06/09/25 第90回労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会議事録 第90回労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会 1 日時  平成18年9月25日(月)15:30〜 2 場所  職業安定局第1会議室 3 出席者     委員  公益代表 : 鎌田委員、北村委員、清家委員        労働者代表: 池田委員、市川委員、長谷川委員        使用者代表: 成宮委員、輪島委員   事務局  鳥生職業安定局次長、坂口需給調整事業課長、        篠崎需給調整事業課長補佐、松浦需給調整事業課長補佐、        佐藤需給調整事業課長補佐 4 議題  (1)労働力需給制度について(フォローアップ)      (2)その他  ○清家部会長   ただいまから第90回労働力需給制度部会を開催いたします。本日は山崎委員がご欠 席です。本日は最初に公開で労働力需給制度についてのフォローアップをご審議いただ きます。また、その後一般労働者派遣事業の許可の諮問、有料職業紹介事業及び無料職 業紹介事業の許可の諮問に関わる審議を行いますが、許可の審査については、資産の状 況等の個別の事業主に関する事項を扱いますことから、これについては公開することに より特定の者に不当な利益を与え、または不利益を及ぼすおそれがある場合に該当しま すため、非公開とさせていただきます。傍聴されている方には、始まる前にご退席いた だくことになりますことを予めご了承ください。  議事に入ります。最初の議題は労働力需給制度についてのフォローアップです。本日 は紹介予定派遣、事前面接等の労働者を特定することを目的とする行為について、議論 を行います。まず、最初に資料を準備していただいていますので、ご説明をお願いしま す。 ○篠崎補佐   資料の説明をさせていただきます。初めに資料2、派遣労働の働き方については、前 回の審議会の場でも提出しています。これについては何点かご指摘がありましたので、 修正をしています。簡単に修正点をご説明します。  資料2の9頁は雇用就業形態の類型別概要(1)です。前回の資料の中で非雇用として、 例えば個人請負や家内労働という形で1つ欄を設けていました。これは少し正確性を欠 くのではないかというご指摘もありましたし、今回派遣労働と正社員の比較という中で は、直接的には関係がない部分です。こちらは項目から削除させていただきました。  派遣労働の人数のところでは、106万人と書いてありますが、これは前回もご説明さ せていただいたように労働力調査ベースの数字です。少し詳しく※として下の欄に詳細 を書かせていただいています。読み上げると、「派遣労働者数106万人は、労働力調査 2005年での月末1週間で就業経験がある派遣労働者数。なお、労働者派遣事業の平成 16年度事業報告の集計結果によると、年間で就業経験がある派遣労働者数としては約 227万人であり、その常用換算では約89万人」、このように注を付け加えました。今回 の場合は、他の労働者との比較で労働力調査の数字を106万人として載せています。資 料2は以上です。  資料1の労働者派遣事業関係資料についてご説明します。本日は紹介予定派遣と事前 面接等の特定することを目的とする行為の資料をまとめました。1頁は紹介予定派遣に ついてです。1つ目に平成15年改正のポイントを2点書いています。1点目は紹介予 定派遣について法律上の位置付けを明確化した。2点目は派遣就業開始前の面接、履歴 書の送付等の特定を目的とする行為を可能とした。以上が平成15年改正のポイントで す。  紹介予定派遣に関する論点として、4点上げています。1点目は紹介予定派遣の活用 が図られている現状についてどう考えるか。2点目は紹介予定派遣における事前面接に ついて、派遣先による年齢制限や性別指定が多く行われている現状について、どう考え るか。3点目は紹介予定派遣の派遣可能期間を6ヶ月としていることについてどう考え るか。4点目は紹介予定派遣により派遣先で雇用される場合の雇用形態、期間の定めの ない雇用や有期雇用等についてどう考えるか。以上4点を論点として記載させていただ きました。  2頁では、事前面接等の特定することを目的とする行為について述べています。まず、 労働者派遣法上の規定について説明しています。労働者派遣法第26条第7項で記載が あります。具体的には、労働者派遣の役務の提供を受けようとする者、いわゆる派遣先 は労働者派遣契約の締結に際し、当該労働者派遣契約に基づく労働者派遣に係る派遣労 働者を特定することを目的とする行為をしないように努めなければならないと法律上さ れています。  次に小さい※では、この特定することを目的とする行為を行わないように努力義務を 課している理由について、ポイントを3点記載しています。1点目、労働者派遣の仕組 みにおいて、派遣労働者を派遣先に派遣する行為は、派遣元による労働者の配置にほか ならず、派遣先に派遣労働者のうち、誰を派遣するかを決定するのは、雇用関係のある 派遣元である。2点目、にもかかわらず派遣先が派遣労働者を特定する場合には、派遣 先と派遣労働者との間に雇用関係が成立すると判断される蓋然性が高くなり、労働者供 給に該当する可能性があるほか、派遣労働者の就業機会が不当に狭められるおそれがあ る。3点目、このような趣旨から派遣先に対し、派遣労働者を特定することに加え、そ の前段階である特定することを目的とする行為を行わないよう努力義務を課しているも の。以上が特定することを目的とする行為を行わないよう努力義務を課している理由で す。  概念の整理としては、3つほど記載しています。まず、派遣労働者の特定がどういう ことかですが、これは派遣先が自らの指揮命令の下に就業させようとする派遣労働者を 自ら指定すること、何人かの中からこの人がいいというような行為です。  派遣労働者を特定することを目的とする行為というのは、具体的には派遣先が自らの 指揮命令の下に就業させようとする労働者について、労働者派遣に先立ち面接すること。 当該労働者の履歴書を送付させること。年齢や性別により派遣労働者を予め限定するこ と。このような行為を、特定することを目的とする行為としています。  特定することを目的とする行為には当たらない行為では2点記載しています。1点目 は労働者の自らの判断の下に行う事業所訪問、履歴書の送付です。2点目は派遣先が業 務を遂行する上で必要な能力を伝えるようなことは特定することを目的とする行為に当 たらないと整理しています。  3頁では、先ほど、いわばしてはならない行為と、してもいい行為を説明しましたが、 その中でも実際派遣労働者と派遣先が対峙する場面におきまして、してはならないこと と、していいこと、具体的にはここにありますように2つ、事前面接と事業所訪問とし て整理しています。1つ目の事前面接は先ほどもご説明しましたが、派遣先による特定 をすることを目的とする行為に該当し、労働者派遣法の第26条第7項違反となります。 これは具体的には派遣先が労働者派遣に先立って、派遣労働者の面接を行うことです。 ポイントとしましては派遣先または派遣元からの求めにより行われるものであると整理 をしています。事業所訪問は、派遣先による特定することを目的とする行為に該当せず 実施可能なものです。ポイントとしては、派遣労働者自らの判断の下に派遣就業開始前 に事業所訪問を行うこと。労働者自らの判断がポイントだと考えています。  下に参考で、一般的な派遣契約締結から派遣就業開始までの流れとして記載していま す。一般的な流れとしましては、まず(1)で派遣先から労働者派遣の申込があると、この 中でどんな業務に派遣労働を受け入れるのか、期間はどれくらいか、どれくらいの人数 を欲しいかという形で、申込を派遣元に対して行います。そのあとに(2)派遣契約の締結、 (3)派遣労働者の氏名の通知、(4)実際の派遣就業の開始という流れです。このように、(1) から(4)という流れにしていますが、実際は(4)の派遣就業の開始の直前に(2)の派遣契約の 締結、それから派遣労働者の氏名の通知がほぼ同時あるいは直前になされるのが一般的 だと聞いています。いわゆる事前面接や事業所訪問については、この(4)の派遣就業の開 始前に行われるものですが、一概にどの段階で行われるかというのは、いろいろなケー スがあるのではないかと考えています。  4頁では事前面接等特定することを目的とする行為に関する論点として5点記載して います。1点目は、労働者派遣の仕組みにおける事前面接の位置付けについてどう考え るか。2点目は、事前面接によるメリットについてどう考えるか。特に事前面接により、 雇用のミスマッチが解消されるという意見についてどう考えるか。3点目は、事前面接 によるデメリットについてどう考えるか。特に労働者にとっての弊害についてどう考え るか。4点目は事前面接のメリット、デメリットを踏まえた上で労働者保護のための一 定のルールの下、事前面接を可能とすべきとの意見についてどう考えるか。5点目は事 前面接について一定程度実施されていることについてどう考えるか。また、派遣先によ る年齢制限や性別指定についても一定程度行われることについてどう考えるか。以上5 点を記載しています。資料の説明は以上です。 ○清家部会長   どうもありがとうございました。ただいまの論点整理をしていただいた資料を叩き台 にしまして、議論に移ります。ご質問、ご意見ありましたらよろしくお願いします。今 日のお話は、大きく紹介予定派遣と事前面接等の特定することを目的とする行為として (4)、(5)は違う話題になっています。少し別々に議論をまず最初にさせていただきます。 最初に紹介予定派遣について、ご質問、ご意見いかがでしょうか。 ○輪島委員   あまり議論していない点ですが、諸外国との比較みたいなものがどうなっているのか。 特にテンプトゥパームと言われていて、テンポラリーからパーマネントにというのが一 般的な紹介予定派遣の機能というか、イメージです。それは諸外国の派遣法制度におい ては、それが目的になっているのか。どういう位置付けなのかがもしわかれば、今日で なくても結構ですが。鎌田委員がご存じであれば、ご見解を教えていただきたい。  また、基本的に派遣法が労働力の需給調整だという位置付けの中で、紹介予定派遣を 見たときに、私としては肯定的に見るべきだろうと思う。特に平成16年度についてい うと、1万人の人たちが紹介予定派遣でいわゆる直接雇用に変わっている。多分、平成 17年度か18年度、直近ではもっと活用されているのではないかと思っています。そう いう意味でポジティブに、前向きにこの紹介予定派遣を捉える必要があるのだろうと思 う。もう少し、むしろ積極的に使うために、もっと活用が進むために、どういうような ことが必要なのかも、併せて議論するのがいいのではないかと思います。 ○清家部会長   事務局からありますか。 ○坂口課長   1点目のご質問の紹介予定派遣についての諸外国の状況は、少しまた資料を精査させ ていただきます。いま私が認識しているのは、テンプトゥパームは平成11年、12年当 時でもアメリカでは派遣労働者から直接雇用として紹介を併せてという形で比較的広く 行われていました。経過的な紹介予定派遣は、平成15年法改正で法律上位置付けられ ていて、実務上と申しますか、運用上職業紹介と派遣という区切りを平成12年12月か らはっきり認めています。そのとき等の考え方もいろいろ直接雇用にも繋がることも含 めて、アメリカでそういう状況にあったことは、当時も参考にしていました。その点に ついてはその旨のご説明でさせていただきますが、その他の諸外国についてはいま一度 精査させていただきます。 ○清家部会長   ほかにいかがでしょうか。 ○輪島委員   アメリカはテンプトゥパームというのが派遣のメインの位置付けなのか、業務指定が そもそもありませんから、そういうところが問題になります。また、別件ですが、オラ ンダなどは3年を超えると直接雇用にしなければならないというような位置付けで、い わゆる派遣はテンポラリーだということです。そこをパーマネント、常用雇用にすると いう位置付けがそもそも派遣の有様として、主要国ではそういう位置付けになるのかど うか。もう1つ、別件ですが、派遣市場はアメリカもほとんど規制がないにもかかわら ず、では派遣が一方的に増えていくかというと、大体労働市場の中では5%を超えない とも聞いているのですが、これはそう聞いているだけでどんどん増えていくものである という認識もありません。そういうことについてどう考えるのか。データ上あるのであ れば教えていただきたい。以上です。 ○坂口課長   いまの点については今日お答えできませんので、事務局でも精査します。先ほど輪島 委員からもオランダのご説明がありましたが、フランスなどでも有期雇用の期間を区切 ったものとの関係でみなし雇用が、それを超えてということなら確かにあります。紹介 予定派遣という形の限定ではなく、いまおっしゃったような点も含めて、資料を精査し ます。 ○清家部会長   紹介予定派遣は数的にも増えているし、いま輪島委員からは直接雇用に繋がるという 意味では、非常に派遣の形態として筋もいいものであって、評価すべきではないかとい うご意見に当たる部分もあったかと思います。その辺は労働側も同じご意見でしょうか。 ○長谷川委員   1つあるとすれば、紹介予定派遣がある意味では直接雇用のときの1つの形態として 活用されているところでは、それなりでも意義はあるのかと思います。ただ、そのとき に期間の定めのある雇用にするのか、期間の定めのない雇用にするのか。労側は、期間 の定めのない雇用と考えています。そこは期間の定めのある雇用、有期にしていますが、 本来はやはり期間の定めのない雇用にすべきではないかとは思っています。 ○輪島委員   その点については、関接雇用から直接雇用へというところは、いま整理がしてありま すので、直接雇用の中で期間の定めのない雇用なのか、有期雇用なのか、パートなのか を期間の定めのない雇用にしなければならないとなると、少し規制としては強いのでは ないかと思います。そこが課題だというのもよくわかります。6ヶ月のあと、切り替え るときに期間の定めのない雇用なのかどうかというと、大卒の正社員では3ヶ月の試用 期間などとなっていますから、そことの違いをどうするのかはあるかもしれませんが、 基本的に「ねばならない」となると辛いだろうと思っています。 ○長谷川委員   ここはやはり議論があって、私たちはいつも期間の定めのある雇用、有期は一時的・ 臨時的であるとすべきだと思っています。雇用の原則は期間の定めのない雇用だと労側 はそのように認識しています。ここの所轄ではないのですが、前回の労働基準法改正で 有期労働契約の期間の上限が、1年の部分が3年になって、3年の部分が5年にされた ことは、問題だと思います。やはりあるべき雇用の姿を考えた場合には、基本的には期 間の定めのない雇用です。期間の定めのある有期雇用はあくまでも一時的・臨時的なの ではないでしょうか。そう考えると、紹介予定派遣で6ヶ月働いてみて、そのあと直接 雇用にするときは、やはり期間の定めのない雇用であるべきです。そうでないと、6ヶ 月のあと、また試用期間を入れることも問題です。例えば、6ヶ月紹介予定派遣で働い て、また1年有期でとなれば、雇用の不安定さの点で問題があるのではないかと思いま す。 ○輪島委員   資料の中で、紹介予定派遣で期間の定めのない雇用なのか、有期なのかを調査では、 分類できたのですか。 ○篠崎補佐   以前アンケート調査におきまして、紹介予定派遣を通じて直接雇用になったものを、 雇用形態ごとの人数で調べています。それによりますと、大まかにアンケートですので、 推計の部分が出てきますが、正社員が大体1,400人ぐらいで、期間契約社員と答えたの が大体400人ぐらいでした。その他もアルバイトなどの部分もありましたが、このアン ケートでは大まかにいいますと、正社員と非正社員が1,400対600くらいの比率になっ ていました。 ○清家部会長   いま長谷川委員がおっしゃった試用期間は、法令上はどういう整理になるのですか。 6ヶ月やって試用期間にするというのはどうなのですか。 ○坂口課長   紹介予定派遣後にまた試用期間を設けることについては、法令上の位置付けとしては 特段規定はありません。ただ、本来的にそういう形が望ましいかというと、望ましくな いのではないかということで、私どもは労働者派遣の取扱要領の中には、そういうもの を派遣先で扱われる場合については是正方、指導をしていく取扱いにはさせていただい ています。 ○池田委員   現在、紹介予定派遣の受入事業所はどのくらいあって、そしていま課長が言ったから その人数については大体把握できたのですが、例えばどのくらいの労働者の人たちを受 け入れているのか。そこらはおわかりになりますか。アンケート調査を見ればいいので すが、見れないものですから申しわけありません。 ○篠崎補佐   事業報告のデータによりますと、派遣先から紹介予定派遣をやりたいと言った申込人 数、事業所ベースではないのですが、これが大体6万弱です。紹介予定派遣の実施事業 所についても、事業報告によりますと、事業所数で1,177の事業所で紹介予定派遣を実 施しています。ただし、この実施は受入れではなくて派遣元の数です。事業報告により ますと、紹介予定派遣をされた労働者数が、1万9,474人、実際に職業紹介にまで結び ついたケースが労働者数で1万5,044人、そのあと職業紹介を経て、実際に雇用に結び ついた労働者数が1万655人という実績になっています。 ○池田委員   結構増えていますね。ありがとうございます。 ○坂口課長   あとは補足ですが、先ほど篠崎からご説明した内容、数字は入れていませんが、お手 元ファィルにこれまでの関係資料を綴じているものの23頁から紹介予定派遣の現行の 制度等を記述しています。24頁に紹介予定派遣の部分の実態調査結果のポイントとして 書いています。データは先ほどの1,400人、400人という数字は入れていませんが、24 頁から25頁にかけて、直接雇用に結びついた労働者の方の平均の割合が69%、約7割、 それから雇用形態としては正社員が最も多く、次いて期間契約社員、アルバイトの順で 多いということについて、こちらで抜粋をしています。 ○清家部会長   ほかに紹介予定派遣のことについて何かありますか。 ○市川委員   労働相談などでは、紹介予定派遣でこれは直接雇用に結びつくという期待を持って行 って、そのときの説明が不十分で、本人は直接雇用されるなら当然正社員と思っていた のに、そこを説明されないで、行ってみたらまた3ヶ月ごとの期間雇用だったという連 絡違いというのか、説明不足という苦情を聞きます。紹介予定の労働者に対してちゃん と説明しなさい、何か書面で示しなさい、などの規定は法律や指針があるのですか。も しあったとしても、しっかりと守られているのかという気がします。 ○清家部会長   それは将来紹介される仕事がどういう状況なのかということですか。 ○市川委員   どういう状況なのか、そのようなことは言う必要はないのかということです。 ○清家部会長   紹介予定を引き受ける際に開示されているのかですか。 ○市川委員   そうです。説明されるのか。 ○清家部会長   その辺についての規制はあるのでしょうか。 ○篠崎補佐   紹介予定派遣のとき、事前にということでは当然労働者に紹介予定派遣であることを 明示しなければならないことになっています。当然、業務についても基本的には派遣と して受け入れた業務をやるというのが通常のケースだと思います。ただ、実際に期間の 定めや賃金等々労働条件については、紹介予定派遣として派遣が始まるまでに、こうし なければならないという法規制はありません。ただし、当然職業紹介のときには、労働 条件の明示は必要ですので、実際に紹介行為を行うときまでには、予定される労働条件、 賃金等を含めて示すのは通常の職業紹介と同じルールに従います。 ○北村委員   紹介予定派遣に登録していく人は、当然に直接雇用があるだろうという期待はあるだ ろうと思うし、紹介予定派遣で受け入れようという派遣先も、おそらくうまくいったら 直接雇用したいという期待はあると思う。実際、職業紹介では大体7割弱が直接雇用に なるというと、両者にその意図があるのに7割というのは、確かに実績としては結構だ と思うのですが、7割弱という数字が両者に意図があるのに高いかということでいうと、 例えば一般の社員募集の際など、試用期間を経て、3割強が使用をはねられたという例 はないわけです。試用期間で正式雇用をはねられたという例は聞いていません。なおか つ、例は多くないのかもしれませんが、当然直接雇用してもらいたいと思う労働者は、 一生懸命忠勤を励むわけですが、結果ノーと言われて、非常に落胆したという、実はつ られてしまったということもないではない。そうすると、非常にうまく機能している部 分と少しうまく機能していない部分が結果として出てきてしまっているのかと疑います。 そして、労働者が派遣業者について、いろいろもう少し情報があれば選びようがあると 思います。例えば、ある派遣業者が紹介予定派遣を行った場合、そこの業者では直接雇 用の達成率がどのくらいというような何らかの情報開示はできないだろうかと考えるの です。いかがなものでしょうか。 ○清家部会長   それは派遣元会社ですか。 ○北村委員   はい。 ○清家部会長   事務局から何かありますか。 ○坂口課長   いま北村委員がおっしゃったとおりで、先ほども申し上げたような形で、事業報告ベ ースだと、約半分くらいの直接雇用に結びついた割合です。また、アンケート調査でも 約7割で各々紹介あるいは直接雇用に至らなかった理由は、派遣先と派遣労働者双方の 事情があるのだろうとは思います。ただ、こういう直接雇用に結びつく制度をより効果 を上げるようにしていくかというのは、確かに私どもとしてもいろいろな知恵がないか と思っているのは事実です。その1つとして制度としてつくるのか、そういう取組みを もしかしたら派遣事業者さんでもやられているかもしれませんが、いろいろな形で派遣 労働者あるいは派遣先も含めてですが、派遣元事業主のいろいろなお取組みがわかるよ うにしていくのは、一考に値する部分かとは思います。ただ、制度としてどういう形が ということを含めていきますと、皆さんでご議論をいただければと思います。 ○輪島委員   いまの直接雇用への移行率は、自主的にもしくは派遣元が開示をしていって、これだ けやれるのですよというようなことをむしろ積極的にPRをしていくべきなのだろうと 思います。いま地下鉄に乗っていると、ポスターが貼ってあって、何度も見たのですが、 よく意味がわからない。派遣元のポスターで「金融正社員になったら、年収の10%をも らった」と書いてあって、多分10%でケーキを食べているのかなと思います。それはど こが払っているのかと思いましたが、そのようにして派遣から正社員になっていること をPRをしている部分もあると思います。そこら辺は自主的な取組みで、そこが需給調 整のスペシャリストとしての派遣元の売りになるわけですから、そうすべきではないか と思います。  もう1つは7割が高いのか、低いのかは確かによくわからないのですが、3割が派先 か、または派遣スタッフで辞めたいとしているわけです。そこは3割が自主的にその前 に選択ができることは、むしろいいのではないか。機能しているのではないかと思いま した。  また、新卒の七五三とよく言われますが、3年経過をすると、中卒で7割、高卒で5 割、大卒で3割ですが、いまは4割に近くなっていて、3年以内にそれだけ辞めている わけです。紹介予定派遣の7割は達成率としてはかなり高いのではないかと思ったりは します。試用期間の中で確かに7割はいないでしょうが、それでもそのあと社員として の離職率はかなり高くなっています。そういう意味でマッチングの機能としての紹介予 定派遣を評価するというものではないかと思っています。 ○清家部会長   ほかにはよろしいですか。 ○長谷川委員   紹介予定派遣は、やはりある意味では間接雇用から直接雇用に移行する1つの制度だ と思います。そういう意味では、最初から期間の定めのない雇用をするよりは、企業に とっては6ヶ月で大体その人がどれくらい仕事をするかは見られるわけだから、企業に とっても派遣先にとってもいまの時代に合っていると思います。一方、労働者が紹介予 定派遣を選んだのは、派遣を通して働いてみてそこで働きたいというもともとの希望が あるからです。そして、一般的には希望されるのは期間の定めのない雇用です。机上で は期間の定めのある雇用と期間の定めのない雇用があってなどと考えますが、普通は正 規の労働者になりたいということだと思います。雇用保険もあって、社会保険もあって、 一時金も出て、給料もそこそこの普通の労働者になりたいと思って、紹介予定派遣を選 ぶのだと思います。そうすると、派遣で6ヶ月働いあとに、市川委員のいう3ヶ月くら いの有期だった、1年の契約社員だったなどというのは、すごくショックだろうし、自 分の思っていたのとは違うのだと思うのです。雇用の安定を図るという意味では、そこ は本来は期間の定めのない雇用にすることが私は双方幸せになるのではないかと思う。 派先にとってみれば、もっと別な考えがあって、有期雇用としたいのかもしれませんが、 労働者から見れば紹介後の雇用は期間の定めのない雇用だと思います。そうでないと、 2段階になるでしょう。派遣で6ヶ月行って、次に有期で、次に期間の定めのない正規 の雇用となる。ならば、この制度は何なのかという話ではないかと私は思います。 ○成宮委員   そうは言っても、実際に直接雇用になったあとの雇用形態としては、この調査による と正社員がいちばん数は多くて、ただし期間契約社員、アルバイトというのもいますと いうことですから、むしろいわゆる期間の定めのある契約というのがメインになってい るわけでもなく、ある意味でバリエーションが広がっているという評価もできるのでは ないかと思います。 ○長谷川委員   有期雇用の評価というのは、使側と労側でどうしてもなかなか基本的に一致しない悩 ましいところです。 ○清家部会長   そうしますと、この紹介予定派遣についてほかによろしいですか。ここは、需給調整 機能として、かなりポジティブに捉えるけれども、内容的な部分についてはまだ議論の 余地がいくつかあると。基本的には肯定的にいまのところは捉えていいのではないかと いうことでよろしいでしょうか。  またあとでこちらに戻ることはあるかと思いますが、次の話題に移らさせていただき たいと思います。事前面接等の対象者特定することを目的とする行為についてというこ とで、事務局からご説明いただきました。これについて、また皆様方からご質問、ご意 見を承りたいと思います。 ○長谷川委員   私は前から言っているのですけれども、事前面接を派遣で行うということは、派遣法 が予定しているものを自らが否定することではないかと思っています。したがって、こ の事前面接を解禁するというのが、派遣法そのもの、派遣とは何かという意味のそもそ もの議論に、85年のところまで戻ってしまうということになると思います。派遣とは何 なのか、そこのところをきっちりと押さえると、男か女か、年齢が何歳かとか関係ない ですね。要するに、その仕事をしてくれる人であれば男であろうが女であろうが、年齢 が何歳であろうが、背が小さかろうが細くても太っていても関係ないと思います。そう すると、そもそもの派遣法というのは何なのかというところに戻ってしまうのではない かと思います。 ○輪島委員   ずっとこれまで議論をしてきた、いわゆる事前面接と言われるものですけれども、長 谷川委員がおっしゃる事前面接というのは、私も悪い事前面接だと思っていて、打合せ であるとかということとの区分けを整理するべきだと思います。1つは、悪い事前面接 と言えば、(5)の2頁目の概念の整理のところの、1つ目の○の派遣労働者の特定で、派 遣先は自らの指揮命令の下に就業させようとする派遣労働者を自ら指定すること。A社 からのAさん、B社からのBさん、C社からのCさんと呼んできて、その中から面接の ような行為をして決めていく。または、品評会的なことも一方では行われるというのは、 事前面接という名を借りた悪い事前面接だと思うので、そのこと自身について、長谷川 委員と同じだと思うのですけれども、それ以外のところで、例えば3頁にある参考の派 遣就業開始までの流れの中で、(2)と(3)の間にいくと事前面接で、(3)と(4)の間は事前打合 せなのかという。ここは難しいところになっていて、実態から乖離しているような状況 もあるので、そこの整理が必要だと言っているわけです。  前回、申込から開始まで整理をしていただいたのですけれども、例えば申込をすると いうことは、派遣先から派遣元へ申込をすると、派遣元はそれを受けて誰がいいのか人 選をした上で、元と先で締結をするということも、この中に隠れているわけです。その 中で言うと、悪い事前面接は当然にあるし、むしろ職場の雰囲気や仕事の中身を分かっ ている上で、(3)と(4)の間で打合せをするということまでも事前面接だと言ってしまうと いうのは、少し行き過ぎなのではないかと思います。 ○清家部会長   ほかにいかがでしょうか。 ○成宮委員   ちょっと乱暴な言い方になるのかもしれないのですが。事前面接等のメリット、デメ リットをどう考えるかという問題提起がありますけれども、メリットというのは、いわ ゆるミスマッチを防ぐというか、雇用者側のほうも、こういう人がほしいという要望は 派遣元に当然細かく出すのでしょうが、それを派遣元のほうが、どれだけ本当にその会 社を理解し、人選をして出してくるかというのは分からない。派遣労働者のほうも、自 分が申し込んでいる派遣元の使用者が自分の希望に対して、どれだけふさわしいところ を、リストの中から紹介してくれるかというのは分からない。その意味では若干の事前 の打合せみたいなものによって、話はこうだったけれども、行ってみたら少し違うとい うことが事前に分かるというのがメリットだと思います。  けれども、そういうことがいけないのだとすると、双方にとって、派遣の受入先にし ても、派遣労働者にしてみても、結局派遣元がどれだけ最適の情報を理解した上で派遣 先の選定をしているかということが、失敗の経験でしか学習できないということになっ てしまうわけです。使ってみたら派遣元は、ぴったりした人はよこしてこないというの を、何度か失敗してみて、ではもうあの業者は使わないと、派遣先は思う。あるいは派 遣労働者も、登録をしてみて、何度か行ったのだけれども、いつも変なところばかり紹 介されるという失敗をいくつかやって、あそこの業者には登録しないというようになっ ていくと。それしかしょうがないではないかと、特定の行為というのは派遣の原則とい うか基本的な考え方に反するのだからと言ってしまうと、失敗の積み重ねによって学習 するしかしょうがないではないかと言ってしまうことになるのではないかと。非常に悩 ましいことだなという気がします。 ○長谷川委員   本来は派遣は、例えばコンピューターによる処理という仕事があったとすれば、それ がずっと派遣元では、例えばレベルが10ぐらいのものがあったとしたら、このぐらい、 このぐらい、このぐらいと、スキルを持った人が常にプールされているわけです。それ である会社がこのぐらいのレベルの人がほしいと言ったら、そのレベルの人を派遣する。 本来の派遣が予定していたのはそういうものだと思います。しかし、常用派遣ではなく て、登録派遣が登場し、業務もネガティブリスト化される中で、本来の姿とは変わって いるのだと思います。だから本来はこの仕事をしてほしいと、こういう人に対して派遣 先から要請が来て派遣元が出していくというのが基本的な派遣元と派遣先の関係で、労 働者の関係はそうだと思うのです。  ただ、そうは言っても、派遣される労働者も自分が働く所が汚ないところなのか、き れいなところなのかという不安はあると思います。派遣契約などが保持されている中で、 自分が働く所を見たいというのはあると思います。でも、それ以上でもそれ以下でもな いと思うのですよ。だから、どの時点で自分の働くところを訪問するかというのは、そ の都度決まってくる話ではないでしょうか。しかし現実は登録派遣がたくさんあり、ど うしてもマッチングしないから、そこで面接をやるという話になっています。  大体5社ぐらいを別々とか時間をずらして面接するものだから問題になっています。 これをどうするかですよね。5社ぐらいを時間差をおいて面接し、あの子がいいと言っ てあとは全部落とすというのが実際だと思いますね。ここの扱い方が重要だと私は思い ます。 ○輪島委員   その需要と供給の調整というのは役所が大好きなことで、タクシーの台数や石油の量 や労働力も需要と供給の調整をしなければいけないと思っていて、だからこの部会が労 働力需給制度部会なわけです。需給の調整だということから言って、85年に派遣法をつ くったところで言えば、たしかに専門的・技術的な13業務から始まって、いまは26に なっている。これについて言うと、当初の理念からすれば、そのところは需給の調整な のだから、スキルを持った人を派遣元がしっかり派遣先に紹介をしていくと。これが派 遣制度だということになっているわけです。そのところで、いまはそれプラス自由化業 務が入っていて、そこのところが難しくなっている。かつ、成宮委員がおっしゃったよ うに、出会い頭の需給調整というのは、人であるがゆえに難しいわけで、マッチング機 能を高めるという一言で言ってしまっているわけです。  ご指摘のように、木造のところはいやだとか、大手町がいいとか、丸の内がいいとい う話になるわけで、そこが人情のところであったり。スキルが高ければ高いほど、自分 の仕事をやりたい、完成をどういうところでするのか、自分の求められているスキルは どういうものなのかということを、事前に分かっていて、派遣を活用したいというニー ズも一方であるわけです。そこのところでご指摘の事前面接と、基本的なマッチング機 能を高めるものと、そこが継続していくような仕組みのための打合せなのか、というよ うなものを切り分けて整理をする必要があるのではないかと思っています。 ○市川委員   いろいろな人の話を聞くと、輪島委員や成宮委員みたいなまともな経営者ばかりでは ないというのが実態で、輪島委員のように悪い面接と打合せをちゃんと理解されていて、 そういうようにちゃんと仕分けてくれる経営者が実はどれだけいらっしゃるのかなとい うのが非常に不安です。ですからこういうことをルール化して打合せができるようにし たらどうだろうかということは分からないでもないのです。いくら派遣労働というのは これが基本だと言われても、長谷川委員と私はまったく同じ考え方ですけれども、コピ ー機のように機械ならどんな寒いところでも動くでしょうけれども、人間ですからそれ なりの雰囲気を見たいとか、能力はあるということと、求めている人間像を知りたいと いう気持ちも分かる。だけれども、それをやっていいということになってしまうと、悪 用する人も必ずいて、競合面接がいまでもなされています。そこが心配なので、きちん としたルールというのがむしろ必要なのかなと思うのです。いわゆる打合せと選ぶため の面接は違うのですよというものが、それなりにきちんと、はっきりしていないとそう 簡単に打合わせ出来るようにするというのは難しいと思います。労働者側にニーズがあ るとはいっても、デメリットのほうが大きいというのが正直なところです。 ○池田委員   輪島委員が先ほどから言われているのですけれども、悪い事前面接と良い事前面接が あるということは、いままで労働側の人間が言っていましたけれども、いまの労働者派 遣法の中でも、事前面接は禁止されているわけです。しかし、派遣先の経営者は、派遣 労働者問題をきちんと理解していると思うけれども、派遣先のスタッフなどは、事前面 接を禁止するということを知っている人は、あまりいないかも分からない。なぜかとい うと、いま我々のところにドンドン来ているのが、面接が実際にやられていて、プライ バシーのものに対する言葉がたくさん聞かれたとか、あるいはあなたは何歳ですかとい う、年齢まで聞かれている。そして仕事が決まらない人が、たくさん出ているわけです。 輪島委員のように、良い事前面接を新たに改正に入れたら、いま事前面接は禁止されて いるのだけれども、実質採用的行為が実際にやられているわけですから、良い事前面接 については、つくるべきではないのではないか、逆に現行の事前面接の禁止を徹底して いく方向が、やはり私はいいのではないかと思っています。以上です。 ○清家部会長   ほかにありますか。 ○長谷川委員   ある大手の派遣会社では事前面接はしないと言っていました。ある相談者から聞いた ら、「いやあ、あそこは事前面接なしですよ」と。ただし、派元の人がものすごく丁寧に 説明すると言っていました。こういう仕事だけれども、と丁寧に説明して、決まった後 に、「じゃあ職場をご案内しましょうか」と。珍しいぐらい事前面接をしない派遣会社に 会ったとびっくりしていました。ほかの派遣会社では全部面接のようなことをされたと 言っていました。だから、そういう意味では、いまずっと派遣事業をやっている業者が いるのだけれども、全国展開している立派な業者は事前面接をしていないですよね。会 社の姿勢として、派遣法をしっかり守るという姿勢が事業所に徹底されていると思うの です。 ○成宮委員   おそらくそれは、紹介する品質がものすごく高いわけです。 ○長谷川委員   だから行く前に、その人のスキルをはかって、その次に研修して、派遣労働者の秘密 保持が守られていて。やはり何日か研修をやるのですよね。そこがすごいと言っていま したね。だから、非常に収益が上がっているのでしょうけれども。 ○北村委員   紹介予定派遣であると、労働者の側の情報がかなり開示されるわけですよね。面接も あると。もしも一般派遣で、それがオーケーということになると、紹介予定派遣という セグメントはどうなるのかというのが疑問なのです。では同じことではないかというこ とになりはしないか。結果的に紹介予定派遣のほうの寄って立つところも危うくするの ではないかという心配があるのですけれども、それはどのようにお考えですか。 ○輪島委員  先ほどありましたけれども、紹介予定派遣であるということは、派遣に入る前に、あ なたは紹介予定派遣で行っているのですよということは明示されるわけですから、セグ メントとしての場面は違いがあるわけなので、自分は最大6ヶ月の紹介予定派遣後に直 接雇用になる可能性があると。自分としてもその職場を吟味するつもりで派遣をするの と、そうでないのとは違いは自ずと出てくるのではないかと思います。 ○北村委員   そうすると紹介予定派遣ではないけれども、面接を受けて、自分についての情報が開 示されるということになると、なんらそこに紹介予定派遣で得られるであろう期待とか メリットが担保されないことになって、運営上グチャグチャになるのではないかという 心配があります。 ○輪島委員   私どもは、事前面接をオーケーと言っているわけではなくて、そこで違いがあると言 われても、労働力需給調整という観点から言えば、私も事前面接は悪いと思っているの ですよ。なのでお答えのしにくい質問ですので、何とも言いようがないのですが。  ただ、何度も行って断わられると。また行って駄目だった、また行って駄目だったと いうことを防止する。いまは雇用契約が成立していないので、面接ではなく事前に行く ことも交通費を含めて無駄足になるわけですから、そこを担保するというのは、むしろ 派元が誠意を示して、することは一方で考えるべきなのではないか。  もう1つは、長谷川委員がいまおっしゃったように、まず需給調整なので、そこのと ころで言うと、むしろ派元がきちんと派遣スタッフのスキルを把握し、派先のニーズに 合わせて、どういう人が必要なのかということを聞けば聞くほど、それが女性なのか男 性なのか、年齢はどの幅なのかということになってしまうのかもしれませんが、それで も、それを聞くがゆえに、自分の社員である派遣スタッフを適切に派遣できるようにす る。ご指摘のとおり、本来あるべきものは派元の事業の姿なのだろうなと思うわけです。 そういうところからすると、事前面接もいいではないかというよりは、労働者派遣法の かなりの理解をするのは難しく、複雑な状況だと思いますけれども、まずは派元がコン プライアンス、派遣法をきちんと守るということが大前提だと思っています。 ○鎌田委員   私にとってもこの問題は本当に相当な難問なのですが、せっかく事務局で論点をまと めていただきましたので、論点に沿って、またいま委員の皆さんがお話いただいたこと を聞きながら、もちろん意見が対立するところもありますが、意見が一致している面も あるかなと思います。そういう観点からちょっと考えてみたいと思います。労働者派遣 の仕組みにおける事前面接の位置付けについてどう考えるかということですが、これは いちばん最初に長谷川委員の、そもそも派遣の趣旨からいって、事前面接は認めるべき ではないというお話から始まりました。実はこの議論はそのとおりでありまして、いわ ゆる本来の姿を考えますと、派元が自ら登録している、常用の場合は自ら抱えているわ けですけれども、派遣スタッフの能力、スキルをいろいろ総合考慮して、派先の注文に 的確な人材を派遣すると。こういうことだと思っていますし、派遣法も、そういったい わば理想、理念で考えていただろうと思います。  ただ、一方で、良い事前面接、悪い事前面接というように言いますが、事前面接が広 く行われているというのが実態なわけで、しかも私が非常にいつも戸惑うというか、苦 慮するのは、労働者側からのニーズということも見てみたいと。つまり派先の社風、あ るいは職場環境だとか。この辺のところは、労働者側の認識ですから、事前面接が良い とか悪いとかという法的な規制を前提にして言っているわけではないので、要は自分が 働くところの雰囲気だとか、いろいろなものを見てみたいという気持ちだろうと思いま す。それは、前回の改正のところで労働者の自主的な判断の下で、事業所を訪問するこ とはいいということで行かせてはいるわけです。しかし、そういうニーズがあるという こと。  私もまとまっていないので申し訳ないのですが、そもそも26条の7項で、事前面接 等の特定することを目的とする行為をしてはならないという趣旨は何なのかということ は、実はなかなか難問で、いまでもよく分からないのです。いま私が考えているところ は、まず、おそらく背景にある1つは、派先が特定の派遣労働者を指名することは、や ってはいけないと。まずこれが大きな出発点ではないか。だから先ほど来、競合面接の 例も出ていますが、時間差であろうと何であろうと、A、B、C、D、Eと面接して、 ではAさん。これはやってはいけないと。やってはいけないのはなぜなのかと。それは 明らかに指定しているからですね。もしこれがオーケーだということになれば、それは 長谷川委員がおっしゃるように、派遣元は何をやっているのですかということになるわ けです。つまり、特定することを目的とする行為というよりは、特定してはならないと いうことが、おそらく基本にあるのではないかと。これは労働者供給事業に当たる当た らないという、いわば制度的な背景もあるわけです。  そして、具体的に26条7項ができたときに話題になったのは、どこかに書かれてい ますけれども、年齢制限や性別指定について、一定の限定するような注文を付けてはい けないという話も出ていました。これは何かというと例えば、どういうように言ったの か記憶にないのですが、私の頭の中にあるのは、20代前半の女性という注文というのは おかしいだろう。これは実は指定ではないのです。先ほどの指定というのは、A、B、 C、Dという人がいて、その人と言えば指定なのですが、20代前半の女性というのは指 定ではないけれども、そういうのはまずいのではないか。これは、まさに性別による差 別、年齢による差別に関わってくる。  そういった意味で、特定そのものではないけれども、特定することを目的とする注文 行為はやってはいけないと。こういうことだと思います。その中に事前面接ということ もやってはいけないということは、事前面接そのものよりも、そういった様々な弊害を 生み出すような行為を、外形的に規制をするという考え方だったのではないかとちょっ と思っています。そういう意味では、輪島委員は良い事前面接、悪い事前面接という言 い方をされましたけれども、ミスマッチ解消に役立つようなものがあるだろうという意 見も出てくる余地もあるのだろうと思います。いずれにせよ、この位置付けについて考 えられることは、指定をしてはいけないと。そして指定の前提になるような差別に関わ るような行為をやってはいけないというのは、おそらく成宮委員も合わせて、そこまで やってはいけないだろうということは一致しているのではないかなという感じがしてい ます。  次にメリットについてどう考えるか。特に事前面接で雇用のミスマッチが解消される という点についてはどう思うか。これはちょっと言いましたけれども、問題はミスマッ チ解消。これはおそらく労働者側と経営者側とは意見が違うと思います。ミスマッチと いうのは、スキルだけ考えると、例えばエクセルをうまく出すとかというところで考え ると、あまり事前面接の必要もないのかなと。  ただ問題は、労働者側から自分で会社を知りたいというときに出てくるのは、社風と か、ちょっと曖昧としたものですね。外国のことをちゃんと調べたわけではないのです が、ある意味、日本独特というか、職場の雰囲気というのですかね。それは派先のほう もそういうことを気にするし、労働者のほうも気にするし。自分のスキルだけで、特定 業務の遂行能力というところにのみ限定されない、ある意味でのコミュニケーション能 力みたいなところまで気にするという。ミスマッチの解消といった場合に、どこまでを 対象で考えるのかという感じがするのです。つまり、本当に具体的な特定の業務の遂行 能力だけに限って、ミスマッチという概念でいくのかどうかというのは、ちょっと私は よく分からないところなのですが、その辺のずれがあるのではないか。つまりいろいろ 考えている方にとってずれがある。  デメリットについてはどう考えるのか。これはまずは、先ほど申しましたように、差 別につながるとか、あるいはそういうようなことを別にすると、輪島委員もおっしゃっ ていましたけれども、例えばコストの問題。交通費だとかそれに伴って発生してくるコ ストの問題。例えば自分が住んでいる場所から会社までに事前面接で出かけていくとい うことをすれば、ちょっとすれば1000円近くの交通費がかかってくる。これはあなた の負担、つまり派先から言われて派元が候補者に、あなたの負担で行ってと言って、そ れで駄目だったらごめんなさいというのがフェアなのかどうかですね。それは考え方は いろいろあると思うのですが、派元にすると「行く行かないはあなたの勝手よ」と。そ のときに、派遣労働者にしてみると、行く行かないはあなたの勝手よと言われても、派 先から派元に一度会いたいのだけどと言われて、行く行かないはあなたの勝手よという のはどうなのかという。細かい話と言えば細かい話ですけれども、そういう問題。  それから、自分は派先に行けるのだろうと思って受けてみたところが、何だかよく分 からないけれども、駄目だったと言われて、なぜかという説明も受けられない、教えて くれないと。そういうのが弊害として考えられるのではないかなというように思います。 あとの4番目と5番目については、一定の政策判断を前提にした議論ですので、ここで は出しませんけれども、私は皆さんの意見を聞いて、自分なりに考えるとそういうこと になります。 ○清家部会長   ありがとうございました。まとめていただきまして私も整理できました。ほかに何か、 この点についてご意見、ご質問等ございますでしょうか。よろしいですか。本日は紹介 予定派遣と、事前面接等の特定することを目的とする行為につきましてのフォローアッ プの議論をしていただきましたけれども、一応この部分についての議論はここまでとさ せていただきたいと思います。  それでは次に一般労働者派遣事業の許可の諮問に移りたいと思いますが、冒頭に申し 上げましたように、傍聴されている方につきましては、ここでご退席をお願いしたいと 思います。また、鳥生職業安定局次長につきましても、所用により退席させていただき ます。                    (傍聴者・職業安定局次長退席) ○清家部会長   それでは最後に事務局よりご説明をお願いします。 ○篠崎補佐   次回の部会の日程でございますが、10月23日月曜日。時間が早くて恐縮でございま すが、朝の9時半から12時まで、通常の派遣の3回目と、通常の諮問案件があるとい うことで、9時半からお願いしております。場所はここの第1会議室で行います。よろ しくお願いします。 ○清家部会長   それでは以上をもちまして第90回労働力需給制度部会を終了いたします。なお、本 日の署名委員は雇用主代表が輪島委員、労働者代表が長谷川委員にお願いいたします。 どうもありがとうございました。   照会先  厚生労働省職業安定局需給調整事業課調整係  〒100-8916東京都千代田区霞が関1−2−2  TEL03(5253)1111(内線5747) FAX03(3502)0516