06/11/06 疫学研究指針の見直しに関する専門委員会 第2回議事録 第2回 科学技術・学術審議会生命倫理・安全部会疫学指針の見直しに関する専門委員会 厚生科学審議会科学技術部会疫学研究指針の見直しに関する専門委員会  日  時  平成18年11月6日(月) 15:00〜17:00 場  所  厚生労働省 省議室   出 席 者 【委 員】 矢崎座長       位田委員 小幡委員 川村委員 新保委員 祖父江委員 中村委員       永井委員 西田委員 丸山委員 南委員 森崎委員 山縣委員 【事務局】 文部科学省 長野安全対策官 二階堂専門官       厚生労働省 藤井厚生科学課長 林研究企画官 吉川課長補佐  議  題(1)疫学研究に関する倫理指針の見直しについて      (2)その他  配布資料       資料1   個人情報保護法を踏まえた疫学研究指針の改正の概要       資料2   疫学研究指針の見直しにあたり検討すべき事項       参考資料1 生命倫理・安全部会疫学指針の見直しに関する専門委員会委員名簿       参考資料2 科学技術部会疫学研究指針の見直しに関する専門委員会委員名簿 【林研究企画官】  それでは、定刻になりました。まず、傍聴の皆様にお知らせをい たしますが、傍聴に当たっては、既にお配りをしております注意事項をお守りいただき ますようお願いいたします。  それでは、ただいまから第2回科学技術・学術審議会生命倫理・安全部会疫学指針の 見直しに関する専門委員会及び厚生科学審議会科学技術部会疫学研究指針の見直しに関 する専門委員会を開催いたします。  まず、前回、第1回委員会においてご欠席でいらっしゃった先生方をご紹介させてい ただきます。  上智大学大学院法学研究科教授の小幡純子委員。次に、山梨大学大学院医学工学総合 研究部教授の山縣然太朗委員でいらっしゃいます。  本日は、飯沼委員と辻委員はご欠席とのご連絡をいただいております。それから、南 委員、位田委員からは多少遅れるというご連絡をいただいております。  それでは、以降の議事進行につきまして、矢崎座長、よろしくお願いいたします。 【矢崎座長】  本日は、第2回目の委員会でございますが、よろしくお願いいたしま す。  議題に入る前に、配付資料の確認をお願いします。 【吉川課長補佐】  本日の配付資料のご確認をお願いいたします。  資料1といたしまして、個人情報保護法を踏まえた疫学研究指針の改正の概要、資料 2といたしまして、疫学研究指針の見直しにあたり検討すべき事項、参考資料1の文部 科学省の委員名簿、参考資料2の厚生労働省の委員名簿、以上でございます。そのほか に、委員のお手元のほうに、前回の委員会の議事録を配付してございます。こちらの議 事録につきましては、あて先が厚生労働省厚生科学課で一括に受け付けますので、変更 等訂正がございましたら、11月13日、来週の月曜日までに標記のあて先にファクス にてご連絡いただきますようよろしくお願いいたします。資料の不足等ございましたら、 お知らせください。  以上でございます。 【矢崎座長】  議事録で何かございましたら、お願いいたします。  それでは、早速議事に入りたいと思いますが、まず初めに、前回の委員会で個人情報 保護法にかかわるご質問、ご意見などを承りましたので、それを踏まえた疫学研究指針 の改正が行われています。それについて事務局から説明してください。 【吉川課長補佐】  前回、平成16年12月28日付告示をもちまして、疫学研究指 針の改正を行ってございます。その改正の内容といたしましては、あくまでも個人情報 を保護するということで、個人情報保護法の趣旨を踏まえた改正を行ってございまして、 その点に関しまして、前回の委員会で何点か個人情報保護に関するご意見、ご質問等を ちょうだいしておりましたので、その平成16年の改正に当たっての概要を、ここで簡 単にご紹介をさせていただきます。  資料1の1でございますが、まず、その指針の改正の背景となった事項を2つ挙げさ せていただいてございます。個人情報保護法案に対する国会(参議院)の附帯決議とご ざいまして、その下に、医療(遺伝子治療等先端的医療技術の確立のため国民の協力が 不可欠な分野についての研究・開発・利用を含む)、そのほか金融・信用、情報通信等、 国民から高いレベルでの個人情報が求められている分野について、特に適正な取り扱い の厳格な実施を確保する必要がある個人情報を保護するため、個別法を早急に検討し、 本法の全面施行時には少なくとも一定の具体的結論を得ること。  2番につきましては、これは基本方針ということでございまして、個人情報保護法の 第7条第1項に基づいて政府が定めたものでございますが、この中でもやはり同様に、 医療、金融・信用、情報通信、こういったような格別の措置を講ずるような分野につい ては、厳格な措置を実施するということで検討するということで書かれているものでご ざいます。  このような背景の中で、研究につきましても、医療の一部分ということでございまし て、2に書いてあるとおり、当時、文科省、厚生労働省、経済産業省3省の委員会が合 同で検討をさせていただきまして、平成16年6月から12月にかけて半年間でござい ましたが、10回、11回といったような回数を重ねまして、検討をいただきました。 その上で、平成16年12月28日に告示に至ってございます。その告示の内容につき ましては、2ページ以降にございまして、1番目に、個人情報保護に関する措置という ことでございまして、個人情報保護法を踏まえ、以下の指針の整備を行ってございます。  まず最初の1.でございますが、個人情報保護法に書いてある規定、利用目的の制限、 安全管理措置、第三者提供の制限、その他幾つかございますけれども、そういったよう な規定をこの指針においても盛り込むということといたしました。  2.でございます。個人情報保護法では、あくまでも生存する者の情報に限っており まして、死者の情報というのは、この法律の対象とはなってございませんが、人権の尊 重、それから遺族の感情といったようなものに配慮いたしまして、この指針におきまし ては、死者に関する個人情報につきましても、安全管理措置を講ずべきであるというこ とを規定してございます。  また、3.でございますが、これは民間事業者の学術研究機関が学術研究に供する目 的で個人情報を取り扱う場合というのは、個人情報保護法、これは民間が対象になって おります個人情報保護法でございますけれども、こちらの第50条の規定に基づきまし て、個人情報保護法の第15条から第49条、いわゆる第4章の個人情報取扱事業者の 義務等といったような規定につきましては、適用除外ということになっております。た だし一方で、この適用除外となっているのは民間だけでございまして、もう1つ、行政 機関の保有する個人情報の保護に関する法律、それから、独立行政法人等の保有する個 人情報の保護に関する法律、こういったような法律につきましては、民間を対象として いる個人情報保護法と同様の学術研究機関を適用除外するといったような規定はござい ませんので、これにあっては、学術研究であっても法の適用を受けるということ。それ から行政機関・独法の個人情報保護法というのは、民間の個人情報よりも幾分厳格な規 定というものがございまして、指針はあくまでも個人情報保護法のベースで規定を整理 いたしましたけれども、厳しい部分もあるということで、いわゆる指針より上乗せにな る部分があるということをご留意していただくために、関係の個人情報保護に関する法 律を遵守する必要があるということに留意していただくよう、前文に記載をしておりま す。  3ページ目にご参考ということで、おおよそどういったようなところが、いわゆる個 人情報保護法と、行政機関または独法の個人情報保護法と違うのかという主なところを この表で整理をしてございます。大体似通った部分ではありますけれども、若干、見て いただければ厳しい部分がある。そしてもしくは手続の部分にやや厳格に、行政機関・ 独法については手続方法等を定められている部分がございます。ですので、適用除外と いうのは、あくまでも民間ベースになっておりまして、その適用除外の学術研究であっ ても、行政機関・独法については、一定の個人情報保護法の法律が適用されるのだとい うことに注意喚起を図っているというところでございます。  4ページ目でございます。2番、個人情報保護に係る責任者ということでございまし て、個人情報保護法では、法人など事業者単位で個人情報保護を図るべきということに されておりますので、法人全体の長を、いわゆる研究を行う機関の長ということで定義 をいたしまして、個人情報保護に係る最終的な責任者ということで整理をしてございま す。  3番目といたしまして、個人情報の定義の整理ということでございます。個人情報保 護法で定義する個人情報というものと、それから指針では連結可能匿名化、不可能匿名 化といったような定義がございますので、その整理を行ってございます。  (1)連結不可能匿名化の整理でございますが、こちらにつきましては、連結不可能匿名 化された情報は、既に個人が識別できないということで、個人情報には該当しないとい う整理を行いました。(2)連結可能匿名化の場合でございます。こちらのほうは、対応表 を有している法人内におきましては、個人情報に該当するということになっております。 この図にありますとおり、同じ法人内、例えば機関Aと機関Bがございました場合につ きましては、その法人内で対応表を保有しているという考えから、機関Bについても個 人情報になるという整理でございます。また、別法人の場合は、右側の図にもございま すとおり、法人A内では個人情報でありますけれども、法人Bにおきましては個人情報 には該当しないというようなことを、当時、法の所管をしております内閣府とご相談を しまして、このような見解でまとめるということになったものでございます。  概要につきましては以上でございますが、本日、先生方のお手元のほうには、机上配 布ということで参考の資料をご用意させていただきました。平成17年5月16日付の 週刊保健衛生ニュースでございますけれども、こちらのほうに疫学研究に関する倫理指 針の改定についてということで投稿したものがございましたので、ご参考までにご覧い ただければと思います。  以上でございます。 【矢崎座長】  どうもありがとうございました。個人情報保護法によって平成16年 に疫学研究の指針を改正した概要の説明でございますが、改めてご質問、ご意見はござ いますでしょうか。  いかがでしょうか。3点あって、1つは、個人情報の保護に関わる安全管理措置とか、 利用目的の制限、あるいは情報を第三者へ提供する際の注意項目と、2番目は、個人情 報保護にかかわる責任者の整理といいますか、明確にしたということと、3番目は個人 情報の定義の整理を行った。わかりやすく概要をまとめていただいたと思いますが。 【川村委員】  京都大学の川村です。2ページ目の中ほどに、死者の情報が書いてあ ります。もちろん私どもとしましては、亡くなられた方も生存者と同じように、自分た ちが診た患者さんについても同じように扱っていますけれども、過去、どこまでさかの ぼるかという問題があるかと思います。実を言いますと、ちょっととっぴな話ですけれ ども、南米の原住民のミイラの骨髄を調べて、民族疫学をやっているという研究者もい るわけですけれども、そういうずっと大昔にさかのぼった場合の、ミイラの人権という のも変な話ですが、そういった問題、極端な例ですけれども、そういった問題が出てく るので、過去どこまでを対象とするのかということを、場合によっては歴史をたどって 過去にさかのぼる場合があるかもしれないので、何らかの基準といいますか、指標があ るとよいかもしれないと思います。ちょっとこれは極端な話なので、本題から少し逸脱 するかもしれませんけれども、意見だけ述べさせていただきます。 【矢崎座長】  いかがでしょうか。 【小幡委員】  今の点にかかわって私もご質問したいのですが、行政機関個人情報保 護法にしても生存する個人という定義がされていて、通常そこでは、死者であってもそ のご家族にとっては大事な情報である、そういうふうな観点から法律は考えているので すが、ここでは措置として、法律ではないけれども、さらに何らかの管理措置を講ずべ きことを規定したというふうに、この措置というのは、閣議決定された基本方針ですね。 つまり、法律に基づくのですけれども、法律の保護範囲ではなく、さらにかぶせた政府 としての方針、そういうことで理解してよろしいですか。 【吉川課長補佐】  はい、あくまでもこの研究の指針の中での措置ということでござ います。 【小幡委員】  ですから、そこはむしろ行政機関個人情報保護法あるいは個人情報保 護法というよりは、こちらとして考えていけば、明確にしていけばよい、そういうこと でよろしいですね。 【矢崎座長】  そのほかよろしいでしょうか。  それでは、今いただいたご意見も留意しながら、今後検討を進めていきたいと思いま す。  それでは、見直しに当たり検討すべき事項という資料2がございますが、これに沿っ て議論を進めていただきたいというふうに思います。前回、全体のフリートーキングと いう形で委員の皆様からご意見をいただきました。それを踏まえて、前回お見せいたし ました資料を少しリバイスして資料2として作成いたしましたので、まず初めに、資料 2の変更点を中心に事務局から説明願います。 【吉川課長補佐】  それでは、資料2でございますが、前回、第1回目の資料4とい うことで、検討すべき事項の資料を配付させていただきました。それに、若干今回の委 員会に当たりましてリバイスをしておりますので、その点を中心にご説明をさせていた だきます。  まず初めに、論点の番号の変更を行ってございます。これにつきましては、例えば適 用除外を最後のほうに議論するということに前回なったと思いますので、そのような議 論がしやすいように、ある程度同じようなカテゴリーは集めるということで順番を変え させていただきましたので、前回の資料と論点の番号が異なっておりますので、その点 はご留意いただければと思います。  それから2番目といたしまして、前回の資料、現行と検討のポイントということで、 1ページ目にあるようなスタイルで書かせていただきましたが、今回、議論に入ってい きますものにつきましては、3ページ目以降のとおり、新たに、事例と問題点といった ような項目をつけ加えさせていただきました。これにつきましては、やはりケーススタ ディー的にどういうような事例があるのか、それからまた、この論点にかかわるどうい ったような問題があってこのような論点を検討いただく必要があるのかといったような ところをより明確にするために、このような項目を1つつけ加えさせていただきました。  それから、項目の追加が幾つかございます。これは前回委員会の中で委員からご意見 等をいただきまして、それを今回新たな論点ということでつけ加えさせていただきまし た。つけ加えさせていただきましたのは、3番目の倫理審査の付議を必要としない疫学 研究ということでございまして、データ解析を行うような機関の倫理審査をどうするか といったような意見がございましたので、これをつけ加えさせていただいております。  また7番目でございますが、未成年者のインフォームド・コンセントをどうするか、 いわゆる代諾者と同意が必要だということに現行はなってございますが、一定の年齢以 上もこれが必要なのかどうかというご意見があったものをつけ加えているものでござい ます。  それから8番目の包括同意の項目をつけ加えております。  それから4番目といたしましては、1ページにもあるとおり、前回ご議論で、ある程 度その方向性を得られたものにつきましては、これは今回まだ1番目だけでございます けれども、見直しの方向性といったような二重四角囲みの項目をつけ加えさせていただ きました。それからそのほかに、一部の論点につきましては、点線囲みで、参考となる 情報が必要なものにつきましては、書き加えさせていただきました。そのほか、文言の 修正等、何点か行っている点がございます。それにつきましては、ご説明は省略をさせ ていただきます。  変更点につきましては以上でございます。各論点につきましては、論点ごとにご説明 したいと思います。 【矢崎座長】  前回、幾つかいただいたご意見をもとにしてこの見直しの資料を整理 させていただきました。特にわかりやすい事例、問題点を具体的に示すことによって議 論が進みやすいのではないか、そういうことでこのような構成にさせていただきました。  位田先生がいらっしゃいましたので、事務局からご紹介いただけますか。 【林研究企画官】  今お見えになりました京都大学公共政策大学院教授の位田委員で いらっしゃいます。 【矢崎座長】  よろしくお願いいたします。  それでは、各論点ごとに議論を進めていきたいと思います。まず初めに論点の1でご ざいます。既に前回ご議論いただいて、大体の方向性をお示しいただきましたが、改め て事務局から説明をお願いします。 【吉川課長補佐】  それでは、論点1、1ページ目でございます。多施設共同研究に おける倫理審査についてということでございまして、四角囲みで論点を提示いたしまし たが、共同研究等により複数の研究機関が研究に参画する場合、倫理審査委員会の設置 をどのように考えるべきか、ということでございまして、現行にもあるとおり、研究機 関の長が倫理審査委員会を設置しなければならない。ただし、小規模等で設置できない 場合は、共同研究機関等に設置された倫理審査委員会に審査を依頼することができる。 それから、主たる研究機関で倫理審査委員会を行ったものについては、分担研究は迅速 審査に委ねることができるとございます。  検討のポイントに移らせていただきまして、多施設共同研究の分担研究機関におきま しては、倫理審査委員会が既にその研究機関で設置されているといったような場合には、 当該機関の倫理審査委員会における倫理審査、または迅速審査といったような審査が求 められることになりますが、そのように硬直的ではなくて、研究計画によって適宜対応 できるような仕組みというのを検討すべきかどうかということでございまして、下にあ りますとおり、その分担研究機関というのは、やはり疫学の場合、多数の研究機関が加 わるということもございまして、それぞれのかかわり合い方がやはり少し違うというよ うな部分がございます。ですから、例えば自分のところの倫理審査委員会があるけれど も審査ができない、そういったようなことも生じる可能性もございます。そして一方で、 研究機関にないから、全てをどこかでやってしまっていいかというと、研究機関の長が 何もその状況を知らないというのはいかがなものか、何か把握をしておくことはやはり 必要だろうということで、前回ご議論いただきました一応の方向性といたしましては、 多施設共同研究における倫理審査を分担研究機関が自ら、または他の研究機関への依頼 により行うかについては、研究機関の長が判断をし、どこで行うかということをお決め いただくということでいいのではないかといったようなご意見があったということをま とめさせていただきました。  以上でございます。 【矢崎座長】  この件につきまして、いかがでしょうか。  はい、どうぞ。 【丸山委員】  前回の議論のまとめとしては、今、事務局からご紹介いただいた、こ の太く囲んであるところということになるかと思うのですが、前回議論にならなかった ことで、倫理審査委員会は、事前の研究計画の審査とともに、研究の進行に応じて、あ るいは研究の終了時に報告を受けるという職務もあるわけですね。指針の第2の6のと ころに、疫学研究に係る報告というので、倫理審査委員会が研究機関の長を経て報告書 を検討するということについて、規定が置かれております。この報告を受ける倫理審査 委員会は、研究計画の当初に審査をした倫理委員会が研究の経過報告とか終了報告も受 けるのか、それとも、やはり報告のほうはその機関の倫理審査委員会が受けるのかとい うことで、どちらなのかということも考えておかなければいけない。まあ、通常のやり 方だろうとは思うのですが、研究計画があって、その研究計画を行おうとする研究者が 所属している研究機関の倫理審査委員会で審査するときは、問題なくその機関の倫理審 査委員会が報告についても当たればいいのですが、研究者所属の研究機関の倫理委員会 だと疫学研究について十分な審査ができないというときに、ほかの研究機関に審査を委 ねた場合、報告についても委ねられたところの倫理審査委員会が検討するのか、そのあ たりまで考えておかないといけないかなというのを、前回終わってから、ちょっと考え てみましたら問題を感じましたので、発言させていただきました。 【矢崎座長】  ありがとうございました。報告については、ここでは議論が含まれて いませんが、報告を含めて研究機関長が判断するということで、要するに自分のところ でするのか、ほかの倫理委員会にご依頼したときは、その報告について研究機関長が報 告先も判断するというふうに私は理解したのですが。 【丸山委員】  あ、そうですか。 【矢崎座長】  報告と申請と別々ではなくて、やはり研究機関長が報告を含めて判断 する、それでよろしいでしょう。 【丸山委員】  ええ、同じ場合もあるし違う場合もあると。 【矢崎座長】  ええ。 【丸山委員】  それならそれで、1つの考え方としてよろしいんじゃないかと思いま すが。 【矢崎座長】  はい、どうぞ。 【位田委員】  前回欠席しておりまして、もう議論が終わっていることだったら飛ば していただいて結構なのですが、前回の議事録を読ませていただいてよくわからなかっ たのは、今、ご説明になった見直しの方向性というところで、研究機関の長が判断する ケースというか、基準といいますか、そこがよくわからなかった点でございます。現在 の疫学研究指針では、研究機関が小規模であること等により設置できない場合にはとい うことで、明らかな基準が出ておりますし、場合によっては共同の倫理委員会をつくっ てもいいということでありますけれども、前回の議論ではそこまで、つまりどういうふ うな場合に研究機関の長が判断していいのかということについて、ちょっと私は議事録 の読み方が不十分かもしれませんけれども、そこのところがちょっと私は理解しにくか ったので、もし、もう話が決まっておるのでしたら結構ですけれども、いかがでしょう か。 【矢崎座長】  いかがですか。 【丸山委員】  私よりも疫学の研究者の方がおっしゃったほうがいいかもしれないの ですが、念頭に置かれているのは、確かに研究計画をつくった研究者の研究機関には倫 理委員会があるけれども、そこは疫学の研究者が倫理委員会のメンバーとして多くない ので、十分な審査がしてもらえないので、疫学的観点からの検討を十分してもらえるよ うな倫理委員会にかけたいのだけれども、今のルールだと、自分のところに倫理委員会 があれば、その構成メンバーなどにかかわらずそこにかけなきゃならないのでつらいと いうような話を、疫学をなさっている先生から伺ったことがありますので、そのあたり が念頭に置かれているんじゃないかと思うのですが。 【位田委員】  その辺の話は大体議事録からもある程度うかがえますし、そういう話 を聞いたことがありますが、それでは問題は、その疫学研究をやろうとしておられる他 施設の中で、疫学研究に見識のある委員の方が必ず入っておられるのかどうか、おそら くどこの医学部の倫理委員会であっても、疫学研究の専門の先生が必ず入っているとは 限らないように思うのですね。したがって、疫学の専門の委員の方がおられないからと いうのであれば、その疫学の研究に関しての、例えば臨時委員を設けるとかという手は あり得るかと思います。したがって、今、丸山先生がおっしゃったお話はよくわかりま すけれども、それだけを理由にしてほかの機関に頼むことができるかというのは、若干 私は疑問に思ったものですから、それ以外に何か積極的な理由があればというふうに思 いますけれども。 【矢崎座長】  ありがとうございます。疫学研究の場合は、臨床研究と違って、極め て多様な施設にお願いしなければならないというところがあって、先生のおっしゃるレ ベルのことは、臨床研究であればある程度しっかり網羅しなければいけないのですが、 大変多様性のある、ただデータだけを処理するような機関とか、そういういろいろなも のがあるので、極めて多様性に富んでいるので、疫学研究に関しては少し各研究機関長 の判断にゆだねてもいいのではないかという、そういうことであります。このような規 制は、細かく規制すると、むしろ研究がやりやすくなるというメリットがあるのですけ れども、逆にまたなかなか研究が進展しないというデメリットも一方ではあるので、そ こをうまく臨床疫学ではバランスをとるにはどうしたらいいか。しかし、倫理的には絶 対問題の起こらないようにしないといけないということで、研究機関長の判断に任せる ということで一応落ち着いたのではないかというふうに理解しています。 【位田委員】  文句ばかり申し上げて済みません。最終的に研究機関の長に判断を委 ねるということでも、それは構わないと思いますけれども、ただ、恣意的な判断がない ようにというのは私の一番の懸念でして、前回のご議論でもありましたけれども、倫理 委員会がきちっと機能しているところと、必ずしもそうではないところがあるという現 状からしますと、実際に条文をつくられるときには、もう少しきちっとした条文になる かもしれませんけれども、ただ単に研究機関の長にお任せするというだけでは、やはり 問題が残るのではないかと思っているので、今、ここでもう一回議論をしたいと言って いるつもりではございませんので、ご了解いただきたいと思います。 【矢崎座長】  ありがとうございました。先生のおっしゃることは十分わかりますの で、最終的には、まとめはこの方向でさせていただきたいと思いますが、先生のご懸念 が何とかクリアするように、可能であれば少し検討したいと思いますので。一応、大筋 はこれでまとめさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。  それでは次の、これはもうちょっとなかなか議論の多いところでありますが、論点2 に関しては、前回もご議論いただきましたが、論点2は、幾つか整理して、課題を少し 小分けにして提案させていただきたいと思いますので、まず事務局からお願いします。 【吉川課長補佐】  論点2につきましては、いわゆる資料提供機関をどのように指針 の適用として考えるのかどうかということでございまして、前回の資料は、やや検討す るのがわかりづらいといった点がございましたので、今回は論点を3つに分けさせてい ただきました。  まず最初に、2の【1】の論点をご説明させていただきます。既存資料等に該当しな い場合であって、かつ、情報にかかわる資料(診療情報等)を提供する機関において、 研究計画の倫理審査を求めるべきかどうかという論点でございます。これにつきまして は、少し図を見ていただいたほうが考え方がわかりやすいかと思いますので、6ページ の図1をごらんください。6ページの上の方に図1というのがございますが、ここの中 に3つの研究機関の立場があることをお示ししております。左側の上の方に、指針で定 義されている既存資料等の提供のみを行う機関、それからその右側は、既存資料等に該 当しない資料の提供を行う機関、そして下のほうは研究実施機関ということで、いわゆ る疫学研究の資料を集めて解析をし、実施をする研究機関というふうにお考えいただけ ればと思います。この3つの者につきまして、現在は、いわゆる既存資料等に該当する 場合につきましては、左上のように、指針の11の(2)というところのみが適用され ておりまして、いわゆる右側であるとか下であるような、研究機関においての研究計画 の審査であるとか、それから研究機関の長の許可といったようなものの要件はございま せん。したがって、11の(2)にありますとおり、既存資料等を提供するに当たって、 提供者、研究対象者となる者の同意を得てくださいと。それで、同意が得られない場合 については、幾つかの条件をつけてございますけれども、そのうちの(2)、(3)といったよ うな条件の場合につきましては、倫理審査委員会で審査をし、研究機関の長が判断をし てくださいという規定になってございます。規定のほうにつきましては資料の8ページ に書かせていただきましたので、この11の(2)と(3)の場合に倫理審査委員会の審査、そ して機関の長の許可を得るという手続を踏むということになってございます。そして、 一方で、既存資料でないということになりますと、同じような資料の提供機関であって も、右のように実線で書いたような、研究計画の審査から始まっていわゆる倫理審査委 員会を通りまして、研究機関の長の許可を行うというような手続が求められているとこ ろでございます。  この点を念頭に置いていただきまして、資料の3ページに戻らせていただきまして、 事例・問題点というところをごらんください。今、既存資料等に該当しない資料という ことで、ここに例示を2つ挙げさせていただきました。いわゆる研究計画の策定以降に 診療機関が依頼を受けて、今後、おたくの病院に来た患者さんで、こういったような件 に該当するような患者さんが来院した場合には、その診療情報を提供してくださいとい ったような依頼を受けて提供する場合、それから2番目でございますけれども、例えば 地方自治体など健康診断を行っておりますけれども、その健康診断はあらかじめ何月何 日ぐらいにあるということがわかっておりますので、事前に資料の提供というのを研究 機関から依頼を受けていて、おたくで近く実施する健康診断で得られる血液検査のデー タがありますが、その検査結果の一部を研究用に提供してくださいという依頼を受けて 提供するような場合、これについては、いわゆる既存資料といったような定義の概念に 該当しませんので、先ほどの図のいわゆる研究計画の審査を踏んだステップが必要とな ってくるわけでございます。そしてその事例の2番目の○にあるとおり、例えばA大学 で疫学研究を実施するに当たり、B病院に既存資料等に該当しない資料の提供を依頼し たところ、B病院から、倫理審査がうちで必要となるので、それは手続が煩雑になるか ら協力はできませんということで断られてしまいまして、結果として、研究におけるデ ータの収集数が満たないということで、研究の実施に支障が生じたといったような事例 がございました。  その下の現行につきましては、先ほど、図でご説明をしたとおりでございます。  この際の検討のポイントということでございますが、いわゆる提供する資料が既存資 料等に該当しない場合であって、かつ、その資料の性格として、情報にかかわる資料、 いわゆるヒトの試料ではないということでございますけれども、そういったような資料 であって、それが専ら研究の目的のみで取得された資料でない、つまりは、診療情報等、 他の目的で取得された情報を二次的に研究にも利用する、そういったような場合の資料 につきましては、当該資料の提供のみを行う機関の取り扱いにつきましては、現行の既 存資料等の提供機関と同じように、いわゆる指針の11の(2)のみを適用するという ふうに整理をしてはどうかということでございます。  以上でございます。 【矢崎座長】  第2番目は、資料提供機関における指針の適用でございますが、今、 ご議論いただきたいのは、既存資料等に該当しない場合、かつ、情報にかかわる資料、 診療情報などを提供する機関において、倫理審査をどう進めるべきかということでござ いますが、何かご意見ございますでしょうか。  現行は、既存資料に関しては、既に指針の11の(2)が定められておりますので、 今、述べられたこの状況に一致するような条件であれば、従来の指針の11の(2)で よろしいのではないかということですが、いかがでしょうか。  はい、どうぞ。 【祖父江委員】  ちょっと言葉の感じから受け取る印象なのですけれども、既存資料 の定義が、ここでいいますと、6ページの図の左、真ん中あたりにある、この2つの条 件で既存資料ということなのですが、日常診療の中で、これからもずっと続けてとられ ていくような定型的な情報というのは、今後、研究に使うということを予定したとして も、既存資料といったほうが、印象としてはなじむのではないかというような気がしま すけれども、その点はどうでしょうか。 【矢崎座長】  今おっしゃられたのは、検討のポイントにあるように、既存資料等に 該当しない場合、今、先生の言われたような症例ですね、かつ、情報にかかわる資料で、 専ら研究の目的のみで取得された資料でない場合、今の診療情報などを利用する場合は、 現行の既存資料等ということで、倫理的に対応してはどうかというふうにまとめさせて いただければと思ったのですが。 【祖父江委員】  ですから、これを既存資料等に該当しないと言わずに、こういうも のを含めて既存資料といってしまうというのではどうかなと思います。 【矢崎座長】  そうですね。 【丸山委員】  今の祖父江先生のご意見は、データに限らず、情報に限らず、ヒト由 来試料についても同じ扱いにしてはどうかということになるんじゃないですか、結果的 には。今、事務局のほうから提案されているのは、これまで既存資料と扱われていたも のに加えて、データに限って、情報に限って既存資料と同じ扱いをしようということな のですが、祖父江先生のおっしゃったのは、診療ないし健診の場面で得られた情報、サ ンプル双方について、目的外利用の場合は既存資料等という扱いにしようというように、 そういう結果になるんじゃないかと思いましたのですが。 【祖父江委員】  言葉足らずで申しわけありません。イメージとしては情報のほうだ けであって、生体試料のほうはあまり考えていませんでしたけれども、そこはやはり区 別して既存資料を定義してしまうと混乱するというのが先生のご意見ですか。 【丸山委員】  いや、逆でありまして、ちょっと事務局で用意されたよりも一段飛躍 するというか、当初つくったときに既存資料を、この既存資料等の定義の(2)、研究計画 書の作成時以降に収集した資料であって、その後の、収集時点において当該疫学研究に 用いることを目的としていなかったものという、この収集時点というのを非常に厳格に 考えて、この論点2の最初の問題をつくられたと思うのですが、ここの収集の時点とい うのを研究利用時点、あるいは研究に提供される時点において研究目的とされていなか ったというふうに理解すると、データもサンプルも両方とも目的外利用については既存 資料等というふうな扱いになると思うのですね。それを祖父江先生はおっしゃっている のかなと、私は可能性としてはそれもあり得るのかなと思ってきましたので、そうかし らというので確認をさせていただいた次第なのですが。 【祖父江委員】  私が思っていたのは臓器別がん登録のイメージでありまして、ずっ と診療の中でとられている情報を、ある時点、研究を始めますという時点で、まだとら れていない、将来とるであろうというところの情報も、予定されている診療の中で必ず とられるものなので、それも含めて既存資料と言っていただけると、既存資料のみの提 供機関になって、後の審査が簡略化できるというようなことをイメージしていたのです。 【丸山委員】  それで祖父江先生のおっしゃっている分野の問題は片づくのですが、 だから、情報のみを扱っておられるところはそれでよろしいのですが、人体由来試料の ほうはこれまでどおりでよろしいのかどうかというあたりがちょっと気になったのです が。人体由来試料については、これまでどおりでいいということであれば、事務局案で よろしいということになると思うのですね。 【矢崎座長】  これは、今言われたようなデータに限って既存資料にみなすというこ とで、ヒトのサンプルとか、それはまた別であるというふうな理解なのですね。そうい う理解ではどうかということで、ここは診療データとかそういうもので、しかも個人情 報で、ある程度、ここに書いてありますような資料を提供する場合には、インフォーム ド・コンセントで同意が困難な場合でも、匿名化すれば提供できるということで、これ はデータのみでサンプルは除外しているということですよね。 【吉川課長補佐】  はい、ヒトの試料は、(2)、(3)で次にご議論いただこうと思っ ておりまして、ここはあくまで、そういったような性格の資料であれば、こういったよ うな一定の緩和というのが認めることは可能ではないかというところを事務局としては ご提案をさせていただいたものでございまして、ヒトの試料はこの中では含まれていな いという整理になってございます。 【矢崎座長】  そうしますと、丸山先生の言われるように、もう少しはっきりと、読 んだ人がわかるように……。 【丸山委員】  いや、読んでわかったのですが、それだけで研究者の方は十分なのか、 ちょっと気がかりだったもので、この原案自体には全く異論ない、それに問題があると は言っていないのですが、そこでとまっていいのかなというだけなので、特にもうちょ っと広く認めてほしいという意見がなければ、これで全く異論はございませんので。ち ょっとややこしい言い方をしまして失礼いたしました。 【矢崎座長】  そうしますと、ご懸念のヒトのサンプルに関しては、またご議論いた だくと、これはデータだけをここで述べているということで、もし明確でなければ、も う少し明確な文章にしたいというふうに思いますので、よろしくお願いします。  はい、どうぞ。 【森崎委員】  私、確認だけですけれども、今の話を聞いておそらくわかりやすくな ると思いますが、6ページ目の既存資料等の(2)の記載の解釈は、別に3ページ目のとこ ろで既存資料等に該当しないとほんとうに言えるのかどうかというのも、ちょっと読み 直してみるとよくわからなくて、言われたように、今後、診療の中で得られるサンプル ではなくてデータ、当然診療のために使われる、あるいは目的として得られるものです から、その解釈としては、既存資料等のこの6ページ目の記載のとおり解釈できるので はないかと、読み返してみると思われます。そういう意味で、ただ、こういう事例が実 際にあるようでございますので、その辺をはっきりさせるということでこの資料につい ては特段の書きかえというよりは、注釈をつけるなり、解釈についてきちんと周知徹底 を図るということでもよろしいのかなとも思いましたが。 【位田委員】  1つ私も確認なのですけれども、この3ページの一番下の検討のポイ ントというのは、倫理審査に係る部分だけなのでしょうか。つまり、11の(2)が適 用されるということは、基本的には同意が必要だけれども、同意がとりにくい場合には 匿名化されているということであり、それに該当しない場合には倫理審査をするという、 そういう話なのですけれども、その全部が適用されるということで考えてよろしいです か。つまり、最初に同意はとるように努力をしましょうという話から始まるのでしょう か。 【吉川課長補佐】  今の位田委員のご質問につきましては、まず、その既存資料等の 提供機関というのが、いわゆるここの指針でいう研究機関、それから研究者等といった ような定義から外すということになっておりまして、いわゆる倫理審査であるとか研究 計画の承認であるとか、機関なり研究者に求められている責務というのがそこは適用さ れないということになっております。ただし、1つ、指針の11というのは、それはあ くまでも研究者や研究機関に該当はしないのですが、資料の提供機関に対しての規定が ございまして、ここで資料の提供機関が何をすべきか書かれており、資料を提供する際 には、提供者の同意を得ることを原則としています。その同意が得られない場合につい ては、匿名化をする、それからその他、倫理審査委員会の審査を受けた上で、その条件 に合致しているかどうかご判断をいただくといったところがございますけれども、その 部分のみが適用してくるということになってございます。 【位田委員】  すみません、ちょっとよくわからなかったのですけれども、既存資料 の場合には、もう既に資料がとられているので、研究機関であれ、そうでない場合であ れ、同じだと思うのですけれども、だから、さかのぼって同意というのは非常に難しい。 それを前提にしてどういう例外的な取り扱いをするかということだと思うのですが、今 回の場合には、とる時点で使うというのがある程度わかっているケースも想定されると 思うのですね。そうすると、その時点でやはり同意をとるというのが本来の形なのでは ないか。11の(2)は、基本的にそういう立場に立って書かれているものだと思うの で、11の(2)の(2)以下が適用されるというのだったら、まだわかりやすいのですけ れども、そうじゃなくて、11の(2)が全部適用されるとなると、同意がとれるとき にはとっておきなさいというのがまずあって、それが難しいときには連結不可能匿名化 にしなさい、もしくは対応表を外しなさい、個人情報保護法でいえば連結不可能にしろ ということがあって、その上で、それ以外の場合に、匿名化に該当しない場合は(2)を適 用するということですから、そこでは倫理審査が要りますよという話ですよね。ですか ら、それに全部引っかかってくるんだったら、最初から同意が要るという話で理解して よろしいのですかということなのですが。 【吉川課長補佐】  基本的には、同意をとっていただくことがあくまでも大原則にな っておりますので、もちろん、同意がとれるものは同意をとっていただくということに なろうかと思います。 【位田委員】  そうすると、少しシナリオを考えてみると、ある先生がこれから疫学 研究をやりたいので、今後、あなたの病院に来られる患者さんがいたら、そのデータを 下さいとおっしゃっているときには、その病院じゃないかもしれませんが、何かデータ が来た場合には、そのデータを提供した人の同意がその時点で必要だというふうに理解 していいのですね。それで、もう集まっているものについては、先ほどの議論と同じで、 既存資料に入ってしまうので、それは構わないと思うのですが、あらかじめ今度こうい う研究をやりましょうねと言っている場合に、ここに当たるはずですので、それがだか ら既存資料等でないというケースのある意味では典型的なものかなというふうに理解し ていたのですが、そこはどうなのでしょうか。そこまで同意を求めるというほうが研究 者の方にとってはいいかという、その辺の問題だと思うのですが。 【矢崎座長】  そうですね、どうですかね、この件に関して。 【丸山委員】  位田先生が主張されるというか、基本線だとされている、原則は同意 をとる、それがだめなら匿名化、だめならこの(2)、(3)のという要件の適用の仕方で、原 案はこの11の(2)をすべて適用ということでお考えなのじゃないかと思うのですが。 【位田委員】  いや、それだったら構いません。 【丸山委員】  だけど、現実には、特に既に得られているものについては難しいとい うことで、このような答えになると思います。 【矢崎座長】  既存の場合は、データの場合、同意をとるのは極めて難しいので、既 存のこの利用が書いてあるのですが、データだけを用いる場合には、この11の(2) で、困難な場合にはこういうようなことをちゃんと踏んでくださいということで、そう いう意味で、基本は同意をとるということなのですが、やはり不可能の場合にはしっか りしたステップを踏んでくださいという意味で、11の(2)ということで、位田先生 は、なかなか同意をとるのがこういう研究では難しいのではないかという……。一応、 臨床研究者としては、ここはステップを踏むという心づもりでやるということで。それ では、どうもありがとうございました。  では、次のヒトの試料について、事務局からまず【2】と【3】を続けてお願いしま す。 【吉川課長補佐】  【2】、【3】、いずれも人体から採取された試料、今後、ヒト由来 試料と呼ばせていただきますが、そういったような性格の資料を提供する機関について の論点でございますので、あわせてご説明をさせていただきます。  4ページになりますが、【2】の論点につきましては、ヒト由来試料の既存資料等の提 供のみを行う機関は、指針で定義する研究機関に位置づける必要があるかという論点で ございます。これは、先ほど、いわゆる既存資料でない情報を提供する機関の一定の緩 和を図ることをご議論いただきましたが、こちらは逆に、いわゆる既存資料ということ で、今、一定の指針の適用の除外を受けている提供機関につきましては、逆に研究機関 という位置づけにして、いわゆる研究計画の審査、研究機関の長の許可、こういったよ うな研究機関に科せられる義務等を適用してはどうかということでございます。  事例・問題点を見ていただきまして、ヒト由来試料の既存資料等については、指針の 規定上は、資料提供者の同意があれば、倫理審査委員会の承認や研究機関の長の許可を 得ずに提供することが可能である。ヒト由来試料のこのような取り扱いについて倫理的 に問題はないか。いわゆるヒト由来試料という資料の性格にかんがみて、このような手 続で倫理的な問題がないかということを改めてご議論いただければと思います。  検討のポイントでございますが、事務局から2案ご用意させていただきました。ヒト 由来試料の既存資料等の場合、当該資料提供機関を指針で定義する研究機関に位置づけ て、研究機関の長の責務として求められる研究計画の倫理審査及び許可等にかかわる規 定を適用すべきか。あるいは、研究機関に位置づけないで、これまでどおりの取り扱い ということで、指針の11の(2)のみの適用となりますが、研究計画の倫理審査や許 可といったものはその場合求められないということになりますけれども、その資料の提 供に関して、いわゆる機関内の一部の者が承知をして提供してしまうということではな くて、研究機関の長としてもどのような資料がどこに提供されたのかといったようなこ とを把握していくということで、研究機関の長へ資料の提供に関して報告を求めるべき かどうかという2案をご用意させていただきました。  続きまして、5ページの【3】でございます。ヒト由来試料の既存資料等の利用に際 し、研究対象者からのインフォームド・コンセント及び試料利用の同意の取得に当たっ て、研究者等と資料を提供する者をどのように考えるかということでございまして、こ ちらも図を見ていただいたほうがご理解しやすいかと思いますので、6ページの下のほ うになりますが、図の2、研究開始前に採取されたヒト由来試料の利用手続ということ でございまして、ここに3つの者がございます。一番下に研究者等、それから研究者等 が資料提供を行う者に依頼をし、その提供を行う者のところで研究対象者から資料の提 供をお願いして、研究対象者から、左側になりますけれども、まずは提供にかかわる同 意というのは、資料提供を行う者が取得をすることになってございます。しかし一方で、 右側、点線矢印と、その下に研究者等へ向かって実線の矢印がございますが、このとお り指針の7に基づくインフォームド・コンセント、それから指針の10の(2)という ところに試料の利用の同意というのがございまして、これはヒト由来試料の同意という ことになりますが、こちらを利用する際の同意というのも疫学指針では求められるとい うことでございます。このように図になりますと、実際のところは、資料提供を行う者 が研究対象者に資料の提供の同意とあわせて試料の利用もしくはインフォームド・コン セントの説明といったようなところを事務的な手続を行うことになることが多いと想定 されますが、実際のところ、同意を取得する者は、いわゆる研究者等というものになっ てございまして、この資料提供を行う者は、指針上では研究者という位置づけにはなっ てございませんので、こういったような事務的な手続はいたしますが、最終的な同意、 例えば同意の文書のあて先は、依頼をしている研究者等にあてて同意を取得するといっ たような手続の流れが行われているということが想定されます。  資料の5ページに戻っていただきまして、事例・問題点でございますが、A病院で保 存されていた過去の診療で得られた組織を、B大学が実施する疫学研究に提供すること となりました。この場合、指針の7の(2)(1)イに基づくインフォームド・コンセント、 それから指針10の(2)に基づく試料の利用にかかわる同意については、指針で定義 する研究者等が取得することが求められていますけれども、この研究対象者へのアクセ ス、いわゆる住所、電話番号といったようなところを把握しているのはA病院でござい ますので、その連絡先までもB大学に教えてしまって、B大学から直接となりますと、 また研究対象者等も非常に不審に思うというようなところもございまして、研究対象者 に連絡がそういった意味で可能であるのは、研究者等という定義に該当しないA病院の 者でありますが、同意書の配布、それからインフォームド・コンセントの説明というの はA病院で実施をいたしまして、同意書のあて先はB大学の研究所あてに取得をすると いったようなことを行うということでございます。  指針で定義する研究者等に該当するB大学の者ではなくて、いわゆる研究者等に該当 しないA病院の者がこういったような同意取得の手続を行うということになりますけれ ども、このような事務手続を踏んだ上で、最終的には研究者等にあてて同意を取得する ということであれば、それはいわゆる指針の規定との整合性は図られているというふう に考えていいのかどうかということでございます。  現行につきましては、先ほどの図でご説明をしたとおりでございまして、その下の検 討のポイントでございますが、先ほどの【2】の方向性に合わせて、やや考え方が2つ あるということで、2つのバージョンをご用意させていただきました。まず最初の○の ほうでございますが、先ほどの【2】で、いわゆるヒト由来試料の既存資料を提供する 機関を研究機関に位置づけるというようなご結論が得られた場合につきましては、この ように考えたらどうかというのでございますが、まず最初は、研究機関に位置づけられ たのであるから、そこに所属する者についても研究者等に位置づけるというような整理 でよいかどうか。ただし、この場合に、指針の6、7ページ目に指針の抜粋がございま すが、いわゆる研究の実績報告であるとか、それから、何か起こった場合には倫理審査 委員会に報告する、それから指針の中止などを倫理審査委員会が決定する、こういった ような事項がございますけれども、こちらのほうまでは、いわゆる資料の提供機関につ いては求めないということでよいかどうかということでございます。  2バージョン目といたしましては、2番目の○でございますけれども、逆に【2】で 研究機関に位置づけないというようなご結論をいただいた場合につきましては、いわゆ る機関の者についても研究者等に位置づけないという整理でよいかどうか。ただし、先 ほど申し上げましたとおり、同意書の取得の手続については、いわゆる研究者等という ような定義に該当しない者が事務の手続を行いますが、最終的に同意のあて先といった ようなものを研究者等に出していただくということで、特段、そこは整理ができている と考えてよいかどうかというところでございます。  以上でございます。 【矢崎座長】  それでは、ヒトから採取されたサンプルで、既存資料等に該当する、 しかも、その提供のみを行う機関の位置づけでございますが、1つの考えは、研究機関 として位置づけるのか、あるいは研究機関に位置づけせずに研究機関長が責任を持って 判断すると同時に報告にとどめているということなので、極めて大きな選択肢になって いるかと思いますが、いかがでしょうか。 【中村委員】  自治医大の中村でございます。結論から先に申し上げますと、私の意 見は、研究機関に位置づけずに研究協力者というような形が妥当ではなかろうかと思っ ております。私自身は、ここ数年、プリオン病、クロイツフェルト・ヤコブ病等の疫学 研究を行っておりまして、実際にこれは疫学研究と少しずれるかもしれませんけれども、 全国の医療機関から血液等の提供を受けまして、プリオンたんぱく遺伝子の解析を、こ れは東北大学の北本教授のところでほとんどすべて行っております。その場合に、当然 のことながら、患者さんあるいは家族からは同意をいただいた上で、検体が北本教授の ところに送られてくるわけでございますが、そのときに、個人情報を保護するというこ とで匿名化されて送られてきております。その場合に、患者さんあるいは家族の方から の同意書については、それぞれの病院の主治医あて、あるいは病院長あての同意書とい うことで、病院でとっていただいて、それは当然病院で保存していただきますけれども、 今度は主治医から、患者あるいは家族の方から同意がとれておりますという報告書をい ただくような形になっております。そういった位置づけにしておりまして、それぞれの 医療機関というのは研究機関とは私どもも考えておりませんし、逆にそれを、研究機関 ということで倫理審査を経た上でプリオンたんぱく遺伝子を測定しようということにな ると、これは非常に煩雑な話になるのではなかろうかと考えております。そういう意味 では、私自身は、検討のポイントの後段を研究機関に位置づけずに、なおかつ、同意文 書につきましても、研究者ではなくて、その方が、当該患者あるいは疫学研究の対象者 が関係している機関の長あての文書といったもので構わないのではなかろうかと考えて おります。  以上です。 【矢崎座長】  ありがとうございました。その場合は、ここの事例・問題点にあるよ うに、研究機関で位置づけていない場合には、研究機関長の許可を得ずに勝手に、匿名 化されるとはいえ提出することがないように、今の先生のお話では、長にしっかり報告 を義務づけるということでよろしいのでしょうか。 【中村委員】  はい、そういう形になると思います。 【矢崎座長】  はい、どうぞ。 【森崎委員】  今のコメントで、中村先生のご意見でちょっと気になると申しますか、 私がちょっと理解不足なのかもしれませんが、資料あるいは試料、サンプルの受け渡し という場合の提供の機関について、今、お話しされたような事例は、この文言、あるい はこれまでの指針から言うと既存資料等には当たらないのではないか。つまりすなわち、 診療やほかの目的で用いるためにとる、あるいはとられたものではなくて、新たにとる 場合に、資料の提供だけは行うけれども、既存資料でないというふうに解釈をすると、 現行の指針によると研究者と見なして、その施設で審査を受けて承認を受け、さらに実 際に資料を用いた研究を行う実施機関との共同研究を行うという前提の計画になるとい う理解がされるようにも思いますけれども、その問題点は、もちろん私はあるのではな いかと感じますけれども、その辺はいかがでしょうか。 【中村委員】  多少、プリオン病の例が適切でない側面がございますけれども、これ は専ら研究のためにやっているのではありませんで、患者さんに対する診断といったよ うな意味合いも含まれております。すなわち、プリオンたんぱく遺伝子の変異があるか どうかということで、個発性のクロイツフェルト・ヤコブ病なのか、それとも家族性の クロイツフェルト・ヤコブ病なのかということを判断しまして、結果については当然主 治医のほうにお返しをして、それを主治医から患者さんあるいは家族にもお返ししてい ると思います。そういう意味では、例としてはちょっと不適切なところがございますが、 私としては、申しわけありません、ほかにいい例が思いつかなかったもので、自分の例 を申し上げているところでございますが、いずれにしましても、そういった形で、もち ろん出た結果につきまして、当然私どもとしては、匿名化されておりますけれども、疫 学データとして利用させてはいただいておりますし、その件につきましても、一応結果 については、疫学データとして使用するということも含めて患者さんあるいは家族の同 意は得てはおります。 【矢崎座長】  今の点は、既存資料に該当するかどうかということですね。これから プリオン病の患者さんの資料をこういう目的で集めましょうという研究計画だったら、 これに当てはまらないんじゃないかという。 【森崎委員】  そういうことでございます。これはプリオン病に限らず、そういう事 例は少なからず今後も起こり得ると思いますし、既存の資料、サンプルはもちろんのこ と、今後についても継続して行うということは当然考えられるのではないか。  それで、ちょっと戻って申しわけないのですけれども、先ほどのサンプルではなくて 情報だけに関しても、何か追加をして情報を求めるというときには、私の理解では、既 存資料でないので、研究機関とみなされるというように解釈しておりますけれども、そ の辺も研究の内容によっては現行のままでいいのか、すなわち研究者としてみなされる べきなのか、それとも、先ほど協力者とお話しになりましたけれども、野放しに、自由 にできるというのではなくて、研究者等と違う形の立場というものも必要な事例がある のではないかと感じておりましたが、ちょっとその辺も含めて、今の事例は確かに既存 資料かどうかという問題はございますけれども、その辺も考える必要があるんじゃない かと思ってコメントいたしました。 【矢崎座長】  最初は、既存という枠組みでヒトの場合にはやらせていただく。既存 でない場合には、やはりしっかり研究計画に基づいてしっかりしたインフォームド・コ ンセントをいただくということになるかと思います。今の後段のお話は、もう研究計画 が定まって、既存資料としてやっているけれども、こういう計画で情報をいただきたい のだけれども、それは特別に研究の目的で採取するのではないけれども、一般診療の過 程で上がってくるデータの、こういうものはいただけませんでしょうかという、そうい うご質問ですよね。これはどういうふうに理解していましたか。 【吉川課長補佐】  先ほどの森崎委員のご質問に関しましては、2の【1】の議論で ございまして、いわゆる既存資料でないということで後から依頼を受けて、それがあく までも研究の目的で取得をするということではなく、研究の目的でないものが元の取得 の目的である場合、つまり、診療情報のように、あくまでも当初の目的は研究の目的で はないけれども、それを二次的に利用、転用するといったような場合は、先の2の【1】 に該当するものでございます。 【永井委員】  永井ですけれども、この辺は、研究推進の立場と個人情報保護あるい は倫理のどちらに非常に重点を置くかということの兼ね合いだろうと思うのですけれど も、例えば、ある資料で、前もって全部手続を踏んで研究をしていて、ある結果が得ら れた。それを別のグループで確認したいということが起こってくるのですね。Aの集団 で得られた結論をそれ以外でも蓋然性があるかどうかということ。そうすると、似たよ うなサンプルを集めている人たちに働きかけて、そのサンプルをいただけませんかとい うことは起こると思うのですね。そういうときに、研究計画から全部審査していると、 えらく時間がかかってしまう。そうすると、もうちょっと簡略化できないかということ で、多分こういう規定ができているんだと思うのですけれども、外国の例なんかがどう なっているかとか、その辺を参考にしていただいて、研究推進という立場からですと、 私も2のほうがいいかなという気がするのですけれども、長には届けるけれども、それ はあくまでも提供であって研究機関ではないというほうが、研究推進の立場の人には歓 迎されるだろう。しかしそれは、外国の例も少し参考にされたほうがいいんじゃないか なという気がいたします。 【丸山委員】  4ページの問題で、研究者と、あるいは研究機関というふうに扱うと、 小さな診療所からサンプルをもらうときにも、診療所で機関の長の判断、機関の長は判 断して当然なのですが、倫理審査委員会を設けて審査ということになりますから、ちょ っと無理なんじゃないかと思いますね。今の先生方の意見、基本的には研究機関と位置 づけない、あるいは研究者等と位置づけないということなのですが、必ずしも研究者の ためというばかりでなくて、実際の運用のこととか考えますと、仮に倫理委員会がある ような大きな病院でも、この問題のようなものが、匿名化あるいは提供というだけで倫 理審査に上がってくると、倫理委員会の負担の点でも動きがとれなくなるような感じが いたします。そういう意味で、やはり研究機関に位置づけないということが望ましいの ではないかというふうに考えますが。 【西田委員】  私は、保健所の立場なのですけれども、保健所では、今まであまりヒ ト由来試料を提供してほしいと言われたことはなくて、情報的なものを提供してほしい と言われたことはありますけれども、今後、ヒト由来試料の提供という話も出てくるか もしれませんけれども、結論から言いますと、保健所で研究機関に位置づけられて、か なり責任も重いような状況で、倫理審査というようなことになると、やはり受ける方と しては受けづらいというのが現状です。やはり研究機関に位置づけないで、ただし、例 えば保健所でやっている何かの健診の血液資料を提供する場合、その同意については、 やはり保健所の職員が丁寧にやることについてはやぶさかではありませんけれども、や はり【2】のやり方でやるのであれば、協力できる部分というのは多いのかなというふ うに思います。前段のほうだと、なかなか荷が重いということで、逆に協力できないと いうふうな回答をされてしまうケースが多いのではないかなというふうに思います。 【矢崎座長】  そうしますと、やはり既存資料等に該当するヒトのサンプルを提供の みする機関は研究機関として位置づけない。しかし、研究機関の長の責任を明確にする。 【西田委員】  それは当然だと思います。 【矢崎座長】  それで、2の【3】ですが、そうしますと、位置づけないときには、 今、西田先生が言われた、要するに提供する機関が責任を持ってインフォームド・コン セントを可能な限りして、資料をサンプルとともに同意書を提供するということができ るということで、そういうふうにまとめたほうが疫学研究の推進に役に立つのではない かということですが、その場合の隘路(あいろ)とか課題というのはどうしたらいいで しょうか。 【位田委員】  おそらく重要なのは、ちゃんと同意がとれるかどうかという話であっ て、だれが同意をとるかという、特に疫学研究なんかの場合には、だれが同意をとるか という話はその次の問題じゃないかなという気がします。実際には、この6ページの図 でいえば真ん中の資料提供を行う者という、お医者さんならお医者さんが、患者さんも しくは健康診断に来られた方と話をしながら同意をとっている。むしろ、その同意をと っているということのほうが重要で、確かに研究だから研究者が説明をして同意をとる というのが理想的ではありますけれども、そこにあまりこだわってしまうと、この事例 で出てきているような、少し交錯したような形もあるので、先ほどちょっとアイデアが 出てきました、例えば研究協力者のような形を置いて、研究計画の中には研究協力者も しくは研究協力機関というのが出てくるけれども、同意はその研究者が直接ではなくて も、研究協力者もしくは研究協力機関のレベルでとって、それが報告されるという形で、 それほど問題はなくなるんじゃないかなという気はするのですけれども。 【小幡委員】  私も、研究者と位置づけますと、倫理審査委員会にかけなくてはいけ なくて、小さいところなど非常に大変だというのは理解いたしますので、それは必ずし もそうでなくてよろしいと思うのですが、ただ、情報の流れは、一応ともかくその機関 に来て、そこから他に提供されるという流れに行かざるを得ないので、あて先とか、研 究者とかするのは無理、つまり、同意書については、そこでまず情報がその当該機関、 協力者として位置づけるとかいうのは1つの案だと思いますけれども、単なる経由では なくて、情報としてはそこに一たん発生してしまいますので、そこから外に出すわけで すね。そうすると、そこの研究機関の長は、やはりかなり大変なんだというか、きちっ と把握していないと自分の責任になりますので、しかも、行政機関個人情報保護法の場 合は、しっかり研究機関の長に全部義務がかかってまいりますが、民間の場合は、そう でない研究の場合ということもあって、そこのバランスが悪いのですね。ですから、そ この両方についてかかわるような形で、やはり疫学研究について研究機関の長がここで どういう役割を果たさなければいけないかということはきちっとしておかないとまずい と思いますし、ともかく一たん情報が入りますので、あて先が研究者ということはあり 得ないと思います。ですから、そこら辺はちょっと整理が必要だと思います。 【矢崎座長】  どうもありがとうございました。今までのご意見を拝聴しますと、と もかく、従来の平成16年の規定では、研究者がインフォームド・コンセントを対象者 からとりなさいということになっていて、私の理解はそれでいいわけですよね。ところ が今回は、まさに今おっしゃられたとおりで、研究者が実際の資料を提供する人を越え て個人に、対象者はもうはるか遠いところから同意書というのはとても難しい。ですか ら責任の所在も明確でないということで、おっしゃられるように、まず資料を提供する ところが全責任を持って同意書すべてをとってから提供するということは皆さんのご意 見なのですが、しかし、西田先生みたいなところはいいのですが、この検討のポイント は、最後に、実施することは可能と考えてよいかどうかというのは、そういう提供する 機関にそういうことを行う能力があるかどうかということを指しているのですか。それ 以外の意味でしょうか。 【吉川課長補佐】  少し資料の説明が不足していたと思うのですが、能力というか、 実質上の指針の解釈として、研究者等が同意をするということになっておりますので、 しゃくし定規に解釈をすれば、この矢印が研究提供者を通過して研究者といったところ に向けて同意を受けるというような整理の仕方でいいのかどうかということを事務局の ほうでご提案をさせていただいたのですが、今、委員の先生方のご意見をお聞きします と、そこはまず一たん、資料の提供を行う機関で責任を持って同意を受け、その上で研 究者に向けて提供する、そういったようなやり方が手続的には望ましいのではないかと いったようなことでございまして、いわゆる6ページの図2で、点線で書かれておりま すところは、むしろきちんと実線というような形に位置づけて、資料提供を行う者が責 任を持ってやるべきではないかというようなご意見をちょうだいしたと思っております。 【矢崎座長】  それはいいのですけれども、この、実施することは可能と考えてよい かと、「は」と書いてあるから、そういう質問だったのですけれどもね。そうでなければ、 もうそれで結構ですけれども。 【吉川課長補佐】  すみません、解釈としてそういうことを考えてもいいかどうかと いうことだけだと思います。 【丸山委員】  5ページから6ページの議論に今移っていますね。大体、4ページは 「研究所にしない」で、もう片がついているということで。5ページから6ページの議 論の前提として、どこからお話しすればいいか、5ページの真ん中に現行というのを書 いていますね。現行とありまして、ヒト由来試料の既存資料等を利用する場合、指針で 定義する研究者等は、疫学研究倫理指針の7(1)(1)イまたは7(2)(1)イに基づき、 対象者からインフォームド・コンセントを受けることが求められるというのですが、こ れはそうじゃないでしょう。この同意がないから指針の10(2)で人体の既存資料に ついて、その施設内で研究のために二次利用が必要なとき、あるいは、11(2)で施 設から外へ出すときに、その際にまた改めて同意をとるか、匿名化するか、それぞれで 規定された要件を満たすかしなければならないということですから、7の要件が満たさ れてないというのが既存資料の特質なのですね。だから、7の要件の充足の仕方を議論 する必要はないと思うのです。  そうすると、既存資料が当初得られた場所というのは、健診機関とか診療機関が多い でしょうから、そういう人たちで同意をとるか、あるいは研究者で同意をとるかという ことについて、7を適用すると研究者で同意をとるということになるから、ここでお書 きのような問題が出てくるのですが、既存資料の場合、7がないからこのややこしい1 0とか11の規定があるのですね。だから、ここでおっしゃっているところの問題とい うのは、ほとんどが解消してしまうと思うのですね。言わんとしていることを理解して いただけたでしょうか。 【矢崎座長】  研究対象者からインフォームド・コンセントを受ける場合に、指針の ほうでは、研究者等が対象者から直接とることになっているのですが……。 【丸山委員】  ええ、7はそうなんです。 【矢崎座長】  7がそうなのですけれども、今回はそれを位置づけない、提供のみす るのは位置づけないというくくりですので。 【丸山委員】  ええ。それと、ここで7が出てきていること自体、ちょっと7の出番 をわきまえてないと思うのですね。7で定められた要件が満たされていないから既存資 料なのです。目的外利用なのですね。人体由来の既存資料が10の規定で、既存資料と 書いていますけれども実は目的外利用というのが11の(2)なのですね。 【矢崎座長】  私の理解では、もしその資料を提供する機関が研究機関として位置づ けたら、この指針の7に入るわけですね。だけれども、今回は、西田先生が言われるよ うに、提供では、インフォームド・コンセントはとるけれども倫理審査なんかは受けら れないということですので、ここを研究者等に位置づけない、提供機関を。そういう議 論で、そうしますと、具体的には指針の中にまた文章として入ってくるわけですよね。 だから、丸山先生の意見を十分にしんしゃくして、この指針の見直しのときにそこをは っきり明記すれば、そういう誤解というか……。 【丸山委員】  7というのは、研究利用のためのインフォームド・コンセントの要件 を定める規定なのですね。ですから、それが得られていない資料が研究利用の対象とし て考えられる場合に、どのような要件が満たされたときに研究利用を認めて良いのか、 が問題になる。それで指針の10のほうは、資料が得られたところでその資料を使う場 合、それから指針の11の(2)が先ほど問題になりました外部へ提供する場合ですね。 だから、既存資料の問題を議論するのであれば、7の問題というのは出てこないという か、7がないから10や11が問題になる、7があれば、7の要件が満たされていれば、 この10とか11のややこしいところは逆に論点となってこないということだろうと思 うのですが、おわかりいただけますか。 【矢崎座長】  ちょっと議論を十分に把握してないかもしれませんが、今の現行のま まですと、要するに問題点がありますように、西田先生が協力したいと思っても協力で きない。 【丸山委員】  いや、それはできます。現行のままですから、先ほどの4ページのと ころで研究者等としない、研究機関等としないというのは現行の規定の趣旨を変えない ということですから、このままでいいのですね。 【矢崎座長】  そうしますと、疫学指針の中との関係で、ちょっと僕は十分に把握で きないのですが。 【小幡委員】  現実には丸山先生のようなお話になるのだろうと思うのですが、既存 資料の場合はほとんど新たにもう既にもらっているものですから、同意をとることが実 際上難しいという、そういう状況だということを想定してのお話だと思うのですが、一 応、この従来の指針の11を見ますと、既存資料の定義ですが、既存資料であっても、 ともかく同意を得るということは一応原則にしているんですよね。でも、だめな場合は これでいいよとなっていて、一番最初の原則のところのとり方の話で、実際には自分が 研究を行わないところが同意をとるときにどういうとり方をすればよいかという議論だ と思って私は理解していたのですが。 【丸山委員】  その場合の同意というのは、診療・健診機関が研究機関に研究利用の ために提供することでよろしいですかという同意を、当初の患者なり健診対象者からと るのが原則だということですね。それがとれない場合、匿名化したり、いろいろな例外 を適用する。それは11の問題なのですよ。だから、もしそれで、当初からうちの健診 機関で採取された血液の一部なりデータの一部を何々科学院に提供しますという同意が、 7の規定を満たす形で、指針の7のどれかの要件を満たす形でとれておれば、その場合 はもう11の問題が出てこないのですね。そういうときは、共同研究機関になって、診 療機関・検診機関と研究機関が共同研究をする形になって、他機関への資料の提供とい う、当初、診療目的なり健診目的なりでとられた資料を研究目的のために第三者機関に 提供するという問題が出てこないのです。 【小幡委員】  ですから、確かに直接的に7ではないと思うのです。思うのですが、 要するに、インフォームド・コンセントのことは7で書いてあるからということで出し ているに過ぎないような。 【丸山委員】  でも、同意のことは11にもちゃんと書いてあるので……。 【小幡委員】  同意ということでね。ただ、ここが非常に簡単なので、現実にとると きを想定するということで7を引いていらっしゃると。おっしゃるように、既存資料で すから、7の状況ではないと私も思います。だから、資料のつくり方として7の引き方 をご注意されれば。 【矢崎座長】  ありがとうございました。確かに7は、先ほどから、インフォームド・ コンセントをとるには対象者と直接接する方にとってくださいと。その接する方が十分 に背景にある疫学研究を理解した上でとってください、しかし研究者と位置づけないけ れども、十分理解して、責任を持って対応してくださいということがこの見直しの基本 で、ですから、そういうことでまとめさせて……。ちょっと議論が錯綜して申しわけあ りません。そういうことで一応委員の方は理解していただくということで、それでは、 見直しの方向性というのをもう一度まとめさせていただきまして、また次回、議論をい ただくということでございます。  時間があと残り少なくなりましたけれども、第3の課題についてちょっと議論できれ ばと思いますので、お願いできますか。事務局のほうから課題3の。 【二階堂専門官】  では、課題3を説明いたします。課題3は、若干課題1とも重な る部分もあるかと思いますけれども、疫学研究の中には、必ずしも倫理審査委員会の付 議を必要としないものがあるのではないかという論点でございます。この具体的な事例 としましては、前回も先生方からご意見をいただきましたように、例えばデータ解析を 行う機関、これがほんとうに倫理審査委員会の付議を必要とするのかということがあり ます。次に、例えば教育目的で、学生の皆様が無記名のアンケート調査を行うような場 合、これも果たして倫理審査委員会の付議が必要かという具体的な事例があります。  現行の指針なのですけれども、現行の指針としては、研究者等は、疫学研究を行う場 合には、その機関の長の許可を得なさい、そしてその機関の長は、倫理審査委員会の意 見を聞きなさいと記載されております。ここでの検討のポイントなのですけれども、先 ほど申し上げましたような事例、ほんとうに必要かどうかということ、そして、必要な いとなった場合、それを機関の長が知らないような形にしていいのか、この2点が検討 のポイントとして挙げられるかと思います。でも、ここで新設する規定の骨子を書いて ございますけれども、例えば、機関の長が研究者から研究計画書の提出を受けまして、 その内容がデータ解析のようなものである場合、また教育目的の簡単なアンケート調査 のようなものである場合は、もう機関の長の判断として、倫理審査委員会の付議を必要 としないような規定を設けてはどうかということでございます。  参考として、まず1点目の参考としましては、ゲノム指針の中にQ&Aをつけてござ いますけれども、このQ&Aの中で、情報のみの情報処理機関でも、倫理審査委員会を 受けなければなりませんかという質問に対して、匿名化された試料の受託解析のみを行 い、というところで、研究を行わない場合は、倫理審査委員会の設置は本指針では求め ていませんとしております。  次の参考2なのですけれども、これは以前、厚生労働省のほうで研究が行われまして、 実際に疫学研究をやっているような機関に対してアンケート調査の結果、学生実習など の倫理審査委員会の申請の有無に対して、59.5%の講座が倫理審査委員会の申請を義 務づけておらず、また、11.1%については、いや、もう倫理審査委員会の審査は必要 ないんだと回答している現実がございます。  以上でございます。 【矢崎座長】  この件についてはいかがでしょうか。  これは連結不可能な匿名化された情報だけを解析するというケースを言われているの ですね。 【二階堂専門官】  ゲノム指針のQ&Aでしょうか。 【矢崎座長】  いや、ここの論点3の内容。 【二階堂専門官】  ええ、具体的な事例の1つ目はそうなのですけれども、またほか に教育目的のようなものもあるのではないかと掲げております。 【山縣委員】  山梨大学の山縣です。私もこの件に関しては、当初から非常に関心が あることで、例えば海外の、アメリカの大学なんかの人を対象とする倫理指針の中には、 除外項目として、教育にかかわることに関して除外されているものがほとんどだと思い ますので、むしろここにきちんと明記すべきであろうと。これは対象者が大学生という よりも、むしろ地域の中で、疫学実習は地域の方々に調査をしたり、学校保健の現場で 生徒さんたちに調査をしたりということが実際にあるわけで、ただそれは教育目的であ るということで、そういったようなことは除外という方向で私はいいのではないかとい うふうに考えております。 【位田委員】  私もこの事例・問題点の2つ目のポツ、つまり、教育目的というのは 除外していいのではないか、それも山縣先生のご意見と同じで、明記して、教育目的で あればということで除外してもいいかと思いますが、他方で、上の○のほうは、一律に 除外していいと言えるかどうかというのは、まだ若干疑問があります。というのは、確 かに日本では自然科学の、特にヒトの試料を扱う研究についての倫理審査というのは非 常に厳しく言われますけれども、外国では、人文社会科学の研究についても倫理審査が 必要だというところがありますので、一律にデータの統計処理のみだから除外していい というのは、少し議論する必要があるかなというふうに思っています。 【矢崎座長】  この件についていかがでしょうか。  はい、どうぞ。 【川村委員】  その下のほうに、検討のポイントの中にありますように、研究者とい うのは、プロトコールの作成、実施、データを集積して分析、さらに論文を執筆・公表 という、そういった一連のプロセスに直接かかわる人は、いわゆる中核メンバーであろ うと思いますから、こういう人たちは、やはりきちんと研究者としての自覚を持って倫 理審査も受けるべきだと思っています。しかし現実に、かなり解析というのが重要なポ イントを占めるにもかかわらず、現実には、解析、データセンターをやっているような ところがきちんと倫理審査を受けていないことがしばしばあるという現実があるもので すから、それで、ちょっとこういうことを提案したのですが、もし受託であるならば、 受託の規定ってたしかありますよね、委託機関としての。そういうのを準用するような 形にして、これは受託であるということを明確にして、確かに研究者の中には名前を連 ねている、ギフトオーサーシップといった側面もあって名前が入ってはいるのですが、 実際には中核というよりは頼まれてやっているというような方であれば、むしろ委託と いう側面を明確にして、主任研究者との間できっちりと約束をつくるといったようなこ とも考えられます。  私としては、やはり倫理審査を受けるべき研究者というのは、やはり中核となるメン バーをきっちりと範囲を明文化して、その範囲についてはきっちりやる。それ以外につ いては、どういう関係なのか、どういう位置づけなのかによって変わってくるとは思い ますけれども、委託という立場であるならば、委託者としての条文を適用してはいかが かというふうに考えます。 【矢崎座長】  そうしますと、事例の一番最初にあるデータの処理、統計処理のみを 請け負う機関ということを明記すればよろしいのではないかと。 【川村委員】  研究プロトコールの中で、データ解析についてはだれだれが、あるい は何とか機関が受託して行うというふうに位置づけられている場合は、主任研究者と受 託機関との間に契約書もしくはそれに類する文書で個人情報保護も含めて取り決めをき っちり決めてやるべきではないか。それが明らかな業者であれば多分明確だと思うので すが、現実には、統計処理をかなり専ら行っている研究者もしくはそれが経営するNP O法人がたくさんあります。国立医療センターもたしか外にお持ちだったかと思うので すけれども、そういうところで……。 【矢崎座長】  あれは解析はしないんです。 【川村委員】  失礼しました。研究者であって、ほんとうにデータを委託に基づいて やっている場合はそういう位置づけをはっきりさせるということですが、仮に統計処理 を専らやる方であっても、解析方法についてプロトコールに積極的に口を出していると いう方であれば、やはり研究者に位置づけたほうがいいのかなとも思ったりしておりま すので、そのかかわりぐあいで、ここに書いてあるような研究者の定義といいますか、 中核となる研究者については、定義的なるものを文字にしておいたほうが誤解は少ない かなというふうに考えます。 【矢崎座長】  そうしますと、データの統計処理を行う機関として、できれば研究計 画書に明記して、責任の所在を明確にしてほしいということですね。単に委託を受けた 機関という位置づけよりも、一歩踏み込んで研究計画の中での位置づけを明確にしてほ しいと。  あと、実習などの教育を目的とした、これはよろしいですね。研究ではありません、 データ処理でもありませんので。これはよろしいと。 【川村委員】  実は、京都大学の中の疫学の小委員会では結構議論がありまして、教 育であっても相手に対する影響は一緒だという意見の人がいます。ですので、大分議論 して、まだ結論が出ていないのですけれども、臨床実習をどうとらえるかというのとち ょっと似ているところがありまして、臨床実習でも、例えば患者さんに対して、まああ まり侵襲のあることはやりませんけれども、診察をする、場合によっては見せたくない ところを見せたりするわけですね、無資格の人に。ですから、それとある程度整合性を 持たせる必要があるのかなとも思っておりますし、それから現実的な問題としては、大 学生とか大学院生の教育目的で行う研究というのは、ほとんどがクエスチョネア、質問 票を用いたものがほとんどですので、そういう意味では、血液データを新たにサンプル をとってくるような研究は非常に少ないのです。ですから、そういった面で、研究の質 といいますか、レベルといいますか、そういったものがかなり違う側面があるので、こ のあたりについては、いずれ機会を見てご提示しようとは思っておりますが、扱う資料 の性質などによっても多少変わってくるかもしれないと思っています。私自身はまだ一 定の見解には達していないというのが本音です。 【矢崎座長】  でも先生、この個人情報の定義の整理が既にしてあって、連結不可能 な匿名化した個人情報は個人情報ではないという整理になっていますよね。だから、臨 床実習とは全然違って、数字がだれのものということではないわけですよね。だから、 やはり実習とはちょっと違うと思うのですね、マンツーマンでやったり何かするのとは。 【丸山委員】  最初の指針の適用範囲のところで疫学研究の定義が、後ろのほうの定 義にもあるのですが、人の疾病の成因及び病態の解明並びに予防及び治療の方法の確立 を目的とする疫学研究というものとか、あるいは13の用語の定義の疫学研究から、教 育、実習における活動というのは除外されるように思っていたのですが、そうは言えな いのですか。公衆衛生なり疫学の分野における疫学研究の定義というのは、教育、実習 的なものも取り込むようなものが共通の理解なのですか。 【川村委員】  私どものところでは、学部生の研究はちょっとよく知りませんけれど も、大学院生の行う研究は、教員がやるものと内容的にさして変わらないものですから、 だから、課題研究と称して研究そのものを単位として課しているわけです。そうすると、 それなりに高度なことを、例えば社会疫学でAIDSの研究なんかをやっていますと、 相当センシティブな情報を集めますので、学生だから、じゃ、そういう倫理的な配慮は、 もちろん教育的な配慮と教官の責任は問うとしても、それが教員の研究よりも相手に対 する影響が少ないかというと、そうでもないようなところはあります。 【矢崎座長】  これは個人情報の定義の整理から外れているといっても、やはり問題 があると感じていると。これは個人情報保護法に基づいた改正なんですよね。だから、 個人情報でないものは、ここで決めるということではないと、私は理解していましたけ れども。 【丸山委員】  指針自体は個人情報にかかわるのは9のところで、9じゃなかったで すかね、まとめられていて、それ以外の部分は個人情報でなくても適用されますので、 今お出しになっているのは、無記名で個人情報ではない、先生おっしゃるとおりなので すけれども、指針の対象になる可能性はある。指針の9のところは個人情報に限ります けれども、それ以外のところは適用があるという整理だと思います。 【矢崎座長】  むしろ、個人情報が整理されたので、この辺は比較的行われるのでは ないかということの意味だと思ったのですが、なかなかそうはいかないということです かね。 【位田委員】  私も京都大学の医の倫理委員会で、そんなに数はたくさんじゃないで すけれども、大学院生の疫学研究の審査をしたことがありますが、私は、教育は除外す るべきだと申し上げたのは、意見は変わらないのですけれども、教育は、教育での指針 みたいなのが必要じゃないかという意味で、この疫学研究の指針からは外してもいいの ではないか。実際にその学生が行っているアンケート等の案文なんかを見てみましても、 実は無記名にはなっていないアンケートとか、かなり個人情報という点からも突っ込ん だ質問をしたりするケースもありますので、これはむしろ研究指導されている人の責任 に本来なるべきなので、そこのチェックが甘いと、この疫学研究指針に上がってくるま でもなく倫理的な問題があるということですので、教育は教育で、私はこれから外した ほうがいいと思いますが、別にやはり教育の関係の倫理も必要じゃないかなというふう に思います。 【矢崎座長】  ありがとうございました。  それでは、ここは厚労省と文科省の合同審査ですので、そういう意味では非常に連携 がとれると思いますので、文科省のほうからも、今、位田先生が言われた、疫学研究か らは一応外すけれども、教育のほうから何かテークノートできるようなものを、方策を ちょっと考えていただければということで、ちょっとこの場ではもうこれ以上議論でき ませんので、先ほどいただいた幾つかの意見をまとめて、また検討のポイントに、おそ らく大筋は、統計処理のみを行う機関であっても、できれば計画書に位置づけを明記し てほしいということと、それから教育実習など、特に大学院の実習などには慎重に倫理 的に対応する何かすべを、この中で盛り込まなくてもいいですね、ほかで考えていただ ければということになるかと思います。  そういうことで、時間がもう過ぎてしまって大変申しわけありません。一応、論点3 までを大筋おまとめいただいたということで、今日はこの辺で終了させていただきたい と思います。大変有益なご議論をいただきましたが、さっきの論点を整理した中で、指 針の適用範囲という、一番皆さんクエスチョンの多かった適用範囲についてでございま すけれども、これにつきまして、ここでご議論すると非常にいろいろな意見が出てくる 可能性がありますので、できれば、適用範囲に関してのご意見について事前にお聞きし たいというふうに私どもは考えております。また、あわせてどの指針を適用すべきか判 断に苦慮した事例の収集もしたいと考えています。すなわち、これは疫学研究なのか、 臨床研究なのか、ゲノム研究なのかという、そういう判断に苦慮したという事例の収集 もしたい。それらについて、事務局までぜひご意見をお寄せいただきたいと思いますが、 口頭で申し上げても真意が伝わらない可能性もありますので、事務局から改めてメール などで具体的に少しアンケートをとらせていただきたいというふうに思いますので、ご 協力のほどよろしくお願いしたいと思います。  事務局から今後の予定についてお願いします。 【吉川課長補佐】  本日は多々ご意見いただきましてありがとうございました。次回 の委員会につきましては、11月30日木曜日、4時から6時、場所は、本日と同じ厚 生労働省省議室にて開催する予定でございます。なお、お配りしております紙ファイル の参考資料集でございますが、次回以降引き続き使用させていただきますので、そのま ま机の上に残しておいていただければと存じます。  本日はどうもありがとうございました。 【矢崎座長】  定刻を過ぎて大変恐縮です。本日は大変遅くまで熱心にご議論いただ きましてありがとうございました。これで終了させていただきます。 ── 了 ―― 【問い合わせ先】  厚生労働省大臣官房厚生科学課  担当:情報企画係(内線3808)  電話:(代表)03-5253-1111  (直通)03-3595-2171