06/10/25 社会保障審議会後期高齢者後期高齢者医療の在り方に関する特別部会 平成18年10月25日議事録 06/10/25 社会保障審議会後期高齢者医療の在り方に関する特別部会          第2回議事録  (1)日時  平成18年10月25日(水) (2)場所  厚生労働省 専用第18〜20会議室 (3)出席者 糠谷部会長 鴨下部会長代理 遠藤久夫委員 川越厚委員 高久史麿委員       辻本好子委員 野中博委員 堀田力委員 村松静子委員       <事務局>       水田保険局長 宮島審議官 原医療課長 鈴木老人保険課長  唐澤保険局総務課長 石原調査課長 二川医政局総務課長        神田高齢者医療制度施行準備室長 谷内総務課企画官 他       <有識者>       本間 昭氏、太田壽城氏、伴信太郎氏 (4)議題  ○後期高齢者の心身の特性等について      (有識者からのヒアリング) (5)議事内容 ○糠谷部会長  時間がまいりましたので、これより高齢者医療の在り方に関する特別部会を開催いたし ます。委員の出欠状況でございますが、本日は堀田委員が御欠席でございます。  また、有識者からのヒアリングに関しまして、本間昭東京都老人総合研究所精神医学研 究部長、太田壽城国立長寿医療センター病院長に御出席をいただいております。  また、同じくヒアリングに関しまして、伴信太郎名古屋大学教授にも御出席をいただく 予定になっておりますが、交通事情のため、おくれているとの連絡を受けております。  なお、白石審議官は、公務のためにおくれて到着する予定でございます。  それでは、議事に移りたいと存じます。本日は後期高齢者の心身の特性及び医療の在り 方について、有識者からヒアリングを行いたいと思います。  それに先立ちまして、まずは事務局から、前回部会での委員からの御指摘に対する回答 と、本日のヒアリングの趣旨等について簡単に説明いただきたいと思います。それでは事 務局、お願いをいたします。 ○事務局(原医療課長)  原医療課長でございます。  前回、委員から数々の御指摘等がございました。それにつきまして、準備できたものに ついて御回答したいと思います。  まず、前回資料のファイルがお手元にございますが、その資料4、後期高齢者医療につ いてという資料が中にあると思います。その資料4の13ページでございます。ここで表 現として「あなた自身が高齢となり(中略)治る見込みのない疾病に冒されたと診断され た場合」とありますが、一方、14ページには「あなたの家族が高齢となり(中略)治る 見込みのない状態になった場合」とあります。前者が「病気」、後者が「状態」となって いるのは、何か区別して書いているのかという御質問がありましたけれども、このあたり は文章が自然になるようにしたもので、特に内容に差を設けた意図があるというわけでは ないということでございます。いずれにしても、治らなくなった場合にどうしましょうか というような趣旨で設問をしたということであります。  それから、同じくここの部分で、医師や看護師が療養の場所として自分たちの職域を避 けているのだろうかと、そういうふうに受け止められるけれども、ということですが、そ の部分については、これはちょっと図が、上の棒グラフは一般の方に聞いた部分で、真ん 中あたりの38.2という数字の書いてあるところが、急性も慢性も含めて、実は病院全般 について入っております。その横に線が入っている部分が老人ホームと書いてあります。 ところが医師・看護師の方は、その同じ模様のところ、2.1とあるのは急性期の病院で、 その横縞のところが実は介護療養型医療施設で、一応、病院であります。これをあわせま すと、一応、医師でも25%、あるいは看護師でいきますと約30%程度ということになり ます。グラフの模様が必ずしもぴったり来ていなかったため、極端に違うように見えまし たけれども、医師・看護師でも30%近くは、やはり、急性期ではありませんけれど、病 院でどうか、と。それから一般の方は、それは確かに38%と、やや多い。その程度の違 いはあるけれども、必ずしも嫌っているわけではないのではないか、と。  それから、例えば介護の方につきましては、逆に一般の方よりも多く、その介護施設で 最期を迎えたいという方が一般の方よりも多いというような傾向もございました。  そのほか、なぜ自宅がいいかという理由としては、住み慣れた場所であるとか、最後ま で好きなように過ごしたい、あるいは家族との時間を多くしたいというのが、いずれも、 どの階層、どの職種においても多かったということでございます。  それから終末期医療について、多々、御意見等々ございましたが、これにつきましては、 またヒアリングなども含めまして、別の機会にしたいと思いますので、そのときにあわせ て、また資料説明等もやりたいと思っております。  それから、高齢者が生活する中で、医療がその高齢者の生活とどうかかわっていくか、 あるいは、そういうようなものが必要ではないかとの御指摘で、高齢者の生活状況という ことで、きょうの資料の一番最後に、参考として、生活に関する資料についてということ で、お手元に配布させていただいております。時間の関係上、ここでは詳細な説明は行い ませんけれども、またごらんいただきまして、議論の参考にしていただけたらと思います。  それから、先ほどの資料4ですけれども、少し戻りまして、その11ページに、死亡の 場所の国際比較をした図がございました。日本の場合は病院で81%、自宅が13.9%とい うような形になっておりました。病院が非常に多くて、いわゆる施設が2.4と非常に少な い。このあたりは、なぜこうなのだろうかということがございましたので、それについて は資料1を準備しておりますので、鈴木老人保健課長から説明をいたします。 ○事務局(鈴木老人保健課長)  鈴木老人保健課長でございます。  きょうの資料1をごらんいただければと思います。御指摘は、今ありましたように、な ぜ日本では死亡の場所として医療機関が多くてナーシングホーム、老人保健施設等が少な いのかということですが、資料1に、介護保健施設と言われる3施設について記載があり ます。一番上が介護療養型の医療施設、介護療養病床です。真ん中が老人保健施設。それ から一番下が特別養護老人ホームというふうになっておりますが、それぞれ、真ん中から ちょっと右のところで下線の引いてあるところをごらんください。これは退院される際に、 どういう退院のされ方をしたかというのを見たところです。  太字になって下線が引いてあるところ、これは死亡退院ということですので、例えば介 護療養病床ですと、出られる方の27%が死亡されている。老人保健施設は中間施設とし ての家庭復帰が主ですので、死亡される方は2.2%。最後、特別養護老人ホームは、住居 がそこに置いてあるということですので71.3%ですが、実は下のところをごらんいただ きますと、そのうち53.6%は、住居地としては統計の中ですけれども、実際は病院・診 療所に行かれるということですので。  さらにその右をごらんいただきますと、退所後の行き先で、それぞれ実人員に直してあ りますけれども、死亡がそれぞれ、介護療養型が1,650人、うち施設内で亡くなる方が 1,447人。同じく老人保健施設、特別養護老人ホームとございます。これは平成15年の 9月の1カ月間の資料でございますので、1年間ということですと、若干、月の差はある かもしれませんが、これの12倍ということになります。  私どもの統計では、年によっても違いますが、65歳以上の死亡が大体70〜80万人とい うことでございますので、まさにこの間、村松委員から御指摘がありましたように、この 3施設をあわせて2%強ということになっております。これが現状であります。  2ページ目は、その理由の一つですが、これは今申し上げた3施設それぞれに、中で看 取るという体制がどのぐらい準備できているのかというのを聞いたものでございます。特 に上から2段目のところで、病棟内で看取るとか施設内で看取るというところの数字をご らんいただきたいと思いますが、介護療養型であれば病棟内が53.3%、老人保健施設で あれば5.9%、そして特別養護老人ホームが19.4%ということで、やはり施設の体制とし ても、すべての方を中で看取るというわけには、なかなか、いかないというのが一つです。  それから、きょうは、資料は出しておりませんけれども、実際に患者の方にお聞きして も、最後は医療機関内で看取ってほしいとおっしゃる方が、やはり8割ぐらいおられるの で、そういう施設側、それから入っておられる方の御事情として医療機関が多いというの が一つあると思います。  それからもう一つは、これも資料はありませんけれども、やはり日本は人口当たりの病 床数が多く、逆にナーシングホーム等の住居系のサービスが少ないということがあります ので、実際に亡くなる場を見てみると、病院がどうしても多くなるということではないか と思います。以上です。 ○事務局(原医療課長)  それから、本日は後期高齢者の心身の特性及び医療の在り方について議論していただく 予定でございますが、それに関しまして、資料2をつけてございます。資料2「高齢者の 心身の特性等について」ということで、1ページ目でございますが、高齢者の心身の特性 ということで、ここでは患者調査から入院の受療率と、それから入院外、外来の受療率を 見ております。  ごらんになりますように、入院は圧倒的に、高齢者になればなるほど、どんどん増加い たします。一方、外来の受療率、これは平成14年10月のある1日に、実際に外来に受診 したか、あるいは往診や訪問診療に行ったか。実際にその1日に受けた患者さんの率でご ざいますが、これについて見ますと、実は80歳を超えてきますと、少しずつ少なくなっ てまいります。これはなぜかというと、実は施設や病院に入っているからということで、 それはまた後ほど出てまいります。全体としては、入院の方は年齢につれて非常に多くな る。それに対して外来の方は、ある一定のところから、逆に少なくなってくる。そういう 状況であります。  また、疾病別にも見ております。2ページをごらんください。いわゆる生活習慣病に分 類される高血圧性疾患、虚血性心疾患、脳梗塞について、同じように入院と外来の両方で 見ております。これで見てみると、これもやはり同様で、全体よりもさらに高齢者になれ ばなるほど、入院率が非常に高くなってきます。それから外来も、大体、先ほどの話と同 様の傾向がある。  それから3ページ目をごらんください。これは、いわゆる認知症関係ということで、血 管性及び詳細不明の認知症と、それからアルツハイマー病に分けておりますが、これもや はり、先ほどの例と同じように、当然ながら後期高齢者の方がどんどんふえてくる。これ は当然の結果でございます。  それから、医療費のかかり具合を見たのが次の資料でございます。これは、前回も少し 触れたと思いますが、1人当たりの医療費の合計は、当然ながら、これは年間の医療費で すけれども、これがどんどん、高齢者になればなるほどふえてきます。疾病も多くなると いうことです。それから医科の診療費、右側のグラフですが、実は75歳を超えるまでは、 入院と入院外の医療費の比率は、入院外の方が多いわけでありますが、75歳を過ぎてき ますと、医療費の中で入院の占める割合が、どんどんふえてくるという傾向がございます。 したがって、年齢が上がれば上がるほど、どちらかというと外よりも病院の中で治療を受 けているという傾向が強いということでございます。  次の5ページをごらんください。医療費について受診率、1件当たり(レセプト1枚当 たり)の日数、それから1日当たりの医療費と分解して見るわけですけれど、後期高齢者、 75歳以上になりますと、非常に受診率が急増いたします。これは年間のレセプト枚数を 人口で割ったものですので、例えば85歳以上のところを見ると、1人当たり1.4枚のレ セプトが出てくる、すなわち12カ月間で1.4枚ということです。必ずしもすべての人が 年間1.4枚というわけではなくて、365日入院している人や、あるいは入院していない人 も含めて平均すると、1人につき年間1.4枚分が出てくる。日数が1件当たり約21日で すので、あわせると大体、1人1カ月ぐらい入院している勘定になるということでござい ます。ただし単価に当たる1日当たり医療費は、これは少し、前期高齢者の分が高くなっ ておりますが、後期高齢者は逆に低くなってくるということでございます。  それから次に6ページは、入院外医療費についても同様の3要素で見ております。これ で見てみますと、先ほどの全体の受療率もそうでしたけれど、受診率は後期高齢者になる と下がってくるということが一つの特徴です。それから日数は少し伸びているかなあとい うぐらいですね。それから1日当たり医療費は、前期高齢者等々と、それほど大きな隔た りはないというような形に見えます。  そして、施設等にどういう状況で入っているか。先ほどお話しした部分ですが、7ペー ジをごらんいただきたいと思います。統一した資料がなくて、患者調査や介護給付費実態 調査、人口推計年報等々から合成した数字でございます。一部、若干、重複する部分があ って、全く正確なグラフではありませんが、全体としてごらんいただきたいのは、左側の 受療、介護施設入所者数でございます。それぞれの年齢階級における人口が全体の高さに なっております。90歳以上で約80万人程度おられるというような数字です。この、薄い 青のところは、その他と書いてありますが、これは、いわゆる在宅なり、あるいは居住系 の施設におられる方です。それから黄色が外来と書いてあります。これは病院を受診して いる方ということです。あるいは、ここが若干、入所者と重なる部分が少しありますけれ ども、いわゆる病気を持っている方、病気を持って医療機関にかかっているという方が、 この外来というところであります。それから入所はあとで出てまいりますが、介護保健施 設と介護福祉施設、この2つの種類の施設に入っている方を入所としております。そして 一番下の部分が入院でございます。これは病院に入院している方です。  ということで、実はトータルのボリュームとしては、当然ながら、だんだん小さくはな ってきますけれども、その中の比率を見てみると、右側のグラフですが、例えば90歳以 上のところを見ますと、下の入院と入所をあわせて約30%の方が病院もしくは介護関係 の施設に入っておられる。逆に、病気を持っていて通院をしておられる方は、その薄い黄 色のところですので、逆に少し、左の85歳のところよりも少なくなってくる。全体とし ては、病気を持っておられる方が、当然、だんだんふえてくるのですが、割合的に見ると、 どんどん、入院・入所の方がふえてくるというような状況でございます。  次の8ページは、今の入所施設について、先ほどの介護保健施設か介護福祉施設かとい う分類を示したものでございます。90歳以上になりますと、人口10万対で1万7,000。 入院の方は10万対で行くと1万2,000〜1万3,000ございますので、あわせて、やはり 30%の方が何らかの施設に入っておられるという状況であるというのが現況でございます。 私どもの説明は以上でございます。 ○糠谷部会長  今の事務方の説明についても質問等があるかもしれませんが、ヒアリングの先生方のお 話を伺った後にまとめてということでよろしいでしょうか。  それでは本間先生、太田先生の順で、それぞれ15分程度で御説明をお願いできたらと 思います。なお、質疑、意見交換については、両先生の御説明をいただいた後、まとめて 行うこととさせていただきます。また、伴先生は交通事情でおくれておられますけれども、 先生が御到着次第お願いすることにしたいと思います。それではまず、本間先生からよろ しくお願いを申し上げます。 ○本間 昭氏  東京都老人総合研究所の本間と申します。  後期高齢者医療における認知症をめぐる課題ということで、最初、前半に、その課題と なっている事柄の背景と、それから幾つかの課題について指摘をさせていただきたいと思 います。  最初のページに、75歳以上の要介護認定者数をお示しいたしました。一番新しい数字 ですと、全体では恐らく450万ぐらいになっているかと思いますけれど、とりあえず75 歳以上ですと350万人ということを、一つ確認しておきたいというふうに思います。8割 を占めるということです。  次のページをごらんください。上の方の図には、これは平成18年の推定値ですけれど も、認知症高齢者の年齢階級別の有病率をお示ししました。75歳以上で見ると、約200 万人という数になります。75歳以上の後期高齢者の数というのは約1,000万というふう に言われていますので、5人に1人ということになるわけです。ですから75歳以上の後 期高齢者の医療なり、恐らくあらゆることを考える場合には、認知症というのは決して無 視できない存在だろうというふうに思います。  ただ、今までの論議の中で、しばしば認知症が、まるで忘れ去られているのではないか という議論が決して少なくなかったのではないかというふうに思います。もちろんその例 の一つというわけではないのですが、先ほど資料1で御説明いただきましたが、例えば看 取りの状況ですが、この介護保健3施設というのは、恐らく8〜9割の方には認知症があ るというふうに考えるのが一般的だろうと思います。そうすると、果たして、本人の看取 りという場合に、本人の意思をどのようにして確かめたのかということに関しては一切触 れられていないわけです。これは一つの例ですが、また後ほど触れたいと思います。  今の4ページの棒グラフですが、一つの課題として、75歳以上の高齢者の中で、仮に 認知症の疑いがある人が200万人としても、そのうち何人が適切に診断され治療されてい るのか。この数字はないわけです。  先ほど受療率のグラフの中で、例えば血管性・詳細不明の認知症の年齢階級別の受療 率・外来というところを見ると、これは人口10万対ですので、わずか0.3%になります。 これは人口10万当りですので65歳以上にすると、どのくらいのパーセントになるのかは、 計算する暇がありませんでしたが、アルツハイマー病に関して言うと0.1%です。入院に すると、それぞれ11.4%と0.3%です。入院の方がなぜ受療率が高いのかというのは、よ くわかりませんけれど、いずれにしても極めて低いだろうと思いますし、具体的な数字は ないわけです。  65歳以上の認知症の原因のおよそ7割は現時点では治療可能です。医学的な治療が可 能な原因が7割であることは、よく知られているわけです。そのことと、もう一つは、認 知症の人たちが自ら医療機関を受診できるということは極めてまれであるわけです。この 2つの点からこの上の赤い線で囲んだ中の文言の意味は極めて大きいだろうというふうに 思います。  それからまたページをめくっていただいて、この上の図は、厚労省がつくったものです が、認知症が前駆段階、初期段階と、ずっと進んでいくわけです。左下の方には、現在、 厚労省が進めているいろいろな取り組みが書かれています。主にケアに関する事柄という ことになるわけが、ただ、一つここで、改めてこれも確認をしておきたいのですが、認知 症というのは、さまざまな原因から起こってきますけれども、あくまで病気であるわけで す。病気ですから、当然、医療の対象になるわけですし、常に一貫した医療的なかかわり がなければ、ステージに即した適切なケアというのは提供されないわけです。このことは 強調しておきたいというふうに思います。つまり認知症の医療においては、ケアを切り離 すことができないと言っていいのではないでしょうか。前駆段階であってもターミナルス テージであっても、医療というものを抜きにしては考えることができないということです。  その一例を下にお示しします。これは10年前の結果ですが、東京都全域で、このとき には65歳以上の方が149万人おられましたけれども、その中から約5,000人を無作為に 選んでその中の123人を専門医が認知症と診断したわけです。これは患者さんなり家族の 方が申し出た合併症の割合です。9割の方に身体合併症があるわけです。ですから当然、 医療的なサポートというのは必要になるわけです。  もう一つ、次のページをごらんください。これは認知症の症状を修飾する要因ですが、 いわゆる日常生活で見られるさまざまな症状があります。これはもちろん、アルツハイマ ー型の認知症であれば神経細胞の脱落、血管性の認知症であれば脳梗塞・脳出血というも のがなければ起こってこない症状であることは確かでが、一方、その下に書いてあります ように、身体疾患、心理的な状態、環境・ケアという3つの要因によって症状が修飾され るわけです。この中でも特に身体疾患、健康状態がきちんと保たれているかいないか、例 えば血圧が変動していないか、血糖がきちんと調節されているか、尿酸値が一定している か、というふうなことによっても、最終的な症状が影響されるということです。というこ とは、認知症はどのステージであったとしても、9割の人が、身体合併症があるわけです から、常に身体の病気の治療がきちんと行われていなければ、その人のQOLに極めて大 きな影響をもたらすということになります。  その下には、認知症を支えるための課題というのを、リストアップしてみました。上の 方のブルーで書かれた6項目というのは、もちろん医療と分けることはできませんけれど も、どちらかというとケアに関する事柄があります。上の方にある、かかりつけ医の役割 と専門医との関係とか、早期発見のおくれ??最初にありましたように、200万人中でど のくらい診断されているのかわからないということですね。こうした課題というのは、今 年からサポート医養成研修等というのが厚労省で始められていますので、フットワークが 悪いことは確かだろうと思いますけれども、一応、進みつつあるわけです。  ただ、幾つかの課題があって、その下の黒で書かれていること、例えば抗精神病薬の適 応外の問題、これは恐らく、この審議会でのディスカッションの範疇外だろうと思います が、ただ、現実的に、家族にとっては非常に大きな問題です。これについては、ここで深 く入り込むことはやめておきまして、2番目の、いわゆる認知症に身体合併症がある場合 です。つまり周辺症状のために、認知症の場合、一般病棟では管理できないといって、身 体合併症の治療を拒否されることが多いという課題については、ほとんど手つかずの状況 ということです。  もちろん治療病棟というのがあるわけですけれども、これはさまざまな、いわゆる精神 症状、行動障害に対する治療が第一の目的であって、などのつまり9割は身体合併症があ るわけですけれども、そのほかに、例えば急に転んで、大腿骨の頸部骨折とか、つまり医 療的な対応が保障されていないと、家族が在宅で見ていくということは、非常に不安な状 態のまま過ごさなければいけないということになるのは容易に御想像いただけるのではな いか思います。何とか家で頑張って見ていこうとしても、ちょっとかぜをこじらせて具合 が悪くなったら、近くの病院で点滴をしてもらおうと思っても、認知症があるからだめだ よと言われて終わりになるわけですから、これは認知症を考えるときの一番大きな課題か もしれません。  それからもう一つ、身体疾患の救急と精神科救急のはざまに、いわゆる認知症の救急の 問題が陥ってしまうということもあります。これもちょっと、話し出すと長くなりますの で、ここに書いてある表をお示しするだけにとどめます。  10ページの上の図、これは現在、厚労省が進めている「かかりつけ医が参画した早期 からの認知症高齢者支援体制」という概念図ですけれど、この中でも、一つ課題がありま して、今お話ししたことですけれども、身体合併症に対する対応のプロセスが抜けていま す。  それから次のページ、これが最後の課題になると思いますが、認知症高齢者を対象とし た医療行為における同意の有無の判断という課題です。これは例えば、先ほどの資料1の 中の看取りの説明に関しても、だれが御本人の意思をどうやって確かめたのかという課題 です。これは全国の医師643人を対象にしてアンケート調査を行った結果ですけれども、 縦軸が医療行為で、比較的侵襲の軽いものから順に並んでいます。内服薬の処方から始ま って、一番下の、最も侵襲の度合いが大きいものまで並んでいます。オレンジ色のバーの ところが、これは本人が拒否しないならば医師の裁量で決めるという割合です、当然、医 療的な侵襲が大きいほど、その割合は減るわけです。また、ホームの責任者等の同意を得 るというところがありますけれども、これは何ら認知症高齢者の同意を得る場合において 有効な手だてになるわけではないわけです。ただ、やはり、医師の側がどうしても防衛的 になっていくということになるわけです。  もう一つその下に、家族の有無による治療方針への影響はという、単純なグラフがあり ますけれども、要するに認知症では、家族の有無によって、受けることができる医療の内 容が異なることがあり得るということです。例えば大腿骨の頸部骨折を起こして病院にか つぎ込まれたとします。家族がいる場合には、「先生、手術してください。私たちは一生 懸命、その後のリハビリもしますから」「じゃあ、やりましょう」ということになるわけ です。家族がいない場合は、極端な話、「じゃあ、このままにしておこうか」となって手 術してもらえないということがある。そういうふうな傾向があり得るということになるわ けです。ということは、同じ認知症があるということだけで、家族がいるか、いないかと いうことによって、受けることができる医療の内容が異なってくるというのは、これはあ る意味、差別ではないかというふうに思うわけです。これも極めて大きな問題だろうとい うふうに思います。  最後のページですけれど、要するに認知症をめぐる医療、つまり認知症の多くの部分と いうのは75歳以上の後期高齢者のところになるわけですが、医療に関する最大の課題は 一つ、認知症により判断能力が低下した、あるいは判断能力がない場合に、本人の意思を どのように確認することができるかということであるわけです。つまり医療同意をどのよ うにすれば得ることができるのかということに関しての論議というのが進んでいません。 これはほかの、あらゆる場合にも当てはまってくる事柄だろうというふうに思います。つ まり、赤で囲んだところがまとめですけれど、後期高齢者医療を考える上では、認知症の 医療というのは決して無視できないし、少なくとも現時点では、その前提として適切な医 療を受けるための環境というのは、まだ、整っているというふうに言うことはできないの ではないかというのが私の意見です。以上です。 ○糠谷部会長  ありがとうございました。では続きまして、太田先生、よろしくお願いいたします。 ○太田壽城氏  国立長寿医療センターの太田でございます。国立長寿医療センターといいますと、多分、 皆さん全員が御存じでないかもしれませんので、簡単に説明を申し上げますと、ナショナ ルセンターが、がんセンター、循環器病センター、精神・神経、国際、成育とございまし て、最後に長寿ということで、高齢者のナショナルセンターが、平成16年3月にできま したが、そのナショナルセンターの病院長をしております。  1枚目のパワーポイントにありますように、高齢者医療の地域の連携モデル(認知症) に関して、まず御報告をしまして、その次に、もともと病院そのものは国立療養所だった ものを急性期の方に転換していきまして、ナショナルセンターになりましたので、医療の 急性期化と地域の老人医療費の適正化という課題について、データをお示しできたらと思 います。それから3番目に、長寿医療センターにおける患者さんの年齢とか在院日数とか、 診療科と医療費の関係についてお示ししようと思っています。最後は、ちょっとはずれま すが、高齢者の特性みたいなものについて、大規模なコホートのデータがありますので、 それを御紹介しようと思っています。  右下のページ番号で2ページのところをごらんください。真ん中の緑のところが長寿医 療センターでありまして、周囲5キロのところには大きな病院がないという、かなり、こ の地域の人たちが集まってくる病院という意味あいでは、いいコホートとしての病院の機 能を持っています。大府市というところの患者さんが最も多くて、その次に、下の東浦町 というところが多くなっています。ちなみに、この左側の海は伊勢湾でございます。  次に3ページ目ですが、ここで見ていただきたいのは、一番上に大府市の人口が8万人 で、私どもの入院患者さんの約50%弱が、この大府市の患者さんであるということであ ります。  その次の4ページ目、これは、この地域の医療機関、あるいは連携しているものを全部 挙げさせてもらったのですが、病院が9つ。療養病床がやや少ないですが、診療所が140 あります。こういうところを、かなり把握しているのは、外来診療部に社会復帰支援室と いう部屋がありまして、医事課と連携してMSWが3人と、それからナースが2人いまし て、入院時に社会復帰依頼せんといいますか、入院時に、なかなか退院ができないなあと 思う方には、そういう依頼せんを書くような仕組みができています。そこがかなり、いろ んなところとネットワークをつくっていまして、先乗りスコアラーみたいなこともやりな がら、やっています。具体的に、毎月400人強の新入院がありますが、そのうちの60人 ぐらいが、この社会復帰支援の依頼せんを提出されるような状況であります。  その次の5ページですけれど、ここに介護施設等が書いてあります。  それから6ページですが、認知症に対して地域の連携をしたモデル的なものがありまし たので御紹介します。これは大府市の医師団から認知症について何とかできないかという ことが私どもにありまして、そして、ここにあるような、かかりつけ医と病院との病診連 携を軸とする連携をつくっていきました。  次の7ページをごらんください。これはフローチャートですが、まず左側に、啓発活動 とかスクリーニングとか、こういうことを行いました。具体的には上の方の茶色の下にあ りますが、勉強会とか市民フォーラムを医師会主催でやっていただきまして、私たちは 「物忘れチェックリスト」というものをつくれと言われましたので、つくりました。それ を次の一次診断というところがありますが、かかりつけ医の先生方のところとか、歯科の デンティストのところに置いていただいて、スクリーニングをやっていただき、そして3 番目の二次診断というところで、私どもの「物忘れ外来」というところに送っていただく ような流れができてきました。そこで総合判断をして、またお返しをしたり、適切な施設 や在宅等に戻っていただくようなことをやっております。ちなみに「物忘れ外来」は、延 べ1,000人を超える状況になってきています。  次に8ページですが、ここから少し、地域の老人医療費の話をしてみたいと思います。 このあたりは非常に難しく、多少不正確な部分があるかもしれませんが、御指摘いただけ れば、また修正等をさせていただきたいと思います。国立長寿医療センター病院の特徴で すが、入院病床が300床、外来が550人、高齢者に対する総合診療機能を、小児科と産科 がないだけの20科でやっています。この5番目にあるように、平均在院日数が20日の急 性期の医療を、今、行っています。目的として、下に2つ挙げてありますように、高齢者 の標準医療を実践して検証していくこと、そして地域モデルの検証ということを考えてい ます。この地域モデルの検証の中に、今から申し上げる医療費の問題もありますし、予後 の問題や満足感の問題も考えて、今、動いているところです。  次の9ページですが、ここに、平成12年から17年までの、いろいろな病院の指標等が 書いてありますが、見ていただきたいのは、上から3段目の、平均在院日数でございます。 47.2から、14年と15年のちょうど間で20日前後に変わってきまして、その後20日、最 近では19日を切った状況になっています。これほど急激な変化があるわけですが、これ も16年の3月にナショナルセンターになるための移行措置としてやってまいりました。 下から2番目の診療点数も、これに伴って上がってきておりますけれども、なかなか上が らないなあというのが私どもの実感でありまして、高齢者の医療というのは、こういうも のなのかなあというふうなことも、ある意味では感じています。  それから次に10ページ、これは平均在院日数を単にプロットしただけですが、14年か ら15年の間で急激に下がって、あとは比較的プラトーに近い状況になっています。また あとで14年と15年の比較をして、医療費の適正化に関与しているのではないかというふ うな推測をさせていただこうと思っています。  その次の11ページですが、これが老人医療費の、大府市と愛知県の比較でございます。 14年と15年を見ていただきますと、14年は大府市の方が愛知県より高かったのが、15 年は逆になっています。具体的には14年は大府市の方がプラス0.5万ぐらいですが、15 年になるとマイナス3万ぐらいでありまして、ネットですと3.5万ぐらい動いています。 大府市だけの動きとしては2万ぐらいの動きがございます。患者さんの満足度というのを、 ちょうどこのころやっていますけれども、15年と16年でやっていますが、ナショナルセ ンターになったこともありまして、満足度調査は非常によくなっています。14年と15年 の比較はできておりません。  それから、予後をどうやって調べたらいいか、まだ適切な方法、仕組みができていませ んので、次の12ページのところで死亡率をプロットしてあります。年齢調整がしてあり ません。ただ、少なくとも16年、17年というところを見ていただく限りは、そんなに大 きな問題はないのではないかなあ、と。愛知県に比べれば、悪くはないのではないかとい うふうに思っております。  次に13ページをごらんください。ここが、なかなか難しいところですが、平成14年と 15年で、病院の入院収入がこの程度ございまして、大府市の老人医療費分というのは、 最近のデータでいくと20%ぐらいですので、約6億ぐらいだろうというふうに推計して います。このときの1回の入院費というのを、先ほどのデータから試算しますと、14年 が86万、15年が74万と、12万ぐらいの差がございます。大府市の老人医療費の推移は、 74から72万と、単純に、そのものだけの推移では2万の推移ですけれど、愛知県との差 分を考えますと3.5万ぐらいの差になります。大府市の総入院給付、これは医療費総額で はなくて給付費ですが、それが22億ぐらいから20億ぐらいというふうに聞いています。  こういう粗っぽい試算がいいのかどうかわかりませんが、大府市全体の老人医療費の中 で、私どもの病院がかかわっているのが3分の1から4分の1ぐらいの割合でかかわって いるということが、大雑把に予測されます。それで、私どもの病院で12万ほど、1回の 入院の費用が下がっていったということに対して、大府市の老人医療費の、そのままの数 字では2万ですが、県との差を組み込むと3.5万という数字になりまして、約4分の1の シェアを持っている中で、12万が4分割されればこんな数字になるのかもしれないなあ というふうなことを考えております。こういう形で、なかなか老人医療費の適正化の中身 というのは見えないのですけれど、とりあえず私どもの病院のデータと大府市のデータ、 そして愛知県のデータから、一つの推察をしてみました。また、これにつきましては、レ セプトデータをもっとしっかり見られるようなことを考えて、今、依頼をしているところ ですので、さらに進むというふうに思っております。  次に14ページですが、ここからは病院の中の、特に高齢期の方々を中心に見ている中 で、どんな診療点数等があるのかということをプレゼンテーションしたいと思います。14 ページのグラフは、当センターの受診者の延べの診療点数です。したがいまして、全部、 金額で書いてあります。ざっと見ていただくと、75歳以上で約50%近いということが、 おわかりいただけると思いますが、その次の15ページのところでは、それをパーセント に直したものがございます。計算すると48%ぐらいになると思いますが、私どもの病院 では、入院の場合ですが、75歳以上の方を約半数診ているということで、金額でいくと、 こういうふうになっているということであります。  次に16ページ、これは年齢別の入院の1人1日当たりの診療点数ですが、年齢が50歳 前後から上がるにしたがいまして、診療点数がだんだん下がっていきます。特に85〜89 とか90〜94になると下がっていく。こういうところのデータは、先ほどのデータの中で は85以上というふうに包括されていましたが、私どもの病院では、ここのところは下が っていくような数字になってきています。  ちょっとここで脱線しますが、実は死亡退院の方が、点数がどうなのかということで、 これと同じことをやってみましたけれど、全く下がらなかったというか、横に延びた、水 平に近いような点数になっていました。東北大学の佐々木先生のレポートでは、死亡の前 の1カ月でしたか2カ月でしたか、その間の医療費は、年齢が高いほど低いというデータ がございまして、そういうことも、今、やろうとしておりますが、それと同時に、先ほど から話題になっています、終末期の医療の収め方みたいなところが関与しているのではな いかと思っています。私どもは終末期の意思決定ということが、どうなされているかとい うことを、今、100例ぐらいの症例を積み重ねていまして、そういうことがうまく行われ たケースと、それが行われなかったケースでどうなのかということも、やってみたいと思 っていますし、今、医政局の担当の方に御相談しながら、私どもの病院の外来の患者さん にリビングウィルを自主的に書いていただいて、それを入院時に生かしていくような仕組 みを動かしてみようというふうに考えて、今、倫理委員会にかけているところであります。  その次の17ページですが、17ページと18ページは全く同じディスプレイです。これ は、私どもはDPCをやっていませんので、内科系と外科系で、患者さんの多いところで 特に前期高齢者と後期高齢者で、診療点数が1日当たり、1人当たりが変わるかというこ とを見ようと思って、見てみましたが、一般的に内科の場合には、後期の場合は下がる傾 向があるのですけれど、外科系の人の場合には余り下がらないなあという感じがしていま す。これは手術の関係が絡んでいるのだろうと思いますが、もう少し詳しい分析が必要だ ろうというふうに思っています。  その次の19ページ、これは平均の在院日数を年齢ごとに見たものです。85〜89、90〜 94、それから95歳以上はサンプルが少なかったので、今回はディスプレイしませんでし たけれど、このあたりになると下がってまいります。先ほどの1人1日当たりの診療点数 を掛け合わせますと、入院1回当たりの費用というのは85〜89歳は下がった形になって、 75〜89、85〜80のところにピークがあるという結果が、私どもの病院では出ています。  それから次の20ページですけれど、これは在院日数と年齢で診療点数がどう違うかと いうことを見たのですが、これは延べの診療点数ですので、どれぐらい総医療費があるの かということを見たものです。ここで特に私どもが気づいたのは、14日以内ですと、前 期・後期で全く差がないのですけれど、31〜90日というところになりますと、あるいは それより1つ前でも、後期高齢者の方々の医療費の部分が非常に膨らんでくるということ が明らかになっています。これはモデル的な医療をやっているところで、こういう結果が 出ているということの一つの実態ということでございます。  次に21ページ、これは長寿医療センター病院の在院日数別・年齢別の入院1人1日当 たりの診療点数ですけれど、赤が75歳以上で、青と黄色は前期、あるいは64歳以下です。 ごらんになって、平均のところの合計をとってしまうと一番きれいなのですが、14日以 内のところと15〜30日のところで、赤の75歳の診療点数がとても低くなっています。こ れは明らかに、それ以前の年代の方々と違う。ただ、31日を過ぎると同じようになって くるという結果が出てきております。ここまでが、当センター病院における診療点数ある いは医療費適正化に関するお話です。  あとの数枚は、これは実は静岡県で、前期高齢者と後期高齢者を、それぞれ6,000人ぐ らいランダムにサンプルいたしまして、ここには3年間として出ていますが、実際には6 年間追いかけていまして、そういうときに、どういう変化が起きてくるのか。あるいは、 もともとどうなのかということを知っておいた方が、高齢者の生活実態を知る上ではいい のではないかと思いまして、これも長寿科学総合研究の成果ですが、持ってまいりました。  22ページ、男の前期が左で、右に後期がございます。細かく見ると大変ですので、一 番下の合計を見ていただきますと、維持できていたグループと、それから悪化したグルー プと死亡したグループの、前期と後期の比較をしていきますと、維持が90から71、悪化 が5.6から16.9と3倍ぐらいです。死亡も3.6から11.1と3倍ぐらいです。当然ですけ れど、かなり違いがあることが、おわかりになると思います。  その次の23ページ、こちらが女性です。同じように見ていただきますと、維持は88か ら65と、女性の場合には、なかなか維持をできなくなってくる。それから悪化も10から 29と3倍ぐらいになります。死亡も1.7から5.1と3倍ぐらいになります。3年間でこ んなに大きな変化をする。6年のデータも、今、検討をしているところですが、いわゆる ポピュレーションベースのデータがどう変わっていくのかというのが、よくわかるデータ というふうに思っています。  次の24ページですけれど、これは高齢者の収入を得る仕事というのがベースラインで 聞いてありまして、男の前期は週1回以下も含めると39%が何らかの仕事を持っておら れるのですが、後期になると17%になります。足し合わせた数字が、そういう数字にな ります。それから女性の場合は、前期は24%ですが、後期になると9%というふうに減 ります。こういう就業の差が、前期と後期で出てくるということが、こういうポピュレー ションベースのデータで、ある程度きれいなデータとして得られたということであります。  最後の25ページ、これは自立の低下要因みたいなことを統計的に検討したものですが、 ベースラインで初年度自立、1人で外出できる人が、男は前期で91、後期で78、女性は 前期で87、後期で59と、女性の方が、もう、後期で動けない方が多くなっています。自 立が低下するのは、先ほどありました、1人で外出とか、家の中で動けるとか、寝たり起 きたりとか、そういういろんなグレードが下がった場合を低下というふうにしていますけ れど、そういうときに、3年後の自立の低下を招く、いろんな病気の発症みたいなものを 拾っていきますと、脳卒中と骨折が多く、これが急な自立の低下につながっているという ふうに考えています。  それから、下の方に3年後の自立低下予防というのがありますけれど、ここで仕事とか 生活活動とか世話、あるいは運動とか作業といったものが自立の低下を、オッズ比で0.5 とか0.6とか0.67というふうに、かなり押さえているわけでありまして、こういうもの が維持に効いてきたり、あるいは、こういうことをしないことが、徐々に機能を低下させ ていくということではないかと思っています。以上でプレゼンテーションを終わります。 ○糠谷部会長  ありがとうございました。伴先生は4時半ごろには御到着ではないかという連絡をいた だいておりますので、それまでの間、今までの御説明に対しまして、何か御質問、御意見 等がございましたら、御自由におっしゃっていただければと思います。 ○野中委員  御発表をどうもありがとうございました。  私としては2つ聞きたいことがあります。1つは、確かに死ぬ場所が昭和26年から、 自宅から病院になったということはあるのですが、それは結果を見ているわけです。私は、 看取りにおいて一番大事なことは、看取られる前の期間、病気を抱えながら自宅で生活を どのぐらいできたかどうかという期間が、本当に大切な期間と思っています。結果として 亡くなったのは病院としても、その前の期間どのぐらい在宅で生活されていたか、あるい は施設で生活されていたかというような統計が、これはお二人ではなくて、医療課の方へ の質問です。もしそういうものがあればお示しいただきたい。  昭和26年には今の様に医療が発達していなくて、自宅で死ぬしかなかった。それが今 は医療が発達して、病院・施設が発達して、そして病院で治療をするとの前提があって、 そして病院で亡くなられることになっているわけです。そのことは私は、ある面では理解 できますが、亡くなる前に、どのぐらい地域で生活されていたかが本当は大事で、それを 比較しないで、ただ単に場所だけの議論をするのは、おかしいと思います。もしお二人の 経験で、そういうことがありましたら、それをお聞きしたいと思います。  あとは看取りの最に、治療をどこまで実施するかの問題は大きな問題です。例えばイン フルエンザでも、いわゆる認知症の方々に対しての予防注射の問題もありますので、これ にも確かに同意という部分には問題があると思います。  それから特に本間先生が言われました、8ページの認知症の身体合併症の問題で、周辺 症状のために一般病棟では管理できないといって治療を拒否されることがあることは、こ れは私もいろいろ経験しております。現状でも、例えば特別養護老人ホームに入って、病 状が安定していて生活できるかというと、私の専門の人工透析の患者さんも人工透析とい う治療行為があるから特別養護老人ホームに入れないことが現実にはあります。  きょうお示しいただいたものの中に、施設で看取りを用意しているということと、それ から、そこが多くなったということは評価に値すると思いますけれど、現実には今申しま した特別養護老人ホームだけではなくて、一般急性期病院の中で、例えば認知症があるか ら、あるいは大声を出すから、入院はできませんと言われることも、私たちは現場では、 非常に経験します。何が問題でできないのかということに関して、本間委員から、御経験 の中でお話しいただけたらと思いま 」す。この2点をお聞きしたいと思います。 ○糠谷部会長  第2の御質問は本間先生から、それから第1の方も、本間先生、太田先生で、何かお感 じのところがあればお話をしていただいてもよろしいかと思いますが、あわせて事務局と して、第1の方について何か答弁の用意があればお願いをいたします。 ○本間 昭氏  2番目の御質問に関してコメントといいますか、具体的な数字があるわけではありませ んけれども、これはやはり、在宅で見ていくというときにしても、身体合併症が起こって くる場合であっても、やはり、かなり早い段階から身体合併症の管理が行われていない例 が非常に多いと思いますね。これは家族側にしても、なかなか早い段階で認知症というふ うに認識できない、理解できない、ということもありますし、単に物忘れというのが起こ ってきた段階では、家族も、それから医療機関のスタッフも、病気というふうな認識には、 なかなか至らないわけです。何らかの精神症状、行動障害が起こってきてやっと、「もし かすると」というふうな認識になるわけですけれど、その段階では遅いということです。 単に物忘れがあるという段階できちんと診断されて適切に対応されていると、精神症状、 行動障害の出現も非常に遅くすることができるというエビデンスもありますので、やはり 早期の発見ということも課題の一つになってくるだろうと思います。 ○太田 壽城氏  最初の野中先生の御質問はとても難しくて、これは本当に印象だけですが、先生のおっ しゃるような方向に、だんだん、患者さんの御意向が強くなってきていると思います。例 えば、本当は入院すべきだけれども、できるだけ外来で診てほしいというところで、主治 医が苦悩する場合も多々ありますし、それから病院に長くいたくはないというのが、やは り本人の強い希望でございまして、私どもが、どんどん急性期化していくのも、決して私 どもが無理やりやっているわけではなくて、患者さんが、できるだけ、もう少し住みやす いところに行きたいという御要望が強いものとしてありますので、そういう中で、施設も 含めて、そういうところにできるだけ長くいる、と。困ったときには、短時間来るという 場合もございますし、それで最後の短期の看取りを病院でするという場合も結構多いとい うふうに思っています。 ○糠谷部会長  事務局の方で、何かありますか。 ○事務局(原医療課長)  例えば病院で亡くなられた方の入院期間ですが、どこかで見たような気はするのですけ れど、今すぐ手元にございませんので、また、あれば準備したいと思います。 ○野中委員  入院期間ではなくて、確かに入院期間という見方もあると思いますけれど、在宅での生 活というものを、どのぐらいの期間できたのか、例えばがんでそういうふうになったとき に、亡くなるのに病院で亡くなった、だけど、がんという病気を抱えながらも地域で生活 するのはどのぐらいできたのかという視点で物事を判断しないと、どこで死んだかどうか という話の価値観だけではないと私は思っています。そういう意味です。 ○事務局(唐澤総務課長)  総務課長でございます。  野中先生の提起されている問題は大変重要な問題で、最終的な場所の問題ではなくて、 最後の老後の連続した時間の生き方をおっしゃっているわけで、その間、御自宅があった り、その後はケアハウスがあったり特養があったり病院があったりということだと思いま す。私も介護をやっていましたけれど、それにぴったりのデータはないのですが、むしろ ここの場で、どういう連続した体系やシステムを本人が選択できるようなものも含めてつ くっていくかということを御議論いただければと思っております。問題意識は大変よくお 伺いをいたしました。 ○野中委員  それから、先ほどの本間委員に対する私の質問の中で、認知症に関しては、やはり早期 に対応することも大事だと思いますが、認知症の患者さんもさまざまな病院に、行くわけ です。認知症との理由で、拒否される。病院の体制等、何がもう少し、現状の医療よりも あれば、拒否されないで済むのでしょうか。拒否するのは、ある面では問題と思いますが、 拒否しないような状況にするには、病院として適切に治療をするためには、どういう体制 が必要なのかという質問に変えると、どういうふうにお考えになっているのでしょうか。 ○本間昭氏  これは具体的な数字を挙げることができないので、非常に難しい御質問だと思いますけ れど、実際には、一つ、例えば順天堂の江東高齢者医療センターがあります。そこは120 床の精神科の治療病棟と250床の高齢者医療の医療機関があります。当初、その120床と いうのは、身体合併症がある認知症のお年寄りの治療をしましょうという目的でつくられ たわけです。ただ、東京都全体で120床ですからね。これはあまりに数が少なすぎるとい うことになると思います。  じゃあ、ほかの病院で、一般病院で、そういうふうな体制をとることができるのか。こ れに関してはほとんど、具体的な、こういう条件がそろえば、こういう対応ができるとい うふうな??恐らくこれは研究ということもできると思いますけれど、行われていないの が現状だろうというふうに思います。一つは当然、スタッフの認識、知識ということも、 最も大事な部分としてあるだろうというふうに思います。それからもう一つは、やはり精 神疾患で入院治療をする場合の体制の問題というのが、一般病院でどのくらいできるか。 精神科の場合には閉鎖病棟ということになりますので、その違いというのも大きいだろう というふうに思います。ですから、ちょっと、明確な答えを申し上げられなくて申しわけ ありません。 ○野中委員  どうもありがとうございました。 ○川越委員  川越です。  本間先生、実際のデータを出していただいて、ありがとうございます。2つお聞きした いのですけれど、1つは、いわゆる本人の意思が確認できなくて、そのときに、いろいろ なことを、実際は決定していかなければいけないということの問題を挙げられていまして、 本当にそのとおりだと思って、多分、現場は非常に苦労されているところではないかと思 います。  ただ、先生が挙げられた例というのが、本人が決められないときに、家族がいらっしゃ る場合は、得をすると言うと、ちょっと言葉が変ですけれど、患者さんにとって有利な選 択がなされるのではないか。それから、いない場合は、ほうっておかれるのではないかと いうような、そういうニュアンスで聞こえたように、私は理解したのですが、そういう理 解でよろしいのでしょうか。 ○本間昭氏  白か黒かという言い方をすると、今、先生が言われたような状況になります。 ○川越委員  そのことで、実は家族がいるために、僕ら医療者から見ると、やらない方がいいと思う ようなことをやれと言われるなど、逆に患者さんにとってはデメリットというか、かえっ て悪いような方向に結論が行っているというようなこともあるのではないかということで すので。 ○太田壽城氏  もちろん、それもあります。実際に僕の患者さんでも、そういう例があります。「先生、 土地の問題が片づいていないので、何とか、あと1年生かしておいてください」と、家族 の方に言われるわけです。それは今、先生が言われた例に相当するだろうと思います。 ○川越委員  意思決定ができないというか、自己の意思を表示できない方を、どうやって表示させる かということは、もちろんこれは非常に難しいというか、ほとんど不可能なことだろうと 思うので、そのときに、その患者さんの意見をだれが代理するかということは非常に大切 である。これは確かに問題として押さえておかなくてはいけないことだと思うんです。た だ、私、以前、特別養護老人ホームにおりまして、亡くなる場所として、どこがいいのか というのを、私の属しておりました社会福祉法人の方で検討したことがあるのですけれど、 高齢者の方というのは、最初から自己意思決定ができないという方は、普通はないわけで、 ある期間を過ぎていく中で、ものも言えなくなるとかという、そういう過程をとってまい りますので、特養に入った方の場合は、入った時点で本人がどうしたいかということを、 まず確認したい。  それは確かに、ここで最期を迎えたいかという質問は、ちょっときついんですけれども、 やはり、少なくとも、その聞き方によって、そういう意思を確認する必要があるのではな いかということと、それから、その気持ちというのは、もちろん、当然、年ごとによって 変わっていくことがありますので、年に1回くらいは、そういう気持ちをちゃんと確認し たらどうかというようなことをやっていったわけです。ですから、そういう工夫をするべ きではないか。認知症になってしまった方を、どうやって自己決定していくかということ と同時に、もう一つ前にさかのぼって、そういう、自分がどうしたいということを確認し ておく必要があるのではないかと思うのですけれど、その点はいかがでしょうか。 ○太田壽城氏  もちろんそれは、先生の御指摘のとおりだろうと思います。ただ、現時点で、恐らく、 これは首都圏だけかもしれませんけれど、特養に入所できる人というのは、要介護4とか 5という方になるわけです。そうすると、恐らく、四捨五入すると100%、認知症はある だろうというふうに思いますし、かなりADLが悪いという方になるとお思いますので、 やはり、少なくとも現時点では特養に入所する時点で御本人の意思を確認するというのも、 かなり難しい部分があるのではないかと思います。 ○川越委員  私がそういう検討をしたのは、特養がついの住みかと言われていた時代で、一度入った ら最後まで見ていられるという、そういう状況の中でやっていったことで、先生がおっし ゃったように、今の、介護保険が始まってからでは事情が違うのはよくわかります。  それからもう一つ、僕の理解が間違っていたら訂正していただきたいのですけれど、認 知症を持っている方は、医療的に見たら2つの問題がある。1つは認知症の診断、あるい はそのステップというか、進行に伴った適切な診断と治療をしなければいけない。つまり 認知症そのものに対する治療を適切にしなければいけない。それから2つ目は、認知症を 持った方は、認知症以外にもいろんな身体的な疾患を持っているから、それに対しても十 分な医療が受けられるようにしなければいけないと、そういう理解でよろしいでしょうか。 ○太田壽城氏   はい、そのとおりだと思います。 ○川越委員  ただ、私、ちょっと伺っていて、これは先生は医者の立場で発言されたから、どうして もそういうことになると思うのですけれど、実は私たちのところでは、私はがんの在宅医 療をやっておりますので、時に、認知症を持っていて、家に帰ってこられる方がいて、そ こで最期を迎えられる方というのが、しばしばあります。そのときに、よくあるんですけ れど、入院している病院の方の先生からは、認知症がひどくて、夜間、徘徊したりとか、 そういうことがあるということで引き継ぎをして、「やれやれ、これは大変だなあ」と思 いながらやるんですけれど、実際は、家に帰りましたら、普通の方になられまして、確か に認知症は持っていらっしゃるけれども生活はできるということがあると思うんです。  ということで、私の主張というのは、この認知症の問題というのは、単に医療だけの問 題ではなくて、やはり生活ということに視点を置いて議論しないといけない。医者だけの 目ということで行ってはいけないのではないかということを、常々思っているのですけれ ど、その点はいかがでしょうか。 ○本間昭氏  もちろん、それは全く先生に賛成でして、医療の視点だけで見てくださいということで 話をさせていただいたわけではありません。もちろん生活ということを考えなければいけ ないわけで、きちんと環境が整ってさえいれば、大多数の認知症の方というのは落ち着い て生活をすることができるわけです。ただ、その生活を支える背景といいますか、縁の下 の部分には、やはり医療のサポートというのが必要ですということを、ちょっとお話しし たかったのですが、そのことが、しばしば、いろいろな場所で忘れ去られることが多いわ けです。そのことだけです。 ○川越委員  ありがとうございました。 ○糠谷部会長  先ほど伴先生がお見えになりました。新幹線の事故で大変なところを、どうもありがと うございました。本間先生、太田先生のお話を伺って、質疑に入っておりますけれども、 伴先生がお見えになりましたので、伴先生のお話を伺って、またあわせて議論をしたいと 思いますが、準備はよろしいでしょうか。まだ準備ができていないようでしたら、あとお 一方ぐらい御質問等がありましたら伺いたいと思いますが。 ○辻本委員  本間先生にお尋ねします。私、とても貴重なお話を伺ったと思いましたが、7割が治療 可能である、と。この7割治療可能という部分を、もし、在宅に行く前、あるいは行った 直後、可能にするためには何が必要かというのが1点。  それからもう1点は、医療とケア、これは切り離すことができない。実際、スウェーデ ンなどでは、マースという、医療専従看護師ですか、こういうものを置いているぐらいで すので、私も在宅看護をやって、本当に必要性を感じているのですが、先生は、その辺の ところを、どうしたらいいいとお考えか。この2点についてお願いします。 ○本間昭氏  最初の、7割が治療可能といううちの、恐らく6割ぐらいの部分というのは、いわゆる アルツハイマー型の認知症というものが占めているだろうというふうに思います。考え方 としては単純で、できるだけ早い段階できちんと診断ができて治療を始めることができれ ば、非常に軽度の段階を、時期を延ばすことができるということになるわけです。一定の 基準で、軽度の認知症というふうに診断された人たちに対して、薬物療法を始めることが できると50%、進行をおくらせることができるというエビデンスがあります。  それからもう一つの、例えば10%程度報告によって前後しますけれど、いわゆるアル ツハイマー型認知症以外の治療可能な認知症の原因というのもあるわけです。代表例とい うのは甲状腺機能低下症と、それからビタミンB12の欠乏症というのが文献としては指 摘されていますけれども、これはもう、ごく簡単な内科的な検査でスクリーニングできる わけです。そして内科的な治療、あるいはほかの原因であれば外科的な治療によって、あ る程度、もとに戻るとまでは言わなくても、かなりの部分で改善できるという場合がある だろうというふうに思います。  それから2番目の御質問ですけれど、これは認知症を地域でサポートしていく上での、 例えば訪問看護の役割という理解でよろしいでしょうか。 ○辻本委員  いえ、それとはまた別に、先ほど先生がおっしゃった、医療的サポートが必要である、 と。医療とケアは切り離せない。これは私、とても実感しているのですが、そういう意味 で、他国では既に動き出しているということですが。 ○本間昭氏  そういう意味ですか、わかりました。例えば日本の、これは認知症だけに限らず、介護 保険のケアプランをつくっているのはケアマネジャーです。恐らくその人たちの半分以上 のは介護職だろうと思うんです。看護師さん、保健師さんがケアマネジャーをやっている 割合というのは、かなり少ないと思います。恐らく統計はどこかにあるだろうと思います けれど、多分、2割とか、そのくらいではないでしょうか。  ケアプランの対象人が認知症の場合には、どうしても、やはり病気という視点があって、 そのために、いろいろな症状が起こってくる可能性というのがあるわけです。その病気と いうのは、認知症という意味の病気ではなくて、身体の病気という意味ですけれど、まず そのアセスメントができて、それから例えば環境とか、心理的な要因とか、例えば地域の 支援体制とか、家族の問題とか、そういうふうになっていくだろうと思うんです。ですか らそういう意味で、ケアと医療を分けるということは、やはり難しいだろうというふうに、 ふだん、僕は思っています。そういうお答えでよろしいでしょうか。 ○辻本委員  ありがとうございました。これは医師の教育、看護師の教育、介護士の教育という、教 育に非常に関係してくるのかなあというふうに思いながら伺わせていただきました。あり がとうございました。 ○本間昭氏  御指摘のとおりです。今、そのために、これは卒後教育的なものですけれど、そのため のプログラムというのをつくりました。かかりつけの先生向けのものもつくりましたし、 それからケアスタッフ向けのものというのもつくりました。でも、ケアスタッフと一言に 言っても、やはり看護師さん、保健師さんという意味でのケアスタッフと、介護福祉士さ んという意味でのケアスタッフとでは、やはり受け止め方というのが違うことがあるわけ です。 ○辻本委員  ありがとうございました。 ○糠谷部会長  それでは準備が整ったようですので、伴先生にお願いしたいと思います。 ○伴信太郎氏  きょうは、このようなヒアリングの席にお招きいただきまして、ありがとうございまし た。新幹線がおくれまして、十分に時間の余裕をとってスケジュールを組んでいたのです けれど、それでも、この時間にしか到着できませんで、申しわけございません。  国民の医療費の半分が高齢者医療に使われていて、20年後には、その半分の高齢者医 療の支出が後期高齢者に用いられると推計されておりますけれども、このような医療費は、 恐らく病院で使われているということが非常に多いというふうに考えております。すなわ ち、病院に高齢者の方が健康不調で入院してこられますと、大抵は多くの問題を抱えてお られまして、それを診断・治療せざるを得なくなるからです。病院で点滴をしない、栄養 管理をしない、あるいは診断をしないということは、非常に苦痛であるわけです。  もちろん私たちは、患者さんにとって何が一番安楽か、何が一番意味のあることかとい うふうに考えますけれども、しかし、よっぽど、何もしないということが安楽にとってい いのだという、強い確信がないと、病院では、なかなか、何もしないということはできな いというのが現状です。すなわち、助かるものも助けないのかという、外からの、あるい は自分自身の自問に対して、なかなか答えられないで、点滴をしたり栄養管理をしている と、浮腫が来たり、床ずれが来たり、あるいは譫妄が来たりして、そして薬をたくさん投 与しなくてはいけない、あるいは身体を拘束しなくてはいけないということになるわけで すので、本当なら家にいて、口にできる範囲内の水や食物をとりながら、安らかに、眠る ように家族に看取られながら亡くなるということは、実は点滴をしないということであっ たり強制的に栄養を与えないということが大事であるということなんですね。  ですから、本当に楽に死のうと思うと、脱水になって、だんだん呼吸状態が落ちていっ て、そして炭酸ガスがたまっていってというのが、一番楽な最期の迎え方であるというこ とが、実は医療者にも余り認識されていないということがあります。本当はこういうこと を達成しようと思いますと、できるだけ地域にいて、そして地域の医療の専門の人たち? ?それは医師であったり看護師であったり、コメディカルの人たちであったりするわけで すけれども、そういう人たちに見守られながら家族とともに亡くなるというのが一番安寧 で、かつ、医療費もかからないという在り方であると思いますが、それには、今の現状は どうなのかというふうな話をさせていただきたいと思います。  きょうのお話は、2つ、大きなテーマを用意しました。1つは日本の現在の、私が考え る高齢者医療の福祉の問題点です。それから先ほど申しました、地域の専門家というふう なものを、医療から見た場合に、プライマリ・ケア医という存在がありますので、そのこ とについて触れさせていただきたいと思います。  まず、現在の問題点は、日本の老年医学は、これは太田先生や本間先生に叱られるかも しれませんが、多くは高齢者の臓器別内科として展開されていることが多くて、総合的な 臨床高齢者医学・医療は弱いというのがあると思います。それから、地縁・血縁によるサ ポートが低下してきているということがありますし、そういうふうな状況、すなわち在宅 医療・介護の条件が余り整っていないのに在宅医療・介護が、今、進められているという ふうなことがあるというのが私の認識でございます。  まず第1点目の、日本の高齢者医学・医療ということについてですが、高齢者医学・医 療は、既にお話が出たかもしれませんが、高齢者医療というのは総合医療ですので、すべ ての疾患・病変を治そうとしてはいけないわけです。そして身体・精神心理・社会経済・ 価値観というふうなものを考えながら、しかしQOLを保てる介入はきっちり行う。例え ば大腿骨頸部骨折というのがありますが、年をとった方は大腿骨頸部骨折をしても、もう、 年だから寝かせておいてあげようというのではなくて、今はちゃんと、手術をするという のが、QOLをちゃんと保つという対応の方法なんですね。ですから、そういうふうなこ とを考えながら、何もしないときにはしない、するときにはする、というふうなことをで きるというのが、高齢者に対してできるかということです。  総合医療というのは、少し抽象的な表現ですけれども、まず、それぞれの個々の問題を 見るわけです。臓器の問題を見ますけれど、大事なのは全体で、ここに焦点的意識を全体 に向けると書いてあるのは、全体が主で、副次的な意識が諸要因というのは、例えば臓器 別の問題は副であるという考え方です。  このスライドはお手元の配布資料にありません。新幹線で待っている間につけ加えまし た。人間の健康を大局的に見る医療というのが、まさに総合医療であり、かつ高齢者を診 る医療であるべきであるというふうに思います。  総合的にやろうと思えば、何が多いのか。高齢者には何の問題が多いのか。緊急の場合 には的確に病院と連携する。あるいは重篤な場合でも??例えば大腿骨頸部骨折なども一 つの例かと思いますけれど??治し得るものなら治す。そして患者さんにとってニーズは 何なのか、価値観は何なのかというふうなことは、安楽ということになると先ほど申しま したように病院に行かない方が安楽になり得る可能性が高いということであれば、ちゃん とそれを在宅で見きるかというふうなところの力ということになると思います。  この2番目の、地縁・血縁によるサポートの力が低下しているということですが、これ は特に都市部では、私たちはよく実感いたしますが、まだ、例えば人口5,000人のところ に診療所が1軒とか2軒とかというところでは、いろいろな地縁・血縁がサポートとして 活躍されますけれども、少し郊外、あるいは都市部になってくると、非常にこの力が低下 してきていますので、勢い、医療、あるいは福祉、あるいは介護というふうな社会資源の 動員が必要ということになってきます。  それから3つ目の問題ですが、整っていないのに、今、在宅医療の介護が進められてい るではないか、と。先日の新聞にもありましたけれど、在宅介護支援診療所が、届出は非 常に多いけれども、実際に機能しているのは非常に少ないというふうなことにも示される ように、実際、その条件が整っていないというふうに思います。  そこで大きな問題の一つが、地域医療を専門とする医師というふうな形の存在が、日本 ではこれまで認識されてきていないということがあります。そうすると、地域医療を専門 とするということがないと、保健と福祉との連携ができない。既に話があったかもしれま せんけれど、医師と看護師、あるいは医師と行政というものが、どう連携するかというふ うなことで、それぞれのパートナーがやる気になっていても、医師が動かないので、なか なか回らないというふうなことは、よく、地域で側聞いたします。  そうすると、地域にどういう資源があって、どういうふうな形で利用すればいいのかと いうふうなことも、うまく生きてこないということになります。それから、やはり介護と いうことになりますと、家族ということになりますが、この、地域の医療の専門医、プラ イマリ・ケア医と申しますが、このプライマリ・ケア医というのは、個人を診るだけでは なくて、家族を見るというふうなことが非常に大事なアクティビティーになってまいりま すので、その家族をケアするということがないと、介護疲れ、バーンアウトというふなこ とになってしまうと思います。  そして家族がバーンアウトしてしまうと、いわゆる不適切な入院というふうなことにつ ながるということは、私は今、病院におりますけれども、病院で見ていると、決して珍し くありません。私たちも、先ほど申しましたように、病院でお引き受けしますと、診断し ない、点滴しない、栄養管理しない、ということは、なかなか難しいわけです。  地域医療の専門医というのはプライマリ・ケア医と言われますけれど、このプライマ リ・ケア医ということについて、後半、少しお話をさせていただきたいと思います。いろ いろな、老年医学の研究、あるいは老年医学の施策が出てきて、地域でそれを生かそうと いっても、そこの地域にいる医師というのは、地域で働くということを、そもそもの専門 性としてトレーニングを受けてくるというふうなことが諸外国ではありますけれど、日本 では、なかなかそれがまだ整っていないので、地域を支える専門医というふうな人たちが 育っていないということがあります。  「プライマリ・ケアとは」ということで、これはアメリカでの定義ですが「日常の健康 問題の大半を責任を持って取り扱うことができるような幅広い臨床能力を有する医師によ って」と書いてあります。すなわち、この「幅広い臨床能力を有する医師」というのが、 プライマリ・ケアの専門医というふうに、諸外国では位置づけられています。こういう医 師によって「地域の第一線で提供される、包括的なヘルスケア・サービスである。そのヘ ルスケア・サービスは、継続的で、地域や家族を視野に入れたもの」であるというのが、 プライマリ・ケアというものの定義です。  これを言葉で言っても、なかなか頭に残りませんので、イメージで見てみますと、まず、 もちろん、プライマリ・ケアの専門医は、個別の患者さんを見ますが、それにも増して大 事なのが家族ケアというものです。そして在宅医療などにかかわろうとすると、やはり地 域を見ながらケアしなくてはいけない。行政との連携、あるいは福祉施設との連携という ふうなものが大事になってきます。プライマリ・ケアというものは、身体だけではなくて 精神的な問題、社会的な問題、また、予防だけではなくて診断も治療もリハビリも、個人 だけではなくて家族も地域も、そして保健と医療と福祉との連携というふうなスタンスを 重要視しますので、やはりこれは、病院でトレーニングできる医療の専門性ではないんで すね。  これは少し、絵の中の説明の字が小さくて、わかりにくいかもしれませんが、1,000人 の人を1カ月、健康問題に関する動向を追いかけてみますと、赤の四角で書いてあるとこ ろが、1,000人のうち800人ぐらいが何らかの健康不良を来すというもので、その中で、 病院へ行こう、あるいは診療所へ行こうかというふうに考える、検討する、そういう方が 327人で、実際に医療機関に行く方というのは、そのうちの4分の1、赤の四角の中の4 分の1で200人。それで、めぐりめぐって大学に紹介されるのは1人ということです。こ れは欧米のデータですが、日本でも同じような研究がされまして、こちらは、大学にたど り着く患者さんは6人というふうなデータがあります。  すなわち、病院でトレーニングを受けている多くの専門医は、非常に領域を狭く絞りな がら深く探求するという(細分化するタイプの専門医)ですが、そこに到達する患者さんは、 非常に難しい、まれな患者さんで、日本でも1,000人のうちの1人、あるいは6人という 状況ですが、日ごろから地域を見るというふうなことをしようと思うと、1,000人の人た ちに目を配っておかないといけないということになります。  図の上が入院患者さん、下が外来患者さん、右が研究/教育をやっている機関、斜めに 入ってきた軸が細分化する専門医と総合する専門医ということになります。日本での今ま での卒前・卒後の医学教育というのは、こういうふうな部分で行われているものですから、 総合医療を行うという人が育ってきていないということがあります。  高齢者医療をやろうと思うと、先ほど申しましたように、総合的に物事を見るというこ とが必須となってきますので、こういうふうな医師を育てるということが、これからの高 齢者医療、あるいは地域医療ということを考える場合には、避けて通れないということを 考えておかなくてはいけないというふうに思います。  アメリカではどういうふうに、そういう総合的な医療をする医師を育てているかという システムがこちらです。ここに書いてある、具体的な研修の仕方というのは、参考程度に していただければ結構ですが、これは3年間で、こういう幅広いトレーニングを受けて、 そして老年医学のトレーニングを受けるのは、この後です。それから、内科領域からも老 年医学のトレーニングを受けることができるのですが、同じように内科の3年の研修を終 えた後に高齢者医学、老年医学のトレーニングを受けるというふうなシステムになってい ます。  いろいろな問題が地域で起こってきて、その多くの問題が、高齢者絡みの問題であると いうふうなことがいえます。そして、そういうふうな問題を、在宅で、あるいは地域で見 る。ここに紹介率6.3%と書いてあるのは、病院に行く人が6.3%であるということです ので、大半は地域で見るということです。  一方で、英国におけるトレーニングシステムというのもありますが、やはり英国での、 地域における専門医というのは、卒後1年間で、いろいろな幅広いトレーニングを受けた 後、2年、3年と、さらにその間口を広げた上で、4年目には診療所でトレーニングを受 けるというふうなシステムになっておりまして、これは昨年から、一番上の1年間という トレーニングが、日本でのトレーニングと同じように2年間というふうに広がりまして、 できるだけ土台の広い臨床ができるようにというふうなことをやっております。  このように、地域で見ていくというためには、やはり医師もそういうふうなトレーニン グを受けるということが必須で、これからいろいろな施策を構築していくときには、この 視点なしには、いろいろな保健とか、あるいは研究的な介入の方法とかが開発されても、 それを実際に現場で有効に生かすということが、できないのではないかというふうに、私 は危惧しております。  ちょっと追加的な話題ですが、卒後臨床研修が2年間の必修化をされまして、皆さんが、 いろいろな幅広いトレーニングを受けるようになったので、これでプライマリ・ケアがで きるような医者がたくさん育ってくるかというと、そうではないということを、ここで一 言だけ述べておきたいと思います。  今やっている卒前の医学部での教育、それから卒後臨床研修の2年間というのは、基本 的に、将来、病院で眼科をやる人も耳鼻科をやる人も心臓外科をやる人も、あるいは地域 に行ってプライマリ・ケアをやる人も、獲得しておいてもらいたい臨床能力というのを養 成しているわけでありまして、実際に地域に行ってやるプライマリ・ケアの専門医をつく るためには、今検討されている後期研修医というふうな、卒後3年目から5年目、6年目 というふうな段階に、こういうふうなトレーニングを受けるということが必要であるとい うふうに思います。  以上、駆け足で話をさせていただきまして、私の専門の立場上、2つ目の柱の方の話に 少しウェイトを置きすぎたきらいもあるかもしれませんが、高齢者の医療については、既 に前のお二人の方がいろいろ詳しくお話しになっているものと想定いたしまして、私の話 とさせていただきます。どうもありがとうございました。 ○糠谷部会長  ありがとうございました。それでは、今の伴先生のお話、それから前の本間、太田、両 先生のお話も含めまして、御意見、御質問等を御自由にどうぞおっしゃってください。 ○高久委員  一つだけ伴先生に教えていただきたいのですが、プライマリ・ケア医、家庭医のトレー ニングは大体3年とおっしゃいましたね。その後に高齢者についてのトレーニングという のは何年ぐらいやるのですか。 ○伴信太郎氏  アメリカの場合は1年ないし2年というのがフェローシップでのトレーニングです。 ○川越委員  太田先生にお尋ねします。在院日数が20日ということで、非常に驚いたのですけれど、 2つ教えてください。どういう医療を行っていらっしゃるか。今、まさに伴先生がおっし ゃったように、高齢者の方については、調べたらいろいろ異常が出てくるし、いろんな問 題が当然出てくるということで、それをつつき始めたら大変なことになってしまうわけで すけれど、医療的にはどういうことを目標にして、どんどん短くなっていって、こういう 20日間というのが達成されているのかというのが一つです。  それからもう一つ、こういう形で、今、さまよう患者さんということを盛んに言われて いますけれど、ここへ行ったら、あるところだけ見てもらって、ポンと投げ出されるんじ ゃないかという危惧がどうしてもあるわけで、つまり後方支援というようなことについて、 どのようなことがあるのか。進歩があったから、こういうことが可能になったのか、ある いはそういうことを無視して話をされているのか。これはちょっと失礼な質問ですけれど、 教えていただきたいと思います。 ○太田壽城氏  どうしてこう短くなったかというのは、多分、2つ要因があると思います。一つは、重 要なことに対してしっかりやって、連携して、ほかのところもやりながら、一番大きな、 例えばある病態があっても肺炎を起こしたら、そこを一生懸命やって、よくなったら、御 本人も帰りたいというので帰っていただく、そういう姿勢をいつも、病院の医師が横断的 に持っている。それがうちの常識になっています。  そういうことの一つのあかしとして、私たちの病院の医者は、例えば神経内科の医師も ジリアトリック・ニューロロジストというふうに自分で呼んでいますけれど、まさに横断 的なことを踏まえた、高齢者のことを、ある程度、ほかの診療科のこともわかってやって います。もうちょっと事例を言いますと、消化器の患者さんがお見えになって、主治医が、 ちょっとしゃべり方がおかしいんじゃないですかと言ったら、奥さんが「そういえば3日 前から」と言われて、実は小さな梗塞で、すぐ入院されたとか、そういうことが実際によ くありますので、かなりジェネラルに、ジリアトリックのエリアでは行われていると思い ます。さっき言ったように、重要なことに対応したら、すぐ帰りたいという場合が多いで すので、そこで帰っていただく。  もう一つは、やはり後方支援です。社会復帰支援室の機能が非常にアクティブでありま して、具体的には看護師とかケースワーカー、特に看護師は先乗りスコアラーと言いまし たけれど、在宅に帰られる場合には、家に訪問して、家の中の環境とか、手すりとか、そ ういうものを、既に入院の当初から考えて、御家族と話をしたり、そこからまた、いろん なサービスを受けられるように、ケアマネの方と話をしたり、そういうことやりながらや っています。ですから、彼らはとても忙しいんですが、私は、今の社会復帰支援室という のは非常に重要な役割を持っていると思います。多分、その2つではないかと思います。 ○川越委員  もう一つ、非常に興味あるといいますか、私自身が非常に関心を持ったのは、16ペー ジのところで、年齢が上がっていくと診療点数が下がっていくというデータがありました。 この解釈というのは、どういう具合に考えたらよろしいのでしょうか。このデータだけを 見ると、年をとったら何もしない医療をやっているのではないかという批判が、当然、出 てくると思うのですけれど。 ○太田壽城氏  実態は、非常に、御本人や御家族としっかり話をしています。その中で御理解を得ると いうより、むしろコンセンサスをつくっていく中で結果としてこうなってきているという ふうに私は理解をしています。例えばさっきの、意思決定がどういうプロセスで行われて いるかということを、今、終末期のことを考えてやっていますけれど、そういうときのデ ータを見させてもらいますと、相当いろんな、ちょっとした大きな変化が起こると、その たびに、少なくとも複数の家族の方と主治医と、看護の人間が??医者もできれば2人で ディスカッションをして、次の診療のプランをディスカッションするというようなことを、 たびたび行っています。そういう中で、こういう結果になっているのだろうと思います。 ○川越委員  それは、ディスカッションするからこういう具合になったというふうに理解したらいい のか、あるいは病院が一つの姿勢を持っていて、家族の方と十分話して、例えば極端な話、 こういう話をされているかどうかわかりませんけれど、90歳の方で自然に食欲がなくな って食べられなくなったとします。ある医者は、例えばPEGなんかを使ったりするとい うことを簡単にやってしまって、栄養管理ということを考えるわけですけれど、それが決 していい医療ではないというような、そういう、ある意味でのフィロソフィーというかポ リシーみたいなものを病院が持っていらっしゃるのかどうか、その辺はいかがでしょうか。 ○太田壽城氏  基本的には、幾つかの選択肢をお示しして、そのメリット、デメリットをお話ししたり して、家族の方に選択してもらう場合がほとんどです。したがって物すごく時間がかかり ますけれど、その結果、非常に問題のない決断が得られる場合が多く、そういう意味では クレームが非常に少ないというのも、その結果だと思っています。 ○川越委員  ありがとうございました。 ○辻本委員  先ほど本間ドクターのお話で、7割の方が治療可能である、と。しかも、その6割くら いはアルツハイマーで、薬物で50%進行を押さえられるというお話がありました。しか し、そのことを、国民はほとんどわかっていないということが現実で、物忘れが始まると、 家族の中には、親の恥、家の恥、みたいなことで隠そうとしている、そういう傾向はいま だにあると思います。その辺を、どんなふうに、社会的に認知していくことがいいのかと いうことについて、まず、御意見を伺いたいと思います。  また、あわせて大府の取り組みの中で、7ページで介護者の勉強会とか市民フォーラム というのを開催していらっしゃる。まだスタートして2年ぐらいということなので、それ ほど大きな成果があるとは思えないのですけれど、そこの開催などで、何がどのように変 わってきて、どんな期待が持てるかというあたりを、それぞれお願いいたします。 ○本間昭氏  どうすればもっと、いわゆる地域での認識を増すことができるかということですね。僕 もできるだけ、そういうふうにしたいと思って、いろんな活動を今までしてきたわけです けれど、最近の活動で言えば、例えば厚労省が始めた認知症を知るキャンペーンというの が18年度から始められていますけれども、あれはかなり大きな影響力があるだろうとい うふうに思います。  それから僕自身は、東京都老人医療センターで、物忘れ外来というのをやっていますけ れども、数年前は、御自分から、忘れっぽいということを訴えて受診される方というのは、 いらっしゃらなかった。でも、去年ぐらいの割合で見ると、年間の物忘れ外来の患者さん が約550人ぐらいという規模の外来ですけれども、まだ1割は行きませんけれども、それ でも6〜7%の方が自分から来られるようになっているんですね。忘れっぽくなったので 心配だ、と。ですから、これはやはり大きな変化だろうというふうに思います。 ○辻本委員  その方たちの動機のようなものは、何か掌握されていますか。 ○本間昭氏  もちろん全員に漏れなく確認しているわけではありませんけれども、例えば、変な話で すけれど、先生がテレビに出ていたからとか、例えば講演を聞いたからとか、それから新 聞に出ていたからとか、やはりマスコミの影響というのは大きいのではないかと思います。 ○太田壽城氏  認知症に関するかかりつけ医の関心がさらに深まってまいりまして、つい最近、認知症 研究会というのを立ち上げることになりました。それで開業の先生方が、むしろやれと言 われて、ついこの間から、郡市区医師会の中でやることが決まって動いています。それと 同時に、さっき言いましたチェックリストのバージョンアップをしろと言われていまして、 もう、3月までにやれと言われて、かなり言われています。それはとてもいいことだと思 っています。  一方で患者さん自身は、今、本間先生が言われたように、私どもの医師が結構、マスコ ミにも出ていますので、物忘れ外来に、余り抵抗なく来られるようになっています。毎日、 午前と午後、3人ずつやっていますけれど、それでも結構、予約が一杯のような状況です が、かなり浸透してきていることが挙げられます。  もう一つ私たちは、これは研究的なことですけれど、実は大府市の高齢者の方々皆さん に、認知症のチェックをしてみようと思って、今、始めています。これは大府市と一緒に やっているんですけれど、質問紙を配って、電話で認知症のチェックをする方法がありま す。ティックスという方法ですけれど、それをやってもいいですかというのをやりました ら、結構な方から、やってほしいという返事があって、必死になって、今、臨床心理士が やっています。時々、お叱りは食らうようですが、基本的には、かなり前向きに受けてい ただけるようになっています。その中で、ある地域の認知症の方々の、頻度であるとか、 あるいは変化であるとか、あるいは流れみたいなものが見えるのではないかなあと思って います。  実際に、一部分、流れについては、私どもの鷲見という部長が研究していまして、在宅 が最初で、その後が老健で、最後が、今の状況では老人ホームであるということも、流れ ができていまして、その数の概要も、大体、地域の数に匹敵するものが大雑把につかまえ られています。そういう、ドクターの御理解、それから患者さんへの御理解と、もう一方 で、実態をしっかり把握したり、そこからどういう対策をとっていったらいいかというと ころまで少し手を広げようとしています。 ○辻本委員  そういった大府市での取り組みが、ある種のモデルケースになって、全国に、こういう 方法があるということになっていくと、この問題というのは随分変わってくるというふう に考えてよろしいでしょうか。 ○太田壽城氏  そうしたいなあと思っています。 ○遠藤委員  伴先生に伺います。共通する課題ですが、2点ほどあります。先生がおっしゃるとおり、 専門医としてのプライマリ・ケア医を養成するということは非常に適当なことだと私も思 います。また適正な評価をしていく必要があるだろうというふうに思うわけですけれども、 それに関連して、先ほど先生は、それを養成するためには、後期研修できちんとした養成 が必要であろうということをおっしゃったわけですが、実際の後期研修のプログラムで、 こういうふうなことを標榜しているというか、実際にやっておられるようなところという のは、どのぐらいあるのか。  また、もう一点は、先生は医学部の先生ですので、それでお伺いするわけですけれど、 医学生であるとか、あるいは若い医師が、こういう世界に入る、つまり従来型の専門医で ない形の世界に入っていくということに対して、どういう意識を持っておられるのか。従 来の考え方では、比較的、余り肯定的ではなかったかのように思うわけですけれど、必ず しもそうではないのかどうか。その2点についてお聞かせいただければと思います。 ○伴信太郎氏  まず第1点目の、今の、こういうふうな後期研修で専門的な研修を提供しているところ が、どれぐらいあるかということですが、実際には、日本家庭医療学会という学会があり まして、そこが、いわゆる専門医ではありませんが、認定プログラムというふうなものを、 現在、始めようとしています。現在、仮認定ということで、実際には2007年から本認定 というふうなことで、今のところ、そこに登録している施設が施設あります。まだ12月 10日まで、その認定登録の申請の期限がありますので、もうちょっとふえるかなあ、と。 ですから、50に届くかどうかわかりませんけれど、30〜40のプログラムが、そういうふ うな医師を養成しようというふうに名乗りを上げているというのが現状です。  それから医学生の方ですが、これは大変難しい問題で、現在、日本でも何回か調査が行 われておりまして、入学時点で、いわゆる地域に行って高齢者医療を含めた医療をやりた いと思っている人は、かなり多い。例えば8割ぐらいの学生は広くやった上で、そして、 ずっと広くやりたい人が3割。広くやった上で狭くやっていきたい人が5割というふうな 状態です。ただし、実際に卒業時点で、今、そういうふうな領域に行こうという人は1割 もないんですね。それはやはり、今、そういうふうな専門性というものが、日本では確立 していませんし、そういうふうな専門医のロールモデル、見本になるような医師というの も、大学には数少ないわけですので、まだ1割もないというのが現状です。 ○遠藤委員  そういう意味では、なかなか難しい問題を抱えているわけですね。ありがとうございま した。 ○鴨下部会長代理  今の質問に関連しますが、伴先生にお尋ねします。臨床研修必修化の現状あるいは将来 に対して、やや悲観的な御発言だったと思いますけれど、今、医療の問題では、やはり医 師の専門性、専門領域による偏在ということが一番大きな問題だと思うんです。その点に 関して、先生のお立場から、高齢者の医療の専門家というのは、そんなに必要なのか。む しろ臨床研修必修化が、そもそもプライマリ・ケアの医師を目指してスタートしたことだ ろうと思いますので、さらにそういうところをやるということに対して、先生のお考えを お聞かせください。  それから先程来、高齢者の8割が認知症になるということで、精神科の医療といいます か、これはむしろターミナル的な方向へ持っていくべきであって、積極的にやることがど うなのか。ただでさえ、産科医とか小児科医、あるいは麻酔科医等は不足していますので、 そんなこともにらんだ上で、先生のお考えを、もう少し踏み込んで伺いたいと思います。 ○伴信太郎氏  私の発言は、臨床研修の必修化を悲観的に見ているのではなくて、臨床研修必修化は、 日本のあらゆる臨床医が幅広い臨床基盤を持つには、いい制度になったというふうに、私 はポジティブに評価しておりますが、ただそれは、プライマリ・ケアの専門医になるよう な目的で行われている研修ではないというところの違いを認識しておく必要があるという ふうに思うんです。  ですから、将来、小児外科に行く人も、小児科に行く人も、心臓外科に行く人も、あの 研修を受けるんですよね。それはやはり、それぞれの科でやっておかなければいけない臨 床能力というのが、今まで十分に身についていなかったので、卒後の2年間もかけて、そ れをつくろうということです。ですから、今後はやはり、地域に行ってやろうという人は、 さらに地域に行ってやるのに必要な、先ほど申しましたような総合性として求められる知 識とか技能とか態度みたいなものを獲得していく後期研修期間がきっちり構築されなけれ ばいけないというのが1点です。  それから2つ目の、高齢者医療をどう専門化していくかということですが、先ほど申し ましたように、専門医としても老年科の専門医というのはジェネラリストがさらにサブス ペシャリティーとして取る領域に今はなっておりますので、研究はやはり非常に日進月歩 ですし、こういうふうなものがあるというようなことは、高齢者医療としての研究をされ るべきだと思うのですが、お手元の配布資料の、よりよい高齢者医療・福祉を実現するに は、というところで書いていますが、研究機関あるいは中枢病院で行われる高齢者医学研 究ないしは高齢者医療が、ジェネラルにやる医師に伝播されるというふうなものでないと、 地域における後期高齢者のケアというのは成り立たないと思うんです。ですから、高齢者 の専門家がたくさん育って、それで後期高齢者医療がよくなるかというと、私はそうは思 わないんです。やはりもっと裾野が広がらないといけないと思います。 ○高久委員  今、鴨下先生がおっしゃったことにも関係しますが、伴先生のおっしゃっているプライ マリ・ケア専門医は、もちろん小児科もカバーすると考えていいわけですね。 ○伴信太郎氏  そうです。今は高齢者医療の話ですので、高齢者にウェイトを置いて話しています。 ○鴨下部会長代理  それはここから読み取っておりますので。 ○辻本委員  伴ドクターにお聞きしたいのですけれど、この間の新聞の記事で、在宅療養支援診療所 のお医者さんが1万人ぐらい、特に大阪は、やりもしないのに登録するということで、か なりひどい批判を受けていた地域でもあるのですけれど、手を挙げているということは、 そのおつもりがある方たちだと思うんです。そうすると、当面、今、見えてきている顔ぶ れということでは、一番見える形になっている、ある種の層だと思います。そこに何か働 きかけていく、あるいは学生さんの意識に、そういった問題の必要性を感じるというとこ ろと連携していくみたいなことというのは、考えてはいけないのでしょうか。 ○伴信太郎氏  いえ、やはり短期的には、そういうふうに意欲がある、名乗りを上げたけれども実際に されていないというのは、やはり24時間365日の拘束というのは大変な負担ですので、 そう簡単には引き受けられないというところがあるわけです。ですから、そういうふうな ところを、どう連携をとるかとか、あるいは基本的な知識とか技能はこういうところです よというふうなことを、やはり研修を受けるような機会はぜひあるべきで、それは緩和医 療でもそうだと思うんですけれど、そうした上で、そういうふうなところの診療に参加し て、それなりの社会的な保障を担保されるというふうなことがないと、やはり、能力もな いのに無理にやりに行って??やはり診療点数もついていますので、やってみようかなあ という気にはなると思うんですけれど、なかなか踏み出せないというのが現状ではないか というふうに思います。 ○野中委員  一つは今の問題にかかわりますけれど、それはでも、プライマリの専門性とか、その意 識を持てば、個人で対応できることだというふうにお考えになりますか。その、今の24 時間365日の件は。 ○伴信太郎氏  もちろん個人の熱意があれば対応は可能だと思いますが、やはり医師会レベルでのネッ トワークづくりみたいなものがないと、とても無理だろうというふうに思いますけれど。 ○野中委員  その辺に関して、それは点数が設定されるから地区医師会が動くとか、そういう話では ないと私は思います。従来、在総診というのがあったんですね。この在総診の点数には、 個々の医師が連携することが高く評価し、地区医師会での連携に対しては低く評価してい ました。今回の在宅医療支援診療所には、個人と個人の連携あるいは体制をつくることに 関しては、点数はつけなかったわけです。しかし、今おっしゃったように、地区医師会が、 会員の行動、医療機関の行動をサポートすることによって、患者さんの、いわゆるニーズ に対して対応することを、地区医師会が実現すべきだろうと思います。その辺に、まだま だ問題があると思っています。  もしそのことでまたコメントがあればいただきたいと思います。もう一つ、私は自分で 在宅医療をやっていますけれど、一番病院にお願いしたいのは、入院や外来で受診して、 改善の可能性があるかどうかという判断です。改善の可能性の判断をしないで、ただ単に 対処的に、先生が冒頭で言われた点滴治療等を実施してしまう。その前に改善の可能性を、 きちっと、患者さんや従来の主治医とどう話すかということが、大事なことだと思います。 ところが現実は、診察していただこうといった時、入院ベッドがなくて、うちでは見られ ません、というケースが多いのも事実です。ですから本来、在宅医療のサポートとして、 この様な体制がないと、実は24時間365日の問題と同じようなことになる。その体制を 病院につくるためには、どうしたらいいか。先ほどお話された太田先生の長寿医療センタ ーは、在院日数を非常に短縮することに大きな努力をされています。太田先生のセンター の活動を見ていて、やはり入院の当初から、その患者さんに、いわゆる将来の、例えば 20日後の目標を御家族にも説明する努力をされているからこそと思うんです。20日後 には何も在宅でなくても、その次の施設とか、その説明能力が、実は大事と思うんです。 現状では、まだまだそういうスタッフが、現場でしたり、連携室等、病院がつくっていま すが、実際には機能したり、まだまだ評価されていない現状があります。この点に関して 何かコメントがあればお願いします。 ○伴信太郎氏  既に時間が過ぎていますので、まとめての話になると思いますけれど、やはり今、先生 がおっしゃったことと、基本的には同じ意見ですけれど、病院は病院で、そういうふうな 高齢者の医療に対する対応の能力が、まだまだ不十分である。それは、いわゆる診療医と しての問題と、それから地域医療センターないし地域連携センターみたいなシステムの問 題ですね、それと先ほども申しましたように、地域で不必要な入院を起こさないような、 プライマリ・ケアの専門医の力量も不足している。この両方があるだろうと思います。 ○糠谷部会長  そろそろ時間もまいりましたので、よろしいでしょうか。このあたりで本日の審議は終 わりにしたいと思います。お三方の先生方、お忙しいところをおいでいただきまして、大 変ありがとうございました。  次回の日程でございますけれども、11月6日、月曜日、15時からを予定しております。 場所は追って事務局から連絡するようにいたします。  本日は、どうもありがとうございました。 【照会先】     厚生労働省保険局医療課企画法令第1係     代表 03−5253−1111(内線3288)