06/11/29 薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会 平成18年11月29日議事録 薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会 議事録 1.日時及び場所   平成18年11月29日(水)  13:00〜 厚生労働省共用第8会議室 2.出席委員(16名)五十音順   飯 沼 雅 朗、◎池 田 康 夫、 上 原 至 雅、 岡   慎 一、   折 笠 秀 樹、 守 殿 貞 夫、 神 谷   齊、 川 嵜 敏 祐、   後 藤   元、 土 屋 文 人、 早 川 堯 夫、○堀 内 龍 也、   三 瀬 勝 利、 溝 口 昌 子、 山 口 一 成、 吉 田 茂 昭  (注)◎部会長 ○部会長代理      欠席委員(0名)    3.行政機関出席者 黒 川 達 夫(大臣官房審議官)、 中 垣 俊 郎(審査管理課長)、   伏 見   環(安全対策課長)、   豊 島   聰(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長)、 川 原   章(独立行政法人医薬品医療機器総合機構安全管理監)、   森   和 彦(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役)、   佐 藤 岳 幸(独立行政法人医薬品医療機器総合機構新薬審査第一部長)、   坂 本   純(独立行政法人医薬品医療機器総合機構新薬審査第二部長)、   望 月   靖(独立行政法人医薬品医療機器総合機構新薬審査第三部長)、   田 中 克 平(独立行政法人医薬品医療機器総合機構生物系審査部長) 他 4.備  考   本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。 ○審査管理課長 定刻になりましたので、薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会を開催 いたします。本日は、お忙しい中をお集まりいただきまして誠にありがとうございます。 当部会委員16名のうち、ただ今14名の委員に御参加いただいております。岡委員、神 谷委員におかれましては、若干遅れておられるものと考えております。  それでは、部会長の池田先生、議事進行をよろしくお願い申し上げます。 ○池田部会長 先生方、お忙しいところをどうもありがとうございます。本日は全員御 出席ということで、先生方には大変感謝を申し上げます。それでは、まず、事務局から 配付資料の確認と資料作成に関与された委員の報告をお願いいたします。 ○事務局 資料の確認をいたします。先生方の机の上に、議事次第、座席表、委員名簿 をお配りしております。議事次第にございます資料1〜6-6は事前にお送りしたもので す。そのほか、本日の配付資料といたしまして、資料1-2「アクトヒブ」の追加資料、 資料3-3「アリムタ」の追加資料、資料7「優先対面助言品目の指定について」、資料 8「審議品目の薬事分科会における取扱い等の案」、資料9「専門委員リスト」でござ います。  平成13年1月23日の薬事分科会申合せに基づく、資料作成に関係された委員の確認 ですが、本日の審議事項の議題2「ファンガード」について、岡先生が関与されており ます。岡先生におかれましては、議題2の審議の間は別室で御待機を頂きますようお願 いいたします。  本日の議事進行でございますが、議題5「生物学的製剤基準の一部改正」につきまし ては、議題1で御審議いただきます「アクトヒブ」に関するものですので、議題1と議 題5を併せて御審議いただければ幸いでございます。以上でございます。よろしくお願 いいたします。 ○池田部会長 ありがとうございました。本日は、審議事項が5議題、報告事項が2議 題です。  それでは、早速、議題1から始めます。ただ今事務局からお話がありましたように、 議題1と議題5を併せて審議したいと思います。機構から概要の説明をお願いいたしま す。 ○機構 議題1、資料1、アクトヒブの輸入承認の可否について、医薬品医療機器総合 機構より説明させていただきます。  本剤は、インフルエンザ菌b型、ヘモフィルスインフルエンザタイプb、以下Hib と称しますが、その感染症の予防を目的としたワクチンです。Hibの莢膜多糖である ポリリボシルリビトールリン酸と破傷風トキソイドの結合体を有効成分としています。 海外については、1992年にフランスで承認され、それ以降、現在では106か国で承認さ れています。WHOは1998年にHib結合体ワクチンの乳児への定期接種を勧告してお りまして、本剤を含めた3種類のHib結合体ワクチンが現在世界で承認されています が、90か国において定期予防接種プログラムに組み込まれております。  本邦においては、2000年〜2002年に掛けて国内で臨床試験が実施され、2003年に輸 入承認申請されました。  本品目の専門協議に御参加くださいました専門委員は、資料9にございますとおり、 本部会委員の神谷先生を始め、10名の委員でございます。  次に、審査の概略について説明させていただきます。  国内臨床試験としては、122例の乳幼児を対象とした臨床試験が実施されております。 有効性に関しましては、本剤接種後のHib多糖に対する血中抗体価が測定されました。 Hibワクチンについては、過去の様々な研究、また臨床試験から1μg/mL以上の血中 抗体価が得られれば感染予防効果が期待できるとされています。国内臨床試験の結果は、 初回免疫の3回接種後の1μg/mL以上の抗体保有率が92.4%、1年後の追加接種後では 100%であり、本剤は国内においてもHib感染症の予防効果が十分に期待できると判断 しました。  安全性については、大きな問題は見られておらず、海外において2,000例以上を対象 として実施された安全性試験においても特段の問題は見られておりません。  なお、本剤はその製造工程において、反芻動物由来原料基準の原産国に関する規定に 適合しないウシ由来原料が使用されています。これらの原料については、欧州薬局方委 員会から、欧州薬局方に示された医薬品原料に求められるTSEリスクのminimization の方策が採られていることの証明書が発行されていること、また平成15年8月1日付け 薬食審査発第0801001号及び薬食安発0801001号二課長通知に基づくリスク評価により まして、本剤によるTSE伝播の理論的なリスクは完全には否定できませんが、実際に TSEが伝播する可能性は極めて低いと判断しております。  一方、本剤のベネフィットですが、国内においては年間、現在500〜600例のHibに よる髄膜炎患者が発生していると報告されております。また、その5%は死亡、25%程 度にてんかんや聴力障害等の後遺症が残るとされておりまして、合わせて約30%が重篤 な転帰をたどると報告されています。本剤によるこれらの感染症予防のベネフィットは、 TSE伝播のリスクを十分に上回ると判断いたしました。しかしながら、臨床使用に際 しては、被接種者あるいはその保護者に対する本剤のリスク及びベネフィットについて 十分なインフォームド・コンセントが必要と考えております。  当日配付資料1-2としてお配りしておりますが、「Hibワクチン接種予診票」とい うものをお示ししております。これをもちまして、保護者に対して説明及び同意を得る ことを考えております。  本剤の市販後においては、国内での安全性情報を収集するために、750例以上を対象 とした特定使用成績調査を実施するという計画が提出されています。また、その他、市 販直後調査の一環として、各医療機関での接種数、使用数等、その母集団の規模を把握 した上で、重篤でまれな副作用についても、その発現頻度を含めた安全性情報を市販後 早期に収集する予定となっております。  さらに、本剤の接種スケジュールですが、既存の国内の百日せきジフテリア破傷風混 合ワクチン、すなわちDTPワクチン、三種混合ワクチンとも言われますが、これとほ ぼ同じスケジュールで接種されることになります。したがって、本剤承認後にはDTP ワクチンと同時に接種される可能性が高いと考えられることから、本剤とDTPワクチ ンとを同時接種した際の有効性及び安全性を確認する製造販売後臨床試験も計画されて おります。  以上のとおり、機構での審査の結果、本剤は本邦においてもインフルエンザ菌b型に よる感染症の予防に対する有用性が認められると判断し、承認して差し支えないと判断 いたしました。本剤は新有効成分含有医薬品であることから、再審査期間を6年とし、 劇薬及び生物由来製品に該当すると判断いたしました。  先ほど御案内がありましたが、本剤の承認に伴い、生物学的製剤基準の医薬品各条に 「乾燥ヘモフィルスb型ワクチン(破傷風トキソイド結合体)」を追加し、当該項目で使 用される試薬等を併せて一般試験法の試薬・試液等に追加する必要がございますので、 資料5に基準案をお示ししております。審議事項の議題5でございますが、本剤の承認 の可否と併せて御議論いただきたいと思います。以上、御審議のほど、よろしくお願い 申し上げます。 ○池田部会長 ありがとうございました。ヘモフィルスインフルエンザb型のワクチン です。ただ今御紹介がありましたように、かかると非常に致死的なものであり、それを 予防するということで、このものの審査をお願いしたいということと同時に、資料5に ありますように、生物学的製剤基準の一部改正も併せて審議をお願いしたいということ でございます。委員の先生方から御意見を伺いたいと思います。どうぞ、神谷委員。 ○神谷委員 遅れましてすみません。今お話があったと思いますが、私は専門協議に出 ましたので、その内容について少し補足させていただきます。  いろいろな点で少し遅れていたと思いますが、このワクチンは4年ほど前からかなり 望まれているワクチンの一つであります。このワクチンが主に効果のあるのは侵襲性の Hibの感染症ということで、専門協議のときには申請の効能・効果のところで「侵襲 性」という言葉を入れるかどうかが問題になりました。しかし、接種するときにはそう いうことを考えて接種するわけではないので、Hibの感染の予防とした上で、そこの ところは添付文書できちんと書こうということになっております。添付文書を見ていた だきますと、「効能・効果に関する接種上の注意」のところに侵襲性のものにしか効か ないということが追記されております。  もう一つの大きな問題としては、ウシ成分が入っているということで、変異型のクロ イツフェルト・ヤコブ病の潜在的リスクがあることに関しての協議です。今まで世界で も恐らく1億例ぐらい使われていますが、その中で発生例が一つもありません。  これによって害がどれぐらいあるかと言いますと、私たちが実施しました調査では、 年に600例ぐらいの感染があって、その中で毎年20人の子供がHibの侵襲性感染症、 特に髄膜炎で死んでいます。そういうことで、リスクとベネフィットから考えれば非常 に有効なワクチンであろうということです。  ただ、この問題については、お手元に配られてあります「Hibワクチン接種を御希 望の方へ」の中で、こういうことがあるということを今の時代ですからしっかり知らせ るべきだということで、医師がきちんと説明したことが確認できるように、同意書にこ の説明文書も付けた上で、それに対してサインを頂くという形でやろうということで、 専門協議でも了解されました。  それから、用法・用量のことですが、この病気は6歳未満の子どもしかほとんどかか りません。特に1歳前後で髄膜炎を起こしてひどいことになりますので、やはり早期に 接種しなければならないということになりますが、ちょうどこの時期にはDTPのワク チンを接種しているということと、ポリオのワクチンを投与しなければならない時期に 当たりますので、法律上は同時接種でもいいことになっております。これはこの中にも 書いてあったように、医師の判断ではあるけれども、同時接種はやってもいいことにな っています。  同時接種というのは、混合して打つのも一つの同時接種ですし、左手と右手とか上、 下という形で別々に打つのも同時接種です。この場合は、DTPのことを考えますと、 厳密に言うと、日本のDTPも許可は通っていますが、全部同じではないという問題も あります。それから、外国のDTPは日本では通常使っていませんが、そういうデータ も出ています。審査報告書の26ページに混注した場合と別々に打った場合のデータが出 ていますが、それによるとそれほど大きな差はありません。しかし、日本では混合では なくて別々に打つ形でやろうということで、それを添付文書にしっかり書いていただく ということであればよいと専門協議では判断されています。  最後に、安全性の問題です。どの程度のことを市販後調査でしたらいいかということ ですが、メーカー側は3,000回接種でデータを出したいということです。それでもいい ですが、これは4回打ちますので、これでは3回までのデータは出るけれども、4回目 のデータが出にくいということもあります。その点を留意して行うように機構からメー カーにお話をしていただくことになっておりまして、今の説明の中にもあったかと思い ます。  それから、これはここで言うべきことではないかもしれませんが、臨床としては、こ のワクチンは世界では1億人ぐらいの子供が打っておりまして、文明国の中では日本は 非常に遅れて入ってきたことになります。したがって、安全性の問題もそうですが、そ のほかにも、このワクチンを日本で使うことによってどれだけ効果が出たかについてポ ストワクチネーション・サーベイランスをしっかりやらないと、日本は入れたけれども、 良かったか悪かったかも分からない。これは本来、結核感染症課の仕事なのかもしれま せんが、こういうことを機会に、全数報告がきちんとできて分かるような制度を入れて いただけると更に有り難いというお話が専門協議でありました。以上でございます。 ○池田部会長 ありがとうございました。専門協議での議論の内容を詳しく御説明いた だきましたが、それを踏まえて、委員の先生方、いかがでしょうか。山口委員、どうぞ。 ○山口委員 全体として神谷委員の言われるとおりでよろしいかと思います。ただ、一 点ですが、最初に触れました「侵襲性」という言葉の問題です。確かに、添付文書の「効 能・効果」のところで、「インフルエンザ菌b型による感染症の予防」の後の括弧の中 には「侵襲性」という言葉が入っていますからこれでもいいかという気もしますが、や はり最初のところで「侵襲性感染症の予防」と言う方がより適切ではないかと思います。  申請者の提出しましたデータシートの中でも「侵襲性感染症」という言葉が入ってい ますし、アメリカの添付文書の中でも「invasive disease」と、侵襲性感染症という言 葉が入っているようですので、少しこだわるようですが、その点については意見として 申し述べたいと思います。 ○池田部会長 その点は機構はどうですか。専門協議では、予防なのでインベイシブに 余りこだわらなくてもいいのではないか。ただ、実際にはそのインベイシブを予防した いからということなので、入れたらどうかという話ですが。 ○機構 確かに、専門協議においてそのような議論を行いました。しかしながら、現在 日本で承認されているワクチンについては、基本的に大きく「何々による感染症の予防」 という形の効能・効果をこれまでずっと設定してきています。  前々回の部会で御議論いただきました肺炎球菌ワクチンについても、重篤なインベイ シブなものにしか有効性がしっかり出ていないのではないかといった議論もありました が、予防する際に健康な状態に打つということですと、目的とするものは侵襲性という ところにあるかもしれませんが、実際には治療薬のようにこの病態に使いなさいという 形で縛る必要があるたぐいのものではない。  また、侵襲性という感染症に更にいろいろな情報を付けていくということですが、疫 学調査や市販後のいろいろな調査によってどんどん情報が蓄積されて、提供する情報が 増えていくといったころがあるので、やはり効能・効果としては、日本では従来から大 きく「何々の感染症の予防」というところで設定させていただいているかと思います。 ○池田部会長 神谷委員、どうぞ。 ○神谷委員 そこのところはおっしゃるとおりですが、例えば、普通、中耳炎は侵襲性 とは言っていないわけです。中耳炎はHibではほとんど起こらないです。ほとんどnon typableのものですが、中耳炎も起こらないわけではないのです。感染症というものは そういうものも含めますので、中心に効くのは侵襲性のものではあるけれども、臨床的 にはそういうものも含めていいということではないかと思っております。 ○池田部会長 これは市販後調査を行うわけですが、神谷委員がおっしゃられたように、 アウトカムスタディというか、こういうポリシーを入れた結果として、実際にどういう 効果があったか。もちろん安全性の調査等も当然やらなければいけないのですが、疫学 的なアウトカムをどのように見ていくかという点については何か特別な考え方はあるの でしょうか。 ○機構 本当の有効性、国内でHibによる髄膜炎を減少させることができるかどうか は接種率の向上とともにモニタリングをしていかなければならないところですが、大規 模な国策的な調査を一企業に課すというのもなかなか難しいところがあります。定期接 種に組み込むに当たって、今後、結核感染症課と予防接種検討会等で議論されていくか と思いますが、現在のところ、申請者に承認に当たり条件を課するというのは、接種無 効例の報告であるなどのレベルに限られてくるのではないかと考えております。  専門協議ではいろいろ議論されましたが、本剤の承認に当たって有効性、安全性を考 えたときに、血中の抗体価によって感染予防効果が十分得られるという説明が付くとい うことですので、ポストワクチネーション・サーベイランスの具体的な方法には、今後 の、定期接種に組み込むところまでの流れにゆだねるといった結論を出しております。 ○池田部会長 この部会はリスク・ベネフィットを考えてこれが有効である、あるいは これを承認した方がいいという議論でいいのですが、それと同時に専門協議であったよ うな考え方を国全体として採っておくことが大事だという御意見であると思います。守 殿委員、どうぞ。 ○守殿委員 山口委員が言われたことを私も考えていたのですが、Hib感染症と分か った時点、Hib感染症が疑われる時点で使うのか、その辺はいかがですか。表現の問 題かも分かりませんが、Hib感染症になった人が侵襲性にならないように使うのであ れば侵襲性があってもいい印象を受けました。侵襲性という言葉があっても別に不自然 ではない感じがします。 ○池田部会長 これはワクチンですから、通常の感染症と同じような考え方でよろしい のですよね、神谷委員。 ○神谷委員 これはHib感染症を予防するのです。感染するのはヘモフィルスインフ ルエンザはbだけではないので、ほかのものはこれでは効かないということですが、H ibということであれば感染症そのものを予防するという考え方でいいと思います。 ○池田部会長 折笠委員、こういうポリシーはいかがでしょうか。 ○折笠委員 現在は任意接種ですよね。 ○安全管理監 承認をされても予防接種法上の位置付けができませんと。 ○折笠委員 任意ですからまだ今はいいと思うのですが、蓄積したデータで明らかに重 篤な感染症による死亡が減ったということがあって、本当にメリットがあるのであれば、 三種混合のようにすべての人に行うというか、任意でなくなる方向もあるかもしれない。 現在は任意なのでそういうデータまでは必要としないかもしれないのですが、更に踏み 込んですべての人に接種するようにするためには、もう少しデータが必要ではないかと 思います。 ○池田部会長 この一歩先に進めていくときに、市販後調査を会社に要求するわけです。 その市販後調査で何と何を明らかにするのかという点も含めて、もう少し説明していた だけますか。 ○機構 本剤の承認に当たりまして課する市販後の安全性の調査ですが、750例を4回 接種まで可能な限り安全性情報を収集するといったところで、局所の腫れ、発赤、痛み、 それから発熱、下痢、消化器症状といったワクチン接種後の一般的な副作用については、 本剤をDTPワクチンと併用接種、あるいは単独で接種、また接種時期、年齢等を層別 解析しても、750例あれば大体安全性プロファイルは把握することができるであろう。 ただ、まれに生じる重篤なものについては何千例規模の安全性の調査を行わないと評価 できません。しかし、何千例、何万例という規模の安全性の調査を特定使用成績調査で 行うというのも、現実的には非常に難しいところがあります。  そういったところで、市販直後の調査の一環として、各医療機関においてどれだけ使 用されたかを把握しつつ、重篤なものの発現頻度もモニタリングしていく。それをまず 検討する方向です。それが毎年定期的に行われるようになると、おおよそ定期の予防接 種で行われている予防接種後健康状況調査と同レベルの情報になるかと思われます。  感染予防効果をどのように確認していくかという点です。これについては、先ほど神 谷委員からお話がありましたように、実際に承認の可否にかかわる問題ではありません が、非常に有意義な議論をさせていただきました。中には、感染症法の改正を行って、 現在小児の細菌性髄膜炎は定点報告されていますが、これを全数報告にしてしまうとい った具体的な方法など様々な議論を行いまして、それらをまとめて結核感染症課に今後 の検討課題として伝えたいと思います。  本日、部会で議論させていただきまして、様々な御意見を頂きましたので、それも併 せて結核感染症課に情報提供するとともに、今後、定期接種に組み込む際にはこちらも 協力させていただきたいと考えております。 ○池田部会長 ありがとうございました。折笠委員、どうぞ。 ○折笠委員 現在、乳幼児で、菌による感染や髄膜炎など、生命に危険があるようなイ ベントはどのくらいの人数が出ているのですか。 ○池田部会長 10万人当たりの年間罹患数は10人以下で、8〜9人という、1万人に 1人ぐらいの発症率ということです。ですから、市販後調査では主にこの安全性の確認 を確実にしたいということですね。その先の、これをやったことによってどのくらい減 ったかというアウトカムに関しては、今の時点では積み重ねてやっていくということに しかならないということですね。三瀬委員、どうぞ。 ○三瀬委員 今の御意見に関してですが、5歳以下の小児の化膿性髄膜炎の6割はヘモ フィルスインフルエンザのb型菌、25%ぐらいが肺炎球菌、その他が15%ぐらいですか ら、1,000人弱のうちの500人ぐらいが日本でのこの菌による髄膜炎の小児の患者とい うことになると思います。島田馨先生などの疫学データが出ておりますので、これは正 しいと思っています。 ○池田部会長 どうぞ、溝口委員。 ○溝口委員 生命のリスクと関係しないのですが、皮膚反応が多いようですので、少し 意見を述べさせていただきます。発赤、腫脹などは自然に消えますので問題ないと思い ますが、硬結があるのが気になります。3回連続でやりますし、市販後調査をやられる のでしたら、次回のときに硬結が消失しているかどうかを確認していただければ、親御 さんに「皮膚に反応ができますが、必ず消えますよ」という説明が可能になるのではな いかと思います。  それから、二点お伺いします。これはほとんど子供がかかるようですが、免疫不全の 大人に肺炎球菌ワクチンのようにする必要がないのか。もう1点は、破傷風には予防的 な役割がないと書いてありますので、恐らく血中の抗体価は上がらないのだとは思いま すが、アレルギー反応となるとまた別ですので、これをやったために、今度は破傷風ト キソイドをしたときにアレルギーを起こす頻度が増す可能性はないかどうか。その二つ を伺いたいと思います。 ○池田部会長 いかがですか。 ○機構 お答えさせていただきます。まず、硬結の消失については、今から申請者に伝 えて、それを盛り込んだ形の市販後調査計画を検討させていただきたいと思います。  次に、小児以外の使用ですが、大人、2歳以上についてはほぼ常在菌と化しており、 日和見感染することはありますが、重篤化することはまずないと考えております。そう いうことで、基本的には5歳以下でしかHibによる侵襲性の感染症は発症していない のが現状です。ただし、肺炎球菌ワクチンでもありましたが、脾臓を摘出した患者であ るなど、一部の病態においてインフルエンザ菌による感染を起こす可能性が高いので、 そのような場合には海外でもまれながら使用されております。国内においてもそのよう な使用を現場で行われる可能性はありますが、基本的には、それについても今後、情報 収集していくことで対応可能かと考えております。  最後に、破傷風トキソイドの過剰免疫によるアレルギーの可能性ですが、海外の臨床 試験においてはDTPワクチンとの併用あるいは混合接種の検討も行われており、臨床 試験の中では基本的には大きな問題は観察されておりません。また、市販後においても 破傷風トキソイドの過剰免疫は安全性上特に問題となっておりませんが、今後、国内の 特定使用成績調査の中で検討させていただく予定にしております。 ○池田部会長 よろしいでしょうか。先生方のお手元にお配りしました資料1-2の予診 票並びに「Hibワクチン接種をご希望の方へ」というインフォームド・コンセントの 説明書について、何か御意見はございますか。 ○守殿委員 添付文書の1ページにある「接種上の注意」の「2.重要な基本的注意」の 最後の言葉が「保護者へ説明することを考慮すること」となっているのですが、「考慮 すること」という表現の割には予診票の最初に「説明文を読みましたか」とありますの で、一致しない感じがします。考慮しなくてもいい場合があるのかという気がします。 そして、予診票の中では「説明文を読みましたか」という形になっておりまして、「説 明を受けましたか」とはなっていないので、微妙な違いがあるように思います。この辺 はこれから微調整されるかと思いますが、そのようなことを感じました。  それから、書き方の問題ですが、「Hibワクチン接種をご希望の方へ」の1ページ の下から2行目に「TSE(伝達性海綿状脳症)」と書いてありますが、下から3行目の 「TSE」に「(伝達性海綿状脳症)」を入れた方がいいのではないかと思います。 ○池田部会長 ありがとうございました。添付文書と「Hibワクチン接種をご希望の 方へ」、あるいは予診票を書いてもらうことについての整合性について、よろしいでし ょうか。 ○機構 御意見を踏まえて適切に修正させていただきたいと思います。 ○池田部会長 そのほかに何かございますでしょうか。神谷委員、どうぞ。 ○神谷委員 44ページの「申請者が計画した市販後臨床試験計画案の骨子」の接種群の ところで、本剤とDTaPの併用接種群はいいとして、DTaP単独接種群で終わりで すが、これであるとこの人たちはHibは打たないことになってしまいます。この後H ibを打ってもらわないと患者の方が不公平になると思うのですが、ここは大丈夫でし ょうか。 ○機構 それについては、承認された後、本剤は定期接種ではなくて、任意で希望者に 接種する形になりますので、本剤の早期な接種を希望しない方たちを単独接種群として 設定して、本剤の接種を希望する方はDTaPとの併用を行うことになるかと思います ので、その2群で非盲検で検討させていただく計画になっております。 ○池田部会長 よろしいでしょうか。 ○神谷委員 それは分かりますが、このワクチンは先ほどのように日本で600人ぐらい は必ずかかるということが基になっているので、機構からメーカーに一言、打ちたい人 でもこちらへ入る人も出てくると思いますから、そういう場合にはやってあげてほしい と言っていただいた方が、我々は臨床ではやりやすいのです。二つの群に分けて両方を 見ようというときには、後で打てるということがあった方がやりやすいので、できまし たらそういうことの要望だけでもしていただけると有り難いと思います。 ○生物系審査部長 かしこまりました。そのようにいたします。 ○池田部会長 ありがとうございました。リスク・ベネフィットについては、TSEの リスクも十分に議論されて、このワクチンの効果についてリスク・ベネフィットの観点 から必要であるということには御異存はないかと思います。今、幾つか重要な点をディ スカッションしていただいたのですが、そのほかに御議論はございますか。土屋委員、 どうぞ。 ○土屋委員 確認でございますが、名称類似については、これはワクチンであるという ことでフローチャートから避けるという形の解釈で構わないわけですね。 ○生物系審査部長 全然違う流通、若しくは使い方をするということですが、既存の名 称とのチェックもしました。これなら差し支えないであろうと判断いたしました。 ○池田部会長 もしそのほかに御異存がないようでしたら、本剤アクトヒブの承認及び 生物学的製剤基準の一部改正を可とさせていただきたいと思いますが、よろしいでしょ うか。ありがとうございました。  なお、先ほどお話がありましたように、本剤は新有効成分でありまして、既存の類薬 がありませんので、薬事分科会には上程して、審議することとさせていただきます。ま た、生物学的製剤基準の一部改正については、薬事分科会に報告とさせていただきます。  続いて、議題2に移ります。ファンガードでございます。機構から審査の概要の説明 をお願いします。 ○機構 議題2、資料2、医薬品ファンガード点滴用25mg他の製造販売承認事項一部変 更承認の可否、並びに、再審査期間の指定について、医薬品医療機器総合機構より御説 明申し上げます。  本剤の有効成分であるミカファンギンは、藤沢薬品工業株式会社(現アステラス製薬株 式会社)により開発された抗真菌薬でございます。本邦では2002年10月に、「アスペル ギルス属及びカンジダ属による真菌血症、呼吸器真菌症、消化管真菌症」を効能・効果 として承認され、また、2006年4月には小児に対する用法・用量の追加が承認されてお ります。  今回の申請は、「造血幹細胞移植患者におけるアスペルギルス症及びカンジダ症の予 防」の効能・効果を追加するものでございます。  本剤の専門委員といたしましては、資料9にあるとおり、折笠委員、後藤委員他2名 を指名し、御意見を賜りました。  今回の申請に際しては、国内臨床試験は実施されておらず、有効性及び安全性の評価 資料として、海外第III相試験成績1成績が提出されました。機構は提出された資料に基 づき、審査を行った結果、今般申請された効能・効果を対象とした国内臨床試験は実施 されていないものの、海外臨床試験成績より日本人造血幹細胞移植患者におけるアスペ ルギルス症及びカンジダ症の予防に対する本剤の有効性は期待できると判断しました。  安全性については、国内外における市販後調査成績や海外臨床試験成績より、特段の 問題点は検出されていないものの、既承認効能・効果に比較し、今般申請された効能・ 効果では投与期間が長くなることが予測されることから、長期投与における安全性を中 心とした情報収集が必要であり、製造販売後調査を実施する必要があると考えておりま す。なお、この点については、申請者の合意を得ており、お手元にございます資料の市 販後調査計画書(案)にございます。  また、今回の審査中に本剤の初回申請時に審査チームより実施を求められました毒性 試験の結果が得られまして、肝臓の変異細胞巣の一部が腫瘍に進展することが確認され ました。この点について十分な情報提供を実施するとともに、漫然とした使用をしない よう更なる注意喚起を実施する必要があると機構は考え、添付文書の一部改訂を行って おります。  機構は、以上のような審査の結果、提出された資料から、本剤の有効性・安全性は確 認できたと判断し、申請された効能・効果を追加承認して差し支えないと判断いたしま した。なお、再審査期間は4年とすることが適切であると判断いたしております。薬事 分科会には報告を予定いたしております。よろしく御審議のほど、お願い申し上げます。 ○池田部会長 ありがとうございました。ファンガード、ミカファンギンですが、造血 幹細胞移植患者におけるアスペルギルス症あるいはカンジダ症の予防ということで、1 日1回50mgの投与をするものです。米国で行われた臨床試験を基に審査がされたという ことですが、いかがでしょうか。後藤委員、どうぞ。 ○後藤委員 専門協議に参加しましたので、その状況をお伝えします。先ほどお話がご ざいましたように、これは国内成績がないということで、アメリカとカナダで行われま したフルコナゾールとの二重盲検比較試験のデータを外挿可能かどうかに関しての問題 が一つございます。これに関しては、本剤の体内動態、一方、対象となる真菌の分布、 あるいは薬剤感受性において、海外と本邦にそれほど大きな差異はないであろうという ことで、海外の成績に関して外挿することは可能であろうと専門協議では議論されてお ります。  安全性に関しては、かなり長期間に使われるということで、現在我々が使っておりま すミカファンギンの臨床での使用状況とは変わってくるところがあるであろうというこ とと、小児における肝機能障害がある程度の比率で出るということもあるし、新しく肝 変異細胞巣の腫瘍化ということもデータからは出されているようですので、その辺も含 めて今後かなり慎重に検討していく必要があるであろうということです。  効能・効果に関しては、米国などではカンジダ症に対する効能・効果ということで認 められているわけですが、本邦でのデータでもアスペルギルス症に対する有効性は認め られるということと、造血幹細胞移植後の感染症においてアスペルギルス症はこれから 問題になる菌種であるということ、それから、実際にアメリカで行われた試験において も、アスペルギルス症が発症した症例に関しては本剤使用群の方が少ないというデータ もあるので、可能性として十分アスペルギルスに対する有効性は期待できるであろうと いうことで、アスペルギルスを効能に含めることはよろしいのではないかということで す。  用法・用量に関しても議論がありましたが、50mgというのは、現在治療量として認め られている薬剤の下限ですし、アメリカで実際に使われている用量でもありますので、 この用量で特に大きな問題はないのではないかということがございました。  いずれにしても、これらのデータに関してはすべて米国あるいはカナダの成績に基づ いており、我が国での成績がないということで、今日、新しいものが出ているようです が、その辺を含めて市販後の調査を十分にやっていただきたいということです。以上で す。 ○池田部会長 ありがとうございました。後藤委員から専門協議の状況を御説明いただ いたのですが、それも踏まえて、委員の先生方から御意見を伺いたいと思います。いか がでしょうか。川嵜委員、どうぞ。 ○川嵜委員 予防というのは、一般的にはそういうことが起こり得る可能性があるとき にこういうものを使われるということであると思うのですが、こういう状況のときには こういう予防措置を採らなければいけないなどということが、何らかの他の環境条件か ら考えられてこういうものを使うということなのでしょうか。素人の疑問ですが、どの ような利用方法が考えられるかということなのですが。 ○機構 機構より御返答を申し上げます。造血幹細胞移植の患者等においては、免疫抑 制を掛けて、好中球数が著しく減ったような状況になられていらっしゃいます。そのよ うなときには真菌のみならず細菌の感染症に対するリスクが上がっており、IDSA(ア メリカ感染症学会)のガイドラインや国内のガイドライン、指針等においても予防的に使 用することが推奨されております。また、診療の現場においても、この適応を持ってい るものはありませんが、実態として使用されているという情報はこちらで把握しており ます。 ○川嵜委員 そうしますと、免疫抑制剤を使えば、同時にこういうものも使うというこ となのですか。 ○機構 免疫抑制剤を使ったから即使い出すということではありません。では、どうい う状況に使うのがよろしいかという点については、私どもも専門委員の先生方の御意見 も踏まえた上で議論しました。その結果、添付文書(案)の2ページの左上に枠囲みの欄 がありますが、そちらに「好中球数が500個/mm3以上に回復するなど」という形で大体 の目安を記載し、そのような患者に使っていただくことが適切であろうと考えています。 したがって、免疫抑制剤を使い始めたからすぐ使い出すということではなく、国内外の 成書、ガイドライン等を見ても、これを基準に使っていただくのが適切なラインではな いかと考えております。 ○池田部会長 よろしいですか。飯沼委員、どうぞ。 ○飯沼委員 これが保険に通った場合は、健康保険では予防投薬はできないのです。感 染症のエビデンスがどこかにないと駄目なので、不明熱か何かを付けないと保険上は通 りません。今の制度のままで行きますと、予防投薬はできないというひもが付いていま す。一番最近の例では、フィリピンから帰ってきた人が2人狂犬病になりました。あれ は、途中で狂犬病のワクチンを使えば恐らく助かっているわけです。ところが、ああい う人をどうするかという議論が必ず出てくるわけです。健康保険上の問題と薬の問題と は少し違うのです。健康保険は技術的に何か請求しないといけないということはあって はならないのですが、そういう裏があるというお話だけしておきます。 ○池田部会長 よろしいですか。そのほかにございますか。堀内委員、どうぞ。 ○堀内部会長代理 今の点は大事なことですが、薬価は付けるのですか。薬価算定をし ても使いにくいと思いますが。保険適用にならないのでしょうか。 ○審査管理課長 保険の問題でございますので、保険局に正式に聞かないとなかなかお 答えできないわけですが、これは効能追加ですから、もう根本が保険適用になっている と考えております。今、飯沼委員から御指摘のあったように、この予防の効能の部分に ついてどうするかという話は、保険局の判断になるものと考えております。 ○堀内部会長代理 もう一つよろしいですか。これは日本人では全く治験が行われてい ないわけですが、感染症に関しての適応症の追加については、海外でデータがあれば適 応追加になる例証になってしまいますが、そう考えてよろしいでしょうか。 ○機構 機構といたしましては、感染症についてはという大枠なとらえ方ではございま せんで、今回、海外のデータを外挿するに当たりましても、先ほど後藤委員も御説明く ださいましたように、起炎菌として上がってきている菌の分布が同じか違うかの確認、 菌種として同じであっても、感受性分布が大きく異なるものでないかどうか、薬物動態 が同じか違うか、また、医療の環境についても、本剤の薬効性評価に大きな影響を与え るような違いがないかどうかと、種々の項目について詳細に検討を行った結果、海外の データが外挿可能であると判断いたしております。したがって、感染症であれば即海外 データをそのまま外挿できるということではないと私どもは考えております。 ○堀内部会長代理 菌種もグローバルになっておりますし、基本的にはそれほど大きな 違いは起こらないであろうと思います。したがって、検討はすべきと思いますが、治験 がなくても、菌種の問題と体内動態に違いはほとんど出てこないのではないかと思いま す。 ○審査第一部長 新規申請の場合なのか、一変なのかという場合によっても違うと思い ます。 ○堀内部会長代理 追加する際の話をしています。 ○審査第一部長 今回の場合には一変ということで、効能追加ではありますが、海外の データが日本人のデータとして外挿できるかについては、我々としては、作業をやらず して、海外のデータだけで、それがあるからといって承認する考えは今のところはあり ません。やはりその作業は必要であると考えております。 ○審議役 付け加えますが、このもの自身はもともと国内で開発された薬で、世界で一 番日本人のデータが取れているということが背景にまずあります。日本国内における市 販後のデータ収集等をこれまでずっと積み重ねてきている中で、追加効能について、海 外で条件が整っていて、やりやすいところでデータを作ってきたという経緯があります。 このもの自身についてそれほど豊富かどうかというのはまだ論議がありますが、少なく とも日本人でのデータが一番そろっている状態です。この上で追加効能を考えようと評 価を始めていますので、一般的に効能追加するのであったら海外データは何でもオーケ ーですよという話をこれでやろうと思っているわけでは決してないと思います。  造血幹細胞移植は日本でも随分やられているのですが、そうは言っても、移植医療の 中でこのような薬剤の治験を日本で行うのは極めて困難であるというのが現状で、日本 で同じ適応について現実に意味のある臨床試験を行えるかどうかということも、そもそ もの話としてはあります。ですから、そうした状況を勘案した上で今回の審査を行った ということです。 ○堀内部会長代理 私はいけないと言っているわけではなくて、逆にこういうものにつ いては進めたらいかがですかと言っているのです。基本は同じであると思うのです。菌 種によって決まるということですので、どこで治験をやろうと同じことになるのではな いかということを申し上げたかったのです。 ○審査第一部長 今後の開発でいろいろな品目が出てくると思いますので、治験相談等 でも、先生のお考え方を入れながら、いろいろな開発の方向ができるかどうかを、我々 としても指導助言していきたいと思います。どうもありがとうございました。 ○池田部会長 そのほかにいかがですか。これは、移植患者であれば大体免疫不全ある いは好中球減少があるので、一般的に移植患者であればいいという考え方なのですが、 500が一つのラインで、500以上になったらそろそろやめてもいいのではないかという考 えであると思うのです。  御承知のように、自家の造血幹細胞移植は10日ぐらいで500になってしまうのですが、 アメリカの試験は自家と同種と一緒になってスタディしていて、データを見ると、自家 のデータと同種のデータでどう違うのかがよく見えないのです。やはり自家でも必要な のですか。ややこしいことを言うと混乱させるばかりでよくないのかもしれませんが、 自家でも長くなることはあるので、やって悪いことはないと思いますが。 ○機構 私どもも自家と同種では少し傾向が違うのではないかということで、解析等も 分けた解析等、審査報告書の25ページの下段の表から分析した結果なども検討いたしま した。池田先生が今おっしゃられた点ももちろん検討すべき点と思いましたが、自家の 人をこの薬剤の適応症から外す必要があるか、外すだけの根拠があるかという角度から 考えた場合、ほかの移植のタイプの患者に比べればその必要性が低いかもしれませんが、 外すだけのエビデンスはないであろうと考えまして、あえて外す形は取りませんでした。  ただ、今後、医療環境等が変わったり、この薬のデータ等が取られていく中で、適切 な扱い方については情報収集し、それをまた医療現場にフィードバックするように申請 者の方にも指導したいと考えております。 ○池田部会長 真菌薬といっても、むやみに使っていればまた大きな問題が出てくる可 能性はあるので、なるべく少ない期間でやめられるものはやめるという基本を守ってい ただいた方がいいのではないかと思います。私の個人的な意見ですが、500以上になっ たらなるべく早くやめてしまうというところを徹底していただいた方がいいかと思いま す。  そのほかにいかがでしょうか。先ほどお話があったように、これは日本で造った薬な ので、本当は日本でこのスタディをやらなければいけないのです。それが海外で数年前 にやられているということ自体がおかしな話なのですが、よろしいでしょうか。特に御 意見がございませんでしたら、ファンガードの件に関しても承認を可として、薬事分科 会への報告とさせていただきます。ありがとうございました。  それでは、議題3に移ります。機構から審査の概要の説明をお願いいたします。 ○機構 議題3、資料3、アリムタ注射用500mgの製造販売承認、及び、医薬品ランダ 注、ブリプラチン注、プラトシン注10、同25、同50、シスプラチン注「マルコ」、シ スプラメルク注射液0.05%、シスプラチン注10mg「日医工」、同25mg「日医工」、及 び、同50mg「日医工」の製造販売承認事項一部変更承認の可否等について、医薬品医療 機器総合機構より説明させていだきます。  アリムタ注射用500mgの有効成分であるペメトレキセドナトリウム水和物は、葉酸代 謝拮抗剤に分類される抗悪性腫瘍薬です。  悪性胸膜中皮腫は、発症にアスベストの暴露が関与するとされている疾患です。悪性 胸膜中皮腫による死亡者数は年々増加傾向にあり2004年の年間死亡者数は833人とさ れ、今後2030年頃まで継続的に死亡者数が増加すると予想されております。  悪性胸膜中皮腫は、胸膜表面を覆う中皮や、その下の結合組織の未分化な間葉細胞に 由来し、多くの場合肺を覆う胸膜に沿って進展いたします。したがって、早期発見は困 難であり、診断された時点では既に手術や放射線による治療適応がないことが多く、極 めて予後不良であります。全身化学療法としては、現在までにプラチナ製剤等が使用さ れてきましたが、十分な治療とは言えず、有効な抗悪性腫瘍薬の開発が望まれておりま す。  ペメトレキセド及びシスプラチンは、悪性胸膜中皮腫に対して効果を示す薬剤として、 申請されました。なお、両薬剤は、優先審査及び迅速処理の対象とされ、厚生労働省の 「未承認薬使用問題検討会」においても「早急に検討しなければならない抗がん剤」と して報告されています。海外においてはペメトレキセドとシスプラチンとの併用は悪性 胸膜中皮腫を適応として米国、欧州等72か国で承認されております。  本品目の専門協議に御参加くださいました専門委員は、資料9にございますとおり、 11名の委員です。  品質、毒性、薬理、ADMEについて大きな問題は認められませんでした。臨床試験 成績としては、国内2試験及び海外3試験の成績が提出されました。  有効性については、海外で実施された比較臨床試験において、ペメトレキセドとシス プラチンの併用投与群は、シスプラチン単剤投与群と比較して生存期間が有意に延長し、 また国内臨床試験において36.8%の奏効率、19例中7例のPRの症例が示されたことか ら、機構は、ペメトレキセドとシスプラチンの併用療法の有効性は認められると判断し ました。  安全性については、骨髄抑制、消化管障害、発疹が主な重篤な副作用であり、また、 国内では間質性肺障害が海外と比して高い頻度で発現する可能性が示唆されておりま す。機構は、これらの副作用については専門医による慎重な観察と適切な対応により対 応可能と判断しておりますが、国内におけるペメトレキセドとシスプラチンの併用投与 における検討症例数は少数であり、日本人に特異的な有害事象の発現や、海外と比較し て高頻度又は重篤な有害事象の発現の可能性について、十分慎重な安全対策を講じる必 要性があると判断しております。  したがいまして、機構は、製造販売後の一定期間は全例調査によって薬剤管理を強化 し、重篤な有害事象の収集及び迅速な情報提供を行うことが必要と判断し、申請者に指 示を行っております。また、患者を入院又は入院環境に準じた環境下に置き、慎重な観 察を行うことや、適正使用ガイド等の作成を申請者に指示し、医療機関に対してペメト レキセドとシスプラチンの併用療法を実施する際の具体的な留意点について情報提供を 行うよう指示いたしました。なお、適正使用ガイドの案は、まだ初期の案の段階ではご ざいますが、資料3-3として本日御参考までにお手元に配付させていただいております。  以上の審査の結果、機構は、悪性胸膜中皮腫の適応について、ペメトレキセド及びシ スプラチン製剤を承認することは可能と判断しております。ペメトレキセドについては、 新有効成分含有医薬品であり、再審査期間を6年とすることが適当であり、原体及び製 剤は劇薬に該当すると判断しました。また、生物由来製品及び特定生物由来製品には該 当しないと判断しました。  シスプラチン製剤については、新効能医薬品でありますが、既に国内で多くの使用実 績があること、申請用量は既承認用量の範囲内であること、ペメトレキセドとシスプラ チン製剤の併用療法について全例調査が実施される予定であり、当該調査の中でペメト レキセドと併用されるシスプラチン製剤に関する安全性情報の収集が担保されることか ら、再審査期間を設定する必要はないと判断しました。御審議のほど、よろしくお願い いたします。 ○池田部会長 ありがとうございました。悪性胸膜中皮腫についてのペメトレキセドと シスプラチンの併用療法ということでございますが、委員の先生方から御意見を伺いた いと思います。いかがでしょうか。 ○堀内部会長代理 これを承認すること自体には賛成ですが、用法・用量が具体的に書 かれておりませんし、添付文書も同様ですので、記載すべきだと思います。シスプラチ ンと併用ということですが、シスプラチンとの併用においてペメトレキセドとして500 mg/平方メートルを点滴するということで、シスプラチンとの併用法について具体的な記載はありま せん。今日お配りいただいたパンフレットにはかなり詳しく書いてありますが、このパ ンフレットを常に投与する人が持っているわけではありませんので、公文書としての添 付文書にきちんとした使い方を書くべきではないかと思います。アメリカの添付文書を 見ましてもきちんと書かれています。現場での実際上の投与の仕方が「併用」というこ とだけですと極めて漠然としておりますので、表現をきちんとしていただければと思い ます。 ○池田部会長 ありがとうございました。使用ガイドの方にはかなり具体的に書かれて いるということですが、それについて何かございますか。 ○機構 シスプラチンの用法・用量についての記載がないという御指摘でしょうか。 ○堀内部会長代理 それから、投与の仕方です。アリムタを投与した後、30分後に投与 するという形になっていますが、その辺の記載がないのですが。 ○機構 シスプラチンについてはペメトレキセドの添付文書には書きづらいということ もありまして、シスプラチンの添付文書で記載をさせていただいております。確かに、 これ以外にも葉酸やビタミンB12の投与もあったりして投与方法がややこしいところが ありますので、本日お配りした使用ガイドを必ず使用者に配って、こういった投与レジ メンが一目で分かるようなやり方をするようにと指示を行っておりますが、よろしいで しょうか。 ○堀内部会長代理 使用ガイドというのは、1回配られると、その後、使用する人すべ てに行くかどうかは必ずしも保証されていないわけです。添付文書は必ず箱の中に入っ ていますので、やはり添付文書に書く必要があると思います。米国でもヨーロッパでも 添付文書にきちんと記載されていますが、日本ではどうして記載されないのですか。  もう一つは、アリムタはシスプラチンとの併用だけで使用が認められるという議論を やっているわけですから、当然、シスプラチンとの関係をきちんと書いておくことが必 要ではないかと思います。 ○機構 補足でございます。効能・効果、用法・用量などは記載の限界もあると思いま すが、「用法・用量に関連する使用上の注意」にはシスプラチンとの関係、投与後30 分というような内容を記載しております。それにつきましても表面上、イメージ的には 言葉がございますので、補足の資料という形で作るように、今、会社に指示をしていま す。当然、米国、ヨーロッパの添付文書等に関しても精査して、必要な事項に関しては 書く必要があろうという判断をしております。 ○池田部会長 土屋委員、どうぞ。 ○土屋委員 私もそのことが気になっていました。例えば、「重要な基本的注意」で「本 剤とシスプラチンの併用療法を行う際には」という書き方をしているということは、行 わない場合も認めているという解釈にもとれるわけです。今回は少なくとも併用で認め るという形での申請であるならば、そこのところをきちんと書かないといけない。添付 文書の中で、「重要な基本的注意」のところに「行う際には」という表現を使って、「用 法・用量」のところできちんと併用ということが書かれていないのが気になったのです。 ○審査第一部長 その前の「用法・用量に関連する使用上の注意」の中で、「本剤は、 シスプラチンとの併用で使用すること。本剤を単独で使用した場合の有効性及び安全性 は確立していない。」と書いてございます。それから、アリムタ側にシスプラチンの用 法・用量に関して具体的に書きづらいところもありますので、この中で「シスプラチン の添付文書に従い」ということを明記し、それも熟読していただくようにということで、 シスプラチン側でも手当をしたいと思います。  ただ、ガイド自体が必ずしも一体化しないのではないかとか、もう少し適切な情報提 供があるべきではないかという先生方の御指摘もありますので、微細のところについて は申請者との間で今後詰めたいと思いますが、それでよろしいでしょうか。 ○土屋委員 「用法・用量に関連する使用上の注意」の2番に「本剤は、シスプラチン との併用で使用すること」を挙げて、これはそういうことなのだということと、「重要 な基本的注意」で「併用療法を行う際には」と書いていて、シスプラチンと併用で行う 際であるからいいのだとは言うものの、「併用療法を行う際には」など、変に取ると変 に取れてしまう可能性が残ると思うのです。 ○審査第一部長 この辺の表現については、順番を含めて、我々としてもかなり慎重に 検討しております。申請者側も、その裏読みをされないかという懸念は大分持っており ますので、その部分については、今日の御意見を踏まえて、より誤解のない表現、ある いはより情報提供として適切なものは何かということを今後詰めさせていただければと 思います。 ○池田部会長 堀内委員、どうぞ。 ○堀内部会長代理 添付文書の9ページに書いてあるということですが、これは外国臨 床試験の話として書いてあるわけです。外国で書いてあることがどうして日本の添付文 書で書けないのかがまだ分からないのです。外国の添付文書では投与の仕方が細かく書 いてあります。終了してから30分後にシスプラチンを投与するということまで書いてあ ります。 ○機構 その点については「用法・用量に関連する使用上の注意」の2番になります。 我々としては、頭から読んでいくという整理で、順番等も含めて考えております。なお 書ですが、「シスプラチンは本剤投与30分後に投与すること」と、必要な事項としては 記載しているところです。 ○審査第一部長 今の部分についても、そのまま明記すればいいのではないかという御 指摘が多分次に来ると思いますが、その辺については、微細に書けるかどうかを検討さ せていただければと思います。それから、順番としてこれは1番目ではないかという土 屋委員の話ですが、重大な副作用の発現を軽減することを我々は第一と考えまして、葉 酸、ビタミンの投与を1番目に書いたという経緯もあります。 ○土屋委員 正しく投与した後で重篤な副作用の発現を防ぐと通常は思うものですか ら、そういう方がいいということと、細かい話ですが、使用ガイドを製薬会社が作ると きには、「溶解・調整」の「調整」の字をこのような字で書かないようにしてください とお伝えいただければと思います。 ○審査第一部長 これはたたき台のたたき台というだけで、口頭だけで御説明するのは 難しいということで今日はこういう形で御用意させていただきましたので、その辺の誤 字、脱字については御容赦いただければと思います。 ○堀内部会長代理 もう一つ、これも添付文書の書き方の問題です。「注射液の調製法」 で「本剤1バイアルに日局生理食塩液20mLを注入して十分に溶解する」という表現にな っていますが、これはカルシウムがありますと白濁しますので、カルシウムと併用禁忌 ですよね。やはり理由をきちんと書くことが大事であると思います。なぜかということ が分からなくて、ただ言われたとおりにやればいいというのは妥当ではないので、理由 をきちんと入れてほしい。ほかのところもそうですが、できるだけ添付文書には一言で も理由をきちんと入れていただきたいと思います。 ○池田部会長 そのほかにはいかがでしょうか。飯沼委員、どうぞ。 ○飯沼委員 シスプラチンの話になりますが、これはアリムタと、ここに書いてあるす べての薬の治験をやられたのですか。それで、結果が全部同じになった。シスプラチン は会社によって違いますよね。参考のためにお聞きしたいのですが、私の担当にジェネ リックもあるのです。ここにはジェネリック会社のものもあります。経口薬などはかな り違うので、注射薬は組み合わせたときに同じ答えが出るのかということなのですが。 ○池田部会長 それについてはいかがですか。 ○審査管理課長 経口薬の場合に、特に錠剤ですと、錠剤として服用して、胃、小腸で 溶解していって、そこから吸収されていくのが普通のケースであると思います。そうい うときに、溶解の問題、あるいはそれを反映した吸収の問題などは、製剤間に差がある とかないという状況が生まれやすいと指摘されているのであろうと思います。一方、静 脈内注射の場合を考えますと、強制的に静脈に注射するという問題ですから、そのよう な吸収の問題は基本的にないと整理されていると思っております。  したがいまして、あと残るものは、薬物への反応性の問題であろうと思います。反応 性の問題は、個人差の問題と、同一の化合物であれば個人差があるにしても同一の個人 差を反映して反応を示していくのであろうということから、我が国においても、FDA においても、静脈内注射において同等性の問題が議論されているような状況にはないと 考えているところです。 ○飯沼委員 一つずつはやっていないということですね。 ○審査管理課長 そのとおりであると思います。 ○池田部会長 吉田委員、何か御意見はございますか。 ○吉田委員 私は未承認の方の委員をやっておりますし、悪性胸膜中皮腫は今非常に問 題になっておりますし、早期承認に全く異議を挟むものではないのですが、一つ、葉酸 のレスキューの話はどうなったのか。多少コントラバーシャルがあって今回必須とされ まして、必須とした根拠は書いてあるので分かりますが、明確なものではないと思うの です。日本ではやらないよりやった方がいいという考え方であったのか、それともかな り明確なビジョンがあったのか、その辺をお知らせいただければと思います。 ○機構 葉酸及びビタミンB12の補充ですが、こちらはメソトレキセートのときにロイ コボリンレスキューするようなものではなくて、血中ホモシステイン濃度を一定値以下 に抑制するということで、あらかじめ投与しておいてペメトレキセドとシスプラチンを 投与するということですので、レスキューとは少し違う使い方で、全例にお願いすると いうことで結論を付けています。 ○吉田委員 今、グローバルでその考え方ですか。 ○機構 さようでございます。 ○池田部会長 そのほかにはいかがでしょうか。どうぞ、上原委員。 ○上原委員 非臨床の試験結果についてお伺いいたします。28〜29ページ辺りに書かれ ていますが、中皮腫の治療薬と言いながら、ヌードマウスでの評価においては中皮腫で は結果が得られなかった。1株しか試験ができていなかったようですが、これについて、 理由は分からないが、毒性が出たためにデータが出ていないと書かれています。これに ついて、機構側は最終的にどのような判断をされたのかをお伺いしたいと思います。 ○審査第一部長 この問題に関しては、先生から御指摘いただきましたように、1種類 しかなかったことは事実です。何種類もあるような領域のがん種ではないということが 一つありまして、実施してきて、結果として効果が得られなかったということは結論と してあります。しかし、コンディションの問題も含めて、インビトロでの更なる検討の 要求はできるのですが、結果をもって、最終的な判断として臨床的な使用に関しての関 係を妨げるものではないという判断をしております。 ○上原委員 治療効果が得られなかったということであればそういう理解でいいと思い ますが、これは毒性が出ているのですよね。毒性の原因について、生検などで詳細な検 討はなされたのでしょうか。 ○審査第一部長 生検まではやっていないという結果です。メカニズムに関しても分か らないというのが現状です。 ○上原委員 ほかのがん種ではきちんと効いていますので、それで問題はないと思いま すが、中皮腫という性質のがん細胞が特異的に何かを出して、それとこの化合物が反応 したためにマウスで毒性が出たというようなことがヒトでも起こり得る可能性はゼロで はないという心配がありましたので、その辺はもう少し慎重に考えて、今後、精査して いただくのが妥当ではないかと思いました。これに関連してですが、こういう実例がほ かの薬剤でもしあったら教えてください。 ○審査第一部長 少なくとも私の記憶の範囲内では、これと同じような例はありません。 それから、上原委員が言われましたように、ほかにもいろいろヒトでの有害事象などが 出ておりますので、最終的に我々としてはリスク・アンド・ベネフィットの観点から、 この薬は悪性胸膜中皮腫に対する世界で唯一の治療薬であるということ、それから生存 期間が延長されたというエビデンスが海外第III相試験であるということがありますの で、動物での非臨床試験でその事象が出た原因を今後追求してくださいと申請者に伝え ることはできるかと思いますが、それがないとこれが承認されないということは我々は 考えられません。  それから、市販後でもまだ限られたデータというところがありますので、市販後にお ける調査、安全対策を十分採ることを根底に、承認しても差し支えないのではないかと 我々は判断いたしました。 ○上原委員 私もそこまでは要求していませんので、これで結構であると思います。た だ、これから新しい抗がん剤の開発の過程で非臨床試験のデータは非常に重要であると 思いますし、こういうことがあったということについては、もう少し慎重に考えるとい うことでお願いしたいと思います。 ○池田部会長 貴重な御意見をありがとうございました。どうぞ、吉田委員。 ○吉田委員 適応症ですが、悪性中皮腫ではなくて悪性胸膜中皮腫となっています。こ れは治験に入った患者が胸膜の患者であったからと思いますが、まれながら腹膜中皮腫 もあります。中皮腫に関してはアリムタが唯一の有効薬剤であると出た場合、臨床はか なり混乱するかもしれません。腹膜中皮腫ですと症例数が少ないので、一変の臨床試験 もなかなか難しいということもあるとは思うのですが、悪性中皮腫という概念では承認 のあれにはならないということでしょうか。 ○池田部会長 いかがでしょうか。 ○機構 エビデンスベースで行きますと悪性胸膜中皮腫。それから、今のところ承認さ れている各国は、我が国と同じ程度の審査レベルを持つ国でも悪性胸膜中皮腫となって おります。 ○吉田委員 mesotheliomaだけではなくてpleuralも入るのですか。 ○機構 少なくともエビデンスベースでは、今のところ胸膜中皮腫に対してのエビデン スだけがあるということになるかと思います。 ○池田部会長 よろしいでしょうか。どうぞ、後藤委員。 ○後藤委員 審査報告書の116ページの記載に関して質問します。流通管理に関して、 全例調査期間が終了するまでは下記の三条件を設定している病院に限って納入するとい うことで、「申請者が設置する第三者の医師からなる検討委員会で選定された施設であ ること」うんぬんとありますが、この薬剤が承認された後、会社側が認めた施設以外で 使えないということが現実に起こり得るのかどうかを確認させてください。 ○機構 お答えから申しますと、起こり得るということになります。がん化学療法の実 際の経験を持たれている医師、あるいは薬剤師、看護師といったスタッフも必要である というところで、少なくとも117ページに書いてある条件を満たした施設に当面は限定 して実施していくということで申請者は考えております。 ○後藤委員 この添付文書の書き方で、これだけ社会問題化して、多くの患者がいて、 そして、この薬剤が有効な薬剤ということで出た場合、学会が認定した施設という形で はなくて、製薬会社が認定した施設という形の縛りが、一般的な国民の納得を得られる かどうかというと、少し心配ですが。 ○機構 その点については、私ども及び専門委員の先生方からもいろいろ御指摘があり ました。お答えになるかどうかは分かりませんが、実際に今この条件を満たすと考えて いる施設はどこかということで、本日はお手元にはお配りしていませんが、病院のリス ト一覧を事前に確認しております。その結果、それがベストかという判断は難しいとこ ろですが、全国各都道府県にかなりの数の医療施設が登録されていることは確認してお ります。都道府県別の施設の分布なども確認しまして、その患者アクセスが著しくある 地域ではできないなどといったことはなさそうだというところまでは確認している状況 です。 ○審査第一部長 決して安全性が高い薬ではないということもありますので、承認後、 実際に市場で使う場合には、まずは条件を満たして慎重に使うということを我々として は考えたいと思っています。  それから、先ほど後藤委員が言われたように、アクセスの問題については審査報告書 の117ページに、アクセスのしやすさ、しにくさと、患者が十分な医療を受けられるか どうかについてレビューしております。これは申請者側の回答ではありますが、将来の 患者の増加などを考えても、各都道府県に少なくとも1施設は存在する等を考えますと、 アクセスについては当面は確保されているのではないかと思います。  今後、いろいろな安全性の情報が完備され、把握されてきて、ここまでの縛りをする 必要がないという段階になれば、ここの部分は改定することも可能かと思いますが、ま ず第一としては、この部分については安全性の慎重という観点から我々はこういう対策 を考えました。 ○後藤委員 それは非常によく分かりますが、申し上げたかったのは、そういう形で施 設がある程度認定されていくところにあって、認定された以上は国民が共有して使える という形になるわけですから、それを一つの企業の決定にゆだねていいのか、あるいは もう少しオーソライズされたプロセスが必要なのかどうかを確認したかったのです。 ○審査第一部長 この場合に認定という言葉が適切かどうか分かりませんが、選定基準 を満たしたところを納入先として決定するということでして、何々認定という形で対外 的に箔付けをするつもりは今のところありません。 ○吉田委員 今の点で、一民間企業がというのは確かに問題です。少なくとも本省なり 何なりが何か評価しているということでないと難しいかもしれません。某公共放送もこ の手の中皮腫に関して番組を作っているようですし、市販された、またこういう使い方 をしているということになってくると社会問題化するかもしれないので、イレッサの教 訓があって、厚生労働省としてはこういう方針で、こういう手続で、有害事象が明確に なるまで制限して使うということをプレスなどを通じて国民に知らせた方がいいのでは ないかと思います。 ○審査管理課長 いろいろ御示唆ありがとうございます。このものの承認に当たりまし て、吉田委員から御指摘のありました国民への情報提供と、使用に当たる制限と申しま すか、十分な知識と経験があるところで使ってほしい、少なくとも当分の間は厳重な管 理下で使ってほしいということも含めて公表したいと思っております。  また、先ほどから御議論のあります、企業がドクターの力を借りながら納入制限のよ うなものをすることが適切なのかどうかという点ですが、先生方の御懸念は私も理解す るところです。他方、このものの安全性に最終的に責任を持つのが企業であるのも間違 いないであろうと考えております。仮に、先生方から見て、あるいは学会から見て、企 業が納入制限的なところで正しくない、おかしいことをやっているようなことがあれば、 我々はいつでも注意をしたいと考えております。  このようなことを真っ向からやり始めるのは新しい経験なのかもしれませんが、先生 方には是非ウオッチしていただいて、何かあればすぐおっしゃっていただければ有難い と考えているところです。よろしくお願いいたします。 ○池田部会長 非常に注目されているお薬ですので、これの使い方について、あるいは 安全性の確保、有効に患者を治すような仕組みづくりも含めて考えていただきたいと思 います。特に、本剤はシスプラチンとの併用で使われるということですので、それを踏 まえて、分かりやすい格好で添付文書等を書いてほしいという先生方の御意見ですので、 その辺はよろしく御検討いただきたいと思います。  そのほかに何かございますか。なければ、アリムタに関しても承認を可として、薬事 分科会への報告とさせていただきます。ありがとうございました。  それでは、議題4に移ります。ドキシル注の製造販売承認の可否等について、機構か ら審査の概要の説明をお願いいたします。 ○機構 議題4、資料4、医薬品ドキシル注20mgの生物由来製品又は特定生物由来製品 の指定の要否、輸入承認の可否、再審査期間の指定、並びに、毒薬及び劇薬の指定の要 否について、医薬品医療機器総合機構より御説明申し上げます。  本剤は、ドキソルビシン塩酸塩をSTEALTHリポソームに封入した静脈内投与注射剤で あり、既存のドキソルビシン製剤に比べ、ドキソルビシンの腫瘍組織内滞留時間を延長 させ、腫瘍組織内濃度を高めることにより有効性を高めた製剤でございます。また、同 時に、血漿中の遊離ドキソルビシン濃度を抑制することにより骨髄抑制、脱毛、心毒性 などの有害反応を低減させることも目的としております。  米国においては、本剤は1994年9月に「併用療法による前治療で増悪、若しくは当該 治療に忍容不能であったエイズ関連カポジ肉腫」を効能・効果といたしましてFDAに 承認申請を行い、迅速審査として1995年11月に承認されております。  本剤の専門委員といたしましては、資料9にございますとおり、折笠委員他10名を指 名し、御意見を賜りました。  本剤の申請に際しては、米国申請資料が提出されております。また、本剤は国内にお いて卵巣がんを効能・効果とする開発が実施中でございますことから、一部、この卵巣 がんを対象とした国内臨床試験成績も併せて評価を行いました。機構は、これらの資料 について審査を行いました結果、海外臨床試験成績より日本人におけるエイズ関連カポ ジ肉腫に対する本剤の有効性・安全性は期待できると判断いたしました。  なお、効能・効果については、米国では、提出された臨床試験成績が前治療無効若し くは不耐容患者となっていたことから、これらの患者に限定した効能・効果となってお りましたが、AIDS-KS患者における抗がん剤全身化学療法の標準療法であったABV療 法及びBV療法を対照とした比較臨床試験成績が提出されまして、これらの既存の治療 方法と同等以上の有効性と忍容性が確認されましたことから、前治療無効若しくは不耐 容に限定することなく、本邦においてはエイズ関連カポジ肉腫を本剤の効能・効果とす ることが適切であると考えております。  なお、本邦におけるエイズ関連カポジ肉腫を対象とした臨床試験は実施されておらず、 また、文献報告等における使用実績も著しく少ないことから、製造販売後において日本 人における本剤の有効性・安全性に関する情報を早期に収集することは必須であると機 構は考えております。したがいまして、国内においては可能な限り全例を対象とした製 造販売後調査を実施するよう申請者に求めており、申請者もその実施を了承しておりま す。  以上の審査の結果、本剤の有効性・安全性は確認できたと判断し、審査報告書の3ペ ージにございますとおり承認条件を付帯した上で、本剤を承認して差し支えないと機構 は判断いたしました。なお、再審査期間は10年とすることが妥当であると判断いたして おります。また、原体は毒薬、製剤は劇薬に該当し、生物由来製品又は特定生物由来製 品には該当しないと判断いたしております。薬事分科会には報告を予定しております。 よろしく御審議のほど、お願い申し上げます。 ○池田部会長 ありがとうございました。ドキソルビシンを含むリポソーム注射薬でご ざいますが、エイズ関連カポジ肉腫を効能・効果として承認してほしいということです。 先生方、御意見いただけますでしょうか。 ○堀内部会長代理 全症例追跡調査ということですが、承認条件として「一定数の症例 に係るデータが蓄積されるまで」という言葉が入っています。これはどう解釈したらよ ろしいのでしょうか。  この前ボルテゾミブを承認しましたが、それにも同様な文書が入っています。新規の メカニズムの抗がん薬ですので、メーカーは発売するに当たって説明会等をやります。 最初は500症例についてやるという話を持ってきました。500症例はおかしいではない かという話をしたら、後になってから第1回目のデータ解析をまず500症例でやるとい う回答がありました。  このように、メーカーによってとらえ方が違います。ボルテゾミブの場合はずっと全 症例追跡調査をやることが条件であったと思うのです。何症例とは決まっていなかった のではないかと思います。あるいは3,000症例で0.1%までということなのか、その辺 があいまいで、メーカーによってもとらえ方が違っているように思われますので、この 意味合いについてお尋ねしたいと思います。 ○池田部会長 いかがですか。 ○機構 今回のドキシル注に関しては、昨今、HAARTの浸透に伴いまして、患者のカポ ジ肉腫の発症症例数が著しく少なく、年間一けたという報告もございます。また、もと もと日本人においてはカポジ肉腫に進展する患者が少ないという報告もございます。し たがいまして、数百という三けたのレベルは実質上は困難であると私どもは考えており ます。 ○堀内部会長代理 要するに全症例をフォローするということですね。 ○機構 はい。少なくとも、このものが承認された段階では、効能・効果はエイズ関連 カポジ肉腫だけでございます。納入医療機関の数は会社が把握しておりますから、その 納入医療機関の数をこちらでもチェックした上で、情報収集のための十分なアプローチ ができているかを安全性定期報告のたびに確認するなど、フォローしていきたいと考え ております。 ○堀内部会長代理 例えばアリムタも大体同じような文書になっていると思いますの で、一般的な考え方をお尋ねしたいのですが。「一定数の症例に係るデータが蓄積され るまで」という表現になっていると思うのです。 ○審議役 一般論という部分で、これまでの事例を眺めて御説明します。品目ごとに病 気のもともとの発生数がかなり違っているものですから、個々に申請企業は実際どのぐ らいの施設に納めるか、そこで年間どのぐらいの患者が出ているかを全部積み上げて、 そもそも再審査の期間がありますので、その中で例えば1年、2年のうちにどのぐらい まで集まりそうかを個別具体に検討します。一定という場合に今のように御質問される ことは当然ありますので、個々の企業と個々に一定数としては大体どのぐらい見込まれ るかということは詰めてやってきています。ただ、画一的にこれだけという数を書けな いところから、表現上は「一定数」と書いてきているのが経緯です。  かつては3,000例というお決まりの数字があって、それがあり得ないものにも機械的 に3,000という話をしていた時代があったのですが、今はそれをやめて、薬や疾患に合 った個別具体の詰めをしてやりなさいとなっています。ただ、全例調査というのは症例 として一番集められる調査ですので、際限なくやると、ものによっては何万例という数 を集めても切りがないような話になると思います。そういうことが一方にはありますの で、評価は一定の数を集めて、その症例でもってできる範囲のことを議論して、その上 で更に継続するか否かを考えるという進め方をこれまで全部やっています。 ○堀内部会長代理 それは分かりますが、症例が少ないものは全症例を追跡すると考え てよろしいのですか。症例数が多いものは全部追跡するのか、3,000例くらいを一応の 目安とするのか。イリノテカンは1万何千例を6年間通してやりましたね。それは大変 立派なことであると思いますが、本当に必要なことなのかどうかという気もいたします。 その辺の基本的な考え方は何かあるのですか。 ○審議役 先生のおっしゃいましたイリノテカンのときに全例という条件を付けたこと は、私も鮮明に覚えています。その場合に、ではいつまでという話が大変論議になりま して、内部でも相当議論しました。当時の感覚としては、再審査期間中は水も漏らさず に頑張ろうと考えて、再審査期間中はというふうに懸けたのですが、現実にやった結果 としては大変な作業になって、医療現場における負担は大変なものであったとも聞いて おります。  そうした経験を基にして、むしろ科学的に評価するために必要な例数としてどれだけ を見込むのかを議論すべきであろうと最近は考えております。基本的に、全例調査の必 要なものと、そうではなくて、一般的な直後調査あるいは使用成績調査で行くものと分 かれます。一般的な調査で済むものについては、特別な課題がある場合を除き、何例と いうのは特に議論していません。  全例調査の場合に、まず患者数がどのぐらいいるのかを考えて、それから1年目、2 年目、3年目といった、時間を追ってどのぐらいの数が集まると見込まれるのかを見積 もって、その中で、このぐらいの数が集まった段階で評価しましょうということを、申 請している企業と基本的な合意をする形で審査チームはそれぞれやっております。  狙っている副作用が、例えばドキシルの場合ですとハンドフットシンドロームが日本 で低用量で少し頻度が高いという話があるので、本来であればそれについての精度のあ る議論ができたらいいなと考えているのですが、いかんせんカポジに関して言うと非常 に症例が少ないので、ハンドフットシンドロームの頻度をどのぐらいであるかを評価し ようと思ってもできません。ただし、卵巣がんの開発を今やっておりまして、そちらも 合わせると国際的な比較もできるようになるであろうと見込まれておりますので、卵巣 がんの審査のときにその検討はされると見込まれております。  個別の話と全般の話は、ざっと言いますとそういうことになっております。際限なく 追いかけると現場にとっても負担であり、患者にも返っていくような負担になるという ことをよく考えないといけないので、検討したい安全性上の課題をきちんと決めて、そ れに合った調査、サンプルサイズを決めていくやり方をしようと考えております。最近、 ICHの合意に基づいてE2Eという安全性監視計画を立ててやるようになってきてい ることにも関連しておりますが、課題をきちんと決めて、それで追いかけることが世界 的にもトレンドになっておりますので、そういうところでやっているのが現状です。 ○堀内部会長代理 承認するときに、各品目ごとに、機構あるいは審査管理課と相談し て、このぐらいやりましょうという議論はやっているわけですね。 ○池田部会長 それから、全例調査はある期間が終わってから振り返って見るのではな くて、定期的に報告するというプロセスが入ってきます。そのプロセスを通じて症例が 増えたり減ったりすることは当然あるという考えでよろしいですね。 ○審議役 そのとおりです。 ○池田部会長 岡委員、この点について何かございますか。 ○岡委員 今のカポジの頻度ですが、我々のところは100人の患者を1年フォローする と2人前後です。年間10〜20人ぐらいが私どものところに来ている頻度ですから、やは りそれほど数は多くないと思います。 ○池田部会長 そのほかに、このドキソルビシンのリポソーム製剤について、委員の先 生方から何か御意見はございますか。 ○堀内部会長代理 薬物動態を見ますと、従来のドキソルビシンと比べて、このリポソ ームは体内にとどまる時間がかなり長いし、AUCも大分大きくなっています。特に腫 瘍組織に集積するという表現になっていますが、腫瘍組織への蓄積、あるいはその動態 とAUCを含めたデータ、それから正常組織との比較データが私の見たところ余り見付 からなかったのですが、それについてはどうなのでしょうか。がん組織にかなり特異的 に集積していると考えてよろしいのでしょうか。 ○審議役 そもそもSTEALTHリポソームを使った薬物動態学的検討はかなり昔からやら れています。これは日本の研究者が見付けた話ですが、腫瘍組織の血管に100nmぐらい の穴があいていて、その径に合わせた格好でこの系統のリポソームが組織に移行しやす いことが分かってきております。  したがいまして、腫瘍組織に走っている血管ですと、そこから腫瘍組織内に薬物が移 行しやすいという特徴が本剤にはあります。血中でリポソームが安定に長時間存在する と、否応なしに腫瘍組織に薬剤が移行していて、たくさん入ってしまう。正常組織と腫 瘍組織の細い血管の壁の性状の違いに基づいて組織移行性の選択が実現されるというこ とが、様々な研究でかなり明らかになっております。それが裏付けでございます。  腫瘍組織への移行がとても高まっていることがこの薬剤では期待できるので、今はカ ポジの治療でドキソルビシンのリポソーム製剤を使うことは世界的にスタンダードにな った。それは大分前の話ですが、ようやく日本でもこれが使えるようになるということ です。 ○池田部会長 よろしいでしょうか。そのほかに委員の先生方から御議論がなければ、 議題4に関しても承認を可として、薬事分科会に報告とさせていただきます。ありがと うございました。  以上で審議事項については終了いたしましたので、報告事項について、機構から御説 明をお願いいたします。 ○機構 議題1、医療用医薬品の再審査結果について報告いたします。資料6-1〜6-6 の医薬品再審査確認等結果通知書「酢酸リュープロレリン」、「フィルグラスチム(遺伝 子組換え)」、「レノグラスチム(遺伝子組換え)」、「シタラビン オクホスファート」、 「ジノスタチン スチマラマー、ヨード化ケシ油脂肪酸エチルエステル」及び「ソブゾキ サン」を御覧ください。  これらの品目につきまして、市販後の使用成績調査の成績等に基づいて再審査申請が 行われ、審査の結果、薬事法第14条第2項各号に掲げられている承認拒否事由のいずれ にも該当しないこと、すなわち、効能・効果、用法・用量等の承認事項については変更 の必要はない「カテゴリー1」と判定したものであります。  続きまして、議題2、医薬品優先対面助言品目指定の審査結果について報告いたしま す。  優先対面助言品目指定制度は、薬事法で規定する「医療上特に必要性が高いと認めら れるもの」となることが期待される開発中の薬剤について、他の品目に優先して総合機 構が治験相談を行うものです。優先対面助言品目は、優先審査品目の選定の考え方に準 じて、指定の時点までの国内外の試験結果を見て、「適応疾患の重篤性」と「医療上の 有用性」を総合的に評価することによって選定しております。  本日配付いたしました資料7でございますが、ワイス株式会社から申請されましたテ ムシロリムスでございます。優先対面助言品目の対象効能は「進行性腎癌」でございま して、この疾患は「生命に重大な影響がある疾患」であると判断いたしました。医療上 の有用性に関しましては、海外で実施された進行性腎癌で、かつ予後の悪い患者を対象 とした臨床試験において、本剤はインターフェロン-αに対し有意な生存期間の延長が認 められております。また、進行性腎癌に対する既存療法が十分ではない現状を鑑みた場 合、本剤は既存治療に比して有用性を期待することはできると判断し、本品目を優先対 面助言品目に指定したものでございます。以上でございます。 ○池田部会長 ありがとうございました。機構から再審査の報告について6品目、優先 対面助言品目の指定について1品目ございましたが、御質問はございますでしょうか。 よろしいでしょうか。ないようでしたら、報告事項については御確認いただいたという ことにさせていただきます。  本日の議題はこれで終了いたしましたが、事務局から何か報告はありますか。 ○事務局 事務局から何点か御報告がございます。一点目は、前回10月19日の当部会 におきまして、抗インフルエンザ薬のリレンザの予防投与の御審議を頂きましたときに、 診療録の取扱い等について御質問がございました。この件について関係部署に照会、相 談をいたしましたところ、医師法の規定によりますと、医師は治療、処方箋の交付等に 当たりまして自ら診察することが必要とされるということです。この場合の治療には医 薬品の予防投与も含まれるという解釈がなされております。このため、医薬品の予防投 与を含む治療においては、その診療に関する事項について診療録への記載が必要となる という解釈ですので、御報告を申し上げます。  続きまして、過去に当部会で御審議を頂きました品目の承認の状況について簡単に御 報告いたします。去る9月22日の薬事分科会を経まして、10月20日に新薬を承認して おります。まず、ベルケイド注射用。多発性骨髄腫に使うボルテゾミブという製剤です。 次に、注射用アナクトC。活性化プロテインCで、電撃性紫斑病の効能追加です。ニュ ーモバックスNP。肺炎球菌ワクチンです。それから、イトリゾール注。イトラコナゾ ールの注射剤です。アドベイト注射用。血液凝固第VIII因子の組換え製剤です。最後に、 ブスルフェクス点滴静注用。ブスルファンの小児用量等の追加です。以上、10月20日 に承認させていただいております。  それから、次回の本部会の予定でございますが、来年1月25日(木)午後2時から開催 させていただきますので、よろしくお願いいたします。 ○審査管理課長 本日はどうもありがとうございました。最後になりますが、薬事・食 品衛生審議会の委員の先生方には御多忙の中御協力を頂いているわけでございますが、 その任期が来年1月22日までとなっています。このため、このメンバーで部会を開催い たしますのは、現在予定しているところでは本日が最後ということになります。  今後の予定につきましては、個別に先生方に御連絡を取らせていただいているところ ですが、委員の選出基準として任期に関する規定等がありますので、一部の先生におか れましては、本日の部会をもちまして退任されることになってしまいます。大変お世話 になりながらそのようなことになってしまうのも恐縮ではございますが、ルールはルー ルとして守っていきたいと考えています。今までの御協力に感謝するとともに、今後と も、審議会という場でなくても、直接我々に言っていただいても一向に差し支えありま せんので、御協力をお願いして、あいさつに代えさせていただきます。本当にありがと うございました。 ○池田部会長 それでは、本日はこれで終了します。先生方、本当にありがとうござい ました。 ( 了 ) 連絡先: 医薬食品局 審査管理課 課長補佐 山本(内線2734)