06/11/07 第4回福祉、教育等との連携による障害者の就労支援の推進に関する研究会議事録 第4回 福祉、教育等との連携による障害者の就労支援の推進に関する研究会記事録 議事次第 1 日時   平成18年11月7日(火)10:00〜13:00 2 場所   厚生労働省共用第8会議室(6階)(東京都千代田区霞ヶ関1−2−2)    3 出席者  ・参集者(50音順)    石井委員、小川委員、佐藤委員、志賀委員、高井委員、武田委員、時任委員、   中井委員、原委員、原田委員、東馬場委員、松井委員、松矢委員、宮崎委員、   山岡委員、輪島委員  ・オブザーバー   文部科学省初等中等教育局特別支援教育課 瀧本課長   職業能力開発局能力開発課 三富主任職業能力開発指導官  ・事務局   岡崎高齢・障害者雇用対策部長、宮野企画課長、土屋障害者雇用対策課長、   浜島調査官、白兼主任障害者雇用専門官、矢田障害者雇用対策課長補佐 4 議題 (1)福祉分野における就労支援の現状と課題について(ヒアリング)  1. 就労移行支援事業者等I    報告者:社会福祉法人電機神奈川福祉センター常務理事 志賀利一委員  2. 就労移行支援事業者等II    報告者:社会福祉法人桑友理事 武田牧子委員  3. 就労移行支援事業者等III  報告者:全国社会就労センター協議会調査・研究・研修委員会筆頭副委員長                               東馬場良文委員 (2)発達障害者に対する就労支援の現状と課題について(ヒアリング)  ○ 発達障害者関係団体    報告者:日本発達障害ネットワーク 代表、全国LD親の会 会長 山岡修委員 (3)その他 5 資料  資料1 就労移行支援事業について(議題(1)1.関係)  資料2 就労移行支援事業者における支援の現状と課題(議題(1)2.関係)  資料3 授産施設の就労移行支援の連携について 課題と展望(議題(1)3.関係)  資料4 発達障害者に対する就労支援の現状と課題(議題(2)関係)  参考資料1 障害者自立支援法における就労支援関係資料  参考資料2 発達障害者に対する就労支援施策関係資料 6 議事 ○座長  開始時間になりましたので、開会したいと思います。本日の出欠についてですが、末 永委員、松為委員が御欠席でございます。また、本日は文部科学省からのオブザーバー として特別支援教育課の滝本課長が出席の予定でございます。また、岡崎部長と宮野企 画課長は国会関係用務の対応のため30分ほど遅れての出席ということになっております。  早速ですが、本日の議事に入ります。本日は障害者の就労支援の現状と課題について、 就労移行支援に取り組む福祉施設3者と発達障害者関係団体の計4者からヒアリングを 行います。最初に福祉分野における就労移行支援の現状と課題につきまして、社会福祉 法人電機神奈川福祉センター常務理事の志賀委員、社会福祉法人桑友理事の武田委員、 全国社会就労センター協議会の調査・研究・研修委員会筆頭副委員長の東馬場委員から 御報告をいただきます。その後に、発達障害者に対する就労支援の現状と課題につきま して、日本発達障害ネットワーク代表、全国LD親の会会長の山岡委員から御報告をい ただきます。  それでは、まず事務局から本日のヒアリングの進め方について説明をお願いいたしま す。 ○事務局  本日のヒアリングは4機関でございますので、まず20分御報告をいただきまして、そ の後、質疑10分をとりたいと考えております。併せて、ヒアリングが終わった後、約 50分間フリーディスカッションをお願いしたいと思います。資料1から4まではそれぞ れ御発表いただく方から御用意いただいた資料になります。また、事務局から、発表に 関連して参考資料を用意させていただきましたので、適宜ご覧いただければと存じます。 ○座長  進行につきましては事務局から御指示がございました。よろしくお願いいたします。  それでは、早速ですがヒアリングに入りたいと思います。福祉分野における就労支援 の現状と課題について、最初に社会福祉法人電機神奈川福祉センターの志賀委員からお 話をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○志賀委員  おはようございます。社会福祉法人電機神奈川福祉センターの志賀です。私たちの職 場はスタートしてからちょうど10年が経過いたしました。ちょうど10月から自立支援 法に基づく就労移行支援事業をスタートしております。30名定員、2カ所の運営という ことで、今週いっぱいで最初の10月分の請求の申請がめでたく上がらないといけないと いうことで、26単位なら1年半でいくらになるかとか、細かい計算をしている時でござ いますので、この発表はどちらかというと、私たちの職場の特徴をお伝えして、10年間 やってきた中で、大きくこういう問題があるのではないかというようなことを発表させ ていただきます。  では、最初に私たち電機神奈川福祉センターの就労支援事業の概要を説明させていた だきます。私たちの職場は神奈川県内で就労支援を中心とした事業を行っているところ です。社会福祉法人ですから社会福祉事業を中心とした事業展開をしております。  まず1つは、従来は授産施設といいましたが、2カ所の50名定員の授産施設がありま す。今は、いわゆる訓練施設と私たちは呼び替えていますが、就労訓練施設があります。 「川崎市わーくす大師」と「ぽこ・あ・ぽこ」がございます。それぞれ川崎市と横浜市 に存在しておりますので、その訓練施設に付随した形で神奈川県単独の就労援助センタ ー事業、国でいいます就業・生活支援センターに非常に近い事業だと思いますが、そち らの方が川崎地区、横浜地区にそれぞれ1カ所ずつございます。そして、訓練施設を持 たない湘南地域の就労援助センターが1カ所あり、就労援助部門は合計5カ所で運営し ております。それぞれ川崎地区は人口130万人、横浜が人口350万人、湘南地区が大体 70万人弱での事業運営となっております。  続きまして、組織図の中でのそれぞれの役割ということで、先ほど話しました2カ所 の従来型の就労訓練施設ですが、「ぽこ・あ・ぽこ」の方が現在就労移行支援事業で30 名定員、就労継続支援事業のB型20名を加えた多機能型で運営しております。今年の 10月からということであります。もう1つ「川崎市わーくす大師」も同様に就労移行支 援事業30名、継続支援のB型20名で運営しております。目的としては、働く知的障害 者を育てるという育成の分野に重きを置いた事業という位置付けにしております。  もう1つは、県単独の就労援助センター事業ですが、横浜南部、湘南地域、川崎北部 の3カ所の就労援助センターを運営しております。この目的としては、既に働いている 在職者の継続的支援を行うというのが第1点、もう1つは、働きたいと希望する障害者 の広く相談を受ける場所という、いわゆる相談調整機能を持っている機関ということで す。  そして、もう1つは、雇用しようとする企業に対して、雇用管理の方法であったりと か、具体的には特例子会社の設立支援であったりとか、そういった企業を支える意味で、 働く場を開拓する事業を雇用促進センターとして持っております。これについては後で また御説明しますが、新たにNPO法人障害者雇用部会というのが設立されましたので、 そちらに事業の大部分が移管された形になっております。  私たち電機神奈川福祉センターはこれ以外の事業も持っているのですが、全体の予算 規模の大体70%以上はこちらの就労支援関係ということで、就労支援に特化した社会福 祉法人というのが特徴です。  これは、過去5年間と書いてありますが、今年度が入っておりませんので4年間の就 労実績ということで、3カ所の就労援助センターの新規の相談登録者数です。その年度 の新規の相談登録者数と、その1年間で新たに就職した人の数、そして、その1年の間 に、在職支援をしている中で離職された方、そして、年度末時点の3月末時点で、働き 続けていて、支援をし続けている方の数です。平成17年度末で381名、10月末時点で 402名となっており、全員が知的障害の方で、これらの方を支援し続けているというこ とです。これの足し算はあまり意味がないんですが、新規登録者の方は、128、153、 145、156とありますが、4年間で582名です。それから、就労者数としては、4年間で 284名、離職者数としては107名というのが、足し算の数字になります。  こういった規模で運営している私たちの就労支援事業ですが、特徴的なものがいくつ かございます。1つは、在職者の丁寧な継続支援というふうにタイトルを出させていた だきました。私たち就労援助センターを中心としまして、既に企業で働いている方のい わゆる職場定着、職業上の職場の中での生活の問題、それから家庭生活の問題を支える という意味で、終結を設けない、月1回、職場訪問をベースとした支援、逆にいえば、 離職をする際には丁寧な離職支援を行うということを非常に大きな課題としております。  棒グラフで表しておりますが、平成17年3月末時点、いわゆる平成16年度末時点で の在職者数が341名いて、1年間でどういう仕事をしたかというのをまとめたものです。 平成17年度の間に新規の就労者数が78名、そのうち5名の方が離職されております。 それから、前年度から341名の在職者の継続支援を続けていて、そのうち33名が離職さ れているということで、その前の平成16年度から平成18年度に引き継がれた人は308 名で、合計は平成17年度末時点で381名ということです。実質40名の方が増えている ような形です。毎年、このような形で、年度末の在職者数、年間の離職者数を出してお ります。なおかつ、離職した方の理由をしっかり分析するというのが、ここ数年間丁寧 にやってきたというのも、私どもの特徴だと思います。これまでに、ここでの報告の資 料等でも、一般的には、離職者数の数であるとか、あるいは年度末の実際にサポートし ている数であるとか、そういう数字というのはほとんど見ることはできませんので、こ れは私どもの特徴だと思っています。  それから、特徴の2番目は事業所のニーズに対応するということです。スライド左上 の方に典型的な事例の話を挙げましたが、就労支援機関の集まりでいろいろな話をする 際に時々出てくる話で、知的障害だけに限らないと思いますが、「私たちの支援機関では、 毎年就労実績に貢献してくれる人がいるんですよ」ということを聞きます。毎年就職し て、離職して、就職して、離職すると、1件ずつ就職件数が付くということですけれど も、実は、このようなタイプの方の支援はなかなかやりづらいものがあります。企業に そういう経験をする人を紹介するのがなかなか難しいということです。これは、私たち の職場のいい面だけでなくて、若干の課題でもありますが、そういった離・転職を繰り 返す方の支援というのは、事業所のニーズになかなか応え切れないということで、やり づらくなっています。また、就職後の支援を行う中で、離職時の対応というのは非常に 負担がかかるという経験が職員にもありますし、なかなか二の足を踏んでいるという現 実がございます。  それから、右下の事例は、事業所の閉鎖が決まっていて、20年以上雇用している人で、 何名の方は既に異動させたのだが、なかなか異動させるのが難しい障害の重い方、典型 的には知的障害の方等の退職時の相談にのっていただけますかというような相談に対し ても、障害者でない問題についても丁寧に対応するようにしております。もちろん、そ の企業の方と話をしながら、十分その価値があると思われる場合に限られますが、そう いう相談にものっております。  就労支援は障害者に対する支援と企業に対する支援の、両面が必要であると言われて いますが、私たちのような福祉事業を中心として実施している組織では、どうしても障 害者の立場に強く立ち過ぎているような印象を持っておりますので、福祉事業の範囲を もう少し常識的な範囲で拡大解釈をして事業を進めるということを考えております。  雇用促進事業としては、企業を支援するためにNPO法人障害者雇用部会が立ち上がり まして、そちらの方に企業支援のかなりの部分を移管しているというのが現状ですが、 NPO法人障害者雇用部会の事務所が私たちの法人内にあるということで、強い連携を持 っております。NPO法人障害者雇用部会は、障害者の障害者雇用に関する啓発活動、あ るいは、障害者を雇用しようとしている、あるいは雇用している企業に対しての、雇用 安定のための支援、それから、障害者雇用を促進するために関係団体と各種共同事業を 行っております。  特徴の3番目です。一般相談と就労支援の区別と書いてあります。特に知的障害だか らという意味もあるかも知れませんが、新たに、雇用率がカウントされる精神障害の方 にも相談の枠を広めるときには、これの応用形ということになると思います。  私たちの法人では、障害をクローズドしての就労支援というのは、基本的に一般相談 として行っていますが、それは支援としては考えておりません。それから、原則週30 時間以上のフルタイムで、経済的にもある程度年金併用で見込めるという就労形態を中 心として考えております。  右下にグラフがあります。現在就労している人たちの労働時間を簡単にまとめたもの ですが、週30時間以上働いている人が全体の87%、20時間以上の方が12%で20時間未 満のいわゆる短時間就労の方は1%しかおりません。もちろん、その方も20時間未満を 目指して支援をしていったわけではなく、本人の希望、特徴等を考えて、20時間未満が 適切であるという形で支援をしていますが、それを中心でやっているわけではないとい うことです。  短時間労働の問題として、特に知的障害の場合で私たちが考えているのは、最低賃金 プラスアルファー程度の賃金では、年金と合わせても経済的自立が困難であること、も ちろん企業の側からは、雇用率のカウントにはならないということがあります。それか ら、就労以外の日中活動の場の調整というのも比較的負担の大きな支援になりますので、 私たちは相談と登録というのを分けております。  そして、4番目です。就労希望者の掘り起こしと書きましたが、1つは、グループワー クの企画運営ということで、相談調整を行っている就労援助センターでは、広く近隣の 施設や作業所等に声をかけて、当初は施設に出向いて出張講座を開催し、保護者会の時 に話をさせていただいております。働くことの大切さであったりとか、面接の練習であ ったりとか、就職してからの金銭管理の面であったりとか、実際働いている人はどうい った仕事をしているのかとか、そういったことを少人数のグループで講座形式で、ある いは演習形式で行ったりして、より多くの方に就労援助センターを知ってもらうという 事業を毎年定期的に開催しております。  それから、もう1つは、訓練施設の方においても、いわゆる在籍者ではない人にたく さん施設を知ってもらうということで、実習という形でたくさんの方に来ていただいて おります。2つの施設で、養護学校等の生徒数の受入数が77名、それ以外の在宅であっ たり他施設利用の方の受け入れ件数が105名、合計182名の方を昨年度1年間で受け入 れております。  神奈川県内で事業をしているという理由だけではないと思いますが、就労を希望する 知的障害の方を集めるというか、集まっていただくというのに非常に苦労しており、こ こ数年来益々その傾向が大きくなってきております。また、こういう努力をしても、実 はなかなか求人とマッチしないことも結構あるということで、最近、私たちの方では、 職場開拓というよりも、働く、あるいは働く希望を持っている障害者の開拓というのが いかに難しいかということがあります。これは、私たちの大きな課題です。  そして、特徴の5番目として、職員配置の特徴があります。民間企業経験者の智恵を 生かすということで、数年あるいは10年程度の民間経験で働いた経験を持つ方という意 味ではなくて、ほぼ働いている期間の大多数、いわゆる20年、場合によっては30年を 超える民間企業で働いた経験のある方を職員として活躍していただいているというのが、 私たちの職場の特徴です。就労訓練施設の方では、私のように民間企業で働いた経験の ほとんどない人間の割合は、大体4割で、6割の方は民間企業経験者の方です。それか ら、就労援助センターの相談調整機関の方でも、3人のうち1人は企業経験者の方に入 っていただいています。企業経験者の方は、訓練施設の場合は、製造部門であったり、 そういったのが中心ですが、例えば相談調整の方は営業であったり、人事であったりと か、そんな経験のある方たちが入っている場合が多いです。  私たちの職場の特徴をまとめたのが、13枚目のスライドです。電機神奈川福祉センタ ーの就労支援の特徴を今5つ話しましたが、在職者の丁寧な継続支援、それから、事業 所のニーズに対応していく。それから、一般相談と就労支援の区別を明確にしていく。 それから、就労希望者の積極的な掘り起こし。そして、民間企業経験者の智恵を生かす。 これが私たちの大きな特徴だと思っています。  実は、私たちの電機神奈川福祉センターは、産業別の労働組合が設立した社会福祉法 人です。法人ができる10年前のスタートの段階から、労働運動として障害福祉の領域に 関わってきた人と、いわゆるそうではない福祉の専門家の人と、何度も意見が衝突した 中で生まれてきたものです。結果的に、理論や流派、流派という言い方はおかしいので すが、理論、学術体験に則ったというよりも、現実対応を行っているという施設の特徴 があります。1人でも多くの知的障害者が働きやすい社会実現に向けて必要なことを行 う。必要でないことは逆に行わない。というのがまず1つです。それから、障害福祉の 固有の文化から少し外れてでも、より一般的な常識的な範囲で判断して、事業を展開し ていく。当たり前のことを当たり前にというのが、スローガンになっております。  最後に、簡単に今後の展望の課題をまとめました。2つございます。1つは、短期的な 課題で、今まさに私たちの目の前にぶら下がっている課題です。新たに就労移行支援事 業を開始したわけですが、実は、就労支援事業に入る前の段階、それから出る段階の取 り扱いについてどうしていけばいいか、非常に悩んでおります。先ほど、実習生の受け 入れという話をしましたが、学校の生徒さん87名ぐらい、それ以外の人は110名ぐらい おります。その110名の方というのは、かなりの方は他施設に在籍している人で、2週 間なり1カ月のサービスをしています。サービスをしているということに対して収入は ゼロという問題がございます。ですから、業務の範囲は広げても、無報酬のサービスと してやっていく業務が非常に多く、逆に、企業等に実習に出した時の請求をどうするの か。あるいは、委託訓練を使った場合は、請求なしということですが、そういったバラ ンスが、私たちにとっては非常に分かりづらいし、それをどうやって運営に結びつけて いけばいいのかということに非常に困っていて、どうしていけばいいのか、智恵を出さ なくてはいけないことです。実際の運営の収支のバランスをどうとっていくかというの は、非常に大きな課題です。  もう1つ。こちらの方がより根本的な問題ですが、今のところ私たちは終わりのない、 終結のない継続支援という形でサービスを行っていますが、継続支援を行っていても、6 カ月以降の支援が全くのサービスということになると、私たちはどうしていかなければ ならないか考えていかなくてはいけない。私たちは終わりのない継続的な支援がないと、 なかなか知的障害者の雇用の促進は難しいというふうに考えております。そういった面 では、長期的な支援ということに対しての運営はどうなっていくのかというのも、非常 に大きな関心事です。  そして、より長期的な問題ということで、就労移行支援の準備訓練施設の意味という のは、実態としてどうあるのかという点で、非常に悩んでおります。  自立支援法の従来型の授産施設から、一般就労する利用者はなかなか生まれないので、 新たに期限を定めた就労移行支援事業が有効に違いないという考えは、正しいと思って おります。ところが、就労へ向けての訓練施設は、地域のネットワーク型で就労へ向け て相談調整を行う機関と比較して、本当に実績を上げられるのかという点については、 私たち自身も明確な答えを得られておりません。  例えば、電機神奈川福祉センターは2カ所の50名程度の訓練施設を2つ持っておりま す。また相談調整機関を3カ所持っています。予算規模としてはちょうど訓練施設2箇 所、相談調整3箇所で、1。就業・生活支援センターなんかを考えますと、基本的には施 設規模の3分の1程度の予算というのが一般的だと思います。そういった中で、実数を 見てみますと、先ほど、平成14年度から17年度までの新規の就労者数を上げましたが、 あの数字の中には、私たちの授産施設から就労している人も含まれます。平成17年度を 見ますと、78名のうち、24名が私たちの訓練施設から一般就労した人たちです。その他 の54名の方は、私たちの施設ではなくて、在宅の方、あるいは他の福祉施設や作業所を 利用している方の就労者数が含まれます。予算規模が半分で、仕事としては倍やってい るということです。もう1つ、年度末の定着フォロー数を見ていただいても同じです。 平成17年度の段階で授産施設から就職して働いている人の数は100名おります。ところ が、そうではない方、先ほどと同じように、在宅であったり、施設から就職された方は 281名おり、それを私たちの就労援助センターで支援をしております。これを見てもそ うだと思います。いわゆる費用対効果と見ると、もう決定的な差がございます。  同じように、こちらの会議からいただいた資料から見てみますと、いわゆる箱形の雇 用支援センターと就業・生活支援センターの平成17年度の相談登録者数とか、新規登録 訓練数であったりとか、就職数とかを見ると、かなりの差がございます。箱形の雇用支 援センターの仕事の量というのは、この間の滋賀の数字を見て、私たちの職場は、かな わないくらいかなり大きい数字を上げております。決して仕事をしていないという意味 ではないんですが、実際に相談調整の機関というのは、それ以上に実績を上げられると いうのは、現状の数字からはっきりしていることだと思います。  訓練施設の必要性というのは、相談調整機関の登録者の多くは実態としてはどこかの 訓練施設を利用しているわけですから、単純な費用対効果は危険であるというのはよく 分かります。それから、訓練施設を利用した準備訓練には効果があるというのは、運営 している私たちもよく分かっているつもりです。アセスメントの面であったりとか、特 に若年層の成長していく面というのは、目のあたりにすると驚きます。  それから、ある程度の手厚い期間、長期間サポートをしているということで、働いて からのリスクというのは非常に分かりやすくなるというのも分かっております。それか ら、就労へ向けてのステップアップとして非常に分かりやすい。障害を持たれる方にと っても、あそこにいって、しばらく訓練を受けて就職をするというように、非常に分か りやすい流れになるというのも理解しているつもりです。  ところが、本当に訓練施設が必要なのかと、もう1度考えてみると、実は私たちの支 援している人たちの多くは、最低賃金プラスアルファーの賃金で働いておりますので、 そういった意味での、労働付加価値というのは、何を訓練して育成していくのかという のは、やりながらも、まだまだ悩んでいる部分が多いというのが実態です。  それなら、委託訓練、ジョブコーチ事業とか、トライアル雇用とか、様々な制度を利 用した中でのやり方というのは、もっともっと工夫ができるのではないかと考えていま す。あまりこれを強調すると、私たちの法人の収入が益々危なくなっていくのですが、 数字を見ていくと、こういったことが最近感じられるということで、私の報告は終了い たします。 ○座長  ありがとうございました。いろいろと重要な課題が出て、まとめのところは将来のこ とを考えると大変な意味があって、就労・生活支援センターあるいはこの援助センター のようなものの役割と、箱形の訓練施設のあり方とか、非常に考えさせられるところが 多いわけでございますが、いかがでございましょうか。どうぞ、宮崎委員。 ○宮崎委員  非常に積極的にしっかりと取り組んでいただいているところをお聞かせいただいて、 ありがとうございました。素晴らしい取り組みと拝見しているのですけれども、2、3お 聞きしたい点がございます。  1つは、入り口の部分のネットワークをかなり強調されて、利用者確保というところ でいろいろな地域の就労支援を行っている施設、作業所、あるいは養護学校への働きか けをされているというお話をいただいたと思います。出口と、その後の連携の部分につ いて、どのようなネットワークを考えられるのか。事業所と志賀さんのところだけで対 応されていくのか。どんなネットワークがあれば、もっといい形になっていくのかとい うところです。  それから、2点目といたしましては、7枚目のシートの離職者ですが、ここの離職者が 過去から対応されている方、33名いらっしゃるんですが、この方たちの離職の理由とか、 具体的にどんなふうなサポートをされているのか。終結を設けずに月1回の支援をされ ているということなのですが、この体制で大変な労力になっていく中で、これからどう いうふうにこの人たちを支援していくのか、離職者に対して具体的なプランとか、どん な離職者支援をされてきているのかという辺りをお聞かせいただけたらと思います。 ○座長  それでは、お願いいたします。 ○志賀委員  2点目の離職者の方から先にお答えいたします。離職者につきましては、私たちのと ころでは、もちろん事業所都合が年間にかなりの割合で出ております。離職者のうちの 大体2割ぐらいが事業所の閉鎖等に関係してきます。その他の理由としましては、もち ろん本人都合ということなんですが、いろんな理由がございます。最終的には対人関係 ということで、おきまりのパターンという方もいらっしゃるのですが、体調の問題、精 神科的な疾患との問題であったりとか、その都度、理由が違うということです。  ただ、私たちのところで一番大切にしているのは、継続的な支援が行き渡っていなく て、その原因の芽を見つけられなかったのは何ケースあったかということですね。それ と、もう1つは、短期間で離職されている方というのは、ジョブマッチングの問題で、 マッチングが失敗している方がほとんどですので、短期間の離職、マッチングミスとい うのと、支援が手薄になったために離職をしたというのを、いかに減らしていくか。ゼ ロにしていくかというのが、一番大きな課題だと思っています。ある程度の離職は当然 出るものとは思っておりますが、その2つだけはなくしていこうというのが、数字とし て上がっております。  そして、離職後の再就職の話ですが、ちょうどこの4年間の数字を最初に上げていま すが、平成16年度までの3年間で、この夏の時点で再就職をしている方は、ちょうど4 分の1でした。25%の方が再就職をしております。その後、受け皿として一旦施設あるい は就労支援機関の方に戻って来た方は、半数以上おりますが、再就職まで至っている方 は25%ということです。この辺の数を、逆に今まで離職者が少なかったので、あまり大 きなテーマとしてこなかったのですが、今後少し上げていくというのも大きな課題だと 思います。プラス、何度も何度も離職する人は、どこまで私たちが支援するのかという のも、大きなテーマになっております。  それでは、最初の質問の、入り口のネットワークではなくて出口のネットワークです が、出口のネットワークはここの場とはちょっと雰囲気が違うと思います。私たちの長 期的な支援で一番大きいのは、家庭の生活環境がだんだん弱っていく中で、金銭管理の 問題で、地域権利擁護事業を使ったりとか、あるいは、弁護士さに入っていただいたり とか、住居の面では、地域のいろんなグループホームであったりとか、そういったとこ ろとの繋がりというのは、年間かなりのケースが出てきます。そういう部分は私たちが 持っていない部分ですので、最近は大きな課題になっています。住宅事情については、 最近では単身のアパートを見つけたりというのは非常に簡単ですので、言い方はおかし いですが、グループホームの運営が難しい現状では、単身生活の方が比較的可能性とし ては高いというのが、実情です。  もう1つは、もちろん企業との間の問題なんですが、それにつきましては、あまりこ れまで意識せずにといいますか、それぞれの会社のネットワークの中でということで、 特に大きな混乱とか、困っていることというのはございません。もちろん、就職する段 階では、各ハローワークへの登録や、トライアル雇用の利用率も非常に高いですから、 その後の話もハローワークとします。あるいは、重度判定等で職業センターに行く場合 も非常に多いということで、必要な連携自体は必ずとっているつもりです。以上です。 ○座長  他にいかがですか。原田委員、どうぞ。 ○原田委員  今日、最初の方でお話のあった特徴の4番になりますけれども、就労希望者の掘り起 こしについてですが、働く知的障害者を輩出していこうという団体として、一番下の方 にもありますし、口頭でも志賀委員の方からありましたが、職場開拓以上に働ける障害 者の開拓に力を入れざるを得ないという部分です。これについてですが、手帳の重い方 に目を向けていこうということなのか、あるいは、そうではないのか。ということも含 めて、先ほどの発表の中では、あまりそこまで踏み込んだ部分はなかったと思うのです けれども、この辺りの背景とか、あるいは、今後の方針について、もう少し教えていた だけたらと思いました。よろしくお願いいたします。 ○志賀委員  この辺につきましては、理論的にどうのこうのではないのですが、まず1つ、私たち の認識している範囲での話をさせていただきます。現在でも、いわゆる知的障害の方の 手帳の判定でいうA手帳、IQにすると35未満の方たちで就職している層というのは、 ある程度いらっしゃいます。私たちの全体の支援をしている中でも、10%少々、12%ぐら いだったと思いますが、おられます。ただ、その方たちが訓練でどのぐらい伸びられる かということになってくると、非常に難しく、疑問を感じております。就職して安定し ている方の多くは、仕事の職種が非常に限定されているんですね。この仕事がなくなっ たら、ではどうするかということになると、やはり、いったん施設に引き上げになって、 もう1つ新しい場所を見つけていく。うまくマッチする場所を見つけるのがなかなか難 しいという問題もございます。ですから、A手帳の方が全員就職できないというわけで はないですが、その場合の、要するに定着のサイクルみたいなものは、今の私たちの仕 事の範囲だとちょっと難しい。多様な就業形態というのを考えないといけないと思って おります。いわゆる企業の方で全て仕事を教えてというような努力というのは、なかな か難しい人たちだなと思っております。  もう1つは、それ以上のIQ35以上の方ですが、私たちのところではB手帳ですが、3 度、4度になるのでしょうか。そういった方たちの問題というのは、今働いている方の 数字をどれぐらいというふうに統計の数字を見るかにもよりますけれども、11万4千人 働いているという平成15年度の数字から見ると、IQ35はちょっと行き過ぎだろうとは 思います。私たちの経験からすると、IQ40以上の知的障害の人の2人に1人ぐらいは働 いている数字になるはずですので、2人に1人ではなくて、3人に2人ぐらいは働いても らってもいいのではないかという気持ちはございます。そういった現状をちゃんと認識 しながら、少しでも増やしていけたら、やる気になっていただける気持ちを持つことに 繋がるのではないか。こちらの方で、一人ひとりの適職というか、アセスメントをして、 どういった仕事がマッチするかということと、支援体制があれば、かなりいけると思っ ております。  ですから、その辺の数があとどれぐらいあるかという見込みの問題ですが、必ずしも 私たちの地域の周りでは、まだまだそんなにない。逆に施設の中で、中・軽度の方がた くさんいらっしゃるという現状を見ると、そうなっていないなと思っています。 ○座長  ありがとうございました。時間が来ましたので、また後のフリーディスカッションの 方で質問等、意見を出していただきたいと思います。  それでは、続いて社会福祉分野における就労支援の現状と課題につきまして、社会福 祉法人桑友の武田委員から御発表をお願いいたします。 ○武田委員  島根の社会福祉法人桑友の武田と申します。先ほど志賀委員から都市部における取り 組みが報告されました。私たちも何回か視察にも行かせていただいたんですが、地方か らみれば羨ましいような取り組みの御報告で、これから報告する内容は島根県という全 国の中でも本当に人口の少ない、資源の少ない中での小さな小さな取り組みの1つです。 それも、精神障害をメインとした取り組みであるということを前置きさせていただきま す。  まず、桑友の授産施設における現行の支援内容なんですが、主たる障害者は8割が精 神障害者になっています。参考資料の1ページ目に島根県の図を添付しておりますが、 東西に非常に細長い県でありまして、その東部地域の方に松江が位置しています。その 隣が出雲地域で、出雲地域の1部に斐川町というのがあるんですが、松江市と斐川町で それぞれ授産施設を1箇所ずつ経営をしております。訓練内容としては、どこにもある ような内容のものをしております。今後新体系への移行としては、就労移行と継続のA をメインにしながらやっていきたいと考えています。また、授産施設からの就職状況で すが、17年度、18年度それぞれ5名ずつ、今年度はあと5名程度は就職できるのではな いかという経過状況です。その他の業務内容としては、精神障害者地域支援センターを この10月から、地域活動センターと相談事業者にしていきました。あとは、まだ旧体系 なんですが、生活訓練施設、そして10月からこれまで旧体系のグループホームだった5 施設を福祉ホームと合わせて、定員26名のグループホームということにしました。生活 訓練施設の方は、今後グループホームとケアホームに移行する予定でいます。  就業・生活支援センターは松江県域の就労支援をする場としております。これについ ては、参考資料の8、9ページに17年度、18年度半期の実績を載せておりますので、後 でご覧いただければと思います。また、島根の概況につきましては、参考資料の1から 7ページに労働局からいただいた資料や、島根県全体の施設の状況を表にしてまとめて おります。  次に、作業種目とか商品というのは、他の施設とそれほど大きく変わりませんが、大 事にしてきたのは、私が病院に10年間勤めていた中で、患者さんたちが一番強く言われ ていたことが、まず働きたいということでした。その次に、働いていると誇れるような 場所で働きたいということだったのです。喫茶店という小さなちいさな活動から桑友は 始まっているんですけれども、そこで自分たちが商品として誇れるようなものを作って いきたいということで、当時ポストハーベストの問題、食品の安全ということが大きな 課題になっておりました。彼らと一緒に国産小麦と天然酵母を主原料としたパンづくり に取り組んでいきました。それがお客様から非常に大きく支えていただいたことが、彼 らの自信の回復に大きく繋がったと考えています。  また、どう就職に繋げていくかというところで、実際の職場に近い環境をどうつくっ ていくかということで、道の駅であるとか、湯の川温泉という斐川町には日本3美人の 湯といわれる温泉地があるものですから、そちらの事業の方に参入させていただいたり、 農業がとても盛んな小さなちいさな町なんですが、そちらの方の仕事の手伝いに行かせ ていただいたりしました。また、2年前から、去年から松江市の天神町の方に出かけま したので、商店街と連携しながら、そちらの方で、どのようにして仕事場の中で働いて いけるかをやってまいりました。  現行の職員体制ですが、精神の方は知的の施設とかなり体系が違っておりまして、箱 に補助金が付いている形になっていますので、定員が20名だろうが30名だろうが、施 設整備の時だけ補助金が違って、あとは運営費としては一本なんです。そういった中で、 定員に関係なくやっていかなければいけないという課題がありました。それが、今度新 たな体系では、個別支援に変わって行くことになりました。これまでの有資格者として は、精神保健福祉士、作業療法士などでやっております。自主製品が多いために、加配 職員は現業職員を入れております。  また、就労支援を担う担当者について意見を述べよということですが、先ほど志賀さ んもおっしゃったんですが、相談のところはやはり福祉の専門性がとても大きく必要だ ろうと私も考えておりますが、就労支援を担うところについては、やはり、なかなか職 場経験がない方が多いのです。すると、スタッフ自身が就労モデルである部分というの が大きくて、そこで保護される、するという関係からなかなか脱却できない。働くとい うことがどういうことなのか、スタッフ自らがアルバイト経験ぐらいしかないというと ころで、やはり先ほど志賀委員がおっしゃったように、就労経験のある方と福祉関係者 がどううまくチームを組んでいけるかというところが重要ではないかということと、先 般来委員会の方で出ておりましたが、大学の障害者福祉教育について、支援体系がこれ ほど大改革なされる折に、やはり基礎教育の場面でも改革を求めていきたいなというこ とがあります。また、私自身が社会福祉系の教育カリキュラムを見ている中で、臨床実 習が非常に少ないと感じております。私どもの方も1カ月程度の実習を年間何人かお受 けするんですけれども、1カ月というのはお客様なんですね。私は臨床検査技士という 医療職の資格を持って病院に勤めたものですから、看護師にしましても臨床検査技士に しましても、約1年間の臨床実習があります。すると、お客様では居られないんですね。 やはり資格を取った時に、もう命を預かるという仕事が始まります。それは福祉の現場 も同じだと考えます。直接切ったり貼ったりではないんですが、心と向き合っていくと いうことは、医療も福祉も変わらないのではないか。もっともっと何とか臨床実習を入 れていただけないかなということを考えています。これを語ってしまうと、長くなって しまいますので、先に行かせていただきます。  活動内容ですが、製パンの方は年間でクッキーと合わせますと約4,000万弱ですので、 授産施設というよりも、どっちかというとパン屋さんです。ですから、うちが施設だと ご存知のない地域住民の方が多くて、それはグループホームを開設する時など、パン屋 さんという認知が高かったために、とてもそれはラッキーなことだったと思っておりま す。それと、パン屋というのは、いろいろな仕事があって、その人の能力に応じていろ いろな仕事の組み合わせが可能です。ということもあって、いろんな仕事に就いていた だいて、その人がどのような能力があるかということを発見できるメリットがあります。 また、本当に地域の協力があってこそのことですが、道の駅であるとか、厨房であると か、いろいろなところの現場に行かせていただいております。  そのメリットというのは、まずそこの働かせていただくところの従業員がいらっしゃ るということもありますし、何より高い工賃が支給できます。お金ではないとはいいつ つ、やはり、最初作業所で支払った給料が1万円。それが5,000円上がる毎に、彼らの ニーズも上がっていくんですね。欲求と満足度が追いかけっこというのを、本当に作業 所の中で体験させていただきました。より高い工賃をと狙って、こういった活動も広げ ていきました。  松江の方の施設内活動も、できるだけ自主作業ということで、レストランをやってお りますが、なかなか経営感覚のない我々がやっていくことは厳しくて、現在経営コンサ ルタントの方にも入っていただいて、可能ならば就労継続Aに持って行けるようにした いと考えております。  松江の方の施設外活動は、新聞記事を載せておりますが、新工場を6月から取り組み を初めましてダンボール屋さんです。そちらの方で、まずスタッフが仕事を覚え、業務 分析をし、そして7月20日から精神障害の方1人からまず入っていって、現在3名の方 がいらっしゃるんですけれども、現在の平均時給が380円ぐらいです。来年度から就労 継続Aでいけないかということを検討しているところです。こういった、できるだけ地 域の中でより高い工賃で、できれば最低賃金以上のものが払える取り組みをしたいと考 えております。  また、雇用事業所、就業・生活支援センターと一緒になってやっているものですから、 雇用事業所は先ほどの志賀委員の御報告とは一桁違う数字になっていますけれども、ま ず、うちの施設を利用して就職した方が、この4年ぐらいの取り組みの中で、9事業所、 OB者が11名です。同じ事業所に2名のところが2カ所あります。それ以外の、よその 施設であったり、在宅者の方の就業・生活支援センターに登録されて就職の支援をした 方が18名。現在、約29名の方の就労後の支援をやっております。  先ほどの志賀委員の中にもネットワークのことがありましたが、これは電機神奈川に ありますNPO法人雇用部会で学ばせていただきました。やっぱりこういったネットワー クがないと、入り口のところもなんですが、我々の課題は入り口より出口のところが一 番大きな課題です。まず、事業所は30人以下の事業所が半数以上占め、300人以上の企 業が本当に数えるほどしかありません。ましてや、1,000人以上の企業というのは3カ 所か4カ所しかないような町ですので、そういった中でどう皆さんと連携して、一人ひ とりの雇用を実現していくかという時、都市部で行われているこういった取り組みを導 入させていただきたいなと考えて、どうしたらできるだろうかと思っているところに、 プロジェクトがあるということを聞いて緊急に応募して、この取り組みをさせていただ いております。  まず、企業の実態調査をしようということになりました。都市部は特例子会社などの 設立ができるとしても、なかなか小さな田舎ではできない。そうすると、そうした人た ちが何を考えているのか。経団連とか高障機構の研究データを元に、では島根でどうし た調査をすることで、疎外要因は何か、促進要因は何かということを考えて、アンケー ト調査をしました。そこで一番驚いたのが、右上の図の、今後も引き続き雇用継続して いきたい、あるいは、機会があれば雇用したい。これは、ちょっと予測を超えた数字で した。これを元に現在ヒアリングを展開しているところです。  回答が385社ありまして、1件、1件そこに電話して、ヒアリングの要請をしておりま すが、約130社ぐらいの訪問になる見通しが立ってまいりました。  就労移行支援事業者として予測される課題と方向性ですが、いっぱい課題があります。 やはり中小企業が大半を占める地方での一般就労への雇用事業所の開拓の困難性をどう していくかということで、先ほどの調査研究を通じ、どうネットワークを組み上げてい くかということです。それと、就労後のフォローアップのための制度の充実です。それ こそ、就労移行が進めば進むほど、きめ細かな定着指導が重要になってきますし、就業・ 生活支援センターが現行のままでは業務量が限界となっていきます。定着支援ができる ように、就労移行後の個別支援のできる体制が必要ではないかと考えています。それが 整うことで、就業・生活支援センターが未設置の地域がまだまだたくさんあります。そ ういったところでも、定着支援が可能になるのではないかと考えます。併せてアフター ファイブの支援ですが、現行では、各事業者の主体性に委ねられているんですが、やは り効果的にどのような支援がされているのかというところを集め、スポーツクラブとか いろいろなことをやります。飲み会をやったりとかすると、施設の責任がどこまである のかということも、だんだんリスク管理ということが大きくなっていきます。そういっ たところを是非研究していただいて、必要な事業化をしていただきたいと思います。ま た、就労継続Aを地方で拡大していくには、やはり行政の協力なくしてはできません。 そういったことで、何か授産振興センターのようなものが何とかできないものか。そう いったところで、行政機関であるとか、教育委員会であったり、議会等の公的機関の事 務的な仕事を何とかうまく団体をつくって、そこに仕事を集積して、就労継続Aのよう なものができないかなどと考えています。また、就労スタッフの育成を何とか早急に講 じていただければと考えています。  国が数値ビジョンを示されている中で、松江市ではどのようにやっていけるかという ことを考えていきますと、本当に就労も毎年60人、就労継続支援雇用型も200人という 数字を考えていきますと、どうすればいいんだろうというような状況です。でも、そう いう状況の中で、やっぱり働きたいと願っている方は現実に目の前にたくさんいらっし ゃる。ただ、施設にいる人たちがどのように我々のところに繋がっていくのかというよ うな仕掛けをどうしていくかということも、とても大きな課題になっています。そうい った時に、NPO法人を設立して、まず我々施設関係者と企業の方と、養護学校と、行政 と、そして当事者・家族が一緒になってそこを本気で膝を交えて考えていかないと、地 方ではなかなか厳しいぞと思っています。現在、こういった人たちに声をかけたところ、 皆さんがそうだそうだと言ってくださって、現在こうした構想を考えています。今、約 15名の方と、このNPOが何とか立ち上がらないかということで奮闘しているところです。  そこで、まとめた意見がこの福祉、事業者、特別支援学校、行政、企業等が参集した 団体の必要性ということで、現在呼びかけています。ちょっと時間もなくなってまいり ましたので、一つひとつ読み上げることはできないのですが、とにかくみんなで入り口 のところから出口のところまで一緒に考えるしか地方では方法がないなと思っています。  現行の連携施策に対する評価とかコメントというのも、挙げていったらきりがないと いう状況で、非常に失礼なこともたくさん書いているんですが、実は一番上に書いてい ますが、何か最近は連携、連携というかけ声があちこちで聞こえるようになってきまし た。確かに、本当に連携を求めてきたんですけれども、でも、言葉だけが上滑りしてい るような空しさもちょっと感じているところです。何とかそれが具体的になるようにす るには、どのようにすればいいか。単に情報交換の会議でいいのか。それはとても重要 でした。これすらなかった。でも、それがもうここ1、2年、随分進んできました。そこ から今度は、実効的な活動にみんなで一緒に、前に一歩進める活動が求められているよ うに考えます。ただ、課題は本当に山積していますが、障害者雇用促進法の改正に精神 が含まれ、障害者自立支援法で障害者支援の実施主体が市町村に一元化され、就労支援 との連携が明文化されました。このことの評価と期待はとても大きいです。これを実質 的に一歩一歩手を取り合って実現することが私の仕事であり、夢であります。また、教 育機会の数々の期待もありますが、こういったことを一緒にやっていければと考えてい ます。  そして、職業リハビリテーションの変容です。これは私が申すまでもなく、こちらに いらっしゃる松為先生が訳された本なんですが、訓練してからの就職、これももちろん 重要でした。ただ、これまで明らかにされたことが、就職してからの訓練、継続的援助 ということがとても大きな効果をもたらしていくということが、既にアメリカでは1980 年代から実証されてまいりました。私も1995年にアメリカに行って、この理論を基に、 精神障害者がロサンゼルスの街の中で、スーパーマーケットの製造業のところで、あち こちでジョブコーチの支援の下に働いている現場を見た時に、これだと思って、道の駅 とか、四季荘に繋がった経過があります。まだまだ十分ではありませんが、もちろん訓 練してからの就職が必要でないとは言いません。でも、就職してからの訓練、あるいは 継続的な援助がどうできるかというようなことを、もっともっと制度的に施策が充実し ていくことを願っています。  もう1つ、精神障害者には大きな課題があります。72,000人の方たちの早期の退院。 地域での生活。長い間施設に暮らしている人たち。入院している人たち。そういった人 たちが失ったものの一番大きなものは希望です。そこの中で一生過ごすために、どのよ うにうまくやり過ごすかということをやってきた人たちが、地域に出るということは、 とても大きなハードルがあります。地域で暮らせる希望を一番見いだしてくれるのは当 事者だと思います。地域で暮らしている当事者です。そして、我々がその希望に繋げる 手だてをどうするか。そして、内成る力をどう引き出していくか。でも、地域でその人 らしい生活をしていくには、私たちも、利用者本人も大きな自己責任が伴っていく。で も、それを乗り越えた時に、生活の中の有意義な役割を一人ひとりが担っていける。そ して、自己実現を果たしていける。そういったことを我々がどう支援していけるかとい うことも併せて皆さんと一緒に考えられればと思います。いただいた時間も終わりにな りましたので、これで終わります。 ○座長  ちょっと時間がありませんが、後ほどフリーディスカッションがありますので、ここ は神奈川と違って人口も少なく、事業所も少ないという地域の中で、しかも精神障害者 の支援事業を中心に展開してきた特色を持ちますが、質問をいただいて、後で答えてい ただくということにしたいと思います。どうぞ御質問を出していただければと思います。 佐藤委員どうぞ。 ○佐藤委員  佐藤でございます。精神障害者の方を地元のそれほど大きくない機関で就労支援をし ようとすると、おそらく、その施設内だけでは対応できない問題がいろいろ生じるだろ うと思います。その時に、うまく他の機関に繋ぐ必要がありますが、これは一般の障害 者の場合も同じだと思いますが、その方についての情報をどのように伝達して、相手側 の理解を得ながら動かしていくかという辺りについての悩みを、いろんなところで、実 際に障害者の就労支援や訓練を行っている方々からもよく聞きます。(ご本人の情報を) どこまで、どのように伝えていいだろうかということですが、例えば、武田さんのとこ ろで就労支援をする時に、そうした連携のところで、御本人さんの持っている問題点み たいなものをどのように相手側に受け渡しされているか、その辺りをお聞かせいただけ ればと思います。 ○座長  では、後でお答えいただくということで、続いて、原委員どうぞ。 ○原委員  障害者雇用促進法が改正されて、精神障害のある方の短時間労働の0.5カウントとい うのが出てきましたが、事業所の数が少ないという地域性がありますので、きっと難し さはあるだろうと思いますが、今後の可能性も含めて、短時間での就業形態の可能性を お聞きしたいと思います。 ○座長  他にどうでしょうか。では、私の方からお願いします。今、松江、斐川の方中心のお 話なんですが、島根県は数珠が繋いであるように非常に細長い県です。桑友の皆さんが 考えているようなことが、それぞれの他の地域ではどうなのか。要するに、この協議会 のネットワークは、桑友のある地域のネットワークでいろいろ今構想されていると思う んですね。ですから、他の方の動きなどもお聞かせください。  他にもう1つぐらい御質問があればいただきたいと思います。輪島委員、どうぞ。 ○輪島委員  スライドの12の一番下の就労支援スタッフの育成ですけれども、もう少し御説明いた だければと思います。 ○座長  それでは、武田委員、どうもありがとうございました。また後ほど、フリーディスカ ッションのところで御回答をお願いしたいと思います。  引き続き、福祉分野における就労支援の現状と課題について、全国社会就労センター 協議会の東馬場委員から御発表をお願いいたします。どうぞよろしくお願いいたします。 ○東馬場委員  全国社会就労センター協議会の東馬場です。今日発表する内容は、施設の現状という ことでしたので、セルプの動きとは別で、実際に私が神戸でやってきたことについて、 お話し致します。  私が20年前にこの福祉の分野に飛び込みましたのは、糸賀一雄がいう「四六時中勤務、 不断の研究、耐乏の生活」という3つの理念をどう実現していくかということで、栃木 県の足利市の知的障害者更生施設「こころみ学園」に入り、重度棟の中に6年間住み込 んでおりました。そして、「こころみ学園」が設立した「ココ・ファーム・ワイナリー」 という会社で、3年間ほど一種の季節労働者のような形でアメリカとオーストラリアを 行き来していました。それは、労働がどうのこうのと言うよりも、障害のある彼らと共 に、日の出から日の入りまで働くということを20代の頃にしていました。  その後、神戸に帰りまして、現在は社会福祉法人樅の木福祉会の入所施設で動いてお ります。42年前に設立されて、児童施設、入所授産が2つ、「ゼノの村」「山の子学園共 同村」があり、あと、精神障害者の生活訓練施設をやっております。  私が入所更生施設から入所授産施設に移った時、最初にびっくりしたのは、障害が軽 い方々が施設にいらっしゃることでした。私が平成13年から施設長になってから、一斉 に地域に行こう、働く場の確保ということで動き始めました。ちょうど支援費制度が始 まる時で、いろんな施設の情報を知りたいという職員も多かったので、作業所とか病院 のワーカー、あとは学校関係、行政が集まって、一緒に知恵を絞って、みんなで集まっ て、勉強会をしていこうと、神戸市の西区という地域でネットワークをつくりました。 これについては後で説明をいたします。  兵庫県の人口は560万人、神戸市の人口は140万人で、神戸市の西区は24万3千人が 住まわれていて、支援費制度の手帳交付者数は別表に入れております。あと、兵庫県の 障害者雇用率が1.68%、兵庫県の有効求人倍率が0.42ということで、兵庫県の状況を載 せてあります。  現在の施設の状況です。この3年で25名ほど地域生活に移行しましたが、やはり民間 の施設ですので、退所後は、誰か利用される方はおりませんかと、利用者を募ります。 今、自立支援法の障害程度区分の施設調査はまだ追いついていませんが、障害程度区分 の調査では、この数値のような形で出ています。  この数字の中では、就労移行利用者は16名となっていますが、地域移行はグループホ ームとかケアホームという形に移行しながら作業所に行っているメンバーです。うまく 企業に就職できた人たちが16名ですが、今何とかフォローしているのは6名で、企業の 方で働いています。  支援実施体制です。今までの発表者の方々はすごいことをされていますが、うちはほ とんど普通の施設です。本当に平均的な施設だと思います。ただ、私の考えでは、職員 の質というか、マンパワーが全てだと思っていますので、職員にはいろんなところに研 修に出かけてもらい、学んでもらっています。横の連携をとるためにも、居酒屋からホ テルまでというところの人間関係をどう構築していくか、そのためのソフトづくりとい うことで、いろいろやってもらっています。職員はちょっと悲鳴を上げている状況です。 まずやっぱり地域移行を図っていくときに、居宅の事業所が絶対に必要だなということ で、ヘルパー事業をやりました。  神戸圏域で就業・生活支援センターは1カ所ありますが、140万人が住む町で1カ所 だけではとうてい追いつけませんし、うちのメンバーをフォローしていくにも、自前で やっていくしかないと考えています。職員はヘルパー資格もあり、さらに24時間みてき た人たちですので、その人たちの行動パターンだとか、成長している部分だとか分かる ものですから、居宅の事業所もやらせています。あと、短期入所の部分は、入所施設で すので、緊急離職者の受け入れをしています。  あと、就労支援の担当にはハローワークとの関係調整もさせていますが、出会った人 のところで、企業さんで、仕事が落ちている場合もありますので、そういうところの営 業も担当させています。生活支援では、バックアップのグループホーム、ケアホームも やっています。あと、個別支援計画の担当には、施設退所者のフォローアップというこ とで、専門的に計画を作らせて、本人説明をさせています。  日中活動の授産の部分では、企業の実習グループに8名出ています。一時期は20名近 く行き、昼間はほとんど利用者がいなくなる状況もありました。順次グループホームと か単身生活、市営住宅の方に移ったので、利用者が大分減ってきています。今は、現実 には8名ぐらいの方が外に行かれて、あとは受託的な、下請的な作業です。あと、畑の 方で青ネギや芋などをつくっております。  今後の展開としては、就労移行と、就労継続AとBという形を考えています。ただ、 今、事業移行は、日中活動については、50名の定員ではなしに、分散化させる予定をし ていまして、20人単位で4カ所に分かれて、その地域の拠点をつくっていこうという動 きをしています。  話は戻りますが、ネットワークというものを14年前につくりました。これは私自身が 特に知的障害の分野にいて、知的障害の分野しか知らず視野が狭いということがありま した。また、私自身の身内に、聴覚障害の妹がおりまして、聴覚障害の方々とお話をす る時に配慮すべきことなどは感じておりましたが、他の身体障害の方々との接点が全く ありませんでした。ちょうど、私はセルプという団体に加盟をして、身障の方々とか、 精神の方々との意見交換をすることで、私自身非常に勉強になりましたので、うちの職 員にも積極的に他の機関とか、社会資源というものを勉強させる意味においても、こう いうネットワークをつくるべきではないかということで、神戸市西区の方に学びの場に ついても提供してもらえるところを探して動いています。  いろいろ本日の資料に添付していますけれども、こういうリーフレットがあります。 ハローワークは載っていないかも知れませんが、作業所とか、施設とか、病院を載せて います。これは、民生児童委員の方々に理解をしてもらおうと思って作ったリーフレッ トです。あと、障害を理解するためにということで、民生児童委員の方々が地元でこん な方がいるというような話が出てくる前に、ガイドブックみたいなものが必要ではない かと思いました。これは、ネットワークで会議をしている時に、ある通所授産の施設長 さんが発言されてたことですが、自閉症の子が、家でパニックを起こした時に、95歳の 寝たきりのお婆さんの頭を踏んでしまい、お婆さんが亡くなり警察が介入した時の対応 が非常にひどかったというのです。やはり、警察の方々についても、知的障害とか精神、 身体の障害のことを理解してもらうようなガイドブックがあってもいいのではないかと いうことで作成しました。うちのネットワークのメンバーが1年間に36回ぐらい夜に集 まって作った本がこの冊子です。導入部分について本当に分かりやすくしており、改訂 版を作れといわれています。ただ、こういう本があまり日本にはなかったということを この本を作っていく上で勉強になりました。  ネットワークの話ですが、4年経って、今、部会としては2つの部会があり、委員会 は3つで動いております。オブザーバーには大学の先生と、県立の総合リハビリテーシ ョンセンターの能力開発課の方々、あと、病院の方、ワーカーさん、身障施設の寮母の 方、それから、小規模作業所の方にも入っていただいています。専ら支援費制度が始ま るというところで作ったネットワークだったのですが、今は自立支援法の学習会のこと が皆さんの最大の目的です。現実にその事業部会の方では、やはり就労を頑張るという ことで、就労支援の委員会をつくっています。これも、能力開発課の方々とか、雇用・ 就労分野の人たちも一緒に入りながらやっています。ただ、地域で受けとめるというこ とを考えた時に、働くことができたとしても、支える地域がないと、維持・継続は難し いということで、相談事例の部会でこういう委員会をやっています。居宅の委員会でも、 当時は支援費制度の部分ですから、民間の事業者の方々も入ってこられていましたが、 一番熱心なんですね。福祉施設の方よりも、民間事業者の方が必死で、この委員会に積 極的に参加されて、こんな事例があるんだけど、どうしたらいいんだろうかとか、これ はどうなんだろうかという形の意見交換をしています。  今年の事業計画的には、担当者会議をして、社会資源マップを作って、不足している 社会資源を調査しています。あと、就労制度などについての研修会、学習会を計画する ということです。実際、作業所、施設の人間は労働施策というものをほとんど知らない 状況です。ですから、逆にこちらから研修会、学習会を開き、ハローワークの方に講師 に来ていただくということを、昨年度から始めています。  それで、ちょうど就労移行事例ということで、資料1と付けておりますが、お手持ち の資料で、資料2と書いてある、神戸市の「はじめの一歩」というものです。企業内授 産みたいなところをうちの利用者が利用していて、就職が実現したという話です。彼は ネグレクトで入所児童施設に入ってきた人ですが、お母さんとの関係も調整しながら何 とか行っています。彼はちょっとパニックもあり、B1という手帳ですが、会社に馴染む という力が弱いと思いました。能力開発課で実施している訓練だとか、あと、「はじめ の一歩」で、彼の思いとしては老人ホームで実習したいという思いがありましたが、結 果としてはできませんでした。ちょうどハローワークの方からいい会社があるというこ とで、面接をして頂き、そこで働くことになりました。それまで3つほど企業での実習を しましたが、今何とかケアホームに行っています。ただ、暮らしの支援という形で、収 入が、年金と給料で12万円ぐらいになるため、今回の自立支援法では、相当の自己負担 金がかかってしまいますので、何とか単身生活への移行チームで今やっております。た だ、外出支援については、ヘルパーが付いていないとほとんどできず、単身生活以後も うちの方でフォローしていくことになると思います。  他にも、企業に繋げたケースはいっぱいあります。1つの事例としては、企業に就職 して、そこの部長さんとの関係ができていて、その部長さんが出張でいないと、その仕 事の指示命令系統ができなくなって、仕事が潰れそうになった人がありました。でも、 あるパートのおばさんの、「部長さんからさっき電話があったんだけど、何々君これを やっておいてねと言っていたよ。」という気遣いで、彼は部長がいなくてもちゃんと仕 事ができるようになりました。私はそういうやり方があるんだということを企業から教 えてもらいました。  一概に言えないかも知れませんが、個々の例は全部千差万別ですので、一人一人に合 わせていかざるを得ません。その場で、そのパートさんとの人間関係とか、その人の語 調だとか、リズムだとかという部分も見ながらの判断ですけれども、本人に合った支援 のあり方が分かります。うちの施設に居る人はほとんど家庭のバックアップがない人た ちばかりですので、あとは本人の財産管理の部分で、神戸市の倫理ネットという社協が やっている財産管理のシステムも使いながら、個々人の現金管理の部分については、私 の方で管理をしています。対象者が増えていくのはいいのですが、私が管理していく通 帳の数が増えていくというところで、ストレスはどんどん増えて、今悩んでいる状況で す。  あと、就労移行の方はこのAさんの事例です。52歳ですが、何とか家で、地域で住み たいという希望がありました。でも、やっぱり人間関係の部分で駄目で、精神的な障害 も重複していました。そこで、今、公団に住んでいますが、企業に行きたくないと頑固 に言われております。こういう方々は多いのではないかなと感じています。私の考えと しては、いろんな経験をしようということです。まず自分で会社を回ってみて、ここで 働きたいと、自分から考えるということですね。  あと、就職を前提にしないトライアルが必要だと思います。一度実習した場所であっ ても、助成金制度を使えるようにしていただきたいという思いがあります。  うちは結局入所という施設ですので、特異なのかも知れませんが、やはり「暮らし」 です。やがて親がいなくなり、親族もどんどん年老いていく中で、その人を支えていく ためには、やはり連携していくしかありません。先ほども連携の部分で発言がありまし たけれど、連携していない、できていないから連携という言葉が出てくるんだというふ うに言っている人もいましたが、その辺は本当にやっていかないと駄目だと思います。 そうでないと、入所施設は利用者を地域に出せないという気がしています。  あと、ジョブコーチ的な部分では、やっぱり職員が覚えるということです。それをや ってみて、やらせてみてという話もありますが、仕事の切り出しをすることが可能では ないかなと思います。あと、先ほどの部長さんのキーパーソンもそうなんですけれども、 いろんなところのキーパーソンをつくっていかないと、その人は路頭に迷うという気が しています。  先ほどのAさんのケースですけれども、その働きを支えるための就労継続支援の事業 を、施設側の努力もさることながら、安定的に、良質で利益が上がる仕事を何とか就労 継続支援に流れる仕組みが欲しいというのが本心です。欧米や韓国では既にそういう仕 組みが構築されていると聞いております。今、現実に、一般健常者の有効求人倍率にお いても、これもちょっと上がっているとは聞いていますが、青森県が0.42、静岡が1.17 という形で、特例子会社とか企業数というものについても地域格差があるし、障害のあ る人が働く場をハローワークに求めても、就労継続事業に選択していくということも出 てくるのではないかという気がしています。  セルプで提案をしている、就労継続事業の場に仕事を発注した場合には、一定の雇用 率として反映できるという施策を是非考えていただきたいと思うのと、1.8%の雇用率の 未達成の際の雇用納付金は、1人につき5万円という納付金ですが、それを就労継続支 援事業に発注することで減額を認めるという方策は必要なのではないかと思います。ま た、それらを制度化することで、就労継続支援事業の地域格差が減少して、高い工賃の 支給が可能になるのではないかと思います。今回、自立支援法でも就労継続のA、Bにつ いても、1年毎の見直しとか、3年の見直しという形をされているようですので、やはり、 その期間の中で何とかその生活を支えてやるというような仕組みをつくっていかないと、 またそこの企業に押し出すという本人のジャンプするための「ため」ができないような 気がしています。  あと、連携の施策の部分につきましては、つらつらと書かせていただきました。これ は今思っているところです。ただ、冒頭にも言いましたように、それぞれのマンパワー が本当に必要になってくるということです。これはどの業界でもそうなのかも知れませ ん。教育でもそうですし、福祉でもそうですし、企業でもそういうふうに聞いておりま す。ただ、その人材育成という部分で、本当に先ほども職業リハビリテーションとか、 臨床とかというのもありましたけれども、私が四六時中勤務というところに飛び込んだ 中で学んだことが、働いて暮らすというところの支えとなるアドバイスをしていくマン パワーをもっと増やしていただきたいと思います。そのためには、障害児教育の進路だ とか、福祉の就労移行だとか、労働の障害者雇用だとか、そういう行政の縦割りのひず みをなくすことが必要です。そのようなひずみの被害を被っているのは彼らではないか ということを常々感じています。近い将来というところでもいいのですが、そういう縦 割りでいくことのひずみを解消していくためにも、国の課長さんも2年ぐらいで変わっ てしまいますし、何とか障害者支援局というような形で、彼らを支えていくというよう な仕組みをつくっていただきたいと思っています。 ○座長  ありがとうございました。それでは、質疑応答ということにしたいと思います。入所 の授産というところからスタートして、今の新しい就労移行支援というところで、そこ でまたネットワークとか、マンパワー育成とか、非常に大きな課題を抱えながら実践を 展開されているということです。これまでの3つともそれぞれ特徴がありましが、いか がでしょうか。宮崎委員、どうぞ。 ○宮崎委員  今、東馬場さんの方からの御発表を興味深く聞かせていただきました。最後の締めく くりのところでもおっしゃっていたのですが、マンパワーが全てで、マンパワーをとい うところをかなり強調されていて、先ほどの志賀委員、武田委員、それぞれマンパワー、 研修というところがテーマになってくるかと思うのですが、具体的に今、東馬場さんの ところでは、どんな形の研修を受講されたり、どういうようなところから研修の情報を 得て、対応されているのかという辺りをお知らせいただければと思います。 ○東馬場委員  本当に個人的なルートが多いですね。あと、先ほどのハローワークの方々からいろい ろ紹介してもらう場合もあります。うちのネットワークに出てきた人が、今年度一番最 初の会議に出ていただいた中で、「精神障害の利用者で履歴書を出していただける方は いらっしゃいませんか。」と言われたんです。それから、その担当官が必死になって動 いていただいて、働ける精神の方々がいっぱいいらっしゃいますよという形でアピール して、そのネットワークな中から就職しました。本当にいい担当官に来ていただいたな と思っています。さっきの「はじめの一歩」の担当者もそうなんですが、就職に繋がっ たケースもそうだし、担当者が持っている仕事のノウハウやネットワークみたいなもの が、こういう下請けの仕事があるから、できるのではないかという形で紹介をしていた だいて、うちの担当が行って、そこで向こうの営業の方と人間関係ができて、また、そ こで、その社長さんの知り合いから紹介してもらうとか、そういう形の、「つて」とい う世界で、いっています。何だか公式な部分をほとんど使っていないです。 ○座長  他にどうですか。どうぞ原委員。 ○原委員  このネットワークのところをもう少し詳しくお聞きしたいのですが。委員会が3つあ りますけれども、どのぐらいの頻度で集まりがあるのか。また、就労支援の委員会等が お話にありましたように、登録制等を採って、就労支援またはケース会議等をされてい るのか、もう少しお話いただければと思います。 ○東馬場委員  頻度的には、事業計画では4回程度の委員会にはなってはいるんですが、今就労関係 がやっぱり活発に動いています。法律も変わっていますし。逆に、担当者レベルで情報 交換の会議みたいなものをやっております。ただ、みんなが欲しがっているのは、うち の施設で行っている企業実習の情報です。みんな会社に行けるのかというものを、非常 にアンテナを伸ばしておられて、さっきの社会資源マップというか、学校の縄張りと福 祉の縄張りというのがあるのかも知れませんが、そこを精査しておかないと、情報交換 がうまくいかないことがあります。実際そこでトラブルになるケースもあります。それ は神戸市ではなくて、違う市ですけどね。でも、それを一緒になってやっていくという ことが必要ではないかと思います。 ○座長  ありがとうございます。他にどうでしょうか。よろしいですか。それでは私から。個 別支援計画ですけれども、ここでは何か支援会議みたいな形で、ネットワークでいくつ か関係した方も来ていただいて、支援計画を作るのでしょうか。 ○東馬場委員  個別支援計画につきましては、今は施設の方でやっている支援計画でして、セルプの 支援計画をモデルにしながら、やっています。ただ、新しい就労支援の部分の計画につ いては、まだモデルを作っておりませんので、独自でやっているという形です。今、希 望としては、西区内の支援計画を統一したモデルでできれば一番いいかなと思っていま す。そうすると、AからBへという事業所に行く時に、その書式が同じになったら見や すいし、御本人にとっても戸惑わないかなという気がしています。そういうところを今 年中にまとめたいと思っています。 ○座長  もう1つだけ、よろしいですか。松井委員、どうぞ。 ○松井委員  神戸市全体としてのそういうネットワークというか、神戸市全体の中での仕組みと、 西区の取り組みとの位置付けなり、連携なりというか、そこはどういうふうになってい るのでしょうか。 ○東馬場委員  神戸市全体としたら、雇用・就業のネットワーク会議は開かれております。私も参加 しておりますが、これはあくまでも暮らしの部分や、作業所をやりたいというところで、 それぞれの各区、9区ありますけれども、ぼつぼつ出てきているというところです。半 分ぐらいがネットワーク会議を開いているんですけれども、それぞれの目的や趣旨もち ょっと違っていたりします。統一した形で、神戸市のネットワークはこうだという部分 はないですね。 ○松井委員  僕がお聞きしたかったのは、神戸市も障害福祉計画を当然作られていて、そして、必 要な資源というものも計画的につくっていくということになっていると思いますが、そ ういうものは西区も含めてきちんと整備されようとしているかどいうことです。いかが でしょうか。 ○東馬場委員  そうです。自立支援協議会の方が来週スタートして、その中にネットワークの位置付 けを組み込みたいということで、提案を聞いています。 ○座長  ありがとうございました。もう1つぐらい、質問は受けられると思います、どうでし ょうか。よろしいですか。それでは、東馬場さんありがとうございました。 ○座長  それでは、最後でございますけれども、日本発達障害者ネットワーク代表の山岡委員 より発達障害者に対する就労支援の現状と課題ということで、御報告をお願いいたしま す。 ○山岡委員  日本発達障害ネットワークの山岡でございます。時間が限られておりますので、早速 お話に移りたいと思います。  日本発達障害ネットワークというのは、発達障害に関わる当事者団体、学会、職能団 体が集まりまして、昨年12月にネットワークとして発足いたしました。現在、全国団体 が12、地方団体が37、全部で49団体が加盟しております。それから、全国LD親の会の 会長をやっておりますが、こちらは1990年2月に各地域で活動するLD親の会が集まり まして、現在37都道府県44団体、約3,000名の会員がおります。  本題でございますけれども、発達障害についてですが、初回に配られました19年度の 概算要求のところでも、既存の障害からするとちょっと目障りなぐらい発達障害という 名前が出てきておりました。今日は文科省の方も来られているので、ちょっと付け加え ますと、大体1990年ぐらいから学習障害を中心に取り組み・研究が始まりまして、21 世紀に入った2001年頃から、主に特別支援教育の転換という提言の中で、LD、ADHD、高 機能自閉症というのがクローズアップされました。一方、その前後に自閉症スペクトラ ム関係の方の犯罪がいくつかあり注目を集めました。それらを受けて、2002年度に厚労 省が自閉症・発達障害支援センターの運営事業を開始したという動きがありました。そ れらの流れを汲んで、2004年に発達障害の支援を考える勉強会が厚労省で持たれ、それ らが発達障害者の支援を考える議員連盟の発足に発展し、そして、2004年12月に議員 立法による発達障害者支援法の成立に繋がったという流れでございます。  発達障害者支援法における発達障害でございますが、従来の医学の分野での定義とは ちょっと異なっております。当初対象として検討されておりましたのは、主に自閉症ス ペクトラムで、知的障害を含むものと含まない自閉症を中心に検討が始まりました。途 中からLD、ADHDが加わったというような流れがございました。LD、ADHD、高機能自閉症 という知的障害を伴わない発達障害につきましては、従来の教育でも福祉でも支援の対 象になっていなかったということ、それから、知的障害を伴う自閉症は、自閉症の特性 に合わせた支援が受けられていなかったということで、これらの支援が十分でなかった 人たちを支援の対象にしようというのが発達障害者支援法でございます。  従いまして、定義の部分は飛ばしていきますが、発達障害者支援法の第1条のところ にどんなことをやるかということが書いてあります。要するに、発達障害者のライフス テージに合わせて、早期発見、早期支援、教育、就労、それから、その後の生涯にわた る相談支援を国、地方自治体、国民の責務として定めた法律でございます。発達障害支 援法は、具体的な事業がうたわれていない理念法ということで、役に立たないのではな いかという声もあったのですけれども、その後いろいろな施策に反映されてきていると いう意味では、法律の成立は大きなことだったと思っています。  その特別支援教育や発達障害者支援というのが21世紀になってから随分進んできた というふうに我々も自覚しているのですけれども、やるべきことがたくさんございまし て、発達障害のある人のライフステージを考えると、早期発見、早期支援から始まって、 老年期にわたるまでの生活支援ということを考えると、いろんな仕組みが必要でござい ます。厚生労働省の方にも就労の関係あるいは福祉の関係でいろいろ施策に取り組んで いただいているところでございますが、現状で形として何となく見えてきているのは、 義務教育期の特別支援教育の部分がようやく形が出来つつあるというところです。学校 教育法の改正があり、19年度から特殊教育が特別支援教育となり、その中で、特に軽度 発達障害を持つ子供たちへの支援が明確に位置付けられたということであります。ただ し、まだまだ大きな課題が残っているというふうに考えております。それらのことをお 話したいと思います。  約3年前に私ども全国LD親の会で教育から就労への移行期の実態調査をしまして、昨 年の初めにこんな形で報告書を出しました。この内容を中心にお話をさせていだだきま す。ここから、一部は、知的障害を伴う自閉症ではなくて、基本的に、LD、ADHD、高機 能自閉症を中心としたお話となります。  これはLD親の会の会員調査なのですが、実態としましては、LDを中心にADHDのお子 さんがいたり、高機能自閉症やアスペルガー症候群のお子さんがいたり、一部軽度の知 的障害のお子さんなども入っているとお考えいただきたいと思います。高校への進学率 を見ますと、基本的には通常のお子さんと変わらず95%ぐらいが高校に進学しています。 ただ、通常教育の方を好まれる場合が多く、養護学校や高等養護学校を選ばれている方 は11%ぐらいでございます。  そして、就労実態の部分ですが、この調査では二段階で分析しています。学校教育を 終了直後どこに就職したか、そして現在の就労状況と比較をしています。この中で、学 校教育終了直後は一般就労したものの、この一般就労というのは手帳を持たず週20時間 以上の就業ということで分類しておりますけれども、それと現在の状況を比較して見ま すと一般就労の部分が大きく減っております。逆に、手帳を持っての就労の部分が大き く増えております。いったん一般就労をして、つまずいて、それからリハビリテーショ ンとかを受けたりして、それからようやく手帳を取得して就労するというケースが多い ということを示しています。  それから、これと同じようなことでございますが、せっかく就労しても6カ月未満と か1年未満で離職してしまうケースが非常に多いのです。最近の若年層は一般の場合も 離職率が高いと言われていますが、基本的に、LD等のある人たちの場合には、解雇さ れるケース、対人関係や作業能力の問題などで、やむをえず離職しているケースが非常 に目立つということが問題なのです。  この人たちの特徴ですけれども、状況判断が悪い、あるいはコミュニケーションに問 題がある場合が多く見られます。自分に自信が持てない、職場の中での暗黙のルールが 分からないというのもあります。例えば上司が帰っていないのに先に帰ってしまうとか ですね。規則上、5時になったら帰っていいのではないかとか、昼休みはたっぷり1時 間とりますよとかいうことを主張したりする訳ですね。通常、文書化してあるルールで はないところの暗黙のルールがよく分からないというようなことがトラブルの原因にな ったりすることがございます。  障害者手帳の取得状況ですが、基本的には軽度のお子さんが多いわけで、手帳の対象 にならないところなのですけれども、実態としては、就労に際して手帳を取得している ケースが結構ございます。LD親の会の会員の中でいきますと、実態として約5割の方 が就労時に取得をしているということです。ただ、一般的に、全員が取れるということ ではなくて、実質的には社会生活に困難があっても、IQが高いということで取得できず、 就労に結び付かず苦労しているケースが多くあるということが問題です。  次に、仕事に関しての当事者本人の感想なんですが、「仕事で嫌なこと」という質問に 対して、一般の方と全く同じでございますけれども、仕事が遅いとか、同僚と思ってい た人から馬鹿にされたり、偉そうにされたりとかということが出ています。本人が気丈 に、就労の中でストレスを貯めながらも頑張っているということが窺われるところであ ります。「よく注意されること」についても、ミスが多いとか、遅いとか、段取りが悪い というようなことが挙げられています。  次に、この本人へのアンケートで特徴的なことがあります。知的障害のある方と比較 してみたのですが、このLD等のある人と厚労省の方で調査されている知的障害のある方 を対象とした雇用実態調査の項目と同じ項目で質問してみました。そうしましたら、LD 等のある人の方は、「他の仕事をしてみたい」というところが顕著に多い。また、「仕事 をもっと教えて欲しい」、「仕事をもっとやらせて欲しい」というようなところとに顕著 な特徴が出ております。これは、1つは、自己認知が足りなくて、本人はもっとできる はずだと思っている場合も多いが、実際にはそれがアウトプットとして出てこないとい うようなところが、この人たちにはあります。もうちょっと付け加えますと、LD等のあ る人の場合、学歴とか、資格とかを取ったとしても、それにふさわしい能力を仕事の場 で発揮できない、つまり、雇う方が期待するようなものが発揮できないという面があり ます。また、本人は結構勉強とかはできたりするケースもありまして、それに比較して、 作業能力がないということを本人が自覚できないということがあります。別の調査でも、 IQが高いほど就職とか自立生活に困難を持つケースがあります。あるいは、生活能力の 検査結果と就労への対応力が比例しないという結果も出ています。すなわち生活能力の 指数が高いほど、就労に困難を持つ場合が多いというような結果も出たりしておりまし て、なかなか難しいところであります。  もう1つ、この人たちの特徴といたしまして、通常教育のルートを経ていくというこ とで、いわゆる就労とか福祉の障害者施策のレールに乗らないということです。要は、 就労する時や、困った時に相談する相手としては、大半が就労支援や障害者施策のきち んとした相談機関へ行けなくて、大半が家族が抱え込んでいるというケースが多いとい う実態がございます。就職先を見つける場合も、就労後に相談したい場合も、大抵の場 合、保護者とか兄弟とかに頼っているというのが実態です。  本人の夢とか希望とかを聞いてみているのですが、本人たちはいろいろ分かっている ようで、ごく普通の夢を抱きながら、親がいなくなったらどうしようかとか、よく分か らないけど何か不安だなと思っているところがございます。  これらのアンケート調査の結果から、基本的に発達障害のある人の場合、まず適職に 就くことが非常に難しいということが分かりました。通常の教育ルートに乗っている場 合、学校も何とか就職先は見つけてくれるのですけれども、その特性に合った就職先を 見つけることは非常に難しいわけです。そして、発達障害の場合一見普通に見えるなど 分かりづらい障害ですが、周囲の協力とか支援がないと働き続けられない場合が多く、 せっかく就職しても働き続けるということが、難しい場合が多いということです。  資料が多いので、飛ばし飛ばしで申し訳ありませんが、この中で、適職を見つけて、 働き続けるためにはどうしたらいいかということをアンケートの結果を踏まえて、考察 しております。  1つは、確かに発達障害に関して、いろんな支援施策とか事業は増えてくるかもしれ ませんけれども、個々人から見ると待っていても間に合わないのだから、自助努力する しかないという現実があります。また、本人が、働く意欲とか自己理解をつけるという ことが非常に大切であるということです。それから、本人として、就業に必要な基礎能 力というのを全然付けられていないというケースがあります。通常の教育のルートでい きますと、勉強だけはできるんだけれども、いわゆる身の回りのことから、金銭管理と か、移動とか、そういったことについては全然ケアされずにきたために、気づいたらそ うした基礎能力がついていなかったというケースも多いのです。そうした意味で、通常 の教育のルートに乗った場合であっても、発達障害のある人の場合は、きめ細かな進路 支援、移行支援、スキル訓練等が必要であるということがいえます。  本人の課題は今言ったようなことでありますけれども、もう1つは、通常の教育ルー トできますと、本人及び家族が障害というのをなかなか受け入れられない、支援を受け られることに抵抗があるというケースが結構あります。1回は就職につまずいたり悩ん だり、精神的に落ち込んだりというのを経て、ようやく支援を受けるという所にたどり 着くという場合があります。ただ、これから特別支援教育が定着していきますと、小・ 中学校の頃からLD、ADHD、高機能自閉症といった障害があることを本人も家族も自覚し ながら教育を受けていくお子さんたちが今後増えて行きますので、これから3年、5年 経っていくと、それらのお子さんたちが教育を終えて大量に就労に向かって行くことに なります。従来のように、何かよく分からないけど苦労しているというよりも、そうい う障害を自覚した人たちが今後増えてくるということになってきますので、特別支援教 育後の受け皿をきちんと用意していく必要が出てきます。  もう1つは、就業体験というのが非常に有効だということであります。養護学校とか に行っているケースではもちろん実習があるんですけれども、通常の教育ルートではな かなか実習等の就業体験が受けられないというケースが多いということであります。L D親の会の会員の場合も、バイトとかにいろいろトライはしているのですが、保護者の 声としては、アルバイトをさせたいと思っても面接で落ちてしまったりして、なかなか 行けないということがあります。また、そのアルバイトは短期なので、なかなか雇用す る方が本人の特性まで考えてケアをしてくれるわけではないということで、自信を失っ てしまったりしまして、就業体験が逆効果に出たりとかというケースもあるということ でございます。  次に、職業リハビリテーションについてです。LD等のある人の場合基本的に手帳を 持っていないケースが多いので、職業リハビリテーションについても制度としては使え るもの、使えないものがあります。実際に利用したケースとしては、障害者職業センタ ーを利用が一番多いという結果です。この中で、障害者職業センターでの支援に対する 評価といいますか、感想を聞いているのですが、非常に良くしてくれたという意見がか なり多いのですが、障害者職業センターの場合は、知的障害のある方用の仕組みの中で LD等に対応していただいているということで、必ずしも発達障害に対する理解いただ いて対応しているものでないということがあります。そんなことから、「特性を理解して もらえなかった」等のような不満の声も出ております。また、ジョブコーチの事業も概 ね高い評価を得ています。ただし、ジョブコーチについても同じようなことが言えまし て、発達障害について必ずしも理解がない方が結構ありまして、逆効果で問題を大きく してしまったり、困ったりするケースがあったということも事実でございます。この辺 については、ジョブコーチについても発達障害に対する理解や知識を付けた方を増やし ていただければと思っております。  職業リハビリテーションについてまとめてみますと、発達障害のある人、特にLD、 ADHD、高機能自閉症等の発達障害のある人に対する職業リハビリテーションということ 考えますと、発達障害のある人の場合一人ひとり特性が違う訳ですが、現行の職業リハ ビリテーションは、発達障害のある人を従来の知的障害のある方に対する手法の型には めるようなところがちょっとありまして、合わない場合があるわけです。発達障害のあ る人の場合、黙々と働くタイプでない方が多いです。例えば、自分は何もできないので すが、口だけは立派で、人のことをわあわあ言うタイプもおります。それから、向上心 が強い場合や、さっきも言いましたように、自己認知が足りないという見方もできます が、自分はこんなものではない、もっと他のところで自分は違う力が発揮できるのでは ないかという気持ちを持っているケースが非常に多いということです。  それから、型にはめた訓練とか、擬似的な設定にはちょっとはまりにくいケースがあ ります。松為先生が今日欠席なので申し上げますが、ボールペンを組み立てては、分解 するという作業がありますが、これは意味がないので俺はやらんということがあったり します。また例えば、割り箸を1個1個ずつ入れていくような作業がありまして、手順 に沿ってやるのが訓練な訳ですが、2本いっぺんに入れたら早いとか、工夫をしたがっ たりして、訓練の趣旨と違うということで、怒られたりするケース等があります。  そういうことでいくと、知的障害の方と同じような手法にはめていこうとすると、ど うしてもはまらないというケースがあります。それから、軽度発達障害という言い方を しますけれども、IQの基準では軽度かもしれませんが、職業的な困難の度合いでは、む しろ重度のケースが多いといわれています。ですから、職業リハビリテーションの技法 につきましても、従来の知的障害等で培われましたノウハウを生かしながら、発達障害 に合わせた技法の開発が必要であると考えているところです。  まとめますと、まず知的障害を伴う自閉症については非常に詳しい方もここにおられ ますので、さらっといきますが、現状はさっき申しましたけれども、特別支援教育の分 野でも自閉症の特性に合わせた支援体制が不十分な状態にあります。それから、移行支 援、就労支援、職リハや定着支援等についても、現行制度では知的障害として支援の対 象になっておりますが、自閉症の特性に合わせた支援体制が不十分だと考えております。 今後の方向性としては、現状は自閉症を知的障害の枠内で扱っているわけですけれども、 自閉症の特性に合わせた技法や研究をしていただき、支援体制を拡充していただきたい と考えております。  それから、手帳を持たない軽度発達障害です。LD、ADHD、高機能自閉症等でございま すが、特別支援教育や就労、福祉の分野において、現状は支援の対象として明確に位置 付けられていないということであります。教育の分野は学校教育法の改正によりまして、 19年度から一応支援の対象になるわけですけれども、1つは、通常教育のルートで進学 していきますと、なかなか就労支援など制度のレールの中に乗っていかないわけですか ら、これらを埋めるような新たな施策が必要だということであります。それから、先ほ ども申し上げましだか、就労支援とか職リハ等において、今は知的障害の手帳を取って 支援を受けるケースもありますが、知的障害のタイプに当てはまらないケースがあると いうことを御理解いただきたいというところでございます。もう1つは、軽度発達障害 の場合、一生涯のフルサポートを必要としないケースが結構あるわけです。例えば、教 育期はサポートを必要としないが就労期は必要であるといったケースや、逆に、教育期 にはサポートが必要だったけれども、就労の入り口だけやっていただくと結構後は何と かやって行けるというようなケースもあります。  今後の方向性としては、教育分野でいきますと、LD等に適した高校や学校を設置して いただきたいことです。もう1つは、高校卒業後のところで、例えば特別支援学校の設 備等を利用して1年程度の学科、専攻科をつくれないかとか、普通高校の中に就労準備 教育とか就労支援ができないかというようなことが要望事項としてあります。就労支援 制度の中でいきますと、手帳制度についてもいろんな意見がありますが、例えば、障害 者の雇用率の問題ですけれども、発達障害のある人について0.5人カウントとか、期間 限定でカウントするとか、ポイント制にするとか、何らかの形で雇用率のカウントの中 に入れるということを検討いただきたいと思います。もう1つは、職業準備訓練のとこ ろでも、職業訓練の一般校の中に発達障害に適したコースやカリキュラムができないか。 あるいは、障害者職業訓練の中で発達障害に適したコースができないかということであ ります。さらに、ハローワークの専門窓口において、発達障害に関する知識や専門性の 向上を図っていただきたいと思います。  ちょっと時間が過ぎてすみませんが、最後にもう1つです。ネットワークの話が出て いましたが、発達障害や特別支援教育の体制整備事業で、県レベルで教育や福祉の協議 会や連携協議会などが出てきているんですけれども、どうも、これらは会議のための会 議で終わってしまっているのではないかと思っています。私どもは民間で日本発達障害 ネットワークというのを発足させましたが、要は、県等が主催する会議等は良いのです がそれだけでなく、そこを出発点として、リソース情報でありますとか、人脈とかによ る民間での本当の意味でのネットワーク、いつでも接点のもてるような地域ネットワー クが発達障害支援には必要です。そのような民間のネットワークについて、何らかの形 で支援をいただければと考えています。  それから、私ども親の会で、大阪市から受託して、就労体験みたいな事業を受けてい るのがありまして、かなり成果を挙げております。就労支援についてもNPO等も民間の 力を活用していくのも一つの手ではないかと考えております。  最後に、これは私見でございますが、本当は他の障害も同じことだと思いますが、発 達障害の場合、診断名が同じでも個々の特性やニーズには大きく幅がありまして、一人 ひとり特性が違うというふうに言われています。それから、LD等の発達障害の場合には、 障害が認定されたとしても常にフルサポートは不要な場合が多いということです。その 一人ひとりのニーズに合わせて、一生涯の中で本当に必要な時に、必要なピンポイント で支援があればいいというケースもあるということです。  世界的な流れを見ても、あるいは個別の支援計画とか、特別支援教育や障害者自立支 援法もそうですけれども、従来の障害の種別や程度に応じた一定の支援というよりも、 一人ひとりの特性やニーズに合わせた支援というのが、これからの方向性であると思い ます。これからの施策は障害の種別と程度に応じた支援から、一人ひとりのニーズに合 わせて、一人ひとりのニーズを認定して支援していく必要があると思います。そういう 支援ということで考えますと、福祉や障害の制度も、障害者基本法と三障害を中心とし た法律や制度から、それらを含め障害のある全ての人を対象とした総合福祉制度へ、転 換して行くべであると思っております。時間が過ぎまして申し訳ありませんでした。 ○座長  ありがとうございました。御質問がありましたらどうぞ。これまで3つの施設からの 報告がありましたけれども、発達障害についてはさらに拡充していかなければなりませ ん。特に個別の支援計画ということで、移行支援でも継続支援でもそうですが、個別支 援計画がきちんと活きていくような課題が重要かと思いますけれども、どうでしょうか。 宮崎委員、どうぞ。 ○宮崎委員  地域障害者職業センターへの具体的な生のアンケートをいただいて非常にありがたい と感じております。3点確認させていただきたいと思うのですが、私どもも全ての発達 障害の方たちの御利用を勧誘するというのはちょっとできないですし、おそらくLD親の 会の方も、会員の方に対してのアクションは起こせると思うのですが、実はここに表れ ていらっしゃらない発達障害者の方はたくさんいらっしゃって、その方たちに対してど うしていくか。社会資源をどうするかというのが1つの課題になるのではないかと考え るのですけれども、その辺りについて、取り組みをされているところを教えていただき たいというのが1つ目です。  2つ目ですが、実際に私どもも御利用の方がいらっしゃって相談する過程の中で、先 ほども御指摘がありました障害の認知という部分について働きかけをしていくんですけ れども、御家族の方に御理解いただいても御本人が理解していなかったり、御本人が分 かっていても御家族がなかなか受けとめられないというようなこともまま発生しており ます。その辺りに対してサポートできる体制というのが、どんなふうにあるのかという のをお知らせいただきたいと思います。  3点目ですが、私どももワークトレーニングを始めとして、今まで知的障害向けのプ ログラムを少しアレンジしながら取り組まなければいけないということで研究的に取り 組んでいるところでございますが、そういう中でやっていく場合に、期間が2、3カ月を 標準に実施をしているので、もうちょっと長い期間支援を必要とされる方であるとか、 もうちょっとサポートをしっかりして御家族にも理解していただいた方がいいような方 に対するサービスというのが十分に行き届かないところがあるかと思っております。そ の辺りについて、具体的な社会資源というところで何かお考えがありましたら、お知ら せいただければと思うのですが、よろしくお願いいたします。 ○座長  では、お願いいたします。 ○山岡委員  今、LD親の会とか日本自閉症協会とか、ADHD関係の団体とかを合わせても、家族とか、 当事者団体に加盟している方はおそらく数万人に留まっております。特別支援教育の中 の調査で、4年ほど前、文科省の方が調査をされたところによりますと、義務教育段階 のお子さんで、これは推計値ですが、全体の6.3%ぐらいがこの軽度発達障害に該当する 可能性があるということです。小・中学生が1,100万人ぐらいおりますので、約68万人 とか70万人ぐらい、各クラスに1人か2人はいるのではないかといわれております。も ちろん成人期にもいるわけでございまして、幅広くいえば、数百万人いる可能性がある ということであります。理解・啓発でございますが、これは私どもの会で、いろんな会 で理解・啓発に努めているところでありますが、例えば、全国LD親の会では、LD、ADHD、 高機能自閉症とはという小冊子を3年ほど前に助成金をいただいて12万部を全国に配付 してございます。それから、日本自閉症協会さんは今、ACと公共広告機構と提携をして、 自閉症に関する広告を打ったりしております。我々の団体の活動の中では、常にそうい う外への働きかけをし、会員のことだけではなくて、会員以外の方へのケアということ に重点を置いてやっているところでございます。  それと、認知のサポートというのは非常に難しくて、おっしゃる通りだと思います。 親の会に入っている方については、保護者は認めているのですけれども、本人が認めな いケースとか、逆に通常の学校の先生にお聞きをすると、本人も保護者も気付いていな い、あるいは認めないというケースが多く、指摘をされても認めないというようなこと を非常に多いわけです。  これは、1つは、特別支援教育の浸透の中で、実は私どもが期待していることは、支 援を受けることはそんなに変なことではないということが浸透していくことがあります。  といいますのは、特殊教育は対象が1%ぐらいでしたけれども、特別支援教育が浸透して いくと、5%から10%の人が何らかの支援を受けることになりますと、そんなにめずらし いことではないわけで、ちょっとした軽い支援ですね。ひょっとすると、この軽度発達 障害の子供たちの存在が、わが国の障害観を変えていく原動力になるのではないかとい うふうに期待しております。障害のあること、みんなと違うことは、決して悪いことで はなくて、みんな個性的にいろんなものを持っていて、その中でみんなそれを認め合っ て生きていくんだというような考え方の原動力になれるのではないかと考えています。 そういう意味でも、発達障害や、障害に対する理解の社会的理解の啓発がますます必要 だと考えています。  ワークトレーニングのところで、親の会のアンケート結果でも、現在のプログラムで は時間は非常に短いということが出ています。アイディアということではなくて、要望 としては、そういうニーズに合わせた期間だとかプログラムとかを、本人の特性に合わ せて選定したり設定したりできるようになればいいなと考えているところです。 ○座長  ありがとうございました。時間がまいりました。山岡委員、どうもありがとうござい ました。  それでは、これからフリーディスカッションに移りたいと思います。12時55分まで 予定しております。まず最初に、武田委員への質問が4人の委員から出ておりましたの で、そこから入りましょうか。では、お願いいたします。 ○武田委員  本人の情報をどのように開示していくかという情報公開の問題ですが、私たちのとこ ろは旧体系でいきますと、医師の意見書というものを求めなくてはいけないんです。そ れをきちんと保健所に届けなければいけないというのがこれまでありました。しかし、 医師の意見書では私たちの求める情報というものがないものですから、紹介状というも のを私たちでフォーマットを作りまして、生活歴であるとか、就労歴であるとか、いろ んな情報が入るものを、今から15年ぐらい前に作りまして、それを紹介状として各医療 機関に求めたところ、むしろ先生というよりもワーカーの方たちに書いていただいてい ます。医師の意見書は必ず付けないといけないし、それはドクターが書いてくださいま すので、ワーカーに書いていただくというものを作りましたところ、とても皆さん協力 していただいて、その中で見えない情報については、ワーカーさんたちと連絡を取り合 っていくという形をとってまいりました。ただ、ここにきて、知的の利用の方が増えて、 その紹介状がなかなかうまく使えないということがあります。医療モデルから出発した 紹介状だったものですから、どうすればそれを両方で使えるようにできるか、これから 組み替えていかないといけないと感じております。それと、少し驚いたことには、私た ちにとっては樹形図みたいなものが日常的だったのですが、福祉関係者の方は意外とそ れを記述式でお書きになるんです。絵にして書くということをあまりなさっていないな と思いました。ひと目見て分かる体系をこれからみんなでどう共有していこうかという ようなことが、今、課題になっているかなと思います。  それと、もう一つ。先ほど志賀さんは基本的にはオープンでいくとおっしゃっていた んですが、私どもの方ではなかなかそうはいきません。田舎ということで、偏見の問題 は、地方と都市でそう大きく差はないかもしれませんが、隣近所の情報はほとんど入る ような地域性がありますので、オープンにしたくないという方がまだ3割程度はいらっ しゃいます。ですから、オープンでいいという方には、この情報はこういう人たちに言 い伝えていきますよ、ただ、それは守秘義務がありますということを伝えて、私たちは できるだけ情報は伝えていった方がいいと考えています。ただ、クローズドとおっしゃ る方には、どこまでクローズなのか、例えば、そこの社長さんまでなのか、人事課まで なのか。企業が雇用支援制度を使いたいという時、人事課とか総務課まで伝わっていな いと制度が使えません。本人がそこは嫌だとおっしゃると、制度は使えませんので、ど の段階までクローズドなのかということによって情報の開示の仕方が全く変わるという こと、お互いが情報を持つレベルが変わってくるということを、本人と相談しながらや ります。支援計画も、オープンでいいという方には、支援計画策定の段階から可能な限 り事業主にも入っていただくようにしております。あるいは、家族と本人と病院のワー カーたちと支援計画を立てたら、その支援計画を持って、本人と事業主と私どもで、こ ういった支援計画でやりたいと思いますということで、出かける場合もあります。基本 的には、それが一番望ましいのですが、障害受容の問題、本人がなかなか障害を受容さ れていない場合とか、もう分かってしまったら自分は絶対に嫌だという方の場合には、 情報は開示できません。  2番目の質問の短時間就労の可能性についてですが、個人事業主には、短時間就労は 受け入れていただいています。むしろ、長時間になると、最賃だと島根は614円になっ たんですが、8時間だと約5,000円近く払わないといけないけど、3時間とか4時間だと、 少なくて済むというようなこともあって、個人事業主には短時間の方が受け入れてくだ さりやすいですし、外に出て活動している人で最賃以上払ってくださる方は、割合3時 間の仕事ならあるというところがいくつかあります。ただ、40人、50人の企業の中でと なると、雇用に繋げるとなれば、そこら辺はかなり工夫が要るのではないかと思ってい ます。この短時間就労の可能性については、資料でも書いておりますが、就労継続Aと 短時間就労というような、何とかうまい組み合わせができないものかと考えております。 精神の方はやはり最初は2時間から3時間で導入することで、非常にうまくいくという 事例が多いのです。それも企業の中の対人関係でつまずく方の場合、模擬的なものだと とてもレベルが低いということで、発達障害と似たようなところがあるかもしれません が、模擬的なものだと駄目なんです。この仕事にどういう意義があるのかということが 分かってやると、本当に皆さん熱心に仕事をされる方が多いのです。例えば、市役所の こういった仕事をこちらに集積して、就労継続Aでやる。あるいは、大手の企業の、ま あ、大手はないのですけれども、それなりの中規模の企業の仕事でアウトソーシングで きるものを集めてやる。その企業だけでは、アウトソーシングで一つの仕事にはならな いけど、複数寄れば、それが就労継続Aとしてやっていけるようなものがあると、その 企業にもポイント加算となっていいというものがあると、地方では仕事の開拓が広がっ ていくのではないかと考えています。  次に、細長い数珠繋ぎのような県だというのは、本当にその通りだと思います。参考 資料1ページ目、松江、出雲、浜田圏域が、国の就業・生活支援センターになっており ます。雲南と益田が県単で就業センターの部分を行っているもので、県はこの就業セン ターを7圏域全域にと考えているんですけれども、やはり、それぞれ得意、不得意分野 があります。私どもは松江でやっているんですが、やはり精神が得意で、これから知的 分野、身体をより広げていこうと考えていますので、そのネットワークの中で、そんな 力を付けていきたいと考えております。逆に、浜田圏域はリーフさんで、知的障害の分 野では本当に全国的に有名な桑の木園、いわみ福祉会というところがやられていて、益 田、石見、浜田を含めて、とてもすごい連携の下に、ハローワークも巻き込んだ熱心な 形でやられていますので、そちらに逆に今度は精神の方をどう巻き込んでいただくかと いうことを、松江から病院等に働きかけていって、そちらで精神も含めた連携にしてい ただけないかなと思っています。出雲圏域につきましては、近いということもあります し、私どもが簸川にあるということで、出雲圏域の方は私ども仲間に入れていただいて、 こういった連携がそれぞれの中で行われています。やはり全県でとなると、非常に厳し いです。少なくとも、東部、中部、西部ぐらいの3圏域ぐらいの大きな圏域ぐらいで、 何とかこの連携が実現していけないかなということを、リーフさんとかレントさん辺り と話し合っているところです。  次に、就労支援スタッフの育成ですが、これは先ほどの資料の中のスライド12枚目、 17枚目に書かせていただいているんですが、やはり働くということを支えるにはどうい ったことが必要なのかということをスタッフ自身が学べるような場があると、本当にい いなと思っています。  実は今、調査研究事業として、企業1軒1軒スタッフ2人体制でヒアリングをさせて いただいているんですが、最初の頃は、スタッフがみんな憤って帰って来たんですね。 企業の理解がない、ひどいことを言われたと、湯気を出して怒って帰って来たんですが、 回数が重なるうちに、企業の理解がないのではなくて、企業が福祉のことを知らないと いうことが一つと、我々が企業のことを知らないということがだんだんに明らかになっ ていきました。というのは、企業の方から、最近自立支援法というのを見たよとか、い ろいろな御意見もいただけるようにもなっていく中で、お互いがどう理解し合うかとい う視点が足りないと思いました。もっともっと企業のことを知らないといけないとか、 ISOという言葉はなんだろうとか。もちろん、福祉でもISOを取っているところはたく さんあるんですが、私どもの方ではそういう教育をしていなかったということもありま す。企業のいろんなことを知るような機会が出てきました。教育機関で、学校の先生が 企業に1年間とか半年出る。あるいは、行政の方が企業に出るという仕掛けがあります ね。ああいったことを福祉の事業者ができるような仕掛けが一つ作れないかなと思いま す。そのための代替えの要因が配置される仕掛けがあると、もっともっと就労というの は進むのではないかというのが一つと、ジョブコーチが民間で養成できるようになって きましたが、大阪と東京の2カ所しかありませんので、そこまで出ていくとなると、と いうよりも、むしろ今は応募しても人数制限があり、1人とか2人しか送り込めないと いう問題があります。もっともっと、ジョブコーチの資格云々は次にして、こういった 研修プログラムが全国各地でできることによって、就労支援担当者のスキルがアップし ていくのではないかと考えています。  もう一つ重要なことは、就労すればするほどお金も入ってくるということがあります ので、これまでかなわなかった異性の交際ができるとか、買える物の額が違ってくると、 もう少し出せば買えてしまうので、サラ金に手を出してしまうとか、それまでの施設の 中に居た時と違う生活上の課題が発生してきます。先ほど同じようなことをおっしゃっ ていましたので、そういったところをもっと社協と連携をとって、早く後見制度に繋げ ていくとか、消費者センターに繋げていくとかというようなところの研修ももっと必要 ではないかなということを考えています。  十分な回答になったかどうか分かりませんが、以上です。 ○座長  ありがとうございました。  それでは、フリーディスカッションに入っていきたいと思いますが、いかがでしょう か。中井委員、どうぞ。 ○中井委員  かんでんエルハートの中井でございます。本日はいろいろ勉強させていただきまして、 ありがとうございます。最初に志賀委員の御発表の中の、本当に訓練施設は必要なのか という部分と、武田委員の御発表のリハビリテーション理論の変容の place-train、就 職してからの訓練、継続的援助という、その辺の御説明に、なるほどと非常に納得した ところですが、一方、訓練施設の必要性については、例えば養護学校の段階で、即就職 できる方も1割、2割はいらっしゃると思うのですけれども、東京ですと3割というこ とですが、そうではなくて、少し訓練すれば、あるいは、社会性とか日常生活能力を訓 練で付けることで就職に結びつくという方もいらっしゃるのかなという気もするのです けれども、その辺については志賀委員のお考えはいかがでしょうか。 ○志賀委員  訓練施設について、訓練施設の重要性の中にも若干書かせていただいたんですが、私 たちの施設の中で変化が見られるのは養護学校の新卒の方です。すぐ就職できない方を 最短で半年、最長で3年ぐらいというスパンの中で就労支援をしていますと、その中で、 やはり当初の印象と全然変わる方がたくさんいらっしゃいます。それ以前の、施設での 実習を受ける際に、高校1年生で受けている時と、高校3年生の時との違いの大きさと いうのは、目を見張ることがあります。ところが、就職経験があって、離職されて、20 代後半ぐらいのある程度の社会性がついた人の訓練はといわれると、本人の評価自体も 比較的短期間に、こういった力があって、こういうのは弱いんだなということは、それ ほど難しくなく理解できます。では、それが大きく変化するかというと、やはり、もち ろん中にはいらっしゃいます。個別の問題ですから、そういうことはゼロではないんで すけれども、相対的にみると、非常に少ない。新卒の方ではそういう変化が見えるかと いうと、それも全員では決してないんですね。ということを考えてみると、私たちの訓 練機関の効果の1番としては、いわゆる終了の時期が自由にできるということです。い わゆる4月1日の採用でなくてもかまわないというのが1番の利点の一つではあります が、それ以上のものというのは、先ほどA型の施設であったりとか、いろんな授産施設 の試みがありましたが、私たちの方は決してそんなに高工賃というわけではありません が、やはり、それに対する負担とか、新規事業をやったりとか、いろいろやる負担とい うのは莫大な労力がかかって、私たちの本業で働いている人たちを支える、働いている 人にたくさん来てもらう場所ということに、ある程度ノウハウを集中していこうと考え ると、余分な仕事の方が、余分な仕事という言い方はおかしいですが、本来のノウハウ を持つべきでない部分でたくさんの人材を持たなくてはいけないのと、そこに別のノウ ハウを持たなくてはいけません。全体を管理していかないといけないとなると、かなり 事業のハードルとしては高くなって、高いマンパワーが必要になって、非常に難しいと いうのが今の自分たちの問題意識です。多分、学校の中での作業指導であったりとか、 その後の進路指導であったりとかと、同じような経験をされている部分だと思います。 ○中井委員  ありがとうございます。 ○座長  小川委員、どうぞ。 ○小川委員  今年度、ジョブコーチセミナーで全国の福祉施設職員の方たちに研修をして回ってい ます。その時に必ず、就労移行支援事業をやる予定があるか参加者に伺うと、ほとんど 態度を決定していないところが多いですから、可能性としてありますかと伺うと、大体 6割から7割ぐらいが手を挙げるんですね。研修期間中にコミュニケーションをとって みると、主に運営的な側面での判断が大きくて、担当者になったので研修を受けている ということで、結構若いスタッフが多くいます。就労支援の実績やノウハウは持ってい ないところが多いですね。これから、就労移行支援事業がどうなっていくのか分かりま せんが、私は基本的には雨後の竹の子のように、小規模でいろいろな就労移行支援事業 が立ち上がると、障害のある方にとっても、一体どこが信頼のできるサービスなのかが 分かりにくいということと、何より企業が一体どこと連携したらいいか分かりにくいと いうことで、あまりそういう状況は望ましくないと感じています。  今のことは現状についての私の感想ですが、今回の発表で、志賀委員の、本当に訓練 施設は必要なのかという辺りは、中井委員も御指摘されましたが、非常に面白いポイン トだなと思うのです。これは、どっちが必要というよりも、バランスの問題についての 御指摘だったのかなと思えます。ここでは、訓練施設と相談調整というキーワードにな っていますけれども、今の事業体系でいうと、この相談調整というのが就業・生活支援 センター、神奈川の場合でいうと就労援助センターですね。そして、訓練施設の方が就 労移行支援事業ということになると思うのです。それで、正直、就労相談の相談調整の 方がニーズは多いだろうという気がするのです。  横浜市の場合ですが、就労に向けて非常に密度の濃い、誰が見てもこれは就労に向け た訓練だと思えるような訓練をしている授産施設といっても、正直言って「ぽこあぽこ」 ぐらいで、あとはそれほど目立ったところはありません。その分、就労援助センターと いう相談調整の機関がたくさんあって、それで就労の実績を何とか上げているというこ とがあると思うのです。  私は就業・生活支援センターの数と就労移行支援事業の数が、どっちが多く必要だと いうことを言うつもりではなくて、やはり、いわゆる相談調整といわれている部分は地 域の就労相談のニーズをちゃんと受けて、基本的にアセスメントをどうするかというこ とを考えられて、企業とのきちんとしたパイプ役の窓口になれる機関であって、この数 をもっと増やしていった方がいいと思います。その時に、どうしても就労移行支援事業 ということと就業・生活支援センターそれぞれの行政の仕組みの違いがあって、そこの バランスが柔軟に考えられない辺りがちょっと現場では厳しい状況かなと思います。  あと、もう一つ、武田さんの御発言との絡みでいうと、結局、そういうところでの人 材がどんな専門性と役割を持ってやったらいいのかという辺りがまだ曖昧で、どうも生 活支援型になりそうな就業・生活支援センターの就労支援ワーカーがいたり、あるいは、 外との接点が非常に薄い就労移行支援事業のスタッフがいたりというような形になって いくことが、ちょっと懸念されるかなと思いました。 ○座長  ありがとうございました。では、高井委員どうぞ。 ○高井委員  高井です。小川さんと同じような意見なんですけれども、志賀さんが就労移行支援事 業をこの10月から開始されているということですが、全国で「ぽこあぽこ」、川崎の 「わーくす大師」のような形で施設運営をされているところは本当に少ないと思うので すね。でも、施設運営を考えた時に、今回の移行というのは非常に厳しくて、養護学校 の人たちを受け入れるためには、就労移行支援事業を受けざるを得ないという実状があ るのと違うかなと思っていて、そういう中では、小川さんもおっしゃっていたように、 何も就業ノウハウのない事業者が増えてしまって、その中で、育成されないままで企業 に移行されてしまうというのは、企業の障害者雇用を受け入れようという意識が低下し てしまうところに繋がっていかないかというのを、とても危惧しております。そういっ た意味では、就労移行支援事業を開始される事業所というのは、相当の意識をしなけれ ばならないということと、できれば、就業・生活支援センターの提携施設のような形が あれば、相談をうまく受けて、そして、移行のためのいろんな訓練をしながら送り出し ていって、その後もきちっとフォローできるというような絵がきちっと書けていないと 難しいのではないかなと思っています。  それと、就業・生活支援センターをやっている中では、やはり、かなり生活という部 分の支援がたくさん必要と思うのですが、働くための就業生活を支えるという部分では、 生活だけという部分を強調するべきではないと私は思っているんですね。就業生活を支 えるというところをもう一度みんなが意識すべきではないかと考えています。  それと、もう1点ですが、発達障害者の関係ですけれども、2年前に法律が定められ て、またテレビで大きく取り上げられて、発達障害者支援センターに非常にたくさんの 相談が寄せられていると思うのです。今回は、発達障害者支援センターへの相談のこと は全然触れられてはいなかったんですが、発達障害者支援センターには1名の就労支援 担当者が配置されているんですけれども、この配置されている担当者の方がどれだけ就 業支援の専門性をお持ちなのか。また、その専門性を得るための研修制度がどんなふう になっているのか。就業・生活支援センターの場合は、例えば、国が決めた研修機関で 1週間の専門的な研修を受けるというのが義務付けられているんですが、どうもそうい うのがないような感じがしていますので、研修制度について知りたいというのと、それ から、発達障害支援センターと就業・生活支援センターがうまく有機的に連携すれば、 発達障害者の専門性を持たれた担当者が我々のところにきちっと振ってきていただくこ とによって、いい支援ができるのではないかと思うのですが、その辺の温度差を実際の 支援の中で感じているところです。 ○座長  ありがとうございます。要するに、連携をつくるマンパワーですね。そこが今、不足 しているということですね。はい。輪島委員。 ○輪島委員  非常に本質的な話で、志賀さんのところの知的障害や武田さんのところの精神障害、 それから、今後の関係でいうと、小川さんと高井さんの御指摘も非常に本質的なところ で、どうやっていくのだろうというのは本当に難しいだろうなと思います。  せっかくの機会ですので、同じ話ですけれども、企業側もそこら辺は非常に戸惑いが 大きくて、障害者雇用促進法の改正と自立支援法の制定に伴って、ある意味では企業側 は受けましょうと。もう一つは、新基準の適用でこれからの障害者雇用対策において企 業のお尻を叩く仕組みはできているわけです。そうすると、企業側はそんなにハローワ ークが言うならばという関係からいえば、求人は出していきましょう。そして、そうい うふうな環境が整いつつある。しかしながら、マンパワーもしくは障害を持っている人 たちの人材をどうやって出していくのか。そのことについてフォローアップをどういう ふうにしていくのかということが、ある意味ではまだ未整備なので、その点でいうと、 企業側も、それではと雇用してみたけれども、やっぱり知的障害者の雇用は難しい、精 神障害者の雇用というのはこんなに大変だったんだねというようなことで、2年、5年と いうスパンの中で考えていくと、やっぱり難しいということだけは企業の経験則として 残っていて、そこのところの促進というところは、今ようやくグランドデザインという ふうにいわれましたが、グランドデザインぐらいのところで、多少方向性は見えて、そ の方向性そのことについては是なのだけれども、実際のものが埋まっていないというの が現場の感覚だし、企業側の恐れなのではないかなと思います。そういう意味では、雇 用と福祉の連携、教育との連携の研究会の本質的な御指摘だとは思うのですけれども、 障害者雇用対策課はできないことの方が大きいわけで、その点でいうと、まさに14階と 5階がどういうふうな連携をするのかということの姿勢を示すポイントだと思うので、 よくよくお考えをいただいて御対応いただきたいと思います。 ○座長  どうですか。事務局の方でお考えはいかがですか。 ○障害者雇用対策課長  この場で即答申し上げるというようなテーマでもないと思いますが、そういう意味で 非常に大きな課題を今御議論いただいているかと思いますので、この場の御議論を踏ま えながらきちんと我々なりにまとめをしていきたいと思っております。ただ、その中で、 高井委員からも御指摘があった点で、特に就労移行支援事業をこれからどういう位置付 けでやっていくのかというようなことについて若干触れさせていただきたいと思います。  いずれにいたしましても、私の担当というよりは障害保健福祉部の担当ではあるんで すが、これまで一緒にやってきた流れといたしましては、一つは、事業をやるに当たっ ての体制をきちっと施設の方に整備をしていただくというような意味で、今日も参考資 料としても載せておりますけれども、サービス管理責任者という位置付けをはっきりさ せて、その研修体制を整備するというようなことをやってまいりました。  それから、もう一つ、地域の中で雨後の竹の子状態にならないようにというお話もあ りましたけれども、これもやはりサービス提供が必要な事業量を障害福祉計画という形 の中で、地域の中で行政としても見定めて、それに沿った計画的な整備をやっていくと いう形も御提案して、その時に、私どもも一緒に、合わせてその地域の特に障害福祉圏 域でみたときに、その中に就労支援を担当する機関として一つはマッチングを担当する ハローワーク、もう一つは地域の中で一貫した支援をずっと担当する就業・生活支援セ ンター、それから、今日御議論いただいております訓練施設としての就労移行支援事業 者、三つ揃って、三者一体となって展開していくというのが一つの標準的な地域での就 労支援の姿ではないかと考えております。これも、都道府県、市町村、労働局に提示を しながら、地域での御議論を今お願いしているという状況でございますので、こちらが 御提案申し上げている中身が不十分だという点もあろうかと思いますけれども、そうい ったこちらとしてお示しをしているものを踏まえて、各地域で今議論が行われていると いうことで、御理解していただければと思っております。  それから、もう1点、発達障害者支援センターとの関係ですが、これも高井委員から ご指摘があった通りの課題がございまして、実は発達障害者支援センターの就労支援担 当者は確かに1センターに1人ずつ予算的には配置されている形になっておりますけれ ども、特に就労というところに着目した専門的な研修体系が今までつくれていなかった という状況がございます。来年度から具体化しようと今考えておりますのは、幕張の総 合センターにおきまして、先ほど高井委員からご指摘があったように、ナカポツセンタ ーや雇用支援センターについては、既に専門の研修コースを設けており、それと同様の ものを発達センターについても幕張が担当する形で、就労支援という点からの研修を考 えていきたいと思っております。今、その具体化を進めているところです。当然、今か らでもできる部分があるので、例えば、ナカポツセンターの経験交流会、あるいは幕張 がやっております実践セミナーですね。そういったものに発達センターの就労支援担当 の方にも積極的な参加を呼びかけしております。こういう状況でございます。 ○座長  他にいかがでございましょうか。原田委員、どうぞ。 ○原田委員  今日、志賀委員と武田委員からの詳しいお話をお聞きしまして、とても参考になりま した。加えて、山岡委員の方からも発達障害の現状についてお聞きできたわけですけれ ども、お時間の許す範囲内でお聞きしたいということで、先ほど宮崎委員からも質問に あったのですが、やはり私たちここにいるメンバーも直接的にあるいは間接的に、発達 障害に関する理解・啓発に努めていかなければならないわけですが、やはり保護者と本 人の認知の問題です。特に私どものところに入ってくるのは保護者の認知が及ばない、 本人にとってみれば、第二の障害という言われ方もするということも聞いたことがあり ます。その辺りで、山岡委員を始めとしたネットワークの方々が具体的にどのような助 言や支援をされているのかをお聞きできると、私たちも各地で理解・啓発に関わる時に、 関わりやすいなということが一つありましたので、教えていただきたいと思います。  もう一つは、先ほど小川委員、高井委員からもあったことと少し関連するのですが、 大都市であろうと地方の市町村であろうと、進んでいる、進んでいないという言い方が 端的に当てはまるかどうか分からないんですが、やはり格差があることは事実なわけで、 福祉圏域毎に就業・生活支援センターがまず置かれることを私たちは望んでいるわけで す。  同時に、先ほど御指摘があったわけですが、施設の評価ですね。第三者評価ですが、 これがどこまで整えられるのかということが、就労支援という問題に関してもやはり重 要なポイントなのかなと思っています。企業から見ても、利用者あるいは保護者から見 ても、本当の意味での第三者評価ですね。意見といいますか、要望として申し上げたい と思っていました。 ○座長  ありがとうございました。御質問も出ておりますので、山岡委員の方からお願いいた します。 ○山岡委員  特に軽度発達障害のある子どもを持つ保護者への障害認知の問題でございますが、現 状は保護者の方々には理解・啓発に努めるしかないと思っておりますけれども、例えば、 教育現場だとか、支援をされる方ですが、要するに軽度発達障害のある子どもを持つ保 護者への場合、普通以上に出来る部分もあるため障害受容が非常に難しい面があるとい うことです。それから、障害受容については、疑念・混乱期、ショック期等いくつかの 段階を経て障害受容に至るというようなことがあります。それらを広く理解啓発してい くようなことを機会を捉えてやっているところであります。例えば、保護者が拒絶的で ある場合、基本的にはどこでも同じかもしれませんけれども、その障害があるから支援 をするということではなく、特に教育現場では、いきなり障害名を前面に出すのではな く、さりげない小さな支援を積み重ねることによって本人に何か効果があるということ を見せていくことが大切です。それが、保護者や本人がそのサポートを受け入れるとい うことに繋がります。ということを重ねていくということです。 ○原田委員  ありがとうございました。 ○座長  ありがとうございました。それでは、時任委員、どうぞ。 ○時任委員  少々ピント外れだということを承知の上で2点お願いいたします。一つは、山岡委員 のお話で、LD、ADHD、高機能自閉症の皆さんの就労支援というのは非常に難しいという ことが分かったのですが、さっきから何回か出てきている障害の受容とか認知の問題が あります。私ども身体障害というのは、盲、聾、肢体不自由、内部障害があります。そ れから知的障害があって、精神障害があり、これは今、3障害一元化といっていますが、 もちろん他の障害にもあるんですが、精神障害の皆さんも障害の受け入れが非常に難し い障害だと言われております。それにしても、それぞれの手帳等があるのですが、知的 障害とLDやADHD、その他のそういう障害と中身が少々違うのに、例えば、愛の手帳と かそういうもので一括りにしていいのかどうか。そこら辺については、今後は社会援護 局で十分お考えいただきたいと思うし、それから、これらの皆さんを含めた雇用率の問 題は、職業安定局の方でまた検討していただいて、できればもうちょっと企業に対する 雇用率を強化していただく必要があるのではないか。つまり、障害者の数が増えていく わけですから、雇用率の方も上げていかないと、十分に機能を果たさないのではないか と思います。これが1点目です。  2点目は、同じことを何度も言っているようですが、先ほども局間の連携の問題が出 ていましたが、介護保険法の施行によって、いわゆる特別養護老人ホームに視覚障害マ ッサージ師の雇用の道が開けていきそうな暁があったわけです。しかし、今回の介護保 険法の改正でポシャッてしまった。その時に、私ども視覚障害者のマッサージ師の雇用 を進めていくために、障対課や高齢・障害者雇用支援機構が大きく力を入れてくださっ ていたのが、いわばかなり空振りに近い状態になりました。この辺で、今後の問題とし て、できれば局間の調整、連絡を強化していただきたいということを是非お願いしてお きたいと思います。 ○座長  御意見としてお伺いしてよろしいですね。はい。それでは他にどうぞ。武田委員どう ぞ。 ○武田委員  局間の連携ということがあったんですが、私どもが就労支援を進めていくに当たって、 これは精神も知的も身体も変わらないと思うのですが、やはり複数の支援を提供してい くことで、その人が地域で暮らしていけるという方が多いんですね。一つの支援で地域 で生活するというより、重度になればなるほどですね。例えば、精神の場合は、地域で 往診等を含めた支援をやりつつ就労支援をやることで、少しでも所得保障に繋げていく という考え方です。そこに必要なのはケアマネジメントの考え方です。誰かがきちんと マネジメントしていかないと、バラバラの支援を提供するのでは効率はもちろん悪いで すし、その人が振り回されることにもなっていくと考えています。今回、自立支援法で もケアマネジメントがいい形でなかなか導入され難かったということもあるんですが、 事務局の方でそのケアマネジメントと就労支援についてどのようにお考えか、ちょっと 教えていただきたいと思います。サービス管理責任者の中にはそういった考え方は盛り 込まれてはいるんですが、実際に労働サイドとしてケアマネジメントのことをどのよう にお考えになっているか、一度お尋ねしてみたいと思っておりました。 ○座長  今のケアマネジメントについては質問のようですので、要するに、支援会議というの が3者の領域を越えて行われるわけなので、教育は個別の教育支援計画というようなこ とでありますけれども、労働の方でそういうケアマネジメントを共有するための方策と いうのはどうかということですね。 ○障害者雇用対策課長  今の御質問ですが、私どもも、もちろんケアマネジメントの考え方といいますか、そ ういう手法を就労支援という場面でも導入をして、いろいろなサービスを複数組み合わ せたり、調整をしたりしながら支援を提供していくという考え方は大変大事だと思って おります。これから目指すべき方向だと思っているわけなんですが、現実の状況を申し 上げますと、これも皆様方御案内の通りなんですけれども、今もお話がありましたよう に、教育の場面での個別の教育支援計画づくり、それから福祉サイドでのサービス管理 責任者が取りまとめるようなサービスの提供のマネジメント、それから、労働分野では ハローワークが登場するというようなことで、その意味では、必要性は十分承知をして いながら、実は場面による、どこがメインに担当する行政機関か、あるいは行政分野か というようなことによって別れてしまっているというのが現実だろうと思っています。 それを全てまとめるようないわばどの行政も包括できるような強力なものができればそ れが一番の理想形であることははっきりしているんですけれども、さて、それがどこま で具体化できるかという問題はありますし、それを考える中で、では現実の役割分担の 中でどうやってそれを結び合わせていくかという、やや次善の策的な考え方も探ってい かなくてはいけないと思っているところです。ただ、現実には今申し上げたように、そ れぞれの場面で、それぞれのマネジメントという形になってしまっているということで す。それを何とか改善はしていきたいなと思っているところではあります。 ○座長  ありがとうございます。小川委員、どうぞ。 ○小川委員  2回目ですみません。発達障害のことについてちょっと触れたいと思っておりました ので。  その前に、就労移行支援事業にしろ就業・生活支援センターにしろ、全体に流れとし ては非常に素晴らしい流れだなと思っているんですが、そこをうまくやっていくために、 やはり現場の力がまだまだ時間がかかるなという懸念を先ほど申し上げました。全体に ついては非常にポジティブに考えております。  発達障害についても同様の視点なんですが、山岡委員のご発表で、まず知的障害を伴 う自閉症と伴わない自閉症をきちんと整理されて言われましたが、私は横浜の発達障害 支援センターに関わっていますので、少し就労支援の現場の感じで申し上げたいと思い ます。  知的障害を伴う自閉症の方たちについては、神奈川、横浜はIQ91まで自閉症の診断が あると療育手帳が出やすいので、かなりここで問題がカバーされるということになりま す。そのことを一つ申し上げたいと思います。残りの知的障害を伴わない方たちの支援 については、やはり精神障害者保健福祉手帳が雇用率のカウントになると、これについ て適切な情報提供をしています。その二つで当面カバーをしているわけですが、もう一 つ、障害をなかなか受容されないという御指摘がありましたけれども、この方たちとコ ミュニケーションをとると、基本的に障害者手帳で雇用するということは、全体の要求 水準を下げてもらって、それでいろいろ大目に見てもらうというところで何とかうまく やっていこうという仕組みなんだと思うんです。全体に下げてもらうことは受け入れら れないし、やはり障害という全体のレベルでそうされることはやはり受け入れられなく て、御自分の得意なところを発揮したいんだけれども、苦手な部分について是非配慮し てもらいたいという、ここのやりとりについて、果たして就労支援の方法と技術が対応 できるのかということは、非常に現場で混乱している部分であります。この問題を考え る時に、そういう現状があって、実は発達障害者支援センターの就労支援担当者という のは、今申し上げた方たちが日々電話をかけて、いろいろなことを言ってくることに時 間を費やしています。本当に方法と技術があって、そこを発揮すれば安定した雇用・就 労に繋げられる方たちの支援がなかなかできていない。非常にこれは難しい問題ですけ れども、少しその辺を整理して考える必要があるかなというふうに思います。 ○座長  ありがとうございました。よろしいですか。たくさん出ました。ここでは福祉、労働 の連携等と言いますけれども、東京と大阪でジョブコーチの研修もやっているというこ とです。それにしても、なかなか就労担当者の専門性を上げるそういったうまい研修の 機会ができない。その辺のことが出ております。これからネットワークを繋げていく専 門の人たちですね。企業のOBというのも有力な候補ですし、先進的な実践を行っている ワーカーも有力な研修の講師になりうるけれども、まず現場にそういう専門性を持った ワーカーをたくさん育てていくにはどうしたらいいかというのが、今日大きな課題にな りましたので、また次回から詰めていきたいと思います。  それでは、次回について事務局の方から説明をお願いいたします。 ○事務局  次回の研究会は12月26日(火)の13時から16時までとなります。本日議論になりました 人材育成がテーマになります。それともう一つは地方公共団体の取り組みについてヒア リングを行いたいと思います。場所は厚生労働省内の会議室を予定しておりますが、決 まり次第御連絡申し上げます。 ○座長  次回の研究会も引き続きヒアリングを行うことになっております。事務局の方で必要 な準備をお願いいたします。  次回研究会の会議の公開につきましては、公開としても特に差し支えない議題だと思 いますので公開の扱いとしたいと思います。また、本日の議事についても、議事録を公 開しても差し支えないと考えますが、御意見いかがでしょうか。 (「異議なし。」の声。) ○座長  ありがとうございます。それでは、これをもちまして本日の研究会は終了いたします。 どうもありがとうございました。 照会先 職業安定局障害者雇用対策課雇用対策係(内線5854)