06/10/06 労働政策審議会職業安定分科会雇用対策基本問題部会 第２４回議事録


第２４回 労働政策審議会 職業安定分科会 雇用対策基本問題部会

１　日  時　平成１８年１０月６日（金）　１２：００～１４：００

２　場  所　厚生労働省職業安定局第１会議室（１３階）

３　出席者　委  員（公益代表）
                      諏訪部会長、北村委員、椎谷委員、白木委員、宮本委員
　　　　　　  　　（労働者代表）
                      池田委員、成瀬委員、野村委員、長谷川委員、原委員、
                      山川委員
                  （使用者代表）
                      荻野委員、奥田委員、片野坂委員、成宮委員、樋渡委員、
                      郷農委員代理（森氏）、
　　　　　　事務局  髙橋職業安定局長、鳥生次長、岡崎高齢・障害者雇用対策部長、
　　　　　　　　　　生田総務課長、楪葉雇用政策課長、尾形外国人雇用対策課長、
　　　　　　　　　　秋山国際労働力対策企画官、阿部若年者雇用対策室長

４　議  題
（１）人口減少下における雇用労働政策の課題

５　議事内容

○楪葉雇用政策課長　それでは私から掻い摘まんで、最近の雇用失業情勢やその他の資
料について説明させていただきます。「最近の雇用失業情勢」と「人口減少下における
雇用・労働政策の課題」というペーパーをお配りしております。あくまでもご参考まで
にということです。

　「最近の雇用失業情勢」ですが、１枚めくると、完全失業率と求人倍率のグラフがあ
ります。平成４年から直近までの値を示したものです。グレーゾーンがいわゆる景気後
退期です。最近では、平成14年１月を谷として、求人倍率は上昇傾向に転じています。
平成18年８月の求人倍率は1.08倍です。これは有効求人倍率そのものが景気動向指数
の一致系列に入っており、ほぼ景気と似通った動きになっていることがおわかりいただ
けるかと思います。また、細い線は完全失業率です。８月の完全失業率は4.1％で、低
下傾向にあるかと思っています。完全失業率は過去最高で5.5％であったということで
す。また有効求人倍率、直近の底が平成14年１月、２月で0.51倍です。

　２頁目以降は、厳しさが残るものの雇用情勢は改善が続いていると判断しています。
完全失業率も７月、８月と4.1％です。２頁にその表が示されています。３頁です。雇
用者数がどうなっているかが示されています。18カ月連続で増加しています。４頁は有
効求人倍率です。上のほうの文書ですが、先ほど言った1.08倍あり、前月７月よりも
0.01ポイント低下したということです。その下に有効求人、あるいは有効求職、新規求
人、新規求職の数字を３カ月並べてありますが、大きな基調の変化はないと考えていま
す。

　５頁は年齢別の雇用失業情勢を示しています。18年８月の値は求人倍率、完全失業率、
さらに就業率、あるいは完全失業者数を示しています。年齢別で、24歳以下、25～34
歳、35～44歳といった形で区分けしています。特に注目されるのが有効求人倍率の男女
計で24歳以下、25～34歳が1.17倍、あるいは1.31倍で、比較的雇用の機会が多いと
いうことです。他方で、完全失業率の男女計ですが、同じ年齢層を見ると、24歳以下で
は7.9％、25～34歳では5.3％となっており、比較的高いということです。
　６頁です。若年者の失業率の状況を昭和50年から時系列で見たものです。棒グラフが
４本あり、年齢計のものと、15～24歳、25～29歳、30～34歳という仕分けにしていま
す。15～24歳は昭和50年、3.0％だったのですが、年々上昇してきており、15年で24
歳以下は10.1％と非常に高い失業率水準になったわけです。その後、若干の低下は示し
ていますが依然として高いということです。以上、最近の雇用失業情勢を簡単に報告さ
せていただきました。

　もう１つ、冊子でもお配りしていますが、昨年７月に出した雇用政策研究会の報告書、
「人口減少下における雇用・労働政策の課題」という資料の抜粋版です。表紙をめくる
と雇用政策研究会の委員名簿があります。諏訪先生、大橋先生も委員になっておられま
す。

　さらにめくると、労働力人口の見通しをしています。いちばん右側の棒グラフ、2004
年で実際にあった数字です。労働力人口、6,642万人で、年齢、階級別に分けています。
60歳以上、30～59歳、15～29歳です。実質経済成長率は2004年では2.3％でした。そ
の後も推計を行っていますが、労働力需要、労働力供給をシミュレーションしています。
2015年と2030年を示しています。2015年で２つのケース、さらに2030年でも２つのケ
ースを想定しています。左のほうが労働市場への参加が進まないケース、右側が労働市
場への参加が進むケースとしています。労働市場の参加が進まないケースというのは
2004年のときと性別、年齢別の労働力率を一定とした場合です。その場合、2015年では
約410万人労働力人口が減るということです。ただし、各種対策により約300万人増加
ということです。結果として約110万人の減少で抑えられるのではなかろうかと考えて
います。

　政策の中身ですが、例えば高齢者に関しては65歳まで働ける企業の割合を、2030年
には現在の60歳定年制度の実施割合まで引き上げる。あるいは女性の関係でいうと、
2030年に向けて男女間の賃金格差が縮小していくというものです。あるいは女性に占め
る管理職の比率が高まるといったことを想定しています。

　結果として、将来的に2030年は労働市場への参加が進まないケースでは、約1,050
万人の減少が起こるであろう。ただし、各種対策の効果により約510万人の回復で、結
果として約530万人の減、6,100万人ぐらいの労働力人口になるのではないかと考えて
います。その際の実質経済成長率は、2015年では労働市場の参加が進めば年率1.8％、
2030年では1.6％の経済成長が可能と思っています。

　最後の頁です。この雇用政策研究会では10の提言がされています。（１）若者への就
業支援、新卒採用に限定されない採用機会の拡大への取組、フリーターの正社員への登
用等があります。（２）女性への就業支援です。１つ目の○がいわゆる男女の雇用機会
均等、２つ目の○が両立支援です。（３）は高齢者への就業支援で、元気な高齢者が活
躍できる社会を作るということで、１つ目の○、定年の引上げ、継続雇用制度の導入。
２つ目の○、60歳代後半層への雇用・就業支援の検討、さらに働く意欲のある限り働き
続けることができる社会の構築に向けた検討です。（４）福祉から就労へということで、
障害の種類や程度に応じた就労の促進です。（５）地域における雇用創出への支援で、
１つ目の○が、中核的な人材の確保、２つ目の○は雇用情勢が厳しい地域を中心に、地
域の特性に応じた自発的な雇用機会の創出といったものに支援を行っていくということ
です。

（６）職業能力開発です。若年・壮年・高齢といった各世代の特性に応じた能力開発を
やっていこうということです。（７）外国人労働者、高度人材の受入れを促進すること
を示しています。（８）安心・公正な労働、誰でも安心して働ける労働条件を整えるこ
と。
（９）仕事と生活、ワークライフバランスで仕事と生活を充実させる。（10）労働力需
給調整ということで、すべての人々の就業意欲を活かすという観点を入れ込んでいます。
すべての働く意欲を持つ人々が、就業の機会に挑戦できるための募集・採用の促進を示
しています。

○諏訪部会長　それではただいまから第24回「雇用対策基本問題部会」を開催させてい
ただきます。本日は大変風雨の厳しい中をご参集いただきましてありがとうございます。

（出欠状況確認）

　それでは議事に入ります。本日の議題は前回に引き続きまして「人口減少下における
雇用対策の検討について」です。最初に事務局からまとめて資料についてご説明をして
いただきまして、その後、論点ごとに皆さんにご議論いただきたいと思います。それで
は説明をお願いします。

○生田総務課長　資料１、２、３を引用しながらご説明いたします。趣旨は前回の資料
１で、今回は資料３になっています。１頁の１の上の○です。「新たな雇用政策の目的
及び国の施策について」ということで、前回ご議論いただく際に準備したたたき台の中
に、「人口減少下において、より多くの者が社会を支えるという観点から、若者、女性、
高齢者、障害者などすべての人の就業参加の実現を目的として雇用政策を展開すること
を明らかにするため、法の目的を改めるとともに、当該目的のために実施する国の施策
としても明記すること等が考えられる」と書いてあります。国の施策として明記すると
いう具体的内容が整理されていないということもありましたので、これについてどうい
うことが想定されるのかということをご議論いただくための資料です。

　資料１に戻っていただきます。現在国の施策として雇用対策法４条１項に何が書いて
あるかが、資料１の１頁目です。説明は前回と若干重複する部分もありますが、順次読
み上げさせていただきます。４条１項の１号では、職業指導、職業紹介にかかわること
が書いてあります。これは対象者を問わないので、いろいろな対象者についての職業指
導、職業紹介が入っています。

　２番目です。これについては技能訓練、検定、職業訓練、技能検定について書いてあ
ります。これもいろいろな対象者について訓練をする、あるいは検定をすることを想定
しています。３番目は就職が困難な方についてはいろいろな方がいますが、例えば高齢
者、障害者が考えられますが、そういう方の就職を容易にして、あとは労働力需給の不
均衡を是正するために職業転換、地域間の移動、職場適応等を援助することが書かれて
います。ですから、こういう対象者とはっきりは書いていませんが、就職困難者につい
てこういう対応をするということが書いてあります。

　４番目は離職を余儀なくされた人について、円滑な再就職を実現するということが書
いてあります。５番目は高年齢者の方への対応です。定年の引上げ等の継続雇用につい
て書いてあり、再就職支援といったような考え方、あるいは年齢にかかわらないといっ
たような考え方が入っていないということです。６番目は不安定な雇用状態の是正のた
め、雇用形態の改善等を促進する。これについては季節雇用の方、あるいは期間工の方、
日雇いの方等、雇用が不安定な方について、雇用形態を改めるといったことが含まれて
います。最後にその他ということで、労働者が有する能力を有効に発揮することができ
るようにするために必要な施策とあります。

　今回、雇用対策法の改正についてご議論いただくということなのですが、その際に国
の施策として盛り込む内容については、現在もこの４条の１項でこのレベルでの規定が
されており、これから最終的に盛り込む事項についてご議論いただきますが、その中で
もこういうレベルでの記述にとどまるということだけは、最初に説明しておきたいと思
います。ですから、細かい施策の内容が具体的に書かれるということではなくて、施策
の基本的な方向が書かれているということを、最初に申し上げておきたいと思います。

　資料１の２頁目です。この説明に入る前に資料２の説明をまずいたします。資料２は
先ほど説明した雇用政策研究会報告において10の提言がありますが、その10の提言の
中に盛り込まれている施策ごとに、現在の雇用対策法でどこまでカバーしているかを書
いたのが表の左から２番目です。いちばん右端にあるのが、いまの規定がこうなってい
ることを踏まえて、今後どういうことが考えられるかについて整理しています。

　（１）の若者への就業支援は、主に職業紹介、職業指導にかかわること、あるいは能
力開発にかかわることが書いてあります。新卒採用に限定されない採用機会の拡大もそ
うですし、フリーターの正社員への登用や常用雇用化への支援です。こういったことに
ついては、いま規定としてカバーはされているのですが、いちばん右端にあるように、
５号に高齢者雇用対策が独立して規定されていることもあり、若者については特に重点
的にさまざまな対策をとらなければならないということもあるので、若者という切り口
で１項目起こすことがあり得るのではないか、ということが書いてあります。

　（２）女性への就業支援関係です。これについて３つが10の提言の中に盛り込まれて
います。１つがポジティブ・アクションを含めた男女の機会均等施策、２つ目が子育て
との両立を可能とするための働き方の見直し、保育の充実等の環境整備、３つ目が出産
・子育てにより離職した者への再就職・再就業への支援の強化です。３つ目については、
いわゆる雇用対策として、雇用対策法の中に盛り込むことが可能な意味・内容ですし、
現在も４条１項１号でカバーされているものです。上の２つについては、雇用対策法の
中に書くことが技術的にも、あるいは政策分野の掌握からもなかなか難しいということ
で、そういう意味もあり、真ん中に「労働政策に関連する課題」と整理させていただい
ています。

　ただ、今後の方向性ということで幅広く労働政策にかかわるような問題でも、職場の
雇用管理を改善していくという相当大きな概念の中ではとらえることは可能ではないか
ということで、右側に整理しています。労働力の確保や良好な雇用機会の創出のための
雇用管理の改善という切り口で、何か項目を起こすことがあり得るのではないかという
ことと、女性については現在雇用対策法の立法の中で、特別に号は起こしていないので、
５号の高齢者雇用対策が規定されているのと同じように、女性に係る対策という観点か
ら、項目を１つ起こしていくことが考えられるのではないかということです。

　（３）高齢者の就業支援です。まず65歳までの定年の引上げとか、継続雇用といった
ことについては、すでに明確に規定が雇用対策法の中にあります。それ以降、60歳代後
半層への雇用・就業支援の問題。次頁で、採用から退職までの年齢にかかわらない雇用
管理のあり方、あるいは中年期からの再就職・創業等、高齢期における多様な働き方を
視野に入れた職業生活設計の問題。シルバー人材センターの問題、こういったような問
題については、その他の条項でカバーしていることはカバーしているのですが、特にい
ま雇用対策法の中で明確にカバーしている部分はありません。ですから、こういったこ
とについては、高齢者雇用対策で非常に大きなメニューですので、１頁に書いてあるよ
うに「年齢に関わりなく働き続けることができる社会の実現」ということを打ち出して、
高齢者の再就職支援という切り口も含めた項目を起こしていくことが適当ではないか、
ということで整理しています。

　（４）福祉から就労へです。就職困難者の支援ということで、いまの雇用対策法の３
号で概念的には整理されています。ただ、就職が困難な人にはいろいろな方がいるわけ
ですが、障害者の方の雇用促進については、非常に大きな政策課題になっているので、
高齢者について特に記述があるとすれば、障害者についても重要施策と位置づけて、１
項目起こしていくことが当然考えられるのではないかということです。

　（５）地域における雇用創出への支援です。地域の自立的な発展に必要な人材の確保
等への支援については、職業紹介等のマッチングということで１号でカバーしている部
分がありますが、それ以外、例えば雇用情勢の厳しい地域等での雇用創出対策、あるい
は地方への移住を希望する退職者に対する住みやすい魅力的な環境作りといった問題に
ついては、現在その雇用対策法には規定はありません。この中で、いちばん下の地域へ
の移住を希望する退職者が住みやすい魅力的な環境作りについては、「住みやすい環境
作り」という問題なので、なかなか雇用対策法の中で手当するという問題ではないので
はないかと考えています。

　こういった地域の問題については、真ん中のクロポツにある雇用創出の問題も含め、
地域雇用対策が非常に重要な範疇となっているので、重要施策として１つ項目を起こす
ということが考えられるのではないか、ということが書いてあります。

　（６）職業能力開発です。雇用政策研究会報告で提言されている事項については、現
在の雇用対策法の２号ですべて網羅されています。いまの２号の規定ぶりが相当古いと
いうこともあるので、用例等を新しくする必要性はありますが、内容的には網羅されて
いるのではないかということです。

　（７）外国人労働者への対応です。これについては、この雇用政策研究会報告で提言
されているのは、世界で通用する専門的な知識や技術を有する外国人の積極的な受入れ
ということで、いまの入管法の考え方と基本的に一致しているのですが、専門技術的な
人の受入れを進める。２番目に「留学生の就職支援の見直し」と書いていますが、留学
生の就職支援をする。最後に日系人労働者の定住化に伴う諸問題への対応をするという
ことが盛り込まれています。

　こういった外国人労働者問題の対応については、前回の雇用対策法の見直しの中で、
外国人雇用状況報告について説明し、また、次々回の部会でも議論をいただこうと思っ
ております。外国人労働者について現実にどのような事業主の下で働いて、どのような
雇用管理がされているかといったことについて、きちんと状況把握をしていくことが、
外国人労働者の雇用管理・改善、あるいは仮に辞めたときに不法就労にならないように、
早期に再就職をしていただくために支援することのために必要ですので、こういった外
国人対策について、雇用対策法の中での位置づけを明確にしておくことも大事ではない
かということで、右端に整理しています。

　（８）安心・公正な労働です。「誰でも安心して働ける労働条件を整える」と書いて
あります。ここは労働条件とまとめていますが、主に労働基準局関係のメニューが並ん
でいます。これについては最初の「・」にある労働契約法制をどうするのかといったよ
うな問題、３頁目の２番目にあるパート、派遣、有期雇用などのさまざまな働き方にか
かわらず、職務、能力、労働時間等に応じた処遇の均衡を図るといったような問題、あ
るいは労働安全衛生の問題、労働時間制度のあり方の問題、最低賃金制度のあり方の問
題などです。

　こういったような問題については、ほかの分科会、部会での議論の対象事項になって
いますし、雇用対策法に書くということは技術的に難しいということもあるので、右端
に、より幅広い、先ほど別のところで申し上げましたが、雇用管理の改善という中でと
らえることは不可能ではないということで、雇用管理の改善というとらえ方で取り扱う
ことは可能ではないか、という整理をさせていただいています。

（９）仕事と生活、ワークライフバランスの問題です。これについてもなかなか雇用対
策法の中で書けるような問題ではないので、より大きな範疇である雇用管理の改善とい
うとらえ方なら、雇用対策法の中でもそれなりの項目は起こせるのではないかというこ
とで、整理させていただいています。

　（10）労働力需給調整です。主にマッチングの問題について書いています。現在の雇
用対策法の１号、あるいは離職を余儀なくされた人のマッチングという意味では４号、
といったところでカバーされている事項がほとんどです。ただ、（10）の下から２つ目、
創業支援の強化、在宅就業などの働き方の普及などの問題については、雇用対策法の中
で整理をすることは難しいのではないかということで、「労働政策に関連する課題」と
いう書き方をさせていただいています。

　この表のいちばん下に※で「雇用対策法は、文字通り雇用対策の基本法であり」と書
いてありますが、雇用施策について、特に４条の施策の列挙については、施策の方向性
を示すというものですので、労働基準法等に規定を設けるような事項について書くこと
はなかなか難しい、ということを書かせていただいています。以上が資料２ですが、資
料２の雇用政策研究会報告の提言の雇用対策法における整理をすれば、こんな感じとい
うことで、いまの説明を踏まえ、資料１の２頁目に戻ります。

　雇用対策法の４条で、国の施策として列挙する事項としては、現段階ではこういうこ
とが考えられるのではないかという整理をさせていただいています。いま載っていない
ので新しく加えるという意味です。１つは若年者対策です。２つ目が労働力確保や良好
な雇用機会の創出のための雇用管理の改善です。この項目で想定しているのは、例えば
介護労働者の雇用管理改善、中小企業労働者の雇用管理改善。パート労働者の雇用管理
改善はパート労働者雇用管理改善法という法律ですが、そういったようなもの。要する
に雇用管理一般についての改善について、書いたらいいのではないかというものです。

　３番目が女性についての対策、４番目が年齢に関わりなく働き続けることができる社
会の実現で、いまの高齢者対策についてそれを発展させるような内容です。５番目が障
害者雇用対策、６番目が地域雇用対策、７番目が外国人労働者対策。８番目に現在不安
定な雇用状態の是正を図るということで書かれているものに、就業形態を入れて雇用形
態、就業形態の改善を書いたらどうか。

　９番目、失業の予防ですが、これについては昭和50年に雇用保険法ができた際に、失
業予防対策は雇用保険法の中の重要な目的になっていて、雇用対策の非常に大きな柱に
なっていますが、雇用対策法の中に特に規定が設けられていません。これは41年にでき
て以来、大きな改正がないという中で、50年に改正をしなかったせいでそうなっている
のだと思います。ですから失業の予防については非常に大きな施策の柱ですので、それ
も入れたらどうかというものです。

　その下に※１、※２で書いていますが、いま説明した内容と重複しますので省略しま
す。以上が前回の議論を踏まえて、国の施策として盛り込むべき事項として、どういう
ものが考えられるのかというのを整理したものです。

　資料３の１頁目の２つ目の○です。「事業主の責務」です。若者の対策を想定してい
ることは、前回説明したとおりです。現在の雇用対策法７条に募集・採用について年齢
にかかわりなく均等な機会を与える努力義務を設けており、その努力義務を具体化する
ために12条で年齢指針を設けることになっています。これに準じたような対応を若者の
能力、あるいは経験の正当な評価、採用機会の拡大等についても行ってみたらどうかと
いうことです。

　この努力義務と指針の内容について、現段階で想定されることについて説明しておき
ます。まず、努力義務については、青少年の能力を正当に評価するための募集方法の改
善、あるいは実践的な職業能力の開発・向上、その他、雇用管理の改善を行うことによ
り、青少年の雇用機会の確保に配慮しなければならないという形での努力義務を想定し
ています。

　こういう努力義務規定を設けた上で、大臣の指針を設けたいと思っています。大臣の
指針の内容については、今年の３月、４月に当時の中野副大臣が日本経団連、日本商工
会議所にお邪魔をして、若者の応募機会の拡大について要請をさせていただきましたが、
その要請内容を想定しています。要請内容は１つは通年採用の拡大をお願いしたという
ことです。２つ目は新卒時に正社員として就職できなかった人について、新卒採用枠で
応募可能とするような取扱いができないかということ。３つ目に中途採用の拡大、人物
本意の採用。４つ目にトライアル雇用制度というのがあるので、こういうものを積極的
に活用した正社員登用の拡大について、お願いするというものです。ですから、努力義
務規定を具体化する指針の中でも、こういったことについてお願いするということを内
容としたい、ということで考えています。

○楪葉雇用政策課長　参考１、参考２としてＡ４横の図表を用いて、前回ご指摘いただ
いた事項、あるいはその他補足事項について資料説明をさせていただきます。参考１「若
年者を取り巻く雇用情勢」です。若年者の求人のスケールということで示しています。
これは大卒ということで、大学生・大学院生を対象とするものです。1987年３月卒業か
ら直近の卒業まで、棒グラフにて求人総数の推移を示しています。直近ですと、いちば
ん右側、82万5,000人という求人のスケールがあるということです。これは前年比18
％程度の伸びです。この82万5,000人というのは、1991年３月卒、84万400人で、そ
れとほぼ同じ水準になっているということです。

　次頁です。企業の正社員・非正社員の採用方針についての資料です。「今後３年間（平
成17年～平成20年）の若年労働者（正社員・非正社員）の採用方針」ということを示
しています。今後の若年者の採用方針については、正社員・非正社員ともに「ほぼ同じ」
とする企業の割合が最も高いが、正社員については「増やす」とする企業も36.4％と高
いということです。棒グラフですが、今後３年間の採用方針で、黒いほうが正社員で、
少しグレーのほうが非正社員です。「増やす」としているのが正社員36.4％、非正社員
19.4％といった数字になっています。

　３枚目です。いま36.4％という数字を紹介しましたが、その内容について聞いていま
す。「若年正社員の採用を増やす理由別企業割合」です。採用を増やす企業の割合、36.4
％を100にして複数回答を得ています。いちばん高い数字が真ん中やや上にある「企業
の将来を考え、若年正社員を育成し、技術者等を養成するため」が71.5％といちばん高
くなっています。次に高いのが上から３つ目、「企業全体の年齢構成のゆがみを是正す
る、若返りを図るため」が54.0％です。３番目としては真ん中やや下に、「社内に若年
者の新しい感性・創造性等を取り入れるため」が41.2％です。

　続いて参考２、雇用対策法制定時（昭和41年）と現在とのさまざまな比較をしました。
完全失業率で昭和40年から直近の値まで年平均で取っています。昭和40年では完全失
業率1.2％で、大体この時代は1.1～1.3％で推移していました。年平均で見て３％を超
えたのが真ん中やや右で、平成７年です。平成14年には5.4％まで高まり、平成17年
平均では4.4％ということです。

　２番として高年齢者の関係、あるいは若年層関係があります。昭和43年から平成17
年まで60歳以上、いちばん上の白いところで、30～59歳、さらに15～29歳と示してい
ます。各々の労働力人口の年齢構成比の推移ですが、60歳以上については昭和43年で
は8.7％、それが17年では14.6％ということで増加しています。他方、15～29歳は昭
和43年では34.7％の割合だったものが、17年では20.4％となっており、相当程度低下
しています。

　３番です。産業別就業者割合の推移を示しています。昭和40年からやはり同じように
平成17年まで、第一次産業の割合は低下してきているということです。４番です。従業
上の地位別就業者数の割合です。就業者というものは自営、あるいは家族従業者、さら
に雇用者で構成されています。この折れ線グラフですが、就業者に占める雇用者の割合
で、昭和40年では60.8％だったものが17年では84.8％で、大幅に増加しています。

　次頁です。５番として雇用者に占める女性雇用者の割合を示しています。これも昭和
40年から平成17年まで示していますが、折れ線グラフで雇用者全体に占める女性の割
合です。40年では31.7％、17年では41.3％で、当時は３対７の割合だったものが、い
まは４対６になっています。下の棒グラフの白いところが男性で、グレーが女性です。
昭和40年では女性雇用者913万人だったものが、平成17年では2,229万人です。1,316
万人増えているわけですが、男性が1,200万人程度の増加で、女性の増加幅が大きいと
いうことです。

　６番、進学率の推移です。昭和35年からデータを示しています。昭和40年ですが、
高校への進学率がいちばん上の折れ線グラフで、40年当時70.7％、また大学への進学率
は12.8％だったわけですが、平成17年では高校への進学率が96.5％、大学への進学率
が44.2％と大きくなってきています。

　７番として障害者の就職件数及び新規求職申込件数の推移です。昭和45年からデータ
を取っており、平成17年まであります。棒グラフで就職件数です。45年度は１万4,000
人程度だったものが17年度では約３万9,000人にまで増加しています。

○諏訪部会長　ありがとうございました。それではこれから議論に移りたいと思います。
お手元にさまざまな資料がございますように、本日は資料１で「国の講ずべき施策とし
て雇用対策法に規定することが考えられる事項」その議論のたたき台についてのご議論
をいただくことと、資料３の「雇用対策法等の見直しに係る検討課題について（たたき
台）」に書かれている「事業主の責務」として、若者の採用機会の拡大等を追加するこ
となどをめぐり、ご議論をいただきたいと思います。

　そこでまずは資料１をご議論いただこうと考えております。その範囲で、ただいまの
事務局案のご説明に関して、ご意見なり、ご質問なりはございますでしょうか。

○成瀬委員　認識が間違っていると申し訳ないので、教えていただきたいのですが。私
は職業安定分科会の委員でもあるのですが、８月24日の第40回分科会で、人口減少下
における雇用対策の検討について、検討依頼というペーパーに基づいて厚労省から依頼
されたと。それを基本問題部会で検討いただこうということで、分科会で確認されたと
いう認識をしているのです。そのペーパー自身、私は当然分科会委員なので見ているの
ですが、部会の委員の方は見ていらっしゃるかどうか分からないのですが、その辺のス
タート時点の認識が違っていていいのかどうかということと、分科会で出された検討依
頼のペーパーで、検討課題ということでは下記の事項について必要な法的整備（雇用対
策法、地域雇用開発促進法の改正）も含め検討を行うとなっています。（１）が若者、
（２）が地域、（３）が外国人、（４）その他として「女性の再就職促進、非正規労働
者の正社員化等」となっています。

　この文章をそのまま素直に読めば、これは私の解釈が間違っているということであれ
ば、ご指摘いただきたいのですが、下記の事項（１）から（４）について検討する中で、
もし必要な法的整備があれば、雇用対策法なり地域雇用開発促進法の改正も含めて検討
を行うという趣旨だと認識をしていたのです。どうも前回のこの部会での進行から察す
ると、どちらかというと、雇用対策法、地域雇用開発促進法の改正について中心的に議
論するというように、ニュアンスがかなり変わっているように見受けられるのです。そ
こは多少なりともそういう方向転換というか、軌道修正を図ったということなのでしょ
うか。

○生田総務課長　成瀬委員のおっしゃるように、分科会での検討依頼については、表題
として「人口減少下における雇用労働政策の課題」ということを前提に書いていました
ので、相当幅広に見えたということもありました。分科会の議論の中でも、相当議論が
拡散して、いろいろなテーマが当然そういう幅広いタイトルだとあります。ただ、検討
依頼のペーパーにも書かせていただいていますが、雇用対策法と地域雇用開発促進法の
改正を視野に入れてあったのは間違いない事実で、それができないと何の意味もないの
ではないかと、私どもは頭で思っていました。ただ、それに行き着くまでにいろいろな
議論があり得るということで、ああいう表現振りをさせていただいていました。

　ところが、分科会での議論があのように拡散したということもあるもので、部会での
議論に入る前に、どういう点について中心的にご議論いただくかということを示したほ
うが、混乱しなくていいのではないかと事務的にというか、実務的に考え、雇用対策法、
あるいは地域雇用開発促進法で改正事項となるようなことについて整理させていただい
た資料を提供して、ご議論いただくほうがいいのではないかと思っております。

　ただ、先ほどから雇用対策法の４条の施策で説明しましたが、とにかく幅広いわけで
す。施策のメニューを書くとしてもあらゆる分野にかかわってきますので、どうしても
何かまとめた打出しをしようとすると幅広い形になってしまいます。ただ、技術的に雇
用対策法の改正をするときには、書き方としても限界があるので、そういったことをわ
かっていただいた上で議論いただいたほうがいいのではないかということで、今回はこ
ういう資料の説明をさせていただき、ご議論をお願いしたいと思っています。

　ですから、現実論を申しますと、幅広い、例えば労働基準関係の法令についてご議論
いただいても、それは雇用対策法には書けませんので、その限界の中でご議論いただけ
ればと考えております。

○諏訪部会長　ほかにご質問、ご意見はございますでしょうか。

○成瀬委員　限界はもちろん弁えているつもりです。分科会で出された検討依頼の中の
（４）その他で、何でもかんでもというつもりはもちろんないのですが、括弧の中で例
示された２点、女性の再就職促進と非正規社員の正社員化については、少なくともそち
らで出されたペーパーで書かれているということは、何か議論してほしいという意図が
あったのではないかと思うのですが、そこについてはおいおい出てくると理解してよろ
しいですか。

○生田総務課長　ただいま説明した資料１の２頁目、「新たに国の講ずべき措置として
規定することが考えられる事項」とあります。これについて例えば女性に係る対策とい
うことで３番目に書いてありますが、この具体的な内容についてご議論いただくことは
かまわないのではないかと思っています。最終的に雇用対策法にどのように書くかとい
うと、先ほど書いてあった程度しか書けず、限界はありますが、盛り込むべき内容とし
て、例えば再就職支援が必要だということでしたら、再就職支援ということを言ってい
ただくことは非常にいいことだと思っています。

　それ以外も項目しか起こしていませんが、その項目の中身を詰めていくために、こう
いう施策が大事ではないかというご議論をいただくこと自体が、最終的にどのような要
綱を作っていくかということに役立ちますので、そういったご議論はしていただければ
いいかと思います。

○諏訪部会長　それではほかのご質問なりご意見をお願いいたします。

○長谷川委員　資料１の２頁、どのような人口減少下における雇用対策がどうあるべき
かということで、現行法としては雇用対策法があるわけですから、この雇用対策法に、
(1)から(9)について盛り込むことを想定して、議論することがいいのではないかと思いま
す。ただ、おそらく議論の過程の中で、今日もう１つ資料２で、例えば「今後重点的に
展開していくべき政策」が、研究会報告を参考にと課題が出されているのですが、この
部会でふさわしくないという言い方が、別の審議会で議論している課題があるので、そ
こは審議中なので避けていくという整理が必要だと思うのです。そうでないと、いまの
ような混乱が起きてきます。

　例えば具体的にどういうことかというと、２頁の（８）の「労働契約法制のあり方」
は労働条件分科会で検討しているわけですから、これはここで検討するのは困難だろう
と思います。また「労使のコミュニケーションの促進及び労使間におけるトラブルの自
主的な予防や解決を促すための取組」が、現行ある制度を活用するという程度なら議論
できるのかもしれないけれども、それ以上に何か新しいものを作るという議論になると、
ここでは少し不十分ではないか。

　次にパートのところでは全部入ってくるのだけれども、どこまで議論できるのかとい
うのは議論の進行次第というのがあります。あと「労働者が自律的に働き最も能力を発
揮できるような労働時間制度の在り方」というのは、これもいま労働条件分科会で非常
な議論をしているので、その辺は議論の中で、他の審議会でやっているのでここでは無
理だというようなことを整理していくことがいいのではないか。そうでないと混乱する
のではないかと思います。

　もう１つ、(9)の「失業の予防」というのがどういうことなのか、もう少し議論してみ
ないと何か見えないので、それはどういうことなのかということを議論すればいいのか
とは思います。いずれにしても、雇用政策を打つとなると、何か基本的な法律がないと
それは打てないわけですから、そういう意味では雇用対策をある意味では現在風に、こ
ういう形で直すということはいいのではないかと思います。

○諏訪部会長　それではいまの点を、生田総務課長に補足をお願いします。

○生田総務課長　いまほかの分科会や部会で議論していただいていることについては、
長谷川委員のおっしゃるとおりですので、議論の過程でもし何かございましたら、整理
させていただきたいと思っております。

　失業予防については、現段階で私どもが想定しているのは、雇用保険法の中で失業予
防ということで盛り込まれている事項で、いちばん典型的なものとしては雇用調整助成
金のことです。景気変動に対応して労働者を解雇する、といったことはせずに、休業な
り出向なり、あるいは教育訓練をして雇用を維持するということが、失業予防対策の非
常に大きな柱だと私どもは整理しています。そういった内容をきちんと盛り込んでいく
ことが絶対に必要ではないか。それ以外に失業予防に役立つようなさまざまなメニュー
が、雇用保険三事業の雇用安定事業の中に盛り込まれていますので、そういったような
ものも考えられるのではないかと考えています。

○原委員　この２頁の「新たに国の講ずべき措置として規定することが考えられる事項」
の中身について、議論してもいいわけですね。そういう意味では前回でも入口論的に申
し上げましたが、先ほど意見もありましたが、インターネットで調べたら、人口減少下
における雇用対策の検討について検討依頼ということで、（４）その他、女性の再就職
促進、非正規労働者の正社員化という、そういう意味では前回資料説明していただいた
後半の資料との連動性はあるわけなのですが、特に(1)の若年者対策の中で、こういった
ことについて議論してもいいと思うのです。

　正社員の採用ということについて、経営者にお願いをする。研究会報告では企業に対
して促すとともにと、「正社員として登用される道が拡大されるよう、企業に対して促
すとともに」という言い方をされているのですが、この具体策です。法的に何らかの条
文として経営側に対して、企業に正社員を採用するようにということを書き込むべきだ
と思うのですが、そういうことについて、厚生労働省として考え方を持っているのかど
うか。折角、ああいう資料が出ているわけなので、これをお願いするだけでは、実態論
としてはなかなかそういうことにはならないと思うのです。その点に関してはどうなの
でしょうか。

○生田総務課長　いま部会長に整理していただきました順番でいきますと、若者の雇用
対策についてはまた後でご議論いただくという整理になっていますが、一応いま申し上
げます。雇用対策法の７条で、現在年齢採用について、年齢に関わりなく均等な機会を
与えるという努力義務があります。その努力義務に基づいて雇用対策法の12条に大臣指
針を作るということで、大臣指針を作る根拠を設け、具体的に大臣告示で指針を示して
います。こういう年齢差別を基本的になくしていく方向の取組については、いちばんわ
かりやすい評価指標が、年齢不問求人がどれくらい出てくるかということです。その年
齢不問求人については、雇用対策法の改正があった数少ない改正なのですが、この改正
で年齢指針を法律の根拠も作って設けた後、一気に年齢不問求人が増えたという経緯が
あります。

　ですから第一歩として、あることを実現するときに、努力義務という形でこういうこ
とを事業主の方にお願いするという根拠規定を作って、具体的な内容としてはこういう
ことをお願いするということで、大臣指針で示していくという行政手法自体は、ある意
味非常に効果があるのではないか。事業主に十分理解を得た上で進めていただくという
上で効果はあるのではないかと思っています。そういうことをきちんと法律に書いてい
くということはやっていきたいというのが、いまの段階での考え方です。

○原委員　いまの法律の第３章で、求職者及び求人者に対する指導等という中で、そう
いうことをやっていくということですね。

○生田総務課長　そうですね。雇用対策法で現在ある第７条は第１章の総則の中に入っ
ています。この７条はどうしてこういう７条というところに入っているかというと、い
ろいろな各法律の中でカバーされていないような領域について、新たに取組を始めると
きに、ここに初めて書いたというところからスタートしているのです。すでにカバーさ
れていることについては、それぞれの法律に直接書いてしまえばいいのですが、そうで
ないようなことについて、新しく事業主の方にご協力をお願いするような内容について
は、１章の最後のところに載せるというのが法的な成立としていいのではないかという
ことで、この７条に書かれたのです。ですから、いままでの年齢指針等の取扱い等の関
係で言いますと、まず根拠規定については第１章の７条の前後はどちらになるかわかり
ませんが、この辺りに書かれるということになると思っています。

　年齢指針については、いま委員がおっしゃいました３章の12条に書いてあります。で
すから、この12条の前後の辺りに、新しく若者の雇用についてお願いすることについて
の指針については設ける、という根拠規定を作るということになるかと思います。

○長谷川委員　進め方がやはり混乱しているのです。だから今日は、今回のこの審議会
で９項目についてひとまず議論しましょうという、この確認をしてほしいのです。だか
ら、この９項目について、例えばいまみたいに全部この９項目があっちにいったりこっ
ちにいったり議論するのではなくて、今日は(1)と(2)をやりましょうと。次回は(3)と(4)を
やりますとして、いまみたいな議論を、例えば成瀬委員から女性の能力開発とか、正規
の問題でしたら、女性に係る対策のところで議論しましょうと。いま原委員が言ってい
ることについては、ここでやりましょうねというようにして、個別の議論に入ってしま
うと拡散してしまうから、まずここで進め方で、何をやるのかということで、この項目
でいいですねと。この項目を次はどうやってやるのか。今日は(1)と(2)をやるのかどうか、
少し絞って進めていただけませんか。もう話の中身に入ってしまっているので、今日は
(1)と(2)をやりましょうとしないと、成瀬委員が(3)を言っていると、今度はこっちで(1)と
なるので、そこのところを少し整理してもらえないでしょうか。

○諏訪部会長　もう一度確認をしますと、いまは資料１についてご議論いただく。その
うちの１「現在の規定事項」は(1)から(7)で、そこに新たに国の講ずべき措置として、次
の頁に書かれているこれらについて、こうした項目を扱うことがよろしいかどうか。こ
れが長谷川委員のおっしゃるとおりで１つです。いまはそこを中心にご議論していただ
いた後、次に女性ですとか若者について、先ほど申し上げましたように、資料３に基づ
いてご議論いただく。ただ、質疑の流れが少しあっちへいったり、こっちへいったりし
ながら、先走った部分もあったものですから、それの回答が行われておりましたが、い
ま長谷川委員からそういうご指摘がありましたように、実態的なお話はそれぞれのところ
でご議論いただくことにして、議論の内容は資料１を中心に、これらの項目を扱うとい
うことでよろしいかどうか、まず確認させていただこうと思います。この点は、そうい
うことでよろしいでしょうか。

○荻野委員　資料１の２頁に「新たに国の講ずべき措置として規定することが考えられ
る事項」として、９つ挙げられておりますね。私は(4)を雇用対策法に規定することにつ
いては、かなりの危惧を持っております。現状のように「高年齢者の職業の安定を図る
ため、定年の引上げ及び継続雇用制度の導入」ということであれば、大変もっともかと
思うのです。ご承知のとおり改正高齢法の下で、いま継続雇用制度の導入が各企業で行
われましたが、労使で大変苦労をしてやったというのが実情です。「年齢に関わりなく
働き続けることができる」くらいならまだしも、まだ人事管理、労務管理の実態がそう
いう状況にある中で、ここまで踏み込んだものは。

　最前ご紹介いただいた研究会報告などを見ると、「年齢に関わりない雇用管理」とい
うような書き方がしてあって、例えば定年制や年齢給制度のようなものに対して、かな
り否定的なニュアンスが入っていると思います。しかし、それは人事労務管理、あるい
は労働市場を大変混乱させますし、かえって高齢者雇用に対してマイナスの効果を及ぼ
すことが懸念されると思いますので、私は(4)を雇用対策法にこういった形で規定するこ
とは、かなり行きすぎではないかと心配しております。

○生田総務課長　この「年齢に関わりなく働き続けることができる社会の実現」のとこ
ろは、確かに現在の規定の５号、「高齢者の職業の安定を図るため、定年の引上げ及び
継続雇用制度の導入の円滑な実施を促進するために必要な施策を充実すること」という
のを発展させるものですが、どの程度まで発展させるのかというところについては、多
分いろいろなご議論があると思います。ここは項目だけを書くということで、相当幅広
い概念として「年齢に関わりなく働き続けることができる社会の実現」というのが最終
目標ではないかという気持で、項目を起こしております。

　ただ、今みたいなご議論もありますので、再検討して、どういう表現ならいいのか、
再度ご提案させていただきたいと思います。高齢者については、今は継続雇用について
しか書いていないのですが、再就職の支援というのも絶対必要だと思っておりますので、
そこは絶対に入れたいと思っております。それ以外にも気になる部分がありますので、
再度整理した上で提案させていただきたいと思います。

○成瀬委員　議論は、個々の各論に入らないようにしたいと思っているのですが。いま
議論になった(4)について、私はこの表現に賛成です。ただ、年齢に関わりなく働き続け
るということが、必ずしも年齢に関わりなく雇用管理を改善しなければいけないとか、
年齢に関わらない均等な雇用管理でなければいけないと言うつもりはないし、そもそも
実現は難しいと言いますか、事業主の皆さんのご協力も得られないと思いますので、そ
れは無理な話だと思います。ただ社会のあり様としては、雇用管理がどうあるかは別と
して、年齢に関わりなく働き続けることができるということは、やはり政策目標として
必要だと思いますので、是非よろしくお願いしたいと思っております。

○諏訪部会長　中身の議論はまたやることにして、そのような項目名をめぐって、また、
いずれ次の場面ではそんな議論が起きます、という予告編の議論を今いただいたわけです。
ここではそのようなことで、少しご議論をいただきたいと思います。ほかにご質問、ご
指摘はありますか。

○荻野委員　いま成瀬委員が言われたようなことであれば、いま現在でも、たぶんそう
ではないかと思います。別に何歳以上になったら働いてはいけないという法律があるわ
けでもありません。そういう意味でも、私は現行の雇用対策法の記述でよいのではない
かと思っております。

　もう１つは外国人についてです。雇用対策法が労働の需給の均衡を政策的に促進する
という趣旨で、特に今回は人口減少下ということで、労働力が足りなくなることを念頭
に置いた雇用対策、という部分を拡充していこうという趣旨ではなかろうかと思ってい
ます。それにおいて若年者や女性などが、いま必ずしも十分な就労の機会に恵まれない
中で、今後の人口減少を考えれば、そういったところへも就労を促進していかなければ
いけないという理屈は大変よくわかるのです。ただ、ここに外国人を並列に入れるとき
に、どういう考え方で入れていくのでしょうか。

　今後、人口減少下においては労働力が不足するから、外国人労働の活用を促進しよう
というお考えであるのか、逆に若年や女性の就労を促進させるに当たって、外国人労働
者の存在が彼らの就労をクラウディングアウトしているから、それを何らかの形で調整
しようという趣旨で入れているのか。そこを整理していただかないと、迂闊に規定する
とかなり混乱するのではないでしょうか。従来の政府の方針では、高度人材は受け入れ
るけれど、そうでない人は受け入れないということと、実態の労働市場の現実との間に
かなりのギャップがあるのは事実です。それまで考えに入れてやらないと、項目だけだ
からいいではないかということでは済まないのではないかという気がしておりますの
で、ここも是非慎重にお考えいただくと。私は、これはここの法律には書かないほうが
よろしいのではないかと思っております。

○生田総務課長　いま委員がおっしゃったように、若者や女性や高齢者で、働く希望を
持つ方については働いていただけるような環境を作っていくということが大前提で、私
どもは今回の法律の整備をしようとしているのです。それと外国人についてとは、考え
方が全く別です。外国人が日本国内に入っていただくときに、どういう方に入っていた
だくかというところについては、さまざまな議論があります。私どもの基本的な考え方
は、専門的、技術的な方に入っていただくということが前提です。そういう方以外にも
入国資格としては、例えば日系人や技能実習の方というのがいらっしゃいます。そうい
う方については、事業主に雇用管理をきちんとやっていただく必要があるのではないか
という問題意識があります。これは国内の労働者にも影響を与えるものです。そういう
方にきちんとやっていただくということは、国内の労働者にも好影響を与えると思って
います。

　もう１つは、仮にお辞めになるときに、不法就労にしないようにするということも、
労働市場政策として大事ですので、そういったことをきちんとやらないといけないので
はないかと考えております。ただ「外国人」と書いてありますので、ご不審になられる
のもごもっともだと思いますが、趣旨としては雇用管理改善と再就職を確実に実現する
という内容に限定したもので対応したいと考えております。

　それから、これはまた次々回の議論になると思いますが、外国人の雇用状況報告をよ
り強化するということで、具体的な内容について今後ご議論をいただこうと思っており
ます。それについても、いま申し上げたような目的に資するようにという観点です。雇
用管理改善を進めるということと、不法就労にならないように再就職を早期に実現する
ための手段である、ということで整理をしたいと思っております。ですから、どんどん
入れるということでは全くありません。いまの状態を前提に雇用管理の改善なり、再就
職の促進を図るという考え方です。

○成瀬委員　(8)について、「１の(6)を発展」という記載があるわけです。１頁の(6)と見
比べてみてどこが違うかというと、雇用形態の次に就業形態というのを付け加えたとい
うことなのでしょうけれども、これが何を意味しているのか。「発展」と言えるほどな
のかどうなのか。それはこれからこの場でご議論いただきたいという趣旨なのかもしれ
ませんが、教えていただきたいと思います。不安定な雇用状態を是正するために雇用形
態を改善していくというのは、非常に当たり前と言いますか、雇用状態を改善するため
に雇用形態をよくするというのは当たり前だと思うのですが、就業形態を改善するとい
うことが、雇用状態を是正することになるというところは、どういうことをイメージさ
れているのかが分からないのです。

○生田総務課長　この法律ができたときは、期間工や季節労働者について、主に通年雇
用化することを想定した条文でした。いま現在、雇用形態、就業形態はいろいろなタイ
プの方が出てきています。ここで想定しているのは、期間雇用ということでいろいろな
タイプの期間雇用の方がいらっしゃるということです。その中にはパートタイム労働者
もいらっしゃいますし、請負労働者もいらっしゃいます。そういう方は短期で、雇用が
安定しないという状態があり得るのではないかと思っております。

　特に「就業形態」と入れているのは、請負労働者のことですが、そういう方について
は雇用管理をきちんとしていただくということも含めて、できるだけ安定的な雇用に持
っていくほうがいいのではないかということを想定しております。ですから雇用管理改
善の対象者として、不安定な人をカバーするというのが(8)の考え方です。(2)のほうは常
用型のパートの方、あるいは介護労働者については雇用管理改善法というのがあります
が、そういう方で常用型の方、あるいは中小企業労働力確保法でも雇用管理改善という
のがありますが、そこでも常用型の方のように安定的に雇用している方について、より
よい雇用管理の改善という意味が(2)にはあります。不安定な方について、(8)に「雇用管
理改善」と入れてもいいのですが、そういう方の雇用管理改善が(8)です。

○郷農委員代理（森）　私もいくつか発言させていただきたいと思います。まず１つ目
は、(7)の外国人労働問題です。先ほど荻野委員がおっしゃったように、基本的に反対で
す。というのは、実はこれは労働者としての対策だけでは不十分だと思っているのです。
外国人というのは、もともと非常にたくさんの省庁が関係して、国としても今きちんと
議論をしているところですので、労働者だけを対象として不法就労云々というのは、非
常に片手落ちというか、半端ではないかと思っております。もう少し国としての対応が
きちんと固まってきたというか、対策がはっきりしてきた段階で、その中で労働者をど
う位置づけるのかという議論のときで十分ではないかと思います。

　それから(2)と(8)についてです。これも国の講ずべき措置として、少し異質ではないか
という気がしております。例えば(2)では、労働力確保と雇用機会の創出ということが書
いてあります。いま中小企業にも労確法というのがありますが、実際にこれがどう機能
しているのかという現状を見ますと、非常に疑問です。これを拡大して、国がすべての、
中小企業というのを取った形で、国の講ずべき政策として何ができるのかというのは、
現状を見ると非常に疑問です。また労働力というのは、必ずしも確保するだけが問題で
はありません。特に今回、いわゆる経済計画などの関連が切れますので、そういった意
味で時の方向からすると、こういう書き方だけで入れるのはやり過ぎではないかと思い
ます。

　(8)は雇用形態の是正とか就業形態の改善ということですが、こちらもなぜ雇用形態や
就業形態だけが問題になるのかがよくわかりません。もともと多様化ということで、い
ろいろな働き方があっていいということで進めてきた中で、ある部分だけを取って国が
講ずべきということで、あまりにもいきなり大きな問題にしようとしているのではない
かと思います。また、ある程度企業の自由度と言いますか、使用者と労働者のお互いが
合意で行われている部分も多数ありますので、それを一方的に国が是正すべきという方
向で、政策を講ずる必要があるのかという疑問を持ちます。

○生田総務課長　順番に申し上げます。まず外国人労働者の問題については、入国をど
うするか、範囲をどうするかという問題はさて置き、国内にどういうように存在してお
られるかということについて、きちんと把握確認するという枠組みづくりは、政府部内
でもこういうことをやるべきだというのが取りまとめられております。それが今年３月
に閣議決定された、規制改革・民間開放推進３か年計画です。

　その中で２つのことについて状況を把握するということが、はっきりしております。
１つは、法務省や総務省関係のことで、外国人本人から報告をきちんと取って、居住実
態を確実に把握するということです。これは本人から取るものです。もう１つが厚生労
働省の関係のことで、外国人労働者を雇ったときと辞めたときに、事業主からその状況
を把握して、外国人労働者がどこでどういうように働いているかというのを確実に把握
するというものです。この２つ以外に、規制改革３か年計画で報告が義務づけられてい
るようなものはありません。

　また、政府部内には在留管理ワーキングチームといって、関係省庁で集まった会議が
あります。そこで議論されている中に、情報を重複して取るようなことはしないように
というのがあります。必要な情報については相互に情報を交換し合えるような、調整し
合えるような形にしていくべきだと言われております。その旨は規制改革推進３か年計
画にも書いてあり、労働行政と入管行政が連携して、事業主に報告義務を重複して課さ
ないことが重要だと言われております。ですから情報の重複、報告の重複にはならない
ような形に絶対にするというのが、私どもの考え方です。

　外国人の入国の範囲については、さまざまな疑問があるものの、今後どういう対策を
とっていくにせよ、外国人がどういう形で国内におられるかという事実情報だけは、把
握しないといけないと思っております。外国人労働者については、私ども厚生労働省の
立場からしますと、実際に雇われているときに雇用管理面で問題があって、ひどい目に
遭っている外国人がいらっしゃるというご指摘もありますし、実際に辞められた後どう
なるか分からないようなケースもありますので。雇い入れられたときにどういう形にな
っているか等、辞められた直後、即ハローワークで把握するようにしたいという気持が
ありますので、お辞めになったときの情報というのはできるだけ把握したいということ
で、この閣議決定も踏まえ、状況を取らせていただきたいと思います。その報告を踏ま
え、私どものほうで事業主に雇用管理改善のためのお願いをするということだと思って
おります。そういう観点から外国人の項目については、是非設けさせていただきたいと
思っております。

　(2)の「雇用管理の改善」では、「労働力確保や良好な雇用機会の創出のための雇用管
理の改善」と書いてあります。これは国の施策として４条に列挙するという意味合いで
すが、あくまでも雇用対策の基本法として、施策の項目として書くということですので、
実際に何をやるかについては、中小企業の労働力確保法や介護労働者の雇用管理改善法
などの各法律で、雇用管理の改善を図っていくという整理のものです。ですから、ここ
にそういう施策として、要するにインデックスとしてそれを書いたからといって、全日
本的にいろいろな取組をやるというわけではないということだけは、ご理解いただきた
いと思います。あくまでも各法律に書いてあることをやる、その前提となる基本法だと
いうことで、ご理解いただければと思っております。

　(8)の「不安定な雇用状態の是正を図るための雇用形態、就業形態の改善」というのは、
先ほど成瀬委員も引用されましたが、現在も「不安定な雇用状態の是正を図るため、雇
用形態の改善等を促進するために必要な施策を充実すること」という規定があります。
例えば雇用保険法の中で、季節労働者について通年雇用化を図るという規定があり、そ
れに基づいて通年雇用化のお願いをするということをやっていますが、そういう個々の
規定に基づいて対応していくというのが本来の趣旨です。ですから各法律の下位法令の
規定の範囲を越えたようなものが、規定の４条の６号を使ってできるということではな
いということも、ご理解いただければと思います。

○諏訪部会長　いまの生田総務課長のご説明にもありましたように、雇用対策法という
のは基本法であって、いわば枠組みのカタログの項目みたいなものを列挙するものです。
雇用政策でいろいろやっているものを、バラバラに勝手にやってしまいますとよろしく
ないので、ここで全体の枠組みがわかるように、非常に縮尺の粗い、いわば日本全土の
地図みたいなものを作ろうとするものです。その中でそれぞれの項目について、どうなっていくかとい
うのはまた別なのです。これらはすべて何らかの形で雇用政策ですでに取り組まれたり、
これから取り組まれようとしている問題であって、その個々の問題全部をここでいま議
論しようとしているわけではないのです。

　そこでいま気が付いたのですが、資料１の２で、「新たに国の講ずべき措置として規
定することが考えられる事項」のうち、皆様は「規定すること」というほうに目を付け
て、それならば規定する内容はこうでなければいけないとか、そんなことを規定しては
困るというご議論をされているのです。しかし「考えられる」というほうに目をやりま
すと、実は長谷川委員のご発言のように、こういう問題をこれから規定するかどうかは
別として、ともかく項目として考えられるから、議論をしながら、その結果こういう基本の骨格は
やはり法の中に書いておこうというようになるかどうか、これを進めていこうというわ
けです。その点を念頭に入れてください。ここだけをやっておりますと、入口からちっ
とも中に入れませんので、お願いしたいと思います。

○荻野委員　外国人労働者の件ですが、私は依然として、国の講ずべき措置として規定
することは考えないほうがいいと思います。先ほども申し上げたように、いま生田課長
がおっしゃった雇用報告を出すことを義務化するというのは、我々も決して否定的では
ないのです。経団連も提言でそれを出していますので。ただし雇用対策法には書かない
ほうがいいと思います。例えば職安法がいいかどうかは別として、職安法とかほかの法
律に書くと。先ほど森さんからもお話がありましたように、全体がよく見えていない、
実態と政策が非常に乖離している中で、労働力需給の均衡を目的とした雇用対策につい
て決める法律に、いま外国人労働者というのを定めるのは、やめておいたほうがいいの
ではないかと私は思っています。

○諏訪部会長　これもいちいち生田課長に答えていただきますと大変なので、ともかく
今はご意見として伺っていきます。

○原委員　中身は別にしてということでいいのですね。

○諏訪部会長　はい。

○原委員　項目としては情勢に対応していて、非常にタイムリーな項目ではないかとい
うことで、これにはすべて賛成という意見を申し上げておきます。

○野村委員　項目ということですので、濃淡はあると思いますが、基本的にこの９項目
は必要な部分だろうと思っています。外国人労働者対策の部分で意見が出ているようで
すが、この外国人労働という問題は、１つには国内の問題であるとともに、一方で実際
に海外から来ている外国人と言いますか、海外の労働者の問題でもあります。国際的に
は「外国人労働」と言うよりも、たぶん「移民労働」という言い方をしていると思いま
す。我々も建設の関係で、国際組織といろいろ議論をしています。そういう視点から考
えますと、これは国内問題であるとともに、実はある意味でグローバル的な海外との問
題、国際的な視点、課題ということもあると思います。どの辺まで書き込むか、どうい
う内容に触れるかは少し議論の余地もあろうかと思いますが、労働という部分でもこう
いう視点をしっかり持っているということは、私は項目として挙げておくべきではない
かと思っております。

○奥田委員　この９項目については、私も基本的に賛成です。ただ、いまも意見が出ま
したように、どういうところまで踏み込んで書くかです。外国人労働の問題も、労働が
正当化されていないのに、それを前提に書くとすると問題ではないかなど、その中身に
ついては各項目のいろいろな場面で、たぶん議論が出てくるだろうと思います。そうい
う議論をするという前提で、この９項目については賛成します。

○諏訪部会長　中身がどの方向へ行くか等については、いろいろご意見はあろうかと思
いますが、これらの９項目に関して議論を進めていくという線では、大体ご了解いただ
いてきたと思います。若年者、女性、障害者、外国人労働者等にかかわる対策を、国の
講ずべき措置として追加するという問題については、今後さらに議論を深めていくとい
うことで、先へ進めようと思います。

　入口のところはこういうことで、引き続き次のステップに入らせていただこうと思い
ます。それは資料３「雇用対策法等の見直しに係る検討課題について（たたき台）」と
いう部分です。この点について皆様のご意見をいただきたいと思います。もちろんご質
問も結構です。

○生田総務課長　資料３の上から２つ目の○の若者対策の部分です。「事業主の責務」
ということで、「現行法において、(1)再就職の援助、(2)募集・採用時の年齢制限の是正
が、事業主の努力義務とされているが、これらに、若者の能力、経験の正当な評価及び
採用機会の拡大等を加えるとともに、国は事業主が適切に対処するために必要な指針を
策定すること等が考えられる」という部分が、若者対策にかかわる部分です。私どもと
しては、まず個別的な課題の中での若者対策について、ご意見をいただければと考えて
おります。

○諏訪部会長　私の説明が中途半端でした。こうした問題を議論していただくうちの(1)
が若年者対策であり、それとのかかわりでたたき台の中の「事業主の責務」の「現行法
において」という部分を中心に、ご議論いただきたいと思います。

○片野坂委員　事業主の責務の努力義務の解釈は、文字どおり努めなければならないと
いうことで取っていいのでしょうか。つまり努力せよということに対して、企業側は「わ
かりました、努力します」という関係でいいのでしょうか。先ほどの大臣のガイドライ
ンは、経団連に要請をしたということでしたが、そういう重みであるというように受け
とめてよろしいのですか。

○生田総務課長　現在の７条で年齢の制限についての規定がありますが、ここの文末は
「年齢に関わりなく、均等な機会を与えるように努めなければならない」となっており
ますので、これを参考にしながら規定していくという形になるかと思います。大臣指針
ということで、具体的な中身については、今年３月31日に日本経団連のほうに副大臣が
お願いに上がりました。また４月13日に日本商工会議所にもお邪魔しました。その際に
申し上げた内容を、もうちょっと詳しく申し上げます。

　１つ目が新規学卒について、学生の応募機会を拡大するという観点からも、通年採用
を進めていただくということです。ですから学生の応募の機会を拡大するように、通年
採用を進めていただきたいというお願いを、最初にさせていただきました。２つ目です
が、併せていわゆる就職氷河期に就職活動を行ったが、希望しつつも正社員としての就
職ができなかった若者についても、こうした新規学卒採用枠でも応募することができる
ような取組を拡大していただきます。ですから、いわゆる年長フリーターについても、
新規学卒枠で応募するような機会を与えていただければいいということで、お願いをし
ております。３つ目は、中途採用の拡大にも前向きに取り組み、特にフリーターについ
て、あらかじめレッテルを貼ることなく、人物本意での採用を行っていただきます。フ
リーターだから駄目ということではなくて、人物本意で採用していただきたいというこ
とです。４つ目は、最初から正社員ではなくても、トライアル雇用を積極的に活用して
いただき、正社員になるための門戸を開いていただくということをお願いしております。

　指針に規定を設ける際には、この文章のとおりになるかどうかは分かりません。指針
ということで、技術的にいろいろな表現の工夫はしないといけないと思いますが、こう
いった内容が核になるものだと考えております。

○原委員　やはり事業主の責務ということで、いま正規社員、非正規社員の問題が大き
な問題になっているわけです。この研究会の報告では「多様化」という言葉がかなり頻
発していますが、雇用形態、就業形態にはいろいろな問題がありますが、とにかく多様
化というものを是とするかどうかという問題もあると思うのです。そういう意味で人を
採用するときには、正規社員と非正規社員の割合に一定の規制を加えるようなことも含
めて、単に経営団体に対して要請をするだけではなく、やはり経営者側にも社会的な責
任があるわけです。

　前回も申し上げたように、マクロとミクロの論理では、一般的にどうしても人件費の
安いほうに流れていきます。日本全体のことを考えたら、そういうことを放置していい
のかという問題になってきます。そこに対して厚生労働省としてのイニシアチブと言い
ますか、法的な規制をしないことには、日本の場合は駄目なのです。そこまで踏み込む
というお考えがあるのかどうか、そういうことについて先ほど質問したわけです。単に
お願いするだけではなく、何らかの法的な手立てを打つということで、考え方をお伺い
したいと思います。

○生田総務課長　今回の若者についての努力義務規定と指針の問題については、こうい
った内容について、今後社会に普及していくためにどういう手法を取るかという選択の
問題になってくるわけです。年長フリーターの就職を進めるという観点からすると、よ
り進めるためには規定を強化すればいいという言い方もあるのかもしれませんが、ただ
現実論として実際に入社した後のことも考えると、事業主に自主的にいろいろな工夫を
していただくことを促すほうが、長い目で見ていいのではないかというのが、私どもの
考えとしてまずあります。

　年齢制限について、それを是正するためのさまざまな工夫をする際、従来も法律上の
根拠が何もない中で企業の方にお願いするということではなくて、雇用対策法の中に法
規定をきちんと設けて、それに基づいて指針の中で、こういう具体的なことをお願いし
たいというものを書くことによって、現実に年齢不問求人が減ってきたという事実があ
るわけです。ですから、まずは法的な対応として、こういう努力義務規定を設けて、そ
れに基づいて具体的にこういうことをやっていただきたいというものを、指針に書かせ
ていただきます。それを使って企業の方にお話をしていくというやり方が、まずいいの
ではないかというのが私どもの考え方です。ですから今回は是非、そういう対応をさせ
ていただきたいというのが私どもの考えです。

○原委員　それはそうかもしれませんが、やはりもうちょっと機危感を持つべきだと思
います。現実の職場では、正社員と非正社員とが置き換わっているわけです。例えば派
遣労働者の場合、一時しのぎのピンチヒッターで雇うのではなく、常態的に正社員を採
用するよりも派遣社員ということで、現実問題、職場ではもう置き換わっているのです。
そういう実態と、前回のアンケート報告でもあったように、「正社員になりたかったけ
れどもなかったので派遣社員として働いている」というのがあります。本人の希望で、
私は絶対に正社員は嫌だ、派遣でという人も中にはいるかもしれませんが、正社員の口
がなかったので派遣で働いていますと。法律で書き込むかどうかは別にしても、この２
つの実態を見ていただいて、厚生労働省の考え方として、法律は法律として、あとは指
導の強化の問題として、単にお願い、要請だけではなく、何らかの具体的な措置を検討
すべきではないかと思います。

○野村委員　若年者雇用対策について、いろいろな形での法整備がされてきていますが、
高齢者等々の雇用対策と言いますか、支援というのは、結構手厚くされてきたという経
緯があるのではないかと思っています。反面、時代を担い、これからの日本を支えてい
く若年者に対する雇用対策、支援策という意味では、いままで若干手薄の感ありと私は
受けとめています。そういう中で今回、若年者雇用対策をしっかりやっていこうという
考え方は、評価したいと思っております。

　厚生労働省ですので、「フリーター」や「ニート」という言葉が、それほど頻繁に使
われていないところは、さすがだなと思っております。というのは、いろいろな研究会
などに行きますと、とりわけ若年雇用対策と言いますか、若年雇用の問題としてフリー
ター・ニートというのが、ある意味で枕詞のように使われているのが散見されます。実
はご承知のとおり、フリーターとニートというのは、私は全く性質を異にするものだろ
うと思います。フリーターの中でも、１つは「夢追い型」という言い方をされるのかも
しれませんが、自分の希望なり目標を持って、一時期はフリーターと言いますか、非正
規で仕事をやっていても、１つの目標に向かって努力をしていくタイプの方もいらっし
ゃるでしょう。また「やむを得ず型」という方もいらっしゃる。そういう意味ではフリ
ーターとニートはしっかり内容を分けて、それぞれ個別の施策というものをしっかり考
えていく必要があるだろうと思います。

　とりわけニートというのは、はっきり言って働かない、勉強もしない、就業訓練も受
けないということですので、雇用対策という切り口で対応すること自体、私はちょっと
難しいのではないかと思います。もっと言えばニート的なものは、もう少し教育的な視
点、それも家庭教育、学校教育、地域教育といったいろいろな意味での教育を全体的に
視野に置きながら、対策をすることが必要だろうというように思っております。いずれ
にしても「フリーター」「ニート」と言われるような人が増えてきていることは確かで
すので、今後は若年労働者に対するより手厚い支援と言いますか、対策が必要になるだ
ろうと思っております。

○諏訪部会長　それでは今のことに関連したご意見をお願いします。

○宮本委員　いまの野村委員のご発言に関連してですが、フリーターとニートを別もの
として扱うという認識は、かなり事実誤認があるように思います。フリーターとニート
の境界線は、かなり薄い壁なのです。フリーターの中の不安定な人たちとニート状態の
人は、時間の系列の中で追っていくと、ジグザグな経路の中でニートの状態になったり、
ニートの状態からまたバイトに戻ったりということが実際には多いので、不安定な非正
規雇用がニートをつくっているという実態があるのです。そういう点でニートは労働対
策ではないという扱いは、非常に間違いがあると思います。

　一方でニートの中のある部分に関しては、例えば(5)が「障害者雇用対策」というカテ
ゴリーになっていますが、働くことの困難を抱えている人の中に、障害者認定は受けて
いないけれども何らかの要素のある人たちがいて、その中のある部分が、年齢的に言う
と若年者の中に見られるということがありますが、その人たちもいまは「ニート」とい
う言葉で扱われているのではないかと思います。そういう点でフリーターとニートを分
けるという、世間でかなり流布している見方自体を改めないといけないのではないかと
思います。

　それに加えて、資料３の「事業主の責務」の２行目に、「若者の能力、経験の正当な
評価及び採用機会の拡大等」とありますが、実際のところ事業者側からすれば、能力が
あればいつでも採用しますという言い方を常にするわけです。そうすると能力がない、
つまり長年フリーターをやっていて能力が付かなかった人たちは、だから採用できない
という形で撥ねられてしまって、年齢制限の規定を除外しても、結局引っかからないと
いう問題になりかねないと思われます。そういう点で言うと、能力の養成という問題が
常に付きまとってきます。これは重要な公的責務、事業主責務と並ぶ公的責務という問
題があるかと思います。

　経験の正当な評価等に関しては、正当な評価基準が明確でない中での能力問題という
のがあるので、その辺りのところと抱き合わせで、事業主責務と公的責務ということを
入れていかなければいけないのではないかと思います。

○野村委員　宮本委員から私の発言に対するご示唆をいただきましたので。委員のお話
も、おそらくそういうことだろうと、私も思っております。ニートとフリーターをそん
なにきれいにピッタリ峻別しろということで言っているわけではありません。私は労働
対策ではなくて教育と言いましたが、これもすべて教育でやれという話ではありません。
当然、労働対策の部分も必要だとは思いますが、やはり教育的な視点というところもし
っかり置かないと、労働対策だけでニートの問題を解決することは、私は不可能ではな
いかという思いを持って発言させていただいていますので、その辺をご理解いただけれ
ばありがたいと思います。また何かありましたら、ご教授いただければありがたいと思
います。

○生田総務課長　まず若者の対策については、いま各委員ともご指摘になりましたよう
に、従来あまり力を入れてこなかったというところがあります。それは日本の労働市場
が新規学卒でそれなりの採用が進められて、若者の雇用は比較的安定していると言われ
ていたことが原因です。ただ、ここ２、３年、ようやくそれなりの対策をとるようにな
ってまいりました。今回、雇用対策法の中で若者の規定を設けることについては、若者
の雇用対策という意味では初めてのものです。第一歩を記すことになるのかなというよ
うには考えております。

　フリーターとニートの区分けについては、確かに限界領域がなかなか見つけにくいと
いうところがあります。ニートの中でもある意味障害者とのかかわりで、発達障害のよ
うな方が含まれていたりするということは、現実に私どもも把握しております。そうい
う方については、両対策の間のつなぎをうまくやれるような工夫が必要ではないかと思
っております。ですから障害者対策の中でも発達障害といったタイプのものについては、
いま力を入れております。私どもも若者の相談窓口でそういう方が見つかったときに、
うまく対応できるような枠組みを作っていくべきだと思っております。

　能力評価の問題については、規定にどう書くかという問題がもちろんありますが、ま
ずは２つあります。１つ目に私どもは、フリーター経験のある人について新規学卒扱い
で採ってくれないかという言い方をしております。いままでの職務経験は必ずしも評価
しないで、新規学卒でなくても、新規学卒扱いで採っていただけないかということで、
そういうものも概念に含まれるような形にしたいというのが１つです。

　もう１つは、私どもの今後の新しい政策の中で、フリーターでの職務経験というのを
うまく評価できないか、そういう工夫があるのではないかと考えております。例えばコ
ンビニや外食産業で働いた方については、こういうところについては能力がきちんと評
価できるのではないかというものを取り出して、マッチングのときにハローワークでも
活用しますし、事業主にも知っていただくという工夫ができないかと考えております。
若年者雇用対策としていま考えている体系について、掻い摘んで担当のほうからご説明
します。

○阿部若年者雇用対策室長　若年者雇用対策の関係での簡単な考え方を、私のほうから
少しご説明申し上げたいと思います。「フリーター」とか「ニート」とか、いろいろな
言い方があると思いますが、私どもとしては若者にきちんとした仕事に就いてもらうた
めに、私どものいちばんの現場はハローワークですから、ハローワークの現場において、
個々の求職者の状況に応じた形で対応していこうと考えております。ハローワークの中
でも一般所では、ほかのお客様がいろいろいる中では相談の機会や時間もなかなか取れ
なかったり、ということもあろうかと思います。このため、例えばヤングワークプラザ
では予約制により、きちんと何回か面接を繰り返していくという形でやっていこうとか、
今までどんな仕事をしてきたか、どんな経歴できたかということは、当然相談の中では
聞かせていただきますが、それを前提としたものではなくて、その人の今の状況に応じ
た形で対処していけるように取り組んでいこうと思っております。

　あと、現場としてはジョブカフェとか職業能力開発局の施設など、若者向けの施設が
いくつかあります。それぞれの状況に応じて利用したほうが適切な施設もありますので、
そういった所で個人個人の様子に合わせて対応していくということで、取組を進めてい
きたいと思っております。

○成瀬委員　２つの質問と１つの意見があったのですが、１つ目の質問は、先ほどの生
田課長のご発言の中でわかりました。要は、この２行目に「若者の能力、経験の正当な
評価及び採用機会の拡大等を加えるとともに」とありますが、若年者雇用対策として若
者の採用機会の拡大というのは非常にわかりやすいと思います。ただ若者の能力、経験
の正当な評価というのが、若年者雇用対策としてどういうつながりがあるかというのを
聞きたかったのです。それは先ほどのご発言でわかりました。

　ただ、この能力、経験の正当な評価というのは、採用時のことだけをイメージされて
いるのですか。それとも若年者で一旦就職しても定着率が低く、すぐに離職してしまう
人が昔に比べれば増えているわけで、入社した後、もし若者が能力、経験が正当に評価
されていないと思っているという状態があれば、それも改善していくことを含めて考え
ていらっしゃるのかどうかです。ここは質問です。

　意見という意味で言うと、もう少し広く考えると「能力、経験の正当な評価」という
のは、必ずしも若者だけに必要なことではなく、すべての年齢層において必要ではない
でしょうか。特に若者に対してはということなのかもしれませんが、全年齢層に対して
もそういうことが必要だという趣旨も、どこかで触れたほうがいいのではないかという
気がします。

○生田総務課長　これはいわゆる年長フリーターについて、集中的にできるだけ安定し
た形で働いていただく対策をとりたいという趣旨での規定ですので、若者重点の規定を
想定しております。趣旨は応募機会の拡大というのが最終目標ですから、新規学卒でも
そうでしょうけれども、採用の段階で将来のその人の能力の発達可能性なども考えなが
ら採られていると思いますので、能力の正当な評価というときには、将来の可能性につ
いても判断されているものと私どもは思っております。そういうものも含めた正当な評
価を踏まえて採っていただきたいという意味です。

○成瀬委員　将来とは言いつつも、直接的には採用時ということですね。

○生田総務課長　採用時に、将来見込まれるようなものについて判断されるのでしょう
けれども、採用時のことです。

○成瀬委員　わかりました。

○荻野委員　事業主の責務全般について、意見を申し上げておきたいと思います。「若
者の能力、経験の正当な評価及び採用機会の拡大等を加える」ということですが、能力、
経験の正当な評価というのは当然のことですし、経団連の経労委報告にも、能力、経験
を踏まえ、人物本意で採用しましょうと書いてありますので、これは誠にそのとおりで
はなかろうかと思います。ただ一方で我々が採用するときに、職歴というのは当然非常
に重視するわけですから、そこのところを甘く見てほしいというようなことは勘弁して
いただきたいのです。もちろんフリーターだからといって、一律に門前払いをするのは
やめましょうというのは、誠にそのとおりだと思っておりますので、そういった趣旨で
お願いしたいと思います。

　もう１つは、採用機会の拡大というのも、ビジネスを大きくしていって会社を成長さ
せ、それに伴って採用機会が増えるという一般論としては、全くそのとおりですし、そ
ういう限りにおいてはいいだろうと思うのです。一方、先般のように経済の不振が非常
に長く続いて業績も厳しいというときですと、それこそ能力のある人で是非ほしいよう
な人でも、採用をゼロにしないと次の株主総会を乗り切れないということもあるわけで
す。ましてや、そういった中で高齢者の雇用も拡大しろとか、我々はいろいろな政策的
要請を受けているわけです。ここも訓示的にお書きになられるのであれば、そうかなと
思いますが、あまり具体的な政策にしないでいただきたいというのが、率直なところで
す。

　通年採用については、特にいまは需要があるということもあって、通年でやっている
ケースが非常に多いのではないかと思いますが、一方でニーズを超えて採るということ
は、普通は考えにくいのです。新卒などは労使双方、いろいろと問題があるのでしょう
けれども、非常に集中的に短期間に採用活動、就職活動が行われるという実態もあって、
早い者勝ちみたいな状況がある中では、やはり一定の時期にピークを越えると、その先
は採用の機会がなかなか広げにくくなってくるという実態もありますので、そういった
実態に配慮いただいた指針にしていただければありがたいと思います。

　もう１つ、新卒応募枠に既卒の人もというお話があります。まさに「第二新卒」と言
われる者の相当数が、職歴や経験・能力等は不問で、新卒と同様に採ってから中で育て
るということで、卒後２年、３年くらいの人などは、採用は結構拡大していると思いま
す。そういうことをこれからもどんどんやっていこうということであれば、それを否定
するものではありませんが、ひとつお願いしたいのは、採用選考のプロセスまで新卒と
同じにしろと言われるとつらいのです。いま我々がやっている新卒採用というのは、新
卒者という非常に限られたターゲットに対して作り込まれたものになっていますので、
そこに既卒の人を入れ込むと、相当効率が下がるという印象を持っております。既卒の
人については、それなりにいろいろと聞きたいこと、確認したいこともあるわけですの
で、採用プロセスが別になるということについては、是非ご容赦いただければと思って
おります。

○白木委員　いまご意見がありましたが、若者の能力、経験の文言については、いろい
ろな議論が出ていますね。これを極端に言いますと、若者の能力、経験を正当に評価す
るというよりは、若者の能力、経験が今はないのを正当に評価してくれと言うべきで、
多分それが正しいと思うのです。あるいは現在価値は小さいけれども、将来価値は大き
いと。表現は難しいのですが、実態はそういうことを言おうとしているのではないかと
思います。ただ、これを素直に読みますと間違って読まれる可能性があって、議論が出
ているのではないかという感じがします。これはちょっと工夫したほうがいいのではな
いかというのが１つのコメントです。

　もう１つは、ちょっと広がってしまいますが、今日提案された９つの問題領域は、対
象者別のテーマと領域問題別のテーマが混在していることは、もうすでにお分かりのと
おりだと思います。若者と女性、障害者、外国人というのが対象別になっていますね。
その間に領域別をはさんでいます。しかも例えば若年者を議論しますと、２番の問題、
４番の問題、６番の問題、８番の問題のすべてに関連するということですから、例えば
今日はテーマを対象別に議論されて、領域別のものは毎回議論をするという形でやって
いかないと収まらないのではないかという感じがいたします。ですから、これからの進
め方について、少し考えていただきたいと思います。

○諏訪部会長　申し訳ございませんが、時間の関係でこのご議論は、とりあえず今日は
ここまでにさせていただこうと思います。最後に森代理、どうぞ。

○郷農委員代理（森）　ここまでということは、場合によっては後の機会でも、こうい
う問題について発言する機会があるという理解でよろしいですか。


○諏訪部会長　今日まだ結論が出ているわけではありませんから、今後とも検討をして
いく過程で、もしその時でよろしければ、その時にお願いしたいと思います。

○郷農委員代理（森）　先ほどの荻野委員のご発言の拡大と言いますか、参考までに申
し上げたいことがあります。採用機会の拡大というときに、通年採用を努力義務化とい
うイメージでおっしゃいましたが、実態は非常に多様です。例えば中小企業ですと、や
はり人事などの専任者がおりませんので、新卒が市場に出てきたときに効率よく採用活
動をやるのが精一杯なのです。社長などが面接をする場合、面接に来たら年がら年中受
けなければいけないのかというと、非常に苦痛です。これが義務化されてしまいますと、
難しい問題があります。通年採用というのは、理屈としては美しいのかもしれませんが、
現実問題、中小企業ではなかなか難しい実態があるということを、念頭に置いていただ
きたいと思っております。

　それから若年者対策というのが、事業主の責務だけなのかというのが、非常に疑問に
思っております。研究会報告では確かに企業と地域や学校との連携とか、たくさん出て
きたはずですが、なぜか雇対法に落とすと、事業主の責務だけの若年者対策になってし
まうというのが、非常に小さすぎるのではないかという疑問を若干持っているのです。
いかがでしょうか。

○諏訪部会長　最後のところだけは質問になっていましたので、生田課長、答えてくだ
さい。

○生田総務課長　まず全体的に企業の採用実務は十分勉強させていただいて、それとの
整合性がきちんと取れる形で、若者の採用についての指針を作っていく、あるいは規定
を作っていくようにしたいとは考えております。それから雇用対策法の規定の内容、こ
れには雇用対策法の性格というのもあるのですが、国の責務と事業主の責務というのが
中心になった法律ですので、どうしても雇対法の中で整理をする過程では、事業主の責
務というのが、法律の中に書き込む項目立てとしては出てきてしまうわけです。もちろ
ん、それ以外のことを一切やらないというわけではありません。具体的な雇用施策の展
開の中で、雇用政策研究会報告の中に盛り込まれていることでやるべきことについては、
私どもとしても取り組んでいくという考え方です。

○諏訪部会長　まだいろいろご意見があろうかと思います。しかし今日予定された時間
になりましたので、本日はここまでにさせていただきます。本日の前半部分は、一応そ
ういう問題を扱っていくということで、皆様のご了承を得たと思いますが、それぞれの
中身のほうに入りますと、議論も十分に尽くされていないようですので、「若者の能力、
経験の正当な評価及び採用機会の拡大等」を事業主の努力義務とするとともに「国は事
業主が適切に対処するために必要な指針を策定すること」については、今後さらに議論
を深めていくこととしたいと思います。

　なお、本日議論が尽くせなかった部分に関しては、資料３のたたき台に掲げられてい
る各論点について、ひと通り議論をした後で、改めて議論をさせていただきたいと思っ
ております。そこで順番に内容を検討していくということで、次回は地域雇用対策につ
いて議論いたします。どうぞよろしくご了承いただきたいと思います。これ以外に何か
ご意見、ご質問等はありますか。

　ほかに特にないようでしたら、本日の部会は以上をもって終了させていただきます。

（署名委員指名）

次回は10月24日の火曜日、10時からです。場所は17階の専用第18会議室で開催いた
します。どうぞ次回もよろしくお願いいたします。本日の会議は以上をもって終了いた
します。どうもありがとうございました。

（照会窓口）
厚生労働省職業安定局雇用政策課雇用政策係
                                      　　　　　ＴＥＬ：03-5253-1111(内線5732)