06/09/26 次期治験活性化計画策定に係る検討会第4回議事録 第4回次期治験活性化計画策定に係る検討会          日時 平成18年9月26日(火)          10:00〜          場所 KKRホテル東京(白鳥の間) ○楠岡座長 ご出席予定の委員がお揃いになりましたので、開始いたします。第4回次 期治験活性化策定に係る検討会にお集まりいただきまして、ありがとうございます。本 日、皆様ご多忙のところですが、また2時間半にわたりましていろいろと検討をお願い したいと思います。事務局より、本日の出席の確認をお願いします。 ○研究開発振興課長補佐 本日は山本晴子構成員から欠席のご連絡をいただいておりま す。  9月1日付けで事務局のメンバーも交代していますので、この機会にご紹介させてい ただきます。厚生労働省医政局研究開発振興課長の新木です。経済課長の武田です。国 立病院課長は本日欠席ですが、関山に交代しています。医薬食品局審査管理課長の中垣 です。文部科学省高等教育局医学教育課長の三浦です。  私は研究開発振興課長補佐の佐藤です。私ども、前任に引き続きまして尽力してまい りますので、よろしくお願いしたいと思います。  本日参考人としまして、欧州製薬団体連合会の青野寛之様、米国研究製薬工業協会の 小林利彦様にご出席をいただいておりますので、ご紹介させていただきます。  それでは座長のほうに議事をお願いします。 ○楠岡座長 最初に配付資料の説明をお願いします。 ○研究開発振興課長補佐 本日の配付資料の確認をさせていただきます。第4回次期治 験活性化計画策定に係る検討会の座席表、そのあと議事次第、資料番号が付いているも のが、資料1から資料6まであります。そのあとに、これはプレゼンテーションの資料 になりますが、中島和彦構成員提出資料、安田晃構成員提出資料、青野寛之参考人提出 資料、小林利彦参考人提出資料が、4点付いています。構成員の方々のみに配付させて いただいていますが、前回の第3回の次期治験活性化計画策定に係る検討会の議事録が あります。黄色の冊子ですが、これも構成員の方のみに配付をし、傍聴の方には概要の 資料6が付いていますが、治験のコストに係る医療経済学研究についても配付していま す。以上、資料の過不足等がありましたら、事務局までお知らせいただきますようお願 いします。 ○楠岡座長 議事に入ります。本日は「治験実施企業における取組及び医薬品・医療機 器の開発に係る研究開発の推進について」を議題として予定しています。まず資料3の 「治験の効率化に係る現状調査班 途中経過(報告)」について、ご紹介いただく予定で す。その後、資料4「治験実施企業における取組及び医薬品・医療機器の研究開発の推 進に係る基礎資料」をご紹介いたします。その後、日本製薬工業協会、欧州製薬団体連 合会、米国研究製薬工業協会、日本医療機器産業連合会から、それぞれ治験環境に関す る課題とその解決策について発表していただく予定になっております。  最後に、「治験実施企業における取組及び医薬品・医療機器の研究開発の推進に係る論 点」についてご説明いたしまして、議論に入ります。よろしくお願いいたします。  まず、議題に入る前に、「治験コストに係る医療経済学研究」について説明させていた だきます。資料6をご覧ください。  これは昨年度の厚生労働科学研究費の特別研究として行ったもので、治験のコストに 係る医療経済的な側面から、検討したものです。1枚目の下段にあるように、方法とし て、治験実施医療機関側のコストの調査を国立病院機構内の6病院、並びに国立循環器 病センターのご協力をいただいて行っております。治験の段階ごとに、どういう人が、 どのぐらいの時間関わるか、関わる方の人件費を算出しまして、それに基づき作業に要 する人件費全体を算出したものです。  ただ、これだけですと実際にかかった時間にかかわる人件費しか出ないので、医師、 CRCを対象としたタイムスタディーも行って、そこから治験に関する人件費面でのコ スト、医療機関側で発生するコストを調査しています。  一方、治験依頼者側については、日本製薬工業協会、並びに竹内先生を代表としてお られるR&D Head Clubから資料をいただいて、分析を行っていただいています。  最後に、慶應義塾大学の中村先生に、医療経済学的な分析を行っていただいたもので す。非常に膨大な内容になっていますので、概略だけを簡単にご説明させていただきま す。  2頁に、実施医療機関側の治験コストの結果を示しています。治験依頼者からのファ ーストコンタクトから治験終了までに発生する作業をリストアップして、全部で85工程 に分類しています。その各工程について、誰がどのぐらい関わるかを出したものです。  その結果として、プロトコールによって費用が変動する工程として6工程、実施症例 数に比例して費用が変わっていく工程が26工程、プロトコールとか症例数に依存しない、 治験ごとに発生する一定作業の工程、例えば書類作成・契約、文書保管等ですが、それ が53工程という結果になりました。  ここにかかる人件費を分析しますと、固定部分と変動部分に分けられることが明らか になっています。固定部分としては、治験事務局、あるいはIRB事務局における事務 作業、治験関連作業工程の約3分の2に関わる工程が、この固定部分として出てまいり ます。  一方、変動部分としては、治験の課題の性格によって大きく異なる工程と、症例数に 比例して増加する工程とが出てきました。ほとんどの工程は症例数に比例して増加する 工程という形になっています。このように人件費に関しては、固定部分と変動部分の組 合せで決まっている状況が明らかになっています。  一方、タイムスタディー等で見ると、業務量としては、治験担当医師は治験内容によ らず、同一病院内ではほぼ一定の時間の業務量となっています。これは医師が忙しいた めに、必要最少限のところしか実施していないことを示すものではないかと思っていま す。一方、CRCの業務量は治験内容によって変化しており、医師のかなりの業務をカ バー、支援しているのではないかと思われております。  医師、CRCを対象としたタイムスタディーでは、医師が教育、研修等に関わる時間、 医師及びCRCが治験の間接業務に要する時間等を測定しまして、治験に紐付けられる 労務時間を出しております。  そうしますと、実際の治験の実施に関わる時間から出した費用に対して、医師では大 体40%増、CRCでは20%増の、上記のような間接的な時間というものが出てきました ので、コストとしては医師では40%増、CRCでは20%増という形でなってくるかと思 います。具体的な金額等は省略させていただきます。  ただ、今回の解析では、委託費とか、燃料費、光熱水量費等の部分が含まれておらず、 人件費部分だけを計算しておりますので、ここで出てきているコストが医療機関側の全 部のコストではないということです。  もう1つ言えることは、医療機関側で、人件費に基づくコストは受託研究費として医 療機関が受け取っている金額よりは、かなり少なく、大体全体の3分の1程度である。 したがって、残りの3分の2程度は、ある意味医療機関、あるいは医療機関で働く人の 経済的なインセンティブ要因として働いている可能性が考えられます。  一方、治験依頼者側の治験コストでありますが、これもかなり膨大なデータをいただ いているのですが、単純化しますと、症例単価の決定因子としてはプロトコールの内容、 治療の領域、治験実施施設の背景、設立母体によって費用が変わってきます。CRCの 有無、SMOの有無によって、症例単価がかなり変わっていることが指摘されています。 特にCRCの費用、SMO費用が単価を引き上げている原因の1つです。これはCRC の有無、SMOの有無によって比較し、こういうデータが出ています。  これは今回治験依頼者側から明確なデータはいただけなかったのですが、治験に関す る企業におけるコストのうち、医療機関への支払いは、全コストの約4分の1であって、 約2分の1は企業内で消費しているという点が出ています。そうしますと、治験に関わ るコストが高い要因の大きな部分が、企業でのコストにあることが考えられると思いま す。この点に関しては最後のまとめの点で少し触れたいと思っています。  医療経済学的に分析すると、欧米に比べて日本の治験コストは高いのですが、その理 由として、需要面と供給面の2つの構造的要因によるという指摘を受けています。需要 側の要因としては、製薬業は利益率が高いということ。日本市場での上市に必要な日本 での治験が必ず要ること。マーケティング上の配慮がなされているという点です。これ らは依頼者側の要因です。  一方、供給側の要因としては、医療機関における症例数増加に制約がある。これは後 に出てきますが、患者集約性が低いことが1つの制約になっています。2番目に、低コ ストで治験サービスを供給可能なすぐれた医療機関の不足、要するに医療機関側での競 争原理が働かないという点です。3番目は、過度な「質」への要求と治験業務の標準化 の遅れです。これもコスト増につながっている点です。  最終的に、現在ほとんどの施設で「ポイント表」が使われていまして、それがほぼ共 通の形になっていますが、これがある意味高コスト構造を是正できない、公定価格的な 要因を形成しているのではないかという指摘がありました。  コスト格差を是正するに向けて基本的な方針としては6つの点の指摘を受けています。  1番目は、治験内容の違いを考慮し、効率的な治験実施費用を基に、固定費と変動費を 区別した上で、「参考」対価を設定する。現在の「ポイント表」に関して検討が必要とい う点です。  2番目は、治験実施機関に対する認定・監査・指導・教育が必要である。特に指摘さ れたのは、治験が実施されないにもかかわらず、返金がなされていない現状がまだある ので、この辺はガイドラインの整備を含んで、きっちりと指導・監査をする必要がある という指摘です。  患者の治験参加支援。これがなされていないので患者が集まりにくい、リクルートが 遅れる、あるいは集積度が低いとなる点で、これに関する検討も必要であるということ です。  4番目は、治験手続きの標準化が必要ということで、これは本日の議題に入っていま す。  5番目は、医学的な見地から見た治験審査内容のチェックと簡素化が必要である。  6番目に人材の養成ということが示されています。それぞれについて、かなり詳細な 指摘点がありますが、時間の関係で省略いたします。  まとめとしては、治験の現在の高コスト構造の原因として、依頼者側の要因がかなり ある。それの1つの理由が、モニタリングの効率が非常に悪い点です。その原因として は、今度は施設側の問題として、施設の症例集積度が低いという点です。もう1つは、 モニターが本来業務以外の作業にかなり時間を取られていて、結果的にモニターの費用 が高く付いているというのが1つの原因とされています。  この点に関しては、今後治験に関わる作業の適切な分担、依頼者側と施設側の分担を 考える必要があるかと思います。ただ、分担をしても単にコストが依頼者側から医療機 関側に転嫁されるだけですが、コスト構造としては今回医療機関側のほうが安いという 見解が出ていますので、トータルコストは下がるかもしれないという点が指摘されてお ります。  医療機関側の要因としては、SMOへの経費がかなり高く付いている。それから、経 費の支払いがまだちゃんと出来高に応じていない点があるということが、1つの高コス トの原因となっています。最終的に、この研究班での治験のコスト高の根本的な原因と しての指摘事項としては、症例集積度が低いという点、現在のオーバークオリティーを 防止するシステムがないという、この2点が非常に問題と考えています。  その対策としては、患者、国民にもっと治験を理解していただいて、積極的に参加し ていただけるようなシステムをつくる、今回患者が参加するのにためらいがあるような データも出ておりますが、垣根を低くしていく必要があります。また、審査当局も含め た治験の実施体制の改善が必要とされています。  今回班員ではありませんが、研究協力者の中に、現在は東京大学に移っておられます が、当時PMDAにおられた小野さんにも入っていただいて、審査管理側からも私的な 立場で意見をいただいて、こういうような結論を得ています。非常に短時間で、端折っ て恐縮ですが、治験コストに係る医療経済学的研究としては、こういう結果が出ていま す。また、時間がありましたら冊子のほうをご覧になっていただければありがたいと思 います。この点に関して、何かご質問はございますか。もし何かありましたら、後ほど ご質問をいただきたいと思います。  本日の議題の「治験実施企業における取組及び医薬品・医療機器の開発に係る研究開 発の推進」について、入っていきたいと思います。まず、治験の効率化に係る現状調査 班の班長である伊藤澄信構成員に、資料3「治験の効率化に係る現状調査班の途中経過」 をご紹介いただきたいと思います。 ○伊藤構成員 私に与えられた課題は、アジアが治験でプレゼンスを増していく中で、 日本の治験のコストパフォーマンスが悪い、遅いという問題をいかに効率的にするのか ということの現状調査です。いま楠岡委員長からご報告がありましたとおり、問題点に ついてはあらかた出てきているわけですが、それを調査という形できちんとしたものが あまりないということがあり、それを行っております。資料に基づいてご説明します。  資料の最後の中間報告をご覧いただくと、主だったことはここに列挙して書いていま す。治験の契約までに、治験責任医師のほかに、治験管理室とか、CRC、薬剤科とか、 複数の箇所に訪問しなければいけないというのが、効率的ではないということが問題点 として、調査の結果わかってきております。  また、半数以上の施設では、郵送での書類受付が可能になっておりますが、持参をし ろということで、モニターが施設に複数回行かなければいけないというようなこともあ って、非常にモニターのコストが高くなっています。  本来医療機関で作るべきと思われるような資料、とり分け同意説明文書などが、約7 割近くを企業が作っているというのが現状です。そういったものを企業・依頼者が作る のか、施設が作るのかについて、内部でも随分議論がありましたが、最終的には効率的 な運用をするにはどうすればいいのかという観点から、調査班の内部では議論していま す。もう1つは、約3分の1の施設で、IRBで企業の方が治験の説明している。治験 責任医師が対応していないということも、実態として明らかになっています。統一様式 では、国立病院機構の様式がいちばん多く使われているのですが、4割ぐらいの施設は 独自様式があるという状況です。  コストパフォーマンスが悪いことに関しては、いちばんの問題はモニターの経費が高 いことで、1施設当たりのケースが少なく、施設数が多いことはもうわかっているわけ ですが、それ以外に、今回明らかになってきたことは、症例が入るか入らないかわから ない施設かもしれませんが、施設ごとにローカライズするために、モニターが施設の要 望に応じて、個別にいろいろとフォーマットを変える手間がかかっている。契約までの 手続きとか、ワークシートの一部を少し変えてくれという要望に応じて、特殊な施設独 自版を作らなければいけないというのが大きな問題になっています。  結論として私たちが出したのは、個別化をさせない、標準的な様式の統一をしていく ことがいちばん大切なのではないか。もう1つは電子化、IT化についても言えること だと思いますが、ローカライズすることは事故の元であると同時に、非効率であると思 っています。そういう意味で、例えば国立病院機構とか、製薬協バージョンということ ではなく、厚労省と、文科省で統一したバージョンを作成していただくことはできない だろうか。それに基づいて電子化をするのが、いちばん効率がいいのではないかと思っ ています。  もう1点は、今後私たちが目指さなければいけないのは、アジアの中で臨床研究、治 験のエンジンとしてプレゼンスを出さなければいけないということであるならば、もう 少し効率的に症例の集積をしていかなければ、多分生き残っていかないのではないかと 思います。そういう点で、中核的な施設で、迅速に症例の集積ができるような形にして いくのが、今後の方向性ではないかと思われます。  電子化に関しては、病院の情報システムがHL7という規格でほぼ統一されつつあり ます。臨床試験のデータフォーマットに関しては、クリニカルデータ・インターチェン ジ・スタンダート・コンソーシアム、CDISCと呼ばれる規格で、ほぼまとまりつつある というのが、我々の認識であります。それをXMLという規格でデータの交換をしてい くというのが将来像だと思います。これを効率よくするためには、様式の統一化がエッ センシャルです。紙で書いたフォーマットを少し変えるのは比較的困難ではないのかも しれませんが、電子的なもののフォーマットをいじることは、特にデータベースをいじ るということは、非常に苦痛がありますし、事故の元だろうと思いますので、様式の統 一化がされなければ、電子化への道はないと思います。  今後、HL7、CDISC、XMLといった規格に関しては、ほぼそちらの方向にい くのだろうと思いますが、次世代のDVDと同じように、変更がある危険はなきにしも あらずだとは思います。それを見据えた上で、まずは私たちがいまできるのは、様式の 統一化の方向性ではないかと考えているところです。  現在でもEDCと言われる、例えばブラウザを使ってデータを入れることに関しては、 大手の治験をやられている施設に関しては、ほぼできる状態ですが、病院のデータをそ のまま抜き出して、依頼者のサーバーに入れるには、もう少しHL7とかCDISCと いった規格の統一化の話が先なのではないかと考えます。以上です。 ○楠岡座長 これに関する議論は後ほどとなりますが、何か直接的な点に関してご質問 があればお願いします。よろしいでしょうか。そうしましたら次に進みます。続いて、 資料4「治験実施企業における取組の推進及び医薬品・医療機器の研究開発の推進に係 る基礎資料」の説明を事務局からご説明をお願いいたします。 ○研究開発振興課長補佐 資料4「治験実施企業における取組の推進及び医薬品・医療 機器の研究開発の推進に係る基礎資料」をご紹介いたします。この前半の部分は、治験 実施企業の取組の推進ということで、ただいま伊藤構成員から紹介があった部分の基礎 資料もこの中に含まれていますので、併せて補足をさせていただこうと思っています。  1頁です。「医療機関における手続き等に係る現状(医療機関の認識)」というタイト ルがあります。この部分については、実際に医療機関にアンケートを送って回収した部 分からの暫定的な集計ということで、ご紹介させていただきます。  「背景」と書いてある部分、この表に書いてあるような施設の構成、病床数、1日当 たりの外来患者数の病院からの回答をいただいています。「契約状況」については、医療 機器のほうは、相当少ない状況ですが、この表にあるような平成15年度の契約症例数で、 平均的には平成15年の契約症例数は医薬品であれば77、医療機器であれば4というこ とです。  2頁です。平成16年度、平成17年度の年次的な推移がわかるような形になっていま す。(3)の「治験依頼者との役割分担の現状」というところで、まずIRBの開催頻度と いう基礎的な状況でいうと、6割以上の方が、営業期間が月に1回開催をしている。I RB委員の選任に係る課題という部分では、多く回答が出ている部分で、毎回出席でき るように探すこととか、一般市民の立場で発言できる外部委員を探すという部分、GC Pについての知識を持っている方を探す部分に対して、課題と感じているところが多い ということです。  3頁です。Q15ですが、治験に関わる事項を取り扱う専門的な部署を設置していると ころが、全体の7割です。窓口を一元化しているところが全体の9割以上です。こうい う部分では、治験に対する体制はだいぶ整備されてきています。対応窓口についても、 治験管理室で対応しているところは約6割という状況になっています。  あと治験の契約までに依頼者が訪問する必要がある部署という部分では、治験管理室、 治験責任医師、CRC等々ということになっています。郵送での書類手続きが可能とな っている部分は、医療機関については、ほとんどの書類が郵送で可というところを含め ると、全体の半分以上が可能というところです。治験依頼者への情報公開の程度につい ては、Q19に書いているような数字になっています。  4頁です。公開の媒体ということですが、ホームページでこういった情報を提供され ているところが、全体の6〜7割ぐらいになっています。4頁の下の部分から、役割分 担の話の基礎データ部分になっています。  Q20の書類の作成者というところです。ご覧いただくと、先ほど伊藤構成員からご説 明いただいた傾向が、ここに書いてあるような状況になっています。同意文書、説明文 書の作成者という部分が、ほぼ治験の依頼者というところまでを含めてみると、全体の 6割以上という状況です。あとはここに書いてあるとおりですが、特に治験に関する指 示決定通知、スクリーニング名簿等については医療機関で自らお作りになられているケ ースが多いのですが、そういう傾向があります。  5頁です。治験の関連資材の提供者、作成者ということで、先ほども出てきたポケッ ト版プロトコールとか、治験参加カード、症例ファイル、ワークシート等については、 かなりの部分を治験依頼者のほうが作成をしています。あと併用禁止薬・同種同効薬リ ストとか、こういう薬に関する直接的な部分についても、依頼者側が主に作成している 状況があります。また、被験者の募集パンフ、チラシについても、ほぼ治験依頼者とい うところまで含めると、全体の7割近いところが作成している状況です。  Q22はIRBでの説明のために、治験依頼者が出席を求めているかです。ここも先ほ ど伊藤構成員のほうからご指摘をいただいたように、求めている、依頼者の出席がある というところが34.4%で、こういった部分については役割分担を考える上でも参考にし ていただきたいと思っています。  治験の契約形態、支払形態については以下のようなことで、複数年度契約が多くなっ てきています。また、出来高払いの導入も、全体の7割ぐらいということで進んでいる 状況です。  6頁です。契約様式ですが、これは伊藤構成員からご紹介いただいたデータの基デー タになりますが、国立病院の統一様式を使っているところが全体の30%、独自のものが 39%ということです。病院の形態によらないような統一の様式ができた場合に、利用す ることを希望される方が、「利用したい」「独自項目を付加できるなら」というところま でを含めると、全体の6割近い方となっています。  7頁以降は、「医療機関における手続き等に係る現状」ということで、日本製薬工業協 会、8頁が米国研究製薬工業協会のアンケートです。9頁が欧州製薬団体連合会の調査 で、それぞれ業界団体3つで、同様の調査をしています。多少数字の上下はありますが、 先ほどご紹介したデータとほぼ同様の傾向が見られています。この辺りについては、ま た追加がありましたら、業界からの参考人の方を含めて補足をしていただければと思っ ています。  10頁が「IT化に係る現状」ということで、治験に関するアンケート調査の結果によ って出てきた部分です。EDC、電子的な電子対応フォーム、インターネットのオンラ インで医療機関のほうで症例のデータを入力できるような部分については、ほぼ6割の 医療機関で対応されています。処方オーダリングシステムの導入の有無ということで、 治験薬も含めてオーダーリングができる、治験薬を除いてオーダーリングを実施してい るところを合わせると、全体の7割ぐらいです。電子カルテの導入でいくと、現に導入 しているのが25%で、治験データだけを抽出することができるところは23.6%というこ とで、現状では電子カルテが全体的に見えてしまう部分を、どういう形で抽出していく かについては検討が要るということです。以上が、医療機関に関するアンケート調査の 結果ということで概略を紹介しました。  引き続いて、本日の2つ目の課題の「医薬品・医療機器の研究開発の推進」です。最 初に全体の取組を申し上げて、その中で我々厚生労働省としてどのような取組をしてい るかを簡単にご紹介します。  「研究推進に向けての取組」ということで、1番目に総合科学技術会議というのがあ って、ここで第3期の科学技術基本計画とか、科学技術の振興及び成果の社会への還元 に向けた制度改革についての中間報告という部分で、治験・臨床研究について、ここに 書いているような重点的な取組が求められています。  厚生労働省の取組ということで、1番目に「基盤の整備・人材育成」とありますが、 これは研究事業として基盤の整備を平成18年度に開始しています。右下に書いているよ うな、臨床研究機関、教育研究機関の整備ということで、平成18年度はすでにこの事業 をスタートしています。  12頁です。これは臨床研究の推進ということで、全体の補助事業の全体像を書いてい ます。厚生労働省の科学技術研究の推進の基本的考え方という部分です。チャートの右 上のほうに「先端医療の実現」というものがあります。先端医療の実現のための基盤技 術の開発、臨床研究(治験)基盤の整備の推進というところで、こういった予算で平成 19年度の要求をしています。これがグルッと回っていって実現をしていくと、第3期科 学技術基本計画の推進戦略の中の臨床開発の推進の方策の部分に厚生省が主体的に取り 組んでいくという格好になっていくわけです。下のほうに書いてありますが、厚生労働 省の主な成果目標ということで、先端医療の実現という部分、特に基礎から臨床に向け ての取組という部分で、体制整備とか、基礎となるような生命現象の統合的な理解と書 いていますが、こういった部分で現在取り組んでいます。これは報告ということになり ますが、そういう資料です。  13頁に、これは治験以外の部分を含んでいますが、具体的にどのような研究事業かと いうことで、臨床研究の基盤整備とか、臨床研究の推進に取り組んでいる全体の俯瞰図 を書いています。こういうものと併せて、これは厚生労働省の告示で出ていますが、臨 床研究の倫理指針の遵守状況を、特にこういった研究費を交付しているような対象に対 して調査を実施していくとか、臨床研究の登録制度、以下3つのデータベースがありま すが、こういったものの検索を容易にするポータル・サイトの整備をしていく予定もあ りますし、こういう登録を厚生労働省の事業として推進していくといったことにも現在 取り組んでいます。  国民の参画ということで、この登録制度という部分もありますし、臨床研究も含めて、 本検討会においても、啓発活動、情報提供のあり方についてのご検討をお願いしている という状況で、臨床研究部分等についても取り組んでいることをご紹介します。 ○楠岡座長 ただいまの点に関して、何かご質問等はございますか。よろしいでしょう か、では後ほどまたご議論いただくことにしまして、各構成員からのご説明に移ります。 最初に、日本製薬工業協会の中島和彦構成員からお願いします。 ○中島構成員 「治験等の臨床研究の活性化に向けて」ということでまとめています。  1、2頁については、今年3月までに展開していた、前回の治験活性化3カ年計画の最 終評価ということで、活性化3カ年計画のフォローアップ連絡協議会が5月にありまし た。その折に、私どものほうから各項目について、多分に粗い評価ではありますが、4 段階で付けたものを提出しています。「◎」が目標どおりに計画を達成したということで、 「×」が全く達成できていないというイメージで、間を2つ取っているということです。  理解を助けるために簡単にご説明しますと、(1)の「治験のネットワーク化の推進」、 (1)「大規模治験ネットワークの構築」というものについて、「○」が付けてあります。地 域格差はあるが、「全経営母体かなりリスト化した」というコメントをしています。これ はリスト化という意味では、フラットにはかなり充実してできているわけですが、現実 にそれが十分に機能するためにネットワーク化されているか、個々の連携ができている かという点では、やや心許無いのではないかということです。  (2)「医療機器の治験実施体制の充実等」というところで、(1)「治験コーディネータ ーの養成確保」というところにも、「○」が付けてあります。受講人数5,000名の目標に 対して4,500名ということで、ほぼ目標達成です。その後の実態調査をした結果からも 明らかなように、こうした方々が現場にCRCとして就業していただいている率が5割 ないし6割ということで、残念ながら受講の効果という面でどうかという意味合いで付 けています。こういうことで、ほとんどの課題が「○」ないしは「△」ということで、 かなりご努力いただいているのですが、必ずしも十分ではなかったということです。  3頁です。治験の問題という面では、複雑であるということと、構造的であることを 模式図的に示しています。左に現在の日本の治験環境はどういった点が問題かを示して います。品質に関しては、かなりよくなっているということで、それは挙げていません。 従来から指摘されている、スピード、コスト面での問題が依然として残っています。さ らに、先ほどから伊藤構成員からもご報告いただいたように、モニターの負担が重いと いったところを挙げるべきだと思っています。こういったものがどういったところと関 連しているのかです。例えば治験スピードが遅いということですと、開始手続き、被験 者の組み入れ、調査票の固定といったところと関連しているとしています。  3つ目の縦のところですが、いま申し上げた2番目のラインがどういうところと関連 しているかということで、例えば開始手続きについては、事務方の理解が必要、あるい は直接閲覧というところでも、事務方の理解が必要としています。医師のモチベーショ ンについては、被験者の組み入れと関連がありますし、CRCの定着、あるいはパラメ ディカルスタッフの理解とも関連があります。あるいは、被験者の組み入れについては、 先ほどからも出ていたように被験者の集積性、被験者理解、治験情報、医療機関のイン フラ整備といったところと関連があると整理しています。  いちばん右の赤っぽい色で示していますが、こういった問題点を解決する上でポイン トとなるところは、私どもとしては、臨床研究に関する面、拠点施設の整備の面、IC H−GCPの治験への適用、それから臨床試験への適用拡大にあると整理しています。  4頁です。先ほど来、拠点医療機関の整備が指摘されていますが、私どもも、従来よ りこういった点については、いろいろな場で発言させていただいておりまして、諸外国 と同様に、1つには中核モデルセンター的な施設、さらには特定臨床試験施設に相当す るようなものの整備が必要ではないかと思っております。アメリカ、韓国、台湾ではこ のような状況です。  5頁です。前の3カ年計画の結果と、いまご説明したような国内外の環境変化という ことで、対応としては3つの観点から取り組む必要があるのではないかということです。 1つは、改革のスピードアップ、2つ目は問題が構造的・複合的ですので、基盤からの 整備が求められます。3つ目としては、ゴールとしての全体像、そしてそこに至るスケ ジュールを明確にする必要があると思っています。  6頁にゴールの案ということで、少し大胆ですがお示ししています。2010年度末まで にはこのようであってほしい、あるべき姿。1つ目は、すべての疾患領域において、多 地域の共同開発に参加できる体制がしっかりと整備されている。2つ目として、臨床研 究基盤がグローバル水準に達していること、それらの指標の例についてもそこに示して います。3、4番目については、かなり多様な内容が含まれますので、きっぱりとした 形ではお示ししていませんが、そういった点が必要だと思っています。  7頁です。この治験活性化計画検討会では、各調査班での調査も含めて大変充実した 検討がなされています。そういうことで、その成果を期待したいと思いますし、そうい ったところの充実ということを前提として、あえて挙げるということでは、5つあるの ではないかと思っています。  1つは、各省ごとに持っているライフサイエンス研究費、それを話し合いしていただ いて、臨床研究分野の配分比率を大幅に上げていただく。それを前提として、さきほど 申し上げた拠点整備を図っていただくことです。それと、ICH−GCPを臨床試験に も適用していただくこと。2つ目として、臨床研究に対する倫理面を、3つのガイドラ インだけではなく法令化していただく、それを前提として臨床試験に対してもICH− GCPを適用していただくということです。3番目は、前回ある程度見通しが得られた ので、トーンを下げさせていただいて、4番目は治験実施企業に対しても、ICH−G CP、5番目としてトランスレーショナル・リサーチ、あるいはクリティカルパス・リ サーチといったところにも配慮が必要であろうということです。それから少し視点が違 うのですが、総合機構の審査担当者をなるべく早く倍増していただくことが肝要であろ うと思っております。  9頁です。そういうことによって、臨床研究の基盤整備をしていただくこと、その前 提としてそこに書いてあるようなことです。そして、拠点整備をしていただく。左の四 角ですが、治験相談・審査の充実と迅速化ということを経て、いちばん下の国際共同治 験の推進ということで、真ん中の青いゴールを達成できるのではないかと考えています。 ○楠岡座長 ただいまのご発表に関して、何かご質問等はありますでしょうか。よろし いでしょうか。それではまた後ほどご議論していただくことにしまして、次へ移ります。 続きまして、欧州製薬団体連合会の青野参考人からお願いします。 ○青野参考人 「中核拠点病院として備えた方が望ましい条件」ということで、EFP IAの臨床部会内で検討した事項について、簡単にご説明いたします。詳細については バックアップということで後ろに付けていますので、後でご覧いただければと思います。  本当によい薬を早く患者の手元に届けたいというのは、臨床の先生方、患者も含めて、 皆さんの願いというふうに思っております。ただビジネスの点から見まして、日本と世 界の第2位の販売シェアを誇っています。1日も早い承認というのはビジネス面からも 非常に重要なことであるというのも正直なところです。ただ、治験環境のところを見て もなかなか簡単にいかないと言いますのは、日本の治験のコストが高いという状況がご ざいますけれども、最近は国立病院機構、かなり改善されていきていると強く印象とし て持っております。  ここ最近での治験環境と言いますと、もっとドラスティックに変革が起こりまして、 安くてより早い治験を目指して昨今では、ロシアを含む東ヨーロッパとか、アジアとか、 南米辺りから出てきている。そういった状況から、どうやったらよいのかと考えますと、 やはり同時開発の日本が組み入れられると良いと思います。  いわゆる国際共同治験の中に日本の医療機関が入るというのが必須事項ではないかと 思います。  そういった意味から今回の各拠点病院の期待、そういった医療機関、またそれを目指 す医療機関がほしいというのが我々の期待でございます。  具体的にどういったことかということですけれども、細かく書いておりますけれども、 ここに記載しておりますのが、国際共同治験に参画するための必須のインフラであると 思っております。  効率化ということに関しましては、いろいろなところで最近ディカッションされてお りますが、ひとつふたつお話させていただくと、やはり日本の治験責任医師の先生方が あまりにも忙しすぎ、またその先生に治験が殺到するために、却って非効率になるよう なところではないかと思っております。中核拠点病院の医療は今後、先生方の時間を治 験のために使える時間をつくるというような環境づくりを目指していただければと思っ ております。  いちばん下のネットワーク活用、先ほど症例数がなかなか増えないということで、地 域のネットワークを使って臨床試験をやっていくと、それは大事なことだと思うのです けれども、例えばなかなかひとつの医療機関あたりの症例数が少ない疾患の場合は、ネ ットワークを活用し、中核病院に患者を紹介するようなシステムを是非構築していただ く。それによって、実施症例数が増えるし、それは効率化につながるのではないかと考 えています。  その他として、先ほどから完全出来高払いですとか、治験情報の公表、開発と営業の 区別等をあげました。部会の報告から、どうしてもここに入れておくということで入れ させていただいていますけれども、これは我々の責任もあるのですけれども、こういっ たことが現実でございまして、拠点病院としては、こういうことはしないというような 宣言をしていただきたいというのが望みです。  最後に要望事項とございますのは、この中核病院を具体化するにあたりお願いしたい 事項で、いま国立病院機構で、大学のネットワーク、地域のネットワークなどがありま すが、その流れの中で、この中核病院の承認というのがどの辺にあるのか不明確だとい う意見が聞かれてきました。今後の検討課題かと思うのですが、1つの中核病院全体の ネットワークを構築していただくというのと、ネットワーク化という言葉が正しいかど うかわからないのですが、その点、日本の治験全体の活性化のために、何か枠組と申し ましょうか、そうしたものを是非検討いただきたいと思っております。以上でございま す。 ○楠岡座長 ただいまのご発表に関して、何かご質問等はございますか。よろしいでし ょうか。 ○辻本構成員 患者の立場ということでご質問をしたいと思います。4頁のところで、 責任医師が治験に傾注できる環境作りとございます。私も患者の立場に立ちますと、主 治医とか、目の前にいらっしゃる医師に期待することは、治験だけではないのです。あ る病院の患者から相談があったときに、外来がとにかく短いとの訴えがありました。な ぜかと聞いたら、主治医が「いやー、僕は研究が忙しいものですから」と答えたそうで す。我々患者側の立場で意見をお聞かせいただきたいのですが、医師が治験に傾注でき る環境作りというのは、どういうことなのでしょうか。 ○青野参考人 私より先生方にお伺いしたほうがいいのかもしれないのですけれども、 治験の時間確保が、先生方が本当に忙しすぎるというのは、ものすごく、我々もよくわ かっているつもりなのです。診療をされる、論文の執筆をされる、それから研究をされ ている、その上に治験をやられて、いかに時間を使っていくかというのを苦労されてい るというのは、我々も治験依頼者の立場から本当によくわかります。いま治験に傾注で きる環境づくり。これは、先生方が少し業務を減らして自分の時間をつくるですとか、 分担の先生方がたくさんいらっしゃるのですが、そういった先生というのは治験分担医 師からはずして、その先生方は診療に時間を割き、それ以外の先生方の治験へ割く時間 を増やしていただくとか。そういう環境づくりも必要ではないかと思います。 ○楠岡座長 医師の多忙の原因が、治験に関わる問題以外に、いまの日本の医療の中で も大きな問題になっています。ここでできる範囲かどうか難しいのですが、意外と医師 の業務調査がされていないというのも実情だと思います。忙しいのは、確かに忙しいの ですが、なぜ忙しいのか。患者さんをたくさん抱えているので忙しいのか、それとも、 診療以外の業務で、例えばいま話があった研究などをしているから忙しいのか、どこに その忙しさの原因があるのかは、わかっているようでわかっていないのも実情だと思い ます。  我々の病院で、医師は忙しいというけれど、どういう業務を肩代わりしてもらったら 忙しさが楽になるのかということで調査をしました。当初は医療行為の中で看護師や薬 剤師がカバーできる業務があって、それをその方々に任せることで軽減できるのかと考 えて調査をしたのですが、出てきたのは事務作業量が多い、いろいろな書類を書かなけ ればいけない、それを何とかしてほしいという結果が出てきました。この辺りは、ある 意味治験の中の業務分担等にも関わってくるところだと思いますが、別途検討していく 必要があると思います。  ただ、医師に言わせると勝手な意見もあって、全部口頭指示で看護師なりセクレタリ ーのような人が書き取ってくれて、それを出してくれたらいい等という意見もありまし た。アメリカなどでは一部そういう所もありますが、いまの日本の実情では無理で、指 示などは指示簿に書いていただかないと、医療現場としては困るのです。それを事務作 業だからと言ってしまうと問題なので、そこはきっちり区分けしていく必要はあります。 しかし、いろいろな書類で医師以外がある程度書いておいて、それこそCRFと同じよ うに、最終的なところだけ医師がチェックなり記入すればよいようになればいいのでし ょうが、今は全部医師が行わなければならず、それが忙しいという言葉になるのも実情 です。したがって、いま医師不足などと言われていますが、治験だけでなく、全体的に 医師の業務を見直していく必要があるのではないかと思います。ほかにありますか。 ○山本(精)構成員 いまの忙しさの件で追加発言させてください。私は医師ではない し調査をしたわけではないので、単に見聞きした例となってしまいますが、特に大学な どでは、研究をしているといっても臨床研究ではなく基礎研究をさす場合が多くありま す。これに対し、座長が言われたアメリカの例では、臨床医の行っている研究は基本的 には臨床研究です。治療法の開発のための臨床研究は、日常診療と非常に密接に関連し ています。臨床研究をやるから臨床がおろそかになるというのは必ずしも当てはまらな いと思います。  座長が言われたように、研究以外の業務と研究自体でなくそれにまつわるいろいろな 書類だとか、結局そこの問題だと思うのです。研究をやれば診療がおろそかになるので はなく、構造自体がもろもろのことで時間をとられているのではないかと思うので、臨 床研究をもっと進めることが、診療がおろそかになることに必ずつながるわけではない。 より良いあり方、逆に活性化する方法があると思います。 ○楠岡座長 ありがとうございました。それでは、次の発表に移ります。続きまして、 米国研究製薬工業協会の小林利彦参考人にお願いします。よろしくお願いします。 ○小林参考人 PhRMAの小林です。2頁目をお開きください。今日の主題は、「臨床治験 の環境改善」なのですが、たまたまFDAと総合機構の2005年度の結果が出ましたので、 どういう問題点があるのか、前提が違うので数字を直接比較する意味はあまりないので すが、そこから何かが得られると思いますので、少し時間をいただいて、見ていただき たいと思います。  総合機構の件はWebにも載っていますし、6月22日に会議もありましたので、もう皆 さんご承知だと思いますが、60件の審査をして、全体では12カ月で中央値が50%です。 平成16年度以降は、新しく総合機構ができてから目標を掲げておりまして、12カ月で 70ないし80%を達成するということですので、8.6カ月が中央値で83という、数字だ けはすばらしい数字だと思います。優先審査品目の承認事項が、平成17年度でトータル では18件なのですが、機構が出発してから9件で、これはものすごく早い2.8カ月の審 査期間となっています。これは、またあとで出てきますが、数字自体は非常にいい数字 が出ています。  次にFDAの数字ですが、FDAの会計年度は10月1日から9月30日まで、日本が 4月1日から3月31日と半年ずれているのですが、80件です。ただ、承認の中央値につ いては優先審査の場合に、FDAは6カ月が目標なのですが、一般審査は10カ月が目標 で、トータル13件です。ただ、システムが違って、FDAの場合にはアクションレター というものがあって、これがアップルーバルレターを含んでいますので、少し中身が違 うので、比較そのものは日本とはできないのです。コンプリート レスポンス レター というシステムに変わるので、もう少し実態を反映した格好になるとは思いますが、こ こで言えることは、世界的に新薬が枯渇している、と。FDAの数もそんなに無制限に 多くはないということです。ただ、システムが違うにしても、FDA優先審査の場合に は、スポンサーの時間がほぼゼロで、これは申請する前に、かなり相談その他で解決し たところで申請されているということです。  次のデータも面白いデータで、FDAの場合には、本当の新薬は去年は20個しかなか ったのです。日本の場合には、新薬は31個あります。これは機構がかなり努力して、棚 上げになっていたものを必死でさばいたものですから、新薬が、古い新薬と言っては悪 いのですが、数が多いのです。  ここで所感としては、FDAの場合新薬は75%でほぼ優先審査になっているのですが、 日本の場合は優先審査は23%です。というのは、審査スタッフの数が限られているので、 例のがんのオフレベールや未承認薬から上がってくるものは全部優先審査になりますの で、ブロックバスターになるものが優先審査から外れています。これがいいか悪いかは 別にして、こういう数字が見られます。  次はPhRMAの14社のいままでのデータで、私どもは毎年こういう調査をして議論して いるのですが、ここで今年非常に違ったのは、右のほうにずっと流れている数字があり ます。去年までは許可・承認になったものは非常にいい数字が出ていて、手前みそです が、PhRMAの製品は非常にいい製品なのかなという感じがしないでもなかったのです。 今年はダーッと右にずれていて、これを見ると今年の機構の数字は悪くなるのではない かと思うのですが、逆説的に見ると、去年、今年とこれだけ長い期間で許可になってい るということは、先ほど申しました棚上げになっていたものが解決の方向に向かったと いうことですので、私はこれは別の意味で非常にいい数字と取りたいと思うのです。こ のときに、人数がいればもっと早くこういうことができたのではないか、という1つの 問題提起になると思うのですが、それはのちほど少し触れます。  次の数字は、申請年月日と、まだ許可になっていない検討中のものの数字なのですが、 まだ時間がかかっているものが多い。これが機構の手にあるのかスポンサーの手にある のか、数字はあるのですが、個別ですのでここでは出せません。下から3番目の927日 というのは、取下げを行ったということです。PhRMAでも、今回のいろいろなやり取り の中で取下げも行っています。  次が非常に大切なもので、細かいデータはまた研発課に届けたいと思いますが、大き な意味で申し上げます。我々PhRMAは、いま3つの調査をやっております。1つは、治 験施設の運営方法の改善です。これは、来年のアトランタのDIAで報告する予定なの ですが、データそのものは年内に出ますので、是非臨床治験の次期計画の中に参考資料 として入れていただければありがたいと思います。いまどういうことをしているかと言 うと、行ったり来たりが多いので東京地区に集中しておりますが、国立病院が1つ、国 立大学が1つ、都立病院が1つと、3つの大きな施設の中身をかなり細かく詰めており ます。そういう中で、“Centers of Clinical Excellence(優秀な病院)”というのはど ういう条件かはいままでの参考人の意見にも出ていましたが、そういうものが細かく出 てきますので、是非参考にしていただきたい。  もう1つの調査として、PhRMAはいま14社あるのですが、14社からこれは我々にとっ て非常にいい施設だという所を10カ所挙げてもらって、延べ140くらい挙がってきたの ですが、その中でいい所はダブっていますから、71施設ぐらいが残りました。新聞等に よると厚生労働省が40施設、文科省が10施設の指定をお考えのようですので、そうい うデータのお役に立てばありがたいと思います。  米国には、NIH指定の病院が79施設あるのです。これは、先ほどの辻本先生のご質 問と関連するのですが、NIHの指定を受けたときは治験しかやらないのです。ほかは やっては駄目なのです。ですから、例えばGCRCというのは一般的な名前にも使われ ているのですが、実際こういう名前の施設があるのはミシガン大学医学部の施設で、1 つの仕事で20億円もらったとすると、それに20%プラスされて、それで機器を買った り部屋を直したりすることができるのです。その代わり、そこの担当となった医師は、 その仕事が完成するまでそこにいるのです。  診療と治験が完ぺきに分離されているシステムがあって、例えばデューク大学の Clinical Research Instituteは治験専門ですが、そこの担当になったら何年かはそこ にいてほかの仕事はやりません。個人の選択は自由ですので、一般診療に戻りたいと言 えば戻れるのですが、ここに入ったらここでやりなさいということです。それをクリア にすることが、これからの日本の課題でもあるのではないかと思います。  治験医師の意欲向上ということで、これはご承知だと思いますが、M3という医師の ポータルサイトがあります。そこでアトランダムに出して、400人の医師の方々のリス ポンスがあって、その中身を北里大学の竹内先生の所で分析・発表していただきました。 私が見ていて非常に違う面が出たと思ったのは、400人のうち小さい病院にいる人でも 大きい病院にいる人でも、治験に興味のある方々は、インセンティブとしてお金とアカ デミックなキャリアになるようないい発表をしたい、いい仕事をしたいという2つが、 両方とも同じ大きさで出ているのです。ですから、治験に興味のある先生方は、どんな 所にいてもインセンティブは似たようなものだということです。だから、施設によって こうするというのは、実際合わないのではないかと思います。これは、調査の結果をま たお出しして、当局のほうでうまく分析していただければよろしいと思います。  もう1点、1番目で言い忘れたのですが、大きな病院でトータルで治験のビジネスは どれくらいなのか。国立の大きな3つの病院でやっていると言いましたが、そのうちの トータルの収入のわずか1%にもいかないのです。先ほども申しましたが、治験だけや っていればいいってものではない、みんな稼いでいるのだということになるのです。だ から、そこも新薬開発への参画というのは特別な意義があるという考えを浸透させて、 仕事の分担をはっきりさせることが必要なのではないかと思います。  3番目について、竹内先生がやっていらっしゃるR&D Head Clubに、我々も参加させ ていただきました。これは先生のほうから北里ハーバードでご報告があると思いますの で、先生のほうから出していただくか、我々が出していくか、当局のほうに任せます。  最後に、我々PhRMAのテクニカルというか、PhRMAそのものですが、患者が待っている というのが基本の姿勢で、ビリー・トーザン理事長が何度も言っております。日本も特 にがん患者の会に出席しております。ここで、先ほどの棚上げされたものがあれだけた くさん来ているということで、本当に人が足らないのであれば、第2期の5カ年計画を 1年前倒しするという考え方も内閣府にあるようですから、そういうことをやっていた だければ、PhRMAとしては大いにサポートをします。  交換制度で、産業界のスカラシップで教育を受けた人が会社の製品を審査するのは、 なかなか厳しいという話を聞いているのですが、我々としてはこういうことをしてでも 是非改革をしていただきたいと思います。  今日はあまり出ていませんが、コンパショネートユース、これによって個人輸入など が減る。途中でも出ていましたが、ICHの中でモンゴロイドだったら一本化して、日 本人が何人入っていようが、中国人が何人入っていようが、韓国人が何人入っていよう が、とにかくモンゴロイドの一本の仕事が入ったら受け付ける。ほかの方々からも出て いましたが、厚生労働省、文科省の科学研究費を、基礎だけではなく施設、拠点づくり に配分をお願いしたいと思います。 ○楠岡座長 ありがとうございました。ただいまのご発表について、何かご質問等あり ますか。よろしいでしょうか。  それでは、次の発表に移ります。続きまして、日本医療機器産業連合会の安田構成員 からお願いします。 ○安田構成員 今回初めてですが、医療機器業界としましては、こういった検討会に正 式に委員を出させていただけるのは、非常にありがたいと思います。この検討会を含め て検討・議論していただいている内容は、それが整えられれば、医療機器産業としても 治験の推進に役立ちますので、ここでの議論はそのままやっていただきたいというのが 我々の希望です。ただ、医療機器はいろいろな特徴がありまして、その辺りで議論が少 し脇に逸れるかもしれませんが、我々としては医療機器の特徴を少しお話しておきたい と思います。したがいまして、「医薬品開発とのギャップの狭間で」という演題ですが、 背景にも少し薄日が差してくれればという思いを込めて、資料を作ってきました。  2頁をご覧ください。医療機器は非常に多種多様あります。X線フィルム、シリンジ、 いわゆる注射器といったもの、CT、MRI、ステント、人工心臓、人工関節、埋込品 まで、これはすべて一括して医療機器として扱っています。再生医療といった先端医療 は、医療機器が主役です。  もう1つの特徴として、そういった多種多様な医療機器の開発には、大半は治験が要 らないのが現状で、いわゆる制度面に議論が集中するのは、こういう背景があります。 しかし、先端医療関係にはほとんど治験が必要ということがありますので、今後の新し い医療機器の開発としては、治験はどうしても越えなければならないハードルだという 認識でいることは事実です。  また、医薬品との大きく違うのは、治験に関するガイドラインはほとんどありません。 医薬品ですといろいろな臨床評価手法やガイドラインがありますが、医療機器にはあり ません。機器によっては、治験でダブルブラインドやランダム化などが困難なものもあ ります。したがって、普通の医薬品のやり方では少し難しいし、例がほとんどないとい うことで、非常に困っているという状況があります。  医療機器の開発は、医薬品と違って、「モノ」が確定しても終わりません。つまり、使 われる方の使用方法や処置が加わりますので、モノをどう使うかまで評価をしていかな くてはならない。ところが、いまの承認はモノの評価にが偏りがあり、なかなか難しい ところがあります。  医療機器は多種多様ですが、それに加えて非常に寿命が短いものです。つまり、開発 は「改良・改善」の繰り返しです。ライフサイクルで1年未満のものもありますので、 どんどん改善していかなければいけません。したがって、申請して承認が下りたころに は、もう陳腐化ししているという状況が多々あります。治療験側から見ると、日本で治 験をして承認がおりたとき、欧米では3つぐらい先の改良品が使われているというよう な実態もあります。こういった改良・改善に対して、治験が要るのか要らないのかとい うガイダンスはありません。  次の頁です。今日は4回目ですので、3回目までにあげさせていただいた意見をざっ とまとめてみました。1番目の医療機関側の体制につきましては、SOPが未整備の機関 が多く、書式が統一されていないこと。2回目の職員育成に関しては、お話しましたよ うに医療機器治験に適した統計手法の研究が少なく、人材も乏しいということで、今後 医療機器としてはここが1つのネックになるだろうと思います。  CROのモニターの育成が難しい。といいますのは、医薬品の治験はある程度パター ン化ができますのでノウハウ化されて蓄積されるのですが、先ほど申しましたように医 療機器は非常に多様ですので、治験の互換性は極めて低い。ダイアライザーの治験をし ている方が埋込み型医療機器の治験のモニターを即できるかというと、それはなかなか 難しい。治験自体も結構少ないものですから、経験が上がらないということです。した がって、料金も高く、おそらく医薬品よりもCRO料金が高いはずです。  例えばいわゆる埋込みなどの処置が要る場合、処置の内容が患者さんの後々の副作用 や不具合と密接に関係します。それは、通常のCROのモニターではほとんどチェック できません。したがって、いわゆる立ち会いモニタリング、依頼者側が一部処置の現場 に行っていただくようなことをやらなければいけないという特殊な事情があります。そ ういう意味では、医薬品の治験とは少し違うかなということです。  先回申し上げましたが、患者さんの治験参加については埋込み品に対する未解決問題 が多いということで、これはまた検討を要するかと思います。  我々医療機器開発企業の取組状況としては、まず業界側としてはGCPについてアナ ウンスをしたり、説明会やモニターの育成研修も私が主催してやらせていただきました。 先ほどもお話したように、治験が必要な品目が少ないものですから、治験が要るモノを 抱えた開発企業が少ない。おそらく、全体の1割、数パーセントかもしれません。しか も、平均2〜3年に一件というふうに。治験担当の部署を継続的に持っている会社はほ んの一部で、治験があると、やらなければならなくなったときに臨時的に作る、終わる と解散ということになっていまして、並行して複数の治験を扱える企業は非常に少ない。 その背景もあって、1社平均2、3年に1件という、しかし非常に重い、非常に時間の かかる、ハードルの高いものが多いというのが特徴です。治験中の不具合報告等、いわ ゆる治験関連通知が未発出ですので、個々の通知はまだ出ておりません。要望は案を添 えて出させていただいていますが、行政での検討が進んでいない状態ということです。  企業側としては、先ほど申しましたように治験の要らないものが多かったのですが、 今回の薬事法の改正によって、いままで治験を要さずに認可されていたものが、治験が 要るように動向が大きく変わったももあって、企業側としてはとまどい、当惑してどう しようという状態にまだあるのが現実ではないかと思います。ただ、対応できる所は治 験に向けて準備中です。医薬品との兼業企業は医薬品の開発をしていたので、社内異動 で部署を作って対応できるということで、こういう所はすでに立ち上がって治験が始ま っていますが、医療機器専業企業やベンチャー企業は手探り状態、つまりもともとそう いう部署がない、しかも永続的にはないので、人材を確保するのもなかなか難しく、ア ウトソーシングしたいけれど、そういう経験がなくノウハウがないということで、なか なか治験に進めず足踏みをしている状況があります。また、先ほど言いましたように外 部委託費用は医薬品より高額で、しかも製品寿命が短いものですから、開発に躊躇する 企業が多い。特に外資はその傾向が強いので、アメリカ等で治験をして、その海外デー タをもって日本で承認を取るという戦略に出ているということで、ますます日本の治験 はやらないという傾向はあるかと思います。  次の頁です。我々としては、本検討会を通じて、「医薬品」で整備された、あるいは整 備されようという事項はそのまま「医療機器」にも適用できるので、そのまま適用して いただく。例えば中央IRBなどもそうですが、医薬品に限定されている内容について は適用する運用をお願いし、医療機器でもやればいいのではないかということをご検討 いただければありがたいと思います。  諸所で行われている検討会をまとめていただきたいということで、先ほど申しました ように、医療機器の開発となるとかなり制度的な問題にシフトしてしまうので、治験と いう所がフォーカスされずに薄まっていく状況があります。各省庁で同じような検討会 をやっていることもありますので、その辺りをまとめていただきたい。これは学会の先 生方も気づかれて、何とかまとめようという動きも出ておりますので、よろしくお願い します。  医薬品治験の主体ではなく、医療機器開発に関わって専門検討会をお考えいただけれ ばと思います。特に先ほど申しましたように、機器治験に関するガイドラインとガイダ ンスはほとんどありません。評価のほうのガイドラインの検討はありますが、治験とな るとほとんどない状況で、個別にいくつかの取組が研究会として発足して検討しており ますが、治験の話になると足踏み状態です。医療機器の治験は非常に特殊で多様なもの ですから、なかなかまとめるのは難しい状況があります。  4つ目には、そういった使用法の検討や治験関連職員の育成にも活用したり、あるい は開発支援もありますので、3での専門検討会の議論の結論の1つになるかもしれませ んが、開発振興センターの設置も考えていただきたいというのが課題です。  最後の頁です。医療機器に対しては、治験だけではなく、治験に臨床成績の収集結果 他を加えて、臨床評価全体で考えようという考え方をグローバルな標準にすべく動いて おります。これはGHTF(SG5)で、Proposed Documentでホームページにも挙が っておりますが、これが上位概念になり、その中での治験という形に仕組みが変わって いくということです。  「治験要否」のガイダンスですが、10月のGHTFの会議からやっと検討が開始され る状況です。  3番目に、医療機器の臨床評価の1つの手法としてのベイジアン統計学の検討が、F DAのガイダンス・ドラフトが公開されて始まっているということです。いずれも外か ら始まっていて、これの結論が出たあと日本でどう取り入れるかとなると、3〜5年以 上先になってしまうのではないかという懸念があります。  最後にISO14155ですが、これはISO/GCPで、大改訂が始まっております。日本 のGCPは、現在ICHをベースに作っておりますが、ICHの検討に医療機器業界関 係者が誰も入っていない。事情としては、おそらく医療機関側がそのままでいけば受け 入れられる。基本的に、構造や費用検討はそれで満たされるわけで、おそらく実務を考 えてそうされたのだと思いますが、ICHとは別にISO(国際標準機構)のGCPが あって、ICHを意識して大改訂が始まっております。これは、おそらく3〜5年後に は確定しますので、そうすると医療機器の開発や医療機器治験は、GCPの大改訂を含 めて近い将来大きく変わっていくということで、それ以外の基盤整備は3〜5年の間に 整えたい。これは国家プロジェクトが必要ではないかというのが、我々あるいは動き始 めておられる大学の先生方のご認識ではないかと思っておりますので、是非お願いしま す。  「学」の先生方もいろいろ動いていらっしゃって、例えば循環器病学会ではHBDジ ャパンなどいくつかの専門会議も始まっております。10月には大阪南医療センターの米 延先生が大会長になられて、千里での脊椎インステゥルメンテーション学会で私と医療 機器審査管理室の広瀬室長補佐と「学」の先生方で、特に脊椎関係あるいは整形関係を 含めた中で新しい医療機器の開発をどうしていけばいいだろうかという、初めてのシン ポジウムを開かれることもあって、動いてはおりますが、まだまだ議論が必要な状況で す。ありがとうございました。 ○楠岡座長 ありがとうございました。何かご質問はありますか。 ○荒川構成員 私のほうから付け加えますと、先端医療とか、確かに再生医療関係は多 いのです。やはり大学等が治験の前の段階から一緒に協力していかないといけないとい う現状があるのです。そういうところでいつも困るのは、改良型のものであればいいの ですが、そうでないものの場合は、基礎データが非常に少ない。臨床のヒストリカルデ ータが非常に少なくて、そういった臨床情報基盤を整備していかないと、効率的な開発 ができないというのが認識としてあります。 ○安田構成員 そうですね。いま先生がおっしゃったヒストリカルデータというのは、 先ほどの臨床評価のところで、これからは治験にヒストリカルデータと市販後のデータ で評価すべきということがありますので、そのように動いていくのだろうと思います。  再生医療に関しては、モノを作るとなるとGLPの問題やGMPの問題や、いわゆる 未承認医療機器の提供という大きな問題が立ちはだかっておりまして、その辺りを産官 学で超えていかないと、本当に、研究で終わってしまうという懸念がありますので、よ ろしくお願いします。 ○一木構成員 CROの話が出ましたので、少し付け加えさせていただきます。コスト の問題は、医療機器のほうは医薬品の開発に比べまして非常に幅が広く、実施する内容 が試験内容によって極端に違います。例えば、手術場まで入って立ち会いをしなければ いけないものです。1人のモニターはそこにずっとついていなければいけない。そうで はなく、データだけ収集してくる場合だと、医薬品よりも非常に低コストになります。 なぜかと言いますと、長期にわたる効果というよりも安全性、不具合、その側面でのデ ータ収集になりますので、非常に楽になるのです。ですので、非常に仕事の内容に、試 験により幅が広いということが1点であります。  もう1つは、現在、当社や他のCROはいま医療機器関係をやっている所が何社かあ りますが、人を確保するのが非常に難しいのが実情です。というのは、先ほどお話があ りましたように、もともと医療機器産業界自身が開発マンを育成していないので、経験 者が非常に少ないのです。ですから、この領域はやってきているけれどこの領域は知ら ないというのが、医薬品だと疾患が違うだけなどという部分があるのですが、医療機器 の場合は極端に違うので、なかなか応用が利かず、人を育成していくのが非常に難しい のが現状です。  ところが、逆にCRO側も育成はしたいけれど、続けてコンスタントに同じ領域の仕 事があるわけではないというジレンマに入っている部分がありまして、医療機器のCR Oをやっていくのは非常に難しい側面を持っていると思います。 ○安田構成員 おっしゃるとおりだと思います。全体的に企業の内部もCROも含めて 人材不足で、開発・臨床をやってきた経験者は非常にリソースが限られておりますし、 それは構造的な問題だと思っております。 ○楠岡座長 ほかによろしいでしょうか。  それでは、いままでの発表を受けて、本日の課題である「治験実施企業における取組 及び医薬品・医療機器の研究開発の推進に係る論点」について、事務局から説明をお願 いします。 ○研究開発振興課長 資料5をご覧ください。これまで何人かの参考人の方を含め、多 数のご意見をいただきましたが、それらの共通する点をいくつかの論点に整理したもの です。資料5は、前半部分が医薬品・医療機器の研究開発の推進のうち、治験実施企業 における取組を載せております。2頁以降に、医薬品・医療機器の研究開発があります。  1頁ですが、治験に係る手続きの効率化の問題が提案されております。治験に係る手 続きの効率化については、大きく4つほど論点があるのではないかと思っております。  (1)治験実施者と治験依頼者の役割をもっと明確にすべきではないか。特に、具体的には 治験契約に係る書類の作成分担、書類の作成が契約のみならずさまざまな所にありまし たが、この役割分担が明確化されるべきではないか。本来医療機関側で作成すべきもの が、モニターが作成している等の指摘がありました。  さらに、IRB等への治験依頼者の出席が多数例があるので、この負担を軽減すべき ではないかというご指摘がありました。  (2)は治験書式の標準化です。現在標準的な書式は、国立病院機構、国立大学、私立大 学と3つありますが、これ以外に独自の書式を使っている所もかなりな数があるという 調査結果が出ております。こういう独自のものへの対応に非常に手間がかかるというこ とで、これらを少なくともこの3つの書式に統一すべきではないか。さらに、完全な統 一化に向けた検討も必要ではないかというご指摘がありました。また、その他統一様式 を作成していく上で、いろいろな調整が必要であるということで具体例がありました。  (3)は治験手続き等のIT化です。まず1つが、手続き自体を電子化に向けて仕様とい うか、中間の標準的なものを作っていくべきではないか、そのための作業を進めるべき ではないかということです。2番目が、電子化されたデータを治験に関わる人たちがど う利用していくのか。プライバシー等の点もあるので、利用に関するルールを作ってい くべきではないかという指摘があります。  (4)は効率的な治験契約手続きで、いくつか具体例が指摘されております。1つが、現 在支払方式が症例数によらない方式、やらなくても返還がない方式ですが、実際に行わ れた症例数に見合った支払いをする形態。さらに、治験に関する窓口がいろいろな所に あって、企業側がさまざまな所に行かなければいけないので、これを一元的な窓口で解 決できないか。病院個々によっていろいろな治験契約の事務手続きがありますがこれを もう少し透明化、少なくとも病院の中ではもっとはっきり作り上げるべきではないか、 という指摘があります。  また、治験関連情報をどう開示していくかも1つの論点ではないかと思います。さら に、IRBの活動を定期的に開催するなど、IRBの活動の見直し、強化が必要ではな いかという点です。これらを通じて効率化を行い、全体として治験コストを低減、スピ ードアップを図っていくべきである、という論点です。  2番目の治験に関する論点として、中核的な拠点、医療機関、治験を実施する拠点医 療機関の確保・育成をどのように行っていくべきなのかが論点だと思っております。特 に、その中でも中核拠点について何人かの方からご指摘がありましたが、なかなか中核 拠点の役割、次のイメージとも共通ですが、どんな役割をどういう所が果たしていくの か、この大きなイメージというか、共通認識を議論して作っていく必要があるのではな いかと思っております。それに見合う形で、院内の体制、例えばIRBや治験管理室、 様式、窓口、契約方式、企業と医療機関の役割分担、情報開示などのあり方、院内体制 をどう整備していくのかという論点が生じてくると思っております。  さらに、医療機関の中で非常に重要な論点として、必要な人材をどのように養成して いくのか、また確保していくのかという論点があります。1つは、治験責任医師とそれ を支えるCRC、データマネージャー、事務職員でも治験を管理できる事務職員等を養 成・確保していく必要があるのではないか。  院内の体制とは違いますが、患者のインセンティブをどのようにつけていくかという ことで、これを患者にきちんと説明していく、情報を提供していく、何かあったときの 相談など窓口を整備していく。これによって、患者のインセンティブを向上させる方策 がないだろうか、ということが論点の1つです。  さらに、地域の医療機関との連携です。地域といっても、物理的、地理的な地域とい う概念もありますし、疾患領域という概念もあると思います。そういう意味では広い言 葉だと思いますが、それを勘案した上でのネットワーク作り、1つの医療機関ではなか なか症例が集まりきらないときに、協力する形で症例を集積していく、その中で中核病 院がどんな役割を果たしていくべきなのか。その際に、関連する医療機関とのさまざま なデータのやり取りや手続き、これらの共通化、中核医療機関がネットワークの中での 人材の養成や教育を確保していく役割があるのではないかと思っております。これらを 通じて症例を集積し、治験コストの低減、スピードアップを図っていくべきではないか ということです。  2番目の論点として、医薬品・医療機器の研究開発です。治験を少し含んだ形ですが、 もう少し広い意味であろうかと思っております。1つが、医薬品・医療機器の研究開発、 支援・基盤の整備です。先ほどの事務局の資料でもありましたが、現在厚生労働省では、 臨床研究の推進、基盤の整備、ベンチャー等の育成などを研究費を使って行っておりま す。この支援・基盤の整備をどのように行っていくかということが、1つの論点であろ うかと思っております。  2つ目は、これら臨床研究にたずさわる人たちの養成確保の論点があります。先ほど 来、これに関する人材が日本では非常に少ないのではないか、もっときちんと整備すべ きではないか、という指摘もありました。それらに関係して、今後どのように支援・人 材育成をしていくのかということで、臨床研究基盤の整備、臨床研究の支援、また実際 に臨床研究を行っていく上での保険、お金の問題、これらについては一部前回までに議 論が行われたところもありますが、このような論点があろうかと思っております。  3頁目をご覧ください。もう1つの論点が、臨床研究の質を向上させる、高い質の臨 床研究を日本で行えるような仕組みが必要ではないかということです。1つは、現在あ る「臨床研究倫理指針」を徹底していくことだと思います。これについては、臨床研究 倫理指針の遵守状況調査を行い、平成20年度にこの見直しを行いたいと考えておりまし て、そのための準備をしているところです。  さらに、「臨床研究登録制度」への対応です。この登録によって、情報公開などを行っ ていくというものです。現在、臨床研究の登録の仕組みは、ここにありますように大学 病院医療情報ネットワーク、財団法人日本医薬情報センター、また社団法人日本医師会 治験促進センターで行っている3つの登録システムがありますが、これらと今後行わな ければならない臨床研究登録制度の関係の整備を含めた登録の推進です。また、いまご 説明したものと重なりますが、複数制度の一元的なポータルサイトを整備していく。こ れらによって、個別の登録システム、それらを統一した一元的な情報提供の仕組みを考 えていく必要があるのではないかと思っております。  いままでご指摘いただいたものには、この論点整理の中に若干収まりきらないものも あったのではないかと思いますが、主なものをまとめるとこんな形になるのではないか と思っております。よろしくお願いします。 ○楠岡座長 ありがとうございました。それでは、これまでの調査班の進捗状況の報告、 各構成員、参考人からのご発表、先ほどの論点を踏まえた上での議論に入っていきます。 時間の関係もありますので、論点に沿った形で順次進めていきたいと思います。  まず最初に、治験実施企業における取組の推進の部分、治験に係る手続きの効率化に 関して何かご意見はありますか。 ○荒川構成員 今回いろいろまとめていただいたことは、昨年楠岡先生に作業班の班長 をしていただいて、その中でもまとめていただいたことと大体同じだと思っています。 そういう意味では、まとめるだけではなかなか進歩がないと、皆さん同じことを繰り返 してきたと思います。いま必要なのは、次に何をイメージするか、どういうものを作っ ていきたいのか、医療機関、行政側、企業側が現場の意見を踏まえて将来像をはっきり させていかなくてはいけないと思うのです。ですから、いま効率化ということもありま したし、中核病院というのもありましたが、中核病院はどういうことをイメージしてい て、国主導でやるのか、それぞれ認証制でやるのか、手を挙げたものがやるのか、症例 の集積性を中心にやるのかの方向を出していくべきです。様式などは統一するというこ とで基本的にいいと思うのですが、それは現場の意見を入れて、むしろ医療機関と企業 側の問題ですので、その間で代表者が組めるような形でやったほうが手っ取り早いと思 います。中核病院といったときに、ではそれを認証制にするのか、どういう形にするか、 そういうことのほうに論点を持っていかないと、もう毎回同じことの繰り返しになって いるのではないかというのが、非常に印象としてあります。  まず、どこにクリティカル・パスがあり進まないのかということをもう一度明確にし ていただく必要があります。小林参考人からもありましたように、まず治験届までの間 は、これはもうはっきりと企業と機構との間で調整していただくことだと思っています。 その後、各施設での申請とか、契約までの間は、これは医療機関と企業の問題です。そ こを行政側が後押ししていただければいいと思うのです。問題は医療機関側に、我々治 験支援組織みたいなところの全体を束ねる協議会みたいなのがないことです。そこがい ちばん大きな問題なのです。  そこを何とかしなくてはいけないです。そこでお互いの意見を集約して、様式等に反 映する、あるいは手続き等に反映する、あるいは業界側と意見を交換しながら、妥協点 を探っていく、これが非常に重要なポイントで、これは業界のほうからもいろいろ要望 は出てきますが、もちろん医療機関側からも申し上げたいことはいっぱいあるわけです。 それを一緒にやっていかなくてはいけないと思います。ですから、協議会等を文科省、 あるいは厚労省、私大協も含めて、やはりどうやって設置するかを皆さんでご検討いた だきたい、それがいちばんのポイントだと思います。  それから、本当に中核というイメージを作っていくことを、そういう中で検討しなく てはいけないことだと思います。その後の申請契約の後から、これはエンロールメント の問題、被験者にどれだけご協力いただけるかという問題ですので、これもやはり国民 全体で啓発活動もやっていかなくてはいけないですし、それから医師のインセンティブ の問題をどうやって解決するか、その辺をちゃんとやっていかなくてはいけない問題だ と思います。  被験者のご協力のところは、もちろん患者さんの視点もありますので、そういうとこ ろにも協力いただいて、個人情報保護の問題もありますので、そういう専門家にも加わ っていただくというのがよいと思います。 そういう3つのクリティカルパスに分けていただいて、そこで誰がプレーヤーか、キー パーソンかということをはっきりとした上で協議することだと思うのです。もう、この 状態で何回やっても、やはり結論にはなかなか結びつかないと思います。そこを是非念 頭にご議論いただきたいと思っています。 ○楠岡座長 ありがとうございました。 ○研究開発振興課長 大変重要なご指摘だと思います。少し具体的にどういう将来像に 向かって、議論をしていくべきなのか、題材というか、不安を持ってというか、イメー ジが作れるような議論を是非我々もしていきたい、またお願いしたいというふうに思っ ております。  その中で、いま中核病院の話が少し出ましたので、それについて、ちょっと補足いた します。資料4の11頁、先ほど事務局からご説明いたしましたが、この下に現在予算要 求中のものも含めてなのですが、少し中核病院のイメージを掲げております。中核病院 に関しましては、現在2段階のものを考えておりまして、1つが11頁のいちばん下に図 と表がありますが、その真ん中辺りに「臨床研究機関整備」とあります。5つほど病院 が載っておりますが、この5つが中核病院のトップになっていく、全体の治験を引っ張 っていく、こういう病院に考えております。これらは今後疾患の網羅性だとか、また医 療機関の特殊性、地域性なども考えなければいけないとは思いますが、基本的にはここ が日本の臨床研究、治験をリードしていくような所です。  さらに、それと相俟ってやっていく病院といたしまして、これはまだ平成19年度予算 の話ですが、これから予算がどうなるかというのは、不確実なところはありますが、現 在40病院ほど、全国で指定しまして、そこに全部で10億ほどの予算ですが、これでや っていく。「臨床研究・治験の実施体制のあるべき連携の姿」というふうに載っておりま すが、ここのところはそれらを持つ機能をイメージしております。これら臨床研究機関 の整備で指定されております成育医療センターをはじめとする5つの病院、これについ ては今後もう少し数を増やしていきたいと思いますが、これとその左にあります、図で 示したような機能を持つ40病院、こういうところが具体的に中心になっていく。そして、 そこにおきまして、例えば製薬企業との契約のあり方だとか、フォーマットだとか、こ ういうものを統一的な様式でやって、ここのところが整いますと、おそらく全体的に波 及していくのではないかという感じで考えております。  今後、またここでいろいろご議論をいただいた上で、このビジョンというか、あり方 をさらに深めていく必要があるのではないかと思っております。とりあえず、ビジョン の題材といたしまして、ちょっとご紹介をいたしました。 ○楠岡座長 ただいまのご説明ですと、臨床研究基盤整備を平成18年度から始めたとき には、臨床研究基盤ということが前提にあって、臨床研究にフォーカスが当たっていた。 今度出てくるのは治験の中核拠点病院で、治験というところで、前回のときも中島構成 員から、臨床研究中核拠点なのか、治験の中核拠点なのかという議論があって、そのと きに将来的には臨床研究の中核拠点にはなるとしても、当面は治験の拠点とするという お話しでした。要するに多少役割が違うのではないかという議論があったかと思うので す。  いまのお話ですと、臨床研究基盤の5つの病院を治験の中核拠点のさらに上に置くと いうような形だすが、それだと多少整合性というか、本来の話から少し変わってくるの ではないか。それから、今回臨床研究基盤整備を受けている施設、国立病院機構とかが 受けていますが、そんな話は聞いていなかったということになりかねないのではないか と、ちょっと危惧するところなのですが。 ○研究開発振興課長 すみません、ちょっと言葉が不足したかもしれません。臨床研究 は、そこのところの概念は変わっておりませんで、臨床研究であります。それは治験な どに関しても、いろいろな面でリーディングの役割、また指導的な役割を発揮してもら えるのではないか、さらに企業主導だけではない、様々な治験なんかもいろいろ検討し てもらえるのではないか、そういうことで、治験に特化するというようなことは、治験 だけをやるというのは全く考えておりません。そこのところは、ちょっと説明が不足し ていました。 ○楠岡座長 臨床研究、臨床試験と治験というのは、かなり連続性のあるものですが、 ただ、いまの日本の現状としてはGCPの規制のあり方とか、契約、お金の問題とかが 少し違いがありますので、そこを考慮しておかないと、混乱の原因になることを危惧す るところです。元の議論に戻りますが、治験に関わる手続きの効率化に関しては、これ も昨年の作業班から続いていて、骨子の中にも盛り込まれているような内容で、特にい まさらと荒川構成員からの指摘がありました。いまさらというところで、いかに早くこ れを実現化するかというところを具体的に進めていくことになるかと思います。  1点だけ、前回の作業班でも指摘した事項なのですが、統一様式というのは、紙を考 えていて、一方電子化というのは紙媒体ではないわけです。極端なことをいうと、電子 化でミニマム・データセットが決まっていれば、フォーマットは、それをもらったとこ ろが、自分で勝手に好きなようにレイアウトすればいいという話で、ここは裏表のとこ ろがあるので、そこをきっちり考えて進めておかないと、バラバラになってしまうおそ れがあります。何のためにこういうデータセットを決めているのか、あるいは、様式を 決めるのか、齟齬を来たす可能性があるので、その辺は注意して進めていく必要がある と思います。  1、2「手続きの効率化」に関しては、もう大体合意をいただいているところだと思 いますが、2番目の「治験の中核拠点の育成」、これは今回新たに出てきた考え方で、い ま荒川構成員からも指摘があったように、ここで何をするのか。要件等に関しましては、 先ほど何人かの構成員ならびに参考人からの発表の中に、こうあってほしいというよう なものも入っていましたので、要件はかなりわかってくると思うのですが、実際そこが 持つ役割を明確にしておかないと、選ばれたほうも実際どう動いていいかわからないと いうことになると思います。中核拠点の役割は何かというところですが、この辺はご議 論いただいたほうがいいかと思いますが、いかがでしょうか。 ○中島構成員 私が先ほど、少しご説明した中にも出しておりましたが、やはり2種類 の拠点という考え方は必要であろうと思っております。それで、中核モデル施設という 言い方をしているのですが、こちらについては、概念的でちょっと申し訳ないのですが、 日本全体の臨床研究、臨床試験・治験を引っ張っていくというような役割。それから、 特定施設というほうを挙げておりましたが、これはむしろ地域での臨床研究、特に臨床 試験・治験を引っ張っていく、そういうような役割をイメージしているということでご ざいます。 ○楠岡座長 ありがとうございます。ほかにご意見はございますでしょうか。 ○武林構成員 我々のところも臨床基盤整備のお金をいただいているわけですが、いろ いろな議論の中で、最初の効率化のところに出てきましたが、基本的にオペレーション を改善するという点については、これは我々も随分耳の痛いこともございますし、これ はもうすでに前回機構の件を伊藤委員がお話になりましたが、それに倣う形で当然解決 しなければいけないと思うのですが、やはり逆に現場の医師の側にしてみますと、あま り治験と臨床研究を切り離しますと、先ほど辻本構成員の話にもありましたが、では自 分たちは何のためにやっているのかといところが非常に大きなネックになるのではない かと思います。  ですから、当然企業の側からご覧になれば、オペレーションが順調にいくということ が当然プライオリティだと思いますが、そこがあまり前面に出ますと、議論として、結 論として、逆になかなか現場の医師の側がそこまで理解が十分にいかなくて、かえって、 いろいろな支障を来たすという点もございますので、そこの点については、あまり治験 と臨床研究をバラバラにされますと、かえって、現場のインセンティブという点では、 上がりにくいのではないかなという点が1つございます。  それから、中核というイメージを持ったときに、逆にいいますと、やはり臨床研究の レベルをどう上げるかという議論が大変大事ではないかと思っておりまして、むしろ具 体的にICH―GCPのレベルまで臨床研究を上げるということは、むしろ明確に出し ていただいて、それに向けて、大学を含めた医療機関がどう努力するかという論点があ ってもいいのではないかと1つ思っております。  もう1つは今後そういうものを機関の中で維持していく上でのお願いといいますか、 検討していただきたい点でありますが、今後厚労省の研究費を含めて、臨床研究にシフ トをしていくという方向は伺っておりますが、現実にその中に、そういう大学の中にク リニカル・リサーチに関するセンターを整備したときに、どう維持していくのかと。い まの研究費のあり方ですと、例えば消耗品は買えるけれども、そこのセンターで必要な 人を含めた機能というのは、残念ながら、これは外部に委託をすれば可能なのですが、 逆に中の機関で持つと、それが維持できないという点がございます。  アメリカなどでは既にそういう点は克服されているわけですが、日本の、臨床研究に 事関わる部分については中核のイメージでいろいろなことを整備すればするほど、逆に 自分のところでやりにくくなるという点がございますので、そこは是非一緒にご検討い ただければと思っております。 ○楠岡座長 ありがとうございます。ほかにございますか。 ○荒川構成員 前回も少し申し上げたのですが、もちろん病院等の性格によっても違う と思いますが、大学病院の例で申し上げますと、先ほどの医療機器とか、再生医療とか、 の開発もそうですが、やはり、どこまでを自主臨床試験でやって、どこからが治験でや るという、1つの開発戦略があるのですね。最初から企業がバックアップして治験でや る場合もありますし、あるところまでは自主臨床試験でやって、それから企業が入って くるのもある。特に医療機器関係はベンチャーさんが多いので、最初から何らかの形で 関わっている。いま大学もTLOが、そういったベンチャー企業とのお見合いとか、い ろいろなことをやって、実際には産学連携は進み始めているわけです。  そういう中で、治験と治験以外の自主臨床試験いうのを区別することが、やはり本当 にいいのかどうか。これは医療機器に限らず、製薬関係でもそうだと思います。基礎研 究で見つけた成果が実際に本当に臨床で役に立つのかどうかというのは、企業は疑心暗 鬼で、なかなか飛びつかない。そこをつなぐものがいま大学の臨床試験という形になっ てきますので、これらの治験以外のものもICH―GCPぐらいは入れていかないと、 ということで、私どもいま支援しているわけです。ですから、私どものところは治験も、 治験以外のものも同じスタンダードで、ダブルスタンダードは作らないという方向でや っています。  ですから、毎年の実施状況報告もやっています。安全性報告もやっていただいており ますし、すべて治験に倣う形でやっています。何がいちばん違うかというと、信頼性の 保証のあり方だけなのです。そのやり方は治験と治験以外では、やはり区別せざるを得 ない。それはそこに膨大なコストもかかりますし、そこまでの信頼性保証が必要かどう かということ。倫理性、安全性、これは同じことかもしれませんが、それから科学性に 関しては、これは治験であろうと治験以外の自主臨床試験であろうと、同じレベルであ るはずなのです。ですから、そこはICH―GCPをそのまま取り入れるということは、 全く問題ないです。我々は実際にそれでやっていて、何ら問題はないです。  ですから、そこをやっていかなくてはいけないと思います。そういう目標があるのだ ろうと思うのですが、もう既にある程度コンセンサスは出来ていると思うのですが、い ちばん違うのは、それを支援する人たちがいるかどうかということです。研究者の養成 も必要なのですが、指導する人たちの養成がいま必要なのです。指導できる人たちがど れだけいるかということが、いま調査の対象からも実は抜けていて、臨床統計家の話は 出ているのですが、ジェネラルにプロジェクト・マネージャーとか、そういう感覚の人 たちがどれだけいるか、これが非常に欠如していて、文科省も厚労省もいろいろ基盤整 備とか、中核医療機関とか、計画していただいて、大変私ども心強いのですが、実際そ の研究費をどう使うのか、どういうふうにしてほしいのか、というところが見えないと ころがあるのです。  やはり、現状からすると、まず指導できる人たちを中心に次の指導者を育てていかな ければいけないという問題があるのです。ですから、あまりあっちもこっちもいきなり 拠点を作るのは、かえってバラバラになってしまって。まして自主臨床試験に関しては、 ガイドラインもない状況ですから、そこをはっきりと明確に目標を、ICH―GCPを 採用しますよ、治験と治験以外のものも一緒にやりなさい、CRCの支援もしなさい、 そういうレベルをちゃんと作った上で、そういう施設にはお金を出しますよと。GCR C、先ほどご提示があったジェネラル・クリニカル・リサーチセンターというのはNI Hがファンドした立派な臨床試験の実施施設です。  そこではGCPを準用することを義務づけられているわけです。だから、そういうこ とをちゃんとやって、GCP準用を目標とする施設に対しては、ちゃんとお金を出すと いうインセンティブを作っていただければ物事は簡単に進むと思います。だから、そこ を明確にしなくてはいけないですね。 ○伊藤構成員 国立病院機構に関して、委員の先生方から、お褒めをいただき、ありが とうございます。臨床研究、臨床試験と治験とありますが、ターゲットに応じた試験の 型があるかを、私どもはもう1回整理したほうがいいのではないかと思います。いま PhRMAからご発表があったとおりで、ブロックバスターに関しては、一般の地域の開業 の先生方を中心として非常にうまく治験が動いていて、開発も順調にいっている。ただ、 私たち大学とか、大手の中核病院が開発の対象としなくてはいけないのは、オーファン とか、未承認薬、ひいては新しい開発薬のトランスレーショナル・リサーチなので、そ ういう薬の開発の体制整備が出来ていないというのがいちばん問題点になっているのと、 同時に我が国から、エビデンス、臨床成績が世界に対して出ていかない。この2つの問 題を改善するということについて、いかに効率的にやっていくのかを考えていかない。 とりわけ、難病の患者さん方に対して、世界で開発された薬をより早くお届けすること ができないという問題の解決にはならないのではないかと。  また、同時にイノベーティブな日本の基礎研究の成果を世界に対して発信ができない ということになるのではないか。ですから、トランスレーショナル・リサーチができる 施設、例えば東京大学のようなところでは、できるというような形を考えていかなけれ ばいけないのではないかと思います。  ここでの議論は、やはりトランスレーショナル・リサーチとか、エビデンスをきちん と作れるような体制整備をしていかなくてはいけないというところに特化していかない と、科研費で支援するのは、税金で支援する理由になりにくいのではないかと思います。  それから、お金についてですが、昨今の研究費は間接費が3割近く付いてくるような 形になってきていますが、間接経費はアメリカでは医療機関の資金源になってきている わけで、臨床研究の研究費の拡大と同時に間接経費が医療機関にとって、使いやすい形 にして、医療機関にとってもメリットがでるようにして、文科、厚労の両方の科研費の 使い方を変えていただくのが、医療機関にとっていいことなのではないかと思います。 ○楠岡座長 ありがとうございました。 ○山本(精)構成員 伊藤構成員の言っていることと同じことなのですが、治験の中核 病院拠点の育成にしても、結局進めるにはインセンティブが必要ですね。中核拠点とか、 ネットワークを作っても実際臨床試験をやっていないということもあるみたいなので、 やはりインセンティブがあると、バリアーがあっても乗り越えようとするので。インセ ンティブは何かというと、もちろんお金がもらえるとか、もう1つはお金をつけたら、 つけた後は厳しく評価するとか、駄目だったら怒るというようなことです。それから、 いま出ているアカデミックなインセンティブをつけることなのですが、アカデミックな インセンティブといってもなかなか抽象的で難しいのですが、例えば、アカデミックと いう中には、標準治療をきっちりやらなければいけないんだというような考え方がもっ と浸透すれば、標準治療を作るということは、非常に大きなインセンティブになると思 います。  もう1つはこの臨床研究が適用拡大につながるんだというのであれば、みんな、それ はやろうという気にはなるのですが、いまなかなか医師主導治験がそんなにできないの で、そこにもつながらないということがあります。そうすると、オーファンももっとみ んながやろうという気にもなるので、というところがあるのではないかと思います。も う1つは、先ほど、グローバルの治験の話、国際共同治験の話が出ましたが、我々医師 主導で臨床研究、臨床試験をどんどんやっていると、グローバルのことがやはり問題に なって、グローバルに入りたいのだけれども、グローバルに入ると1臨床研究機関にな ってしまうのです。  自分たちで研究をやると、自分たちで発信していきたいという思いが非常に強くなっ て、そうするとグローバルを主導したいという気になるのですが、先ほどのお話に、別 に水を差すわけではないのですが、海外でのグローバルに入りたいと、そのとおりなの ですが、やはり日本発のグローバルをやっていくということも必要で、どうやったら日 本発のグローバルができるようになっていくのかというところを教えていただけません か。私の話は、インセンティブを何とか上げる工夫をいろいろしていくべきだというこ とです。 ○中島構成員 なかなか難しい課題ですが、やはりシーズ(種)ですね。それが必要だ ということになりますから、そのためには必ずしも医薬品ということだけではなく、医 療機器も含めてですが、先ほど伊藤構成員からも出ておりましたが、やはりトランスレ ーショナル・リサーチ、そういう環境を整備するということで、日本がイニシアティブ を取る基礎がまず出来ると。その次に必要なのが、そういったグローバルな臨床試験、 共同開発、そういったものに参加できるというか、十分なそういった環境を整備してお く。日本が遅れるということであってはシーズがあっても世界をリードするということ はできないわけですから、そこのところの整備も必要になってくると思います。 ○山本(精)構成員 たぶんシーズもそうだと思いますが、シーズがあってもできない のではないかと思いますので。 ○竹内構成員 グローバルという意味をちょっと整理してみたいのですが、どうしても 日本はグローバル・スタディに入れということで、どうしても入ろうとする。そうする と、日本人の民族差があるから、少しドースを下げてということで、いままで動いてい ると思うのですが、結局そういうことをすることによって、いわゆるグローバルで出て くる薬に対して、ドースはこれだけ低くても、こういうターゲットのポピュレーション に効きますよという情報は、日本からの発信でグローバルに出てきますので、まずそれ をどうするかということになりますと、先ほど伊藤構成員とほかの構成員方が話をして いらっしゃる、いわゆる日本における臨床研究がどのレベルであるかと。いわゆるIC H―GCP準拠でいっていただければ、それはそのままある程度FDA等にも申請でき る、いわゆるJ―GCPとICH―GCPとの格差がありますと、どうしても海外のほ うではほとんどITを使ってきますし、日本は紙ベースとくると、どうしてもできない。  日本がグローバルに入るためには、IT時代にどうのこうのといま盛んに言われてい ますが、その情報がITでどんどん電子化されてこないといけない、治験を逐次モニタ リングしていかないといけないという、非常に特殊で、研究の基盤としては、非常に整 っているのに、そこがなかなか動かないということで、地団駄踏んでいるということを 最近非常に感じております。できましたら、こういう機会で、いま本当に日本がいい機 会にありますので、そこから、どのように日本の情報を海外に発信しながら、グローバ ルの種はあっても、こういうアジア、または日本での患者層ではこうですよと。  それがまたトランスレーショナル・リサーチにつながるという逆方向にいきますので、 日本からの情報をいかに海外に発信できるか、それを発信するためにはどうしてもIC H―GCPは準拠していないといけないという最低のラインがありますので、やはり中 核基盤はそういうことを考えて、拠点整備を考えられる場合には、できる拠点にはそれ を整備していただきたいとは思っております。 ○辻本構成員 これが私の役割だろうと思うのですが、やはりこのテーマというのは患 者の協力なくしてはできないことであって、先ほど来、ずっとお聞きしていて、何とか 患者をうまく引き込もうじゃないかという、その裏側の戦略の会議の中に私は身を置い ているような気がして、非常に複雑な気持になっております。そういう立場から、1つ この中で、是非ともということでお願いしたいのが、やはり人材の育成、教育というと ころだと思います。例えば2頁「患者向けのインセンティブ」というようなところで、 情報提供とか、相談窓口というふうに書いてございますが、いままでのような情報提供 では患者は、もう満足しない。  私が知りたいことに、どう向き合ってくれるのか?というレベルに上がっていますこ とと、それから、やはり相談窓口も常に見える形で提示して欲しい。いまいろいろな病 院に伺うと、治験に関する相談窓口みたいな所を大学病院なんかでも置いておられると ころがあるのですが、ドアは閉まったまま、中に人がいるのかどうかもわからない、患 者が本当に入りにくい、ここに入るのにはすごく勇気が要るというような、そういう形 だけみたいなことが現実であると私たちの目には映るわけです。  ですから、単に患者を協力させるのではなくて、患者が共同作業に主体的に参加でき るような。そこのところをねらった人材の育成という中では、やはりいかに医療側が意 識改革をしていただくかという根本的なところがこの問題の大前提で、いちばん大きな 要素ではないかということを感じながら、お聞きしておりました。この治験に関しての システムということが、やはりインフォームド・コンセントとか、患者とどう向き合う かという、いまの緊急の課題の、言ってみれば、モデルケースになるような問題だと思 いますので、そこのところも是非よろしくお願いしたいと思います。 ○楠岡座長 ありがとうございました。いまの辻本構成員の指摘は、非常に大事なとこ ろで、我々がいま議論しているのはいかに患者さんを取り込むかという話ではなくて、 患者さんがここまでやってくれているのだと理解できる、あるいは、我々はどれだけ保 証できるか、その保証基盤をどう作るかというところが、いちばんポイントになるとこ ろです。それができない限りは、患者さんにいくら「参加してください」と言っても、 なにかためらうということになってしまうと思います。  ですから、やはり患者さんから見て、どうなのかというところも、常にフィードバッ クしていただかないといけない点だと思います。どうもありがとうございました。 ○一木構成員 ちょっと、いま話が患者さんの話になったので、話を戻すようで申し訳 ないのですが、先ほどのアジア試験の視点ですとか、グローバル試験の話をさせていた だきます。実際うちの場合モニタリングで、日本ですとか、中国ですとか、ほかのアジ アの国々もやっておりますが、J―GCPだけが異質に違う部分がたくさん存在するわ けなのです。そこを何とか、ICHの中で、臨床治験と臨床試験というのは、果たして 違いがある必要性があるのだろうかというのですね。そういうところに戻るのだろうと 思うのです。例えば、必須文書にしても日本だけが約120あって、ICH―GCPです と約50、中国でやっても約48ということで、それぞれグローバル・スタンダードが出 来てきたにもかかわらず、日本だけが非常に特殊な条件下に置かれております。  例えば契約にしても日本ですと、すべて院長と結ばなくてはいけない。ところが、I CHですと、アメリカなんかですと、インベスティゲーターでもそういうことができる。 中国ですと、それぞれ治験管理室のセンター長が結ぶとか、それぞれの国ごとに少しず つ違いがありますが、日本はどうしてもそこへ行ってしまう。もう一度現実的な部分と いうものを踏まえておかないと、どうしても、足枷のごとくJ―GCPに引っ張られる という部分がありまして、どこかでもう一度見直していく必要があるのではないかと思 います。  それで、山本構成員から、ちょっとお話がありましたが、日本発というときに、一部 お受けしているトライアルがありますが、日本発というと、やはり日本のスタンダード に合わせてくれとの要望が強くあります。日本のこれこれに合わせてくれというような 要望です。全部そこにいくわけです。そうしますと、例えばアジアの一部の国では、イ ンベスティゲーターが契約を結んで、インベスティゲーターが米国と同じように研究費 をもらって、それを自分らが運営していくということが可能なのですが、日本のレギュ レーションでは、それができない。だから、病院に入れてくれ。でも、病院はそれを受 け取るシステムがないという矛盾が生じてきます。  また、治験と臨床試験というのが、果たして本当に区別していく必要があるのだろう かという部分も含めておかなくてはいけないのではないかと思います。ちょっと認識が 古いので、違うかもしれませんが、竹内構成員にお聞きしたいのですが、米国で臨床試 験と臨床治験というときに、クリニカル・トライアルといったときに別に違う言葉を使 わないと思うのですが。 ○竹内構成員 分けてないと思います。 ○一木構成員 分けてないはずなのです。クリニカル・トライアルというのはすべてを 含んでいるはずなので、FDAのレギュレーションも全部一緒になっているはずなので す。ただ、インベスティゲーショナル・ドラッグを使うか、どうかというところだけは 明らかに区別がつくのですが。 ○竹内構成員 患者さんのほうですが、要するに治験も臨床試験も患者さんのために薬 を開発しているので、そこをこう、やはり医療の現場の先生からいい情報があれば、な るべく早く患者さんのために戻そうと。そういうことで、イセンティブが働いて、臨床 試験が始まるという感覚が私はございますので、やはり既にやったこととまた同じとい うことになりますと、「なぜ」ということがどうしても働きますので、いま申し上げまし たように臨床試験と治験というのは、区別されないほうがいいのではないかという気が します。 ○楠岡座長 ありがとうございます。だいぶ時間も迫ってきましたが、治験と臨床試験 をどう共通化させるかというか、同じ土俵の上でいくかというと、最後問題になってく るのは、GCPとICH―GCPの問題になってくると思います。この点に関して審査 管理課として、今後の方向付けはどうお考えでしょうか。J―GCPで諸外国との違い で、例えばインベスティゲーターと契約ができないという点に関しては、過去の日本で の経緯があって、GCPの検討会で病院と契約すべきだという意見が出て、いまのよう なJ―GCPという形になっていると思いますが、それは将来的にまた元へ戻すという とおかしいですが、1歩進めて、いわゆるグローバルなスタンダードのほうへもってい く方向でしょうか。どうお考えですか。 ○審査管理課長 いま楠岡座長からご指摘いただいたとおり、いろいろな経緯、背景、 あるいはただ単にGCPとか、治験を取り巻く状況だけではなくて、税制の問題である とか、そういう問題とも関わっているものがたくさんあると思います。ただ、ご指摘の とおり、J―GCPという言い方がいいかどうか別問題として、日本とICHの間に差 があるというご指摘を賜っているわけでございますから、どのような背景で、どのよう な理由で、日本ではそういう選択肢を取らなければならないのか、改めることができる のか、1つ1つリストアップをしていただき、我々としても、前向きな姿勢で考えてい きたいと考えております。 ○楠岡座長 問題になった点は10年以上前の問題ですし、かなり時代も変わっています。 もともと、患者さんを守るためという視点から出てきたものが、現在足枷になっている のであれば、患者さんを守れる状況が作れるのであれば、そこは変えていってもいいと 思います。これは治験のあり方検討会のほうの課題になってくるかと思いますが、是非 ご検討いただきたいと思います。  もう1つ、これだけグローバル・スタンダード、スタンダリゼーションのグローバル な時代になっている中で、日本の医療制度そのものとの関係も大切です。治験はその中 でやらなければいけませんし、臨床試験もそこでしないといけないわけなので、医療制 度との乖離という問題があって、なかなかアメリカ型のモデルをそのまま日本に持ち込 んだだけでは、うまくいかないというのも、今までの経過だと思います。これは参考人 で出席していただいている青野さんにお伺いしたいのですが、ヨーロッパのモデルとい うのはどうでしょうか。これは実はEFPIAに少し宿題でお願いしていたのですが、まだ 回答をいただいていないのですが、ヨーロッパ・モデルというのは何かあるのでしょう か。アメリカ・モデルと違うようなところというのはあるのでしょうか。 ○青野参考人 ちゃんと調べられていなくて、我々ヨーロッパのメーカーとして、きち んと調べてみようという話をしているのですが、実はヨーロッパのモデルはないのでは ないかと思います。国ごとに、いろいろ違って、ヨーロッパとして、1つの形でモデル があるのとは、少し違うかもしれないと思っています。 ○楠岡座長 特にフランス、イギリス、ドイツのように社会保障制度が非常に日本とよ く似ている所でも、治験はスムーズにいっていて臨床試験もちゃんとできているという ところが、やはりアメリカとたぶん研究者も患者さんもインセンティブが少し違うとこ ろもあると思われるので、是非その辺はまた。 ○青野参考人 はい、わかりました。 ○楠岡座長 別にヨーロッパで1つというのを考えているわけではなくて、日本と医療 制度がよく似た国で、どうなっていくかということだと思います。もう時間がほとんど ないのですが、あと、医薬品・医療機器の研究開発の推進等も含めて、何かご意見ござ いますか。 ○山本(精)構成員 「医薬品・医療機器研究の開発推進」のところで、厚生科研費の 臨床研究基盤整備推進事業の話が出ましたが、私ももらっているのですが、例えば教育 のほうで先ほど荒川構成員か伊藤構成員からお話もありましたが、実際この教育研究の プログラムを作っても、それで終わりになってしまったらあまり意味がないので、教育 研究のプログラムを作れと言って、グランドを出した以上、作ったものを評価して、次 はそれを使わせるということを考えていただけないでしょうか。法制や法律を変えるの は難しいでしょうが、研発が管轄しているグラントに応募する人に、研発で作った成果 物である教育プログラムを使えというのはできると思いますので、我々が作った教育プ ログラムをちゃんと見ていただいて、それがよさそうだったら、次から応募するときは それをやってから応募しろとか、厚生労働省がお金を出す臨床試験の場合は、そこのI RBにこの教育プログラムをさせろとか、是非そういうふうに、させるまでいかなくて も、望ましいぐらいのことは書いていただいて、是非使っていただく後押しをしていた だきたいと思います。そういう思いで作っていますので、是非よろしくお願いいたしま す。 ○楠岡座長 その内容、もちろん厚生労働省の管轄の話はそこでいけると思うのですが、 文部科学省側に引き継いでいただいて、今後医学教育、あるいは医療者の教育の中で役 立てていくことが可能なようなものを作っていただけるといいですね。文部科学省とし ては、実は教育の問題というのは何度も出てきているのですが、積極的なご発言はいま までなかったので、是非一度その辺のご検討をお願いしたいのですが。 ○文科省高等教育局医学教育課長 今日は初めてお伺いすることになりまして、会話に ついていけないところもたくさんございまして、微妙なものもありますが、基本的に研 究開発を進めていくというのは、文科省にとっても非常に重要な仕事であという認識と、 その中でどのようにすればより質の高い研究ができるのか、あるいは、それは今日の議 論でいきますと、臨床研究と併せた治験というものにも適用されるのだと思いますが、 それは概念としては、何ら変わるものはないというふうに思います。その上で、同じよ うに私ども大学病院を所管している者からいえば、研究ですとか、診療、あるいは教育 という機能を適切に実施する上でどのような人材が必要なのかということも、やはり重 要なことだろうと思っています。  様々な人材養成についての経費も私どもも持っておりますので、それもうまく活用で きるものがあれば、活用していただくということが適切なのではないかと思っておりま す。要は、十分連携できるような内容にしていただくということが重要かと思います。 ○楠岡座長 次回はもうまとめの段階に入ってまいりますので、是非いろいろな立場か ら、それから行政の側も協力いただけるところをいろいろ出していっていただきたいと 思います。申し訳ありません。もう時間がまいりましたので、ここで本日の意見交換は 終了にさせていただきたいと思います。本日いただいた意見を基にまた事務局で取りま とめ、次回の中間報告に盛り込んでいきたいと思っております。次回は、これまでの各 回のいろいろな議論を踏まえて、中間的なまとめ、それから今現在作業していただいて いる各作業班からの報告をまとめまして、それに対しての議論を予定しているので、よ ろしくお願いしたいと思います。最後に事務局から連絡事項がありましたら、お願いい たします。 ○研究開発振興課長補佐 ありがとうございます。次回は中間的なまとめ、骨子のよう なものの議論とそれぞれ作業班からの報告ということでお願いをしたいと思います。現 在日程調整の結果を踏まえまして、平成18年10月23日(月)16時から18時に開催を いたします。場所は厚生労働省内を予定しておりますが、詳細については追ってご連絡 をいたします。  また第6回につきましては、平成18年11月21日14時からということで、これもま た追ってご案内を差し上げたいと思っております。本日の議事録につきましては、作成 次第、各構成員の方のご確認をお願いいたしまして、その後公開の手続きに入らせてい ただきたいと思います。前回の議事録につきましては、各構成員にご修正いただいたも のを本日お配りしてございますが、もしこれで、特にご異論がなければ、公開の手続き に入らせていただきます。ありがとうございました。 ○楠岡座長 よろしいでしょうか。本日、またちょっと時間が足りなくなりまして、消 化不良のようなことになったかと思いますが、もしご意見がございましたら、事務局の ほうにメールでお出しいただきたいと思います。事務局から、各構成員の方々に配付し ていただくことにしています。特に次回はもう最終段階に入りますので、いろいろなご 意見を是非お出しいただきたいと思います。それでは、以上をもちまして、第4回次期 治験活性化計画策定に係る検討会を終了いたします。本日はどうもありがとうございま した。 (照会先)   厚生労働省医政局研究開発振興課    (03)5253−1111(内線 2545)