資料5−1

表示制度及び作業管理に関する意見概要整理表

1 表示制度について

項   目 意見要旨
表示の対象とすべき振動工具の定義づけ
  • 産業用に使用される振動工具
  • 全ての振動工具について試験規則が存在しているわけではないので、「機器及びワークピースから振動が発生し人体の手腕に振動を伝達するもの」と定義づける。また、我が国で取り入れる曝露対策値あるいは曝露限界値の考え方で表示を考える必要がある。
  • 「振動工具」という名で定義づけるとして、「工具が振動を発生し、その振動が使用者の健康や安全に悪影響を及ぼす可能性のある工具」又は「人体の手腕に伝わる振動が一定レベル以上の工具」と考えるなら、「振動工具」の範疇に入れるべき工具群の全面的見直しが必要。可搬型を含め据置型で工具の振動を伝えうる部分(ハンドル等)を操作する工具(卓上丸鋸等)は、使用時の振動は大きくないものもあるが、どのような分類とするか。意図する工具の使用で発生する振動が明らかに小さい工具(ドリル、振動クラッチ機構のないスクリュードライバ等)については、「振動工具」の分類から除外する必要がある(EU機械指令のように、型式試験における振動値が2.5m/s2未満のものはその旨の記載が義務付けられているが、その方法を採用するか、あるいは除外工具を指定するかを明確にすることで、「振動作業」をはっきりさせられる。)。動力工具には膨大な種類があり、新しい機構機能を持つものが次々発生していることから、「振動工具」という名称の適否は別として、業界・団体、工具使用者あるいは国内外によって異なった一般名称を用いることがあること、動力工具には新しいカテゴリが発生することが多いこと等から、ハンマやグラインダといった工具のカテゴリで規定することには疑問がある。同じ作業で同じ機構を持つ工具で行うのであれば、「空気圧」「電動」といった動力源により区別するべきでない。
職域以外での使用が主用途なものの取扱い
  • 表示対象から除外する。
  • 表示は必要。
  • 表示は販売される全ての工具に対して必要と考えるが、市場の製品を考えると困難な面も予想される。表示が必須であるのは、プロが使用する工具である。メーカー・販売業者とも、プロ、アマいずれの使用を前提とした工具であるかの認識は持っており、その選別は可能。プロがラベリングのないアマチュア用工具を購入することによる不適切な使用が問題となるが、「家庭での使用を前提とした工具については、ラベリングは不可欠ではないが、その場合は表示しない理由を記載する。」等をメーカー・販売業者に徹底することで相当部分回避できる。すべての工具を表示対象とすると、廉価で販売されている開発途上国製品のメーカーが対応できない、又は虚偽表示するおそれがある。日曜大工等で使用される工具についても、その使用時間等についての注意を予想される振動に関連させて取扱説明書に盛り込むことは必要。
海外からの輸入品、国内中小メーカーの製品の取扱い
  • 全てのメーカーを含め対象とする。測定できない中小メーカーのことを考慮し、測定を依頼できる機関を準備しておく必要がある。
  • 全て表示は必要。試験方法は、ISO5349−1と53490−2等の方法であれば中小メーカーでも対応可能。
  • 中国等安価なアマチュア対象製品を製造・輸出しているメーカーの多くは対応できないところがあると推測される。そのようなメーカーについては、前述の製品のランク付けを行い、表示を要しない分野とその条件を設定するのがよい。中小メーカーで測定設備を持たず、測定・表示ができないところが想定され、行政レベルでの対応が必要。
表示すべき事項、表示方法
  • 振動、騒音、重量等
  • 数値ではなかなか伝わりづらく、作業時間閾値を設定すれば、カラー表示がよい。カタログや使用説明書には数値とそれに対応するカラー表示の説明を付け加えることも必要。
  • 型式試験により得た振動値(騒音値)、人体に対する危険度が推測できる表示(トラフィックライトシステムに類似したものが適当)。また、一見して何の表示であるか理解できる記号(絵記号)を併用できればよりよい。
騒音レベル、振動レベル等の測定・評価方法
  • 国際規格(ISO)を基準として、なければそれに準じるEN規格。
  • ほとんど国際整合性のとれるJIS規格があるので、問題は少ない。JISB7761−1−2−3、JIS7762−1〜14等がメインの規格となる。
  • 工具に表示する振動工具測定〈案〉、騒音レベル測定〈案〉(畝山委員により提供されたもの)。
表示箇所
  • 工具、説明書及びホームページ
  • カタログや取扱説明書にも、宣言値に対しての説明書きが必要。
  • すでに表示項目が多いためネームプレートに記載することは困難であることから、工具本体へのマーキング(ラベリング)は別ラベルで行う。取扱説明書にも記載する。工具本体と取扱説明書は必須であり、カタログへの記載も考えるべき。
チェーンソー構造規格に適用対象となるチェーンソーの取扱い
  • 今回検討される方法(国際的方法)に統一する。
  • 構造規格の内容が古く、国際整合がとれていないので、内容の見直しが必要。
  • 構造規格の振動・騒音の項目が国際整合性のないものになっている現在、他の工具に整合させて改正すべき。
チェーンソー構造規格の適用対象外のチェンーソーの取扱い
  • 産業用であれば、表示制度の対象に含める。
  • 導入は必要。
  • 小型のもの職業用途に用いられているものがある以上除外すべきでない。ホビーユースや家庭使用目的のものは、先述のとおり「職域以外での使用を目的とする工具」と同様の取扱いが可能。
ある種類の振動工具について、振動レベルの高いものしか流通しておらず、低振動工具の選択ができない事態における対処
  • 表示制度の整備がまずは大切。高い振動レベルの工具は作業管理で対処。
  • 曝露対策値や曝露限界値を取り入れることにより、作業者や事業主がリスクを理解し、作業改善のためのきっかけになる。これが表示制度取り入れの目的であり、メーカーも考えるきっかけとなる。
  • 低振動の工具が選択できない事態は生じえる。猶予期間措置によってある程度のメーカーの対応は可能と考える。基本的には猶予期間を過ぎれば許容できない振動レベルの製品は使用すべきでないが、振動障害低減のために「危険であるという表示」をした工具が市場に存在することをもって、注意喚起することでもやむを得ないのではないか。
すでに流通している振動工具の取扱い
  • 猶予期間をおき、全ての工具に表示制度を適用する。
  • 表示制度は新しい工具について適用する。現在使用されている工具については、現場での曝露評価の方法で管理する。古い工具については、使用期限を設ける。
  • 猶予期間は必ず必要である。猶予期間内に市場に投入される工具についてはメーカーがラベリングを行っていくことになる。市場(販売業者等)に猶予期間後も在庫で未表示のものが残ることが十分考えられるが、これについてメーカー、販売業者がラベル添付等の対応することは極めて困難である。一定期間後は、該当工具の振動値がネット上等で公開され、入手できるようにすることが必要。
その他
  • 表示制度を実施するためには、事業主、作業者、メーカー等が工具のリスクを理解し、安全な工具の選定と購入を考えることが可能となるシステムを考える必要がある。工具のリスクを評価するには、評価基準となる振動曝露対策値や振動曝露限界値を日本ではいくらとして考えるかを決める必要があるが、基本的にはEU指令の取り入れが必要。

2 作業管理について

管理対象の業務の位置づけ
  • EU指令と同様に2.5m/s2以上の振動工具を使用する業務を全て。
  • 手に振動が伝達する作業全て。
  • 「仕事を行うために振動工具を使用することがあるもの」とする。ある一連の工程で一部のみ「振動工具」を用いる工程があれば、一連の工程を対象とすべき。工具の使用時間や使用継続時間等で枠を決めると、対象漏れが生じる。自営業者も対象に含めるような設定とすべき。
指針で示されている管理項目の修正
  • 作業時間2時間規制を、8時間等価振動レベルを基準にした振動曝露管理又は作業時間管理とする。
  • EU指令を取り入れるかどうかによる。
  • 具体的な内容については別途検討する必要があろう。
追加すべき安全衛生教育項目
  • EU指令のように、作業管理対象となった労働者には、振動の人体影響、作業管理、健康管理等について情報提供する。
  • EU指令を取り入れるかどうかによる。
  • 災害防止団体等の教育テキストの改正が必要となる。振動値、使用時間、振動曝露量の関係を対象者に理解してもらうことが必須である。
振動レベル表示値と作業時間規制との関連づけ
  • 8時間等価振動レベルを基準とした作業時間規制とする。
  • メーカーから宣言され、災害防止団体等により作成されたデータベースがあれば、リスクを事前に把握することができる。どの値を取り入れるかが決まり、EU指令やISOのような時間依存性を取り入れるとすると、おのずと工具の振動値や工具の種類による作業時間が決まってくる。
  • エミッション値と工具使用時間とで作業者のエクスポージャー値の参考値が求められる。その表示値から想定される人体への影響度に応じ、一日の作業時間を制限することになる。基準は振動値、使用時間から計算する日振動曝露量A(8)になる。その作業が極めてまれであり、継続して行われることがないような場合は、英国で考えられている週振動曝露量A(8)weekのような概念を考える余地がある。
林業において主に使用されているチェーンソーについて、作業時間2時間規制を取り払うことの妥当性
  • 原則として8時間等価振動レベルを基準として作業時間規制とし、振動レベルが低ければ2時間以上の使用を可能とする。
  • 本調査は非常に限定された調査結果であり、また、チェーンソーもエンジンの大きさで振動値が異なるので、林業で使用されるチェーンソーも今回取り入れようとしている表示や作業管理は必要。
  • ISO、日本産業衛生学会等いずれもA(8)を判断基準に置いており、それは疫学的データがあるということであれば、2時間規制に替えて、A(8)を基準にした規制に切り替えることに問題はないのではないか。
振動レベルが大きい振動工具について、1日当たりの作業時間が数秒というケースがありうるが、こうした場合における、1日あたりの作業時間基準以外の作業時間基準(たとえば1週間あたり)の妥当性
  • 1週間あたりの平均としての振動曝露管理・作業時間管理は許容できる。
  • 作業時間数秒というケースが可能性として考えられる。日本でどのように考えるかによって異なる。
  • 実際にある日に限り曝露限界値を超えるような作業が必要となる(代替工具・代替工程・代替作業者がない)ケースは想定される。EU振動指令を英国の国内法としたものでは、特定の条件の場合、週振動曝露値を評価基準に用いることができるとされている。特定のケースの場合は、このような評価を考慮する必要があるかもしれない。しかし、1日あたり数秒間で規制値を超えるような作業を何日も継続するならば週振動曝露値を超えることになり、そのような作業は許容できるものではないことを明記し、どのような場合に週振動曝露値を適用できるか、またはそのような作業を回避する手段を見いだすことが最重要であることを明記した上で、例外的適用として認めることを検討すべきである。
振動レベル以外に作業時間に影響させるべき要因
  • 2.5m/s2以上(約3.5m/s2以下)の振動工具を使用する場合であっても、1日の使用時間は4時間以内にすることを推奨する。
  • EU指令等では、手腕振動障害の発症を抑えるために振動値でしか考えておらず、当面は振動値に基づく規制でよい。
  • 健康診断結果、作業者の慢性病等か。
エクスポージャーをどう考えるか。作業現場における測定の必要性等はどうか。
  • 作業現場での振動測定値に基づいた管理も望ましいが、表示された振動レベルを活用して作業時間管理を行うことを基本とする。
  • 本検討会では表示制度の検討がメインであり、エクスポージャーのことは考えていない。ただ、将来的には、作業現場での測定の必要性はあると考える。
  • 振動について、エミッション値(メーカー提供値と現場測定値があるが)とそれへの曝露時間をもってA(8)を求める基準を採用すべき。メーカーはできる限り工具が意図とした使用方法で再現した型式試験での振動値に過ぎないが、この数値は工具間比較の目的以外に、人体への影響の事前アセスメントにも用いられる。現場測定値は非常に現実的なアセスメントが行えることになるが、この実施は極めて困難であろうと考える。JISB7761−2:2005による現場での測定を行った場合、これにより得た結果は、その作業に対して最優先で適用すべきものであり、作業時間はこの結果から導くこととなる。騒音については、振動と異なり、使用している工具からのエミッションに加え、周囲で使用されている工具からのエミッションも付加した曝露を受ける。このことからも、エミッション値単体で騒音曝露の評価を行うことは問題がある。騒音に関しては、平成4年基発第546号のような、実際の使用現場での測定・評価が必要。騒音値についての工具表示内容、説明書記載内容は、あくまで型式試験で得たものであり、実際の作業現場での放射騒音は表示値よりも大きい場合が多いことを周知させる必要がある。
小休止時間、連続作業時間といった作業時間以外に着目した対策
  • 何らかの小休止時間、連続作業時間のあり方は、一過性振動閾値(TTS)に影響を与えており、人体へのリスク低減のために必要。
  • これまでのEU指令やISOの疫学的データは、作業者の従事年数期間での振動曝露量とその影響との関係から得られた基準値であり、そこからは、小休止時間や連続作業時間に関しての対策は困難であるが、小休止の必要性も明らかになっているので、多少、対策を入れる必要がある。
  • 頸・肩・筋骨格系に影響を及ぼすおそれのある長時間継続作業については、別途規制が必要。現行指針(連続作業は30分以内、その後5分以上の小休止)のような規制は必ず付帯すべき。寒冷環境・喫煙等不適当な要因下では何らかの配慮を促すような内容を、現行指針と同じく盛り込むことも必要。
振動レベルの異なる振動工具を使用した場合の、作業時間規制への当てはめ、評価方法
  • 8時間等価振動としてのISOの計算式を用いて行う。
  • 複数の工具を使用した場合の計算ができるカリキュレーターが作成されおり、これを配布することで、リスク評価は可能である。
  • 複数の振動工具による振動曝露の総合評価(総合A(8)の計算方法)はJISB7762−2,3に規定されている。この計算は多少複雑になることから、英国HSEがネット上で提供するバイブレーションカリキュレーターのようなものや、現場で容易に用いることのできるチャート等を無償提供する方法を考えるべき。欧州では、A(8)に代えて、曝露量を点数で表す方法も取り入れられようとしており、一般ユーザーにはこの点数制が受け入れられるかもしれない。
管理者による作業時間管理方法
  • 使用する振動工具及び振動レベルに基づいた作業者の作業時間(1日及び1週間)の管理記録(又は管理計画表)を作成する。
  • (なし)
  • 作業者ごとに、対象工具の振動レベル・使用時間把握とそれに基づく日振動曝露値の算出並びに評価(もしくは既知の振動値から使用可能時間の算出)。その結果に基づく作業時間の設定と作業管理
表示制度導入開始前に製造・使用されている工具についての、作業時間規制との関連づけ。
  • 猶予期間をおいてすでに製造・使用されている工具に関しても表示を義務化する。
  • 古い工具に関しては、作業現場での測定値により規制することとしてリスク管理すると決めれば、作業時間規制と連動できる。
  • 猶予期間を設け、その間に不適当工具は更新するよう指導し、また、既存機の振動・騒音データのデータベースを公開できるようにして、その情報を入手することで曝露値を計算できる体制を整えるべき。その曝露値に基づき作業時間規制を適用する。
騒音管理に関する法令・指針等の修正
  • 騒音レベルによる作業管理を実施。多くは保護具着用による作業管理が中心となる。
  • 日本の決定内容によって決まってくる。
  • 見直しが必要とは考えるが、具体的な点について未検討である。
騒音レベル(の表示)と作業時間規制との関連づけ
  • 騒音レベルによる作業管理を実施。多くは保護具着用による作業管理が中心となる。
  • EU指令の考え方を取り入れるかどうかに依存する。
  • 騒音は、作業場の音響特性が大きく関係してくる。作業場の音響環境が類似していても、その場で使用される工具が複数あれば騒音エクスプロージャーは大きく異なってくる。よって、騒音表示を行うなら、それは、工具間の比較あるいは、低騒音工具を選択するための参考として用いるべきであり、型式試験で得た騒音値を作業時間規制根拠に用いられない。騒音は、保護具の着用により曝露量の低減が可能であり、振動に比べ低減策が採りやすいことから、騒音値は、その騒音値に応じた保護具を着用するための基準とすべき。
例えば、保温服等を着用させている場合は作業時間をある程度延ばしてよいといった、作業時間増減要因の取り入れ
  • 現状ではそこまでの条件を考慮した作業時間管理への指針は困難。
  • 米国では、防振手袋の有効性を示す論文をANSIS2.70−2006規格に引用し、また、防振手袋の評価にはISO10819を取り入れている。日本でもISO10819をJIST8114に取り入れる改定作業を行っており、JIST8114が改定発行されれば、使用できる防振手袋の推奨ができる。
  • 防振手袋等保護具を着用した場合、エクスプロージャーがどれ程低減されるかという具体的データはないと思われる。防振手袋の例では、ISO10819にも明記されているように、着用することFでハザードがなくなるのではなく、ハザードを軽減する可能性を持つが、その効果が確実に期待できるものではない、との認識が必要。よって、防振手袋等の着用は、作業時間を延ばしうるものではない、より安全を期すための手段としてとる措置とすべき。イヤーマフも、騒音曝露低減効果は認められるものの、着用状態や方法でその効果は変わってくるので、あくまで「騒音曝露をより少なくすること」を目的に重畳的にとる措置とすべき。
作業時間規制を超えた場合に施すべき追加対策
  • EU指令の最大5.0m/s2以下のような限界値を設けておくと良い。
  • 作業時間規制を超えた場合は、作業をストップさせる。
  • 定めた限度値を超えての使用は絶対に認めるべきではなく、規制値を超えたならば、直ちに作業を中止すべき。追加対策を盛り込むことは、抜け道になりかねず、検討している規制の意図から逸脱する。超えた場合への対策は、EU指令のごとく適切なアフターフォローを行うことしかあり得ない。
その他追加・修正を要する作業管理項目
  • 振動障害特殊健診の対象者を、8時間等価振動レベル2.5m/s2以上の工具使用者(及び2.5m/s2以上の振動工具使用者で希望者)とする。
  • 日本の方針により、異なる。
  • 全体的な検討を要すると考えるが、具体案は未検討である。

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