06/11/29 市町村保健活動の再構築に関する検討会 第4回議事録 第4回 市町村保健活動の再構築に関する検討会 議事録 日時:平成18年11月29日(水)14:00〜16:00 場所:厚生労働省 7階 専用第15会議室 照会先:健康局総務課保健指導室(内線2398) ○出席構成員(50音順・敬称略)  井伊久美子、伊藤雅治、大橋範秀、尾島俊之、鏡諭、佐伯和子、迫和子、曽根智史、 田尾雅夫、田上豊資、藤内修二、長谷部裕子、藤山明美、本田栄子 ○オブザーバー(敬称略)  則安俊昭 ○厚生労働省関係出席者  勝又健康局総務課保健指導室長、清野健康局総務課生活習慣病対策室栄養専門官、加 藤健康局総務課保健指導室主査 ○次第 1.開会 2.議題  (1)PDCAサイクルに基づく保健活動を推進するための体制整備について  (2)専門技術職員の人材育成体制の在り方について  (3)新任時期の人材育成ガイドライン(案)について (4)専門技術職員の活動体制および人材育成体制に関する調査の中間結果について  (5)その他 3.閉会 1.開会  加藤主査  それでは、定刻となりましたので、ただいまより第4回市町村保健活動の再構築に関 する検討会を開会いたします。構成員の出席状況でございますが、本日、有原構成員、 山野井構成員は所用により御欠席の連絡をいただいております。なお、本日オブザーバ ーといたしまして、岡山県井笠保健所長の則安様に御出席をいただいております。  続きまして、資料の御確認をお願いいたします。お手元にお配りいたしました資料で ございますが、座席表、構成員名簿、議事次第の後に、資料1−1「PDCAサイクル に基づく保健活動を推進するための体制整備について(長谷部構成員作成資料)」、資料 1−2「PDCAサイクルに基づく保健活動を推進するための体制整備について(本田 構成員作成資料)」、資料1−3「PDCAサイクルに基づく保健活動を推進するための 体制整備について(田上構成員作成資料)」、資料2−1「専門技術職員の人材育成体制 のあり方について(大橋構成員作成資料)」、資料2−2「専門技術職員の人材育成体制 のあり方について(山野井構成員作成資料)」、資料3「新任時期の人材育成プログラム ガイドライン(案)」、資料4「専門技術職員の活動体制および人材育成体制に関する調 査の中間結果」、参考資料「平成16年度地域保健・老人保健事業実施状況」、この参考 資料は第1回目未定稿の資料でございましたが、確定いたしましたので本日提出させて いただきます。  以上でございます。不足・落丁等がございましたら、事務局までお申し出ください。  それでは、この後の進行は伊藤座長にお願いいたします。 2.議題  (1)PDCAサイクルに基づく保健活動を推進するための体制整備について  伊藤座長  それでは、議事に入らせていただきます。初めに、議題1の「PDCAサイクルに基 づく保健活動を推進するための体制整備について」でございます。前回の検討会で最後 に申し上げましたように、このことにつきましては議題2とあわせまして、座長と事務 局が議論のたたき台となるような資料の作成について相談をいたしまして、構成員の方 に作成をお願いいたしました。担当していただきました構成員の皆様方には、御礼を申 し上げたいと存じます。PDCAサイクルに基づく保健活動を推進するための体制整備 ということで、3名の方にきょうは御発表をお願いしております。  それでは、大変時間の制約があって申しわけないのですが、説明をお1人7〜8分で お願いしたいと存じます。それで、3名の方の御説明がすべて終わった後で一括して質 問、討論を行いたいと思いますので、よろしくお願いいたします。  それではまず、長谷部構成員からお願いいたします。  長谷部構成員  それでは、報告させていただきます。PDCAサイクルに基づく保健活動を推進する ためにどんな体制があればいいのかというところで、私は市役所の保健師ですので、今 の現場から考えたことをまとめてみました。  まず、この体制の説明をするに当たり、私は大きく分けて3つあるかなと思いました。 まずは、庁内体制の整備がどうなっているかということと、関係機関、住民との連携体 制がどうなっているかということと、専門職、私たち自身のスキルアップのための体制 がどうなっているんだろうかということで、1枚のシートに図にして、ちょっとわかり にくくなっている部分もあるかと思いますが、簡単に説明させていただきます。  まず、「市役所」と書いてありますが、これは組織全体というふうに考えていただきま して、庁内全体でPDCAサイクルへ取り組む体制があるかどうかというのも、一つの 大きなものかなと思っております。自治体によってはかなり進んでいるところもあるよ うですが、まだまだというところもありますし、一つの課だけで取り組むというもので はないかと思いますし、その辺が現状どうなっているかと思います。  あと、私は健康増進課という課に所属しているのですが、課内体制がどうなっている かというところかと思いました。実際に現場で動く専門職と、企画していく専門職、事 務職、あと上司という形で、その関係の中でPDCAサイクルを推進するためには、こ この現場で把握してきた情報を、いかに増進課の中で共有していける体制があるかとい うようなことを考えました。現場は現場、企画は企画というふうになりがちではないか と思っています。  あとは他部署との情報の共有というところで、多角的に実態把握するためにというこ とで書かせていただいていますが、ほかの部署との情報の共有がどうなんだろうかと思 います。今回私がまとめてみて思ったのが、キーワードはやはりPDCAのPの中の「実 態把握」かなというふうに自分の中では位置づけました。そのサイクルがうまくいくた めには、やはり根本的な地区の実態であるとか、そういったものをいかに職員が把握し て、庁内で共有できるシステムをつくるかということが、すべてかぎを握っているよう な気がしております。あとはコミュニケーションの必要で、課内でのコミュニケーショ ンであり、庁内でのコミュニケーションと、いろいろなコミュニケーションがあるわけ ですが、その体制づくりということになるかと思います。  そしてその下の方に「関係機関」「住民」と書きましたが、やはり関係者との話し合い、 協働というところは、保健活動をやっていく上では不可欠なところであるかと思います。 計画策定への参画体制、外部評価体制整備、話し合い、協働の体制がどうなっているだ ろうかという、そのあたりもポイントかと思います。  そして、両方向の矢印になっている四角の枠で、2つほど*印になっていますが、私 たちが活動として地区へ出向き、直接住民の生活実態を把握できる体制づくりも必要で はないかと思いました。あと、市役所の方で事業をやっているのですが、事業参加者か らの声や意識の変化の実態把握のための体制づくりということで、事業からも把握でき る住民の実態というのがあるのではないかと思いました。ですので、この2点のことを、 やはり先ほどのキーワードである「実態把握」ということを考えたときに、これを押さ えていけるような私たちの活動の体制があるといいのではないかと思いました。  住民と関係機関とも、いろいろな実態を把握して企画していくわけですが、それに当 たっても一番下に書きました。住民と関係機関の方が一緒に実態を把握して一緒に考え ていくに当たっては、やはり私たちが住民や関係機関の方たちにわかりやすく伝えてい く。ただ話し合いの場を持つだけではなく、こちらが技術職としてそこの市の、うちで いえば南アルプス市の実態を、一体うちの市はどうなんだということを住民と関係機関 と話し合っていく。そういう土台がなければ、庁内だけでPDCAサイクルと言ってい ても、実質的なものにはならないのではないかと思いますので、やはりPの部分のとこ ろで住民、関係機関とともにいかにやっていくか、協働して企画していくか、それで実 施していって評価をどうしていくか、というところのシステムづくりが必要ではないか と思いました。  関係機関というふうなことで考えますと、右の上の方にスーパーバイザーとあります が、行政の中にしても私たち専門職一人一人にしても、技術的な面であるとか体制整備 という部分では、やはりスーパーバイザー的な立場の方の御助言や支援が必要ではない かと思いましたので、ここに書かせていただいています。  最後に、先ほども言った専門職として必要なスキルを身につけるための、スキルアッ プのための研修体制や職場体制の整備というのが必要ではないかと思いました。左側の 庁内体制であるとか住民や関係機関との体制を幾ら整備しても、やはりそこの中にいる 専門職がサイクルの重要性を認識していかなければ、形骸化していくものだと思います ので、専門職として必要なスキルということで幾つか挙げてみました。  まずPDCAサイクルについての知識ということで、まだまだこの辺も勉強していか なければならないところかなというところと、やはり先ほどから私が言いました、自分 の活動を通じて地区の実態を見ようという意識を持つということ、さまざまな角度から 地区の実態を把握する情報収集能力、アンテナを高くし情勢に敏感になるということで、 当たり前のことですが国の情勢と自分の地区の情勢というところもリンクして考えられ るような力、あと把握した情報の分析、整理する能力、プレゼンテーション能力、実態 分析して優先順位をつけ施策化する能力、企画力、関係者への合意形成能力、評価に関 する能力ということで、幾つか挙げさせていただきましたが、こういったスキルもあっ てこそ、やはりそのサイクルが推進できるもとになるのではないかと思いました。  一番右下にも書かせていただきましたが、ほかの市でも今そういう企画、評価という 流れの中で、システムなどを導入してやっている市町村もあるようですが、とりあえず シートに数値を入力しているというような現状も聞くにつけ、やはり私たち専門職が意 識を持ってそれに向かっていくというものがなければ、幾らシステムをつくってもなか なかうまくいかないのかなと思いました。なので、大きい枠組みと個人個人のスキルと いうところがやはり一緒に高まって、このサイクルの推進というのがうまくいくのかな と思いました。  簡単ですが以上です。  伊藤座長  どうもありがとうございました。それでは、続きまして本田構成員からお願いいたし ます。  本田構成員  私の方に与えられましたときに、まず、各自治体でPDCAサイクルを機能した事業 展開の構築について、現状を調べましたところ、重点施策システムガイドブックの中に、 「PDCAサイクルを実践するために」というマニュアルが作成され、政策評価として 活用されていました。成果重視型の施策評価として財政面での活用が有効活用できてい るかの評価としての活用であった。今回、Plan−Do−Seeをうまく展開した保健活動を 構築していくための私見を述べさせていただきます。長谷部構成員がおっしゃったよう に、「実態把握」と、「他職種との連携」「住民」というのがキーワードではないかと思っ ています。保健活動を支える基盤となる活動体制というのは、やはり保健活動の目的を 明確にしたPlan−Do−Seeであって、プランの中できちんと実態把握ができていない とプランができない。市町村合併後に非常に事業効果があるところと、マンパワー不足 で事業効果がでないところで、Plan−Do−See充分機能していない温度差があります。  まず実態把握をどう捉えるか、地域住民の健康課題が何であるかを明確にし、抽出さ れた健康課題に対してどういった対策を講ずれば最も効果的な事業展開ができるかとい うきちんとした地域の実態把握が出来れば当然事業ができるととらえています。  重要なのは専門職種が住民や関係者との対話の中から、地域の健康課題と住民ニーズ を把握することですが、市町村の体制を見ると、まだきちんとマンパワー等の体制整備 ができていないところが多いことです。保健活動そのものが住民主導型になっていない。 保健活動の、戦略的な取り組みは、当然「成果重視型の保健活動」であり、「施策や事業 の重点的・効率的なとりくみは」住民が何を望んでいるか、健康課題が何であるかとい うことを、うまく機能させることかと思います。  そのためにはまず、体制整備としてマンパワーが必要だということです。例えば生活 習慣病予防の対策について、早くからマンパワーの長期計画を立てながら、市町村の管 理栄養士が中心になって事業効果を上げているところもあります。、要は広域化した市町 村の中でPDCAサイクルをうまく機能していくためには、、一つは、専門職種のスキル アップがあると思います。今回の医療構造改革を見据えたときに、有病率、予備軍の減 少ということが目的の中にあるわけです。また、行動変容をねらったきちんとした効果 を出すということが強調されているわけです。専門職員の資質向上、と人材育成の必要 性でしょう。  健康指標に関する情報収集と分析能力、地域の実態に基づいた保健活動プログラムの 戦略的な創造、が出来る素養を持つ、スキルアップであり、専門職種として必要なスキ ルをきちんと捉え中で、実践していくというとことが必要ではないかなと思っています。  保健活動を行政施策として位置づけるための施策形成の能力や合意形成の力も必要で しょうし、評価結果の資料化と関係者との情報の共通認識できる力も必要ではないかな と思います。地域住民を巻き込んで、1つの事業をおこし展開するとします。  住民が評価をする段階では、参加した参加度がどれだけであるかということでなくて、 住民自身の達成感が出たか、自己の健康管理が維持できるようになったか?、どのよう に変わったかを評価する事だと思います。  PDCAサイクルを機能していくためには、専門職種のスキルアップのための研修や 自己の知識を磨きながら、自己を高めていくということも必要ではないかと思っていま す。なお、市町村保健活動体制として、専門能力が最大限に発揮できるための組織体制 の整備として、庁内の複数の部局にまたがる保健活動全体のマネジメントをだれが出来 るか。  保健活動全体を統括していく部署に専門職種が配属されるべきであり、企画・調整が出 来る専門職種をそういったところにぜひ置くということが必要であると感じています。  市町村合併後、マンパワーの配置できているところとできていないところがあるとい う現状です。、だれがマネジメントをとるかということは、職種間で決まったどの職種と いうことではなく、マネジメント能力がある人がリーダーシップをとっていかなければ、 保健活動は評価出来ないと感じています。計画的な専門的職員の確保を最重要視するこ とが、うまく保健活動が機能していくことになるのではないかなと思います。他職種連 携をとりながら役割を分担し保健活動を構築して行くには保健師は多数配属されていま すが、市町村管理栄養士の配置は本当に温度差がありまして、西高東低で、特に九州に なりますとなかなか複数配置でうまくいっていない、未配置のところもあると。そうい った状況の中で、保健師と管理栄養士が連携して健診・保健指導に関する住民の行動変 容に向けた健康教育保健活動ができる構築の方策としては、体制整備であり、人材確保 を取り組んでいかないと、まだまだ機能しないのではないかなということを感じていま す。  人材配置に関しても、行政からの待ちの指示ではなくて、人材確保計画を自分たちで 描いていく、それをアプローチしていく、そういった素養を持った人も必要になってく るのではないか。そうすると事業展開としてうまくPDCAが回っていくのではないか なと感じて、まとめさせていただきました。  伊藤座長  どうもありがとうございました。それでは、最後に田上構成員からお願いいたします。  田上構成員  それでは、私はパワーポイントで御説明をさせていただきます。  先ほど来、お2人からお話がありましたように、PDCAは実態把握がどれぐらいで きているかということにすべてかかっているのではないかなと思います。ところが、現 状は保健師がDO、事務職がPLANになる傾向、現場がDO、本庁がPLANになる傾向 がある。補助金行政が長らく続いたことによって、事業、サービスを提供することが目 的化してしまったということで、実態把握の機能が大変弱くなっている。これが大きな 問題ではないかと思います。これから重要なことは、生活者起点の行政にいかに転換す るか。「マーケティング前置主義」という言葉を使わせていただきましたが、現場からの 「ニーズ・課題の把握」、それを起点にした取り組みにいかに変えていくかということか と思います。その主役は保健師であろうと思います。  組織を人間に例えてみますと、このようになろうかと思います。今まではこの右の方 ですね、国、県から言われたとおりの運動神経、運動器のところばかりやっていた。こ の前段のセンサー、知覚神経のところ、考える大脳のところ、この機能がとても大事で あろうかと思いますし、その部分が保健師のアンテナ機能、伝達機能ということになろ うかと思います。  それから、PDCAの手順ですが、これも基本的には現状把握がすべての起点になり ます。次に、どこまで改善するかの目標設定をする。そのための手段を考える。そして モニタリングをする。最後に目標年の評価と計画の見直しをする。このサイクルを回す ということかと思います。  そこで大事なことは、9月のときに私はレポートを書かせていただきましたが、保健 師のコア機能としての「「気づき」と「つなぎ」のプロ」というところのこの「気づき」 の部分、ここがすべての出発点になるのかなと。そしてつなぎのところ、これがPDC AのPLANにつないでいくということかと思います。  結論としましては、事業起点の仕事の仕方から生活者起点の仕事へ、いかにして転換 を図るかということ。それから、現場の実態把握からやる。課題も答えも現場にありま す。PDCAサイクルと保健師のコア機能ということですが、とにかく生活の場に入っ て潜在ニーズを把握する。個へのかかわりを通して地域を診断できる。またそれを計画 につないでいくことができる。こういった機能が一番大事かと思います。  PDCAにおける保健師のミッションの明確化というところがとても大事になろうか と思います。個へのかかわりを通して、地域ニーズを把握すること。それから、集団で 見えた課題を個に帰って確認・掘り下げる役割。そうしたニーズや課題を政策につなぐ 役割。こういったところかと思います。そのための条件整備ということでございますが、 このアウトソースがどんどん進んでいきまして、サービス業務から完全に撤退してしま いますと、マーケティング能力が急速に落ちてしまいます。このことは保健所が既に経 験をしているわけでして、その轍を踏ませないということがとても大事かと思います。 個人サービスに埋没してしまったら、これはまた逆の問題がありますが、個人サービス を通してマーケティングがきちんとできるといったところが、主要な機能かなと思いま す。それから、現場の保健師がマーケティングしたものを企画業務につないでいくとい うところの、組織的な意思決定が、とても大事になろうかと思います。  先ほど、事業起点から生活者起点ということを申し上げましたが、ここで大事なこと は、これは国に対して申し上げたいことですけれども、これからは、地方分権、地方主 権でやっていかなければいけない。特に、この分野はそういうものだと思います。そう いう意味では、余り細かく国がああしなさい、こうしなさいということを出さない方が むしろいいのではないかと。アウトカム、プロセス、細かいところまで国から提示され る。こういうふうに縛られますと、逆に考えない、地域のニーズに合った仕事をしない 現場にしてしまいます。そこをぜひお考えいただきたい。  それから、保健師さん方に言いたいことは、個に埋没しがちになっている。個を通し てゴールで一体何をするのかというところをしっかり考えていただきたいということと、 個を通して把握したことをうまく表現して伝える能力、これが大変弱い。そこの力をし っかりつけていただきたいと思います。  具体に私が取り組んでいる事例を簡単に御紹介させていただきますが、「鳥の目と虫の 目」ということで、全体を見る目と個を掘り下げて見る目、特に保健師さんはその個の 部分が重要になろうかと思います。  うちの管内で市町村がどうしても縦割りになりますので、私が市長さんのところにか け合っていきまして、課長さん、市長さんと話しまして、庁内でのチーム体制をつくっ ていただきまして、横断的なチームが今できました。  そのチームの中で、これまで原因対策としてのヘルス部門、結果対策としてのインシ ュアランスの方の保険部門というふうに分かれていたものを、トータルでやっていこう ではないかということで取り組みを開始しています。  このように入口から出口のところまで全体が見えるように、それをまずは数字で把握 していく部分、これは鳥の目ですね。それから、新規の介護保険の認定とか新規の脳卒 中の発症とか、そういったものをモニタリングしようじゃないかと。それで月間の削減 目標を立てておいて、毎月の審査会の活動をこのようにプロットしていけば数量的な評 価ができますし、それだけではなくて個々の具体の事例についても検討していこうじゃ ないかと。事例を細かく見ていけば、どこにどんな問題があるのかというバックグラウ ンドの課題が見えてきます。ここは、保健師さん方の地域の課題を専門的な目でしっか りと掘り下げていく専門性が、大いに発揮されなければいけないところかと思うのです が、保健師だけではなくて国保の担当、介護保険の担当、一緒になってその事例を通し て学んでいく。これがとても大事かと思います。事業でみんなが顔をつき合わせてしま いますと事業割りになってしまいますので、事例を通してやっていけば事業割りになら ずに、共通の課題に対してそれぞれお互いが何をしなければいけないのかということを 一緒に考えることができる。ということで、こういう取り組みを開始しようとしており ます。  最終的には、こういう登録管理ができるような、医療、介護、ヘルス、トータルで個々 人について台帳化して、管理できるようなものになればなといったイメージを持ってお ります。まだまだこれからの取り組みのイメージでございます。  それから、対象者をこのようにマッピングさせていただきました。詳しくは後ほどご らんいただきたいと思いますが、こういうものの中で新規の発症者は一体どこから出て きているのか、新規の要介護認定はどこから出ているのか、こういったことを虫の目と 鳥の目とで両方しっかり見ることができる。こういう作業を現場でできるようにしてい くということが、具体のイメージになろうかと思いますし、それを保健師さんだけでは なくて、関係するセクションの者がチームでできるようにする。これが日々の課題の共 有化、目的の共有化ということにつながってくるのではないかなと思います。  以上でございます。ありがとうございました。  伊藤座長  どうもありがとうございました。それではこれから20〜30分、このテーマにつきま して質疑、討論を行いたいと思います。まず、3人の方にプレゼンテーションをしてい ただきまして、最初のお2人のお話は、私の印象では少し教科書的な感じを受けたので すが。やはりこの検討会として、市町村の保健活動の現場でPDCAサイクルをきちっ と機能させていくためには、今どこに問題があって、その問題を解決するためにどうい う条件整備を、現状把握でいえばレセプト分析とかいろいろそういう統計の条件整備も あると思いますし、現場からのいろいろな保健師さんの発信ということになってくれば、 保健師の教育という問題を具体的にどうしなければいけないか。そういう現状における 問題点と、それを克服するための課題をどうしたらいいかという、そういう視点でこの PDCAサイクルのテーマにつきまして質疑、討論をお願いしたいと思います。  今、最後に田上構成員から、今度の特定健診、特定保健指導を想定した具体的な事例 がございましたので、例えばそういうことをきちっと現場で実現していくためには、ど ういう所内の体制なり、それから研修であればどういう教育が必要なのか。そのあたり も少し突っ込んで御議論いただけたらと思います。どなたからでも結構でございます。 よろしくお願いします。  藤内構成員  私もそれぞれお三方が共通して指摘されたように、このPDCAサイクルの中で一番 弱いのはCというのか、地域の健康課題を把握する部分だと思います。それがなぜ弱か ったのかという点については、もちろん保健所のそうした支援の役割も当然重要ですが、 モニタリングを容易にする国の役割も重要だともいます。例えば老人保健事業報告等は 毎年県を通じて国の方に報告があるのですが、そのあたりから得られる指標というのを、 もう少し指標化してフィードバックするということもできると思います。今回標準的な 健診・保健指導のプログラムの中で、健診データを実際活用するような指標が示されま したので、各自治体でそうした指標化が進むと思いますが、全国と比較できる指標を、 国がきちんとモニタリングして毎年出すことが必要だと思います。それが今まで健診の 受診率くらいに限られていたところにちょっと弱みがあったと思います。アウトカム指 標もそういう形で、毎年モニタリングできるような仕組みというのが一つ必要だと思い ます。  しかし、そうやって国が示したり、今回の標準的な健診・保健指導のプログラムで示 された指標だけではなくて、それぞれの地域で地域住民や関係者と一緒に、自分たちの 取り組みがどれだけ効果が出ているかをはかる物差しというのを一緒に考えるという作 業も、当然必要だろうと思います。そこがまさにプランという部分に含まれてくると思 うのですが、今までプランのところで弱かったのは、先ほど田上構成員からも指摘があ ったように、今までの法定の、あるいは国の通知に基づく保健福祉計画の策定に当たっ て、策定指針が事細かに示されて、その指針どおりにやっていると何か計画ができてし まう。あるいは余りに細かい策定指針が示されると、コンサルタント業者にお願いしよ うという形で、委託という形になってしまう。何のために計画を策定するのかというよ うな議論がなされないまま、計画書ができてしまうといったようなことも、このPDC Aサイクルのプランの部分を非常に弱くしていたのではないのかなと思います。そうい う意味で、田上構成員が指摘されたように、余りプランのところで策定指針を事細かに 示すのではなくて、基本的な考え方といったようなものをきちんと示し、あとはその地 域のまさに技術職を信じていただいて、それぞれの創意工夫、あるいは地域の実情に応 じた計画策定を可能にするということも必要だと思います。  ただ、ではそのまま任せておけばいいかというと、なかなかそうもいきません。私も 2年半そうした自治体の計画策定を、スーパーバイザーとして支援させていただいたの ですが、まだまだ計画策定をスーパーバイズできる人材が少ないということも現状だろ うと思います。そうしたスーパーバイザーの養成であったり、さらにはこういう計画策 定のコンサルタントをする事業者も少なくないわけですが、こうした事業者の質の向上 も必要だと思います。沖縄県では,コンサルタント業者を非常にうまく活用しているの ですが、健康増進計画の策定に当たって、コンサルタントにすべてお願いするのではな くて、どの部分をコンサルタントにお願いし、どの部分を自分たちでやるのかといった、 コンサルタント業者を上手に活用する方法を県なり保健所なりがうまく市町村を支援し たという例もございます。自治体が今どんどん業務量がふえる中で、本当に手間暇かけ て保健計画を策定するというと、難しいのが現実になってまいっておりますので、そう いうコンサルタントの事業者をどう効果的に活用するのかということも、必要な視点で はないのかなと思っています。  伊藤座長  ありがとうございました。そのほかいかがでしょうか。藤山さん。  藤山構成員  市町村の保健師の立場で、現場の立場になりますが、田上構成員の方で御指摘のあり ました、保健師はもともと個を中心に活動しているところが、個を集約したときに集団 になるという、その集団のとらえが、現在の市町村業務は非常にさまざま多岐にわたっ ているために、例えば児童虐待の問題にしても個々には埋没をして処遇を、ケアの部分 でのかかわりをしているのですが、最終的にトータルとしてのこの集合体の、例えば100 件の事例を通したときに、地域の中での課題はどうなのかというようなところへつない でいくその診断、地域としての見方というところにはつながっていないというところが、 やはり今までの問題であったのではないかなと思いますので、集団へのつなぎ、先ほど 出ていました個から全体へつなぐプランニングをしていくというようなことが、とても 大事ではないかと思っています。  伊藤座長  そのほかいかがでしょうか。鏡さん、どうぞ。  鏡構成員  鏡でございます。お三方の発表を聞いていまして、実態把握が特に重要であるという ことは、恐らくそのとおりだと思いますが、私は福祉の現場の人間でございまして、そ の立場から申し上げますと、なぜ今さら実態把握が重要なんだということを言うのだろ うか、というのが非常に奇異に感じました。というのは、当然のことながら市民のニー ズに合わせて行政を行うというのが、地方自治の基本の姿だと思うのですが、それがま ずできていなかったんだということを、改めて報告の中で感じたわけでございます。  それはなぜかというと、これまでの保健行政というのは、私は外から見た立場ですけ れども、恐らく問題が投げられてから動いているのではないかなと思うのです。あとも う一点は、地域活動をどこまできめ細かくやってきたかというのが、大きなポイントに なるのではないかと思います。そういう意味では、例えば虐待であるとか保健に係るよ うな相談があったときに、初めて保健師が相談に乗るというような状況なので、あらか じめ地域に入っていって、これは何が問題にあるのかということを問うたということが、 余りなかったのではないかと感じたわけでございます。  というのは、私どもも地域包括支援センターの以前に、所沢市は33万4,000人の人 口ですが、12の在宅介護支援センターを置きました。その中で、各地域ケア会議という のを置いて、その中に当然福祉のケースワーカーと地区担当の保健師の方に入っていた だいた。そのときに、初めて地区担当の保健師の方から、地域の民生委員とこれだけき ちっと話ができたとか、地域のボランティアの方と話ができた、というようなことを伺 ったわけでございます。したがって、そうような点からも、これまで連携とか実態把握 ということは恐らく課題として挙げられていたにもかかわらず、実際に具体的な話とし て起こってこなかったのではないかなと思います。  あわせて福祉の現場でいえば、33万人のうちの5万人が高齢者の方々ですから、その 5万人に関しての悉皆調査を毎年やっているんですね。5万人の方全体を毎年見ている。 そういう中では、例えばひとり暮らしであるとか高齢者世帯であるとか、あるいは健康 状態についてもある程度把握できるような情報を持っているわけです。そこに、ではど れだけ保健師の方がこれまで関与してきたかというと、ほとんど連携がなかったという ような状況があって、そこの部分が分断されていた。それで、片方では、地域に対して 実態把握が必要であるとか連携が必要であると言っていながらも、なかなかそこの組織 の中で具体的な連携の形がとれなかったという状況ではなかったかなと思いました。  以上です。  伊藤座長  一言で言うと、今まで保健師の地域での活動が弱いから現状把握がされていなかった、 というふうにおっしゃっているのですか。  鏡構成員  恐らく問題点としては、実態把握や連携というのは把握されていたと思うのですが。  伊藤座長  把握されているけれどもプランニングのところにつながっていないという、そういう ことですか。  鏡構成員  そうです。プランニングというよりアクションですよね。アクションのところにつな がっていなかった。  伊藤座長  実態把握といった場合、今、田上さんの方から、特に現場の生活者の視点からという ことがありましたが、実態把握なり現状把握というのはそういう住民の生活実態、現場 からのものと、それからもう一つはいろいろな行政データなり、もう少しマクロで見た 場合の実態把握と両方あると思うのですが、その辺のところをどのようにお考えになっ ていますか。  田上構成員  まず、先ほど言ったミクロ的な虫の目という表現をしている部分につきましては、弁 護いたしますと、保健師さん方が実態把握できていない、サボっているということでは ないんですね。かなり個人差があるのですが、一定把握はされておりますし、生活者の 視点というところを日々重視しながら見ておられる。ただ、そのレベルがだんだん浅く なる傾向があるのかなということが一つあります。それと、その把握したものをうまく 表現ができない。私どもが個別に保健師さんにうまく聞いて引き出すと出てくるのです が、自分ではうまく表現ができないということがあります。それと、個人としては把握 しているのですが、チームで仕事をしている、チームでまとめて表現するということが できない。そこらあたりに問題があるのではないかなと思います。  それとマクロ的な、鳥の目の部分ですが、この部分も非常に弱い。特に数字を扱う部 分は弱い傾向があるかなと思います。この点は、特に保健所の方が積極的に支援できる 部分ではないかなと考えております。  それともう一点、これまで評価をしていくときに、結果の指標は、どちらかというと 国保であったり介護保険のセクションであったり、別のところにあるんですね。ですか ら、積極的にうまくつなぐという努力をしないと、あれはあちらの仕事、私らはヘルス の仕事というふうになって、なかなかつながらないということがあります。このたび私 がさせていただいたのは、そこも強引にややトップダウン的な手法ですが、一緒にデー タを見ていけるような枠組みをつくらせていただいたということがあります。そういう 意味ではマクロ的指標については、組織的な連携の問題ということがもう一つあろうか と思います。  伊藤座長  そのほかいかがでしょうか。  尾島構成員  実態把握のところで、数量的な把握と質的なデータの把握とちょっと分けて考えたい と思うのですが、数量的な把握については、多分県全体の合計値とうちの市町村を比べ るというのが非常に重要だと思いますので、県の方で合計値を出すような仕組みという のが非常に大事です。市町村においては、県と同じような出し方で自分の市町村で出す という、比較可能性を担保するところが大事になりますので、今ややもするとうちの市 町村についてはレセプトを一枚一枚めくって、物すごく詳しくデータをとろうという動 きがあるのですが、県全体についてそれが不可能な場合には比較ができないものですか ら、いかに比較可能な形で両方のデータをとるかということが大事かなと思っておりま す。  一方で、質的なデータについてですが、あるとても成功した製造業がどうして成功し たかという話を見ましたら、余り数量的に分析したり数量的にやり過ぎると、何かそれ だけで仕事が終わったような気がして、実際の改善に結びつかないから、余り数量的に はやらないんだといって、むしろ現場をよく見て、そこのどこが問題でどこを改善すべ きだということに力を入れるんだということが書いてありまして、確かにそうだなとい う気もしました。数量的な部分はやらないといけない部分もあると思いますが、質的な 情報についてどう把握してどう整理して施策に結びつけるかというノウハウが、ちょっ と今はまだ余り十分に完成していないところがありまして、これからそこの方法論をき っちりやっていくことが必要かなと思っています。  もう一つ、製造業で成功した事例というのは、新しい、いい製品をつくり上げたりと か、今までなかった発想である物を発明したりしたところが、多分勝ち残っていると思 いますが、それを保健事業において考えますと、何か事業をするときに、新しい発想で いい、今までにだれもやったことがなかったようなやり方を工夫してやってみたりとか、 そういうことも非常に大事かなと思いまして、そういうことをもっと活性化するように 持っていくことも大事かなと思っております。  伊藤座長  どうもありがとうございました。それでは田尾さん。  田尾構成員  今、尾島構成員の方から言われたこととの関係ですが、私もその議論は賛成いたしま す。PDCAという議論が今、盛んでありまして、これは経営学の視点からの議論で、 お聞き流しいただいてもよろしいのですが、PDCAが本来成功しています例というの は、製造業のように結果がよくわかる例ですね。要するに、結果がうまく評価できるか らPDCAサイクルがよく回るのであって、結果が明確でない部分に関してPDCAを 回すのは非常に困難な部分があると思うのです。  そのことでいえば、福祉医療の分野にPDCAが入ってきたということは大歓迎では ありますが、使い方をかなり気をつけていただかないと困るかなという気はしておりま す。要するに、鏡構成員が言われたことと若干関係いたしますが、こういったように保 健の分野で比較的数値的な議論がしやすい分野だとよろしいかもしれませんけれども、 やや福祉に傾いたような分野では、それができない分野も結構たくさんあります。それ を考えると、PDCAが入ってきたことは、このような分野でもきちんと経営的にやっ ていけということでありましょうが、それについてはそうでない分野もある、つまりP DCAをきちんと回すことだけがすべてではないのではないかを、やはり言うべきであ ろうと考えます。  伊藤座長  どうもありがとうございました。佐伯さん。  佐伯構成員  実態把握と分析について述べたいと思います。  1点目は実態把握ですが、この重要性はだれもが思っているけれども、なぜできない のかというと、時間がないから、忙しいから、技術がないからと言われます。時間がな いというのは、何を重要視するかという問題で、やはり今までDoの部分で仕事をして いるという認められ方をしてきた背景があるのではないかと思います。議論をすること や机の前で何かをするということは保健師の仕事ではない、外に出て仕事をするのが保 健師だ、と言われてきた背景があって、考えることが十分に身についていないという点 が1点あるのではないかと思います。  2点目の分析ですが、実際にデータがないわけではないのだと思います。けれどもそ れを使うという視点に立たないで、報告をするだけで終わっている部分があるのではな いかと思います。分析をするときにどれだけ背景を見るかとか、田上構成員がおっしゃ ったようにつなげてデータを見ていくというところが重要で、そのためには自分のセク ションだけではなくて、保健と福祉なり、母子と成人と高齢者というように、組織がつ ながって健康課題のつながりと一緒に対策のつながりが系統的に見えてこないと、本当 の意味での分析につながっていかないのだと思います。そういう意味では、全員が課題 を共有するということも含めて、もっと協働して、その地域を分析する時間をきちんと とるということも必要だと思います。  それからもう一点、そのためには何を指標にすればいいか、データ間にどのような関 係性があるのかということを、すぐに文献検索できるような情報のデータベースを、保 健医療科学院などからすぐに引けるという状況になれば、もう少し学術的な分析も地域 で可能になっていくのではないかと思います。  以上です。  伊藤座長  ありがとうございました。それでは井伊さん、どうぞ。  井伊構成員  先ほど尾島構成員がおっしゃったことに関連することですが、確かに個々の事例に埋 没しがちで、かつ田上構成員のこのお示しくださった最後のこの辺というのは、割方保 健師は好きなんだと思うんですね。それで、こういうことについて指摘をされて見直し て、いろいろ反省したり、あるいは個々の事実をもう一度確認していくと、そういうこ とはかなりできると思います。ただ、そういうふうにつかんだことを、個々の事例を一 定の事例集団として見て、そしてその事例集団としての特性を質的に精錬していく、あ るいは問題、あるいは課題として組み立て直すという、そういう方法論に関しては、こ れは基礎教育では教えていないことだと思います。  ですので、よくベテランの中堅以上の保健師は住民の生の声を聞くとか、それから人々 の発言の中からニーズをすくい取るとか、そういう言い方になるわけですが、それはも う専ら卒後センスのいい人がみずから熟練していただく、そういう現状にあるのではな いかなと思います。  そういう基礎では個々のことをまず見て、次は集団としての集計という、それをいき なり量的にあらわしていく。その間に何が起こっていくのかというところを丁寧に教え る、そういう教育状況ではないということを加えさせていただきます。  伊藤座長  では田上さん。  田上構成員  PDCAを進めていくに当たって、2点ほど追加して申し上げたいのですが、1点目 は行政の保健師さんのミッションは何なのかというところの組織的な理解、これがとて も大事だと思います。多くの一般的な理解は、パブリックヘルスナースではなくて、パ ーソナルヘルスナースであったり、パーソナルケアサービスのためのナース、そういう イメージを持っている。行政組織内でそのような認知がされていると思うんですね。そ の中では、今申し上げたようにパブリックヘルスナースとしての理解がされていないと ころでは、この機能の発揮というのは大変難しいと思います。今後アウトソースが進ん でいく部分が多々あるのですが、パーソナルヘルスナースを担うアウトソースされた保 健師さんと、パブリックヘルスを担っていくパブリックヘルスナースとしての行政の保 健師と、ここの違いを明確に言うべきではないか。それと市長さん初め行政組織の中で の認知をしっかりとしていく努力、ここがとても大事だと思います。  2点目には、現実的に市町村はそれぞれ縦割りでやっております。例えば高知市にな りますと、健康福祉部長さんがいらっしゃって、全体を統括して見る目の人がいらっし ゃるのですが、私のところの南国市、香美市、香南市といったところになりますと、課 長さんはいらっしゃるのですが、その上はいきなり市長、助役といったところなのです。 ですから、市長さんが直にこの部分の横断的なコーディネーションをするところまで、 なかなかできないのです。そういう意味で、保健所がその間に入って、市長さんの理解 を求めて、関係課長さん方のセクションをつなぐ「つなぎ役」としての役割を果たして いかないと、今ここで申し上げたようなことはなかなかできないということです。この 部分は、保健所のとても重要な役割になるのではないかと思っております。  伊藤座長  今大変重要なことを御指摘いただいたと思います。今例えば特定健診、特定保健指導 でも、保健師、管理栄養士が行動変容に結びつく、そういう資質を向上させるための研 修とあわせて、企画立案・評価、この2つが研修の大きなテーマになっているわけで、 これは最初にお話になった保健師がDO、事務職がPLANという、そこのところを改善 していくための、つながっていく具体的な提言ではないかなと思っております。しかし、 まだ現実には保健師、管理栄養士は個別の指導なり、介入対象者に対する個別事例をや っていればいいのであって、計画なり企画立案は事務職の課長がやりますよという、そ ういうのがもしかなりまだ現場の問題としてあるのであれば、この検討会がきちっとそ の辺のところを提言していくということではないかなと思うのですが、その辺に関連し てもし御発言がありましたら。  藤内構成員  まさに自治体が保健福祉計画を策定するときに、技術職と事務職で、本当にこの計画 は何のためにつくるのかというコンセンサスが得られればいいのですが、ある自治体は 全く技術職にお任せで、事務職は「やっておけよ」みたいな形になる場合もあるし、逆 に技術職が地域の実情に応じた計画を策定したいと思っても、そんな意見が入れられず に、事務職が業者にアウトソーシングしてしまうという部分もあります。保健福祉計画 を策定する際に、課を超えてコンセンサスを得るのが難しいだけでなく、担当課の中の 事務職と技術職で、計画づくりについてのコンセンサスが得られていないという部分も あります。今回の平成20年度に向けての企画立案・評価の研修においても、やはり技 術職と事務職が一緒に学ぶということが非常に重要なことだろうと思っています。  伊藤座長  時間もありますので、最後、では一つお願いします。  迫構成員  ありがとうございます。私はこの席に保健福祉事務所の栄養士として来ているのです が、実はもう一つ、日本栄養士会の行政栄養士協議会の会長の役を持っております。そ れで、栄養士会として今回少し発言させていただこうと思うのですが、新しい健診・保 健指導の関係で、特に企画立案型の管理栄養士を養成していくための研修を、来年、平 成19年の1月からスタートさせていく予定にしております。そういう中で、行政の管 理栄養士は全員受講ということを今目標として設定しているところでありまして、平成 18、19年度をあわせまして、とにかく全数受講して、きちっとその企画立案に対応でき る管理栄養士をつくり上げていきたい。そういう方向で動いているところです。  実際のノウハウについては、いろいろな先生方からまたこれから教えていただくとこ ろがあるのですが、先ほど鏡構成員がおっしゃったような、5万人の高齢者の悉皆調査、 そういう地域のデータがあるということと、それに対して、私どもは実際に個別のケー スについてどういう状態であるかという、その生の情報を持っている。鏡構成員のおっ しゃった5万人の調査は高齢者ですが、保健指導に関しましても、レセプト分析等の中 から出てくる情報と、それから個人の情報とをきちんとつないでいく役割、そこの部分 を担えていかないと、行政の管理栄養士としては機能していかなくなってしまうのでは ないかと思います。そういう意味合いからすると、単にレセプト分析、そしてその数字 を扱ってどうするかという問題ではなくて、個別の情報とつなぎ合わせていきながら、 これからの地域をどういうふうに見ていくのか。これは課題の発掘とつながってくると ころだと思いますが、そういう方向で動いていきたいと思っているところです。  伊藤座長   どうもありがとうございました。まだまだ非常にたくさんの論点があると思います が、ちょっと時間の制約もございますので、PDCAサイクルの議題につきましては一 応この辺で終了させていただきまして、次に議題2に入らせていただきたいと思います。      (2)専門技術職員の人材育成体制の在り方について    伊藤座長 「専門技術職員の人材育成体制のあり方について」でございます。このことにつきまし ても、2人の方にペーパーを作成していただいておりますので、まず大橋構成員からお 願いいたします。  大橋構成員  三重県の大橋です。最初に市町村における専門技術職員の人材育成のあり方というテ ーマをいただいたのですが、私は県の人事担当でございますので、市町村保健衛生部門 の業務であるとか、市町村における人材育成の実態というものを把握しておりません。 そこで、県と市町村の人材育成には共通点があるのであろうということと、より具体的 な御発表は他の委員からきっとあるであろうという、その予測のもとに、三重県におけ る技術職の人材育成に関する取り組みをお示ししながら、一つの問題提起とさせていた だきたいと思います。  なお、きょうお示ししている内容は、実は「保健師ジャーナル」の9月号に私が寄稿 しましたのとほぼ同内容でございます。発行元の医学書院様の御配慮のもと御了解を得 て、添付資料としてそのコピーをお示ししておりますので、あわせてごらんください。  まず、三重県が専門職の人材育成に取り組んだ経緯について説明させていただきます と、健康福祉部というのは保健衛生部と福祉部が行政改革のもとで統合されてできた部 でございまして、本庁12室、保健と福祉を融合した保健福祉事務所が9ヶ所、これは 9つの保健所と5つの福祉事務所を内包しております。それと、児童相談所であるとか 障害者施設等をあわせた単独地域機関12の組織のもとで、約940名の人員がおります。 このうち保健師が84名、栄養士が18名ということで、これは部外に出ておる者を除い てこの数字になっております。  その中で、まず外部要因といたしましては、皆さんもう何度もいろいろな発表の中に ございますが、県が行っていた一次サービスが市町村に移管されて、県にはより高度で 広域的な専門的な活動であるとか、助言や支援を求められてきている。その一方で、県 の内部要因は、これまでのヒエラルキーである係制だったものが、1人が業務に責任を 持つグループ制になった。また、保健衛生分野では、地域担当制だったものが業務担当 制になる。しかも、定員管理のもとで採用の減少に伴い、初任期の層がだんだん減少し ていく。こういうことで、従来の保健福祉室等における先輩の背中を見て、日常的な業 務を通じてというOJTが困難になってきた。こういう問題意識の中で、部全体として 人材育成をやらなければいけないのではないかということになっております。  それとともに職場環境においても、2部が統合されて一見融合されておるのですが、 実は縦の力が徐々に、縦の力というのは保健所のあり方や福祉事務所のあり方という太 い幹の部分が徐々になくなっていって、細い事業の縦糸があるだけで、それをつなぐ横 糸もないという、ここで部内の風通しも必要になってきたということがあります。  そのもとに、部全体として指針をつくりまして、部長を筆頭とする人材育成会議とい うものを設けまして、その下に人材育成部会、これは医師、保健師、栄養士、獣医師と か事務職まで含めて、公募制をとってこの委員で検討して、それと同時に、人材育成だ けではなくて職場環境部会も設置して取り組んでおります。  ちょっと前置きが長くなりましたが、もう一つだけ説明しておきますと、この取り組 みは別に保健衛生部門の人材育成ということではなくて、保健と福祉、技術と事務もあ わせた部全体の人材育成というものに取り組んでおるということでございます。ただ、 やはり課題、問題意識が強い保健師部門が具体的な検討では進んでいるということで、 その具体的なものを今から御説明いたします。  我々が目指したものはキャリアマネジメントシステムということで、ジョブローテー ションと、そのジョブローテーションを補完する研修、人事プログラムを統合したシス テム。と言いますと言葉は格好いいのですが、ちょっとふろしきを広げ過ぎた感はござ いますけれども、やはり部全体で取り組むとなると、単体の制度の羅列ではだめだろう という認識で取り組んでおります。  保健師に関する制度でございますが、別冊になっております709ページのところに、 保健師のジョブローテーションを図示したものがございます。能力開発期間、能力発揮 期間というふうに分け、それと最後には管理能力発揮期間という3つのステージに分け て制度設計するつもりでございます。  能力開発期間、これはおおむね初任期から11年程度で4つの分野を経験させ、それ ぞれ2〜3年で人事異動させるモデル案でございまして、これは既に適用されておりま す。それで、現在検討しているのが、その次の能力発揮期間でございます。この能力発 揮期間というのは、いろいろな専門コースを設定して、スペシャリストを養成していく という案でございますが、ここの検討段階でかなり今難航しておるものでございます。 その難航している理由は後でまた御説明します。  それに加えて、同じく別添資料の710ページにございます保健師のアドバイザー制度 というものをつくっております。これは、最初の能力開発期間にジョブローテーション だけしていれば能力が開発できるのかとか、1人職場になっているところでジョブロー テーションして能力が開発できるのか、また職場の垣根を越えた支援がこのままではで きないのではないか、という問題意識のもと、保健福祉事務所においておおむね採用後 10年以内の保健師に対しまして、所属やグループ、組織の枠にとらわれずに、保健事務 所長が指定したベテラン保健師がアドバイザーとして、現任教育マニュアルの適用を通 じて指導していくという体制でございます。  それで、このアドバイザー制度のアドバイザーさんに対しても支援をしていかないと いけないと。これは、「あなたはアドバイザーですよ」と言われても、その人の個々の力 に任せるのではなくて、やはりその支援する人を支援するのが組織の役割であろうとい う意識のもとに、アドバイザーに対しては保健師現任教育マニュアルを策定して、一緒 のツールで使う。また、そのアドバイザーさんへのOJTの研修であるとか、アドバイ ザー相互の意見交換の場を設けるということで、今運用しております。これはうまく運 用されていると思っておりますが、一方で副産物というか、ベテランの保健師さんもこ のアドバイザーの業務を通じて制度を再勉強できた、そのケース検討において地域保健 活動の意義を再認識できたなど、アドバイザーさん自身の人材育成や専門性の向上にも つながっているというふうに評価しております。  こうやって文字や図表にすると大変きれいでうまくいっているように見えるのですが、 課題がたくさんございます。まず、ジョブローテーションでございますが、能力開発期 間のジョブローテーションは、これは三重県が特にそうなのですが、対象者がそもそも 少ないと。これは第2回の検討会でも言いましたけれども、今県の行財政はかなり厳し い状況があります。その厳しい状況の中で、でも人材育成を考えると、人材育成を視野 に入れた計画的任用をしていかなければいけないのではないかと思われますが、先ほど 言いましたように、総定員5%以上の削減が今の県に求められている状況でございます。  それと、今検討中であります能力発揮期間、まだこれは適用には至っておりません。 このスペシャリスト養成期間においては、そもそも医療制度改革等で、県の保健師に求 められる能力というものが徐々に変わってきている中で、どんなコースを設定するので すかと。今必要なコースなのでしょうか、それとも将来的になのでしょうかと。それと、 保健師の中でも、スペシャリストと言った場合に持つイメージにすごく差がありまして、 「もともと私たちはスペシャリストです」と言う方にとっては、特に設定する必要がな いという意見がある一方で、やはりスーパーバイズする人は必要だという意見がある人 で……。  伊藤座長  ちょっとスピードアップしていただけますか。  大橋構成員  はい。要はスペシャリストというものに対する意識に、保健師さんの中でも県の中で も大変差があるということです。  それと、アドバイザー制度をやっていく中で、実は中堅へのOJTはどうするんだと いうところが、今問題になっております。  最後に、この人材育成会議を通じて人事担当として感じたことは、まず気づきや思い を施策、制度にするために、第1はやはり組織として取り組まなければいけない。所属 団体、部局での認知がなければやはり制度化は無理だろう。第2は、行政職員としての 専門性を高めていくということで、この厳しい行財政の中で企画力、プレゼン力を高め ていかないといけない。これはどの部門でも一緒でしょうが、この2点はやはり必要で はないかと思っております。  以上で私の説明を終わります。  伊藤座長  どうもありがとうございました。次に、山野井構成員にお願いしていたのですが、き ょうは御欠席のため、かわりに則安さんにお願いいたします。  則安オブザーバー  それでは、資料2−2につきまして、別冊の「新任保健師実践プログラム」とあわせ て御説明させていただきます。  岡山県では平成16年度に、この「新任保健師実践プログラム」というものを策定し て、平成17年度から活用しているわけでございますが、その策定に当たっての背景と、 これを実践しての幾つか見えてきたことを話題として提供させていただきまして、議論 の参考にしていただきたいと考えております。  まず1ページ目、「岡山県の概況」ということでございますが、人口は約196万人、 高齢化率が22.4%です。岡山県の中には中核市が2つございまして、岡山市が約67万 5千人、倉敷市が約46万9千人ということでございまして、そちらの方にも保健所は ございますので、政令市保健所が2つ、県保健所が9つということでございます。  それから、地域関係職員の推移ということでございますが、これは(1)が岡山県保健所 の保健師数の推移でございまして、平成12年から平成13年にかけましては、倉敷市が 平成13年度から保健所をつくられたということで、ここでちょっと数が変わっており ます。  (2)の年齢階級別の保健師割合につきましてはこのようなことになっておりますが、全 国と比べてみますと、20歳代の若い方が若干多いのかなというような状況でございます。 これは県保健所と市町村、両方でございます。それから、この(2)の保健所のところに、 合計が岡山県は199となっておりますが、これは岡山市、倉敷市保健所の保健師さんは こちらの方に入っておりますので、上の県の保健師に比べまして非常に大きな数字にな っております。  (3)は市町村職員数の推移ということで書いておりますが、これは保健師合計というの が市町村職員ということで、中核市と中核市以外を下の305と169に分けて計上してい ます。その合計が474ということで挙げさせていただいております。  伊藤座長  則安さん、申しわけないですが、教育体制のところを中心にお願いします。  則安オブザーバー  わかりました。申しわけございません。  2枚目の下の2の「人材育成の現状と課題」というところをごらんいただきたいと思 います。まず、この教育体制を検討するに当たりましては、(1)にございます岡山県人 材育成基本方針の骨子(別冊P2〜参照)ということで、この緑の冊子をちょっとお開 きいただきたいと思います。2ページから育成の考え方をいろいろ書いておりますが、 この骨子というものが4ページにございます。「人材育成基本方針の骨子」ということで、 これは保健従事者に限らず県の全庁的なものでございますが、こちらの方に求められる 県職員像、そして人材育成の基本的な方向ということで定められておりまして、これを 基本にいたしまして、前の方に戻って、2ページ、3ページのところに「新任保健師の 育成の考え方」ということで書いております。  またコピーの方を1枚おめくりいただきまして、次のページで(2)岡山県の地域関 係職員研修の体系ということで書いてありますが、これは地域保健関係職員の研修の体 系であります。(1)〜(4)につきましては、岡山県内の保健所と市町村職員に対する研修と いうことで、県本庁の方でこういう視点で研修を行っておるというようなことでござい ます。  (3)は「職場内研修」と書いてございますが、これは各保健所管内、各保健所が主 体となりまして研修も行い、そしてブロック別保健活動研究会といいますものは、岡山 県内を4つのブロックに分けまして、幾つかの保健所が共同して、それぞれのブロック で研修を行っているようなことでございます。  そして、「OJTを行う体制・工夫等」と書いておりますが、こうした保健所機能強化 研修会などは、職場内で職種を越えてさまざまな職種の方でチームを組んでいただいて、 課題に取り組めるような配慮をしております。それから、(2)や(4)につきましては、各保 健所で研修計画立案をする前に、県内全体の研修の実施状況等について情報提供して、 それでそれぞれの保健所でそうしたものも勘案して研修しております。それから、事前 に研修するに当たりましてのレポートの提出のようなものを求めておるというようなこ とでございます。  (4)はジョブローテーションでございますが、こちらにつきましては、まず「県と 市町村の人事交流制度」というものを積極的に行っておりまして、平成18年現在で23 市町の44人と交流をしています。また、本庁と保健所間の人事異動というものも、積 極的に行っているということでございます。  岡山県職員の場合は、この緑の冊子の3ページに、「岡山県の人材育成基本方針」とい うことで、「ジョブローテーション」と書いておりますが、採用後10年以内に本庁と出 先、管理部門と事業部門など、複数経験できるようにしておるということと、2年程度 で配置がえを積極的に行うということで、2年を過ぎた後は3年をめどに人事異動をし ておるというような状況がございます。  それから、コピーの方の資料を1ページおめくりいただきまして、(5)自己啓発をご らんいただきたいと思います。こちらにつきましては、緑の冊子の方には9ページに研 修体系ということで書いておりますが、まずこの自己啓発ということが──自己研鑽と 緑の方には書いておりますが──基本であるということで、それをベースにしまして各 種研修を実施しておるというようなこと。そして(2)のところに、岡山県職員保健師会と いうものを任意の自己研鑽の場として持って、会員みずからが企画、実施して自己研鑽 に当たっておるということでございます。  そうしたことをしておる中で、(6)の課題ということでございますが、岡山県では平 成13年度から、保健所保健課に3つの班をつくって運営するような体制でやってきて おるということでございまして、その中で業務の責任体制が明確になり、業務の効率的 な対応が図れてきた反面、班間での管内全体の健康問題の把握と対策について、課全体 で共有する機能が弱くなったという、縦割りの弊害のようなことが明らかになってまい りました。それから、少人数で広域を担当することから、自分の業務で精いっぱいとい う状態がございまして、事業の見直しやスクラップアンドビルドが十分進んでいないと いう状況も見えてまいりました。  次のページに行きまして、研修につきましても、業務に関連したものには参加するけ れども、専門性を確認していくような研修にはなかなか参加しにくい状況がある。ある いは、市町村では保健師さんだけが頻回に研修に参加している印象を与えやすいという ようなことも見えてまいりました。そして、(5)でございますが、専門職指導者の研修体 制の整備が非常に重要であるということ。そして、既存の研修に専門能力と行政能力を 加えた効果的研修体制の見直しを行う必要があるというようなことも見えてまいりまし た。また、(6)でございますが、緊急対応や困難事例の対応に追われて、市町村支援を通 じた保健活動が手薄になるために、緊急対応が多くなるという悪循環があるように思わ れる。また、市町村の各種保健計画策定への参画や、地域課題の解決に向けた取り組み とともに、新型インフルエンザ等の健康危機管理に関する分野、児童虐待やメンタルヘ ルス分野など、新たな課題に関する分野に重点を置いた活動も必要であるということで、 そうした背景の中でこのプログラムを策定したというようなことでございます。  3は「新任保健師実践プログラム策定の経緯」と書いておりますが、地域保健の現場 では、新任期の実践能力の低下、公衆衛生の視点の希薄化が指摘されていました。公衆 衛生に携わる専門職として、地域の全体像をとらえた「あるべき姿」を目指すためには、 地域保健関係職員すべてが持っておくべき大切な視点があると考え、この新任期の育成 を通じて、中堅やリーダーとなる者の力量形成を図るものの必要性があるということで、 平成16年度にそうした認識でこのプログラムをつくったということでございます。  この作成目的に書いておりますように、新任保健師に必要な能力について、新任保健 師と指導者がともに力量形成を図るということでつくっております。そして、利用方法 はこちらに書いておるようなことでございますが、この中で基本的な概念として、「健康」 「公衆衛生の視点」「ヘルスプロモーションの視点」「疫学」が非常に重要であるという ことで、こうしたものについて重点を置いて、このプログラムの中にも具体的に項を設 けて盛り込んでおります。結果としまして書いておりますのは、保健師としての専門能 力の向上と、公務員としての基本能力や行政能力の会得は、相互に関連しておるという ようなことが見えてまいりました。専門能力の向上を図ることが他の能力の向上にもつ ながっていくということでございます。  このプログラムを平成17年4月から実施しておるわけでございますが、お手元の資 料をもう1枚おめくりいただきまして、(2)に「本プログラムの検証」と書いてござい ます。この緑の冊子の後ろの36ページから、「新任到達度チェックリスト」というもの をつくってございますが、これを平成17年4月からスタートして、12月の時点と平成 18年3月の時点で、このチェックリストに基づいて目的到達度をチェックいたしました。 その中で到達度が低い項目としまして、この3つが明らかになってきております。個別 (家族)支援の重要性がわかり、個人・家族・地域集団の生活に適した支援ができる。 ヘルスプロモーションを理解した上で、住民との協働活動が展開できる。自分の業務を 公衆衛生の理念に結びつけて考えることができる。こうしたことが非常に達成度が低か ったということでございまして、このことにつきましては具体的な項目でいきますと、 緑の冊子の40ページの目標の7、8、9のあたりで、重点項目としましては32、33、 38、39、40、41、42。このあたりの例えば39の情報収集→アセスメント→計画→実施 のプロセス、こういうところの到達度が非常に低いでありますとか、40の地域のあるべ き姿を描くことができ、それをもとに活動を見直すことができるでありますとか、41の 活動の評価に基づき、地域に必要な健康づくりシステムの構築や新たな施策の提案がで きる、あるいは42の各種地域保健福祉計画に参画する意義がわかり、保健師として果 たすべき役割が理解できる、このあたりの到達度が低いということがわかってきており ます。そうしたことで、先ほどの議論の内容と合致するような結果が、こちらの方でも 明らかになってきておるというようなことでございます。  こうしたことについて、今後必要な重点とすべき能力のところでポツで4つほど書か せていただいておりますが、指導者としての専門能力の強化でありますとか、教育現場 と地域との連携した教育システムの構築でありますとか、リーダー研修等の見直し、そ ういうようなことが今後必要ではないかということが明らかになってきております。  以上でございます。  伊藤座長  どうもありがとうございました。それでは、これから専門技術職員の人材育成体制の あり方につきまして、質疑を行いたいと思います。今お2人の発表を聞きまして、いま 一つはっきりしないのは、今保健師、栄養士等の専門技術職員の人材育成体制、教育体 制のどこに問題があるのかということです。したがって、例えば今御発表のあったよう に、そういう新任の保健師の教育プログラムを持っている県と持っていない県の割合が どうなっているのかとか、県がやっている場合、市町村職員に対して機会を提供してい るのか、していないのかとか、要するに今何が問題なのかというのがいま一つはっきり しないのですが。それで、それに対して今後この検討会として何を提言していくのかと いう、そういう問題意識でぜひ御議論をいただきたいと思います。いかがでしょうか。  佐伯構成員  人材育成の幾つかの検討会にかかわってきた経過から、整理できる範囲で発言したい と思います。  まず、現状の問題点からですが、3点ないし4点にまとめられると思います。1点目 は、基礎教育が変化しています。そのため、新任者の卒業時のレベルが非常に未熟で、 専門技術的にも公衆衛生の観点からも未熟です。次に、その人たちを受け入れる体制の 問題ですが、一つは分散配置が進んでいて、そこに配置された場合に、ゼネラリストと して育てるときに十分な体験を積む体制にないということがあります。それから、指導 者がそこにいないということがあります。さらに、市町村の場合、リーダー層の保健師 が比較的横並びで育ってきていますので、リーダーシップがとれる保健師がいないとこ ろがあります。これらが新任者に関することです。  それに対する研修体制がどのようになっているかというのは、都道府県によって随分 差があります。ただし、厚生労働省の検討会の報告書が、平成15年度は新任時期に焦 点を当てて出されましたので、それ以降、都道府県単位でマニュアルを作成されている ところが幾つか出てきています。ただし、すべての都道府県にあるというわけではあり ません。研修体制は都道府県が主になってやっているところと、保健所単位でされてい るところがあり、何らかの新任者への研修はされていると思います。ただし、指導者へ の研修体制はほとんど整備されていない現状です。  新任者以外の中堅以上の保健師の課題として、活動体制の変化に伴う求められる能力 の変化が出てきています。それが先ほど討論された地域を把握し分析し、行政にそれを 生かしていくという行政能力の部分です。その部分に対応する能力開発が、幾つか研修 はされてきていますがまだ不十分だという点と、今後、委託が進むであろうところで、 管理的な能力がどれぐらいついているかということについては、まだまだ課題が多いと いうことがあります。  というようなところが課題かと思います。  伊藤座長  今、三重県と岡山県の御発表を聞かれて、もし意見があったらおっしゃっていただき たいと思いますが。  佐伯構成員  県として体制を組まれているというところでは、何も形がないよりは一歩進んだ形に なったと思います。新任者に関しては、ある程度OJTで何とか進めようという方向で すので、これが根づけばうまくいくのだと思いますが、なかなか業務の忙しさの中、そ れから指導する人が育っていないというところに運用上の問題があります。三重県では アドバイザー制度ということで進められていると思います。  伊藤座長  どうもありがとうございました。そのほかいかがでしょうか。はい。  則安オブザーバー  先ほどちょっと発表の中でわかりにくかったと思いますが、我々もこれをつくるとき に何が必要なのか、どちらを向いた仕事をすればいいのか、というのがまず明確になる 必要があるということで議論がございました。県の職員ということで、人材育成の基本 指針、県全体の方針は踏まえる必要があるであろうと。それについても、議論の末に出 てくるような状況でございます。  それから、保健活動に必要な基本理念、この緑の冊子で26ページになりますが、ど ちらを向いて仕事をするのかということで、健康の概念でありますとか、公衆衛生の視 点でありますとか、ヘルスプロモーション、それから疫学の概念、まずこの方向性をき っちり押さえて、組織の目標というものを明確にした上で、さあ、それからどうするか ということを議論する必要があろうということで、こういうものを持ってきたというこ とでございます。そうした意味で今市町村も、そして保健所も、非常に業務が多岐にわ たり多様なものがあって、住民からの要望も強くて、何かあったらすぐバタバタすると いうような状況でございますので、ともすればすぐにその方向を見失ってしまうという ようなことで、方向性をまず明確にしたものを打ち立てる必要があるのかなということ で、このマニュアルをつくらせていただきました。このマニュアルを指導者の方が見て いただくことによって、非常に忙しい業務の中で業務を見直す機会ができた、ある程度 原点に立ち返るようなことができるようになった、というような感想もいただいておる ということでございますので、ちょっとつけ加えさせていただきます。  伊藤座長  三重県の大橋さん、例えばジョブローテーションでおおむね11年で4つの分野を経 験させるといったときに、現実の人事異動なり人員配置の関連でそこが本当にうまくい くかどうかと、そのあたりはいかがでしょうか。  大橋構成員  人事担当で、かつこの人材育成委員会のメンバーなので、人事担当からすると大変こ れはつらい。この4つを、人数がいて平均で回せるものではない。かつ、実際例えばこ の人は今回母子の業務へお願いしますという意識で配置しても、現場の所長さんの御理 解がないと、「この子は前感染症をやっていたのか。じゃ、感染症をやってもらおうか」 というのがあるので、それを担保するために我々はジョブローテーションの意識、どう いうつもりでこれをやりましたよという文書をつけて人事異動の内示をするようにして おりますが、先ほど言いましたように、対象者全員がこのとおりできるということでは ない。これは人事担当としては大変苦慮しているところでございます。  田上構成員  この検討会は市町村の方が主眼かと思いますが、お2人ともどちらかというと県の方 ですね。市町村の問題点として私は4点ほど指摘したいのですが・・。  1点目は、先ほど申しました行政保健師としてのミッションが不明確、というよりむ しろブレているということ。あわせて要はどんな人材を育成するのかという到達イメー ジが、組織の中でブレているということです。2点目は、市町村の中でのOJTがとて も大事だと思いますが、OJTをするためのリーダー、責任者の不在という問題。それ から、県の方でOff-JTをいろいろ計画しても、今は財政難でありまして、市町村の保 健師さんはなかなか参加できないということがあります。そういう意味では、Off-JT にしてももっと身近なところで受けられるような、例えば保健所あたりで受けられるよ うにするとか、そこらあたりを考えなければいけないのではないかなということ。4点 目には、とにかくサービス業務に皆さんが埋没しているということで、なかなか時間が とれないといったところの問題があると思います。  そういう意味では、県ですら人材育成のプランニングを持っていないわけですが、ま してや市町村においてはそういった人材育成というところの基本的な組織の中での認知 がないというところが最大の課題ではないかなと思います。  伊藤座長  ありがとうございました。そのほかいかがでしょうか。井伊さん、どうぞ。  井伊構成員  昨年ヒアリングをさせていただいた市町村の中には、過去10年間新任の保健師を1 人も採用していないというところもありました。逆のところももちろんあったのですが。 そういう意味で、こういう人材育成をする意識が非常に希薄というか、人材育成をする 必要性を余り感じていないというのも実情としてあると思います。それで、実際今9,000 人ほど養成されている保健師のうち、新任で保健師で就職する人は1割そこそこですの で、そういう意味でどうやって人材育成をしていくかというような必要性を、現場が感 じる環境というのには乏しいのかなと思うところです。  それともう一つは、やはりヒアリングの中で、保健師のパワーレスな状況を生み出し ている一つの要因として、非常に閉鎖的というか閉塞的というか、自分のところの町の こと以外は何も知らないというようなことがありまして、特に地域保健法の後、保健所 がこれまで行っていた管内研修すらもないというような実情があります。ですので、少 なくとも私はOJTは大事だと思いますが、自分は国立公衆衛生院の1年コースの経験 者でもありまして、外を知るとか、専門職としての個人的なパーソナルネットワークを 持てるとか、そういう強化の仕方ということが実は大事なのではないかなと思っている ところです。そういう3年目なり4年目なりを経験した人を、県レベルあるいは国レベ ルで、2日、3日ではなくて、強制的に2週間とか3週間とか、きちんとしたステップ アップ研修が組まれるような状況にならないだろうかということを、昨年度は非常に実 感しました。  それと済みません、長くなりますがもう一つ、私は先ほど基礎教育のことを申しまし たが、今の4年生大学で行われている保健師教育のあり方に関しては、大変深刻な問題 を抱えていると思っています。ですので、今のままでどんどんこうしていけばいいとい うふうには思わないのですが、でもめったに来るか来ないかわからない新人よりも、学 生実習というのは常に受け入れることができるのではないかなと思います。もちろん学 生を受け入れるというのは大変な負担を伴いますし、そういうことに対する何らかの保 証なり担保なりは今ありませんので、保健師にとってはただ負担が課されるということ が実情ですが、でも真新しい人に教えるということは、やはり教える者が一番学ぶわけ ですので、そういうベースを持っていただきたいというのも思いとしてはあります。そ のときに、市町村の保健師が学生実習を受け入れる法的な根拠なり、何らかのよりどこ ろになる申し合わせなり、制度なりというものが今ありません。そういうことについて の整備というのが行われる必要があるのではないかと思っています。  伊藤座長  どうもありがとうございました。それでは、ちょっと予定よりおくれているので、で は最後でお願いします。  藤山構成員  済みません。市町村の現場で新人を受け入れたり人材育成をしている立場からですが、 先ほどから出ています新人につきましては各市町村、神戸市でもそうですけれども、人 材育成計画などを立てているところではありますが、実際のところ大変現場が手薄な状 態になっていて、決して人材育成に手を抜いているわけではなくて、実態的にもう早く 育ってほしいというのが現場の声なんですね。そういった体制が十分に整っていない中 で、現場訓練というか実習を学生のときにされていないのに、早く育ってほしいという 思いとのミスマッチがあるのではないかなと思っていますので、どのように受け入れる 側がそれだけの時間を担保できるかという心構えが、とても大事になっていくのではな いかと思います。  もう一つは、現場をずっと積み上げてきた中堅が、管理者になっていくとか人材育成 をするというような視点での育てられ方をしていないために、やはりリーダーシップが 発揮できないというような状況にあるのではないかと思いますので、中堅の人たちにど のように現場の中で管理的な能力を身につけさせるかということも、大きな現場の課題 です。  伊藤座長  はい、どうぞ。  田尾構成員  言わせていただきたいことが一つありまして、皆さん方は非常に難しい議論をされて いるようです。それはなぜかと申しますと、岡山県の方から示されたこの図を見て、40 ページ、あるいは36ページからですが、行政能力と専門能力は全く違う能力だと思う のです。それは、専門能力は多分現場に入っていって深くサービスすることでしょうけ れども、行政能力はむしろ広く浅くの部分があると思います。本来的に言いますと、専 門能力と行政能力という2つの能力は違った育て方があって当然だと思うのです。それ を一緒にされようとしているところにかなり無理があるのではないかというを、私は考 えますが。  以上です。  伊藤座長  どうもありがとうございました。はい、どうぞ。  藤内構成員  岡山が先ほどの紹介の中で、23市町の44人が県と市町村の人事交流をやっていると いうのはちょっと驚いたのですが、合併した自治体でリーダーシップをとる技術職がお らず、OJTもうまくいかない中で、そういう県との人事交流も一つの可能性だと思い ますので、その辺のメリットやデメリットについても、検討ができればと思っています。  伊藤座長  これは非常に大きなテーマで、ちょっと時間が足りないのはまことに申しわけないの ですが、一応ディスカッションはこの辺で打ち切らせていただきまして、次は議題3に 入らせていただきたいと思います。  (3)新任時期の人材育成ガイドライン(案)について    伊藤座長  「新任時期の人材育成プログラムガイドライン(案)について」ですが、このことに つきまして事務局から説明をお願いいたします。  勝又室長  第1回の検討会のときに佐伯先生の方から、平成17年度の地域保健総合推進事業で 行いました、新任時期の人材育成プログラム評価検討会の報告書について、御報告をい ただいたかと思います。今回でございますが、この検討会の報告書を受けまして、資料 3「新任時期の人材育成プログラムガイドライン(案)」ということでコンパクトにまと めさせていただきました。そして皆さんに情報提供したいということでございます。  特徴といたしましては、今まで新任時期といいますと3〜5年というような位置づけ でやってきたわけですが、今回の報告書につきましては、新任時期を1年目ということ に限らせていただきまして、そしてプリセプターをつけて指導をしていくというような 考え方で、取りまとめをさせていただいております。  このガイドラインの2ページをごらんいただきたいと思います。IIの「基本的な考え 方」のところに、新任時期の人材育成プログラムガイドラインの目的ということで、こ こをつけ加えさせていただきながら、このガイドラインを参考にしていただいて、自治 体ごとに新人1年目に対するプログラムをつくっていただきたいというのが、1点目に 書いてあることでございます。地域保健に従事する1年目の地域保健従事者の能力に合 わせながら、必要な能力開発を着実に行うための人材育成プログラムを自治体が作成を すること。2点目は地域保健に従事する1年目の地域保健従事者が、自分自身の到達目 標を理解するということで、指導者側から見た、さらには実際に研修を受けていただく といいますか、育っていく御本人の到達目標というものを示したガイドラインであると いうようなことで、位置づけをさせていただいて、まとめさせていただいているところ でございます。  4ページ目からは具体的に、1回目のときにお話がございましたように、1年目の教 育目標、人材育成プログラムの例、6ページ目にいきますと指導体制や望ましい指導者 の要件、評価、そして最後には新任者の評価用紙というものも例示をさせていただいて いるところでございます。  このガイドラインを取りまとめていただきまして、それぞれの都道府県なり市町村に 配らせていただきたいと考えております。  以上でございます。  伊藤座長  それでは、今、勝又室長から、このガイドラインの今後の使い方を含めて御説明をい ただいたのですが、皆様方からこの件につきまして御意見や御質問をいただきたいと思 います。いかがでしょうか。  田尾構成員  今お聞きして、理解はさせていただいているつもりですが、この2つの能力というの は、本来的には1人の方の中では、かなり過重な負担を与えるようなことではないかと 思うのです。大所高所から見る行政能力にかかわる能力と、それから現場で深くサービ スしていただくような能力とはかなり違った、交差するようなものだと思います。です から、この2つをこういった形に示すのに私は反対しませんが、その2つというのは現 場の教育課程の中では、それぞれの保健師の方々に対して、かなり過重な負担をかける ようなことになるとまた困るのではないかと思います。少し心配ではあります。  伊藤座長  非常に基本的なことですが、ほかの委員の方、いかがでしょうか。はい、どうぞ。  大橋構成員  確かに高い行政能力と高い専門能力という話であればそうですが、ここに示されてい ることは、もう本当に公務員として基本であるレベルのことを言っているので、このレ ベルのことであれば、田尾先生が言われるような御心配には及ばないのではないかと思 われます。  伊藤座長  佐伯さん、いかがですか。  佐伯構成員  同じです。1年目ということで、非常に基本的なところで、むしろこれは行政的な物 の見方をしましょうというレベルですので、このレベルでは大丈夫かと思います。  則安オブザーバー  現場の方におりましても、専門職と事務職が話をするときに、お互いの領分をある程 度わかり合いませんと言葉が通じないということで、なかなか平行線をたどるというよ うな場面がありますので、やはりお互いに重なり合うようなところは必要かなと思って おります。  伊藤座長  はい、どうぞ。  田尾構成員  異論はありません。  田上構成員  ちょっと質問ですが、このガイドラインを具体にどういう形で市町村に御活用いただ けるように持っていくのか。そこらあたりをお聞かせいただきたいのですが。  勝又室長  例えば岡山県がつくっておられるような「新任保健師実践プログラム」とか、ここま ではいかなかったとしても、新任の人が出てきた場合に、ここに書いてあるような指導 体制を組んでいただくなり、到達目標等を確認していただくというようなことで、参考 にしながら自分のところの自治体のプログラムを確認していただくというような考え方 ですが。  田上構成員  お聞きした理由は、例えばこういうものを文書でただ市町村に流しても、その辺に積 まれてしまうだけで、ほとんど相手にされない危険性がより高いのではないかと思いま す。基本的に人材育成が必要という必要性の認知からできていないのに、そこにこうい うものが行っても余り使われないのではないか。そういう意味でも、例えば県の本庁な り保健所なりが市町村に行って、首長さんとか課長さんとか人事当局とか、そういった ところに御説明して御理解を求めていくとか、何かもう一押しすることをしないと、た だ流すだけではいけないのではないかなと思いましたので・・・。  勝又室長  この市町村再構築検討会の報告書を出すと同時に、このガイドラインを使ってくださ いというふうにした方がいいのでしょうかね。これを今すぐ出すというようなことでは なくて、こういう体制をつくってくださいとか、こういう考え方でやっていきましょう という報告書が出たと同時に、ガイドラインを示していくというやり方もどうかなと思 うのですが、いかがでしょうか。  田上構成員  この報告書そのものを、どのように市町村に伝えていくのかということとあわせて考 えていった方がいいと思いますので、あわせての方がいいのではないかと思います。  勝又室長  はい。  伊藤座長  勝又室長さん、このガイドラインはずっと佐伯先生などにつくっていただいたもので すよね。ですから、それをこの検討会としても議論していただいて、そして今度の市町 村保健活動の再構築を具体的に進めていくためには、今特に保健師は大学教育が進んで、 現場での能力の基礎教育が不十分なままに卒業してくる。そういう御指摘も踏まえて、 言ってみれば新任時期1年目にこういう採用する側の教育のガイドラインであると同時 に、1年目の保健師さんの自己の研修プログラム、到達目標というか、その両方のガイ ドラインとしての位置づけみたいなものをきちっとこの検討会でして、出していったら どうなのかというのが、勝又室長さんの御意見ではないかなと思うのですが、そんなこ とでよろしいですか。  勝又室長  はい。  伊藤座長  それでは、そういう扱いにさせていただきたいと思います。 (4)専門技術職員の活動体制および人材育成体制に関する調査の中間結果について  伊藤座長  最後に議題の4に入りますが、今予定の時間の4時になっているのですが、少し10 分程度延長させていただくのをお許しいただきたいと思います。議題4の、専門技術職 員の活動体制及び人材育成体制に関する調査につきまして、中間報告をさせていただき たいと思います。事務局からお願いいたします。  勝又室長  済みません。この調査でございますが、事務局の方の不手際でいろいろ修正に時間が かかりまして、送付がおくれて大変申しわけないと思っております。調査票の配布数は 1,759で、24日までの回収数としては823件ということになっております。24日まで に入力できたのが550件という状況でございます。現在988件が集まっておりまして、 28日が締め切りということで、きょうもまだどんどん来ておりますので、1,000件超え るかというように思っておりますが、とりあえず本日は24日以前のものの取りまとめ ということで、曽根先生の方から御報告をいただくということでございます。  伊藤座長  それでは、曽根先生、お願いします。  曽根構成員  それでは、簡単に御報告いたします。今、室長の方から御報告がありましたように、 550件を現時点での分析対象数といたしました。  1ページのQ1は、実際の属性に関するものでございます。全部はちょっと報告でき ませんので、主なところだけ御報告いたしますと、5)のところで合併についてという ところがございます。これにつきましては、「合併ずみ」というところが今回26.4%、 約4分の1が合併経験をしているといました。合併についての細かい情報はその下に書 いてございます。  3ページのQ2ですが、貴自治体の保健福祉関連施設についてということで、ちょっ と見づらいですけれども、「0ヶ所」というのはないという意味でございます。ですから、 支所があるのは2割、保健(福祉)センターがあるのが8割、保健センター類似施設が あるのが25%で約4分の1、地域包括支援センター(直営)があるのが約6割、地域包 括支援センター(委託)があるのが約4分の1、というような施設状況になっておりま す。  4ページからは保健師に関する質問でございます。Q3は雇用についてですが、1ヶ 所を除いてほぼ全数で保健師は雇用されているということです。  組織を超えて保健師全体を統括する機能を持つ保健師はいますかということで、「は い」というところが16%、そのうち、それが分掌事務として記載されているのが3分の 1ということになります。  次にQ6は、分散配置されている保健師間の連携についてということでありますが、 これは分散配置している市町村に限って分析する必要があるのではないかと思っており ます。現時点では余り細かい分析はできておりません。  5ページ、Q7のところで、保健師にとって分散配置により生じている課題について は上の2つ、「地域全体や保健活動全体をとらえることが困難である」、あるいは「他の 部署の業務内容を理解することが困難である」という回答が多くみられました。  それから、新任保健師のOJTに関するものがQ8ですが、やっているというところ が約3分の1です。  Q9は中堅保健師のOJTですが、これは16.6%ということで新任よりも少なくなっ ております。  中堅に関しまして、(2)のところでどういう内容をやっているのかということで、これ は複数回答ですが、1番の「事業の企画・立案・評価」、5番の「連携・調整」というも のが比較的多くみられました。  次は6ページですが、行政能力の向上を目的としたOff-JTに関して、新任期、中堅 期、管理期に分けて聞いております。これも8割程度はどの期も実施しておりますが、 中堅期、管理期と進むに従ってやや減少傾向にあります。  専門能力の向上を目的としたOff-JTについて、まず階層別研修ですが、これは大体 6割から4割で、やはり中堅期、管理期になるに従って減少傾向になります。  業務別研修については、大体7割以上がやっているということです。  7ページのQ12は、保健師の保健事業の企画能力の向上のための方策をとっています かという問いで、7割は何らかの方策をとっているということです。その内容について はその下で、2番と4番、特に「研修への派遣」ということが主体でした。  Q13の自己研鑽を支援する仕組みにつきましては、やはり「研修会・学習会への参加」 への便宜を図るが主体でした。  Q14のジョブローテーションですが、やっているというところは17.1%でした。  Q15の人材育成に関する支援について、都道府県保健所から何か受けているかという ところは、「特に支援はない」というところが27.3%ですから、残りは何らかの支援を 受けているということです。  それから、問題点についてはQ16のところで聞いておりますが、「人手が足りないた め、研修の時間がとれない」、あるいは「スーパーバイザーがいない」という回答が多い という結果になっています。  次に、管理栄養士・栄養士に関することが8ページ以降になります。まずQ17で雇用 されていますかということですが、72%ということで、これは保健師よりも少ないとい う結果になります。  同じく、統括する機能を持つ管理栄養士・栄養士はいますかということで、これも大 変少ない状況になっておることがわかります。  Q20については先ほども言いましたように、分散配置の有無で分けて分析をしており ませんので、これは省略させていただきます。  9ページでQ21については、分散配置により生じている問題点で、やはり同じように 1番と2番が多くみられました。  Q22は新任管理栄養士・栄養士のOJTをしていますかという問いですが、14.4%と いうことで、これは多分新任自体が少ないからなのかもしれません。この辺はあまり明 らかではありません。  Q23で中堅のOJTをしていますかということは、これは8.6%ということで、こ れも保健師よりも少ない状況になっておりまして、中身については大体多いものは同じ ですが、割合としては少ないという状況です。  10ページ、Q24、Q25も同じような研修に関することですが、いずれの項目もやは り保健師よりも低めに出ているということは読み取れるかと思います。  11ページ、Q26の企画能力の向上のための方策は、約3分の2の市町村がとってい ると答えています。その中身については、先ほどと同じように「研修会・学習会への参 加」が多いということです。  Q28のジョブローテーションを実施していますかということでは、これは8.6%と いうことで、先ほど保健師が17%でしたのでやはり少ない傾向が見られました。これは 管理栄養士自体のポストが少ないから、ジョブローテーションをなかなかしづらいとい う面もあるのかもしれません。  Q29の人材育成に関する支援について、「特に支援はない」というのが6割に達して いて、これは支援があるという面では保健師よりも低くなっております。  12ページ以降は、今後の組織体制についてですが、平成20年度までに組織改編の予 定があるのが1割ということで、大多数がわからないということになっています。3) の保健指導の実施方法についても、「検討中」「未定」というところが7割程度になって いまして、まだちょっとよくわからないというところが多いという状況です。  13ページですが、国保部門に保健師は配属されていますかということで、5.8%が 配属されていると。専任と併任の様子を見ますと、そのうち約4割が専任、残りが併任 というような形だと思います。管理栄養士については大変低い割合ですが、これはすべ て併任という形になっております。国保部門への配置の予定がありますかということで すが、これはほとんど決まっていないということです。  14ページは在宅保健師の把握状況ですが、これは保健師、管理栄養士とも7割程度が まだ把握していないところも含めて0と回答しています。  15ページが保健師・栄養士の配置状況です。これは横長の一覧表でつくったものです が、保健師数の分布を見ますと、大体6〜7人が中央値になっています。栄養士の場合 は1〜2人の間が中央値になっていて、大体そのくらいが一般的な人数ということです。  16ページ以降は配置状況で、これも説明すると大変長くなりますので、簡単にいたし ますが、見ていただくと、100から「0%」のところの%を引いたものが実態の数字で、 例えば保健部門のところで「0%」が12.7%になっていますので、逆に言うと87%の 市町村が保健部門に保健師がいるというふうに読み取ることになります。そうしますと、 介護保険部門では36%、介護予防部門では11%の市町村に保健師がいるということに なります。下の方で地域包括支援センターでは、45%の市町村に保健師がいるというよ うな読み方になっております。この分布については後日もう少しわかりやすい形でお示 ししたいと思います。  兼務については17ページに書いてあります。ここは省かせていただきます。  18ページのところでは、いろいろ執務室の場所などがありますが、一番下の出向の有 無のところですけれども、出向している人が「0%」という市町村が89.2%ですから、 逆に言いますと、1割の市町村では全体のうちだれかが出向しているということになり ます。  19ページは職位に関して聞いたものですが、これを見ていただきますと、例えば係員 のところは「0%」が3.2%になっています。逆に言うと、97%の市町村が係員に保健 師がいるということです。こう見ますと、例えばラインの課長のところ、上から2つ目 の右端ですが、これを見ますと「0%」のところが91%になっています。つまり、9% の市町村でラインの課長に保健師がいるということです。その下を見ますと、部長級は ほとんどいないということがわかります。  20ページは行政保健師経験年数を見たものですが、これを見ますと1〜3年、4〜5 年のところが、「0%」というところが5割程度ありますので、5年未満のいる市町村が 比較的少ない。それに比べて6年以上の中堅クラスが多い市町村が多いということがわ かります。  21ページは異動回数で、この辺はちょっといろいろ解釈が難しいですが、0回という ところが幾つかあって、異動が比較的少ないのかなというような、この辺についてはも う少しわかりやすい形でお示しできたらと思います。  管理栄養士についての配置状況は22ページからです。保健部門では同じように81% の市町村で配置しているということ。児童福祉部門がそれに次いで25%ということがわ かります。それ以外の90何%と書いてあるところは、それはほとんどそこに配置され ていないということが読み取れます。  23ページは兼務なので省きます。  24ページの一番下の出向の有無ですが、栄養士の場合はほとんど出向がないという状 況になっています。  25ページは職位ですが、これも先ほどの保健師よりももっと傾向が極端でして、例え ば係員だと87%の市町村で係員として栄養士がいると。係長級だと30%、係長だと10% です。そう見ていきますと、課長補佐級以上はほとんどいないということになります。  26ページが栄養士経験年数ですが、これも見ますとやはり中堅が多い市町村が多い。 若い人がいる市町村が比較的少な目ということがわかります。  27ページの上が管理栄養士・栄養士の別ですが、管理栄養士が1人もいないというと ころが24.2%、逆に全員管理栄養士だというところが43.4%ということになります。  異動回数等が28ページに書いてあります。ここは省略いたします。  現在のところ、550件を簡単に集計した結果が以上でございます。  伊藤座長  どうもありがとうございました。この調査につきましては、今後の検討会で最終的な 報告をする予定になっておりますので、この場では質問、御意見を承りませんが、事務 局に今後御意見等をお寄せいただければと思いますので、よろしくお願いいたします。  (5)その他    伊藤座長  その他といたしまして、検討会の今後の進め方について、私の方からちょっと相談さ せていただきたいのですが、本日まで検討課題を議論してまいりましたが、まだ非常に 論点が多く不十分な状態になっております。したがいまして、さらにこの検討会の予定 を2回ほど追加して開きたいと考えておりますので、ぜひその点につきまして構成員の 皆様方の御了解をいただきたいと思います。それで、事務局と相談してまいりましたが、 今後のスケジュールについて説明をしていただきたいと思います。  勝又室長  ただいま座長から御説明がありましたように、2回追加していただくということで、 先生方の御予定をお尋ねしまして、次回の第5回は1月24日の13:30から、第6回は 2月9日の13:30から、第7回は2月23日の13:30からを予定しております。また、 3月には第8回を予定しておりますが、これについてはまだ日程をお聞きできておりま せんので、また後ほど調整をさせていただきたいと思っております。  事務局からは以上でございます。 3.閉会  伊藤座長  それでは、本日の検討会はこれで終了させていただきたいと思います。座長の不手際 でちょっと予定の時間を15分ほど超過いたしましたが、おわびしたいと思います。ど うもありがとうございました。 <終了> 1