今後の労働契約法制について検討すべき具体的論点(1)
(素案)

 労働契約の内容が労使の合意に基づいて自主的に決定され、労働契約が円滑に継続するための基本的な考え方として次のようなルールを明確化してはどうか。

 労働契約の成立及び変更について
(1) 合意原則
 労働契約は、労働者及び使用者の合意によって成立し、又は変更されることを明らかにしてはどうか。

(2) 労働契約と就業規則との関係等
(1) 就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とし、無効となった部分は、就業規則で定める基準によることを、労働契約法において規定することとしてはどうか。
(2) 就業規則が法令又は当該事業場について適用される労働協約に反する場合には、その反する部分については無効とすることとしてはどうか。
(3) 合理的な労働条件を定めて労働者に周知させていた就業規則がある場合には、その就業規則に定める労働条件が、労働契約の内容となるものとすることとしてはどうか。
(4) ただし、労働者及び使用者が就業規則の内容と異なる労働契約の内容を合意した部分(特約)については、(3)によるのではなく、その合意によることとしてはどうか。

(3) 就業規則の変更による労働条件の変更
(1)
 使用者が就業規則を変更し、その就業規則を労働者に周知させていた場合において、就業規則の変更が合理的なものであるときは、労働契約の内容は、変更後の就業規則に定めるところによるものとすることとしてはどうか。
 上記イの「合理的なもの」であるかどうかの判断要素は、次に掲げる事項その他の就業規則の変更に係る事情としてはどうか。
@ 労働組合との合意その他の労働者との調整の状況(労使の協議の状況)
A 労働条件の変更の必要性
B 就業規則の変更の内容
 労働基準法第9章に定める就業規則に関する手続が上記イロの変更ルールとの関係で重要であることを明らかにすることとしてはどうか。
 就業規則の変更によっては変更されない労働条件を合意していた部分(特約)については、イによるのではなく、その合意によることとしてはどうか。
(2) 就業規則を作成していない事業場において、使用者が新たに就業規則を作成し、従前の労働条件に関する基準を変更する場合についても、(1)と同様とすることとしてはどうか。

 主な労働条件に関するルール
(1) 安全配慮義務
 使用者は労働者の生命、身体等を危険から保護するよう配慮しなければならないこととしてはどうか。

(2) 出向(在籍型出向)
(1) 使用者が労働者に在籍型出向を命じることができる場合において、出向の必要性、対象労働者の選定方法その他の事情に照らして、その権利を濫用したものと認められる場合には、出向命令は無効とすることとしてはどうか。
(2) 使用者が労働者に在籍型出向を命じることができる場合を明らかにすることとしてはどうか。

(3) 転籍(移籍型出向)
 使用者は、労働者と合意した場合に、転籍をさせることができることとしてはどうか。

(4) 懲戒
 使用者が労働者を懲戒することができる場合において、その懲戒が、労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とすることとしてはどうか。

 労働契約の終了等
(1) 解雇
 労働基準法第18条の2を労働契約法に移行することとしてはどうか。

(2) 整理解雇(経営上の理由による解雇)
 経営上の理由による解雇(以下「整理解雇」という。)は、使用者が使用する労働者の数を削減する必要性、整理解雇を回避するために必要な措置の実施状況、整理解雇の対象とする労働者の選定方法の合理性、整理解雇に至るまでの手続その他の事情を総合的に考慮して客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とすることとしてはどうか。

(3) 解雇に関する労働関係紛争の解決方法
 労働審判制度の調停、個別労働関係紛争制度のあっせん等の紛争解決手段の状況も踏まえつつ、解雇の金銭的解決の仕組みに関し、さらに労使が納得できる解決方法を設けることとしてはどうか。

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