06/10/10 第65回労働政策審議会雇用均等分科会議事録 第65回 労働政策審議会雇用均等分科会 議事録 日時:2006年10月10日(火) 14:00〜16:00 場所:厚生労働省専用第21会議室(中央合同庁舎5号館17階) 出席者:  労側委員   稲垣委員、岡本委員、鴨委員、篠原委員、龍井委員  使側委員   吉川委員、前田委員、松井委員、山崎委員  公益委員   横溝分科会長、今田委員、佐藤委員、林委員、樋口委員 ○横溝分科会長  ただ今から、第65回労働政策審議会雇用均等分科会を開催します。本日は奥山委員 と渡邊委員が欠席です。  それでは早速議事に入ります。本日の議題は、「雇用の分野における男女の均等な機会 及び待遇の確保等に関する法律及び労働基準法の一部を改正する法律の施行に伴う関係 省令の整備に関する省令案要綱」、「労働者に対する性別を理由とする差別の禁止等に関 する規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処するための指針案」及び「事業主が 職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置に関する指針 案」についてと、もう一つ「今後のパートタイム労働対策について」です。  まず、男女雇用機会均等法の省令案要綱、指針案についてですが、本件に関しては9 月29日の当分科会において、私と事務局で調整の上、答申案文を作成して示すという ことになっていましたので答申案文を配ります。  それでは、事務局より説明をお願いします。 ○安藤雇用均等政策課長  ただ今、お手元に2枚のペーパーを配りましたが、1枚目は労働政策審議会会長から 厚生労働大臣への答申文です。「記」以下、別紙「記」のとおりとしており、2枚目がそ の別紙です。こちらが雇用均等分科会長から労働政策審議会会長あての報告ということ になります。これについては、「平成18年8月28日付厚生労働省発雇児第0828001号 をもって労働政策審議会に諮問のあった表記については、本分科会は下記のとおり報告 する。「記」本分科会は厚生労働省案は「おおむね妥当」と認める。なお、表現等の一部 に改められるべき点が見られるので、これまでの審議経過を踏まえて適切に処理すべき である」としています。  なお、「記」以下後段にある表現等の一部に改められるべき点が見られるので、以下に ついては、これまでの当分科会におけるご議論などを踏まえて、語尾の一部「こととす ること」のような書きぶりに不統一な表現が見られたことから、これを統一した表現ぶ りに修正すること。また、間接差別の定義の部分の書きぶりを改正法の条文に合わせた 書き方としている部分について、雇用均等政策研究会の報告書の書きぶりに合わせたも のに修正するということで対応したいと考えています。以上です。 ○横溝分科会長  事務局から説明がありましたが、ご意見があれば発言をお願いします。 ○篠原委員  少し意見を述べさせていただきたいと思います。これは前から労働側から言わせてい ただいているのですが、雇用管理区分のところです。元々雇用管理区分がいけないと言 っているわけではありません。ただ、結果として雇用管理区分が差別の温床につながっ てしまっていることから、この雇用管理区分を指針の中に入れるのはどうかということ で、労働側としてはずっと発言してきたわけです。そこで、お願いというのは、今後雇 用管理区分の運用などに関して、ぜひ今後も実態の把握を行っていただきたいというこ とと、必要に応じて指針の見直しを行っていただきたいということを、意見として申し 上げておきたいと思います。 ○横溝分科会長  他に、いかがですか。 ○岡本委員  ただ今の報告ですが、書きぶりとして「おおむね妥当」というのはいつものことだと 思いますが、これまでの指針の議論の中で、私たちが疑問点も含めて申し上げてきた部 分が残念ながら加わっていないというか、訂正されていないことは非常に残念だと思い ます。間接差別の書きぶりも、これは元々の報告書の形にわかりやすくするべきではな いかということであって、本質的な部分での議論ではなかったと思いますので、若干そ のところでは意見を申し上げたいと思います。その上で、周知の時間などを考えると時 間的な制約があると思います。一つ申し上げるとすれば間接差別のところですが、法改 正の中で今回間接差別の導入がなされたということは今回の法改正の非常に大きな目玉 だと思います。女性労働者からの大きな期待もここにあったと思っています。私たちは 限定列挙ということにずっとこだわって、例示列挙にすべきだと申し上げてきましたが、 法改正の中では限定列挙になりました。ただ、その間の審議の経過・経緯、そして国会 での議論から言えば、それ以外の部分についても、さまざま検討されるべきものがあっ たと思います。附帯決議なども踏まえて、ぜひ今後の指導・周知等について、この3点 だけではなく、さまざまな事例があり、それが出てきたときにきちんとした対応をして いただく、それがきちんと企業に周知されていくということを、ぜひお願いしたいと思 います。今回これだけの時間をかけた二度目の均等法の改正が、しばらくはある意味最 終的な部分ということになるのだろうと思いますので、ぜひそこのところはきちんとし た対応をしていただきたいということを申し上げたいと思います。 ○横溝分科会長  では、稲垣委員。 ○稲垣委員  妊娠・出産を理由とする不利益取扱いのところについては、労働側としては一般疾病 とは違った形で、さらに母性保護という観点から取扱いをお願いしたいと申してきまし たけれども、今回の答申案の中ではそのような形になっていなかったのが大変残念です。 考え方としては今までがマイナスであって、やっと一般疾病と同じようなゼロ地点まで 行ったのだと思っています。今後は、この分科会の審議だけでは難しいと思うのですが、 産休期間の保障のあり方などについても引き続き検討を進めていっていただきたいと思 います。  それからもう1点、今日配られている資料の27ページの不利益な自宅待機の部分で す。「なお」以下の部分、いわゆる軽易な業務への転換を請求した場合についての所なの ですけれども、ここの文章は最初から問題があると申し上げて参りました。ぜひ、ここ が使用者側にとって軽易な業務がないと安直に判断されることのないようにしっかり指 導をしていただきたいと思います。以上です。 ○横溝分科会長  他にございますか。 ○鴨委員  今出された「おおむね妥当」ということに対するところです。先ほど岡本委員からも 話がありましたけれども、「おおむね妥当」というところで出された中身、文言が一部分 改められたところだけであるということからすると、この間のこの場における議論、そ れからパブリックコメントで多くの方々の意見が集まってきているわけですけれども、 そういったことがなかなか反映されないことを大変残念に思います。この場においては もう一つ、セクシュアルハラスメントについて前回も具体的な意見を言わせていただき ましたけれども、今回セクシュアルハラスメントについて措置義務化されたということ なので、その実行性が担保されることを具体的に願っています。そのためには、第三者 機関との連携それから被害者が職場の中で働き続けることができるようにというところ に、最善の措置が不可欠だと思います。引き続き、実態把握等をする中で、そういった ところを指針等によって周知徹底を図っていただきたいと思います。 ○横溝分科会長  他にいかがでしょうか。使用者側、よろしいですか。 ○松井委員  労働側委員の方々にぜひご理解を賜りたいのですけれど、私どもも今回示された指針 そのものがすべて満足であるわけではない。さらに、その前段において今回間接差別と いうものが新たに取り入れられたということは、日本の使用者にとって、きちんと雇用 管理を見直していく必要がありますので、一つ一つ積み上げていく中で対応せざるを得 ないという点をご理解賜りたい。それから、労働者側には実務的には不十分であるとい う指摘が何度もありましたけれども、不利益取扱いの部分については、かなり細かい配 慮が企業の人事労務管理上必要になって参ります。そういう点について、まず労働側も 十分ご理解をされた上で、組合活動の中で、あるいはいろいろなところでの周知の努力 をぜひしていただきたいと思います。  もう一つ、行政の方にお願いしたいことは、特に間接差別の部分について、言うなら ばマスコミによって少し誤った形で伝わっているケースもありますので、その辺が誤り のない形で周知されるように、ぜひお願いしたいと思います。それから実務レベルにお いては、やはり不利益取扱いのところは非常に悩ましい点もありますので、行政におか れても、ぜひ細かい対応をお願いしたいと思っておりますし、私どもも微力ながら解説 本を作って対応して参りたいと思いますので、ご協力をお願いできればと思います。 ○横溝分科会長  よろしいですか。はい、どうぞ。 ○吉川委員  今お話がありましたように、間接差別などが新たに取り入れられました。全体的にこ の均等法に取り入れられ規定されているのは、日ごろ起きやすいトラブルが多いと思い ます。むしろ内容を訂正すべきと言うよりも、本来ならわかりやすくこれを実行できる ようにしてほしい。中小企業においては人事担当者などが特別にいない所も結構ありま すので、ぜひわかりやすい言葉で表現していただきたい。要は周知徹底できるところに 意味があると思いますので、そういう意味では、かつてがこういう文言だったからとい うことで、それと同じような形ではなくて、今に合わせたわかりやすい表現を今後取り 入れていただけたらと思います。お願いします。 ○横溝分科会長  他には、よろしゅうございますか。 ○岡本委員  今お話があった点ですけれども、就業規則の見直しも含めて、それから間接差別につ いては、正直言って労働者側もきちんとした理解をまだ深めていないところもあると思 いますので、そこのところはきちんと議論をし合いながらやっていきたいと思います。 もちろん連合の方でも、今回もまたそういう勉強会を改めてしていくつもりです。そこ は協力し合ってやっていかなくてはいけないと思います。周知徹底というのは大事なこ とだと思いますが、その上でぜひ「実行」をお願いしたいと思います。一言、それだけ です。 ○山崎委員  周知徹底は非常に大事なことですけれども、それから事業者の声を、ぜひ取り上げて いただきたい。事業者が直接触れ合ったこと、それから実際に実行することを、実績を 見てからでも結構なのですけれども、事業者の声を取っていただいて、必要があれば直 す必要も当然出てきますので、その辺の声を十分取り上げていただきたいと思います。 ○横溝分科会長  よろしいですか。 ○龍井委員  今まで繰り返した論点はなるべく避けたいと思いますけれども、やはり議論を振り返 ってみて、10年ぶりの改正ということの重みと、特に今回の場合は省令・指針に託され たことが結構ある。実は国会の論議に参加された議員の方からも、特にこの省令・指針 に委ねられた部分については、それは法律事項ではないからということで国会では十分 にできない。この場できちんとやってくれるのでしょうねという思いで言われた方から 見ても、正直言って時間的な制約はわかりますけれども、非常に不十分に終わったのは 残念に思っています。  それで、「おおむね妥当」ということではありますけれども、できましたら会長のお許 しを得て、こういう積み残し・課題があるという点について、ぜひ確認をさせていただ きたいと思っています。できれば労働者委員の意見書の配布を許していただければと思 いますが、よろしいでしょうか。 ○横溝分科会長  今、労働側委員の方がそれぞれおっしゃったこととほぼ同主旨の内容ですか。 ○龍井委員  そうです。 ○横溝分科会長  それでしたら、内容を正確にというか正しく理解するためには、この委員会でも皆さ まが読まれた方が、これからもいろいろ影響があるわけですから。省令・指針ですから、 また見直すということもあり、そのときのためにも資すると思いますので、今発言され たものとほぼ同主旨ということですので配りたいと思います。よろしいですか。どうで すか。 ○松井委員  新たに別のものがたくさん加わっているものではないと理解してよろしいのでしょう か。そして、今まで主張されたことについての理解促進のものだと。そういう位置付け であるということですね。 ○横溝分科会長  ということですね。認識を正しくするという意味で。 ○松井委員  私も何度かペーパーで出すようにと言ったこともありますので、そういう趣旨である ならば、理解促進のものであるということでよろしいかと思います。しかし、今後のこ とを考えると、やり方については十分相談をして対応していただきたいと思います。よ ろしくお願いします。 ○横溝分科会長  では配っていただけますか。  ご意見はありますか。 ○前田委員  意見ではないのですけれども。さっと拝見しますと、今日言われているようなことだ と思いますが、こういう意見書というのは、将来こういうことに拘束されるのですか。 今日こういうご意見があったというだけの扱いという理解でよろしいのでしょうか。 ○横溝分科会長  私はそう理解しておりますけれど。こういうご意見を表明されたということでよろし いですね。 ○龍井委員  そうです。あくまで労働側の意見ですので、これで皆さんを拘束できません。 ○横溝分科会長  それでは、労使それぞれから貴重なご意見をたくさんいただきましたが、事務局から の説明のとおり、当分科会としては、今年の8月28日付で諮問のあった「雇用の分野 における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律及び労働基準法の一部を改正 する法律の施行に伴う関係省令の整備に関する省令案要綱」、「労働者に対する性別を理 由とする差別の禁止等に関する規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処するため の指針案」及び「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上 講ずべき措置に関する指針案」について、表現等については先ほど説明がありましたよ うに一部修正の上「おおむね妥当」と認めることとして、その旨の報告を私から労働政 策審議会会長あてに行うこととしたいと思いますが、それでよろしいでしょうか。 ○一同  異議なし。 ○横溝分科会長  全員一致でご了解いただきましたので、そうさせていただきます。それでは、他にご 発言がないようでしたら、答申案文のとおり取りまとめることにしたいと思います。そ ういうことでよろしいですね。ではそのようにさせていただきます。  それでは、ここで、大谷局長よりごあいさつをいただきたいと思います。 ○大谷雇用均等・児童家庭局長  今回ご諮問申し上げました案件について「おおむね妥当」と認める旨の答申をいただ き、心より感謝を申し上げます。今後、速やかにこれら関係省令及び指針について公布・ 告示を行い、来年4月の施行に向け、本省・地方局が一丸となって周知に取り組んで参 りたいと考えています。また今回のご審議に際して、いただいたご指摘・ご意見等につ いては、今後の行政の遂行の中で、誠意をもって取り組んで参りたいと考えています。 今回、委員の皆様方には、これまでのご協力に改めて御礼申し上げますとともに、今後 とも雇用均等行政をはじめとする厚生労働行政に対する一層のご理解・ご支援を賜りま すよう、よろしくお願い申し上げます。 ○横溝分科会長  ありがとうございました。  それでは次の議題に入りたいと思います。次の議題は「今後のパートタイム労働対策 について」です。まず前回の分科会におきまして、事務局で提示しましたデータについ て、委員の皆さまより意見、質問等をいただきましたが、それについての追加資料を事 務局で準備していただいております。また前回申し上げました通り、今後の議事を進め るために10月4日に私ども公益委員による会議を開催しました。そこで議論の枠組み となる論点を整理しました。それにつきましても事務局より資料の説明をお願いしたい と思います。 ○高ア短時間・在宅労働課長  それではお手元に配りました資料No.2とNo.3で説明させていただきたいと思います。  まず資料No.2ですが、1枚めくっていただきまして、パートタイム労働者の契約期間 についての追加資料を用意させていただきました。そこにあります通り「期間を定めて いる事業主が約8割、定めていない事業主が約2割」となっております。期間につきま して見ますと、1回当たりの契約期間は「6ヶ月超〜1年以内」が最も多く、次いで「3 ヶ月超〜6ヶ月以内」、「1ヶ月超〜3ヶ月以内」となっています。1枚めくっていただい て、労働者に聞いた場合につきましても大体同様で、「決められていた」とするパート労 働者は66.7%です。また、期間につきましても「11〜12ヶ月」が最も多くて53.8%、 次いで「4〜6ヶ月」24.8%等となっています。契約期間の関係は以上です。  次に教育訓練の関係につきまして、もう少し資料がないのかという話でしたが、4ペ ージです。なかなか全国的な資料がない中で、平成18年度に東京都で実施されました 非常に新しい調査がありましたので、配ってあります。パート労働者への教育訓練の実 施状況ですが、「正規社員と同様の研修を行っている」とするものが21.6%、「パート独 自の研修を行っている」のが14.9%、ということで、実施している事業所が36.5%とな っております。他方「補助的・定型的な仕事なので研修の必要はない」と答えられまし た事業所が36.9%ということです。内容ですが、「正規社員と同様の研修を行っている」 事業所につきましては「担当業務に関する専門的な研修」が最も多くて6割です。一方、 「パート独自の研修を行っている」とする事業所におきましては、「責任感や仕事に対す る考え方」が最も多く59.5%となっています。  1枚めくっていただきまして、事業主がパートタイム労働者の教育訓練に今後必要だ と考えるものですが、「担当業務に関する専門的知識の習得」が42.7%と高くなってお ります。以下「接客・応接能力の向上を図る訓練」となっております。パート労働者の 方に「今まで受けたことがある教育・訓練」について聞いたところ、「業務マニュアル」 に関する教育・訓練が28.7%と最も多くなっています。他方、今後について聞きますと、 「担当業務に関する専門的な研修」と答えた方が35.4%と最も多くなっています。  次に6ページの格差の部分ですが、所定内の給与額ではなくて、年間賞与等を入れた ものに換算したもので指数化した場合に見るべきではないかという指摘があって、それ について見たものです。左側の表ですが、実線の赤と青の線が前回に配りしましたグラ フで、所定内を加えたものが破線の部分になります。賞与の部分につきましては、平均 しますと一般労働者の方がパート労働者よりも高いということで、指数自体は拡大する というような状況になっていますが、傾向的な相違はないという状況になっております。 以上が6ページです。  続きまして7、8ページですが、機会費用について『国民生活白書』で内閣府が分析 したものの資料を付けてあります。推計するに当たって、当該者のプロフィルがどうな っているかという質問がありましたので、7、8ページのそれぞれの推計例の下に若干細 い字で追加的に記入しています。例えば「大卒女性が正社員として就業を継続した場合 の推定生涯所得」につきましては、「大学卒業後直ちに企業に就職し、その後引き続き同 じ企業に在籍すると仮定し、賃金カーブを厚生労働省『賃金構造基本統計調査』産業計 のデータを年齢別に求めたもの」です。以下同様に書いてあります。7、8ページは以上 です。  最後に今回の資料には付けていませんが、所定労働時間が通常労働者とほとんど同じ で、同様の就業の実態にある短時間労働者の労働時間の状況についてという質問があり ました私どもの方で努力しましたが、なかなかやはりそこの部分についてのデータが取 れませんでした。ただ同様の就業の実態にあるということからすると、労働時間が相当 程度短い方が同様の就業の実態になるとはおよそ想定できないことなので、そういう意 味では所定労働時間は長く、通常の労働者に近いところの方が多いということは、およ そ推定できるのではないかと思います。資料としては付けることができなかったので、 報告だけとさせていただければと思います。以上が追加資料の関係の説明です。  続きまして論点の方の関係ですが、先ほど横溝分科会長から紹介がありましたように、 10月4日に公益委員会議の場で公益委員としての取りまとめをいただいたものですの で、これにつきましては読み上げる形で説明に変えさせていただければと思います。 ○富田短時間・在宅労働課調査官  それでは私の方から読み上げます。  「今後のパートタイム労働対策に向けての論点整理(案)」、以下カッコ内の論点の所だ けを読み上げさせていただきます。  「現在のパートタイム労働者をめぐる状況としては、少子化、労働力人口減少社会の 到来、若年層や世帯主である者の増加及びその基幹化といった背景がある中で、パート タイム労働者の日本経済を支える労働力としての重要性は高まっており、その有する能 力を有効に発揮できるようにすることが益々必要になってきている。パートタイム労働 者については、自分の都合のよい時間に働けるといった面がある一方で、その働き方に 見合った処遇がなされていない場合もあり、それに対する不満も存在するほか、正社員 への就職・転職機会が減少して非自発的にパートタイム労働者となる者が増えているな ど、その有する能力を有効に発揮できる状況にあるとは言い難いのが現状である。  今後のパートタイム労働対策を検討するに当たっては、こういった現状を十分に踏ま え、求められる施策について検討すべきではないか」  「具体的な施策の内容を考える際には、改正指針の社会的な浸透状況を含めた実態把 握を踏まえ、求められる施策について検討することを基本としてはどうか」  「1 労働条件の明示等  現行法において、労働条件の文書による明示が努力義務とされているところであるが、 以下のような実施状況も勘案し、今後のあり方をどのように考えるか」以下省略させて いただきます。  2ページです。「現行法において、就業規則を作成・変更する際には短時間労働者から 意見を聴くことが努力義務とされているところであるが、以下のような実施状況も勘案 し、今後のあり方をどのように考えるか」  「2 均衡処遇の確保  均衡処遇の確保のあり方を検討する際には、指針で示されている短時間労働者の態様 を基本に検討してはどうか。  〈賃金〉  賃金として支給されるものには基本給、賞与、諸手当、退職金があり、それぞれ性格 が異なるが、それらの性格に応じた均衡処遇のあり方を検討すべきではないか」  「指針においては、短時間労働者の賃金について、その就業の実態、通常の労働者と の均衡等を考慮しつつ、短時間労働者の職務の内容、意欲、能力、経験、成果等に応じ た処遇に係る措置を講ずるよう努めるものとしているところであり、現状としては以下 のような実施状況にある。これらを踏まえ、賃金については均衡処遇のあり方をどのよ うに考えるか」  次のページになります。「指針においては、職務と人材活用の仕組み等が通常の労働 者と実質的に異ならない状態にある短時間労働者については、当該短時間労働者と通常 の労働者との間の処遇の決定の方法を合わせる等の措置を講じた上で、当該短時間労働 者の意欲、能力、経験、成果等に応じて処遇することにより、通常の労働者との均衡の 確保を図るよう努めるものとしているところである。これについては、例えば通常の労 働者と同じ体系の賃金表を適用する、支給基準、査定や考課の基準等を合わせるといっ た措置を講じることとしており、現状としては以下のような実施状況にある。  これらを踏まえ、こうした者についての均衡処遇のあり方をどのように考えるか」以 下データは省略します。「短時間労働者に対する賞与支給制度の適用については、通常の 労働者と比較して以下のような実施状況にある。このような現状も勘案し、均衡処遇の あり方をどのように考えるか」  4ページにいきます。「短時間労働者に対する退職金制度の適用については、通常の労 働者と比較して以下のような実施状況にある。このような現状も勘案し、均衡処遇のあ り方をどのように考えるか」  「諸手当については、様々な種類のものが支給されているが、これらの性格に応じた 均衡処遇のあり方を検討すべきではないか。  ○生活給的なもの  ○実費弁償のもの  ○職務関連のもの  また、その際、以下のような実施状況も勘案し、具体的にはどのようなあり方とする か」  5ページにいきます。  〈教育訓練〉  「指針においては、教育訓練について、短時間労働者の就業の実態に応じて実施する よう努めるものとしているところである。その種類は、職務・職種別の研修、法令遵守・ 企業倫理研修など様々であり、現状としては以下のような実施状況にある。また、今後、 労働力人口減少社会の到来等を踏まえ、日本経済の活力を維持するためには、短時間労 働者がその有する能力を有効に発揮できるようにしていくことが必要となってくる。  これらを踏まえ、教育訓練の性格に応じた均衡処遇のあり方をどのように考えるか」  〈福利厚生〉  「指針においては、福利厚生制度について、施設の利用について短時間労働者に対し て通常の労働者と同様の取扱いをするよう努めるものとしているところである。一方、 現状としては、施設の利用、金銭の支給など様々な福利厚生が実施されているが、これ らを踏まえ、福利厚生の性格に応じた均衡処遇のあり方をどのように考えるか」  6ページにいきます。「指針においては、所定労働時間が通常の労働者とほとんど同じ 短時間労働者で同様の就業の実態にある場合については、通常の労働者としてふさわし い処遇をするよう努めるものとしていることについて、どのように考えるか」  「3 通常の労働者への転換  指針においては、通常の労働者への転換のための措置を講ずるよう努めるものとして いるところであるが、以下のような実施状況も勘案し、今後のあり方をどのように考え るか」  「4 労使の話合いの促進等  指針においては、短時間労働者からその処遇についての説明を求められたときには説 明するよう努めるものとしているところであるが、以下のような実施状況も勘案し、今 後のあり方をどのように考えるか」  7ページです。「指針においては、短時間労働者から処遇について苦情の申出を受けた ときには事業所内で自主的解決を図るよう努めるものとしているところであるが、以下 のような自主的解決の状況も勘案し、今後のあり方をどのように考えるか」「紛争解決制 度について、短時間労働者に対する特別の配慮をどのように考えるか」  「現行法において、短時間雇用管理者の選任が努力義務とされているところであるが、 以下のような選任状況も勘案し、今後のあり方をどのように考えるか」  「その他」  最後のページに、前回配りました資料に課長が前回申し上げました「所定労働時間が 通常の労働者とほとんど同じであり、同様の就業の実態にある短時間労働者については、 通常の労働者としてふさわしい処遇をするよう努めるもの」という項目について欄外に 注意書きをしています。以上です。 ○横溝分科会長  はい、ありがとうございました。  それではただ今事務局から読み上げていただきました「今後のパートタイム労働対策 に向けての論点整理(案)」に基づきまして、記載されている順番に従い議論を進めてい きたいと思いますが、その進め方でよろしいですか。それではこの記載の順番で議論を 進めていきたいと思います。まず「今後のパートタイム労働対策に向けての論点整理 (案)」の1ページの最初の2つの枠で囲まれている部分、これは全体にかかる基本認識 について述べられておりますが、これについて議論いただきたいと思います。  はい、それでは吉川委員。 ○吉川委員  文章の最初の枠の後から5行目ぐらいに「能力を有効に発揮できる状況にあるとは言 い難いのが現状である」と書いてありますけれども、この辺のところについては私ども 経営者は少し違うのではないかと認識の違いを感じております。これは個人差もあるの は当然ですけれども、責任感や意欲が高くて能力を十分に発揮しているパート労働者も いますが、実際にはパートという性格上、決められた時間だけ働けばいいというような 感覚や、あるいは責任ある仕事は嫌だという考え方の方も結構います。この十分な能力 というところは、本人がどのようにとらえているかもあるとは思いますが、本人の事情 や価値観で望まない人も多くおりますので、意欲や責任感があるパートのみを対象にし た議論をするというのは、むしろもっと自由に働きたいという考え方の人たちの働き方 を逆に阻害することにはならないのだろうかと感じます。その辺りをどのように考えて いるのでしょうか。 ○横溝分科会長  今の発言は意見として伺うということでよろしいですか。何か回答を求めますか。意 見でよろしいですか。では松井委員。 ○松井委員  今、吉川委員が指摘した点は、要するに今後この分科会でどういった部分を中心に議 論していくのかということで、私は大変重要な指摘ではないかと思います。公益委員の 方が先週、全部の部分を議論するようなペーパーをまとめてくださったことはとりあえ ず感謝しますが、ではどういう認識に立って議論していくのかということが、ある程度、 方向性が一つでないと。あるいは一つではなくても、対立しているなら対立したままで ずっと議論するというやり方もあると思いますが、どこをターゲットにしてやっていく のかによって、施策の方向や施策をある方向に転換していくときに変わってくるのでは ないかと思います。吉川委員は、ここに書いてあるような人ばかりではないはずですと いうことを申し上げたかったと思うのです。そうすると、では本当にここに書いてある ように非自発的にパートタイム労働を余儀なくされて、そういう人たちに対する施策を 考えていくということで今後議論していこうとするのか、そうではなくて、そういう人 もいるけれども、一般のパートタイム労働者全体にわたって議論をしていくのか。どう いうやり方をしていくのかということからすると、実はここの前文というのは、私ども としては非常に重要なのではないかという気がしています。ですから、やはりそれなり のコンセンサスなり、あるいはコンセンサスがないというコンセンサスを得て、議論し ていくのなら議論していく必要があるのではないかと思います。なぜならここにいろい ろと示してくださったのは、統計的に見るとこういうふうになっていますけれども、ど う考えるのですかということが大体示されている。それと一カ所だけ、所定労働時間が 通常の労働者とほとんど同じ時間の労働者で同様の就業の実態にある場合についてのと ころが、ここでは統計がないようですけれども、今までの中で示されていたような気も するし、そうでないような気もする。よくわからないのですけれども、やはりここはも う少し労働側、あるいは公益委員がここまで書かれたことの考えを伺った上で、私ども としては議論していきたいと思います。以上です。 ○横溝分科会長  はい、では佐藤委員。 ○佐藤委員  公益側全体というか、私が考えていることです。今回パート労働法あるいは指針を見 直していくときに、基本的には短時間労働者ですけれども、その中でどこを中心に議論 すべきかというと、参考の最後に付いているところで言えば、基本的にまず議論すべき ところは、現行の指針で言えば、職務も同じで人材活用の仕組みも同じ、ただし時間だ けは短い。この人たちについて、通常労働者と比較して処遇等について相当説明がつか ないような処遇があります。これをどうするかがコアだと思います。その人たちが不本 意であるかどうかは別だと思います。意欲があるかどうかとは一応別で、今どういう働 き方をしているかに応じて処遇するということだと思いますから、対象としてはこうだ と思います。ですから通常の労働者と同じ職務で人材活用の仕組みが同じ、ただ時間が 短い。にもかかわらず処遇だけは例えば基本給について半分以下とか、賞与がないなど について、これでいいのかどうかということを議論すべき。それがきちんと議論できれ ば、外側と言うと変ですけれども、外側についての処遇のあり方が、例えば職務は同じ だけれども人材活用の仕組みが違うなどについても合意はできてくるのではないか。ま ずは議論すべきはコアのところかと私は理解しています。 ○横溝分科会長  はい、どうぞ。 ○今田委員  佐藤委員とは長年やってきて、こういうことについて議論してきたのですけれども、 少し佐藤委員の考え方と私は違います。出発点なので意見を言わせていただきます。私 はこの議論は基本的にパートタイマー全体をどのように処遇するか、あるいはパートタ イムにどのような賃金なり処遇のルールを作るかがターゲットであると理解しています。 そのときに何が難しいかと言うと、パートタイムは本人の意欲や、それから受け入れ側 である事業主の雇用管理の対応の仕方が非常に多様であるということ。正社員も多様な 面を持っているのですが、それ以上に非常に多様な層からなっているところが非常に難 しいので、その全体に対する処遇をどのようにルール化するかということは、非常に難 しいというところから始まっている議論だと思います。ターゲットはパートタイム全体 であると。そのときに、ではどういうふうに議論を立てるかというストラテジーの問題 として、今佐藤委員がおっしゃったコアの部分をまず原点のような形でとらえる。それ からその他の多様なパートの人たちへのふさわしい処遇なり、最初にものさしと変な言 い方をしましたが、まさにそのような距離というのか、ふさわしさを測る、そういうル ールを作るというのは基本的な哲学だと私は理解しています。今、佐藤委員がおっしゃ った、コアというのは、原点です。処遇体系を作っていく原点となるのがこれであって、 その原点が何かというと、限りなく正社員と近い人。つまり時間だけは短いけれども、 あとは同じという人は限りなく社員と同じです。これを原点として、それぞれに異なっ た多様なパートタイムの人たちに対する適切なルールを考えていきましょうと。そうい う意味で、出発点ですから私はあえて言いますが、コアの人たちだけの処遇のために、 ここで議論するものではないというのは基本的に押さえておく。  あくまでもそれは原点であって、我々の対象とする、これからルールを作ろうとして いる、法律を作ろうとしている対象は、パートタイム全体である。それは難しい、その ようなことができるのかと言う人もいるかもしれませんけれども、我々の哲学はそうで、 できるだけそれに沿ったような形での法律なり、ルール化をしていくと私は理解してい ます。 ○横溝分科会長  はい、では前田委員。 ○前田委員  多分関連があるのではと思いますので、二つ目の枠のことでもよろしいでしょうか。 ○横溝分科会長 はい。 ○前田委員  前回このパート労働法の話し合いをしたときに、指針でいろいろなことを決めておこ うという話し合いをしたと思いますが、それから今日まで非常に短いと私は思います。 そうした、浸透状況などを含めた実態把握を踏まえてというときに、この間の指針の改 正部分がどれだけ浸透してきたかが本当に把握できるのか。今、今田委員等がおっしゃ ったパートタイムの原点というのはわかりますが、その一方で浸透状況を見てというこ とがあるわけです。その辺りはどう理解すればよろしいでしょうか。 ○横溝分科会長  はい、樋口委員どうぞ。 ○樋口委員  今のご指摘ですが、物理的な時間の長さ、何年たちましたということもあると思いま すが、それと同時に社会の進展の中で、問題の深刻さというものも、また考慮に入れな ければいけないと思うわけです。同じ3年たっても、その間に問題がより深刻なりまし たと、しかもそれは急激ですというときには、やはり何らかの手当をしなければいけな いのではないか。  9月19日の第63回労働政策審議会の分科会の中で配布されている資料として、「パ ートタイム労働対策に関する最近の主な提言等」というのが出ています。審議会の分科 会としては、ここで何を問題とするかは独立でなければいけないわけですが、広く国民 が何を考えているのか、あるいは何を感じているのかというようなこともまた審議すべ き対象となってくるのではないだろうか。この中でまず政府として幾つか、国会あるい は経済財政諮問会議等において、このパートについての問題提起がなされています。例 えば衆議院の厚生労働委員会の中で、正社員との均衡処遇に関する法制化を進めること というような指摘がなされています。あるいは参議院の中でも、パートについて総合的 な対策・強化を図るこというようなことを求められています。さらには諮問会議の方で も、パート労働者への社会保険の適用拡大や均衡処遇の推進等の問題に対処するための 法的整備等や、均衡ある能力開発の取組みを進め、正規・非正規労働者間の均衡処遇を 目指すとはっきり書いているわけです。これだけいろいろなところで指摘されますと、 やはりここではそういったことを受けて、どうするかはここで決定することだと思いま すが、こういったものを審議していく、議論していくことが私は必要なことではないか と思います。また労使それぞれからメッセージが送られています。東京商工会議所の中 でも同じようなこと、あるいは日本経団連の中でも、ここに出ていますような内容が指 摘されている以上、また連合の方は連合でそれぞれ出しているわけですから、それを議 論するということは、まず必要なことであって、それについて例えば雇用形態の多様化 という言葉が使われるわけですが、それは時にはネガティブな意味で、労働市場の格差 問題というような形で議論されるようなことが、現状として起こっている。そうなって いきますと非自発的な問題、非自発的なパート労働者の増加をどう考えるのかというの は、審議会に課された重要な課題ではないかと思います。特に短時間正社員の問題とい う形で、時間は短くてももっと正社員と同じような責任を持ちながら働いてほしい、あ るいは働きたい、能力を発揮したいという方も増えてきているかと思いますので、ここ でこういった問題を議論するというのは、公益側としては共通認識として必要ではない かということで掲げられたのではないかと思っています。 ○山崎委員  実態調査のことなのですけれども、いろいろいただいた資料の調査が元になっている と思うのですが、これが果たして浸透状況とか、あるいはその実態を表しているかとい うと心配なところがあります。有効回答数が1万3,000のうちの2,821という数ですが、 これは22%ぐらいで、果たして無回答の方は同じようなことを思っているかどうか心配 なのです。かなり小さい企業でもこれを見ますと均等処遇については大手よりも結構や っている、いい数字が出ているのですが、言ってみれば回答を寄せた所はエリート的な 事業所が多いのではないかというような気もしないことはないです。企業規模が5人か ら29人ですか。確かに12%ということで340企業くらいですが、同じような中小企業 の事業所は600万事業所あるのです。そのうち20名以下の小規模企業というのは約79% ですから470万企業くらいあるのです。  340くらいというとパーセントとして数には全然出てこないということで果たして同 じ比で見ていいのか、あるいはもう少し標本をとって数の中でこれだけの実態があると いうことを少し見る必要もある。時間的余裕もないのですが、ある程度そういうものも 必要ではないかという気はしているのです。  21世紀職業財団でいろいろやられていますが、他に標本があって、パート関係のいろ いろな資料もあると思うのです。そういうものを総合的に見て実態が出てくるとわかる のですが、ちょっと標本が少ないような気がしています。  もう一つは改正された15年のときに労働局とか労働基準監督署がPRしたり改善指導 したりしていると思うのですが、そういう数字的な実態が出てきているものはないので しょうか。今いろいろなところで問題になってこういうことがあるというのは事実だと 思うのですが、数字的にそういうものが出てこないかというのが聞きたいところです。 ○高ア短時間・在宅労働課長  山崎委員からの最後のご発言をご質問と理解してお答えしたいと思います。確かにサ ンプル数等々はおっしゃる通りでございます。ただその調査サンプル数なり何なりは別 に統計学的といいますか信頼できないという水準でなくて、要するにいずれにしまして も全数調査になりようがないわけです。そういう意味では信頼がおけるだけのサンプル 数は確保していると我々は理解しています。もちろん常に中小企業の何%という言い方 をされればその通りなのですが、だからといって状況を反映しているものではないとい うことにはならないと思います。現実を見た情報を示していますが比較的現実感のある ものになっていると思っています。  確かにおっしゃる通り郵送調査ですので、そこの部分でバイアスなり何なりがないこ とはないと思います。そういう意味ではおっしゃる部分があると思います。そこはそれ を前提に見ていただくということでお願いしたいと思います。だからといってこれがコ アに値しないということではないと理解します。  あと、他にないのかというお話がありましたが、21世紀職業財団に返ってきたもの全 てですので、あとのものがあるというわけではありません。そういう意味ではバックア ップするようなものがあるというわけではありませんので、恐縮ですが指針の浸透状況 ということであれば、それなりの項目を拾われていると思いますので、とりあえずそれ をベースにご議論いただければと思います。  なお労働局なり何なりで指針の時点で周知したことは、活動状況についてのデータは ありますが、結果として例えば企業側から聞いたヒアリング結果のような形が行政のも のにあるということには恐縮ですがなっておりません。周知ということはそれを配って、 パート指針を見てください、理解してくださいということで集団的な指導を中心にやっ ていくということですので、そこのところはご理解いただきたいと思います。 ○山崎委員  13年度と17年の実態調査は、厚生労働省と21世紀職業財団なのですが、これは全 くこちらに委託したというふうに見ていいのですか。そうではなくて、片方は総合実態 調査、片方は全く違うのか、同じようなものなのですか。 ○高ア短時間・在宅労働課長  お答えいたします。13年の厚生労働省がやった調査につきましては対象とした企業数 は同じですが、そちらは訪問調査という形でやっております。当然、回答をいただいて いない事業所はあるのですが、回収率といいますか、回答率という意味では高いという ことです。単純に全く同じものとして比較するということにはならないというのはその 通りです。 ○篠原委員  今山崎委員が最後の方で質問されたこととかぶるかもしれませんが、第10条に助言・ 指導・勧告とありますが、具体的にそれぞれの都道府県の労働局長が指導なり助言なり 勧告をされた数字というのは、今のところどのような数字になっているのか、もしわか っていれば教えていただきたい。 ○高ア短時間・在宅労働課長  今の質問に対する回答ですが、パートタイム労働法に基づく報告徴収あるいは助言・ 指導・勧告の状況につきまして一応データ的にご報告します。  直近、平成17年度ということですけれども、報告徴収をした件数が2,794件、うち 助言を行ったものが1,128件、ということです。指導・勧告等はゼロです。以上です。 ○林委員  この前文についてなのですけれども、先ほど樋口委員が言われたように、諸所の機関 から法改正並びに検討等を求められているということもありますとともに、パートタイ ム労働の多様性といった場合に短時間を希望される方が多いことも確かですけれども、 この失われた10年、そういう中で学卒者の就労・就職が非常にうまくいかなかったと いうようなところで、若年パートがあふれているという統計がありますので、そういう ところも踏まえるとやはりパートの均衡処遇という問題は見逃せない。それだけ厳しく 見ていかなければいけないという世論というか体制があって、各機関の提言になってい るのだと思います。確かに多様性は多様性として認めざるを得ないけれども、その中で 有効に能力発揮できない方たちの割合というのは確かに大きくなっているという前提で、 この議論を進めていくことが必要なのではないかと思います。 ○鴨委員  この前文は、有する能力を有効に発揮できるようにということが前面に書かれていま す。「能力を有効に発揮できる状況にあるとは言い難い」というところから、以下、対策 を検討となっていますが、パート労働者が能力を発揮していても、そのことが賃金・処 遇といったところに全然連動していないことが現状の問題であると私は考えています。 それでこのパートタイム労働対策ということで言えば、パート労働者が基本的に安心し て働けるような対策をどう作っていくのかが今問われているところであると思います。 その意味から言ったら、先ほど全体とコアの話がありましたけれども、私は基本的には 今言ったような全体のパート労働者の賃金なり処遇なりがあまりにもひどい状況の中で、 その底上げをいかにするのかというのがあると思います。その上で、さらに正社員的パ ートといわれるような人たちをどうするのかという対策を考えることが、それはそれで 出てくる問題ではあると思いますけれども、基本は今のパート労働者全体の底上げをど うしていくのかというところに焦点を置くべきではないかと私は思います。 ○稲垣委員  今鴨委員のおっしゃったことと少し関連する部分もあるのですが、今職場の実態とい うことでいきますとUIゼンセン同盟の中にはパートの組合員がたくさんいらっしゃい ます。それで意識調査をやったのです。そのときに実はいわゆる正社員よりもパート社 員の方が仕事に対して意欲を持っている、仕事にやりがいを感じているという方が少し ですが多かったという結果がありまして、パートだから仕事に対してあまり意欲がない ということはあり得ない。もしそういうことが生じているとしたら、やはり自分が一生 懸命働くのだけれどもそれに対しての処遇が伴っていないというところに問題があるか と思います。  もう一つは働く時間の問題ですけれども、仕事と家庭生活の両立ということで言うと 限られた時間になるのですけれども、その限られた時間の中では、一生懸命というとこ ろは伝わってきておりますので、ぜひそこは社会全体として、このパートタイマーの問 題をやっていくことが大事だと思っています。  もう一つ今職場で起きていることは、いわゆる正規社員がパートと一緒に働いている ときに、例えば時間で帰ってしまうと正規の労働者にかなりその分の負担が生じている。 だから長時間労働という形になっていることもありますので、そういうところでいきま すと、きっちりした均衡処遇も進めていくことが大事だと思っています。 ○横溝分科会長  この二つの枠は現状認識、基本認識ということで書いたもので、皆さんご理解いただ いていると思うのですが、少し補足させていただきます。非常に凝縮して短い言葉で書 いたのです。ですから元は主婦パートが多かったけれども今は若年層や世帯主のパート が増えているというようなことも指摘されていますし、日本経済を支えるパートの重要 性というのも書いておりますし、それから吉川委員のおっしゃった自分の都合の良い時 間に働けるという人もいますよということも書いていますし、また鴨委員がおっしゃっ たような自分に見合った処遇がなされていないという人もおりますよということも書い ています。  非自発的なパートタイム労働者ばかりと言っているわけではありません。「となるもの が増えている」という傾向にある。それで能力を発揮できる状況にあるとは言い難いと いうので、全部ないというわけではなくて、非常に多様でバリエーションに富んでいる のを非常に短い言葉で言っております。公益委員と事務局としては、不十分な所もある と思いますけれども、結構現状を認識していただけると思います。また、先ほど樋口委 員のおっしゃったように、各界から大合唱ともいうべきほど均衡処遇、均衡処遇と言わ れているのは、やはり均衡処遇でない痛みのようなものが出ているから各界で言ってい る。ですからこの分科会としてはそれを正面からとらえて少しでも前進するような均衡 処遇の対策を考える必要があるのでないかと思います。  それから国の制度としていじるには、ある程度客観的な調査統計に基づかないと制度 をいじるわけにいかないと思うのです。21世紀職業財団はパート労働法に基づいて指定 された調査研究機構で、それで調査研究の結果を発表しているわけですけれども、それ 以外にもし皆さんがいろいろな資料をお持ちでしたらそれをお示しいただければ十分に 活用させていただきたい。というのは、皆さんいろいろなエピソードをご存じだと思う のです。ただエピソードだけで制度をいじるわけにいきませんので、我々が客観的な資 料として使えるような資料を示していただければ、大変ありがたいと思います。  あくまでもこの二つの枠はあるのですから、現状認識でこういうところが足りないと おっしゃっていただければ、またそれは追加したり修正したりはしたいです。  時間の都合もありますので、次の労働条件の明示ということに移っていきたいと思い ます。特に労働条件の文書による明示について今後のあり方をどのように考えるかとい うことでご意見いただきたいと思います。 ○吉川委員  今までも何回か申し上げてきたと思うのですけれども、この労働条件の明示について は、資料からも87.5%の事業所が明示しているという調査結果も出ておりますし、別の 部分で申し上げましたけれども、もっとわかりやすい文章等にしていって、周知徹底し ていくことによって、指針を見直さなくても、この数字というのは上がっていくのでは ないか。要は浸透が大事ではないかと思うのですが、ここまで周知徹底されて、87.5% も徹底されている割には、なぜまだこの上という気がしなくもないので、やはりここを もっと徹底するというところに、焦点を当てていただけたらと感じております。 ○稲垣委員  基本的にはパートタイム、短時間労働であろうとそれ以外であろうと労働基準法の適 用を受けるのは当然ですので、そういう面から言ってここの部分が出てきていると思い ます。ただパートタイム労働法の第6条に、労働条件に関する文書の交付というのがあ るのですが、ここは「努めるものとする」と。一応労働基準法で入っている所は( ) で除外の形になっておりますので、これは非常にわかりづらいと思います。要するに労 働基準法で他の労働者に対しても適用されるものは当然ながら短時間労働者に対しても 適用すべきだということです。 ○松井委員  事務局に確認したいのですけれども、この調査は今稲垣委員からご質問があったよう に労働基準法上の義務を果たしているかどうかの調査結果になっているのか。もう一つ 重要なことは、パートタイム労働指針では労働基準法を超えてパートのみに条件明示を 求めている項目が少なくとも二つあったと思うのですけども、そこも含めて、書かれて いるような回答がなされているというものなのか。とりあえずこの統計の趣旨・中身は どうなっているのか教えていただきたいのですけれども。 ○高ア短時間・在宅労働課長  お答えします。パートタイム労働実態調査の結果ですけれども、このパートタイム労 働実態調査におけるこの部分につきましては、以下のような調査票で調査を実施したも のです。採用時における労働条件の明示についてお答えくださいということで、明示し ているかしていないか。明示している場合に、主に口頭で説明している、主に就業規則 を交付している、主に労働条件通知書・労働契約書等の書面を交付しているという形に なっています。もちろんパートタイム労働者について聞いたというものです。ですので、 そういう調査項目に従って答えたということですが、パートについての労働条件通知書 なり労働契約書等の書面を交付していると答えたのは、まさに事業所においてそういう ものを使われている事業主がそれについて答えたということであろうと思います。  なお労働基準法との関係ですが、労働基準法上の労働条件の明示ということにつきま しては、パートであるか一般労働者であるかを問わず全ての労働者に義務付けていると いうことですが、パートタイム労働法の第6条は書面で明示する。要するに書面によっ て明示してくださいと書いております。その部分で言いますと労働基準法上は確かに書 面で交付と一部義務付けているものがございますけれども、パートタイム労働法で交付 するように、書面で明示するように努めてくださいというのは、労働基準法上の書面に よる明示と同じだと特別な法律で努力義務としてお願いする意味がありませんので、パ ートについては労働基準法上義務付けられております範囲を超えて、パートについて特 有に問題になりやすい項目も含めて書面によって明示してください、もっと言えば書面 を渡してくださいということを、努めるという形でお願いしているということです。  では何が増えているかというと、いろいろあると思います、例えばパートの関連で申 しますと昇給の有無ですとか賞与の有無、あるいは退職金の有無というような項目につ きましては、労働基準法上は書面による明示は義務付けされておりませんけれども、パ ート法上それらの点についても書面によって明示することを努力義務でお願いしている という、こういう整理であろうかと思います。  ただ稲垣委員がおっしゃったとおり、労働基準法とだぶる部分がありますので、全般 として当然、高率の回答になるという面はあると思います。正確に言いますとそこは範 囲が違っているということで、パートタイム労働法独自のものがあるということです。 ○松井委員  確認ですけれども、ここの回答の87.5%というのは、パートタイム労働指針の内容が 盛り込まれた形で回答されているかどうかはわからないという理解でよろしいですね。 ○高ア短時間・在宅労働課長  理解としてはそういうことです。 ○岡本委員  議論の進め方で質問させていただきたいのですが、先ほどの現状認識というところは 非常に大事な議論だと思うのですが、それぞれの部分について、この段階から各論につ いてご意見を申し上げた方がいいのか、または論点整理(案)として出ていますので、こ の論点整理で足りているのかどうか、論点整理の中身でこの部分について議論をしてい いのかどうか、ここで書かれている中身の質問ということなのか。今少し各論に入った ような感じがしたので、整理をしていただきたいと思います。 ○樋口委員  ここに用意した資料No.3で十分なのか、あるいは逆にここから取り除いた方がいい のかというようなことをまずご議論いただいて、個別についてはご意見いただけた方が スムーズに進行すると思います。 ○横溝分科会長  前回の論点を出しましたが、あれは幅広過ぎるということで公益委員で一応論点整理 (案)として今日お示ししたのです。それで議論をするにはこの順番がいいかということ で、今順番にさせていただいているのですが、論点整理(案)はあくまでも公益委員の案 でございますので、別に拘束力があるわけではありません。ただやり方としてはこの順 番にやった方がやりやすいかと思って、順番でいかがですかということでお諮りしてい るのです。今この順番で、各論に入ってきているのは不都合ですか。もう一度現状認識 に戻りたい、そういう意味ですか。 ○岡本委員  そういうことではないのですが、例えば今の話ですと既に指針で十分だという結論的 なご意見があったものですから、そのように私が受け止めたので、そういう議論ではな くて、この論点整理の中身でそれぞれが足りているのかどうかということだと思ったの です。ですからその議論をしているだけで時間も経ってしまいますし、私たちとしては 当然法改正が必要だという認識でいるわけですから、そこの部分で確認をしたかっただ けです。 ○横溝分科会長  今後のあり方をどのように考えるかということで、ご議論いただいていたつもりなの ですが。 ○佐藤委員  樋口委員が言われたように、この項目、つまり労働条件明示を経営側が取り上げる必 要はないと言っても、組合が取り上げる必要があると言えば残すということだと思う。 両方とも取り上げる必要がないというのであれば落とすということだと思うのです。ど ちらかがこれを議論したい、いずれかが議論したいということであれば、この段階では まだ残しておいて、その後で中を詰めていく方がいいかと思います。 ○横溝分科会長  松井委員は取り上げる必要がないとまでおっしゃったわけではない。現状の調査はど ういうことなのかを、労働基準法の義務と指針の努めるべきとの関係をお尋ねになった のですよね。 ○松井委員  私は事実関係を聞いてまだ結論は言っていないだけです。今分科会長からそのように 質問されると、いらないのかなと思いつつあるのですが。そこまで考えていなかったの ですが労働基準法上のことをまず守ることが大前提であって、なぜパートタイム労働法 で別のことをやろうとするのか。労働側は恐らくおっしゃっていないのですが、義務化 しろというならそれではどこを義務化するのか。そこの事実関係を私としてはきちんと 確認をしたという状況です。意見を求められるなら、ではこれは議論しなくていいです と申し上げたいと思います。 ○横溝分科会長  全員がそうとは伺いませんが、これは努力義務とされているというので、労働基準法 上のことでなくて指針のことなのですけれども、これについて今もう少し意見をくださ いますか。 ○松井委員  では確認なのですけれども、指針の内容を含めた形で書面で明示しているのかという ような統計はあるのでしょうか。私はその事実関係をきちんと把握をしておきたいので すけれども。そういうことはなくて、何か数字だけが多いね、それならばもうできるね と、そういう形での議論はしてほしくないということだけは、きちんと申し上げておき たいと思います。 ○高ア短時間・在宅労働課長  パートタイム労働法上も努力義務という形になっていますが、どこからどこまでを努 力義務とするか、項目できちんと整理したものではありません。ですのでパートタイム 労働法上義務がかかっている範囲内というのが、労働基準法上の義務の外円に明確にあ るものではない。要するにパートタイム労働法というのは基本的には雇用管理改善法で して、最低労働条件を規定するという法体系ではありませんので、労働基準法の範囲の 中で漏れているものであっても、パートの場合にはそれを書面によって明示することが 当該事業所におけるパートの雇用管理としてあるべき姿なのですよという意味で、制定 当時は整理をつけている。ただそうは言っても努力義務で、当時まだ実施状況は多分今 日よりも低かったと思います。なぜかというと13年と比べても上がっているような状 況ですので、そういう状況を踏まえて努力義務ということで法的に整理されたというこ とだと思います。  それで調査の方もパートタイム労働指針の範囲というのがない以上、パートタイム労 働法に基づいてという部分、その辺はそういうことです。調査として、要するにお宅の 事業所において、パートの労働条件をどういう形で明示していますかということを聞い て、就業規則で渡しているということは当然就業規則上必要な記載事項は書いてあると いう前提です。あと雇入通知書とか労働契約書ということについては多分さまざまかと 思います。一応私どもとして、お勧めの雇入通知書の様式というものは通達ベースでお 示ししていますけれども、それに従わなければいけないということは元々ないわけです。 ただパートで労働契約書・雇入通知書を交付しているとなれば当然当該事業所において、 後々パートの関係の雇用管理の整理をつけておきたい事項は、わざわざ文書で交付して いるわけですから、当然書いてあろうと予想されます。ただ先ほど言いましたとおり、 この調査は先ほど言ったような形で調査したもので、それ以上の調査があるかと言われ れば、少なくても21世紀職業財団にはこれが唯一の調査ですし、それ以外にもしあれ ば、それこそ私どもにご提供いただければと思います。私どもが把握している範囲内に おいては、そこまでについて調査したものはないということです。 ○吉川委員  見直す必要がないのではないかと言ったのは、私もその一人ですけれども、私は努力 義務でこれまでの数字が十分上がっていますし、これからもこれを明示して努力義務を 浸透させていくことによって、もっと徹底されていくと感じておりますのでそのように 申し上げたつもりです。 ○龍井委員  質問させていただきたいのですが、実際に我々が労働相談などの現場で対応していま すと、結局今ここで示されていることがお互いにとって、経営者の皆さんにとってトラ ブル解決の1番の有効策。「義務」という表現で余計な負荷というか、できれば避けて ほしいものが課せられているという認識なのでしょうか。私から見ると逆にそれこそ言 った言わないの行き違い、もちろん法律も守らなくてはいけませんが、そうでない場合 も口約束でやったことがきちんと書かれてさえいれば防げるトラブルがたくさんあるわ けで、その辺がむしろ我々にしてみればお互いにとってそのほうが楽だと。トラブルに 関して言えば、そのように考えていますが、余計なことという感じなのでしょうか。そ の辺をお聞きしたいのですが。 ○松井委員  私からは余計なことというよりも、今企業側にいろいろな形で義務付けがなされてい るという状況にあります。平成5年にパートタイム労働法が制定・施行されて以降、労 働基準法上における明示事項も増えたり、そういう労働基準法上の明示の義務の範囲も 広がってきている。そういうものもあります。ですから龍井委員がおっしゃるように紛 争を未然に予防するために、いろいろと企業が自主的にやることについては私は推奨す べきであろうと思いますし、それが従業員をきちんと確保して丁寧に扱うということは 差し支えないことだと思います。ただそれを、法律ですべてガチガチにやらなければい けないと言われると、そこは少し待ってくださいと。企業側ができる範囲は、それぞれ の使用者の規模によって違っておりますので。さらにこの統計等を見ましても、小規模 の方は必ずしも書面交付も十分行われていないという実態もあります。ですから紛争を 未然に防止するということは、今吉川委員が申し上げましたようにとりあえず努力義務 ということでより進めてもらう。そして私が事実確認をしたのは、本当にパートタイム 労働指針で定められている内容まですべての事業者、あるいはここに回答した87.5%が そこまでやっているのかどうかはわからない中で、そういうものも含めて明示義務の範 囲だと言われると、やはり待ってほしいと言わざるを得ないということであります。も し、山崎委員など何かありましたらお願いします。 ○山崎委員  私が危惧しているのは先ほどから言っていますように、小さい所が指針自体を知って いるかということです。知っていなくて急にではなく、ある程度段階を踏んでやる必要 があると思いますし、3年間経ってこれだけ伸びているということはそれだけ自助努力 していると思うのですが、知らない所であれば急にこういう法律ができてこういうこと なのですよと初めて知るわけです。そうすると過程がわからないままにこれをやらなけ ればいけない。そういうところを危惧するのです。私は知らない小さい所がかなり多い と思います。指針あるいはパートタイム労働法は知っていると思います。ただ指針の細 かい中身まで知っているかどうか。3年前に改正されたこと自体も、知らない人が非常 に多いと思います。私どもの指導員が何人かいますけれども、小さい所と付き合ってい てそんな話は一切出ないし、聞いても「指針」という程度で終わってしまうというので す。都会ならそうですけれど、地方の小企業・零細企業に行ったときに、果たして本当 にこういうものを、こういう法律自体あるいは指針自体を知っているか。それを前から 非常に思っているのです。先ほど言いましたように、何万事業所とある事業所が皆知っ ているかどうか。 ○佐藤委員  やや個別の議論になったので、多分後で議論した方がいいと思います。文書での明示 を義務化するとすれば、多分それと同時にどの範囲かという議論をしなければいけない。 そこはまだオープンだということです。  それともう一つ、なぜパートだけ「文書で」と入ったかというと、もう皆さんご存じ のように、労働基準法では労働条件明示というのが入っているのですけれども、正社員 については就業規則が作られているけれどもパートの場合ないところが非常に多いので、 そういう意味で文書で明示する。もう一つパートの就業規則がないということで、もう 少し個別的な契約が非常に多いので文書で明示というのが入ったわけです。ですからそ れを踏まえて、もし文書での明示を義務化するとすればどの範囲にするか、また別に議 論をすることだろうと思います。今の状況を指針のままで義務化するというのもあるで しょうし、基準法上のところをパートの場合就業規則がないのでそこを文書でとか、い ろいろな選択肢があると思います。 ○横溝分科会長  皆さん専門家だからご存じだと思いますが、机の上にある各委員の資料のうち、最後 に綴じてある青い冊子の「パートタイム労働法のあらまし」の29〜30にかけて。29ペ ージの下の(1)労働条件の明示のイの方が労働基準法上の、次の30ページのロが指針 等による事項なのです。このうち佐藤委員のおっしゃったどれを明示するのかというの は、各論になると思いますけれども。 ○佐藤委員  あと39ページ、40ページの現行のモデル。むちゃくちゃ多いのは○をつければいい ので。 ○横溝分科会長  これも議論を深める参考にしていただければと思います。 ○林委員  このパートタイム労働法で少し拡大されている労働条件の明示の中には、正規の労働 者であれば就業規則で明らかになっている労働条件がある。それ自身は、労働契約その ものの内容になっているものがかなりあるわけですので、労働契約を口頭でやるか文書 でやるかということで、労働契約が当事者の間できちんと合意されなければいけないと いうコンセンサスがやはりあるわけです。それがなされないとパートの地位が非常に不 安定になるという趣旨です。口頭でなされるものを文書でするということについては、 確かに松井委員がおっしゃったようにこの87.5%が全部パートタイム労働法で拡大し たものを含んでいるのかというのは数値的には見えないかもしれませんが、契約内容に なったものを明らかにして、その後の紛争を防止するということは基本的には今後の方 向であることは間違いないと思うわけです。それで前回はそのような措置については努 力義務という形になったわけですけれども、中小も含めまして21世紀職業財団の統計 では、かなり上昇している。ある意味では周知の必要があるというご発言がありました けれども、努力義務からそれをずっとそこにおいて、周知だけでその最後の何%はそれ でも動かないという面はあると思いますので、既にかなり実施率が高くなったという段 階では、努力義務を義務化というのも一つのルールとして、また内容は今後精査をする として労働契約が明らかにされるという重要性からすると、それほど時間を待つ必要は ないのではないかと考えます。 ○松井委員  弁護士の先生にたてつくわけではないのですが、労働契約というのは文書化されてな いとすべて今は駄目だというのは、判例法理でも確立しているということなのでしょう か。そこをまずお聞きした上で、次のことを考えたいと思います。  それと、林委員はパートタイム労働だけのことをおっしゃっているのか、あまねく正 規従業員も含めてやるべきだというご意見なのか、そこの確認だけはしておきたいので すが。 ○林委員  基本的にあまねくというか、そこまでは法制の問題は別かもしれませんけれども、パ ートと非正規の置かれた立場において、正規の労働者の場合はある程度の就業規則なり 何なり、自分の労働条件というのを入社するときに契約書の形でもらわなくてもある程 度わかるしルール化されているというところがあります。けれども、パートの労働者が 非常に小規模の企業に入って、ただ口頭で「何日働いてくれよ」、「給料は時給このくら い」という形で始まった契約の中で、パート労働者の置かれた不安定さを考慮すると、 それは望ましい方向ではないかというのが私の考え方です。 ○松井委員  そうしますと今おっしゃったことは、例えば分科会長が指摘されたパートタイム労働 法のあらましの29ページ、今労働基準法で義務化されている所でとりあえず十分とい うことは言えないのでしょうか。そこを超えてやることについては後で議論すればいい と言われるのですけれども、それをもっと広い範囲でやれと言われることが文書化とい うお話ですから、今の段階でやはり反対すべきところは反対しておかないと私としては 困る。 ○林委員  昇給などはある意味では正規労働者の場合賃金表があったりとかそういう形である程 度ルール化されたり、毎年の春闘等で上がっていったりするというのがあると思います けれども、パートはそれがあるのかないのかさえわからないというのが実態です。です からその辺のところはないならないで、それは企業の方針かもしれませんが、その有無 などをきちんとしない限りは、パートが自分の置かれた位置がわからないというのが現 在の実態だということで、そこら辺のところを明らかにしていく必要があるのではない かという趣旨です。 ○横溝分科会長  30ページの上から5行目辺りに、「または就業規則を交付することにより明らかにさ れている場合にはこの限りでない」と書いてあるのです。というのは今林委員がおっし ゃったようにパートには就業規則が明示されていないケースが多いからという兼ね合い もありますので。次の2ページの「現行法においては就業規則を作成変更する際に」と いう、この論点にまで今日やるわけにはいきません。兼ね合いがありますので。 ○松井委員  それは昇給一つ取ってみてもパートタイマーの場合は有期というケースもあって、期 間の定めのない雇用契約の場合には場合によって昇給、最近は降給というものもあるの ですけれども、期間の定めのないケースで求められるものと、そもそも有期でやるとき に昇給がありますよというのは、有期の期間内において昇給がありますよということで ないと、契約の概念からいくと、うまくいかないと思います。そうするとその間で上が りますよというのか更新時に上がりますよというようなことまでを本来書くのかといい ますと、実務レベルだと結構悩ましいという点だけはまず理解をしてください。だから パートがしていないからいけないのではなくて、現実にしにくい状況もあるのだという ことはぜひ公益委員には理解をしておいてもらいたいと思います。 ○高ア短時間・在宅労働課長  参考までにデータ的なものですけれども、パートタイム労働法におきまして、雇入通 知書という形で労働条件を明示するという法制が取られた背景としてはもちろんあるの ですが、一つには勤続年数の長期化という背景があったわけです。確かにパートタイム 労働者は、今日お配りした資料において7割なり8割が有期ということは事実ですけれ ども、例えば勤続年数で見ますと17年のデータで見れば男性も女性も同じですが平均5 年という状況になっているわけで、そういう意味では確かに3カ月で終わる方だけとい うことであればそうですが、一方で長期化ということが多分平成5年当時もずいぶん言 われて、そういう中で3カ月だから昇給については外れるよということもその通りなの ですが一方でそういう状況もあって雇入通知書というツールみたいなものが導入された という状況はあった。これは単なる状況説明です。 ○佐藤委員  あまり細かいところに入っても仕方がないのです。昇給制度がなければ別にいいわけ です。しろという意味ではなく、どういう制度があるかということだけで、これですと ○をつけるだけです。ないものには○をつけなければいいわけです。ですから別に昇給 制度を入れよというようになっているわけではない。 ○篠原委員  細かいことでもないのかもしれませんが、先ほど龍井委員から言われたように改めて きちんと事業主と労働者の齟齬がないようにするということでお考えになれば、義務化 というような部分をこの場で審議していかないといけないと思います。先ほど分科会長 から就業規則というお話も出てきたのですが、前回からずっと配っていただいたパート タイム労働法の指針の過去の比較で、労働条件の明示の方法ということで、平成13年 と平成17年のそれぞれの比較の表が出てきておりました。先ほど松井委員からも話が ありましたように、全体的に文書の明示をしているという部分が52.9%から87.5%へと 伸びているというふうな形になっておりますけれども、簡単に考えればこの表で比較し ますと、就業規則を交付している所が最終的に全部減っているというような状況になっ ています。例えば総計で言うと平成13年には12.7%の所が就業規則を交付していたに もかかわらず、平成17年では3.8%になってしまった。あとそれぞれの分野で全部少な くなっている。就業規則を交付しているという部分から、労働条件通知書を交付をして いるという形に移動してしまっているということを考えれば、むしろ後退をしているの ではないかという形にも見られるのではないかと思いますので、やはりこの場で議論を していくことが必要だと思います。 ○横溝分科会長  今のご意見は、確かに平成17年は就業規則が減ってという相関関係も表われました けれども、就業規則と労働条件の明示と非常に関連が深いので、両方についてご意見い ただきたいと思います。 ○松井委員  篠原委員にご質問申し上げたいのですが、減ったことが問題だというのはどういうふ うに問題なのかということをもう少しわかりやすくご説明をお願いしたいのです。就業 規則というのは、例えば育児・介護休業法などがいろいろな形で拡充されてくると正規 従業員でも読んでいても全然わからないというくらいになっていることと、例えば退職 金が別に規則化されてくるものですと非常に膨大なものになってきているという背景か ら、はっきり言って渡されても困るくらい量が多いというものが、特に大手の企業では 実態になっているのではないかと思うのです。就業規則が渡されていないから問題とい うのはどういう趣旨なのか。就業規則が渡されていれば問題でなかったのかという両方 の面で少し教えていただきたいのです。私は別に減っていても、かえってその方に当た る労働条件がきちんと明示されている方が本当はいいのではないかと思っていますので、 その辺がよくわからないのですが。 ○篠原委員  私から見ると、この表というのは就業規則の中に明示をしておくこと、労働基準法の 中にも書いてある通りきちんと就業規則を交付してお渡しをするのが基本的な働き方だ ということで1番前に来ているのではないかと推測をして、この部分が少なくなってい るというふうに見たということです ○松井委員  わからないのですが、労働基準法の改正で契約更新のあり方をどうするか明示すると いうことになったので、パートの就業規則があるところでもこちらを使ったという可能 性があると思います。個別的にあなたは契約更新あり、更新なしとやったので、その影 響が大きい可能性があるかと思います。 ○横溝分科会長  この調査がですか。 ○佐藤委員  つまり一人一人に契約更新があるのかないのか、何回するのか明示するのが望ましく なったわけで、そうすると就業規則であなたはどうするということですから、雇入通知 書にその部分があるのです。ですからこちらを利用した可能性は高いかなと。これは推 測ですが。 ○前田委員  今、佐藤委員のおっしゃった通りではないかと思うのです。就業規則というのは多分 労働側の方もご存じだと思いますが、中身にあまり具体的なことは書いていないのです。 個々によるなどが多いのですが、実際はパート労働者が増えてきて、どこの会社でも指 針にある明示のパターンに従っているとか、個々に契約書を取り交わすということの方 が増えてきているのです。就業規則そのものを渡してもすぐどこかにしまってしまうと いうことなので、こちらを重視している企業が増えてきているのではないかと思います。 ○鴨委員  私もそういうことであると思います。であるなら、先ほどからの議論で言えばここは 努力義務にすべきだということで、何か問題が出てくるのですかとかえってこちらが言 いたくなる話が今出ているのですけれども。 ○前田委員  逆に言いますと、明示の仕方は各社いろいろな工夫があると思いますし、それぞれに ないところはないところなりにできているところもあるのだと思います。努力義務でこ れだけやっているのであれば、別にどうしても義務にして、義務にしたときにどういう 罰があるのかわかりませんけれども、そういうことまでしなくても、吉川委員の言った ように今非常にこういうことが進んできているので、このままでいいのではないかとい う議論だと思います。 ○横溝分科会長  両方大体これに関してご意見をちょうだいしたようですが、「就業規則を作成・変更す る際には短時間労働者から意見を聴く」よう努めるものとするとされておりますが、こ れについてはいかがでしょうか。このように下に実施状況が出ていますけれども、今後 のあり方についてご意見を伺えれば。 ○吉川委員  中小企業には組合そのものがない所が多いので逆にこういう意見を聴きたいといって も本人の方から嫌だというケースが結構多いのです。ですからここまで意見を聞くとい うことを義務付けることもどうかなと思います。業務外になったりとか過半数代表者に なりたがらない人というのは逆にパートには多いので組合そのものもありませんという ことが多いと思います。 ○松井委員  特に例えばコンビニとかフードサービスでパートタイマーの過半数労働者代表を選出 するというのは恐らくUIゼンセン同盟の稲垣委員がよくご存じだと思うのですけども、 これは選出するのが非常に難しいという実態は理解しておいてほしいです。現場ではい ろいろな工夫をしているようですけれども、1回も顔を見たことのない人間がその事業 所の中で誰かを投票して、イケメンだけが行くとか。ここにあまりふさわしくないので すけれども、投票をしてやるとすると、例えばどのような形で、本当の意味での過半数 労働者代表、それもパートタイマーの過半数労働者代表を選出するのかというのは、現 場では本当に苦労しているということだけは理解をしておいてほしいと思います。苦労 していない例は、UIゼンセン同盟からお聞きしたいのですが。 ○稲垣委員  どうやって選ぶかということは、それぞれ、やはりいろいろあると思います。ただ、 ここに書いてあることで、意見を聴くように努めるとなっていますけれども、ここの部 分もやはり議論すべきだと思っています。ですから、ぜひ論点の中に入れていただきた い。 ○横溝分科会長  それぞれ貴重なご意見をいただきました。「均衡処遇の確保」には今日はとても入れま せんので、本日はこの「労働条件の明示」のところで時間が参りました。これでとりあ えず終了ということにさせていただいてよろしいでしょうか。次回は、引き続き本日提 示した論点についてご議論いただきたいと思います。本日の署名委員は、鴨委員と吉川 委員にお願いします。  今後のスケジュールについて事務局よりご説明お願いします。 ○香取総務課長  毎回で申し訳ないのですが調整していますので、追って決まり次第ご連絡をさせてい ただきます。 ○横溝分科会長  それでは、本日はこれで終了とさせていただきます。 照会先:厚生労働省雇用均等・児童家庭局短時間・在宅労働課(7876)