06/10/12 厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会(第23回)議事録 厚生科学審議会疾病対策部会 臓器移植委員会(第23回) 平成18年10月12日(木) 厚生労働省共用第8会議室(6階) ○矢野補佐  それでは定刻になりましたので、ただいまから第23回厚生科学審議会疾病対策部会臓器 移植委員会を開催いたします。初めに厚生労働省に人事異動がありましたのでごあいさつ をさせていただきます。  疾病対策課長の梅田でございます。 ○梅田課長  9月1日付で疾病対策課長を拝命しました梅田と申します。よろしくお願いします。 ○矢野補佐  臓器移植対策室長の原口でございます。 ○原口室長  原口でございます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○矢野補佐  本日は金井委員、木下委員、山勢委員から御欠席との連絡を受けています。また本日は 議事に即しまして、社団法人日本臓器移植ネットワークの菊地コーディネーターに参考人 として御出席をいただいております。  次に資料の確認をさせていただきます。議事次第がありまして、  資料1「臓器移植におけるウエストナイル熱・脳炎の取扱いの一部改正について」。  資料2「臓器のあっせんに伴うヒト胎盤エキス(プラセンタ)注射剤に係る問診の強化 について」。  資料3−1「臓器の移植に関する法律第11条違反事件について」。  資料3−2「臓器移植法の規定」。  資料4「平成19年度移植対策関係予算概算要求の概要」。  参考資料1は2点ございまして、一点が通知で「生体臓器移植における臓器の売買等に ついて」。  参考資料2が「「臓器の移植に関する法律」の運用に関する指針(ガイドライン)」で ございます。途中不備等ありましたら事務局までお伝えください。  それでは議事進行を永井委員長にお願いいたします。 ○永井委員長  それでは早速議事に入りたいと思います。本日は審議事項3件、その他報告事項がござ います。  まずは議題の1でございます。臓器移植におけるウエストナイル熱・脳炎に関する取り 扱いについて御議論をお願いしたいと思います。では事務局から。  よろしいでしょうか。それでは事務局から資料の御説明をお願いいたします。 ○丹藤主査  それでは資料1について御説明させていただきます。まず1ページ目です。眼球を除く 臓器移植におけるウエストナイル熱・脳炎の取り扱いの一部改正についてという、今回こ のような通知を事務局の方から発出されていただこうと考えています。  ウエストナイル熱の取り扱いにつきましては、1枚目のこちら通知を今回事務局の方で 出させていただこうと予定しております。これまでウエストナイル熱につきましては、4 週間以内の渡航歴があるドナーに関してはPCR検査を行いまして、それが陽性であれば 臓器のあっせんを見合わせる。もし、陰性であっても、インフォームドコンセントの上臓 器の提供を行うという体制になっておりましたが、今般海外におきましてPCR検査で陰 性のドナーから臓器を移植されたレシピエントがウエストナイルウイルスに感染したとい う事例が報告されまして、前回のこちら臓器移植委員会において議論をいただいていると ころです。今回この通知に関しては次の2ページをごらんください。  提供前の4週間以内に渡航歴がある場合には、PCR検査及びIgM検査を行う。PC R検査及びIgM検査がともに陽性でないことを確認した上で臓器の提供を行うという形 になっています。また、(3)として、4カ月以内の渡航歴がある場合に関しても、レシ ピエント候補者に対してウエストナイル熱の感染の危険性のリスクを十分説明するという ふうに促すという形になっています。  前回の委員会で御議論いただきました当初の事務局案といたしましては、PCRの検査 を行い、こちらが陽性でないということを確認された後IgM検査及び問診を行い、その 後臓器の提供を行うという形になっておりました。  しかし、前回委員会で御議論いただきました内容が3ページの2番になりますけれども、 感染症の蔓延という観点からIgMが陽性であってインフォームドコンセントがなされた 場合でもリスクは十分回避できないのではないかという議論もありまして、事務局案を整 理し直しました。ウエストナイルウイルスに感染している可能性は低いものの、ウエスト ナイルウイルスに感染していたというPCRマイナスIgM陽性の場合のリスクが高いと いうことで、今回次のページの4番「取扱い」のように、ウエストナイルIgM検査、P CRマイナスIgMマイナスということが確認された上でのあっせんを認めるという形の 通知を出させていただくことになりました。  5ページ目の図で改めて説明させていただきます。1番でこれまでの体制でありますが、 まず渡航歴の問診をいたしまして、4週間以内に渡航歴のある方にはPCR検査を行う。 陽性であればあっせんしない、陰性であればあっせん可能とした。  ところが、PCRマイナスの方から移植を受けた方がウエストナイルウイルスの感染が 認められたという例がありまして、感染症研究所の報告書ではIgM抗体検査を行い、も しこれが陽性であればリスクを十分説明した上で可能、マイナスであれば移植可能という ような報告をいただきまして、次のページの3番。前回こちらで事務局側で案を出させて いただきまして議論いただきました形がこちらですが、渡航歴のある方4週間以内で渡航 歴のある方に関してはPCR検査を行う。陽性であればあっせんしない、こちらはこれま でどおりですが、陰性の場合は問診及びIgM抗体検査を行い、これの検査の結果を含め て十分説明した上であっせん可能という形にしておりました。  が、前回の御議論を踏まえまして4番、今後の対応案として、PCR検査と問診それか らIgM抗体検査をすべて行い、どちらも陽性でないということを確認した上であっせん 可能という形にいたしまして、今回通知を発出したいというふうに考えております。  7ページですけれども、こちらは現行と改正案の比較がなされています。現行の国内の ドナー、眼球以外の臓器移植に関しては先ほど説明したとおりですけれども、角膜、強膜 の移植に関してはウエストナイルウイルス、角膜が低いということから、4週間以内の者 に関しては問診の結果を踏まえ慎重に移植の可否を判断の上インフォームドコンセントを 行い、移植。国外のドナーに関してもやはり4週間前までの問診の強化というところを強 く依頼しまして、その結果を慎重に判断するということです。こちらもインフォームドコ ンセントを行う。  今回改正いたしまして、国内のドナーに関しては先ほど御説明したとおり、角膜・強膜 の移植に関しては現行と同じという形になっております。  9ページ以降は参考として資料を準備させていただきましたが、今回ウエストナイルウ イルス、PCR検査陰性でIgM検査陽性の方のドナーからの移植でウエストナイルウイ ルスが発生した。ウエストナイルウイルスについての感染症の特徴あるいはリスクについ てこちらに記述しております。11ページ、12ページ、13ページの英語の資料は、その今 回PCR陰性の方からのウエストナイルウイルスの感染があったという事例の報告となっ ております。  以上です。 ○永井委員長   はい。ありがとうございました。この間の委員会以降少し時間がかかりましたけれども、 このような形で案をつくらせていただきました。御意見御討論よろしくお願いいたします。 ○小中委員   今のお話なのですが、現実的に臓器を提供する可能性のある御承諾をいただいた場合な のですが、そのときの実際はどうなのかということについて少し心配するところなのです が、検査に行っていただける場所とそれから検査結果の出る時間についてお教えいただき たいのですが。 ○永井委員長   はい。いかがでしょうか。 ○丹藤主査   現在、IgMの検査体制については、国立感染症研究所で体制としては十分な形になっ ております。かかる費用ですけれども大体1万円程度、時間としては4時間から6時間と いうことであります。これまでPCR検査、4週間以内渡航歴があってPCR検査を必要 とされた例がこれまで3年半で1例ということで、現在の状況あるいはこれまでの体制を 踏まえまして十分対応可能であるというふうに判断しています。今後民間の検査会社でも IgM抗体の検査を行える、PCRと同じ体制を準備できるように体制の充実整備を図っ ています。今後感染症研究所と日本臓器移植ネットワーク、それから厚生労働省の方でそ ちらの体制の方は進めていくという準備はもう既に整っておりますので、数カ月以内には そのような形が実現できるというふうに考えています。  現在ウエストナイル熱の方の媒介する蚊の数が減少しつつある、そういう季節的なもの もありますので、そういう点に関しても対応の方は十分であるというふうに考えています。 ○永井委員長   はい、相川委員どうぞ。 ○相川委員  ちょっと細かいことで恐縮なのですが、今の御説明の中で例えば4ページの上段のとこ ろ、「陽性でないことを確認」という部分を「陰性であることを確認」というふうに御説 明になったのですが、陽性でないことを確認と陰性であることを確認とは100%一致する のでしょうか。  もう一つは、特に二重否定の文章があるので非常にわかりにくいのですが、「取扱い (案)」のビュリットの二つ目の[1]のところですけれども、「検査において陽性でないこと が確認されない場合には」、この二重否定に関しては陽性陰性についてどのように考えて いるのでしょうか。 ○丹藤主査   検査の確実性という観点からこのような表現にならざるを得なかったというのが、私の 説明の中で「陽性でないことを確認」ということを「陰性」というふうに申し上げました が、検査で100%ウイルスが検出されないという意味での陰性、もちろん必要なことでは あると思いますが、どうしても検査上「陽性でない」という表現をとらざるを得ないとい う、検査の現実上の問題としてそういう、それで文書の方には「陽性でないことを確認」 というふうに慎重を期してといいますか、そんな形で書かせていただいている形になって おります。私が「陰性なことを確認」と申し上げましたが、それは正確でないという。 ○相川委員  では文面どおり、「陽性でないことを確認」でよろしいわけですね。「陰性を確認」で なくて。わかりました。  それから二重否定のところは非常にわかりにくいのですね。「陽性でないことを確認さ れない場合」という一つの文章の中に二重の否定がありますと、数学的にも考えにくい。 これは「陰性を確認できない場合」とかではどうなのでしょうか。 ○丹藤主査  その部分に関しても、正確性を期すという意味であえてわかりにくい表現になってしま ったところはあるのですが、文書として発出するという意味においてはわかりやすさより も正確性を期すという意味でこちらの表現を使わせていただいているということで、御容 赦いただきたいというふうに思います。 ○相川委員  文面どおり読んで、陽性でないことということは、陰性であることとは違うと。文面ど おり読んでいいと。今の御説明とは違うということでよろしいですね。 ○丹藤主査  はい。「陰性」という表現は不適切な表現であったと思います。訂正します。 ○永井委員長   確かに検査上陰性ということと病原体がいないということは必ずしも一致しない場合も ある。そこのなかなか断定が難しいというところを含めてということですね。はい。 ○小中委員  もう一つよろしいですか。2ページに書いてございます(3)なのですが、臓器あっせ ん機関は、臓器提供者に4週間以内の渡航歴がない場合であっても、渡航歴があれば説明 をしないといけないと書かれているわけですよね、4カ月以内の。  ということは、ここまで確認をしないといけないということになるということですね。 ○丹藤主査   はい。発症後104日後にウイルスの遺伝子が検出された例がございまして、ここでその 4カ月以内の渡航歴がある場合に関してはやはりインフォームドコンセントをという表現 を使わせていただきました。ですから、4カ月以内の渡航歴に関してもドナーに対して問 診していただくという形に変更させていただきたいというふうに考えております。 ○永井委員長  ほかにいかがでしょうか。はい、大久保委員。 ○大久保委員  済みません。初歩的なことで。今先ほどの話だと、この検査ができるのが今国立感染症 研究所だけなのですね。現状は。 ○丹藤主査   はい。 ○大久保委員   そこへ全国各地からそういう方が起こった場合というか、4週間以内渡航歴のある方が いらした場合そこへ全部送るわけですよね。そこで出てくるのが4時間ぐらいとおっしゃ っていますね。そうすると前後の搬送というか輸送の時間も見るとかなり時間が余分にか かるのですね。  それからもう一つ費用はどこが持つのですか。 ○菊地参考人  PCRの検査でも東京に2施設しかありませんので、搬送については多分大丈夫だと思 っております。費用については保険点の分配の中に「その他感染症検査等の費用」という 部分がありますので、そちらから捻出しようというふうに考えています。 ○大久保委員  これもそれに含まれる。 ○菊地参考人  はい。 ○永井委員長  ほかにいかがでしょうか。かなり安全性重視の方向でまとめていきたいということです。 しかし現実にはそれほど問題のある症例は数はそんなにないのではないかという含みもあ るわけですよね。  余りにもIgM抗体の陽性者が多くて移植に問題があるということであれば、またいろ いろな考えもあるかもしれませんが、まずは安全第一でいった方がよろしいのではないか ということですね。  よろしいでしょうか。もしよろしければそういうことで進めさせていただきたいと思い ます。はい、どうもありがとうございました。それではこの件につきましては、社団法人 日本臓器移植ネットワーク、国立感染症研究所及び事務局において必要な準備をしていた だくということでお願いしたいと思います。  続きまして議題2、臓器移植におけるヒト胎盤エキス(プラセンタ)注射剤に関する取 り扱いについて御議論をお願いしたいと思います。事務局から御説明をお願いいたします。 ○丹藤主査   それでは資料2について説明をさせていただきます。まず1ページをごらんください。 こちら9月27日に通知を発出いたしました「臓器のあっせんに伴うヒト胎盤エキス(プラ センタ)注射剤に係る問診の強化について」というものです。  これまで薬事・食品衛生審議会血液事業部会安全技術調査会において、ヒト胎盤エキス (プラセンタ)の注射剤の使用を通じて、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病が伝播される リスクから見た対応というものについて検討されてまいりました。これを受けて医薬食品 局の方から、ヒト胎盤エキス(プラセンタ)注射剤を使用された方に関しては、予防的な対 応として献血を制限するという措置が講じられました。これに伴いまして、臓器移植対策 室の方でも今回このような通知を出させていただきました。「記」の下をごらんください。  臓器あっせん機関は、ヒト胎盤エキス(プラセンタ)注射剤の使用歴を有する者からの臓 器の提供は、原則として見合わせる。ただし、移植医療における研究性、代替性にかんが み、当分の間、レピシエント候補者が、クロイツフェルト・ヤコブ病並びに移植に係るリ スク、留意点についての説明を受けた上で同意を、レピシエントのフォローアップを十分 行うという通知であります。  次のページが眼球あっせん機関、眼球の角膜の移植についても同様の通知を出させてい ただいています。  次に3ページ、こちらが医薬食品局から先月19日に出されました、ヒト胎盤エキス(プ ラセンタ)注射剤に係る問診の強化というものです。こちらでは先ほどの技術安全調査会の 方で、ヒト胎盤エキスのリスクについて議論されてまいりましたが、今回献血の方ではプ ラセンタ使用歴のある方からの血液の提供を見合わせるという通知であります。  次のページが各都道府県にこういった内容をお知らせするものです。  5ページからの5ページ分が安全技術調査会の方で審議された際の資料であります。5 ページ6ページ目が実際献血においてどのような対応を、問診をやっていくかという内容 ですが、7ページ目をごらんください。  こちらは昨年12月17日の安全技術調査会での資料でありますが、この中で胎盤のクロ イツフェルト・ヤコブ病の感染性、それから、プラセンタエキスの注射剤を使用した方か らのクロイツフェルト・ヤコブ病の伝播のリスクとそういう形で二段階のリスクについて 検討されていますが、2番の(2)、輸血によって受血者にクロイツフェルト・ヤコブ病 が発生すると仮定した場合の発生率は、小さいと推定されるが理論上は否定できないと。 理論上は否定的できないということから高い安全基準ということで、輸血の場合代替可能 性が非常に高いということで安全性を重視した今回の対応をとったという内容になってい ます。  10ページにまいります。10ページに用意させていただいたのが、これまでの臓器あっせ んにおけるクロイツフェルト・ヤコブ病の取り扱いであります。これまでは、「別紙」の 方に、臓器あっせん機関はクロイツフェルト・ヤコブ病に感染した方からの移植は見合わ せる。その他リスクに関して(2)[1]から[5]まで、ヒト成長ホルモンの投与を受けた者、 硬膜や角膜の移植歴がある者、家族歴あるいは医師に指摘されたことがある、こういった リスクがあります、こちらに当たる方は提供を見合わせる。  (3)は、欧州渡航歴を有する者からの臓器移植、こちらに関してはやはり原則として 見合わせるが十分なインフォームドコンセントとフォローアップを行うということで、移 植は可能であるという形をとらせていただいております。  今回プラセンタに関しても、この海外渡航歴と同様の措置というのをとらせていただい ております。といいますのも、現在ヒト胎盤エキス注射剤は国内の胎盤を原料にして今製 造されておりまして、つまり渡航によって感染しその者の胎盤からエキスを製造し、それ を注射されてというふうにして感染するリスクは渡航歴自体が持つリスクよりもさらに低 下するというような観点から、渡航歴のあるドナーからの移植を同意とインフォームドコ ンセントの上で認めるということで、プラセンタ注射剤の移植、それ以上厳しくする理由 はないということで、今回の措置をとらせていただいております。  以上です。 ○永井委員長  はい。ありがとうございました。それではただいまの御説明に質問御意見等ございます しょうか。  このプラセンタというのは更年期障害とか乳汁分泌不全に使われているということです が、かなり今でも使われているということなのでしょうか。 ○丹藤主査   はい。現在はもちろん肝臓病や更年期障害の方にも使われていますが、美容形成、しみ とかしわとかそういったものに関して使われるケースもふえてきているということで、そ のあたりも観点を入れて血液対策課の方では今回の措置をとったという話を聞いておりま す。 ○永井委員長  はい、北村委員どうぞ。 ○北村委員  実際薬事法、薬事で承認された薬ですよね。これで発症した例が出てきたから対応して いるのですか。BSE。 ○丹藤主査  これまで一度も症例はありませんし、FDA等でもこういった胎盤由来の注射剤を使用 したことで制限をかけるあるいはこう遡及して調べるということはしておりません。 ○北村委員  一例もない、そして日本の薬事承認され現在でも使用が認可されていて、保険診療に入 っていて、それを理論上は否定できないということで献血中止や臓器提供抑制をやってい くと、その辺どう考えておられるのか。 ○丹藤主査  血液対策課の方では。 ○北村委員   言い出すと切りがないぐらいしっかりしたい気持ちはわかるけれども、切りがないぐら いいっぱい入れてこられるわね、これをやっていると。ありとあらゆる生物製剤すべてと いうことに。どうなのでしょうな。 ○丹藤主査   はい。御指摘のとおり、そのような観点から今回プラセンタに関してはきちんとしたイ ンフォームドコンセントをした上で移植を可能であるという形の通知を出させていただき ます。血液行政に関してはより安全性を高い位置に置くというのは、代替可能性が非常に 高い、取りかえがきくという面から、ただ、臓器移植あるいは角膜移植に関してはそのよ うな、むしろレシピエントの。 ○北村委員  そういうことでなくて、受けた人の献血を禁止するというならば、その治療そのものの 薬事承認とか保険医療としているとか、その製剤そのものの採取その過程、製薬作業での 過程に対して何か新たに規制を加えるのですかと聞いているのです。 ○丹藤主査  それに関しましては医薬食品局の方で現在胎盤を採取する際により問診を強化するであ りますとか、そういった研究を進めるとかそういった形での対応を検討しているというこ とを聞いています。 ○北村委員   そこをしっかりできれば、これはもう流れの下の方を押さえて上の方はほったらかしに なっているのではないのかという気がちょっとするのですよね。そこのところをまたひと つよろしく。 ○丹藤主査  ありがとうございます。 ○永井委員長  はい、相川委員どうぞ。 ○相川委員   今の質問にも関連するのですが、私聞き逃したのかもしれませんが、この2製剤に関し ては使用上の注意その他で、この製剤を使うとバリアントCJDにかかる可能性があると いうことは明示されているのですか。 ○丹藤主査   バリアントCJDという具体的な疾患名は出てまいりませんが、いわゆるヒトからの原 料によってつくられた製剤であるので何らかの感染症の危険性はあるという形で薬剤の使 用上の注意に書いてありますし、それを医師から処方する際にはきちんと説明することと いう形がとられています。 ○相川委員  何らかの感染症というふうに書いてある。 ○丹藤主査  感染症と、そうですね。 ○相川委員   もしわかれば後で具体的にどのような書きぶりになっているかをお教えください。 ○丹藤主査   わかりました。 ○永井委員長  ちなみにこの材料となった胎盤は日本人のものなのですか。外国人のものも入っている。 ○丹藤主査  いや、国内です。 ○永井委員長  国内で製造したものであるということですね。はい、松田委員どうぞ。 ○松田委員  臓器移植は基本的に他人からそういうものをもらうので、いろいろなリスクもあります よ、というそういう総論で片づけていい問題のような気もするのですね。北村委員もおっ しゃったように、根拠としてはほとんど現実には出てきていない。  ですから、何かいちいちそういうことになると問診の強化云々となって、ちょっとそこ までするのかなとするのが率直な意見です。1ページのちょっとわかりにくかったのです けれども「記」の「臓器あっせん機関」云々のところに、「注射剤使用歴を有する者から の臓器の提供は、原則として見合わせることとする」というのは、これはもう通知が出て いることなのですか。  こう書いておいて、「ただし、・・・この限りではない」というのは何か現場で混乱す ると思います。これはもう決まっていることなのですね、9月27日付の局長の通達という のは。 ○丹藤主査  はい。9月27日に発出させていただきました。このとおりの内容であります。 ○松田委員  こういうことは検討なしで出てきたわけですね。要するに臓器移植関係の委員会を経な いで前の資料かその辺の会議での結果として、この27日の通達が出たということですか。 ○丹藤主査  その会自体は医薬食品局の方でまとめられまして、献血に対して原則プラセンタ注射歴 のある方の献血を見合わせるという形の通知が出ています。それに伴いまして臓器移植の 観点からも同じような対応が必要ではないかということで、このような通知を出させてい ただきました。  ただ、見合わせるという形には一応なっていますが、ただしインフォームドコンセント というものをきちんととった上で、そのリスクをきちんと判断し説明した上で可能とする という形をとらせていただきます。一律すべて禁止するという形にはしていないというと ころであります。 ○原口室長  補足をさせていただきたいと思いますけれども、こちらの方今申しましたように、まず は血液の場合の取り扱いについてこのような形で議論がされ方針が決められたと。これを 受けましてさらにこのでは移植医療の取り扱いを考えようということになるわけでござい ますが、これまでもこのような手順でやらせていただいてきたものと理解しておりますけ れども、当面の措置という形でこの血液に関する取り扱いに準じて当面の措置を速やかに やらせていただいておいて、そして開ける時期のこの委員会におきまして、こういう取り 扱いをしたということを御報告し、特に必要があれば修正する場合があるというような形 で事後付議させていただけるものというふうに承知をしておりまして、そうしたことでき ょうお示しをしている次第でございます。 ○永井委員長  はい。 ○松田委員  要するに「原則として見合わせることとする」とまで書かれて「ただし」云々というこ とで、何かそれはそういう趣旨はわからないでもないのですけれども、だから問診をとい うのはかなり現実的なことから言いますと実際現場としてはどうしたらいいのかと迷うよ うですし、原則として見合わせるということが、通達として書かれる根拠がどうだったの かというのが疑問として出てきた。そういうことでございます。 ○永井委員長  北村委員、どうぞ。 ○北村委員  まだちょっとくどいようですけれども、献血の方を制限する、臓器の方は十分なインフ ォームドコンセント、常に献血と平行していろいろ行われてきているのですけれども、こ ういうことを健康局の方が疾病対策で取り上げられているときに、その大もとになるこの プラセンタエキスというものの製品をどうしようと医薬食品局は考えているのですか。そ んな危険なものは薬事承認や保険収載を取り消したらいいということにはならないのです か。その辺健康局はどう申し入れた上で献血制限をしているのですか。  受けた人の方がもっと危険なのでしょう。その人の血液を危険だとしているのだから。 受けた人自身が発病はしていないけれども危険性があるという認識のもとで、その方の血 液は危険だとしているわけですよね。そうするとその方自身には薬事法も認めている、保 険に入っているのだと思いますよこれ、保険収載されている。ですから、それに対しての 危険性は医薬食品局はどう認識している、あるいは健康局からどう申し入れているのかと いう現状はいかがなものですか。 ○丹藤主査  今回このような通知が出され、これは血液対策課と、医薬食品局の中の部局であります、 薬を管理している場所もやはり医薬食品局であります。そこでいわゆるリスク、あるいは より血液事業に関しての安全性というものを十分に検討した結果このような通知が出たと いうふうに考えています。それに対して健康局としても、血液つまりそういう医療に関し ての観点からの並びの通知という形になっています。 ○永井委員長  はい。では先に原口室長どうぞ。 ○原口室長  今先ほど申し上げたとおりではございますが、私どももこの薬品自体の使用をではどう 考えているのだということは確認いたしましたときに、やはり原材料の取得そのものにつ いてもっと向上することはできないか平行して考えているというふうに聞いたところでご ざいまして、先ほどそれを申し上げたところでございます。  直接みずからがプラセンタの投与を受けて、何らかの必要があってそれをお受けになる 方の場合と、そういうことではなしに間接的にここの影響を受ける方の場合ということで これを取り扱い、このような形に手続きではなさったのではないか。直接輸血を受ける方 は血液製剤の投与を受ける方は、このプラセンタそのものには何か受けて、それでプラス 受ける立場でないということがありこんな扱いを使われているのだろうと思います。ここ のところを一応考え方としては同じ考え方で整理をしているということになると思います。  あとは過去ございました議論に従いまして、移植医療における代替手段がなかなかない ということをかんがみて、このような従来どおりの形での組み立てをさせていただいたと、 こういうことでございます。 ○北村委員  しかしね、20年、25年間で8千万本使われていて、1本使っている記憶があれば、献血 キャンディデートを減らしていることをしながら、一方でどんどんどんどん保険医療でも ってそれを続けているという行政の形はこれでよろしいかという気がしてならないのです ね。また検討してください。 ○永井委員長  大島委員どうぞ。 ○大島委員  万が一ということを考えると、こういう表現をとらざるを得ないというのはわからない のではないのですが、一歩譲ってこの薬剤のメリットとデメリットというのはどんな場合 でも当然メリットが上回るということが大前提だと思うのですね、デメリットに比べて。  私がちょっとこの話を聞いて納得がいかなかったのは、しみを取るのに使っていて命と かそういったものにほとんど何の影響もないのにあたりまえに使っていて、臓器移植につ いては、ヤコブ病が出る可能性があるからだめだというそのロジックは、どう考えてもち ょっとこれは。だからそこは北村委員の言われるとおり、適応外にしていただくとか、そ れだけのリスクがありますよということをしみの場合にはっきりと打ち出して、ほとんど 生命だとか健康だとかに関与しない分野ですから、それぐらいは少なくともはっきりと、 意味がないというぐらいのことを言われるのが筋が通る話じゃないですか。それをやれば 売っているメーカーにとっては大打撃でしょうけれども、そういう問題とは本質的にちょ っと違うという感じがします。 ○永井委員長   注射を受ける人に対してもインフォームドコンセントとかやはりヤコブの危険性を説明 しないと整合性がとれないということですね。あるいはそもそも必要なのかということま で議論すべきであると。  相川委員どうぞ。 ○相川委員  一部先ほど私の聞いたところの繰り返しになりますが、確認ですがこの薬は現在でも使 われている。このお薬を投与するときの注意事項としては、特定はされていないけれども 何らかの感染症にかかる可能性があるということは書かれている。  その中で、例えばこのお薬を一度投与したら、あなたは臓器提供を希望しているかもし れないですけれども、原則としてあなたの臓器は提供できませんよということは書かれて いないのですか。  かなりの方が臓器提供したいと思われている方もいるわけですね。そういう方への注意 書きとして、例えば、あなたはこの薬を使うと原則的にあなたは臓器提供者にはなれませ ん、あるいは角膜の提供者にはなれませんということは書かれているのですか。 ○丹藤主査  いえ、それについては書かれておりません。そこまでは書かれてございません。 ○永井委員長  さて、いかがでしょうか。この少し移植の委員会の外の話まで出てまいりますけれども、 一応こういう意見が出たということを医薬品局の方にお伝えいただくということでいかが でしょうか。そういうことでよろしくお願いいたします。  ほかによろしいでしょうか。よろしければそういうことで移植ネットワーク及び事務局 において対応をお願いしたいということにいたします。  続きまして議題の3にまいります。臓器の移植に関する法律第11条違反事件について御 議論をお願いします。初めに事務局から事件の概要について御説明をお願いいたします。 ○原口室長  それでは資料の3−1をごらんいただきたいと思います。紙を横に使っております資料 でございます。  既に報道されていますので御承知の事件と思いますが、臓器移植に関する法律第11条違 反、臓器売買等でございますが、これにかかわる摘発事件がこのたび生じたということで、 まずは報告をさせていただきたいと思います。  この事件に関してでございまして、報道に基づく形で整理しておりまして、例えば警察 の方から直接教えていただいてということではない、私どもで整理した資料でございます けれども、このため時点がちょっと古い情報がまじったりしておりますことをお許しいた だきたいと思います。  逮捕されましたのは男女お二人ということでございまして、ことしの10月1日に宇和島 市在住の者が逮捕されているということでございます。このうちの(1)のA男としてお ります方が臓器の移植を受けた人でございまして、提供した人がその下C女といたしてお ります。この方は報道ではそのころ入院をされていたということでございます。  摘発されました理由は、臓器移植に関する法律11条違反でございまして、資料3−2を ごらんいただきますとまずは関係規定ということで、この規定を掲げてございます。  第十一条、(臓器売買等の禁止)という規定がございまして、第1項には「何人も、移 植術に使用されるための臓器を提供すること若しくは提供したことの対価として財産上の 利益の供与を受け、又はその要求若しくは約束してはならない」と、こういう規定があっ て、財産上の利益を受けて臓器提供してはいけないということになっているわけでござい ます。  このような規定がある考え方でございますけれども、上にこの法律の第二条、(基本的 理念)の規定を掲げてございます。第2項には「移植術に使用されるための臓器の提供は、 任意にされたものでなければならない」、第3項には「臓器の移植は、移植術に使用され るための臓器が人道的精神に基づいて提供されるものであることにかんがみ」というよう な規定があり、こうした考えから売買ということは許されないのだということで、罰則の 部分は引用しておりませんが、罰則を設けて禁止をしているということでございます。  3−1の資料に戻らせていただきまして、概要でございますけれども、これは逮捕され ましたうちのB女の方でございますが、こちらが臓器の提供をされたC女と知人関係にあ った。200万円を借りていた、この返済を求められていたという関係にあったところ、こ のB女と内縁関係にあるA男が腎臓を患って移植を必要としていた、そこで、平成17年の 夏ごろ、このB女からお金を借りている相手であるC女に対して、「A男が腎臓を提供し てくれる人を探している。ドナーになってくれたら、借りた金に300万円を上乗せして渡 す」などと再三依頼をして、そういう約束をしたと。  平成17年9月にA男がC女をドナーとする腎臓移植手術を受けた後、被疑者らはC女に 対して現金30万円と普通乗用車1台を提供したということでございます。お金を借りてい た方が臓器も提供をしたと、ややちょっとそういういびつな構図でございますが、そうし た事件であったということでございます。  そして平成18年2月にC女が県警に対して、「知人に、臓器移植のドナーになるよう頼 まれ、承諾した。知人には、お金を貸していたのに、それも返してくれない」と相談した ことから容疑が発覚して捜査をされ、お二人の逮捕に至っており、なお捜査が継続してい ると、こういう事件でございます。  2ページをごらんいただきたいと思います。この事件はもとより提供者と患者との間で 財産上の利益の授受があったということでございまして、この手術に関してどういう論点 問題点があるかということでございますが、まず第三者である提供者が義妹と偽って、患 者との間で財産上の利益の授受を伴って臓器が提供された、こういうことで第11条違反の 事件であると、これがあるわけでございます。  また、この手術が行われた病院に関しまして、報道を含めまして、また都道府県ととも に調査をいたしました範囲で、下のような問題が指摘できるところでございます。  一点目ですが、患者と提供者の親族関係を資料で確認していなかった。御承知のとおり、 執刀された医師の方はマスコミの方にも非常に広範にインタビューに応じておられますが、 このことをどうも公言されており、私どもが聞き取り調査をした範囲もやはりこのように やはり認めていらっしゃるわけでございます。  それから、親族からの提供であるということでございますが、それでこの病院では倫理 審査委員会を開催していないということでございます。  三点目ですが、手術の同意書はとられているのですが、ただ提供者及び患者に対する医 師からの説明が、文書ではなく口頭で行われたというふうにされております。このため、 診療報酬上の基準を満たしていなかったのではないかと、こういう論点もあるところでご ざいます。   なお、この病院では、10月6日に倫理審査委員会を開催するなど、これらの点の改善を 進めておられると、こういうことでございます。ここで若干御説明しておきたいことがご ざいまして、また資料の3−2、これが今度は2ページをごらんいただきたいと思います。  今回のこの事件は生体からの臓器移植にかかわる問題でございまして、生体からの臓器 移植に関しましては、日本移植学会において倫理指針を定めておられる中に生体臓器移植 の項があるわけでございます。ここの項目の一部をここに抜粋させていただいております けれども、まず倫理審査委員会に付議していないというようなあたりに関して申し上げま すと、ここの真ん中ほどにあります小さな(2)をごらんいただきますと「親族に該当し ない場合においては、当該医療機関の倫理委員会において、症例毎に個別に承認を受ける ものとする。その際に留意すべき点としては、有償提供の回避策、任意性の担保などがあ げられる」等のルールがあるわけでございます。今回の場合につきまして、先ほど申し上 げましたように、親族というふうにだまされたというふうに言われているわけでございま すけれども、その結果この倫理委員会にもかけていないということであり、かけて有償提 供の回避にも留意いただいて審査いただくというのがこの指針の考え方であるということ があるわけでございます。  それから一番終わりのところでございますけれども(5)としまして、「ドナーへのイ ンフォームド・コンセントに際しては、ドナーにおける危険性と同時に、レシピエント患 者の手術において推定される成功の可能性について説明を行わなければならない」という ふうにあるわけでございまして、ここのところも先ほど申し上げましたところでは説明が 文書でなかったということがあるわけでございますので、これがどこまで説明されたかと いう点もあろうかというふうに思います。  それで3−1の方に戻らせていただきまして、「III 厚生労働省の対応状況」というこ とでございます。  一つ目でございますが、愛媛県と連絡をとりまして事実関係を調査すべく努力をしてお ります。既に家宅捜査が行われて関係資料が押収されているというふうに聞いておりまし て、調査は基本的に口頭での聴取の形でやっているところでございます。  それから10月3日付で担当室臓器移植対策室の方から通知を発出させていただいてお ります。まず一つには、臓器売買が疑われる情報がある場合には、調査・指導をしていた だきたいという趣旨の通知を都道府県に対して出しておりまして、終わりの方についてお ります参考資料1というのがこの通知でございます。  この通知の該当部分を申し上げますと、1ページ目のところでございますが、三つ目の 段落で「貴職におかれては、万一、臓器売買が疑われる情報があれば、関係行政機関、団 体等と密接な連携をとりつつ、速やかに調査の上、適切な指導を行うようお願いいたしま す」ということで指導をお願いしているということでございます。  それから、もう一点でございますが、3−1の方の続きでございます。生体臓器移植に おいて、日本移植学会の指針も参考に、慎重に説明・意思確認を行うよう周知・指導とい うことを都道府県に指導を要請し、また医療関係団体に対して周知をお願いするというこ とをいたしました。これは先ほどの通知の2ページ目のところをごらんいただきますと、 医療関係団体に対する通知の写しを付しております。  四つ目の段落をごらんいただきますと「貴会におかれましては、会員に対し、生体臓器 移植における臓器提供等について、財産上の利益の供与が行われてはならないことに留意 し、必要に応じ日本移植学会審理指針を参考として必要な説明、提供意思の確認等に慎重 に取り組まれるよう周知を図られますことをお願いいたします」ということで、周知をお 願いしました上で、1ページに戻っていただきまして、こちら都道府県あてでございます が、四つ目の段落に「各医療関係団体に対しても、別添の文書を送付しておりますので、 貴管内医療機関に周知されるとともに、必要に応じ適切な指導等を行うよう併せてお願い いたします」ということで、これに即した指導の要請を行ったということでございます。  資料3−1の方の続きでございます。三つ目の○でございますが、10月12日、本日開 催する厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会に、この場でございますが、まずは事 件について報告をさせていただいているということであります。  それから診療報酬上の基準への抵触の有無については、これは調査に着手しているとい うことでございます。  そして最後の点でございまして、ここは対応の報告というより本日の御提案という扱い になるわけでございますが、今後、日本移植学会においても、後ほど御説明をお願いして おりますが、検討着手されておりますが、こちらと連携して検討いたしまして、そして厚 生労働省で定めております臓器移植関係のルールとしまして「臓器の移植に関する法律の 運用に関する指針」というものがございますが、この改正を考えさせていただいてはどう かということでございます。この指針でございますけれども、参考資料2ということで添 付をいたしております。  これは現在の臓器移植法ができましたときにつくられましたガイドラインでございまし て、内容についての個別の御説明は避けておきたいと思いますけれども、現在生体移植に 関しましては特段の規定をこの指針の上には設けておりません。現在この事件を受けまし て、これからのルールをいかにあるべきかと、現在のルールでよかったかということを移 植学会におかれても御検討になるということでございますけれども、私どもとしましてそ れと平行してあるべきルールを考えて、それをまた別途どうやって徹底するかという論点 もあるわけでございますけれども、どのようなルールであるべきかということをまずは速 やかに整理をしていってはどうかと、このように考えているところでございます。  この指針につきまして改正するということになります場合には、なるべく速やかに検討 しまして、またこれについての改正内容等についてなるべく早くお諮りできるようにまた 開催をさせていただいてはどうかなというふうに考えているところでございます。  以上、報告と最後一点の御提案ということでございますが、御説明させていただきまし た。 ○永井委員長  はい。ただいまの説明に対していかがでしょうか。まず日本移植学会も今回の事件に対 して対応を考えていらっしゃるということですので、大島委員から御説明をお願いいたし ます。 ○大島委員  それでは日本移植学会を代表いたしまして、ここでは移植学会の副理事長として宇和島 の徳洲会病院における生体臓器移植売買問題についての対応と見解について御説明をさせ ていただきたいと思います。  私どもの得ている情報は新聞報道あるいはテレビ報道による情報がほとんどすべてであ りまして、その情報に基づいているということを最初にお断り申し上げたいと思います。  10月1日に宇和島徳洲会病院において生体腎の売買による移植が行われたという報道 が行われ、これを受けまして臓器売買という衝撃的な事件が我が国で起きたことによる社 会的な影響が非常に大きなものだというふうに考えまして、ただちに移植学会としては資 料にありますように理事長声明を発表させていただきました。10月2日です。  その中で、生体臓器提供におけるドナーの決定につきましては、ドナーが自由な意思で 臓器提供をしたいと望むこと、金銭の授受を行ってはならないこと、理由なく、倫理規定 を超えて提供者の範囲を拡大してはならないという大原則を述べまして、宇和島の徳洲会 病院で調査委員会を立ち上げることを希望するとともに、その場合には日本移植学会も調 査に全面的に協力するということと、一方でこの問題を検討する委員会を立ち上げるとい うことを社会に公表いたしました。  そして、10月5日の日に緊急理事会を開催いたしまして、その中で「生体臓器提供に関 わる特別委員会」を立ち上げました。私がその委員長になりました。その中で四つの課題、 一つは生体臓器提供における提供者の意思確認の方法について、二つ目は移植学会員の倫 理指針の遵守徹底のための方策あるいは確認の方法、そして三つ目には徳洲会病院で行わ れた移植医療の実態について、そして四番目に倫理指針そのものについての再検証という 課題を検討するということを確認いたしました。  10月11日、昨日でありますけれども、第1回の特別委員会を開催いたしまして、その 結果、生体臓器提供者の意思の確認あるいは本人の確認について、インフォームドコンセ ントを含む手続き上の手順についてのモデルあるいは指針というかと思いますけれども、 これを作成する。二つ目に、諸外国における生体臓器提供者及びそのあり方についての法 整備等について調査をする。三つ目に、移植学会員に対して倫理指針の再確認と遵守、そ して倫理指針に外れるような移植医療への協力をしないことを要請する文を作成してこれ を徹底させる。四つ目に、今回の事件に関与する問題、提供者の意思確認のあり方等につ いて、その実態調査を行う。そして五つ目に徳洲会病院で行われた移植医療の実態につき ましては、今のところ非公式ではありますけれども徳洲会の方から調査委員会を立ち上げ ることと、そこに学会からの委員の就任の要請がありましたので、派遣する委員を決めて 派遣することを決めました。  今回の事件につきましては、非学会員によって行われた移植医療に関連して起こった事 件でありまして、移植学会とは関係がないという考え方も一部ではありますが、学会とい たしましては今回の問題を深刻な問題として受けとめました。  その理由は、第一には臓器の売買という事件が移植医療そのものへの影響の大きさ、そ して特に社会の移植医療への不信につながるのではないかというおそれがあること、そし て、第二に、移植医療が人の臓器がなければ成立しない医療であるために、学会員非学会 員を問わず今後もこのような事態が起こり得る危険性と可能性があるということを踏まえ まして、今までの生体臓器移植のあり方について、今回の事件はある意味で再検討をする 機会を得たものだという考えと同時に、学会としての考え方を改めて社会に明らかにする 必要があるというふうに考えたことによります。  今回の事件は、移植医療の持つ特殊性そして移植医療を取り巻く我が国の特殊事情、そ して既に明らかになっているため個人名を出してもよいかと思いますけれども、万波医師 そして徳洲会病院の独特な医療に対する考え方や価値観が複合的に関連して起こったもの と考えています。  移植医療の特殊性とは、まず第一に人の臓器を必要とする医療であることであります。 そして、生体臓器移植に限って申しますと、生体臓器移植では健康人にメスを入れるとい う、本来の医療行為ではあってはならないことを前提にしている医療であることでありま す。我が国の移植をめぐる環境背景につきましては、臓器移植を必要としている人に比べ、 臓器の提供数が著しく極端に少ないため、望ましくない提供者による臓器であることがわ かっていたり、あるいは、金銭が絡む臓器提供であることがわかっていても、そのような 外国での臓器を求めて移植を受けにいく事例が後を絶たないというようなところに象徴的 にあらわれております。  このような背景の中で、ほかの医療に比べさらに高く倫理問題が発生しやすい移植医療 を、しかも全国でも多くの数を行っている施設で倫理委員会を設置していないという実態、 あるいは、文書でのインフォームドコンセントをとる必要がなく、医師と患者との信頼関 係があればそれでよいとする万波医師の医療に対する考え方も、このような事件が起きた 大きな要因の一つであったのではないかと考えています。  臓器の提供者がいないという一方で、何とか移植を受けて生き延びたいと考える人がい る、一流のそして一流の移植医療を行うことのできる人材そして施設もあるという我が国 の状況下の中で、医師や病院をだましてでも移植を受けようと意図的に計画をして病院に 来られた場合に、これを完全に見抜くことができるかどうかということにつきましては、 とても自信を持って完全にそれを見抜くことができると今の体制の中で言うことはできな いのが本音であります。  その意味では、今回の事件は徳洲会病院も万波医師も被害者としての一面があったとも いえるのではないかと思われるわけであります。しかし、医師と患者との信頼関係が医療 を行う上での最も基本的な要件であることについては全く論を要しないことであるにいた しましても、医療に対する社会の考え方はこの数十年で大きく変化してきております。千 年以上続いてきたパターナリズムという考え方から、インフォームドコンセントと患者の 自己決定権を基本とするパートナーシップの医療が根づいてきているのであります。国民 の権利意識の向上は、社会の徹底した監視の中で安全と質の高い医療を求めておりまして、 行われたあらゆる医療が閉鎖された中で行われることを許さないというのが今の日本の状 況であるのは御承知のとおりであります。  このような中で、移植医療は1968年に行われた札幌での心臓移植以来徹底的にその密室 性や説明責任について批判され糾弾されてきたという歴史を持っています。このような日 本全体を巻き込んで30年にもわたる議論につながったということも、象徴的ではあります けれども移植医療のもともと持つ特殊性には、国民のだれにもわかりやすい倫理的問題を 移植医療そのものが持っていることがよく理解できるのであります。したがって、移植医 療を行う者や施設にとっては、ほかの医療に求められる以上の倫理に対する配慮が求めら れると認識をしております。  今回の事件を受けまして、日本移植学会といたしましては、専門職能団体として今回の 事件の実態の解明に全面的に協力いたしますとともに、再度このような事件が起こらない ように今までの生体臓器提供のあり方を再検討し、学会員にも周知徹底していきたいと考 えています。どうかよろしく御理解をお願い申し上げたいと思います。  以上です。 ○永井委員長  はい。ありがとうございます。それではただいまの御説明について御質問御意見等お願 いいたします。はい、山本委員どうぞ。 ○山本委員  今説明よくわかるところもありますけれども、これが徳洲会のあるいは執刀医師の本当 に特殊性だったのかというところに関して、もう少しディスカッションがなければいけな いのではないのかなと私は思います。  それは、例えばきょうの読売は20%程度が何か問題があるのではないかというアンケー トのデータが出ておりますけれども、実際には私はわかりません、わかりませんが、ここ の特殊性だったのかどうかということについて大島委員でも事務局でも結構ですけれども お答えいただけたらと思いますが、いかがでしょうか。 ○永井委員長  はい。大島委員どうぞ。 ○大島委員  あくまで報道にあらわれた事実を前提にしたお話という限った言い方にどうしてもなり ますけれども、情報としてですね。一回しかドナーには会っていないとか、それから信頼 関係がすべてであってインフォームドコンセントも書面に残す必要は認めないとか、とい うような発言内容から考えまして、移植医療だけではないと思いますけれども、ほかの一 般の医療を考えたときにでも、これは少し違うなと。  それから先生が御指摘された中に、読売の記事もきょう読ませていただきましたけれど も、移植医療をやっている中でも当然温度差があると思います。その中で非常に厳しくや っているところもあれば、ちょっと甘いのではないかというふうに御指摘を受けざるを得 ないような施設が絶対にないとはこれは自信を持って言うことはできません。しかし、少 なくとも徳洲会病院で今回出てきた内容を見ますと、これはちょっと違うのではないかと いうのが率直な感想であります。 ○永井委員長  山本委員が御心配なさるのはほかでも起こり得るのではないかと。特に個人のドナーの アイデンティフィケーションの問題ですね。その辺はほかは大丈夫なのかという御心配も おありなのではないかと思うのですが。  藤村委員どうぞ。 ○藤村委員  宇和島の例でちょっとお尋ねしたいのですが、提供者とレシピエントの血液型とかHL Aというのですか、リンパ球というのはまず合わなければ移植はできないと私は素人なが らに思っているのですが、その点は偶然にも合っていたのですか。今回の場合は。 ○永井委員長  はい。原口室長。 ○原口室長  私から。これも報道の範囲ということになりますけれども、当初は先ほど逮捕されたお 二人の間での提供ができないかということを考えた、それがだめだったので別の人に声を かけたという経緯があり、そしてこの人の場合には提供ができたのだという形だったよう にされておりますので、その点は大丈夫だったということです。 ○永井委員長  はい、大島委員。 ○大島委員   藤村委員の御質問に対してですけれども、昔と随分医療技術が進歩していまして、した がって昔は血液型が合わなければ移植の対象にならなかったとかこれが常識であったので すが、現在ではHLAが合わなくても血液型が合わなくても移植を行っていい成績を得る というだけの医療技術が進歩してきているという医療の背景があります。 ○藤村委員  移植技術の進歩とは具体的にどのようなことでしょうか。それでも、血液型は合う方が よりいいわけですね。 ○大島委員  それはもちろんです。  あまねくというところまでは多分まだ行っていないと思いますが、非常に多くの病院で 血液型が不一致の状態での移植というのが今進みつつあるという御理解が正しいのではな いかと思います。 ○永井委員長  はい。大久保委員どうぞ。 ○大久保委員  先ほど山本先生のお話があった、その20%の記事はちょっと読んでいないのですけれど も、今回特に徳洲会病院というか万波先生が特殊だった、ある意味で特殊で片づけていい 問題ではないのですけれども、かなり特殊だと思うのは、基本的に日本の今の移植の施設 の中で非血縁者というか全く血縁関係のない、姻族を含めて血縁関係がない方の移植とい うのはほとんど夫婦間移植しか認められていませんので、それ以外に移植するところの施 設は、万波先生のところはされますけれども、ほとんどないのが現状なのです。これはほ かの新聞記者の方たちにいろいろ質問を受けたのですけれども、私の知っている限りはほ とんど余りなくて。  ですから、もちろん同じ血液のつながっている血族の間でお金のやりとりがあることを 防ぐとかという話になったらまた別ですけれども、いわゆる全くの赤の他人から売買を目 的のために提供されて移植を受けられるという現状は、今の日本の中ではほとんど難しい というふうに思っています。ある意味ではかなり、いわゆる海外における臓器売買と今回 の臓器売買とかなり内容も違いますので、もちろんこれをどういうふうにしなければいけ ないかと考えなければいけないけれども、今これが日本でもどこでもこんなことが行われ ているというふうにはちょっと解釈は私たちはとっていませんし、ないと思っています。  問題はだからきのうですか、民主党と社民党でこれ法律でどうのこうのという話も出て いますけれども、それを提出するとかいう話も出ていますけれども、やはり専門家の先生 方を入れた中でしっかりとやはり今後の問題も考えていかないといけないし、この委員会 の中で生体移植についてどうすればいいかというのを、もちろんこの委員会のまた別に小 委員会みたいなのをつくってもいいですけれども議論をして、やはりこの中でしっかりと 厚生労働省の中のガイドラインとしてまず早急に決めていくということが大事ではないか と思っています。  私ちょっと厚生労働省の方にちょっと伺いたいのですけれども、医師免許というのは取 り消しだとかもしくは停止とかというのは、厚生労働省の管轄なのでしょうか。 ○原口室長  御指摘のとおり厚生労働省の医政局の方で担当する業務でございます。 ○大久保委員  ということは、その中に罰則規定、いわゆる法律とは別に医師免許の停止だとかそれか ら剥奪というか、そういうことも含めた罰則をこの中で、厚生労働省で決めれば、かなり のこういった問題に対する抑止にはなるのではないかというふうに思っています。 ○永井委員長  はい。山本委員。 ○山本委員  我々ドナーサイドからこの事件というのはもう既にいろいろ、我々は脳死の患者さんと いうのは必ず決めごとがあって、ドナーカードを持っているかどうかというのを聞きます と必ずこの事件のことを家族は言うのです。だから、こういうことで、また脳死下からの 移植が非常に下がるあるいはモチベーションが下がってくることをとても心配するわけで ありまして、今のうちにこういうところからいろいろなものを発信して、この事件という のは本当に特殊なのだよということでも何でもいいと思いますけれども発信していかない ととてもこれからまた難しくなる局面が当然考えられると思いますので、そういうところ をぜひ事務局もあるいは移植学会そのものもお考えいただかないといけないのではないか というふうにはつくづく思っております。 ○永井委員長  はい。あと今後の取り組みとして、学会としてはどういう予定になっておられるでしょ うか。 ○大島委員  先ほどお話ししましたように、特別委員会で出した課題の具体的な対応の策を今つくっ ているところでして、これを今月いっぱいには具体的な形にいたしまして、来月にはいろ いろな形でそれを表に出しあるいは学会員に周知徹底していくという方向で今のところ考 えています。 ○永井委員長  厚労省のガイドラインに関してはいかがでしょうか。 ○原口室長  私どもの方で厚生労働省の指針を見直す件につきましても、学会の検討状況を見ながら こちらの方で中身の整理をして、同じようなペースでやっていきたいと思っております。 ○永井委員長  学会と連絡をとりながらということでよろしいですね。そのときにどういうところがポ イントになりそうなのか、まだ検討中かもしれませんが、いかがでしょうか。 ○大島委員  最も大きな点は、本人の自由な意思によって臓器の提供という決定が行われたかどうか という確認の部分と、それから意図して初めからだまそうと思ってくる方たちがいろいろ な作為を持ってくると思うのですけれども、その作為の中で幾つかの問題が多分あると思 いますが、例えば本当に本人であるかどうかという基本的な部分も含めて、あるいは結婚 しているという場合に偽装結婚のようなものであるとかというような、移植をとにかく行 うためにごまかすというような作為を行ってくる場合にどうチェックできるかという点が 最も大きな、今回の件に関しては最も大きなことだろうというふうに考えています。しか し、どこまでそれが我々の医療者レベルでできるのかということについては、一方で非常 に大きな限界と危惧を感じているのも事実です。 ○永井委員長  確かに個人情報の問題とも関係が出てくるだろうと思うのですね。家族の中で親子関係 の確認みたいなところまで踏み込まざるを得ない場合もあるかもしれないですね。  厚労省の指針についていかがでしょうか。やはりそういうところを問題にしようという ことでしょうか。 ○原口室長  どうした点が問題になってこようかということを、実は先ほどの資料3−1のIIのとこ ろで並べたつもりでございます。先ほど御説明したとおりで、何よりまず財産上の利益の 授受ということで、これは可能な限り配慮されなければいけないと。  それから親族関係の確認がなかったという点、それから、倫理審査委員会ないしは複数 によるチェックというようなこと、そしてインフォームドコンセントの問題と、ここのと ころはそもそも診療報酬上の基準の問題かも現在であるということでございますが、まず は今回の事件に関しまして、こうしたところが問題点であろうというふうに見ています。 ○永井委員長   はい、町野委員どうぞ。 ○町野委員  かなりいろいろな問題があると思うのですけれども、この事件で問題だったのは一つは 臓器の売買が行われたということは言うまでもないことで、しかし、この問題と自由意思 による提供の問題とは私は直接の関係はないと思います。これはいずれ議論しなければい けない問題ですけれども、ここの問題ではないです。もう一つは、非親族間の移植は行わ れたという、これは結果的にですけれども、それが第二の問題です。第三の問題は、これ らの点の確認手続きといいますか、そのやり方についてかなりずさんな点があったと、そ の三つが問題だろうと思います。  だから、この問題への対応から始まるわけだろうと思いますけれども、考えてみますと 生体移植の問題については完全に今までは医療界のそれに任されていて、それでいいとい う考え方だったわけですね。しかし、それはそれで私はいいだろうと思うのですけれども、 ただ問題は、生体移植の問題について正面から議論がされなかったということです。  したがって、これへの対応をどうしたらいいかということが問題で、一つは厚労省の方 からの御提案のように臓器移植マニュアルを今度見直すということなのですが、これもか なり私はちょっと、もちろんこの関係で対応できるかどうかというのはまた別のマニュア ルをつくらなくてはいけないのではないかという感じがします。といいますのは、表題か ら見ればおわかりのとおり、臓器移植法の運用についてのマニュアルなのでございまして、 生体移植については臓器移植法は規定していないのです。もちろん臓器の売買については 引っかかってまいりますけれども、そのことについてはほとんど考えられていないもので あった。そのために、組織だとか臓器移植法に定義する臓器に係らない問題については従 来のままというぐあいに完全にオープンにされておりまして、ほとんど議論がされていな い。  ですから、こちらの問題でもちろん対応されることは考えられるわけですけれども、今 まで一回も議論されていなかったわけですから、こちらでやれば法律をつくるのに比べて かなり楽だということは私は言えないだろうというぐあいに思います。議論はやはり基本 的な問題に入っていかなければいけないだろうというぐあいに思います。  それで、さらに考えてみますと、いろいろな今まではオープンといいますか、ほとんど そのままにしておいて大体うまくおさまってきたと皆考えていたわけですけれども、やは り基本的に議論しなければいけない問題というのが出てきているわけです。臓器移植の問 題に限らずなのですけれども、臓器移植の問題についても海外渡航の移植はオーケーなの に何で国内ではやってはいかんかという基本的な問題があったり、それから、代理懐胎の 問題、代理母の問題というのもああいうぐあいに問題になっておりますから、当然いけな いものだというぐあいに医療者の方は考えておられたと思うのですけれども、実はかなり 違う考えの人がいるということなのですね。それですから、今まであったことをそのまま にほうっておいて、ただ何か議論できるという問題では私はないだろうというぐあいに思 います。  今回あらわれた問題というのは、だからこういうことがあるから法律をつくれという議 論をする新聞もありますけれども、私はそれは理由がないだろうと思います。今回の問題 というのは、一応法律の方では臓器の売買を禁止しておりますからこれで処罰されている わけですから、その点は問題がないわけです。それで倫理指針の方も基本的にこういうも のを禁止しているわけですから、そしてお医者さんとしてもそのことのちょっとチェック が甘かったというだけでこれを守ろうという意識を持っているわけですから、それ自体は 問題がないですね。  やはり問題は、第二の、非親族間の生体臓器移植が行われたときについて、これは倫理 指針で対応ということになっていますから、法律ではございませんから、もしこれを知っ ていてやったとしても恐らくこれは罰則はかかりませんし、捜査ということもこれは入っ てこない。売買が入ったから今回初めてかかったということなのです。それで構わないか という問題があると、このように思います。 ○永井委員長  原口室長。 ○原口室長   これからのここの場でどのように議論をさせていただくかということでございます。も う少し議論をいただいて最後におまとめいただくということに、とりあえずおまとめいた だくということだとは思っておりますけれども、今御指摘いただきました中で、まずルー ルを考えなければいけないということと、それから決定の方法を考えなければいけないと いうことと、まずそんな二段の論点もあるよということを御指摘いただいたのではなかろ うかというふうに思っております。この点は私どもも認識をしております。  ただ、一つにはまずどんな形でのルールをつくるのか。中身の方ですね。これはこれで やはり議論させていただかなければいけない。もう一つには、基本的なところから議論し た方がいいという御指摘がその際にございまして、そのとおりでもあろうと思いますし、 他方でまずは緊急行うべき議論ということもさせていただく必要があるのかな、それをや らせていただいた場合には、さらにそれは緊急のものであったとしたならば、今後どうい うふうにさらにそれを腰を据えてやるのかと、こういうことがあるのかなという気がいた しておりまして、ちょっと先走りかもしれませんが、そのように受けとめているというこ とを答えさせていただきたいと思います。 ○永井委員長  はい。松田委員どうぞ。 ○松田委員  今大久保委員から、また山本委員からもお話がありましたけれども、この一事件といい ますかレシピエントの方がかなりいろいろな意味で移植を受ける資質において大きな問題 だったわけで、それが発端だと思うのですが、これはその背景には今御議論ありましたけ れども、一般の社会の人は臓器移植法ということの文面までもちろんなかなか周知してい ませんし、特にできたときには脳死のための法律であるということで、特に角腎法はその まま継続するというようなこともございまして、やはり若干の混乱は不徹底さによるとい うのはやはりあったと思うのですね。  それで、私も移植学会の関係ですが、大島委員おっしゃったように、学会としてはきち んと声明を出してというか倫理指針も出しているわけで、ですから今回これをもう一度、 私も法律をつくって云々ということではなしに、学会としてはより徹底するということで いいのではないか。行政がそれにあわせて非血縁の場合には少なくともというか書面を確 認するとか、倫理委員会をとにかくきちんとやりなさいということの警鐘ですね。これだ け話題になっていますので移植側もというか実際これから受けようとしている側も認識を していると思うので、最低限といいますか有効かつ最短距離で学会とあわせて通達を出す、 その辺でまずおさめていただきたいと思います。移植医療に携わっている者としては感じ ますのは、こういうことでまた新たに法律とかいろいろなことになると、それこそ移植医 療全体への非常に不信感とかいうことで、これだけ低迷している移植医療をまたこれが向 かい風になるということを大変気にしているので、こういうことを申し上げます。 ○永井委員長  はい。相川委員どうぞ。 ○相川委員  先ほどの町野委員の御発言ですが、私も基本的には町野委員のスタンスに賛成です。  今原口室長からお話がありましたけれども、当面このようなことが起きないように緊急 措置として何かをするという必要はあるものの、やはり生体臓器移植に関する基本的な議 論というのは、脳死のときはいろいろしているものの、尽くされていないと思います。ま た、肝移植に関しても、この委員会で町野先生、私も多少違う意見も持っていたこともあ りましたけれども、それもそのときの各論的なことで終わっているのだと思います。  そのようなことから含めますと、議題の順序は緊急的な防止策というものを提言しつつ も、それだけで終わらないでやはり生体臓器移植に関してもしっかり議論をするというこ とが大事かと思います。そのときにですけれども、こういうことが起こりますと、こうい うふうにするのはやめようと、どんどんどんどん厳しくなっていくという、これはやむを 得ないのかもしれませんけれども、一方には、山本委員もおっしゃいましたけれども、現 在の我が国における腎移植の医療が患者さんたちが希望するレベルに追いついていないと いう医療状態、そのようなものの基盤の上に立って議論をしていくべきだと私は思ってお ります。その議論に入ったとき私はそのことを改めて申し上げたいと思います。  もう一つここで申し上げるのは、今回の事件に関しましての報道を見ていますと、一部 国外での臓器売買に絡むような報道も関連記事としてかなり載っていて、国民の方々もそ のことを再認識したのではないかと思います。特にレシピエントも逮捕され、レシピエン トが本当にお金を払ったかどうかはわからない。この女性が払ったかもしれないし、レシ ピエントが知っていたかどうかわかりませんけれども、いずれにせよ逮捕されているので すよね。  海外でする場合にレシピエントは手術料の中に提供者への対価が入っていると、いるか いないかということを確認せずにやられているケースもあり得る。そのような場合には海 外でやった場合にも法律上処罰されない。  しかしながら私は、国外でやろうが国内でやろうが、倫理的問題としては全く同じこと だと思うのですね。特に気になるのは、このようなことで、安易に、では国外でやってこ ようというようなことがふえることもやはり日本の移植医療にとっては大きなマイナスで すし、また、それを受ける国外の医療機関あるいは国外のドナーにとってもマイナスのこ とだと思っておりますので、その辺も含めて基本的な議論をする機会をぜひ設けていただ きたいと思っております。 ○大久保委員   そうするとフィリピンではほとんど売買が多いわけですけれども、フィリピンに行って 結局対価を払っているわけですけれども、それが何なのか証明された場合はその人も処分 されるということですね。でも捜査をしたことはほとんどないですね。 ○矢野補佐  そこは当局に確認しないとということですけれども、実態として売買ということが認め られれば、それはこの臓器移植法の売買禁止規定の罰則が適用されるという制度になって おります。 ○町野委員  済みません。何条ですか。 ○矢野補佐  11条の罰則が20条にございまして、20条の2項で刑法の、国民の国外犯の規定に従う としております。 ○町野委員  これ、国民の国外犯ですよね。フィリピンの人がやったときは適用がないのですよね。 だからすべての国外犯が処罰されるわけではないのですよね。日本の人が国外で行なった 行為についてはこの法律の適用があって処罰できる。だから、国民の国外犯の処罰規定は ありますけれども、全部について国外の処罰規定があるわけではない。 ○大久保委員  日本人が向こうで受けて、向こうで要するに臓器を受けてその対価を払って日本に帰っ てきたとき、その人は取り締まりの対象になるのですか。 ○町野委員  なり得ます。 ○大久保委員  向こうの人は処罰の対象、それは当然ですね。海外ですね。フィリピン人が対象になら ない。 ○町野委員  当然ということではないのですけれども、この法律はそうなっているのですね。 ○永井委員長  いろいろ議論がおありだと思いますけれども、そう時間も間も置けないということです ね。検討を急ぐ必要があろうかと思いますが、今後この委員会と学会と連携して、まずは 厚労省の指針の改訂を視野に入れて検討していくと、そういうことでよろしいでしょうか。 はい。  では大島委員どうぞ。 ○大島委員  生体臓器提供、生体臓器移植について町野先生からきちんとしたというか鋭い指摘があ って、私も非常に同意するところが多いのですが、これは移植学会を代表してというより は私個人の意見というふうに受け取っていただきたいのですが、移植医としましては二つ 大きな役割があるというふうに私自身は考えていまして、一つは移植医療そのものを進歩 させていく、成績を向上させていく、新しい技術を開発していくという役割と、今ある技 術を駆使して、移植を必要としている方たちにきちんとした移植医療を提供していくと、 そのためには何とか移植医療の技術水準を向上させ推進していくという役割も同時にある と考えています。  ところが、医療技術が進みますと、先ほど藤村委員の方からも御質問がありましたけれ ども、昔できなかったことが今はできる。昔非常に成績が悪かったのが今非常に成績がよ くなっているということが現実でして、一生懸命そういう方向に向かって努力をして、昔 できなかったような間柄での移植でも成功させていくというような方向に向かっていくわ けです。これを生体臓器という点で見てみますと、昔は親子関係あるいはきょうだいだけ だったのが、そのうちに非血縁、そして血液型も合わなくてもいいというふうにどんどん んどんどん広がっていって、しかも成績も非常にいい状況になっている。  何が言いたいかといいますと、我々医療をやっている専門職能団体としては、適応につ いてこのように変わりました、適応がこれほど広がりました。こんなにいい成績につなが りましたということをやるわけです。ところが、こんなにいい成績に移植の適応が広がり ましたので、同時にドナーの対象もこのように広げることができます、ということになる かというとこれは全く違う話だろうと思います。  全く違う話だろうというふうに思うのですが、先ほど御指摘がありましたように、これ が国民的な議論にも全く社会の中で議論になっていないわけです。したがって、私どもが 移植学会の中で倫理指針をつくる、もちろん倫理指針といっても移植学会の会員だけでは なくて町野先生にも御参加いただいて、外部の方にも御参加いただいて倫理指針をつくっ て、その中で生体臓器移植の範囲等についても言及をしているわけですけれども、果たし てそういう決め方でいいのかどうかということについては、やはり一度きちんとした議論 をしておく必要があるのではないかというのが私の個人的な考えです。  したがって、そういう意味では、町野先生の言われたことと少し違うかもわかりません けれども、片一方で今起こっている問題をどうするのかということも重要でして、そのこ とに対して当面とにかくこれだけは押さえていこうということと同時に、そもそも論とい うのもやはり必要ではないかというふうに考えています。 ○永井委員長  よろしいでしょうか。そういうことでこの委員会で少し深く広く検討していくというこ とかと思います。では、この問題はここまでにいたしたいと思います。  最後に報告事項に移りたいと思います。事務局より平成19年度移植対策関係予算概算要 求概要が用意されておりますので、御説明をお願いいたします。 ○原口室長  私から御説明させていただきますが、先ほどの議論であと2点ほど申し忘れましたこと を申し上げますと、一点は先ほど医師の資格に係る御指摘がございました。これはまた医 政局の方で担当する審議会を持ってございますので、そうしたことについてはそういう審 議会の御担当があろうというふうに思いますので申し述べておきます。  二点目でございますが、早急に検討まずは当面のこと、当面と申しますか、今起こって いることということでの対処がまずは必要ということで検討を急がせていただきますので、 その際各委員の方に、あるいは技術的な点などを含めましてこれから個別に御照会をさせ ていただいて検討させていただくということもあろうと思います。随時御連絡をとらせて いただくこともあろうと思いますので、その点ひとつよろしくお願いしたいと思います。  ではその他の議事に関しまして、資料4の御説明をさせていただきます。来年度の予算 の概算要求の概要ということでございまして、移植関係のものを掲げておりますうちの、 1の臓器移植対策の関係、この場で毎年御報告しております。  簡潔に申し上げてまいりますが、まずは(1)の日本臓器移植ネットワーク、社団法人 に対する事業費の中で、院内コーディネーターに対する再研修の経費あるいはコーディネ ーターの普及啓発の必要性がさらに高まっている中での増員の要求。それから、提供者の 御遺族の方に対する配慮をやっていく必要はないかということでの、催しの開催の経費。 それから、現在ドナーになるという意思表示を保険証に書くことができるような取り組み が動いております中で、意思表示の中身が見えないようにするために普段はカバーを張っ ておくような、そんなものもあわせて啓発しようとしてつくってはどうか。それから、臓 器提供の意思について登録するシステム、これは今年度来の事業でございますが、その経 費の組みかえといったものを要求しております。  そのほか、施設整備関係で、従来どおりのアイバンク関係の施設に加えまして、ヒト組 織バンク、骨バンクですとか皮膚のバンクに関しましての整備費の費用というのは新たに 要求をしていると。そうした、あと腎移植施設それから白血球型の検査センター整備費、 従来からの制度としてございますが、この制度に肝移植の関係の施設に対しての補助を加 えるといったことを要求しておりますので、御報告をさせていただきます。 ○永井委員長  よろしいでしょうか。この中のドナーメモリアルというのは、具体的にどういうことを 考えていらっしゃいますか。 ○原口室長  ドナーの御遺族の方に対する、ここはもちろん死体移植の関係でのネットワーク、その 関係の事業でございますので、死体移植を行われたドナーの遺族の方々に対しまして、社 会として謝意を示していく必要性があるのではないかということでございまして、国によ りましてはこういうドナーの遺族の方に対して大変社会全体で謝意を示すような機会を持 とうということをかなり大がかりにやられる例もあるというふうにお伺いしておりまして、 そうしたこともやっていけないだろうかということでの要求を行っているということでご ざいます。 ○永井委員長  よろしいでしょうか。 ○松田委員  ちょっと質問。臓器移植コーディネーターの増員、院内コーディネーターを含めて大変 いい方向だと思いますけれども、臓器移植コーディネーターの増員というのは、いわゆる 中央のネットワークに所属する方が主なのか、都道府県におられる方も含めてということ なのでしょうか。やはりこれからの臓器移植の普及という意味ではコーディネーターの方 が本当に大事だというのは皆さん認識しているところなのですか。 ○原口室長  ここで要求しておりますのは、国と申しますか日本臓器移植ネットワークの方のコーデ ィネーターの経費でございます。これは本部のほか地方のブロック単位のところを含めて の経費ということになります。都道府県のコーディネーターに関しましては、一般財源に より措置するという形をとられておりますもので、私どもからの要求には出てこない形に なります。 ○永井委員長  はい。大久保委員。 ○大久保委員  恐らく臓器移植対策室の方々いろいろ御苦労されていると思うので、拝見して今度のド ナーメモリアル開催経費ということ、これは以前からずっとお願いしてきたことなので非 常にいいことだと思うのですけれども、今回この事件があって実際にこの事件の背景とい うのは、基本的に先ほどから何度も出ていますけれども、日本における腎移植が余りにも 少ないことが一番大きな原因だと思うのです。  今透析されている方26万人もう超えています。実はこの人の医療費だけが年間で1兆2 千億から1兆3千億円ぐらいかかる。これをもっともっと移植をふやして減らさなければ いけないというふうに思っているのですけれども、それに比べてやはり本当に少ない予算 だなと私はつくづく、それは対策室の責任じゃないのかもしれないけれども、日本の国全 体で考えなければいけない問題かもしれませんけれども、やはり海外から考えるとアメリ カとほぼ同じぐらいの数の透析者の数、それからヨーロッパ全体とほとんど同じような数 の透析者が日本にいるという。もちろん日本の透析力は世界一すばらしいのですけれども、 ここで何とかしなければいけないというのはもう日本の国における緊急課題だと思うので す。  その中においてやはり一般の方に、先ほどから出ていますけれども、本当に情報が届い ていないので、一般の方たちに臓器移植についての理解を深めるというのは、本当にこの 費用は少な過ぎるなとつくづく感じていますので、大変でしょうけれども私たちもこれか らも要求していきたいと思いますけれども、ぜひもう少し何とかこの日本の国内において やはり移植をもっともっと進めるような、予算がないと実際にお金がなければできません ので、その辺も含めて国全体でやはり今後日本の医療全体の中における透析、移植をどう するかということをぜひ厚生労働省として要求していっていただきたいと思います。 ○永井委員長  よろしいでしょうか。よろしければ最後に次回の日程について事務局からお願いいたし ます。 ○矢野補佐  次回の日程につきましては、各委員の日程を調整させていただきまして、決まり次第文 書で御連絡をさせていただきます。本日は指針の改定について早急に議論を進めるべきと いうお話もいただきましたので、日程の確保に御協力いただければと思います。 ○永井委員長  よろしいでしょうか。それでは本日の委員会を終わらせていただきます。どうもありが とうございました。 (終了)  照会先:健康局臓器移植対策室 丹藤、矢野 内 線:2362、2366