資料5−2

振動障害等の防止に係る作業管理のあり方検討会検討課題等について

名古屋大学 榊原久孝



(表示)

・ 表示の対象とすべき振動工具をどう定義づけるか。

振動障害等の防止が目的なので、表示対象は産業用に使用される振動工具を対象とすることで良いかと思います。

・ 日曜大工等職域以外での使用が主用途なものを表示の対象とすべきか。

日曜大工などの職域以外が主用途の工具は対象から除外する。

・ 海外からの輸入品についてどうすべきか。国内中小メーカーについてはどうするか。

海外、国内中小メーカーを含め、対象振動工具についてはすべてのメーカーを対象とする。関連して、中小メーカーで振動・騒音測定ができないメーカーのことを考慮して、チェンソーの場合のように、どこかに測定を依頼できる機関を準備しておく必要がある。

・ 表示すべき事項は何か。どういった表示方法とすべきか(記号等の表示は必要か)。

振動、騒音、重量などで、説明書での表示とともに、工具にも表示する。

・ 騒音レベル、振動レベル等を表示すべきとして、騒音レベル、振動レベル等の測定、評価方法をどうするか。どういった国際・国内規格に準拠させるべきか。複数の規格を併用(一定の換算評価により、複数の国内・国際規格による準拠)を容認すべきか。

国際的統一性をもたせるために、国際規格(ISO)を基準として、なければそれに準じるEN規格を使用する。これらの基準を可能ならJIS化する。

・ どこに表示すべきか。機器に表示する以外に表示することが望ましい箇所があるか。

説明書および工具に表示する。各工具の騒音、振動、重量などの情報を集約して、購入者が比較できるようにホームページでも公表する。

・ すでに構造規格で表示が義務付けられているチェーンソーについては、どうすべきか。

チェンソーについても、今回検討される方法に統一する。特に振動測定の方法は、日本独自の方法が用いられているので、国際的方法に変更する必要がある。

・ 構造規格の適用外である40CC未満の排気量のチェーンソーについても、表示制度を導入すべきか。

産業用のチェンソーであれば、40CC未満であっても表示制度に含める。

・ 表示制度が導入されたとして、ある種類の振動工具が、いずれも高い振動レベルのものしか流通しておらず、このため、より低振動工具の選択ができないということは生じえないか。生じうるとして、この事態にどう対応すべきか。

まずは具体的に発生する振動値を表示する制度を整備することが大切であり、高い振動レベルの工具は、作業管理で対処することになると思います。

・ すでに流通している振動工具についてはどう取り扱うべきか。

猶予期間をおいて、全ての工具が表示されるように義務でづける。


(作業管理)

・ 作業管理の対象とすべき業務をどう位置づけるか。

EU指令と同じく、2.5m/s2以上の振動工具を使用する業務を全て対象とする

・ 指針で示されている作業管理項目に修正が必要か。

現在作業時間による管理(たとえばチェンソーで2時間以内)となっているが、工具振動に応じた8時間等価振動レベルを基準にした振動暴露管理または作業時間管理とする。

・ 労働者に対する安全衛生教育にあたって、追加すべき教育項目があるか。

EU指令のように、作業管理対象となった労働者には、振動の人体影響、作業管理、健康管理などについて情報提供することとする。

・ メーカーの振動レベル表示値を作業時間規制にどう関連づけるべきか。

8時間等価振動レベルを基準とした作業時間規制とする。

・ 林業において主に使用されているチェーンソーについては、大幅な作業時間の延長許容が考えられるが、前田先生の実態調査によると、チェーンソー取り扱い労働者の1日使用時間は2.7時間程度であるが、なおも新規振動障害が発生している。このような現状下で作業時間2時間規制を取り払うことが妥当か。

原則として8時間等価振動レベルを基準とした作業時間規制として、振動レベルが低ければ2時間以上の使用は可能となる。

・ 逆に、振動レベルが大きいものだと、1日当たりの作業時間が数秒というケースがありうるが、こうした場合に、1日あたりの作業時間規制以外に例えば1週間当たりの作業時間上限を許容する等の対応は必要ないか。

1週間あたりの平均としての振動暴露管理・作業時間管理は許容できると考える。

・ 振動レベル以外に作業時間規制に影響させるべき要因はあるか。

2.5m/s2以上(約3.5m/s2以下)の振動工具を使用する場合であっても、1日使用時間は4時間以内にすることを推奨する。

・ エクスポージャーをどう考えるべきか。作業現場における測定の必要性は。また、測定手法、測定頻度、評価方法は。測定評価結果をどう作業時間規制と関連づけられるか。

工具表示は、工具出荷段階のものであり、ISOやENの国際的基準に基づいた測定法で測定された値とする。 作業管理においても、その表示された振動レベルを活用して作業時間管理を行うことを基本とする。ただ、より作業実態に合わせる点で、作業現場での振動測定を実施して、その振動測定値に基づいた作業時間管理がより望ましいことになる。

・ 作業時間規制以外に、小休止時間、連続作業時間に着目した対策は必要か。

前田先生達の一過性振動閾値(TTS)の研究からも示唆されるように、何らかの連続作業時間および小休止時間のあり方は、TTSに影響を与えており人体へのリスク低減のために必要と考える。

・ 振動レベルの異なる振動レベルの振動工具を使用した場合の、作業時間規制への当てはめ、評価方法はどうすべきか。

8時間等価振動としてのISOの計算式を用いておこなう。

・ 振動工具管理者がなすべき作業時間管理方法はなにか。

作業時間管理がルーズまたは実施されないことを防止する意味で、振動業務に相当する作業現場では、使用する振動工具、および振動レベルに基づいた作業者の作業時間(1日あたりおよび1週間あたり)管理記録(または管理計画表)を作成することとする。現場査察では、その管理記録(または管理計画表)を提出する。

・ 表示制度が導入されたとして、当該制度開始前に製造・使用されている工具については、作業時間規制とどう関連づけるべきか。

猶予期間をおいて既に製造使用されている工具に関しても表示を義務化して行う。

・ 騒音管理に関しては、現状の法規・ガイドラインに修正が必要か。修正が必要な場合、どういった事項か。

・ 騒音レベル(の表示)を作業時間規制に関連づけられるか。

騒音レベルによる作業時管理(作業管理)を実施することでよいと思います。多くは保護具着用による作業管理が中心となると思いますが。

  

・ 作業時間が一番の振動予防の要因たりうるならば、その加除増減要因は取り入れられるか。例えば、保温服を着させているときは、作業時間をある程度のばしていいとか。そうはいかず、重畳的に措置を講じさせるべきか。

現状では、そこまでの条件を考慮した作業時間管理への指針は困難と思います。

・ 万が一、作業時間規制を超えた場合に施すべき追加対策は何か。あるいは、そういった対策は盛り込むべきではないと考えるべきか。

EU指令の最大5.0m/s2以下のような限界値を設けておくと良いと思います。

 

・その他現状の指針による作業管理項目に追加修正すべき事項はあるか。

振動障害特殊検診も現在は業種または工具指定のような形で実施されているようにみえるが、それを8時間等価振動レベル2.5m/s2以上の工具使用者(および2.5m/s2以上の振動工具使用者で希望者)を対象とする。


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