06/10/18 薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会 平成18年10月18日議事録 薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会 議事録 1.日時及び場所   平成18年10月18日(水) 10:00〜   厚生労働省共用第8会議室 2.出席委員(10名)五十音順    井 上 和 秀、 岩 崎   学、 川 西   徹、 堺   英 人、    澤 田 純 一、○首 藤 紘 一、 谷川原 祐 介、 土 屋 文 人、   ◎永 井 良 三、 村 勢 敏 郎 (注) ◎部会長 ○部会長代理   欠席委員(4名)    飯 沼 雅 朗、 長谷川 紘 司、 早 川   浩、 樋 口 輝 彦 3.行政機関出席者   黒 川 達 夫(大臣官房審議官)、   中 垣 俊 郎(審査管理課長)、 伏 見  環(安全対策課長)、    豊 島   聰(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長)、    川 原   章(独立行政法人医薬品医療機器総合機構安全管理監)、   森   和 彦(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役)、    佐 藤 岳 幸(独立行政法人医薬品医療機器総合機構新薬審査第一部長)、   坂 本   純(独立行政法人医薬品医療機器総合機構新薬審査第二部長)、   望 月   靖(独立行政法人医薬品医療機器総合機構新薬審査第三部長)、  田 中 克 平(独立行政法人医薬品医療機器総合機構生物系審査部長)他 4.備  考   本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。 ○審査管理課長 おはようございます。定刻にまだ間がありますが、御出席の先生方が すべてそろわれておりますので、薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会を開催させてい ただきます。  本日は、お忙しい中お集まりいただきありがとうございます。当部会委員数14名のう ち10名の先生方の御出席を頂いておりますので、定足数に達しておりますことを御報告 申し上げます。  では、部会長の永井先生、以後の進行をよろしくお願いいたします。 ○永井部会長 それでは、審議に入らせていただきますが、まず、事務局に人事異動が ありましたので、簡単にごあいさつをお願いできますでしょうか。 ○審査管理課長 9月1日付けで審査管理課長を拝命いたしました、中垣でございます。 よろしくお願い申し上げます。 ○安全対策課長 同じく、9月1日付けで安全対策課長に着任いたしました、伏見でご ざいます。よろしくお願いいたします。 ○安全管理監 審査管理課から医薬品医療機器総合機構の安全対策を任されることにな りました、川原です。引き続きよろしくお願いいたします。 ○審議役 新薬審査部全般のサポート役ということで、新薬審査第一部長から審議役を 拝命いたしました、森でございます。よろしくお願いいたします。 ○審査第一部長 審査管理課から新薬審査第一部長を拝命いたしました、佐藤でござい ます。よろしくお願いいたします。 ○審査第三部長 新薬審査第三部長を拝命いたしました、望月と申します。よろしくお 願いいたします。 ○永井部会長 よろしくお願いいたします。  では、事務局から配付資料の御説明と資料作成に関与された委員の報告をお願いいた します。 ○事務局 資料の確認をさせていただきます。席上に、議事次第、座席表、部会委員の リストを配付しております。議事次第にある資料1〜資料5-2までは先生方に事前にお 送りしたものです。当日配付資料としては、資料2-2「ギャバロン髄注」の審査報告書 の正誤表、資料6「審議品目の薬事分科会における取扱い等の案」、資料7「専門委員 リスト」です。  平成13年1月23日の薬事分科会申合せに基づく、資料作成に関係された委員の確認 ですが、本日の審議品目について、関与委員はいらっしゃいません。以上です。 ○永井部会長 本日は、審議事項が4議題、報告事項が1議題です。  では、議題1について、機構から審査概要の御説明をお願いいたします。 ○機構 議題1、資料1、医薬品セレコキシブの輸入承認、並びにセレコックス錠100mg、 及び同200mgの製造承認の可否等について、医薬品医療機器総合機構より御説明いたし ます。  本剤の有効成分であるセレコキシブは、炎症時に誘導されるシクロオキシゲナーゼ-2 を選択的に阻害する非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)です。今般申請者は、セレコキシブ の錠剤を開発し、関節リウマチ及び変形性関節症の消炎・鎮痛を効能・効果とし、輸入 製造承認申請を行ったものです。本剤は欧米諸国等106か国で承認されております。  本品目の専門協議では、本日の配付資料7に示されるような方々が専門委員として指 名されております。  審査内容について簡単に御説明いたします。  品質、薬理、薬物動態、毒性に関して提出された資料については、特段の問題はない と判断しております。  臨床成績の有効性についてですが、日本人関節リウマチ患者771例を対象に実施され た第III相試験では、本剤200mg1日2回、12週間投与することにより、主要評価項目で ある米国リウマチ学会によるACR改善基準(変法)においてロキソプロフェンナトリウ ムに対する非劣性が検証されました。また、日本人変形性関節症患者949例を対象に実 施された第III相試験では、本剤100mg1日2回、4週間投与することにより、主要評価 項目である最終全般改善度の「中等度改善以上」の割合においてロキソプロフェンナト リウムに対し非劣性が検証されております。  安全性については、国内臨床試験での安全性解析対象例2,398例中の副作用発現は403 例、16.8%であり、主な副作用は胃腸障害、皮膚・皮膚付属器障害等が発現しておりま す。副作用発現率及び認められた事象は、既存のNSAIDと大きく異なる点は認められて おりません。しかしながら、海外において類薬及び本薬の高用量投与で心血管系有害事 象の発現リスクが投与期間に依存して高まる可能性が報告されていることから、添付文 書では警告文や禁忌等の記載整備により十分な注意喚起を行い、さらに、処方マニュア ル・患者服用マニュアル等を通して本剤のリスクに関する情報が医療関係者及び患者に 十分伝わるようにすることとしております。また、心血管系有害事象に速やかにかつ適 切に対応できるように市販後一定期間は施設内に循環器内科等があるか、又は当該科の ある医療施設と提携関係があり、かつMRにより本剤に関する情報の伝達が十分行われ る医療施設においてリウマチ治療又は整形外科の専門医が本剤を処方することとなって おります。さらに、既存NSAIDを比較対照とした1万例規模の特定使用成績調査を実施 し、本剤の適正使用実態下における心血管系有害事象のリスクを検討することになって おります。  以上の審査を踏まえ、本剤の関節リウマチ及び変形性関節症に対する適応を承認して 差し支えないとの結論に達し、本第一部会で御審議いただくことが適当と判断いたしま した。  本剤は新有効成分医薬品であることから、再審査期間は6年間、原体及び製剤は共に 劇薬に該当し、生物製剤及び特定生物製剤のいずれにも該当しないと判断しております。 なお、薬事分科会には報告を予定しております。よろしく御審議の程お願いいたします。 ○永井部会長 それでは、御意見、御討論をお願いいたします。 ○谷川原委員 一番基本的な疑問です。COX-2インヒビターということで開発された わけですが、有効性は、既存の薬剤と比べて非劣性だから同等である。当初想定してい た消化器障害は既存の非選択性のNSAIDと同程度である、かつ、長期投与では重大な心 血管系のリスクがあるとなると、この薬剤を承認する必要性、医療現場における必要性 は本当にありますか。 ○機構 御指摘のように、本剤の胃腸障害に関して他のNSAIDに対して優越性は臨床試 験の中では認められておりませんが、有効性に関しては国内の第III相試験において認め られています。その他の有害事象に対する安全性に関しても、国内の臨床試験の中で既 存のNSAIDであるロキソプロフェンと比較して大きな差がないという結果が得られてお りますので、リスク・アンド・ベネフィットのバランスから考えますと、既存のNSAID と変わることはないのではないかと判断しております。 ○谷川原委員 ただ、長期投与において、心筋梗塞等の心血管系のリスクはあるわけで すよね。 ○機構 類薬のロフェコキシブで心血管系有害事象の発現リスク上昇の可能性があると いうことから海外では販売が中止されておりますが、本剤に関しては海外においても販 売中止ということはありません。FDA等では、COX-2選択薬だけではなく、NSAID 全体において心血管系イベントのリスクがあると報告されていることから、本剤が長期 間使われることによる心血管系障害のリスクに関しては十分な注意喚起が必要と考えて おりますが、既存のNSAIDと大きく変わるものではないと判断しております。 ○谷川原委員 私が議論したいのはNSAID全般のことではなく、本薬に関してですが、 調査報告書を見ると、心血管系の相対リスクが投与期間依存的に、かつ用量依存的に2.3 倍や3.4倍上がるという記載があります。ですから、リスクがないということではない と思います。  もう一つは、海外の場合は消化器障害が既存のNSAIDに比べて少ないというメリット が出ています。ですから、メリットとデメリットの両方のバランスをして存在意義があ るという判断だと私は理解しています。ところが、日本の場合は消化器障害に対する安 全性のメリットが出なかったわけですから、そこをどう考えたらいいのかということで す。 ○機構 長期使用に関しては、本剤の使用において心血管系イベントの可能性があると 示唆されていることから、本剤に関しては「可能な限り短期間の投与にとどめること」 という文言が添付文書の中に入っており、「漫然と使用しないこと」という注意喚起も 十分行っているものと考えております。  もう一点の消化器障害に関しては、御指摘のように、今回の国内臨床試験においては ロキソプロフェンと比較して消化器障害が軽減するというデータは得られておりません が、申請者側が市販後の臨床試験を行うことによって、本剤が他のNSAIDと比較して胃 腸障害が少ないのではないかということを確認する予定にしております。 ○永井部会長 今、話題の薬ですが、いかがでしょうか。 ○岩崎委員 言いたいことが三つあります。一つは、今、谷川原委員が言われたことで、 まだお答えが判然としません。  あと二つあって、一つは用量の件です。200mgと100mgになっていますが、用量設定 の第II相でプラセボ、低、中、高と振っておいて、いずれも高用量です。ですから、設 定の仕方がよく分からないというのが一点です。  もう一つは、安全性しか評価していない試験が幾つかあります。それに関しては、用 量の設定がはっきりしなかったので有効性は見ていないと私は思ったのですが、安全性 だけは見ている。用量の設定が判然としない試験をやること自体が良くないのではない かと思うのですが、機構ではどのようにお考えになったのでしょうか。 ○機構 まず、有効性が示されていない試験に関しては、先生は腰痛等の試験を指され ているのだと思いますが、この試験に関しては有効性の評価がはっきりしなかったとい うことで、今、臨床試験を継続中です。  設定に関しては、第II相試験では、機構としてはプラセボに対する100mgにも有効性 があるのではないかと考えましたが、申請者としては200mg1日2回投与によってプラ セボと明らかな有効性があったことから、第III相試験では200mg1日2回が関節リウマ チで選択されています。 ○岩崎委員 有効性と安全性のバランスだと思いますが、そこは機構で十分討議されて、 日本人に対して200mgでオーケーであるということですね。 ○機構 御指摘のように、国内臨床試験の結果からは、有効性及び安全性に関して、既 存のNSAIDと変わることはなく、かつ、プラセボに対して優越性が示されていることか ら、ベネフィットの方がリスクを上回ると判断しました。 ○永井部会長 ほかにいかがですか。 ○堺委員 谷川原委員の御指摘に関連しますが、既存のNSAIDと比べて薬効あるいは副 作用の点で特に差異が認められない、ただ、今後の市販後の試験において消化性潰瘍、 その他についての有意性を確認するという御発言であったと理解しました。  実際に臨床でこういう薬を使っていく立場から申しますと、発売の時点でこの薬には こういう利点があるということが分かったところで、既存のNSAIDとどう使い分けるか ということにもなろうかと思います。決してこの薬に何か欠点があるから承認をどうの こうのと申しているわけではありませんが、新しい薬の承認に当たっては、できれば既 存の薬との差別化を明確にして出していただきたいと思います。これは要望です。 ○審議役 少し補足的な説明をしたいと思います。COX-2選択的阻害薬の問題は、 2000年ごろの初期のバイオックスの臨床試験で、ナプロキセンと比べると循環器系のリ スクが高いという結果が出ていて、何のためにそうなっているのかがよく分からないと いう話をしていました。時間が経過していく中で、大腸がん、大腸ポリープの予防試験 という、非常に長期で、しかも通常の適用対象とは随分趣の異なる対象集団の試験をや っていく中で問題が顕在化したという経緯があります。  一般的なNSAIDと明らかに違う使い方をしていく中で循環器系のリスクの問題がはっ きり分かり、NSAID本来の使い方の中で、長期慢性の疼痛に対する使い方に関しては同 様の問題が懸念される点はありますが、短期間の痛みに対する使い方に関しては消化器 障害等のリスクの問題だけが相対的に大きいという、全体的な重み付けの感覚になって いると思います。  当初、この手の薬剤は欧米で非常に誉め称えるような評価をされていました。一方で、 長期にわたる使用における問題がその後明らかになってきて、今の評価になっています。 ただ、最初にそういう評価を受けたのは、欧米におけるNSAIDの標準の用法・用量が日 本に比べると倍近くになっているものが圧倒的に多い。それで消化器障害もかなりきつ く出ているという様子もあり、これらCOX-2選択的阻害薬の開発に当たっての初期の 治験相談における議論はこうした事情背景を踏まえて旧医薬品機構でやっていました。  その中でも、欧米で得られている消化器系の副作用が少ないというメリットは、欧米 の医療環境の中だから出ている面があるのではないかということを議論しており、我が 国においてはどうであろうかということについてはなかなか難しい評価である。特に日 本では、ロキソニンはプロドラッグで、消化器系の副作用が非常に少ない。その点に関 して言うと、ある意味では非常に優れた薬ですが、海外ではほとんどの国で販売されて いない。ロキソニンとの比較がどこでも取れず、日本でやるしかないということもあっ て、この部分は相当議論を尽くした上で、結局はロキソニンとの比較試験をやることに なったわけです。  この試験の結果では、短期間の評価では有効性、安全性とも違いがほとんど出ており ません。そういう意味では、普通の使い方をする限りは我が国で最も売れているNSAID のロキソニンと遜色のない結果になっています。その点からすると、通常のNSAIDとし ての使用においてさほど問題のある薬ではないということが出ております。  ただし、バイオックスのケースを見ても分かるように、安全性が比較的高いことを見 込んで漫然と長期間使っていく中で循環器系のリスクの問題が発生していくという、こ れまで日常の診療の中では余り気にしなかった問題が最近クローズアップされていま す。その点については十分注意を払うということで、一般的な使用については余り問題 がないのではないかという議論にまとまってきていると思います。  NSAIDは我が国においても多数存在しますので、それらの中で、この薬にどのような 特徴を期待して使うのかに関しては判然としないところもあるという御指摘はそのとお りです。ただ、海外でこの薬が承認されて広く使われ、なおかつ、様々な新しい用途の 研究も進んでいる状況ですので、未承認の状態で推移していたとしても様々な使い方を 臨床現場でやってみたいという話はあると思います。現に、がんの領域でもCOX-2選 択的阻害薬の、セレコキシブを併用薬として使いたいという話も多々あります。こうし た状況を考えますと、我が国においてこの薬をずっと未承認の状態で推移することが本 当に得策なのかについては、かなり判断が難しいところはあるかと思います。  現時点で、総合機構の審査チームとしては、この薬については、日本で一番売れてい るNSAIDとさほど変わらないという基本的な性能は確認されているので、一定の制限の 下で現場に出してもよろしいだろうと考えた次第です。 ○永井部会長 いかがでしょうか。 ○谷川原委員 通常の使用とおっしゃいますが、NSAIDで一番問題になるのは長期の投 与です。そこがまだ安全性面で市販後やらなければいけない状態であるならば、難しい と思います。市販後の安全性の成績が出るまで承認を待てないのであるならば、せめて それまで投与期間に関する縛りをもう少し明確にする。具体的には何の縛りも付いてい ませんから、その辺りがまだ納得できないのです。 ○審議役 もう一つ補足しますと、FDAもこの品目の循環器系のリスクについて非常 に広範な議論をやっておりまして、アドバイザリーコミッティ等での議論も世間に公開 されております。その中での評価は、COX-2選択的阻害薬でバイオックスのようなも のは非常に危険であることは明らかになったが、同じクラスのセレコキシブについて、 相当なデータを取って議論した中では、一定のリスクはあるだろうが、既存のNSAIDに もリスクはある。既存のNSAIDのリスクについての評価は、ある意味ではこのものに比 べてもよく管理された大規模な比較臨床試験という格好でやられたものはむしろ少なく て、例えばナプロキセン等についても循環器系のリスクの上昇は見られるという結果が 幾つかありますが、それがセレコキシブに比べてどの程度低いのか高いのかについては 判断できないという結論になっています。  つまり、セレコキシブにもリスクはあるが、既存のNSAIDの方がより安全で大丈夫だ とも言えないという評価をしている状況です。これはこれとしてきちんとした注意を必 要とするということですが、だからと言って、既存のものの方がより安全で、そちらを 使う方が安心だという評価にならなかったというのが、FDAでのアドバイザリーコミ ッティの議論の結論にはあります。  そういうことを十分考慮して、先生から御指摘のあった使用期間については、我が国 におけるデータがもっと充実するまでの間、一定の制限を設けることについて更に具体 的に踏み込んだ手当をすることは、機構でもよく検討させていただきたいと思います。 繰り返しますが、既存のNSAIDに比べてこれがより危険であるという評価ではありませ ん。逆に、これに比べて既存のNSAIDも安全だというわけではないというのが、世界的 な評価です。 ○谷川原委員 確かに、開発された時期が違うと、コントロールされた試験がされてい る、されていないということがありますが、はっきりしていることは、実際に医療現場 で10年、20年使われてきて、その中で大きな問題があれば、自発的な安全性報告制度 で上がってきているはずです。そういう制度があるのに、きちんとした比較試験がない から分からないというのは少し言いすぎではないかと思います。20年医療現場で使われ てきたというのは、それなりの実績だと思います。 ○審査管理課長 谷川原委員、堺委員、岩崎委員から繰り返し指摘されていることは、 ある面で申し上げますと、薬事法における承認とは何ぞやという、根本問題にかかわる ような事項だと思います。当然のことながら、既に承認され、マーケティングされてい るものについては承認時のチェックがありますし、市販後のチェックもあるわけです。 一方、新しいものについては、極めて限定されたものを対象に、極めて限定された期間 の臨床試験成績しかアベーラブルではない。その段階において一定の判断が求められる ことが、先生方にお願いしている承認審査の一番の難しさであろうと思います。  また、最初に谷川原委員、あるいは堺委員が言われた、既存のものに比べてメリット があるという事態においては、先生方の御判断も非常にやさしいのであろうと思います。 メリットが明示的に示されていない段階でどのような判断を下していくのかが、最終的 な法律と承認審査に求められている課題であろうと思います。  本年9月にアメリカのアカデミー・オブ・サイエンスがFDAの行政を評価するため に出したレポート、確か「Future of Drug Safety」という名前であったと思いますが、 その中にも、承認審査段階において臨床上の位置付け、メリット、あるいはコストベネ フィットを求めることはできないし、端的に言うと、現在のFDAはプラセボと有意で あれば承認する、また、それが法律の解釈であるような記述があるわけです。  その辺りは、特に承認申請時に与えられた限られた資料の中でも、どのようなメリッ トがあるのか、どのような臨床的な位置付けがあるのかはデータに基づいて模索してい かなければならないと思いますが、先ほど堺委員が最後に言われた、今後そのような位 置付けが明確にされることを期待するという形が、現在の規制当局の対応ということで 集約されているのではないかと考えている次第です。 ○永井部会長 使い方、あるいは今後の調査に任せたいということでしょうか。その場 合に一番問題になっている心血管イベントが、「禁忌」のところでは「冠動脈バイパス 再建術の周術期患者」というようにかなり限定されています。日本の場合はバイパスよ りもPCIが非常に行われていますし、冠動脈造影などで高度病変を持っている方を相 当把握されていると思いますが、そういう方の方がリスクが高いのではないかという気 がします。  そうすると、「禁忌」と言わないまでも「慎重投与」にそういう指摘をしてもいいの かと思います。「心血管系疾患又はその既応歴のある患者」と書いてありますが、特に 問題になるのは冠動脈狭窄症です。この辺の記載がどうかという気がするのですが、い かがでしょうか。 ○機構 先生が御指摘の冠動脈の狭窄に関しては、今後、申請者ともう一度対応したい と考えております。 ○土屋委員 基本的な話です。添付文書の「慎重投与」や「重要な基本的注意」の中の 小括弧の順番について、これは類薬と同じような順番で漫然と並べられている気がする のですが、ゼネラルルールのようなものがあるのでしょうか。  常に新薬にはメリットがあるような感じで現実としては受け止められるときに、投与 の期限などが、「用法・用量に関連する使用上の注意」に書いてあるということかもし れませんが、「重要な基本的注意」で三番目や四番目に長期にわたってやるべきではな いというのが並んでくると、全然注意しない気分になってしまう可能性があります。そ ういうことを注意喚起して、これから安全性を市販後調査で確認していこうというとき に、その順番を変えることはできないのかどうなのかが知りたいのです。 ○審議役 基本的に添付文書の記載に関して、特に類薬が多い製品の場合、現場に出た ときに比較をしたい。ですから、記述内容は並びが違っているだけでも見にくくて困る という話はあります。そういう意味では、類薬とただ合わせるわけではなく、なるべく 体裁、項目、内容を対比しやすいように、現場における利便性を考えた配列にしている ということはあります。  ただし、薬剤によって個々に注意すべき問題点が明らかに存在する場合、既存の並び に捕らわれずに、特に問題となる部分の順位を上げることは再三やっています。そうい う意味で、今回の品目についても、海外の添付文書も参考にすると、心血管系リスクに ついての警告や消化器系のリスクがものすごく低いわけではないことがはっきりとトッ プに書かれています。そうしためりはりのある添付文書の記載内容、配列を工夫するこ とは御指摘のとおりですので、総合機構の方でも申請者とよく相談をして対応したいと 考えます。  加えて、谷川原委員御指摘の、使用期間について余り書いていないというお話でござ いますが、添付文書(案)の8ページの「用法・用量に関連する使用上の注意」の中には 「1年を超える臨床経験がない」という、少し消極的な書き方ですが、期間に対する一 定の目安を書いております。この部分が逆に分かりにくいという御指摘だと思います。  海外で、18か月を超えるところでバイオックスのリスクが急激に拡大している結果に なっていることなどを勘案しますと、安全を見越して1年という期間が一つの目安とし て考えられるということが背景にあります。この辺りを現場にもっときちんと伝わるよ うに記載せよという考え方でいかがでしょうか。 ○谷川原委員 もう少し具体的に指摘させていただこうと思っていたのが「用法・用量 に関連する使用上の注意」で、1年を超える長期投与者の安全性が確立していない場合 は、ポジティブなデータがない場合と、実際に1年を超えるとリスクが高まる場合とで 同じ表現を使うのです。ところが、今回の場合は明らかに1年を超えると期間依存的に、 かつ用量依存的にリスクが高まるというデータがあるわけですから、そのポジティブな データをきちんと書いてもらわないと、この情報提供は不十分だと思います。 ○審議役 御指摘の点はそのとおりですので、具体的な根拠の試験成績を添えて、その 上で、使用期間の目安を現場でもきちんと判断できるように提供することが肝要かと考 えます。  ただし、現状でより長期使用のリスクの問題に関して、一つの試験では明らかに期間 依存的、用量依存的な結果が出ていますが、別の試験では全然リスクが上がっていない という結果が出ています。この点は審査報告書にも書いてありますが、試験によって結 果が必ずしも一致していないという状況があります。  どういう患者に使っても同じようなリスクが出てきてしまうものなのかどうかは、ま だ謎の面が多いと思いますので、科学的な追究をよく管理された試験環境で行うことは、 課題としてまだ残っていると思います。この点については、世界的にも検討が続くと思 います。そうした中で、我が国における検討も遅れずに進めることは必要ではないかと 考えます。 ○谷川原委員 そういうコントラバーシャルな部分もあることは理解していますが、一 番恐れるのは、過大な期待が過大な広告になって、この部会でこれだけ審議をして注意 喚起などと言っても、現場に出てくるパンフレットやMRの言うことは違うのです。そ ういうところをあいまいな表現にされると、せっかくここで審議したことが余りいかさ れないので、ある程度明確に示していただかないと実効性が担保できないということで す。 ○審査管理課長 資料の添付文書(案)の32ページに、(2)長期予防投与試験として、プ ラセボに対して相対的リスクが上がる、次の試験でアルツハイマーで差は認められてい ない、などという形で載っています。この要約なりを、先ほど御指摘のあった「用法・ 用量に関連する使用上の注意」の(2)に反映するという形で対応する、また、現在の表 現は、ある面で言うと、欧米に比べて一番厳しい形になっていますから、それをより明 確化する方向で検討したいと思っています。 ○永井部会長 よろしいでしょうか。その辺をもう少し御検討いただいて、表現等に気 を付け、明確化するということにしたいと思います。 ○谷川原委員 市販後の問題で、先ほど中垣課長から、今後のデータに期待してという ことがありました。市販後の3,000例の使用成績調査や5,000例の特定使用成績調査と いうことが一文書いてありますが、具体的にいつから開始して、いつごろ完成して、ど ういう形で中間的な報告がされてということも、もう少し明確にしていただきたいと思 います。  それから、総合機構の方で一定期間は循環器内科と連携ある医療機関に限定という説 明がありましたが、一定期間というのは具体的にどのぐらいか。例えば、安全性のデー タが集まるまでとするのか、1年、2年とするのか。そして、連携ある医療機関に限定 というのはどうやって具体的に実効性を担保するのかが分からないので、そこをもう少 し明確にしていただきたいと思います。 ○機構 まず、市販後の一定期間の施設限定の件に関してですが、市販後の特定使用成 績調査を実施します。適正使用が確認され、市販後においても臨床試験と同様の心血管 系有害事象の発現が増加しないことが確認されるまでの期間と考えておりますので、期 間としては、今、具体的な年数はお答えできないと思います。  循環器内科の施設の連携に関してですが、MR等の情報がきちんと伝わることが一つ の目安となっており、MRがその施設において循環器内科と契約等の連携があることを 確認することがまず第一にあると考えております。あとは、施設の中に循環器内科等が 当然存在するような地域中核病院や大学病院が中心になるものと考えております。 ○谷川原委員 最初は医療機関との契約に基づいて、その医療機関で使用をしていただ くということですね。  ○機構 申請者からは、契約等の連携があることをMR等が確認することが前提になっ ていると説明を受けています。 ○土屋委員 今のような契約などの話になったときに、総合病院の場合はいいですが、 整形外科単独でやっている所も使うことはあって、薬価基準が通ってしまったら契約な どの話は余りないと思うのです。そのようなことを現実にやれるのですか。 ○機構 連携内容について確認を取って、医薬品総合機構で適正使用の実態に関するレ ポートの中で確認を行いたいと考えています。 ○土屋委員 今、世の中は50%以上が院外処方になっています。保険薬局で受けたとき に、契約があるなどとどこにも書かれていなかったら何も分からないわけで、薬局では 1年を超えないようにしようなど、期間のチェックしかできません。そもそもの縛りが あるとするならば、それはどうやって知らされるのですか。現実にはMRは保険薬局に 来ませんし、そういう情報は出ないのです。 ○機構 連携が取れている施設を確認して、そこでの処方しか認めないことになってお りますので、院外処方されたとしても、現在申請者が考えているような施設での処方に より管理されることになるのではないかと考えています。 ○土屋委員 しかし、薬価基準に載せるということは、基本的に誰でも使っていい。も しそうであるならば、特定療養費払いなどで、治験の延長のような格好で特別な制度に しておかないと、そういうことは現実にはできないわけです。誰でも使えることが前提 というのが薬価基準に載せるということで、これはむしろ、承認はするが、薬価基準に は載せないなどという話にもなりかねないのです。私は日薬の立場で出ていますので、 そういうことから言えば、縛りというのは非常に困ったことなのです。 ○安全管理監 前の仕事の関係もありますので申し上げますと、そこは非常に難しいと ころです。ここでこういう議論をしていただきますが、日本でもきちんとしたフォロー が必要だということになると、初期の段階で限定して使用していただくことになります。  細かい部分については、医療機関への情報提供の活動などを限定してやることになり ます。これまでも幾つか、この部会での議論を踏まえて、企業側が限定して医療機関に 情報を提供していますが、末端では、なぜ自分たちの医療機関には使わせないのかとい うトラブルが起こりましたので、一定の部分が明確になるまではデータをこういう形で 集積していきますのでということで、企業側としても理解を得ながらやってきたという のが前例としてはあると思います。  先ほど土屋委員が言われたように、薬価に載るということの建前の部分がありますが、 移行期間のところでは、問題が指摘されたものについてはどうしてもそういう経過を取 らざる得ない部分はこれまでもあったかと思います。 ○谷川原委員 土屋委員が指摘された問題は、ここでの取決めが実際に明示されていな いから現場の医療機関、医師、薬局では分からなくて、そこに混乱が起こるということ です。私の提案ですが、一定期間は循環器内科との連携の医療機関に限定という審査報 告書のコンクルージョンを、承認条件として添付文書の中に書いておいてくれたら混乱 は起こらないと思います。そういうものがないまま、そういうことだと言われても難し いと思います。 ○審査管理課長 土屋委員、谷川原委員は、循環器内科との連携をどの程度の強さで、 また、市販後、それをどのような形で担保していくのかという点について御質問された のであろうと考えております。  説明の中で循環器内科との契約という言葉がありましたが、先生方から御指摘されて いるように、このために特別の契約を結ぶというのは、ある面では余り現実的ではない と考えております。そういう意味で申し上げますと、そこの提携をどの程度求めるのか。 例えば、地域の活動でしっかりした中核的な医療機関が指定されていることをもって提 携と考えるのか。そこはもう少し具体的な詰めをしなければいけないと思います。  もう一点の承認条件にするかどうかは、考えなければいけないと思いますが、いずれ にしても、外向けという意味では、パンフレットを市販直後に配る。その中で、審査報 告書に書いてある条件については明記して、その周知を図るという形にしておりますの で、世の中へ向けての情報という意味では周知徹底がされると考えております。 ○土屋委員 くどいようですが、私はこの部会で薬価上の問題があるなど、いろいろな 話をすると、次にまだ薬価検討会があるのだからと言われ、薬価検討会では、承認され たものに何を文句を言うのだ、そもそもそのようなときにはこの部会で言わなければい けないでしょと言われます。この部会で言ったら、ここでは物の話であって、それは関 係ないなどと言われ、その狭間でいつも揺れ動くのです。  我が国において、承認されたものは基本的には薬価基準に載る、薬価基準に載ったら 誰でも使えるという仕組みの中で、この薬に限らないのですが、使用上、非常に注意し なければいけないことが伝わらないのは、薬局にはMRも来ないのが現状だからです。  せっかく薬剤師がいろいろなチェックを掛けようとしても、そういう条件も何も知ら されないでやってしまう、MSが来るのがせいぜいというのが現状です。その辺の情報 提供をどうするのかはきちんとしなければいけないと思いますので、是非よろしくお願 いします。 ○谷川原委員 MRも来ないですし、そういう種々のパンフレットも、病院には非常に 来るが、調剤薬局は入手できないから、彼らの情報源は添付文書しかないわけです。で すから、添付文書に承認条件として盛り込まないと、別紙で作っても、本当にそれが津 々浦々にきちんと届けられるかは非常に疑問だと思います。 ○審査管理課長 承認条件にしろという御意見ですが、これが相当の蓋然性で予想され、 対象を厳格に縛ることがどの程度必要か、まさしくその必要な度合いによると思います。 端的に申し上げますと、近年、効果も強いが、ある程度副作用も強い薬剤が幾つも出て きております。  それらの中には、当該分野の薬物療法に知識と経験を有する者に限って使えというよ うな使用上の注意を書いたり、パンフレットに書かせたり、いろいろな手法で有効性を 確保しながら、副作用の発生をできるだけ避けるという方向性の下、承認審査をしてき たと思いますし、先生方からもそういう御意見を承ってきたと思います。  では、それを法的に担保するところまで一気に上げるかと言われますと、私の感覚的 には、横並びというのは、当然、法の施行の中で考えざるを得ません。そういう意味で 申しますと、少し出すぎかと考えており、行政指導ベースで相手もやると言っているわ けですから、きちんと情報が伝わる工夫はしなければならない。  パンフレットではまずいということであればもう少し考えなければならないと思いま すが、法を施行する立場から申し上げますと、今言ったような感覚を持っているわけで す。今までいろいろやってきた中でもこれが一番危ないということであれば、当然のこ とながら科学的な判断に基づいて行政はあるべきだと考えておりますから、御意見を賜 れれば幸いだと思っています。 ○谷川原委員 行政的な重い、軽いというのは私は分からないのですが、現場の立場と して、最も確実に情報を伝達する媒体は添付文書しかありません。ですから、そのよう に申し上げているわけです。それが、行政的に非常に軽いものをそのような重い扱いに してはそぐわないというのであれば、添付文書並みに徹底できるような何らかの方策を お考えいただきたいと思います。  もう一つは、仮にここに書き込んでも未来永劫残るわけではなくて、市販後すぐに始 まるであろうファーマコビジランスによる安全性のデータが出てくれば削除すればよろ しいわけですので、その間、いかにして情報伝達の実効性を上げるかだけが私の意見で す。 ○審議役 重い、軽いの話がなかなか分かりにくいということもありますが、院外処方 される内服経口剤で、安全性上の対策をいろいろ取らなければいけなかったものは、こ の部会に掛かったものでも幾つもあります。  先生方は御記憶があるかもしれませんが、リウマチのレフルノミド(アラバ)という薬 は、肝障害あるいは骨髄障害等の強い副作用がある一方で、リウマチに対して非常に優 れた効果があるということで、部会で御審議を頂いたものです。とても副作用が多いも のですから、全例登録調査を掛けました。それに伴って、院外処方で出てくる部分につ いてどのようにアプローチするかは、アラバのケースにおいては薬剤師会から調剤薬局 全般に注意喚起の呼び掛けがなされたという事例はあります。  院外処方で出てくる分に対してもアプローチした例はありますので、そのような方法 がこのものについて取り得るかどうかということは、具体的な検討の課題としてはあり 得るかと思います。ただし、品物の重要性、副作用の深刻さ、あるいはその頻度に鑑み て、具体的な策としての取捨選択をなされることはあると思います。  ただ、関係する医療職能団体あるいは学会などに幅広く情報を提供して注意喚起を呼 び掛けるアプローチはこれまでも幾多の品目で行っていることですので、そちらからの アプローチも重要ではないか。そのときに、中身に何が書いてある、添付文書にどう書 いてあるかが、本日の御議論で内容がもっとコンパクトに、ストレートに伝わる、具体 的なバックグラウンドも含めて、きちんと連携して分かるようにする、そういう工夫を したものをそれぞれの関係する要所要所に配ることが肝要であるという御指摘だと思い ます。  これらについては企業とのやり取りの中でも議論されておりますので、それを更にリ ファインして、具体的な対応として煮詰めることで対応できるかと思います。  期間に関してのお話は、ラフではありますが、資料の「1.11 製造販売後調査計画書 (案)」に全体のフレームワークが書いてあります。5ページに「調査実施のタイムスケ ジュール」があり、承認の時点からそれぞれの調査がどのように行われるかの期限を示 しています。  表を見ますと、6年目まで循環器系のリスクについてのインテンショナルな調査を行 うことになっております。この調査の過程の早い段階でリスクが顕在化すれば、すぐに 対応する。顕在化しないで、データが集まってきて、6年目にたまったデータで一定の 評価ができて、安全性が確認できれば、その段階で今の警戒体制のレベルを更に下げる こともあり得るという流れになるかと思います。  それまでの時限的な対応として、現場に対して繰り返し注意喚起を行うことが一番肝 要であるかと思いますので、具体的に詰めた内容をまた検討させていただきたいと思い ます。 ○土屋委員 機構が懸念を表明して、それに対して答えが出た。しかし、それがMRと いう形でしかないなど、使われるところに情報が届かないことがあるわけですから、そ このところを十分注意していただきたい。これに限りませんが、この場合は余りに夢の ような話が一度広がったということもあるので、余計にそのようなものではないという ことが伝わる工夫をしなくてはいけない気がします。是非よろしくお願いします。 ○安全対策課長 調剤薬局に情報が行かないという御指摘があるわけですが、市販後の 安全対策の一般論としまして、本当にそのようなところに情報提供しないといけないも のであれば、企業に対して情報提供するようにという形での指導は可能かと思います。 ○永井部会長 実態が伴えばいいと思うのですが、この薬は世界的に注目された薬です し、ある程度日本のスタンスが問われるところがあろうかと思うのです。ですから、先 ほどお話になられたような、これからの対応をしっかりモニターする。添付文書に全部 書き込むわけにはいかないかもしれませんが、相当慎重に対応しますということで企業 ともよく話し合われて、実際にそういうモニターをしていただくということでいかがで しょうか。 ○川西委員 今の重い議論からすると、小さなコメントで申し訳ありません。製法に関 して、承認書との関係について申し上げます。錠剤のところで、機構と申請者との間で 話し合った結果、錠剤の中で□□工程が重要工程であり、重要中間体があると記録がな っていますが、それが申請書に全く反映されていないようです。これは昔のことですし、 申請時期の関係でどこまでうるさく言うかは少し問題ですが、ある意味、今の添付書類 の話とよく似た部分が製造現場ではありますので、そこは工夫が必要なのではないかと 思いました。 ○審議役 ありがとうございます。旧制度下での申請で、今は申請時点の制度に基づい て製造方法を書いているものですから、重要工程を詳しく書いていないというのは、そ のとおりです。制度がその後に変わっていて、その後の申請のものについては、今、整 備をしているということです。ただ、前のものについても順次整備をしていくというこ とや、現時点で、物を造っているところで重要工程が分かっているものは、当然のごと くGMP上の適正な管理を行うということですので、現場における問題はないというこ とです。 ○澤田委員 この薬の添付文書にCYP2C9のジェノタイプの情報が載っていますが、これ は初めての例なのでしょうか。私の知る限りでは最初かと思います。ファーマコジェノ ミクス的な情報を載せる例としまして、前例はあるのですか。前回、タケプロンか何か でデータが出てきましたが、添付文書には反映していなかったような記憶があるのです が。 ○審議役 できるものに関しては、今、順次入れさせているところです。 ○澤田委員 これからこういう情報は入れるという方針でよろしいですか。 ○審議役 はい。この部会ではないですが、抗がん剤の方で、イリノテカンという薬の 代謝酵素の情報など、最近のそういう情報を既に入れているものもあります。それに対 応した検査キットもこれからという話があります。いずれにしても、遺伝的な背景の表 現系としてのPM(プアメタボライザー)とEM(エクステンシブメタボライザー)の話か ら始まって、さらに、それに対応する遺伝子変異の部分について詳しい情報を入れるよ うな動きがあります。世界的にもそうなっていますので、今は臨床的に役に立つファー マコジェノミクスの研究結果は必ず情報として入れるという動きです。 ○永井部会長 よろしければ、今の議論もよく踏まえて十分対応していただくというこ とで、承認「可」で、分科会報告とさせていただきます。ありがとうございました。  それでは、議題2にまいります。機構から概要の御説明をお願いします。 ○機構 議題2、資料2、医薬品ギャバロン髄注用0.005%他の製造承認の可否等につ いて、医薬品医療機器総合機構より御説明申し上げます。  本剤は、バクロフェンを有効成分とする製剤で、本邦では、既に成人の難治性重度痙 性麻痺に対して承認されている薬剤です。今回の申請は、小児での用法・用量を追加す るというものです。  本申請の専門委員としては、資料7に記載されている5名の委員を指名しました。  臨床成績について簡単に御説明させていただきます。  国内第III相試験では、脳由来の重度痙性麻痺小児患者に対して本剤が投与され、成人 の場合と同様に、平均Ashworth評点は、投与前3.73から、投与4時間後に2.43と有意 に低下しており、本剤の有効性が確認されています。また、ポンプシステム植込み後に 本剤を継続的に投与する長期試験も実施されていまして、最長30か月までの期間で、改 善の維持が確認されています。なお、海外臨床試験においても同様に本剤の有効性が確 認されています。  安全性については、主な有害事象は嘔吐等ですが、小児に特有な事象は認められてお らず、成人の場合と大きな差異はないものと考えています。また、成人の場合と同様に、 本剤投与時に離脱症状の発現に注意が必要ですが、これまでの成人の市販後の状況を見 て、今のところ特に大きな問題はなく、救急時の体制等、成人の場合と同様に構築する よう指示しています。なお、製造販売後には、全例調査を実施する予定です。  以上の審査を踏まえまして、成人での適応に対して付与されている承認条件と同一の 条件下で、本剤の小児用量の追加を承認して差し支えないとの結論に達し、本第一部会 で御審議いただくことが適当と判断しました。  本剤の再審査期間は、希少疾病用医薬品としての成人での用法・用量を承認した際の 期間の残余期間、具体的には平成27年4月10日までとし、製剤は劇薬に該当し、生物 由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しています。薬事分科会 には報告を予定しています。よろしく御審議の程お願いいたします。 ○永井部会長 ありがとうございます。それでは、御討論をお願いします。いかがでし ょうか。第III相試験で5例しか投与されていないのですが、これは非常に希少な疾患で あるということでしょうか。 ○機構 プロトコール上ではもちろん多くの症例を集めることになっていて、脳由来、 脊髄由来ともに収集することになっていましたが、結果として5例の脳由来の小児しか 入らなかったということです。希少疾病の実態を反映すると致し方がないかと判断して います。それを補足するエビデンスとして、海外の臨床試験成績なども含めて審査させ ていただいたということです。 ○永井部会長 それから、用量設定の問題がありますが、スクリーニング期間があって、 用量を調整しながら最終的に決めて、ポンプを植え込むということで、成人の半分ぐら いから始めて大丈夫であろうという理解でよろしいでしょうか。 ○機構 国内での臨床試験では海外での用量を使っていますが、部会長がおっしゃいま したように、まずはスクリーニングで25μgか50μgという用量を使って、その患者さ んの痙縮の反応度合いを見極める。その後、初期投与量を決め、実際にポンプを植込ん で用量調節をするというものです。患者さんの痙縮の度合い、それから痙性麻痺の難治 性の程度によって徐々に調整されるものですので、初期の用量で大きな問題がなければ、 患者さんの病状に応じて適切に調整されれば特に大きな問題にはならないと考えていま す。 ○土屋委員 ポンプシステムの危険性も含めて文書同意を必要とすることになっていま すが、小児の場合は本人にとって分かりにくい。そういうことも同意書にはきちんと書 かれるのでしょうか。あるいは、ほかの文書を渡されるような形なのでしょうか。 ○機構 もちろん、今、成人の方で作っている文書をもう少し分かりやすくしたものは 御用意させていただく予定ですが、小児の脳性麻痺の患者さんですので、基本的には代 替者、親の同意になると思います。 ○土屋委員 「ポンプシステムに由来する危険性があることを十分に説明し」と書いて あるので、成人に比べたら、小児でやるときは、そこの症状なども親やほかの人たちに 分かりやすく、きちんと説明されることも必要かと思うのです。 ○機構 その内容も含める予定です。 ○永井部会長 ほかによろしいでしょうか。よろしければ、承認「可」ということで、 分科会に報告させていただきます。ありがとうございました。  それでは、議題3、アンカロン注について、概要の御説明をお願いします。 ○機構 議題3、資料3、アンカロン注150について御説明させていただきます。  アンカロン注の有効成分塩酸アミオダロンはVaughan Williams分類のIII群に属する抗 不整脈薬です。本薬の主な作用機序は心筋のカリウムチャネル抑制作用ですが、ナトリ ウム及びカルシウムチャネル抑制作用並びにβ受容体遮断作用も併せ持ちます。既に本 薬の錠剤が、平成4年に、生命に危険のある再発性不整脈で他の抗不整脈薬が無効か、 又は使用できない場合の心室細動、心室性頻拍、肥大型心筋症に伴う心房細動という効 能・効果で承認を得ています。しかしながら、十分な効果発現に数日〜数週間を要する ことから、現在のサノフィ・アベンティス株式会社より、臨床試験成績に基づき、緊急 治療を要する心室細動や血行動態不安定な再発性心室頻拍に使用する静注用製剤として 製造販売承認申請がなされたものです。なお、本剤は、「下記の再発性致死性不整脈」 「心室細動、血行動態不安定な心室頻拍」を予定効能・効果として、希少疾病用医薬品 に指定されています。また、日本心電学会より「致死性不整脈に対するアミオダロン注 射剤の必要性について」との要望書が厚生労働大臣宛に提出されています。  本品目の審査に関しまして、専門委員として、資料7に記載している委員が指名され ています。  本品目の審査の概要について説明させていただきます。再発性で、塩酸リドカインあ るいは塩酸プロカインアミド注射剤が無効あるいは忍容性がないこと又は使用できない ことが確認されている心室細動及び血行動態不安定な心室頻拍患者を対象とし、海外の 5/6の用量で実施された国内第II相非盲検非対照試験では、当初目標症例数は100例と されていましたが、症例登録が進まず、治験薬投与症例が47例で終了した等の問題はあ りましたが、主要評価項目とした心室細動及び血行動態不安定な心室頻拍の発作非発現 率について、本剤の10分間の初期急速投与とそれに続く6時間の負荷投与及び42時間 の維持投与による有効性は確認されています。  安全性に関しては、国内外の臨床試験において、低血圧、徐脈、催不整脈等の本剤の 薬理作用に関連する副作用や重篤な肝障害等が観察されています。このため、本剤は緊 急の事態に対応できるICU、CCU及びそれに準じた施設において、心電図及び血圧 の連続監視下で使用する旨、また、時に致死的となる重篤な肝障害等の副作用の発現に 注意して必要なモニタリングを実施する旨が警告欄に記載される等の注意喚起もなされ ています。したがいまして、適正に使用されれば、一定の安全性は確保されると判断し ています。また、本剤は、難治性でかつ緊急治療を要する患者に使用される静注用製剤 であり、他剤の効果等を確認することなく本剤の投与が必要となる場合もあると判断し ました。  以上のような審査を経まして、効能・効果は、「生命に危険のある下記の不整脈で難 治性かつ緊急を要する場合 心室細動、血行動態不安定な心室頻拍」とすることが妥当と 判断しています。また、国内臨床試験での症例数は極めて少ないことから、一定数の症 例に係るデータが収集されるまでは、いわゆる全例調査により、本剤の有効性及び安全 性等に関する情報を早期に収集し、本剤の適正使用に必要な措置を講じることを承認条 件とした上で、本剤を承認して差し支えないものと判断しました。  本剤は、希少疾病用医薬品に指定されており、再審査期間は10年とすることが適当で あると判断しています。また、製剤は毒薬に該当し、生物由来及び特定生物由来医薬品 には該当しないものと判断しています。薬事分科会では報告を予定しています。御審議 の程よろしくお願いいたします。 ○永井部会長 ありがとうございました。それでは、御質問、御討論をお願いします。 ○土屋委員 国内臨床試験は海外の投与量の5/6で始めたということですが、製剤その ものは海外と同じ入れ目が入っているわけです。確かに、急速投与は125mgで、1本入 れてはいけない、5/6ということが書いてあります。アメリカなどはもともと150mg を使っているからそれはそれでいいですが、初期投与量が入れ目の5/6というのは現場 にとってみれば難しい。書いてあると言われればそれまでかもしれませんが、150mgで あったらともかく、125mgというのは非常に医療事故を起こしやすい入れ目である。  恐らく、世界がそれでやっているのだからという話なのでしょう。そうであるとした ら、「用法及び用量に関連する使用上の注意」では確かに「1アンプル(3mL)から本剤 2.5mLを注射筒で抜き取り調製すること」と書いてありますが、離れていますとなかな か見えないので、本文に入れ込むなど、そこの注意はきちんとしておかないといけない 気がするのですが。 ○審査第二部長 「用法及び用量に関連する使用上の注意」の5番で、一応、ゴシック 体で分かりやすいように書いています。もう少しこれを目立つようにという御指摘であ れば、記載位置等考えたいと思います。添付文書の今までの書き方からいっても、用法 ・用量の中にアンプルの話は書きにくいと思いますが、再度、分かりやすくということ で検討します。 ○土屋委員 「用法及び用量」の1.投与方法、(1)初期急速投与で、2.5mLはゴシック 体にもなっていないので、せめてそちらにもアスタリスクか何かを付けるなど、特別な 注意喚起をしてほしい。入れ目がそうなっていることを良しとするにしても、海外との 比較をしておいてあげないとという気がするのです。 ○審査第二部長 製剤について日本向けということは、直ちには難しい状況と思われま す。本日の御指摘も踏まえ、会社側にも伝えて、再度、分かりやすいように修正を考え ることにしたいと思います。 ○機構 追加してよろしいでしょうか。本薬は、使われる場所がICU、CCUという ことで、添付文書の記載については土屋委員がおっしゃるとおりですが、実際に使う場 所での注意喚起ということで、具体的にはまだ固まっていませんが、下敷きのようなも のとポケット版の説明書を用意することになっています。現在の案としては、下敷きに は1アンプルから2.5mL取りなさいというような注意を記載し、そのポケット版も用意 することになっています。 ○永井部会長 急性心筋梗塞など、緊急事態で使う場合もあるわけですね。これは今回 の話と少し違うかもしれませんが、慌てて間違うことがあるでしょうから、2.5mLにラ インを引くなど、何か工夫をしてもらうことはできないのでしょうか。 ○機構 実際にアンプルから注射器で引くときに、傾けて取るとか、多めに取って余分 なものを空気を抜く等で捨てることを考えると、アンプルにラインを入れるのは難しい かと思います。可能であればアンプル自体に初期投与量を書くことも考えられますが、 字の大きさ等を考えますと、適切なのはどのようなやり方なのか検討いたします。 ○審査管理課長 土屋委員や部会長から御指摘があった、医療事故をできるだけ防いで いくために何ができるかということはもっと考えなければいけないと思います。正直、 私も今の医薬品機構の説明を聞いて、下敷きに書くことではなかなか徹底できないであ ろうと考えています。今、妙案があるわけではありませんが、例えばアンプルに125mg であるという紙をはり付けて、いつでもそれが目に付くようにするなど、コストも考え ながら、より徹底できる方策を模索していきたいと思います。御指摘ありがとうござい ます。 ○首藤部会長代理 希少疾病用医薬品となっていますが、瞬間的に理解できませんでし た。患者の数など、いろいろな条件があると思うのですが、これがそれに当てはまるの ですか。 ○審議役 一般的な不整脈対策等で使う薬剤はほかにたくさんあります。ただ、本薬は 致死的なシチュエーションのものについてだけ使うという縛り方になっている点がポイ ントになっています。経口剤も、同系のソタロールといった薬剤も、すべてオーファン ドラッグの指定を受けています。  ただの不整脈ではなくて、本当に死ぬような不整脈で、しかも、これは薬としての副 作用がかなり厳しいものですから、そういうリスクも承知の上で使わざるを得ないもの について限定的に使うというところから、オーファンの指定を受けたという経緯があり ます。これは一般的な診療の場で使われるものでは決してなくて、循環器専門医が非常 に高度な専門的知識をもって判断される中でお使いになる薬剤と承知しています。 ○永井部会長 医療が発達して人間が長生きするほど、こういう状況の方は増えている と思うのです。循環器病棟では結構一般的になってきているのではないかと思います。 昔はそこまで救えなかった方、例えば植込み除細動であるとか心臓移植の待機患者、あ るいは心筋梗塞で、低空であるけれども何とか水平飛行しているような方は全部こうい うことを起こしてくるのです。ですから、実態としては対象患者はかなりいるのではな いかと思いますので、この点も、ほかの薬剤との関係もあろうかと思いますので、御検 討いただければと思います。 ○審査管理課長 今度、オーファンドラッグの指定をする際に、今の情報も参考にさせ ていただきたいと思います。ありがとうございました。 ○岩崎委員 私は専門委員であったのですが、当初、他剤無効といった形の縛りがあっ て、それで試験がされて、そういうものに関しては余り患者がいないであろうというこ とでオーファンになったのかもしれません。ところが、審査している中で、やはりそれ では使いづらいということで、もう少し範囲を広げた形の承認になっていると思うので す。その辺の経緯は御説明いただいてもいいと思います。  先ほど審査管理課長がおっしゃったように、我々はエビデンスに基づいて申請された ものを承認するわけですから、試験の段階でそうでなかったものに対して、ある程度現 場の要望にこたえて提供しようとしていますので、市販後にきちんとエビデンスを集め るようにしていただきたいと思います。要望です。 ○審査第二部長 今、御指摘の点については、審査報告書の55ページに書いてあります。 表現が変わり、確かに対象はやや拡大するであろうということはありますが、もともと 緊急時に使用する薬剤であり、難治性の患者という意味での他剤無効ということであっ て、その点に関しては適切に情報提供するように申請者にも話をしていますし、申請者 も本剤の対象患者層については十分注意喚起する旨、回答しています。市販後の対応等 につきましては、十分注意するよう申請者に改めて伝えます。 ○永井部会長 よろしいでしょうか。御異議がなければ、承認「可」ということで、分 科会報告とさせていただきます。どうもありがとうございました。  それでは、議題4の概要の説明をお願いします。 ○機構 議題4、資料4-1、資料4-2、医薬品ペガシスの製造販売承認一部変更承認、コ ペガスの製造販売承認の可否、再審査期間の指定の要否等について、機構より御説明申 し上げます。  本申請は、C型慢性肝炎患者におけるウイルス血症の改善を目的とした新有効成分含 有医薬品及び新効能医薬品の申請です。  リバビリンは、プリンヌクレオシド類似体であり、in vitro及びin vivoにおいてR NA及びDNAウイルスに対して幅広い抗ウイルス活性を示すことが報告されたことか ら、欧米諸国では各種ウイルス感染症の治療薬として開発が進められ、RSウイルス、 インフルエンザウイルス、ラッサ熱ウイルス等による各種感染症を適応症として承認さ れています。本邦においては既にシェリング・プラウ社がリバビリンを有効成分とする レベトールカプセルの承認を取得し販売していますが、今般、申請者は、独自にリバビ リンを主成分とするコペガス錠を開発しました。  ペグインターフェロン アルファ-2a(遺伝子組換え)は、インターフェロン アルファ -2a(遺伝子組換え)に平均分子量約40kDの分岐メトキシポリエチレングリコールを共 有結合して血中からの消失の遅延を図った、持続型インターフェロン製剤の一種です。 なお、2003年10月に単独療法として「C型慢性肝炎におけるウイルス血症の改善」の 効能を取得しています。  C型慢性肝炎はC型肝炎ウイルスの感染により引き起こされる慢性肝疾患で、肝機能 異常を繰り返しながら徐々に肝線維化が進行し、約40%は10〜15年のうちに肝硬変へ と進展し、肝硬変まで進展した場合、年率約7%で肝細胞癌を発症すると言われていま す。C型肝炎ウイルスはその遺伝子型によりGenotype1〜6に分類されており、本邦及 び米国ではGenotype1がおよそ70〜75%を占め、残りの大半を本邦ではGenotype2、 米国ではGenotype2及び3が占めています。  ペグインターフェロン アルファ-2aにリバビリンを併用することにより、ペグイン ターフェロン アルファ-2a単独療法より高いウイルス血症の改善効果が得られること が海外で報告されており、本邦においてもC型慢性肝炎の中で難治とされている Genotype1及びインターフェロン単独治療で無効あるいは再燃した患者を対象とした併 用療法の開発が行われ、今般申請されたものです。なお、ペグインターフェロン アルフ ァ-2aとリバビリンの併用療法は、海外において、C型慢性肝炎及び代償性肝硬変を伴 うC型慢性肝炎を適応として、2002年6月に欧州、2002年12月に米国でそれぞれ承認 されたのを始め、2006年8月現在88か国で承認されています。  本品目の専門協議においては本日の配付資料7の最後のページの専門委員を指定して います。  審査の概要ですが、以下、臨床試験成績について述べさせていただきます。  国内臨床薬理試験及び第III相試験がそれぞれ1試験、合計2試験が評価資料として提 出されています。  まず、有効性に関してですが、インターフェロン未治療でウイルスサブタイプが Genotype1bの日本人C型慢性肝炎患者(目標症例数200例)を対象とした二重盲検並行 群間比較試験(以下、盲検群)とインターフェロン既治療のC型慢性肝炎患者(目標症例数 100例)を対象とした非盲検非対照試験(以下、非盲検群)が、同一プロトコールで並行し て国内43施設で実施され、盲検群における主要評価項目である投与終了後6か月目の HCV-RNA陰性化率は、対照群であるペグインターフェロン アルファ-2a単独群では 25.7%であったのに対し、ペグインターフェロン アルファ-2a及びリバビリン併用群 では60.6%と、両群間での統計学的有意差が認められました。また、インターフェロン 既治療の患者を対象とした非盲検群では、全例にペグインターフェロン アルファ-2a 及びリバビリン併用投与が行われ、投与終了後24週時におけるHCV-RNA陰性化率は54.0 %でした。  安全性に関してですが、第III相試験において、有害事象及び副作用は全例に認められ、 死亡例はペグインターフェロン アルファ-2a単独群で1例認められました。重篤な有 害事象は、盲検群のペグインターフェロン アルファ-2a単独群で11.9%、ペグインタ ーフェロン アルファ-2a及びリバビリン併用群においては、盲検群では11.1%、非盲 検群では9.0%と、リバビリンの併用により発現率が特に高くなることはありませんで した。  なお、リバビリンの併用により、ヘモグロビン減少、ヘマトクリット減少、赤血球数 減少といった臨床検査値異常の発現率がペグインターフェロン アルファ-2a単独群に 比べて若干高くなっていますが、減量・休薬等により治療を継続することが可能であっ たことから、頻回に血液検査を実施して、これらの副作用の発現に注意を払うことで、 リバビリンの併用投与による治療は受忍可能であると考えられました。  効能・効果については、第III相試験で有効性が確認されたGenotype1及びインターフ ェロン単独療法で無効又は再燃した患者から、リバビリンの上乗せ効果が必ずしも明ら かでなかったインターフェロン未治療のGenotype1かつ低ウイルス量の患者を除いて、 セログループ1でHCV-RNA量が高値の患者、インターフェロン単独療法で無効又は再燃 した患者のいずれかのC型慢性肝炎におけるウイルス血症の改善が適当であると判断し ました。  用法・用量については、本併用療法の申請に当たり国内で用量設定試験は実施されて いないものの、第III相試験においてインターフェロン未治療のGenotype1かつ高ウイル ス量の患者を対象に、ペグインターフェロン アルファ-2a単独投与群に比べて、リバ ビリンの一定の上乗せ効果が確認できたことから、好中球数、血小板数、ヘモグロビン 量についての減量・休薬基準に加え、用法・用量に「本剤の投与に際しては、患者の状 態を考慮し、減量、中止等の適切な処置を行うこと」を追記することで承認申請用量は 使用可能だと判断し、体重当たりの用量の増加に伴い有害事象の発現率が高くなること が懸念されるリバビリン量については、製造販売後に体重による用量区分を変更した際 の有効性及び安全性を確認するための市販後臨床試験を実施することを承認条件とする ことが適当であると判断しました。  なお、Genotype1かつ高ウイルス量以外のインターフェロン既治療患者については、 類薬の情報から24週間投与でも48週間投与と同様の効果が得られる可能性が残されて いることから、現時点で48週間投与が否定されるものではないと考えられるものの、今 後海外で実施される多施設非盲検拡大試験の結果を参考にするとともに、国内において も可能な限りの症例数で製造販売後臨床試験を実施して、これらの結果を踏まえて 「Genotype1かつ高ウイルス量以外のインターフェロン既治療患者」への投与期間につ いて、検討することが適当であると考えています。  以上のとおり審査の結果、セログループ1でHCV-RNA量が高値の患者及びインターフ ェロン単独療法で無効又は再燃した患者のC型慢性肝炎におけるウイルス血症の改善に 関して、本併用療法の有用性が認められ、承認して差し支えないと判断し、医薬品第一 部会で審議されることが適当と判断しました。リバビリンについては原薬及び製剤とも に劇薬に相当し、生物由来製品にも特定生物由来製品にも該当しないと判断しています。  また、ペグインターフェロン アルファ-2a及びリバビリンともに再審査期間は4年 と判断しています。薬事分科会で報告を予定しています。御審議の程よろしくお願いし ます。 ○永井部会長 ありがとうございました。それでは、御意見、御討論をお願いします。 既にレベトールとペグインターフェロン アルファ-2bの組合せは承認になっている。 今回は2aとの組合せということです。 ○谷川原委員 これは基本的にレベトールと同一成分の同一含量で、同一用法・用量と 考えてよろしいですか。 ○機構 簡単に考えてしまうとそのとおりですが、厳格に言うと、実はレベトールは再 審査期間中ですので、後発品にはなっていません。しかも、レベトールはカプセルで、 こちらは錠剤です。このような点が少しずつ違いますが、基本的に有効成分はリバビリ ンそのものですので、そういう意味では同じと考えていただいていいと思います。 ○谷川原委員 同じものが二つあると少し困るというのが正直なところで、どちらかと いうとレベトールの方に適応追加していただくと私たちは非常にハッピーであったので す。相手方によって同じものが2剤ある。これは結構毒性が強いので、危ないものがま た一つ病院の中に増えてしまうと、リスクマネージメントもあって困る。この期に及ん でどうしようもないのですが、できたら最初の機構相談の辺りで是非そのように考えて いただきたいと思います。 ○審議役 シェリング社とライバル関係にあるロシュ社の間で□□□□□□□□□□と いう経緯のようです。やむなくロシュ社が自ら再審査期間中のリバビリンの製剤を開発 して、こういう形態をとったということです。□□□□□□□□□□□□□ことがあっ て、このような結果になっているということです。我々としては、できるだけ現場にお ける混乱や不自由さを引き起こさないような大所高所での判断を求めたいということで 呼び掛けるようにはしております。 ○谷川原委員 ありがとうございました。結局、ペグイントロン、レベトールとペガシ ス、コペガスの直接対決の試験はあるのですか。それとも、この両群に何か違いはある のでしょうか。 ○機構 申請者は独自性を出すために、□□□□□□□□□□□、□□□□□□□□□ □□□□□□□、□□□□□□□□□□□□□□□□□ということを言っていますが、 御指摘のように、国内において直接対決はしていません。ただ、海外では大規模なもの が比較されていると聞いていますので、今後、直接対決結果がデータとして出てくる可 能性はあると思います。 ○谷川原委員 現在実施中という話ですか。 ○機構 はい。 ○岩崎委員 用量が多過ぎる気がするのです。試験に基づいて決めているわけではない ということであったのですが、やってみたら少し多そうで、区切りを変えるという話に なったと思うのです。そうなったときに、今お話があった、別の会社のものとの関係は どうなるのですか。 ○機構 先ほど御説明させていただきましたが、治験相談の段階からできるだけそろえ たいという意向はあったわけで、その方向でやってきたところです。実際、今の承認内 容としては、先行薬のレベトールと同じになります。したがって、もの自身が少しずつ 違いますが、今後、承認条件として、市販後に似たような形で調査をしていくことにな ると思います。最終的に用法・用量がそろっていくことを望んでいますが、市販後臨床 試験の結論を待たなければ分からないかと考えています。 ○永井部会長 よろしいでしょうか。よろしければ、承認「可」ということで、分科会 報告とさせていただきます。ありがとうございました。  それでは、報告事項がありますので、御説明をお願いします。 ○機構 医療用医薬品の再審査結果について報告します。資料5-1及び資料5-2の医薬 品再審査確認等結果通知書「プロポフォール」及び「メトトレキサート」を御覧くださ い。  これらの品目について、市販後の使用成績調査、特別調査の成績等に基づいて再審査 申請が行われ、審査の結果、薬事法第14条第2項各号に掲げられている承認拒否事由の いずれにも該当しないこと、すなわち、効能・効果、用法・用量等の承認事項について 変更の必要がないカテゴリー1と判定したものです。以上でございます。 ○永井部会長 御質問がありましたらお願いします。よろしいでしょうか。よろしけれ ば、この2件については御確認いただいたということで、進めさせていただきます。  本日の議題は以上です。事務局から何かありますか。 ○事務局 次回の医薬品第一部会は、既に御案内を差し上げていますとおり11月30日 (木)午後2時から開催させていただきます。よろしくお願いいたします。以上でござい ます。 ○永井部会長 それでは、本日はこれで終了させていただきます。どうもありがとうご ざいました。 ( 了 ) 連絡先: 医薬食品局 審査管理課 課長補佐 山本(内線2746)      -