06/11/21 第1回社会保障審議会人口構造の変化に関する特別部会議事録 社会保障審議会人口構造の変化に関する特別部会 ○ 日 時  平成18年11月21日(火) ○ 場 所  厚生労働省 省議室(9階) ○ 出席者  〈委員:五十音順、敬称略〉        阿藤 誠、大石亜希子、小塩隆士、貝塚啓明、鬼頭 宏、榊原智子、           樋口美雄、前田正子        〈事務局〉        柳澤伯夫 厚生労働大臣        薄井康紀 政策統括官(社会保障担当)        北村 彰 参事官(社会保障担当)、山田 亮 参事官(労働政策担当)、        香取照幸 雇用均等・児童家庭局総務課長        城 克文 政策企画官、佐藤裕亮 社会保障担当参事官室長補佐        高橋重郷 国立社会保障・人口問題研究所副所長 ○ 議事内容 1.開会 (城政策企画官)  定刻になりましたので、ただ今から「第1回社会保障審議会人口構造の変化に関する 特別部会」開会いたします。私は社会保障担当参事官室の企画官の城と申します。よろ しくお願いいたします。部会長選出までの間、議事進行役を務めさせていただきます。  本日は柳澤厚生労働大臣が御出席しておりますので、議事に入ります前に冒頭大臣よ りごあいさつを申し上げます。柳澤大臣、よろしくお願いいたします。 (柳澤厚生労働大臣)  先般、9月26日に発足いたしました安倍新内閣におきまして厚生労働大臣を拝命いた しました柳澤でございます。どうぞよろしくお願いいたします。  本日は御多用のところをお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。 現在、社会保障審議会人口部会におきまして、平成17年国政調査の結果等に基づきまし て、国立社会保障・人口問題研究所の作成する将来人口推計についての御議論がなされ ておりまして、年末に新人口推計の結果を公表する予定であります。  新人口推計におきましては、出生、死亡等の過去のトレンドを将来に投影して作成い たしますため、前回の平成14年の推計よりもさらに急激に少子高齢化が進行する将来の 人口の姿が示されることが見込まれております。このような人口構造の大きな変化は、 社会保障のみならず、成長を支える労働力の確保など、社会経済に大きな影響を与える ものと考えております。  一方、意識調査を見ますと、現在進行している少子化は、必ずしも国民の若い人たち の結婚や出生に関する希望にそったものではなくて、その希望が果たされないことによ るものではないかと考えられるわけでございます。そこで当部会を設置いたしまして、 国民の結婚や出産に関する希望が一定程度かなった場合の人口構造の将来姿というもの の試算について御議論をいただくとともに、それを実現するためにどのような有効な施 策があり得るのかについても御検討をお願いしたいと考えております。委員の皆様方に おかれましては、是非精力的な御審議をお願い申し上げる次第でございます。  以上を申し上げまして、この部会の発足にあたりましての私からのお願いの御挨拶に させていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。 (城政策企画官)  ありがとうございました。大変恐縮ではございますが、大臣はこの後所用がございま すので、ここで退室をさせていただきます。  それでは続きまして、委員の皆様におかれましては、御多忙の折り、お集まりいただ きましてありがとうございます。審議に入ります前に委員の御紹介をさせていただきま す。資料の1−1として名簿をつけてございますので、ご覧ください。順に御紹介をさ せていただきます。  阿藤誠委員でございます。早稲田大学人間科学学術院教授でいらっしゃいます。  大石亜希子委員、千葉大学法経学部助教授でいらっしゃいます。  小塩隆士委員、神戸大学大学院経済学研究科教授でいらっしゃいます。  貝塚啓明委員、中央大学研究開発機構教授でいらっしゃいます。  鬼頭宏委員、上智大学経済学部教授でいらっしゃいます。  榊原智子委員、読売新聞東京本社生活情報部記者でいらっしゃいます。  樋口美雄委員、慶応義塾大学商学部教授でいらっしゃいます。  前田正子委員、横浜市副市長でいらっしゃいます。  また、本日は御欠席との御連絡をいただいておりますが、佐藤博樹委員、東京大学社 会科学研究所日本社会研究情報センター教授にも委員をお願いしております。  次に厚生労働省側の事務局の紹介をさせていただきます。政策統括官の薄井でござい ます。社会保障担当参事官の北村でございます。労働政策担当参事官の山田でございま す。国立社会保障・人口問題研究所の高橋副所長にも御出席をいただいております。そ れから他に雇用・均等児童家庭局の総務課長の香取が出席の予定でございますが、少し 遅れておりますので、少子化対策室長の度山でございます。それから社会保障担当参事 官室の室長補佐の佐藤でございます。  それから委員の辞令につきましては、お手元の封筒に入れさせていただいております ので、御確認のほどをよろしくお願いを申し上げます。  それでは初めに部会長の選出を行います。お手元の資料に社会保障審議会令がござい ますが、その中で部会長は部会に属する社会保障審議会の委員の互選により選出すると いう規定になってございます。本特別部会におきましては、社会保障審議会、この特別 部会の上の本審議会でございますが、その委員が2名おられます。あらかじめこの2名 の方々で御相談いただきまして、貝塚委員にお願いするという結論に達しておりますの で、本特別部会では貝塚委員に部会長をお願いいたしたいと思います。よろしくお願い いたします。では貝塚委員、部会長席への移動をお願いいたします。  それでは以後の議事運営につきましては、貝塚部会長にお願いいたします。よろしく お願いいたします。 (貝塚部会長)  それでは僣越でございますが、部会長に御推挙いただきました貝塚でございます。委 員の皆様の御協力を得まして、円滑な運営に務めてまいりたいと思います。よろしくお 願いいたします。委員の人数がそれほど多くありませんので、じっくりと議論をしてい ただけると思いますので、よろしくお願いいたします。  社会保障審議会令によりますと、部会長の他に部会長が部会長代理を指名するという ことになっております。そこでこの部会長代理には阿藤委員にお願いいたしたいと思い ますので、よろしくお願いいたします。 (阿藤委員)  貝塚部会長より御指名がありました阿藤でございます。貝塚部会長とともに委員の皆 様の御協力を得まして、円滑な運営に務めてまいりたいと存じますので、よろしくお願 いいたします。 (貝塚部会長)  それでは本来の議題に入りたいと思います。議題2ということで、資料が配られてい ると思いますが、本日は第1回目の会合でございますので、まずこの部会の設置の趣旨 や、今後のスケジュール等について事務局から御説明を願いたいと思います。どうぞよ ろしくお願いします。 (城政策企画官)  資料2という1枚紙を入れてございますのでご覧ください。人口構造の変化に関する 特別部会についてということで、開催目的と当面のスケジュールを記載しております。 まず開催目的でございますが、先ほど大臣からありましたように、現在、将来推計人口 の作成作業というものが進められておりまして、推計結果は年末に公表予定となってご ざいます。これは別に人口部会という部会がございまして、そちらの方で御議論をいた だいているものでございます。  相当厳しくなる見込みだということが、大臣からもございましたが、その少子化の進 行というものにつきまして見てみますと、意識調査等々から見ますと、現在進行してい る少子化というのは必ずしも国民の希望とあっているものということではないようでご ざいまして、何らかの障壁により結婚、出生に関する選択が阻害された結果生じている のではないかと考えられるところでございます。  つきまして、この部会におきましては、こういった将来の国民の結婚や出産に関する 希望が一定程度かなった場合の人口構造の将来の姿の試算を検討するということ、それ からそうした人口構造の変化が社会経済に与える影響というのを念頭におきながら、我 が国の社会経済が持続的に発展していくためにはどのような論点があるかということに ついての検討をお願いしたいと考えております。  当面のスケジュールでございますが、第1回は本日でございます。第2回につきまし ては、これはできますれば人口推計が公表される前に一度、ここで人口推計を受けて、 その将来の姿の試算というものをやるにあたりまして、どのようなやり方をするかとい うことについての御議論をもう一回お願いしたいなと考えてございます。それから年明 けに第3回、第4回と、そういった試算が出せれば、その時御議論いただいて、第4回 ぐらいに中間まとめをできればというふうに考えてございます。スケジュール等につい ては以上でございます。  (貝塚部会長)  ありがとうございました。ただ今御説明のあった趣旨、スケジュール(案)等はよろ しゅうございますでしょうか。人口部会というのは、もともと人口推計を取り扱ってい る、こちらの部会はもう少し社会経済に対する影響というものを取り扱っているといい ますか、そういう関係でありまして、両者は非常に関係が深いのではないかと思います。 今、御説明がありましたようなスケジュールで進行させていただきますが、よろしゅう ございますでしょうか。それではそういうようにさせていただきます。  続きましてこれから議論の整理として事務局で資料を4点用意していただいておりま すので、この点について事務局から御説明をお願いいたします。 (城政策企画官)  それでは資料3−1から順に御説明をさせていただきます。資料の3−1をご覧くだ さい。これはその元になります将来人口推計というのがどのようなものであるかという のを簡単にまとめてございます。  1ページ目でございますが、将来人口推計につきましてでございます。これは国立社 会保障・人口問題研究所が5年に一回、国勢調査、人口動態統計、出生動向基本調査と いった客観的データに基づきまして、将来の人口を推計したものでございます。戦後12 回行われております。  前回の推計は平成12年、2000年を足元にいたしまして、その国勢調査に基づきまして 平成10年1月に公表したものでございます。これは2050年までの人口を推計をいたして おります。現在はその後の直近の平成17年の国勢調査に基づいて人口推計作業は進めら れているところでございます。年末を目途に公表できるようにということで、今作業中 でございます。  次のページをご覧ください。この将来人口推計の基本的考え方について御説明をいた します。これは出生、死亡、国際移動という人口の移動要因がございますが、これを過 去のトレンドを将来に投影して、将来の人口の姿を計算したものでございます。これは おおむね少子化等の現在の傾向が現状のまま推移した場合に将来どうなるかというもの を予測したものでございます。人口学で確立された手法に基づくものでございまして、 政策効果を折り込んだ目標ではございません。それから社会・経済状況の将来の変動を 折り込んだものとはなっておりません。それから今回やっておりますような国民の希望 とか、どれぐらいの方向性があるかとか、そういったものを反映したものでもないとい う客観的・中立的な推計ということでございます。  その考え方について3ページ目以降に資料を用意してございます。3ページをご覧く ださい。人口推計につきましては、国勢調査の結果、前回であれば2000年ですし、今回 であれば2005年になりますが、この性別・年齢別の1歳刻みの人口を基にいたしまして、 出生、死亡、人口移動、こういったものを見てやっております。  下の図でご覧いただきますと、この当年の人口というところ、そこにX歳というのが 書いてございますが、これが1年経ちますとX+1歳ということになります。ここの人 口というのは途中で生まれる方はおられませんで、もともとの人数からどういう移動が あるかということでございます。   右の方にございますように、このX歳の方はお亡くなりになられる方が減ります、そ れから国際移動で出られる方、それから外国から入って来られる方というのがございま す。この移動、死亡、こういったものが反映されて、翌年の人口、その年齢の1歳上の 年齢の人口になるわけでございます。  こうした各年齢ごとに1歳ずつ上げていくということになりますが、0歳につきまし ては、下の方にございますように、全く新しく生まれてくる方ですが、これにつきまし ては15歳から49歳までの女性から生まれてくるということを前提といたしまして、この 出生についての仮定をおいて、どれぐらいの出生、0歳が生まれてくるかということを おいて毎年これを入れていくような形でございます。この出生の仮定、死亡の仮定、人 口移動の仮定という、三つの仮定をきちんと決めることができれば、将来推計人口とい うのが自動的に計算が可能になるということでございます。  ただ、この仮定の置き方につきましては、過去のトレンドから客観的科学的にきちん と推計をするということがございまして、過去のトレンドをできるだけ反映した形で、 将来の形を出していくということをいたしております。   次は4ページをご覧ください。先ほどの(1)にございました、出生の仮定でございます。 特に合計特殊出生率として取り上げられるものを、前回の平成14年推計の状況をここに 示しております。これも実線でデコボコしながら来ているものが、これが実績値でござ います。前回の推計は真ん中あたり、2000年を足元にしておりまして、そこから将来に 向けて伸ばしてございます。これは青い線から赤い線まで、高位、中位、低位と3種類 つくってございます。高位推計が将来的には出生率については1.63、それから中位推計 は将来的には1.39、低位推計では将来的には1.10という数字になるだろうということで、 仮定をおきまして、そこに到達するような形の出生率の推計を、トレンドと合う形で出 していくという作業をしたものでございます。  ただ、実績について見ますと、ちょうど5年間たちまして、その実績を追いますと、 平成17年には1.25という数字になっておりまして、中位推計と低位推計の間をいってい るという状況でございます。  次の5ページをご覧ください。今の出生率でございますが、出生率の仮定につきまし ては、コーホート、これは同じ年に生まれた人口集団世代でございますが、このコーホ ート別の出生の推移というのを将来に投影して設定をいたしております。この図は生ま れた年の世代を横軸にとっております。ですから一番右端の2000という世代の方は今0 歳の方です。真ん中あたりの1965年生まれ、これは前回推計を元にしておりますので、 その当時35歳でございます。この1965年生まれの35歳の方のところで縦にずっと上がっ ていきますと、赤い…で追っているところがございますが、これは一番下の線のところ は25歳までのところで、この1965年生まれの方が、その世代として何人の子どもを生ま れたか、そこの出生率というのを累積で出しているものです。それが30歳まで、35歳ま でといって、最終的には何人、その世代の方の出生率がいくらになるかということでご ざいます。  左の方を見ていただきますと、1950年生まれの50歳の方までは既にもう出生が確定し ておりますので、その世代それぞれの毎年毎年の年齢の方の一生の間にお産みになる子 どもの数の平均がコーホート合計特殊出生率として出ておりますが、これは2.0程度で、 横這いでこれまで1935年生まれの方から50年生まれの方まではそういう形で推移をして いる。それが1965年生まれの方のところまで、35歳までの累積が前回で出ておりますが、 これも徐々にそこから先、下がってきているということでございます。1970年生まれ、7 5年生まれと実績がだんだんとなくなってまいりまして、前回であれば1985年生まれの1 5歳の方というのは、これから出生行動に入られるというところでございます。  ここについては、まず実績が全くありませんでしたので、別の仮定をおきまして、過 去のトレンドをきちっと当てはめて、ここの世代の方の出生率は多分1985年生まれの方 が一生の間にお産みになる子どもの数を見た時の出生率が1.39になるだろうという仮定 をおきまして、そこに至るまでの世代の方の毎年毎年の出生というのを仮定をおいてみ て、それで出生率を全体として出して、全体の人口をきちんと決めているという形をと っております。最終的には前回につきましては1.39で落ち着くだろうというところで置 いているところでございます。  ここをご覧になりますように、出生率は各世代ごとに下がってはいきますが、一度下 がって上がるというものではありませんで、ずっと徐々に下がっていって、1.39に落ち 着くだろうということを言っているものでございます。見かけ上は出生率が下がって、 上がるような推計を立てているように見えますが、これはその年その年にいろんな事情 で産まれなかった方とか、それからちょっと産み控えといいますか、高齢出産といいま すか、だんだん後送りになっているような、途中の過程の時期におきまして、見かけ上 は少なくなっているというものがございますので、そういう下がって上がるように見え ておりますが、実質上、推計上は徐々に出生率が各世代ごとには下がっていくような、 そして上がることは前提としておりませんで、下がっていくような形の推計になってお ります。  次の6ページをご覧ください。これは各世代ごとの合計特殊出生率を要素に分解した ものでございます。コーホートの合計特殊出生率、これは前回の推計の数字を入れてお りますが、これは1.39ということに最終的には置いておりました。これは分解いたしま すと、結婚する女性の割合、これは生涯未婚率を1から引いておりますが、生涯未婚率 は16.8%と見ております。それから夫婦完結出生率、結婚された御家庭で生まれる子ど もの数が平均すると1.72人、それから離死別効果係数、離婚とか死別の係数というのが ございますが、これで0.971という数字を置いております。この掛け算で全体の出生率と いうものを出してございます。それとともに生涯未婚率から夫婦関係出生率というのを 出していく時に、右の方にあります平均初婚年齢が極めて強い相関ございますので、こ れを用いて出しているというものでございます。  その下にありますように、夫婦完結出生児数というのは、さらに二つの要素に分解さ れておりまして、期待夫婦完結出生児数、これは最終的に各世代で平均の出生の子ども 数がどうなるかというものをまず出しております。これは1.89という数字を置いており ます。それに若い世代ほど出生の数が減少する傾向がございます。その傾向を反映した 出生力低下係数というのを設定をいたしておりまして、これが0.911という数字でござい ます。こういった要素に分解した、それぞれの要素についての計算をいたしまして、そ れを最終的に計算した結果とてし1.39という数値を出してございます。  次は7ページをご覧ください。これは先ほどのコーホート、世代ごとの出生率は下が って上がるということではないけれども、見かけ上出生率は毎年毎年の期間の合計特殊 出生率というのが見かけ上下がって上がったように見える推計になっていることの説明 をした図でございます。これについては一番右に縦にあります、コーホート合計特殊出 生率というのがございますが、これは各世代、毎年毎年をこのように縦に置いておりま したが、一生の間に2人産まれるという世代から、1.5人産まれるという形に落ちていく 過程において、さらに晩婚化が進んだという過程でこういった表に模式図として置いて みました。  これはコーホートの合計特殊出生率は2から1.5に徐々に下がっていくという形でご ざいますが、この経過年数を見ますと、横軸で一番下に期間、毎年毎年の期間の合計特 殊出生率というのを置いておりますが、これは晩婚化が進みまして、途中が間引かれた というか、ちょっとスカスカになりまして、それで2だったものが一度1まで下がって、 それが1.5になる。これを縦に足してみるとこういう形になっているというものでござい ます。  極端な例は丙午の年のように、その年にたまたま誰も産まなかったら、ストンと出生 率は落ちるというようなものがございます。これが晩婚化によって間延びしている間に こういう形でおきているというものの模式図でございます。参考におつけしております。  8ページについても、参考として年齢、階級別の出生率の推移というのを載せてござ います。後ほどご覧いただければと思います。資料3−1については以上でございます。  続きまして資料3−2をご覧ください。資料3−2の1ページでございます。これは 我が国の人口の推移、これは前回の推計の結果をグラフに表したものでございます。真 ん中に点線を引いておりますが、ここまでが実績のあるところでございます。2005年の ところで、実績と推計値を並べておりますが、実績の方が人口としてはやや高めに出て おります。これは縦に合計しますと、合わないところがありますが、これは年齢不詳と いうのがあるから合わないこともございますが、合計は一番上に四角で囲んでございま すが、若干実績の方が高く出ております。黄色いところが高齢者、65歳以上の人口で、 青いところが15歳から64歳の人口で生産年齢人口で、ピンク色のところが14歳以下の人 口でございます。  この将来図を見ていただきますと、徐々に65歳以上人口というのは増えていきます。 生産年齢人口、15歳から64歳の間というのは下がっていきます。14歳以下の人口も徐々 に下がっているという形で、全体の人口というのはずっと下がっていきまして、2050年、 一番右には約1億人という形で予測をされております。それから一番右の欄外に書いて おりますが、生産年齢人口の割合が53.6%、高齢化率は35.7%、出生率は1.39という形 で置いているということでございます。  次の2ページをご覧ください。人口減少について記したものでございます。下のグラ フの左側は人口動態統計による出生、死亡でございまして、オレンジ色の部分が出生で、 グレーのところが死亡です。これは平成17年のところでオレンジとグレーが逆転してお ります。ここで21,000人の減というのが初めて出たわけでございます。  それから右のグラフをご覧ください。これは国勢調査の人口でございます。これも17 年に22,000人の減という形で出ております。要するに我が国の人口が減少局面に入りつ つあるといわれている数字の状況でございます。  3ページをご覧ください。これは人口ピラミッドの変化を前回の中位推計に基づいて 示したものでございます。一番左の2005年の状況をまず見ていただきますと、左の山が 二つ右に大きく飛び出しているものがございます。上の山がいわゆる団塊の世代の部分 でございます。下にもう一つ少し低い山がございますが、これが団塊ジュニアの世代で ございます。そのさらに下の団塊ジュニアのジュニアという山があればいいんですが、 それは今のところ見られないという状況になってございます。  今、生産年齢人口の緑色のところに団塊、団塊ジュニアの山がございますが、これが2 030年、真ん中のグラフをご覧いただきますと、団塊の山は65歳を超えて75歳の赤いとこ ろに到達しているという状況になります。ただ、この2030年までは団塊ジュニア、ここ も相当数の人口がございますが、まだ緑色の生産年齢人口の中におられるという状況で ございます。  それから下に水色の矢印、2006年以降生まれというように書いてございます。これは まだ今後の出生でございますので、どうかわかりませんが、ちょうど25歳以下という状 況ぐらいのところにございます。まだこれから20年間、25年間の間に生まれる世代とい うのは、まだこの2030年の段階では生産年齢人口の大層を占めるには至っておりません ので、ここまでの間というのは既に確定した人口の推移によりまして、労働力率等々が 決まってくるということです。  今回の年末に公表されます将来推計人口の結果でもそう変わるものではない、この点 線より上の世代についてはそう変わるものではないということが見込まれますが、この 下の部分についてはどうなるかということがございます。  さらに一番右の2050年をご覧いただきますと、この団塊ジュニアの世代も緑からオレ ンジ、赤という高齢者の世代に抜けていってしまいます。2006年生まれ、今年以降、来 年以降生まれてくる子どもの世代がこの緑色の生産年齢人口の大層を占めるようになっ てくる、こうなった時にどういう形になるかというのがこのグラフでございます。逆に 言いますと、今後の出生率の動向次第ではこの形も変わり得るということが見てとれる かと思います。  それを労働力人口等で見たのは4ページです。労働力人口に着目して見たものがこの グラフでございます。これはグレーのグラフの上の方に点線と実線で数字がおいてござ います。これは人口でございまして、点線で書いておりますものは、現状の労働力率で 労働力人口が推移した場合、このようにずっと年を追うに従って下がっていくという状 況になります。それをこれから労働力率を向上させる、相当の努力を要しますが、そう いった努力をして労働力率を上昇させたといった場合にどのようになるかというのを書 いたのが上の実線のグラフでございます。  労働市場への参加が進むケースという方でございます。この労働市場への参加が進む ように努力をいたしまして、仮に推移いたしましたら、2030年までを見た時には労働力 人口の減は人数で見ますと533万人減ということでございますが、ここまで労働力率は仮 にこれだけ努力をいたしますと相当上がっている状況になります。例えば女性の30代前 半、それから男性の60代前半というのを下に例示で示しておりますが、こういった相当 高い労働力率という比率になっておりますので、これ以上2030年以降さらに上げ続ける というのはなかなか難しかろうということを考えております。  そう考えますと、仮に労働市場への参加が進むケースというのであっても、2030年以 降は労働力人口の減少の影響をもろに受けていきますので、そういう意味では相当程度 下がり方のカーブの傾斜は急になってくるということでございます。  これでそのまま見ますと、右上にありますように、2030年から2050年の間では1,245 万人の労働力人口の減ということになってございます。これは前回推計に基づくもので ありますので、今回の推計はどうなるかわかりませんが、少子化がさらに進行すればさ らに減少するだろうということでございます。  5ページをご覧ください。それを率で見たものがこのグラフでございます。下にあり ますように、労働力人口の減少率の年平均をとったものでございます。これは2030年ま では、実線の方をご覧いただきますと、0.3%、0.4%といった減で推移をしております。 ですから真ん中あたりに四角で囲んだ数字の分がございますが、2030年までの労働市場 への参加が進むケースでありますと、労働力人口の減少率年平均はマイナス0.3%に止め ることができる、努力すれば止めることができるだろうということでございます。  これは上の四角の中に書いてございますように、労働力人口の減少の影響というのは、 労働力の投入とあとは資本投下、技術革新、こういったものがございますので、成長と の関係で見ましてもある程度カバーができるだろうということがございます。ただし、 ここは相当程度労働力率を上げるという努力も必要であろうということでございます。  上の四角で囲んだところの一番下の○の一つ目の・のところにございますように、当 面は若年者、女性、高齢者の就業促進といったことによって労働力人口の減少の影響は 緩和するということを努力すれば、こういった形で2030年までは労働力人口減少率を0. 3%の減程度に止めることができるのではないかということがございます。  ただ、2030年以降につきましては、下のグラフでご覧になれますように、労働力率を 上げるという形が難しいので、1.0%以上の減少という人口減少の影響をそのまま受ける ことになるのではないかということがございます。これはさらに前回推計より進んだ場 合には労働力人口はさらに減少するだろうということがございます。  ただ、これにつきましては2030年以降の労働力の人口の世代というのは、これから生 まれてくる世代でございますので、上の四角の中の一番下の行に書いてございますよう に、これについては今から少子化対策に取り組む、出生率を回復させるということによ って、ここの人口についてはまだ動きが可能だろうということで、今から少子化対策に 取り組むことが必要だろうということでございます。ただ、これも2030年になって取り 組み始めたのでは、それから20年以上かかりますので、今から取り組む必要があるので はないかということが書いてございます。  6ページにつきましては、そういったデータ全体を盛り込んだものでございます。こ れについては一番下の矢印、オレンジのところをご覧いただきますと、今のような努力 を続けていくことによって、前半2030年までは総人口の52%が労働力であるという状況 については、頑張れば維持できる可能性があるということを記載しております。ただ、 それでも2050年になってくると、総人口の48%という状況になるだろうということでご ざいます。資料3−2は以上でございます。  続きまして資料3−3をご覧ください。これは先ほど少し触れました国民の希望とい うものがどういうものがあるかという例示をいたしたものでございます。結婚、出産に 関する国民の希望という1枚をつけてございます。その後ろはそれのバックデータでご ざいますので、この1枚で御説明をいたします。  この結婚に関する希望としましては、例えば出生動向基本調査でありますとか、国勢 調査で見ますと、ある程度希望のデータがございます。これは右肩のグリーンのところ にございますように、14年の中位推計の時には16.8%の方が生涯未婚であろうという数 字になってございますが、希望はどうかということを見ております。例えばこの結婚意 欲のある未婚者の割合、一番左ですが、これは18歳から34歳全体で見ますと、男性は87%、 女性は90%が結婚意欲がある、未婚者のうちの87%、未婚者のうちの90%ということで ございます。これは18、19という10代、20代と分解してみますと、やはり88%、89%等々 の高い数字になってございます。  するとその世代で既に御結婚されている方は、既にもう未婚率の母数から外れており ますし、また、未婚者の割合の母数からも外れておりますので、これを掛け算する必要 がございますが、配偶者のいる方としては18歳から34歳の中に男性であれば27.2%、女 性36%というのが既に配偶者がおられる方というのがございます。ですからこの配偶者 のいる方を除いたうちの未婚者の方の結婚意欲のある方というのが9割弱おられるとい うことから考えますと、これらの希望が全て実現した場合につきましては、例えば女性 の生涯未婚率というのは10%以下になるのではないだろうかということでございます。  同じように子ども数に関する希望というのが真ん中に記載してございます。結婚意欲 のある未婚者、未婚者の方についての希望子ども数、これは結婚したいという方の中の 数字でありますが、男性は2.07、女性は2.10、それから夫婦の予定子ども数、これは結 婚している方ですが、総数で見ますと理想は2.48、予定は2.11といった数字がございま す。いずれにしても夫婦完結出生率が2.0以上はあるだろうということが見てとれるわけ でございます。  こういったものをもとに先ほどの出生率の分解式に当てはめてみるとどうなるだろう かということを考えてみたらどうかという試算をしてみるのはいかがかということで、 今回示させていただいております。こういった形でやりました場合、下にあります式の ように10年の場合にはこういった計算で1.39というのがございましたが、これを潜在出 生率というふうに呼ぼうと思っておりますが、国民の結婚や出産に関する希望をすべて 実現した場合にどういう数値になるだろうか、離死別効果というものも考える必要があ りますが、どういうふうになるかということを計算しているものでございます。  資料2の1枚紙をもう一度ご覧いただけますでしょうか。こういった希望等々がある ということを考えますと、私どもとしましては、こういった出生率の目標というのを示 すというのはいかがかと思っておりますが、どうだろうか、余りそういうのを示すべき ではないだろうと考えておりますが、こういった希望がかなった場合というのはどうい う姿になるかというのを、形としてお示しするということはそれはそれで意義のあるこ とだろうということを考えておりまして、そこでこの開催目的の三つ目の○にございま すように、こういった希望が一定程度かなった場合、これにつきましてはどういう形に するかというのは御議論いただきたいと思いますが、すべてかなうというのが可能かど うかというのもございますが、例えば3分の2もしくは半分程度、3分の1程度という 形で、こういった希望がかなった場合にどういった人口構造が見込まれるのかというこ とはお示しする必要があるだろうと思っております。  さらにはそれが政策で可能なのか、それとも企業の皆さんの御協力によるものなのか、 国民運動によるものなのか、いろんなものがあると思いますが、そういったものも考え つつ、どういった論点があるかということを、さらにそれを踏まえて見ていただきたい ということで考えております。以上でございます。引き続きまして資料3−4の説明を させていただきます。 (香取雇用・児童総務課長)  引き続きまして資料の3−4について御説明を申し上げます。資料3−4は今御説明 申し上げました様々な出生率に関するデータ、分析の背景といいますか、少し別の観点 から、特に結婚とか出産に影響を与えている要因、特に経済要因、若い人の所得であり ますとか、あるいは家庭生活と仕事との関係という切り口からいくつかの分析をしたも のでございます。1ページめくっていただきますと、まず若年者の収入あるいは就業形 態と有配偶の関係を見たものでございます。  まず左側のグラフは国民生活白書からとったものでございますが、世帯形態別の本人 収入、これは世帯主というのは男性でございますが、独身者という配偶者の所得水準の 分布を見たものでございます。一見しておわかりになりますように、独身者の方が全体 として所得水準が低いというデータが出ております。  これを年齢階級別に、所得階級別に配偶者がいる割合というのを見てみますと、右側 にございますように、例えば30歳から34歳の男性で見ますと、年収600万超の方は8割が もう既に結婚されている。他方、年収150万あるいは250万といった、いわゆる非正規の 方々と想定される方々については、それぞれ34%あるいは42%ということで、年齢階級 別に見ましても常に同じ傾向が出ています。収入が高い方の方が先に結婚をされるとい うことでございます。  次のページは25歳から29歳、それから30歳から34歳それぞれの世帯の方々の92年と20 02年、90年代の冒頭と直近の2002年のデータを比較したものでございますが、全体とし て所得水準は横這いないしは若干下がっているということでございます。  次のページは就労の形態と結婚の関係というのを見たものでございます。左のグラフ は平成14年時点で20歳から34歳で独身だった方が、その後2年間に結婚をした人の割合 がそれぞれ就労形態にどう違うかというものでございます。右側の二つはこの間有業で あった方と無業であった方を比べますと、仕事のある方が結婚をできている、仕事があ る方のうちで、いわゆる正規労働と非正規労働を比べますと、正規労働、常傭労働に就 かれた方の方が明らかに結婚ができているということでございます。  これを右側のグラフで正社員、それから非典型雇用、これはとったデータが違います ので、用語が非正規あるいは非典型という言葉が違ってございますが、いわゆる正社員 で就業できている方と、様々な形で非典型の形で働いている方、さらにはいわゆるフリ ーターといわれる、下に注がついてございますが、年間就業日数が99日以下、あるいは 週の労働時間が21時間以下という方々とで比較をいたしますと、これも先ほどの所得の 分布とほぼ同じグラフが出ておりまして、正社員になった方は30代でほぼ6割が結婚で きている、非正規の方、あるいはフリーターの方はご覧のような形でほとんどなかなか 結婚までたどりつけていないということが明らかでございます。  次のページは今のことを説明する一つの背景として、これは既に御案内かと思います が、若年数の雇用状況がこの間非常に悪かったということで、左側は失業率あるいは非 正規雇用者の割合を全年齢層とここでは15歳から24歳で比較してございますが、ここに ありますように若年層の方は非正規の方が最近非常に増えている、あるいはそれにとも なって失業率も高いということ、右側は男性の雇用者全体として非正規化が進んでいる わけですが、どの世帯が一番非正規化が進んでいるかということでございまして、ここ でいいますとピンクで書いているところですが、25歳から34歳、この世代の方々の非正 規の増加割合が非常に大きいということで、90年代以降学卒で正社員になれずにそのま ま非正規になられて、そのままずっとその形で働いておられる方々が固まりとして存在 していて、この方々は所得も低く、なかなか婚姻にもたどりつけていないということで はないかというふうに思っております。  二つ目は、今度は男性の働き方といいますか、労働時間あるいは家事・育児の時間、 いわゆるライフワークバランスの観点から分析をしたものでございます。この下にあり ます、21世紀成年者縦断調査ということで、特定の世代の方々を何年か継続して追っか けて調査をするという形の調査なんですが、第1回の調査段階で夫婦ともに子どもがほ しいとお答えになった方、第2回の調査、これは1年ごとにやっておりますが、14年15 年とやりましたが、15年段階でまだ子どもが生まれていなかった方が、その次の3回目 の調査で子どもが生まれたという方を対象に、その方々について男性の就業時間、ある いは男性の家事・育児への参加の程度がどうであったかというものを調べたものでござ います。  左側のグラフは仕事の時間の増減と実際に子どもが生まれたか、生まれなかったかと いうものの関係を見たものでございますが、労働時間8時間未満の方についてみますと、 労働時間がふえた方の方が子どもが生まれた割合が高い、先ほどの御説明でいえば8時 間労働といいますか、常傭労働になられた方、そちらに移行された方の方が子どもの数 が増えているということでございます。  それに対して10時間以上働いている、長時間労働をされておられる方についていいま すと、労働時間が減少している方の方が子どもが生まれているということでございます。 左側はこれを家事・育児時間の増減というものと子どもが生まれる、生まれないという 関係で見たものですが、やはり男性の家事・育児時間が、家事労働といいますか、家庭 への貢献がふえたと答えた方の方が子どもが生まれているということでございます。  6ページは、これを育児への参加度、育児得点という指標で示しているものです。詳 細はその下に遊び相手をする、風呂に入れる、食事、寝かしつける等々、こういった子 育てにかかわる行為について、男性がどのぐらいそれを行っているかということを簡単 に点数化したもので、その育児得点とお母さんの方の就業継続、あるいは2人目以降の 追加の子どもをほしいと考えるかどうかということの関係でございます。  これもグラフを見ると歴然としていますように、男性の育児得点が高い方が女性は就 労の継続が可能になっているということでございますし、同じように育児得点が高い方 の方が追加の子どもを予定している数も全体として多くなるということでございます。  7ページは、では実際に男性はどういう働き方をしているのかということを調べたも のでございます。左側は1994年と2004年とで、男性の雇用労働者の1週間の就業時間が どの程度であったかというものを年齢階級別に見たものでございます。上の週60時間以 上労働されている方の割合というのを見ていただきたいのですが、特に30代、30〜34、3 5〜39という1人目ないしは2人目のお子さまを生んでいただく対象となるような世代 で、60時間以上労働をされている方が、2004年でいいますと25%、4分の1いらっしゃ る。  週60時間以上労働するということは、超過労働時間20時間ということですから、週5 日で5で割りますと、大体毎日4時間超勤をするという計算になります。大体お家へ帰 るのが10時ぐらい、ないしはそれ以降という方々ということですが、その割合が94年か ら2004年で増えている、これはすべての年齢階層において長時間労働の方が増えている。  他方、下の方の青いところ、35時間未満というところを見ていただきますと、例えば2 0歳から24歳のところで、35時間未満の方が非常に増えている。いわゆる非正規、パート タイムその他非典型の方が一方で増えている。一方でそういった専業につけない労働時 間の短い働き方をされている方がいる一方で、いわゆる正社員の方が非常に長時間労働 を行っていて、その割合がむしろ強化をされている。特に30代といった、いわゆる一番 子育てあるいは結婚といったことについて、我々が期待をされている世代のところで非 常にそういった厳しい労働環境があるということでございます。  右側は国際比較ですが、6歳未満の子どもを持っている男性がどのぐらい家事育児に 参加をしているかという、その時間を示したものですが、ご覧のとおりでございまして、 日本の男性はほとんど家事、特に育児、家庭において役に立ってないといいますか、仕 事をしていないということでございまして、このことと左側の非常に長時間労働で職場 で仕事をしているということは、1日は24時間しかございませんので、一種表裏の関係 にあるということではないかと思います。  8ページ、今度は女性の目から見た時の仕事と育児の両立に関する支援の環境と、実 際に出生との関係を見たものでございます。これも先ほどと同じ成年者の縦断調査から 見たものでございますが、いわゆる育児休業制度のあるなし、あるいは育児休業制度が 実際にその職場においてとられている、あるいはとりやすい環境にあるかどうかという ことと、子どもが生まれる、生まれないというものを見たものでございます。これも育 児休業制度があるとないということでは、左側の2本のグラフにありますように、明確 にその子どもの生まれる、生まれないには影響がございます。  さらにその右側の二つのグラフは、制度はあっても職場の風土、環境等でなかなかと りにくいという場所と、実際に多くの方がとられていて、育児休業をとることについて 職場に制度外の制約が少ないというところとでは、ご覧のようにやはり同じようにかな り大きな差があるということでございます。  9ページは、実際に育児休業をとられる方、あるいは育児休業をとって就労を継続さ れる方が、実際働いておられる女性のうちどのぐらいを占めているかということでござ います。現在、私どもは育児休業の取得率、70%とか80%とか、かなり大きい数字で取 得をされておるということがあるわけですが、このグラフを見ていただきますと、出産 1年前に実際にその女性が働いておられたかどうかというものを見たのが一番上のグラ フでございまして、大体25%、4分の1ぐらいの方が無職、専業主婦その他仕事をして おられない、残り7割の方は某かの形で働いておられる、要するに7割の方は普通女性 でも働いておられるのが現状です。  このうち常勤の方は47%、パート、アルバイトその他が22%、自営業者が4%弱とい うことですが、出産半年後の状況を見ますと、この有職の73.5%のうちの相当数の方々 は職場を離れておられます。この73.5%を100%として、出産半年後で見たものが下のグ ラフでございまして、簡単にいいますと、有業者73%のうち、出産半年後の段階で就労 継続ができておられる方は32%ということで、実は出産を契機に7割近い方が職場を離 れておられる、残った3割ぐらいの方のうちで育児休業がとれて、就労を継続された方 が7割とか8割とかという数字になるということで、実際には多くの方が出産を契機に 職場を辞める、あるいは辞めざるを得ないという現実があるということでございます。  次は10ページですが、育児に対する母親の不安感、子どもを育てることについての不 安感というものと、追加の出産、1人目のお子さんを育てている時に育児不安というも のをどのぐらい強く感じておられるかということと、2人目以降を産むということにつ いて、どのような意欲があるかということを示したものでございまして、これは当たり 前と言えば当たり前ですが、やはり育児不安が非常に高い方はやはり1人目で苦労され ていますので、2人目以降を生みたいと考える方はどうしても少なくなるということで、 育児不安の高低というものは、やはり1人目を産んだ時の経験というものが、その2人 目以降の出産意欲に大きく影響しているということでございます。以上です。 (貝塚部会長)  どうもありがとうございました。人口推計から始まりまして、かなり多角的な調査の 結果を御説明いただきまして、それぞれ解釈がそれなりに入っているわけですが、いず れにいたしましても、これまでの御説明につきましてどうぞ御自由に御質問あるいは御 意見がありましたら、どなたからでもお出しください。 (樋口委員)  このような部会が設けられたのも、やはり厚生省と労働省が一つになって、その成果 が出てきたのではないかなというように思いますが、お互いの相互関係をどう考えてい くかというようなことが、従来は別個に扱われてきたという感じがあるわけであります。 例えば私が労働問題をやっている場合には、人口は与件ということで、もうそれは決ま った上で、労働力率がどうなるんだろうか、その結果として労働力人口が将来どうなる かというようなことをやってきました。  例えば資料の3−2の4ページ、労働力人口の将来見通しというようなことがありま す。これで2004年に比べて2030年等々がどう変わってくるかというようなことでありま すが、この時はいつも人口推計の不安も与えられて、各年齢層の人口はこれだけいます よ、そのもとで労働力率がどうなるのかということを掛け合わせてこれは求めていくわ けですね。  その時に例えば2030年の数字というのが、ここに労働力率の上昇ということで、女性3 0歳から34歳が現在の62.2から80.4%へ上がりますという、そのもとでこれだけの21万人 の人口の減少で済みますよというようになっているわけですが、どうもこれまでのとこ ろ、本当にこの80.4%がもし達成されたとするならば少子化はさらに進行しないのかと いうような懸念があるわけですね。  従来はそこのところは考えないで、もう出生率は予見です、与えられています、その 結果、8割のこの年齢層の女性が働いたとしても、それには影響は出ないんだというよ うなことでやってきたわけですが、少なくとも現在の働き方とか、あるいは男性の家事・ 育児についての参加度というようなものが出ていましたが、それがそのままの状況で8 割の女性が働いた時には、むしろ出生率は下がるのではないかということが心配される わけですね。  そこのところは今までは遮断されてきたというようなところで、今回是非そこのとこ ろを考えていく。それにともなって働き方の見直しとか生活の見直しというようなもの も出てくるわけで、一体この8割の女性が働きながら、なおかつ出生率を1.3いくつにま で戻すというようなことが、どういう社会になるのかということをやはり示せるような ものがあったらいいなというように思うんです。  多分そういったことを念頭において、資料3−4というものも提示されて、これだけ 働き方によって出生とか結婚というのは変わるんですよということが示されたんだとい うように思いますので、是非そこのところを考えていきたいなというように思うという ことが一つです。  もう一つは、希望がかなった場合にはどうなるんだろうかというような御指摘であり まして、その一方で追加的に出された問題として、希望が例えば3分の1とか3分の2 というようにかなったらどうなるのか、そのフィージビリティはどうなのか、3分の1、 3分の2が本当にかなうのかどうかということについてのフィージビリティはどうなの かということを考えると、それは政策の支援とか、あるいは企業の支援というようなこ とが必要だという御指摘があったわけですが、そこのところはやはり連動して考えない と、どのような支援があれば希望の3分の1がかなうんだろうかとか、どのようなもの があればすべての希望がかなうんだろうかというふうに連動しておかないと、この議論 がなかなか現実性を持ってこないんじゃないか。全部かないますといった社会というの はどういう社会かというのは、逆にわからないと、それが現実可能であるのかどうかと いうことが何とも言えないということがありますので、そこも連動させて御議論してい ただけたらというふうに思っております。以上が希望ということで出させていただきま した。 (貝塚部会長)  今のは希望ということですが、質問も含まれていますが、何か事務局で今の関連で御 発言はありませんか。 (薄井政策統括官)  上の方は結婚がかなったフィージビリティということで、それは考えていかなければ いけない、なかなか難しいところがあるかと思いますが、先ほど来お示ししたようなデ ータとか、色々なところでフィージビリティの御議論もいただきながら御議論を進めら れたらと思っています。 (貝塚部会長)  労働力が増加した時に女性をとりまく雇用環境というのはなかなか厳しいもので、要 するに労働力が上がったとしても、働く環境は女性にとって必ずしもうまくいっていな いとした時に、これは大丈夫かというのは、多分樋口さんのおっしゃった背後にある、 企業経営のあり方とか、あるいはいろんなことがあると思いますが、そういう話であっ て、あとは政策の支援ということで、政策の支援というのは一体どういう支援があり得 て、しかも効果がどの程度あるのかという話も含めると、これは課題としてはかなり大 きいことだという印象も持ちますということだけを申し上げたいと思います。 (鬼頭委員)  鬼頭でございます。一点は質問でございます。あとは多少感想を申し述べさせていた だきます。私は歴史人口学と申しまして、江戸時代のことをやっておりますので、多少 的外れなことを伺うことになるかと思いますが、御容赦いただきたいと思います。質問 は希望子ども数を、現実の出生数をそこまで引き上げていくということはよく理解でき るんですが、希望子ども数とは何かということについて、もう少し詰めた方がよろしい のではないか。  かつては理想の子ども数ということについて聞いたアンケートもあったと思うんです が、その中身は何なのかということが一つですね。それともう一つは、現実としてどの ような社会、あるいは歴史的に見ても希望子ども数をかなえたような現実の出生数とい うのは実現したことがあるのかどうか、その辺のこともしっかりおさえておかないと、 この差を埋めようといってもなかなか埋まらないのではないかということが質問の第一 点です。これは我々がこれから作業していかなければいけない課題であるかと思います。    あとは感想ですが、江戸時代には農村でも都市でも出生力の階層格差は大きかったと いうことははっきりしています。余り使ってはいけない言葉かもしれませんが、貧乏人 の子だくさんということは全く嘘で、所得階層とか経営規模の大きい世帯ほど子ども数 が大きいということは、現在の統計にも非常にはっきり出ているような気がしました。  それからもう一つ、樋口委員の質問とも関わってくるのですが、最後に説明を受けま した育児得点であるとか労働の問題というのは非常におもしろいというか、いろいろ示 唆に富んでいると思いました。  要は70年代中ごろから現在の少子化が始まっているということ、それから核家族が60 年以後急速に増えていったということ、つまり伝統的な家族の崩壊が起きている中で少 子化が進んだということだと思うんですね。それは核家族の中で誰が子どもを育ててい くのか、伝統的な家族の中ではおじいちゃん、おばあちゃんとか独身の兄弟姉妹とかが 面倒を見ることができたでしょうけれども、全く妻が孤独な状態の中におかれて育児を していかなければならない、そういう中で少子化というのはより一層進んだわけです。 さらに専業主婦率というのはたしか70年代が一番大きかったのではないでしょうか。  つまり女性の労働力率が低かった、それが先ほどの樋口委員の質問とつながってくる んですが、専業主婦が減ってきた、働く女性がふえたということが少子化にさらに拍車 をかけているだろうということで、基本的には伝統家族へ戻しましょうという意見もな いわけではないですが、それは非現実的だと思うので、核家族の形態であっても、育児 がサポートされるようなワークライフバランスあるとか、夫の育児への参加であるとか、 コミュニティのサポートであるとか、いろいろやらなければならないことがあるだろう し、今はもう既に動いているでしょうけれども、それをはっきりと主張していくべきか なと思います。  最後の一点ですが、これは本当の感想なんですが、もう一つここで欠けているのは社 会心理的な分析ということはないのではないかということを常々思っております。つま り、日本の合計特殊出生率が2を割るのが1975年ですが、オイルショックというのはや はり非常に大きなきっかけになっているのではないか。  つまり、将来への不安とか現在への不満とか、そういうものが合計特殊出生率に表れ ている。つまり合計特殊出生率が一種の未来への期待値、あるいは現在への事業評価と いうようなことではないのかなというように思われるわけで、一番冒頭で質問しました 希望子ども数を満たせない理由というのは、単純に人口学的に晩婚化とか有配偶出生率 の低下であるというように説明することは簡単なんですが、その背後に何があるのかと いうことを、先ほどは所得と労働ということが主に説明要因でしたが、心理的な要因と いうのもどこかしっかりとおさえておく必要があるのかなと感じました。以上でござい ます。 (貝塚部会長)  最初の御質問にあたる部分は、希望する子ども数といいますか、それはどういう性格 のものかという御質問でしたが。 (城政策企画官)  その部分については、これはざっと見た時の希望でございますので、必ずしも御本人 の回答が実現可能なものかどうかというところは、ここでは精査されていないと考えて おりまして、不可能だからさらに御希望が高いというようなこともありますでしょうし、 ですからここについては何らかの政策なり支援なりで、満たされ得るものに限った希望 ではないだろうということは考えております。これをさらにどのように扱っていくかと いうのは、これからのことになると思いますが、そのような理解でございます。 (貝塚部会長)  今の点に関しましては、私なんかが思うのは、要するにものすごくやや理想的という のか、これだけ子どもがいたらいいのになというレベルから、かなり現実的な、自分の 経済状態も将来まで考えて、この程度だとか、レベルは随分違っていて、そもそもどの 程度かということで、非常に高いところをとればそうだし、極めて取り扱いの難しいも のだと思いますね。 (阿藤委員)  今の点で、今人口学では、日本でいうと出生動向基本調査ですが、いわゆる出生力調 査というのが世界各国でやられているんですね。その中でいろんなメジャーがあって、 いわゆる理想子ども数でも、例えば社会にとっての理想子ども数とか、それから夫婦に とっての理想子ども数、それから漠然と希望子ども数、さらにそれにもうちょっと現実 的に予定子ども数、アメリカなんかでは期待子ども数とか、いろいろ本当に違うんです ね。  社会にとっての理想子ども数というのは大体2.6人とか2.7人とか、高い数字が出てく るんです。日本でも結構長い間そういう数字がついてましたね。しかし夫婦にとっての 理想子ども数が、これも2.6〜2.7人あったものが段々下がってきて、今は2.4〜2.5人に なっている。ですからいろんなレベルのメジャーで少しずつ下がっているわけですが、 もともとのメジャーによっての差というのはかなりあって、それでも希望子ども数、予 定子ども数は相変わらず2を超えているというのが実際のところですね。  問題としては、いわゆる一番シビアな期待とか予定子ども数がどれぐらい実現するの かというのは、実はこれまで日本ではそれに関するパネル調査が行わなかったというこ とがあって、実際には実証がなかなかできてないんですね。最近やっと21世紀縦断調査 などがパネルで行われるようになって、これからつまりそういうもののメジャーの信頼 性とか、そういうものが出てくるという状況で、今までは結果として予定子ども数が2. 2人、そして夫婦の完結出生児数が2.2人というようなことが出てきた、安定した時期で すね。ですから大体実現されていると見てきたのですが、これからはどうなるのか、そ ういう新しいデータとか手法でやってみる必要があるというように考えられますね。 (鬼頭委員)  先ほど2.6人、2.7人の時代があったということを阿藤委員がおっしゃいましたが、確 かにそのとおりで、長い間日本では「多し少なし子3人」というようなことわざがあり まして、子ども3人というのがいいんだ、これは3人生めば1人は残るということもあ るだろうし、それから兄弟が3人というのは非常にバランスがいいということもあった かもしれない。だからこれが理想であり、希望であった時代が非常に長かったんだろう なということで、それがどう崩れていったのかということだろうと思いますね。 (貝塚部会長)  どうぞ他に御自由に御発言ください。 (榊原委員)  非常に興味深い説明を色々といただいたんですが、一つ最初に質問させてください。 資料の3−2の4ページ目のところで、労働力率の上昇があれば、労働市場への参加が これぐらい進んでというような仮定の数字があったんですが、女性の労働力率が現在の6 2%から80%と仮定されていて、男性の60歳から64歳までの人が70%から89.4%に仮定さ れているのは、これはどうしてこういう数字が置かれているのかということ、こういう 取り組みを実現したら、こういうパーセンテージ引き上げが可能になるというような、 何か想定もあるのかどうかということを教えていただけますか。 (山田参事官)  手元にこの原典の資料を持ち合わせておりませんので、アバウトな答えですが、一応 これは職業安定局の雇用政策研究会で推計をしたものですが、たしか30から34の女性の ところにつきましては、育児休業の取得率ですとか、あるいは保育所の整備であります とか、そういうものにつきまして一定の仮定をおきまして、それを元にして労働力率を 推計しているというふうに記憶をしております。  それから男性の60歳代前半につきましては、現在、高年齢者雇用促進法の中で65歳へ の定年の引き上げというものを年金支給開始年齢の引き上げに対応した形で企業の方に お願いしているという、こういう状況でございますので、65歳定年というものが、現在 の60歳定年と同じぐらいの比率で普及をするということを前提にして、労働力率を推計 しているというふうに記憶しております。 (榊原委員)  この労働力率の関係で言えば、例えば一定の年齢の女性たちの希望の労働力率をかぶ せると、今よりもはるかに高いといわれている数字が既にあるように、その潜在の希望 のところがかなえられてないというのは確かに言われているところがあると思うのです ね。  だけれども先進国の中で同じような産業形態と教育の体制をとっている中でも、日本 の女性の労働力率が極めてずっと低いままである。多少上がったけれども低いというと ころが、どうして克服できないでいるのかというところで、雇用管理のシステムをもっ と大きく変えるとか、様々な施策も変えるとかといったようなところが、ほとんど抜本 的には変わっていない、転換されていないというところをきちっと変えていかないと、 ここに書いたような状況にはなっていかないと思います。このままの状況の延長ではお そらく今の労働力率が劇的に上がっていくということはないのだろうなと思いますし、 今の年功賃金の延長で、男性は年齢が上がるほどに役職も賃金も貢献以上に高くなって いるというような日本の雇用システムのままで、高齢の男性がまだ雇用されるというこ とも非常に難しいのであろうなというところはきちっと、よほど対策をとっていかない となかなか転換できないというように感じています。  それともう一つは、冒頭から希望する出産、結婚の数が満たせれば、どういったよう な出生率になっていくのかというところをどう考えていくかという議論があるのですが、 目標の出生率を設定するという考え方というのは、これまでになかった、非常に斬新と いうか、思い切った考え方であるとは思うのですが、その出生率の目標値というものを 設定するということが一体どういう影響を持つかなということについては、ちょっと慎 重に考えた方がいいのではないかなというように感じています。  というのは出産、子育ての満たされていないニーズを満たすためにとっていく施策と いうのと、設定した目標の出生率を満たしていくための施策というのには、おのずと違 いがあるのではないかという気がしているからでして、つまり育てる人、育っていく人、 子どもと親たちの幸せ、何を必要としているのかという視点が落とされがちになるので はないかというところが懸念されることと、それから数字だけが先にひとり歩きし始め るとすると、年金制度を維持するために、労働力人口を維持するために産めと言われて いるのかというような誤ったメッセージが伝わりやすくなってしまうというところに対 して、慎重に取り組む必要があるだろうなということは感じます。  だからおぼろげに、例えばこれぐらいの希望の結婚、それから出生の満たされていな いニーズがあるということを念頭において政策に取り組んでいくということはあっても いいと思うのですが、何か明確な数字を一つ出して、それをいつまでに満たしていくと いったような取り組み方にはやや疑問があると思います。  また先ほども議論がありましたように、希望の子ども数と言っても、例えば私自身そ ういうふうに聞かれても、自分に住み込みのベビーシッターと家政婦さんを与えてもら えるのだったら4人は欲しいなと思うけれども、今の働き方と家庭内の状況に、ちょっ と夫が協力的になってくれるという程度だったら、あと0.5人ぐらいしか持てないわねと いうように大きくぶれるわけで、聞かれた人だって、きっとその答え方だって前提の置 き方によって随分幅があるだろうと思います。そうすると今その満たされてない希望は これぐらいあるというふうに認識されているものだって、かなり幅のあるものだろうと いうふうに認識した方がいいだろうなと考えるので、その数字のひとり歩きということ については慎重であってほしいとういうように思います。 (薄井政策統括官)  一点目の働き方の問題であるとか、そこら辺については、この場でどこまで御議論い ただけるかというのはあると思いますが、いずれにしても男性も女性もその働き方とい うのが、結婚なり、あるいは出産につながっていくという部分があると思いますから、 ここでいろいろと御議論をいただき、その御議論の結果を、この場での御議論、あるい はさらに別の場での御議論に反映できたらというように思っております。  それから二点目のところですが、出生率の目標を設定すると、確かに今までの御説明 が、希望がかなえられたらということで、そういうふうに御理解をいただいているのか もわかりませんが、まだ決め打ちの目標をここで設定するとか、そういうことを実は考 えているわけではございません。  いわゆる先ほど来申し上げた、希望の意味もございますが、その希望が実は現実との 間にギャップがある、そのギャップというのは何らかの壁といいましょうか、そういう ものがあるから、こういうギャップがあるのだろう。そういうことを前提とした時に、 仮に希望がかなえられたらということで、これも一つの決め打ちじゃなくて、100%なの か3分の2なのか、2分の1なのか、3分の1なのか、こういう色々なバリエーション をもった中で、これぐらいかなえられるとしたらこういうことだということについて試 算をしてみましょうというのが一つと、これは試算だけだと先ほど樋口先生がおっしゃ いましたが、フィージビリティの議論もございますので、どういうふうなところがその 壁を打ち崩すための手段になるのか、なかなか定量的にはものが言えないかもわかりま せんが、そういうことを整理していけたらということでございます。  繰り返しになりますが、これが出生率の目標だから、それに向かってしゃにむに進む、 そういう性格のものでなくて、あくまで希望がかなえられたらということで、いくつか のバリエーションを置いて試算をしてみてはどうだろうかと、こういうふうに御理解を いただけたらと思います。 (阿藤委員)  私も今の榊原委員のおっしゃったことと関連して、若干そのそもそも論みたいなこと をしておいた方がいいかなと思ったのですが、最初のペーパーの開催目的のところで、 要するに少子化が結婚や出生に関する希望を反映したものではないという、何か障害が あるからではないかという、ある種のミクロの視点をここに出されているわけですね。 これは私は大変良いと思うのですね。  どうしても社会保障審議会の中でやるということになると、社会保障制度であるとか、 マクロ経済であるとか、そういういわゆるマクロの視点からどうしても少子化を何とか しなければならないというところが強すぎると、やっぱりそれは今榊原委員からお話が あったような反発が起きやすいし、それはそれでかえってよろしくないのではないかな ということで、しかしミクロだけ見て、こういう問題はなかなか論じられないので、や っぱりマクロとミクロの、変な言い方をすれば一種の合わせ技で、ある程度皆さんに理 解してもらうという視点が必要なのですね。  これは逆の例で、途上国での人口増加、人口爆発の問題でも今そういう議論があって、 昔は人口爆発が大変だから家族計画を普及するという、そういう視点だけだったものが、 今はむしろそういうマクロの問題と、それからリプロダクティブライツという、そうい う個人あるいは女性の視点というものをきちんと配慮して政策を実行する、そういうや っぱりマクロとミクロの両面を見つめてうまくやっていかないと政策というのは円滑に 進まないということで、この点くれぐれも注意深くやっていただきたいなということが ございます。  それから第二点は、これまた人口部会でやられている人口推計と今回の人口特別部会 との関係といいますか、これも人口部会で議論している時に、何か新聞報道などに色々 な報道が出たりしたものですから、どうなるのかなと少々心配していたのですが、人口 部会の方の人口推計、これはいわゆる人口学的な客観的手法でやられる、つまり現状こ ういう状況のまままでもしいったら、出生率はこうなりますよ、人口はこうなりますよ という、そういうことが描かれる。それはそれで一つ必要なわけですが、それに対して もう少し違った視点で、ある程度シナリオ型の、そういうものも決してしてはならない ということはないと思うのですね。ですからそこをはっきり分けたということは、大変 私はよかったと思っております。  それから第三点として、これは個別の話になりますが、出生率といわゆる女性の労働 力率の関係というのは、私自身もずっと関心を持っているのですが、国際比較的に見る と、つまり両方高い国と両方低い国が結構あるわけですね。それは逆に言うと、女性が 子どもを産みやすい環境ができれば、女性は働きながら子どもを産める、そうでないと なかなか労働力率も上がりにくい、だから片一方だけがずっと上がっていくということ は、私は普通考えにくいと思うのですね。  男女共同参画が少子化の対策だということは全然言うつもりはありませんが、しかし 両立できるような社会になって初めて両方とも上がるのであって、もし樋口先生がおっ しゃるようなワークライフバランスとか、あるいは仕事と子育ての両立支援とか、そう いうことが進まないのに労働力率だけが80%になるなんてことはおよそ考えにくいと私 は思っています。ですからこれはある意味では政策の裏づけ、あるいは社会の変化の裏 づけがあって初めて実現できる数字かなと、そんなふうに思っております。 (貝塚部会長)  他に御意見はいかがですか。 (大石委員)  この部会に参加させていただくにあたりまして、子どもについての人々の希望がかな った場合の社会の姿を示すことの意味を考えておりました。先ほどの御説明では、国民 運動を喚起するといったお話もありましたが、理想像を見せて、国民にそれに向かって 頑張れと言ったところで効果はないと思われます。むしろ、行政あるいは企業において、 両立支援のために努力している人々の追い風になるように、希望がかなった場合の姿を 示すことが意味を持つのではないかと思っております。  それから先ほど阿藤先生がおっしゃいました労働力率の話に関連しましては、30〜34 歳の女性労働力率がとかく注目されますが、どちらかというと私は労働力率の水準より も出産前後での離職状況に注目した方がいいと考えます。つまり、仕事をしていた女性 も第一子の出産前後で7割が離職する傾向が続き、かつ、それが一向に改善されてない というところがやはり問題なのではないでしょうか。子どもを産むからには今まで続け てきた仕事を辞めなければならない、そして再就職する時には以前と同じほどの条件の 仕事にはなかなかつけないという状況が、一番の問題であると思います。  それからもう一点。私は労働時間のあり方についても注目しております。先ほどの21 世紀成年者縦断調査によりますと、前回調査よりも夫の労働時間が延びた世帯では、労 働時間が短縮した世帯よりも第二子の出産割合が低いという傾向があり、労働時間が出 生行動にかなり影響を及ぼしていると思われます。  今までの時間短縮というのはほとんどが週休2日制の普及によるものでありまして、 出勤日あたりの労働時間はわずかしか短くなっていません。また、サービス残業などを 含めるとむしろ平日の労働時間は延びているかもしれないという状況があります。しか し、子どもを育てるには、1日24時間の中で仕事と家庭のバランスがとれないとうまく いかないと思います。休日だけ父親が一日中家にいるよりも、平日でも毎日一定の時間、 父親が子どもとじっくりかかわれる時間を確保するということが目標として必要なので はないか。そういうようにして子どもに関わりたいという権利が保証されていくことが 必要なのではないかと思っております。 (小塩委員)  まず、少子化がなぜ悪いかという、そもそも論なのですが、先ほどのお話ですと労働 供給は先細ってマクロ経済に悪い影響を及ぼすというお話がありましたが、私は実はそ こは余り心配はしていないのです。子どもの数が減ったら、確かに供給は減少しますが、 その一方で需要も落ちるかもしれませんので、ひょっとするうまく均衡が成立するかも しれませんし、それからよく1人あたりの資本ストックとか、1人あたりの所得で見る と、子どもの数が少なくなって人口減少が進むとむしろメリットが出てくるというそう いう議論もありますよね。  ですからマクロ経済的に見るとそれほど子ども数の減少というのは心配する必要はな いんじゃないかなというように思います。むしろやはり社会保障のあり方だろうと思い ます。今の社会保障の仕組みというのは、子どもがある程度順調に再生産されないと維 持できない仕組みになっておりますので、そういう観点から見るとやはり行き過ぎた少 子化は問題だ、そういうような議論の方が説得的かなというふうに思います。  それから二番目なのですが、先ほど来、希望がかなった時にどれぐらいの出生率にな るかという、そういう数字についての議論が出てきております。私は今電卓が机の上に ありましたので、先ほどの御説明にそって希望が一応かなって、生涯未婚率が10%にな って、それから夫婦の完結出生児数が2人になって、それから離死別効果係数が、これ は変わらないというふうにいたしますと、潜在出生率というのをラフに計算すると1.75 というふうになりますね。そこまでいくのはちょっと大変なので、3分の1にしたらど うか、4分の1にしたらどうかというふうな、そういうふうなことについて数字を出す というお話でしたが、それは私は悪くないというように思います。  先ほど大石さんがおっしゃったように、それは国民に対する目標の設定というのでは なくて、やはり政策担当者の方々とか、企業の人事担当の方々が念頭において色々議論 する時の目安になるというふうな点では非常に良い数字の出し方だろうというふうに思 います。ただ、その場合もある程度、先ほど樋口先生もおっしゃいましたが、政策の効 果がどの程度あるかというのは押さえておく必要があると思います。  特にその点で申しますと、これは三番目のコメントなのですが、私はどちらかという と少子化の原因は結婚前にあるのではないかというふうに思います。先ほどの御説明で もやはり若い人がなかなか結婚をしにくい状況にある、日本の場合は結婚がまずあって、 その後で子どもを産むという、そういう時間的な順序が非常にしっかりとしております ので、結婚前は重要だろうと思うのですが、いろんな図表を見ていただきますと、やは り若い人たちの所得をめぐる環境、雇用をめぐる環境は非常に不安定になっております。 そういうふうな不安定な環境を政策的に是正した時にどのぐらいの効果が出てくるのか というのは、ある程度計算できるんじゃないかなというふうに思います。  それから最後に結婚した後はどうかということなのですが、私は結婚した後は皆さん 結構子どもをつくってらっしゃるので、むしろ政策の立て方は、希望した子ども数を実 現するためにはどうしたらいいかという立て方よりも、むしろ出産子育てが夫婦のライ フスタイルの選択に弊害にならないようにする、そういうふうな形から出産子育てに社 会全体で支援しましょうというような議論の仕方の方がいいんじゃないかなというふう な気がします。そういうふうなことをやった結果として子どもが増えたら非常にハッピ ーなのですが、そこまで狙う必要は私はないのではないかなというふうな気がいたしま す。以上です。 (前田委員)  私は今自治体の現場で毎日ミクロのことばかりやっておりますので、マクロ的な議論 は他の委員にお任せして、本日は現場での感覚を中心に発言させていただきます。出生 率という子どもの数を議論する際に、私は現場で今危惧しておりますのは、労働力率を 上げて、少しでも生産性も上げて、少子化を乗り越えていこうという時に、果たして子 どもたちのクオリティとケアがどうなっているかということを危惧しています。  例えば横浜市では今年からニートやフリーターの対策も始めました。現在ニートやフ リーターの人たち、失われた10年間で就職状況が悪く、今なら普通に就職できる人でも 就職できなかった人、対人関係がうまくいかなくて就職できない人たちが、今後どうな っていくかということを考えるわけです。  ニートやフリーターなどの子たちを早くケアしないことには、はっきり言えば将来親 が亡くなって親の年金がなくなると生活保護層にくるだろうということがありますので、 社会的生産に携われるように育てていくことのケアが必要だなというふうに思っており ます。  あとは雇用のミスマッチも激しく、実は横浜市の場合は高齢者も多いので、介護施設 もどんどんつくりたいのですが、介護してくれる若い人がいなくて、施設がもう開けら れないという状況がいくつか出てきています。しかし一方では先ほど申しましたように ニートやフリーターで何か社会的に貢献したいけど、チャンスがない人たちがいます。 雇用のミスマッチはかなり深刻で、それを何かつなげられないか。フィリピンから看護 師や介護士を入れる前に、今いる日本の若者たちを何とか正規雇用に結びつけることが すごく重要だと思っております。  それから市役所の話になりますが、市役所はここ5年ほど大卒事務職の採用において 女性比率が急速に上がっておりまして、去年4月1日に入った大卒事務職は65%が女性 です。35%が男性です。この5〜6年以内に横浜市の職員は約3万人いますが、職員構 成は男女比率ぴったり一緒になります。造園とか土木、建築、そういう職人も女性職員 が非常に増えています。  何が問題かといいますと、幸いなことに地方公務員ですので、出産を機会に退職なさ るような方はほとんどおりません。よほど体が悪くなったり、何かの事情がない限り10 0%復職をなさいます。どこの企業も同じだと思うのですが、市役所の場合も総務省から 地方公務員の定員を削減するように言われていますので、その中で女性比率が上がって、 ほぼ育児休業は100%とりますので、人員管理が難しくなって、残っている育児休業をと らない職員に過大な負担がかかる状況になっています。  ですから、ものすごく矛盾を抱えていまして、先ほど所得が高いほど結婚していると いいますが、非正規雇用の人の賃金を上げるということは、人件費に配分できるパイは 決まっていますので、所得が上の人は下がり下の人は上がるということです。それを許 容できるかどうかということと、当然それをすればダブルインカムで世帯を構成しない と子どもを産むような経済的な余力が生じませんので、非正規雇用の問題を本格的に解 決しようとすると、かなり思い切った労働市場や雇用慣行の変更を強引にやらないとい けなくなってしまうのではないかと思っております。  女性職員比率が高くて、育児休業などをとれる企業は、地方自治体もそうですが、育 児休業の間の人件費が労務管理をどう乗り越えるかという問題も非常に抱えています。 横浜でも子育てで女性に優しいことで有名な企業はいくつもありますが、そこはもう深 刻な悩みを抱えておりますので、やればやるほど人件費が増す、育児休業をとってもら うのは良いが、カバーできる正社員はいない。育児休業をとることを前提に最初から正 規雇用を1割水増しでとれるような体力があるところというのは限られています。  繰り返しになりますが、地方公務員も定数管理がかかっていますので、非常に今職場 は厳しい状況になっているということをお伝えしないと、これは本当に労働力率を上げ てやっていくということと、それから数少ない人たちの生産性を上げるためにはかなり これまでとは違ったアプローチが求められるのではないかなと思っております。以上で す。 (貝塚部会長)  私から少し意見を申し上げたいんですが、一つはやっぱり先ほど鬼頭さんも言われた んですが、人口ないし出産その他家族の問題というのは、ある種の社会における通念と いうのか、そういうものがあって、それが変わりつつある現代で、その影響力は非常に 強いのですね。  ですから要するに家族の形態、家族がどうなのかというパーセプションは20年前と今 とでは、人数の問題が減ったということもあるし、それからやはり高齢者との関連も、 一緒に必ずしも住んでないケースが多いとか、色々その辺の変化があって今の事態が来 ている。  社会の環境は必ずしも楽観はできないというのは、例えば医学部の先生、例えば社会 保障審議会でいえば鴨下先生などが、多分、今のお医者さんの心配されていることは、 医学部において小児科医と産婦人科医の希望者が少ないということですね。なぜそうな っているのかというと、これはまた社会的な背景があって、医事訴訟が一番多いのは多 分産科あるいは小児科なのですね。そうすると医学部の学生というのは、将来を見るこ とにおいて一番頭が働く鋭い人ばかり集まっているわけですから、そこを見ながら選択 をしていくというわけですね。  したがって鴨下先生は最近確か財団をつくられていると思いますので、要するに医学 部へ来て産科婦人科医になろうとする人には特別の奨学金を出す、そうでもしない限り、 それは企業の方に、多分財団はでき上がったのではないかと思いますが、やはりそこの 部分は環境としては良くないのですね。要するに少子化、少子化で人口を増やさなくて はいけないということで、一番最初の出生の時と育児の時の医事環境というのは、現在 悪化しつつあるわけですね。地方に行けば非常にひどいことになっているというのはよ くありますが、そのあたりの話はやっぱりインフラとしては非常に重要で、そこを充実 していく必要があるという気がします。  それから私は経済学者ですが、1990年代以降の日本の不況というのが、これが企業経 営の管理の仕方に大きく影響を与えて、先ほど言われたようなフリーターの話も、それ から正社員とか非正社員とかというようなことがありまして、どうも私はどちらかとい えば経団連は一番けしからんという意見なのですが、やはり合理化というのをやり過ぎ たのですね。合理化を進め過ぎて、今の時点に立ってこれは大変だと経営者が気がつい て、なるべく正社員を増やしましょうとか急に言い出しても、10年間ぐらいまともに大 卒の人を正社員でなかなかとらなかったという時代があって、そうすると簡単に言えば 賃金は余り上がらないのですね。正社員も上がってないのですね。  だから日本ほど賃金が上がってない国というのは、景気がよくなっても賃金は余り上 がらないのですね。だから普通ならば景気がよくなれば賃金が上がる、これは樋口さん の御専門でしょうが、でもなかなか賃金が上がってこないという、したがって不況のし わ寄せが企業の経営の過度の合理化を招いて、そのことの結果が最後は企業経営にツケ が来るというのが私の意見なのです。  要するに労働者の質をきちんと高めるように、それまでのやり方をきっちりとってや らないとまずいのですが、それがやられてない時に大急ぎでいろんなことをやって、中 途採用をしますと言っても、そこのところはそれほど簡単ではなくて、結局随分大きな 長い期間の間に日本の経済は大きな打撃を受けて、その結果、しわ寄せがどこへいって いるかというと、弱い人のところへ一番いっているというのは、常識的にそれはそうで して、そういう状況に来て、それを元に戻すといっても、簡単に元へ戻すというのは、 どういうふうに戻したらいいのかというあたりが多分一番重要な問題じゃないかと思い ます。  それからこういう出生率の予想とか期待というのは極めて主観的な部分もあって、調 査が一番難しいので、どちらかというと社会学者とか、そういう人が一番得意の部分で すが、だから係数的にぴっちりした数字を置くということ、現実はそうなっているので すが、将来どうするかという時の数字の置き方というのは、常識で考えても相当幅のあ るところを念頭において、割合とわかりやすい形で、とにかく増加させるとか、比率を ある程度上げますとか、そういう感じで議論した方が、数字を出してしまうと数字とい うのは必ずしも統計的な信憑性その他があるかないかということに関わらず、世の中の 人はみんなそれを信用してしまうということがあって、その部分も結構社会的な影響が 大きいので、そこはかなり慎重にする必要があるかと思うのです。  それからあとはやはり企業経営の問題で、大企業だけじゃなくて、中小企業というの は日本では随分重要な部分なのですが、中小企業は相当ある意味でひどい状況に、不況 のもとにあって、これからその中小企業というのは今どうするかというところで、例え ば川崎とか、典型的に言われますね。そういう企業のサイズの違いによる問題というの も結構労働問題の中では非常に大きな問題が残っているのではないかと思います。  それからもう一つだけ、テクニカルな質問ですが、人口構成の表で突き出ている部分 があって、ちょうど今60歳前後のところがあって、その次に山がないのですよね。元来 もともと山があって、それが次の第二世代のところで一つ残って、ある程度年齢別の人 口構成が増えている。ところが今60歳以下のところがほとんどストンとなっていまして、 増えてないというのか、だから要するに人口構成の見方も、昔は簡単に言えば、非常に 人口が増えた時の、その次は第二の波がやってきて、第二の波がやってくると、その次 は第三の波がやってくるというものですが、第三の波が何故か消えてなくなったという のがありますね。  そこの問題も割合と全体のバランスが重要な気がしますということだけ、何でそうな ったのかなという、多分予想されることは要するに出生率その他がかなり低下して、要 するに人口の波というものが消えてしまったという状況が予想されるということが気が ついた点で、申し上げたいところであります。勝手なことを申し上げました。 (樋口委員)  二点ほど、一点は離婚をどう考えるかというところの問題ですね。御案内のとおりも う離婚率は相当に上がってきて、これはある社会学者の計算だと、5年以内に離婚して いるカップルが日本でも12%になった、アメリカは19%で、アメリカだけが離婚社会じ ゃないというようなことから、今度人口部会の方でも離婚による影響というものを考え ましょうというふうになっているわけですが、ここでは離婚という問題をどう考えてい くか。  あるいはシングルマザーの問題といいますか、未婚の母といいますか、そういった人 に対するサポートのあり方というものを政策的にどう考えるかというのを、今日結婚が 遅れているというのと、結婚完結出生率は議論が出てきたのですが、その影響というの をどう考えていくかということはやはり重要なテーマとなってくるのではないかという ふうに思います。  もう一つは、これもテクニカルな話として、片方で人口部会で推計を行っていく、こ こでの推計というのが、それをベースにして例えばプラスマイナス出生率がこうなりま すという形で出すのか、それとは全く別に独立した形でのシミュレーションというよう な形で出していくのか、いつまで推計をするのか、例えば2055年の人口部会の方という ことですが、ここでのターゲットというのをどこのタイムフライズンまで入れていくの かということについて何か見通しみたいなもの、御意見としているところがあったら教 えていただきたい。 (貝塚部会長)  どうぞ二番目の御質問にお答えください。 (城政策企画官)  人口部会の方の人口推計は、現状の形に合わせて、トレンドに合わせてある程度のモ デルをつくる形になっておりますので、少なくともトレンド部分についてのモデルは、 それを参考にさせていただいて、その係数なり変数なりのところに希望の形を入れるよ うなことになるのかなというふうに考えております。  ですから例えばその乖離といいましても、ゼロからのさっきのいくつという数字では なくて、次の出生率の出たものと、この希望値との乖離というのを、ものの考え方の基 本におくのかなというふうに考えております。それから期間についても、同じ形でやっ ていきますので、基本的にはどこまでやるかという意味については、人口推計にならっ ていくのかなというふうに考えております。 (阿藤委員)  少子化の背景と、それから政策論との関係なんですが、政策論を議論するとどうして も経済に偏りがちなんですね。一つは女子労働と出生率とか、両立は可能かどうか、あ るいは90年代、バブル崩壊以降の不況がフリーターやニートを増大させて、それが成年 期の家族形成を難しくしているとか、そういう議論だと思うのですが、少子化全般に言 えば、例えばこの不況になる前でも既に出生率が1.5ぐらいまでに下がっているわけです ね。そうするとそれは相当低いもので、つまり不況、それからフリーター、ニートの問 題を離れた広い要因を考えなきゃあならないということに当然なるわけですね。  その時に背景としては、そういう経済的要因の他に、やはり何か文化的、さっき社会 心理とおっしゃいましたが、特に今低い国が、南ヨーロッパとか日本とかアジアニース とかドイツ語圏とか、割にジェンダー的に男尊女卑とはいいませんが、割と伝統的な性 別役割分業の価値観が強い国なのですね。そういう意味でなかなか簡単には変えられな いものがそこに一つあって、そこまで変えようとすればそれは価値観の衝突になるし、 それから大変時間のかかるものなのかもしれないということがあるので、先ほどの数字 的にドンピシャリとか、何%できるとかといっても、そういう部分というのはなかなか 政策論で動かすことは難しいわけですから、やっぱりある程度できる部分は限られてい るかなという、その辺のあえて言えば慎重さといいますか、そういうものがあっていい のではないかなというように思います。 (鬼頭委員)  これは質問ということではなくて、私自身の覚悟ということなのですが、榊原委員か らも御指摘があったように、とにかく子どもを産むということはお国のためでもない、 社会のためでもない、自分たちの夫婦・家族のためであるということは、固有の権利で あるということはきちっと押さえておかなければいけない。だけど放っておいたら我々 未来に対しての責任を放棄したことになるということも事実だと思うのですね。どこま でも減っていく。  我々の仕事は何かというと、実は1974年の『日本人口の動向』と題する白書で、将来、 静止人口を目指せということで、出生率をほんの僅かだけでも純再生産率を2%ぐらい 落としたら、昭和85年に人口ピークアウトして、後は人口は減少しますよというところ まではいって、日本人口会議は子ども2人までと言ったわけですね。  だけどそこから何も手をつけてこなかったというと正確じゃないので、いろいろ少子 化対策というものはやり始めたわけですが、人口の減少を止めるだけでも再生産置きか え水準へ出生率を実はもっていかなければ、どこまでも人口は減るわけですから、これ は野放しにしておくことはできないので、未来に対しての我々の責任があるということ で、何が可能かということを考えていくべきではないか。今すぐ労働力をどうこうする という話ではないと思うのですね。それはまた短期的な話であるかもしれないけれど、 小塩委員がおっしゃったように、それはいくらでも代替手段はあり得る。だから我々は もっと長期の視点で取り組むべきであろうということが私の考えです。 (榊原委員)  先ほどの発言と少し前後するのですが、今回の会議を設定されている問題意識として、 今の少子化は国民が希望している結果ではないという視点を私は本当にそのとおりだと いうふうに感じています。子産み・子育ての現場を取材して回っていて、はっきりわか ってくるのは、岩手に取材に行っても、秋田に取材に行っても、山口県に取材に行って も、熊本県に取材に行っても、若者に就業の機会がないからみんな首都圏に来る。首都 圏で何が起るかというと、就業の機会は得られるけれど、子どもを産めない、結婚の機 会もなかなか得られないというような全国の大きなシステムの中で非常に産めないシス テムをつくっているなというようなことを大きく感じています。  そうした中で非正規だから、仕事を失ってしまうから子どもを堕ろすというような30 代40代の女性が後を絶たないということを産科の先生方から聞かされますし、一方で結 婚し子どもを持ったけれども、子どもが起きている時間に家に帰れないという、先ほど も長時間労働の30代の男性が多いという話がありましたが、もう60時間どころか、もっ ともっとオーバーしている人たちは、例えば首都圏、埼玉とか千葉とかに取材に行くと かなりいらして、実は残業時間も伏せられているので統計にすらのってこないような長 時間労働の人が相当いる。  その中で、自分の父親の世代は同じサラリーマンだったのに、週に何日も夕食には家 に帰ってきたのに、同じサラリーマンをしている僕はどうして子どもの寝顔しか見られ ないのだろうというような声も相当あるのですね。そういったようなおそらく統計にも のってこないし,政策決定やその政治の議論の現場まで届いて来ないような、いろいろ な実態がある中で、この少子化が止まらないということが起きているのだなというふう に感じているので、こういったミクロのところからのアプローチで、どういったことを やっていくべきかという議論というのはする意味があるというふうには思っています。   (貝塚部会長)  大体時間がまいりましたので、次回の予定を事務局の方からお願いいたします。 (薄井政策統括官)  次回は日程を確認させていただきたいと思います。今日は色々な資料を出させていた だきましたが、御要望に応えられるかどうかわかりませんが、こんな資料が次回は欲し いとか、そういう御要望があれば、事務局にお寄せいただきたいと思います。 (貝塚部会長)  それでは今日はこれで散会いたします。どうもありがとうございました。 (終了) 照会先 厚生労働省政策統括官付社会保障担当参事官室 代)03−5253−1111(内線7714、7692) ダ)03−3595−2159