06/11/27 労働安全衛生法における定期健康診断等に関する検討会第3回議事録 第3回労働安全衛生法における定期健康診断等に関する検討会          日時 平成18年11月27日(月)          17:00〜          場所 厚生労働省本館共用第8会議室 ○和田座長 定刻になりましたので、ただいまから第3回の労働安全衛生法における定 期健康診断等に関する検討会を開催いたします。本日はこの前お示ししましたように、 関係団体からヒアリングを行いまして、その意見を基に更に検討を進めていきたいと考 えております。それでは本日のヒアリングを行う団体と発言者をご紹介いたします。ま ず、使用者側を代表しまして、3つの団体の方が来られております。  1番が日本経済団体連合会のトヨタ自動車株式会社安全健康推進部部主査の加藤隆康 さんでございます。もう1人、労政第二本部長の松井博志さんがお見えになる予定でご ざいますが、ちょっと遅れております。次の使用者側団体は東京商工会議所のオーデリ ック株式会社管理ゼネラルマネージャーの河井隆さんでございます。それから、産業政 策部労働・福祉担当課長の森まり子さんでございます。使用者側の3番目は全国中小企 業団体中央会の常務理事の山崎克也さんでございます。次に労働者側を代表して、1つ の団体の方がお見えになっておりまして、日本労働組合総連合会の雇用法制対策局次長 の中桐孝郎さんでございます。最後に健診機関を代表いたしまして、1つの団体の方が 来られておりまして、全国労働衛生団体連合会聖隷福祉事業団聖隷予防検診センター名 誉室長の臼田多佳夫さんでございます。この方々からご意見を伺うことになっておりま す。したがいまして、本日は各団体からのご意見をすべてお聴きして、その後に検討を 行いたいと考えております。各団体からは、10〜15分程度で意見陳述をお願いできれば と思っております。  それでは、松井さんがまだお見えになっておりませんので、東京商工会議所の河井さ ん、森さんからお願いできますでしょうか。 ○河井氏(東京商工会議所) 東京商工会議所労働委員会幹事会で座長を務めておりま す河井と申します。よろしくお願いいたします。本日のテーマの1つであります労働安 全衛生法における定期健康診断項目につきまして、先日厚生労働省の関係部署の方々か ら当幹事会の各委員の方が説明を受けております。それらを受けまして、当幹事会とし まして、本日検討してきました基本的な考え方について、申し上げます。まず、主要な ポイントにつきましては、お手元に配付しました資料のとおりですが、それらに補足す る形で考え方を述べてみたいと思います。「定期健康診断と特定健診について」という部 分なのですが、そもそも論で恐縮ですが、安全衛生法制定の目的というところで、皆さ んご存じだと思いますが、制定の目的というのが労働災害を防止し、労働者の安全と健 康を管理するとともに、快適な作業環境の形成を促進すること、とあります。  労働災害というのは業務に起因して労働者が負傷、あるいは疾病にかかり、または死 亡することをいうのであって、そもそも労働安全衛生法における定期健康診断というの は、各自が担当する業務、あるいは作業と深く関わった疾患を発見するものでありまし て、万一異常が発見された場合は事業者は担当業務の変更や、あるいは配置転換を行わ なければならないとされております。今回の新たな法令によりまして、メタボリックシ ンドロームを予防するために保険者は特定健診を実施し、保健指導まで実施しなければ ならないことになっておりますが、これらを安全衛生法における定期健康診断に追加さ せることにつきましては、安衛法の目的を大きく逸脱したものではないかと考えており ます。  繰り返しになりますが事業者は労働者に対して、安衛法に基づく定期健康診断の実施 が義務付けられておりまして、業務災害・労働災害の防止をするために労働者が健康を 確保しながら就業できるように適切な措置を講じなければならない安全配慮義務を負っ ているわけです。これらのことから当幹事会としましては、資料にありますとおり、3 つの点にまとめております。  《意見》と書かれております◇マークの3つですが、読み上げます。事業者と保険者 は、それぞれの法律に基づいて定期健診と特定健診を実施しておりまして、義務を果た すべきであります。定期健診と特定健診はもともと目的が異なっているため健診項目が 当然合致しないものでありまして、それらを強引に定期健康診断に追加すべき内容のも のではないと考えております。事業者は安全配慮義務を負っており、労働者に定期健康 診断を受診させて、業務災害等による健康への影響を予見し、そのリスクを回避するた めに当然措置を講じなければならないわけです。労働者の生活習慣等に因る肥満による 健康障害のリスクを事業者が個人の生活にまで介入して改善させることは不可能であり まして、たとえ安全配慮義務を課せられたとしましても、その責任を果たすことはでき ないと考えております。  それらのできないことを法令で規定することは当幹事会としてはやめてほしいと考え ております。また、この会が4回で結論を出されるということで伺っておりますが、こ れだけの重要なテーマが4回で、残りあと1回ですか、結論を出すのは、あまりにも討 議が少ないのではないかと考えておりまして、時間をもう少しかけていただいて、慎重 に検討していただきたいと考えております。  資料にありますもう1つのテーマですが、これは費用的な部分についてです。「定期健 診・特定健診の実施費用について」ということでまとめております。健康診断というの は、皆さんご存じだと思いますが、保険外診療でありまして、実施費用は企業と健診機 関との契約によって決まっておりまして、バラツキがあります。このことに関連する問 題としまして、2つございます。まず、1つ目ですが、特定健診の項目の一部を定期健 康診断に追加する場合の負担増。これは診療報酬ベースではせいぜい1,000円程度と言 われているようですが、実際にはそれ以上の費用を支払わなければならないことは明白 でありまして、小人数の従業員、あるいは小規模の中小企業にとっては、かなり負担が 大きいものになるのではないかと考えております。  もう1つのテーマ、メタボリックシンドロームを予防するための項目は労働者の生活 習慣等に起因するものでありまして、事業者が全額負担する必要性は全くないと考えて おります。少なくとも、労使折半の保険料から拠出されるべきものであると考えられま す。私から申し上げておきたいのは、以上の点ですが、「政管健保の費用について」とい う部分で、東京商工会議所の産業政策部の森課長から補足の説明をさせていただきます。 よろしくお願いします。 ○森氏(東京商工会議所) それでは政管健保のほうから、私どもで数十社ヒアリング をいたしておりまして、今日その結果をストレートにお付けしてはいないのですが、口 頭でいくつかご報告をいたします。まず、この件につきまして、ほとんどの企業が知り ませんでした。「何ですか、それは」ということで、この健診項目と特定健診というのが 新しく入ったということも、こういった大きな問題になっているということもを知りま せんでした。そこから説明をしていくのにものすごく時間がかかって、大変だったとい うことがあります。  そして、2つ目に出てくる、皆様からの意見としまして、なぜ、これほどの大きな問 題がいままで議論にならなかったんだろうか。なぜ、これほどの議論の大きな問題が年 末までに結論を急がれているんでしょうか、どうなんでしょうかと。なぜ、こんなこと になってしまったんですかということで、逆に私どもが責められるという状況に今なっ ているところです。先ほど、河井座長からまとめていただいたのですが、やはり安全配 慮義務が課せられている企業ですので、法律上できないとわかっていることを、はっき り「やれ」というのは非常に困りますというのが結論でした。  実態としまして、私ども商工会議所のほうで政管健保に入っている企業に聞いても、 基本的にはほとんど全社、労働者には健康診断を行わせていました。ただ、実際にどう やっているかというと、非常にあの手、この手で工夫をしている所がほとんどでして、 実際に社会保険庁と提携をしている健診機関が1,800あると聞いております。東京の場 合、99あるという実態だそうです。では、皆さんがそこを使って健診を受けているので しょうかと聞いたら、ほとんどがノーです。どうしてそこを使わないのですか、そこを 使えば、いわゆる健診の補助が出ますので、費用負担は絶対安くなるはずなのです。で も、使わない。なぜなのか。実はそこを使おうとすると、半年待ちの機関もあるのです。 キャンセルすると長期間待たなければならない。非常に混んでいて、使い勝手が悪いと いう実態があるそうです。  したがいまして、ほとんどの企業としましては、全額事業主負担で補助が出ないとわ かっていても、最寄りの健診機関ですとか、組合健保さんなどが使っている健診センタ ーなどに健診をお願いして、相乗りで、いろいろ健診を受けさせてもらっているという 実態でした。やはり、健診センターそのものが社会保険庁と提携していますが、少な過 ぎるのではないかという実体上の問題もあって、ここをもう少し改善していただくと、 いまの健診はもっとやり易くもなりますし、受診率ももっと上がるのではないかと思っ ております。  それから、定期健康診断は事業主が全額負担で行っている制度でして、特定健診のほ うは保険料ということで、基本的に負担が賄われるものと伺っておりまして、もし今の 定期健康診断のほうに全額、項目のずれている部分がオンされるということになります と、ダイレクトに事業主負担が増えることになります。もし、それが特定健診というこ とで、労使折半の形で費用負担が増えるほうが企業の事業者にとっての費用負担感が非 常に小さいのではないかと思います。直接いわゆる安全衛生法上の義務を負い、かつ安 全衛生法上の定期健診の項目として増やされると、その費用負担、増加分はダイレクト に企業負担になってしまいますが、それは今一生懸命やっている中小企業にとっては、 非常に負担感の大きいことになってしまうのではないかと思います。以上です。 ○和田座長 ありがとうございました。では、続きまして、全国中小企業団体中央会常 務理事の山崎さん、お願いします。 ○山崎氏(全国中小企業団体中央会) 全国中央会でございます。資料は特に提出して はいませんが、私のほうからは高齢者医療法と安全衛生法にかかります健診項目の調整 に関しまして、お話したいと思います。高齢者医療法が6月に成立したということです が、事ここに至って、安衛法の検査項目との間にズレがあるというご指摘でして、何せ 急な問題で、実態も把握できない状態の中で戸惑っているというのが実情です。健康の ためと言われれば、尤もと感じますし、また事業者の負担コストを考えれば、これまた、 尤もであるということで、大変悩ましい問題であるわけです。労働者の健康管理につき ましては、事業者として当然配慮しなければならないことですし、日頃の十分な健康管 理がメタボリックシンドロームを未然に防ぐことになることにもなり、総合的な生活習 慣病対策の必要性は十分承知しているわけです。  よく残業についてストレスが溜まり、メタボリックシンドロームの原因になるという ふうに聞きますが、我々の中小企業関係の労働の調査によりますと、中小企業における 残業は月30時間未満の企業が約9割を占めるというようなこともございます。それも常 にあるわけではないという状況もありまして、果たして、残業がストレスに直接の原因 になっているのかどうか、この辺の実態もわからないところです。  発症原因が労働環境、あるいは作業環境にあるということにつきましては、不明なと ころが多いわけですが、もともと内臓脂肪にからんだ太りすぎは体質的なもののほか、 生活習慣、あるいは食生活などに起因する部分が多いと思われまして、日頃の日常生活 の中での自己管理、あるいは生活改善の努力に負うことが多いと思われます。このこと は事業者もそんなに予知できる問題ではないというふうに思います。素人目に見ますと、 腹囲が何で85センチ、90センチがあって、その境なのか、私ども全くわからないとこ ろですが、またその数字によって、病気の恐れ、あるいは疑いを感じさせる、逆を言い ますと、腹囲を測り、自分で病気診断をできるということで、自己管理もできる病とも 映ってくるわけです。  職場環境、あるいは安全衛生の配慮、従業員の健康管理は事業者にとって重要な責務 であることは当然でありますが、今回の検査項目の追加分については、労働安全衛生管 理という側面から見ますと、事業者の管理、あるいは監督において、手が回らないこと です。安全配慮義務の範疇では捉えることができないのではないかとも思います。  よけいなことですが、今回の追加項目の内容によっては、ある種の雇用差別につなが る懸念もあるのではないかと私は思うわけです。  例えば、腹囲が生活習慣病の判定基準の1つであるとしますと、採用時に、これから 病気になる恐れのある太った方をあえて採用しないというような企業も出てくるのでは ないかということも、ちょっと危惧するところです。  また、企業への影響、コスト負担についてですが、現在の中小企業の状況を申し上げ ますと、ご案内のとおり景気はいろいろ月例経済報告を見ましても、回復しているとい うことですが、中小企業におきましては、産業間、企業間、地域間において、格差がか なり広がってきている状況です。まだまだ景気回復の実感はないというのが大方の中小 企業の状況でございます。そのような中で法定福利厚生費等の税外負担というようなこ とも増加しており、少しでも経費を節約する努力を各企業とも行っておりまして、多く の中小企業においては簡単に負担増について承諾あるいは納得するとは思われません。  ただ、従業員の少ない家族的な零細企業がかなり数が多いのですが、これにつきまし ては、こと身内の健康維持というようなことから、安全衛生管理という視点を超えて費 用を惜しむことはないということも考えられます。単純に考えますと、事業所は就業上 必要な措置により、労働者の健康管理を行えばよく、目的は違うと思われますが項目を 追加することによって、全員の受診が義務付けられるということです。全くメタボリッ クシンドロームにほど遠い人の分までも費用負担するということで、企業としてはその 原因に個人差のあるものまで、本当に面倒見きれないよというのが正直なところではな いかと思います。費用につきましては、項目により少額に押さえることもできるやに聞 いておりますが、はっきりしたことは、まだ見えてきておりません。  また、レントゲンについても、いつなくなるのか、あるいは、これは年齢が40才以上 になるかというようなこともはっきりしていない状況ですが、このレントゲンがなくな れば、1つの考え方ですが、費用分をそれに当てるということも考えられます。既に出 している費用だからということで、ある程度、納得はいくというふうに考える企業もあ ると思いますが、しかし、逆に費用の節約につなげたいという事業者にとっては、「これ はしめた」というようなことで、なかなかそちらのほうに回していただけないというよ うなところもあろうかと思います。これら費用の問題もいろいろありますが、要は新た な検査項目が果たして安全衛生と密接な関連があるかどうかということだと思います。  また、一方の問題として、検査の項目調整がつかないとなると、二度の健診をしなけ ればならないというようなことにもなりまして、現在一度の健診さえ多忙の理由により 受診できない労働者もいるのが現状ですので、労働者にとっては、確かに負担増となる ということです。また、大手企業におきましては、大体大都市にあるというようなこと も多いのですが、中小企業は医療機関の少ない地域に点在している場合も多い状況が見 られるわけです。もし、先生から眼底検査をしなさいという指示がありますと、また別 の専門のところに行かねばならぬということで、更に大変な状況も出てくるということ でして、労働者の負担問題も生じてくるということです。  いずれにしても、いろいろな論点を含んだ問題でありますが、要は本検査項目の検討 に当たりましては、いろいろな中小企業の経営の実態を十分ふまえていただきまして、 経営にあまり影響のないようにご勘案いただき、慎重に対応していただきたいと思いま す。私の理解不足のために、内容が的を得ず大雑把になってしまいましたが、以上です。 ○和田座長 どうもありがとうございました。それでは、次に日本労働組合総連合会の 中桐さんから、お願いいたします。 ○中桐氏(日本労働組合総連合会) まず、最初にヒアリングですが、使用者3人で、 労側1人というハンデを負っていますが、今回の問題の論点を整理させていただくと労 働者と国民全体を含めた健康確保対策を今後どう進めていくかという大きな命題があろ うかと思います。連合の福祉社会社会保障政策の目標は、「安心と信頼の社会保障制度の 確立として、労働を中心とする福祉社会の実現」です。そこで患者本位の医療、良質な 医療サービスの確立と安定した医療保険制度の再構築に向けた医療保険制度の実現とい う政策提言があります。私どもとは違うセクションが担当しておりますが、今回これに ついて担当局の見解は、国会において健康保険法改正に際して十分な議論がされなかっ たことが今回このような混乱を発生させていると考えております。残念な事態だと考え ます。  一方で労働安全衛生法による労働衛生対策、とりわけ過重労働、メンタルヘルス対策 は一層の予防対策の強化、事業場と家庭、地域を含めた健康管理と健康づくり、ネット ワークづくりが重要と考えます。お手元の連合の安全衛生の政策資料の中にありますよ うに同時に母子・学校・労働・老人の生涯を結ぶ健康づくり、個人情報管理、社会保障 が必要だと提言しております。これが1つの論点です。  2つ目に、健康診断について、現在の職場の健康診断にはどういう問題があるのかと いうことですが、定期的に制度の内容を点検すべきだと感じております。定期健康診断 項目は現状に見合っているのか、必要不可欠か、不足はないのかという視点です。また 性差、年齢、業種、業態等で異なるものについては、医師による省略とか別途健診で効 果的に実施されているかどうか。また労働者が受診しやすい実施方法か、判定方法の制 度改善が常に行われているのか、保健指導や事後措置が継続的にが行われているのかど うかです。  更に事業者、産業医、嘱託産業医、看護師、保健師、診療機関、更には今回の場合は 保険者、地域というのがありますが、その連携が図られているのかということも点検す べきです。更に重要なことは個人情報の保護が適切に行われているのかどうか。更に、 調査研究の奨励といったものも行われているかどうか。先ほど、消費者団体からもあり ましたが、財政上の無駄、無理はないかということも定期的に点検すべき項目だと考え ております。  いま職場で何が起きているか。雇用形態の変化、特に定年延長・継続雇用により労働 者の高齢化、更にパート・派遣・請負等の非典型労働者の増加があります。2005年連合 調査では、長時間労働による健康不安として、過労・ストレスを訴えたものが55%、メ ンタルヘルスが53%、生活習慣病の不安が48%と労働者は感じています。そういう状況 の中で、事業場の健康診断制度と高齢者医療法上の40歳以上の国民に対する特定健診、 特定保健指導の調整について、要望を申し上げたいと思います。  まず、高齢者医療法に基づく特定健康診断と保健指導について労働者が希望する労働 安全衛生法の定期健康診断の実施日に一本化して一度に行えるようにしていただくこと と人的資源や経費のロス、所要時間の無駄、それと同時に受診率の向上というものを念 頭において新制度の中では、そのPDCAサイクルを回して、実施していただきたいと いうのが第1点です。  第2点目には、追加する診断項目について、事業者責任は認められないという意見が ありましたが、労働者の生活習慣に最も大きな影響を与えているのが職場環境です。現 行の法律でも精神疾患や脳・心臓疾患対策のための健康診断調整項目を追加しながら、 現在に至っていますので、今回の追加項目も、合理性があると信じております。  3番目に新制度の実施に当たり事業者や労働者、医療スタッフへの理解と協力を十分 に得られるように、その意義や目的をしっかり説明することが大変重要だと思っていま す。  4番目に中小事業場においては産業医の確保が難しいなどの問題があります。新制度 において国の新たな支援策が必要ではないか、是非実施していただきたい。  最後ですが、個人情報の保護対策について、様々な方々が関わりますので、万全を期 していただきたい。 ○和田座長 どうもありがとうございました。続きまして、全国労働衛生団体連合会の 臼田さんからお願いします。 ○臼田氏(全国労働衛生団体連合会) 資料4です。全国労働衛生団体連合会傘下の主 たる施設の学術専門家、管理者、産業医、臨床検査技師などの意見を聴取し、取りまと めた意見書に基づいて申し述べます。基本的合意概念として、労働安全衛生法に基づく 一般健康診断のうちの定期健診は労働衛生管理体制の根幹であり、実施健診項目は疾病 予防に合目的に制定されてきました。新たに科学的根拠が得られたり簡便な検査技法が 開発された場合には、規定の見直しは必要でありますが、他の制度に基づく健康診断に 単に整合させるために健診項目の追加・削減をするような操作は加えるべきではありま せん。  したがって、今回求められた標記の意見を取りまとめるに際して、一般健康診断の代 表として定期健康診断を選び、次の事項を確認したうえで検討いたしました。「定期健診」 は安衛法に基づく職域健診であり、「特定健診」は高齢者の医療確保に関する法律(高齢 者医療法)に基づく新しい健診方式であります。事業者責任で行われる「定期健診・事 後措置」と医療保険者が行う「特定健診・特定保健指導」とは、制度・目的が異なり、 両制度が2本立てで行われるので、それぞれの制度における健診項目に相違が生じるの は当然のことであります。しかし、職域においては、定期健診と特定健診が同時に行わ れると推定され、法制度上も「労働安全衛生法に基づき、事業者が健診を行った部分に ついては、事業者からのデータの提供を受け実施に代えることができる」とされていま す。  原案では健診項目にズレがあり、労働者(被保険者)に2度の受診を求めることにな って、不必要な負担を強いることになるので、可能な限り受診者の負担が最小限になる ように調整すべきであります。又両健診の制度・目的は異なるが、今後医療に関するデ ータは統合され、効率的な健康増進プランに役立てられ、活用されるべきであるという 観点から、整合させることが妥当な健診項目については検討対象といたしました。がん 検診や特定臓器疾患の健診については他の制度に基づいて、あるいは任意に行われるも のであるため、安衛法に基づく定期健診とメタボリックシンドロームに着目した特定健 診における健診項目の整合性に関する検討においては対象から除外すべきであります。 ただし、胸部エックス線検査については、別途検討することにいたしました。  健診項目の整合について。健診項目の整合に関する検討方針は、定期健診と特定健診 の両制度における健診項目の整合性については、いずれも疾病予防のためのスクリーニ ング検査を主眼において検討しました。検査の意義、検査結果の判定、将来のエビデン ス評価に資するためのデータ蓄積等、学術的な観点、費用、検査手法およびデータ処理 等、運用上の問題点との調整の観点から検討を行いました。又、検討対象とした健診、 胸部エックス線検査および別紙「安衛法定期健診と特定健診における健診項目の比較」 の表の中の健診項目のうち、網掛けをした項目を検討対象としました。  検討結果の概要について、述べます。胸部エックス線検査の必要性について。生活習 慣病の予防対策は特定健診・特定保健指導の対象疾患をメタボリックシンドロームに絞 って検討されていますが、生活習慣病と関連する多くの所見が得られる胸部エックス線 検査は特定健診の健診項目に入れて両健診の整合性を図るべきであります。40歳以上の 者については、心拡大、大動脈延長蛇行、横隔膜挙上などの所見は胸部エックス線検査 の有所見の中でも極めて多いものであり、生活習慣病と関連する所見であります。また、 肺がんについては、対策型健診(定期健診など)・任意型健診(人間ドックなど)におけ る胸部エックス線検査は有効であるという「科学的根拠がある」とする研究報告があり ます。(2006年厚生労働科学研究・祖父江研究班)の報告です。これは他の研究報告を 収集評価して検討された最新の報告であります。学術専門家より、特に要請があったの で、追加いたします。  その他の健診項目の整合について。診察等。問診。従来の職域の「既往歴および業務 歴の調査」に係わる問診票から今回の「標準的な質問票」これは後で資料が付いており ます記載した事項を取り除き、「標準的な質問票」(指定様式)別表を使用します。標準 的な質問票は後日全国のデータを統一的に処理するのに役立ちます。なお、定期健診と 特定健診が別々に行われる場合は、それぞれの問診票または質問票を活用することにな ります。「身体測定」。身長。BMI算出のため定期健診においても必須とするのが適当 である。ただし、運用上は受診者の申告を求め、必ずしも測定しなくてもよいとすべき であります。腹囲。定期健診に取り入れるのは適当ではありません。意義と精度が不十 分な上に、作業効率が低下し、プライバシーの問題も起こりやすい(今回計測を行った 会員機関から、一般に身長、体重、BMI等の計測は1%以内の誤差の範囲で行われて いるのに比して、腹囲の測定値は7〜8cm(±5%程度)のバラツキがあったというテ ストケース結果が出されています)。  臨床検査。貧血検査。ヘマトクリット値。血色素量と赤血球数の検査で貧血がわかる ので、あえて定期健診にヘマトクリット値を入れる必要はありません。血色素量。生活 習慣と貧血は大いに関係があり、事後の保健指導で足並を揃えるためにも、特定健診に おいて必須とすべきであります。赤血球数、血色素量と同じ理由で、特定健診において 必須項目とすべきであります。  血中脂質計算。血清総コレステロール。総コレステロールは受診者によく知られてい る指標であり、LDL―コレステロールを採用しても、なお有用であるので、従来の総 コレステロールを用いるべきであります。その場合、40歳以上を必須項目とします。L DL―コレステロール(新規追加、必須)。定期健診にも取り入れるのが適当であり、そ の場合は直接測定法を採用し、40歳以上を必須項目とします。血糖検査。(空腹時)血 糖。現行の「血糖」検査を「空腹時血糖」検査に改めて、定期健診に取り入れるのが適 当であり、その場合、40歳以上を必須項目とします。ヘモグロビンA1Cは食事の影響 も相殺できるので、定期健診にも採用すべきであり、その場合、40歳以上を必須項目と します。尿検査。蛋白。腎疾患のスクリーニングに有用であり、検査が簡便で負荷もな いので、定期健診では従来どおり必須項目とすべきであります。潜血。定期健診にも取 り入れるのが適当であり、その場合、医師の判断により選択的に実施する項目とします。  血清クレアチニン。腎障害のスクリーニング検査に有用であるので、定期健診にも取 り入れるのが適当であり、その場合、40歳以上を必須項目とします。血清尿酸。明らか な動脈硬化の危険因子であるので、定期健診にも取り入れるのが適当であり、その場合、 40歳以上を必須項目とします。  その他の検査。眼底検査。定期健診に取り入れる必要はありません。悪性高血圧患者 が激減しており、日本高血圧学会はじめ欧米の学会のガイドラインでも「基本的に高血 圧患者での眼底検査は不要」とされています。後の安衛法定期健診と特定健診暫定版に おける健診項目の比較の表に、修正意見欄に、以上のことを記載いたしました。以上で あります。 ○和田座長 どうもありがとうございました。最後になりましたが、日本経済団体連合 会の加藤さん、松井さん、お願いします。 ○加藤氏(日本経済団体連合会) 日本経団連の産業保健問題小委員会の座長を務めて おります加藤と申します。よろしくお願いします。まず、私どもにこのような意見表明 の機会を与えていただきましたことについて、感謝を申し上げたいと思います。私ども は、いままで会員の団体あるいは企業に対してアンケート調査を行い、また専門の会議 を3回行いまして、日本経団連としての考え方をまとめてまいりました。本日は、その 結果を踏まえまして、主に産業保健実務の観点から日本経団連の考え方を申し述べたい と思っています。  まず、定期健康診断の項目の課題については、横組の資料をご覧いただきたいと思い ます。結論から申しますと、生活習慣病の予防は、一義的には医療保険者と労働者が担 うべきものでありまして、少なくとも安全衛生法を改正して健康診断項目を拡大するか どうかについては、本来ですと平成元年まで遡って、事業者が担うべき労働者の健康管 理の役割と位置付けをもう一度考えるべきではないかと思っています。今回、時間が限 られた中で十分な検討もされないまま結論を出すというのは、極めて遺憾であろうと考 えています。 その理由ですが、第1に事業者が生活習慣病の予防に対して、前向きに 取組むかどうかが非常に重要だと思っており、この点についても疑問があります。確か に、生活習慣病は作業関連疾患の基礎疾患でありますが、作業負荷が加わって発症して、 初めて作業関連疾患であるということが認定されるわけです。私どもも、労働力の高齢 化、あるいは労働力の減少という中で、労働者が健康で生き生きと働いてもらうことが 何よりも重要だということは、十分認識をしています。また、今回の健康局、保険局の 考え方についても、決して全面的に否定するわけではありません。しかしながら、基礎 疾患の予防というのは、本来個人の責任であります。また、2008年度以降に医療保険者 が全面的に取組むべきものと理解しておりまして、事業者は作業負荷の軽減を中心にし た取組をすべきものであると考えております。即ち、事業者は残業時間を軽減するなど 作業負担の軽減を図ることで、作業関連疾患の発症を回避することが何よりも重要です。 併せて、従来から行っているような事後措置による配置転換等、あるいは心臓疾患の発 症を回避することが重要であろうと思っています。  しかし、今回の改正で腹囲、喫煙歴、LDLコレステロール値、尿酸値等に基づいて 予見されるリスクというのは、事業者の人事権あるいは指揮命令権の範囲内で回避する 場合が極めて難しいかもしれません。法令が事業者にできないことを規定するのは、極 めて問題があると考えています。  一方で、基礎疾患の予防について申し上げます。生活習慣病の予防は、本人の自覚や 取組が重要だと考えています。職場生活だけではなく、労働者個人の日常生活にも関わ る疾患について、どこまで事業者が対応していかなければならないのかについては、労 働安全衛生法が罰則付きの義務であることを考えますと、慎重な検討が必要だと思って います。誤解を恐れずに申し上げれば、事業者の過度な関与は労働者の自発的な予防意 識を阻害するというような恐れもあるのではないかと思っています。私どもは、事業者 が基礎疾患の予防に関与することを全面的に否定しているわけではありません。しかし、 労働者の健康管理を事業者がどこまで負うか、行うかということを考えた場合に、基礎 疾患の予防については医療保険者ないしは労働者本人を側面から支援する限りにおいて、 事業者は関与すべきものであると思っています。これに関連して申し上げますと、今年 4月から義務付けられた医師の面接指導は、事後措置に直結する処置として、現実各産 業保健スタッフを総動員をした形で、現場では取組んでおります。  定期健康診断項目の拡大に反対する第2の理由ですが、特定健康診査と定期健康診断 はその趣旨、目的が異なっているものと考えています。特定健康診査は、特定保健指導 の階層化を行うためのものであるのに対して、定期健康診断は適正配置等を行うかどう か判断するためのものであろうと思っています。以前に厚生労働省で労働者の健康情報 の保護に関する検討会が開かれました。その報告書の中で、委員の堀江先生は参加され て、法定の定期健康診断はその結果に基づいて事業者が適切な処置を講ずることによっ て、労働者が健康確保しながら就業できるようにすることを目的としているというよう にも書かれております。特定健康診査をあえて比較するならば、THP=安全衛生法の 第69条の健康測定に近いものであるのかということもいえるのではないかと思ってお りまして、定期健康診断とは比べようもないところもあるのではないかと感じておりま す。  第3の理由は、定期健康診断が拡大することによって、先ほどいろいろな団体の代表 の皆様からも発言がありましたが、安全配慮義務違反のリスクが拡大するのではないか という懸念です。これは、多くの企業が私どものアンケートでも、その懸念を書いてお ります。裁判では、定期健康診断の結果であろうと法定外の健康情報であろうと、事業 者が知ってしまった以上は、当該健康情報に基づいて安全配慮義務を問われるケースが 増えてきているというように認識しています。現在、労働者の自己保健義務が法律上明 確にされていません。そうした中で、安全配慮義務違反のリスクを高めようとするよう な定期健康診断の項目拡大は、反対の立場を表明せざるを得ないと思っております。  最近の状況を考えますと、私どもは平成元年まで遡って、事業者が負うべき労働者の 健康管理の役割を再考すべきではないかと思っています。即ち、本検討会とは別に、胸 部エックス線検査の実施対象者の範囲も含めて、定期健康診断の抜本的な見直しを検討 することが、是非とも必要であります。安全配慮義務のリスクを負ってまで、労働者の 健康管理にコミットをしようとする企業も、現実はいらっしゃるわけです。定期健康診 断の項目の見直しに当たりましては、そうした事業者を支援するような仕組みとなるよ うな大所高所からの議論を是非お願いしたいと思っております。 ○松井氏(日本経済団体連合会) 引き続き、日本経団連の松井からコメントをさせて いただきたいと思います。まず私からは、健康情報の観点から、医療保険者が生活習慣 病予防に取組むべきことを補足したいと思います。今回、医療保険者に対して特定健康 診査、特定保健指導の実施義務が課されたことにより、医療保険者には加入者の診断結 果に加えてレセプト情報を含めさまざまな情報を分析し、疾病予防や重症化防止に役立 てることが、将来的に期待されております。事実、そうした取組をされようとしている 大手健保組合を多数承知しています。他方、事業者の中には安全配慮義務を懸念して、 極力法定外の健康情報を入手、活用しない細心の注意を払っておられるところもありま す。したがって、多くの健康情報を有効活用することが期待されている医療保険者が、 生活習慣病に関するさまざまな情報を入手することが適切であると考える次第です。高 齢者医療法が成立したことの意味を改めて考えてみますと、生活習慣病の予防は主に医 療保険者が担い、事業者は作業関連疾患の予防を中心に取組む、こうした役割分担が国 全体のコンセンサスとしてできあがりつつあるものと理解しています。  次に、その他の要望を申し述べたいと思います。お配りしておりますシートの2枚目 以降をご覧いただきたいと思います。ここは、事業者と医療保険者との関係を示したも のです。(1)は、事業者が特定保健指導の実施について受託し、1人の産業医が保健指導 も含め判断する仕組みです。この場合、首尾一貫した対応が可能です。一方(2)は、自社 の産業保健を担っていただいている保健師、栄養士の方々がおられるものの、メンタル ヘルスあるいは先ほど加藤座長の発言の通り、長時間労働に対する医師の面接指導等の 対応に追われ、特定保健指導を受託できる余力がない場合です。私どもは、大企業であ っても特定保健指導をアウトソースするケースが少なくないのではないかと想定してい ますが、この場合産業医の判断と特定保健指導を行う医療保険者サイドの判断が重複す る恐れがあります。就労実態を熟知しているのは、産業医の先生であります。また、安 全配慮義務のリスクを負ってまで特定保健指導にコミットしたいという企業の声もあり ます。したがって、事業者が医療保険者に申し出れば、特定保健指導に産業医がコミッ トできる仕組みを整備することをお考えいただきたいと思います。  次に、3頁目をご覧いただきたいと思います。定期健康診断の健診項目と特定健康診 査の健診項目にズレがあると、労働者は二度の受診を強いられるという議論があるよう です。私どもも、1回の受診が制度の大前提であると考えております。ただし、健診項 目にずれがあっても、1回の受診が可能であることの理解を賜りたいと思います。上の (1)の例で申しますと、事業者は特定の健診機関等に定期健康診断を委託します。健 保組合は、同じ健診機関等に対し、定期健康診断を除いた特定健康診査特有の項目につ いて委託します。そうすれば、労働者は1回の健診で済みます。項目を合わせれば煩雑 さが解消されることのみの理由で、定期健康診断項目の見直しが行われることのないよ うにお願いします。  その他として、本検討会の検討対象から外れるかもしれませんが、最後にいくつかの 論点を申し述べたいと思います。第1に、個人情報の取扱いについて明らかにしていた だきたいと思います。例えば、ある企業では産業医と臨床医を兼務している場合、臨床 医として相談を受けたり診断したときの健康情報は厳格に取扱い、産業医として知り得 る情報と切り分けて取り扱っております。このような場合でも、臨床医の立場で入手し た情報に基づいて、事業者が安全配慮義務違反を問われるのではないかといった懸念が 払拭できません。また、現在保険局の検討会では、人事担当者と特定健康診査等実施担 当者の併任を禁止方向で議論がされると伺っております。人材が不足する中、出向等の 形で併任している企業が多いのが実態であり、この点の事情をご勘案いただき情報の区 分管理を徹底するということを前提として、併任が可能となるような取扱いをお願いし ます。  第2に、労災保険の二次健康診断給付は、特定健康診査が実施されればその趣旨、目 的が重複することから見直しを行うべきであり、例えばその対象者を40歳未満の労働者 に限るべきものと考えます。第3に、特定保健指導を担うことができる方として、現在 保健師、管理栄養士の方々が検討されているように聞いておりますが、必要とされる知 識や技能を習得すること、あるいはこれから習得することを前提に、看護師の方や、あ るいは必要に応じてTHPによって要請された産業保健スタッフの方々にもその一翼を 担っていただけるようお願いしたいと思います。  最後に、是非ご理解賜りたいのは、事業者は職業病対策、メンタルヘルス対策など責 任をもって取組んでいます。また、人材確保のために製造現場を中心に60歳以上の労働 者の雇用も進めていますが、60歳以上の方は生活習慣病を持つ方も多く、事業者への過 度な規制強化は、高齢者雇用の障害にもなりかねません。生活習慣病予防について、国 全体のスキームができあがった現在、事業者が生活習慣病予防にどこまで関わるべきか という点に意を払って、検討を進めていただければと思っております。以上です。 ○和田座長 どうもありがとうございました。それでは、これですべての団体から意見 の陳述をいただいたわけですが、それに関しまして質疑応答に移りたいと思います。特 に順番は決めませんので、どの団体の方でも結構ですので、質疑がありましたらお願い します。 ○堀江委員 大変貴重な意見を労使、あるいは健康診断を担当される機関の方からいた だきまして、ありがとうございました。いくつもあるのですが、まず1つずつお尋ねし ていきたいと思います。実は、使用者側の意見の中で、多くの個人情報を取得し、なお かつ就業管理をやっていく、そして保険者の立場からすると医療費の削減が求められて いる中で、例えば個人情報を基にした雇用差別等が起こる懸念もあるというような指摘 があったと思います。この点について、逆に労働者側にお尋ねします。即ち、個人情報 は労働者の健康の確保のために使用されるべきものなのですが、現状でも同様かと思い ます。こういった健康情報を更に増やすことによって、労働者の雇用差別につながるこ とがあってはならないと思うのですが、実態としてこれをどのように両方の制度を併存 させていくといいますか、そのような目的外利用が内部で行われないようにしていくべ きなのか、何か意見があれば伺いたいと思います。何か妙案はありますでしょうか。 ○中桐氏 残念ながら、いまここでお答えできるようなものはありません。しかし、そ のようなことで差別があってはならない、それは健康だけに限らず例えば障害者の方も そうですし、いろいろな方々において差別はあってはならないと考えています。これか らどのような仕組みができていくのかが見えてないので、どのような形で健康情報を保 護するか具体的なものが出てこないのではないでしょうか。 ○掘江委員 逆に使用者側にもこの点を伺いたいのですが、このような雇用差別はあっ てはならないと思うのですが、一方で議論の中にあったかもしれませんが、高齢者の雇 用確保というような観点では、別途再雇用制度という政策も進んでいます。一層の高齢 化が考えられる中で、おそらく異常値のたくさんある労働者の再雇用をすべきかどうか という判断をする際に、事業者が既に持っている健康情報を利用してはいけないという ようなガイドラインもない現状だと考えています。私個人的には、そこには健康情報を 利用するべきでないと考えているのですが、しかしながらそういった点も含めてなかな か情報が増えてしまうと難しいといった面もあるかと思います。何か良い方法はあるの でしょうか。 ○松井氏 理念的には、差別はあってはならないということだと思います。ただし、い まの高齢者雇用法に基づく再雇用制度などを導入している場合には、健康で十分業務に 耐えうることという項目を付けて対応している企業もあります。その際に、どの程度ま で把握して、あなたは再雇用が可能、あなたは再雇用が不可能だというところまで判断 しているかという問題があろうかと思いますが、私が聞いている限りでは、通常の就業 に耐えうる方なら可能だというようなやり方をしているのではないかと思います。先ほ ど、連合の中桐さんからあってはならないというようなことがございましたが、私ども が懸念するのは仮に腹囲を測定する場合、今の医学的な状況では、女性は90cm以上、男 性が85cm以上というのが確定しているという考え方と、そうでないという考え方もある 中で、先ほど全衛連さんのご発言の中で、現実に測定した中で誤差が相当あるというの を聞き、これを本当にやるのは非常に難しいと思ったところです。なぜならば、これは 私個人の経験で申しますと、今年人間ドックで急にいままで測られたことがなかった胴 囲を測られたら、私はやはり細くしてしまったという、反射的にそういうこともありま す。まあそれは、そんなことするお前が駄目だということになるかもしれませんが。定 期健診のような場で入れるとなれば、その測られる場を見られたくないとか、その結果 を知られたくない、反対に健診を受けることを忌避するようなことになると、私どもと しては非常に困るなというのが直感的な感覚であります。  もう1つ申しますと、メタボリックシンドロームのリスクが広く周知されており、さ らに一般健診に胴回りが入るとなりますと、胴回りが太そうな人が面接等に来たとき、 この人は危なそうな人と思ってしまう可能性は、もしかして否定はできないかもしれま せん。それは、内心とはいえ、直接的には職務に関係がないという意味で、意図をもっ て行う就職差別になるのかもしれません。しかし、長期雇用を前提とする採用を行う場 合には、リスクマネジメントとして胴回りが、中長期的に職務遂行能力に関係があると いうように、もしかして頭の片隅といえどもそのように思ってしまうのかもしれません。 更にいちばん重要なことは、ではその胴回りの太い人が現実にいま居るとすると、この 人についてはこれはいまは内臓脂肪が多いとのようですから、内臓脂肪を減らすような 配置を行うのかどうかと、外回りにするような営業に配置するのかということまで、企 業側は本当に考えるように求められるんですかと言われたら、やはりそこまでは考えて ほしくないと。それは、やはり働く方にとってもあまりにも酷なのではないかと思いま す。そういう意味合いで、先ほどの例で、胴回りまでも測るのは、おそらく先ほどの全 衛連さんのご発言を聞くまでは割と簡単なのではないかと思ったのですが、あるいは基 準局は簡単だというようなことを考えているような節があるのですが、やはり企業側と してはこの点については納得しかねるということです。多少長くなりましたが、以上で す。 ○今村委員 非常にそれぞれの立場はよくわかって大変参考になったと思うのですが、 日本経団連さんや商工会議所さんが、とにかく健診項目の拡大は駄目だという原則だと いうお話があったのですが、これはいくつかの論点があったと思います。例えば、仮に 費用負担は発生しないという場合に、今回すり合わせをするときにいくつか違っている ものがありますが、これだったら入れてもいいということが検討できるのかどうか。  あるいは先ほどお話いただいたように、安全配慮義務違反があるから拡大するのは困 るから、一項目たりともこれは増えては困るというスタンスなのか、その辺のことを忌 憚のないご意見として教えていただければと。  臼田さんにこの場所で議論する話ではないのかもしれませんが、腹囲の測定そのもの がこれだけ誤差が大きいから意味がないというと、前例としては特定健診においてもこ れをやらないほうがいいというご主張なのか、そこをまず先にお聞きします。 ○加藤氏 いまの今村先生のお話ですが、私どもとしては、たぶん健診だけ取って見る と、おそらくそんなにコストは上がらないかもしれない。ただ工数を考えると多少問題 があると思いますので、逆に保健指導の所は非常に高い料金をいろいろなアウトソース 先が提示しているので、ここは大変だと思っております。いまのところあまり保健指導 の話は出てきませんでしたが、実際にはそこの料金がかなり高いことが提示されており ますので、これはかなり大変かなと思っております。  ただ、日本経団連の中でいろいろなアンケートや意見交換をした中では、安全配慮義 務がどこまで広がっていくかが非常に懸念されております。現実に人間ドック等を企業 の中で行っている所もたくさんありますし、それに基づいて産業医の先生が事後措置を している所もありますが、そういったものが逆にこれ以上広がっていく中で、法律で義 務づけられることにより、ますますそこが強くなりますと、これはどこまでやるべきか という議論が必要ではないかと思っています。  いままで労働基準局の中でいろいろな施策を展開されてきましたが、健康診断の位置 づけは何だろうかと、常に議論になってきたと思うのです。というのは、日本とフラン スを除いては、あまりこういったことは現実にされていない状況ですし、なぜ日本だけ なのかということもある気がしますし、個人情報の保護を考えてみても、どれだけのこ とを企業が知り、どれだけの拘束力を持って企業ができるのかについても、悩みながら やっているのが現状ですので、その辺をいま実施しているものについては、企業の労働 者の健康を支えるという部分でのニーズであって、法律で規定すべきところではないの ではないか。そこまで規定されるといままで以上に安全配慮義務が強くなってしまって、 対応が難しくなってくるという懸念を、逆に持っております。 ○松井氏 付け加えて申し上げますと、健診項目の所にそれほど費用負担がなければと のことですが、ちょうど保険局の方がいるのではっきり申し上げますと、40歳以上の被 扶養者等については、いままでは老人健診として市区町村負担で行ってきたものを、今 度は各保険者に対する義務化に変わったところです。  別の言い方をしますと、この部分は労使折半で負担をしている健保組合や政管健保を 想定してお聞きいただければと思いますが、すでに費用負担の付け替えは行われている ものと、私どもとしては認識しております。ですから、少ないから追加的にどうのこう のではなく、元はそれだけ変わっていることもまず踏まえて議論をしていただかないと、 労働基準局の立場からだと少しだからよろしくと言われても、それは違いますと言わざ るを得ません。 ○森氏 追加で申し上げます。私どもで聞いている限り自由診療ですので、いちばん安 い所で大体7,000円ぐらい、高い所で2万5,000円ぐらいまでバラつきがあります。例 えば高いほうは、個人にも健診の結果を送り、会社にも送るとか、あるいは細かな検査 結果について一つひとつ所見というかコメントをきちんと付けて、丁寧にやってくださ る所もあるので、非常にバラつきがあります。ですから、診療報酬ベースで0円、ある いは変わらないといっても、健診機関のプラスアルファーのサービスが加わる可能性は 非常にありますので、結果としてはある程度は絶対に増えて、負担にならざるを得ない のではないかと思っています。  安全配慮義務が課されることで、企業にとっては負担感は確実に、中小企業であれば あるほどギリギリのところでやっている事業主さんが多いので、できるだけ本来ならば 定期健康診断の項目についても、本当にこれは必要なのかなと疑問に思いながらも、健 診パックもありますので、それにそのままお願いしている状況ですので、そもそもの負 担を減らしていただける項目があるならば、むしろそちらをお願いしたいのが本音だろ うと思います。 ○山崎氏 中小、零細企業は特に先ほど言いましたように、考え方が事業主によってみ んな違うのです。例えばそういうことに良心的な経営者であれば、お金の問題ではない、 みんなやってやろうと家族的な所もあります。ある程度中堅、合理的な管理をしている 所は、本当に機械的にやってしまう所もあります。だから画一的にやるのは企業の実態 をよく見ていただかないと、そこに違いが生じてくるような気がします。  先ほど言いましたように、いろいろな問題でもパック料金のものも結構ありますし、 簡単な表を1枚くれるお医者さんもいますし、もっと丁寧にそれぞれやってくれるお医 者さんもいます。その面で見ますと、従業員、事業者はお医者さんの対応によってもい ろいろ考えが変わるのではないかという気もします。 ○臼田氏 基本的な考え方として、安衛法による健康診断、高齢者医療法による特定健 診は、別なものだと考えたほうがいいのではないかと思います。従来の安衛法に基づく 定期健診は、第66条の規定の目的に即して規則に定められた項目について行われる。 特定健診は高齢者医療法に基づいて今度新しく始まる健診であるから、この法律の目的 に合わせて健診項目が定められるのは当然です。したがって、本当は無理に合わせる必 要はないと思うのです。しかし健診現場では、両方一緒にやることになってくると問題 が出てきますが、その場合は両方の項目を全部やればいいと思います。ただ、両制度の 健診を別々に行うときは、異なる健診結果を保険者と事業主に別々に返すことになって くると思うのです。そのような場合は特に、事業主と保険者が十分話し合って連携をと っていかないと、費用負担以外にも事後の保健指導の進め方の面でもいろいろな問題が 出てくると思うので、双方の守備範囲をどうするかを事前にしっかりと話し合う必要が あると、私は思っています。  腹囲については、定期健診ではやる必要はないと思いますが、特定健診では段階化、 さらに保健指導の階層化が新しい対策の入口になっているわけですから、これはやらざ るを得ない。そこが入口で始まる健診ですから、またもうすでに決められてしまってい るわけだからしょうがないと思うのです。 ○今村委員 私が申し上げたことはたぶん松井委員はおわかりだと思いますが、要する に測定として制度のバラつきが大きいからという意味で、定期健診に入れることが適当 ではないという理解をしたので、それであればという意味で伺ったのです。 ○臼田氏 あえてやる必要はないということです。 ○今村委員 そもそも全く別の項目で考えていることはわかりました。  ちょっと細かいことで恐縮ですが、先ほどの安全配慮義務違反ですが、たぶん後ほど 議論になると思いますが、ヘモグロビンA1cで、例えば血糖値を測る尿糖を診る、ヘモ グロビンA1cを診るにしても、糖尿病という意味での括りとしては同じであって、安全 配慮義務違反という部分での何か新たな拡大がそこで発生するのではなくて、どういう 項目が糖尿病を診るのに有用かという判断だと思うのです。実際上、理屈の上では、た ぶん費用負担が発生することは現時点では起こるので、先ほど申し上げたかったのは、 そういう項目で新たな安全配慮義務違反が増えることがもしなければ、なおかつ費用負 担がなければ、そういうことは強要されるおつもりがあるかどうかという話です。  松井さんの先ほどの制度として費用が増える増えないということではなくて、もっと 細かい話ですが、その辺です。 ○加藤氏 根幹の話になってしまうかもしれませんが、基本的に健診項目は、ここ10 年ぐらいで生活習慣病に対する健診項目が、定期健診の中にもいろいろと入ってきてお ります。要は、今回の健診項目を入れることによって、この先どうなっていくのかとい う懸念を皆さん持っています。ですから、ある検査項目で制度が良くなったという議論 の前に、もう一度原点に返って、企業における健康管理の役割は一体何かをきちんと議 論して、健康保険組合の役割と企業の事業主が負うべき役割を、もう一度議論していく ことが重要ではないかと思っています。  そういう意味で、今回はこの検討会の中では時間的には難しいと思いますが、是非国 としても新たな検討会を設けていただいて、国民全体の健康管理をする中で事業主とし ては何をすべきか、健保としては何をすべきかを根本から議論していかないと、いまま でのように追加追加の形になりますと、複雑になってどんどんわかりづらくなるような 気がします。併せて、個人情報の問題も以前はあまり問題にならなかったが最近は非常 に大きな問題になってきておりますので、しっかりとした制度を作り上げるのであれば、 世界の動きも見ながら作り上げるべきではないかと思っております。 ○松井氏 ちょっと付け加えます。この問題については、私は昨年の社会保障審議会医 療保険部会で発言をしたことを、改めて思い起こします。そのときに、ちょうどそちら におられる大島企画官が回答してくださったと記憶しておりますが、安衛法と法案化し ていく高齢者医療確保法の健診についての調整は、していくのかという質問をしたとこ ろ、調整をしますという回答で、最終的に法案に盛り込まれたものは、事業者からデー タを提供できるという調整でしかなかった。私は、健診項目を合わせることはあり得な い、健診項目は別でもデータは提供できるという認識を持ったしだいです。  もう1つ、加藤座長が申し上げましたが、反対に健診項目を今回1度で合わせるとし ます。そうすると、今後高齢者医療法に基づく健診項目が拡大していったときに、事業 者の実施する定期健診の項目も、自動的に合わせるのですね、本当にそうですか。今回 私の知る限りにおいて、高齢者医療制度ではなくて医療制度改革の議論が行われている ときに、労働基準局の中でこの問題についてどれだけ深く議論されたのか、私は承知し ておりません。おそらく、ほとんどしていなかったと思います。  加藤座長が申し上げたことは、いままできちんと議論をしていないならば、新たな仕 組みの中で、日本として取り組みをしていくのであれば、その中における定期健診のあ り方は何かということをそもそも論から議論をして、対応をしていただきたいというの が私どもの趣旨です。ですから、ヘモグロビンA1cで見たほうが正確だからよいだろう という話ではないということを、是非ご理解いただきたいと思います。 ○河井氏 私も日本経団連さんと同じ意見です。そもそも論で安全衛生法の定期健康診 断のあり方についてもう一度討議していただかないと、この問題は健診項目の見直しの 問題ではないと思うのです。費用負担的なものは最終的に結果として付いて回るもので あって、中身の見直しをもう一度原点に立ち返っていただいて、安全衛生法の業務に起 因する疾病予防について、もう一度ご検討をいただきたいと思います。以上です。 ○臼田氏 いまのお話で、従来健診項目を増やしていくときは、中央労働基準審議会で 建議されてそこで検討されたと思うのですが、いまは政策審議会ですか。今回はあまり 時間がないから急いで検討しているのだと思いますが、そういう会議でしっかり審議し ていただくほうが、いままでもやってきたことですし、筋道ではないかと思うのです。 ○和田座長 それはこの検討会を終えてから結論を出して、これがそのまま通るわけで はございません。それから、政策審議会に掛かります。 ○山崎氏 どこかで見たのですが、アメリカの報告書で、安衛法上の健診項目はあまり 根拠がないと。血圧ぐらいが最も根拠があって、あとはあまりないというのをどこかで 見た覚えがあります。その辺は専門的にはわかりませんが、その辺はどうなのでしょう か。 ○和田座長 それは考え方の相違が、かなり入っているわけですね。長期的に見るか、 短期的にある程度のところで管理できるかどうかという観点とか、ここはほとんど最終 的に年をとってからの死亡率か何かで、大体結論はそこで見るわけですから、勤めてい る間だけの管理がこれでできるかというと、ちょっと考え方や判断の仕方が違うわけで す。 ○相澤委員 日本経団連の資料は大変クリアカットに、安衛法と高齢者医療確保法との 住み分けというか目的をきちんと出していただいたわけですが、問題は業務上疾病とい われる職業病の時代から、作業関連疾患の時代になってきたということが、時代背景と してあると思います。作業関連疾患というのは、わかりやすそうで非常にわかりにくい です。どこから作業起因性で、どちらかが持病かというのは全く連続的なものですから、 作業関連疾患を防止する上では、労働者の健康についての情報は、できるだけ得ておい たほうがいいと思うのです。  事業者ができるのは、作業時間、あるいは労働負荷を減らすこともありますが、これ は人によってさまざまですので、最終的には生活習慣病、あるいはリスクを減らすこと が、作業関連疾患の発生予防になると思うわけです。  平成元年にTHPができて69条が出たわけですが、これは残念ながら必ずしもうまく いっているとは思えないのです。うまくいっていない1つの理由は、個人の努力が十分 でなかったということと、努力義務だったことも1つあると思います。ですから、これ を特定健康診断と、その後の保健指導をある程度義務化をしていくことで、個人へのア プローチは、少なくともその頃よりはきちっとできるのではないかと思います。安全配 慮義務もありますが、むしろ労働者自らの健康情報をできるだけ多くとらえることによ って、事業者の負荷も逆に減る可能性もあるのではないかと考えています。 ○加藤氏 先生の言われる点、労使が自主的に行う分について我々は決して否定するわ けではないのですが、要は企業責任の部分と個人の部分、それをどこで切り分けていく かだと思うのです。国全体としての考え方が、この部分は学校保健で、この部分は産業 保健で、この部分は地域保健でという、そういったものを全体に見ながら、この部分は こうしていこうというのがあればわかりやすかったのですが、何か付け足し的に出てき たかなという印象を受けております。決して作業関連疾患というのは日本だけではなく て、ILOやWHOでももともと言われているわけです。そういった中でヨーロッパや アメリカがあまり動きがないのに、日本だけ何でこうやって動いていくのかという部分 が1つ。  企業としての責任は、今年4月にも改正されましたが、要は負荷をいかにして減らす かという部分が極めて重要であると思っています。  例えば肥満の人たちは、どれだけ企業の中で指導し、本当にお前は食べるな、運動を しろと言って、拘束しながらやっていけるのかどうかは、いままでの感じや、私の経験 から疑問に思うところがあります。逆に、企業が指導しなかったから俺は体重が増えて しまったと訴えられることはまずないとは思いますが、仮にあったとしたら、これはど こまで生活の中に事業主として入り込んでいいのかというところが、いちばん問題にな ってくるのではないかと思っています。  THPにしても今回の問題にしても、先ほど申したように、これがサポートの部分と して企業もやっていくということであれば、現実に人間ドック等も健保組合と企業と一 緒にやっている所は極めて多いわけですから、そういうことであればいいのですが、責 任の部分でどこまで拘束力を持ってやっていくかというところに、疑問があるのではな いかと思います。 ○堀江委員 少し大きな質問になるかと思いますが、日本経団連と連合の両方にお尋ね します。先ほどTHPのお話が出ましたが、THPの場合は、どちらかというと専門家 を養成して、それによって事業者が努力義務ですから、必要と認めればそこで事業を展 開する。そしてリターンがあれば、それは事業者の繁栄につながり、また労働者も健康 になるという政策だったと思います。これはどちらかというと専門家を育てていき、事 業場の特色はその現場で考えると。その際に産業医が中心になって情報も見ますし、ま た事業場の施策も検討する枠組だったと思いますが、今回の検討会は、むしろそれより は国が細かい検査項目を決めていく、国のデザインを前面に出した改正を検討している わけで、両方少し違う政策の進め方なのかなと。大きな流れを見ますと、専門家を養成 して現場のことをよく知っている産業医が中心にやるということで、中身は特に決めな いと。一方では、中身も細かく決めたほうが、全体の底上げになるという考え方も当然 あるわけで、これは答えにくいとは思いますが、労働安全衛生法は、労働者の安全と健 康を確保するという第1条の目的があります。これを達成するためには、どちらの方向 に行くべきとお考えになっておられるのでしょうか。 ○加藤氏 非常に難しいテーマだと思います。THPについても、健康日本21について も、今どのような状況にあるのか、我々はあまりピンときていないのです。  THPは一昨年に中災防で検討委員会をつくり、報告書が出ているはずですが、今回 の安衛法の改正の中にも出てきておりませんので、ちょっと止まってしまっているのか なと思います。要はその辺の反省を踏まえて、先ほどPDCAの話が出ましたが、その 辺は何が問題でどこがうまく回っていないのかがもう少し明確になりますと、今回の中 にそれをどうやって活かしたらよいかが出てくるのですが、これがうまくいかなかった ら新たな施策というのは、これを繰り返すだけではないかという気がしております。  私ども企業が心配しているのは、例えばシルバーヘルスプランやTHPのように、数 年経つと何かなくなっていってしまう感じがあるわけです。では、また今回もそういう ようにならないかと。企業は人を採用し、資金を投入していく中で、本当に継続的にや ってもらえるのかという懸念をかなり持っているのです。ですから、その辺の基本的な 考え方をしっかりとしていただかないと、資源と資金を投入するだけでは長くは続かな いようであれば、これは何の意味もない。  従業員の健康が重要であることは、先ほど申しましたように高齢化社会の中で、やは り再雇用していかなければならない。そうしなければ日本の経済は成り立たないわけで すから、それについては全く異論はありませんし、全員で考えていくことは当然だと思 っております。その辺の継続性の話を含めて、国のきちんとした考えを是非持っていた だき、その上で産業保健の役割をもう一度検討していただきたいというのが、我々の願 いです。 ○堀江委員 もし何かありましたら。 ○中桐氏 連合の中で議論をしたことはありません。私見になりますが、THPは北欧 からきた考え方だと思いますが、その当時はそれなりの斬新な考え方だったと思います。 その後、過重労働問題が大きくなって対策がそちらに移っている。快適職場づくりは、 いま連合でアンケートを取ってもあまり取り組んでいない実態です。職場が変わってい けばその流れも変わっていくと思うのですが。  いちばん最初に申し上げましたが、残念ながら検討する時間があまりない、しかも片 方ではもう決まっている、それをどう調整するのか、やめるわけにはいかない。それが 非常に残念ですが、可能な限り今回できることを整理する、それがここの仕事だと思い ます。ここでできないことを求めても仕方ありませんし建前だけ主張しても全然前に進 めませんし、労使の意見は合わないかもしれませんが、本来安全衛生対策全体でいうと、 労使の協力で取り組むことが基本スタンスです。ただこういうことになると建前が出る のは致し方ないと思いますが、も少し兜や鎧をとって話し合いをすることが必要ではな いか。  また、この場だけでは決められない健康保険制度の大きな問題がある。今後の医療費 の抑制をどうするかという問題もあるわけですから、それとここの議論というのは、そ ういう部分が欠落しているのでどうしても考え方が違うというのが、いまの状況です。 ですから、次の会合で結論を出すということですが、実施にまだ2年あります。準備作 業がいっぱいあって大変でしょうが、もう少しそのような議論を詰めないと合意点が見 つからないのではないか。 ○加藤氏 追加します。いまでも現状は、企業によっては企業と労働組合と一緒になっ て、健康づくりに取り組んでいる会社は結構あるのです。そういう意味では、それを否 定するつもりは決してありませんし、そういったことは労使一体となってやらないと、 効力が上がらないと思うのです。ただそこの部分で、自主的に実施している部分と法律 で拘束されてやらなければいけない、それも規定された方法でやらなければいけないと いうところが成り立つかどうかということだろうと思うのです。ですから、国民全体の 健康に関する啓発活動を、もっと私はやるべきだと。  例えばエイズの場合でもそうですが、日本のテレビは本当に短時間でPRが終わって しまうのです。ヨーロッパへ行くと、結構いろいろなことを長くやっているわけです。 国民全体の意識はかなり上がっていると思いますので、そういった活動に結び付くこと を国としても考えていかないといけないのではないか。結局は名前だけで終わってしま う可能性があるということを懸念しております。 ○臼田氏 THPの話が出ましたから、直接この事業を行ってきた者として意見を述べ ます。THPはどうして駄目だったかと言いますと、お金と時間がかかることなのです。 これが補助金のあるうちはやりますが、補助金が切れてしまうとあとはやらないという のが現状だと思います。この事業を継続しているところは、いまでもないことはないの です。新潟、石川、岡山などでは、健診機関の事業として成り立っている所があるので すが、全国的には火が消えたような状態になっていると思います。  今度は保険者にTHPでやっていたような保健指導の実施が求められると思うのです が、では誰がやるかが問題となってきます。アウトソーシングにより私どもの健診機関 が委託を受けることが考えられますが、その場合産業医がそこに関わっていくのはかな り重荷になると思います。私は嘱託産業医をたくさんやっていますが、現在の職務に加 える形で特定保健指導まで関わってチームリーダーもやっていけといわれると、とても そこまで手が回りませんし、できないことだと思います。産業医は企業に所属してある いは嘱託産業医として職責を果たすことができるように、本来の職務に限定しないと駄 目だと思います。 ○労働衛生課長 いままでいろいろ議論に出ていた定期健康診断の位置づけは、先ほど 堀江委員からご紹介がありましたように、労働安全衛生法の第1条で労働者の安全と健 康を確保することが法律の目的であると。さらに産業医を置くなり衛生管理者を置くな りいろいろな措置を講じる、それも事業者に義務だけでも課す、それはある意味では労 働者の健康確保があるわけです。定期健康診断についても、当然労働者の健康管理があ って、なおかつその結果、就業上の措置や事後措置に使うといった趣旨で、法律に位置 づけられていると考えています。  先ほどお話のあった平成元年からの話ですが、平成元年、平成11年と定期健康診断の 項目が追加されて、生活習慣病対策にも活用できるということで、ある程度定着してい る。すでに健診も長くやってきているわけですし、その考え方は定着していると我々は 考えていまして、日本経団連さんのお考えはちょっとどうかなという感じもいたします。 いままでやってきて、かなり事業所、あるいは労働者自体にも定着している、そういっ たものを今回新たにメタボリックシンドロームの特定健康診査が出てきて、その項目を 労働安全衛生行政の観点からどうするかということで、検討をお願いしているわけです。 そういった趣旨をご理解いただきたいと考えています。  なおかつ先ほど言われましたとおり、いろいろ議論はまだあるのではないか、今年一 杯で結論づけるのはちょっと難しいのではないかということもありましたので、場合に よっては次回、次々回も考えてみたいと思います。 ○和田座長 基本的にはどちらにしてもこの検討会は、とりあえず実際には来年から マルクスダービーか何か、もう始まるのですか。それまでにある程度細かく決まってな いと困るという事情がありまして、実際に施行は平成20年。 ○健康局生活習慣病対策室長 試行事業という格好で、健診のものはもう始まってます。 ○和田座長 ですから、なるべく早く、2年間あるという余裕は、ちょっとなさそうな のです。とりあえず今回の検討会は、そういった向こうの健保のメタボリックシンドロ ームの項目とこちらの項目との、一応なるべく整合性を保ちましょうと、それをとりあ えず検討しましょうというこの会の目的であるわけです。  私自身は先ほど皆さんがおっしゃったように、将来じっくり時間をかけて、抜本的な 健康診断項目の改正については、じっくりこれから是非やらなければいけないことだと 考えています。とりあえず今回は、ある程度は範囲は狭いですが、それでやっていくこ とが1つの考え方にあることです。もちろんしたがって私自身は、いま貴重な意見をい ろいろいただきましたが、大体の共通点としては、基本的にはいままでの健康診断項目 はある程度尊重したほうがいいのではないかという感じがします。ただ、しいて言えば、 当然事業者の責任、逆に言えば安全配慮義務がかかるかもしれないような労働起因性や 適正配置、もう1つは作業関連疾患、中でも脳心の、それに関連するものは、是非項目 として入れたい感じを持っています。  もう1つは、なるべく事業者の負担を少なくすべきであるという観点も是非考えたい、 基本的な線はそのように考えているわけです。先ほど出ました日本法に関してはきちん と考えて、それはできたら入れていきたいと考えています。  あと具体的なことになりますが、定期健康診断の項目のほうが多ければ、そういう観 点からいって別にかまわないわけです。だから特定健診が少なければ、全部情報はそち らに流せるわけですから、それはそのような感じでやっていければいいと思います。具 体的な臼田さんから先ほど腹囲の問題が出ましたが、これは取り入れるのは適当でない と断言されていましたが、いま労働者はメタボリックシンドロームに非常に関心を持っ ていますし、お腹が出ているから駄目だという感じではなく、それは体重と同じことで すね。腹囲の測定にしても血圧の測定にしても、誤差はいっぱいあるわけです。大体そ れでどの程度で測るかを一応基準として決めて、そして管理をしていきましょうという だけのことで、それ以上増えたら病気や認定医師がいますという意味では全然ないです。 リスクの判断の項目にすぎないわけです。だからそれを超すと危なくて、少ないといい というわけではないわけで、全体は連続していると思うのです。そのような観点で判断 していただければと思っています。 ○臼田氏 血中脂質検査については、総コレステロールとLDLコレステロールの両方 やれということですね。いままで総コレステロールをやってきて、データも残っている わけですし。 ○和田座長 だいぶ最近の日本の考え方は、LDLを主体にすべきだ、しかも直接測定 ができるようになったということですね。LDLを重視すべきであるという考え方が、 ちょっと強い感じもするわけですね。 ○臼田氏 はい、LDLは入れるべきだと思います。 ○和田座長 クロアチニンを一次スクリーニングと定義づけていますが、血清クレアチ ニンは三次予防のスクリーニングのためのですね。 ○臼田氏 定期健診の健診項目は一次スクリーニングに主眼が置かれています。特定健 診では二次以下の段階的にあとのほうの項目を入れるかどうかの問題が混在していると いうことで、一次だけの議論ではないのですか。 ○和田座長 一次ではないでしょう。GFRが糸球体濾過率が半分以下、あるいは20% ぐらいまで下がらないとクレアチニンは上がってきませんから、一次スクリーニングと いう位置づけというのは、ちょっと違うような感じがするわけです。 ○臼田氏 一次スクリーニングの項目は双方対比しながら、二次以下の項目は新たに定 期健診に加えるべきか否かについて、検討していただければいいと思います。 ○和田座長 ちょっと細かいことですが、基本は労働起因性と適正配置、事業者責任と しての作業関連疾患、その辺をきちんと踏まえていくということでどうかなと考えてい ます。  あと先ほど言いました情報保護についてはきちんと考えていくと。基本的に抜本的な 改正は、もっと時間をかけてこれからじっくり是非やっていただきたいと考えています。  保健師に関しては、事業所をよく知っている産業医がタッチしないというのは、産業 医の立場としては非常におかしなことになるし、いままでの労働法に関して、齟齬が生 じてくる可能性があるわけです。産業医や産業保健スタッフ、あるいはTHPのいろい ろな指導士や衛生管理者、このような人たちがきちっと活躍できるような場を、できた らつくっていくと。大体基本的には、そのように考えています。 ○臼田氏 健診の事後措置として、当然産業医や産業保健スタッフがそこに関与してく るわけですが、今度の高齢者医療法のもとで保険者は、特定保健指導の結果を活用する 場合はどうするかということが問題として出てくるのではないかと思うのですが。 ○和田座長 ですから、産業医や保健スタッフがきちんと協力して資格を取って、指導 ができることになればできる。 ○臼田氏 保険者はそれを活用するということですね。 ○和田座長 活用するという形です。ただ実際問題として、産業医の先生方がその場で やれるかというと、ちょっとこれからは大変なところがあるので、保健指導はいままで の定健のあとの保健指導は、産業医がきちんとやっていくべきでしょうね。 ○臼田氏 はい、定期健診の事後措置としての保健指導についてはそのとおりです。 ○和田座長 メタボリックシンドロームに関しては、それはまた保険者がちゃんとやる と、そのような感じでもいいのではないかなと、私自身は思っています。 ○臼田氏 はい、事業者・産業医と保険者の守備範囲を区分けしたほうがいいと思いま す。 ○和田座長 ほかに何かご意見ございますか。 ○今村委員 いまの保健指導の話ですが、おそらく特定保健指導であっても、産業医を 活用できる仕組みは残してほしいというお話だと理解しているのですが、やれというこ とではなくて。 ○和田座長 そうです。もしできるところはそれを残して、ということですね。 ○堀江委員 いまのポイントですが、日本経団連の出された2枚目で、いろいろなパタ ーンが特定保健指導については考えられるとあります。いま議論になっているように、 私は産業医の位置づけを明確化すると書いてありますが、就業場の措置や適正配置に関 する課題については、産業医に情報を集めなければ、当然事業者も何も動かないわけで すから、それは産業医が健康情報の生データを適切に確保して事業者に伝える役割を担 う、重要な役割があると思います。  ところが今回特定保健指導が入ってくると、メタボリックシンドロームが中心になっ て、これに特化した保健指導が実施されるわけです。前の委員会で2つ課題が生じると 思っています。  1つは、本来事業者からの情報がないまま特定保健指導をするので、間違った指導を してもらっては困るという点があります。労働者というか被保険者から訴えに基づく指 導に限られるわけですが、そこは就業場の措置に関することには言及すべきでなく、そ れは産業医、あるいは事業者に戻していかなければ、大変な困難を招くだろうという懸 念が1つあります。  もう1つは、逆に労働者、あるいは被保険者が、事業者側に言ってほしくないとおっ しゃっても、逆に就業場の措置を加えなければ健康状態が改善しないと断定はできない が疑いがある場合には、事業者側に何らかの連絡する方法がないと、事業者側もせっか く特定健康診査をしても、その結果に結び付かないことになります。そこの手立てを考 えなければいけないのですが、私の知る限りにおいて、医療保険者が実施し、事業者に 何らかの情報を戻すことになりますと、第三者提供になるのではないかと。とりあえず 個人情報保護法の中で禁止されている状況だと思いますので、逆向きというか、事業者 が健診結果を保険者に渡すのは法的な措置としてやることになったわけですが、逆向き というのはないわけですよね。そこのところは、ガイドラインか何かに書いていただく ことはできないでしょうか。 ○保険局医療費適正化推進室長 委託契約をして、特定保健指導を委託するという形に すると。先に出ていた意見ですが、要は産業医さんをはじめとした組織に委託をしてや る仕組みであれば、十分流せるということです。 ○堀江委員 それは、この(1)ですか。 ○保険局医療費適正化推進室長 (1)になります。 ○堀江委員 (1)は珍しいと思うのです。 ○保険局医療費適正化推進室長 (1)という仕組みにすれば、それは情報になるわけです。 ○堀江委員 おそらく(1)は、相当少数だと思います。事業者が直接その委託を受けると いうことであれば、もちろん事業者がやっているわけですから結果は手元にあるわけで すが。 ○保険局医療費適正化推進室長 ええ、そうですね。 ○堀江委員 そうではなくて、(2)や(3)の状態で、ピンクの枠に特定保険者は入っていま すが、ピンクの枠から黄色の枠に情報が戻る仕組みがないと、実際には就業の措置がで きないと。そこについては何らかのガイドラインで、これは個人情報保護法に触れない ということを言っていただかないと怖くてできなくなるのではないかと思っているので すが、いかがでしょうか。  要するに、労働者にとってはこれは雇用の問題なのです。変なことを言われると、僕 の労働条件や雇用の確保に危害が及ぶという誤解の部分が多いと思います。そういった ことが発生したときに、保険者がそれを事業者に伝えることができない状態に現行法で はあるのではないかと。ですから、そこを何らかの方法で産業医に伝えなければ、情報 が生きないと思います。今日は保険局に質問する立場ではないので、日本経団連さんは そこのところはご指摘はなかったかに思えますが、どうでしょうか、何か方策はありま すか。 ○和田座長 産業医が情報を得ることは、それは結局。 ○堀江委員 いえ、これは保険者からですので、立場が違いますから、保険者から産業 医に入るところ、何か情報をもらう手段を考えておかなければいけないのではないかと 思っています。 ○和田座長 健康診断の結果というのは、産業医の所にきますよね。 ○保険局医療費適正化推進室長 健診結果は、産業医さんは当然、会社でやる事業主健 診の結果としては知っていることです。 ○堀江委員 いえ、事業者の所に行きますので、産業医には行きません。これは、衛生 法でしょう。 ○和田座長 そこは、事業者に行ったらまずいのではないですか。 ○堀江委員 そうですよね。事業者の所に来るのであって、産業医の所に健診結果が来 るわけはないですね。 ○労働衛生課長 基本的にはそうですが、実際にはケースバイケースで対応されていま す。 ○堀江委員 実際ではなくて法律上事業者の所に健診結果が来て、その一部で有所見の 所を産業医が見るというのが、日本の法制度ですね。 ○労働衛生課長 事業者が保管をすることを考えますと、事業者に来ていると。 ○臼田氏 保険者と事業主が連携しておかないと、産業医がつまはじきになることがあ ります、特定健診に関しては。 ○堀江委員 おっしゃるとおりです。 ○衛生専門官 個人情報のいまの留意事項には、なるべく事業者に生データをそのまま 渡すのではなく、産業医や産業保健スタッフをワンクッション置いて、加工して必要な ものだけを渡すのが望ましいことを言っています。法律上事業者にダイレクトに行くか どうかは別にして、我々としては産業保健スタッフを介して、健康情報は流すべきだろ うと。保険者と ○堀江委員 ちょっと通達と省令をごちゃごちゃに言われるとわからなくなりますので、 省令のレベルでは、事業者が実施し事業者が結果を保存することしか規定されてないわ けですね。 ○相澤委員 それは基本健康診断でしょう。この特定健康診断の場合は、それ以外のも のですから、それは産業医でいいのではないですか、その内容としては。 ○堀江委員 いや、そこのところは、いまのところ何も書いてないです。 ○相澤委員 だけど、そのようにしないとおかしくなるのではないですか。それから、 保健指導をした上でいろいろな情報が入ります。それは産業医に来ないと、事業主に最 初に行ってしまうと、これは非常に危ないですね。 ○堀江委員 現行法上は、おっしゃるとおりです。 ○相澤委員 危ないと思います。別ですからね。 ○労働衛生課長 ただ、事業者健診は当然、事業者なり産業医を経由する場合もあるで しょうが、特定健康診査について産業医が絡むかどうかというのはまた別もので、その データをあえて事業者が望まないとすれば、当然産業医のほうには来なくていい。 ○堀江委員 だんだん議論が違う方向に行っているのですが、そうではなくて、特定保 健指導の結果で就業の措置が必要だと疑われた情報は、事業者が何らかの方法でないと 就業の措置に結び付かないという懸念ですよ。 ○労働衛生課長 それを事業主が知るかどうかというのは、また別問題ですね。要する に知る必要があるのかどうかと。 ○堀江委員 いや、就業の措置のために役立てないというのは、おかしいのではないで しょうか。 ○和田座長 それは定期健康診断の結果で産業医がそれを判断して、事業主に伝えるわ けですから、そちらを特定健診の結果というのは、個人に対して指導がいくわけですよ ね。 ○堀江委員 そこは政策としては分けてしまうのですか。 ○和田座長 別の仕組みですからね、それは。 ○堀江委員 特定保健指導の(3)の場合に、事業者によっては保健指導は現行法上は努力 義務だからやっていないというケースもあると。  平成17年労働安全衛生基本調査の速報がありますが、ここで保健指導の実施は27% です。おそらく72.6%の事業者が保健指導をやっていないのですから、データからして (1)、(2)は少数で(3)がほとんどと考えられます。せっかく保健指導を今回の法改正でやる わけですから、そこで明らかになった例えばメンタルヘルスの問題や喫煙の問題も含め て、いろいろな保健指導で出てくる話が、事業者の所に全然活かされない仕組みという のは良くないのではないかと思った次第です。 ○和田座長 メンタルヘルスの問題は、特定健診には入ってこないですよ。 ○堀江委員 では、メタボリックに限った話ですが、メタボリックの話でも就業の措置 が必要だからこそ、定期健診に入れるという話をしているわけです。 ○和田座長 就業措置までは、特定指導ではいかないと思うのです。個人に対するほか の健康の指導を。 ○堀江委員 行かないのであれば、定期健診に入れる必要もなくなるのではないですか。 ○和田座長 だから定期健康診断は、産業医がきちんと保健指導をやると。 ○臼田氏 アウトソーシングとして、健診を一緒にやると思うのです。特定健診、それ から定期健診を。その場合にデータの処理に関して、従来の報告はあるわけです。全体 のデータ、それから有所見者をそこから引っ張り出す、つまりリスト。個別に一人ひと りに結果を返さなければならない。もう1つは、特定健診の保険者に返さなければなら ないデータの4つができてくると思うので、一緒にやったときにそれぞれに抜かないと 駄目だと思います。事業主に返すデータ、保険者に返すデータは項目的に別ですから、 別に重複するのはかまわないのです。別に同じ項目だけ返せばいい。  個人には、両方が記載された結果が返ると思います。特定健診と定期健診の健診の各 項目の結果が本人に渡される、そういうことを振分けをしなければならない。それをア ウトソーシングの健診機関に委託された所で、そういうことができないと駄目なのでは ないかと思います。 ○松井氏 堀江委員がおっしゃられたのは、振分けをするのはそれはそれでまず一義的 に良くて、さらに振分けをするだけではなくて、もう少し医療職として知り得た情報を 最終的に医療職としての立場からすると、産業医に伝えるなりしてきちんと被保険者な らびに労働者の健康を確保するための措置を取るべきではないかという政策論をおっし ゃっているのではないかと、私はいま認識をしたのですが。 ○和田座長 健康診断の結果は産業医は全部見ますから、そこでもう情報は全部入るわ けですよ。 ○松井氏 もう1つあるのは、特定保健指導と事業者が行う保健指導、あるいは事後措 置について、場合によっては重複しかねないケースもありますが、そういう場合に従業 員本人から取ると、同じようなことを何で保険者から言われたあと産業医からも同じこ とを2度も言われるのか。そういうことがないように、もうちょっと調整が必要な部分 があるのではないかと思います。 ○和田座長 特定保健指導をやる方はメタボリックシンドロームに関しての指導をやる わけでして、作業に関連した指導は、産業医が本来はやるべきだと思います。 ○松井氏 お言葉を返すようで恐縮ですが、頭の中ではそのように整理されるのですが、 和田座長がおっしゃられたのは、何かいままで膨らんできた生活習慣病、メタボリック 的なものの健診も定期健診項目の中にある程度入れることも容認ではないですが、その 方向性をおっしゃりつつ、なおかつ保険者はメタボリックだけですよというのは、本当 に正しいのかどうかというのは、ちょっと理解しかねるところです。 ○和田座長 だから入れる項目としては、先ほど言った労働起因性と適正配置、過重労 働が基本です。 ○堀江委員 ですから、就業上の措置に関係するところは、事業者がきちんと情報を集 約して適切な措置を講じなければならないのが労働安全衛生法の定期健診であって、そ れに必要なデータと必要ではないデータを切り分けるのも当然そのとおりだと思います が、実際の事例では、保険者が実施した特定健診、あるいは特定保健指導の結果、就業 上の措置が必要なのではないかと思われる事例も、発生する可能性は十分あるわけです。 生活習慣だけではないということもあると。 ○和田座長 産業医はそれを見ることができるとか、そういうことにしておかないとい けないのではないかと思います。 ○堀江委員 そうです。そういう意見です。その場合に保険者から事業者は団体が違い ますので、個人情報保護法上は、第三者提供になるわけです。特に本人の同意が得られ ないときは個人情報保護法違反になりますので、そこは何らかの方法で事業者の就業上 の措置につなげるような方策がなければ、情報が生きないのではないかという懸念です。 ○加藤氏 いまの堀江委員の考え方は、定期健診の中に今回の項目は入れないというこ とですか。 ○堀江委員 いまは特定保健指導のことだけを言っておりまして、健診の項目のことは いまは申しているつもりはありません。 ○加藤氏 たぶん定期健診の中に入れますと、そのままいろいろな情報が付いてくる可 能性があるわけです。今までと同じように項目が増えて、それの事後措置を保健所でし なければいけないという縷々義務もあるわけですから、それだと切分けは極めて難しい ですね。安衛法の記載を変えなければいけなくなる可能性が出てくるので、特定健診の 中に入れるのかどうかという原点に返ってしまうところです。いまの考えですと、入れ ないほうがいいと思います。 ○和田座長 いまのは仕組みの問題であって、今日はヒアリングとちょっと離れている 感じがします。予定の時間も過ぎましたので、ヒアリングに関してはこの辺で終わらせ ていただきます。どうも貴重なご意見をいただきましてありがとうございました。  では、意見陳述をいただいた方は、退席していただいて結構です。                 (意見陳述者退席) ○和田座長 次に、事務局より今後の検討の構成について資料が提出されていますので、 ご説明をお願いします。 ○衛生専門官 それでは、資料5に沿ってご説明します。いまヒアリングでだいぶご意 見がいろいろ出ましたので、資料にも付け加えなければいけないこともいっぱいありま す。ヒアリングでも出ましたが、とりまとめについてはなるべく早く行いたいと当方で は思っています。次回の第4回で全部とりまとめることまでは、いまのヒアリングも含 めてできないのではないかと感じていまして、もう1回次回に議論したいと考えていま す。報告書はまだまだ先かもしれませんが、労働安全衛生法における定期健康診断等に 関する検討会の基本的な構成について、ここで骨格を考えておきたいと思います。  最初に検討会の開催趣旨ですが、これは我々が何度も申し上げているとおり、これは 産業関連疾患ですが、脳・心臓疾患に適切に対応するために、今回新たな知見を含んだ 健康診断項目、これは(特定健康診査の項目)に使われるわけですが、それが示されて いることから、労働安全衛生の観点でどのように扱うのか、現行の項目のあり方も含め て検討を行うことを考えています。  もう1つは、健診項目とは別の保健指導ですが、労働安全衛生法上の保健指導と特定 保健指導についての取扱いについて、整理すべき内容はないかを検討します。  健康診断の項目のあり方ですが、第2回で個別の項目について検討の論点を出し検討 を行ったのですが、労働安全衛生法の観点から脳・心臓疾患に適切かつ効率的に対応で きる問診・健診項目にはどのようなものがあり、その扱いをどのようにするか、それが 適当なのかを記載していきたいと思います。本日は5団体から意見を聞かせていただき まして、検討会の報告書においては、こういったヒアリングも含めて、取扱いについて 書いていきたいと考えています。  保健指導の効果的な実施についてですが、いま議論もいろいろありましたが、労働安 全衛生法における保健指導と特定保健指導について、可能な限り同じ部分について、二 重に実施することがないように運用上の留意点を考えていきたいと思います。  先ほどの日本経団連の資料の(1)だったと思いますが、事業者に、その可能な範囲で、 労働安全衛生法における保健指導とともに、特定保健指導も併せて実施できる体制を整 えて、医療保険者から特定保健指導の委託を受けられるようにすることで、産業医が労 働者の健康管理にメタボリックシンドロームの特定保健指導も含めて関与できる体制を 整えることができるのではないかと。  もう1つは、先ほども出ました産業医の選任義務のない中小事業者については、いま までTHPなどで養成してきた人材もあり、こういった産業保健スタッフを有する医療 機関あるいは健診機関に保健指導を依頼することにより特定保健指導のみならず産業保 健の視点も加味した保健指導を、労働者が受けることができる体制づくりや考え方を考 える必要があるのではないかということです。これが健診項目と保健指導についての考 え方です。  もう1つ、いままでの議論の中ではあまり出てこなかったところですが、健康診断結 果の保存方法、あるいは提出方法の取扱いで、労働安全衛生法においては事業者に対し て健康診断結果の保存を義務づけていますが、保存方法については紙媒体であり電子媒 体を特定しているわけではありませんので、今回の検討においては、特に変更する必要 があるのかどうかということだと思います。どうしてこのような議論が出てくるかとい いますと、今度は高齢者医療法で事業者が保険者に対してデータを提出することになる わけですが、多くのデータをどのように提出するのかという問題もありまして、電子的 データで提出することが望まれている状況もありまして、今後事業者にこういった電子 的様式での保存を義務づけないことを考えていくとすれば、事業者が標準的な電磁気様 式で健診結果を医療保険者に提出できるような健診機関を選定するといった医療保険者 に対するデータの提供が大きな負担とならないように、考えていくべきではないかと思 います。  あとはいままでの議論を踏まえて、まとめを行っていきたいです。以上です。 ○和田座長 ただいまの説明につきまして、またこれまでの意見、陳述を踏まえた結果 も含めた案と考えておりますが、何かご意見、ご質問はございますか。  それでは、これまでの検討内容と意見陳述を踏まえまして、次回の検討会までにとり あえずたたき台を私と事務局間で骨子として作成したいと考えていますが、よろしゅう ございますか。                 (了承) ○和田座長 それでは、次回にたたき台の骨子(案)を提出することにします。次回の 日程等について、事務局からご説明願います。 ○衛生専門官 次回は第4回ですが、12月21日(木)の午後2時から4時までを予定 しています。場所についてはいまは未定ですが、省外の会議室になる予定ですので、決 まり次第お知らせします。以上です。 ○和田座長 それでは、本日の検討会はこれで終了したいと思います。どうもありがと うございました。 照会先:労働基準局安全衛生部労働衛生課 電話03−5253−1111 (内線5495,5181)