06/11/02 第67回労働政策審議会雇用均等分科会議事録 第67回労働政策審議会雇用均等分科会 議事録 日時:2006年11月2日(木) 14:00〜16:15 場所:厚生労働省専用第21会議室(17階) 出席者:  労側委員:稲垣委員、鴨委員、篠原委員、龍井委員  使側委員:吉川委員、前田委員、松井委員、山崎委員、渡邊委員  公益委員:横溝分科会長、今田委員、奧山委員、佐藤委員、林委員、樋口委員 ○横溝分科会長  ただ今から、第67回労働政策審議会雇用均等分科会を開催します。本日は岡本委員 一人が欠席です。今日は出席率が良いということで、ありがとうございました。  それでは、早速議事に入ります。本日の議題は「今後のパートタイム労働対策につい て」です。本日は、前回に引き続き、「今後のパートタイム労働対策に向けての論点整理 (案)」について議論いただきたいと思いますが、その前に、前回の分科会において、松 井委員より要望がありました各種手当の業種別の支給状況について、事務局が資料を準 備していますので、説明をお願いします。 ○高崎短時間・在宅労働課長  説明します。資料No.2を見ていただければと思います。前回出させていただいた各種 手当の支給状況について業種別に見たものです。2ページですが、通勤手当については、 そこにあるような状況になっていて、特段大きな傾向等は見てとれません。  役職手当については、卸売・小売業あるいは飲食店・宿泊業といったパートタイム労 働者がより戦力化している業種においては、相対的に支給状況が高いという状況になっ ています。  3ページです。精勤手当については、欠勤されると困るということなのか製造業につ いて、正社員も含めてですが、相対的に高めに払われている状況です。  家族手当については、特段の特徴的なことはないと思います。  4ページの住宅手当の関係ですけれども、勤務との関係でしょうか医療・福祉の業務 において、パートタイム労働者に対しての手当の支給状況がやや高いということです。  いずれの手当についても、今申し上げた状況については、何となく現実感があるとい うか、それなりの状況が出ていると思っています。以上です。 ○横溝分科会長  ありがとうございました。ただ今の事務局からの説明について、質問等がありました らお願いします。今田委員、どうぞ。 ○今田委員  役職手当のことですけれども、これは、要するに役職に就いている者に払われている のが、例えばサービス業であれば19.9%という読み方ですか。というのは、それ以外の、 例えば家族手当や住宅手当などというのは、当然家族はいるだろうし、住宅も持ってい るかもしれない。家族がいたとしても、要するにパートタイム労働者には払わないとい う趣旨はわかるのです。多分そうなのです。でも、役職手当の場合は、役職に就いてい るのだけれどもパートタイム労働者には役職手当が払われないのですか。そのようにこ れは読むのでしょうか。それともパートタイム労働者で役職の人は少ないから比率とし て少なくなっているのか。その辺を。 ○高崎短時間・在宅労働課長  お答えします。今、今田委員から話があった後者の方でありまして、要するに役職に 就いているパートタイム労働者について払っているかという調査ではなく、ともかく事 業所でこういう手当を支払っていますかという調査ですので、いることが前提での支給 割合ではなくて、事業所全体の中で役職手当というものを支給している事業所の割合だ けが出ているということですので、そういう意味ではパートタイム労働者が役職に就い ている人が少ないから相対的に少なくなっているということもあるということだと思い ます。 ○今田委員  そこのところは、はっきりしないのですね。 ○高崎短時間・在宅労働課長  はっきりしないというか、要するに「事業所において以下の手当を払っていますか。 払っていませんか」という単純な調査です。 ○今田委員  ですから、パートタイム労働者で役職に就いているけれども、その内の2割しか払っ ていない、そういうデータとして読んではいけないということですね。 ○高崎短時間・在宅労働課長  そういうことです。 ○横溝分科会長  では、松井委員、どうぞ。 ○松井委員  同じところの通勤手当について質問します。飲食店・宿泊業のところが、正社員の方 が実施の比率が低いのですが、何か理由や背景など、もしわかれば教えていただきたい のですが。 ○高崎短時間・在宅労働課長  お答えします。私どもも若干気になって調べてみますと、調査ですので、個々の企業 に帰ってまでということはできないのですが、一応出てきているもので見たのですけれ ども、そこのところについては、明確な原因というものが出てきていないということで す。全般的に業種別分類については、最初に申し上げましたけれども、やはり細かく切 れば切るほど当然サンプル数は減っていくという状況がありますので、そこで若干のバ イアス、イレギュラー的なものがあったのかもしれませんし、もしかしたら、飲食店や 宿泊業では正社員はより経営に近い人が多くて、近くに住んでいるということがあるか もしれません。その辺は調査が取れませんので、そういう意味では、原因について少な くとも分析的にここでお答えできるものは、この調査に関しては申しわけないですけれ ども、ないということで理解いただければと思います。 ○山崎委員  企業規模別のものはわかりますか。大と中の差はそれほどないのですか。 ○高崎短時間・在宅労働課長  手元にありませんので、次回、用意したいと思います。 ○横溝分科会長  佐藤委員、どうぞ。 ○佐藤委員  支給しているところだけの比率が出ていますが、残りが支給していないところではな く、無回答がそれぞれ何パーセントかありますよね。 ○高崎短時間・在宅労働課長  一応支給しているか、していないかを聞いていますので、どちらかに付けていただい ているということです。 ○佐藤委員  無回答は外しているのでしょうか。わかりました。 ○高崎短時間・在宅労働課長  すみません、訂正します。無回答は外してあるそうです。 ○横溝分科会長  他にないようでしたら、前回に引き続き「今後のパートタイム労働対策に向けての論 点整理(案)」について議論いただきたいと思います。前回申し上げましたように、次回 の分科会では、これまでの議論の整理案を出したいと考えていますので、本日は、残り の論点について議論ができるだけ終了しますように、議事の進行に協力をお願いしたい と思います。  そういうことですので、前回議論いただいた「2均衡処遇の確保」のうち「賃金」に かかる追加の意見は最後にいただくことにして、まずは、次の論点である「教育訓練」 から意見をいただきたいと思います。教育訓練については、指針において、「短時間労働 者の就業の実態に応じて実施するよう努めるもの」としていますが、教育訓練の種類が さまざまであることや、資料にあるような教育訓練の実施状況および労働人口の減少社 会において短時間労働者の有する能力を有効に発揮できるようにしていくという必要性 などを踏まえて、教育訓練の性格に応じた均等処遇のあり方をどのように考えるか、と いうことについて議論いただきたいと思います。 ○篠原委員  それでは、教育訓練の部分に関して意見を申し上げたいと思います。この教育訓練と いうのは、働くすべての者にとって非常に重要な部分だと思っています。教育訓練をす ることによって、一人ひとりの能力がアップし、本当にプラスになる部分もありますし、 ひいては企業にもプラスになる。最終的には、座長から言っていただいたように日本の 社会にとっても非常にプラスになるということにつながってくると思います。  ここに書いてある通り、日本の人口が減少するというようなことが一方にあり、また 日本の経済の活力を維持するためには、やはり一人ひとりの能力を有効的に発揮するよ うなことをきちんと整えていくべきだと思っていますので、やはりこの記載の通り、本 当に職務に関連性があるものや法令遵守等々の部分については、企業倫理の部分もそう ですけれども、こちらにある教育訓練の部分に関しては、必須とするべきものと考えて います。 ○横溝分科会長  他にありませんか。 ○渡邊委員  少し極論になる可能性がありますけれども、やはり非正規社員つまりパートタイム労 働者というけれども、特に中小企業の場合などは、現場でOJTも含めて相当コーチをや っています。従って、確かに法令遵守などそういうものは、人を雇う場合には当たり前 という以上に、マクロ的に言うと当然なのですけれども、これ以上本題の今後のパート 法の改正に盛り込む必要はないと思っています。  なぜかと言うと、たまたま今朝の日本経済新聞にも出ていますけれども、それから、 これまでの「パートタイム労働法のあらまし」という資料をじっくり見ましたけれども、 十分にこれで満たしているのではないかと。従って、そこまでOJTだ、あるいは法令遵 守の教育をしろ、などということ自体がもう必要ないと。今、特に非正規社員において は、現場でみんなやっていますから必要ないのではないかというのが私の主張です。  あらためて「パートタイム労働法のあらまし」をじっくり見させていただきました。 大変失礼ですけれども、この際じっくり読んでまた理解を深めましたけれども、もうこ れはバイブル以上に行き届いているのではないかというのが、私の主張です。言い方は 悪いけれども、これをまたいちいち箸の上げ下げまで法律でどうこう言う必要はないと 思います。  例えば今のデータで、通勤手当や役職手当、四つの手当のデータを見てみても、通勤 手当は職種によっては飲食業や宿泊業は職住接近の業務ですから、パートタイム労働者 の方がデータでも多くなっているくらいです。通勤手当というのは、この前も言ったの ですが、手当で実費支給ということについては、若干同じ使用者側でも、「では、新幹線 はどうするのだ」という意見も出ましたけれども、それは実態に合っていないです。そ ういうものは少ないですから。それよりも、このデータを見ても手当そのものが今の実 態を反映しているのではないかと思います。例えば役職手当でも、役職に付くと職場で は何もパートタイム労働者に5割以上手当を払えということ以前の問題として、比率で 言ってもこれだけパートタイム労働者に対しても手当は払われているわけですから、中 には2割近くがパートタイム労働者に役職手当が払われている。精勤手当もそうだし家 族手当も、この実態というのはやはりどちらかに払っている。夫婦でこれは夫に払って いるからこういうデータになっているのであって、これ以上家族手当を非正規・パート タイム労働者にも払うべきだというのは言語道断だと思います。 ○横溝分科会長  今、手当のことに戻ったようですけれども。 ○渡邊委員  たまたま手当のことを話題にしましたけれども、全般でもそうなのです。教育につい ては私の主張は少し外れましたけれども。先ほど言ったように、OJTもコーチがきちん とやらなくては、パートタイムで雇えないですよ。 ○篠原委員  今日示していただいた教育訓練というところの下のところには、先ほど渡邊委員から 法令遵守は当たり前だという話がありましたけれども、残念ながらこの調査にある通り、 パートタイム労働者に実施されているのが18%という数字も出てきているので、やはり 当たり前だと思っていただいている企業の皆さま方はやっていると思いますけれども、 全体的に見るとまだ18%しか実施されていないという事実もありますので、やはりこの 部分はきちんと法制化すべきだというのが、こちらの。 ○渡邊委員  法制で囲むよりも、この指針をもう少し奨励したりして、もっと徹底すれば十分効果 が上がるのではないかと思います。 ○龍井委員  何だか、前回のムードを引き継いでいるような議論になっているのですが。申しわけ ないのですけれども、実施を強制することを議論しているのではないわけです。 ○渡邊委員  いや、制度化するということは。 ○龍井委員  あくまでもルール。座長の言葉を使えば、公正になっているかどうかというルールで あって、実施を強制するというのは別の話であって、特に法令については。  そうではなくて、同じ職場で正社員と言われている人が、機会がありながら短時間で あるということを理由にできないとしたら、例えば制度があったとしても、それを理由 にその機会が与えられないというのは不合理ですと。従って、それが不合理だというこ とを、きちんと法制化しましょうということを言っているのであって、すべての項目に ついてやっている、やっていないのレベルで一律にやりましょうという議論では元々な いわけです。 ですから、ルールとしてあるいは公正かどうかという尺度で議論してい ただかないと。今のように十分かどうかという議論ではないと思います。たとえ率が少 ないものであったとしても、そこでルールとして不公正が生じたら、それは望ましくな い、あるいは禁ずるという議論をターゲットにしたいと思うのです。 ○前田委員  教育訓練というのは、ここに計画的、職種・職務別、法令遵守と分けた形で書いてあ りますけれども、実際、企業にとってパートタイム労働者であれ、法令に違反したよう なことをやっていて、それがお客さまや一般に公になれば企業にとっては大変なことに なるわけですので、形は教育だという言い方をしていないかもしれませんけれども、実 態的・結果的には法令遵守がなされるような言い方で指導をしたり、技術を教えていっ たりとそういうことはしているのだと思うのです。  そういうことからすると、やり方も企業がそれぞれの工夫でやっているわけでして、 一律に法令で「こういうやり方をしなさい」と言われてしまうと企業は非常に混乱する。 今までできているものが、また組み換えてやらなければいけないようなことになるので あれば、非常に課題があるというのは申し上げておかなければいけないのではないかと 思いますし、どういう教育、例えばフルタイマーにやっている教育がすべてパートタイ マーにもやらなければいけないのかなど、手を挙げて能力開発的にフルタイマーにやっ ているいろいろな教育を、パートタイム労働者にも声を掛けましょうと言うのか、この 中では非常に不明確です。こういう言い方で法律にされてしまうと企業は混乱すると思 います。 ○佐藤委員  ここのところは、基本的には均衡という話なので、正社員にまずどういう教育訓練を やっているかということがベースになるわけです。これは、法令遵守でも正社員にやっ ているのは4割ですから。正社員にやっていないところも含めて、パートタイム労働者 にやれ、正社員にやらなければいけないという議論ではない。まずは、正社員にどうい う教育訓練をやっているか。  ここで考えなくてはいけないのは、例えば正社員と同じ仕事をしているパートタイム 労働者が、売り場主任に昇進したというときに、正社員に行われているOJTをパートに はやれないといったときに、これをどう考えるかという話だと思うのです。もちろん教 育訓練の内容にOJTもありますので、どの範囲まで検討の対象にするかということは議 論しなくてはいけないのですけれども、基本的には、一つベースになるのが、同じ仕事 をやっている、それで正社員にはやっているがパートタイム労働者にはやっていないと いったときに、これは合理的なのか、そうではないのかという議論だと思うのです。そ うではない部分があるとすれば、それを法律でやるか指針でやるかということは、もう 一つの議論だと思いますけれど。基本的には、例えば同じ仕事にパートタイム労働者と 正社員が就いている。正社員にやっているがパートタイム労働者にはそういった機会が 開かれていないといったときに、合理性がない部分がかなり大きいとすると、そこの合 理性のない部分を取り出して、ランダムにやっていただく仕組みをつくる必要があるか どうかという話なのです。  ですから、別に、正社員の教育訓練についてはこうしなさいということを言うわけで はなくて、その会社の正社員の能力開発のやり方と均衡をとるようにパートタイム労働 者についてもやってくださいと。もちろんどの範囲の教育訓練かということは議論しな ければいけないし、お願いする場合も、法律化するのか指針でやるのかということは、 またもう一つ議論はあると思いますけれども。 ○横溝分科会長  それでは、時間の関係もありますので、「均衡処遇の確保」のうちの「福利厚生」に移 りたいと思います。指針において、「施設の利用について短時間労働者に対して通常の労 働者と同様の取扱いをするよう努めるもの」としていることや、現状としてさまざまな 福利厚生が実施されていること、および資料にもありましたような実施状況も踏まえて、 これもまた福利厚生の性格に応じた均衡処遇のあり方をどのように考えるかということ について、議論いただきたいと思います。 ○篠原委員  先ほどの教育訓練と同じような考え方になると思いますけれども、佐藤委員も言われ たように、正社員はないけれども、パートタイム労働者だけにということでは決してな いということをまず前提として申し上げて、パートタイム労働者だからという理由のみ で福利厚生はだめだということは、やはりいけないのではないかと思います。パートタ イム労働者や正社員ということで分け隔てなく、同じ企業に働く仲間ということで、こ ちらの部分も性格に応じた均等、この福利厚生の処遇をきちんと当てるべきではないか と思います。 ○前田委員  特に福利厚生の部分については、施設の利用などという部分は、ある程度、制度、基 準のようなものがあると思うのですけれども、例えば慶弔見舞金や社内行事への参加な どというのは、大企業であればある程度制度化しているかもしれませんけれども、小さ な会社、日本中のあらゆる企業を思いますと、こういうものが本当に制度化されている のかどうか。この辺もあると思うのです。  そうしたときに、これをすべて同じにしろというようなことになりますと、会社にと っては改めて制度をつくっていかなければいけないなどという負担が出てくるのではな いかと思います。 ○龍井委員  今、慶弔見舞金の話が出たので、そこにコメントさせていただきたいのですが。率直 なところ、どうなのでしょうか。逆にそういうところこそ、実は一番パートタイム労働 者が「パートさん」と呼ばれて同じ働いている仲間と扱われないと一番感じる部分なの です。  労働相談を受けていると、ある程度、賃金のことなどは納得がいったり、不満でもこ の間言われたように自分でもある程度わかる範囲で情報があったりということで、やむ なくも含めて、いろいろな不満はあるけれども我慢したり、あるいは不満を言ったり。 ただ、それで同じだなと働いているのだけれども、身内で不幸があったというときに、 正社員が休めて、隣で同じ仕事をしているのに職務の内容以前に、隣にいて自分は休め ない。慶弔見舞金も同じです。だから、結局こういうところこそ大事にされることの方 が。これはもちろん企業の自主努力でやっていると言われるならそれで良いかもしれな い。でも実態上から言えば、やはりそういうところについては労働基準法の第3条では ありませんけれども、同じく働いている人として、まさに人間として当たり前という極 めて一番ベースのところだと思います。ですから前段に言われた施設利用以上に、ある 意味では人間としてまたは働く一員として扱ってほしいという悲痛な現状を聞いている 立場から言うと、ここはやはり何とかできないものかと思います。 ○吉川委員  教育訓練のところでもそうですけれども、パート労働者本人が教育訓練を受けたくな いと言う人もいるのと同じように、逆に言うとこの福利厚生のところにおいても、本当 に周りの人ときちんとやっているのであれば、これはある意味ではシステムというか、 感情論的な情的な部分も多く含まれてくると思いますので、それを法律で一律にどうこ うという問題ではないのではないかということと、あまりそこにウエートを置きすぎる と全体としての会社の予算がある程度あるでしょうから、「それなら面倒くさいから全部 一律に正社員の方もやめてしまえ」というところまでいってしまうのではないかと私は 思います。 ○龍井委員  これも先ほどの議論と同じで、「すべての人に適用しろ」という話ではなくて、この場 合に例えば施設の利用でいうと、これはたぶん正社員もそうだと思いますけれども、利 用できるチャンスがあるかどうかの機会のことです。だから実際にそれで自分が参加し たくない、利用したくないのであれば、それは正社員も同様に、たぶん制度があっても 運用で今言われたことは実際やられていると思いますが、ただ入り口から最初に「駄目 だよ」と言うのはまずいのではないかということです。ですからそこは「全員が利用で きるようにしましょう」というのは、あくまでも正社員との並び合いで、そこに不公正 があってはいけないし、それはルールの問題だから決められるのではないかと思います。 ○横溝分科会長  松井委員、どうぞ。 ○松井委員  例えば、保養所についてもう少し具体的に考えてみますと、保養所を利用してほしい という従業員については、やはりそこでリフレッシュしてもらいたいと。企業の立場か らすると保養所は今相当な形で売却等がされていますけれども、なぜそれが問題になっ たかというと、暇な人が保養所を使って本来リフレッシュしなくてはいけないような忙 しい人が使えていないということが、企業が保養所を閉鎖する一番大きな理由で、不公 平感があるということです。もちろん、企業のいろいろな形での資産の問題もあって、 そういうことを考えると、言ってみれば割と仕事が楽な方が、機会は同じだと言ったと きに利用されると、本来の目的に資するかどうかと。  反対に私は事務局に聞きたいのですけれど、「福利厚生の目的に応じて」というとき に、ここに書いてあるのはどういう福利厚生の目的として認識し整理しているのかを確 認させていただきたいと思います。 ○高ア短時間・在宅労働課長  性格ですか。性格はまさにその福利厚生の中身によっては施設の利用という話があり ましたけれども、例えばロッカー、あるいは休養所の目的というのはまさに制服に着替 えなければ仕事ができないという意味でしょうから、業務遂行上不可欠な施設というこ とで、その利便を与えるための施設を共用しましょうという意味がたぶんその性格でし ょうし、その反対側にあるものとして、例えば今言った保養施設ということであれば、 それはたぶん仕事を遂行する上の不可欠という性格ではなくて、リフレッシュなのかど うかはともかく、そういう仕事を離れた時点での従業員に対する付加的なサービスを提 供しましょうという性格なのでしょうから、それは私どもとしても、福利厚生によって 中身に応じてすべてが同じ目的のものではないので、それぞれの性格の違いに応じて考 えていくべきでないかということを公益の皆さま方がまとめられたと理解しております。 ○松井委員  社内行事や慶弔見舞金の性格はどういうものですか。 ○高ア短時間・在宅労働課長  それについては企業によっていろいろと位置付けがあると思いますから、それは皆さ ま方で意見なり出していただければと思います。 ○横溝分科会長  はい。樋口委員。 ○樋口委員  給与の話のときとこの教育訓練・福利厚生というのは若干悩ましいところがあって、 給与の場合には「同じ仕事や同じ職務を」というのであれば、考え方として基本的に時 間比例にしろということになっているのだろうと思います。それから言うと教育訓練・ 福利厚生における均衡処遇のあり方というのはいったい何を意味するのかというのは、 まさに悩ましいところで、例えばこういった訓練をするのに、「正社員に比べてあるいは フルタイマーに比べてパートタイマーは労働時間が半分ですよ」、「週当たりでみると40 時間に対して20時間ですよ」とした場合に、「均衡処遇で教育訓練を」としたときには 「教育訓練は、時間もそれに比例して半分ですよ」とそれが均衡と考えるのか、「いやそ うではなくてまったく同じ時間、フルタイマーであろうとパートタイマーであろうと教 育訓練に時間をかけないと駄目ですよ。これでやらなければ均衡は達成されていない」 と考えるのかを議論していかないと実はその時間比例以上に、もしかしたらパートタイ マーにとって「時間に比べて教育訓練の時間が比率として長いね」というようなことが 出てくる可能性があるわけです。あるいはまったくしないことになってしまう可能性が あるので、そこのところをぜひ議論していただきたい。同じことが福利厚生でも言えま す。福利厚生についても例えば「保養施設はフルタイマーの方が、年間30日利用でき ますよ。パートタイマーの人は労働時間が半分ですから15日ですよ」というのが時間 比例ということはわかるのですが、そのときにも「30日を要求します」とそれをもって 「それは成立しないと均衡ではありませんよ」と言うのか、たぶん今0-1の議論をして いるので、もう少し中身に入って具体的にどういうものを均衡と考えるのか、給与など だと想像しやすいのですが、この教育訓練・福利厚生のところでの均衡処遇というのが、 どう考えたらいいかという意見をいただけたらありがたいと思います。 ○横溝分科会長  そうですね。その「福利厚生の性格に応じた」というのがそこのポイントだと思うの ですが、「福利厚生の性格に応じた」、「教育訓練の性格に応じた」と。はいどうぞ。 ○龍井委員  その議論は当然いずれしなくてはいけないと思っていますが、私はまず先にここでの 議論はチャンスがゼロという0-1と言われたけれど、チャンスがゼロというのをなくす というのが出発点だと思っています。教育訓練の方は、先ほど言われたようにこれは通 常の労働者と短時間労働者においては、短時間であることを理由に入り口ではじいてい いかというとそれは違うでしょうと。そのときに当然これは後ほどまた出てくるような 短時間というだけではなくて、いずれ均等あるいは差別ケースといった場合には、職務 の中身などはいずれ次のフィルターがかかってきます。私は今ここで一律に言うことは できないけれど、そのときには当然それに応じて、合理的理由があるなしという具体的 な判断になっていくと思います。そして施設の場合も、繰り返しますけれど、利用でき るかどうかという機会のときに、それが短時間であることをもってそれは駄目というの は不合理でしょう。ですからまずはそこの確認が大前提で、何がそこで実際の利用でふ さわしい処遇なのかということはその次のステップだと思います。私はその最初のステ ップを明確にすることが今回の第一歩だと思っています。 ○横溝分科会長  佐藤委員どうぞ。 ○佐藤委員  樋口委員も言われるように、ここはとても難しいと思います。一つは仕事にリンクし ているものではないことが多いです。だから逆にパートとして働いている人からすると、 先ほど龍井委員が慶弔見舞金という話をしましたが、金額は別にして「なぜ自分には出 ないの」と言ったときに、出ている人たちは特定の仕事の人だけが出ているわけではな いので、どうしてもパートタイマーだから出ないというふうに考えるしかないわけです。 逆に言うと「ではなぜ正社員には出すの」と言われたときに、経営者や管理職はパート には出せないということを説明できるかというと、この説明できる合理的なロジックが あればいいとは思います。先ほど「保養施設はリフレッシュだ」、「うちはこういうハー ドな仕事だ」というのも一つの説明だと思います。ですから私は一律に福利厚生と言え ないのですが、なぜ正社員に出してパートタイマーに出さないかという説明を他の教育 訓練やOff JTであれば、「仕事が違うから必要な人にはパートタイマーにも出すけれど も、あなたはその仕事に就いていないからしません」というのは、一つの説明だと思い ます。その辺を少し議論していただいて、経営側としては「なぜ慶弔見舞金をパートタ イマーには出さないのか」と言われたとき、例えば普通どう考えられているのか。それ は非常に説得的であればゼロにする、パートタイマーに出さないという一つの説明だと 思います。その辺を少し議論していただきたいと思います。 ○松井委員  事務局から慶弔見舞金や社内行事への参加についての性格の説明がなかったので、私 の理解しているもので申し上げます。これはいわゆる福利厚生の中身や目的等でいうと、 企業あるいは職場における一体感の醸成あるいは同じ釜の飯を食っている集団における さまざまな取り組みで、慶弔金の方は恐らくそのときの共済的な意味合いもあると私は 認識しております。そこで先ほど龍井委員は慶弔のときにも、ここでは「給付」となっ ていますけれど、もう一つあるのはそのとき休暇があるのかないのかという、正社員で したらこれは慶弔のとき有給の休暇があるのが一般的ですが、パートタイマーについて どうかというと、そういうところをきちんと制度化している企業もありますけれども、 必ずしもそうでもなくて「それは欠勤で対応してください」とやっている企業もありま す。そういうことからすると、入り口で全部同じにしなくてはいけないのかというと、 企業がそのパートタイマーに期待をしていることがどのようなものかによって、企業の 対応は変わってきていると思います。そういう観点からすると、機会は平等に全部与え なくてはいけないのかと問われると、それはやはり企業それぞれの対応に任せてほしい し、それは法律などで決めるべきではないと私どもとしては考えています。  もう一つは教育訓練のことが樋口先生から指摘があったので、例えば教育訓練につい て時間比例で教育訓練すればいいのかというと、それは教育訓練をやる内容にもよりま すけれども、本当に教育訓練をやった目的が達成できるのかというと、半分にしてしま うと実は3分の1や4分の1の効果しかないかもしれません。ですから半分にすれば企 業側からみて投資効果が十分取れると言えないケースもあります。ですからこの点につ いての均衡というのは非常に難しいことと、先ほど樋口先生から指摘があったように働 く時間が短い中で、パートタイマーについてはその教育訓練を現実にやるとしたら、ど の時間でやるのかという問題も企業の現場としては考えなくていけないと思います。働 くところだけは働いて「ではOff JTをお願いします」と言ったとき、「私はもともとそ んなにやりたくないのに、どうしてそれも義務付けるのですか」と言われたら、後は鴨 委員から反論を聞きたいのですけども、本当に同じようにやれと言われたときに、場合 によってはパートタイマーの方が望まないケースもあるのではないかと思いますので、 私としてはその点の意見をぜひ伺った上で、龍井委員や篠原委員の言われたことは、実 現可能性があるのかどうかお聞かせ願いたいと思います。 ○横溝分科会長  龍井委員どうぞ。 ○龍井委員  少し話を取り違えられているようです。先ほどから言っていますように、これは今の ところは機会です。その後の保障を樋口委員が提起された問題というのはその次のステ ップで、まずは機会があるかどうかであり、希望する、しないはたぶん正社員も同じこ とが言えるでしょう。だからまずそれは整理してほしいです。もう1点はここでは後で いいですけれども、非常に重要なキーワードが出たと思っているのは、先ほどから繰り 返し言っているように、この今の検討が短時間であることによって、通常の労働者との 差・違いが公正かどうかです。松井委員が「同じ釜」と言われましたが、これはどうい う意味合いで使われているのですか。短時間であることが同じ釜かどうかの一つの尺度 ということですか。 ○松井委員  それは会社によって違うのではないかと思います。同じ釜でも食べる量が違っている かもしれないとか、言い訳的に申し上げますと、たっぷり3食食べる人と1日1回だけ の人など、いろいろな考え方があると思います。ですからこういうものについてまで企 業に一緒にしろと言われたら、特に福利厚生というのはここで考えているのは法定外福 利厚生ですから、企業が独自に行うというのが大原則となっていると思います。それは 場合によって労働組合との話し合いなどにおいて実施をしているということがあります。 そういうことからすると、例えばパートタイマーについて労働組合に入っていないケー スなども想定したときに、では組合員に対してやっていることとそうでない非組合員の 方に対してやっている福利厚生を仮に同じにしてくれと言われても難しい部分もあるで しょう。ですから、ここは同じようにしたい企業は同じようにやればいいですし、違っ ていても仕方がないと考えられる企業は、そういう方向でパートタイマーの方を扱って 位置付けているという考え方に立っていると思いますので、そこまで機会は全部同じ、 オープンで開かれているべきと言われると、それは違うだろうと思います。 ○横溝分科会長  では前田委員どうぞ。 ○前田委員  今の松井委員のある種、補強ですけれども、今の議論というのは、長い期間働いてい るパートタイマーの方についての議論になるかと思いますけれども、非常に繁閑の激し い業界などですと、例えばこの2カ月間、この4カ月間パートタイマーの人を採用する というような、短期で雇う場合も結構あると思います。そういうときに先ほど申しまし たように、そういった人でも企業はOff JTでやるかOJTでやるかは別にして、法令の 遵守や企業の倫理などを何も教えないでやるということは非常に考えにくいと思います。 短期の人でもこういうことは絶対にしてはいけない、といったことを先輩たちが教えて いくというのは必ずすると思いますし、2カ月ぐらいのパートタイマーの人に、たまた まその期間に社内行事があるとき「参加しなさい」と言うのは、それを非常に負担に感 じる人もいます。また教育であっても「お金をあげるから来てくださいね」と言っても、 決して喜ぶ人ばかりではない。時間と期間が短い人がいると思うのです。それが全部比 例ということで、お互いが納得できるものかどうかは非常に難しく、企業によっての実 態に合わせてやってもらえればいいのではないかと思います。 ○横溝分科会長  龍井委員、どうぞ。 ○龍井委員  今、後段に言われたことはもっともな点があると思います。というのは、先ほど申し 上げた合理的理由が何かというときに、当然職務の中身とあるいは臨時的・一時的な仕 事に限定されているのか。雇用期間は3カ月だけれど10年働いている人もいるわけで、 それは法的利用を考えたとき、本来はまさに契約期間の問題も一緒にすべきというのが われわれの立場ですが、今ここでの土俵はあくまでも通常の労働者と短時間労働者の差 を設けることが合理的かという限定された土俵なので、一方を言わざるを得ないと思い ます。ですからその問題があるとすれば、その職務の内容が本当の倫理的・地位的な仕 事の場合にどうするかということが、もしも検討としてどこかで上がるのであれば、そ の職務の教育訓練の内容によってはそういうことがありうると私は思っています。  もう1点は松井委員のせっかくの問題提起なのですが、私はだからこそ逆に法律が必 要だとあらためて感じます。それは同じような仕事をしていたり短期契約でも長くいた り、いろいろなパートタイマーが実際にいるわけです。働いている方からすれば、正社 員と同じかもしれないし、あるいはそれ以上に頑張っているという人たちもいます。例 えば、私たちが相談を受けている人の中で、継続雇用期間では正社員よりも長い方や実 際に責任を負っている方がたくさんいます。その人たちからしたときに、なおかつ同じ 釜でないということで、何らかの機会が排除されたり何らかの差別的な取り扱いを受け たりする。自分としては、ある意味で企業の担い手だと思っているのだけれど、本当に 慶弔みたいな少しのことに見えるかもしれないけれども、そこで大打撃を受けるわけで す。だからそこで同じ釜を持ち出されると、逆にそれがむしろ深刻になっているわけで、 それを横にどうやってルール化するかというのがもともとこの1993年のパート法がで きるときの本当の狙いなのです。言葉尻に凝るかもしれないけれど、非常に大事な問題 提起をされたというので、そこをどうやって公正にしていくかということが問われてい るのだと思います。 ○横溝分科会長  はい。山崎委員。 ○山崎委員  福利厚生のところで三つほど項目がありますが、中小から大手まできちんとした共通 の項目なら話はわかるのですけれども、例えば保養施設などというのは中小企業、零細 企業からみればほとんど持っていません。ですから逆に言えば、ないですから均衡処遇 はなされているわけです。ほとんどがそうだと思います。この保養施設を自分のところ はたぶん持っていないと思います。だから借りて、やるという場合はあると思いますが、 零細だとすると社長がお金を出してポケットマネーでどこかへ1泊2日で行こうかぐら いの話です。大多数の企業が数にしたら非常にたくさんの企業はこれをほとんど持って いないと思います。ですから、そういう実態を少しご理解いただいてほしいということ です。 ○渡邊委員  福利厚生のことで言いますと、三つありますけれども「社内行事への参加」というの は確かにデータでも出ているように、ほとんど正社員でも非正社員でも大体適用されて いると私は判断します。特に小企業であればあるほど、この行事には差別なく参加させ る傾向が強いと思います。従ってここまで触れる必要はないのではないかと思うし、2 番目の慶弔見舞金、3番目の保養所などというのは大企業になれば労働者と使用者とい う形はあるのですけれど、使用者と労働者の共済的な条件で、運用しているところが多 いのではないかと思います。従って社員会というのもあります。社員会も共済の一環で つくっています。それなりの企業であれば社員会を持って、会社だけではなくて社員同 士でもそういう共済的にやっているところもあると思います。さらにそういうものに加 担しているのが、保険会社などいろいろコマーシャルベースでたくさん売り込みにきて いますので、社員会でもそれを取り入れて、ある程度負担しているところが相当あるわ けです。従って私はここに抜けているのは職場環境だと思います。こういったものの均 衡処遇というのが大事ではないかと思います。職場環境や就業環境などが抜けています。 本来、福利厚生というのはそういうものではないかと思います。職場環境、就業環境と いうとあまり広範囲になりますけれども、強いて言えば職場環境です。先ほど事務局が 言われたように、「ロッカーを使わせない」など、こういう細かいことは結構あります。 それは強いて言えば職場環境あるいは就業環境に伴う均衡処遇をもっと向上すべきだと いうならわかりますが、保養所などは持っていても使い手がない。どうですか皆さん。 それでも使い手がないからと仕方ないから今度はメンバー制の所で、商工会議所でもや っていますけれど、そういうビジネスでやっている所に、会員メンバーで社員が全部登 録してやってもあまり使われない。健康保険組合もやっている。ただし、その健康保険 組合の保養所というのは格差いろいろありまして、裕福なところの保養所というのはい つも満杯です。やはり働く方もその辺は現金に反映して、いつまで経っても満杯です。 そういう状況ですから、私が言いたいのは職場環境や就業環境に伴う均衡処遇というの も一つ入れてもいいのではないかと思います。そうでなければ後はやっていることはい ちいち法律で制約することはないと思います。以上です。 ○佐藤委員  ここで言えば会社が独自にやっているものが基本的に対象です。ですから、社員にお 金を出してやっているところは基本的には会社独自にやっている福利厚生であると考え てください。それは基本的には労務コストから出ていることです。これをある部分だけ 社員に出してパートに出さないということについて合理性があるかどうかです。例えば、 福利厚生でもここに挙げるものはいろいろあります。例えば昼食代の補助などもありま す。食堂を使える、使えないというのは人件費から出ている会社が出すとすれば、議論 の対象にはなる。 ○奧山委員  しかもそれは実施を義務付けられているわけではなくて、企業が自主的にこういう制 度を福利厚生としてやっている場合に、フルタイマーとパートタイマーの間に利用度や 適用についての格差が出ていることの問題であって、こういうものを制度化した場合や 法制化した場合に、すべての事業主が規模等や業種を問わず義務付けされるという問題 ではないので、そこは分けておかないといけません。それから実態があまり利用されて いないからいらないという議論も少し違うかなと思います。 ○今田委員  こういう福利厚生を合理的な経営の一つの拠出すべきコストとするとらえ方と、もう 一つは皆さんが言っているように共済的な意味合いを持たせて、ある意味では正社員の 身分を持った人たちの特権のような形で、そうではない人はそういう特権から排除され ているという実態があることが問題であり、労務コストを合理的に経営者が何にどう使 うのかは投資と利益の関係だというとらえ方も一面ではできますけれども、この議論を かなりしつこく労働側がこだわっているということ自体の根拠は、そういう身分的・差 別的な分離といういかにも社員のエリート意識を支えているような、片方は利用できて 片方は利用できないという面を持ってきたわけではないですか。この際、均等分科会で パートの議論をするときに、そういうものをなくせというわけではありませんが、合理 性の観点から問い直して福利厚生に関して、難しいけれども打ち出すということは必要 なことであると私は思います。 ○鴨委員  今、公益の先生方が言われたことは、私はそのとおりだと思います。本当に日々働い ているパートの人たちは一生懸命働きたいと思っていて、同じ職場の中で教育訓練や福 利厚生というのは、なぜ正社員にあって自分たちにないのかというのがわからない部分 です。今田委員が身分差別だと言われましたが、そういうふうに働く側はいつも感じざ るを得ないという部分なのです。ですから、せめてこういったところについてはきちん と法制化して欲しいというのがパートで働く人たちの要望です。 ○奥山委員  松井委員の前に一言だけ。先ほどの話につながりますが、やはりこういうフルタイマ ーとパートタイマーの処遇の格差、公正な評価基準を作ろうとするときに、例えば同じ ような仕事をしている場合に賃金額の差・支給方式の差が出てくるというのは、不合理 というと言葉が強すぎますが、あまり合理性がなくそれを是正していかなければいけな いということは共通認識として出てくると思います。こういう教育訓練や福利厚生とい うのはそういうものと少し性格の違うものだと思っています。もともとどういう形でこ ういうものが出てきたかというと、私の理解では長期雇用システムの中で正規の従業員 を対象に、長期雇用の維持、完全な人材の活用という点で作られてきたところが非常に 大きいと思います。そういう点では、先ほど松井先生が言われた「同じ釜の飯」という 言葉は、正規雇用という意味での同じ釜の飯の方がぴったり枠組みにはまるだろうと思 っています。そういうことを考えたときに、単なるフルタイマーとパートタイマーとい う区分けの中でこういう制度の活用や利用が出てきているものではないので、フルタイ マーとパートタイマーという労働時間の長さや処遇の高さだけで考えるとまだ難しい部 分があると思います。ですから議論するところもそこをにらまないと、正規・非正規と いう枠の中で作られてきたようなものが、一種身分的な要素を持ったもので作られてい るものを切り離して別途新しく考えようとするときには、そういう視点からの切り口・ 議論の仕方が出てこないと、今まで同様の中で正規に定年までの長期雇用をベースに作 られてきた制度を、短い時間働いている者にも支給しろというのは少し難しい部分があ ります。この制度が生まれてきた適用されてきた経緯からすると、賃金などの格差にお ける是正とは少し難しい部分があることは私も十分承知しています。先ほど龍井先生が 言われたように、まだ入り口の議論だと思います。機会の均衡を図れていないので、均 衡を図れる場合に今度はどうやって正規で働くフルタイマーと非正規で働くパートタイ マーの間で、こういうものの制度利用を均衡化させていくかというのは次の議論だと思 います。もちろん時間は大切ですが、そこは切り離して考えなければいけないと思って います。  私はここのところ2回用事で出席できなかったのですが、今日聞いている限りにおい て少しそこの辺りですれ違いというか、うまくつながっていないかなという感じを今持 っているのであえて言わせていただきました。 ○横溝分科会長  ずいぶん意見をいただきました。根本的に就業の実態に合わせて、福利厚生と教育訓 練のそれぞれの性格に合わせて均衡処遇ということでずいぶん議論していただきました。  次の6ページの指針において「所定労働時間が通常の労働者とほとんど同じ短時間労 働者で同様の就業の実態に合う場合については通常の労働者としてふさわしい処遇をす るように努める」とありますが、これも一つの大きな論点であり、つながっていると思 いますので、この点についてもう一歩入った意見をいただきたいと思います。 ○前田委員  質問です。パートにおいての所定労働時間が通常の労働者とほとんど同じ短時間労働 者というのは、「ほとんど」という言葉を除けば同じ労働時間ということだと思いますが、 今、世の中では有期契約社員が相当出てきています。その人たちとこの部分はどういう 兼ね合いになるのでしょうか。 ○高崎短時間・在宅労働課長  パート指針の対象になっているのは当然短時間労働者ということです。短時間労働者 というのは通常の労働者より所定労働時間が短い者ですから、同じ者は入っていません。 ですからここでいう「ほとんど同じ」という意味は、ほとんど同じだけれども短いとい うことです。そういうふうに理解をお願いします。 ○佐藤委員  確認したいのですが、所定労働時間が少し短い、もしくは通常労働者と同じ就業実態 ということは、有期であっても事実上無期と同じ扱いで、これはもう入っていると考え ていいですか。 ○高崎短時間・在宅労働課長  そうです。 ○佐藤委員  実態として、例えば解雇のときに有期であっても社員とみなされるような、そういう 労働者を想定して取り上げられているというふうに考えていいですね。 ○高崎短時間・在宅労働課長  そうです。通常労働者がそうであればそれと同じということです。 ○鴨委員  私も質問です。短時間労働者を扱っているということは、ずっと言われているわけで すが、ほとんど同じというのも例えば厳密な意味でいえば39.9時間というところまで同 じということを対象にしているということだと思います。例えば40時間を越えている 人たちについてはこの中では対象としていないというわけですね。そうすると40時間 を越えていてもいわゆるパートという呼称で呼ばれている人たちが現状ではいるわけで す。この人たちについては、今回のパート労働法の中では対象としないということなの か。もし対象としないのであれば、どこでその人たちの法律は担保されるのか、その辺 のことを教えてください。 ○高崎短時間・在宅労働課長  ここでの議論をパート労働法の見直し、パートタイム労働対策ということは短時間労 働者の問題であり、短時間労働者の雇用機会の改善等に関する法律およびその指針の見 直しということで議論していただいているということであれば、同じ人あるいはむしろ 通常労働者よりも長い人についてはここでの議論の対象には入ってこないということだ と思います。  では、どこで議論されるかということですが、例えばそれが最低労働条件あるいは最 低賃金という観点であれば、それはすべての労働者に適用されます。すべての労働者と いうのは、短時間労働者あるいは通常労働者と同じあるいはそれよりも長いパートと言 われている人たちという意味ですが、適用になっている労働基準法なり最低賃金法とい う法律があるので、それらの中で規定していくということであれば、審議会という形で いえば労働条件分科会ということになるわけではないかと思います。それ以外にも雇用 関係の分科会等もありますので、それぞれのところで議論されるものだと考えています。 ○吉川委員  少しお聞きしたいのですが、ここに「通常労働者」と書いてありますが、通常労働者 とは何を指すのでしょうか。 ○高崎短時間・在宅労働課長  通常労働者については、解釈ですが「通常労働者とはいわゆる正規型の労働者をいい 社会通念に従い当該労働者の雇用形態・賃金体系、例えば労働契約の期間の定めがなく 長期雇用を前提とした処遇を受けるものであるが、賃金の主たる部分の支給形態、賞与、 退職金、定期的な昇給または昇格等を総合的に勘案して判断する」と行政解釈している ものです。いわゆるその事業所における正規型の労働者です。 ○前田委員  今、多くの企業ではフルタイマーの正規社員という人たちがどんどん少なくなって、 契約社員というような人たちが主体の企業経営になっているようです。今のような定義 ならば、例えば定義に当てはまる人は将来の幹部候補生の大卒しかいないというような 企業も結構あるわけですが、そういったときにもそれが通常の労働者だというふうにな るのでしょうか。 ○高崎短時間・在宅労働課長  繰り返しになりますが、総合的に勘案して判断するという意味は当然指針で定められ た以降、まさに前田委員が言われたような事業所における通常労働者あるいはいわゆる 正社員といわれる人たちの働き方も変わってきているでしょうから、その中で総合判断 という中身が変わっていき、そういう形で見直されていくものだと思っています。 ○佐藤委員  今言われたのは法律に書かれているわけではなく解釈なので、そういう意味では総合 的というところで解釈が変わりうる可能性はもちろんあり得るということですね。です から日本の場合は解釈上フルタイムとパートタイムの均衡というふうになっていません。 法律ができた当時は正社員がメインでその時代に合っていたわけですが、それはそれで 大事な点だと思います。 ○横溝分科会長  それでは、龍井委員が先ですね。 ○龍井委員  この項目は公益の皆さんの論点整理なので非常にコメントがしにくく、なぜここに入 っているのかよくわかりません。見出しもないのがあって実態がわかりません。  指針では「職務の内容、意欲、能力、訓練、成果等に応じて処遇にかかる措置の実施」 というのが3.であって、4.でこれが出てくるので流れとしてわかるのですが、コメント するとすれば後ほど総括的なことと併せてせざるを得ないと思っています。実態でいう と、本来なら通常労働者として雇われてしかるべき人がそうなってはいないということ がたくさんあるだろうと類推されます。例えば、次の項目に出てくる通常の労働者の転 換ということが制度上保証されるとなった場合には、こういう人たちが優先的にあたる ようにするなどは考えられると思いますが、どのように考えるかということでどういう 議論を求められているのかというのが少しよくわかりません。コメントがあるのであれ ば、逆に教えていただきたいです。 ○佐藤委員  これは基本的に指針にあるものをベースに書いており、もともと指針の4ということ です。ここではなくて後ろの方がわかりやすいかもしれません。 ○横溝分科会長  今言われたような形で、後でコメントをいただければいいと思います。  次に、「3通常の労働者への転換」について議論していただきたいと思います。指針に おいては通常の労働者への転換のための措置を講ずるよう努めるものとしていることや、 資料にあるような実施状況を踏まえて、今後のあり方をどのように考えるかということ について議論いただきたいと思います。 ○鴨委員  実施状況というところで、「転換制度あり」とする事業所が48%で、その適用事例の あり・なしというところが、「転換制度あり適用事例もある」が23.3%。「転換制度はあ るが適用事例なし」が11.8%となっていますが、過去3年というスパンの中での結果で す。実質的に「転換制度あり」とするところが48%で、私の実感からすればこんなにた くさんあったのかと思う数字です。実際どのように実施されているのかというところが、 この過去3年間の適用事例の有無を見てもよくわかりません。もしかしたら転換制度あ りというところで、ありということが形だけになっているという可能性もあるのかとい うことをここから推測するわけです。  そういう中で私たちは、指針の中身にあるようにパート労働者が転換を望むというこ とであるならば、望むパート労働者についてすべてを対象にすべきというところをきち んと法制化して欲しいということと、もっと具体的にいえば、龍井委員も触れましたが、 先ほどの所定労働時間がほとんど同じで同様の就業実態にある場合は、優先的取り扱い をすべきではないだろうかといったことを法制化に入れるべきだと思います。パート労 働者にとって転換制度があるということは働く上での希望にもつながるものでもあるの で、もっと転換制度を具体的に優先雇用制度や雇用期間を義務化するということも含め て検討した方がいいのではないかと思います。 ○前田委員  これもこの箱の中だけでは読みにくい部分があり、鴨委員が言われたこともわからな いわけではありませんが、企業は動いているのです。例えばフルタイムで仕事をしてい る人がいなくなり通常の労働者を募集するときに、すべてのパートタイムの人が希望し ているかどうかを把握したり、パートタイムの人に先に応募機会を与えなければいけな いということになると、それほど時間的余裕のない募集をしたり、紹介があったり採用 にはいろいろなケースがあるので、パートタイマーの中にも今はこういう仕事をしてい るけれども、今募集しているような仕事をできる能力のある人がいるということはある かもしれませんが、それを企業がすべて把握して機会を優先的に与えるということが、 もしルール化されるとすれば、企業にとっては大変な負担になってしまうのではないか と危惧しています。 ○吉川委員  今の続きですが、中小企業は特に人材に対して非常に不足しており求めているので、 本人に能力や意欲や責任感があればそういう規定なしにすでに登用しているはずです。 逆にいうと、パートの中から本採用への応募を出したときに、会社としてそういう制約 がなければ声をかけたいという人は当然います。それが一律になった場合、全員に声を かけ本採用にしたい人が手を挙げず他の人が手を挙げてしまい、この人ではとても正社 員にはできないというときに、会社としては手間隙が非常にかかり、手を挙げたのに正 社員にしてもらえなかったらギクシャクしたものが残るというような食い違いがあるよ うな気がします。ですから法律でそういうことを決めるよりも、本人が本当にやりたい という意欲と責任感と能力を持っていれば必然的に本採用になっていくと思いますので、 トータルで考えて法律化するべきではないと思います。 ○鴨委員  吉川委員が言われた「本人に意欲と能力があれば」という話は、この転換制度をこれ からどうしていくのかという話とはレベルが違う話ではないでしょうか。  今、私たちの相談にあるケースで言えば、正社員を募集しているときに勤続の長い人 が手を挙げても、パートだからということで遮断してしまうという事例の方が圧倒的に 多いわけです。そういう中で先ほどの前田委員の話の中身で言えば、応募のときの時間 的余裕ということがありましたが、私自身はこの転換制度については、そこで長く働い ているパートの人が実際的には仕事をずっとやっているわけですから、そういう人を企 業が優先的に雇用するということは企業にとってもメリットがあると思います。その意 味でこのことをきちんと法制化するということはぜひやってほしいと思います。 ○吉川委員  それは多分価値観の相違によると思います。企業側もはっきり高い能力がないとはい えないかもしれませんが、長くいることが果たしてその人を正社員にする意味があるか という問題は別問題だと思いますので、先ほども言ったように責任感とやる気を持って やっている人であるならば、そういう機会があったら優先的に正社員に登用していると いうふうに思います。 ○佐藤委員  幾つか誤解があるのではないかと思います。正社員の登用制度というときには、まず 正社員を採るという状況が発生しなければ、幾ら優秀なパートの人がいても無理やり採 りなさいというわけではないということが一つです。正社員登用制度にパートの人が応 募したらその人を採用しなければいけないというわけでもありません。基準は同じでい いのです。基準を下げてでも応募した人を採らなければいけないというわけではなく、 採用基準が合理的であればそういう制度を入れたとしても、パートの人が応募してそこ から採るということももちろんあるでしょうし、一定の基準で見て外からの人がよけれ ばその人を採ることであり、その人を採らずにパートの人を採りなさいという制度は駄 目です。基本的に採用の基準が合理的であれば、企業側に採用権限があるわけですから、 優先的に採れという意味ではありません。この調査自体は付与といっていますが、パー トにもその職場で社員として中途採用の情報を出すような仕組みをつくってもらったら いいと思います。勤続何年以上などのいろいろな基準がありますが、時間がフルタイム になりますからその応募の基準に合う人に応募してもらい、その後でいろいろな基準で 面接したり試験したりということはいいわけです。ですからパートの人を必ず採らなけ ればいけないという趣旨ではないので、その上で議論をしていただければいいと思いま す。 ○吉川委員  必ず採らなければいけないという制度ではないということはわかりますが、応募した 人が往々にして採用が難しかったときに、その人がパートとしてその後も続けられる状 況であるのかどうかということです。システムとして法制化しても、本人が精神的にど うなのかというマイナスの面が出ないかという心配をしています。 ○稲垣委員  そこのところですが、やはり大丈夫だと思います。正社員でも昇進試験を受けて駄目 な場合もあるわけですから、そこは心配されることはまったくないと思います。 ○松井委員  恐らくそのように考えられる人とそうでない人がいると思います。そのことを吉川委 員は言われているだけで、それを法律によって義務化してまでというのはいかがなもの かということを言っています。  今、私は悪者になっているつもりでもう一つあえて言うと、辞めてもらいたい人にこ れはどうですかと声をかけるということを本人は嫌がらせ的だと感じるケースがありま す。先ほど鴨委員は正社員への移行の義務化ということを言われていましたが、それは 佐藤先生が言われていたこととは少し違っているということをきちんと踏まえた上で言 うと、企業において仮にそういうものを設けたときには、例えば3年以上、何年以上、 労働者派遣法における専門的な業務の26業務における取り扱いについて、3年を超える 派遣労働者については同一事業所において同一職務の社員を雇い入れるときには先に声 をかけなくてはいけないというのが前回の改正で設けられています。この場なのであえ てはっきり言っておくと、きちんと雇用管理を行おうとしている企業が危険回避的に、 3年を超えている専門的業務の派遣の人について期間が満了したときに辞めてもらって いるケースも残念ながらありました。それはちょうど樋口委員と私が派遣を検討する審 議会のときに決めたものですが、場合によってネガティブな対応もありうるという中で 本当にそういうことをやるのですかと、私はそのときそこについては最後まで反対をし ました。これは現実に派遣法改正で起きた問題なのであえて言いました。  それからもう一点ですが、労働基準法の前回の改正のときに有期の雇い止めをする1 年超えについての雇い止めをするときの事前予告制も何らかの形でやるようにすると、 そういうことにならないように可能ならしてしまおうかというネガティブなものも現実 に起きたという実態もあります。そういうことを踏まえたときに、本当に鴨委員が言わ れたような仕組みを仕組んだとき、どういうやり方や方法があるのか、ネガティブなこ とは絶対起きないということが言えるのかどうか。私は恐らくそういうことが起きると いうことを心配しますので、ぜひ労働側でもその点については真剣に考えていただきた いと思います。 ○吉川委員  はい、すみません。私は人材の登用や活用などというのは基本的には経営の方の責任 の範囲のことであって、そこを法律化する問題の範囲ではないと私は思っております。 経営の責任だと思います。 ○横溝分科会長  はい。だいぶ意見をいただきました。  次は、「4 労使の話し合いの促進等」に移りたいと思います。6ページの最後の枠に 囲われた論点について、指針においては、「短時間労働者からその処遇についての説明を 求められたときには説明するように努めるものとしていること」、また資料にある実施の 状況を踏まえて、今後のあり方をどのように考えるかということについて、議論してい ただきたいと思います。 ○稲垣委員  ここの部分につきましては指針なのですが、「説明している」というところで、83% の企業が実施しているという所から見れば、やはり指針にとどめずに法制で義務化する べきであると考えます。以上です。 ○山崎委員  少し質問なのですが、「説明を求められたことはない」というのはどういう解釈をした らいいのですか。例えば、労働者がその処遇に満足しているという解釈でいいのですか。 それとも、そういう説明を求めると、答えてくれるということを知らなかったというこ とですか。 ○高ア短時間・在宅労働課長  お答えします。この調査自体はこれ以上でも以下でもありませんので、解釈のしよう がないのですけれど、推測するにその両方とも書いているのではないかと思いますけれ ど。 ○横溝分科会長  そういうことでしょうね。この点についてあまり意見はないようですね。そうですね。 なさそうですね。この点について意見ありますか。よろしいですか。はい、どうぞ。 ○吉川委員  私はこの求められた内容というのが、82.9%というのは非常に高い数字だと申し上げ たと思うのですけれど、規定したからといって世の中100%になるということは何事も あり得ないと思いますので、むしろ、小さい企業の方が実際にやっていただかなければ ならないから、必死に説明していると思うのです。ですから、これが先ほどの別な調査 のところにもありましたけれども、規模としてどちらがどういう比率なのかというとこ ろがよくわかりませんけれども、そういうものがあったらもう少しいいなと。逆に、そ このところをまだやれていない企業に、どういうことですかということをむしろ指導し ていくぐらいで十分ではないかなと私は考えますけれど。 ○高ア短時間・在宅労働課長  データとしましては、第64回に規模別業種別を追加して出した資料で説明しますと、 一般的には規模が大きいほど、「説明を求められたときに説明している」という割合が高 いわけです。ただ、「説明していない」と答えている企業はどんな規模でもなくて、それ 以外がすべからく「求められたことがない」という回答になっていますので、その辺り をどう考えるかということについては、意見があるところではないかと思います。ちな みに、5人から29人という一番小さな規模のところで申し上げますと、「説明を求めら れたときに説明している」が62%、「求められたことはない」と答えになっているのは 38%という状況です。 ○横溝分科会長  はい、樋口委員どうぞ。 ○樋口委員  これは、労働時間の長さに関係なしに、労働者の権利として当然のことではないかと。 多分反対異論者はいないのではないのですか。 ○横溝分科会長  そうですね。 ○樋口委員  権利ですから。 ○横溝分科会長  そうです。はい、松井委員。 ○松井委員  これは、権利や義務ということではなく、恐らく人事労務管理上、企業がやるべきこ とであって、反対に法律に書いておくべきことかと疑問に感じるところです。あえて私 は先ほど労働側に嫌なことを言いましたので、嫌なことを言います。求められたとき、 説明をしないと。それは別の意図が、もしかしたらあるかもしれません。そこまでにと どめておきます。 ○樋口委員  逆に、そういうところがあるから、権利義務という管理、関係が発生するわけでしょ う。 ○今田委員  これは、処遇についての説明を求められるというのは、一般的な労働条件などについ て求められるのではなく、処遇でしょう。ということは、「なぜ賃金が低いのですか」、 「安いのですか」など、そういう不満を感じたときに不服ではないですけれど、自分の 働き方に対して適切に処遇されているのかどうかと感じたときに求めるものというニュ アンスではないのですか。一般的な話を何か説明を求めたら、それは拒否する、ではな いですけれど。 ○樋口委員  それは次の項目に。 ○横溝分科会長  そうですね。7ページです。 ○今田委員  これは、処遇なのでしょう。 ○横溝分科会長  そうです。ただ、少し7ページと重なって意見いただいているように思いますけれど。 ○今田委員  これは、聞いたときどうだったのですかね。苦情というのは本当に苦情なのですが、 要するに客観的な労働条件などについての説明をするというのは、4ですよね。苦情に なったら、かなりシリアスになっている状況ということですよね。だから、今議論にな っているような形で一般的な状況について説明を求めたりしますというほどの軽いもの ではなく、もう少しパートタイムの働き方についての説明ということではないのですか。 そういう項目として挙げたと思うのです。違いますか。 ○高ア短時間・在宅労働課長  両方あると思います。処遇ですから労働条件のことを聞くと処遇ですし、あるいは職 務のことについて聞いたりするのも処遇ですから、指針上は処遇と書いてあるわけです ので、それは両方ありうると思いますが。 ○今田委員  法律で定めなくてもよいという議論が今あったわけですが、それなりのやはり意味を 持たせたのではないのですか。そういうことであえて言ったのですが。 ○横溝分科会長  労使の話し合いの促進の二つの項目ですから、あまり厳密に区別せずに意見いただい てもいいと思います。はい、どうぞ。 ○前田委員  たしか前々回に吉川委員も言われていたと思いますけれども、今日も言われたように、 企業は例えば「時給がどうしてあの人と5円差があるのだ」ということなどは、非常に 頻繁に質問に来ることだと思います。それについては多分大きな会社も小さな会社も「こ ういうことだと、ここをもう少し努力すれば次の時には」などという説明をきちんとし ていると思うのです。それを私は全体的に今回のことで申し上げるところなのですが、 今の指針でも、非常にこれだけ率が上がって、経営の方も努力していると思うのですが、 それをすべてやらなければいけないと法律で全部決めるということではなくて、日本の 企業というのは、非常にそういうものに対しては、誠意をもって答えていくという部分 があると思うのです。そういうことで、私は今の指針の状態で十分ではないかと思いま す。 ○樋口委員  すべてがそうだといいのですが。 ○佐藤委員  労使の広い意味でのコミュニケーションが、特に私はパートタイムの場合に大事だと 思っていて、それは賃金等の処遇の均衡のところで、例えば同じものは同じに扱う中で、 仕事が同じというときに、人材活用の仕組みが同じというところについて、ある程度今 回どういうことになるのかわかりません。例えば指針の中に確保したときに、すべての 業種、職種に合うようなことは作れません。やはり、それぞれの企業や職場でこの仕事 は同じかどうか、人材数が同じかどうかということについて、企業だけではなく、働き 手が納得してもらえるような合理的部分が大事なのではないかと思うのです。ですので、 やはり私は何が同じか、あるいはこれは違っていいのだというところを。もちろん、大 枠は作りますけれども、それについて職場での実態に即して理解してもらうということ がとても大事だと思うので、それをやるためにはこういう仕組み、これを義務化とする のかということですね。パートタイマーにとっては非常に大事だということを理解して いいかなと。 ○吉川委員  その意味もわかるのですけれども、ここの数字に出ていない、あと17.1%の部分とい うのは、企業としては説明しているつもりでも受けた側がそれを納得しないという数字 も入っているかもしれないというときに、では、もう次の段階に行ってもらうしかない ということになるのではないかと思うのです。ですから、私が先ほど「100%というの はあり得ない」と申し上げたのは、その部分でこれを言うと、と思って遠慮したのです けれども、逆に、理解をしないということと、説明をしているところの食い違いがある のではないかと。それはこの程度の数字はそこの範囲ではないかと思いまして、そのよ うに申し上げたのですけれども。 ○篠原委員  やはりこういう機能というのはきちんと整えていくべきではないかと思います。例え ば、経営者が非常に怖くてパートタイマーの方がなかなか話をできないという場合もあ るかもしれないですので、そういう場合には、きちんとこういう機能というか、企業の 責任に任せるということではなくて、そういうようなツールをきちんと整えておくべき というものではないかと思います。それが、例えば企業の活性化につながる、そういう 不満などをなくすという部分につながるのではないかと非常に思います。 ○吉川委員  水掛け論になるかもしれませんけれども、その意味もわかりますが、やはり言いにく いという経営者もいるかもしれません。逆の立場になると幾ら言っても納得しないとい う人もいるのです。だから、何度も申し上げますように、これが100%になることは法 律でやってもありえないということを申し上げたかったということです。両方フィフテ ィーではないかと。これまできた数字であればそう思いました。 ○鴨委員  吉川委員が今、話されているところのここは前段のところでの話だと思うのです。説 明を求められたときにという話であって、この説明が理解されたか、されないかという ところまで、労使の話し合いの促進という中身としては求めてはいないのではないです か。今、そこで例えばいろいろパートタイマーの方が、幾ら説明してもというところに ついては、次の「苦情の申し出を受けたときには自主解決を図るよう努めるものとする」 という部分にかかってくるというところであると思うのですけれども、違いますか。 ○吉川委員  私の説明がうまくないのかどうかわかりませんが、この17.1%の人はこの次のところ に行っても仕方ないような部分の人かもしれないということで、先ほど経営者が怖くて 言いにくいという人もいるということも理解しますけれども、何度も言うように逆に幾 ら経営者が説明しても理解しない、しようとしないという方もいるということも現実だ と思うのです。 ○横溝分科会長  6ページと7ページの両方にかかわって、議論していただいているつもりです。 ○林委員  これは事業所からの回答ということなので、幾ら説明しても受け入れられないという のは、統計上に数字では表れてこないのではないかと。これを見ますと、合わせると 99.9%になるのですけれども、「求められた内容については説明している」82.9%で、「説 明を求められたことがない」という形だと、基本的には「説明を求められたけれど説明 しなかった」という統計はここに出てきてないと読めるのですけれども、それとも「説 明を求められた内容について説明している」の残りは「説明を求められたけれども説明 してない」ということになるのでしょうか。 ○高ア短時間・在宅労働課長  そうです。この調査項目は配布した資料の方にはそう作っておりますが、答えが三つ ありまして、「説明を求められたことがないが説明をしている」、「説明を求められたこと がない」、「説明をしていない」というのがあります。残りが要は0.10%ですが、「求め られても説明をしていない」ということです。 ○林委員  0.10%がそのぐらいですね。そうしますと、企業の方はこの統計から見ると非常に実 質的にはもうすでに前向きという実態にあると読めるのではないでしょうか。 ○今田委員  だから、とても形式的でそういうものも十分あると。ただし、何もないよりもそうい う制度があるということで、吉川委員が言われるみたいに納得する、しないというのは 先の話である。ただ、そういう場合に、コミュニケーションをするそういう制度がある かどうかというところが問題だというのは、理解していただけるのではないかと思うの です。そこで納得させなければいけないと法律に書けと言っているわけではなくて、意 味なく不満を持って働いている人たちに、企業にとってもきちんと説得できるいい機会 でもあるわけではないですか。そういう制度というふうに話し合いの場と考える。そこ で説得してという場とは、必ずしもこれは考える必要はないと。いかがでしょうか。 ○横溝分科会長  いろいろ意見をいただいて、いつも時間がタイトで申し訳ないのですが、結構時間も せまっていますので。  次の「紛争解決制度について短時間労働者に対する特別な配慮をどのように考えるか」 ということについて、よろしいですか。 ○稲垣委員  その前のところで、自主的解決のところを一緒に議論されましたけれども、ここの部 分もぜひ指針ではなく義務化ということで法制の方に入れていただきたいと思っており ます。それから紛争解決制度のところなのですけれども、今では調停の制度が男女雇用 機会均等法関係であると思うのですけれども、そのような形でパートタイマーの方にも そのような制度が活用できるような仕組みを作っていくことが必要かと思っております。 ○横溝分科会長  それでは引き続きまして、「短時間雇用管理者の選任」について議論いただきたいと思 います。現行法においては努力義務となっているところですが、資料のような現状も踏 まえて、今後のあり方について意見をいただきたいと思います。 ○稲垣委員  こちらのところも今までの議論でもありましたけれども、パートタイマーの方の雇用 管理ということは、いろいろ事務的な面もありますし、法律に関しても知らなくてはい けないことがたくさんあると思いますので、ぜひここは管理者の選任ということを、現 在は努力義務ですけれども義務化ということでお願いしたいと思います。 ○横溝分科会長  松井委員、どうぞ。 ○松井委員  反対に稲垣委員にお聞きしたいのですけれど、短時間雇用管理者ということを決める ときに、どのようなことを要件としてやってもらうイメージなのでしょうか。というの は、義務化というと、ではその人はどのようなことを現実にするのですかと。何でも法 律にすればいいというのは簡単なのですけれども、そこまで言われるならば、どのよう なことをイメージされておられるのか。それから、紛争解決制度についてどうのこうの というのは、さっと横溝分科会長が行かれてしまったので言わなかったのですが、短時 間労働者に対する特別な配慮というのは、本当にどういう意味合いを持つのか。申し訳 ないのですけれど、通常の労働者との均衡を図れなど、いろいろと言っている中で、短 時間労働者のみにする合理性というものは、どういうことなのですかと。そういう議論 をきちんとした上で行わないといけません。短時間労働者というのは、現行の法律の定 義ですと事業所における短時間労働者ですよね。反対に、それはその事業所においては、 仮に短時間でなくても世間的には短時間の人などですね。何かこういうものを仕組むと きに、指針だからあまり細かいことは詰めないで書かれているのだと私は理解しており ます。そうすると、そういうときには、どういうふうに考えたらいいのでしょうと。そ れは、ぜひ労働側に考えていただいて、義務化もいいのですけれど、具体的にどういう ものがいいのか、どうすべきなのかというのを反対に提案していただきたいのです。私 もこれを見て何をやるのかなというのがはっきり言ってよくわからないというのが、正 直なところです。  それともう一つ、何とか管理者の選任というのは、例えばいろいろなところで求めら れておりまして、労働分野では、安全衛生法を主として相当細かい規定があります。そ れ以外に、ビルの管理や防火の面など、言ってみれば、1人がいろいろな管理者を兼務 しているケースも特に規模の大きくない企業では一般的であります。そのときに、短時 間雇用管理者と名の付く人に、何をやってもらうのですかと。本当にそこだけやったと して、現実に機能するようなものというのは、ありうるのでしょうか。仮にそのような 課題のものだったら企業としては、申し訳ないのですけれど、やっていられませんとい うことにもなるのではないのでしょうかということを申し上げます。  それから、その事業所内での自主的解決を図るよう努めるという点ですけれど、もち ろん自主的解決を図るというのは、大変重要だと思いますし、短時間労働者から説明が 求められたときについて誠実に答えるということも重要だと思いますけれども、この自 主的解決を図るという仕組みが、どんなことの想定をされておられるのか、自主的解決 は何か申し出たとき、人事担当者あるいは総務の人、あるいは上司が話をして、わかっ たと言えば自主的解決なのか。別な言い方をすると、私などは、労働側がこういうこと を言うと何とか委員会を設置して議論をしてくれなどということが想定されるので、そ れはあまた多くの中小の企業、あるいは規模が非常に小さい企業にとって現実的な解決 策ですかという疑問を感じるわけです。ですから、義務化といって法律に書けというと、 具体的に何をするのと。企業側としては、やはり何をやったらいいのかということがあ まりはっきりしない中で言われるのは、非常に困るということをまず申し上げておきた いと思います。もし、付け加えてくださることがあったら、ぜひお願いします。 ○渡邊委員  いいですか。 ○横溝分科会長  はい、どうぞ。 ○渡邊委員  短時間雇用管理者というのは、10人以上ということですよね。それでもやることは現 実にあまりないのですよね。 ○横溝分科会長  ここに、やることは書いてありますけれど。 ○渡邊委員  やはりこれは今ここで義務づけるということをやっても意味がないのではないかと。 今の指針で十分ではないかと私は認識しています。 ○横溝分科会長  はい、どうぞ。 ○奧山委員  少し、経営者にお聞きしたいのですが、派遣法でも管理責任者を置いてありますし、 パートタイマーでも今のようなものを置いてありますし、男女雇用機会均等法関係でも 機会均等推進責任者というものを用意いただいていますが、実際の企業の中ではそれぞ れ別の人が担当して法律問題ではなく、これはそれぞれ実態としてどのようになってい るのですか。 ○前田委員  届け出は届け出で、多分そこの所属の長などが名前を届け出てあると思いますが、実 際は、課長や係長などが説明する担当になっていると思います。それなので、例えば担 当の長が、「私が短時間雇用管理者だからあなたと話します」といったことは、全くない と思います。 ○奧山委員  届け出の場合も1人3役という形で、それぞれ同じ人がやっている実態ですか。 ○前田委員  そうだと思います。小さな会社ですと、大体総務部長が1人で全部やるみたいな感じ ですから、その人が全部の管理者で誠実に決めているとは思います。ただし、小さい会 社であったら、当然その人のところにみんな相談に来ますよね。そういう状態だと思い ます。 ○渡邊委員  派遣会社の場合は、少し違っていて完全に管理者が必要で、確かに。 ○奧山委員  研修や調整などで、派遣先や。 ○渡邊委員  管理者を置いています。 ○稲垣委員  すみません。少し説明が足りなかったのかもしれないのですけれども、例えば義務化 するときにある一定の規模のパートタイマーの方がいるところはという、そういうこと では、柔軟な対応が必要かもしれないと思います。 ○松井委員  ですから、何を短時間雇用管理者にやってもらいたいのですか、何を期待しているの ですかというのが、私の率直なところです。  それから、もう一つ、こういう管理者が何種類もやっているというケースで、法律上 できちんと定められて、資格試験も受けなくてはいけないという人は、それなりに内容 の講習を受けたり、いろいろな努力をしてやっていたりするのですけれど、法律上求め られていない、何とか管理者や何とか責任者というのは、大体中身を知らないケースと いうのが企業によって割とあります。ですから、私は、中身は何なのですかということ を、何を考えておられるのか、ぜひお聞きしたいと思った次第です。 ○稲垣委員  だから、短時間勤務の働いている方々についての雇用管理のところです。それがスム ーズにいくために必要だと思いますし、働いている方からの質問もあると思いますし、 一言に言えませんけれども、その辺はやることはたくさんあると思います。 ○樋口委員  今、ご案内の通り、イ、ロという二つの項目が、短時間雇用管理者には内容として課 せられているわけですね。この中身をもう少し具体的に教えてくれということですか。 「本指針に定める事項云々で事業主の指示に基づき必要な措置を検討し実施すること」、 もう一つは、「短時間労働者の労働条件等に関し短期間労働者の相談に応ずること」。ロ は割と具体的になっているから。イの中身を、ということですか。 ○横溝分科会長  どうですか。 ○松井委員  あえてそこをしつこく申し上げたのは、このページの一番上の「自主的解決を図る努 力」というところとの関係はどうなのだという疑問も持つわけです。自主的解決を図る ときの仕組みは別のものがあって、なおかつ短時間雇用管理者もあってなどいろいろ想 定され得るので、何を言われたいのかなと。今日言われなくても結構ですけれど。もし 何でも義務化や法律に書けと言われるのならば、もう少しイメージできるようなことも 言ってくださると私どもとしては助かるということだけです。以上です。 ○横溝分科会長  まだ分科会の機会がありますので、そのときに用意できればしていただくということ で。  一通り議論いただきましたので、6ページの、先ほどこれが総括的というか総論的な ということでいただいて、そこで次に移ってしまいましたので、この指針において「所 定労働時間が通常の労働者とほとんど同じ」という、ここの項について意見、まとめ的 なことになると思いますけれども、議論いただきたいと思います。 ○龍井委員  まとめ的と言われたので、その項目を含めて、2、3申し上げたいのですが、やはり今 回の議論で、この7ページの後に出ているチャートからどのようにルール化・法制化を イメージするかと考えた場合に、今回のポイントは、すべての短時間労働者について合 理的理由がなければ、これは同様の仕事をしている正社員との差別性禁止ということを 明確にしてほしいというのが、我々の基本的スタンスです。  従って、法律の第3条の見直しも含めたルール化というのが基本的な認識です。その 場合に、実は今回の論点整理の中で、このチャートの「職務が通常の労働者と同じ」と いう枠について、特に箱がつくられていないのです。このチャート通りというよりは、 少し違う角度で見たいのは、先ほど「通常の労働者」は定義がありましたけれども、通 常の労働者と言ってもいろいろなタイプ、いろいろな職務の労働者がいて、あらかじめ ある企業の中で、ある事業所の中で、通常の労働者一般を想定して、それと同じかどう かという箱がつくれるかどうかということがあります。パートタイム労働者の立場から 考えると、自分と同じような仕事をしている正社員・通常の労働者がいると。その人と の差別があってはいけないという考え方なのです。  ですから、あらかじめ箱をつくるというよりは、しいて言うと外側の皿とその次の2 枚目の皿「職務が通常と同じ」、職務が同じということは当然均等待遇、つまり労働基準 法上で言う均等待遇、つまり差別的取扱いの禁止ということでいった場合には、どうし ても職務は重要な要素になると思います。そういう意味では、今申し上げたように、一 番広い皿の人達が、その事業所、もしそこにいなければ、同一企業や同一産業まで広げ ることも必要だと思っています。いずれにしろ同じような仕事の通常の労働者・正社員 との差別的取り扱いはあってはならないというのがまずベースであると考えています。  その上で、特にと考えていくと、三つ目の皿と最後の※印が先ほど指摘のあった6ペ ージです。これは先ほどの優先雇用の問題でも申し上げましたように、やはりその中で もとりわけそうした措置・ルール化が求められていると。さらに、必要であれば差別化 をしていくということで措置が必要であろうと。ぜひそういうルール化を今、お願いし ているということを理解いただければと思っています。  それで、あとは、前回の項目で「賞与・退職金・手当等」、これは時間がないので一括 して申し上げれば、合理的理由がなければ、これも差別禁止というのは明確にすると。 ただこれは、先ほど指摘があったように、時間比例にできるところ、例えば賃金であれ ば、特に今回賃金という項目が出されていますので、私どもが言っている差別禁止とい うのは、幾つか公益委員からも出されたように、比例であるということはきちんと明記 すべきだろうと思っています。概括的には以上です。 ○横溝分科会長  ありがとうございました。佐藤委員、どうぞ。 ○佐藤委員  比較の範囲は、龍井委員は産業までという話でしたが、基本的には雇用主が同じ同一 企業の中で、というのが今までやってきた。指針もそうですので。それを超えるという ことではないですね。 ○龍井委員  いや、ところが、そうは言っても、やはり今、一般労働者がいない職場が増えている ということをどう考えるかということなのです。 ○樋口委員  短時間労働者しかいない企業がたくさん出てきていますから、そこの考えをどうする かというのは入れておかなければいけないことになると思います。社会保険の適用が一 般労働者の4分の3となっても、一般労働者がその会社にいないときに何を基準に決め るのだという話が実態問題として相当起こってきていますから。 ○龍井委員  言い忘れました。その他なのか総論なのか、今はキーワードだけにしておきますけれ ども、先ほども幾つか話題になった短時間だけではくくれない、繰り返し言っている有 期であることの問題と社会保険適用制度があることによって短時間になっていくという 側面もあったりするので、それは、どこかで厚生労働省全体として受けとめるというこ とを、どこか今回の議論の中で明確にしていただければと思っています。 ○吉川委員  飛躍した例かもしれませんけれど。友人が刑務所の何とか指導員というのをやってい るのですが、最近の刑務所は、冷暖房付きで風呂も大変大きく温泉みたいになっていて、 そして、湯も出れば水も出る。全部そろっている。そうすると、刑務所から出てきてか ら、そういう施設を借りて自分が生活するとなると大変な費用がかかりますので、結果 的にできないとまた戻ろうということで再犯をする人は結構多いと聞いています。  ということは、パート労働者の中にもいろいろな方がいると思います。一生懸命な方 もいれば、ある部分、足を引っ張るような人もいるかもしれない。そこの部分のところ まで全部引き上げなければいけないのかどうかということも含めて考えていかなければ いけないのではないかと実は感じております。 ○龍井委員  今の問題は、正社員も同じです。だから長時間か短時間かという期分けでルールがあ るかという話をしているので。そういう方は正社員でもいます。そのことを問題にして いるわけではありません。 ○松井委員  龍井委員が言われたことについて申し上げますと、それならば短時間労働者について 必要とされるものが何なのかということ。なぜ短時間には必要なのか。私がいろいろ申 し上げたいのは、なぜ通常の労働者にそういうものがないのかなど、今日もいろいろそ ういう話を伺っていて、これは、この場でできるとは申し上げませんけれども、これは 全体にあっても良いのではないかという考え方も、やはり今日も聞いていて思うところ が正直に申し上げると多いのです。  それならば、では短時間労働者に特別必要だという、均衡処遇の合理性というならば、 短時間労働者に求める施策の合理性とは何かということを、今後議論していきたいと思 います。 ○龍井委員  それは先ほど松井委員が自分で答えを出していらっしゃるのです。短時間だけなら良 い。同じ釜ではないから。だから必要なのです。短時間だけということで元々処遇があ るのだったら、こんな問題は起きていない。答えは自分で出されている。 ○横溝分科会長  樋口委員、どうぞ。 ○樋口委員  今の労使それぞれの意見で、どうも一致するところがあるのではないかという気がし ます。それは、短時間労働法の問題と、これではカバーできない問題、非正社員の問題 というようなことで、どうもその辺が両方とも問題意識を持っているという提起があっ たのではないかと思います。  この部会では、あるいは今の審議段階では、短時間労働法ということで短時間労働者 について議論しているということで、何となく両方が、それだけで良いのか、他にもあ るのかというようなことを問題提起されているところがありますので、それはどこでや るのか、また、その点についてはきちんと議論するべきところを設けるというようなこ とを確認してもらいたいと思います。 ○横溝分科会長  そうですね。これは均等法のときもやはり。ここでは賄いきれない重大問題というの がありますから。 ○樋口委員  両方から、多分皆さん同じような問題意識を持っているところがありますので、その ところについては、やはり、きちんとしたものを考えていく必要があるのではないかと 思います。 ○村木審議官  労使双方あるいは公益からも同じ意見が出されたと思います。一つは年金の問題で、 パートタイム労働者の年金という問題提起でした。これは年金を審議する部署にしっか り引き渡しをするということ。それから、ワークルールの分野について言えば、例えば 有期の問題や関連の問題はたくさんあると思います。  ここで審議いただく中で、これはパートタイム労働者という切り口では難しい、違う なということがあれば、それは整理してそれぞれの担当のところへ、役所の部局へも伝 えると同時に、審議会として労働政策審議会がありますので、そういうところへしっか りと引き渡すということをやっていきたいと思います。 ○横溝分科会長  ありがとうございました。 ○樋口委員  私は、やはり推進基本法をつくるべきだという持論になっていくのですが、そこのと ころは検討していかないといけない時代を迎えているという感じがします。 ○横溝分科会長  それでは、論点整理(案)に基づく議論を一応終了したということにさせていただき ます。  ということで、本日はこれぐらいにさせていただき、次回は、最初に申し上げました 通り、これまでの労働者側、使用者側、公益側の意見を対比した資料を示して、総括的 な議論をしていただきたいと考えておりますので、よろしくお願いします。  本日の署名委員は、篠原委員と松井委員にお願いしたいと思いますので、よろしくお 願いします。今後のスケジュールについて、事務局より説明をお願いします。 ○香取総務課長  本日もありがとうございました。次回は、来週11月10日金曜日です。同じ14時か ら、同じこの厚生労働省の17階の専用第21会議室で開催しますので、よろしくお願い します。 ○横溝分科会長  では、本日はこれで終了とします。ありがとうございました。 照会先:厚生労働省雇用均等・児童家庭局短時間・在宅労働課(7876) 1