第4回、第5回ヒト胚委員会 委員の御意見の整理

1.第4回委員会

 (委員の御意見)

   (1)(町野)結局生殖補助医療の研究の目的で胚を作る、受精胚を作るということがどのような手続きによって許されるかという問題を議論すれば足りるでしょう。(p.32)

   (2)(笹月)生殖補助医療をどこまでやるのか。遺伝子治療で言えば、ベクターの安全性あるいはベクターを作るというプロセスだけをやるのか。それとも人に与えるところまでやるのか。もしこのガイドラインでそこをやらないとすると、遺伝子治療で言えば、ベクターを一生懸命作ったが少しも先へ進めない、やはり人に戻すところのガイドラインが私は必要になるのではないかと思います。人に戻すところはやりませんと言えばそれで結構ですが、では人に戻すところは誰がどうやって決めてその安全性を担保するのか、あるいは保障するのか、もう一つガイドラインをつくるのかということになるだろうと思います。(p.32)

   (3)(町野)この委員会でやはり決められる問題であろうという観点から申しますと、この報告書自体の考え方というのはとにかく研究目的で、つまり人を出産させる目的ではなくて、研究自体でヒト受精胚を作ることは許されるということから始まっているわけです。そうすると最初に議論すべきなのは、生殖補助医療研究の目的でと書いてあるのですから、生殖補助医療研究がどこまでかということをまず議論するのが先決なのです。(p.34)

   (4)(吉村)その場合の着床と着床率を上げるための研究、つまり着床のメカニズムと着床率を上げるための研究以外の研究は、やはりここの委員会のミッションだと思うのです。ですから、こういった研究をどうして、どういう条件下でできるかということを決めていくのは第一のミッションだと思うのです。(p.35)

   (5)(吉村)これは生殖補助医療研究のためのヒト受精胚の作成を許したということが非常に大きな問題です。これは研究ですから、胎内へ戻さないということを前提にしているとすると、「どんな精子を使ってもどんな卵子を使ってもいいですよ」、「生殖補助医療の研究であったら使ってもいいですよ」ということを言っているわけです。(中略)それは胎内へ戻さないということを前提にすれば全然問題ないのではないかなと思います(p.35)。

   (6)(吉村)ここに大体書いてある研究をやる場合、どのような条件下でやるのかを決めるのがこのミッションであり、着床に関しては胚を戻せないという現実があるわけですから、これは夫婦間でしかできないというような限定をつけるなど、そういったことが必要になってくるのではないかと思います。(p.36)

   (7)(小澤)ですから実際に生殖細胞を取ると言うところは、ある程度共通になるでしょうが、それを母体に戻す研究ともっと基礎的な戻さない研究ですと、だいぶまた議論の仕方が違いますし、それを議論するメンバーも少し違ってくるような気がします。本当にこの研究をひとくくりにできるのかどうか。(p.37)→(笹月)小澤委員がおっしゃったように、胎内に戻すことはまた別のメンバーが必要かもしれない

   (8)(町野)最低限やらなければいけないことがあり、それで実は十分ではないかと思うのは、やはり未受精卵の入手の問題です。これが一つのポイントですからこれはやらなければいけない。もう一つは、先程言いましたように生殖補助医療の研究の目的で受精胚を作るのなら、生殖補助医療というのは何だという問題です。(p.37)

   (9)(位田)文部科学省・厚生労働省にガイドラインを作れとこの報告書で言われているのは、ヒト受精胚の作成及び利用について生殖補助医療研究でどういうふうな問題があるのかということです。それに関しての指針を作りなさいという話でありますので、問題はどこまでが生殖補助医療研究と考えるのかということになります。(p.38)

   (10)(位田)胎内に戻すかどうかということについて、胎内に戻すことも研究として考えられる場合がありうるとすると、恐らくそれはガイドラインの対象にならざるを得ないと思います。実際よくわかりませんが、例えば着床過程への研究とか着床率を上げるための研究というのは、胎内に戻さないと実際には研究にならないと思いますので、それは胎内に戻すが、それを生殖補助医療研究であるとここで考えるのであれば、それはガイドラインの対象になるということだろうと思います。(p.38)

   (11)(石原)先ほどから出ている胚を戻す、戻さないというところで切ってしまって、胚を戻すことはもう一切考えないという話は、かなり遠い先にある目標から考えると限定的になってしまうので、そういう一律の切り方だけはやめておいた方がよいのではないかというのが私の考えです。(p.39)


2.第5回委員会

 (1)配偶子の取扱いについて

 (委員の御意見)

   (1)(笹月)今回のガイドラインの規制の対象として、この精子も対象として考えるという御意見でよろしいですか。極端なことを言えば、これはもう対象としませんという極端な考えもあるかと思いますが、まず対象として検討をしますと、あるいは規制対象という前提で議論しましょうということでよろしゅうございますか。(p.20)

   (2)(笹月)出口としては生殖補助医療ということですので、その配偶子を手にするという意味からいいますと、精巣とか卵巣とか、組織横断もやはり当然加わってくるんだと私は思います(p.21)

   (3)(町野)受精胚作成を伴うもの、ここのところの規制が一番の問題なのです。つまり、もともと、受精胚は個体を発生させる目的でしか作ってはいけないというのが原則です。そういう時に、じゃあ、研究目的でつくることをある範囲で認めましょうかということで認めたのが、内閣府の方の総合科学技術会議の意見書です。では、どの範囲で認めるかというと、生殖補助医療研究の目的であると。従いまして、真ん中のところで、「生命の萌芽である胚の滅失」というところがありますが、ここに焦点を絞った議論であるということです。したがいまして、それ以外の規制をかけるべきか、考えるべきかどうかというのは、もちろん議論すべき問題ではありますけれども、まずこちらの方からやっていかなきゃいけないと。(p.24)


 (2) 胚の胎内への移植を伴うものについて

 (委員の御意見)

   (1)(町野)生殖補助医療研究を目的とするのですから、受精胚を着床させるということは、個体を発生させるわけです。これはその範囲内ではないということをまず確認してもらいたい(p.24)

   (2)(町野)着床させた後の問題については、これは生殖医療一般の問題でございます。こちらについて、現在、指針があるかとか、いろんな議論がありますけれども、その問題を別として、現在の状態はいいのかどうかという議論はこちらですべきだろうとは思いますけれども、最初からそっちの方に行くという議論にはならないだろうと思います。(p.24)

   (3)(星)配偶者同士のものをそういう医療に用いている時に、新しい技術を導入するということに規制をかけるかどうかということは、確かに医療を少し遅らせる方向になる可能性は十分あるんじゃないかというふうに危惧はしておりますけれども。(p.27)

   (4)(小澤)こういう生殖補助医療研究というふうに言っていますので、やはりここまで胚移植のところまで入れないと、何となく中途半端なガイドラインになってしまうと思うんです。ですから、大括りの、かなりいろんなケースに対応できるようなガイドラインを作成しておけば、この胎内に戻すところまで含めていいような気はするんですけれども、いずれにせよともかく胎内に戻すところをきちんと検討しておかないと、IRBだけで本当に各施設・機関が独自の判断で進めてしまっていいのかどうかというのは、非常に懸念はされると思うんですけれども。(p.27)

   (5)(安達)受精胚の作成・利用という、そこの研究は、夫婦間での配偶子で行っていい研究というふうに考えないで、非夫婦間での提供者その卵子と精子を使って受精卵をつくる研究がどこまで許されるのかというふうに考えられた方が、よりすっきり理解できるのではないかと思うんですけれども。(p.29)

   (6)(加藤)つまり、子宮に戻さない方が適切であるようなケースについても、実験的に許容できるという、そういう場合を考えるということですね。(p.29)

   (7)(秦)私もやっぱり受精胚の形成というものと胎内へ胚移殖を伴うという間には、かなり深いというか高いステップがあると思うんですね。(中略)胎内へ胚移殖を伴うものというのは、やはりこれは医療という観点から、必要であればガイドラインをつくるという形であるわけで、やはりここで我々が取り扱うべきものからは少し離して議論した方がすっきりするんではないかというふうに私は思います。(p.31)

   (8)(木下)私は泰先生のご意見に同意いたします。出来た胚を体内へ返すということは生命の萌芽の胚の滅失ではなく、生命を育む行為です。後に胚移植の前での胚研究に関しては先ほどから議論がありましたように研究の指針、ガイドラインは極めて大事だと思います。しかし、胚移植を含めた臨床的なことに関しては、現実的な対応がよいと思います。(p.31)

   (9)(笹月)最初からこれが生殖補助医療研究のガイドラインであるとすれば、その手前で引いてしまうのは、本当に生殖補助医療研究にもなっていないんじゃないかという気がするものですから(中略)まず最初の2段階のところを配偶子単独とそれから胚の作成を伴うもの、そこまでをきっちり決めて、それがきっちり決まった段階でむしろもう一回眺めてみるぐらいのことでもいいのか、あるいは議論の経過で繰り返しこういうことを議論しながら考えていけばいいのかなというふうに思って、今もうそこはやりませんと決めてしまわない方がいいんじゃないかという私の感じなんです(p.32)

   (10)(後藤)やはり、胚形成の段階までの検討で、最初のガイドラインは胚形成までの段階で良いのではないかと考えます。(p.32)

   (11)(笹月)時に触れてこの件に関しては議論して、今日の段階で何番で行きましょうというようなことは結論は出さないでということでいかがでしょうか。(p.33)

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