第2章 ネットワークによる臓器あっせん業務の状況の検証結果


1.初動体制並びに家族への脳死判定等の説明および承諾
 平成17年2月5日10:00頃、喘息発作が出現し、救急隊要請後に意識消失。10:10、救急隊到着時、JCS300、脈拍触知できず、心電図上PEA。10:26、当該施設に搬送される。病院到着時CPAにてCPR継続。10:36、自己心拍再開するも、再び心臓停止。CPR施行し、10:50に自己心拍再開。11:01、PCPS装着。12:30、自発呼吸出現し、13:37にPCPS離脱となる。
 2月6日1:00頃、JCS200。5:00頃より循環不全を来たし瞳孔散大、JCS300。
 2月10日、家族より意思表示カードの提示あり。
 2月14日、臨床的に脳死と診断。14:15、家族がコーディネーターの話を聞く意思があることを確認し、病院は東日本支部に連絡。
 同日16:32、ネットワークのコーディネーター1名と都道府県コーディネーター1名が病院に到着し、院内体制等を確認するとともに、医学的情報を収集し一次評価等を行っている。
 同日18:30、ネットワークのコーディネーター1名と都道府県コーディネーター1名が家族(患者の夫、長女、次女、三女、長男)に面談。脳死判定、臓器提供の内容、手続き等につき文書を用いて説明。その際、家族構成等を十分に確認している。
 同日20:45に患者の夫が代表して脳死判定承諾書、および臓器摘出承諾書に署名捺印。家族の総意であることを確認し、コーディネーターがこれらを受理している。

【評価】
 ○コーディネーターは、病院から家族への臓器提供に関する説明依頼を受けた後、院内体制等の確認や一次評価等を迅速かつ適切に行っている。
 ○臓器提供意思表示カードについて、提供する臓器が○で囲まれていなかったものの、番号の1及び2が○で囲まれ、「その他」の( )欄に「すべて」と記載されており、平成16年12月24日厚生労働省通知に基づいて適正に取り扱っている。
 ○家族への説明等についても、コーディネーターは、脳死判定、臓器提供等の内容、手続きを記載した文書を手渡してその内容を説明し、家族から承諾書を受理している等、適正に行われ、家族に対して十分に考慮の機会が与えられた上で承諾が得られたものと評価できる。

2.ドナーの医学的検査およびレシピエントの選択等
 2月14日23:08に、心臓、肺、肝臓、小腸のレシピエント候補者の選定を開始。膵臓と腎臓についてはHLAの検査後、2月15日3:46よりレシピエント候補者の選定を開始している。
 法的脳死判定が終了した後、同日15:16より心臓、肺、肝臓、膵臓、腎臓の各臓器別にレシピエント候補者の意思確認を開始。
 心臓については、第1候補者の移植実施施設側が心臓の移植を受諾し、心臓の移植が実施されている。
 肺については、第1候補者、第2候補者、および第3候補者は、ドナーの医学的理由により、移植実施施設側が片肺の移植を辞退。第4候補者は、現段階で移植を受ける決心がつかないとの理由で、片肺の移植を辞退。最終的に、ドナーの医学的理由により移植の適応なしと判断し、両肺の移植が見送られることとなった。
 肝臓については、第1候補者の移植実施施設側が肝臓の移植を受諾するも、開腹後、脂肪肝を認めたため医学的適応なしと判断し、肝臓の移植が見送られることとなった。
 膵臓については、第1候補者は、移植を受ける決断がつかないとの理由で、膵臓・腎臓の同時移植を辞退。第2候補者(腎臓移植後膵臓移植)の移植実施施設側が膵臓の移植を受諾し、膵臓の移植が実施されている。
 左右の腎臓については、第1候補者の移植実施施設側が腎臓の移植を受諾。第2候補者は、感染症治療中のため腎臓の移植を辞退。第3候補者の移植実施施設側が一旦腎臓の移植を受諾するも、移植手術前に行った透析中に血圧低下しショック状態となり、最終的に辞退。第4候補者の移植実施施設側が一旦腎臓の移植を受諾するも、上位候補者が辞退したことを受け、再度意思確認の連絡を行ったところ、今回は移植をあきらめたことから辞退したいとの申し出があり、最終的に辞退。第5候補者は、家庭の事情により腎臓の移植を辞退。第6候補者の移植実施施設側が腎臓の移植を受諾し、第1候補者と第6候補者に腎臓の移植が実施されている。
 小腸については、登録患者不在のため、移植が見送られることとなった。
 また、感染症検査等については、ネットワーク本部において適宜検査を検査施設に依頼し、特に問題はないことが確認されている。

【評価】
 ○今回の事例においては、適正にレシピエントの選択手続きが行われたものと評価できる。
 ○ドナーの医学的検査等は適正に行われている。

3.脳死判定終了後の家族への説明、摘出手術の支援等
 2月15日10:12に脳死判定を終了し、主治医は脳死判定の結果を家族に説明。その後、ネットワークのコーディネーターより、情報公開の内容等について家族の確認を得ている。
 また、ネットワークのコーディネーターより家族に対して、肺と肝臓については医学的理由にて、小腸については登録患者不在にて移植が見送られることとなった旨を報告している。

【評価】
 ○法的脳死判定終了後の家族への説明等に特に問題はなかった。

4.臓器の搬送
2月15日にコーディネーターによる臓器搬送の準備が開始され、参考資料2のとおり搬送が行われた。

【評価】
 ○右腎臓について、当初の移植実施予定施設に搬送された後に、レシピエント候補者の辞退により改めて選定された施設に搬送されたものの、臓器の搬送は適正に行われた。

5.臓器摘出後の家族への支援
 臓器摘出手術終了後、コーディネーターは手術が終了した旨を家族に報告し、摘出医師や病院関係者等とともにご遺体をお見送りしている。
 2月17日、都道府県コーディネーターより家族へ電話。移植手術終了の報告を行う。
 3月13日、ネットワークのコーディネーター1名と都道府県コーディネーター1名がご自宅を訪問。厚生労働大臣からの感謝状を手渡し、移植後の経過報告を行う。
 5月22日、都道府県コーディネーターより家族へ電話。移植後の経過報告を行い、腎臓のレシピエントからサンクスレターを預かっていることを伝える。ご自宅へサンクスレター郵送。
 8月3日、都道府県コーディネーターより家族へ電話。移植後の経過報告を行う。
 前記した連絡、報告以外にレシピエントの退院状況や近況報告等、ネットワークのコーディネーターが適宜対応と報告等を行っている。

【評価】
 ○コーディネーターにより、ご遺体のお見送り、家族への報告やサンクスレターの送付等適切な対応がとられている。

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