06/09/13 中央社会保険医療協議会手術に係る施設基準等調査分科会平成18年9月13日 議事録 06/9/13 診療報酬調査専門組織         平成18年度第2回手術に係る施設基準等調査分科会              (1)日時   平成18年9月13日(水)13:00〜14:50 (2)場所   厚生労働省専用第18会議室 (3)出席者  福井次矢分科会長 大江和彦委員 栗山真理子委員 小柳仁委員 永井秀雄委員 中川正久委員 羽尻裕美委員 本田麻由美委員   松山裕委員 南和友委員 鈴木中医協委員 〈事務局〉 原医療課長 八神保険医療企画調査室長 福田企画官 上條歯科医療管理官 磯部薬剤管理官 阿部医療指導監査室長 神ノ田医療課課長補佐 中野医療課課長補佐 菊岡医政局総務課課長補佐 他 (4)議題   ○手術件数と手術成績に関する調査について        ○手術に係る情報の開示について (5)議事内容 ○その他 ○福井分科会長  定刻になりましたので、ただいまより第2回診療報酬調査専門組織・手術に係る施設基 準等調査分科会を開催いたします。  まず、委員の出欠状況について事務局よりお願いします。 ○事務局(中野医療課課長補佐)  委員の出欠状況について御報告いたします。本日は、辻委員、名川委員、長谷川委員及 び松下委員が御欠席と事前に連絡をいただいております。また、オブザーバーとして、中 医協の鈴木委員に御参加いただいております。 ○福井分科会長  次に、9月1日付で、厚生労働省において異動がありましたので、事務局より紹介をお 願いします。 ○事務局(中野医療課課長補佐)  紹介させていただきます。  阿部重一医療指導監査室長でございます。  八神敦雄保険医療企画調査室長でございます。  磯部総一郎薬剤管理官でございます。  神ノ田昌博医療課課長補佐でございます。  申しおくれましたが、私は医療課課長補佐を拝命いたしました中野滋文と申します。よ ろしくお願いいたします。 ○福井分科会長  続きまして、資料の確認を事務局よりお願いします。 ○事務局(中野医療課課長補佐)  本日お手元に配付いたしました資料ですが、まず議事次第、次に手−1として委員名簿 がございます。その次に南委員からの提出資料、大江委員からの提出資料がございます。 手−2として「医療機能情報の公表制度の創設」という1枚紙がございます。手−3とし て「今後の進め方(案)」がございます。資料は以上ですが、不備等がございましたら事 務局までお申し出ください。 ○福井分科会長  それでは、早速議事に入りたいと思います。議事の1「手術件数と手術成績に関する調 査」について、御議論をお願いしたいと思います。  前回、本年度に実施する手術件数と手術成績に関する調査について御議論をいただきま した。その際、長谷川委員から、次回までに先行研究として実施されている文献レビュー について御報告いただくこととなっておりましたが、本日は長谷川委員は都合により御欠 席となってしまいました。  なお、長谷川委員より手紙が届いているようですので、事務局から読み上げていただき たいと思います。 ○事務局(中野医療課課長補佐)  では、長谷川委員からいただきました手紙を読み上げさせていただきます。  委員各位  本日は別に先約があり、本会議に出席できず、まことに申しわけありあせん。前回の会 議でも申し上げましたように、先行研究の結果は研究の方向づけに重要で、私も厚生科学 の特別研究で先行研究の文献レビューを行いました。米国科学アカデミー医学院が2000年 の報告書のためにEBM用の手法を用いて、これまでの研究の質を評価しています。これ は先行研究の結果評価に極めて有効です。この方法を用いて日本の研究の評価を試みまし た。そこで、米国科学アカデミー医学院の評価とあわせて御報告すれば今後の議論にも役 立つと考え、今回の会議で御報告をと思っていましたが、私の時間の都合がつきませんで した。また別の機会をいただければ幸いと存じます。以上、御報告まで。  このような内容でございます。 ○福井分科会長  そういうことですので、長谷川委員の御報告は次回以降に持ち越しということにしたい と存じます。  続きまして、前回の議論を受け、南委員より御発言があるとの申し出を受けております。 お手元に配付してある資料について説明していただき、質疑応答を行いたいと思います。  それでは南委員、よろしくお願いします。 ○南委員  発表の機会をいただきまして光栄に思います。日本の医療をよくしなくてはいけないと いうのは皆さん一致したお考えだと思いますが、そのためには何に主眼を置かなくてはい けないかというと、患者さんを救うという臨床を前面に置いた医療の改革をしていかなく てはいけないというのがあります。  現在、医療費が非常にかさんできて、医療経済が破綻しそうになってる。その医療費を より有効に使うことによって現在の医療をよりよくしていき、さらに将来の医療を高度化 していくことが必要です。  そういうことで資料をまとめましたので、お話しさせていただきます。  まず1ページに「日本の医療改革の是非」と書きましたが、日本の医療を改革するのが いいのか、しないのかという是非論があります。  日本は世界でまれな長寿国、だれでも医療を受けることができる。日本の医療費はGD Pの7.9%である。近くに病院があるから、それが日本の国民にとっていいのだろうとい う意見のもとに医療改革など必要でないと言われる方がありますが、内容を見た場合、本 当にそれでいいのだろうか。  2ページの上段に「良い病院、医者選びの一般的な基準」を書きました。  病院を選ぶ時に、どのような病院が一般の人に好まれるかというと、病院というのは近 くにあるのがいい、緊急の場合に助かるから。その病院は有名な何々大学系だからいいん じゃないかとか、病院が新しい、きれいだから、大きいということで病院選びをすること もありましょう。  医者については、教授というのはいい臨床家に違いないと思い込んでる方がたくさんお られるんですが、そうとは限らない場合もあります。  あの先生は外国の某施設に留学していたというのもありますが、果たしてその方は留学 して臨床を覚えてきたのか、ただ研究だけして帰ってきたのかということにもなりますか ら、留学していたことが、すばらしい臨床家であることは言えないわけです。  雑誌、テレビによく紹介されているから、あの方はいい先生だということで医者を選ん でいることもあります。  2ページの下段に「日本の医療の問題点」を書きました。  医療経済の緊迫、医療従事者の不足、次世代医師の育成が不十分、質の高い専門病院が 少ない。これらのことから医療の集中化が必要になります。  産婦人科医、小児科医がいないというんですが、本当に医者の数が足りないのかという と、そうではないと思います。偏在しているだけで、いらないところにたくさん医者がい て、必要なところにいないという状況が起きてる。そういうものを是正していかなくては いけないと思います。  臨床ができる施設がほとんどないもんですから、臨床医がなかなか育たない。大学に残 って研究していればいい医者になれるんじゃないかと思ってる人がたくさんいるわけです が、それでは臨床医は育つはずがない。  3ページにありますが、日本胸部外科学会から毎年出ます症例数を見ていただくと明ら かです。心臓血管の症例数は伸びていて、少し頭打ちになって51,000例ぐらいの開心術が なされていますが、どれだけの病院が5万例強の患者さんにあたってるかというと、500 の施設では足りない。500から600という心臓血管外科の施設が日本に散在してる。こうい う状況は世界にはないわけです。台湾とか韓国を含めても、そういうことはあり得ない。 それはデータがはっきり示しています。  4ページの上段に「心臓外科施設基準」を示しました。  ドイツ、日本、米国を比較した場合、ドイツは人口8,700万人、手術数97,870ですが、 施設数は80しかない。日本は510施設、米国は890施設です。これは多すぎるということで 問題になっています。  その下ですが、1外科医が年間どれだけの手術をしているかというと、ドイツは平均す ると281例、1施設で1人が年間やっているのに対して日本は平均34件で、1週間に1回 も心臓の手術をしてないということです。こういうことで、いい医者が育つはずがないわ けです。  CoEというのは私がおりましたドイツの心臓センターですが、ここは極端に数が多く て年間に4,459例の開心術をやっていまして、その中で行う手術数例は年間に1人318例で す。  5ページも日本胸部外科学会が出している統計ですが、日本では年間1〜24例という施 設が79もあるということです。25〜49例が121施設ですから、50症例もやってない施設が 日本全国に130カ所もあるわけです。1つの心臓施設をつくるには人工心肺が必要ですし、 MEといわれる技師も必要ですし、特殊な看護師も必要ですし、医者も抱えなくてはなり ませんから、膨大な人件費がかかります。そういうことをしていて、いい医療ができるは ずがないわけです。  その下段に「胸部・心臓血管外科専門医の執刀症例数」を示しました。アメリカ、ドイ ツ、日本を比較していますが、アメリカで胸部外科の専門医をとる時には、合計398例の 手術をしてないと専門医になれない。ドイツの場合は500例です。卒後6年から8年の専 門医をとるわけですが、日本の場合は今まで20例でよかった。これでは問題だということ で、今後50例にするということですが、世界の10分の1しか手術をしなくても専門医とし て名前をあげることができるということです。  9ページの下段に「心臓病センター(ドイツvs.日本)」というグラフがあります。  下に施設数、上に1施設当たりの手術数が書かれていますが、日本は50例以下のところ が140施設もあるということで、非常に少ない手術数しかやっていない。  ドイツの場合は500例以下のところはない。ドイツ人は合理的な国民ですから、経済的 なこと考えて、このままでいいのかということを言いますから、そういう制度ができあが ってるわけです。  日本の国民皆保険制度はドイツに学んでできたものですが、年を重ねるにつれて制度を 改善しています。今でも問題はありますが、ドイツの制度はかなり進歩していると私は判 断します。  10ページの下段に「心臓外科手術における死亡率」というグラフを示しています。  米国にSTSというデータがありますが、これは1990年のデータです。ドイツの場合は 全国統計というのが毎年出ていますが、これは2000年のデータです。私のおりましたCo Eの2000年のデータを示しています。  CoEでは4,000例以上の数をやっておりますと、バイパスであろうが弁置換であろう が、バイパス・プラスの弁置換ということをしても、それほど死亡数が上がってこない。 ドイツの全国平均が黄色ですが、アメリカに近いような死亡率を示しています。  胸部外科学会の会長である東大の高本教授からいただいた資料が昨日届いたんですが、 それを見ますと、症例数の少ないところは死亡率が高いというように出ております。この 10月の胸部外科学会で発表されると思いますが、そのようなことで、手術症例数が患者の 早期死亡に大きくかかわっていると言えると思います。  13ページに「医療の集中化の必要性」とあります。なぜ集中しなくてはいけないのかと いうことですが、医療費が節減できる。専門病院の数を限定して、定額制が徹底化される ことによって保険医療が有効に使うことができるわけです。  教育病院、一般病院が充実してくるということになります。  医師の人事というのは、従来からの大学病院での医局人事から切り離さなくてはいけな い。医者は病院との契約で働くような制度をつくっていかないと、無給でアルバイトをし ながら働く人たちが偏在します。それが日本の医師不足につながっていると思いますし、 治療経験がない人たちが専門医という名のもとに患者を治療することになってしまってい る。  13ページの下段ですが、最後に提案をしたいと思います。  年間に最低100例は心臓の手術をするような施設じゃないと、医療費の節減にもならな いし、若い人を育てていくことができないという意味で100例、第2段階として150例にも っていければいいのではないかと思います。日本の国民性や地理的条件を考えますと、そ こまで急遽できるかどうかわかりませんが、心臓外科に限らず、すべての分野において早 急に医療の集中化をやっていかなくてはいけないのではないかと思います。以上です。 ○福井分科会長  ありがとうございました。  ただいまの説明につきまして、御質問、御意見がありましたらお願いいたします。 ○栗山委員  貴重な御発言をありがとうございました。私は一般の委員という立場で出させていただ いているので、2ページの上段に「良い病院、医者選び−一般的な基準」というのに興味 があります。一般の患者がこういうことを希望しているのではないかということですけど、 いろいろ情報がない段階でこういう意見も出ているということで、ここで話し合われ、い ろんな指標が出た結果は、これは変わると思いますので、まず前提としてその辺を御理解 いただきたいと思います。  もう一つは、胸部外科学会で分析の資料が出ているのであれば、日本での資料として伺 う機会をつくっていただければと思います。 ○南委員  日本胸部外科学会のデータですけど、私は日本に帰ってまだ1年なので、こういうもの が毎年出てなかったというのが不思議でしょうがないんです。まだ内密でということで高 本先生からいただいた資料ですが、まず学会で発表されて、そのうちに公開されると思い ます。 ○中川委員  私は一般外科ですので少し様子が違うと思いますが、これからは集中化が必要だという ことに関しては異論はありません。ただし、地域性ということを考えた時に、一気にそこ までいくと、地域医療が確保できなくなるという危険性を私は感じています。  私は島根の田舎から出てきました。東京都の3倍の面積の中に74万人が住んでいます。 その中に開心術の施設が3つあります。心臓血管外科としては島根県は1つでいいといわ れていますが、田舎の事情を考えた時に、数だけでやっていくと地域の切り捨てにつなが るのではないかという危惧を感じます。集中化、集約化が必要だとは感じますが、地域の 事情を勘案しながら段階的にやっていかないと地域格差が顕著に出てくるのではないかと いう思いがあります。  心臓血管の場合はほとんど手術でしょうけど、一般外科の場合、外科医がいるために病 院自体の救急の機能をバックアップできてるということがありまして、人口が少ないから、 症例数が少ないから外科医はいらないだろうということにはならないと思うんです。外科 がいなくなると内科系では救急がもてませんので、病院の機能そのものが落ちてしまって、 住民に対する医療サービスが低下してしまう。  道路事情もよくない田舎ですと、近隣の病院に行くのに1時間以上かかる。そういうこ とで、症例数あるいは集中化の方向からのみやりますと、田舎の地域医療そのものが確保 できなくなる。そのことを私はすごく心配してるんですが、そのあたりの考慮も必要かと 思います。 ○本田委員  2ページにあるように、患者や住民側としては病院は近所にあるのがいいとか、医師側 も地域医療の確保のためにという意見があるのもわかるのですが、その病院でどういう医 療がなされているのかとか、心臓血管外科の治療成績が見えてくるようになると、近くに あればいいだけじゃなくて、本当は違うんじゃないかという意識も住民側に芽生えてくる ので、単純には言えないのではないか。そういうことをちゃんと示すことで、病院の連携 とか、ちょっと離れていても、そこに早く行けるようなシステムをつくってくれと住民は 思うかもしれないので、そういう考え方もあるのだということを言いたいと思います。  もう一つは、日本の胸部外科学会の最新分析で症例数と成績が明らかに差があるような ものが出ているというお話でしたが、そういう分析が出ているのであれば、ここでも聞き たいと思います。ここでの調査研究にもそういうデータが使えるのかどうかのためにも一 度お聞きたい。これは要望です。 ○福井分科会長  高本先生に連絡をとらせていただいて、発表後はだれでも使えるわけですので、それに 加えて、この分科会に御協力いただけるかどうかも含めて事務局と相談したいと思います。 ○中川委員  私はこういう調査が不必要だとは言ってないんで、調査をしっかりした上で、正確な情 報を患者さんに提示することが必要だと思います。その上で患者さんに選んでいただくこ とが必要なので、南先生の調査が不必要ということでは決してありませんので、補足させ ていただきます。 ○永井委員  中川先生がおっしゃったように、地域の差というのを少しは考慮していただきたい。原 則は南先生のおっしゃるとおりでよろしいと思います。東京都には何十の施設があるんで しょうかね。まず、そこのあたりをやっていただきたい。東京都は狭いから、どこにでも 行ける。みんなが選べるんですよね。しかし地方で飛行機にまで乗って行けるかというわ けですね、心臓の悪い人が。それでも集約化するのか。  長谷川先生から厚いIOMの資料をいただきました。通読することはできませんでした が、サマリーを読みますと、今までボリューム・アウトカムの問題というのは、ほぼ議論 され尽くされているように思うんですね。したがって、胸部外科の一つの資料で、だから すべてをという話はやめた方がいいと思うんですね。あの膨大なレポートをきちんと読む と、いろんな問題が提案されています。そこにも書いてありましたが、どうも結論は出な い。レファレンスではみんなボリューム・アウトカムはポジティブに出てるというところ はあるんだけど、その本質は何なんだろうとか、そのあたりをやらないと、ポンと出され て、すべて集約化だといって、本当にいいのかなというところがあります。 ○南委員  集約化が必要だということで、地域医療を無視しろということを言ってるわけでは全く ありません。永井先生がおっしるように、東京に50も心臓外科の施設があること自体が問 題になってるわけです。74万人の島根県なら1施設でいいんだけど、地方性を考えると3 施設必要だろう。そのようなフレキシブルな考え方をしていけば、地域医療も破壊せずに すむのではないか。東京、大阪を含めて都会の部分に非常にたくさんの施設がありすぎる ことが問題だということをつけ加えさせていただきます。 ○羽尻委員  ボリューム・アウトカムのことに関して中川先生とちょっと違う視点から危惧しており まして、果たして症例数だけでよいのかというのを麻酔科の立場から申し上げさせていた だきますと、現在、東京においても専門病院といわれているところで、手術数によって点 数が加算されるような場合、リスクの低い症例しか引き受けずに、症例数を稼いでいるよ うな病院も実際にはあることは否めません。そういうところが専門病院とされていてよい のかという問題もあって、永井先生のおっしゃるように、いろんな問題が含まれていると 思うんですね。症例数を重ねるためにリスクを回避して他の病院に回す。そのような症例 を引き受けた病院は、症例数は少なくなってしまいますが、1例1例を丁寧にやっている ということも御考慮いただければと思っております。 ○小柳委員  心臓外科というのは一つのアンテナみたいな手術でして、それが日本のシステムを反映 してるんだと思いますが、南先生にいい切り口で御提案いただきまして、イントロダクシ ョンとしてすばらしかったと思います。私は胸部外科の回し者ではなくて、長年籍を置い ておりまして、あと10日すると名誉会長になりますので、7割ぐらいは胸部外科の立場で お話しすることになるかもしれないんですが、御指摘のことは私どもも共通認識として持 っております。100例の施設基準を受け入れます時にもさまざまな議論がありましたが、 この国だったら100例で現実的かなと思いました。  もう一つは、いみじくも島根の先生がおっしゃった「地図を見てやるんだよね」という 一言を私はコメントした覚えがあるんですが、そうではなくて数字でいったというところ があります。  数とアウトカムが比例しているというお話ですが、女子医大の西田君が分析したのでは、 非常に数が少なくて成績のいいところもあります。島根の院長先生が指摘されたように、 限られた地域で頑張っている中枢の病院が地域医療を担って、いい成績を出してるんだと 思うんですね。制度設計の時に数と日本の複雑な地勢を考えてやると、落ちこぼれがほと んどないのではないかと思うんです。  胸部外科学会は施設基準のことにも全面的に協力されると思いますし、専門医制度の点 からも絞り込みをした方がいいのではないかということはかなり前から考えてることでし て、この国における適正な施設数ということも何度も議論しておりますので、こういう議 論を受け入れる態勢は十分ではないかと思っています。 ○大江委員  日本はドイツや米国に比べて1施設当たりの手術症例数が少ないとか、1人当たりの手 術経験数が少ないとか、差があるということはだれしも見て明らかでありますが、ドイツ や米国に比べて日本の成績が悪い原因は、施設当たりの症例数が少ないことによってるん だということがエビデンスとして示されているわけではない。これは現時点で確認してお かないと、何がエビデンスで、あるべき医療は何なのかということがごっちゃになっては いけないのかなと感じました。 ○南委員  それはもちろんわきまえております。特にドイツの場合は600例以下の施設はないとい うことで、日本とは非常に大きなギャップがありますから、比較にはならないということ があります。それで私は高本先生からいただいた胸部外科のデータを持ってきたわけです けど、これを見ますと、明らかにエビデンスが出ているわけです。こういう話し合いをす る時に、こういうものを参考資料として使わせていただくというのは非常にいいことだと 思います。 ○永井委員  あらかじめ配られた資料を読んでましたら、差が出るのは新しい分野であって、確立し た手術では差は出ない、少ないボリュームのところでもクオリティのいいところはいっぱ いあるし、ボリュームの多いところでも極めてプアなアウトカムのところもあると書いて あるわけです。そういうことで皆さん理解したらよろしいんじゃないでしょうか。その先 を考えるべきだと思います。  南先生の御提案の中で医療費のあり方というのは非常に大事なことで、手術料を技量に おいて請求するといっても、技量をどうやって判断するのか。部長は1.7倍というけど、 部長は本当に手術をやってるのかなという疑念もあります。  ペースメーカーは日本は外国に比べて3倍も高いとか、貴重なデータがあります。もっ ともっと人にお金をかけるべき医療の現場なのに、なぜ日本はこれだけ機械にお金をかけ なくてはいけないのか。いろんな政治的な絡みがあると聞いておりますので、これも議論 していかなくてはいけないと思います。 ○栗山委員  永井先生がおっしゃったのは、事前にいただいた資料に書いてあることですね。私のよ うな一般の委員にとりまして、その厚い英文を1週間で読んでこいというのは不可能です。 私の能力の限界をはるかに超えております。努力は試みましたが、むだに終わりました。 今後、一般の委員を本気でこのメンバーに入れていただけるのであれば、これをサポート していただくか、サマリーをいただくか、何かの方法をお考えいただきたいと思います。 ○永井委員  きょう長谷川先生が説明されると思っておりましたので、私はサッとしか読んできませ んでした。 ○栗山委員  私は事前に読んできてくださいというのをいただいて、努力はしましたけど、ちょっと の時間であきらめました。せっかく永井先生が出してくださったお話を私が理解できなか ったということをきっかけに、お願いをさせてくださいませ。 ○松山委員  一般に差が出る出ないというのを統計的にとらえますと、データとしてばらつきが小さ いところで見ていると、差が出にくくなるのは当然です。成績のいい優秀な子ばかり集め てると、どの子がいいかというのはなかなか判断できません。手術がうまい人も下手な人 もいるという集団の中ではデータとしてばらつきが出てきますので、統計的な差を検出し やすくなります。ラーニングカーブというのがあるでしょうけど、それが一定のところに 達した段階の手術に関しては、手術件数とアウトカムの関係を見たところで統計的に差が 出るかというと、出にくくなるのが通常と思われます。  そうではなくて、保険収載された直後の手術であるとすると、まだ手技が広まってない から、結果にばらつきが生じるわけです。そのようなデータにおいては差が出るというこ とです。前回お示しした結果でもそうですし、今回実施しようとしているのでもそうです が、そこが日本における問題と考えられます。その問題に加えて、そもそもイベント数・ 手術件数が少ないんですね。年間たかだか150未満のところで見ていて、その中で10件上 がったところで、どのくらい成績がよくなるかというのを見ているわけです。アメリカや ドイツはものすごく件数が多いですから、その中で差を見られるというのは見つけやすく なるということだと思われます。そこが統計的な問題であるということを追加させていた だきました。 ○栗山委員  それは見つけやすくなるかどうかの問題で、あるかないかの問題ではないということで すか。 ○松山委員  あるかないかは真実は一つだと思うのですが、その真実を見つけるのに、ばらつきの大 きなデータの方が有利だということです。 ○南委員  今まで心臓外科では待機手術に関するデータはたくさんあったんです。ですから10例や ってようが100例やってようが200例やってようが変わらない。事故が起こる率が少ないで すから、差が出てこないわけです。バイパス手術で待機手術というのは心臓外科の分野の うちの20%もないんです。80%というのは緊急手術もあるし弁の手術もあるし大血管の解 離もあるし、いろんなものが重なってくる。それを含めて統計してみますと非常にばらつ きがありますので、死亡率が20%もあるわけです。そういう死亡率の高い疾患を病院とし て受け入れた場合、年間に30例もやってないところであれば、50%という死亡率になって くるんですね。統計をする時に、そのようなことも考慮しなくてはいけないのではないか と思います。 ○福井分科会長  いろいろ御議論いただきましたが、この分科会としては客観的に件数とアウトカムの関 連性をまず明確にしてゆこうということです。南先生のプレゼンテーションの内容に考慮 し、また地域性についても集約化が決まった上でどういうステップを踏むかということに なってくると思います。報告書を書く時にその辺のコメントを入れるかどうかも含めて、 後ほど議論させていただきたいと思います。  それでは、前回の議論の中で、大江委員から、「手術件数と手術成績に関する調査」に 関連のある調査研究として、本年度から実施する厚生科学研究費補助金の内容について御 報告を受けまして、各委員から御意見をいただきました。その御意見をもとに、大江委員 が研究の方向性を最終的にとりまとめられましたので、その御報告をお願いしたいと思い ます。本分科会としては、その研究班の活動を早々に開始していただき、適宜、本分科会 に御報告をいただきたいと考えておりますので、そのような前提で報告をお聞きいただけ ればと思います。  それでは大江委員お願いいたします。 ○大江委員  前回、さわりを報告させていただいた厚生科学研究「外科手術のアウトカム要因の解析 と評価方法に関する研究」の準備状況を報告いたします。分科会長が最終的にとおっしゃ いましたが、まだ調整中のところもありますので、それをお含みおきいただきたいと思い ます。  1.協力学会と調整対象予定とする手術ですが、現在までに13の手術について6つの学 会と調整が進んでおります。*印のついてる3学会については、今後の調整で対象とする 手術の変更があるかもしれませんが、対象手術がほぼフィックスしているところです。  日本胸部外科学会とは冠動脈バイパス術、肺悪性腫瘍手術、胸腔鏡下肺悪性腫瘍手術。  日本外科学会とは食道癌における食道全摘術、膵腫瘍における膵頭十二指腸切除術、直 腸癌における直腸切除術/切断術、結腸癌における腹腔鏡下結腸切除術、乳腺悪性腫瘍手 術。  日本産科婦人科学会とは子宮悪性腫瘍手術。  日本泌尿器学会とは前立腺悪性腫瘍手術。  日本整形外科学会とは人工股関節置換術、人工膝関節置換術。  日本脳神経外科学会とは未破裂脳動脈瘤手術。  以上13手術を対象として調整中であります。  2.対象とする医療機関は、それぞれの学会に登録されている医療機関、または、学会 が選定した医療機関ですが、当研究班で検討して、当該手術をしていると考えられる医療 機関全数を対象にする予定です。  ただし、一つの医療機関において複数の異なる診療科・講座で個別に実施している場合 には、別の医療機関として扱うことも考慮しています。  3.対象となる症例ですが、06年10月あるいは11月から約半年の期間に、当該医療機関 でその手術を受けた患者を調査対象として、症例票の作成は、この期間に退院した患者の 退院時とします。ただし、最終月については退院まで見られませんので打ち切りというこ とになって、打ち切り時点での調査票ということになります。  4.調査票の種類は大きく分けて次の3種類です。  1)医療機関票で、医療機関ごとに1回答いただきます。  2)術者一覧票で、医療機関ごとにとりまとめて1回答いただきます。  術者というのは、当該医療機関で調査対象期間中に対象手術の主たる術者または手術実 施責任者となり得る外科系の医師すべてについて作成していただくことを予定しています。  3)個々の患者についての症例票です。  2ページにいきまして、5.調査票の調査項目です。  1)医療機関票ですが、医療機関名がわかりますので、そこから個々に調べられるプロ フィールは回答対象にはしておりません。規模がわかる指標と当該医療機関における年間 の対象術式に関係した手術件数を報告していただきます。  例えば冠動脈バイパス術を調査する対象医療機関に対しては、冠動脈バイパス術件数と 右側にあります開心手術件数、この2つの件数をお聞きする予定にしています。  以下、個々の手術について左側の件数と右側の件数を回答いただく予定にしているとい うことを意味しています。  2)術者一覧票ですが、個人名は必要としませんので、当該医療機関で術者を識別でき るイニシャルなど識別記号と、主たる術者として当該手術を経験した数をカテゴリーに分 けて報告していただくことを考えています。  カテゴリーと分け方としては、手術によって件数の分け方が違いますが、冠動脈バイパ ス手術、消化器の手術ではaからdまでの4ランクから選んでいただくことを予定してい ます。個々の手術についてこの分け方が適切かどうか、調整をしているものもあります。  未破裂脳動脈瘤手術は全体の件数が少ないですから、aからeの5ランクに分けること を予定しています。  イメージとしては、各医療機関に当該手術をする可能性のある外科医が5名おられたと すると、5名についてそれぞれ1番、2番、3番、4番、5番という記号と、それぞれの 方の経験数、ランクを出していただくことになります。  3.症例票のイメージです。現在、9つの手術についてはできあがっていますが、時間 の関係もありますので、きょうは冠動脈バイパス術の症例票と膵頭十二指腸切除術の症例 票の2種類を提示しました。  冠動脈バイパス術の症例票ですと、最初に「術者情報」として主たる術者の医師記号が あります。これは先ほどの術者一覧票でつけた記号に対応するものを書いていただく。こ れによって当該手術が、どのくらいの経験カテゴリーを有した人が手術に入ったかという ことがわかるようになります。  教育指導の役割を担っている病院では、主たる術者以外に、手術チームに入っている指 導者のスキルも関係するかもしれませんので、手術チームの実施責任者の医師記号も書い ていただきます。  「術前情報」については手術ごとに違いますが、前回、南先生から緊急手術も入れるべ きであるという御意見をいただきましたので、学会とも調整した結果、緊急区分とした上 で緊急手術と待機手術を含めています。  3ページにいきまして、術前情報の続きですが、再手術の区分、患者の手術時の年齢、 性別、術前の合併症として糖尿病の有無、透析治療の有無、心不全の有無、術前最終検査 におけるLVEF、術前の補助循環使用の有無、術前評価における病変数、LMT病変。  「手術情報」については、何枝手術をしたかという実施手術、手術時間、術中出血量、 手術年月。  「術後情報」としては、退院時までのアウトカムですので、手術後に起こった主たる合 併症についての有無を聞いています。それから退院時の状態、非可逆的な状態が残ったか どうか。手術から退院までの日数。これらをアウトカム指標の変数として取り上げていま す。  2つ目は膵頭十二指腸切除術の症例票です。手術によって聞くべき項目は変わっていま すが、術者の情報、手術時の情報、術後の合併症、退院までの日数など、おおむね同じよ うなカテゴリーのことを聞く症例票を作成しています。  現在までに日本胸部外科学会、日本外科学会、日本脳神経外科学会とは症例票のドラフ トが完成しておりまして、細かいところを詰めている段階です。他の学会とは、同様の調 整をしていくことにしています。以上です。 ○福井分科会長  ありがとうございました。  ただいまの説明につきまして、御質問、御意見がありましたらお願いいたします。 ○栗山委員  前回の時に大江先生からこの前の段階のものが説明されたと思うんですが、それがこの 分科会の資料として使われるということでしょうか。先生の研究は、そのための研究とい うことだったんでしょうか。そうじゃないように聞いていたような気がするんですが、確 認です。 ○福井分科会長  もともとは別個の研究班なんですけど、この分科会の役割を遂行する上でフィットして いる研究テーマですので、その結果を使わせていただく。この分科会の委員の方々の意見 も取り入れられる範囲内で考えていただけないかというのが前回の話し合いだったように 思います。 ○栗山委員  もともとは別個であるということが強く私の印象に残ってたんですけど、大江先生の研 究はそのままこちらの研究に活用されると理解するべきですね。 ○福井分科会長  活用できる範囲内で使わせていただくということです。 ○栗山委員  2番目の対象とする医療機関というのは、学会に登録されている医療機関、または、学 会が選定した医療機関だけに限定するということでしょうか。 ○大江委員  どの学会もそうですが、数例以上の手術をしている医療機関は学会に入って登録されて いるようです。ほぼ全数が各学会で把握されてますので、登録されている医療機関に調査 票を送るのが一番効率的で、ほぼ全数がカバーできるということがわかりました。厳密に は全数ではありません。日本胸部外科学会の冠動脈バイパス術ですと、それを年間1例以 上しているところは、学会に登録していて調査対象となる機関プラス10ぐらいはあるかと 思いますので、5百数十の調査対象に対して10ほどが調査対象にならないかもしれません が、統計的には問題ないだろうということは松山先生に確認いただいています。 ○栗山委員  それが統計的に問題ないかどうかというのは私の判断のほかなので、それがこの分科会 のコンセンサスであるならばとは思いますけど、ほかのところで統計的なお話を聞いた時 に、1例でも例外が出ると正しい評価ができないということを伺ったものですから確認さ せていただきました。 ○南委員  大江委員から調査のデザインが出されたんですが、心臓血管外科に関して私として言っ ておきたいことがあります。バイパス手術というのは日本では症例数全体の3分の1しか ないもので、3分の2は弁疾患、大動脈の解離の問題、先天性疾患です。それを含めて、 心臓血管の施設と称するわけです。しかもバイパスの手術は他の手術と比べて予後が非常 によい症例なんです。死亡率が1%、2%という症例数だけに目をつけてると、弁の手術 をしたけど患者が死んでしまった、ふたをあけてみたら死亡率は20%だったということが 新聞紙上にざらに出てくるわけです。死亡率が高い症例数を統計していかないと片手落ち のものになってしまうと思います。 ○大江委員  前回も南委員から御指摘いただいたことで、私もそういう意見に賛成の部分もあります。 冠動脈バイパス手術以外の手術については個々の疾患ごとに術式が違うとか手技の区分が 違うとかバラエティがあるので、それを調査対象に全部含めた場合、同じ手術・手技で同 じ病変でとした時の症例数が少なくなることから解析が難しいかなと思ったことが一つあ ります。  もう一つは現実的な調査のマンパワー、期間、経費の問題から、複数の手術を対象に最 初から調査をするというのは非現実的でしたので、今回は、これまでの議論のもとでもあ った冠動脈バイパス手術からきちっとやっていこう。この分科会で必要と考えるのであれ ば、来年以降、あるいは別途、計画をしていただくのがよいかなということで、我々の研 究班としては、そういう事情から今回は冠動脈バイパス手術だけを取り上げております。 ○南委員  事情はわかりましたので、提案させていただきます。胸部外科学会が非常に綿密なデー タをそろえてるんですね。今回、高本先生からデータをいただきましたが、信憑性のおけ るデータが出ているわけです。96%という回収率で施設からの詳しいデータが出てますの で、そういうデータを加味すれば手間が省けると思うんです。6カ月の間に少数の冠動脈 外科のバイパス手術だけを見るということは片手落ちになる危険性があるのではないかと 思います。 ○大江委員  そのデータと同じデータを私が見せていただいたかどうかはわかりませんが、96%とい う高い回収率で詳細に研究されてるデータは私も見せていただきました。一つ違うのは、 個々の症例ごとの個票は来てないんですね。カテゴリーに分けた症例数の調査はされてい るように思いましたので、リスク調整も含めた解析というのは今回の調査でないとできな いのかなと思っています。 ○南委員  私が昨日いただいたデータの中には冠動脈、弁疾患、大動脈もすべて含めて分析したも のがあります。 ○大江委員  個票ではないかと思いますが、確認して御報告したいと思います。 ○松山委員  リスクという言葉の食い違いがあると思うんですね。疾患の種類が違うということと、 大江委員がおっしゃってるのはバックグラウンドのデータですね。重症度等のデータを補 正した上で検討してるかどうかということなんですね。南委員のお示しになられたデータ は前向きに調査をされてると思いますが、そこまでの補正はされてないという記憶があり ます。私は大江委員がやられてる厚生科学研究費の班員の1人ですが、今回やろうとして るのは個人の患者の重症度の違いを考慮して出したいというのが一番大きいところだと思 っています。 ○羽尻委員  個人のバックグラウンドのリスクについては、これを拝見しますと、冠動脈バイパスの 場合は糖尿病とか透析とか心不全などがあげられていますし、後半のPDの場合には糖尿 病だけであったりしています。もともと麻酔科はフィジカルステータスを診断した上で麻 酔法を決めていくわけですが、平成18年の診療報酬改定から閉鎖式循環麻酔を行う際の フィジカルステータスの評価として、いくつかのチェック項目が明示されています。従っ て全身麻酔を選択する場合には、必ずこれらの項目が評価されているはずですので、すべ ての項目を使う使わないは別として、それらをお聞きになれば、どういうバックグラウン ドのリスクがあるかということが全部の術式に共通した形で出てくると思います。 ○大江委員  調べまして参考にさせていただきます。 ○永井委員  私もさまざまな合併症を持った人の手術をせざるを得ないんですね。外科医の立場から すると、余りにもこれは簡略化しすぎて、こんなものでリスクが調べられるんだろうかと 思いました。  一覧表の上3分の2は癌の手術になってますけど、乳腺悪性腫瘍は死亡なんてあり得な いんですね。ゼロのところで何を見たいのか。乳房温存手術がありますけど、ガバッとい っぱいとれば成績はいいに決まってるんですね。しかも死ぬような合併症はない。個々の 患者さんに合う手術をしていて、かつ、いい成績を出してるかというのが乳腺悪性腫瘍手 術のポイントになってくるわけで、こういう調べ方をしなくてはいけない。  直腸癌のリスクというのは何を見ているのか。がんセンターでは透析している患者さん は一切手術をしないんですね。私たちの大学のようなところに来る。心筋梗塞をこの間や ったばかりとか、直腸癌で腸閉塞になっていて、痴呆もあってなんていう人もいます。麻 酔科の先生のところにいいデータかあるのなら、ぜひ使っていただきたいと思います。  直近の死亡率よりは、癌の場合は遠隔成績を調べないことには、いい手術、悪い手術と いうことは言えないように思うんですね。したがってアウトカムの評価も違う観点から調 べるべきだろうと思います。南先生がおっしゃったように死亡率の高いものをまず選ぶ。 ボリューム・アウトカムのスタディをきちんとするのなら、南先生が提示されてるように 一つの領域だけに絞って、ある程度網羅的に調べられた方がいと思います。このように広 く浅く調べても、余り意味のあるデータにはならないように思います。 ○栗山委員  術式が違うために個々の術式で云々というお話があったんですけど、この場はともかく として、最終的に患者が病院なり、いろんな情報を得るための基本になるものであれば、 術式による違いというのは開示してほしい情報です。リスク調整の要因になるとかならな いというのはよく理解できてないんですが、欲しい情報です。 ○福井分科会長  重症度による調整は一番重要なことですので、大江委員からも説明がありましたように、 それぞれの病気、手術について今のところわかっている主な重症度の指標は入っているよ うには思います。個別に指摘していただかないと議論が進みませんが、これから全部の症 例票ができるのを待って、この分科会で一つ一つ議論をするには時間が足りません。  大江先生の研究班はこの分科会のためにあるのではありませんので、この分科会の意見 をできるだけ取り入れていただくという形で、大江先生の研究班はそれはそれで動かして いただくということしか分科会としては権限がありません。今伺った御意見を可能な限り 取り入れていただければ、その結果を使わせていただいて報告書をつくるというふうにも っていきたいと思います。  理想的なことを言えば細かいところは多々あると思いますが、今回のところは大江先生 の研究班がこの方向で10月からデータの収集にとりかかることと理解しておりますので、 それでやっていただければと思います。それ以外に、この分科会として高本先生のデータ も皆さんでディスカッションする機会がとれればと思っています。 ○本田委員  この分科会の報告書として上部機関にあげる場合、大江先生の研究班は独立したものだ という理解であれば、高本先生らの研究もあるでしょうし、癌に関してはいろんな研究班 もありますので、そういうものも合わせてという理解でいいんですよね。 ○福井分科会長  そうするのが妥当だと思います。大江先生の研究班だけに頼って報告書をつくるという ことではなくて、先ほどのIOMのレポートが出て6年になりますので、それ以降の文献 検索なども含めて、この分科会として現時点で客観的にボリュームとアウトカムの相関に ついてどう考えるかという総合的な結論を報告書として出せればと考えています。 ○南委員  大江委員から提出されたデザインですと、結果がわかってるんですよね。先ほど永井先 生からも御指示いただいたんですが、成績のいいものだけ調べたところで何の結果も出て こないと思うんです。世間で問題になっているような合併症の多いものを取り上げないと、 この分科会の信憑性にもかかってくると思うんです。ですからどっちかといったら弁疾患 を扱った方がいいのではないかと思います。日本では3分の1の患者さんに弁疾患という ものがありまして、先天性というとデータが集めにくいということがありますが、弁疾患 でしたら僧帽弁と大動脈弁の2つに限られます。先ほど大江先生が懸念するようなことを 言われましたけど、それほどデータにばらつきがあるものではありません。  大動脈弁であれば死亡率はどのくらいなのか、僧帽弁ではどれだけなのか、そういうこ とを調査すれば、死亡率は20%から3%まであるわけですから、それを見ればその施設の 良し悪しというのがはっきりしてくるわけです。そこでトレーニングを受けた人が本当に やってるのかどうか。バイパスの手術では1%、1.5%というところが勝負ですから、そ れでは何ら結果が出てこない。少ししかやってない施設ですと、大きな施設の先生がそこ へ行って手術をすることが現実にあります。その施設が本当にいい成績を出してるのか、 それとも1週間に1回とか1カ月に1回行ってやった先生の成績が出てるのかわからない わけです。  弁疾患ではそういう要素はなくなります。先ほど先生が言われたように弁疾患もリスク アジャストで調べればいいことです。心臓外科に関しては、世界で認められたユーロスコ アというリスクを示すスコアがありますから、そのスコアを見て、どれだけの死亡率だと いうことを示せば、これは信憑性のあるデータが出てくると思うんです。せっかくやるん ですから、そういうことをやっていただきたいと思います。 ○大江委員  CABGについて術者の経験数に関係ないという結果が出るなら、それはそれで私の研 究班としては一つの目的の結果が得られたというふうに考えるべきであろう。エビデンス がそういうことであれば、それぞれの手術について、この手術は差がないけど、この手術 は差があるということをきちんと出すのも研究の一つだと思っていますので、私の研究班 としてはそういうスタンスで進めたいと思っています。今日いただいた多くの御指摘には 検討させていただいて、この個票も含めて改良していきたいと思います。 ○福井分科会長  今の南委員の御意見について小柳委員はどう思われますでしょうか。 ○小柳委員  弁の手術と大血管の手術が一番大変なんです。パターン化されてませんし、日本では何 十年ものヒストリーをもった弁の患者とか、最近急増している大血管とか……。日本人の 大動脈は本当に悪くなりましたので、アメリカ人と同じぐらい悪いんですよ。その手術の リスクも大変高いと思います。  日本の心臓血管の体外循環も含めた手術の数は全体で5万例としますと、冠動脈バイパ ス手術が21,000ぐらいだと思いますから、一番メジャーな手術なんですね。その次が弁の 手術でして8千例から9千例、大血管の手術が8千例ぐらいだと思いますので、大江研究 班がアンテナ手術とか定点観測の手術としてバイパス手術を取り上げられたのは最初のと っかかりとしては妥当ではないかと思っています。たくさん御議論がありましたが、その 後に研究を進めていただければ大変ありがたいことだと思っています。  胸部外科は理事会をあげて理事長以下、この研究に協力すると言っていただいてますの で、学会が選定した機関という言葉は後で問題になると思いますが、530ぐらいの施設に 依頼が行くわけですので、大変な調査でして、リスクアジャステッドのデータが出てくる というのは極めて大きなことではないかと思っています。  STSのリスクアジャステッドのデータは回収率はせいぜい50〜60%なんですね。胸部 外科で高本先生のデータベース委員会が調査をしているリスクアジャステッドのデータは まだ10%か20%なんです。胸部外科にはデータが2つありまして、施設からボランタリー に報告されるものが96%、データベース委員会のデータは非常に精密ですが、まだ20%手 前ですよね。大江委員会のデータが出ていきますと、96%を土台にしたリスクアジャステ ッドのデータが出ていくことになると思いますので、それなりに意味はあるかなと思って います。  先ほど栗山委員は「学会が選定した」という言葉をおっしゃったんですか。 ○栗山委員  2番に書いてあるのを伺ったんです。 ○小柳委員  選定ではなくて、各施設がボランタリーに登録していますので、この言葉を変えたらい いかなと思ってるんです。選定ではなくて、学会に登録されたとか報告のあったというふ うにすると、もっと信憑性が増すのではないか。あるいは学会の恣意が入ってないという ことになるんじゃないかと思うんですが、どうでしょうか。 ○栗山委員  学会の恣意が入ってるという意味合いがないとは言わないんですが、それよりも、どの くらいのパーセンテージで結果が出るかというのが気になったというのが一つです。バイ アスの度合いがどのくらいなのか。最終的にこの結果は患者に公開されるより良い情報の ためであるとするなら、そのバイアスはあらゆるところで排除してほしいと思ったもので すから。 ○大江委員  栗山委員がおっしゃったことは重要なことでして、手術にかかわるすべての医療機関が 対象になるように、そうでない場合には全体のどのくらいなのかということがきちっと議 論できるように調査したいと思います。 ○永井委員  さっきから議論を聞いてますと手術だけに凝り固まってますけど、病気というのは手術 だけじゃないんですよね。特に癌の場合は。心臓バイパスにしても、そこに内科医、イン ターベンションする人たちはいるのかどうか。手術ばかりやってれば、かえってそれは悪 だということになるんですね。そのあたりの背景の調査はしないのか。  癌でいえば内科医も消化器内科の専門医もいなくてはいけませんし、なんでも手術すれ ばいいというもんじゃないんですね。癌が再発した時には腫瘍内科医がいるかとか、放射 線治療医がいるかとか、こういうことをやらないと……。医療の質を高めようというのが 本来の目的だと思うので、そこを外れて、ただ手術を調べればいいというのは非常に違和 感を感じますね。 ○栗山委員  全くそのとおりだと思います。ここは手術件数というので、私も手術ということに乗っ かってしまってる部分があって反省しているところです。永井委員のおっしゃったことは そのとおりだと思います。 ○小柳委員  この分科会が外科手術のアウトカムというタイトルなので、こういうことになってると 思うんでが、永井先生がおっしゃったことは大変大事でして、この研究の中に経皮的な冠 動脈形成術(PCI)が入ってないというのは、疾患を考える上では大きな欠落している 部分があるかなと思っています。バイパスが2万例、PCIが20万例、全く同じ疾患で同 じ病態で治療が2つ選択されてるわけですよね。20万例というのは私が想像で言ってるわ けでして、実際にはどのくらいやってるかわからない。どこにも統計がないんです。  ですから研究班のデザインとして冠状動脈疾患という大きなくくりでPCIの調査依頼 を将来に向けて始めていただくとよろしいのではないかと思います。実際に手術に入って るんですよね、インターベンションは。 ○南委員  小柳先生の言われたことは非常に大切なことで、特に日本ではPCIといわれる経皮的 な血管再建術というのが心臓の手術の10倍になってる。10対1の割合になってるというの は世界の非常識なわけです。アメリカでもヨーロッパ各国でもそうなんですけど、せいぜ い1対3なんですね。日本で2万ぐらいのバイパス手術がなされるとすれば、日本人は手 術をしたくないとか云々というのはあるでしょうけど、それが4倍とか5倍であればいい んですけど。  私の資料の3ページ下段を見ていただきますと、石川県でなされた疫学調査です。石川 県は人口117万で、PCIの施設が20カ所ありまして、CABGをやるところが5カ所、 PCIの年間件数が2,540、その中でDESといわれる最近出てきた薬の入ったステント を使ってる件数が1,476件です。バイパスが232ですから、10倍以上のPCIがなされてい るわけです。非常におもしろいデータだと思ってここに活用させていただいたんですが、 全国は1億2千万人ですから10倍なんですね。先ほど小柳先生は想定でしかないと言われ ましたけど、25万という数字が出てくるわけです。  DESだけで1つのステントが42万円する。薬がついた金物ですけど、42万円するもの が1年間で147,600本使われるということは、619億円というお金がステントだけで使われ てしまう。なんと野放しになってるかということです。すべての症例を手術にもってこい というわけではありませんが、余りにも偏りすぎてる。このような疫学調査をする時に、 小柳先生が指摘されたように、その施設でPCIをどれだけやってるかということも入れ ていただけると参考になるのではないかと思います。 ○大江委員  私もかねがねPCIの調査は必要だと、全く同じ認識をもっています。私の厚生科研の 申請時の枠組みでは到底できない規模ですけど、可能であれば並行して、あるいは他のと ころで計画を準備していただくようなことは私も賛成です。お願いしたいと思います。 ○福井分科会長  大江先生の研究班でも人手の問題、お金の問題、時間の問題がありまして、いただいた 御意見をすべて取り入れてやるのは無理だと思います。大江委員の研究班で扱わない事柄 を今後どうするかについては事務局と相談させていただいて、可能な限りデータが取れる ようにしたいと思っております。  大江先生の研究班の医療機関票では病院のナースの数とか、医療の質にかかわる指標も 集めるんでしょうか。 ○大江委員  調査票で聞かなければ手に入らないのが何かというのは整理できていませんが、別の調 査で取れてるデータはかなりありますので、それと組み合わせることは考えています。 ○福井分科会長  いろいろ御意見をいただきましたが、大江委員の研究班には研究を進めていただき、分 科会としては可能な範囲で利用させていただく。委員からの御意見もありましたが、研究 班が実施していない部分については引き続き検討することとしたいと思います。  なお、本日いただいた御意見で指摘されたデータについては、発言された委員と私と事 務局とで相談した上、できるだけデータを集める方向で検討していきたいと思っておりま す。  それでは、議事の2「手術に係る情報の開示」に移りたいと思います。前回、事務局よ り説明していただきましたが、患者がさまざまな情報に基づき適切に医療機関を選択でき るよう一層の情報開示を進める観点から、手術に係る情報開示の在り方について御議論い ただきたいと思います。本日は、厚生労働省における取り組みについて報告していただき、 これをもとに議論していきたいと思います。 ○事務局(菊岡医政局総務課課長補佐)  医政局総務課の菊岡でございます。厚生労働省の医療情報関係の公表の取り組みについ て説明させていただきます。手−2「医療機能情報の公表制度の創設」をごらんください。 前回の国会で医療法、薬事法で改正法が成立しまして、制度自体はできあがったものです が、これから少しずつ中身を加えていくという作業が行われているところです。  趣旨ですが、医療機関に対し、医療機関の医療機能に関する一定の情報について、都道 府県への報告を義務付け、都道府県が情報を集約してわかりやすく提供する仕組み創設す るというものです。  左側に「現行制度」とありますが、ここに今の情報提供の枠組みを示しています。現行 はポジティブリスト方式と呼ばれるもので、医療機関の行う広告、インターネット等によ る広報、いずれも医療機関側による任意の情報という形になっています。もう一つは利用 者に対する医療機関内の院内掲示がありますが、こういったものが今の情報提供の一つの 形になっています。  その下に「見直しの視点」とありますが、今回、医療法改正の中で議論した結果、必要 な情報は一律に提供するべきであろう。情報を集約化してわかりやすく提供する必要があ るだろう。相談・助言機能を充実させた方がいいのではないか。こうした議論のもとで改 正が進んでいます。  右の大きな四角にある「改正後の制度」は平成19年度からスタートする中身です。  医療機関から住民に対して情報が直接提供されることもありますが、上の段を見ていた だきますと、医療機関の管理者に対し、医療機能に関する「一定の情報」について、報告 を義務化する。これを都道府県が整理をして、集約した情報をインターネット等で提供す る。また、都道府県の医療安全支援センターによって相談、助言をできるようにするとい う内容になっています。  「一定の情報」というのはどういうものかというと、客観的な情報であるというのが一 つの考え方になっていると思います。  その下に「一定の情報の例」とありますが、具体的な範囲は、厚生労働省医政局内に常 設する検討会が近く立ち上がる予定で、その中で検討していって、来年4月に公表につな げていくことになります。  イメージとしては次のようなものです。  管理・運営・体制に関する事項として、診療日、診療時間、安全管理体制、医師等の略 歴等です。  情報提供や医療連携体制に関する事項として、クリティカルパスの実施、他の医療機関 との連携の状況、セカンドオピニオンの実施等です。  医療の内容、実績に関する事項として、診療・治療の内容、在宅医療の実施、専門外来 の設置、手術件数等です。  医療の実績情報(アウトカム情報)については、データの適切な開示方法等、客観的な 評価が可能になったものから積極的に提供するという考え方でおります。  来年度から実施されるわけですが、内容につきましては、常設の委員会で検討されます ので、その時の医療の状況、検討会の議論などによってどんどん新しくされていくことに なると思います。 ○福井分科会長  ありがとうございました。御質問、御意見はございますでしょうか。  来年の4月からスタートするわけですが、それまでにこの分科会としては、手術に関す る「一定の情報」に相当する開示すべき情報は何なのかについてディスカッションすると いうことでよろしいんでしょうか。最終的に決めるのは常設の検討会ですね。 ○事務局(菊岡医政局総務課課長補佐)  一定のかかわりをもって議論されていくものだと理解しております。 ○永井委員  これは大事なことなので、やってるところはきちんと出してますけど、多くは出してな いですね。一定の情報の中で診療機能の実績に関するのは手術件数しか書いてないんです よね。アウトカム指標については今後ということで、来年4月というのなら具体的にどん どんあげていって、常設検討会で議論してると思いますので、その情報もこっちにどんど ん流していただく。リアルタイムでやっていただきたいと思いますね。 ○南委員  私はドイツで30年間、医療をしてきたんですが、ドイツでは第三者機関を通して情報が 整理される制度になっております。病院からデータが出てきますと、学会とか医師会が中 心となった第三者機関がありまして、そこに集約されたデータがアノニムに集約されて開 示されるわけです。そのような第三者機関というものをつくらないと、自己申告だけでは きちっとしたデータは出ないと思うんです。データというのは、自分が手術なり治療をし て、アウトカムを出すというふうにして評価するのか。それとも第三者に評価していただ いて、この人はこういうリスクがあって、こういう手術をして、こういうアウトカムにな りましたという評価をするのとでは全く違う情報が出てくる可能性があるわけです。  日本においてもそのような方向で情報を開示していくよいにしないと、誤った情報が一 般市民に流れる可能性が強いと思います。マンパワーの問題もありますし、お金もかかる と思いますけど。 ○福井分科会長  第三者機関が病院の中に入ってデータを引き出すということですか。自己申告ではなく て。 ○南委員  胸部外科ですとハンブルクにそういう機関がありまして、そこから各病院に人員が派遣 されていて、データを集める。病院の従事者ではなくて、第三者機関から出向した者がデ ータを集めるという制度になってますから、データの回収率が100%に近いわけです。出 さないとペナルティを食うというところまでいってますから、信憑性のあるデータが開示 されると思います。 ○福井分科会長  来年度はここにあるようなシステムで動くということです。将来的にはドイツのシステ ムを参考にして改善されるかと思いますが、この分科会としては手術に関する情報として どのような項目をあげるかということをフリーに討論していただければと思います。24時 間以内の再手術の割合とか、1週間以内の予定外の再手術とか、手術に関してはクオリテ ィにかかわる指標が発表されていますが、いかがでしょうか。医政局内に常設する検討会 はまだ立ち上がってないようですから、ここで出た項目などが検討会にも伝えられるので はないかと思います。 ○永井委員  予期せぬ合併症発生率、創感染率、再入院率、死亡率がありますね。自分たちの成績が 余りよくないから公表したくないという施設はほとんどないと思います。みんな良心的だ と信じていますが、こういうデータを出すにはものすごい人手と時間がかかるんですね。 診療管理士の手当もないような施設で、どうやればいいのか。それなりの国からの支援が ないとうまくいかないだろうと危惧します。 ○中川委員  患者さんにわかりやすい形で情報をどう提供していくかということだと思うんですね。 客観的な情報をわかりやすくという時に、受ける側がどういう形だったらわかりやすいの かということを検討しないと、データだけ出しても受け取る患者さん側は解釈できないと 思うので、どういう情報をどういう形で出すのかということを含めて検討しないとまずい かなという感じがあります。 ○福井分科会長  突然ここで御意見をといっても難しいと思いますので、次回以降、必要でしたら資料を そろえた上で御検討いただければと思います。引き続き、この議題は検討していきたいと 思います。  本日予定していました議題は以上ですが、委員の先生方で何か他にございますでしょう か。 ○小柳委員  先ほどのPCIの話ですが、我が国で一つだけそれらしい研究があります。平成10年か ら12年にかけて科研費だったと思いますが、1年間のPCIをランダムサンプリングで10 %抽出して、約1万例について、3年間の研究期間で1年を準備期間、1年が本試験で、 あとは分析でしょうか。九州大学の竹下先生が班長でやられました。私も班員だったんで すが。毎年5,500万の研究費がついていまして、合計1億6,500万というお金がかかります。 次にPCIをやろうということになったとしても、覚悟のほどがいりますよね。 ○福井分科会長  相談させていただきます。 ○小柳委員  もう一つはリスクとか経済のことで詳細なデータベースをつくろうという動きが各学会 で自発的に起きています。とてもいいことだと思うんですが、こういうことに対してどの ように支援していただけるのか。国にも利用していただきたいと思ってやってる研究が多 いと思うんですね。これは何かシステムを考えていただいた方がいいかなと思っておりま す。 ○福井分科会長  それでは、本日の議論は以上としたいと思いますが、今後の予定について事務局から説 明をお願いいたします。 ○事務局(中野医療課課長補佐)  手−3という資料をごらんいただきたいと思います。活発な御議論をありがとうござい ました。  2回まで開催させていただきましたが、11月以降、検討状況に応じて適宜開催したいと 思います。南委員からいただいた日本胸部外科学会のデータ、小柳委員からいただいたP CIに関するデータとか、次回、長谷川委員から先行研究を発表していただくとか、準備 が整いましたら、日程調整をさせていただいて次回を開催させていただきたいと思ってお ります。  大江研究班の進捗状況次第で変わるかもしれませんが、年度末あたりに、大江研究班の 中間報告をいただいたり、11月以降の開催状況のとりまとめ的なもの、あるいは情報開示 の検討状況、そのような内容で開催させていただきたいと考えております。  なお、分科会における検討状況については、適宜、中医協の診療報酬基本問題小委員会 に報告する予定ですので、あらかじめ御了承いただきたいと思います。以上です。 ○栗山委員  羽尻委員の麻酔の方でとっておられるデータが抜けているように思いますが、それも出 していただければと思います。 ○福井分科会長  そのデータは別個にということではなくて、一つ一つの手術に関連したものですので、 この分科会で大江委員の研究とは別個にそれだけを集めるという種類のものではないと思 いますが。 ○栗山委員  集めるのではなくて、出てるということではなかったんですか。 ○羽尻委員  個人のバックグラウンドとしてそういうものの評価がなされているので、利用するかど うかにかかわらず全部吸い上げておいて、どれを利用するかという形にした方がいいので はないかという発言をさせていただいたんです。 ○永井委員  第2回の時は第1回の議事録が出てくるのかと思ったんですが、それはつくられないん ですか。前回も似たような議論をしたなと思うこともあるわけですから、確認のために議 事録をいただきたいと思います。 ○事務局(中野医療課課長補佐)  公表されますが、事務局として資料を用意しませんでしたので、次回以降は前回の議事 メモを提出したいと思います。 ○永井委員  1カ月半ありますから、それに間に合わせるようにお願いしたいと思います。 ○福井分科会長  議事録は委員の目を通した上でオープンにすることになると思いますので、よろしくお 願いいたします。  それでは、第2回診療報酬調査専門組織・手術に係る施設基準等調査分科会を終了させ ていただきます。本日はお忙しい中、ありがとうございました。                 【照会先】                  厚生労働省保険局医療課企画法令第2係                  代表 03−5253−1111(内線3276)