今後の労働時間法制について検討すべき具体的論点
(素案)


 産業構造の変化が進む中で、ホワイトカラー労働者の増加等により就業形態が多様化している。このような中、企業においては、高付加価値かつ創造的な仕事の比重が高まってきており、組織のフラット化や、スタッフ職等の中間層の労働者に権限や裁量を与える例が見られる。
 また、労働時間が長短二極化しており、30代男性の約4人に1人が週60時間以上働いているなど、長時間労働者の割合の高止まりが見られる。仕事と生活のバランスを確保するとともに、過労死防止や少子化対策の観点から、長時間労働の抑制を図ることが課題となっている。
 このため、仕事と生活のバランスを実現するための「働き方の見直し」の観点から、長時間労働を抑制しながら働き方の多様化に対応するため、労働時間制度について必要な整備を行うこととしてはどうか。



 時間外労働削減のための法制度の整備
 (1)  時間外労働の限度基準
  (1)  限度基準において、労使自治により、特別条項付き協定を締結する場合には延長時間をできる限り短くするように努めることや、特別条項付き協定では割増賃金率も定めなければならないこと及び当該割増賃金率は法定を超える率とするように努めることとしてはどうか。
  (2)  法において、限度基準で定める事項に、割増賃金に関する事項を追加してはどうか。
 (2)  長時間労働者に対する割増賃金率の引上げ
  (1)  使用者は、労働者の健康を確保する観点から、一定時間を超える時間外労働を行った労働者に対して、現行より高い一定率による割増賃金を支払うこととすることによって、長時間の時間外労働の抑制を図ることとしてはどうか。
  (2)  割増率の引上げ分については、労使協定により、金銭の支払いに代えて、有給の休日を付与することができることとしてはどうか。

 長時間労働削減のための支援策の充実
 長時間労働を削減するため、時間外労働の削減に取り組む中小企業等に対する支援策を講ずることとしてはどうか。

 特に長い長時間労働削減のための助言指導等の推進
 特に長い長時間労働を削減するためのキャンペーン月間の設定、上記(1)の時間外労働の限度基準に係る特に長い時間外労働についての現行法の規定(法第36条第4項)に基づく助言指導等を総合的に推進することとしてはどうか。

 年次有給休暇制度の見直し
 法律において上限日数を設定した上で、労使協定により当該事業場における上 限日数や対象労働者の範囲を定めた場合には、時間単位での年次有給休暇の取得を可能にすることとしてはどうか。

 自由度の高い働き方にふさわしい制度の創設
 一定の要件を満たすホワイトカラー労働者について、個々の働き方に応じた休日の確保及び健康・福祉確保措置の実施を確実に担保しつつ、労働時間に関する一律的な規定の適用を除外することを認めることとしてはどうか。
 (1)  制度の要件
  (1)  対象労働者の要件として、次のいずれにも該当する者であることとしてはどうか。
i  労働時間では成果を適切に評価できない業務に従事する者であること
ii  業務上の重要な権限及び責任を相当程度伴う地位にある者であること
iii  業務遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をしないこととする者であること
iV  年収が相当程度高い者であること
  (2)  制度の導入に際しての要件として、労使委員会を設置し、下記(2)に掲げる事項を決議し、行政官庁に届け出ることとしてはどうか。
 (2)  労使委員会の決議事項
  (1)  労使委員会は、次の事項について決議しなければならないこととしてはどうか。
i  対象労働者の範囲
ii  賃金の決定、計算及び支払方法
iii  週休2日相当以上の休日の確保及びあらかじめ休日を特定すること
iV  労働時間の状況の把握及びそれに応じた健康・福祉確保措置の実施
V  苦情処理措置の実施
Vi  対象労働者の同意を得ること及び不同意に対する不利益取扱いをしないこと
Vii  その他(決議の有効期間、記録の保存等)
  (2)  健康・福祉確保措置として、「週当たり40時間を超える在社時間等がおおむね月80時間程度を超えた対象労働者から申出があった場合には、医師による面接指導を行うこと」を必ず決議し、実施することとしてはどうか。
 (3)  制度の履行確保
  (1)  対象労働者に対して、4週4日以上かつ一年間を通じて週休2日分の日数(104日)以上の休日を確実に確保できるような法的措置を講ずることとしてはどうか。
  (2)  対象労働者の適正な労働条件の確保を図るため、厚生労働大臣が指針を定めることとしてはどうか。
  (3)  (2)の指針において、使用者は対象労働者と業務内容や業務の進め方等について話し合うこととしてはどうか。
  (4)  行政官庁は、制度の適正な運営を確保するために必要があると認めるときは、使用者に対して改善命令を出すことができることとし、改善命令に従わなかった場合には罰則を付すこととしてはどうか。
 (4)  その他
 対象労働者には、年次有給休暇に関する規定(労働基準法第39条)は適用す ることとしてはどうか。

 企画業務型裁量労働制の見直し
  (1)  中小企業については、労使委員会が決議した場合には、現行において制度の対象業務とされている「事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務」に主として従事する労働者について、当該業務以外も含めた全体についてみなし時間を定めることにより、企画業務型裁量労働制を適用することができることとしてはどうか。
  (2)  事業場における記録保存により実効的な監督指導の実施が確保されていることを前提として、労働時間の状況及び健康・福祉確保措置の実施状況に係る定期報告を廃止することとしてはどうか。
  (3)  苦情処理措置について、健康確保や業務量等についての苦情があった場合には、労使委員会で制度全体の必要な見直しを検討することとしてはどうか。

 管理監督者の明確化
 (1)  スタッフ職の範囲の明確化
 管理監督者となり得るスタッフ職の範囲について、ラインの管理監督者と企業内で同格以上に位置付けられている者であって、経営上の重要事項に関する企画立案等の業務を担当するものであることという考え方により明確化することとしてはどうか。
 (2)  賃金台帳への明示
 管理監督者である旨を賃金台帳に明示することとしてはどうか。

 事業場外みなし制度の見直し
 事業場外みなし制度について、制度の運用実態を踏まえ、必要な場合には適切な措置を講ずることとしてはどうか。

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