06/10/31 第2回研修・技能実習制度研究会議事録 第2回 研修・技能実習制度研究会 日時 平成18年10月31日(火)10:00〜 場所 厚生労働省共用第7会議室 ○今野座長 それでは、第2回の研究会を開会いたします。本日の出席状況ですが、樋口 委員、森永委員、渡邊委員がご欠席です。前回欠席の北浦委員はご出席です。それでは、 前回はフリートーキングということで、研修・技能実習制度の実態等について活発にご議論 をいただきました。本日は、事務局から既に提案されている検討課題に沿って議論を進め ていきたいと考えております。まず事務局から資料の説明をお願いします。 ○職業能力開発局外国人研修推進室長(藤枝) では、資料の説明をいたします。お手元 の資料1の関係、資料2の関係と大きく2種類揃えております。資料1は、第1回研究会で いくつか宿題になった事項で、現時点で整理できたものについてご報告します。資料2につ いては、本日の議題の検討課題についての問題点の整理等を行ったもので、後ほど説明 し、ご議論いただければと思っています。  資料1−1です。前回、団体監理型の研修・技能実習制度についての問題点等のご指摘 をいただき、その中でいわゆる事業協同組合等における異業種の問題等の指摘がありま した。それぞれの団体監理型に占める異業種等の割合がわかる資料をという要請でした ので用意しております。  1頁です。(1)は、技能実習移行申請企業が所属する団体の種別で、技能実習移行申請 時に企業が属する団体が、全てで1,308団体あり、その内訳を見たものです。事業協同組 合のうち、同一業種が51%、異業種が28.3%です。  (2)のグラフは、事業協同組合に占める各業種の内訳を見たもので、事業協同組合の内 数で見ますと、異業種が37%で非常に多い数になっています。業種別では繊維・衣服、機 械・金属、食品製造という状況です。  2頁です。これはJITCOの巡回指導が入って、何らかの指摘があった受入れ企業が、ど ういう団体に属しているかを調べたものです。何らかの指摘ということで軽微なものも含ま れているとご理解いただければと思いますが、指摘があった4,141のうち、1,741が異業種 の団体に所属する企業、1,363が同一業種ですが協同組合に属する企業という状況です。  資料1−2です。これは前回示した受入れ費用について、それぞれ研修時、実習時にど のぐらいかかっているか、もう少し内容を分類してもらえないかというご指摘です。全体平 均だけで申しますが、共通費用で入国、帰国にかかる費用ですが、団体が48.5万円、企 業が85.3万円です。  研修時では、研修にかかる費用、研修手当等を合わせて、団体としては23.7万円、企業 としては145万円という数字になっています。  技能実習移行後ということで、技能実習にかかる費用、実習生の賃金は、企業は34.5万 円、311万円となっています。  受入れ管理費、送出し管理費は、研修・技能実習を通じてのもので、仕分けが困難な部 分がありましたので、別に計上していますが、企業ベースでは受入れ管理費で102万円、 送出し管理費で59万円となっています。徴収額というのがあります。これは技能実習移行 後は家賃等を実習生から徴収しますので、そういうものを引くと負担額としては、企業は 697万円余という状況です。  資料1−3、帰国後のフォローアップの状況です。前回この技能移転の効果を見る上で、 帰国後のフォローアップをしっかりすべきだというご指摘がありました。これに関しては財団 法人国際研修協力機構(JITCO)において、毎年1カ国を対象にして実態調査、現地調査 を行っています。ここには中国の割合が高いということもありますので、中国のフォローアッ プの状況を簡単にご紹介しています。  実際に現地に行ってのサンプル調査という形で、調査対象63人のアンケート調査になっ ています。それを見ますと、(1)技能の習得状況についは、計画どおり習得された、あるいは 大体習得されたというものが8割になっています。技能レベルの向上度は本人の認識です が、来日前を100とした場合は、帰国直前で142.5、現在に至っては161.8のレベルに達し ています。習得技能の活用状況は、大いに役立っている、やや役立っているが9割を占め ています。  2頁目は、実際に職位・職階として帰国後にレベルアップができているのかを、サンプル で調査したものです。41人の対象者に対して調査しましたが、派遣前はほとんどが一般従 業員だったものが、帰国後は主任クラス、係長クラス、課長クラスが、派遣前に比べて数が 増えています。  (2)は具体的な例ですが、縫製あるいは製造の企業において、派遣前の配属と帰国後の 配属を比べると、いわゆる現場労働者から一定の作業主任、管理者、班長に職位も上が っています。ご指摘のとおり、網羅的な調査は現状ではできておらず、こういったサンプル 調査や現地調査を通じて、フォローアップをJITCOを通じて行っています。  資料2−1以下をご説明します。資料2−1と2−1以下を外していただいて、2−1を中心 にご説明しますが、2−2以下を適宜ご参照いただきながら、聞いていただきたいと思いま す。資料1のご質問等は、後ほどいただければと思います。  資料2−1は問題点の整理についてということで、事務局なりに検討課題に沿って問題意 識、問題点を整理しました。本日はこれに基づいて議論したいと思いますし、そもそも事務 局の認識に間違いがあるならば、ご指摘いただければと思います。  1.「実務研修中の法的保護の在り方」については、まず規制改革・民間開放推進3カ年 計画においては、次のようなことが指摘されております。研修中の問題ですが、在留資格 研修が非就労資格と規定されていることから、研修手当は賃金ではなく、「生活する上で 必要と認められる実費の支給」という位置づけになっている。しかしながら、こういった研修 生を受け入れる企業の中には、これを悪用して実質的に低賃金労働者として扱っているも のも見られる。国内のみならず研修生送出し国からも適正化が求められている。  したがって、在留資格研修の在留活動の一部である実務研修中の研修生が、実質的な 低賃金労働者として扱われる等労働に従事させられることなく、本来の技能移転が適正に 行われ、研修手当が適切に支払われるよう、法的保護の在り方を幅広く検討し結論を得る ということが指摘されています。  不正行為の実例として、資料2−7に前回と同じものを配っておりますが、新聞等で報道 された範囲ですが、例えば、月額6万円の研修手当の名の下に、実際には単純労働と変 わらない労働実態のあったケースや、研修生に時給100円で残業させ、座学研修も十分で はないといったケース、研修中に実態として低賃金労働として扱われる例がいくつか指摘 されています。  戻って(2)の問題点の整理です。実務研修、特に実務研修と労働の区別という点です。 実務研修においては、より生産現場で実際に商品の生産に従事しながら、あるいは販売 やサービス業務に携わりながら、技術、技能、知識を習得する研修を行うということで、OJ Tとして実際の現場で働くという研修になっています。  資料2−2で対比表を付けていますが、実際に生産現場で作業に従事しますので、活動 内容としては、外見から見る限りにおいては、労働と区別が困難な面があるという状況で す。  適正な研修の実施を確保するために、どういうことを要件としているかと言いますと、資料 2−2の表の「受入れ機関等の責務」に書いてありますが、研修指導員を配置する。研修 計画の作成・履行を行う。表には書いてありませんが、研修全体の3分の1以上は非実務、 座学とすることなどが、研修生の受入れ要件とされています。  さらに技能実習への移行に当たっては、研修成果の評価要件として、技能検定基礎2級 レベルの評価試験に合格することが必要となっています。こういった要件をかけることによ って研修としての実効性を確保するという制度になっています。  資料2−1の2頁の矢印の下ですが、実務研修中においては、実際に生産現場で活動し ますので、通常の勤務時間内の活動については、外見上、それが研修なのか、資格外活 動たる労働なのかを明確にできるのかどうかという点が、1つ論点としてあるのではないか と考えています。  研修指導員の配置、研修計画の作成・履行が義務づけられていますが、零細中小企業 等組織的な労務管理が十分になされていない企業において、労働とならないような研修と しての性格を担保する措置が、実態として可能かどうかも議論する必要があるのかと考え ています。  3頁ですが、研修手当の支給の問題です。研修手当については、生活する上で必要とみ られる実費として支給されるとなっており、研修手当の水準としては平均6〜7万円です。 その金額については、入国の申請時に「研修生処遇概要書」に記載することになっていま すので、研究手当の不払いは不正行為として認定される制度になっています。  しかしながら、研修手当の水準、額については、「研修生及び技能実習生の入国・在留 管理に関する指針」等、法務省あるいは厚生労働省が定める運用基準において水準につ いてのとり決め、要件等はありません。したがって、金額を低く設定することも制度上は可 能となっています。したがって、悪用されれば実質的な低賃金労働となりかねない。先ほど の悪質の事例等につながっているという実態があります。この点については矢印の下で、 研修手当の水準、研修生の生活上の立場の安定を図るため、どういう保護を図っていくべ きかが、議論していただく点かと思っています。  4頁です。2点目の論点の「技能実習生に対する在留資格の創設」についてです。こちら も規制改革会議3カ年計画で指摘されていますが、現行上、在留資格、技能実習生につ いては「特定活動」として、「法務大臣が個々の外国人について特に指定する活動」とされ ています。この点については、技能実習生の安定的な法的地位を確立する観点から、その 在り方について早急に結論を得る、と指摘されています。  (2)の問題点の整理ですが、技能実習の出入国管理上の取扱いについては、「技能実 習制度に係る出入国管理上の取扱いに関する指針」(法務大臣告示)、「研修生及び技能 実習生の入国・在留管理に関する指針」(法務省入国管理局公表)という形のガイドライン 等、厚生労働省でも基本方針を示しておりますが、いずれにしても告示あるいは公示という 形で運用レベルの定めるところによっています。  矢印の下ですが、法律、政省令レベルにおいて、技能実習生の在留要件等が明記され ていないことから、法的な位置づけ、法的地位としては不安定ではないか、という点を指摘 しています。  5頁、3つ目の論点で、「法令以外の規定に基づく規制等の見直し」についてです。規制 改革会議で指摘されているのは、現在有効な規制としては、先ほどの指針によっているわ けですが、受入れ機関等の研修生、実習生に対する監理責任は、以上のような規制にお いては、法的な位置づけは曖昧で担保措置が不十分である。それぞれの性質を明らかに した上で、例えば入管法関連の政省令格上げを行うなどの整理を行うことについて検討し、 結論を得る。  その際の具体的な中身ですが、不正行為を行った受入れ機関の新規受入れ停止期間 は、現行は3年ですが、5年に延長するなど、規制を厳格化する等の方策についても併せ て検討するということが指摘されています。  資料2−4です。いま申し上げた不正行為は、法務省入国管理局が不正事案を認定して ペナルティを課すという対象です。現在は「不正行為」と「不正行為に準ずる行為」という2 種類があって、不正行為の中には6類型、不正行為に準ずる行為は5類型です。不正行 為としては、例えば第1類型では、研修・実習に係る書類との内容の齟齬で、二重契約、 実際の契約内容が違うとか、(3)の名義貸し。実際の研修先・実習先が書類と違う、別の企 業で研修をしているものです。  第2類型として、研修生に所定時間外、休日等に活動を行わせるなど研修ではなく、就 労活動と認められる行為をさせていた場合で、こういうものも不正行為です。研修生につい ては、所定外、休日はやらせてはならないことになっていますので、不正行為に認定されま す。  第4類型では、第1次受入れ機関、組合・団体が監査報告を怠っていた場合も不正行為 として認定されることになっています。  下の段の不正行為に準ずる行為については、不正行為までは至らないが、軽微というか、 そういう不正があったものということで、例えば第1類型でいけば、定められた非実務研修 の時間が、当初の計画より実際には少ない。第2類型でも、所定外、休日に行わせていた が、専ら就労活動を行っていたと認めるまでには至らないが、たまたま休日にさせてしまっ たとしいうものが当たるようになっています。  準ずる行為のほうで見ていただきたいのは第5類型です。研修における第2次受入れ機 関(企業)が不正行為を行ったことが認定された場合に、これに伴う第1次受入れ機関(組 合)の監理責任を問うというもので、企業が不正行為を認定されると、組合も準ずる行為と して認定されるというものです。  ペナルティですが、不正行為をした場合には新規研修生の受入れ停止で3年間の受入 れ停止になります。3カ年計画に改善策を提出して、改善が認められれば受入れが再開さ れるという仕組みです。準ずる行為は、改善策の提出を求め、適正な研修実習が実施でき ると認定されるまでは新規受入れが停止される仕組みになっています。  元の資料に戻って、問題点の整理です。研修技能実習に係る不正行為を行った受入れ 機関は3年間の新規受入れが停止される。第2次受入れ機関が不正行為をした場合は、 第1次受入れ機関について監理責任が問われ、不正行為に準ずる行為として認定される という制度です。  6頁です。このような中で、規制改革会議では、不正行為を行った受入れ機関の新規受 入れ停止期間を5年にしたらどうかということが提案されていますので、これについてどう考 えるか。  前回の研究会で、研修実習生の受入れのみを目的として組合が設立される場合がある。 本来の協同組合等の趣旨に反するような実態があるという指摘がありました。こういったケ ースについて、何らかの規制を行うべきかどうかという点も、併せて議論していただければ と思っています。  団体監理型における団体の責任です。いわゆる団体監理型、組合等が第1次受入れ機 関になるものについては、組合が受入れ企業、第2次受入れ機関を管理する。指導・監督 することとなっており、入管省令上も3カ月に1回受入れ企業の研修実施状況について監 査し、入国管理局に報告することとなっています。  しかしながら、技能実習移行後は、各受入れ企業で雇用契約の下に実施を行う仕組み であるという考え方で、団体の監理責任はありません。団体監理型については、問題とな る事例も多く発生しているが、現行の監理責任の内容は十分かどうか。また技能実習移行 後についても監理責任を負わせる必要があるのではないか、という点を議論していただけ ればと思っています。  7頁の4の「同等報酬要件の実効性確保」についてです。同等報酬要件については、「技 能実習制度に係る出入国管理上の取扱いに関する指針」において、「日本人が従事する 場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けることを内容とする雇用契約が実習希望者 と受入れ機関との間に締結されること」と規定されており、要件とされています。  しかしながら、前回の研究会で議論を行いましたが、同等報酬要件については、年齢、職 歴、技能レベル等が、それぞれ異なる労働者について、何をもって同一労働とみなすかと いう点が非常に難しい。また受入れ企業によっては、そもそも比較対象がいない場合があ るなど、実効性の確保に困難を生じている、という指摘がありました。  なお、書類上は実習移行申請時に、移行後の雇用条件書を添付することになっており、 そこに支給予定賃金を記載します。ただ、比較されるべき日本人の賃金を記載する欄はあ りません。支給予定賃金については、移行審査の段階で、例えば最低賃金法に反してい ないかといった点については、入国管理局でチェックを行っているという状況です。  矢印の下の同等報酬要件のチェックは、非常に難しい部分がありますが、何らかのチェッ ク方法は考えられないかといった点。実態として、技能実習生の年齢、職歴、技能レベル に照らし、著しく賃金水準が低くなることを防ぐため、何らかの工夫が必要ではないか。併 せて研究会でも議論がありましたが、企業側において、研修・実習に係る諸費用を負担し ていることについても考慮する必要があるのではないかという点です。  参考までですが、資料2−10は粗い比較ですが、賃金構造統計基本調査で25歳から29 歳の高卒、大卒の給与額と、前回資料で出した技能実習生に対する平均支払賃金(アン ケート調査)との比較を行いました。赤の折線グラフが技能実習生のレベルです。賃金構 造統計基本調査はパートも含む数字になっており、正確な比較はできませんが、単純に数 字を比較するとこうなっています。  以上ですが、説明を飛ばした資料を簡単に紹介しますと、資料2−3は研修実施計画の 記載様式です。これを研修時の研修の実効性確保の措置の1つとして記載させて、履行を 求め、これに沿った研修が行われているかどうかを見て、判断するものの1つです。  資料2−5は前回出したものと同じですが、不正行為の認定の内訳です。不正行為として 認定されたもののうち、下の表ですが、第2類型の所定時間外活動が42.3%と、団体監理 型でかなり多くなっています。これは所定時間外、つまり研修生であるにもかかわらず、時 間外労働をさせたケースで、研修中の不正行為が多いことが現れていると思います。  同じような話ですが、資料2−6です。これはJITCOで研修実習生から電話相談をホット ラインという形で受けており、それの数字です。数が多いのは時間外、休日の勤務、時間 外の研修になっており、研修にまつわる時間外の問題、研修手当の問題、賃金不払いの 問題などが、実習生・研修生、本人の相談からも多いことが窺えます。  あとは参考ですが、資料2−8、資料2−9は、既にご案内のことばかりですが、企業単独 型と団体監理型の受入れ要件の違いで、特徴的な部分を整理しております。資料2−8は 受け入れる研修生の要件ですが、企業単独型は送出し国の現地法人、合弁企業、あるい は取引先企業という形で、受入れ機関と関係のある企業からの受入れが前提です。  一方、団体監理型については、送出し国の推薦を受けた者であって、同種の業務に従事 した経験のある者ということで、受入れ企業との関係は問われないという状況です。  資料2−9は受入れ枠、人数枠です。企業単独型は常勤職員の5%以内ですが、団体監 理型については、規模によって人数の要件が若干緩和されています。右側に絵を付けて いますが、フローで研修生3人まで受け入れられますので、技能実習2年間を考えますと、 例えば日本人の従業員が3人の企業であっても、最大3年目は9人の研修生、実習生の 受入れになります。資料の関係は以上です。  参考で前回の議論の主な意見を事務局の責任でまとめたものを付けておりますので、参 考にしていただければと思います。 ○今野座長 それでは、先ほども申しましたように、今日の進め方は、ここで期待されてい る検討課題について、一通り議論をしてみたいと思っています。その前に、先ほど事務局 から説明いただいた前回の宿題に関する資料が、資料1という形で出ております。まずこ の点について、ご質問があればお聞きしておいて、それから各検討課題に入りたいと思い ます。前回の宿題の資料1はいかがですか。  2頁に、前回議論になって、協同組合の異業種型で問題が多いというお話があって、2頁 の(3)で、それに関連する資料があるのです。例えば、協同組合の同一業者1,363、異業種 は1,741ということで、異業種が一応大きくなっていますが、実際は母数が異業種はずっと 少ないのです。ということは、これよりずっと大きいということですね。前の頁にそれぞれ母 数が出ています。何となく目の子で計算すると、母数を勘案すると、異業種は同一業種の3 倍ぐらいの頻度で問題が起きているという感じだと思います。ご質問はございますか。  それでは、宿題は良くできたということで、次の議論に入りたいと思います。今日で終わる わけではありません、これから何度も議論をしますが、1度全部を少しずつやっておきたい という趣旨ですので、議論が途中でも検討課題ごとで切らせていただくことがあるかと思い ますが、ご理解いただければと思います。  まず資料2−1の「実務研修中の法的保護の在り方について」、何でも結構ですので、ご 意見をいただければと思います。前回は大変活発でしたので、今回も活発にお願いしま す。  私から質問します。研究手当の支給で6〜7万円が実態だという話ですが、これは入国 申請のチェック時に何か基準をもっているのですか。 ○外国人研修推進室長 金額については基準はありません。 ○今野座長 本当に実態として6〜7万円ということですね。でも建前上は生活する上で必 要と認められる実費ですから、基準はないのですか。これで2万円と言ったら死んでしまい ますね、内部の何かないですか。では、またあとで、そのような疑問点があったということ で。 ○上林委員 いまの水準のことで難しいなと思うのは、ヒアリングをしてみると、6万円から 7万円の手当で生活は十分できてしまって、この手当から5万円ぐらい貯金をしたり送金を したりしているのです。事業主は何を心配するかというと、そんなに食費を削ったら体に悪 いでしょうというので、お弁当は現物で支給するという形をとることがあって、生活水準が非 常に違うものですから、生活水準だけでやっていくと、定期研修手当が上がらないです。彼 らの生活水準が非常に低い所に置かれてしまっているのは、どのように解釈したらいいか 難しいのです。ほとんどお金を使わないというのが実態です。 ○今野座長 それはちゃんと払っても使わないという意味で生活水準を落とすのと、もとも と要らないというのと2種類ありますよね。 ○上林委員 はい。できるだけお金で持って帰りたいそうで、生活レベルの問題は自主的 に決めるものですから、日本の生活水準の意味合いでも相当違ってしまうということは指摘 できるかと思います。 ○今野座長 いま言われていることは、先ほどから出ている生活する上で必要と認められ る実費をどう考えるのかということですが、普通に考えると、日本人が日本で生活する上で 必要とされる実費と同等のものを払えという感じを何となく受けますね。 ○上林委員 そうです。 ○今野座長 それで払っているのだから、あとは本人の問題ですね。 ○上林委員 そうです、そのとおりです。 ○今野座長 ただ、おっしゃられているように、どうせ1年とか、2年しかいないのだからと言 って、彼らは食費を削るのです。 ○山川委員 問題設定の質問で、1〜3頁にかけてですが、研修手当の水準、研修生の 生活上の立場は不安定であると言った場合に、いま議論があったような研修手当の水準 が客観的に低いかどうかという問題と、もし労働であるとしたら、それは研修手当ではなく、 賃金として取り扱うべきだということになるから、むしろそこは労働ではないような措置を担 保すべきだというのが、1頁目の問題の趣旨ではなかろうかと思います。  3つ目の問題は、研修手当の水準はともかく、それがきちんと払われているのかという問 題もありそうな感じがします。研修手当の水準、生活上の立場が不安定でありというのは、 そのうちどれが主眼になるという趣旨なのでしょうか、あるいは3つとも全部主眼なのでしょ うか。 ○外国人研修推進室長 そこはちょっと書き方があれかもしれません。まず研修手当がし っかり支払われるかどうか。その水準として、手当として適当かどうかという点と、実態とし ては、労働と外見上も変わらない中で、研修手当という形での保護がいいのか、本当にそ れでいいのかという、そもそもの議論も含めた形だと思っています。 ○山川委員 最後の点に関連しては、労働者概念の問題に関わってきて、いろいろトレー ニングをしている状態にあるものでも労働者としては扱われないというのは、昔通達をいく つか見たような気がして、いくつか既にあると思いますが、外見上は変わらないというのは、 ほかのパターンにもありそうな気がするのですが、参考にできるようなものはあるのでしょう か。  記憶があまりはっきりしないのですが、学校で船員の養成だったでしょうか、教育と労働と の区別がはっきりしない例はいくつかあったような気がするのですが。 ○外国人研修推進室長 詳細は調べてみますが、基本的に労働基準法の労働者というの は、事業に使用されるものであって、賃金が支払われること。労働者のメルクマールとして は、いわゆる使用従属関係があるかどうかという観点で、これまで労働基準法の解釈とし て、個々のケースによって解釈通達が出されております。  技能実習制度をスタートさせたときの解釈としても、研修については基本的に報酬が支 払われない活動、報酬を支払ってはいけない活動ということで、制度上労働者ではないと いう整理をされています。そこは実態判断としてどうかという点は出てきますが、制度上は あくまでも研修という形で、労働者性は否定した形で、これまできています。  問題意識としては言うまでもありませんが、そうは言っても悪質な事例があって、研修と いう名の下に実際には単純労働として使われている。ここをどう考えるかという点で、一方 で研修の実効性を高めることによって、これを防ぐというのが1つの視線だろうと思っていま す。そもそも実態がないのではないかと割り切ってしまう考え方もあるかもしれませんが、 そこをどう考えていくかだと思っています。 ○今野座長 山川委員の法律的な勘では、こういう実態があると、労働者性ありですか。 ○山川委員 1つは、時間に対応して報酬が増額されるとか、事業の必要に応じて時間外 の研修を命ずるということになると、研修目的からは外れてくるのかと思います。  一方で教育においても指導するということはあるわけで、教育的観点から規律や指導を 課するのは、必ずしも労働関係になるわけではないだろう。これだけ働いたからこれだけの 報酬という発想になると労働になるのかなというか、総合判断で労働者性を認めるプラスフ ァクターになるということだと思います。 ○丹野委員 今までのところ、一応研修手当が6〜7万円出ると仮定したときに、それでど うかという話が続いているのですが、いちばんひどいのは2万円とか3万円しかもらってな い人が結構いるほうが非常に問題で、3頁の「基準がないために低く設定することも可能」 ということを、まず取り除いてしまって、逆に言うと、6〜7万円が最低になるような仕組みを まず作らないと。しかも上林委員が言ったように、彼ら自身が自分が必要とする額自体は 低いわけです。とりわけ途上国、しかも発展段階が日本よりも遅れた国から呼べば呼ぶほ ど、無限の低い日本円でしたときの必要額が低くなってしまうという関係が生まれてこざる を得ないのです。やはり当事者の必要性から設定するのは相当不可能で、それをやってし まったら、本当にいくらでも低くできてしまうという話にしかならなくなるから、どうやってミニ マムを設定させて、それがある種の受け入れる側にとっての責任と結び付くような形で制 度設計する以外にないのではないですかね。 ○今野座長 ところで、2〜3万円でどうやって食べているのですか。 ○丹野委員 上林委員が言ったのと同じですよ、食べられるのですから。 ○上林委員 全部お米と小麦粉で食事を作っていれば。 ○今野座長 それでもいいということはないが、それでどうにか生活をしていても、お金が 貯まらないでしょう。本当に勉強したいということで2〜3万円で我慢するわけ。 ○丹野委員 2〜3万円でも貯めてしまうのです。 ○今野座長 それでも貯めてしまうわけですか。 ○審議官 企業単独型であれば食料は直接実物支給でやっている場合もありまして、そう いう所では2〜3万円ということがあるのです。ですから研修手当の額だけではなくて、実 費支給でどのぐらいやっているかということの組み合わせだろうと思いますので、単純に2 〜3万円だとすると大変なことですが、その辺の実態を把握する必要があると思います。 ○上林委員 研修生は食費は企業主の負担です。ですから、1袋60kg入りのお米とか、 小麦をそのまま渡すのです。それで麺とかご飯を作って、野菜は近所の人がくれたりするこ ともあるし。 ○今野座長 一応食費は事業主負担でしたっけ。 ○丹野委員 研修生はそうですよね。 ○上林委員 ええ、研修生は。 ○丹野委員 実習生になると。 ○上林委員 払うのです。 ○今野座長 でも、先ほどの3頁目の最初に、「研修する上で必要と認められる実費(食費、 衣料費、教養娯楽費)として研修手当が支給」と書いてあります。そういう事例を私もいくつ も見させていただきましたが、食費は持たなくてもいいのかなと思ったのです。善意でもって いるということはいくらでもあるのです。 ○審議官 マストではないということですね。 ○今野座長 マストではないと私は認識していたのです。 ○審議官 住居費や研修費用などはマストで企業が持たなければいけませんが、食費に ついては直接出している所も多いわけですが、そこはマストではないのです。ですから、実 際に食料を企業が出す代わりにお金で渡して好きなものを買ってもらうということもありま す。 ○今野座長 そうすると、例えば2万円出して、現物支給でもいい。 ○外国人研修推進室長 そこは企業の組合せです。マストなのは住居費と研修費です。 住居と研修費はちゃんと企業の負担でなければいけないということだけが決まっていて、そ れ以上は任意です。 ○今野座長 食費はマストではないわけですね。 ○外国人研修推進室長 省令上、要件として必ずやらなければいけないことは、住宅の確 保と研修の実施等で、研修手当については何ら定めが省令や告示レベルではないのです。 法務省が示している指針において、食費や衣料費等について実費を支給することは報酬 に当たらない。報酬に当たらない上で定めた以上は、しっかり払いなさいという形になって います。 ○今野座長 そうすると、実際に研修手当というと我々はキャッシュを考えますが、極端に いえば、何でもいいということですね。生活する上で必要と認められる実費の「費」が、実は キャッシュではなくて、実物でも現物でもいいという話で、極端な話はゼロ円でもいい。食費 から衣料まで全部渡して。 ○外国人研修推進室長 極端なことを言えば、研修手当は支払わなくても問題はありませ ん。 ○山川委員 平均6〜7万円というのはキャッシュのことですね。 ○外国人研修推進室長 そうです。 ○今野座長 ですから、これも実際の平均だから、6万円払って、かつ、食費を持っている 非常にやさしい事業主がいるわけで、そういうのも全部含めた平均が、6〜7万円というこ とですね。 ○丹野委員 むしろ平均以下の所に問題があって、平均の事業主はたぶん問題はそれほ どないと思います。 ○山川委員 いまのところで言いますと、研修生処遇概要書には研修手当を通貨で払うか、 現物で支給するか、その辺りは記載しなくてもいいのでしょうか。 ○今野座長 そういうことになりますね。 ○外国人研修推進室長 調べます。 ○今野座長 もともと生活する上で必要と見られる実費それ自身が非常に曖昧な概念で、 かつ、支払い形態も曖昧で、二重の曖昧になっているのです。 ○山川委員 その辺は研修生なりに当初から情報開示されているのかどうか。二重契約 の話がありますが、入管に出している書類と本人に開示されている情報が違う場合もあり そうな気がしますけれども。 ○外国人研修推進室長 お手元の概説の18頁の研修生向けの処遇通知書と同じような ものを入管にも出すことになります。様式上は18頁の4で「研修手当月額いくら(食費を含 む)を支給する」と書いてありますが、ここも任意ですので、書き方は必ずしもこれでなけれ ばいけないというわけではありません。 ○北浦委員 いまの議論ですが、生活する上で必要と認められる実費というのは、厳格に 解釈すると、生計費みたいな話になるので、国内であるか海外であるかという基本問題が ありますが、日本国内ということで考えると、国内の生計費で、それを前提にして考えると、 本当は最低賃金と無関係には存在しないことになるのです。ただ労働ではないというところ で、ここの視線がなるわけですから、生活する上で必要と認められる費用を全部保証する ということであれば、本当は賃金を払うのと同じになってしまうのです。しかし研修中の研修 手当というのはそういう性格なのかどうか。日本においての一般企業の国内の従業員に対 して研修手当で支給しているときには少額です。これは何かというと、研修が円滑に遂行さ れるために必要な限りの費用を補助する。ですから、食費ぐらいを出してあげるという形で やっています。教材費は会社の費用でやるわけです。  そうすると、ここの「生活する上で必要と認められる実費」をそこまで強く読むのか、研修 をするに際し、必要と認められるものを最低限供するという研修手当の本来の考え方で出 すとすれば、本当のことを言うと、裕福であればゼロ円の場合もあり得るし、食費だけでも いいではないか、衣料費まで出す必要があるかという議論になってしまうのだと思います。 ただ労働かどうかという線が入ってくれば、それは明らかに賃金かどうかの対比で却下しな ければいけない。これは山川委員が言われたように、そこの峻別でまず勝負がついてしま います。  もう1つあるのは、労働であったにせよ、徒弟訓練かどうかという問題になってくると、最 低賃金の適用があるのかないのかというもう一種の類型が出てくるので、そこの対比で議 論がされるという感じではないかと思います。これ自体は、要件的には日本のOJTと大体 同じです。ただ1点違うのは、非実務研修の時間が3分の1以上というところで、実務から 外れるところがあるということと、想定できるのは、業務遂行についての指揮命令が働かな い、業務の必要に応じて残業を命じたりしないということで解釈しているのかと思います。 明らかにOJTとかなり近いところがあるので、その視線のところで辛うじて労働との対比が 出ているのではないでしょうか。それは最低賃金であるかどうかというところで議論すれば いいのかと思います。  前提となる研修手当というのは、本来はここに書かれている生活に必要とする実費を出 すものなのかどうかと考えたほうがいいのかなという感じがします。このことと労働の実態 に対して払わないということは別の問題という感じがします。 ○今野座長 先ほど言われた日本で研修手当で本当に最低限払うというのは、どういう例 ですか。 ○北浦委員 研修中の期間においての手当というのがあり得るとすればですね。 ○今野座長 実態としてはあまりないのですか。 ○北浦委員 実態はないと思います。ただ研修中に必要な費用を研修という行為に対して 奨励するような意味で手当を出しているのはありました。手当の根拠に対して、それを実費 的に出すかどうかは別です。本来は自分で勉強するために、何かを買ったり、自学のため に必要とするものもあるだろうという考え方もありますし、食費は会社が出さないとなれば、 期間中の食費分については出すから、それでちゃんと用意しなさいという考え方もあるだろ うと思います。それはいま手元にありませんので想定で言っているだけです。おっしゃった ように実態としては、全部を見てしまうとないというのが普通だろうと思います。 ○今野座長 考え方としては、例えばインターンシップを比較的長期で3カ月とか半年やっ たときに、給料を払いません、交通費ぐらいは出してあげましょうかというのですね。 ○北浦委員 研修手当というのと、生活するのに必要な実費というのが、ある意味では別 概念的で、どちらを重視するかで考え方が違います。 ○今野座長 1つの考えとしては、海外から来ても勉強するのだから、自分の生活費は自 分で持て、その代わり先ほど言われたような研修手当をちょっと払うという考え方で、海外 から来て、最低限生活しなければいけないから、その分だけは担保しないと実質上、研修 ができないから、このようにしたのだということですかね。 ○丹野委員 賃金だけではなくて、法的保護というもう少し広い範囲になると思いますが、 研修生の問題は賃金と、もう1つは労災事故の問題だと思います。事故があったときに、1 年目、2年目、3年目で、フローで9人までなりますという表があるように、50人以下の場合 だと、極端な場合、1人とか2人の会社でもここまで増えることが可能になってしまうのです。 そうなったときにほとんどの研修生は現業職場で働くわけで、常に事故と隣り合わせのよう な仕事をやっているわけです。そこで技能が伝えられた上で尚かつ安全が図れるということ になると、従業員の割合に対して研修生の人数枠を決めるという仕組みではなくて、現業 職場の職員数に対して入れられる人数を決めるという形にしないと、現業職場での安全を 確保した上で当事者にきちんと技能が伝わるということは本来あり得ない設定だと思うの です。従業員の数に対して考えるのではなくて、その職場に現業職の人が何人いて、その 中に何人の技能を覚えなければいけない人を配置するのか、そちらのほうからもう一度考 えたほうがいい。そのほうが当事者にとっての法的保護ができる。少なくとも現実的な安全 も担保されるでしょうし、そういうことも考えたほうがいいのではないかと思っているのです。 ○山川委員 いまの話とも関連があるのですが。法的保護の在り方と言う場合に、いま書 かれているのは入管法の話が多くて、こういうことをやると入管法に違反する、したがって 受入れ停止とかということなのですが、ほかにもいろいろあるのではないかという気がする のです。労働者性があれば労基法の適用ということになるのですが、労災ですと、労働者 性がなくても一定限度拡大しているケースもあります。  あとは理論上思いつくだけで言いますが、いちばん強いのが監督・指導みたいなもので 法律の適用自体を拡大する、しないということと併せてあります。もう1つは入管法のレベ ルのこと。さらに、情報開示のようなことがなされれば、それによって権利義務関係とか権 利主張等ができるというような、3つぐらいあるのかなという気もします。つまり、監督・指導 的に行政が行う場合、入管法のレベルが行う場合、そして、権利義務関係という当事者間 の権利義務の話として行う場合と、3つの法的保護の視点があるような気がしますが、そ れらが絡んでいる。例えば二重契約を行った場合に、入管に出した書類は必ずしも研修契 約の内容を修正しない、という判例があるのです。労働基準法ですと、法律に違反する契 約はそのとおりに修正されますが、入管に関してはそういう仕組みがないものですから、入 管と、労働契約と言えないとしても、直接の当事者間の契約関係との間のつながりが切れ る仕組みになっている気がして、それについて何らかの検討が可能かなという気がするの ですが。 ○今野座長 まだご議論があろうかと思いますが、時間の関係もありますので次の検討課 題に移らせていただきます。資料2−1の4頁の、技能「実習生に対する在留資格の創設」 について、5頁の「法令以外の規定に基づく規制等の見直し」について、次にご議論いただ ければと思います。4頁の、特定活動のような曖昧なものはやめましょうというのは、そうか なと思いますけれど。 ○上林委員 私もそう思います。技術とか熟練技能とか、そういうものに比べて人数が多 いのにもかかわらず、ワーキングホリデーと一緒になっていて分からないですから、このほ うが明確になると思います。 ○今野座長 これはもうそれで決まりですか。 ○上林委員 いいかなと思っています。 ○今野座長 これは私も知らなかったのですが、資料2−4のペナルティのところで、不正 行為があったとして、そのときのペナルティで、研修生・技能実習生の帰国指導等となって いますが、研修生も帰らなければいけないわけですか。 ○外国人研修推進室長 基本的には帰らなければいけません。 ○今野座長 本人は悪いことをしていないのに。 ○外国人研修推進室長 そこは少し保護に欠けるのではないかという指摘がありまして、 例えば同じ第一次受入れ機関傘下の企業に就職をあっせんできる場合は、できるだけ入 管、JITCO、ハローワークで次の研修先を探すといったことは実務上、運用上はしておりま す。ただ、不正行為があったと認定されれば実習生の受入れ事業そのものがそこでストッ プというのが原則で、第一義的には帰国指導という整理でやっております。 ○北浦委員 6頁で、受入れ事業のみを目的として協同組合等を新設するとありますが、 これは実態としてあるのですか。 ○外国人研修推進室長 結構多いのです。 ○北浦委員 協同組合の建前は別のことが書かれているわけですね。 ○外国人研修推進室長 もちろん、そうです。 ○北浦委員 ですが実態として、そういう目的というのか、事業しかやっていないということ ですか。 ○外国人研修推進室長 そうです。 ○北浦委員 すると「目的として設立をし」というところはチェックできない、そういうことはあ り得ないから。 ○外国人研修推進室長 前回の議論でもご紹介がありましたし、私もこの間ある業界団体 の方から聞いた話ですが、実態として、ある受入れ事業をやろうと思っている方が、とにか く会員をまず勧誘して、研修生の受入れをやらないかということで企業に声をかけて集めて、 それをもって組合を組織するということが実態として行われているということです。 ○北浦委員 その協同組合については、共同受注であるとか、一般の協同組合で行われ ているような事業はおよそ行われていないと。 ○外国人研修推進室長 定款上は書いてあっても、実態としてはやられていないケースが あると聞いております。 ○今野座長 そうすると、実態上協同組合の活動をしていることを認定の条件にすれば済 むことですか。 ○外国人研修推進室長 本来の共同事業をちゃんとやっているかどうかをどこまでチェック できるかという問題はあるにせよ、今はその点も問われていないということです。 ○上林委員 ほかの国ですと、単純労働者の受入れが法律上でも可能になっていまして、 問題が中間の職業紹介団体にものすごくあるのです。それが既に人材派遣ビジネスとして 出来ていて、そこにいつも問題があるのです。例えば、イギリスでは移民業者ライセンス制 度のような形で登録をする。あるいは、この間行ったマレーシアでは、優良団体については リストを作って、そこの団体からのみ受け入れてくださいというような形で必ず何らかの規制 が入っているようです。日本の場合はまだそういう形で大規模に入れていませんから、問 題の発生は非常に少ないと思いますが、もしここの部分が今後大きくなるとしたら何らかの 措置が必要かなと考えています。だから、いま何かするとしたら、予防的な措置のほうが大 きいと思います。 ○今野座長 いまおっしゃられたイギリスのような例だと、どうするかは別にして、事業協同 組合の中でもここはマル適、とマル適マークをちゃんと行政が付けるということになるわけ ですね。 ○上林委員 その代わり、設立は普通の会社と同じように自由だけれどと。 ○今野座長 マル適というのは、どうやるのですか。 ○上林委員 知らないのですが、誰を雇用しているかさえ分からないような状態の中で、 個々の労働者について把握することが難しいので、あっせん団体に関してのみ把握が可 能だと、そういう考え方なのです。 ○丹野委員 これは先ほどの法的保護の問題とも関係してくると思うのですが、この問題 を考えるときの当事者と言ったときに、受入れ先と管理団体というのがまず頭に浮かんでし まうのですが、本来いちばんの当事者は研修生自身のはずなのです。問題は、研修生自 身の声を汲み取る場所がないということが1つ大きな欠陥としてあって、不正が発覚するた めにも、労働者ではないからどこまで権利を主張できるかということはあるかもしれません が、とにかく、この人たちの権利がどこにあるかというのを一旦決めて、その権利が侵害さ れたときに、この人たちが声を上げる場所をきちんと作らないと、そもそも不正が行われて いるということを把握すること自体、氷山の一角だけを常につかまえてくるということしかで きないのではないでしょうか。 ○今野座長 いまは一応JITCOに電話することになっているわけですか。 ○丹野委員 そうです、それだけになっています。ただ、当事者はJITCOなんてほとんど知 らないですよ。 ○外国人研修推進室長 仕組みとしては、実習移行の段階で一人ひとりに手帳を無料で 必ず渡すようにしておりまして、日本の労働基準法や公的な社会保険の仕組みと合わせ て、相談窓口が、行政機関も含めて一覧になった手帳が各実習生にJITCOから渡るよう になっております。 ○今野座長 それは実習生のほうですね。 ○外国人研修推進室長 ええ、実習移行時に。 ○今野座長 研修生に対してはどうですか。 ○外国人研修推進室長 研修生の段階では、一人ひとりにいくものはないと思っていま す。 ○審議官 技能実習の内容についてガイドブックを作り、それを送出し機関にも配付してい ますから、来日前にも、見ようと思えば概要は知ることができるという形ではあります。その 中に基本的なこと、つまり研修生の立場とか実習生の立場について各国語で書かれてお ります。そういうものは作って配付はしているわけです。 ○今野座長 実習生の場合、一応労働者だから既存のシステムを使えるわけです。しかし、 研修生の場合、既存のシステムというのはJITCOくらいですか。 ○丹野委員 ほとんどないと思います。この報道のところに、全統一労組が声を上げてい るという話が出ているように、これまでは、ほとんど合同ユニオン系しかやらないのです。要 するに、企業別組合は取り扱わない。個人加盟ができる地域ユニオン、合同ユニオンが若 干そういうことに対して、やりたいところはやっているというだけで、ほかはなかなか雇用者 は厳しい。特徴的な人が多いですから、そういう露骨な人たちと交渉したいなどという人は 普通はいません。得意なユニオンがあるところで何とか処理がなされているだけで、そのほ かは、問題があったとしても、ほとんど出てこないで済んでいることのほうが多いのではな いですか。 ○上林委員 携帯電話を持つこと禁止とかというのがありまして、電話するのも大変なので す。 ○今野座長 先ほどから話が出ていますが、偽装協同組合みたいなものを排除しようとい うことで、ここでは統一できたと思うのですが、いいアイディアはないのですか。 ○丹野委員 書類上は区別できないですからね。 ○今野座長 1年間なり2年間実質的な活動をしているということで担保しようというアイデ ィアが先ほど出ましたが、いろいろ回られて、ほかにないのですか。 ○丹野委員 それは難しいと思います。 ○今野座長 上林委員、アイディアは思い浮かびませんか。 ○上林委員 いやいや。 ○今野座長 そのうち考えておいてください。 ○北浦委員 なかなか難しいのです。「のみを目的として新設し」という所はまずないだろう、 意思はあったとしても見えないと思います。そうすると、あとは実態があるかどうかというと ころで区別するのが1つですが、やってみたが受注がこなかった。つまり、事業協同組合の 本来目的でやってみたけれど、注文が何もこない。極端に言うと、それもあり得る。一生懸 命やったのだけれど仕事が来ない、そういう意味で活動実績がない所を排除してしまうとい うことなのかどうか。しかし、協同組合として活動実績があるか無いかということと、これの 適性があるかどうかということとは別の問題になってしまいますので、そこは実態で判断す るというのも、一定期間を置いて考えるという意味合いはあると思います。 ○今野座長 考えてみると、協同組合等で研修生を受け入れると、ちゃんと管理しなさいと かと一定の責任はそこにかかるわけですね。そうすると、その能力があるかどうかを内容 的に評価するという仕掛けは何かあるのですか。協同組合だったらいいとかという外形的 なことではなくて、一応、監理責任があるわけですね。 ○外国人研修推進室長 はい。 ○今野座長 そうすると、これこれのことはしなければいけないという能力を持っていること というのは当然付いてくるはずですが、それについてのルールは何かないのですか。例え ば、最後の企業に行くと、指導員がいることとかと言って内容上のルールがあるわけです が。 ○北浦委員 研修時の指導員の配置や研修計画の作成というのは、第一次受入れ団体 (組合)のほうにもかかっており、そちらもそういう指導体制は実際に整えなければいけない ということもございます。団体監理型については、研修事業そのものを組合と企業、両方で 責任を持ってやるという仕組みになっていますので、団体も何もしなくていいという形にはな っておりません。ですから、研修指導体制や宿泊施設の確保についてもどちらかでちゃんと 負担して、両者相まって責任を持つようにということが本筋です。受入れ先の企業だけに宿 泊施設があり、指導員があり、実態として一次組合が何もしていないという場合もあるのだ ろうとは思いますが、制度上は両方で責任を持ちなさいということになっています。 ○今野座長 しつこいのですが、制度上は、例えば団体は指導員を1名置かなければいけ ない、ということはないのですか。 ○北浦委員 そこまではないのです。 ○丹野委員 その問題については、今回宿題としてやっていただいた資料1−2で、企業 のときと団体のときとで研修機関の費用が全然違います。企業では145万かかっているの が団体だと23万7,000円。ここまで差があるというのは、ある意味やっていない、研修らし きものがほとんどない。特に研修機関の費用だけで見れば、企業が52万円かけているの に対して、団体では10万1,000円というのは、そういうことではないかなと思いますが。 ○上林委員 それはどこにあるのですか。 ○丹野委員 資料1−2の上の表の全体平均の左側の所に、研修機関のことが書かれて います。 ○今野座長 これは元のデータで確認していただきたいのですが、こういう可能性もある。 企業は団体に参加費を払っている、そして団体はそれを収入としている。ただ、団体が直 接払っている費用はこれには計上していないという可能性があるのです。 ○丹野委員 そうすると、企業のほうは二重に加重されている可能性もあるということにな るわけですか。 ○今野座長 いやいや、そういう意味で二重に集計していないのです。つまり、企業は40 万円団体に払いました、団体は40万円受け取りました、しかし団体のほうでは収入にして いない、支出項目にしていない、という可能性があるので難しいのです。それは元を見ない と分からないのです。 ○丹野委員 なるほど、単純な比較はできないわけですね。 ○上林委員 研修機関の団体がやっているのは、日本語の集合研修等の費用を出してい るのであって、こちらのほうは別の費用ではないかと思うのですが。 ○今野座長 私の一般的な認識は、団体がしっかりしている所は、団体がしっかり企業か ら金を取るのです。そして、団体の予算というのはそれを含めて大きくなって、それでやる。 ところが、弱いところはみんな企業がやる、そういう感じだと思います。  いま議論していることに関連してもう1つの大きな論点は、技能実習中に何か問題が起き たときに、団体に監理責任を負わせなくていいのかという問題提起があるのですが、その 点についてはいかがですか。 ○山川委員 ちょっと質問なのですが。前提として監理責任というのを確認したいのですが、 監理責任の具体的な内容は、これまでどこかに紹介されていたでしょうか。 ○外国人研修推進室長 監理責任の具体的な内容としまして、これも指針レベルですが、 入管局公表の指針の113頁に第一次受入れ機関の役割ということで、監理責任として何 を行うべきかが書いてあります。実際に必ずやらなければいけないこととしては、3カ月に1 回、受入れ企業の研修実施状況について監査をして入管に報告する、という具体的な手 続きも書かれています。 ○審議官 実習と研修の監理責任ですが、実習になった場合の責任については120頁に 書かれています。第一次受入れ機関の役割というところに、技能実習移行後、研修の第一 次受入れ機関は技能実習生を受け入れる機関ではなくなります。したがって、1−(2)で、 実習実施機関が責任ある技能実習活動を行う必要がある。したがって、第一次受入れ機 関は技能実習活動の本体に直接携わることは必要ありません。しかしながら、研修を管理 している実態に鑑み、技能実習生本体の活動、すなわち技術等の習得以外で技能実習の 適正化のために役立つ事項を行うことが望ましいといえますという形で、(1)〜(4)までの事 項について留意してほしいという形になっています。監理責任を直接負うのではないが望 ましい、という形の整理になっております。ここが研修と実習で違うところです。 ○今野座長 当然ですが、「望ましいこと」をしていなくても、現在別にペナルティはないの ですね。 ○審議官 はい。 ○丹野委員 問題のある団体を排除するという観点からすれば、コストを負担させるため にも、後まで責任を持つということにさせるしかないのではありませんか。どこまでということ は当然あるにしても、何らかの形で実習生移行後についても責任をどこかで持ってもらう。 ○今野座長 位置づけは普通の就労に近いのですが、そういうことは法的に可能なのです か。 ○山川委員 それは何を管理して責任を負うかということでしょう。研修の適正さについて 監査し報告するというのが前の位置づけなのでしょうが。 ○今野座長 それは研修段階だけれど、技能実習は就労だものね。 ○審議官 研修と言いましても非実務研修と実務研修があって、実務研修のほうはOJTに 近い部分もございます。ですから、実態的に言うと、意識の上で実務研修と技能実習という のはかなり似ている面があるわけです。片や、実務研修は監理責任を負うが、技能実習に なると負わないのですが、実行上は第一次受入れ機関がある程度見ている、という実態も あるやに聞いております。そこのところで非実務と実務研修とは少し性格が違うのです。 ○今野座長 身分上、もう就労という形で扱っているわけですが、実際上はOJTをやって いるので、訓練の実効性が上がるために第一次受入れ機関に一定の監理責任を負わせ るということですか。 ○上林委員 理屈ではそういうふうにしかとらないですね。 ○山川委員 就労といっても、目的がそもそも技能の移転といったことにあり、その延長と して位置づけているので、その点では全く単純な就労とは違う、という違いがあるので、そ こを活かした形でというのはあり得るのではないでしょうか。 ○上林委員 研修手当の水準は、ゼロからではなくて、現状では反対に、実習生の賃金水 準との絡みで決まってくるのです。だから論議は研修から始まるのですが、現実には3年間 丸ごと一括で来るほうも受け入れるほうも考えている、そして、最低賃金というのがあるか ら、実態はそことの関連で前の1年をどういうふうに決めるかというような賃金設定をしてい るわけです。そして、あまりに低くする。どうしてそういうことをするかと言うと、労務管理上、 同じ仕事をしているのに研修生はばかばかしく低く、実習生はばかばかしく高いという差が あると、職場でスムースに物事が進まないのです。そこで、研修生として終わって実習生に なって高くなっても、そこから家賃と食費という形で引いて、実質的には3年間一定レベル の金額で研習・実習が終わるという形のワンセットでやっていくとうまくいく、ということです。 ○今野座長 いま言われたことは、現物支給とキャッシュを合わせた報酬は3年間一緒に しておくということですね。 ○上林委員 現実に働いているほうの人間の感覚としては、そういう形でないと納得がい かないのです。 ○今野座長 話がずれるのですが、もし、研修手当は最低賃金をクリアする数字でないと いけないと決めた場合、企業単独型の研修に対してはどういう影響が及ぶのでしょうか。 本当の研修で来ている可能性ある人たちへの影響はどうなりますか。それはいいのか、あ るいは全く影響を及ぼさないのか。 ○丹野委員 企業規模によっても異なると思いますが、やはり、従業員1,000人以上の会 社だったら、影響はほとんどないと思うのですが。 ○今野座長 団体監理型をいろいろな形でやっていったときに、どうするかは別にして、適 正化したときに企業単独型のほうにどういう影響を及ぼすのかということになるのだろうか、 私はそのことを気にしているのです。あるいは、それは全然別だということにしてしまうの か。 ○山川委員 研修の概念との関係で、例えば日系企業の現地法人から本社に来て2週間 ぐらい座学と工場見学をする、それが研修だという、それはまた別で、実務研修をする場合 に限ってということ。企業単独型というのは、いわゆる実務研修をするような研修について ということなのでしょうか。 ○今野座長 1年ぐらい来るとかというのはあるのですか。 ○外国人研修推進室長 ケースとしてはあると思います。 ○今野座長 ある日本企業では国際的雇用調整をやっているという話が前回ありました し。 ○丹野委員 ありました、とある企業が。 ○今野座長 少し急ぐようですが、もう1点あるのです。資料2−1の7頁「同等報酬要件」 について最後に少し議論をしていただいて今日は終わりにしたいと思います。 ○丹野委員 「同等」という言葉の意味が非常に曖昧である。基本的に、今回書かれてい るものもそうですし、前回の資料でもそうだったと思いますが、「同等」の条件というのは、 日本人と同等の、という趣旨が非常に強く書かれていると思うのです。しかも、それを実行 可能性を持って行うということになったときに、最低賃金であれば、それを守らなければい けないということを通して実効性を確保することは可能だと思うのです。しかし、研修生は 様々な職種についていて、その職種の日本人と同等の賃金というものをどのようにして把 握し、なおかつそれを実行可能なものにしていくのかという実現可能性の問題として、でき るのかなという気がするのですが。 ○今野座長 困難は非常に大きいが、できそうなものがあったらここで議論しよう、という趣 旨だと思います。本当は、同等報酬要件は日本人間で非常に問題なのです。 ○丹野委員 極めて多種多様な職種ですね。 ○今野座長 同等報酬要件について、最近の議論だと正社員とパートという話があるわけ ですが、そういうものと少し違うのは、技能実習生の場合は一定の共通した基準があること です。なぜかと言うと、基礎2級は受かっていなければいけない。本当は全部平等であるが、 これについては他の問題とは違う。そうすると、非常に単純に、あるいは論理的に考えると、 基礎2級を取った日本人の給料はいくらかと考えればいいと言えるかもしれないのです。 ○丹野委員 それはそうですね。 ○上林委員 でも、いるかな。 ○今野座長 それは知りませんけど。ほかの場合は何を基準にしようかということ自身が 非常に曖昧なのに比べて、一応ここは基礎2級があるから、そこの土台だけはある。 ○丹野委員 そうすると、2年目から3年目には基礎2級が基礎1級の賃金になってとい う。 ○今野座長 それはまた別だと思います。 ○丹野委員 当面基礎2級。 ○北浦委員 ここは難しいところで、最低賃金は当然として、同等にあるかどうかということ は、ここに書いてあるように、格付けができる場合を除いて難しいのだと思うのです。唯一 言えるとすると、労働であるからには、その企業において最低支払われている賃金が支払 われている人、例えば初任給がいちばん低いとすれば、初任給より低い格付けで雇ってい るとすれば同等ではないのではないかというように同等であることを証明するのではなくて、 同等でない場合を排除する形で考えるほうがいいのかなという感じはしたのです。ただ、そ れも分かりません。そういう低い格付けの仕事があり得るのだとなれば、低いことだってあ るのかもしれません。 ○今野座長 今日もデータがありましたが、実態としてはパートの賃金ぐらいにはなってい るので、既にそれはクリアしているのです。 ○北浦委員 別に弁護しているわけではないのですが、考え方として、そういう整理は最低 できます。 ○今野座長 それが「同等」を判断する基準だと。 ○北浦委員 そうですね、「同等」を判断する必要要件の1つである、十分であるかどうか は。 ○今野座長 難しいですね。 ○北浦委員 おっしゃったように、基礎2級というのをどのぐらいの格付けと見るのかという 議論は、まじめに考えたほうがいいかもしれません。 ○今野座長 技能検定で「基礎2級」というのは、もともとどういうふうに定義してあるので すか。そういうことをあまり考えたことがなかったのですが、一応、憲法らしいことが書いて あるでしょう。 ○上林委員 業種別に、縫製だったらミシンの扱い方とか。 ○今野座長 一応、横並びの定義はあるはずですが。 ○上林委員 でも具体的に言うと、それは当然でしょうというレベルになってしまうのです。 ○外国人研修推進室長 実態として、基礎2級レベルはまさに移行申請要件になっている ものですから、合格率はかなり高い。それなりの研修を積めば合格するレベルには達する レベルではあります。 ○審議官 ご存じのとおり、技能検定では、もともとは3級、2級、1級とあります。3級は、 大体工業高校を卒業して目指すぐらいのレベルですから、それの前段階として技能実習用 のレベルとしてつくってあるわけです。全く単純ではいけないということで基礎2級というの を設定したわけですが、逆に3級はハードルが高くて、研修技能実習で来てあまり通らない ということでも仕様がないので、技能実習の目標を3級に置いて、それから逆算して、基礎 2級を2年間で勉強をする。このように、3級を目標とし、逆算して基礎2級をつくったという ことはあるのです。 ○今野座長 それにもかかわらず、一定の憲法、定義は書いてあるんですね。 ○審議官 はい、つくる以上は仕様がないということで。 ○外国人研修推進室長 手元にたまたま農業の試験問題の定義がありますので読み上 げます。学科問題の考え方としては、農作業における作物栽培管理、畜産管理、安全衛 生等について初歩的な知識を有していること。実技については、各種農作業について安全 の確保を図りつつ、一定時間内に正しい手順で確実にできること、ということを1つのメルク マールとして問題を作成し、実施しているのです。 ○今野座長 一定時間内に確実に仕事ができる。それは「一定時間内」の定義の問題だ けれど。「一人前」という定義でもありますが、「一定時間」を比較的短くしておけば、どうで しょう。 ○審議官 作業に入りますので、安全衛生面はちゃんとなければいけないということは最 低限ありますね。 ○今野座長 しかし、実際に技能実習の基礎2級の試験を受ける人たちというのは、実技 は大体平気でしょう。 ○審議官 送出し国で実務経験を積んでいることが入国要件になっていていますので、そ れプラス安全衛生。実務経験はあるわけですから、一応の作業はできるのです。それに加 えて日本語と安全衛生ができれば一応作業に入ってよろしいだろうということで、それを確 認するのが基礎2級であると言ってもいいと思います。 ○丹野委員 研修生がなぜ問題になっているかと言ったときに、低賃金労働力の供給源に なっているということが最大の問題である。日本人の最低賃金を超えた何がしかを払えな いと駄目だという条件があることは、逆に言うと、低賃金しか払えない所を排除することに なるので、いくらにするかは分かりませんが、全くの最低賃金より上のほうは本来の意味の 研修が、単なる低賃金労働力ではありませんということのためには必要になるのではない かと思うのですが、どうなのでしょうか。 ○今野座長 そのときの出発点は単純労働ではなくて、ある程度の技能を要する仕事につ いているはずだからということですね。 ○丹野委員 そうです。 ○今野座長 最後の論点として、研修・実習にかかる諸費用を負担していることについて 考慮することが必要か、ということがあります。ドイツでデュアルシステムの研修生に雇用 契約を結んでOJTのときには給料を払いますが、それは最低賃金の適用除外ですが、そ の考え方としては、研修・実習にかかる費用を企業が負担しているということなのですか。 ○審議官 徒弟ですので一人前の職人ではない、徒弟訓練からきたのです。 ○今野座長 一人前というのは最低賃金が一人前か、それはおかしいではないかという話 になりますけど。 ○山川委員 資料2−10のデータの支給予定賃金に記載する金額ですが、もし技能実習 で現物支給分が宿泊費や食費などであるとすれば、それも込みの金額になっているのでし ょうか。 ○外国人研修推進室長 食費や宿舎費は、技能実習移行後は雇用者ですので、当然、協 定があれば控除できることになっています。ここは実際の支払い額ですので控除前です。 ○山川委員 これから更に引かれることはあり得ると。 ○外国人研修推進室長 宿舎費や食費は、企業によっては引かれることがあり得ます。で すから、前回上林委員がおっしゃったように、引かれた後だと研修手当と変わらないではな いかという事例もないわけではないと思います。 ○山川委員 それも労使協定はあるのでしょうね。 ○上林委員 当然そうではないですか。 ○外国人研修推進室長 その辺は、確かにJITCOの指導結果から見ても、協定未提結と いう事例も挙がっています。 ○山川委員 労基法違反ですね。 ○外国人研修推進室長 労基法違反として挙がっています。 ○今野座長 先ほど上林委員が言われたように、3年間で実質的に現物とキャッシュを含 めて報酬を均すような形にするというときに、一応、3年いるから、その中で能力アップして いくので、それに対してモチベーションを引き出すということで少し給料を上げていくというこ とはしないのですか。 ○上林委員 そういうことをやったら職場秩序が乱れるので一切しない、だから3年間で終 わらせると。 ○今野座長 それ以上になると問題が出てくる。 ○上林委員 そういうことがあったとしても、それによってモラルアップで職場の効率が上が る部分と、そうではなくて、その差によって喧嘩が。 ○今野座長 不満が出てくる。 ○上林委員 同じ生活をしていますから、とてもその危険は冒せないのです。 ○今野座長 それが実態ですか。 ○上林委員 はい。 ○今野座長 そうすると、実感としては3年が限界ですか。 ○上林委員 ええ、私の感覚では。 ○今野座長 5年にしたら完全にそうはいかなくなる。 ○上林委員 差が出てくると同時に権利要求も出てきます。日本について分かりますから、 別の事業種に行きたいと思うのが当然だろうと思うのです。それを、基本的に雇用先を変 更できない状態のまま置いておけないと思います。 ○丹野委員 たぶん、そのようにしてしまったら資格外就労者がいっぱい出るだけです。 ○上林委員 子どもを置いてきた女性など若い女性が出稼ぎのような形で来ていて、5年 間といったら、5歳の子どもは10歳になる。それはものすごく大きな差ですから、いろいろな 意味で不都合が出てくると思います。 ○今野座長 同等報酬要件については今のところあまりよいアイディアもないから、この辺 で。 ○上林委員 ええ、そしてこのとおり、同等報酬要件が重要であるとしか言いようがないの です。あとは最賃について遵守するということ。 ○今野座長 これは確認なのですが、支給予定賃金が最低賃金法に反していないか等に ついては入管時に入国管理局でチェックを行うと書いてあるのですが、この最低賃金という のは地域別のことを言っているのですか、それとも産別も含めてやっているのですか。 ○外国人研修推進室長 そこは実態として入管がどこまで見ているかということになります が、基本的には地域別最賃でチェックされているのではないかと思います。 ○今野座長 それはだいぶ違う。機械・金属などガッと上がりますよね。 ○外国人研修推進室長 実際、一部報道でありましたように、地域別最賃は守っていたけ れど、産別最賃違反ということで監督署の摘発を受けたケースもあったと聞いております。 ○今野座長 今日は短時間ですべての問題を一応議論していただきましたので、これを事 務局で整理していただいて、それをベースにしてもう一度次回以降全体を議論する場を持 ちたいと思います。次回はヒアリングをしたいと考えておりますので、次回研究会の持ち方 について事務局からご説明願えますか。 ○外国人研修推進室長 第3回は11月22日(水)の午前10時からを予定しております。 前回お示ししたスケジュールにあるように、この問題について労使関係者からヒアリングを 当研究会として行ってはどうかと考えております。いま内々に打診して、日本経団連、東京 商工会議所、日本商工会議所、中小企業団体中央会、それから連合の計5団体に内諾を いただいておりますので、その方に技能実習についてのご意見や考え方をお聞きできれば と思います。なお、率直な意見を聞く観点から、ヒアリングに際してはこの研究会を非公開 という形にしてはどうかと考えておりますのでご提案させていただき、ご議論いただければ と思います。併せて、現地の受入れ企業等に対するヒアリング調査については、メール等 で日程調整をしております。ほぼ日程は固まっておりますので、後ほどメール等でお知らせ して、時間が合えばご参加いただければと思います。よろしくお願いいたします。 ○今野座長 次回のヒアリングは非公開にしたいということですが、よろしいでしょうか。 (異議なし) ○今野座長 では、次回は非公開にさせていただいてヒアリングをしたいと思いますので、 よろしくお願いします。今日はこれで終わりにさせていただきます。どうもありがとうございま した。 (照会先) 職業能力開発局海外協力課外国人研修推進室 TEL:03-5253-1111(内線5952) 03-3502-6804(夜間直通) FAX:03-3502-8932