06/09/15 第89回労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会議事録   第89回労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会 1 日時  平成18年9月15日(金)10:00〜 2 場所  職業安定局第1会議室 3 出席者     委員  公益代表 : 鎌田委員、北村委員、清家委員        労働者代表: 市川委員、長谷川委員        使用者代表: 成宮委員、山崎委員、輪島委員   事務局  鳥生職業安定局次長、坂口需給調整事業課長、        篠崎需給調整事業課長補佐、松浦需給調整事業課長補佐、        佐藤需給調整事業課長補佐 4 議題  (1)労働力需給制度について(フォローアップ)      (2)その他  ○清家部会長   ただいまから「第89回労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会を開催い たします。本日は池田委員が欠席です。本日は最初に、公開で「労働力需給制度につい て(フォローアップ)」をご審議いただきます。それでは、議事に入る前に、委員に交代 がありましたのでお知らせいたします。川畑委員の後任としてJAMの市川佳子委員に お引き受けいただくことになりましたので紹介いたします。 ○市川委員   市川と申します。よろしくお願いいたします。JAMは機械・金属産業の産業別労働 組合でございまして、私は主に政策を担当しております。また、職業安定分科会でも委 員をさせていただいております。この部会は初めてで慣れませんが、よろしくお願いし たいと思います。 ○清家部会長   事務局である職業安定局の職員にも異動がありましたので紹介させていただきます。 今年の9月1日付で、高橋前職業安定局次長が職業安定局長に就任され、その後任とし て鳥生職業安定局次長が就任されましたので、一言ご挨拶をいただきます。 ○鳥生職業安定局次長   職業安定局の高齢・障害者雇用対策部長から、9月1日付で職業安定局次長を拝命い たしました鳥生でございます。いま景気が回復する中で、雇用情勢も全体としては改善 してきている状況でございますが、地域差がまだ見られる、若年者の失業率はまだ高水 準にある、正社員の有効求人倍率は全体に比べてまだ低水準にあるといった問題がござ いまして、こうした課題に的確に対応することが重要だと思っております。また、労働 力の需給調整機能が有効かつ効果的に機能するということも重要な課題であると認識し ております。  こうした中で、労働力需給制度につきましては昨年来、当部会において改正法の施行 状況をフォローアップしていただいていると承知しておりますが、委員の皆様にはご多 忙の折引き続きご負担をおかけすることになるかと思いますが、部会におけるご審議に 格別のご協力をお願い申し上げまして挨拶とさせていただきます。どうか、これからも よろしくお願いいたします。 ○清家部会長   どうもありがとうございました。それでは審議に入ります。最初の議題は「労働力需 給制度について(フォローアップ)」です。本日は派遣対象業務、派遣期間及び派遣労働 者への雇入申込義務について議論を行いたいと思います。最初に事務局から資料の説明 をお願いいたします。 ○篠崎補佐   本日は資料No.1「労働者派遣事業関係資料」ということで、派遣対象業務について、 派遣期間について、雇入申込義務について用意してあります。それから、資料No.2とし て「派遣労働という働き方について」を用意しました。これは前回8月の部会において 使った資料に数字のミスがありましたので、それを反映させたものです。また、派遣と 正社員との比較をという指摘もありましたので、それを資料に追加しております。資料 No.2は参考ですが、先に資料No.2の追加した部分について説明いたします。  資料No.2の9頁は、「(参考)雇用・就業形態の類型別概要」です。これは正社員、パ ートタイム、有期労働契約、派遣労働、請負、非雇用ということで契約形態、人数、年 齢・性別、産業・職業にどのような特徴があるかを示したものですが、主に正社員と派 遣労働との比較で説明いたします。  正社員は、直接雇用、フルタイム勤務、期間の定めのない労働契約が通常です。それ に対して、派遣労働者は派遣会社が雇用しており、期間の定めがない場合とある場合が あります。派遣労働者は派遣元が雇用しておりますが、実際の指揮命令は派遣先企業が 行うという契約形態です。  人数ですが、正社員は3,374万人、一方、派遣労働は労働力調査ベースで106万人で す。  年齢・性別を見ますと、正社員は男性が2,357万人に対して、女性が1,018万人です。 派遣労働につきましては、先般もご紹介のとおり若年の女性(25〜34歳層)が29万人 と多いという特徴がありますが、最近では若年男性も増えている傾向があります。  産業や職業について、正社員は産業や職業を問わず存在しているわけですが、派遣労 働者の特徴として、以前は事務職が多かったが改正労働者派遣法施行後は製造業の技能 職も多い、ということがあります。  10頁は正社員と派遣労働、派遣労働については登録型と常用雇用型と更に2分して特 徴を示したものです。まず就業期間については、正社員は2〜5年未満が18%、5〜10 年未満が約21%、10〜20年未満が約29%、20年以上が約21%という分布になってい ます。一方、派遣労働(登録型)で見ますと、3〜6ヶ月が12%、6ヶ月〜1年未満が 約20%、1〜2年未満が約22%、2〜5年未満が約25%と比較的短くなっております。 しかし、派遣労働でも常用雇用型の場合は登録型よりも若干就業期間が長くなっており、 6ヶ月〜1年未満が約16%、1〜2年未満が約18%、2〜5年未満が約27%、5〜10 年未満が約14%となっております。  続いて週の平均所定労働日数です。これは正社員、派遣労働(常用雇用型)、派遣労働 (登録型)という順番で少なくなっておりますが、正社員の約5.3日に対して、派遣労 働(常用雇用型)は約5日、派遣労働(登録型)は約4.9日です。  週の所定平均労働時間は、正社員は約40.4時間に対して、派遣労働(常用雇用型)は 約36.5時間、派遣労働(登録型)は約35.7時間です。  残業時間について、これは平成15年9月最後の1週間の平均残業時間のデータです が、正社員の場合は週で約8.9時間、常用型の派遣労働者の場合は約7.8時間、登録型 の派遣労働の場合は約5.9時間。いずれも正社員、常用雇用型の派遣労働者、登録型の 派遣労働者という順になっています。  いちばん下の賃金は月給ベースですが、正社員は約30.2万円。これに対して登録型の 派遣労働は試算で約24.0万円、常用雇用型の派遣労働は約33.7万円です。これは勤続 期間、業種等を含めた平均ですので一概に比較はできませんが、以上説明したような状 況ですので参考として述べました。  資料No.1、労働者派遣事業関係資料について説明いたします。まず1頁、派遣対象業 務ですが、これは15年改正等の状況について、それに続いて派遣対象業務に係る論点 という形で資料を整理してあります。  まず15年改正等です。物の製造業務への労働者派遣を解禁しましたが、※にあるよ うに、物の製造業務への労働者派遣は、平成19年2月末まで、派遣期間は1年とされ ております。病院等における医業等の医療関連業務について、紹介予定派遣を可能にし ました。これが平成15年時点ですが、その後も社会福祉施設への医療関連業務への労 働者派遣について可能にし、平成18年4月より、医療関連業務について、産前産後休 業等の労働者の業務、またへき地の病院等における医師の業務について労働者派遣を可 能にしたという状況です。  続いて、派遣対象業務に関する論点を3つ提示してあります。1つ目は、物の製造業 務への労働者派遣の解禁の影響についてどう考えるか。2つ目は、偽装請負に対する監 督指導の強化についてどう考えるか。3つ目は、港湾運送業務等において労働者派遣が 禁止されていることについてどう考えるかです。2つ目の偽装請負に対する監督指導の 関係で、2頁に参考1、2ということで監督指導のこれまでの取組、また今般一部取組 の推進をした部分がありますので、それについて説明いたします。  まず参考1、労働者派遣法違反に対する監督指導の状況です。平成16年に物の製造 業務を解禁したのとほぼ同時期の平成16年4月から、従前は公共職業安定所「ハロー ワーク」で監督指導業務を行っていたものを、都道府県にある労働局に集中化させ、専 門的に対応する体制をつくりました。  下の2つのポツが監督指導件数のここ3年の推移です。まず請負事業所の監督指導に ついては、平成15年度に469件であったものが、平成16年度は577件、平成17年度 は879件です。そのうち違反の指導件数も、平成15年度は157件、平成16年度は391 件、平成17年度は616件と増加しております。下の発注事業所に対する監督件数も、 平成15年度は317件であったものが、平成17年度は660件と調査件数が増えていま す。これに伴い指導件数も、平成15年度に91件であったものが、平成17年度は358 件と増加しております。  次は参考2です。これまでも監督指導に取り組んできたところですが、偽装請負の防 止・解消の取組を推進するため、今月9月4日に、都道府県労働局長に対して、労働基 準局長と職業安定局長の連名により、取組を強化する通知を発出いたしました。以下ポ イントを4つ記載してあります。  1つ目は広報、集団指導の実施など周知啓発を強化することです。これまで首都圏や 近畿圏において周知活動や集団指導等に時期を定めて取り組んできたわけですが、これ を全国的に展開するということです。  2つ目は、職業安定行政と労働基準行政の間で情報共有を徹底するとともに、共同監 督を計画的に実施することです。これまでも労働基準行政と情報提供をするということ はあったわけですが、これを徹底し、それとともに、共同で監督をすることについても 計画的に実施していこうということです。  3つ目は、労働安全衛生法等違反を原因とする死亡災害等重篤な労働災害を発生させ た事業主等に対して厳格に対応することです。これまでももちろん、法令違反があった 場合は厳格に対応するということではあったのですが、例えば派遣先において重大な災 害があった場合、派遣元の事業主については、安全衛生法違反の責任は派遣先にありま すので直接にはないわけですが、結果としてその派遣元がそういう状況を放置したとい う場合についてもきちんと厳格に行政として対応していこうというものです。  4つ目は、その他職業安定行政及び労働基準行政のそれぞれにおいて偽装請負の防 止・解消を図るための監督指導を強化するという内容です。  1頁戻っていただきます。3つ目の論点との関係で、現在派遣の対象業務として禁止 されている業務が大きく4つあるわけですが、それについて、その趣旨を注として書い てあります。  まず港湾運送業務については、業務の波動性とその特殊性にかんがみ、労働者派遣法 等に基づく労働者派遣事業とは別に、港湾労働法において特別な労働力需給調整システ ムを導入しており、労働者派遣法の派遣事業の対象とすることは適当ではない。  建設業務については、受注生産、総合生産等その特殊性にかんがみ、建設労働者の雇 用の安定を図るため、労働者派遣事業とは別に、建設労働者の雇用の改善等に関する法 律において、建設労働者の実情を踏まえた特別な労働力需給調整制度として、建設業務 労働者就業機会確保事業制度が設けられており、労働者派遣法の派遣事業の対象とする ことは適当ではない。  3つ目の警備業務については、請負形態により業務を処理することが警備業法上求め られており、労働者派遣を認めた場合、その業務の適正実施に問題が生じるとされてい ることから、労働者派遣法の労働者派遣事業の対象とすることは適当ではない。  4つ目は医療関連業務の一部についてです。病院等が派遣労働者を受け入れると、病 院がチーム医療の構成員を特定できず、また、チーム医療の構成員に派遣元事業主の都 合によって差し替えられる者が含まれることとなり、チーム医療の構成員によるお互い の能力把握や意思疎通が十分になされず、チーム医療に支障が生じ、また患者に提供さ れる医療に支障が生じかねないおそれがあることから、一律に労働者派遣法の労働者派 遣事業の対象とすることは適当ではない。以上のような趣旨から、現在は適用除外業務 にしているという趣旨です。  資料No.1の3頁は派遣期間についてです。まず15年改正について2点記載しており ます。派遣受入期間制限のある業務について、これまで派遣受入期間の制限が1年であ ったものを、派遣先の労働者の過半数で組織する労働組合等からの意見聴取をした上で、 最長3年までとすることを可能にしました。  2つ目ですが、派遣元事業主は、派遣受入期間の制限の抵触日の1ヶ月前から前日ま での間に、派遣先及び派遣労働者に対して、当該抵触日以降に派遣を行わない旨を通知 する義務を創設。  派遣期間に関する論点を3つ提示しております。1つ目は、派遣受入期間の制限が遵 守されていない状況についてどう考えるか。制度の周知や監督指導の強化が必要ではな いか。2つ目は、派遣受入期間の制限の撤廃または延長についてどう考えるか。3つ目 は、労働者派遣について臨時的・一時的なものと位置付け、雇用慣行との調和を図る観 点から、派遣先の派遣受入期間の制限を設けている趣旨についてどう考えるか、以上3 つを論点として記載いたしました。  4頁は雇入申込義務についてです。15年改正で、派遣受入期間の制限のある業務につ いて、派遣受入期間の制限の抵触日以降も派遣労働者を使用しようとする場合、派遣先 が抵触日の前日までに派遣労働者に対して雇用契約の申込みをする義務の創設。これは 分かりづらいので、次頁に絵を用意しました。  いま説明したのが「(参考)雇用契約の申込義務」と書いてあるものの上の欄です。そ もそも派遣契約締結の際に、派遣先は自らの派遣受入期間の制限の抵触日を派遣元に通 知する、ということがいちばん左側に示されています。それについて派遣元事業主は、 就業の開始時に労働者にもそのことを明示する。また、派遣受入期間の抵触日の1ヶ月 前から前日までの間に派遣元が、派遣先と派遣労働者、それぞれに派遣の停止を通知し ます。それでも派遣先が引き続き使用したい、派遣労働者も引き続き働きたいという場 合には、派遣先が派遣労働者に雇用契約の申込みをするという仕組みです。  1頁戻ってください。15年改正の2つ目のポイントとして、派遣受入期間の制限のな い業務について、同一の業務に同一の派遣労働者を3年を超えて受け入れており、その 業務に新たに労働者を雇い入れようとするときに、派遣先がその派遣労働者に対して雇 用契約の申込みをする義務の創設。次頁の絵の下段に「派遣受入期間制限がない場合」 とありますが、いま述べたことがこのような仕組みになっております。これは、同一の 派遣労働者が3年を超えて同一業務に就業している場合で、同一の業務に新たに労働者 を雇い入れたいという場合に、派遣先が派遣労働者に申込みをするというスキームです。 以上が15年改正の改正点2点です。  雇入申込義務に関する論点を5つ記載しています。1つ目は、雇入申込義務の制度趣 旨についてどう考えるか、制度の周知が必要ではないかということです。この制度の趣 旨は下段に注を設けており、1つ目の派遣受入期間の制限がある業務、法第40条の4 の関係についての制度趣旨としては、派遣先による派遣受入期間の制限の違反を未然に 防止するというものです。一方、派遣受入期間の制限がない業務、いわゆる26業務の 部分は、法第40条の5で、同一の業務に3年間継続して就業している派遣労働者であ れば、当該派遣先において必要な業務遂行能力を有していると考えられること、また、 派遣労働者の希望を踏まえて派遣先での直接雇用の機会を与えること、という制度趣旨 になっておりますが、論点は、このような制度趣旨についてどう考えるかということで す。  2つ目は、26業務において雇入申込義務の発生を回避するため、3年を経過する前に 労働者を交代することについてどう考えるか。3つ目は、26業務において、3年経過以 降に同一の業務に労働者を雇い入れようとするときに、派遣元で常用雇用されている労 働者に対しても一律に雇入申込義務が発生することについてどう考えるか。4つ目とし て、26業務において、同一の派遣先に同一の労働者が長年にわたり派遣されることにつ いてどう考えるか。最後5つ目は、一定期間を超えれば、派遣先での期間の定めのない 雇用とみなすことについてどう考えるか、論点として以上5点を示しました。資料の説 明は以上です。 ○清家部会長   どうもありがとうございました。早速議論に移りたいと思いますが、ただいまの資料 で、派遣対象業務について、派遣期間について、雇入申込義務についてと論点が3つあ りました。もちろん相互に関連しているところもありますが、一応この順番で、まず派 遣対象業務についてご意見、ご質問、ご議論をいただければと思いますが、いかがでし ょうか。 ○輪島委員   資料No.2の9頁について伺いたいのです。まず契約形態ですが、派遣と請負のところ は正確に書くということになれば、左側の正社員、パート、有期雇用のところは直接雇 用と書いてあります。そこがうまく議論として整理ができていないような気がするので、 派遣労働と請負労働のところも、派遣会社が直接雇用、請負会社が直接雇用、「直接」と きちんと書いたほうがいいのではないかと思います。  2点目は質問です。2つ目のカテゴリーの人数のところで、派遣労働は106万ですが、 常用雇用換算で何人になるかというようなことも書いておいたほうがいいのではないか と思います。 ○坂口課長   契約形態のところは、皆さんのファイリング資料を後日訂正いたします。また、人数 のところは前回及び先ほどの説明のとおりです。派遣労働のところは労働力調査ベース の数字で、いま輪島委員が言われた常用換算の80数万人というのは私どもの事業報告 の数字です。いつもお示ししている200数十万人という数字は、別途登録型で複数登録 でダブル、トリプルカウントされた数字です。そういう注意書きも付した上で、この部 分の記述については正確を期したいと思います。 ○清家部会長   派遣対象業務について、また、事務局から論点も3点出されております。これ以外の 論点でも構いませんが、何かございますか。 ○輪島委員   派遣対象業務のところで9月4日の通達についても説明がありましたが、1頁と2頁 の絡みについて伺います。まず2頁の参考1、派遣法違反の指導監督のところで、請負 事業主と発注事業主というと、派遣元と派遣先の指導監督はここでは抜いてあるのでし ょうか。  それから、参考2で共同監督という説明がありました。基準行政では「監督」なので しょうが、安定行政では少し権限の違いがあると思うのです。共同監督という意味合い について、もう少しご説明をいただければと思います。  1頁に戻って、禁止業務の中の医療関係業務については、従来から私どもの基本的な 考え方がありまして、それがこの趣旨であるとは思っていないのです。基本的に1、2、 3はそれぞれ港湾労働法や建設労働者の改善に関する法律と警備業法という法律ですが、 医療関係業務は政令除外なので、政令で除外していると、きちんと書いておいたほうが いいのではないかと思います。  次は派遣対象業務に関する論点のところです。これまでずっとフォローしてきた観点 で言うと(2)と(3)、「26業務」と「自由化業務」と言うのか、または資料No.2にあるよう に「常用型派遣」と「登録型派遣」と言うのか。そことの切り分けも、今後もう少し詳 細に議論していく必要があるのではないかと思います。 ○坂口課長   ご質問等について事務局からお答えをさせていただきます。まず1点目、2頁の監督 指導状況のところのデータについてですが、ここに出してあるのは、請負形態で行われ ている所に対して私どもで指導監督に入った件数、及び文書指導等を行った請負事業所 数と発注者の数ですので、通常の労働者派遣契約を結んでいる等においての指導監督件 数とはまた別の数字です。  参考2の2つ目の「共同監督」というワードについて、労働基準行政も、労働基準関 係法令、安衛法でも、製造現場あるいはサービス事業も含めて、事業所に行って監督指 導をするという用語としても使っております。私どもとしても、職業安定行政、特に労 働力需給行政の中では、労働者派遣あるいは職業紹介でも、事業所等に指導をする形態 については「監督指導」という言葉を使っております。言葉としては「指導監督」など と、この4文字熟語を使っていないときもありますが、概念的には同じです。それが言 葉の問題です。  共同監督についてですが、労働基準行政では、どういう法令違反かについては労働基 準関係法令についてのチェックをする。ですから、私ども職業安定行政需給調整担当の 人間としては、ここで言う労働者派遣法に違反しないか、職業紹介や労働者供給も含め て、職業安定法に違反しないかという観点でのチェック・監督指導をいたします。「共同」 という言葉の意味は、一度にあるいは、ややタイミングを同じくして、偽装請負の問題 は労働者派遣の違反という実際上の使用者責任が曖昧になるという点もあるので、一緒 に監督指導に事業所に赴くという趣旨ですから、見るところ、チェック点は同じです。  対象除外業務について、医療の関係はご指摘のとおり、法令ではなく政令で書いてあ るので正確を期したいと思います。 ○山崎委員   2の派遣期間についての部分ですが、派遣労働者を臨時的・一時的なものとする位置 付けの見直し、それから、派遣期間の制限は撤廃すべきであると考えております。派遣 労働者と受け入れる企業のニーズが合えば、特に期間の制限を加える必要はないと思い ます。労使双方が望む多様な働き方が考えられますので、実態を踏まえるべきであり、 いたずらに監督指導を強化するということに対しては反対させていただきたいと思って おります。  次頁の雇用の申込義務については廃止すべきと考えております。企業が直接雇用を申 し込んだにもかかわらず断られるケースもあり、派遣労働者として続けて働くことを希 望する派遣労働者が増えていますし、企業としても、業務の内容や派遣労働者の能力差 などがあるにもかかわらず全員に雇用を申し込まなければならないということは、とて も大きな負担になりますので、雇用の申込義務は撤廃していただきたいと思います。  最後の論点に挙げられている、一定期間を超えた場合は期間の定めのない雇用とみな すということについては、派遣労働者の働き方でなく、企業が派遣労働者の雇用を阻害 することにもなりますので絶対に反対ですが、少し考えていただきたいところです。 ○清家部会長   すでに派遣期間、それから雇入申込義務のところにも議論が及んでおりますが、そこ も含めて質問や意見をお出しいただきたいと思います。 ○市川委員   対象業務のところで、物の製造業務への解禁の影響についてどう考えるか。私どもは 製造業でして、労働組合としてだらしないと言われるかもしれませんが、恥ずかしなが ら、偽装請負等々が発生して監督も受けております。私どももそれを非常に問題視しま して、各単組、事業所にヒアリング調査をしているところなのです。  私どもは製造業で物をつくっている。しかも、中小で基盤技術を持っているところが 多い。人の指先1つで何ミクロン、というような職人がいます。物をつくる元となるも のを作るということで、日本の製造業をそこで支えているような中小の企業です。そう すると、その技能や技術を伝えていくことが必要になります。  一時期非常に不況が続いたときに、大きなリストラをやって人を減らしました。新人 も採らない、そして技能者が非常に高齢化してます。今は若干景気がよくなって、はた と思ったら、その技能を伝える相手がいない。わりと簡単な業務には請負などで人を入 れてきたのですが、それでは会社が成り立たないということで、ここに来て、派遣だと か請負だとかといって安いコストで人を使っていることの限界が特に物をつくっている 所では見えてきたのではないかと思うのです。人を育て、次につなげていく、企業を発 展させていく、そのために人を育てていく。そのためには、安定した雇用できちんと訓 練をするということがなければ難しいのだと、最近経営者の方と話していても、そうい う意見が聞かれるようになってまいりました。  今『エコノミスト』等の雑誌でも請負の問題が取り上げられていますが、働き方の問 題、また、日本の企業の本当の力を出していくこと、そして、人を大事にして安定した 社会にする。人を安く使い捨てて、職業能力も付かなくて「ワーキングプア」といわれ る人たちをつくっていくことが、この社会全体の安定にとってどうなのか。短期的な企 業のいろいろな収支という視点だけでなく、全体的に考えていかないと、何かお互いに 先細りしていくのではないか、そんな気がしてならないのです。  何と言っても、今まで日本は、労働者の訓練を企業が行い、人材を育てることは企業 が担ってきたわけです。それが今、企業がそんなことは苦しくてできませんと言うのだ ったら、それを育てるシステムを他につくらなくてはいけない。しかし今、必要なとこ ろに必要な期間だけ派遣という形で人を使うということを繰り返していくことでいいの かという危惧を非常に抱いております。感想めいたことで申し訳ありませんが。 ○成宮委員   いまごろ何を言っているのかと言われるかもしれませんが、請負契約や請負事業者を 何らか規制するというのは、どういう法体系になっているのでしたか。これまでずっと、 あまり意識せずに議論をしていたのですが。 ○坂口課長    請負契約そのものは、業務委託も含めて、民法に定められている契約の形態です。昨 今問題になっている製造業にかかわらず、建設業等いろいろな現場でも、業務委託も含 めると、業種にかかわらず、いろいろなところでそういう契約が結ばれています。です ので、下請の代金の関係とかというものはありますが、そういうもの以外に、請負とい うことのみをもって全体を規制しているようなものはないのです。  ただ、労働者を使うあるいは労働者を実際にどこかに派遣するということになります と、労働関係法令は横断的にありとあらゆる業種・職種に関わってきます。労働基準関 係法令も、請負業務については係るということですし、偽装請負と言われるものについ ては、本来雇用している方を直接使う、また独立した形で使うかどうかということでな いと、労働者派遣や労働者供給事業との関係で曖昧になります。その点については、労 働者派遣法との関わりで労働者派遣と請負の区分基準という大臣告示を定めているので すが、そういったものに基づいて派遣と請負の峻別をしているわけです。 ○成宮委員   派遣と紹介の事業は、職業安定関係の特別の法令で業の規制をしていますが、請負事 業者というのは、特段そういう業の規制はないわけですか。 ○坂口課長   原則禁止にしたり、登録とか、届出とか、許可制とかという類が労働者派遣や有料・ 無料の職業紹介にはあるわけですが、請負についてはそういう規制がないのです。 ○長谷川委員    今日の1頁の派遣対象業務についての論点で書かれているのは、物の製造業務への労 働者派遣の解禁の影響についてどう考えるかということだと思うのです。  また、資料No.2の9頁で、物の製造業の派遣を解禁して何が起きてきたかというと、 請負と派遣が、ある意味では製造業に混在して、いろいろな問題が生じているというこ とだと思うのです。私のところの構成組織は、今回の偽装請負、違法派遣等いろいろな ところで言われているものに名前を挙げられた企業が多かったので今私どもも調査して いるわけです。しかし、その議論の過程の中で、請負のところで括弧書きで書いてある ように、製造業のうち、鉄鋼や造船はそれぞれの技能で結構分かれていたのです。伝統 的に鉄鋼や造船は、ある技能のところが請負であったので、その請負会社がその技能を 高めるために訓練や研修を行っていたわけです。  問題は「最近」と書かれていますが、電機・自動車のところに請負が入ってきたわけ です。電機や自動車は、鉄鋼や造船のように請負会社が技術・技能を持っていて、それ をもっと高めていくとか、その技術・技能を伝承するとかいうのとは少し違うというよ うな指摘もされているのです。  私どももこれから調査するのですが、調査やヒアリングをしながら、この製造業への 派遣解禁以降何が起きているのかということは、もう少しきちんと見なければいけない と思っています。ある意味では請負という形をとりながら、労働者供給事業というよう な形になっているのではないかという感じを持っています。2003年の派遣法改正のとき に、請負とは、派遣とは、ということに対してちゃんとチェックしましょうということ で取り組んではいるのですが、残念ながらうまくいっていないので、ここは注意が必要 だと思います。  2003年に派遣法が改正されてそんなにしないうちに私どもの構成組織で聞いた話な のですが、請負会社に自分のところの社員を出向させているけれど、出向のさせ方が通 常の出向ではないと。何か請負会社をつくって、そこに出向させたが、要するに指揮命 令の関係だと思うのですが、実際は元の会社に、全然今までと変わらなくしていたと。 それで、何でそういうことをするのかと非常に不思議だったのですが、結局それは後で 言う雇入申込義務の関係が出てくるわけです。そうして見ると、本来の派遣とか、本来 の請負事業だとかと違うような形で、労務供給のところでそういうものが使われている のだと。  なぜそうなのかと言うと、コストダウンの必要から短期収益を人件費でダウンさせる、 そういう手段にこの間使われた結果なのではないかと思っています。それがたった3年 間の中でバァッと広がって、今言われている偽装請負や違法派遣が蔓延しているという 言い方をされているわけです。だから、物の製造業の解禁が、当初この部会で予定した ようなものにちゃんとなっているのかどうなのかについては議論が必要なのではないか と思います。  監督指導の強化についてどう考えるかと言うことですが、労働基準監督官は臨検して、 その間に指導をしたり、勧告を出したり、最後は送検もできます。でも派遣の場合はそ こまではできないわけで、偽装請負や違法派遣のようなものに対して監督指導と言うと、 何か基準監督官と同じような対応ができるかのように見えてしまうのです。したがって、 そのやり方、方法について強化と言うときに、何か考えなければいけないのではないで しょうか。  規制緩和は事後チェックが重要です。緩和して自由にするわけですから、自由にする と必ず何か事が起きてくる。だから事後チェックが必要なわけで、その事後チェックの 仕方が派遣ということに対して今の体制でいいのかどうか、見直す必要があるのではな いかと思います。労働安全衛生だと労災防止指導員がいて、労使で事業所を見ながら、 いろいろな活動をしているわけですが、派遣協力員は、労災防止指導員と比較した場合 に、そういう権限がないわけです。厚生労働省という行政機関だけのチェックでは、な かなかやり切れないのではないかと私は思うのです。派遣事業者はどんどん増加してい るわけですから、それに対応できないのではないかと見ています。そうすると、規制緩 和したものに対しては事後チェックをきっちりかける、そして、そのための体制をどう つくるかについて、もう少し検討が必要なのではないかと思います。  港湾や建設や警備について、規制改革会議から、これも対象業務にしろというような 話はよく出てくるのですが、本当にそれでいいのかという議論は、きっちりやっておく 必要があります。現行、港湾のところはここに書いてあるとおりです。建設についても 新しい制度が出来たわけですから、そういうものをきっちりと活用していくことで、安 易に港湾や建設や警備について、これらは歴史的な経過もあるわけですから、解禁すべ きではない、現行法でいくべきだと私は思います。  医療についても、終わってしまってから言っても仕様がないのですが、本当に派遣で やってよかったのかどうかというのは、私は非常に反省しています。医療の現場にいて、 入院したときに、いちばん感じるのではないでしょうか。患者になってみたときに、こ の人がここの直雇用の人なのか、それとも派遣で来ているのか、それは不安です。医療 の問題はもう少し慎重に議論してほしかったと私は思っています。 ○輪島委員   医療関係業務のところで今のようなご指摘があるというのは少し意外でした。直接雇 用なのか間接雇用なのかは全く関係なく、医療の資格を持った看護師や医師が医療業務 に就くわけです。患者の立場に立って、直接雇用なのか間接雇用なのかという違いによ って患者としての不安があると言いますが、そんなに違いがあるのか。むしろ、そこは ある意味で少し区別的な取扱いになるのかなと思っています。チーム医療という観点を ただ単に守って、チーム制でそのチームに入っていない人たち、つまり派遣スタッフで ある資格者をチームの一員として認めないというような考え方は何かおかしいのではな いか。しかも、例えばレントゲン技師のようなものも医療関係業務に含まれるわけです から、それについても配慮するという考え方をする。むしろ、チーム医療ということだ けを金科玉条にして派遣を受けないというのは基本的におかしいのではないかと思って います。  私どもとして、総論のところで言ってきて結果として資料No.2に取りまとめていただ いた派遣労働という働き方の基本を、もう一度きちんとご理解いただきたいと思ってい るのですが、1頁からずっとまとめたように、派遣という働き方は、常用雇用型も登録 型も基本的には定着しているのです。4頁に記述がありますが、特に登録型は1日7時 間、週5日労働で時間給という雇用形態でありますが、多くの派遣という働き方につい て、まず肯定的に見て評価をするべきです。その点から言うと、相対として派遣は安い コストであるということからの議論ではなくて、派遣という働き方をきちんと評価して いただく。私どもは全部、それだから全く問題がないと言っているわけではなくて、で あるからどこが問題なのかというような点で議論をしてほしいと思っています。  もう1つ、請負のところの指摘がありました。歴史的に言うと、造船だとか鉄鋼だと かというところ、最近では自動車や電機であるということは私どもも理解していますが、 最近の製造現場で言うと、商品もしくは製品のライフサイクルが非常に短くなっていて、 それに対応するために現場としてどのようにするのかという課題が非常に大きくなって いると思うのです。例えば携帯電話、自動車の技術もそうでしょうが、技術革新が非常 に激しい中で、長谷川委員がご指摘のような、鉄鋼の従来型の請負の、非常に高度な技 能・技術を蓄積している所もありますが、そこにキャッチアップするのがなかなか難し い業態も、最近では増えているのではないかと思います。もちろん、請負として自社の 技能・技術を持って製品をつくるということは基本だと思いますが、メーカー側からど のような技術と指導をするのかというような点について言うと、どうも、そこら辺のと ころの整理はうまくいっていないのではないか、それが現状になっているのではないか と思います。 ○長谷川委員   医療のことは、私の感じで言ったのではなくて、ヒアリングしたときに看護師のよう な人が、例えば医療機具の扱い方、病院内の用語の使い方にはいろいろ違いがあるのだ と言っていたのです。だから私も、そうだろうと思うのです。  もう1つは、派遣が全部常用派遣で、派遣会社が確実に能力開発して、研修していて スキルが必ずいつもちゃんと高まっていれば、それはうまくいくのだろうと思うのです。 麻酔なども完全にそうでしょう。病院で麻酔医師を持てなくて全部派遣というか、別の 所から来てやっているようです。麻酔の場合は特殊だと言われていますが、常用雇用で ちゃんと研修されていれば、民間労働力需給調整と言われるように、そこはうまく働く のだと思います。しかし、登録派遣だと、本当にその人たちがスキルアップできるのか。 例えば今、裁判官も10年後に再任するかどうかということがあります。判決文の理由 書が書けない人がいて任用されなかった人たちが10何人かいるでしょう。それと同じ ように、常に研修し、訓練して、能力がなければ意味がないのだと思うのです。だから、 派遣という制度を本来どう考えるかということを、いい機会だから、本当に議論したほ うがいいと思うのです。労働者にとっても、企業にとっても、どういうスタイルがいい のかというのは少し議論したほうがいいのではないでしょうか。そうすれば、派遣申込 義務の話や期間の話も一緒に結びついていくのではないかと思います。 ○輪島委員   違うことなのかもしれませんが。今は登録型とか対象業務とかという切り口で言って いますが、いま長谷川委員がご指摘のように、常用型と登録型とがあって、常用型は、 実態として常用雇用と変わらないわけです。資料No.1で言うと、申込義務についても40 条も4と5に違いが出てきて分かりにくいので、常用型はどういう整理にするのかとい うところも議論する。もし同意が得られるのであれば、常用型はすべての常用労働者と あまり変わらない実態に整理する、というようなことも含めて将来的に議論していただ きたいと思っているわけです。 ○北村委員   経済合理性を追及するということでいったら、あるいはそういった面からこの派遣と いうことを考えると思ったら、例えば先ほど山崎委員が言われていたような雇入申込義 務みたいなものは、経営者としてはかなり苦しいところがあるというのは、私もよくわ かるのです。  この派遣については、きちんとリジットな法としてのたたずまいと同時に、ある種時 代的、世代的なものも考える必要があると思います。いま大体派遣で働いている人、私 の場合は製造現場はあまりよく知らないので登録型のことが頭にあるわけですが、大体 バブルがはじけたころに、就職がうまくいかなかったという20代後半から30代ぐらい に差しかかっての人が中心で、派遣リピーターみたいな形で働いている。そういった人 たちが非常に不安に思っていることのひとつは、もちろんアンケート等では派遣で働き 続けたいという人もかなりの数いるわけですが、真剣にいわゆる正規雇用をされて、安 定した職業地位を得たいと思っている人もかなりいる。いろいろな所にトライしても結 局、派遣で働いていたということは新規雇用のとき評価されないということにあるわけ です。それは時代の波ではあるのだけれども、若い期間10年なり15年なり、派遣で働 いていたということが蓄積になっていない。その人たちを「雇用申入れなし」だけとい うことで片づけていいのかというのは、今の時代のことだと思うのです。  もちろん常に潤沢な就職口があってということであるならば、こうした申入義務とい うのは、もう少し軽く考えていいのかもしれませんが、時代的措置というのも、少し頭 に入れる必要があるのではないか。そうでないと、いま30代の人たち、かなり多くの 人たちが派遣でやってきたばかりに、次のステップが得られないということがあるわけ で、何か緊急措置的な意味合いも必要ではないかと考えています。 ○成宮委員   「派遣という働き方について」の資料の10頁で、新しく付け加えていただいた数字 に賃金があります。この正社員、登録型派遣、常用雇用型派遣の賃金の違いをどう理解 していいのか戸惑っているのです。例えば派遣のところの賃金というのは、派遣先が派 遣会社に払う料金ですか、それとも派遣労働者が受け取る賃金ですか。 ○篠崎補佐   派遣労働者が派遣元から受け取る賃金です。 ○成宮委員   そうすると、派遣先が派遣会社に支払っている料金は、もっと高いということですね。 ○長谷川委員   派遣料金プラス手数料30%プラス社会保険料です。 ○成宮委員   社会保険がありますからね。ただ、社会保険料はどちらもここには入っていないとい うことで、比較し得る数字なのでしょうね。 ○長谷川委員   おそらく派遣料金を見れば、大体そういうふうになると思います。 ○北村委員   すごく素朴な質問なのですが、よく派遣で働いている人たちから言われるのは、派遣 労働者に対して、派遣料金が明示されていないということがあって、それはいろいろな 業種だとか形態があるから、一律にオープンというのは無理だと思うのですが、一方で やはり透明性というのは求められていて、派遣の人たちがなかなかプロモーションが得 られないとか、スキルアップできないということを考えると、一体どの程度派遣料金と 賃金との差額が、例えば教育訓練に使われているかなどをアピールする意味でも、派遣 料金と賃金とのギャップを派遣労働者に説明するシステムがあっていいように思うので すが、それはいかがでしょうか。 ○清家部会長   いまの質問の部分もありますので、事務局お願いします。 ○坂口課長   おっしゃるとおりで、派遣労働者に対しての条件明示の意味では、賃金ということで 派遣料金そのものは派遣先と派遣元の間で決まる行為ということなので、制度的には明 示義務はないということと、あと、派遣法自体については、いま派遣契約というものが 事業規制から必要な範囲での規定項目という形になっているので、いまの考え方では派 遣契約上も派遣料金の明示そのものは義務づけていないということになります。ただ、 おっしゃるような観点については、従前からもご議論があったのは事実なので、また、 そこはご議論の対象かなとは思うのです。  いま北村委員が言われたように、個々の労働者の契約において、料金と賃金は制度的 なご議論がまた労使であろうかとは思います。全体としての事業報告としては、一般業 種について言うとなかなか難しい部分もあるので、比較が難しいのですが、例えば26 業務とか、26業務以外ということで、従前から示している事業報告の中では、平均の派 遣料金であったり、15年改正以降は平均的な賃金については、全体の事業報告ベースで はお示しできると、その意味での相場観というか、そういうものはお示しできるような 形になっているのが現状です。   ○輪島委員   先ほどの時代的な背景という点ですが、若年者の有効求人倍率とか、そういうものを 見ればもう1倍を超えていて、平たく言うと贅沢を言わなければ、正社員の働き口とい うのは、基本的には担保されているわけです。  市川委員にもお伺いしたいと思いますが、求人をしても、なかなか求人が埋まらない というような実態もあるわけです。派遣リピーターとなっているときに、どういうふう に働いているのかということが、マクロ的に派遣でしか働く職場がないという人たちが どれぐらいいて、むしろそこは働き口はあるけれども、そこを選ばざるを得なくなって いるのかどうなのかという点は、詰めて議論をする必要があるのではないか。そこのと ころで働く場がないから派遣しか働く場がないと本当になっているのかどうかという点 だと思うのです。  もう1つ、派遣として働いていたスキルみたいなものを、蓄積を評価しないのかどう かという点ですが、私どもの調査は基本的には人物本位で採用しますというアンケート 調査は出ているのです。そのところでどういうふうに見るのかというと、やはりただ単 に派遣で働いていたということではなくて、その所でリーダーシップがあるのかとか、 例えば職場の改善の意欲があるのかとかいうところを、採用する時には見ているわけな ので、漫然と働いていたということになると、それはなかなか難しいですが、企業側の マインドとしては、やはりトータルで見て人物本位で採用をしようと、その点でも今は かなり人手不足になっているわけですから、その点は今はそういうふうに変わりつつあ るのではないかなと思っています。 ○北村委員   確か旧JILでしたか、あそこの調査では、あれは比較的大手であったか、上場であ ったか記憶がはっきりしないのですけれども、一般論ですが採用に当たってはアルバイ ト等も含んで派遣は、いわゆる蓄積としては評価できないというのが、確か3分の2ぐ らい答えがあったように思うのです。今の新規卒業の方々というのは、確かに求人が多 くなっていますから、そういう意味では救われた年代だと思うのですが、すでに起きて しまったいま30代の人たちについて、どこかで救済と言ったら分野の違う話になるか もしれませんけれども、そういうパイプというのは必要ではないかという印象がありま す。 ○山崎委員   非常に飛んだ話なのですが、派遣のそういう社員ですが、雇入れのほうはどういう人 が来るかわからないわけです。技能を持っている人の、教育された技能のランクづけの ようなものがあると非常にわかりやすい。それから給料の面でもA、B、Cがあるとす れば、やはりそれなりに対応するのが我々のほうの気持なのです。Dの方だとどんなこ とで次の所に回ってもどうにもならないというような人もいるわけです。ですから企業 でもただ無駄に使いたくないので、いい技能を持っている人を雇い入れたいというのが 本音ですが、いかがでしょうか。 ○長谷川委員   山崎委員が言われたのはそうだと思うのです。この10年間、バブルが崩壊して、新 規採用を抑えてそれを派遣で補ってきたわけです。昔でも金融機関で言えば、銀行でも 窓口は全部直接雇用でしたが、今は窓口は全部派遣です。銀行などは自分の所でスキル アップしているみたいですが、ずっと派遣で10年間、本当は23歳で就職して33歳に なると、会社の中だともう仕事が出来ていて、何人かでやるときのチームのリーダーに なるぐらいになっているわけです。ところが派遣でずっと働いてきているから、その力 が付いてこないのだと思うのです。そういう意味では派遣労働者の、特に20代後半か ら30代の派遣者はすごく気の毒なわけです。それをどうするかということがまず1つ あるのだと思います。  それから、派遣事業者もよく見ると何でもやるという事業者がいるけれども、よくあ れで教育できるなと、いつも思って見ているのです。本来はもっと専門特化すべきだと 思うのです。派遣業者も、もっと特化してこなければいけないのだけれども、派遣会社 が大きくなって何でも屋になっている。  おそらく山崎委員の所でも派遣を使ってみて、本当はこういう能力のある人が欲しい と思って来てもらったのに、1週間ぐらい使ってそうではなかった、できたら交替して いただきたいというのは使用者のほうにもあると思うのです。これからと、この10年 間の人たちをどうするかというのは、もう少し考えないと、本当はこのぐらいの能力の 人を欲しいのに、来てみたら新規採用と同じぐらいだったといったら、それは経営者と しては考えてしまうと思うのです。この10年間の大量に生み出された派遣労働者の能 力アップと、どう評価して、どういう所で企業の直雇用に結び付けるかというのは、少 しちゃんとやらなければいけないのではないでしょうか。それは暫定措置か何かでやら ないと救いようがなくて、結局あの大量の人たちが30代、40代、50代になってきたと き、それを誰が支えるのかという話になってくると思うのです。まだ20代後半から30 代始めですから、まだ何か手はあるのだと思います。そうしながら、いま議論したよう に制度そのものをこれからどうしていくのかということと、本来の派遣の持っている制 度にすることが必要なのではないかなと思います。私も自分の所で欲しいなと思うとき に、このぐらいの能力の人がと思っていたのに、来たときに違う人だと愕然としてしま います。でも非常に優秀な人が来たときは、もっといてほしいなと思うし、経営者もそ うだとは思います。 ○市川委員   私も将来的なことというか、中長期でものを考えたときに、山崎委員が言われたよう な職務能力の社会化というのですかね、標準規格といいましょうか、そういうものをも っと作っていくということは非常に必要だと思います。いまでも技能検定のようなもの はありますが、それが必ずしもその人のお給料というのか、労働市場に出たときの価格 と直接結び付いているかというと、そうでもない。それは一朝一夕にはできないのかも しれませんが、いままで企業は自分の所、正社員で真っ白な新卒を採って自分の所の規 格に合わせた、それは間接部門であれ直接部門であれ、訓練をして育ててきた。だから 長期雇用で長期に勤続することがその労働者にとっても労働条件がよくなるし、雇用も 安定している。その中で技術も磨いたというのは、もう崩れるんだと、これからはそう ではないのだというときに、それをいろいろな意味で支える先ほどの評価、職業業務の クライテリアを作るだとか、訓練の仕組みを作るとかということがないまま、この不況 の中で派遣など流動化だけが進んでしまったのです。  だから今ここで少し立ち止まって、本当に政府なり自民党なり日本経団連がやってい る雇用の流動化、流動性が必要なのだ、柔軟化が必要なのだというならば、それを本当 に機能させる、あるいは一人ひとりの働く者にとっても幸せになるというか、そういう サポートをする仕組みというものも併せて考えていく。  それがなくて、ただ、何でもいつでも使い捨てみたいなことを言われてしまうと、そ の結果がいまおっしゃっている30代、40代の大量な方たちで、その方たちは有効求人 倍率があって申し込んでも採ってもらえないのです。たしか日本経団連さんの調査だと 思いますが、数週間前に出たのも、派遣だった方などはあまり採らないのだと答えた企 業が半数以上を超えていたようなことをニュースでやっていましたが、総合的に支えて いく仕組みを新たに考えることが必要かなと思います。 ○鎌田委員   私はずいぶん些末なことだけなのです。言葉ですが、まず今日追加していただいた「派 遣労働という働き方について」の9頁に「非雇用」というのがあります。これで雇用関 係なしと言い切っているのですが、個人請負の問題というのは、労働基準法の適用にお いて、労働者として雇用関係があると認められる場合もあって、下のほうに個人請負、 家内労働、SOHO、雇用関係なしとやられると。もう1つ大きな問題が実は隠れてい ます。偽装請負の問題とは別に、いまは非常に雇用を偽装したという問題もありますの で、やや正式のこういった文書としては具合がよくないのではないか。だから、私など は自営型就業だとか、あるいは自立型就業だとか、実態としてはそういうようなことで すが、言葉はもちろん考えていただければいいと思うのです。それが雇用関係があるか ないかというのは、まさにここで偽装請負で問題になっているような請負事業について、 労働法規が適用できるかどうかの問題なので、それはケースバイケースということにな ろうかと思います。ですから、SOHO、個人請負、家内労働、雇用関係なしとやられ ると、やはりちょっと誤解を招きやすいということだと思うのです。検討をしてみてく ださいということです。   次に、請負事業について事業規制のような法律はないかというご質問に「まだない」 という課長からのお答えで、私もそう思うのです。ただ私、法律などやっていてよく皆 さんが誤解されているので訂正をしなければいけないといつも思うのですが、民法など で請負、委任、雇用は当事者が決めることで、別に国がどうのこうのと言う性格のもの ではないのです。つまり請負にしますか委任にしますかということは当事者が決めれば いいことです。  ただ、わかりやすい例というと、個人請負と同じなのです。ただし一定の法律、客観 的に適用される法律、例えば税法だとか社会保険とか、労働法もそうですが、これに当 事者が請負という名前を付けようが委任という名前を付けようが、ある一定の法律は強 制的に適用されるわけです。それは税法などは典型だと思うのです。調査などに行きま すと、フリーのインストラクターの方を会社で請負という形で受け入れているのです。 そうしたら突然、税務署がやって来る。会社のほうは悪気はもちろんないのです。フリ ーで働いている方たちもそれがいいと思って働いているわけです。ところが会社の人た ちが何にいちばん困るかというと、税務署は自分たちの趣旨、意図、当事者の思いなど は、全く受け入れてくれない、本当に向こうの判断でやってくる。つまり労働法という のは、そういう意味では税法と同じで、罰則規定をもって適用範囲を客観的に決めてく るのです。たしか請負というのは民法でいう言葉なのですが、その法律がどう適用され るかと考えたときに、請負事業というのは必ずしも民法上の請負や委任を想定している わけではないのです。そこがちょっと難しいところです。ですから請負というのは両当 事者が請負とすれば、それでいいのかといったら、必ずしもそういう問題ではないとい うことなので、その辺の違いを少し考えてみたらどうかなとは思っています。偽装請負 とよく言われるのですが、偽装の意図があるから許されないというのではなくて、本人 たちは全く純粋な請負だと思っていても、要するに派遣法の適用があるというのは事実 です。  もう1つ、雇用申入義務の説明のいちばん最後の所で、特に40条の4は私自身もは っきりしないところなのです。1カ月を過ぎたあとに、引き続き使用したいというよう に雲みたいなものがかかっています。何かこうやられると、何となく雇用の優先募集の ようなニュアンスに受け取れるのです。40条の4というのはそういった趣旨ではないよ うな気がするのですが、どうでしたでしょうか。つまり40条の4というのは、まさに 前の方に書かれているように、受入期間制限の違反を防止するという趣旨で、こういう ような規定が出ているわけで、引き続き使用したいから。まあいいと言えばいいのかな。 確かにそういう面もあるのですが、その趣旨をご説明していただきたいのです。もう一 度確認したいのです。 ○清家部会長   いくつかご質問ありましたので、事務局からお答えください。 ○坂口課長   まず1点目の非雇用のところの書き方については、私ども精査が足りないということ かと思います。正確な記述ができればと思いますし、なかなか難しければこのままの形 で残すことをやめたいと思います。3点目の雇用契約の申込義務は、言われるとおり引 き続き使用したいという形は、確かに優先的な雇用機会の付与ということではない。い わゆる40条の5は労働者を同一の業務に従事させるために雇い入れようとするときに かかってくる規定ですが、40条の4のときはそういうシチュエーションという限定では ないということなので、そういう意味では優先的な雇用機会の付与ということではない ということです。 ○輪島委員    先ほどの私の発言の中でも申し上げましたが、数週間前に日本経団連の調査のご披露 がありましたが、私どもの意図するところと報道が違ったように思うのです。先ほど申 しましたように人物本位で採用するというところが43%あったと、私どもとしては評価 をしているということです。  いまの鎌田委員のおっしゃった40条の4と5の趣旨が違うということは、法的には そういうふうに理解をされているはずなのですが、一般の派遣元でさえ、または派遣ス タッフも、40条の4と5の違いがどういうふうな意味合いなのか、自分が期間制限のあ る業務なのか、制限がない業務なのかというのを問うという意味合いでも違いがあると いうことがよくわからないのが、まず実態だろうなと思います。  もう1つ、派遣先にとってこの雇用契約の申込義務について、どう対応しているのか といえば、まとめの中に書いてあるように、結果として3年の期間制限を迎えるときに、 派遣契約を終了してしまっているということになっていて、実態として派遣スタッフの 雇用の安定に全く寄与しない仕組みになってしまっている。ここが法律が予定した効果 とは全く違う結果になっているのだろうなと。しかも、この施行の2004年3月1日の 以前に、すでに3年超のところは基本的に全部2月中に期間制限がない人たちにも、結 局は派遣の終了になってしまったわけで、その点も非常に大きな影響があったのだろう なとも思っています。その雇用契約の申込義務自身が持つその影響というのは、改正を した点での趣旨というものから、実態としてはかなり大きく外れているのではないかな と思っています。 ○清家部会長   ほかにいかがでございますか、よろしいですか。ほかにご意見がございませんようで したら、本日の議論はここまでといたしまして、次回は「紹介予定派遣」「事前面接等の 労働者の特定を目的とする行為」についての議論を行いたいと思います。最後に事務局 から何かございますか。 ○篠崎補佐   次回の部会は9月25日(月)15時30分から18時ということで予定をしていますの で、よろしくお願いいたします。 ○清家部会長   以上をもちまして第89回の労働力需給制度部会を終了いたします。なお、本日の署 名委員は雇用主代表は成宮委員、労働者代表は市川委員にお願いいたします。今日はど うもありがとうございました。       照会先  厚生労働省職業安定局需給調整事業課調整係  〒100-8916東京都千代田区霞が関1−2−2  TEL03(5253)1111(内線5747) FAX03(3502)0516     - 15 -