06/09/28 労災医療専門家会議(平成18年度) 第1回議事録 第1回 労災医療専門家会議 日時 平成18年9月28日(木) 14:00〜 場所 労働委員会会館第205会議室 ○笹川係長  ただいまから、第1回「労災医療専門家会議」を開催いたします。最初に資料の確認 をお願いいたします。議事次第、配置図、その後に説明資料として28頁のもの、参考資 料1として開催要綱、参集者名簿、参考資料2としてアフターケアの実施要領、参考資 料3としてパンフレットを付けております。  本専門家会議にご参集賜りました先生方を五十音順にご紹介いたします。元東京労災 病院整形外科部長の伊地知先生です。都立松沢病院院長の岡崎先生です。北里大学名誉 教授の奥平先生です。横浜労災病院眼科部長の鎌田先生です。済生会横浜市東部病院院 長の川城先生です。慶應大学月ケ瀬リハビリテーションセンター所長の木村先生です。 東邦大学助教授の黒木先生です。昭和大学医学部教授の小出先生です。東京医科大学外 科学第二講座主任教授の重松先生です。東京厚生年金病院副院長の谷島先生です。北海 道大学名誉教授の保原先生です。東邦大学医学部教授の松島先生です。横浜労災病院整 形外科部長の三上先生です。関東労災病院院長の柳澤先生です。上智大学名誉教授の山 口先生です。  なお、関東労災病院泌尿器科部長の石田先生、せんぽ東京高輪病院院長の戸田先生、 湯河原厚生年金病院院長の馬杉先生におかれましては、本日はご欠席です。  事務局を紹介いたします。補償課長の明治です。補償課長補佐の西井です。補償課長 補佐の園田です。中央労災医療監察官の長嶋です。私は座長選出までの間、司会・進行 を務めさせていただきます福祉係長の笹川です。よろしくお願いいたします。  会議の開催にあたり、補償課長より挨拶を申し上げます。 ○明治補償課長  専門家会議の開催にあたり、一言ご挨拶を申し上げます。各先生におかれましては、 日ごろから労災補償行政、とりわけ労災医療に関するいろいろな問題について多大なる ご理解とご協力を賜っているところでございます。この場をお借りいたしまして厚く御 礼申し上げます。また、本日は大変ご多忙のところ、当会議にご出席を賜りまして誠に ありがとうございます。  本会議の目的は、被災労働者の充実した保護の観点から、医療体系、あるいは療養補 償の範囲、さらには今回の議題でありますアフターケアも含め、労災のあり方全般につ いて専門的な見地からのご検討をいただくということを目的に、昭和49年に設置された のが始まりです。それ以来こうして医療分野の各先生方にお集まりいただきまして、労 災医療に係る検討をお願いしてまいったところです。  今回先生方にお集まりいただいた目的は、労災保険事業の中の労働福祉事業として実 施しておりますアフターケアについて、その措置内容が最新の医療水準に見合うものと なっているかどうかという観点、また制度全体としての整合性を図るように、全体的な 見直しを行っていただくことを考えております。  現在、労働福祉事業については、行政改革が推進されている中で、廃止も含めて厳し い見直しを求められています。そうした事情も踏まえ、真に必要な事業に限定するなど をし、労働福祉事業全体の縮小・廃止も含めた徹底的な見直しを行っている最中です。  そのような見直しの中にあり、これからご検討いただきますアフターケアについては、 被災労働者の円滑な社会復帰を促進するという意味合いにおいて、労働福祉事業として 必要な事業ということで評価されております。ただし、今後とも適切にこの制度を運用 していくためには、アフターケア制度全般について、改めて整理する必要があると考え ております。  このようなことから、この専門家会議においては、アフターケアの具体的な措置内容、 個々の措置内容を具体的に検討する前に、労働福祉事業の趣旨・目的に適合する、アフ ターケア制度の基本的な考え方を一旦整理をすることを予定しております。なお、この ような基本的な考え方の整理に当たりましては、医学的な観点に加え、法律的、あるい は制度的な観点からもご意見を賜りたいと考えております。そういう意味で、労災補償 制度・法制度について精通しておられる保原先生、それから山口先生にもご協力をお願 いした次第でございます。  専門家会議の検討結果の取りまとめについては、来年1月を目途としておりますけれ ども、なにせ先生方には十分に議論を尽くしていただきたいと考えておりますので、そ の検討の状況如何によっては多少の期間延長もやむを得ないと考えております。先生方 におかれましては、大変ご多忙のところ恐縮ではございますが、ご協力いただきますよ う重ねてお願い申し上げまして、私の挨拶とさせていただきます。よろしくお願いいた します。 ○笹川係長  次に、座長の選出について皆様方にお諮りいたします。推薦していただける方はいら っしゃいますか。 ○奥平先生  大変僭越でございますけれども、柳澤先生をご推薦申し上げます。 ○笹川係長  ただいま、柳澤先生のご推薦がありましたが、皆様いかがでしょうか。 (異議なし) ○笹川係長  ありがとうございました。皆様のご了承がいただけましたので、柳澤先生に座長をお 願いすることといたします。柳澤先生におかれましては座長席にお移りいただき、以後 の進行をお願いいたします。 ○柳澤座長  ただいま座長にご推薦いただきました柳澤です。この度の労災医療専門家会議は、た だいまの補償課長の挨拶にもありましたように、労働福祉事業の中でのアフターケアの 見直しということで、1つは医療の進歩に伴って、制度自体の適合性を検討するという ことですが、これはそれほど難しくはないと思います。全体としての労働福祉事業の見 直しの中で、制度そのものの、特に最近は障害者自立支援法などに表されておりますよ うに、いろいろな法律による措置の間の整合性が問題となっております。その側面もあ るかと思いますが、いわば制度としての見直しということで、これはなかなか難しい面 もあると思います。皆様方のお知恵を出していただいて、この会議に課せられた役割を 果たしていくように努力したいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。  議事に従って進めてまいります。最初に、アフターケア制度の概要について事務局か ら説明をお願いいたします。 ○長嶋医療監察官  アフターケアの概要等についてご説明申し上げます。労災医療専門家会議については、 本日お配りしております参考資料1「開催要綱」の2検討内容に記載しておりますとお り、労災医療におけるアフターケアの適切な措置内容等についてご検討いただくもので す。アフターケアは労災独自の制度でして、今回初めてお集まりいただいた先生もいら っしゃいますので、簡単にアフターケアの概要等についてご説明申し上げます。アフタ ーケアの概要等に関する説明資料として資料1から資料9までとなっておりますので、 適宜ご参照いただければと思います。  アフターケアが支給されるまでの流れについてご理解をいただく意味合いから、アフ ターケアと関連のある労災保険給付等についてご説明いたします。関係する説明資料は、 資料1、資料2、資料3になります。業務災害や通勤災害による労働者の傷病について は、労災保険では療養(補償)給付、休業(補償)給付、障害(補償)給付などの保険 給付が行われます。療養(補償)給付については、業務災害や通勤災害による傷病に対 して、その症状を改善するための治療が行われますが、具体的には労災指定病院等にお いて、「診察」「薬剤又は治療材料の支給」「処置、手術その他の治療」など、これは 政府が必要と認める範囲ということになりますが、医学的措置を無料で受けることがで きることになっております。  なお、業務災害や通勤災害による傷病の療養のために労働することができず、またそ のために賃金を受けていないときについては、これは生活の補償になりますがその4日 目から休業(補償)給付を受けることができることになっております。  療養(補償)給付による治療については、傷病が治ゆするまで継続されることになり ます。労災保険における傷病の「治ゆ」というのは、身体が健康の状態に完全に回復し た状態のみをいうことではありませんで、傷病の症状が安定して、医学上一般に認めら れた治療を行っても、その医療効果が期待できなくなった状態、つまり症状が固定した 状態を治ゆといっております。よって、傷病の状態が、投薬や理学療法等の治療によっ て、一時的な回復が見られるにすぎない場合等症状が残っている場合であっても、医療 効果が期待できないと判断される場合には、労災保険では治ゆ(症状固定)と判断し、 それ以降療養(補償)給付を支給しないことになります。なお、療養(補償)給付が支 給されなくなりますと、それに伴って休業(補償)給付も支給されないことになります。  傷病が治ゆ(症状固定)したときに残った後遺障害については、その後遺障害が、障 害等級表に掲げる障害に該当すると認められる場合については、障害(補償)給付が支 給されることになります。障害(補償)給付については、障害の程度が重い場合、等級 で第1級から第7級に該当する場合については、年金として支給されます。また、それ よりも障害の程度が軽い場合、8級から14級に該当する場合には一時金として、それぞ れ障害の程度に応じた支給を行うことになっております。  治ゆ(症状固定)後において、後遺症状が悪化した場合は、症状の改善のための治療 が必要となった場合については、これを「再発」と認めて再び療養(補償)給付を支給 することになります。この再発を認めるための要件は3つあります。1つ目は、その症 状の悪化が当初の傷病と相当因果関係があると認められる。2つ目は、治ゆ(症状固定) 時の状態からみて、明らかに症状が悪化している。3つ目は、療養を行うことにより、 その症状の改善が期待できることが医学的に認められる。この3つの要件すべてを満た す場合に、治ゆ後再発として、再び療養(補償)給付を受けることになります。  アフターケアの措置内容についてご説明いたします。関係資料は資料4、資料5、資 料6になります。療養(補償)給付等の労災保険給付に対して、アフターケアは保険給 付としてではなく、労働福祉事業の一環として、被災労働者の労働能力の維持・回復を 図り、円滑な社会生活への復帰を援助するものとして実施しているところです。  なお、資料5にアフターケアの根拠となる条文を記載しております。アフターケアの 中に、炭鉱災害による一酸化炭素中毒症がありますが、そのものを除いてアフターケア は、法令に明示されたものではありません。労災保険法第29条が、労働福祉事業につい ての規定ですけれども、その第1項第1号で、被災労働者の円滑な社会復帰を促進する ために必要な事業として、通達によって定めて実施をしているものです。  当該通達の内容については、参考資料2としてお配りしております。相当な分量にな ってしまいますので、この場でのご説明は省略させていただきますが、後日お目通しい ただければと思います。  アフターケアは、傷病の性質から治ゆ(症状固定)後においても、後遺症状に動揺を 来したり、また後遺障害に付随する傷病を発症させるおそれがある傷病にり患した方に 対して、予防その他の保健上の措置として行われておりますが、アフターケアの措置の 範囲については、アフターケア実施要綱によって、「診察」「保健指導」「保健のため の処置」「理学療法」「注射」「検査」「精神療法、カウンセリング等」「保健のため の薬剤の支給」が定められております。それぞれの措置事項については、各対象傷病別 に、アフターケア実施要綱があり、そちらにおいて検査や投薬の具体的な内容を定めて います。  このように、アフターケア実施要綱には8つの措置が定められておりますが、アフタ ーケアとして原則的に実施されるものはこのうちの診察、保健指導、検査、薬剤の支給 となっております。理学療法や注射等については、一部の対象傷病の特質から限定的に 実施している状況にあります。  ちなみに保健上の措置という用語は、アフターケア独自の用語です。アフターケアは、 治ゆ(症状固定)後において行われるというものでありますので、療養(補償)給付の ように治療を行うことはできません。よって、診察や保健指導、薬剤の支給等を、治療 とは区別する意味合いで、予防その他の保健上の措置と称して実施しているところです。  説明資料7をご参照ください。アフターケアの対象傷病については、始まりは昭和43 年の炭鉱災害による一酸化炭素中毒症でした。その後、せき髄損傷、頭頸部外傷症候群 等など順次追加し、現在は21の対象傷病となっております。参考資料3として、アフタ ーケア制度ご案内のパンフレットをお配りしております。その表紙を見ますと、直近で は昨年9月に胸腹部臓器の障害認定に関する専門検討会の報告書が取りまとめられてお ります。それを踏まえて、本年4月から尿路変向術後、ペースメーカ又は除細動器の植 込み後、循環器障害、呼吸機能障害、消化器障害を新しくアフターケアの対象とし、ま た尿道狭さく、慢性肝炎について措置内容の変更を行っている状況です。  これらのアフターケアの対象傷病の追加等の背景としては、大きく3つあります。1 つ目は、実際に第一線機関で労災補償業務を担当している職員等からの要望。2つ目は、 労災医療に携わる医師からのご意見。3つ目は、先ほどの炭鉱災害による一酸化炭素中 毒症、サリン中毒などの特定の労働災害などを踏まえることになっております。個々の 傷病について、アフターケア実施要綱の趣旨に照らし、対象傷病とすることの適否を検 討してきた状況にあります。このように、これまでは治ゆ(症状固定)後の措置である アフターケアの対象傷病については、限定をして実施している状況にあります。  資料8、資料9をご参照ください。アフターケアの対象者については、対象傷病別の アフターケア実施要綱において、対象傷病ごとに定められておりますが、対象傷病ごと に対象者とする要件は異なっている状況にあります。炭鉱災害による一酸化炭素中毒症、 リストでは第4として載せております尿路系障害、第5の慢性肝炎などについては、障 害(補償)給付の受給者であることのみを要件とし、障害等級による要件を定めており ません。それに対してせき髄損傷や頭頸部外傷症候群等などについては、障害等級によ る要件を定め、一定以上の障害等級以上の方を対象としている状況にあります。  また、アフターケアの実施期間については、各対象傷病別のアフターケア実施要綱に おいて、各傷病の特性に応じて定めている状況です。せき髄損傷や11番の(2)のペースメ ーカ又は除細動器を植え込んだ者などについては一生涯にわたってアフターケアが必要 だということから、実施期間に制限を設けておりません。これに対して、頭頸部外傷症 候群等、6の白内障等の眼疾患、7の振動障害については原則として症状固定後2年間、 その他の傷病についてはこれも原則として症状固定後3年間と期間を設けている状況で す。  実施期間の更新については、実施期間を2年間と定めているもののうち、3の(1)の頭 頸部外傷症候群、3の(2)の頸肩腕症候群、3の(5)の腰痛の3つについては、医学的にみ て治ゆ(症状固定)後2年以内で後遺症状が安定するという評価のものですので更新を 認めてなく、2年で終了することになっております。その他の実施期間を定める傷病に 係るアフターケアについては、医学的に継続してアフターケアを行う必要があると認め られる場合に更新が可能となっております。さらに更新回数については、現在制限は設 けられていない状況です。  これらのアフターケアについては、都道府県労働局長が交付する健康管理手帳を労災 病院や、労災指定医療機関等に提示することによって受けることができる仕組みになっ ております。アフターケアの健康管理手帳そのものにも有効期間があり、頭頸部外傷症 候群、白内障害の眼疾患、振動障害については2年間、その他の傷病については3年間 となっております。  アフターケアの実施状況については資料4の5に記載しております、アフターケアの 対象者として、健康管理手帳の交付を受けている方の数は、平成17年度末で3万6,825 人、平成18年度の予算として34億8,000万円となっております。これは、アフターケ アが始まった昭和43年から比べると、着実に右上がりに増加している状況が続いている ことになります。以上簡単ではありますが、労災保険給付等を含め、アフターケアの概 要等についてのご説明です。 ○柳澤座長  内容が多くて、すべてをきちんと把握することは難しいかと思いますが、ただいまの 説明に対してご質問はございますか。各障害や疾病ごとにその内容、期間なども異なる ということです。それは、それぞれの疾病や障害がアフターケアの対象になったときに 制度として検討された結果だろうと思います。  実際に診療行為としては、医療行為とアフターケアをきっちり分けるのは難しいと思 いますが、制度的には言葉の上、その背景にある実態も一応分けて考えるということで すね。 ○長嶋医療監察官  はい。 ○柳澤座長  再発はその3つの条件で決まるということですけれども、再発で療養給付が行われる ようになったときには、もう障害が固定されたということによる、障害給付としての年 金とか一時金ということは一切かかわりなく、療養給付のほうに戻って医療行為が受け られるという理解でよろしいですか。 ○長嶋医療監察官  障害(補償)給付は支給されないことになります。 ○柳澤座長  療養給付に移ったら、障害(補償)給付は支給されない。元に戻ってしまうというこ とですか。 ○長嶋医療監察官  そうです、元へ戻ります。資料1に概念的な図を付けております。傷病を受けた場合、 治ゆを挟んで給付が分かれております。療養(補償)給付、休業(補償)給付は治ゆ前 に支給されるもの、治ゆ後は後遺症状が残った場合については障害(補償)給付でその 分を補償する形になります。  そうすると、治療に当たる部分が何もなくなってしまいますので、労働福祉事業とし てアフターケアと、一定の限られた範囲ではありますが、そのようなものを設けている ことになります。これが逆の流れになりますと、今度は障害アフターケアは支給されな くなり、療養(補償)給付、休業(補償)給付のほうが支給されることになります。 ○黒木先生  精神障害の場合に、どれぐらいの割合を占めているのか。それから、精神障害の認定 の対象が、すべての精神障害ということで間口を広げたということだと思うのですけれ ども、実際には神経症精神障害、うつ病がほとんどだと思うのです。それが、現時点で はどういうことになっているのかはわかりますか。認定された後の現在の状況というこ とです。 ○長嶋医療監察官  労災で業務上認定された場合については、一般の傷病と同じように療養(補償)給付、 治療を行っていただくことになります。ですから、精神症状の場合について、どの時点 で治ゆになるかというのが1つポイントになってくると思うのです。治療効果がある状 況ということであれば、それは継続して療養(補償)給付の対象になりますので、治ゆ には至らないと。 ○黒木先生  現時点で、その治ゆはどれぐらいあるのかということです。 ○長嶋医療監察官  アフターケアで、先ほどご説明いたしました健康管理手帳を交付しておりますが、精 神障害については、直近の平成17年度では90人ほどの数になっております。 ○黒木先生  90人は症状が固定されて、アフターケアで経過をみているということですね。 ○長嶋医療監察官  これは平成17年度の交付者の数でして、その前に遡りますと平成16年度には62人、 平成15年度には45人という数です。件数的には、年を追うごとに増えている状況にあ ります。 ○黒木先生  外傷神経症で認定されている人もいると思うのです。例えば、頭部外傷とか頭頸部症 候群とか、その後に精神症状がなかなか取れないということで認定されている数はどれ ぐらいあるのですか。 ○長嶋医療監察官  頭頸部外傷症候群等の数としてしかわからないのですが、平成17年度は9,659人、平 成16年度は9,664人、平成15年度は9,731人と大体同じような数が手帳を受けており ます。 ○柳澤座長  いまおっしゃった9千何がしというのは、外傷神経症としてですか、そうではなくて 精神障害としての数ですか。 ○長嶋医療監察官  アフターケアの対象傷病として、頭頸部外傷症候群等として分類されている人の数字 になります。 ○柳澤座長  神経症と関連があるのですね。 ○黒木先生  外傷神経症はずっと少ないということですね。 ○園田課長補佐  分類はちょっとわからないです。 ○黒木先生  先ほどおっしゃった数の病態はわかりますか。どういう病気でフォローされているか。 ○園田課長補佐  詳しい状況についてはわかりません。 ○柳澤座長  次に、今回のアフターケアの見直し・検討事項について事務局から説明をお願いいた します。 ○園田課長補佐  今回のアフターケアの見直し・検討についてご説明いたします。これまでの労災医療 専門家会議では、いきなり各対象傷病の措置内容の具体的な検討に入っていただきまし たが、今回は先ほど補償課長から申し上げましたように、事業目的に適合するアフター ケアの基本的な考え方を整理していただくことを考えております。そうした発想を持っ た背景の1つとして、労働福祉事業の見直しの動きについてということでご説明いたし ます。  資料は20頁の資料10です。1つは、昨年12月24日に閣議決定された、行政改革の 重要方針において、労働保険特別会計については、原則として純粋な保険給付事業に限 り、本特別会計にて経理するものとし、労働福祉事業については、廃止も含め徹底的な 見直しを行うこととされたということがあります。  この重要方針を受けて、本年6月に成立いたしました、いわゆる行政改革推進法(簡 素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律)において、労働保険 特別会計において経理される事業は、労災保険法の規定による保険給付に係る事業に限 ることを基本とし、労働福祉事業については廃止を含めた見直しを行うことと規定され ました。  このことを踏まえ、厚生労働省においては、労災保険の保険給付等の事業に資する観 点から、真に必要な事業に限定するなど、事業の縮小・廃止を含めて徹底的な見直しを 行っているところです。このような見直しの状況にありましても、先ほどご説明いたし ましたアフターケアについては、治ゆ後における被災労働者の社会復帰を促進するため に必要な事業であると評価されております。今後も引き続き行う必要性のある事業と認 められているところです。  しかしながら、今後の労働福祉事業の見直しの方向性としては、廃止の対象とならな い事業であっても、引き続き福祉事業としての合目的性と効率性を確保するために、適 宜、個別事業の必要性についての徹底した精査を継続的に実施することとなっておりま す。したがって、アフターケアについても、このような労働福祉事業全体の見直しの動 きを踏まえ、引き続き事業の目的に沿った運用を図っていくことが求められているとこ ろです。  次に、このアフターケアの課題と検討の方向性についてご説明いたします。21頁の資 料11をご覧ください。アフターケアには、現状で2つの課題があります。1つは先ほど 申し上げましたとおり、労働福祉事業の目的に沿った適切な運用を確保する観点から、 制度全体を通して整合性を図れるように、アフターケアの基本的考え方を整理するとい うことです。もう1つは、昨年の労災医療専門家会議において提言のあったものですが、 現行の措置内容について、最新の医療水準に見合ったものとなるように見直しを行うこ とです。  アフターケアの対象傷病については、個別に必要性を検討してまいりまして、順次追 加・変更してきた経緯もあります。したがって、制度全体に共通する基本的考え方が明 確になっていない状況があります。さらに、アフターケアの措置内容を見直す上での適 切な指針がないために、今後その措置内容の見直しを行う都度、アフターケアの措置内 容が無限定に広がってしまうおそれがあるということもあります。よって、今回の会議 においては、まず基本的考え方を十分に整理した上で、措置内容の具体的な検討に移っ ていきたいと考えております。  それでは、どのようなことを具体的に検討していただこうかということです。22頁の 資料12をご覧ください。繰り返しになりますけれども検討の要点というのは、アフター ケアの事業目的を逸脱させないための基本的考え方を明らかにするということです。特 にこのアフターケアの、先ほど申し上げました保健上の措置といった性質上、措置内容 が療養と比べて狭く限定的にならざるを得ないということがあります。その範囲につい ては、労働福祉事業の趣旨に応じたものとなるよう検討する必要があろうかと考えてお ります。もう1つの要点は、事業の合目的性及び効率性を確保する。その上で、制度全 体に共通する考え方を整理することです。先ほどご説明いたしましたとおり、個別に対 象傷病を順次追加・変更してきて、現在21の傷病になっているという経緯があります。 各対象傷病を包括するような統一的な考え方をまとめられないものだろうか、というこ とも考えております。  以上の観点から、対象傷病、対象者、保健上の措置、それから実施期間と主にこの4 つの事項を重点に、それぞれ基本となる考え方を整理していただくことを予定しており ます。特に、実施期間については、繰り返し更新されているケースも見られるものです から、更新に関する一定の期間を設ける必要があるのではないか。これは、どのような 議論になるかは先生方の議論を待つわけですけれども、そういうことも幅広く含めてご 検討いただければと考えております。  そこで、この基本的考え方に関する検討の進め方として、これは事務局からの提案な のですけれども、本専門家会議の中に検討部会を設置し、当該検討については労働福祉 事業の見直しがベースとなっているために、制度的な観点を主体として進めていただく ことを考えております。その検討部会のメンバーについて事務局としては、座長の柳澤 先生に部会長を兼任していただき、法律専門家の保原先生と山口先生、それから医学専 門家2名に加わっていただき、5名で議論を行っていただきたいと考えております。こ の点についてはいかがでしょうか。 ○柳澤座長  まず、アフターケアの見直し検討ということで、その趣旨についての説明をいただき ました。全体としての会議を進めていく中で、少人数のワーキンググループ、検討部会 を立ち上げて、そこで問題点を整理してもらおうという趣旨です。全体としての見直し 検討について、ただいまの園田補佐からの説明に対してご意見、ご質問がありましたら お願いいたします。 (特に発言なし) ○柳澤座長  ないようでしたら、検討部会を立ち上げるということで、主に制度的な観点からとい うことで法律家の先生にお入りいただくということと、あとは医学専門家から2名とい うことです。私も含めて5名という形で作業を進める検討部会をつくることについて異 議はございませんか。 (異議なし) ○柳澤座長  それでは、医学の専門家2名を選んでいただかなければいけないわけですが、事務局 のほうで案があるのですか、それとも委員の先生方のほうで発言がございますか。 ○園田課長補佐  事務局として、医学専門家の2名の先生につきましては、中央労災委員として労災行 政に長年携わってこられ、このアフターケアの傷病の追加にも多くの所でかかわってい ただきました奥平先生と、医療専門家会議のメンバーとしての期間が長く、やはり同じ ようにアフターケアについての見識も高い馬杉先生にお願いできないかと考えておりま すがいかがでしょうか。 ○柳澤座長  この領域のベテランの先生お2人にお入りいただきたいというご提案ですがよろしい でしょうか。 (異議なし) ○柳澤座長  それでは、ただいまの5人をもって検討部会を構成したいと思います。これから後の 検討部会の作業、全体会議の進め方について事務局から何かありますか。 ○園田課長補佐  私の説明が終わりました後に、司会から確認の意味で説明をさせていただきます。馬 杉先生については本日はご欠席ですので、事務局からお話をさせていただきます。検討 部会における検討結果については、次の本専門家会議の場で報告をさせていただきます。  もちろん、検討部会のメンバー以外の先生方に対しましても、逐次部会の議事概要で あるとか、資料等は送らせていただきますので、検討状況はその都度把握していただけ ればと思います。また、必要に応じて、対象傷病にかかわる具体的なところが出てくる こともありますので、検討部会のメンバー以外の先生方にもご意見を賜る場合もありま すので、その点についてもご協力を併せてお願いいたします。  最後に、アフターケアの最終的な措置内容の全般的見直し事項についてご説明いたし ます。23頁の資料13をご覧ください。ここには、今いろいろな所から出ている要望を フルに挙げた形で、これが全部行われるかどうか、検討していただけるかわかりません けれども、とりあえず今考えられるものをすべて挙げております。これについては、基 本的な考え方に関する、いま申し上げました検討部会の検討結果に照らし合わせ、医学 的な観点から、アフターケアの対象として適当とされる傷病について、その対象者、あ るいは保健上の措置、それから実施期間を検討していただこうと思っております。  この点の具体的な検討については、検討部会の終了後に行うことになりますので、本 日この場で検討していただくものではありませんが、こうしたことを検討していただく ということを予定しているということで、このようなことを取りまとめております。そ ういうことで、この見直し事項に関する詳細な説明につきましては、第2回本専門家会 議の場で行うこととしておりますので、本日は省かせていただきます。  ほんの概略だけ申し上げますと、例えば検査又は薬剤の範囲の明確化、または頭頸部 外傷症候群等についての対象傷病の整理・統合、多くのものがここに含まれているとい う現状ですので、これを一定程度整理・統合したらどうかということ。それから、頸肩 腕症候群の名称変更ということをご議論いただければと考えております。  先ほど、柳澤座長から、今後のスケジュールというお話がありましたが、スケジュー ルについてはいま私も検討部会の今後という話をしましたが、28頁の資料14をご覧く ださい。次の専門家会議については、アフターケアの基本的考え方に関する検討部会終 了後に行う、というのは先ほど申し上げたとおりです。検討部会については、全体で3 回程度を予定しております。これも冒頭に課長からありましたように、議論の状況に応 じ、回数を調整することとなりますので、次回の専門家会議の日程については、スケジ ュール案により11月以降を予定しておりますが、これについては別途調整させていただ きます。  検討部会のほうの具体的日程については、5名の各先生方と調整の上ご連絡させてい ただきます。できるだけ速やかに検討部会を進めたいと思っております。  本専門家会議の検討結果の取りまとめについても冒頭に課長から申し上げましたが、 来年1月を目処としておりますが、議論の動向により年度末を限度に延びることもある ということで、これについてもご了承いただきたいと思います。スケジュールについて のご説明は以上です。 ○柳澤座長  議事次第のスケジュールまで行ったわけですが、アフターケアの措置内容の全般的見 直し事項ということで先ほど説明がありました。せっかく全体会議として皆様方いらっ しゃいますので、アフターケアの措置内容の見直しの資料13の23のところだけでもお 目通しいただき、ご議論あるいは検討部会のほうでの検討のご要望がありましたらご意 見を伺いたいと思います。 ○川城先生  質問ですが、23頁の1に「基本的考え方が出来上がったら、それに基づいて傷病を選 定する」と書いてあります。いま21あるものが減ることもあり得るということでいいの ですか。これは落としてしまう、ということも視野に入っているという意味ですか。こ の「選定」という意味はどういうことですか。 ○園田課長補佐  ものすごく広い意味ではどのような議論になるかは、もちろん検討部会の議論を待た ないとわかりません。ただ、現実には、現在手帳を持っている方に対して、それを即や めるということは非常に現実的でないと考えております。 ○川城先生  理論的にはあり得るけれども、というような意味ですね。 ○園田課長補佐  はい。 ○川城先生  もう1つ知っておきたいと思いますのは、9頁の21番に、「平成18年4月に胸腹部の 認定基準等の見直しに伴い創設されたものとして、胸腹部臓器の障害」とあります。こ の作業によって傷病が増えたのですか。例えば、呼吸障害が増えたとか、消化器障害が 増えたというような意味ですか。 ○長嶋医療監察官  先ほどご説明いたしました、アフターケア制度の案内パンフレットにある5つの傷病 の追加と、2つの傷病の変更を行ったということです。 ○川城先生  それで、これがいちばん新しい情報ということになりますか。 ○長嶋医療監察官  はい。 ○黒木先生  精神障害の場合、これは精神障害として考えると。その中の傷病を選定するというこ とは考えていないということでよろしいでしょうか。なぜこういうことを言うかという と、ストレスに起因した精神障害、要するに心理負荷が強くて発症した疾患ということ で出発するわけです。そうすると、最初はストレスが強いということで、ストレス性の、 反応性の精神障害として治療していくうちに、本人の個体側要因が強い病態に変わって いく。そういうものを後遺症として考えるのか、あるいは別疾患として移行していって しまったということもあるので、この辺をどう考えていくのかということをお聞きしま す。 ○長嶋医療監察官  労災の補償の対象となるものは、あくまでも業務との因果関係という話になりますの で、先生が言われますように、ほかの病気に変わったということであれば対象にはなら ないと考えられます。 ○黒木先生  そうすると、なかなか難しい問題があります。 ○園田課長補佐  たぶん精神障害の場合は、療養と保健上の措置というようなアフターケアとの境目も 非常に難しいところがあろうかと、私は素人なりに思うのです。それから、いま言われ た個体側要因との関係ということになると、かなり難しい部分が出てくるかと思います。 ○黒木先生  療養過程で、個体側要因を考えるということは、その項目の中に入っていないですね。 だから、最初に認定されて、入口で認定されてしまったら、これはずっと補償するとい う形になっていますね。その部分の症状固定のときにどう判断するのか。例えば、従来 の内因性の精神障害に変わってしまったと。しかし、それは後遺症として一応補償を続 ける、という考え方でいいのですよね。 ○長嶋医療監察官  もともとは業務上の病気だというものを治療している過程で、業務とは関係のない傷 病が発生したと。それを明確に分離できるのであれば、その措置ということになると思 うのです。言われるように、分離されない場合にはまさに判断は難しいと思います。通 常は個々に症状を見ていって、医師のご意見等を伺いながら症状固定とできるのか、分 離して判断できるのかを検討していくことになると思います。考え方としてこうだ、と 言うのはちょっと難しいかと思います。 ○黒木先生  是非ともその療養過程の中で明らかになった部分も考慮していただけるといいかと思 います。 ○柳澤座長  精神障害の場合、特にうつ状態であればアフターケアといっても、実際に症状固定と いっても、いつ変化するかわからないということがあるような病態で、ほかの病態とは 違う特殊性があると思います。例えば、職場が全く変わることによって、一旦軽快して、 そこで症状固定したというふうになったら、その次の段階で今度また新しい症状が出て きたら、新しくそれが労災であるかどうかということの認定から始まるということで、 普通の理解では、前の認定がそのまま引きずられる形ではなくなるわけです。必ずしも そうではないのですか。 ○ 岡崎先生  他の疾患と共通していると思うのですが、最初は労務災害というストレスが関与して 起き、その後同じ状態を繰り返すことが多いのですが、ストレスは初回ほど大きくなく ても、繰り返しやすくなるという障害(脆弱性)が残るわけです。その点では多分他の 病気とも似ている面があると思うのです。その脆弱性形成に労災は関わっているわけで す。2回目、3回目になると、労災起因性は初回ほど明確でなくても、同じ程度の障害 が再発することがみられるというのが、うつ病の場合などは非常に典型的な経過です。 ストレスとその脆弱性というのはちょうど反比例的になります。始まりは労務起因性で あって、その後は労務起因性はみえにくくなりますけれども、それが始まったきっかけ はセンイ的には労務起因性であるということです。腰痛なども、似たようなものではな いかと思います。 ○黒木先生  そうすると、そのストレスをどう考えるかということがまた問題になると思うのです。 例えば業務起因性で精神障害が発症した。それから長い経過のうちに、本人が療養して いるが、それでもなかなか治らない。それから、ちょっとしたストレスで起こってくる というような場合に、業務起因性ということを継続していいのかどうかということもま た問題になってくると思います。 ○柳澤座長  そのような問題点があるのだということを指摘していただいて、検討部会のほうで検 討するようにしたいと思います。また全体会議でもご議論いただきたいと思います。い まのように、個体側の条件にある程度関係するけれども、しかし最初は業務起因性でそ ういった症状が現れて、そうすると習慣的にそういうものがより小さな刺激とか、外因 であっても起こりやすくなるというふうなこと。別の観点から見てみると、例えば身体 的な障害でせき髄損傷からずっといろいろありますが、このように、明らかに業務起因 性があって、労災と認定されて、そして症状固定と判定されて、アフターサービスを受 けているような方が、加齢に伴って出てくるいろいろな老化による身体障害というのが あるわけです。ベースに、労災による疾病や障害があったときには、より強く現れやす いということがどの領域の障害でもあるのだろうと思います。  そういうものについて、労災アフターケアについて皆さん方もいろいろ苦労されてき ているのだろうと思います。そういうものは、従来どのように扱われてきたのですか。 ○長嶋医療監察官  理屈からいえば、対象にはならないということですが、実際には加齢に伴ってという ところと、元のアフターケアとしての後遺症状と区別できるかというと、なかなか難し い状況があります。そういう状況もあって、例えばアフターケアの更新が続くというよ うなこともありますので、その点については検討部会のほうでご検討いただきたいと考 えております。 ○園田課長補佐  傷病ごとの年数は違うと思うのです。 ○黒木先生  是非とも検討してもらいたいのですが、例えばICD10で適応障害にしても、その環 境因性の、その環境に適応できない、環境に順応することがなかなかできなくて適応障 害になったと。しかし、その環境を元に戻してあげてもなかなか治らない、6カ月以上 経っても治らない場合は別の疾患を考える、というふうにきちんと書いてあります。そ の辺の療養期間というものをある程度視野に入れていただければと思います。 ○柳澤座長  いまの話ですと、6カ月経っても治らない、つまり前の外因のある環境から離して6 カ月経っても治らないけれども、それは別の疾病であると理解するということですか。 ○黒木先生  そのように考えていいのではないでしょうか。 ○柳澤座長  その辺はどうでしょうか。先ほど岡崎先生が話をしていらっしゃいましたが。 ○ 岡崎先生  いろいろあって、なかなか一律にはいかないところがあります。個体側要因の違いが ストレス要因の働き方が違ってきますし、ストレス要因と、それを修飾する要因という 概念を分けなくてはいけないということもあります。高齢期と発達期では、同じストレ スの効果でも違ってまいりますので、ストレスの強さをどう重み付け評価するかという ことは、難しい問題で、それは検討が必要かと思います。精神障害の労災の認定の中に も修飾要因、重み付けの考え方は入っていますけれども。 ○柳澤座長  いまご議論いただいたようないろいろな問題というのは、本当は事務局のほうとして は、法律に基づいて措置が行われるわけですから、きちんときれいに分けていたほうが ありがたいということはあるのでしょうけれども、分けられる部分と、分けられない部 分ということを明確にして、その分けられない部分についてどういう取扱いが現状では 適切かということも議論していただくということになるのだろうと思います。 ○山口先生  私は法律屋で、医学のことは全くわからないのですが、1つだけ先生方にご意見を伺 いたいのは、このアフターケアというのは保健上の措置ということになっています。そ れに対する言葉はここに出てきませんけれども、たぶん医療上の措置という言葉なのだ ろうと思います。それで、この言葉の使い方が、医学の先生方からご覧になって適切な 言葉なのかどうか、分けられるものなのかどうか。  それから、ここの検討要望事項に出ていますせき損とか頭部外傷という具体的なもの で見て、医療上の措置と保健上の措置というのは分けられるようなものなのか、どうい うものなのでしょうか。 ○柳澤座長  いかがですか。これは、従来からこの領域でいろいろなお仕事をしていらっしゃいま す奥平先生何かコメントいただけますか。 ○奥平先生  医療上の措置のときには、医療によって明らかに症状の改善が見られる。保健上とい うときには、むしろ余病の併発を防止するという観点で。それから、医療としては必要 ないけれども、このようなことをしておいたほうがよかろう、というようなことが2、 3あると思います。そういうことが保健上の措置として謳ってあるように思います。 ○柳澤座長  確かに、実際の場面ではなかなか難しい面があるのだろうと思います。いま奥平先生 が言われたような形で、おそらく症状固定の状態から悪化することを防ぐような措置と いうのが一般的な保健上の措置ということで、医療上となったら、アフターケアを受け ている段階であっても、明らかにもともとの原因に関連した疾病が悪くなった、あるい は障害が悪くなったときに、それを医療行為によって改善してあげて、また元の状態に 戻すという理解だろうと思います。  これは、現実に労災保険、あるいはアフターケアの実施の場面で混乱するというと変 ですけれども、なかなか取扱いがどちらのほうに区分できるか難しいということが問題 になることというのはあるのでしょうか。あるとすればどの程度あるのか。稀にあるの ならば、基本的なガイドラインだけ示しておけばいいだろうと思います。非常にしばし ばあるならば、それに対して何か対応を考えなくてはいけないですね。 ○長嶋医療監察官  労災の場合については、療養なのかそれともアフターケアなのかというのは、治ゆを 境にしておりますので、実態の認定として治ゆであるかどうかと。認定された後は、基 本的に療養はできない、治療はできない。もう1つ、治ゆ後悪化し、再発の認定、先ほ どの三要件を満たす場合については再発と認めますので、認められた後は療養を行うこ とができる。ですから、いつをもって治ゆなのか、いつをもって再発なのか、というと ころで一応線引きをして区別をしている状況です。 ○柳澤座長  再発後、改めて再発であるという診断書が出ることによって、受ける措置の内容が切 り換わるという理解でよろしいわけですか。 ○長嶋医療監察官  診断が出るという、そういうものの書式があるかというとそういうものはないわけで す。結局、労災で請求していただいた状態を医師と共に確認をしてということになると 思います。 ○木村先生  私はリハビリテーション医学をやっていますのでその立場で発言させていただきます。 脳卒中の患者の診療報酬の問題で、日数の上限が設けられました。それと同じようなこ とかもしれませんが、私どものリハビリテーション医学で脳卒中は、この領域でいうと 頭部外傷などで片まひになりますけれども、これは再発すれば当然悪くなるわけです。  そういう患者は頭の障害のために片まひ、右の手足のまひとか、そういう上肢、下肢 のまひが起こるわけですけれども、それは、まひとしては変わらないのですけれども、 機能の維持をしないと関節が固まってしまうとか拘縮とか筋力が低下します。そういう のは、リハビリテーション学のほうでは、できるだけ機能維持をしてあげようとしてや るわけです。そういうものが、いま言っているアフターケアに結び付いて、再発ではな いわけです。脳そのもののあれは起こらないわけですけれども、機能維持をしないで済 む方もいらっしゃいますし、そういう機能を維持できるように指導するように我々も指 導するわけですけれども、中にはできなくなってしまってだんだん起こってくる者もい ます。  最近は一般にも使われるようになりましたけれども、我々のほうでは廃用症候群、使 っていないために起こるディスユーズのための筋力低下とか関節拘縮というものが、い まおっしゃったアフターケアのところになるのか。それが、我々のほうでは医療保険か ら介護保険にもっていくようにということで問題になっているわけですが、そのような 問題かなと思って議論を伺っていました。 ○柳澤座長  確かに脳障害、あるいはせき髄障害による運動まひに対するリハビリテーションで、 運動まひそのものは一定段階で症状固定ということで認定されるわけですが、そういう 方に対するリハビリテーションというのは、一般的にアフターケアの内容としては認め られているわけですね。 ○奥平先生  山口先生のご質問についてもう1つ説明を加えますと、いま木村先生のお話にありま したように、治ゆというものは何か障害が残っている場合に、それを治ゆと認めるかど うかということが医学的にあるわけです。ですけれども、労災保険上の治ゆということ がいちばん肝心な問題でして、労災保険ではこれ以上治療しても症状が変わることはな いであろうと。それを症状の固定、あるいは労災保険上の治ゆとみなしていて、医学一 般における治ゆとは別な概念でまず取り扱っている。それに対して、今度医療上の措置 が必要になった場合には再発とみなす、というような観点になるのかと思うのです。 ○ 松島先生  泌尿器科系ですと、職業性膀胱がんという問題があります。ベンチジンやベータナフ チルアミンに曝露後、平均潜伏期間が20年位で発生します。初発時に治療しても、再発 があります。今までも検診手帳があり、実際20〜30年間検診しているのですが、そこで 新しいアフターケアを実施する場合、その人達は今までの手帳を持っていれば、同じで あると理解していいわけですね。既に実施しているわけですから。  職業性膀胱がんに関しては既に検診手帳がありますから、そういう人達は今回の新し いアフターケアになった時、これまでとどう変化するのか、私自身良くわからないので す。これまでも、3カ月に1回は尿細胞診に来院し、年に数回は検査しています。新た に再発した時には治療という形になっています。腫瘍が無くなり、尿細胞診が陰性にな れば、そこで治ゆ、さらに6カ月経てばそれで症状固定なのです。但し、また再発して くる可能性がありますのでチェックしています。それと今回のアフターケアがどのよう に結び付くのか。今まで行っている事と、全く違う場面になるのでしょうか、そこが良 く理解できないのです。 ○長嶋医療監察官  アフターケアの具体的内容については参考資料2でお配りしているところの、各個別 の傷病については実施要綱で決められたものが対象になるということです。 ○松島先生  いままで、この疾患に関しては労働省時代の昭和47年からずっと施行されています。 そういうものに関しては、従来どおりと考えてよろしいわけですね。 ○長嶋医療監察官  ということで規定されておりますので、当然この内容についても医学の進歩等を踏ま えて見直しを行って、これまでも来ておりますし、今回もそういう項目も入っていると いうことです。従来どおり認められているものについて、将来的に全然変わらないとい うことではなくて、見直しは当然ありますけれども、現在認められているものであれば、 それは対象として実施できるということです。 ○柳澤座長  ほかにはいかがでしょうか。 (特に発言なし) ○柳澤座長  それでは、先ほどのスケジュールに従って検討部会での作業は、制度的な観点から主 に行います。先生方は、おそらくご自身の専門領域において参考資料3にあるような、 アフターケア制度について、個々の疾患・病態について細かくありますけれども、現在 の医療水準、医療の進歩の結果、不適切になったもの、あるいは変更することが望まし いものについては、お帰りになってから時間をみてご覧になりながら、次の会議でご意 見をいただければと思います。  本日予定された議事はすべて終わりましたが、閉会にあたり事務局から皆さんに申し 上げることはありませんか。 ○笹川係長  特にありません。 ○柳澤座長  それでは、第1回の専門家会議はこれで終わりにいたします。お忙しい中をどうもご 苦労さまでした。 (照会先)  厚生労働省労働基準局労災補償部補償課福祉係 TEL  03(5253)1111(代)内線5566   03(3502)6796(夜間直通)  FAX  03(3502)6488