06/09/08 第1回医療安全管理者の質の向上に関する検討作業部会議事録        第1回医療安全管理者の質の向上に関する検討作業部会                     日時 平成18年9月8日(金)                        15:00〜                     場所 厚生労働省共用第8会議室 ○事務局  傍聴の皆様にお知らせいたします。傍聴にあたっては、すでにお配りしております注 意事項をお守りくださるようお願いいたします。 ○事務局  定刻になりましたので、ただいまから「医療安全管理者の質の向上に関する検討作業 部会」を開会させていただきます。委員の皆様方におかれましては、お忙しい中をご出 席いただきまして、誠にありがとうございます。  それでは議事に入ります前に、事務局から委員の皆様方をご紹介申し上げます。九州 大学大学院医学研究院助教授の鮎澤純子委員です。練馬総合病院長の飯田修平委員です。 国立保健医療科学院政策科学部安全科学室長の石川雅彦委員です。日本医師会常任理事 の木下勝之委員です。日本看護協会常任理事の楠本万里子委員です。石巻市立病院薬剤 部門長の佐藤秀昭委員です。京都大学医学部附属病院看護部長の嶋森好子委員です。聖 路加国際病院医療安全管理室専任リスクマネージャーの寺井美峰子委員です。国立病院 機構南九州病院長の福永秀敏委員です。なお、本日は東京電力株式会社技術開発研究所 ヒューマンファクターグループリーダーの河野龍太郎委員はご欠席との連絡をいただい ております。  続きまして事務局を紹介させていただきます。医政局長の松谷です。医政局審議官の 白石です。医薬食品局審議官の黒川です。医政局総務課長の二川です。医薬食品局安全 対策課長の伏見です。医薬食品局安全対策課安全使用推進室長の山田です。私は医政局 総務課医療安全推進室長の佐原です。どうぞよろしくお願いいたします。私の隣におり ますのは医療安全対策専門官の小林です。  それでは、本作業部会の開催にあたり、医政局長の松谷からご挨拶を申し上げます。 ○医政局長  医療安全管理者の質の向上に関する検討作業部会を開催するにあたりまして、一言ご 挨拶を申し上げたいと思います。委員の先生方には大変お忙しいところをお集まりいた だきまして、本当にありがとうございます。また、この作業部会の委員を快くお引き受 けいただきまして、御礼を申し上げる次第でございます。  医療の安全の確保ということは、我が国の医療政策の重要課題の1つでございまして、 厚生労働省におきましても、平成14年4月にまとめられました医療安全推進総合対策 を踏まえまして、医療機関における安全管理体制の整備について、医療法での義務付け が行われたところです。また、さらに昨年6月に医療安全対策検討会議におきまして、 取りまとめられました今後の医療安全についての報告書を踏まえまして、本年6月の医 療法の改正によりまして、すべての医療機関に医療安全管理体制の整備についての義務 付けが拡大されたところです。現在この改正法を来年4月の施行に向かって省令の改正 の検討を行っている最中でございます。  また、昨年の報告書におきまして、医療機関の管理者及び医療安全管理者の役割の明 確化、その研修内容に関するガイドラインを作成するということが、当面取り組むべき 課題とされたところでして、これについて今般検討会を開いたということです。また、 ご存じだと思いますが、今年平成18年度の診療報酬の改定におきましても、医療安全 対策に係る専門の教育を受けた看護師、薬剤師等を医療安全管理者として専従で配置し ている場合の医療安全管理対策加算が新設されたところです。  また、医療安全管理者養成の研修についても規定されているところです。この検討部 会においては先ほど定められました医療安全管理者の質の向上のための業務の指針、業 務内容に応じた研修プログラムの作成指針の策定を目的として開かれているわけです。  皆様方のご協力を賜りながら、安全・安心で質の高い医療安全管理対策の確保に向け て、引き続き取り組んでまいる所存ですので、その中心的な役割を担います医療安全管 理者が大変重要な役割を担うことですので、その点、この部会においてこの質の向上の ための業務指針、業務内容に応じた研修プログラムの作成指針について、具体的なご検 討をお願いできればと考えている次第ですので、それぞれのお立場からよろしくご検討 いただきたいと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。 ○事務局  それではこれから議事に入らせていただきます。作業部会の部会長は、現在国立病院 機構院長協議会「医療安全推進委員会」の委員長をされております福永委員にお願いを しております。福永委員、議事進行をよろしくお願いいたします。 ○福永部会長  いま局長のご挨拶にもありましたが、非常に重要なテーマを審議する部会と認識して おります。なにとぞよろしくご協力をお願いいたします。それでは早速議事に入らせて いただきます。まず、資料の確認を事務局からお願いいたします。 ○事務局  それでは資料の確認をさせていただきます。1枚目の議事次第に続きまして、2枚目 に座席表。資料1、「医療安全管理者の質の向上に関する検討作業部会の開催要綱」、別 紙として「医療安全管理者の質の向上に関する検討作業部会の委員名簿」。資料2、「医 療安全対策検討会議(平成18年度)の組織図」、次に各会議、各部会の設置要綱があり ます。資料3、「医療安全管理者の質の向上に関する作業検討部会開催日程(案)」。資料 4、「医療安全管理者の質の向上に関するこれまでの取り組み」。資料5、「専任の医療安 全管理者の配置状況」。資料6、「医療安全管理者の業務内容」。資料7、「各団体・研究 者の医療安全管理者の業務指針の概要」。資料8、「各主催者別の医療安全に関する主な 研修の概要」。資料の最後として「医療安全管理者の質の向上に関する検討作業部会の検 討事項(案)」があります。  次に別添資料として、今日研究としてご発表いただく嶋森先生の厚生労働科学研究「我 が国における医療安全管理者の教育の現状」を、委員の皆様にはパワーポイントの資料 をお配りしております。参考資料1として、「『今後の医療安全対策について』医療安全 対策検討会議報告書」、参考資料2として「医療機関における安全管理体制の確保に関す る省令」があります。お手元の資料で不足のものがありましたら、事務局へお申し出く ださい。 ○福永部会長  資料のほうはよろしいでしょうか。それでは早速議事に入ります。議事次第の1番目、 本作業部会について、開催日程等を含めて、事務局から説明をよろしくお願いいたしま す。 ○事務局  資料1から資料4まで説明いたします。資料1は、この作業部会の開催要綱です。開 催目的は安全管理者の業務指針及びその業務内容に応じた研修プログラムの作成指針を 策定することを目的として、医療安全対策検討会議というのがありますが、この下にあ るヒューマンエラー部会及び医薬品・医療機器等対策部会の下に、本作業部会を開催す るということです。2検討事項。本作業部会の検討事項は、医療安全管理者の業務指針 についてと、研修プログラムの作成指針についてお願いしたいと思っています。次頁に 本作業部会の委員名簿を付けています。  資料2は、安全対策検討会議の組織図です。いちばん上の親会議として、医療安全対 策検討会議があります。この下に2つの部会があり、その2つの部会の下にぶら下がる 形で、いちばん右の各種作業部会がありますが、本日のこの作業部会はこの1番目の3 という位置付けです。次頁は医療安全対策会議の設置要綱、3頁、4頁は2つの部会の 設置要綱です。  資料3は、この作業部会の開催日程について案を示しています。この作業部会は本日 が第1回目になります。厚生労働省としては、今年度と来年度の予算を確保して、この 検討会にあたっていきたいと思っておりますので、2カ年でご議論いただきたいと思っ ております。当面の予定としては5回程度で、来年度の早い時期までにおまとめいただ ければと考えております。全部で5回ですが、1回目の今日は総論的な事項をいろいろ とご議論いただき、2回目にまず安全管理者の業務指針を、安全管理者とはそもそもど ういうことをやる方なのかといったようなことについて、ご議論いただいた上で、第3 回では、ではそのための研修はどのようにしたらいいかといったような順序でご議論い ただいてはどうかと考えております。  資料4です。医療安全管理者の質の向上に関するこれまでの取り組みということです。 よくご存じの先生方ばかりだと思いますが、一応申し上げますと、まず平成14年に医 療安全対策検討会の会議報告書として「医療安全推進総合対策」がまとめられており、 ここで国として当面取り組むべき課題がまとめられています。これを受ける形で、14年 10月に、病院及び有床診療所における安全管理体制の確保ということで、以下の事項が 義務付けられています。  ここで具体的には指針の整備、委員会の開催、安全管理のための職員研修の実施等で すが、ここでは医療安全管理者のことは特に触れられていません。15年4月に特定機能 病院について、臨床研修病院についても以下の事項を義務付けたということで、特定機 能病院については医療安全管理者の設置を義務付けたという形になっています。  その後、平成17年6月に再度医療安全対策検討会議の報告書がまとめられ、そこで 当面取り組むべき課題として、管理者の役割を明確化するとともに、研修内容等に関す るガイドラインを作成すべきだという提言をいただいています。本日の作業部会はこの 提言をフォローアップする形で開催させていただいています。  この後、18年4月から施行にはなりますが、診療報酬のほうで医療安全対策加算とい うのが設けられており、この際の要件は医療安全対策に係る専門の教育を受けた看護師、 薬剤師等を安全管理者として専従として配置している等の施設基準が満たされている場 合に、50点が取れるということです。適切な研修は細部にわたって規定しているわけで はなくて、適切なもので通算して40時間以上又は5日間程度の研修ということです。  さらに6月になり、改正医療法が施行され、そこでは病院、診療所又は助産所の管理 者は、適切なあるいは安全に関する措置を講じなければならないということで、従前に 比べると助産所、無床診療所に対してさまざまな医療安全措置を講じなければならない という規定ができています。ただ、ここにおいても医療安全管理者を置かなければいけ ないなど、そのようなことについては触れられていません。まさに医療安全管理者をど のようにしていくかはこれからのご議論ではないかというところです。 ○福永部会長  それではいまの説明された資料に関して、何でも結構です、質問がありましたら委員 の方、どうぞよろしくお願いいたします。いかがでしょう鮎澤さんから、その点どうで しょうか。 ○鮎澤委員  いままでのところは特にありません。 ○福永部会長  おそらく2番目の議事とほとんど関係するかと思いますので、もしなかったら2番目 と一緒に議論しましょうか。では2番目の議事に移りたいと思います。医療安全管理者 の現状について、事務局から説明をお願いします。 ○事務局  資料5から8までを説明します。資料5です。専任の医療安全管理者の配置状況とし て、資料5−(1)です。資料の出典は(1)が平成16年度特定機能病院業務報告書です。(2) は平成18年8月現在の臨床研修病院のプログラム検索サイトです。(3)は平成15年日本 病院会「リスクマネジメントシステムに関する調査」報告書です。これを見ると専任の 医療安全管理者の配置が義務付けられている特定機能病院においても、約70%が1人の 配置となっています。また、臨床研修病院においては50%以上が兼任の医療安全管理者 であり、また専任であっても1人の配置がほとんどであることがわかります。また、日 本病院会の調査においても、専任のいない病院が80%近くあり、また、1人配置がほと んどであることがこれからわかると思います。  資料5−(2)です。これを病床数別に見ると、資料5−(1)において1人から4人の専任 の医療安全管理者を配置している病院について、臨床研修病院、日本病院会の調査、ま た平成18年の認定病院、患者安全協議会がアンケートした内容を示していますが、こ れを見ても各調査の病床別配置比率は、やはり病床数が大きくなればなるほど、配置さ れていることがわかります。  資料5−(3)です。専任の医療安全管理者を職種別に見ると(1)は平成18年1月に特定 機能病院15施設を対象にして、厚生労働省医政局調査を行いました。また、(2)は先ほ どの日本病院会のものです。(3)は平成15年の認定病院患者安全推進協議会が調査した ものです。これを見ても、やはりいずれも看護職が50〜70%を占めていることがわかり ます。事務職も10〜30%いることがわかります。  次に資料6です。資料6−(1)は、先ほど室長から説明のあった特定機能病院における 安全管理体制の平成14年10月7日の医政局長通知から出したものです。この中で医療 安全管理者とは、専任の医療に係る安全管理を行う者であり、また、医療安全管理者の 満たすべき基準としては、このようになっています。また、業務内容としては、医療に 係る安全管理を行う部門の業務に関する企画立案及び評価。病院内における医療安全に 関する職員の安全管理に関する意識の向上や指導等となっています。この中で安全管理 部門とは、医療に係る安全管理を行う部門であり、また、その安全管理部門の構成と役 割についてはこのようになっています。  その業務内容については、1つ目に安全管理委員会で用いられる資料及び議事録の作 成及び保存、その他安全委員会の庶務に関すること。2つめとして事故等に関する診療 録や看護記録等への記載が正確かつ十分になされていることの確認を行うとともに、必 要な指導を行うこと。3つ目として、患者や家族への説明など、事故発生時の対応状況 について確認を行うとともに、必要な指導を行うこと。4つめは、事故等の原因究明が 適切に実施されていることを確認するとともに、必要な指導を行うこと。また、医療安 全に係る連絡調整に関すること。その他医療安全対策の推進に関することとされていま す。  資料6−(2)です。ここでは平成16年の特定機能病院業務報告の際に、報告を行って いる中から、病院が医療安全管理者の業務として記載している内容を、医政局総務課医 療安全推進室で分類整理をさせていただきました。これを見ると、おおよそ次のように 分けられています。1つ目として、事故情報収集、分析、対策。2つ目として事故発生 時の対応。連絡調整、企画・運営、教育、患者家族への対応等に分けられました。  資料6−(3)です。平成13年厚生労働科学研究「医療安全管理者(リスクマネージャ ー)の機能に関する研究」から、専任リスクマネージャーの活動内容について示してい ます。この中で専任リスクマネージャーの活動として、ほぼ80%以上されているものは、 上の(1)〜(5)、事故・インシデント等の情報の収集、原因や問題点の分析、関係者間の調 整、改善策の立案、また改善策実施のための各部門への依頼・調整。さらに下の(13)〜(15) に示してある事故防止マニュアルの作成、職員への教育研修の企画、職員への教育研修 の実施等が活動内容で多いことが示されています。  資料6−(4)です。平成16年の日本看護協会リスクマネージャー交流会アンケートか ら出されたものです。これを見ると、専任のリスクマネージャーは各活動において、ほ とんどの専任リスクマネージャーができていると答えたのに対し、兼任のリスクマネー ジャーはインシデント・アクシデントレポートの処理は行われているが、そのほかの業 務がなかなか行われていないことがわかります。  次に資料7です。これは各団体・研究者の医療安全管理者の業務指針の概要を示して います。これは各業務指針の中から、こちらのほうで左の項目にあるように、医療安全 管理者の定義、病院における位置付け、業務内容または役割、また求められる資質等に 分けて示しています。  資料8です。平成17年度の各主催者別の医療安全管理に関する主な研修の概要のま とめです。各団体、そして厚生局などがこのような研修を、平成17年度に行っていま す。これは各団体、厚生局の中でどのようなプログラムをしているかという、プログラ ム名をそのまま出しています。また、左に診療報酬での加算要件を参考として付けてい ます。これも参考にしていただければと思います。 ○福永部会長  今回のこの部会の目的そのものが、いま発表いただいた現状を踏まえて、業務指針を 作る、あるいは研修プログラムを作るということになるかと思います。そういうことで 現状分析に対するいまの説明に対する質疑をお願いしたいと思いますが、まず資料5− (1)、(2)、(3)の専任のいる医療安全管理者の配置状況等についての部分で、何かご質疑は ありますでしょうか。今回は診療報酬点数では、この専任という意味での位置付けは、 あまりはっきりしていなかったのでしょうか。 ○事務局  診療報酬では言葉としては「専従」ということになっており、具体的には資料4の2 頁に、今回の診療報酬の加算の要件というのが書いてあります。この中では専従で行う ことということですので、ほかの業務にはタッチしないで、この医療安全管理を専ら行 う方がいる場合に、診療報酬の加算が認められるという取り扱いになっています。 ○福永部会長  何かこの資料を見ながらご意見等はございますか。いま専任が置かれているのは特定 機能病院、あるいは病床数の大きい病院は当然置かれている所が多いかと思いますが、 小さな病院ではなかなか専任は置かれなくて兼任というところが現状では多いかと思い ます。木下先生は医師会として何かご意見はございますか。 ○木下委員  どういう視点から。 ○福永部会長  例えば専任、まだ今後こういう専任のあり方については議論することになると思いま すが、兼任との問題を含めて、何かご意見がありましたら。 ○木下委員  現実的にはなかなか専任を病院に配置するのは、病院の経営上難しいのではないでし ょうか。保険点数を貼り付けたとしてもそれだけでは、一人を専任に雇用することは大 変です。専任の配置を目指すとしても、当面兼任でもこういう安全管理者がいることは 大事だと思います。 ○福永部会長  ほかに何かございますか。 ○飯田委員  いま議論が混乱しているので確認しておきたいのですが、言葉の定義を正確に使って いらっしゃらないのです、専任と専従と兼任とそれぞれ違うので、それをはっきり区別 して使ってください。いま専任と専従を混乱して議論されているので、それははっきり してください。 ○福永部会長  専任と専従の定義はどういうことですか。 ○飯田委員  診療報酬では専従になっているわけです。専従というのはほかの仕事をしてはいけな いのです。専任の場合にはほかの仕事を少しはしてもかまわない。その人を専ら任ずれ ばいいのであって、当該業務に専ら従わせるというのが専従でいちばん厳しいのです。 「それではとても今の診療報酬ではできません」と石川委員がおっしゃったわけです。 専任ならまだできるのです。そこをきちんと区別して議論してほしいと思います。病院 団体としては専任でいいのではないですかという意見があります。要するに区別して使 ってほしいわけです。 ○福永部会長  いま飯田委員からそういうことがございましたので、専任と専従をきちんと区別した 形で議論を進めていきたいと思っています。ここの資料で言われているのは専任なので す。 ○事務局  そこは若干用語についてはご指摘のとおり、厚生労働省の中でも使い方が局によって 違うようなところもあるのではないかと思います。こちらの資料4の1頁にある平成15 年4月というところで、特定機能病院では専任の医療安全管理者の配置を義務付けたと いうときの専任は、専らこの医療安全に担当される方ということで、それ以外のことは 一切やっては駄目だということではありませんが、専らこれをやっていただく方という ことで、お知らせしています。  診療報酬では、2頁の2つ目の○、第八と書いてあり、(1)の医療安全管理に係る研 修を受けた専従の薬剤師等が配置されていることとなっており、ここで診療報酬のほう で専従といった場合は、先ほどの特定機能病院の専任と同じような解釈で運用されてお り、専らこの医療安全管理に携わる方となっています。 ○福永部会長  いま説明がありましたがどうでしょうか。そういうことで嶋森委員はどうでしょうか。 ○嶋森委員  私の理解としてはかえって混乱しています。専従はほとんどの業務をするということ で、特定機能病院のときもやはり専任という言葉で専ら専従するということで使われた ということですよね。ですから、2つの言葉で同じことを言ってしまったので、ちょっ と混乱していると思うのですが、現在としては専従というのはそれ以外のことをしない ということでよろしいですね。いま飯田委員がおっしゃった専任というのは、ほかの仕 事もしていいということになると思いますが。 ○飯田委員  この議論は中医協でも専任で議論がされていたものが、いつの間にか議論なしで専従 に変わっていたのです。専任というのはこの仕事はこの人にさせなさい、ほかの人がや ってはいけませんよというのが専任なのです。この人はほかの仕事も多少はしていいの です。専従は専任でしかも専従であるということをいま言っているわけです。だから意 味が全然違います。 ○福永部会長  私もその辺りの経緯を知らなかったものですから、曖昧な形で使用していました。 ○事務局  すみません、私の説明がかえって混乱をきたしてしまったようですが、もう1回、診 療報酬のほうを言いますと、診療報酬のほうで専従というのは、ほかの業務をやらない で基本的に医療安全管理だけをやっていく方になります。 ○福永部会長  結局この辺りは、今後いろいろな作業をする過程の中できちんとしなければいけない 点だと思います。この専従と専任に関することは時間もないので、一応ここに置いとい て、今後また検討していくことにしましょう。それでよろしいですね。あとはその業務 内容のところで、何かご質問、ご質疑はありますでしょうか。結局、業務内容そのもの が、また専従と専任の辺りの議論にもなってくるのではないかと思うのですが、いかが でしょうか。 ○鮎澤委員  確認させていただきたいのですが、これから私たちがここの委員会で検討する「医療 安全管理者の質の向上」というのは、専従であれ専任であれ、その仕事を専らとしてい く方たちの質の向上でよろしいわけですね。「医療安全管理者」といっても医療機関によ って様々です。その全ての質の向上を議論するか、専従もしくは専任というレベルでか なり特化した仕事をする方たちの質の向上を議論するのかによって、業務指針も研修プ ログラムの内容も、かなり違ってくるのではないかと思うので、専任か専従かの細かい ところは別にして、大枠のところで確認させていただきたいと思いました。 ○福永部会長  どうでしょうか。どうぞ。 ○事務局  基本的にはそのとおりだと考えています。ただ、そうなるとすべての医療機関で専ら それだけをやる方を配置できるかどうかという問題もありますので、そういう観点も踏 まえてご議論いただく、必ずしも最初から決めて議論する必要はないのではないかと思 います。 ○飯田委員  いまの議論に関連して、病院の規模や機能などいろいろあると思うので、どこにター ゲットを絞るかです。医療全体の安全を目的とするはずですから、そうしたときに、す べての病院が同じようにいくわけはないのです。こちらのICUの作業部会で申し上げ たのですが、層別化して議論することが必要です。目的は全体の医療です。どの層に対 してどういう指針を作るかということを議論していかないと、すべて同じようにいかな いわけですから、といって、特定機能病院は特定機能病院だけ、大病院だけやればいい のかというとそうではありません。それぞれどういう切り口で層別するかはこれから議 論することとして、きちんと層別化した議論をしてほしいと思います。そうしないと、 行ったり来たりの議論では無駄になりますので、是非それはよろしくお願いしたいと思 います。 ○福永部会長  最終的には業務指針という形でまとめるわけですが、それでいま言われましたように 診療規模、内容などによって随分変わってくるかと思いますが、その辺りはどういうイ メージとしてとらえていけばいいのでしょうか。そういう個別に、例えば規模別とか内 容別ということで分けた形での業務指針ということが、具体的な形で作れるのでしょう か、もちろん今後の議論になるわけですが。 ○事務局  その辺をまさにご議論いただきたいと思うのですが、作れるかどうかも含めて専門家 の先生方にご議論いただきたいと思っています。 ○福永部会長  そういうことですが、ほかに何か。 ○石川委員  確かに個別にいろいろやっていくとものすごい数ができてしまったりして、非常に難 しいので、ただ医療機関の規模にかかわらず、医療安全や質に基本となることはきっと 共通のところは必ずあると思うので、その共通のところを押さえながら、あとはもしか したら医療安全管理者のレベル分けが必要になるのかもしれません。基本になることは やはりきちんと決められたほうがいいのではないかと思います。 ○福永部会長  そうですね、そういうことではないかと私も思います。あとは業務内容に関しても、 例えばヒヤリ・ハットとか、いわゆる事故防止に重点を置く、あるいはいまも訴訟とか クレームまでも対応するような形での指針になるのかということも議論になるかと思い ます。現実的には難しいかと私自身は思うのですが、その辺りはいかがでしょうか。ほ かに何かご意見ございましたらどうぞ。 ○嶋森委員  私も石川委員と同じような考え方で、やはり中核的にやらなければいけないというこ とが基本的にあって、ただ規模はいろいろありますので、その規模に応じてその人がや れる範囲で、それは病院ごとに考えていけばいいかと思います。医療安全は事故が起き た当初の危機の管理と、起きないような質の管理まで含めていろいろ広いところがある と思いますので、病院の中で患者の医療安全のためにどういうことをしなければいけな いかということを議論して、専ら医療安全管理者というように現在日本で位置付けられ ている人たちが、専従でできる範囲を、少し整理していけばいいのかと思っています。 たぶん議論の中で、ある程度整理が付くのではないかと思います。 ○福永部会長  ほかにいかがでしょうか。おそらく基本的なところを押さえて、あとは応用問題とい うか、各病院において規模やいろいろなことで内容は当然違ってくるのかという気がし ます。この辺りが議論の中心になるのではないかと思います。 ○木下委員  この医療安全管理者をどこに置くかというと、基本的には特定機能病院とか大病院を 中心にして考えているわけです。将来的には診療所も含めて医療安全管理者が必要かも しれません。それは実は病院のオーナーであるかもしれません。先ほどどなたかが述べ られたように、診療所のレベルと特定機能病院とは内容が違います。将来は、すべての 医療機関にというようなことを考えられるわけですが、我々がここでやることは、最も 危険で複雑で多様な医療行為をやっている総合病院では、医療安全管理者をおいて、ど のような場面に対しても、対応できるようにすべきです。それが出来るように研修を行 い、学ぶことで安全管理者として育っていくわけですから、まずどのようなタイプの医 療機関でも通用する内容を検討する必要があると思います。 ○福永部会長  ほかにいかがでしょうか。いま木下委員が言われることは本当にそのとおりだと思い ます。 ○飯田委員  1人でしゃべっちゃいけないと思って。誤解をしていると思うのですが、特定機能病 院だけで事故が起こっているわけではないのです。中小の病院でも事故は起こっている わけです。それをどうするのですかということを私は言っているわけです。ですから規 模の大きさを言っているのではないのです。大きな病院でも小さな病院でも起こってい るわけです。それをどうするか、そのためにはセーフティマネージャーが必要なのです。 それぞれの規模によって入ってくる資源が違いますから、どういう切り口でもいいので す。規模でもいいし、機能でもいいし、あるいは専従、専任、兼任を分けてもいいので す。どんな形でもいいから、きちんと層別化をやらない限りは、大病院だけ事故をなく しても意味はありますが、それだけではしようがないわけです。いろいろな所で大きな 事故が起こっているし、診療所でもどこでも起こる可能性はあります。いまは確かに病 院の問題が大きく出ていますから病院に特化してもかまいませんが、小さいからやらな くてもいいとか、専従でないからやらなくていいという話ではないと思います。どうい う切り口でも結構ですから、きちんと分けてやらないといけません。医療の安全を確保 するという総論はみんな同じです。しかし具体的にやるときは違うわけです。総論は共 通の話はできますが、全部分けろという話をしているのではなくて、きちんとやった上 で、具体的に実務を展開するときには、層別化しない限りは絶対にできません。そうい う話をしているわけです。 ○木下委員  誤解を招いたようですが、特定機能病院だけのための安全管理者を目指しているわけ ではありません。そこで医療安全管理者として通用すれば、それは診療所でもどこでも 通用します。そこから診療所や小病院で必要なことをピックアップしていくべきだと思 います。ですから、医療安全管理者が専任できる病院がすべてであるとは思えません。 当然兼任もあると思います。それでも研修内容は、特定機能病院で通用する必要があり ます。 さらに中小病院ではこの程度で良いという内容で別個にテキストを作ることは全く無駄 で、 まず最も複雑なことを学んだ上で、そこから中小病院、診療所に必要なものを選んでい くというのがより合理的ではないかと考えます。 ○福永部会長  ほかにいかがでしょうか。いまいろいろなご意見をいただきましたが、業務指針を含 め、そのようなことを踏まえて考えていきたいと思います。時間もありますので、この 議論はここで終わりにしたいと思いますが、よろしいでしょうか。  それでは3番目の議事に入ります。「医療安全管理者の質の向上に関する研究の状況」 について、厚生労働科学研究において、「我が国における医療安全管理者の教育の現状」 について研究されております嶋森委員からご報告をお願いいたします。                (パワーポイント開始) ○嶋森委員  委員の皆様には一応パワーポイントを打ち出しております。一部は修正がありますが、 パワーポイントで説明させていただきます。我が国の医療安全管理者の業務と教育の現 状です。これは平成17年度に「ヒヤリ・ハットや事故報告から安全管理のためのガイ ドライン作成に関する研究」の一部として、野本先生を班長として、分担をしていただ いた研究を、私から報告させていただきます。  これはいま問題になっている医療安全管理者の組織上の位置付けなのですが、これを 調べてみますといろいろあります。医療安全管理部門長を医療安全管理者とするところ や、部門の安全管理室長を安全管理者としている所があります。また、その次席の者、 副室長のような人たちがやっている所もあります。例えばここの医療安全管理部門だと、 医療サービス課長という人たちも、医療安全管理者と位置付けられています。  医療安全管理室に配置している看護師が医療安全管理者になっている所、看護部門の 副総看護師長が医療安全管理者となっている所があります。看護部所属で医療安全管理 者となっている所と、病院の院長先生がなさっている所、副院長がなさっている所、医 療安全委員会の委員長、診療部門の長、外科医長や部長等々、医療安全管理者といって も、さまざまな形があって、いまご議論があったとおりで、病院の規模や機能によって 違っていることがわかりました。  業務ですが、これは先ほど小林専門官から説明があったことと重複しますが、まとめ て申し上げますと、医療安全管理者の業務としては院内報告制度に関すること、安全対 策に関すること、教育・研修にかかわること、委員会等にかかわること、研究等にかか わること、医療事故にかかわることと、いずれもこの6点を医療安全管理者の仕事とし て、医療安全管理者は専任したり専従したりしながら、さまざまな形で行われています。  これを順番に申し上げますと、院内報告制度についてはインシデントの分析、緊急性 が高い事案の対策、変化が生じたときの対応、適切に報告されるようにするためのイン シデント・レポートの分析や収集のあり方に関連することを行っております。また一方 では、定期的な院内の巡視ということで、報告されるものだけではなくて、それを巡回 して把握することも行っています。  教育・研修に関しては院内の研修を企画、新入職員、部門ごと、発生時の再発防止の 研修及び、各部門への出前研修をしています。  安全対策に関しては対策の立案、分析結果を踏まえて、適宜部門間の調整等も行って います。指針やマニュアルの作成、院内の安全に関する相談や助言、患者相談窓口に関 する業務、医療安全のための院内評価業務をしています。  委員会については委員会の企画・運営、サポート、専門的立場から委員会の実施、実 務的な機能のサポート、委員会への安全管理の状況についての報告、議題の提案、対策 案の提案、委員会各部門等の安全担当推進者としての活動を行ったり、他の委員会との 連携等をしています。  研究については安全管理に関する調査や研究に参加して、事故防止に役立てたり、院 外からの情報収集、研修への参加、事故やインシデントに関する調査、自分自身の研究 も含めてこういうことがされています。  実はここからが少し違っています。最初に申し上げた2つの研究では、医療事故にか かわる事項は井部班のまとめでは、これを医療安全管理者がすることになっています。 的確な状況把握と必要な連絡、現場の管理者のサポート、精神的なケア、情報提供、再 発予防のための立案、診療録への記載状況の確認、こういうことを井部班では業務とし て位置付けています。  日本医療機能評価機構の患者安全推進協議会の中間まとめですと、ただし書きが書い てあり、直接的業務は行わないとなっています。内容としては発生したときの患者・家 族の状況把握や、診療科への報告、診療記録について確認、サポート、事実関係の整理、 調査委員会等を設置したり、説明内容の確認、精神的サポートに関すること。こういう ことは安全管理者の業務範囲を超えていて、直接的にはしないとなっています。  ですから、これは今後、今日も議論になっていますが、専従や専任、規模に応じて検 討しなければいけないことなのですが、誰がするかというのは考えていけばいいかと思 います。  これを整理して、安全管理者に要求される能力として整理できるものは、1つはイン シデントや事故報告を分析するための専門的な医療の知識、分析方法。診療報酬上では 医療職種がと言われていますが、そういう意味での知識や分析手法の知識が必要だとい うこと。合理的に安全対策を立案する問題解決能力、データに基づいて議論を構築でき る論理的な思考能力、院内の各部門と連携、調整あるいは交渉ができるコミュニケーシ ョン能力、情報の収集・分析・加工のためのコンピューターリテラシー、これを使いこ なせること。医療安全という新しい分野にひるまず挑戦する意欲、これはたぶん非常に 困難な状況なので、なかなか現状では難しいということがあるので、こういう人である ことが望ましいと、非常に抽象的な部分もありますが、まとめるとこれらの能力が必要 ということです。これをどうやって高めていくかということを、この検討作業部会で議 論する必要があるかと思います。  資料に付いている報告書の後ろに、我が国で行われている集合で医療安全管理者の研 修を行っている団体の研修の内容を、いま申し上げたいくつかの要素に分けて丸印を付 けて示していますので、後ほどご覧いただきたいと思います。  これを整理しておりまして、いまリスクマネジメントかセーフティマネジメントか、 どの用語を使うかということが課題になってきました。現在では、リスクマネジメント からセーフティマネジメントへ考え方を転換する必要があるといわれ使い方も変わって きています。この点について、厚労省の科研費で2001年から2003年にかけて長谷川敏 彦氏が研究し、ご自身が整理したものを許可をいただいて、今日お話しようと思います。  長谷川先生のまとめだと、危険管理、病院へのリスクマネジメント、起こった間違い による損害をできるだけ少なくするのが危険管理のリスクマネジメントで、安全管理、 患者のセーフティマネジメントは、間違いは起こるものであることを前提として、しか し間違いは防げるものなので、少なくとも人間による間違いをなくそう、間違いを起こ しても損害を防ぐこと、これがセーフティマネジメントの考え方だと言っております。  リスクマネジメントは狭義でいうと病院へのリスクや訴訟対応ですが、広義の意味と しては、これまで日本で使われてきたようにリスクマネジメントの中に、患者へのリス クをできるだけ低減するということが含まれており、広義のリスクマネジメントの概念 になります。今後、セーフテイマネジメント、安全管理という考え方でいくと、医療行 為以外も含む病院全体の安全、医療行為を含む患者への安全対策ということに整理をし ていく必要があるだろうと思います。  99年以前は日本でも、人は間違うべきではないということでしたが、いまは、人は間 違うものであるということで、個人が原因というよりも、システムで予防することが必 要とされるようになりました。医療の中だけで解決しようとしてきましたが、ほかの産 業から学ぶということ、安全工学の応用などが必要となりました。これまでの危険管理 から安全管理へ、また、医療の質管理や危険管理は別ものと考えられてきたわけですが、 質と安全は裏と表の関係で、結果的には質のコントロールは安全のコントロールになる と考えられるようになりました。  アメリカのVAの病院(退役軍人病院)では2001年に患者安全官という人を設置し たそうです。日本の安全管理者と言えるかもしれませんが、この安全管理官設置の目的 は、患者安全システムの展開を助けて促進する役割と定義されていて、患者安全に関す るポリシー、理論及び戦略といったものを具体的な現場へ適応して、RCAという根本 原因分析のプロセスを施設内に浸透させて、必要な訓練をすることです。VAは各施設 と中心にあるNCPAという患者安全の中心になっている所がありますので、こことの 円滑なコミュニケーションによってVA全体として安全を高めていくことを考えて、こ れらの情報のやり取りをしていくために、安全管理官を置いたと言っています。  活動の内容としてはプログラムを計画して、スタッフに対して安全に関する長期及び 短期のサポートを提供するというのが、大体20%ぐらいやっている。戦略的計画として はその病院、病院ごとに安全のための戦略的な計画づくりを約15%行っています。これ らのデータを評価して、実際にやっていてどうなのかということを監視するのに40%ぐ らい、改善行為の監督に25%ぐらいを使っていると言っています。  安全管理官の必要な能力について、アメリカのVAでは、ヒューマンファクターやシ ステム工学に関する知識に関するポイントが「1,250」としています。この数値につい て確認したところ、仕事内容の重み付けでということでした。基準がはっきりしないの ですが、数の多い方が重みが大きいということです。ヒューマンファクターやシステム 工学に関する知識をきちんと持って、根本原因分析等の分析技術、データベース管理な ど、情報技術も必要で、こういうことの技術の重みが大きいと言うことがわかります。 こういうものを使って医療安全をしていくことは重要だということで、重み付けを強く していると言われています。監督的なコントロール、実際にこのような対策を立てても、 それがきちんと安全のために対策が実施されているかというコントロールと、安全のた めにいろいろなものを作るというような(それがガイドラインだと思いますが)ところ に重みを置いて、この辺のことがきちんとできる能力が、VAの安全管理官の人たちに 求められていると言われています。日本もこれからこういうことを考えていくことが必 要かと思います。  これらの流れを踏まえて、日本における安全対策ということを、ステップを踏んで行 っていくことが必要だと思われます。事故やヒヤリ・ハットの報告を受け対処すること、 診療内容のバラつきをなくして、質を揃えていくこと、これは質のコントロールになり ますが、これらの情報が基準に沿って特定されたり、インシデント・レポートや患者か らの苦情報告ということで集まるわけです。これらの情報に対処するについては、個別 にすぐ解決しなければいけない短期的な対応がワンステップあります。また、そのよう な情報を集めて、それを予防に生かすというシステムの開発をするということも必要に なります。例えば、苦情や報告によって外来の待ち時間が長いというがあれば、それを システムとして解決している。事故の多い部門の人の配置や診療のシステムやプロセス を変えることで、それを予防していくという段階もあります。とりあえずの短期的な対 応と、それを踏まえた中長期的な関わりや予防的な関わりなり、業務プロセスを改善す ることによって、事故を少なく質を良くするということで、結果的に質の改善が行われ るということです。この短期の関わりと中期までが危険管理と安全管理で、それを含め て質の改善まで至ると、これが質管理となるだろうと思います。質と安全と危機という ものを連携して考えていく必要があるだろうと思います。  いまのことを少し図にしたのですが、何か出来事があると急いで発動して何とかしな ければいけないというのが、いわゆるリスクマネジメントです。それをゆっくり続けて 対応してシステムとして改善していくと、広い意味でのリスクマネジメントになり、こ れを全体として安全にしていくというのが安全管理です。そして、これ全体が広い意味 でのリスクマネジメントということです。その中でも、特に最初の危機的な状況に応じ て急いで発動するというのが、クライシスマネジメントと言えます。  事故の予防というのは一次予防で、これがセーフティマネジメントと考えていいと思 いますが、できるだけエラーを少なくして事故から学び、フェールセーフやフールプル ーフという安全の仕組みを取り入れて、システムを構築することが第一次予防で、もし 事故などが起きたら緊急の対応をする。そこで患者さんの苦情や有害事象になると思い ますが、それが訴訟になると第三次でリスクマネジメントというふうに、こういう整理 ができるのではないかと思います。  院内の安全管理体制としては、院内体制構築と安全管理推進ということを理念として 掲げることです。これは理念ですから、患者さんが満足するような、より良い医療を提 供することが医療安全の最終目的ですが、具体的には過誤の減少、事故の減少、安全文 化を醸成するということになります。そのための組織を作り、資源をどう配分するか。 先ほども議論になりましたが、安全管理者を専従にできる所はすればいいわけですけれ ども、できない所は兼任でどういうふうにするか。そして具体的な活動として何をする か。それを評価して、結果としては過誤の減少、事故の減少、訴訟の減少ですが、これ は実は元がはっきりしていないので、過誤の減少や事故の減少が本当に証明できるかと いうことはあると思いますが、非常に重大な事故が減少するといったことが指標になる と思います。過程としては、院長も含めてリーダーシップをきちっと発揮する。安全文 化が高まり、安全な組織の確立ということで評価できるのではないかと思われます。  実際は、こういう仕組みの中で質と安全管理はされていると思いますが、院長直轄で 安全管理室というのがある場合もあり、専従を置くか、専任にするか、兼任にするか、 規模によってさまざまのやり方があります。それぞれの部門に安全管理者を置くという ような仕組みでやっていく。これは多く医療機関で行われていますが、こういうことを きちっとして整備していくことが大事だろうと思います。  安全と質のコントロールという意味では、安全管理部門や苦情、質管理部門から情報 を集めて整備し、この安全管理部門が対応していくということと、それ以外に、いま平 成16年4月には感染管理も安全管理部門に入ったと思いますが、それ以外には労働安 全衛生や施設管理のところも含んで考える必要があります。最近ではパイピングになっ ている酸素のタンクが空になっていて出ていなかったり、電気が一斉に切れて人工呼吸 器が止まったりということが起きていますが、これを考えると、実はこういうことも非 常に大事で、こういう外側の仕組みも一緒に考えながら、医療の質と安全の管理をして いくことが必要だろうということです。  現場のリスクマネージャー、セーフティマネージャー、クオリティマネージャーと、 階層がいろいろあって、最終的には質の管理にいくのですが、長谷川先生のまとめだと、 いちばん先端のリスクマネージャーと言われる人たちは、苦情や訴訟への対応をして、 これは兼任の可能性があり、セーフティマネージャーとしては医療の安全という意味で 安全の回診と言っていますが、現場の安全性を確認したりするためにも、せめて専任が 1人いるほうがいいだろう。この人たちに要求される能力を(RCAの分析手法等も含 めて)身に着けた人が最低1人はいたほうがいいだろうということ。  あとは実際の分析のためには、たぶんこの人たちだけでは無理で、こういう人たちの 専門家を置くか兼任するか。そういう人たちの助けを得ながらやっていくということと、 最終的には質のコントロールまでいけば、患者安全という意味では質をコントロールし ていくところまで考えなければいけないのですが、これは病院の責任としてやるべきこ とかもしれないということ。範囲としては非常に広いですが、こういう整理の仕方があ るのではないかということです。  昨年の医療安全管理者の業務と教育の現状のまとめに加えて、最近言われております、 リスクマネジメントとセーフティマネジメント、それからクオリティコントロールとい う概念も含めて、長谷川先生の文献をお借りして整理し、議論のたたき台にと思ってま とめてお話しました。以上です。               (パワーポイント終了) ○福永部会長  ありがとうございました。いまの嶋森委員の発表されたことに関して、何かご質問等 ございますか。いま言われたように議論のたたき台というか、頭の整理ということで参 考になる発表だったと思いますが、何かございませんか。 ○木下委員  京都大学では、これに準じて何か作られているのですか。 ○嶋森委員  そういうふうに聞かれると非常に困ります。先ほども部会長とお話をしていたのです が、当院では医療安全管理室に専任の医師が1人、専任の看護師長が1人、事務が1人 います。その同じ部屋に労働安全衛生担当の事務官が1人と、患者さんからの苦情も含 めて相談を受ける事務官が1人という形で、副院長が安全管理の担当となっています。  ただ、実は質のところまではいっていなくて、安全管理担当の医師が昨年代わり、エ ラーや事故の発生しそうな例えば手術室やICUについて、細かいことを言えばインシ ュリンの使い方や抗癌剤の使い方等についての業務プロセスの整理をやっています。 ○木下委員  質問した意味は、人間工学的理論というのは学問としてはきれいに説明できます。相 手が人間の世界ですから、いわゆる工場の生産過程とは当然違うところがあります。病 院の安全管理の上で、この考え方のどの部分を入れていくのがいいのでしょうか。最低 これだけは必要だというものを、どの行程に組み入れられたら安全管理者の養成に大事 かという視点を、是非伺いたいと思ったのです。今後この考え方は、必要だと思います ので教えてください。 ○嶋森委員  失礼しました。そのあたりの安全工学とヒューマンファクターをどういうふうに生か していくかについては、そんなに先に進んでいるわけではないです。ただ、たぶん飯田 委員などのほうがよくご存じだと思いますが、根本原因分析等をすると、実際は現場で 具体的に対応していた人たちだけが、現在のところは責任があるようなことになってい ますけれども、先ほどから言っている業務のプロセスに問題があったり、仕組みに問題 があったりということが結構はっきりしてきますので、そういう分析の手法等をきちっ と分かっていくことが大事だと思います。  当院では、今日はお見えになりませんでしたが、河野先生に認知心理学の視点から医 療安全の講演をしてもらいましたが、医療機関は医療安全の防御壁が薄過ぎる、よくこ んなのでやっているなと言われたりしました。どこに問題があるかというと、医師や看 護師は間違わないものだということで、あまりシステムが整理されていないのではない かということを、2、3年前に言われました。それは本当にそうだと思っています。  どういうふうに他産業の知恵を医療の中に導入していくかというのは、なかなか難し いですが、現場では既に“指差し呼称”を取り入れてエラーがかなり減っているという ことがあります。医療安全のために、これまで他分野がやってきたことで、使えるもの はかなりあるのではないかというふうに思っています。飯田先生他に何か教えていただ けませんか。 ○飯田委員  いまの嶋森委員のお答えのとおりで、長谷川先生の最後のスライドは私も9割方は同 じ考えなのですが、ちょっと違うのは、スライドの上からいっているのを私は下からい きます。基盤が必要なのです、スライドの図はいいのですが、説明の仕方は私は逆だと 思います。下からいかなければいけないと思います。  質管理を医療に適用したことがあるかといえば、やっています。ずっとやってまして、 資料8の真ん中辺に「四病院団体協議会」というのがあると思いますが、これは私が企 画してやっているプログラムです。これはまさにいまのご質問のとおりで、一般産業界、 一般企業でやっている質管理の考え方、手法を導入して質を向上させ、その結果として 安全を確保しようという考え方です。  ですから、事故をなくそうということから始まっているのではないのです。どちらか らいってもいいのですが、私はそうしなければ事故は減らないと思います。10年来、品 質管理を医療に導入しようと思っていろいろやってきましたが、なかなか仲間が増えな くて、この安全という切り口でやるとみんなすんなりと受け入れてくれますから、それ で安全という言葉を使っています。この会議の席にもいらっしゃる鮎澤さんなどとも、 一緒にやっていただいています。  この説明は後でまたするのかもしれませんので簡単にしますが、基本的には事故防止 ということからではなく、もちろん事故防止するのですが、それではモグラ叩きになり ますから、安全を確保するという切り口からやる。安全を確保すると言ってもなかなか できないので質を向上させる。そのためには50年、60年来の品質管理の考え方、手法 の実績があるわけですから、私は何年も品質管理の方々と一緒になってやっているわけ で、非常に成果が上がっています。実際にどうやっているのかは本にもたくさん書いて います。 ○福永部会長  ほかにございますか。 ○鮎澤委員  もしかしたら参考にしていただけるかもしれません。実は私たち九大病院の安全管理 部には工学部の教授に入っていただいています。1代目はトヨタ自動車で仕事をされて いた方です。すでに2代目になられていて、もう5年目ぐらいになるでしょうか。この 先生たちから本当に私たちはいろいろなことを学ぶのです。例えば、異常が見えるよう に物を置くにはどうしたらいいかという、そのあたりから教えて頂きました。人間工学 というような難しいレベルではなくて恐縮なのですが、きれいに物を置くことが大事な のではなくて、おかしなことが起きているということがいち早くわかるように物を置く ことが大事だという、その原則あたりから教えていただくことも大変役に立ちます。そ ういう視点が院内の環境整備につながっていくわけです。   整理整頓というのは小さいころから教わりますが、異常を発見する整理整頓という 教わり方はしてこなかったし、工業界、産業界の方たちが地道にやってきたようなこと を私たちがやれてきたかというと、まだまだできていない。そんなところにもまだ学ぶ べきことはいろいろあるのではないかという例として、ご紹介させていただきたいと思 いました。 ○福永部会長  まだご議論があるかと思いますが、時間の関係もありますので進めたいと思います。 おそらくこの医療安全管理者の業務等を含めて、みんな抱いているイメージはそれぞれ 違うということもよくわかります。だから、これをどういう形で業務指針としてまとめ ていくのかということは非常に大きい、大変な作業になるかと思いますが、まだ今後、 部会は何回もありますので、その中で整理していきたいと思います。  次に4番目の議事ですが、本作業部会における検討事項(案)について、事務局より 説明をお願いします。 ○事務局  資料9をご覧ください。資料9は2枚になっています。1頁目は、この作業部会の検 討事項ということで大きく2つあります。1は医療安全管理者の業務指針、2は医療安 全管理者の研修プログラムの作成指針です。1の業務指針については、指針の目的、指 針作成にあたっての基本的考え方、医療安全管理者の業務内容、医療安全管理者に求め られる資質、医療機関における医療安全管理者の位置づけ、その他ということです。2 の研修プログラムの作成指針は、同様に目的、基本的考え方、研修のカリキュラムに盛 り込む内容と単位数、研修方法、研修実施体制、指導者養成のあり方、その他等につい て、次の2頁にあるとおりのスケジュールでご検討いただければと思っています。 ○福永部会長  この件に関して、おそらくこれが段取りというかスケジュールだと思いますが、何か ご質問、ご意見等はございますか。このスケジュールから見ると、業務指針に関しては 次の11月の部会で検討して、その次が研修プログラムという形になっていくわけでし ょうか。 ○医療安全推進室長 はい、そうです。 ○福永部会長  この案に関して何か付け加えなければならないこととか、あるいは何かご意見があり ましたら、お願いします。 ○木下委員  指針を作成するにあたっての基本的な考え方と、具体的なプログラムは、佐原室長の ほうから具体的に出していただけるわけですか。 ○事務局  次回以降の作業部会のときに、事務局として案を提出させていただきまして、それを たたき台にご議論いただきたいと思います。 ○木下委員  いま飯田委員が話されたように、実例をたくさん持っておられ、大変に成果が上がっ たということですね。そういう取り組みの仕方をモデルとして採用したらどうでしょう か。 そのモデルをたたき台にして議論すれば有効だと思います。 ○事務局  具体的には、第2回目は11月ぐらいに開催したいと思っていますので、それまでに 各委員等からご意見をいただいて、一度は我々で作ったたたき台も見ていただいた上で、 次回の検討会に臨んでいただければと、そんな段取りで考えています。その過程のなか でいろいろなご意見や新しい情報等をいただければと思っています。 ○福永部会長  よろしいですか。ほかにご意見はございますか。時間的にはかなり窮屈というか、次 回、そういうことで事務局からたたき台を出していただいて、そこで議論してというこ とになります。その前に委員の方々からいろいろな意見を聞かれて、それに基づいて作 るということで理解してよろしいでしょうか。ほかに何かございますか。事務局からの 資料等の説明はすべて終わりました。いままで医療安全管理者の業務等を含めてご議論 いただいたわけですが、業務や研修等を含めて報告書に反映させる上でのご意見も、そ れぞれ委員の方たちから、自分の抱いているイメージも含めて、お話を聞きたいと思い ます。佐藤委員からよろしいですか。 ○佐藤委員  ちょっと混乱していて、まとまっていないのですが、先ほど嶋森先生がお話になった ように、リスク、セーフティ、クオリティの3つをミックスした形での医療安全管理者 としての業務指針を作るという理解で、よろしいのでしょうか。  要するに、実際に実施している業務の中で求められていることと、意見とにギャップ があるように感じるのです。次回、意見を述べるというときの判断に苦慮するかなと思 っているのです。私自身としては、いままでの経過を参考にさせていただいた中で業務 と密着したまとめ方、即ち、先ほどの特定機能病院、一般病院、診療所という病院施設 のグレード分けというのでなく、最初に医療安全管理者がやるべき役割、業務というの を全部拾い出して、その中から分けていくのかなと考えたのです。そのほうが漏れるこ ともないし、非常にわかりやすいものができるのかなというイメージで会議に出席した のですが、ちょっとイメージが違ったので、その辺がどうなのかお伺いしたいなと思い ます。 ○福永部会長  いま、先生が最後に言われたイメージで私もいいのかなと思うのですが、おそらくい ま現在、委員の方々が働かれている病院の医療安全管理者がやっている仕事の内容を思 い浮かべながら、私たちはそれが医療安全管理者の仕事というふうにイメージとしては 持っているわけですが、それぞれの病院によって大分違うところもあるのかなという気 もします。  ただ、最初の意見もありましたように、スタンダードな、これだけは最低限、医療安 全管理者として押さえておかなければならないというものはあるはずだし、おそらく業 務指針としては、そういうところを目標にして作られるのではないかと思っています。 その中で、先生の抱いている医療安全管理者の仕事というか業務について、ご意見をい ただければいいのかなと思っています。楠本委員、どうですか。 ○楠本委員  日本看護協会では、ずいぶん早くからリスクマネージャーの養成に取り組んでいて、 今度、診療報酬の改定で専従のリスクマネージャーが認められましたから、ものすごい 数の受講者が出ています。ある種、質が担保できるかなということをとても懸念する状 況になってきていますので、本当に時宜を得た検討会だと思っています。  今日お聞きしていた中で、言葉の概念定義をしっかりやらないと、何かものすごく拡 散する議論になってしまうという思いで聞いていました。私は嶋森委員のお話の中で、 どちらかというとセーフティマネジメント中心のもので作られていくのかなと思ったら、 飯田委員のお話では、質管理、品質管理という、そちらからいくのだというお話もあっ て、そこら辺は事務局がしっかりとタイプに分けてしていただくのか、事務局の取組み に大いに期待するところです。そこら辺をしっかりしないと適用が広いものは作れても、 ではどこに重点を置いてやっていくのだというところに、難しさが出てくるかなという 思いで聞いていました。 ○福永部会長  そういうところだと私も思います。 ○楠本委員  それと各団体がいろいろとおやりになっていますし、少しずつ違っている要素が入っ ていますから、少し評価等が聞けたらいいなと思いました。自分で自分の首を締める話 なのですが、今までやってきた中で、そういうこともやってみたらどうかという提案で す。 ○福永部会長  寺井委員、お願いします。 ○寺井委員  私もこの委員会には非常に期待をしています。実際に医療機関、病院で医療安全管理 者をやっていて、今後、質を上げるためにどういうふうに取り組んでいったらいいのか。 また各病院において、それぞれ病院間の医療安全管理者がやっていることにも非常に差 があって、そういう中でどこら辺が中核で、どこをしっかりやって、そしてこれ以上す るには、どうしたら飯田先生が言われたような質が上がるのかということを、ここ2年 ぐらいはかなり自分も悩んできた課題でした。  いまの楠本委員のお話なども伺っていて、あと佐藤委員のお話も伺っていて、中核的 な業務というのは、どれが中核かというのは最初の嶋森委員のお話にもありましたけれ ども、大分固まってイメージすることができやすいのではないかと思いますが、この先、 いま何が問題かというと、中核的な業務は大体項目としては挙げられるけれども、それ をどのように医療機関の病床数や機能に併せてやっているか。その内容がかなり質に関 連しているのではないかと思います。  中核的な業務を列挙して、それを網羅して押さえると共に、もう少し病院の機能に合 わせて細かく質を高めるために、それぞれ特化したやり方や押さえるべきことを盛り込 んでいくことが、質の向上につながるのかもしれないというふうに、皆さんのお話を聞 いていて思いました。 ○福永部会長  寺井委員は実際に専任として働いておられるわけですので、是非、ご意見をたくさん いただきたいなと思います。木下委員、ほかにありましたらどうぞ。 ○木下委員  結構です。 ○福永部会長  石川委員、どうぞ。 ○石川委員  いま、寺井委員がおっしゃったような中核的な能力というか、コンピテンシーという のは大体固まってきたと思います。しかし、先ほどからお話が出ているような安全管理 者に、クオリティとセーフティとリスクということを業務内容としてやっていくと、も のすごい量になってしまい、現場でそういうことが果たしてできるのかなということで、 安全管理者のいろいろな労務状況やメンタルヘルスも大変気になってくるところです。  先ほど小林さんが資料2でまとめられましたが、事故発生の対応とかは病院管理者の 責務のほうにかかってくることもあるので、その辺を整理して、おそらく現場でやりや すいような、セーフティを中心とした業務指針みたいなものがイメージできればと思っ ています。 ○福永部会長  飯田委員、いかがですか。 ○飯田委員  私、結論から申し上げると、リスクマネジメントは全然別の概念ですから、先ほどの スライドにも出ましたけれども、リスクマネジメントはこの検討作業部会から外すべき だと思います。大事な仕事ですけれども、それは別の仕事です。石川委員も言われたよ うに、リスクマネジメントは別の切り口でやらなければいけませんので、今回の作業部 会から外すべきだと思います。  セーフティマネジメントが中心ですが、そのためにはクオリティマネジメントをしな ければできません。ヒヤリ・ハットを集めて分析し、実際に回す時も人の管理の仕方が 分からないと分かりませんから、これは絶対必要だと思います。ですから、質のマネジ メントは例えばISOがどうだ、こうだということを全部勉強しろということでなくて、 基本的な概念はきちんと勉強していただいて、それをどう適用するか。コンピューター リテラシーとありますが、コンピューターはどうでもいいのですが、統計的な考え方と いうのはどうしても必要です。そういうことも含めて次回にまた議論になると思います ので話しますが、とにかく質を向上させるということからいかない限りは、決して安全 は確保できないと考えていますので、これは必須だと思います。 ○福永部会長  いま、ご意見がありましたように、リスク管理というか訴訟対応を含めて、そういう のを今回、実際問題として、この医療安全の業務指針の中では外すべきというか、それ は入らないのではないかなと思うのですが、そういう認識でよろしいでしょうかね。私 もそういうふうに思いますが、一応、付け加えていいとしても、実際の仕事の中核とし ては、当然、いまの日本ではやられていないわけです。鮎澤委員、いかがですか。 ○鮎澤委員  まず大きく、ここの検討会がどのような姿勢で、この業務指針や研修プログラムを作 るか、そのフレームワークの検討が重要だと思います。エッセンスのようなものを作っ て広げていけるようなかたちにするのか、広く作ってそこからそれぞれ取っていくよう なかたちにするのか、いろいろなアプローチがあると思います。  先ほど議論が途中になりましたが、「このように検討してこのような報告書となったの でここから先はこのように活用してください」ということがわかるフレームワークを示 すことが大事なのではないかと思いながら、お話を伺っていました。  個別には、研修プログラムの検討のところにつながるのかもしれませんが、まだ整理 できていませんけれども、4点あります。私もここからどういうプログラムの皺型が出 来上がっていくのか、とても期待しています。いまいろいろな研修が企画・実施されて いますが、「研修プログラムの王道」といえるような体系化されたプログラムのイメージ を作り上げることが、この検討会の大事な役割ではないかと思っています。それが1点 目です。  2点目は、急速にいろいろな研修会が企画・実施され、加算を目指してなのでしょう、 受講者も大変増えているなかで、「研修会の質の担保」が大事な課題になっているという ことです。これをどう織り込んでいくのかというのも、この検討会の中で示されるべき なのではないかと思っています。  それにつながることとして3点目ですが、40時間、5日間やればいいというものでは ないと思っています。そこから先、今日的な知識やノウハウをどのように継続的に身に 付けていく仕組みを作るのか。それを検討することも、将来的な課題になってくるので はないかと思っています。  4点目は、安全と質をどのように位置付けて研修プログラムの中に入れていくのか。 両輪とするのか、安全は質の中に包括される概念とするのか。「質」の位置付けによって、 研修プログラムの内容もレベルも違ってくるように思います。「今後の医療安全対策につ いて」のなかでも質の向上ということが強く謳われているなかで、医療安全管理者が質 の管理にどのくらいまで現場で関わっていくことにするのか。それは実はとても大事な 問題なのではないかと思っています。 ○福永部会長  限られた時間の中で、結構大変な仕事だなという印象があるのですが、必要なことで すので今後検討していきます。嶋森委員、どうでしょうか。 ○嶋森委員  私は先ほど報告しましたが、医療安全管理者がどこまでやるかというのは、どういう 位置付けで、どういう権限をもらっていて、どのくらいの人数がいるかで全然違ってく ると思います。ただ、少なくとも患者に危害が生じないようなプロセスという意味での 質の担保は、きちっとやっていく役割があることは認識していかないといけない。病院 全体の質のコントロールは、たぶん上の人がしないといけないだろうと思います。そう いう議論の整理をしながら、全体がわかっていて、自分の担当する部分がわかるような 指針ができればいいのではないかと、私自身は改めて認識しているところです。 ○福永部会長  一応、皆さんにご意見を述べていただきましたが、全体を通して何かご意見がござい ましたら、よろしくお願いします。 ○飯田委員  言おうかどうか迷っていたのですが、鮎澤委員が言ってくれたので申し上げます。い ま診療報酬の点数の問題で、かなり質の担保が無理だろうと思われるものまでプログラ ムとしていいという話になっていますから、是非それはきちんとしてほしいと思います。 私どもが四病協をやっているのは、最低限、これだけ必要だろうという思いでやってい るのですが、それでも確かに大変です。このくらいやらなければ担保できない。それで も担保できるかどうか自信がないわけですが、少なくとも最低限、そのぐらい必要だろ うと思っているのです。それまでいかないのが、今、あちこちでやられていますので、 これは是非警鐘を鳴らしてほしいと思います。これは是非お願いしたいと思います。 ○福永部会長  今日はあえて診療報酬点数の関係はあまり議論しなかったのですが、研修の内容は、 こういうのが必要だということまで踏み込んだ形での議論ということになるのでしょう か。例えば、いま40時間の5日間とか非常に曖昧な形での研修しか挙げられていませ んね。こういうことが安全管理者の研修には必要なのだということまで踏み込んだ形で のこの指針というか、作成指針まで考えておられるのでしょうか。ちょっと無理なのか なとも思いますが、事務局としてはどういうお考えですか。 ○事務局  そういうこともあるのではないかと我々としては考えています。診療報酬のほうで示 している基準というのは、非常に漠然と、と言うと失礼ですが骨子を示しているのにす ぎませんので、よりきちっとした形でガイドラインなり指針なりを示していって、それ を診療報酬のほうで使っていただくということは、将来的にはあり得る話であるし、そ ういうことを目指していくということも1つの方策だと思います。 ○福永部会長  ほかに、いかがですか。 ○石川委員  診療報酬の疑義紹介の問15で4月28日に出たのがあるのですが、この内容に関して は非常に素晴らしいものがあって、特にいちばんよいのが演習を入れたということなの です。そうすると、いままで座学とかだけで医療安全のところは終わっていたというと ころもあったのが、何らかの演習を入れなければならなくなったということで、急速に 事例分析やいろいろな分析を学ぼうという気風が広がったということは、極めて意義の あることだと思っています。 ○福永部会長  そうですね。そういうふうに思います。ほかにございますか。大体時間になりました が、あと次回の日程等を含めて、事務局からお願いします。 ○事務局  事務局から次回日程の前に、次回に向けて資料を整理するにあたり、再度確認させて いただきたいと思いますが、医療安全管理者の業務の幅という点で、クオリティ、セー フティ、リスクということの中で、訴訟対応ということについては今回、外すかどうか は別にして、そうではなくてクオリティやセーフティのことをメインに書いていくとい うことで、よろしいわけですね。 ○福永部会長  どうでしょうか。例えば事故があった時のカルテの管理、家族への対応ということは、 現実にやっている所が多いのではないでしょうか。だから実際の訴訟のところは弁護士 や事務職に任せるとしても、ある程度事故やクレームがあったときの最初の対応をやっ ている所が、現実には多いのかもしれません。だから全部外すということではないのか もしれません。各病院によって対応が違うのかもしれませんけれども。 ○事務局  もう1点は冒頭の議論で、言葉は別にして、専ら医療安全管理をやる場合に医療安全 管理者の指針なのか、それとも兼任でやるような方も含めた趣旨なのかということです が、今、いろいろお話を聞いていると診療報酬がずいぶんできてきて、診療報酬の結果、 専従の医療安全管理者が増えている中で質の管理が重要だということですので、専らや る方をまずはメインに考えて作業を進めていったほうがいいのか、それとももう少し広 く書き始めたほうがいいのか、それはどちらのほうがよろしいのでしょうか。 ○福永部会長  これはどうなのでしょうね。いままでの議論というか、先ほど飯田委員が言われたよ うに、いままでの議論の流れの中でそういうのがあったみたいで、私自身もその辺は簡 単に考えていたのですが、そのあたりはどうしましょうか。 ○飯田委員  ちょうど、いみじくも長谷川敏彦さんのスライドが出ていましたが、あそこでも専従 と専任と兼任が書いてありました。ですから、どう表現しようといいのですが、安全管 理にこういうのが必要ですよというのがまず1つ、それは皆さんが同じだと思います。 それは共通でいいと思います。専従でなければいけないというのはどういう状況なのか。 専任でいいのではないかという状況は機能なのか規模なのかわかりません。そういう切 り口で層別化してほしいということを言ったわけです。どちらでもいいです。  ですから、専従に決めましょうということでなくて、安全管理にはこういうことが必 要ですよ、そのためにどういうことをするのか。その時にこれだけの規模の病院だった ら専従が必要でしょうとか、この規模だったら専任でもいいのではないかとか、これは 例えばの話です。規模に関係ないという意見があってもいいと思います。そういうこと をいま決めないで、あるいは兼任でもいいですが、そういうことも含めて考えていただ きたいと、私は層別化の意味で言ったわけです。 ○福永部会長  いま言われましたが、皆さん、そういう形の認識でよろしいでしょうか。それが一般 的かなと思います。 ○事務局  次回の本作業部会の日程ですが、次回は11月29日の15時から17時の予定となって いますので、よろしくお願いします。 ○福永部会長  11月29日ですが、場所はこの同じ部屋ですか。 ○事務局  場所はまだきまっておりません。 ○福永部会長  わかりました。長時間、いろいろご意見をありがとうございました。また今後とも是 非よろしくお願いします。ありがとうございました。 (紹介先) 厚生労働省医政局総務課医療安全推進室  医療安全対策専門官 小林 03−5253−1111(2579)