06/10/11 第1回 科学技術・学術審議会生命倫理・安全部会 疫学指針の見直しに関する専門委員会 厚生科学審議会科学技術部会 疫学研究指針の見直しに関する専門委員会議事録 第1回   科学技術・学術審議会生命倫理・安全部会疫学指針の見直しに関する専門委員会   厚生科学審議会科学技術部会疫学研究指針の見直しに関する専門委員会議事次第 ○ 日  時  平成18年10月11日(水) 14:00〜16:00 ○ 場  所  三田共用会議所 大会議室A〜B ○ 出 席 者    【委 員】 矢崎座長        川村委員 新保委員 祖父江委員 中村委員 永井委員         西田委員 丸山委員 南委員 森崎委員    【事務局】 文部科学省 長野安全対策官 二階堂専門官         厚生労働省 藤井厚生科学課長 林研究企画官 吉川課長補佐 ○ 議  題(1)疫学研究に関する倫理指針の見直しについて(2)その他 ○ 配布資料 資料1-1 疫学指針の見直しに関する専門委員会の設置について 資料1-2 生命倫理・安全部会疫学指針の見直しに関する専門委員会委員名簿 資料2-1 疫学研究指針の見直しに関する専門委員会の設置について 資料2-2 科学技術部会疫学研究指針の見直しに関する専門委員会委員名簿 資料3-1 疫学研究に関する倫理指針(平成16年文部科学省・厚生労働省告示第1号) 資料3-2 「疫学研究に関する倫理指針」におけるインフォームド・コンセント等の具体的方法について 資料3-3 「疫学研究に関する倫理指針」とがん登録事業の取扱いについて 資料3-4 「疫学研究に関する倫理指針」についてのQ&A 資 料 4 疫学研究指針の見直しにあたり検討すべき事項(案) 資 料 5 今後の進め方(案)  ○林研究企画官  永井委員がまだのようですが、時間になりましたので、開始いたします。まず傍聴 の皆さまには、傍聴に当たり、すでにお配りしている注意事項をお守りいただきます ようお願いいたします。ただいまから、第1回科学技術・学術審議会生命倫理・安全 部会疫学指針の見直しに関する専門委員会及び厚生科学審議会科学技術部会疫学研究 指針の見直しに関する専門委員会を開催いたします。本日の委員会は、文部科学省の 科学技術・学術審議会生命倫理・安全部会疫学指針の見直しに関する専門委員会と厚 生労働省の厚生科学審議会科学技術部会疫学研究指針の見直しに関する専門委員会、 2つの専門委員会の合同の開催となっております。  まずはじめに、事務局から委員のご紹介をいたします。50音順にお名前を読み上げ させていただきます。京都大学保健管理センター教授の川村孝委員です。国立国際医 療センター研究所国際臨床研究センター医療情報解析研究部長の新保卓郎委員です。 国立がんセンターがん対策情報センターがん情報・統計部長の祖父江友孝委員です。 自治医科大学教授の中村好一委員です。永井良三委員はまだお見えになっておりませ んので、墨田区保健所長の西田みちよ委員です。神戸大学大学院法学研究科教授の丸 山英二委員です。讀賣新聞社編集局解説部次長の南砂委員です。国立循環器病センタ ー研究所バイオサイエンス部長の森崎隆幸委員です。独立行政法人国立病院機構理事 長の矢崎義雄委員です。なお、本日は社団法人日本医師会常任理事の飯沼雅朗委員、 京都大学公共施策大学院教授の位田隆一委員、上智大学大学院法学研究科教授の小幡 純子委員、東北大学大学院医学系研究科教授の辻一郎委員、山梨大学大学院医学工学 総合研究部教授の山形然太朗委員からはご欠席の連絡をいただいております。  続いて事務局側のご紹介をいたします。厚生労働省厚生科学課長の藤井です。同じ く厚生科学課の課長補佐の吉川です。文部科学省生命倫理・安全対策室の長野安全対 策官です。同じく生命倫理・安全対策室の二階堂専門官です。最後になりましたが、 私は厚生労働省厚生科学課研究企画官の林と申します。よろしくお願いいたします。 それでは事務局を代表して、藤井厚生科学課長から一言ご挨拶申し上げます。 ○藤井厚生科学課長  先ほど前段のところで申し上げましたように、今回は文部科学省と厚生労働省の両 省合同の委員会ですので、両省を代表して私から一言ご挨拶させていただきます。ま ず大変お忙しいところを委員のご承諾をいただき、また本日ご出席いただきましたこ とに改めてお礼と感謝を申し上げたいと思います。この疫学指針は平成14年に策定 されましたが、その際にも今回お集まりいただいている何人かの委員には、ご参画を いただき策定をしましたので、今回の検討は継続性を失わないような形で、ご検討い ただけるのではないかと思っております。  疫学研究については、いろいろ健康面に関する科学的な分析の手法の1つとして、 学問的にも大変重要だと思っておりますし、また昨今は行政を進めるにしても、科学 的根拠が必要だと言われておりますから、そういう面でも行政の新たな施策の立案、 企画、評価にとっても大変重要なものだと思っております。平成14年に指針を策定 いただき4年余りが過ぎましたが、その間いろいろ関連する状況の変化が生まれてき たのではないかと思います。1つはその後、臨床研究指針が策定され、一昨年は個人 情報保護法が施行されました。その他IRB関係の規制についても、国際的な動き等々 もあったと思います。そういう新たな状況も踏まえ、平成14年策定後5年を目処に 見直すという時期が来ている中で、ご検討をお願いしております。実際に使っていた だいている先生方から問題点、現在の指針について多くのご指摘をいただいています ので、そういう点もご紹介しながら、ご検討いただきたいと思います。  この指針は我が国の疫学研究を円滑に進めるための根幹となるものでもありますの で、研究を進めるという観点はもちろんですが、もう1つ倫理の面、そういうものの バランスを取っていただき、そして国際的なスタンダードにも合致するような見直し を是非お願いしたいと思います。来年6月ということで、時期が切られている中での 短期間の論議となりますが、私どもとしても先生方のいろいろなご指摘を踏まえ、準 備はさせていただきますので、十分に論議を尽していただきたい。そして多くの方に 納得いただけるような指針を作っていただくことを念願しております。どうぞよろし くお願いいたします。 ○林研究企画官  いま永井委員がお見えになりましたので、事務局からご紹介いたします。東京大学 医学部附属病院医学系研究科教授の永井良三委員です。  疫学指針は文部科学省、厚生労働省の共同の告示となっています。指針策定の際に も文部科学省、厚生労働省の専門委員会の合同開催により検討を行った経緯があるこ とから、今後は別個に開催する事情が特にある場合を除き、基本的には文部科学省、 厚生労働省の専門委員会を合同で開催したいと考えています。文部科学省の生命倫 理・安全部会運営規則の第3条第3項、厚生労働省の科学技術部会運営細則第3条に 基づき、生命倫理・安全部会「疫学指針の見直しに関する専門委員会」の主査及び科 学技術部会「疫学研究指針の見直しに関する専門委員会」の委員長として、矢崎委員 が両部会長より指名されておりますことから、両専門委員会の合同開催における座長 を矢崎委員にお願いしたいと存じます。以降の議事運営については、矢崎座長よろし くお願いいたします。 ○矢崎座長  ただいま、座長として指名を受けました矢崎です。委員の皆さま方のご協力を得ま して、この見直しについて円滑に進めていきたいと思います。先ほど藤井厚生科学課 長からお話がありましたように、平成14年に文科省と厚労省での疫学研究の指針が 初めてできたわけですが、その後実際の研究者からいろいろな疑問あるいはこういう ケースはどうしたらいいかというお問合せが事務局にございますので、それを踏まえ て見直しをしていけばどうかということですが、この4年の間には、やはり我が国で の疫学研究をさらに推進する必要があるということ、また個人情報の保護という課題 が大きく浮かび上がってきました。また倫理的な視点からさらに詳しく検討する必要 もあるのではないかということもあります。さらには国際的な疫学研究が今後ますま す盛んに行われる可能性があるので、指針としてもグローバルスタンダードに合った 指針を視野に入れて、検討していきたいということですので、よろしくご議論のほど お願いしたいと思います。それではまず資料の確認をお願いします。 ○吉川課長補佐  本日の配付資料の確認をお願いします。資料1−1科学技術・学術審議会生命倫理・ 安全部会における委員の設置について、資料1−2科学技術・学術審議会疫学指針の 見直しに関する専門委員会委員名簿、資料2−1疫学研究指針の見直しに関する専門 委員会の設置について、資料2−2厚生科学審議会疫学研究指針の見直しに関する専 門委員会委員名簿、資料3−1疫学研究に関する倫理指針、資料3−2「疫学研究に 関する倫理指針」におけるインフォームド・コンセント等の具体的方法について、資 料3−3「疫学研究に関する倫理指針」とがん登録事業の取扱いについて、資料3− 4「疫学研究に関する倫理指針」についてのQ&A、資料4見直しにあたり検討すべ き事項(案)、資料5今後の進め方(案)。各委員には参考資料集として紙のファイル に綴じたものを配付しておりますので、適宜ご活用いただければと思います。資料の 落丁等がございましたら、お申し出ください。 ○矢崎座長  よろしいでしょうか。早速議事に入ります。まず第1に専門委員会の設置について、 資料に基づいて事務局からお願いします。 ○吉川課長補佐  資料1及び資料2をご覧ください。資料1−1、資料1−2は、文部科学省の科学 技術・学術審議会生命倫理・安全部会において、8月2日に疫学指針の見直しに関す る専門委員会を設置するとのご了承いただいたときの資料です。疫学研究の見直しに 関する専門委員会として、疫学的手法を用いた研究の在り方及び当該事項に係るガイ ドラインの見直し等のための専門的事項に係る調査検討を行うという趣旨で設置され ております。資料1−2は名簿です。  続いて資料2−1、資料2−2は、厚生労働省の専門委員会の設置の趣旨として、 6月9日の科学技術部会において設置のご了承いただいた際の資料です。設置の趣旨 としては、疫学研究指針について施行後5年を目途に見直しを行うという見直し規定 があるので、平成19年6月30日を目途に見直しの検討を行うということで、科学技 術部会の下に委員会を設置するものです。資料2−2については、厚生労働省の専門 委員会の名簿となっております。以上です。 ○矢崎座長  よろしいでしょうか。それでは資料3に基づいて、疫学研究に関する倫理指針につ いて説明をお願いします。 ○吉川課長補佐  資料3−1疫学研究に関する倫理指針の概要に基づき説明します。すでに疫学研究 に関する倫理指針については、委員の皆さまはご承知ですので、簡単に紹介、説明い たします。指針の目的は、個人の尊厳、人権の尊重、その他の倫理的観点、科学的観 点から疫学研究に携わるすべての関係者が遵守すべき事項を定めている。それにより 社会の理解と協力を得て、疫学研究の適正な推進が図られることを目的として策定さ れております。2として指針の適用範囲は、人の疾病の成因及び病態の解明、予防及 び治療の方法の確立を目的とする疫学研究に適用されるものです。※に書いてあると おり、例えば医療行為を伴う介入研究、疾病登録事業など「研究」に該当しないと整 理されているものは、指針の適用の対象外と整理されています。  3の内容としては、他の指針とも大体骨格的には同じで、疫学研究の科学的合理性 と倫理的妥当性の確保、個人情報の保護、インフォームド・コンセント、研究成果を 公表することが規定されています。研究機関の長の責務として、倫理審査委員会を設 置し、研究計画の許可等の決定前に、その意見を聴くことなどが規定されております。 また倫理審査委員会については、委員会の責務、委員の構成、委員の守秘義務、委員 会の議事の公開の原則等を規定しております。インフォームド・コンセントについて は、疫学研究の特性を踏まえ、介入研究、観察研究など個々の研究の内容に応じたイ ンフォームド・コンセントの在り方を策定時にご議論いただき、これはほかの指針に はないところですが、それぞれカテゴリーに分けて、どのようなインフォームド・コ ンセントをとるべきかということを規定しております。そのほかに研究開始前の人体 から採取された試料を用いる場合や、他の機関等に資料を提供する場合については、 研究対象者等から同意を受けるというようなことも規定しております。  施行については平成14年7月1日から施行していますが、一旦平成16年に個人情 報の関係のみ改正を行った経緯があります。3−1の1枚紙の後ろに指針の本文を付 けていますので、適宜ご覧いただければと思います。  資料3−2、資料3−3については平成14年6月17日付で倫理指針の施行という ことで通知を出していますが、その際に参考資料ということで通知の別添ということ で付けた資料です。インフォームド・コンセントの方法、資料3−3は疫学研究とが ん登録の整理を平成14年の指針策定の際に、委員会で整理いただきまとめたものを 出しておりますので、本日ご参考かたがた配付しております。  資料3−4のQ&Aは、厚生労働省、文部科学省のホームページ、また保健医療科 学院に疫学研究のホームページも設置しており、そちらに掲載しているものです。プ リントアウトして本日配付しております。こちらの考え方なども、このようなことで いままで解釈し、お示ししてきたものですので、適宜ご覧いただければと思います。 資料3関係の説明は以上です。 ○矢崎座長  それでは本題の疫学研究に関する倫理指針の見直しについて、議論を進めていきた いと思います。議論に入る前に、どのような点がいま問題になっているのか、論点の 洗い出しを行う必要があるかと思いますので、まずはじめにいま問題となっている論 点を資料に基づき事務局から再度説明をお願いしたいと思います。 ○吉川課長補佐  資料4の疫学研究指針の見直しにあたり検討すべき事項(案)ということで、取り あえず本日の議論の参考になるということで、事務局で叩き台という位置付けで検討 事項の案を準備しました。事務局としてはこれで十分満足だと考えておりませんので、 本日は委員の皆さまにご議論いただければと思っております。よろしくお願いいたし ます。  資料4の検討事項案は、いくつか事務局気付きの点で準備しました。1として指針 の適用範囲についてです。疫学研究指針の適用範囲は、資料3の際にご説明しました が、適用範囲になるもの、ならないものというのが指針の中で規定されていますが、 実際に現場に行くと、解釈が非常にわかりづらいというご意見も頂戴しており、疫学 指針の対象となる研究を再度確認、整理をしていく必要があるのではないかという論 点を提示いたしました。現行は、現状こうなっているということを書いています。先 ほど指針はご説明のとおり、疫学研究が対象にはなっていますが、そのうちいくつか 適用外になっているものがあるということで、適用外の解釈でどこまでが抜けるのか が、現場としては困難な状況というご意見を事務局としては受けております。その下 に検討のポイントという事項を書いておりますが、四角に囲まれているのが大項目的、 検討のポイントがやや中項目的ということとお考えいただければと思います。1つは 疫学研究と臨床研究の区分、「診療」と「研究」の区分、現状の規定がわかりづらいと いうような所をいくつか並べております。  2、3頁は論点1に関係して、指針等の関係の条文を抜き書きしておりますので、 論点をご検討の際に参考にしていただければと思います。  4頁は2番目として、多施設共同研究における倫理審査についてです。共同研究と いう複数の研究機関が研究に参加する場合に、機関ごとの対応、例えば倫理審査等を 調整するための取組の必要があるかというようなことで提示しました。現行としては、 倫理審査、基本的には各研究機関で実施をしていただくということで整理しておりま すが、多施設共同研究になると、各々研究機関において倫理審査が求められることに なると、特に多施設の研究が多い疫学研究においては、支障が生じているというよう なご意見も頂戴していますので、その仕組みをどう考えるかということになろうかと 思います。  6頁の論点3、既存資料の提供のみを行う機関等の取扱いについてです。既存資料 等の提供のみを行う者及び機関については、疫学研究指針の定義における「研究者等」 及び「研究機関」から除かれていることについて、再度整理する必要があるのではな いかという論点です。疫学研究指針の定義をご覧いただければおわかりになるかと思 いますが、この「研究者等」及び「研究機関」そこに既存資料等の提供のみを行う場 合はこれには該当しないという整理を前回の指針策定時にしております。しかしそこ は実際上の運用を見ると、全部抜いてしまうということが、運用面上いいのかどうか というような整理をもう一度確認する必要があるのではないかと考えております。例 えば実際に同意なりインフォームド・コンセントをとるというのは、実際に資料を提 供する側の者が行っているのではないかという問題点があります。また資料と言って も単なるいわゆる診療情報といった情報系の資料、それから人由来試料という種類が ありますので、そこは何か種類ごとに考える必要があるのか、ないのかということを 検討のポイントに挙げております。  9頁の論点の4番目です。国際共同研究における指針の運用の考え方についてです。 相手国に指針がない場合、相手国の指針と内容が異なっている場合に、我が国の指針 の適用の考え方について、見直す必要があるのかどうかです。現状の疫学研究指針に おいては、相手国が厳しい場合は、相手国の基準に従ってくださいという規定が細則 で設けられておりますが、例えば相手国に指針がない場合、そして相手国のほうが指 針の内容が緩い場合、そういう規定が書かれておりません。一方、ゲノム指針は、平 成16年ゲノム指針の個人情報とそのほか研究の進展に伴うような内容についても見 直しを行っており、その際にも同じような論点が提示されました。ゲノム指針では相 手国に指針がない場合、緩い場合にこの規定を整備した経緯があるので、疫学研究指 針においても同じように整備をする必要があるのかないのか、それともまたもっとほ かのやり方を考えなければいけないのかということです。10頁にゲノム指針の改定後 の規定文が書かれていますので、このような規定に疫学研究指針も考えるべきかとい うことでご参考いただければと思います。  11頁の論点5、資料の保存及び廃棄についてです。資料の保存及び廃棄に関する規 定を盛り込むべきかどうかという論点です。現行の指針は、疫学研究には資料の保存、 廃棄に関する規定は特段されておりません。一方ゲノム指針では、例えば研究計画書、 インフォームド・コンセントの説明文書に試料の保存、廃棄についての記載をするこ と及び試料を廃棄する際には匿名化するというような規定が書かれています。疫学研 究指針についても、何らかの資料に関する規定を盛り込む必要があるのかないのか、 盛り込むのであればどのような内容とすることが望ましいのかということを提示して おります。  13頁の6、指針の遵守に関する点検及び評価についてです。研究機関の長に対し、 指針の適合性に関する点検及び評価を行うことを求めるべきかどうかです。現状の疫 学研究指針においても、例えば数年にわたる場合については、研究の実施状況の報告 書を研究機関の長を通じて倫理審査委員会に提出する、疫学研究の終了後は研究機関 の長を通じ、倫理審査委員会に研究結果の概要を報告をするというようなことが規定 はされておりますが、現状としては倫理審査委員会が終わった後、実情としてどのく らい研究機関で指針の適合性、適切な運用が図られた、そういうことを把握されてい るのかどうかが、よくわからないという点もあります。例えば機関の長の責務の1つ として、そこは何らかの指針の適切な運用を担保するということで、指針の適合性へ の点検、自己評価というような仕組みを設けるべきなのか、どうなのかというような ことを提示しております。  15頁の論点の7、研究対象者の保護についてです。研究対象者(被験者)になろう かと思いますが、その補償について、疫学研究指針において、例えば人体に介入を行 うような研究、研究の目的で人体の試料を採取するような場合、これで侵襲性が伴う という場合については、健康被害に対する補償を指針の中で言及すべきかどうかとい うことです。臨床研究の指針においては、例えば計画書の記載事項、インフォームド・ コンセントの説明事項として研究に伴う補償は、どういうものがあるのかないのか。 あるとすればどういうものがあるのかというようなことを書き込むということになっ ております。疫学のほうでは、特段そういう規定はなされておりません。ただ臨床研 究と疫学研究とでは研究の性質が異なるところもありますので、そういう点はどのよ うに考えるかです。このような被験者の補償、保護ということですが、総合科学技術 会議が第3期の科学技術基本計画を策定する際にも、分野別推進戦略というものを策 定しており、その中で臨床研究の推進を1つの柱として掲げております。臨床研究の 推進の中の1つとして、被験者の保護の制度をどのように考えるかも提言されており ますので、今回疫学という少し臨床とは違いますが、指針の中で何か担保しなければ ならないのかどうかということで、1つ論点として入れております。  17頁8番目の論点、インフォームド・コンセントの電子化です。メール等の電子媒 体によるインフォームド・コンセントを認めてよいかどうかです。現状インフォーム ド・コンセントは文書で受けるという規定がありますが、それを電子化によりインフ ォームド・コンセントを受けることを認めてよいのかどうかということについて、こ れは平成16年に個人情報保護の改正の際に、こういうことの電子化は認められない のかどうか等のご意見もありましたので、今回この中に盛り込ませていただきました。  以上、8個の論点を事務局から準備しました。資料の説明は以上です。 ○矢崎座長  いま、事務局から8つの論点を洗い出してご提示いただきました。本日は初回です ので、委員の方々から、内容はともかくとして何かいままでに見直すべきだというこ とを、ご自身あるいは周囲の方からご意見をいただければ、それをこの委員会で議論 させていただきたいと思います。  いま、8つの論点を提示させていただきましたが、これにとらわれずに皆様方から 見直しの論点、あるいは検討すべきポイントがあれば、まずそこからご議論いただけ ればと思います。 ○森崎委員  最初で申し上げにくいのですけれども、前回のといいますか疫学研究指針の当初の 作成のときにも議論になり、また今回の検討すべき事項の最初にも挙がっているとこ ろですが、前回の指針作成の際にも、疫学研究指針の対象としてどのような研究が該 当するのか、ということは数回にわたってかなり議論したことを記憶しております。  特に、研究である疾患の具体的な対象について、その治療方法をどうするかという ことと、病気・疾患の性質を明らかにして、治療法を明らかにするという研究という ものが、必ずしも明確に区別できない状態で、しかしながらほかにそれを規定する指 針がないということもあって、疫学研究指針の中にほとんどのものが含まれるのでは ないかという議論があったと思います。  その後、臨床研究指針ができたこともあり、今回、その辺を明確に区別し、また区 別した指針をもって研究を行うことがいいかどうかということも議論すべきだと思う のです。最初の疫学研究指針というものは、そもそもどういう研究を対象にすべきな のか、対象を何にするかによって内容を変えるべき面があるのではないか、というこ とが現場では問題になっているのだと思います。  臨床研究指針ができましたので、そういう意味ではあるカテゴリーに入るものは、 違った視点からの指針に基づいて研究を行うことも可能にはなりますが、逆にそれを 取り除かれた疫学研究指針というものはどのようなもので、どのような指針であるべ きかということをもう一度議論すべきなのではないかと思います。  同時にこの研究指針は、既にそのときに策定されていたゲノム研究指針に該当する ものは除外するということもありますが、研究内容としてはオーバーラップする領域 があって、ゲノム解析研究を含むか含まないかということで、それにかかわる事項は、 当然のことゲノム研究指針に基づくことになるわけです。その中に含まれる疫学的な 研究側面の部分は、ゲノム研究指針の中だけで扱っていいのかということも同時にあ るのではないか、ということを感じております。その辺はどうすべきだという意見で はありませんけれども、まず初めに申し上げておきたいと思います。 ○矢崎座長  臨床研究指針、ゲノム研究指針と、この疫学研究指針の住み分けというか、その適 用範囲をいかにするかということでした。いま持ち上がっているいちばん大きな課題 でありますので、これについては時間をかけて検討させていただきます。おそらく、 委員の皆さんもその辺がいちばん関心が深いのではないかと思います。これについて は、また改めてご議論いただくこととして、ほかのご意見をいただきます。 ○川村委員  私は臨床医で、疫学を使った臨床研究もやっております。別の立場として、京都大 学の医の倫理委員会の疫学部門の責任者をしておりまして、毎日のように疫学審査を やっております。その中で、この指針は非常によくできている、ほとんどこれに準拠 して判断することができる、優れた指針だと思っておりますが、中にはこれではちょ っと埋まりきらないところ、あるいは文章としてちょっと矛盾があるところなどを感 じております。そういう点を今回整理していただければと思っております。  第1に、インフォームド・コンセントの原則が、指針3の(3)と指針7で少し矛 盾というほどではないのですけれども、「インフォームド・コンセントを個々の研究者 から受けることを原則とする」と冒頭に書いてありながら、「インフォームド・コンセ ントを受ける手続は原則として次に定めるところによる」と書いて、その中に「次の ところに研究対象者からインフォームド・コンセントを受けることを必ずしも要しな い」というのが出てきておりますので、「原則」が複数あることになるといった、文章 上の矛盾というほどではないのでしょうけれども、校正技術といいますか、文章を作 る際のちょっとした不整合があるように思います。  インフォームド・コンセントに関しては、「包括的同意」ということが問題になるか もしれません。例えば、血清を保存したりする場合に、現時点では何を調べるかわか らない、将来必要になったときに解凍して調べる、というような研究は必ずしもゲノ ムを使わなくても多々あるわけです。同意を得るときには、その内容は決まっていな いということで、包括的に同意を得ることが可能かどうかという問題があろうかと思 います。  同意については、例えば手術をするときに、併せて同意を取っていいかどうかとい う、その同意取得上の技術の問題があって、つまり臨床上の同意と、研究の同意を同 時に取ることが果たして倫理的にどうかといった問題も考えられます。  第2に「匿名化」の問題です。「匿名化」とか「連結不可能匿名化」という用語がよ く出てまいります。この場合、「連結不可能」とか、あるいは「対応表を有する」とい う文言が出てまいります。その連結表といいますか、対応表というのはどのレベルで 保有するものを連結可能というのかという問題が具体的には出てまいります。つまり 中央の研究の事務局になる主任研究者レベルで持つ場合と、各末端の医療機関で持つ ような場合もあろうかと思いますので、その辺りが明示されていないという問題があ ります。  第3は「未成年者」の問題です。未成年者については、法律で20歳未満となって おりますので、医学研究においても概ねそれが適用されるものとは思いますけれども、 しかし、現実の問題として考えると、例えば大学生は車の免許も取れますし、自立と いうか親元から離れて生活している場合が多く、独自の判断で医療を受けたり、その ほかの意志決定をしています。  その場合、研究においてはどうなのかということです。いちいち親の同意も併せて 取るということになると、手続上なかなか厄介な問題もあるということもあり、どの レベルで未成年者として、親の代諾が必要なのかということも考えていいのではない かと思います。  第4に医学研究以外の領域とのバランスということも最近考えております。本日は 南委員もおられますし、報道の方もいらっしゃるので、特に報道との関係が気になる ところです。医学研究と並んで報道も個人情報保護法の直接の対象からは外れており ます。その両者は、それぞれ公益性を錦の御旗といいますか、表に出して通常の法律 的な規制からは外れているけれども、独自のコードといいますか、倫理指針を持って いるわけです。どちらも社会のために奉仕するということで、研究なり報道なりがさ れていると思いますけれども、そういう医学研究以外の領域とのバランスも考えるこ とがままあります。  報道以外でも、一般ビジネスの領域は個人情報保護法のみで規制されることになり ます。そうすると、個人情報でありさえしなければ野放しという状態がありますので、 そういう他業種との間のバランスといいますか、バランスだけを重視させるわけでは 決してありませんけれども、やはり1人の人間としていろいろな社会的生活を送って いる以上、ほかのことが気にならないわけではないので、その辺りも検討していただ ければと思います。 ○矢崎座長  倫理の問題、個人情報保護の課題について、大変具体的にご提示いただきました。 いま、倫理の話が川村委員からありましたけれども、事務局から土井先生の研究のあ れをご紹介してくださいますか。 ○吉川課長補佐  いくつか論点を出させていただきましたが、今年度の厚生労働科学研究費補助金の 中に、厚生労働科学特別研究事業があります。その中で、保健医療科学院研究情報セ ンター長の土井先生におかれまして、疫学研究をはじめ4つの倫理指針があります。 こちらの実際の研究機関等における遵守であるとか、運用の状況について調査を行う ということです。9月に交付の決定がなされたところですので、いま調査をするべく 作業を進めている状況です。  その中で、例えば倫理審査にかかわるもの、研究機関の中で行っていただくような もの、研究者として認識をしていただくものというようにいろいろな項目を調査項目 として検討していると聞いております。近く調査票を配布できる段階にあると土井先 生からお聞きしております。したがって、この結果の取りまとめが、いまの予定です と11月中旬ぐらいに何らかのものをお示しできるのではないかという状況です。後 ほどスケジュールをご説明させていただきますが、11月中旬以降のこの委員会におい て、その調査結果に基づいて何か議論すべき論点等がありましたら、そのようなとこ ろもご報告し、またご検討いただきたいと考えております。 ○永井委員  先ほど川村委員がおっしゃられたように、ほかの領域との関係でいくつか整理しな ければいけないことがあるかという気がいたします。報道は除外になるわけですけれ ども、報道機関が研究のようなことをした場合はどうなのか。それは全く対象外なの かどうか。最近ですと、病院を受診されている方にアンケート調査をして、報道で病 院ランキングのようなことを出すことがありますけれども、ああいうのは一種の疫学 研究ではないのかと思うのです。そういうことは、一切アンタッチャブルなのかどう かということがちょっと気になります。  臨床研究と疫学研究の間には少し重なるところがあるのですが、必ずしも整合性が 取れていないところがあるかなと。例えば、インフォームド・コンセントについても、 疫学研究のほうでは緩和とか免除規定というのが、かなり厳しい内容ですけれどもそ ういうのがありますが、臨床研究のほうにはありません。ほかのガイドラインとの整 合性ということで一応目を通して、できるだけそこをマッチさせるようにする。すべ て解決できなくても、問題点は挙げておくべきではないかと思います。 ○吉川課長補佐  いま永井委員から、個人情報の保護にかかわり、いわゆる報道機関の適用除外とい うことでご意見がありました。個人情報保護法第50条に適用除外という条項があり、 その中に個人情報取扱事業者のうち、次の者について、そしてまた次の目的で行うよ うな場合については、いわゆる個人情報第4章というものについての適用除外という ことになっております。第4章は、取扱事業者の義務を規定したものです。  第50条第1項に、いわゆる報道機関(放送機関、新聞社、通信社、その他の報道 機関)が、あくまでもこれは報道の要に供する目的で個人情報を取り扱う場合という ことで限られております。第3項では、大学その他の学術研究を目的とする機関、も しくは団体又はそれに属する者。いわゆる学術研究機関が、学術研究の要に供する目 的で個人情報を使う場合について、その目的を限って適用除外と規定されているとこ ろです。 ○矢崎座長   どうなのでしょうか。 ○永井委員  個人情報の保護をどうするかということと、研究の倫理ということはかなり重なる ところもありますけれども、そうでないところもあるのではないかと思うのです。ど こかで議論できればと思います。 ○祖父江委員  私は、常日ごろ倫理指針をずっと見ている立場ではなくて、たまにといいますか、 我々の中の組織で倫理審査委員会の一部の審査をするようなときに見させていただく か、あるいは自分で研究計画書を書くときに見るといった立場です。こういう疫学研 究倫理指針の一言一句を全部正しく理解して書いている人がどれだけいるかというと 結構危ないところもあります。それは、倫理審査委員の中でも、そのようなことはお そらくあると思うのです。  文言上の整合性を緻密に検討する以前に、正しく解釈されて運用されているのかと いうところを、先ほどの特別研究での実態を把握するなり、その運用状況を把握する 中で、例えば個別の事例を取って、これは本当にそのような判断でよかったのかとい うことも含めて実際の世界でどのように運用されているのかをチェックするというこ とがまずあって、それで細かい議論があったほうがいいような気がしました。  現に、疫学に対してあまり理解のない先生方が倫理審査委員会の中に入っていると、 非常にネガティブな反応も中にはあります。その中で、これは駄目だと一旦否定され ると、同一組織内ではほかに持っていきようがないのでどうしようもなく、その研究 はもうできなくなります。その場合の不服の申立てといったこともできないのかとい うようなことを思ったりしました。 ○矢崎座長  確かにそういう問題はありますね。土井先生の調査は、倫理指針の遵守、運用の状 況の調査ですが、いま祖父江委員が言われたような問題が浮き上がってくることはあ りますか。アンケート調査ですから設問にもよりますけれども、なかなかそこまでは 出ないかもしれませんね。 ○吉川課長補佐  個々個別の事例といいますと、逆に書くのがどうかとためらわれる先生方もいらっ しゃるのではないかと思います。個別の状況をアンケート調査の中で収集できる、と いうのは限られるのではないかと思われます。設問を作ることは可能ですけれども、 実際アンケート調査でお願いした際に、どれだけそのような情報が収集できるのかと いうのはなかなか難しいと思います。 ○祖父江委員   なかなか外へ出しにくいような話もあったりしますので。 ○永井委員  このガイドラインは、丸山委員がワーキンググループ委員長で、私もワーキンググ ループに入っていたのですが、かなり時間をかけて議論しました。ほかと比較するの もなんですが、私は、全体的にはわりとよくできているガイドラインではないかと思 うのです。あとは、一体どういう問題が起こっているのかという、個別の事例をなる べく挙げていただいて、それを手がかりにしていろいろ議論するのがいいかと思うの です。 ○矢崎座長   なるべく個別の問題でも、この場で取り上げていただければ大変ありがたいです。 ○永井委員  管理者の立場から言うと、少し厳しめのほうが安心していられます。ただ、現場で 研究したい人にとっては、いろいろな不満があるとは聞いていますので、その辺の食 い違いがどういうところなのかをなるべく議論したいと思います。 ○矢崎座長  疫学研究を推進するときに、いろいろな規制の範囲内で研究が円滑に進むかという 視点も大事です。一方的な規制だけではなくて、先ほどもお話がありましたけれども、 そのバランスというところも重要な課題だと思います。指針になると、明確に書かな いといけない。先ほど川村委員がおっしゃられたように、指針として抜けているよう な点があれば、それはしっかり埋めていかなければいけないと思います。 ○丸山委員  いくつかあるのですが、例えば、一昨年12月には個人情報保護法制の施行に合わ せるための改定がなされています。そこでは結構厳しい要件が導入されていて、それ 以前の疫学研究倫理指針は、インフォームド・コンセントの点では既存資料の利用な どはかなり緩く定めているところもあるのですが、それが個人情報というものであれ ば、個人情報保護のほうで同意の要件が厳しくなっています。  また、個人情報保護の要件になりますと、研究を行う機関の長、あるいは組織とし ての責任が問われ、責任の在り方、責任の要件が二分化するというところがでてきま した。これはある程度仕方がないかと思うのですが、そのすり合わせといいますか、 総合的に調整の取れた姿でないと、研究者はどのように同意を取ったらいいかわから ないというようなところがあるかと思います。直前の個人情報保護の関係で入れられ た規定ともとからの規定との調和をどのように図っていくかというところを、いちば ん大きな問題として私は感じております。  もう1つは、先ほど森崎委員からも指摘がありましたが、疫学研究の守備範囲がわ かりにくいということがあります。例えば、カルテ研究のような場合で、臨床の先生 が自分の将来の臨床活動のためにするのであれば、疫学指針の適用外だったと思うの ですが、それを疫学者がやる場合は指針の適用を受ける、という辺りのボーダーライ ンは結構微妙なところがあります。これは、前回の指針の策定のときに、最後まで委 員会の議論ではまとまらなかったところだと思うのです。適用される人が理解しやす いような指針にできれば、というようなところを思います。 ○矢崎座長  個人情報保護法で、連結可能な匿名化のレベルをどこに置くかというのは、いま丸 山委員が言われたのと、先ほど川村委員からご指摘いただいたのとは、一部に共通点 があります。個人情報保護法の責任者と、研究者との間の責任のどこまでを研究者が 負うべきか、機関が負うべきかということです。  本日は初回ですから、ざっくばらんにお話いただきたいということですが、いまま でのお話を伺うと、1つは疫学研究指針の守備範囲、臨床研究ときっちり分けること はできないかもしれませんが、できるだけ明確にすべきではないかということ。それ から倫理、特にインフォームド・コンセントの問題で、指針には先ほど丸山委員と川 村委員からお話がありましたように、個人情報保護法によって、インフォームド・コ ンセントは作成したときといまの状況とは少し原則がずれているのではないか、とい うこともご指摘いただいたかと思います。  それから、疫学研究というのは医学以外の領域で、報道などで公益性と倫理のバラ ンスというのは今後検討していかなければいけない。あるいは、インフォームド・コ ンセントの続きで未成年の位置づけをどうするのかというご指摘もいただきました。 多くのご指摘をいただいたと思いますが、これは先ほど事務局で用意していただいた 8つの問題点の中にも入るかと思いますので、最初の指針の適用範囲というのは、い ちばん重い大変な議論を要することでもあるし、インフォームド・コンセントについ ても個人情報保護の問題でこの課題はなかなか難しいと思います。  この問題点の中で、比較的議論がスムーズに進むところから、足慣らしという意味 で議論を進めていきたいと思います。残された時間で、問題点を1つずつ検討してい きたいと思います。1番は先ほど申し上げましたように、もう少し議論が固まったり、 あるいは皆さんにもう一度考え方をまとめていただいた後で、1番の議題をもう少し 整理した上で議論していきたいと思います。  2番目の、多施設共同研究における倫理審査について、事務局から検討のポイント などを説明していただけますか。 ○吉川課長補佐  資料4の4頁です。先ほど、私から概略的に、簡単にご説明させていただきました が、もう少しこの論点について詳細にご説明させていただきます。現行として、既に 先生方も問題意識ということでご認識いただいているところですけれども、多施設共 同研究が、現行の指針ですと、特に疫学において運用上難しいという面について私ど もも相談を受けているところがあります。なんとかうまく運用できる形に、ただ一方 で倫理も担保した形で、何か新しい疫学に即した仕組みは考えられないかということ でご提案させていただきました。  現行の考え方は、実際に各研究機関に倫理審査委員会を設置することを原則として おります。倫理審査委員会が研究機関にある場合は、そこで倫理審査を行っていただ くことが原則となっております。ただ多施設の場合、例えば主たる研究機関で倫理審 査をしたものについては、分担研究機関では迅速審査ということで指針上定義をして おります。そのような、簡易な倫理審査で行っていただくことも可能な仕組みです。 ただ、それは各研究機関での倫理審査を要することには変わりはないということです。  そうしますと、各審査委員会を通さなければいけないということが非常に負担とな るということと、その話の背景として倫理審査委員会によって判断が違うということ。 いわゆる研究を一緒に行うにあたって足並みが揃わない、といった問題を抱えている ということが1つあります。  それから、資料を提供するだけの機関、各保健所、医療機関といった所に健診のデ ータを送ってくださいとお願いするにもかかわらず、送り先での倫理審査をやってい ただかなければなりませんということになると、逆にそのような煩雑な手続になると、 資料を提供するのもやや躊躇する。お願いしても、うちは参加したくないというよう なことで拒否されてしまうということも生じているやに聞いております。  いまは分担研究であっても、倫理審査委員会を通すというような前提になっており ますが、例えばの話として、主たる研究機関の中で倫理審査をやったものについては、 もう少し分担研究機関、資料を提供する機関も含めて、迅速審査以外に倫理審査を簡 略化できるような仕組みを設けるということは、果たして倫理的にも妥当だと考えら れるのかどうかということです。  分担研究の位置づけについても、主たる研究機関と同じように研究内容を分担する ということもありますが、一方で先ほど申し上げたとおり、資料だけを提供するとい う分担の研究機関もあるわけです。その分担研究機関の研究のかかわり方というのも 研究によりさまざまですので、それはどのように考えて整理すべきかということです。  検討のポイントのいちばん最初の○の2ポツ目のところで誤字がありまして、「医学 品」と書いてあるのを「医薬品」とご訂正ください。医薬品の臨床試験の実施の基準 に関する省令、いわゆるGCP省令というものがありまして、これは治験に適用され るものです。こちらについては、1つの解釈の考え方として、括弧書のように治験審 査委員会というのは、新たに行おうとする治験ごとに設置する、という解釈を示して いるところです。  例えば、研究計画ごとに、適宜対応できるといった仕組みを考えてはどうか。いま は、研究機関に倫理審査委員会があったら、そこですべて見なければいけないという ことではなく、研究計画ごとに、場合によってはどこか中央的な所に倫理審査委員会 を任せる、もしくは自分の所でやる、といった判断ができるような仕組みを設けるこ とはどうなのかということです。  検討のポイントの2番目の○で、例えばそれを外部の研究機関において倫理審査を 行うことも可能とした場合に、当該研究機関の長、それから倫理審査委員会といった 方々が、自分の研究機関でどのような研究に参加しているのか、全く何も知らないま まに資料が提供されていたり、いつの間にか分担研究ということで研究が行われてい たり、ということがあっては倫理的には非常に問題になるのかというところがありま す。それをどのように把握するような仕組みを考えるべきかどうか、というような検 討のポイントということで2点ほどお示しさせていただきました。 ○矢崎座長  多施設で研究を行う場合の課題を整理してもらいました。1つは先ほどもご議論が ありました、倫理審査委員会の決定が駄目だということになると、もう参加できなく なるというお話をいただきました。共同研究の審査委員会については、倫理審査委員 会を設置しなければいけないけれども、できない場合には共同施設で、倫理審査委員 会で包括的に審査できるということです。  疫学研究の場合は、なるべく広い範囲の施設に参加していただくという意味から、 迅速審査ということになっておりますけれども、判断のバラつきがあるからいけない という意味ではありませんけれども、中心的な施設で一括して慎重に審査して、それ でその方向で研究を行うという仕組みを考えたらどうかということです。 ○吉川課長補佐  もう少し補足させていただきます。現状で倫理審査委員会を設置してしまっている 所については、そこの倫理審査委員会を通さなければいけないことになっています。 例えば、医療機関のように、割合研究にかかわる度合が小さい所についても、うちは 倫理審査委員会を持っていますということになると、そこも通さなければならないこ とになります。倫理審査のメンバー的にも判断が難しいというような所もあり、倫理 審査委員会を持っていたらそこを通さなければいけないということではなくて、多施 設の共同研究でやるときには、うちで倫理審査委員会を持っていても、別の何とか大 学でやる論理委員会に任せたり、研究計画によってどこで審査をするのかという柔軟 性を仕組みとして設けるような道が考えられるのかどうかということです。 ○矢崎座長  倫理的に判定が難しい問題をそうしてしまうというのではなくて、実際に倫理審査 が物理的になかなかいかないような場合ですね。倫理的に問題があるということでは なくてですね。 ○吉川課長補佐   そうです。 ○永井委員  それは、A大学とB病院、C病院、D病院が併せて何か臨床疫学調査をやろうとい うときに、B病院、C病院の審査をA大学のIRBでできるかという問題ですか。ほ かの機関の状況はわからないですよね、そこまで責任が持てるかどうかと思います。 ○丸山委員  事務局から出された案ですけれども、主任研究者が所属する施設の倫理委員会がし っかりしていればよろしいのですが、私の経験でいうと、必ずしもしっかりしていな い場合もあります。先ほど祖父江委員がおっしゃった倫理指針の内容を知らないで、 適用されていることもないではなかったということがあります。  もう1つは、主任研究者が所属する施設というのは、有力な研究機関なり大学なり が多いです。そうなると案件が多いわけです。結局は、個々の研究計画に費やされる 時間が、1回の倫理委員会は2時間なり3時間なり、4時間やってもよろしいのです けれどもともかく時間が限られていて、1件あたり20〜30分でなるべく片付けたい ということになると、必ずしも中央で良い審査がなされるとは限らない。むしろ病院 の倫理委員会のほうが案件が少ないものですから、ゆっくりと研究計画書などを検討 していますと、ここもちょっとおかしいというようなところが見つかります。かける 時間によって議論の深さが反映されるところがあります。構想としては、主任研究者 が所属する機関の倫理委員会の判断に委ねて、なるべく判断を一本化するというのは うまくいきそうなのですけれども、実際はなかなか難しい場合もあるというところを わきまえておいていただければと思います。 ○森崎委員  いまのに関連いたしますが、現行の指針によると確かに倫理審査委員会があれば、 その機関が参加する場合、あるいは主任研究者として研究を行う場合にはそこで審査 をする、というのが建前というかそうなっています。丸山委員も言われましたように、 それをうまく働かせるため、あるいは中央に別途つくる場合と共通するわけですけれ ども、日本で共通の認識を持って指針をよく理解した審査委員がどれぐらいいるのだ ろうか。それだけできる機関がどれだけあるのか、ということをまず理解し、またそ れをどうやって増やすかという、この委員会の議論とは離れる大きな問題になります けれども、それを踏まえて現行に問題があるのかどうか。  特に医学指針の場合には、多くの研究機関あるいは資料提供機関がかかわる可能性 がある。その際に、先ほど丸山委員も言われましたように、大きな大学、大きな機関 が主任研究者として参画することが多い場合に、そこでいまの指針にある倫理審査委 員会を持たない施設のものを全部代行するとなると、果たして正しい判断ができるの か、その施設が資料を提供するだけにしても、どのような施設であってどう参画する のかということを十分把握できるのかということを厳密に言うと、中央の機関にとっ ては非常に負担が多いということもあろうかと思います。それをいかにして現実的に 回避するのかということが、たぶんこの指針を改定する際にできる仕組みなのかとい うことを模索する点だと思います。  私自身が所属する機関でいうと、毎月やっていて、毎月の委員会が4時間、5時間 を超えていますので、できるだけ他機関のものはなるべく受けてほしくないというこ とも私自身経験するところです。また、倫理審査委員会を持たない施設からの案件に ついては状況がよくわからなければ判断できない。迅速審査でいいという規定もあり ますけれども、やはりきちんと審査をしたいという意見も委員から出ることがありま す。  それを考えると、最初に別件でご意見をいただきましたように、1回拒否といいま すか、それに対するアゲンストのコメントが出た場合にはリカバリーできないという システムの中で、主任研究者の所で代行するというシステムだけで本当にいいのかと いうことを解決するためには、時間はかかりますけれども、共通認識を持った審査の できる方を増やす努力を、この委員会とは別個に進めると同時に、医学研究に類似し た場合には、何か別の機関あるいは施設、公的なものでもよろしいのですけれども倫 理審査会のようなものを使う手立ても模索していいのではないかと個人的には思いま す。  その際に、それが本当に適当かどうかというのは、新しくつくるものが元あるもの より、主任研究者の属する委員会よりもよくならなければ意味がありませんので、そ れができるのかどうかということを踏まえた上で、その道を残す点もこの中に含めて いいのではないかということを私自身は感じます。  その上で、先ほど事務局から提案がありました面を、認めるような形の案文をしつ つ、その内容についての確認作業ができる手立てを必ずそこに含めなければならない。 つまり、当該機関あるいは当該機関の審査委員会が、それについてきちんと把握でき、 情報も共有できるような仕掛けを作って、初めてそういうものがうまくワークするの ではないか、機能するのではないかということを感じます。 ○矢崎座長  いま森崎委員が言われたのは、中央委員会と、もう1つ実際に資料を出す側の研究 の内容を十分把握してもらいたいための仕組みを整備しないといけないのではないか というお話です。いまの中央の審査も、必ずしもそれだけでいいかどうか。主任研究 者の倫理委員会で、全体の方向性を定めて、それでいいかどうかということです。 ○新保委員  中央の倫理委員会で全体の方向性を定めるにしても、どうしてもそれぞれの施設で その研究を受けることができるのか、妥当にできるのかどうか、という判断をローカ ルのレベルでせざるを得ないと思うのです。そして、それぞれの病院で全く何もしな いで受けてしまうのは問題があるのではないかと思います。  そうなると、病院長のレベルで判断する、機関長のレベルで判断する、少なくとも 倫理委員会においての迅速審査という過程は必要なのではないかという気はいたしま す。 ○中村委員  2番の「多施設共同研究」という論点と、3番の「既存資料の提供のみを行う機関」 の論点と多少関連していると思うのです。2番の話について私はこのように理解して います。いろいろな施設で、例えばコーホート研究を行うとか、症例対象研究を行う というのが2番の論点になってくると思います。そのときのやり方について、それぞ れの施設で違ったことをやると、これは全部でまとめたときに疫学研究として成立し ない可能性があるので、できるだけ方法は統一しなければいけない。  そのためには、中心となる研究者がいる施設でまず承認を取って、その方法で全施 設同じ方向でやってください、というのが原則だと思います。そのときに、いくつか の施設で、この方法ではうちはできませんということであれば、それは参加できない という話で仕方がないような気がしております。そのときに、それぞれの施設で倫理 審査委員会を開かなければいけないかどうかということについては、それは施設の長 の判断でも構わないような気がいたします。先ほど事務局から1つの考え方として提 示があったようにです。ただ、それは倫理審査をやってはいけないという話ではない と思いますので、長の判断で、これは倫理審査にかけたほうがいいということであれ ば、当然倫理審査委員会があればそこで開く形になると思います。  これはちょっと話が違いますけれども、迅速審査について、私はうちの大学の疫学 研究の倫理審査委員長をやっております。事務局から、これは迅速審査に該当します かという問合せが月に1件ぐらいは出てきます。それについて、迅速審査でもいいけ れども、これはちょっと問題があるかもしれないから本審査にかけようか、というこ とも当然出てまいります。その辺の判断でいいのではないかと思っております。  もう1点ですが、資料提供だけというのは、例えば私どもの所でもやっております けれども、いろいろな疾患の有病率の調査、はっきり言いますと患者数です。全国で どれだけ患者がいるのかという調査について、これはあくまで医療機関からの資料の 提供をいただいているだけで既存の資料です。それは、現行の指針の11の他の機関 等の資料の利用に該当するのだろうと思っております。  これは例外規定が通常みたいになっていて、要するに匿名化して出していただけれ ば、集める側で倫理審査委員会の承認、施設の長の許可があれば構わないということ になっています。その辺のところは資料の提供だけについても、それぞれの施設で承 認を得てくださいという話になると、まず疫学研究は成立いたしません。そこまでし て資料を提供しようという医療機関はまずないと思います。そういう意味では、いま みたいな、対象者に対して何かを行うようなコーホート研究、症例対象研究のような 話と、単にデータだけ提供するという話については、きちんと峻別して考えていただ くと大変助かると思っております。 ○矢崎座長  確かに既存の資料の提供のみを行うという3番目の論点とちょっと重なった部分が あり、中村委員からご指摘をいただきました。既存の資料の提供のみというのは除い てここで議論させていただくと、いまの話では、これからやるコーホート研究などに ついて、個々の施設の倫理委員会を通すのだけれども、その機関長ないしは倫理の責 任者の判断で決定できるという考え方です。 ○中村委員   そういう仕組みにしていただきますと、話が進みやすいと思います。 ○川村委員  基本的にそういう括りでよいかと思います。この場合、どこまでを共同研究者とい うかという問題があろうかと思います。現実の問題として、例えば統計処理のみを行 うというような人が、大きな研究ではいるわけです。データセンターを担ったり、あ るいは解析主任者というような形で名前を連らねている。そういう所は、自分自身が 症例を提供するわけではないので、現実にはあまり倫理審査を受けている風がないと 思います。その人たちも研究班のメンバーには入っているわけで、受けなくてもいい のかということを感じることがあります。どこまでが審査の対象になるような共同研 究者なのかということです。  1つには、研究者には計画とか解析、つまり企画や運営の中枢にいる人たちと、そ れをサポートする人たち、さらにデータなり症例なりを提供する立場の人といろいろ な立場の共同研究者があろうと思います。いまのところ、症例を提供する所は積極的 に倫理審査をやっているようですが、主任研究者を除いて、運営を手伝ったり、特に データの解析のみを担当するような方はあまり受けていないような気がしているもの ですから、その辺りをきちんと整理しないと、受けなくていいのか、受けるべきなの かという議論が、どこでも毎回繰り返されることになると思います。  共同研究者としてどの範囲を規定するか。例えば、その行動単位に名前を連ねた所 はすべて研究者とするのか、それともその中に何かの性質として何かの条件付けをす るのかということによって変わってくるかという気もいたします。 ○矢崎座長  丸山委員は前回作られたのですが、いま2つの問題があります。1つは、倫理委員 会はすべての施設を通すのだけれども、機関長なり責任者が認定すればそれに代わる のではないかということ。それから、いまの倫理審査を通す研究者がどの範囲まで含 まれるかという2点だと思うのですがいかがですか。 ○丸山委員  川村委員のおっしゃった、共同研究者はどこまでのものをいうのかというのは、こ れまであまり議論されてこなかったです。最近になって、いろいろな問題があって、 いま先生がおっしゃいましたように統計解析なり、あるいは実際にあったことですが、 倫理的な立場から助言をするというので私の名前が入っていて、私も共同研究者の一 員なのかということが議論されたこともあったようです。その辺りの外延をどこまで にするのかというのは議論しておく必要があると思うのです。  まず、主任研究者の倫理委員会の判断にどこまで委ねるかということについては、 この疫学研究の倫理指針もそうですし、ゲノムの指針もそうなのですが、基本的にそ の研究者が所属する機関の長の許可が研究実施には必要ということです。その機関の 長の判断が基本的に重要なのです。倫理委員会の承認というのは、現実にはそれがキ ーポイントになっておりますけれども、その枠組みの中では機関の長が承認の可否を 判断する際の助言にすぎないのです。自分の所の倫理委員会にかけるか、あるいは主 任研究者の倫理委員会にかけるかというのは、その研究者が所属する機関の長の判断 に委ねざるを得ないと思うのです。  それは、いま何人かの委員が指摘されたところで、ローカルの要素もありますし、 自分の施設の研究者がどういうことをやっているか把握できていないと、やはり機関 の長は困るだろうと思います。それで、機関の長の判断になると思うのですが、その 際に研究をしたい研究者の意向と、機関の長としては自前の倫理委員会があればそれ を使いたくなるのではないかと思われるところとがありかなり難しいかと思います。  機関の長のほうが研究の性格、これは疫学研究で多施設が歩調を合わせなければな らないというようなところの認識があれば、中央の倫理委員会に任せていただけると いうこともあるかと思うのです。そこがそのようにいくかどうかという辺りは、機関 の長の判断次第ということになるのではないかと思います。  後者の問題は先ほど言いましたように、どこまでが研究者なのか。研究の実体に関 与する度合はどの程度までなのか。プロトコールの作成の委員も研究者なのか。おっ しゃった統計解析も共同研究者なのかという辺りは、私よりもむしろ疫学のあるいは 医学の専門の方で議論していただければと思います。 ○矢崎座長  1番目の課題は、疫学研究ということを十分施設で理解していただいて、その上で 機関の長の承認で、その機関での研究実施はOKであろうという方向のガイドライン で結構ですか。 ○丸山委員  いろいろな問題において、施設の長が疫学研究の特質を正しく認識してくれるかど うかがキーポイントになっていると思います。 ○矢崎座長  長が、全部を自分の所の審査委員会に下したら従来と全然変わりありません。2番 目の課題は、かかわった人はみんな研究者だと思うのです。川村委員が言われたのは、 倫理審査を通らなければならない研究者といいますか、その範囲をどこまで認めたら いいかということです。永井委員はいろいろやっておられますけれどもどうでしょう か。 ○永井委員  どうでしょうか、あまり広く取ると切りもないような気がします。実際に対象者に、 あるいはそのデータにタッチする人までが研究者でしょうか。それをサポートする人 は、また別の形なのではないかと思います。特に、倫理審査の手伝いをしたとか、そ ういう場合には研究者には入らないように思うのです。 ○矢崎座長  プロトコールを手伝ったり、マスになったデータを分析するのは、研究者として重 要な役割ですが、そこに倫理的な審査のところまで対象となる研究者になるかどうか ですね。 ○永井委員  研究の一環で、例えば住民への説明会というようなときに、積極的に出ていったよ うな場合には研究者になるかもしれません。 ○矢崎座長  個別的なデータに接触する方、あるいは研究対象者に何らかの形でコンタクトを取 るような方は、倫理的な研究者の範疇に入るのではないか。 ○中村委員  うちの大学でも、その手の相談はよく受けます。現実問題としては、現行の指針2 の適用範囲のところで私自身はうまく適用しています。解析だけ、しかも匿名化され ているデータセットを、例えば主任研究者からデータを預かって解析するものについ ては、2番の適用範囲の(3)の除外の規定「資料として既に連結不可能匿名化されてい る情報のみを用いる研究」に該当するので、したがってこの指針には該当しないから かけなくてもいいのではないか、ということで指導しております。それに個人を識別 するような情報が付いてくるときには、やはりかけておいたほうがいいのではないか ということでこちらの負担は増えますけれども、現実問題としてその辺のところで切 り分けて解決しているつもりです。これがいいのかどうかはちょっとわかりません。 ○矢崎座長   永井委員が言われたような、結果をフィードバックするような立場の方もですね。 ○中村委員   それは、かけておいたほうがいいのだと思います。 ○矢崎座長  この問題についてあとはいかがですか。最初の指針を作ったときにも、臨床研究と 疫学研究というのは本質的に違うのだ、という共通認識のコンセンサスにすごく時間 がかかりました。 ○丸山委員  専門委員会では、結局最後まで得られなかったのではないかと思うのです。その後、 年度末に厚生労働省で打合せをやりました。そのときに、用語の定義の疫学研究の細 則にある、自分の病院なり診療所なりの今後の診療のために使う研究といいますか、 データの整理などは除こうというようなのが決まったかと思うのです。それも、当時 の事務局の一言で決まったようなところがあったように私は記憶しています。 ○中村委員  いまの問題ですが、現実問題として、自分の所の診療目的でデータをまとめるとい うのは、確かに適用除外と書かれていますけれども、そういう相談を受けたときに、 それを学会で発表したりしないのか、ということを私は聞きます。学会で発表すると いうことは研究になってしまうし、論文にするということになれば、必ずいまの時代 はIRBの承認がある、ということを一言書かないと受け取ってもらえません。それ だったら、倫理審査委員会を通しておいたほうがいいのではないの、ということでう ちでは対応しています。 ○矢崎座長  自分の施設の中だけの、本当に小規模な研究から、コーホート研究みたいな大規模 な研究まで、疫学研究というのはすごい広い範囲で捉えます。学会発表などのときに は倫理委員会を通さなければいけないのは当然ですけれども、それは除外だけで片付 けないほうがいいという考え方ですね。 ○中村委員  現実問題としての私どもの考え方は、研究者が研究しやすくするのが大学の使命で あろうということです。多少負担はかかってきますけれども、審査をしてお墨付を与 えるということで、きちんと倫理審査委員会の承認を得ています、ということで天下 に公表できるようにしなさいという指導はしています。 ○森崎委員  最後のところですけれども、いまの場合はこの指針に則って審査を受けたほうがい いという助言をされるという理解ですか、それとも。考え方によっては、指針には除 外されるのですが、倫理審査の対象にしたほうがいいという助言ではないのですね。 ○中村委員  基本的に私どもの倫理審査委員会は、国の指針に研究計画が適合しているかどうか を審査する、というのを原則にしておりますので、適用しないアイテムであっても、 内容的にはこの指針に従って計画を立ててくださいということでお願いしています。 ○矢崎座長  除外するということではなくて、見直しのときには、公表する場合にはちゃんと審 査委員会を通して、ということを入れておいたほうがいいというお話ですよね。 ○中村委員   入れなくても、現実問題として逆の方向からそういう圧力がかかっているのは事実 だと思います。 ○矢崎座長  多施設共同研究については、いまのような形でまとめさせていただきたいと思いま す。次の既存資料の提供のみを行う機関等の取扱いについて、事務局から説明をお願 いいたします。 ○吉川課長補佐  資料4の6頁です。現状の疫学研究指針の定義をご覧いただければわかると思いま すが、その定義の研究者と研究機関という中から、いわゆる既存資料等の提供のみを 行う者、機関については除外されております。例えば、このような除外についてどの ように考えればいいかということです。  検討のポイントの1つ目の○で、研究対象者からのインフォームド・コンセント、 それから試料利用の同意の受領ということについては、いわゆる資料を提供する機関 が行うことが多いのではないかということです。したがって、現状では除外となって いますけれども、そのような整理が実際の研究の現場として即しているのかどうか。 即していないのであれば整理をする必要があるのではないかということです。  検討のポイントの2番目は、既存資料等の提供のみを行う場合の研究計画の倫理審 査の必要性については、人由来の試料と情報に係る資料、例えば診療情報等といった ように、資料の性質に合わせてその取扱いを分けて考える必要があるのかどうかとい うことです。  1つ補足させていただきますと、現行の指針の中に、人由来の試料を利用する場合 は、その利用することについてインフォームド・コンセントを受けることと、あとは 指針10のところにありますように、試料を利用していいかどうかという同意を受け るという規定があります。これは提供という側面ではなくて、単に利用するという規 定もありますので、その点もご留意いただければと思います。 ○矢崎座長  第1に、既存資料等の提供のみを行う者及び機関については、指針で定義されてい る研究者あるいは研究機関から、現行の指針では除かれていますが、実際にはいまの お話のように、資料の提供機関がインフォームド・コンセントを取ることが多いので はないか。そういう提供のみを行う機関についても、指針で何か検討する必要はない かどうかということがまず問題だということですがいかがでしょうか。当然、試料を 受け取って研究する人も、倫理委員会を通らないといけないのですが。 ○川村委員  いまの指針13の(10)には、「試料を提供する者は研究者ではない」という定義が 書かれています。片方で指針11の(2)では「提供を行う者は試料提供時までに研 究対象者からの試料の提供に係る同意を受け」というのがありますし、指針3の(3) には「研究対象者からインフォームド・コンセントを受けることを原則とする」とい うのがあります。  現実問題として、例えば臨床病院などで予後の追跡をするというときに、転院をし たというような場合については、転院先の情報を貰いたいと思うことがあると思いま す。そういうときに、転院先のほうはその研究には特段熱心ではない。ただ紹介して もらったから紹介しないではないけれども、個人情報だからインフォームド・コンセ ントを取らなければいけない、というような場面があったとしますと、そこまで面倒 くさいことが頼んだ先にできるかという問題があります。  そもそも、転院先のほうは単に提供するだけですから研究者には該当しないわけで す。しかし、インフォームド・コンセントを取る義務が発生していいのかどうか。つ まり、研究者でもないのにそこまで面倒な手続を要請するのか、あるいは既存資料だ からその情報の開示だけでいいことにするのかその辺はきちんと決めておかないと、 これからエビデンスを作るために広範囲に情報を収集する段になったときに困ること が起きるかと思います。  そういう意味でここでもそうなのですけれども、情報提供するだけの人を、研究者 との対比でどういう関係にするか。特に、そこにデータ提供という作業以外に、患者 に対するあるいは対象者に対する何らかの義務を負わせることができるのかどうかと いう問題を検討していただきたいと思います。 ○矢崎座長   その仕分けはなかなか難しいですね。 ○永井委員  確かに、いまそういう研究は行われにくくなっているというか、ほとんど不可能に なりつつあります。ですから、その都度転院先の病院から承諾を取っていただいて、 あるいは何らかのIRB的なことを経て、それでさらに研究を進めるということでし ょうけれども、現実には難しいのではないでしょうか。 ○川村委員  それから、病院評価の1つとして、例えば手術後の5年生存率というようなことは 基礎情報として求められると思うのです。そういうときに追跡不能例であるというこ とになると、計算の信頼度がかなり下がってしまいます。インフォームド・コンセン トが取られないために、評価に必要な情報が集まらないということでも困るのではな いかという気がします。 ○中村委員   いまの話は、疫学研究なのですか、臨床研究のほうに入るのかという気がしました。 ○川村委員   5年後の予後調査ですので観察研究ですから、疫学研究の倫理指針の対象になりま す。 ○中村委員   なるほど。 ○矢崎座長   がん登録などの疾病調査は、このガイドラインから外れるんですよね。 ○吉川課長補佐  いわゆる法令等に基づく保健事業に関しては、指針の適用範囲の2の細則の四角の 囲みの中のいちばん最後のほうに保健事業関係ということで右側に書いてありますが、 こちらの保健事業として位置づけられているものについては適用除外と現行ではなっ ております。 ○祖父江委員  がん登録といってもいくつかの種類がありまして、地域がん登録と、院内がん登録 と、臓器別がん登録と大きく分けて3つあります。地域がん登録は、健康増進法に決 められている事業ですし、地域がん登録の取扱いについては別添の説明があります。 通常は、県のレベルで個人情報保護審議会で答申を得て承認を得るということでやっ ています。院内がん登録というのは、病院の中の話ですからあまり個人情報とか倫理 審査の対象にはなりません。  問題は臓器別がん登録です。学会研究会が主体になってやっています。胃がん登録 とか、大腸がん登録というのがあるのですが、これは従来同意を取らずに個人情報を 集めるというような形でやられてきていたのが、疫学研究の倫理指針が出てからかな り問題化しました。特に、個人情報保護法案が出てからは、そういうことをやっては 違法であるということもあり、かなり混乱を来しています。地域がん登録、院内がん 登録のほうは整理がされていますけれども、臓器別がん登録のほうは非常に影響が大 きくて、いまでも混乱しています。 ○矢崎座長   それは、中村委員から言われた臨床研究に入るのではないですか。 ○祖父江委員   これは、多施設にわたる観察研究なので、疫学倫理指針の範囲内に入るという判断 なのです。 ○矢崎座長  そのフォローアップの場合には転院先までと。転院先の病院の主治医が研究になる のでしょうか。 ○祖父江委員  現実には、そこまできちんとした予後調査はされていません。その施設における最 終来院日ぐらいがフォローアップのところ、あるいは公的な資料を用いて住民票照会 等をして、生存確認をするというところがせいぜいであり、転院先まで追っていくこ とはあまりされていないのが実態です。  予後調査の精度以前に、情報提供機関として、資料提供機関として複数の、それも 数百にわたるような施設に対して情報提供を願い、学会の中央事務局で集計をする、 というような作業ですので、個々の所での倫理審査を通す通さないというところが多 少混乱しています。  今回の場合を見てみますと、要は匿名化していれば倫理審査を通す必要はなくて、 その作業を確認するということで、各施設は情報提供できるということになっていま すが、そういう確認でよろしいのですか。 ○川村委員  匿名化すればなのですが、例えば転院先だとどうしても個人名が付いて回ることが 多いです。だから、匿名化の状態で情報をやり取りしにくいということです。 ○祖父江委員  いいえ、ある施設から中央事務局に登録するときに匿名化しているということです。 それが理解されていませんで、個々の施設で倫理審査委員会を通すべきである、とい うことがちょっと過剰な反応としてされていて、それも匿名化の連結不可能でないと 集められないというような誤解もあり、学会のほうからにらまれているということも あります。 ○矢崎座長  そういう意味では、既存の資料の提供のみであれば、現状のガイドラインでそう大 きな問題は起こらないと理解してよろしいですか。 ○祖父江委員  生体試料を扱わないという意味でいくと、おそらくきちんと理解をして、運用する 上ではあまり問題ないと思います。事務局から出ているのは、生体試料を扱うような ものに関して、いまの扱いでいいのかどうかということです。 ○矢崎座長  後半は、生体試料について議論を進めたいと思ったのですが、もう予定の時刻がま いりましたので、既存資料等、人由来の試料のことは次回から議論するということで、 本日はこれで終了させていただきたいと思います。本日は初回の議論でなかなかまと めにくかったのですが、いただきましたご意見を踏まえて、ここまでの議論のまとめ を次回の会議に示したいと思います。  ただいまいただいたご意見のほかに、さらにご意見がありましたら文部科学省の生 命倫理・安全対策室の長野安全対策官、あるいは厚生科学課までご連絡いただきたい と思います。最後に、今後の進め方を事務局からお願いいたします。 ○吉川課長補佐  資料5で今後のスケジュールです。現状の案をお示しさせていただきます。冒頭に も申し上げましたが、特段の事情がない限り、文部科学省と厚生労働省の専門委員会 を合同開催ということで進めてまいりたいと考えております。本日の第1回が終わり、 第2回が11月6日の15時から、引き続き論点の整理を行っていただく予定です。第 3回が11月30日の16時からで、第2回に引き続き論点の整理を行っていただく予 定です。第4回は年末非常にお忙しい中を恐縮ですが、もしお許しをいただけました ら12月27日の14時から予定させていただきたいと考えております。事前に先生方 の出席状況を確認させていただきましたところ、年末のほうが皆さんの出席率がいい ということもあり、誠に勝手なお願いではありますが12月27日に予定させていただ ければと考えております。  第3回ぐらいで論点の整理がある程度できましたら、第4回からは実際にその指針 のような形に直し、どのような条文で書き込むかというご議論をいただければと考え ております。第5回は年を明けて1月の予定で、その指針の改正案についてご議論い ただきたいと考えております。第5回が終わりましたら、パブリックコメントを1カ 月ほど予定しております。それが終わったら、事務局でパブリックコメントの取りま とめ、そして必要な指針の修文等を行い、第6回は3月に予定させていただきたいと 考えております。いちばん最後は4月以降になりますけれども、文部科学省の審議会、 厚生労働省の審議会で審議を経た上、最終的には平成19年6月30日に告示改正、こ れは既に現行の指針で6月30日を目途に見直しを行うと規定されておりますので、 最終のスケジュールは6月30日となっております。お忙しいところ、1カ月に1回 程度お集まりいただくことになりますが、どうぞよろしくお願いたします。 ○矢崎座長  お忙しい中大変恐縮ですけれども、このようなスケジュールで良い指針の見直しを していきたいと思いますので、是非ご協力のほどをお願いいたします。本日はどうも ありがとうございました。 ― 了 ― 【問い合わせ先】 厚生労働省大臣官房厚生科学課 担当:情報企画係(内線3808) 電話:(代表)03-5253-1111 (直通)03-3595-2171 - 35 -