の段階で必要とされますので、「所在が把握できるような資料の保管場所」というだけ        では、ものによっては足りない状態になると思います。例えば、その研究の責任者が施設を離れ た後も個人情報として残るのであれば、それはずっと引き継いで責任を持って管理されなければ いけないですし、もし研究計画のところで無期限にするのであれば、そこはどういうことかしっ かり決めなければいけない。また、「問題点」にあるようなものであれば、それがどういう状況 のものであるかがさまざまで、完全に個人情報的なものであれば、改めて管理体制を敷いた上で 更に保存すべきかどうかを考えて、保存すべきでないということになれば、当然速やかに廃棄す べきだということになるかと思います。 ○矢崎座長   保存期限を定めていなかった資料がある場合と、保存期限をきっちり定めないで、貴重な資料 だから保存しておきたいという場合と2つあって、(3)だけでは不足ではないかという指摘です。 その他いかがですか。では今のご指摘を勘案して、(3)について原案を作って次回に示すというこ とでよろしいでしょうか。また、そのときに何か付け加えるようなポイントはあるでしょうか。 所在だけでなく、管理責任者を明確にしておくということはミニマムエッセンシャルなので加え る。それから、2つの場合にはどう対応するか、例えば期限が定められていない資料を廃棄する 場合にはこのようにする、というような細則のようなものは置けるのですか。 ○吉川課長補佐   ここで「研究機関の長に報告」となったら、報告の内容はこういうことであるといったような ことを細則で定めることは可能であると思います。 ○新保委員   (3)について原案を作るときに、研究者が異動する場合にどうするのかというようなことも含め て考慮していただければと思います、往々にして、そういう場合、責任の問題や届出をどうする かということが曖昧になりがちだと思いますので。 ○矢崎座長   内容があまりたくさんになると、指針のあれにならないのですが、これをQ&Aのような形で 残すことはできるのでしょうか。 ○吉川課長補佐   すでにあるQ&Aに新たなQということで立てて書くこともできますし、規定として本文もし くは細則に盛り込むほうが皆さんに分かりやすいということであれば、それは指針の策定の際に 検討したいと考えております。 ○矢崎座長   いちばんのポイントはそこを管理する人が異動してしまったという今ご指摘のことですので、 それも加味して、管理責任者の明確化というときに分かるように文章で工夫していただければ大 変ありがたいのです。そのほかに何か加える点はございますか。 ○川村委員   ここに今書いてないことなのですが、(1)の所で資料の保存義務ということを書かなくていいか どうか。これは対象者に対する保護の問題ではなくて、最近よくある捏造などの問題のときに、 確認しようと思っても資料が廃棄されているということが時々報道されます。これは今ここで議 論していることとはまるっきり違う話ですが、一定期間保存するということは触れなくていいか どうかということだけ提示させていただきます。 ○山縣委員   それは非常に重要な指摘だと思うのですが、このように集められた資料やデータをどういうも のだと考えるかという根本的な考え方と関わってくるような気がします。公の機関の出す研究費 に対して、資料の保存義務とか、そういったものをどのように共有するかといったようなことを そういったところで定めることが必要で、その上で、資料がある施設に関しては、どういう形で 保存するのかといったような枠組みにする。私は、このガイドラインでは後者のほうを規定して おけばいいのかなという気がします。 ○矢崎座長   資料の保存・管理義務を明確化するということですが、単に保存の方法だけではない。資料に 対しては、保存するにしろ、廃棄するにしろ、管理を明確にする必要があるというご趣旨だと思 いますが、いかがでしょうか。 ○南委員   先ほどご指摘のあった点を確認させていただきたいのです。ゲノム指針で使われているサンプ ルという意味の試料は「試料等」という使い方をしているのでデータという意味の資料も含むと いうご説明と理解したのですが、そうすると、逆に「検討のポイント」で出てくるデータという 意味の資料にサンプルという意味の試料を含む、そういう大小関係と理解すればよろしいのです か。 ○矢崎座長    ゲノム指針にある「試料等」とここにある「資料」とを同等に考えていただくという考えです。 ○南委員    字句の意味合いとして「資料」は常に「試料」を含んでいるという意味合いですか。 ○矢崎座長   割合が、ゲノムのときにはサンプルの部分が大きくて付随したデータは小さいのですが、疫学 は、サンプルはあまり多くなくてデータが大部分なので、同じ「シリョウ」でも漢字を変えたと いうことがあるのだと思います。 ○南委員    それを同義と解釈する。 ○矢崎座長    サンプルとデータ、両方を含めてここで議論していただくことになるのだと思います。 ○南委員   わかりましたが、もう1点伺います。研究の中にははたして保存期限を定めていいのかどうか 分からないような貴重なものがあるというのは森崎委員がおっしゃるとおりだと思うのですが、 そういうことになりますと、今度はそれを誰がどういう基準で判断するのかということもなかな か難しいのではないかと思われるのです。これは指針に直接関係ないのですが、「検討のポイン ト」に新設する規定の骨子には(1)に期限というのも入っていますが、これは期限を決めるのでは なくて、期限を決めるかどうかを決めるという部分も必要になるわけでしょうか。 ○矢崎座長   これは研究のプロトコールの中に組み込まれていますので、倫理委員会その他でチェックされ る、あるいは審査されると考えてもよろしいかと思いますが、いかがでしょうか。 ○林研究企画官   資料の保存義務の件ですが、研究上の不正の話との関連もございます。研究上の不正に関して は、どのような扱いをするのが適切かということを現在別途検討しておりますが、資料の保存は 別に疫学研究だけではなくて、ほかの研究にも共通して掛かってくる話ですので、そちらのほう で規定すればよいのかなと私は考えております。最終的にどういう形にするかというのはまだ決 まっておりませんので検討したいと思いますが、基本的には、こちらで書くというよりは、研究 上の不正のガイドラインの中で考えていくことかなと思っております。 ○矢崎座長   不正でなくても不作為に、管理が不行き届きですと紛失してしまったとか、そういう事態を心 配されてということもあるかと思います。   では、いま企画官が言われた部分はそちらのほうに移すとして、いまご指摘のあった保存・管 理義務のことを(1)に入れることと、(3)の資料の管理責任のことがもう少し明確になるようなこと をここへ入れて再びご議論いただく、ということでよろしいでしょうか。      (異議なし) ○矢崎座長   ありがとうございました。論点4は一部宿題にさせていただいて、論点5「指針の遵守に関す る点検及び評価」に進みます。これについても事務局から説明をお願いします。 ○吉川課長補佐   資料の18頁、論点5は「指針の遵守に関する点検及び評価」についてです。「問題点」にも記 載いたしましたが、実際のところ、研究計画の許可というところまでは倫理審査委員会を通して 機関の長が許可をするというシステムが働いているのですが、その後につきましては、実際に研 究が行われている状況を、きちんと適切に行われているのかといったような点検、それから、機 関として指針に適合しているというようなことがシステマチックに動いているかどうか、それを 評価するようなことが現状で適切に機能していないことがあり得るのではないかということで、 18頁の下の所に「検討のポイント」として書かせていただきましたが、指針が適切に遵守され ているのかどうかに関して、研究機関の長が点検・評価をするような規定を設けるべきではない か。しかしながら、どのような方法で指針の適合性を点検・評価するかについては、各研究機関 の状況が一律ではないということを踏まえて、その詳細についてはその研究機関の長が決定でき ることとしてはどうか。   新設する規定の骨子は(1)として、研究機関の長が指針が遵守されているかどうか、指針の適合 性に関して点検・評価を行う。(2)として、必要に応じて実施状況を倫理審査委員会で検討し、そ の意見を踏まえて変更又は中止を命じることとしてはどうかということです。また、参考として、 文部科学省、厚生労働省、農林水産省が定めている動物実験の基本指針においては、透明性の確 保という観点もあり、実施機関の長が定期的に実施機関における指針への適合性について自ら点 検及び評価を実施すること、という規定がございます。 ○矢崎座長   いままでの疫学研究指針においては、報告するということにとどまっているのですが、この見 直しのときには、指針が遵守されているかどうか、あるいは指針との適合性がどうかということ をきちんと点検・評価する必要があるのではないかということです。ゲノム指針には、そういう 要綱があるわけですね。 ○吉川課長補佐   ゲノム指針につきましては、資料18頁の中ほど、現行の2番目の○に書いてあるとおり、研 究責任者からの報告ということのほかに、外部の有識者による実地調査を実施するといったよう なことが規定されております。具体的な規定は資料20頁6の(11)に書いてあります。 ○矢崎座長   ゲノム指針におきましては、指針に関する影響が極めて大きいので、実際に外部の有識者によ る実地調査を実施するという厳しい規定がありますが、疫学研究指針では、機関長がそれをチェ ックして、何か問題があれば、倫理委員会などを通して検討していただいて中止ないしは変更さ せると規定させていただきたいと思います。動物実験の実施に関する基本指針では、主体は施設 長が点検・評価するということですか。 ○吉川課長補佐   各機関の長が責任を持って自分の機関の中のものは評価していただく、内部点検・評価を行っ ていただくと規定してございます。 ○新保委員   ちょっと確認させていただきたいのですが、従来も報告に基づいて点検・評価は行われていた のではないかという気がいたしますし、今回点検・評価という形に直したとしても、現実的には、 報告に基づいて点検・評価をするということになりがちなのではないかという気もするのです。       そうした場合に、いままでとどの辺が現実に違うのかということを教えていただきたいと思い ます。 ○吉川課長補佐   きちんと対応されている所は、すでに研究結果の報告を受けるということになっておりますの で、それを踏まえて点検・評価がなされているかと思います。ただ、実際のところ、規定の中で は報告を受ければいいのだという捉え方もあり、自分の所でどのようなものが行われたかよく分 からない、機関の長としては把握はしていないというようなこともあり得ると思われます。それ は機関によっての差異ですが、一律にきちんと報告を受けた上で点検・評価が行われるのだとい うことを明文化したほうがいいのではないかということです。 ○新保委員    わかりました。 ○矢崎座長   これは必ずしも報告を受けて行うのではなくて、報告を受けなくても、長が自ら点検・評価す ることもあり得るという指針ですね。 ○吉川課長補佐   もちろん報告を受けてその内容を点検・評価するということもありますし、報告を受けないに しても、必要だと思えば、そこはきちんと評価をしていただくこともあろうかと思います。 ○矢崎座長   よろしいでしょうか。それでは、大体これを骨子として指針の見直しを進めさせていただきた いと思います。次は論点6「インフォームド・コンセントの電子化」についてです。事務局から 説明をしていただきます。 ○二階堂専門官   資料の21頁、論点6「インフォームド・コンセントの電子化」について説明いたします。こ の論点のポイントは、現行指針で定めております、文書により説明し、文書により同意を得なさ い、ということについて電子的媒体を用いて代用してもよいかということです。具体的な事例と しましては、ある研究者がインターネットを用いてインフォームド・コンセントを取得しようと しているようなケースが考えられます。   現行指針ではインフォームド・コンセントについてどのような規定を設けているのかといいま すと、疫学指針では、介入研究と観察研究、人体から採取された試料を用いる場合と用いない場 合、それと侵襲性を有する場合と有しない場合についてインフォームド・コンセントのレベルを 分けております。このうち文書により説明し文書により同意を求めているのは、人体から採取さ れた試料を用いる場合であって、試料の採取が侵襲性を有する場合という、いわばいちばん厳し い場合です。これ以外の場合は、必ずしも文書による同意及び取得を求めてはおりません。   検討のポイントですが、まず、電子化により最初の○に掲げているようなメリットが得られる のではないかということが挙げられます。しかしながらその一方で、技術的又は制度的な現状が 十分ではないということも踏まえるべきではないかということがあります。 ○矢崎座長   インフォームド・コンセントのレベルが研究対象によって違うので、極めて広い範囲でインフ ォームド・コンセントをとらなければならないような場合には、電子媒体を用いたインフォーム ド・コンセントを用いてもいいかどうかということですが、いかがでしょうか。 ○森崎委員   この論点は、主に2つ含まれているように思います。1つは文書による説明、特に同意を受け るということを、ボタンを押すということで同じだと考えるかどうかという点。さらに保存をす るのに、文書による同意書を保存をするということは、電子媒体で保存することが認められるの かどうか、という2点に分けられるのではないかと感じます。   個人的には、文書によって同意を受けるということと、ボタンを押すということは必ずしも同 一にならないような気がしています。もちろん、技術的に書きますがそれを判断し、また間違い が起こらないシステムであると認められる場合があればいいのではないか。ただ、ここで記され ているような例が全く同等だ、というのは個々に審査をしていただく必要はあるのでしょうけれ ども、必ずしも同等ではないのではないかということを感じました。   一方で、現時点ではこの医学指針だけではなく、同時に同じ個人からたくさんの研究に対して お願いすることも現実に多くなってきています。私どもの施設もそうですが、保存すべき同意書 がどんどん膨れ上がってきて、管理にかなり難渋するような状況であるということを考えると、 文書によってインフォームド・コンセントを受けますが、それをどう保存するのかというのは、 その文書を紙としてきちんと保存することがどうしても必要なのか、というところは議論しても いいのではないか。   それをいま認めていいのか、保管はそれで本当に大丈夫なのか、電子化すると、逆にどこかに 漏れるリスクがあるのではないか、ということを踏まえて議論すべきことだろうと思います。議 論している対象の研究がどのようなものであって、また個人に対してどのような影響があるよう な研究なのか、ということもそれを判断する根拠になるのではないかということを感じました。 ○山縣委員   特に、いまの後者の件は重要だと思います。文書で取ったものを電子化することに関しては可 能にする、ということは現実的には必要なのではないかということが1点です。   前者に関しては、文書による説明と同意が、試料を採取する場合にはちゃんと目の前で説明し なければいけない。例えば、それが事前に電子媒体化されていて、そこの医療機関に行ったらあ まり説明もなく、ただ単に血液を余分に採られて、それがというのでは困るわけです。それは、 目の前できちんとやる。   一方で、文書による説明は必要ないけれども、やはり取っておいたほうがいいというような、 一個人単位で行う侵襲性を有しない場合、受けることを原則とはするのだけれども、必ずしもと いう場合にはこういう方法もあるというように、少しものによって段階を付けたような形でこれ を認めるなり、議論するなりしていったほうがいいのではないかと思います。 ○吉川課長補佐   事務局から補足させていただきます。例えば、インフォームド・コンセントを文書で頂戴した 場合、その文書について紙で保存しなければならないというような形で現行も規定されていませ ん。マイクロフィルムに焼き付けて保存する。それは、保存スペースの問題等もいろいろありま すので、各機関がきちんと保存できるようにする。これも、個人情報の1つになりますので、個 人情報の保護という観点から、きちんと管理ができるということを行っていただければ、そこは 必ずしも紙媒体で保存しなければならないということを、現行ではそこまでは言及しておりませ ん。 ○矢崎座長   いま、2つのポイントに分けられて、インフォームド・コンセントの極めてレベルの高いゲノ ム研究みたいな場合には、文書によるインフォームド・コンセントを電子媒体でするというのは いかがなものかと。これに関しては異論ないですよね。だから、後段のインフォームド・コンセ ントを文書にしたものを、電子媒体で保存する。いま事務局が言った、マイクロフィルムで保存 するというのは、文書で保存するのとほぼ同じだと思います。電子媒体に入れるということで、 先ほど森崎委員からのお話は、個人情報で相当ファイヤーウォールの高いシステムが確立してい ないとなかなか難しいのではないかというご指摘だと思うのです。   もう1つは、文書による説明のインフォームド・コンセントではないレベルでの研究で、イン フォームド・コンセントを得たということをどこかに記録として残しておきたいという場合には、 こういう電子媒体を使ってもいいのではないかというご意見がありました。検討のポイントにあ る、現状では個人が電子認証を受けるのは困難であるという指摘があったかと思います。事務局 から説明していただけますか。 ○二階堂専門官   現行で、個人の認証を受けることが困難ということですが、現在、電子署名及び認証業務に関 する法律は既に施行されておりますので、この法律に基づいて電子的に署名を行うことは可能で す。   ただ問題として、それが個人のレベルまで行っているかどうかという現状を考えますと、まだ まだ会社対会社間といったところについて、電子的な署名を行うことは現状でもある程度進んで いると認識しておりますけれども、それが個人のレベルにあるかどうかという観点から見ると、 やはり、まだまだ時期尚早ではないかという観点からこの文言を付けさせていただきました。 ○矢崎座長   いまは時代がどんどん進んでいて、昨日もびっくりしました。私が自動車保険を立て替えて払 ったら、息子が「じゃあ、インターネットで振り込むか」と言っていたのですが、あれはサイン も何もないのです。あれは、どういう個人認証をしているのでしょうか。全然サインもなく、口 座から口座へお金が振り込まれてしまいます。悪用すれば、すごくされてしまうような感じがす るのですが、どういう仕組みになっているのかと思いました。ちゃんと私の口座に入っているか どうか確かめてからでないと言えないかもしれませんけれども。早晩そういう時代が来るかもし れませんね。 ○丸山委員   いま座長がおっしゃったようなことを頭の中では描いていて、研究のところでその可能性を開 いておかなくてもいいのかということを懸念しました。それと、UKバイオバンクはクローズド の回路だと思いますけれども、機械でインフォームド・コンセントを取っていますので、疫学の 研究者のほうで、UKバイオバンクの同意の取り方のようなものに近い将来対応できる指針にし ておかなくていいかどうか。   一旦取った同意書面の保存については、先ほど来の議論で大体認める方向であるようなのです が、インフォームド・コンセント自体の取得についてもというか、認証というか、本人の同一性 の確認なり改ざんの防止ができるようなシステムができれば、インターネットと接続するのもあ るでしょうけれども、それ独自の回路だと、そんな遠い将来のことではないような気がするので す。ここでその可能性を閉じておいていいものかどうかというのがちょっと心配なのです。 ○小幡委員   昨年、臓器移植の意思表示を、電子的なものでできるかという研究会をやっていました。あれ は提供の意思ですから、なり替わりなどがあれば大変だということで、きっかけで最終的には文 書の署名が要るということにしました。そこでも、個人認証の制度がどんどん発達していって、 もっと普及していけば一応本人ということはそれで大丈夫かという議論になりました。いまは確 かに普及していないし、ほとんどの方があまりしていないという状況の下では難しいということ があろうかと思います。   技術の発達が非常に速いですので、指針をここで定めてどのぐらい有効になるかわからないの ですが、あまり閉じてしまうというのもね。こういうインフォームド・コンセントが、臓器移植 と比べてどっちがこうと言い出したらそういう話だと思うのです。あまり、駄目という雰囲気に しておく必要はないと思うのです。そこは、倫理委員会等で審議するところで、あと2、3年後 には技術的に発展していくかもしれないので、そこの余地は認めたほうがよいという感じがしま す。 ○山縣委員   現実問題としては、いまでも郵送によって髪の毛などはできても、採血などは個人ではなかな か難しいと思うのです。そういうものを利用する研究というのは当然遺伝子でもあります。もち ろん、疫学でも今後はあると思います。尿などもあると思います。そういうときに、どのように インフォームド・コンセントを取るかということだと思うのです。   試料を送るのであれば、当然サインができるような形のものを一書に送れるわけなので、それ を電子でやらなければいけない理由はないと一方で思いつつも、目の前でなんとかしたいのであ れば、電子媒体でサインすることも確かに問題はないのではないか。実際にどういうときにこう  いうことが起きるのかということを想定すると、丸山委員が先ほど言われたことはそういうこと なのかと思うのです。有形バイオバンクの場合は。 ○丸山委員   いまかなりのというか、若干のというか、多数の協力研究者から協力を集める研究では、メデ ィカル・コーディネーターなどの人の助けを得て、均一の説明をし、その上で同意を得ています。  そのメディカル・コーディネーターの養成なりマンパワー・コストなどが大変なので、それよ りは機械でさせるほうが均一性も確保できるし、協力者の努力によるところもあるかと思うので すけれども、達成できるというところはあるのではないかと思うのです。その辺りは、私の意見 よりも、研究者から研究のしやすさを考えてどうしたいのか、というところを伺うほうが重要か と思います。 ○矢崎座長   確かに、口座と口座のやり取りは相当個人認証のシステムがしっかりしているということはあ るのですが、それはそれでしっかりしたシステムが出来上がっています。ただ臨床研究では、そ こまでしっかりした個人認証のシステムが出来上がっていない状況であるので、電子化を置けと は即座には言えないです。   しかし、将来の技術の進歩は目覚しいものがあるので、個人認証が確実にできるシステムがで きれば応用してもいいのではないかというご意見です。現状では、個人認証の上で困難ですけれ ども、ずっと縛るのではなくて、そこのフレキシビリティを入れた何かうまい指針というのはで きそうですか。二階堂さんみたいな優秀な方だったら作っていただけるのではないかと思います。 ○二階堂専門官   付け加えさせていただきますと、資料21の点線で囲った部分に参考があります。これは何か というと、現行のQ&Aにおいて、インフォームド・コンセントの電子化についての取扱いにつ いて教えてくださいということです。この回答については、原則としては想定しておりません。   しかしながら、社会的需要とか研究現場におけるニーズを踏まえ、その方式の必要性について 今後検討されるべきものと考えております、という回答を設けておりますので、基本的にはこの 考え方を踏襲して、さらに踏み込むのであれば、先生がおっしゃったように、成熟した技術によ る個人認証ができるような段階については、また改めて検討すべきではないかというQ&Aで対 応できればと考えております。 ○矢崎座長   できればQ&Aではなくて、何かうまく簡単にポイントで書けるようであれば入れていただく ということでどうでしょうか。基本としては、文書によるインフォームド・コンセントは電子化 では代替できない。論点6の括弧の中はできないということですよね。ただ、いまはこれではな くてインフォームド・コンセント文書を電子化するということは、漏洩が起こらないような状況 下ではいいのではないかというご意見でした。もう少し広い範囲の疫学研究で、広い範囲の均一 化されたインフォームド・コンセントを得るには、将来個人認証の技術が発達した段階では、そ れを活用することもあり得る。そんなのが、委員の方々のご意見だったと思います。そこはよろ しくお願いいたします。インフォームド・コンセントの電子化についてはまた文書を作らせてい ただいて、次回にご議論いただくことにさせていただきます。次の「未成年者のインフォームド・ コンセント」についてお願いいたします。 ○二階堂専門官   資料23頁で論点7です。未成年者のインフォームド・コンセントについて説明いたします。 最初に事例・問題点です。大学生の食生活についての疫学研究を実施する場合、大学生の中には 1年生ですとか2年生ですとか、未成年も含まれますので、そうした者については現行の指針の 規定により保護者等の代諾が必要となります。   こうしたことから、未成年者についての調査結果が十分に得られず、結果として調査結果にバ イアスがかかってしまうということがケースとして考えられます。このように代諾者からの同意 が必要となるために、その手続の煩雑さを考慮して、未成年者を除外、即ち成年者のみを対象と した研究を実施するというこのようなケースも考えられます。   では、現行指針においてどのような規定を設けているのかと申しますと、研究対象者が未成年 の場合には、代諾者からインフォームド・コンセントを取得しなさいと定めており、研究対象者 が16歳以上である場合には、代諾者の同意に加えて、本人からも同意を取りなさいとこのよう に定めております。   検討のポイントです。最初に、たとえ未成年であっても、例えば18歳とか16歳ですとか、判 断能力が十分にあると判断される年齢があるのではないかということです。しかしながらこの場 合においても、研究対象者が不利益を被ることがないように、十分検討する必要があると考えら れます。   次に、試料の採取が侵襲性を有する場合と有しない場合で、同意可能な年齢を分けて考えるべ きかというものです。一例を挙げますと、同じ18歳であっても、侵襲性を有しない疫学研究の 場合には、本人の同意でよいのではないか。しかしながら、やはり侵襲性を有する場合には、本 人の同意に加えて、代諾者等の同意が必要になるのではないかという論点です。以上です。 ○矢崎座長    未成年者のインフォームド・コンセントについていかがでしょうか。 ○山縣委員   基本的には未成年者の場合も、ある年齢に達した場合には本人の同意というか、そういうこと も現実的にはきちんとやりながらその研究は進んでいるわけです。ただ、その年齢を区切るとい うことはなかなか難しいということで、あまり年齢は区切られていないと思います。   それに関連して、例えばこれから乳幼児のコホートのようなものが進んでいったときに、当然 それは代諾によって研究として参加していくわけですが、その対象者が大きくなっていったとき に、その代諾の有効性のようなものに関してきちんと検討しておく必要はないのだろうかという 側面から、この代諾を考えることも必要ではないかと思います。ある程度本人の意思が、それは 10歳かもしれないし15、16歳かもしれませんが、その辺りのところで代諾な有効性なども本人 に確認していくようなことを勧奨なり努力義務のような形でむしろ入れておく、ということをこ こで考えておく必要はないのだろうかと思います。 ○矢崎座長   現行では、16歳以上の場合は、代諾者と共に本人のインフォームド・コンセントを受けなけ ればならないとなっています。ここでは、本人のインフォームド・コンセントだけでいいのか、 レベルをどのぐらいに据え置くかということでしょうか。 ○丸山委員   基本的に事務局の説明に賛成なのですが、例えば、16歳以上であれば侵襲性のない研究につ いては、本人同意だけで研究対象者となることができるというのが、年齢は18歳かもしれない のですが、事務局案の大筋だろうと思うのです。それに加えて、いま山縣委員が指摘された、当 初は代諾によって研究対象者とされた者が、一定年齢に到達すれば、改めて本人同意を得る、本 人の意思を確認する、というような手続を設けて、このような制度にすることが必要ではないか と思います。年齢としては、ゲノムの指針の当初から、これまでであれば代諾者と本人の同意が 必要とされる16歳以上というのが、この場合でも、侵襲性のないものについては本人同意でよ ろしいとされる年齢の区切りとして使えるのではないかと思います。とりあえず、それが大筋の 賛成ということです。   加えて、現行の指針では採血について侵襲性ありと区分けされているのですが、献血の場合の 採血は16歳以上、後ろに書かれているように本人同意で可能です。24頁の4行目に書いてあり ます。それに比べて、研究対象者とされて、血液だけではなくて、ほかの情報も研究者が入手し ていろいろ解析する。だから、献血よりはその同意の影響は大きいかもしれないのですが、小量 の採血であれば、情報採取が伴うものであっても16歳以上ぐらいであれば、本人同意だけで研 究参加を認めてもいいのではないかと思うのです。疫学の研究者が、そこまで必要ないとおっし ゃるのであれば、私が緩くしてはどうかというまでもありませんので、その辺りについて研究者 の必要性についてのご意見を伺ってと思います。基本的には、事務局の案の方向で指針を変更す ることが必要ではないかと思います。 ○新保委員   現状では、20歳以下の研究対象者の場合、本人の同意と保護者の同意が必要ということで、 二重の同意が必要ということになっています。そうしますと、研究者側で事前に未成年者を避け てしまうという事態になってしまって、未成年者のエビデンスがきちんと作られない事態だとか、 未成年者がある意味逆に研究に参加する機会を失う、というようなことも起こっているのではな いかという気がしています。そういう点で、未成年者が研究に参加する機会を失うということも 起こっているのではないかという気がしています。そういう点で、未成年者であっても、非常に 侵襲度の低いものに関しては、本人の同意だけでいいと考えていいのではないかと思っています。   ヘルシンキ宣言との食い違いをどうするかという問題もあろうかと思うのです。ヘルシンキ宣 言全般には、侵襲の高い研究をイメージしているのではないかという印象を持っています。そう いう点でも、未成年者も非常に侵襲の低いものであれば、本人の同意だけでも認める余地を開い ていただいたほうがいいのではないかと考えています。ただ、どの辺のレベルから侵襲が高いと 考えるか、あるいは侵襲が低いと考えるかについては、個々の倫理審査委員会の判断に任せると いう方法もあるかと思います。 ○森崎委員   基本的にこの検討のポイントの案は、研究者の立場からすると対象を広げる、あるいは研究に よるメリットを広げることができるということはあるのではないかと感じます。一方で、この場 合に本人同意だけでいいという理由が侵襲性、即ち同意をいただいて行われる行為だけで本当に 判断していい場合だけなのか、というのが多少気になるところがあります。   実際に解析される対象の中には、侵襲性がないけれども、本人に対しては守る必要のある情報 を集める場合もあるでしょうということを考えて、そうしたときに採血をしないから、そのとき の侵襲性はないけれども、結果として本人に影響があり得るような研究が、いま実例を挙げるこ とはできませんが、そういうものがこの疫学研究に何を含めるかというところにもかかわってき ます。ある場合には、ここでバッと開いてしまうことが何か問題を起こすということは避けなけ ればならない。   そこに、先ほど言われた判断を倫理委員会に任せるというのは、ある意味では指針が無責任に なりますけれども、何らかの形の歯止め、それがヘルシンキ宣言、あるいは私もかかわった UNESCOの生命倫理の国際宣言に書かれている、弱者に対する保護という点は担保しなければ ならないというところに帰着するのではないかと感じています。 ○矢崎座長   検討のポイントは先ほどご指摘のありました、代諾者が必要な年齢の方が成長して、本人だけ の承諾でいいのではないかということが1つこの中にはないポイントなので、それは入れていた だくこととします。それから、侵襲性を有しないという判断基準、あるいはその結果が個人に相 当大きな影響を及ぼす場合を想定したときに、本人だけでいいかどうかというご指摘だと思いま す。 ○小幡委員   侵襲性というより、本人は苦痛があったりするのはいやなわけですから、どちらかというとそ の状況がわからないという可能性を考えてのことだと思うのです。どちらかというと、不利益の 程度ですとか、疫学研究というのは非常にいろいろなものがあると思いますので、この程度のこ とにまですべて代諾者を応用するかということに対して、決まっているからやらなければいけな いという不都合があるのではないかという感じがいたします。そこは一般的な文章にしておいて、 重大な不利益性については、倫理委員会で見る、ということでもいいのではないかという感じは します。すごくさまざまなものがあると思いますので、侵襲性だけで言えるのかという感じがい たします。   もう1点細かいことになって恐縮ですが、研究協力の中止を、例えば3年後、4年後に言う場 合に、その人が16歳以上の本人であれば常に言えると思います。問題は代諾者です。代諾者は いつまでも言えるのかということについては何か規定の解釈がありましたか。例えば、16歳以 上になれば、中止を言うのは本人でいいような気もします。 ○森崎委員    それは先ほどありました。 ○小幡委員    ありましたか。 ○山縣委員   侵襲性というのは大切だと思うのです。侵襲性となってくると、例えば血液でも目的外使用の 場合の血液と、その研究のために採る場合とは全然変わってきます。尿でもそうですが、検診で 採ったものを研究利用する場合にどうするかというと、それは侵襲性はないけれども、身体の試 料なわけです。そうすると、同じ血液でも考え方が変わってくるかもしれないと思います。個々 の研究に対して、そういったところで倫理委員会がしっかりとそれを議論するというような形で 持っていけばいいのかと思います。 ○丸山委員   個人的には、侵襲性というよりも、森崎委員、小幡委員、山縣委員がおっしゃったようなとこ ろで、より広いところを見ていくことが必要だと思います。現行の指針でも、危険の点から区別 しているのもあるので、当該研究が研究対象者に及ぼす危険の大小というふうに捉えたほうが、 その中に侵襲性も含まれるということで広いのかと思うのです。 ○矢崎座長    一般的に侵襲性というと、いま丸山委員が言われたような侵襲性だと思います。 ○丸山委員    身体的な……。 ○矢崎座長   はい。そうしますと、事務局案で、先ほど言われた、ある時期から代諾者の承認ではなくて、 本人の承諾でできるということと、侵襲性という言葉だけでは、なかなかクリアカットにはでき ないけれども、ケース・バイ・ケースだから、あまり細かく規定するより倫理委員会でしっかり 検討していただくということでよろしいでしょうか。 ○中村委員   私は、いまの意見に賛成です。方法としては、現行のままで、原則は未成年者に対しては親権 者等の代諾者の承諾が要るけれども、倫理委員会で認めた場合、リスクとベネフィットを比較考 慮して認めた場合には、代諾者の同意をなしとすることもできるという形がいちばんすっきりし ているような気がいたしました。 ○矢崎座長    そのような感じでポイントをまとめていただくということでよろしいでしょうか。 ○吉川課長補佐   事務局から1点確認させていただきます。先ほど中村委員から、原則は現行のままということ で、IRBが認めればということなのですが、そこは特に何歳以上であるとか、侵襲性の有無で あるといった要件は課さないで、広くさまざまな要件も加味した上で、IRBに一任するといっ たような内容としてよろしいのかどうかを確認させていただきます。 ○矢崎座長    年齢は16歳でいいかどうかです。 ○中村委員   逃げという言い方はよくないかもしれませんけれども、逃げとして年齢、侵襲性等を考慮して、 IRBが認めた場合にはというようなところでいかがでしょうか。 ○丸山委員   私は、中村委員の意見にやや反対です。そうなると例外扱いなのです。16歳、場合によって は18歳というのがあるのだろうと思うのですが、本人の自己決定権尊重というのを打ち出して いいのではないかと思うのです。エホバの証人の場合の輸血拒否も、東京都立病産院とか多くの 医療機関で15歳なり16歳の患者の輸血拒否も、必要な場合には医療者側で説得するのですが、 本人がどうしても拒否という場合は、本人の決定を尊重するということを謳っています。輸血拒 否の場合は信教の自由という、憲法上の権利保障もあって、特に強い保護が与えられるというこ とがありますが・・・。   倫理委員会が認める場合にはこの限りではないと。その際に侵襲性なり、リスク・ベネフィッ トを検討する。非常に危険が大きいというようなものであれば、そのように慎重な態度をとるの がいいかと思うのですが、そうばかりとは言えないような気が、ここに上がっている例えば食生 活に関する疫学研究というような場合であれば、本人の自己決定に委ねてもいいような気がする のですがいかがでしょうか。 ○中村委員   私も丸山委員に近いところがあります。例えば、16歳以上は代諾は必要ない、本人の同意だ けで結構であるという形に持っていけるのが理想だと思うのです。ただしその場合の条件として、 それでもこれは待てよというような研究が出てきたときに、倫理委員会でそこを指摘して、これ はこれだけの侵襲性があるから、例えば親の同意も必要であるということで、変更しなさいとい うようなことで倫理委員会で上積みをするような形ができれば、そういう形でいいと思うのです が、そのときに、全国の研究機関にある倫理審査委員会が、それぞれ特定のレベルまで達してい るかどうかということを考えたときに、若干の疑問がありまして、先ほどのような意見を申し上 げました。   まとめますと、倫理委員会がきちんと機能していると、国の指針よりもっと厳しくということ は当然ほかの場面でもあり得る話でして、そこまで機能していれば私は丸山委員の意見で結構だ と思います。 ○矢崎座長   16歳以上の場合は、本人からのインフォームド・コンセントを受けなければならないと。倫 理委員会の審査によって、代諾者のインフォームド・コンセントを求められることもある、とい うような感じですか。 ○丸山委員   私は、それぐらいがいいかと思います。中村委員のおっしゃっていることも、そんなに違わな いと思っております。足腰のしっかりしていないというか、倫理委員会がいろいろあるというと ころの安全策、セーフガードとしては、16歳というところで線を引いているというのが1つ役 に立つかもしれないと思います。 ○矢崎座長    そういうポイントにさせていただいて。 ○小幡委員   私も同意見なのですが、これはあまり横並びを考えなくても、疫学研究の指針はこれでいいの ではないかという感じがします。年齢は16歳でいいと思いますので、それを原則として書いて、 ただし危険というか侵襲性というか、不利益の程度とかいろいろあると思いますが、そこで倫理 審査委員会がストップをかけられるという規定を一緒に置いておく。全国の倫理審査委員会が大 丈夫かということはありますが、そこは疫学の指針においてはむしろそれでいけるのではないか、 ということでよろしいのではないかと思います。 ○矢崎座長   そうしますと、侵襲性を有しない、有するという大きな区分けではなくて、16歳以上であれ ば原則として本人のインフォームド・コンセントでいいけれども、審査委員会で代諾を求めるこ ともある、というような感じでしょうか。原則として、疫学研究においては16歳以上であれば、 本人からのインフォームド・コンセントで足りると。 ○山縣委員   未成年者のインフォームド・コンセントについてはこれでいいと思います。研究に未成年者を 参加させる際に、代諾というのが基本になると思うのです。その場合に、その代諾が本当に有効 かということに関して議論する必要があるということが言われています。別の言葉で言うと、そ れが親の虐待になってはいないかとか、そのようなことをきちんと検討するということが、例え ばアメリカでは小児の研究の場合にはされています。そういうところも、倫理委員会では検討す る1つの材料として、細則などの中にそういう文言があってもいいのか、またQ&Aでもいいと 思います。 ○矢崎座長    その件については、おそらくQ&Aで対応させていただくということでよろしいかと思います。 未成年者についての議論は以上とさせていただきます。次は、包括同意の取得についてお願いい たします。 ○吉川課長補佐   資料27頁の8「包括同意の取得」についてご説明いたします。資料の利用についてあらかじ め同意を取得し、将来実施される研究に用いることができるということについて規定をすべきか どうかということです。この件については、現行の規定では、まず研究対象に対して研究の目的 等についてのインフォームド・コンセントを得ることを規定しております。ただ、これも研究の カテゴリーによって、インフォームド・コンセントの必要、必要でないを分けております。また、 インフォームド・コンセントが必要ということであっても、一部それができないということに関 しては、細則を設けて、こういう条件であれば必ずしもここのインフォームド・コンセントが必 要と言っているものに対して、厳密にそこはインフォームド・コンセントを取る必要はないとい うものも指針の規定の中で設けているところです。   また、前回いろいろご議論いただいた点ですが、既存資料の利用ということになりますけれど も、それに関しては指針の規定の10、11で資料利用提供についての規定があります。そこでは、 資料の利用又は提供に関しての同意を得ていれば、提供・利用を行うことは可能である、という 規定が既に指針の中では規定されているところです。   したがって、このように一定の疫学の中では規定されているものと私どもでは考えております が、改めて包括同意について指針の中で規定する必要があるのかどうか、ということがご議論の 焦点になるのではないかと思います。実際のところ、包括同意という概念が非常に曖昧模糊とし ておりまして、どういう点が包括同意なのだというところも、現状では皆さんの認識が一致して いないところもありますので、その点も含めて「包括同意」といった文言での規定を盛り込むこ とが可能であるのかどうかということが1つです。   疫学指針の中では、既存資料が比較的利用できるようにということで規定されておりますけれ ども、資料が杜撰に取り扱われているというイメージを国民に抱かれると、逆に、倫理的に配慮 されていないのではないか、という社会的な是認に対して危惧される部分もあるのではないかと いう点を書かせていただきました。以上です。 ○矢崎座長    この点についてはいかがでしょうか。 ○川村委員   こういうことをあえて問題にしたのは、実際に、過去に私どもがやっている地域コホート研究 で、血液を採って保存するときに同意を取ります。インフォームド・コンセント、書面による同 意を取るのですけれども、いつ、何に使うかを規定しないということに関して、対象者になった 大学の法学部の先生から、期限の定めのない、項目の定めのない契約は無効であるという指摘を 受けたので行き詰まった経験があります。   これが、通常の契約と一緒かどうかわかりませんけれども、内容を具体的に定めることができ ない場合、時期を具体的に定めることができない場合に、同意を取っていいものかどうかという ことに迷いがあったので、こういうことを提案した次第ですので、そこをお汲み取りいただけれ ばと思います。 ○矢崎座長   でも、何も目的もなく血液を採取して集めるということはありませんよね。大体の目的があっ てサンプルを集める、あるいはデータを集めるということになるかと思います。 ○川村委員   もちろんそうですが、将来必要なときに、必要な項目をやるという趣旨で書いてあったのです。 だけれども、それが一体いつやるのか、10年先なのか20年先なのか、それとも一体どういう方 向の測定をするのか、血液を使って一体何を測定しようとするのか、ということが書かれていな いという指摘だったのです。 ○森崎委員   いまご指摘の点は2つ入っているような気がいたします。もちろん研究には目的を記すべきだ という考え方の点と、Aという研究計画があって、それが有期限の研究だとすると、その明示の 仕方はいろいろあろうかと思いますが、その期限の後にほかの研究に活用するために医学研究、 ……研究といろいろな言い方があるかもしれませんが、そういう検討に用いられるように保存を します、という形で同意を取られることがあると思います。それは、初めから対象をあまり書か ないという包括同意とは同一ではないように私は感じています。研究が進捗している段階で、な おかつ他のものに広げることを含めて明示をしない包括同意という議論をする。そういう点と、 研究の後に残ったものを活用していいか。それについては否定されれば、その部分についてはオ プションを取らないということで、その方には参加していただかない。保存しないという形での 対応が現実にあろうかと思います。その点についてはいかがなのでしょうか。 ○川村委員   森崎委員が言われた最初の部分のことしか考えていませんで、既存資料の目的外使用というか、 残余資料の他の研究の適用のことはここの中には考えていませんでした。もちろん、いまのとこ ろは他の目的に使うという場合は別研究ですから、別にもう1回、研究プロトコールを書かない といけないと思いますし、同意も場合によっては既存資料にはなるのですが、必要があれば取る ことになると考えています。   いま、お話したのはそうではなくて単一の研究の中なのですが、具体的に測定項目や測定時期 を定めることができない。目的は書いてあるのですが、一体それは抗酸化物質を測るのか免疫機 能を測るのか、そういうことが明示できないものですから、そういう時にけしからんと言われた ことが引っかかっているということです。 ○矢崎座長   そういうのはインフォームド・コンセントになるのですかね。ですから、いま森崎委員が言わ れた後段の件です。これについては疫学研究で相当インフォームド・コンセントの項で細かく記 載してあって、必ずしも患者の同意が得られなかったから疫学研究は進まないということではな く、ケース・バイ・ケースで、同意が得られなくても研究が進めるような指針にはなっていると 思います。ですから、漠とした包括同意というのは極めて誤解を与える可能性もあるので、私個 人としては包括同意とわざわざ定義して云々というよりは、疫学研究指針の中の28、29に述べ てあるように細かくいろいろなケースの指針を書いてありますので、新たにこれについて加える 必要があるかどうかになると思いますが、いかがでしょうか。 ○小幡委員   今のは、つまりは場目的な利用ですかね。それはどういう法制でいくか決まっていないですよ ね。インフォームド・コンセントの問題かと言われたように、まさにバンクに提供するかどうか という問題は、ちょっと別途あるので、インフォームド・コンセントの中で論ずるとちょっとず れるかもしれないという感じです。 ○矢崎座長   そうしますと改めて何か加えるとか、とりあえずこの点について新たな見直しの指針ではなく て、従来のこの指針の中で対応していただき、いま言われたバンク的なものはまた他で検討して いただくことで、よろしいでしょうか。次に指針の適用範囲についてですが、事務局からよろし くお願いします。 ○吉川課長補佐   資料の32頁です。今まで手続的なところをずっとご議論いただきましたが、これは手続とい うよりも、いま指針の外縁が大変混乱していますので、そこをいろいろご議論いただきたいとい うものです。現行については、研究には該当しないもの、研究には該当するけれども、この疫学 研究指針の中では適用しないといったものに分かれています。   32頁の下に図表のような形で書いていますが、例えば研究に該当しないと言っているものに ついては、いわゆる医師が行う診療行為に近いようなもの、例えば症例報告といった知見を得る 行為は研究ではないだろうという整理をしています。(2)として法令等に基づく保健事業、例えば がん登録事業といった一定の法令の中で行われるものについても、いわゆる事業として研究では ないという整理になっています。   研究に該当するけれども、ここに挙げたとおり法律の規定に基づき実施される調査については、 その中で担保されるべきものとの考えから疫学研究指針の対象ではないとされています。例えば 感染症予防法に基づく調査などが該当します。(2)は、既にゲノム指針は遺伝情報を扱うというこ とで特異な部分がありますので、これについてはゲノム指針を見ていただくということで、疫学 の中には適用しないという整理をしています。   (3)は、資料として既に連結不可能匿名化されている情報です。これは例えば既存の統計情報の ようなもので、研究を始めようと思ったときに、もう連結不可能匿名化されている情報があった ものについては、特段の倫理的配慮も必要ないだろうということで、この指針の対象外としてい ます。   4は、手術、投薬等の医療行為を伴う介入研究です。これについては一定の倫理的な配慮が別 個必要であろうということで、例えばGCPや臨床研究指針が現行適用されています。以上です。 ○矢崎座長   川村委員から、指針適用の考え方についてご提案いただいていますので、よろしくお願いしま す。 ○川村委員   大変僭越ですが、議論の材料としてパワーポイントの資料を用意しましたので、簡単に説明さ せていただきます。倫理指針の適用範囲を考える際に、共通の認識に立ちたいということで提案 するものです。   いま、しばしば疫学の指針と臨床の指針との間で混乱が起きていて、審査の現場でも研究をす る立場の人でも、どちらにどういうふうに申請するのか迷いがあるようです。そこで問題点を整 理してみました。   2枚目のスライドで、臨床と疫学というのは対立概念として捉えられる向きもあるのですが、 私どもの考えとしては臨床と疫学は対立概念ではない。臨床というのは場の問題であって、疫学 というのは研究手法の問題であるということです。臨床に対応する言葉というのはフィールドで あり、あるいは臨床のもう少し反対側にはベンチという言葉もあるかもしれませんが、一般的に ヒトを対象とした研究としては臨床とフィールドが対立概念だと思います。   反対に、疫学研究に対立する概念は質的研究であろうと思います。そこで2×2の表を作って いますが、臨床かフィールドかという場の問題と、量的な処理をする疫学研究か質的研究かとい うことです。   疫学研究というのは、基本的に多数の人を対象として、得られたデータを量的に処理するとい う特性があります。したがって量的研究なのですが、量的研究という言い方を普段はしませんの で括弧して書いてありますが、多数に対して数量的な処理をします。   一方の質的研究は、量的処理をしないわけではありませんが、比較的例数は1例ないし少数例 であり、言葉によって細かく叙述するというところに特徴があります。したがって研究のやり方 は大きく異なります。実際、その交わる点が臨床の疫学だったりフィールドの疫学だったり、あ るいは症例報告であったりということです。   次の頁で、実際の指針がそれに対してどう対応しているかということです。場として臨床とフ ィールドがあります。手法として疫学研究と質的研究があります。さらに指針を読むと介入か介 入でないかによっても分けられていますので、2×2×2の8個のマトリックスができます。基 本的に疫学指針は当然疫学の領域にかかるのですが、医療行為の介入を伴うようなもの、臨床試 験については疫学の指針からは外れています。その部分について臨床を場にした介入するものに ついては、疫学研究であれ質的研究であれ、臨床の指針が適用されています。   そう考えていくと、質的研究の中で、臨床を場にした観察研究とフィールドを場にした介入や 観察研究は指針の適用がないことになり、そこのところは黄色でガイドラインと書いてあります。   医療、保健事業者における個人情報保護云々のガイドラインで後ほど出てきますが、そういっ たもので今のところカバーするしかないというのが現状です。疫学指針が先にできた関係で、疫 学指針が優先的に適用され、そこで除外されたものが臨床指針の該当だったり、ガイドラインの 該当だったりすることになります。   少し実例を簡単に見ると、臨床試験というものは例えばですけれども、抗炎症薬による風邪の 回復促進・遅延を検証する無作為化対照試験、プラセボを使ったRCTといったもので、隣にい る新保委員と一緒にやった研究ですが、そういったプライマリーケアでRCTをやる。こんなの が1つの例です。いくらでもあります。   ただ、薬事法が関係する治験と呼ばれるものは、薬事法上の適用の拡大もしくは取得を目的と するものであって、業者が主導の場合と医師主導の場合とありますが、いずれにしても薬事法上 の承認申請に関わるもののみを治験と言っています。それは省令で別個規定されていますので、 これは除外することになります。   予後調査と我々は通常よく言っているものですが、患者コホート研究の形になっていて、これ は厚労省の特定疾患の研究としてやっていますけれども、IgA腎症の患者さんを何千人か登録 して、長期にわたって追跡して透析導入の危険因子を解明したり、それを予測するスコアを作っ たりということで、共同の観察研究ですが臨床の病院をベースにしたものがあります。   副作用の研究ですが、これは多くは症例対照研究という形でやります。例えば抗炎症薬とイン フルエンザ脳症との関係などですが、これは脳症を起こした患者さんと脳症を起こさなかった患 者さんと、いずれもインフルエンザの患者さんですけれども、その投薬内容を逆に遡って調べる というスタンスでやる研究で、これは名古屋大学の森島先生らがやっている研究です。   そのほか診断研究というのもあって、例えばトレッドミルの運動負荷検査の狭心症に対する感 度・特異度を調べるような研究です。これはトレッドミル・テストと冠動脈造影の両方を受けた 人の結果を対比するということでやります。いずれも、ここに挙げたのはすべて病院をベースに してやる研究です。   次はフィールドを場にした疫学研究の例ですが、予防介入試験というのがあります。フィール ドの研究ですが介入をするというものです。これも手前みそで恐縮ですが、うがいの風邪予防効 果を調べるために、健常者にうがい方法を割付けて、風邪の罹患を調べていくという研究です。   これも新保委員と一緒にやりましたが、こういったものがフィールドでもランダマイズド・ト ライアルというのが成り立ちます。保健所とかいろいろな健診施設でよくやっている健康増進教 室、禁煙教室といったものも、一種の介入であると思います。事業としてやる場合もありますが、  まだ新しい試みの場合は研究になることもあります。疫学的に前後比較が多いので問題点がない わけではありませんが、こういうものも1つの例です。   フィールドにおけるコホート研究というのは多数行われています。生活習慣とか血液成分の生 命予後に対する影響を調べるものなどがあって、文部科学省、厚生労働省とも大規模な全国にま たがるコホート研究があり、祖父江委員などが中心になってやっておられるものですが、こうい った地域を集約したようなコホート研究があります。   症例対照研究としては、例えば特定疾患の難病の発症要因の探索ということで、その患者さん と健常者の過去の状況を調べたりします。これは実は病院と病院以外の人、一般市民などを巻き 込むので、必ずしも臨床が無関係ということではありませんが、こういうものもいろいろと行わ れています。   各種の実態調査というのがあります。マトリックスには書いてありませんが、これは記述疫学 研究というもので、要するに実態を整理したものということです。働き盛りの突然死が4月に多 いとか土日に多いという研究は、産業医が医者のデータを持ち寄って分類整理したものですし、 クロイツフェルト・ヤコブ病の全国疫学調査などは中村委員がずっとやっていらっしゃることで すが、こういった全国の医療機関に照会をかけてデータを集約する研究もあります。こういった ものが1つの例です。   次は質的研究の例ですが、これも臨床とフィールドと両方あります。臨床研究では介入の場合 と観察の場合とあって、介入のものとしては、例えば腎不全患者に対して病気の腎を移植すると いう、今、ちょっとホットな話題になっているようなものもあります。あの病腎移植というのは 医学的に確立したものではありませんので、我々の目から見れば、あれは介入の症例報告である というふうに思います。観察の症例報告としては、1962年に川崎病の初の症例報告がされたの ですが、これは1例だけでなく7例のケースシリーズでした。こういったものが頻繁に行われて います。   フィールドでは、言葉が事例研究、ケーススタディということで、臨床ではケースレポートと いう言い方をよくしますが、フィールドではケーススタディという言い方のほうが多いかもしれ ません。訪問看護の事例報告などを保健師さんなどがよくやっていますし、フォーカス・グルー プ・インタビューなどで、看取りなどについて経験者を選択的に集めて詳細に意見を聞いたり、 映像も撮って表情も含めて分析するということがなされています。私はフィールドの質的研究は 詳細には存じ上げませんが、こういったものがあります。   この質的研究の倫理は、一体どうなっているかということですが、疫学研究ではないので疫学 指針には入れることができませんし、介入がなければ臨床指針からも除外されるということで、 現在のところは「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイドライン」 に多少の記述があるのみです。ここは氏名、生年月日、住所等を消去すれば匿名化になる。顔写 真を出す場合は目の部分をマスキンクすればよい。匿名化できない場合は本人の同意が必要とい う規定になっています。しかし、そのほか倫理委員会云々の話は全くありません。しかし、症例 報告というのは個人の情報を詳細に描写するということがあり、時に非常にセンシティブな問題 になる場合もありますので、本当になくていいのか、ガイドラインだけでいいのかなと思うこと もあります。   次に開発研究というのが、ときどき我々の倫理審査に紛れ込んできます。どんなのがあるかと いうと、遠隔医療における病理診断装置の開発などがあって、これは実際の病理方法を使って、 全国の大学の病理部門で離れていても診断ができるシステムを作っているものです。このほか病 理ライブラリーを作りたいという病理からの意見もあり、ライブラリーの構築で分析することを 直接目的にするのではなく、そういうシステムを作ること自体が目的であり、いつでも利用でき るようなライブラリーを作りたいということです。ただ、実際に多数の標本を使う人体試料です から、その辺をどうするのかということで一時もめたことがあります。臨床だけでなく、フィー ルドでも労働安全衛生法の改正に対応した健康管理システムの開発などで、これは事業所の健診 データを利用してシステムを作ることが行われます。   こういった研究は、機器やシステムの開発のために個人レベルの人体試料やデータを用いるわ けです。試作そのものは模擬データでできるのですが、実際のデータで検証を行うということで、 どうしても人体試料を使ったり人体の情報を使ったりします。しかし、個々のデータの内容に関 心はなくて、このデータを解析しようということはなく、使えるということを確認するのがほと んどだと思います。   こういうのが疫学研究倫理指針に該当するものかどうかということです。あまり該当する感じ はしないのですが、ただ、データの取扱いはよく似ているのです。多数のデータを電子媒体に入 れたり、いずれにしても多数ですので、こういうところが疫学研究とデータの取扱いが似ている ために、それとこういうのは指針がないために、しばしば紛れ込んでしまうということがありま す。これは何も縛りがなくていいのかということもあると思いますので、こういった側面があり ますということを紹介しておきます。   次の問題として診療あるいは保健事業と研究ということです。先ほど事務局から提示がありま したように、いろいろなものが業務の範囲ということで研究から除外されていますが、疫学指針 の中にも特定の患者の治療を前提とせずに、ある疾病の治療方法等を検討するため、その所属施 設の、その病気を有する患者さんの過去の情報を集計したりする作業は、研究ではなくて診療の 一環であるという位置づけがなされています。   これは本当に診療に必要なことだとは思いますが、5年生存率などを追跡する場合にどうか。 最近は病院評価などがありますので、そういうのは出していかないといけないご時世ですが、全 員がその中にいるとは限らない。通院しているとは限らないわけです。死亡された方もいるし他 院に転院された方もいるので、研究者が所属する医療機関内で済まないわけです。済む人だけで やれば偏りが生じてしまうわけです。そういう場合に指針はどうなるのか。除外のままでいいの かどうかが問題になります。   集中治療室でMRSAが流行って何人か罹った時に、原因を調べたいというのは当然の要求で すが、その時に当該の疾患を有する患者だけでなく、そういうMRSAを発症しなかった患者さ んの状況と比べなければ、どこが違うか分からないので、そういう当該疾患を有していない患者 さんと比べるわけですが、そうすると指針の適用外の基準からははみ出してしまうことが起きま す。そうなると一部のごく狭い範囲のことしかできないというか、研究としての妥当性が担保さ れないということが起きます。   そういうことを踏まえて、診療あるいは保健事業ですが、まとめて業務と言います。我々に与 えられた業務と研究というものを整理してみる。そうすると診療や保健事業というのは有効性、 そのほかの知見がわかっている、良いと思うからやるというのが事業で、研究はわからないから やるというものであろうと思います。この「わかっている」の程度もいろいろあって、確固とし たエビデンスのあるものもあるでしょうし、かなり怪しげなものもあるかと思います。しかし、 一応、有効であることが確立しているか、あるいは有効であると確信するに足る相応の根拠があ ることをもって診療に臨んでいるので、その辺、一応蓋然性があるというものは診療とみなして いいと思いますが、これが良いかどうかわからないから調べるのだという姿勢が、たぶん研究だ と思います。   そのほか受益者は誰かという問題があります。診療とか保健事業でしたら対象者本人が受益す るわけですが、研究ですとその人には直接メリットがなくて、将来の患者さんなどに還元される ということになります。また結果の公表についても、診療や保健事業は必ずしも外に報告するこ とを前提としていませんが、研究は基本的に1人にかこっておくわけではなく、すぐに表するこ とが前提になります。   こういう特性の分類ができるかと思いますが、これでいくと例えば死後の病理解剖などは、病 気がわからないから調べるのですが、受益は本人には全くいかないということだし、公表はする つもりはなくても、剖検は「日本病理剖検輯報」というのを作っていますので報告することにな っています。毎年分厚い冊子が刊公され公表されています。そういうことで剖検も研究になるな ということになります。いま問題になっている病腎移植についても有効性があるとは思えないし、 担当医師はたぶん本人のためを思ってと言うでしょうけれども、それはどうか分からないという ところがあります。結果の公表についてされたかどうかはよく承知していません。   もう1つ別の視点を持ち出してみます。資料の自己コントロール性と有限性という概念です。 資料の特性と言ってもいいかもしれません。自己コントロール性というのは、回答をするかしな いか、あるいはどういうふうに回答するかを自分の意思で制御できることとしてみました。有限 性というのは、それがすべてであってそれ以上のものは出てこないという拡張性のなさというこ とです。資料として3種類挙げてみましたが、自記式質問票、いわゆるアンケートとかインタビ ューみたいなものは、回答するかしないかは自分で決めればいいし、どういう回答をするかも決 めればいいし、また答えたものがすべてであってそれ以上のものは出てこない。一方、生物学的 測定結果というのは、臨床検査の結果のようなものです。健診データのようなコレステロールが いくつ、中性脂肪がいくつというデータは、自分でその結果をコントロールすることはできませ んが、それ以上のものは出てこない。書いてあるものがすべてです。   一方、人体試料というのは自分で結果をコントロールできないし、何が出てくるかわからない というか、いくらでも後から測定結果を出すことができる側面があるので、資料の種類として3 種類あるのではないかと常々感じています。こういった視点も持ちたいと思っています。ここま でが提示です。   振り返って、我々の極めてローカルな話で申し訳ないのですが、倫理審査はどうなっているか というと、医の倫理委員会というのがあって、その下に12の小委員会があります。その中の1 つに疫学に関する委員会とか臨床に関する小委員会があります。小委員会の審議を電子メールで やった後、親委員会に送って親委員会で電子メールの審査をするというのが我々のシステムです。  どのくらいの審査件数があるかというと、年間330件ほどです。そのうち約3分の1が疫学の指 針です。つまり12ある小委員会ですけれども、1つの委員会でおよそ3分の1の審査をしてい ます。その半分ぐらいが臨床指針です。またその臨床指針と同じくらいの数がどこにも属さない ものです。そういったものがあります。   どのくらい時間がかかっているか。これは人によって全然違うのでごく大ざっぱなものですが、 1件審査するのに1時間前後はかかると思います。丁寧にやるとこれだと1時間ではとても済ま ないぐらい詳しく書いてくる委員もいます。しかもその1回で終わらなくて8〜9割は再審査が あります。最高3回差し戻しで合計4回審査したという例がありました。迅速審査もやっていま す。既存のものの変更などは迅速申請でやっていますが、これは委員数が少ないだけで基準とか 手続きは基本的に同じです。そういった現状があって、ものすごい時間を審査に投入していると いうことを説明したかった次第です。   そういう現状や認識を踏まえ、少しの提案です。私としては疫学指針、臨床指針も含めてです が、指針というものは広範囲に適用すべきであろうということで、研究に該当するものはすべて 適用すべきであろうと思っています。適用となった研究については届け出・登録をすべきです。   ただ、その届け出られた研究の中で「最小限の危険を超える危険を含まない研究」にも、本当 に審査が必要なのだろうかと思います。もちろん審査すること自体はいけないとは全然思わない のですが、何と言ってもマンパワーに限界があり、おびただしい数の倫理審査をやっていますの で、なかなか1つに時間をかけられない現状があります。そうなると優先順位を付けたほうがい いのではないかと思うわけです。それで最小限の危険がないであろうと思うものは、何とか省略 できないだろうかというのが私の考えです。   逆に言うと、最小限の危険を超え得るものは何かというと、介入をするもの、観察の中でも侵 襲を伴うもの、採血レベル以上、人体試料を用いるもので、もう少し厳しくすれば生物学測定、 つまり自己コントロールできないものからやっていく考えもあるかもしれませんが、一応、従来 から人体試料がよく使われているので、拡張性があるものについては審査を考えています。個人 情報の移転を伴う多施設共同観察研究、つまり直接の担当者ではない、よその人に情報を送るこ とに縛りを作るということ。そのほか施設長が必要と認めるものというので、ひょっとすると、 このあたりはいろいろ裁量の余地があるかもしれませんが、このようなことを考えています。   次の頁にフローチャートのようなものを出しています。それを流れ図にしてみると介入がある かどうか、侵襲があるかないか、人体試料を用いるかどうか、個人情報の移転を伴うものかどう か、施設長が必要と認めといったものを倫理審査の対象にしてはどうかということです。施設長 が必要と判断するものの中に、先ほどの議論からいくと未成年を対象とするものが入ってくるか もしれません。   現在は、最小限の危険を超えないものは迅速審査という規定になっています。ただ、迅速審査 の基準が明確でないことと、もう1つ、迅速審査というのは一体本質は何だろうと考えてみたの ですが、迅速審査に関する規定の中では軽微な変更とか分担研究者の場合というのが書かれてい ます。確かに審査は必要なのですが、どこかで既に承認済みというものが今は迅速審査になって います。過去に承認したり、あるいはよそで承認したものを追認するような格好のものが迅速審 査になっています。そのほかに最小限の危険を超えないものが迅速審査に今は入っていますが、 迅速審査というものを限定的に見れば既承認のものの見直し、もしくは追認ということになるの かなと思います。   そうなると、次の頁ですが、指針の適用を受けるけれども倫理審査が要らないという事例が出 てきます。例えばどういうものがあるかというと、自分の施設の受療者、自分の所の病院に通っ ている人を対象に、診療録と追加で質問票あるいは聞き取りをやったというものです。例えば業 務の自己評価、術後の生存率の調査は一種の患者コホート研究です。院内感染は、先ほど申し上  げた集中治療室でのMRSA感染などの原因究明及び症例対象研究です。   こういったものは未知だからやるのですが、自施設の中でやって既存資料のみで最小限の危険 は超えないから、いいのではないかということですが、ただ、引っかかるのは紹介先というか転 院先です。予後を追跡する場合は転院する場合がかなり多いので、転院先まで聞くと個人情報の 移転を伴ってしまうことになります。これがいいかどうかを議論しないといけない。個人情報の 移転そのものは、研究のために移転するのではなく業務上の必要で移転したものだから、いいと いう注釈が付けば要らないのかもしれませんが、その辺はいずれにしても議論の余地があります。   施設外の対象者に対して、質問票や聞き取りのみを用いる調査で、例えば医学部の学生の社会 医学実習の多くは、このスタイルではないかと思いますが、一般市民に聞いたり通院している患 者さんやその家族に聞いたりして、聞き取り調査をやるようなことがしばしばありますけれども、 そういったのが最小限の危険を超えないだろうということで、適用は受けるけれども審査外とい うことを考えています。   匿名化された情報資料のみを用いる侵襲のない多施設共同研究ということで、例えば主治医宛 に難病患者さんの予後を聞くというのは、連結不可能匿名化された情報を集める限りは、個人情 報の移転もなく新たな侵襲もないので審査はなくてもいいということになります。   あと1つ追加ですが、こうやっていくとインフォームド・コンセントにも同じような論理が使 えるかなということで、介入の有無、侵襲の有無、人体試料の有無、個人情報の移転といった先 ほどのディシジョン濃度によって分けて、さらに同意に関してはその他の特性というところで特 殊なものがあり、介入試験の場合は個人単位か集団単位かということで現在の指針も分かれてい ます。いまの指針にはないのですが、新規にデータを収集するかどうかということで、同意の取 り方は当然変わってくるわけです。これから検査しますよという時に同意も取らずにやるわけが ないので、当然必要ですし、そこのところが濃度として出てきます。質問票のような場合、同意 書とか同意という行為が殊更になくても自発的に質問票を提出すれば、同意があったとみなして いいのではないかと思います。ここのところが従来の規定にないところです。しかし、この同意 については適用範囲の範疇を超えますので、あくまでも余計な項目ではあります。   最後のまとめですが、研究の持つ公益性を再確認したいということです。研究と診療というの は対立概念で、確かに概念上は対立ですけれども、私たちが行う人を対象とした疫学研究や質的 研究というのは、あくまでもを医療や保健事業の評価あるいは改善のために行っているものであ って、診療の延長上にあるという意識を持っています。患者さんにとって大事なことは何かとい うことで調べていくので、アウトカム研究という言い方をしますけれども、決してその研究が日 常診療や保健事業と乖離したものではなく、それをきちんと評価し改善するために行っているの だということを、もう一度確認したいと思います。   開発研究がいま中ぶらりんですので、これを疫学指針の適用にするのかしないのか。しないと したら一体どうやって安全性を担保するのかを考える必要があります。倫理指針の適用と倫理審 査を分離してはどうかということですが、現在は指針の適用になったら全例審査になっています けれども、先ほど言ったようにマンパワーに限界があります。しかも先ほどの議論にありました ように、これから長期にわたる研究は途中で追加調査をするとか、研究そのもののフォローアッ プをするとなると、ますます審査件数が増えてきますので、そうなると本当にどこかに重点的に エネルギーを配分しないと、とてもやっていけないと思います。   ただ、全く野放しにしていいとは思いません。審査をしないにしても、いざという時は踏み込 めるよという状況にしておくためには、届け出とか登録ということを考えてはどうかと思います。 既に私は3年ほど前にコンピューターを使った登録システムのロジックだけは作っていて、いろ いろな研究の特性を入力すると自動的に、これは個別のインフォームド・コンセントが必要です、 これは情報公開が必要ですというのをリターンしてくれるようにして、かつ、登録して3年経っ たら自動的に申請者に経過報告を出しなさいというウォーニングを出す、リマインダーを出すと いうこともできるように考えて、一応、概念だけは作っているのです。そういった登録というの もひとつの手ではないかと思います。   個人情報の取扱いについては、個人情報保護法ができたことでもあり、それと同水準に揃えて ほしいと思います。すなわち個人情報保護法では特に規定のない連結不可能匿名化情報の利用は、 あまり制限をしたくないと思います。むしろ研究の倫理指針では、医学研究特有の問題をしっか り書いたほうがいいだろうと思います。例えば介入の問題、侵襲の問題、人体試料の問題といっ た問題をきっちりと書くことで、個人情報の保護については個人情報保護法と足並を揃えるのが、 整合性があるのではないかと思った次第です。以上、長くなりましたが提案させていただきまし た。 ○矢崎座長   大変貴重なご意見をお聞きしまして、ありがとうございました。3頁目にある黄色い部分のガ イドラインですが、これを今のお話では、できるだけ疫学研究の指針の中に取り込んではいかが ということではないのですね。 ○川村委員   ここは疫学には該当しないので、このあたりは独立した指針を作るのかどうか。ただ、これも 疫学研究に入れてしまうと、全く疫学でないものが入ってしまうので違和感が強い。 ○矢崎座長    ケーススタディなんかが入ってきますからね。いまのご意見でいかがでしょうか。 ○祖父江委員   いまの3頁目の研究の区分と倫理指針の適用のところですが、下段のほうは疫学研究、質的研 究でいいと思いますけれども、臨床のほうで倫理指針と疫学倫理指針を適用する際に、この青の 部分です。臨床の場での疫学研究を臨床倫理指針でいくのか疫学倫理指針でいくのか、ここがい ちばん混乱するところだと思います。ここのところで多施設の疫学研究というか量的研究であれ ば、これは疫学倫理指針ということが明示されていますけれども、単施設で行う臨床の場での量 的研究というのを疫学倫理指針で縛るのかどうかというのは、それは疫学研究倫理指針なのです か。 ○川村委員   というよりは、現在は先に疫学指針が決まったので、そこでカバーして例外的なものを臨床指 針に持って行っているわけです。だから介入を伴うことだけが臨床のほうに移っているので、臨 床の場における観察研究が残ってしまっているわけです。だから臨床の指針と疫学の指針を分け るのでなく、本当は融合すべきだと思うのですが、所管も違うし改定の時期も違うので噛み合わ ないみたいです。そこで現行の枠組みで考えればということですので、本当はこれで整然として いるとは到底思えないですけれども、いまの指針に基づくとこうなってしまうということです。    しかも単施設で自分の患者さんを診る分には、いずれにしてもこれにも該当しない。診療の一 貫というような位置づけで、指針の適用も全くないということになっています。 ○丸山委員   いまの祖父江委員の質問された点に関係するのですが、最後に川村委員の言われた単施設でと いうのは、臨床研究指針の適用ではないでしょうか。それから、その前に祖父江委員がお話にな ったところだと思うのですが、私も自信がありませんけれども、4頁の2つ目の予後調査(患者 コホート研究)とされているものです。これは疫学研究指針の適用があるものではないか。9頁 の「特定の患者の治療を前提とせずに、ある疾患の治療方法等を検討するため、研究者等が所属 する医療機関内の当該疾病を有する患者の診療録等を集計し、報告する行為」は、川村委員のご 意見でも疫学指針なのですね。そうではないですか。表題がどちらの趣旨を示しているのか、私 の大ざっぱな考えでは4頁目の2つ目と9頁のものは疫学研究指針の適用ではないかと思いま すけれども。 ○川村委員   そのとおりです。4頁の2番目の「予後調査」と書いた研究は、臨床の場で行われる観察研究 ですので疫学指針の適用です。ただ、臨床での疫学研究の実例ということで紹介しただけで、こ の4つ並べたうち臨床指針の適用があるのは1番目の臨床試験だけです。9頁のは本来は疫学研 究だと思いますが、現在は疫学研究の対象になっていない。 ○丸山委員    それは京都大学でですか。 ○川村委員    でなくて、指針にそう書いてあるのです。 ○丸山委員    これは指針にそう書いてありますか。 ○吉川課長補佐   先生、資料の35頁に現行の指針の適用範囲の規定があります。その中に四角枠で研究事例と いったものを示しているところですが、その右側で指針の対象外ということで書かれているほう ですが、診療と研究というところの2ポツ目に、いま川村委員からご提示があった規定が入って います。 ○丸山委員   なるほど。研究者等が所属する医療機関内の情報しか集めなければ、そうなのですね。下に書 かれている院内では済まないというところまで手を広げると、疫学指針かもしれないと。 ○川村委員   そうです。いまのを正直に読むと、院外まで広がってしまうと1施設の範囲を超えるので、個 人情報の移転をしてしまいますし、いわゆる現在の定義からは外れてきて指針の対象になってし まうということです。 ○丸山委員    わかりました。ちょっと確認というか、疑問を呈して失礼しました。 ○矢崎座長   34頁で事務局の改正案ですが、これは35頁の研究事例のところの見直しを、更にこういうふ うにしたらどうかということで案を提示していて、いまのご議論もその中に入っていると思いま す。 ○永井委員   これは、私も丸山委員と一緒にワーキングにいるときに議論したところですが、たたき台を作 っている時にかなり同意を前提ということで、一時話が進んでいたことがありました。そのとき に、こういうようなケースでは、いちいち同意をとっていると自分たちの診療のクオリティコン トロールができないという議論があって、たぶん外したのだと思います。大きな枠組みをどうす るのかということはもちろんありますが、もう1つ、例えば診療自体にも血液を採取する、検査 をする、心電図を取るなど、そういう意味ではかなり研究的要素があるわけです。ですから、そ の辺は十分議論していったほうがいいと思います。おそらく医師会の先生方も、自分たちが日常 やっていることが研究と言われたときに、いろいろな影響が出てくる可能性があると思います。   確かに川村委員のされた整理というのは、私も1つの方法だと思います。緩和していけばいい わけです。同意は要らないというふうに持っていくのもいいのですが、しかし、これをどんどん 踏み込むと、聴診器を当てることも研究だというところが実はあるわけです。そこを気をつけて 議論する必要があると思います。 ○川村委員   同意が全部に要るわけではなくて、同意は最後のほうに挙げたように非常に限定的なところし か要らないのですが、指針の適用とか倫理審査も対象にするかどうか。できるだけいろいろな事 例に対応できるように、基準だけはしっかり持っておきたいということで整理したものです。 ○矢崎座長   診療と研究を分けるのは、なかなか難しいと思います。連続的なものですから、そこを指針で どこまで網を掛けるかというところがあるわけです。 ○永井委員   先ほどの来院していないかもしれないというところが、かつて手術を受けた方が、いまお元気 かどうかというのを電話で問い合わせるというのは、これもいちいちIRBを通すと結構大変で す。その辺についても、見方によっては医療機関にかつて通院していたということで、我々も何 となくそういうところは電話で「お元気ですか」というのは、たぶん通していないことが多いの ではないかと思います。 ○川村委員   おっしゃるとおりです。私も臨床医の端くれですので、そんなことは当たり前でしょうという のが臨床医としての我々の感覚だと思います。ですから、基本的に自分たちが管轄しているとこ ろは、いちいち倫理審査をしなくても通常の信頼関係で行われていることに関しては、あまり倫 理審査が要らなくて済むように基準を切ろうとしているわけです。ですから臨床医として当然の ことが、たとえ研究に該当しても構わないけれども迅速にできると。ただ、精神はきちんと守る とか、どこでどういうことをやっているかを、長たる者がある程度把握しているという意味で、 届け出はしたほうがいいのではないか。あるいは何かそういう企画をするときに、プロトコール はきちんと作ったほうがいいと思います。たとえ自己評価であったとしてもプロトコールは作る べきだと私は考えています。だから敷居が高いようでは何も行われずに終わってしまう。やるべ きことが行われないから、そんなにハードルは高くないけれども、きちんと手続は守りましょう という趣旨を考えています。 ○丸山委員   これを今日、取りまとめまでもっていくのは難しいですね。ではざっくばらんに質問させてい ただいて構いませんか。10頁のところですが、剖検も研究かと書かれていますけれども、この 剖検は法医、病理解剖を前提にしておられるのですね。病理解剖だと剖検すれば病気のメカニズ ムなり、治療の有効性なり死因等がわかるという前提でなさっているのですから、診療と同じよ うに業務という整理に基本的にはなるのではないですか。 ○川村委員   もちろん我々は業務の一環として剖検をやっていますが、こういう分類に従うと、要するに診 療と研究の特性を書き出して、これに当てはめてみると剖検も研究になってしまうかもしれない というのでクエスチョンが付いているわけです。 ○丸山委員   ですけど剖検をすれば、一応、その死因等が判明するという前提でなさっているのですね。そ うなると、研究的要素よりも業務的要素が前面に出てくるのではないかと思います。 ○川村委員   もちろんそうですけれども、ですから、それをどう特性づけるかということです。ほかの一般 的なイメージの診療と研究という考え方からすると、一応、確立していることをやるのは診療で、 剖検は最終診断だと、ただ死後になっているだけだというふうに捉えれば、別に業務の中でも構 わないです。これは枠組みの外に書いてクエスチョンが付いているのは、本当にそれを研究にし てくれという意味で言っているわけではなくて、そういう捉え方もできてしまいますということ で、資料としては不十分かもしれませんけれども、我々は基本的に剖検は診療の最終的な型を付 けるというか、そういうものだと臨床医は認識していると思います。 ○丸山委員   今のところは川村委員のご意見を伺えたということで、次にもう1つ質問させていただきたい のですが、15頁の最後のところです。匿名化された情報資料のみを用いる多施設共同観察研究 で、主治医から難病患者の予後情報を主任研究者のもとに集めるわけですね。主任研究者のほう は誰のものかわからない。送っている元の主治医のほうは追跡できるという状況です。そうなる と主任研究者のほうで集まったものは連結不可能匿名化された情報のみということで、いまの疫 学研究倫理指針の適用除外の範疇に入るかと思います。その点はいかがですか。 ○川村委員   その点、ちょっと確認しどこかに書きましたけれども、匿名化がいつの時点に行われたかとい うことです。研究が始まるまでに既に匿名化されたもののことは除外になっているのですが、研 究に伴って匿名化するものは除外でないとなっています。ですから最初からアノニマスなものが 既にあって、それを利用して集計・分析をする場合は適用外ですが、研究のために新たに匿名化 を図るという場合は研究だということです。 ○丸山委員   「資料として既に連結不可能匿名化」の「既に」というのを、時間的な研究計画前という捉え 方なのですね。 ○川村委員    そうです。 ○丸山委員    わかりました。 ○矢崎座長   そろそろ時間がきていまして、議論はこの次にさせていただきたいと思うのですが、論点の6 のインフォームド・コンセントの電子化のところで、先ほどいろいろな議論がありました。最終 的に文書による同意を得るには電子化は「ノー」ということで、これは従来どおりの指針でいい わけですね。いま、ITの個人認証などでいろいろな問題があるので、現状では利用しにくいの ではないかということですから、あえてそれを指針にわざわざ加える必要は、あまりないのでは ないかということです。   結局、検討のポイントで最後のまとめをしてくださいと私は事務局に言ったのですが、いまの 状況でとなると、いまの指針でも大分読み取れます。委員の方からの電子化についての指針を入 れるべきではないかというご意見ですが、いまの時点で電子化の状況を積極的に指針の中に取り 込むのは難しいような気がします。   この電子化の部分は指針の中に取り込まないで、文書で取るのは電子化では駄目であるという ことは、従来の指針で当然読めるわけですから、特段のご意見がなければ、事務局でまとめてく ださいと申し上げましたけれども、従来の指針でご意見が読めるとなれば、従来の指針で必要な ときは文書によるもので、電子化の応用というのは指針ではあえて見直すということでなく、従 来どおりやってくださいということでよろしいかなと思ったのです。将来の憶測まで読んだ指針 の見直しというのは難しいと思いますので、そういうことで申し訳ありませんが、もし何かご意 見がありましたら事務局のほうにおっしゃっていただければということで、事務局にいろいろ申 し上げて申し訳ありませんが、電子化については、あえてこうしたらいいのではないかというご 意見があれば取り組むということで、そういうふうにさせていただきたいと思います。大変申し 訳ありません。時間がきてしまいましたので、先ほどの議論のときに申し上げればよかったので すが、大変恐縮に存じます。   いまの適用範囲については、川村委員のお話を基にして、もう少し業務なのか研究なのかとい うことで切り分けさせていただいて、論点のまとめをしたいと思いますので、よろしくお願いし たいと思います。一応、これで今日のご議論を閉めさせていただきたいと思います。次回以降に ついて事務局からお願いします。 ○吉川課長補佐   次回の委員会につきましては、年末のお忙しいところで恐縮でございますが、12月27日(水)、 時間は本日と同様に3時間に延長させていただき、2時から5時ということで予定しています。 場所は本日と同じ厚生労働省省議室にて開催することとしています。いつものお願いで恐縮です が、紙ファイルの参考資料については次回以降、また机の上に置かせていただきますので、その まま置いてお帰りいただければと思います。本日はありがとうございました。 ○矢崎座長   委員の皆様の都合を聞くと、年末に差し迫ったほうがお集まりいただけることになって大変申 し訳ないのですが、今日、3時間たっぷりかかってお疲れで、もう二度と嫌だということをおっ しゃらずに、是非、次回で大よそのことはまとめたいと思いますので、是非、ご出席のほどをお 願いしたいと思います。今日は長時間、ありがとうございました。 ― 了 ― 【問い合わせ先】 厚生労働省大臣官房厚生科学課 担当:情報企画係(内線3808) 電話:(代表)03-5253-1111    (直通)03-3595-2171 - 3 -