06/08/28 次期治験活性化計画策定に係る検討会第3回議事録           第3回次期治験活性化計画策定に係る検討会                     日時 平成18年8月28日(月)                        17:00〜                     場所 九段会館 翡翠の間 ○楠岡座長 定刻となりましたので、第3回次期治験活性化計画策定に係る検討会を始 めます。本日はご多忙中のところお集まりいただきまして、ありがとうございます。ま ず事務局より、本日の出席の確認をお願いしたいと思います。 ○事務局 皆様のお手元の資料2に、「次期治験活性化計画策定に係る検討会構成員名 簿」というのがあります。この構成員のうち、本日は武林構成員がご欠席です。なお本 日は参考人として、聖マリアンナ医科大学薬理学教授の小林真一先生にご出席をお願い しておりますが、ご都合により1時間ほど遅れていらっしゃるということです。事務局 側からは、厚生労働省および文部科学省の関係各課より出席させていただいております。 そのうち厚生労働省医政局の経済課長と国立病院課長は、所用により若干遅れておりま す。 ○楠岡座長 続いて、配布資料の確認をお願いいたします。 ○事務局 皆様のお手元に、「第3回次期治験活性化計画策定に係る検討会議事次第」と いう1枚紙があります。本日の日時、場所等が書いてあって、その上から3分の1より 下のほうに「配布資料」ということで議事次第から始まっています。こちらをご覧いた だきながら、皆様のお手元の資料を確認いただきたいと思います。  議事次第を1枚取り除いていただきますと、座席表があります。資料番号の振ってあ るものとしては、資料1の「次期治験活性化計画策定にかかる検討会開催要綱」、資料2 の当検討会の「構成員名簿」、資料3の「医療機関の体制整備に係る論点」、資料4の「医 療機関の治験実施体制に関する現状調査班途中経過(報告)」、資料5の「医療機関の体 制整備に係る基礎資料」、資料6の「患者の治験等参加の促進に係る論点」、資料7の「治 験の啓発活動に関する現状調査班途中経過(報告)」、資料8の「患者の治験等参加の促 進に係る基礎資料」をご用意させていただいております。  番号のないものとしては、先般、総合科学技術会議から出された「科学技術の振興及 び成果の社会への還元に向けた制度改革について(中間報告)」、というものをご用意し ております。  以降は本日ご出席の構成員からの提出資料で、尾芝一郎構成員からの提出資料、小林 史明構成員からの提出資料、辻本好子構成員からの提出資料、山本精一郎構成員からの 提出資料の、以上4点があります。当日配布としては、伊藤澄信構成員からの資料とし て、パワーポイントの3枚分の資料を配布しております。以上が本日の配布資料です。  なお、構成員の皆様のみ、前回の議事録の(案)をお配りしております。また参考資 料として、紙ファイルの資料をお配りしております。このファイルは各回共通の資料で す。この参考資料については、傍聴の皆様にはお配りしておりません。ただ厚生労働省 の当検討会のWebsiteでダウンロードできますので、そちらでご覧いただき、適宜参照 していただけますようお願い申し上げます。またご参考までに、構成員の皆様には国立 病院機構のパンフレットをお配りしております。傍聴の方には若干の余部がありますの で、お帰りの際にお声をかけていただければと思います。以上、過不足等がありました ら事務局までお知らせいただくよう、お願い申し上げます。 ○楠岡座長 それでは早速議事に入ります。本日は「1.医療機関の体制整備について」 と、「2.患者の治験等参加の促進について」を議題として予定しております。まず前半 と後半に分けて、前半18時過ぎごろまでは1の「医療機関の体制整備について」議論を させていただきたいと思います。医療機関の体制整備の論点となる事項については、資 料3の「医療機関の体制整備に係る論点」を事務局より説明していただきます。併せて 資料4「医療機関の治験実施体制に関する現状調査班途中経過(報告)」と、議論のため の基礎資料である資料5「医療機関の体制整備に係る基礎資料」をご紹介いただきます。 そして医療機関の体制整備の観点から、IRB、クリニックの現状にかかわる課題につ いて、それぞれ山本精一郎構成員、尾芝一郎構成員にご発表いただく予定にしておりま す。その後、医療機関の体制整備に係る議論に入らせていただきたいと思います。  後半では2の「患者の治験等参加の促進について」を議論させていただきます。患者 の治験等参加の促進の論点となる事項については、資料6「患者の治験等参加の促進に 係る論点」を事務局よりご説明いただきます。併せて資料8「患者の治験等参加の促進 に係る基礎資料」をご紹介いただく予定です。資料7「治験の啓発活動に関する現状調 査班途中経過(報告)」については、この調査班の班長である聖マリアンナ医科大学主任 教授の小林真一参考人からご説明いただく予定になっております。また患者の治験等参 加の促進の観点から辻本好子構成員にご発表いただき、患者の治験等参加の促進に係る 議論を進めていきたいと思っております。よろしくお願いいたします。  それでは早速、議題1「医療機関の体制整備について」に入ります。事務局から、医 療機関の体制整備に係る論点資料を準備していただいておりますので、資料3、4、5 についてご説明をお願いしたいと思います。 ○研究開発振興課長 その前に、資料ナンバーなしでお配りした資料の中に、「科学技術 の振興及び成果の社会への還元に向けた制度改革について(中間報告)」という報告が入 っておりますので、これについて若干説明した上で、資料3、4、5を説明したいと思 います。これは今年7月、内閣府にある総合科学技術会議の基本政策推進専門調査会で 発出されたものです。現段階での各省庁の研究、科学技術政策については、こちらのほ うで一元的に総合調整をしております。目次に、その6点の指摘があります。その次の 「はじめに」にも書いてありますが、現在、第3期の科学技術基本計画が閣議決定され て、基本計画が実施されているわけです。言葉をそのまま使いますと、科学技術の成果 をきちんと反映させていく上で、さまざまな制度的な阻害要因として挙げられるという ことで、この6つが指摘されております。  その中の3番目、「治験を含む臨床研究の総合的推進」というのが1つの課題になって いて、11頁にその中身が書いてあります。11頁から14頁の下までは、現在のシステム の説明ですので、ここは省かせていただきますが、「体制整備に向けた改革の方向」とい うのが14頁の下から始まっています。ここについて若干ご説明申し上げます。15頁の 最初のパラグラフでは、いちばん下にも書いてありますように、我が国の臨床研究への 研究費の配分が足りない、基礎研究に比してもうちょっとしっかり臨床研究を支援すべ きではないか、というご指摘があります。  次のパラグラフ、もしくは下から3番目のパラグラフでは、臨床研究をする支援を拠 点化すべきではないかと言っております。最後の15頁から16頁にかけては、マイクロ ドージング、もしくはクリティカルパスリサーチという新しい手法についても、我が国 の研究開発もしくは審査等できちんと位置づけられるようにすべきではないか、という ことが指摘されております。  16頁の(2)は、人材の確保と育成です。上から6行目ぐらいですが、実際にどうい う人材をというところで、生物統計家、疫学者から始まって、CRCやデータ管理者、 事務官等についての人材が不足していると。また16頁の下から4行目ぐらいですと、大 学については臨床研究に分野をシフトして、実践的に教育してほしいと言っております。 17頁の最初では、やはりキャリア・パスをきちんと研究者に用意すべきである、研究従 事者、支援者への経済的インセンティブが必要ではないかと。  (3)は環境整備です。まず(1)で「臨床研究に関する倫理指針」についてのご指摘が あります。薬事法に基づく治験の場合は、GCP省令というのがあるわけですが、臨床 研究や臨床試験については、指針というガイドラインになっているという指摘をした上 で、こういった内容を抜本強化してほしい、被験者の保護を確立する必要がある、そし て最後のところで、モニタリングの基準を作って監視機能を充実させてほしいと言って おります。18頁に入りますと、臨床研究の登録を是非進めて公開すべきだと言っており ます。  (2)は、独立行政法人医薬品医療機器総合機構についてで、審査に当たられる人員の比 較を国内外でしております。19頁に行きますと、手続きを透明・効率化させて、質の高 い人員を増やす必要がある、そういうときに製薬企業からの審査費用を増額して充てる べきだと言っております。ちょっと飛んだパラグラフでは、審査のプロセスについて、 特に就業規則の話をしております。キャリア・パスを確立するために、人事交流をより 活発化させるべきではないかと言っております。  19頁の下と20頁のいちばん上では、ガイドラインの話、もしくは医療機器について の審査体制の話があります。20頁の中ほどでは再生医療、特に自家移植、例えば自分の 皮膚を使ったような自家製品と異種の製品との審査や取扱いが、はっきりしていないの ではないかと言っております。21頁(3)では国際共同治験を推進してほしい、特にアジア 等を視野に入れてネットワーク化、もしくは書類様式等の統一化が必要ではないかと言 っております。  (4)国民の参画ということで、(1)の治験の情報提供活動の規制緩和、薬事法の未証 認薬の広告に関するさまざまな規制との関係で、少し幅広にすべきではないかというご 意見をお持ちのようです。また先ほど申し上げた登録のような話も、しっかりすべきだ と。最後に22頁の(2)です。2つ目のパラグラフでしょうか。被験者にインセンティブと して、特定療養費制度を拡大し、保険との併用を可能にすべきである、また治験を参考 にしながら補償制度を導入すべきである、というご指摘になっております。  我々の理解では、これは中間報告ですが、関係各省との調整をした上で、秋にも本報 告に持っていくご意向と伺っております。以上、総合科学技術会議の専門調査会の中間 報告について、若干情報提供させていただきました。  それでは資料3〜5、本日の最初の議題である「医療機関の体制整備について」をご 説明します。まず資料3です。これは「医療機関の体制整備に係る論点」ということで、 今までのこの会議でのご議論、現状調査班の途中経過等々から抽出され、今はこういう ところが論点ではないだろうかというところを、事務局のほうでまとめたものです。  最初が「治験及び臨床研究の中核拠点医療機関の育成」です。先ほどの報告にもあり ましたし、そのほかの所にもありましたように、やはり治験なり臨床研究試験なりを活 性化するためには、中核をきちんと整備すべきではないかというご議論です。症例の集 積性を高めるためにも、そういう拠点を中核化していく、支援をしていく際に、どうい ったものを中核として選定すればいいのかというところが、まさに課題になってきます。 それはいま調査班のほうでも調査していただいております。我々が現在お聞きしている 範囲では、これだけがすべてという意味ではないですし、ここに挙がるものすべてが該 当するという意味でもないのですが、以下のようなことが考えられるのではないかとい うのが、「イメージ」と書いてある四角の中のものです。  「院内体制」としては、もちろんIRBも設置していただいて、一定頻度は開催して いただきますし、専門の部局があり、専門の職員の方々が配置されていると。効率的に 治験の契約をしていただくためには、書式についてもきちんと配慮され、窓口も設置さ れている。支払いも出来高で、契約の症例数ではなく、実際に治験に参加した症例数に 基づく支払いになっている。複数年度に及ぶ柔軟な契約も可能で、治験の依頼をされる 方と医療機関との間の役割分担が適正になっているだろうかと。  次は「人材育成」です。医師やCRCの治験関連職員、それ以外の一般職員の教育、 配置です。また実際に医療機関の医師でも、治験、臨床治験というのがきちんと業務時 間としてカウントされず、いわば趣味的な片手間という整理をされるのは好ましくない と思います。また「患者への情報提供」ということで、一元的に情報を提供することも 含めて、専門外来が必要ではないかと。これらを含めて、どういった要件を備えている ことが拠点たるにふさわしいのかということを、いま調査が終わって分析を進めている ところですので、適宜ご報告申し上げたいと思います。  治験ではなく、臨床研究の中核については、現在我々のほうで「臨床研究基盤整備推 進事業」というのを進めており、医師やCRCといった方々の関連人材の養成・確保を 実際に行っております。そういうところを是非中心に考えていきたいということです。  2頁は「治験等ネットワークの活性化」です。1つは、先ほど申し上げた拠点が単体 として、医療機関としてだけ機能するのではなく、そこを中心とした関連病院を含めた ネットワークとして機能していただくべきではないかということです。そういうものも 含めて、ネットワークをどう構築していくか、具体的にさらに何らかの支援をするもの が必要かどうかということがあります。  もう1つは、地域の診療所や病院の参画促進です。いまSMOを中心にやっていただ いている診療所ネットワーク等があると思いますが、そういったものにも参画しやすい 仕組みです。さらに現在SMOをやっておられる方々については、大変ノウハウがある と思いますので、そういう方々にどういった協力をしていただくことが必要かというの が、c)に書いてあります。  最後はIRBについてです。IRBの委員は、特に医療以外の委員が中心になるかと 思いますが、具体的にどういう観点で見ていただくかということについて、何らかの目 安になるものが必要かどうか、さらにそういう方向に向けてIRBの委員の審査の質の 向上、もしくは効率的な治験の推進のために、何らかの手立てが必要なのかというとこ ろを考えてはどうかというのが論点です。  資料4は治験の実施体制に関する現状調査班の途中経過です。先回も申し上げました が、国際医療福祉大学院と大分大学の中野先生に、班長をお願いしております。調査の 内容としては、大きく4点あります。まず最初は、治験の中核拠点化に関する調査が、 8月23日までに行われました。現在、その調査結果について解析中です。2番目はネッ トワークに関する調査です。これも23日までに行い、現在解析中であるとともに、実地 調査も必要だろうということで9月に予定しております。2頁に移りますが、SMOに 関する調査は8月23日までに実施を終わり、現在解析中です。最後に、臨床試験に関す る実態調査です。これは現在実施中で、8月30日までに書面調査を実施し、その後9月 に詳細調査を実施する予定です。  3頁をご覧ください。その中でいま非常にプレリミナリーではあるのですが、現在ま でに得られている結果について、すべて集計が終わったわけではありませんが、いくつ かご紹介したいと思います。まずネットワークに関する調査です。1は実績ありの場合 と実績なしの場合で、それぞれ比較したものです。当初の我々の想定とは若干異なって、 あまり違いはないようです。有効回答数は15で、審査体制については、いわゆる中央も しくは共同でIRBを設置している所が、10ネットワークありました。情報の取扱いに ついては、9が共同的な取扱い、6が個別の医療機関の取扱いになっています。  4頁はSMO協会にご協力いただいて、所属のSMOについて有効回答数21で見たも のです。実際の治験契約件数別で、ちょうど7機関ずつ100件以上、20〜99件、1〜19 件となっております。当然、件数の多い所の主な治験依頼先は地域病院で、契約件数の 小さい所は診療所が主になっております。その反面なのかもしれませんが、下から2番 目、「治験依頼先医療機関を選考する基準がある」という所は、小さい所のほうがすべて 基準があり、多くの治験契約件数のある所は、必ずしもそうではないということです。 対象としているのが比較的大きな病院なのか診療所なのかで、この辺も若干異なってい る可能性があると思います。特に3の「医療機関側への要望」は、この会でも議論が出 ていましたが、医療従事者の認識の問題、そして実際には医療機関自身が努力できる業 務があるのではないかというところが、現在挙げられております。  資料5は体制整備に係る基礎資料で、既存の資料や新しい調査などを含めてご紹介し ています。1頁の「治験事務局の設置」については、80%、90%程度、事務局が設置し ております。いわゆる公的病院については低く見えますが、母数のNが3ですので、お そらく1つについて設置をしていないということが、大きく影響している可能性がある と思います。  国立病院関係、「国立高度専門医療センター及び国立病院機構における実施体制の充 実」ということで、いわゆるナショナルセンターについては、平成15年度までに8医療 機関に16名の定員を確保しております。国立病院機構についても、医師へのインセンテ ィブの向上施策として、臨床研究活動実績を評価項目とし運営費交付金を配分していま す。(2)ですが、CRCについて、発足当時は54名だったものが、毎年増員して平成18 年8月現在143名が定員配置されております。2頁をご覧ください。さまざまな研修や 説明会をしていただいているほか、(3)の2番目にありますように、機構本部のほうで相 談窓口も設けていただいておりますし、完全出来高制として実施していただいておりま す。また「臨床研究中央倫理審査委員会」も設置していただいております。  3は「国立大学病院における審査体制の充実」です。42大学に治験管理センターを設 置するということで、平成17年7月現在、非常勤も含めてCRCの人数が303名となっ ております。  3頁以降は、海外の状況を見たものです。前回、山本晴子構成員からご指摘のあった General Clinical Research Centerというのが、米国の制度としてNIHのグラントと してあります。米国では120の医学部のうち、80カ所が対象になっております。実際に いくら支給されているかは、年によって違うようですが、100万ドルから480万ドルと いうことで、5年間です。実際の必要とされる組織はここに書いてあるとおりですが、 4)で「取り組むべきこと」というのがあります。きちんとガイドラインに則った施設 整備をしていただいて、有害事象の報告、GAC、GCRC、Advisory Committeeにお いて審議をしていただくということです。  4頁は「韓国の臨床試験活性化に向けた取組」です。韓国では2010年までに15拠点 を設立いたします。公募によって1拠点当たり政府から1年80万ドル、同額を自分たち で出すということで、1対1のマッチングファンドで5年間です。政府としての予算額 は、全部で6,000万ドルです。これは80万ドルを5年間15カ所で6,000万ドルという ことで、おそらく同額が各医療機関から拠出されます。現状は全国で9拠点採択されて おり、実際に医師のCRCの雇上げ等があるほか、ハブ機能や臨床試験の実施等があり ます。人材育成等のための制度もあります。  最後の5頁は「台湾の臨床試験活性化に向けた取組」です。台湾では2002年より予算 化をされており、15拠点を援助しています。人材育成等、GCRCに期待されている機 能があります。  ただ最後の米国、韓国、台湾と我が国との比較を考える際、2点ほど重要な点がある かと思います。1つは、我が国の場合、治験という薬事法に基づくGCP省令があって、 きちんと倫理的にも科学的にもセーフガードのある制度と、臨床研究試験がかなり離れ ているという所に比べて、そもそも未承認の化合物であれば、企業がスポンサーであろ うと、医師が始められるものであろうと、GCP準拠等を要するアメリカのような制度 とは多少異なっています。  もう1つは、特に研究費の使い道です。日本の場合、多くは人件費そのものではなく 研究そのものを支援するということで、実際には研究者がすでに研究機関に雇われてい るという前提で配っておりますが、米国をはじめとして、そうではないタイプもありま すので、実際に総額をそのまま横に持ってきて比較するのはなかなか難しいかと思いま す。ただ対象指数とか、どういう観点で支援をしておられるかということについては、 参考になったと思っております。以上、資料3、4、5について説明させていただきま した。 ○楠岡座長 個別の議論は後ほど行うことになりますが、いまご説明いただいた資料に ついて、何か疑問点等がありましたらここでお受けしたいと思います。よろしいですか。 もし後ほど議論の中で出てくれば、またご質問いただきたいと思います。  次に、この論点を踏まえた上で、各構成員からのプレゼンテーションをお願いしたい と思います。まず山本精一郎構成員より、「IRBに係る現状と課題について」というこ とでお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○山本(精)構成員 「研究倫理と倫理審査委員会について」ということでまとめてみ ました。毎回話にのぼることですが、治験と治験以外の臨床試験というので、違うとこ ろもあるけれども同じこともあるし、この会では両方ということなので、一応両方を考 えて作りました。その後違うところについて、個々の中で議論したいと思います。現実 というか、現状から分析することもあると思いますが、それについては調査もやってい ますし、私のほうは原理原則ということから考えて、何が必要かという立場から今回資 料を作ってみました。皆さんには釈迦に説法のことが多いと思います。  まず2頁のスライドで、「研究倫理はなぜ必要か」ということを考えると、もともとそ ういう概念が出てきたのは、これまでの人体実験の歴史への反省というのがあります。 ただ反省はするものの、やはり医学の進歩には人を対象とした実験は不可欠です。しか し人を対象とする以上守らねばならないことがあるということから、守るべき研究倫理 の原則が導き出されてきたと言えると思います。私はこれが必然だと思いますが、必然 というように考えなくても、ヘルシンキ宣言にはこのとおり書いてあるので、ヘルシン キ宣言を守らなければいけないという立場から考えても、これは必然だと言えると思い ます。  倫理原則の例としてのヘルシンキ宣言では、Favorable risk/benefit,informed consent,independent review,scientific validity,etc.ベルモントレポートでは Respect for persons,beneficence,justiceというように、それぞれのガイドラインご とに、ある事件に対してその反省から出てきたので、それぞれ違っています。NIHの Emanuelさんたちがうまくまとめたものがありますので、それを基に考えてみたいと思 います。それが次の頁です。これが必要十分条件ではないのですが、考えなければいけ ない要件として、このような項目があります。  まずSocial or scientific value and Scientific validity、科学的に意味があるか、 臨床的に意味があるか、科学的にちゃんと行われているか。Fair subject selection.Favorable risk-benefit ratio.Independent review.Informed consent.Respect for potential and enrolled subjectsという7つが、皆さんがある 程度大事だと思うことだと思います。この観点から考えてみたとして、次の頁に、まず 「倫理審査委員会のするべきこと、またそれが出来るようにするにはどうすればよいか」 ということがあります。この倫理要件から考えると、これらの研究倫理が守られている かを監視することが、倫理審査委員会のすべきことになると思われます。  このスライドがまとめのスライドになります。守られているかを監視するときに、特 定個人の判断に委ねては被験者が保護されているかが保障できないということから、最 低限の要件に関しては指針を作って、形式審査をすべきだろうという考えが出てきます。 つまり誰が良いとか悪いといったことであれば守られないので、これだけは守られるよ うにという形式を作って守ることが必須になります。形式だけでは駄目ですが、そうい う形式審査ができるようにするためには、4つぐらいのことが考えられます。  赤い四角というか、中抜きでない四角にありますように、まず被験者保護のための要 件定義をする、形式審査をするための指針を作るということです。守るべきものは何か を明確にし、ちゃんとそれが守れるように倫理審査委員の教育をする。IRBの位置づ けや機能、守るべき法律、指針の理解、つまり何を審査すべきか、どういう点で理解す べきかということを教育しなければいけません。その質の担保のためには、中央登録を して管理しないといけないということが挙げられます。それをすべての医療機関で全部 やるのは大変でしょうから、被験者保護を確実にかつ効率よく行うためには、役割分担 が必要だろうと考えられます。これが今回のまとめです。  先ほども話に出ましたが、次に臨床試験の先進国である米国の例を出してみました。 米国との違いで言うと、まず「法規制」に関しては日本の場合、治験には薬事法がある けれども、研究者主導臨床試験にはありません。米国では治験についても、それ以外の すべての臨床研究に対しても法律があります。「規制当局」に関しては、IRBの規制当 局ですが、日本の治験に関しては医薬品医療機器総合評価機構が見ていますが、研究者 主導の臨床試験については野放しになっています。アメリカではそれらについても、O HRPという所が担当しています。  次の段に行きまして、OHRPが登録もしているし、認定のようなこともしています。 日本では中央でそういうことをやっている所はありません。それに加えて、最後にあり ますように、がんの場合はファンディング・エージェンシーであるNCIが、すべてプ ロトコールのチェックもしていますし、審査もしているということで違っています。こ れが米国と日本の違いです。  私見ですが、翻ってこれを参考にして、先ほど話した要件をどのように守っていけば いいかということで考えてみました。先ほど7つの要件を挙げたものを、もう1回再掲 しました。まず(1)と(2)に関しては、クリニカルなValidity、Scientificな妥当性、正し く方法論的に行われているかということなので、これに関しては専門家がやる必要があ るでしょう。最後の(6)と(7)、インフォームド・コンセントをしっかり取られているか、 あるいは候補者および被験者の尊重がされているかということに関しては、指針や法律 を遵守しているかをまず第1として必要最小限として形式審査すべきです。それに加え、 患者選択が適正であるか、リスク・ベネフィットバランスが研究者のエゴになっていな いかを、患者や一般の方を含めた審査という形で見る必要があります。このように専門 家が見るべきこと、形式審査すべきこと、一般の方の意見を取り入れることという3つ の部分が、審査しなければいけないこととして考えられると思います。  これを具体的に考えた場合の実現の例として、7頁で「治験とそれ以外」での今の3 つの観点を考えてみました。まず、いちばん大事なのは被験者保護ですから、被験者保 護について考えて、それをクリアした上で効率はどうかと考えることにします。治験と それ以外で何が違うかと考えた場合に、審査要件として先ほど挙げた3つの点から考え ると、科学性の審査は同じであると。リスク・ベネフィットバランスの審査も同じだろ うと。守るべき法的要件やガイドラインは異なるので、審査方式のところに入っていま すが、ここについてのみ特化した、ちゃんと見られるような体制を作ればいいでしょう。 あとは同じように審査すべきである、同じような審査でいいと。それに加え、先ほどの まとめにもありましたが、治験特有の問題点として、各施設ごとの対応をスポンサーが 行う通例になっています。そのため施設ごとに形式が異なると手間が大変なので、スポ ンサーが対応するのではなく施設が対応するか、形式を同じにしてスポンサー側の負担 を軽くするということが、効率の観点から必要だと思います。  もう1つの問題として「倫理審査の外部委託」というのがあると思います。これも先 ほどの審査要件から、被験者保護や効率という観点から考えますと、まず科学性の審議 に関しては、外部委託をすることによってそこに専門家を集めておけばよいので、科学 性の審議はできます。また外部審査をしてそこに専門家を集めておけばいいので、指針 や法にあっているかなどの形式審査が手順化しやすいわけです。ただ外部審査をしてし まったら、その施設のことがわからないので、リスク・ベネフィットバランスとか、そ の施設で本当にこれができるのかという、施設や地域の事情をしっかり審査できるか担 保する必要があります。  これにはいろいろな形の担保の仕方があると思います。例えば地域や施設の事情とい うのは何かというと、臨床試験ですから、新しい試験治療がちゃんとできるのか、スタ ッフの量はちゃんといるのか、質はあるのか、医師がいなくなったときにどうするのか、 毒性のモニタリングがちゃんとできているか、法や指針を遵守できるような状況にある かというLocal contextをしっかり担保する必要があります。もちろんリスク・ベネフ ィットバランスも見る必要があります。これらがクリアできれば、外部委託をしてはい けないという理由はないということになるでしょう。  次に、Central IRBとLocal IRBの話があります。外部委託の話とCentral IRBの話 とごっちゃにされているところがあると思いますが、一応定義としては別だと思います。 外部委託は先ほど話したことで、ここではCentralとLocalが両方あるような場合を考 えてみます。「審査要件から考える役割分担」としては、科学性の審査や、法や指針を満 たしているかという審査に関しては、Centralでやったほうがいいでしょう。Localに見 ることとしては、法や指針を遵守できるか、リスク・ベネフィットバランスがよいかと いうのを見ればいいわけです。「メリット」としては、被験者保護の観点からメリットが あるし、負担も軽減できます。またLocalとCentralの両方で見られますから、きっち りしています。ただ「デメリット」としては2回やるので、効率の低下を最少限に抑え られるか、どちらが責任を取るのかということが出てきます。Central IRBのみでLocal にやらない場合は、外部委託と同じなので、その場合の論点は先ほどと同じだと思いま す。  現在トピックスになっていることがあると思いましたので、「具体的な事例」として私 なりの視点で考えてみました。それは「国立病院機構本部や、ネットワーク本部等に Central IRB機能を持たせられないか」ということです。Centralのみ持たせることにな れば、Local contextに対する保証をどう担保するかと。もちろん効率はいいわけです。 Central+Localでやるということは、非常にいいことだと思いますが、効率を上昇させ ることが必要です。組織体、誰がやるか、独立かどうかという観点というよりも、いま 話したような論点が満たされるかどうかということを担保すれば、Central IRBの形は いろいろあるのではないかというのが、私のまとめです。 ○楠岡座長 現状の問題点を非常にわかりやすくまとめていただきまして、ありがとう ございました。議論は後ほどですが、いまの山本構成員の発表に関して、何かご質問等 はありますか。 ○伊藤構成員 国立病院機構本部のことを言っていただいて、大変ありがとうございま した。Local contextをいかに把握するかというのは、私なども問題だと思っておりま す。私自身も以前、SMOのIRBの委員をさせていただいたことがありますが、実際 に医療機関に行ったこともないという状態でした。そこの個別のIRBであったとして も、Local contextの把握ができるかどうかというのは、相当大きな問題ではないかと 思っています。それよりは、仮にCentralでやったとしても、Localの状況がいかに把 握されているのかということが、より重要な案件ではないでしょうか。特にLocalと Centralという議論が多々出る中で、その点を十分に強調することのほうが必要ではな いかと感じております。 ○辻本構成員 数年前に大阪府立病院のIRBの委員ということで任命され、2年ほど 議論に参加いたしました。私が参加する前の委員で、お2人いらっしゃったうちのお1 人と代わって、一般の者2名枠の1名としての参加です。会議の間中、もう1人の方は ほとんど眠っていらっしゃるのです。私はいろいろと素朴に質問したいものですから、 いろいろ発言をしたのです。会が終わった後、その方が私に近寄ってきて「すごいです ね」とおっしゃるから、「どうしてですか」と言ったら、「以前の2名は、ともかく座っ ていればいいということで、ほとんど議論に参加したこともない。私なんか全くわから ない話なので、ずっと眠っておりました」とおっしゃったのです。これがIRBの実態 なのかということで、本当にショックでした。  いまのお話の中で、一般の意見を聞くべしと言っていただいたのですが、議論の監視 役にしても一般の患者がIRBで議論に参加できるほどの情報は、正直言って持ってい ないのです。意見を言おうにも知識もないのです。ですから、その辺りをどのように考 えていらっしゃるかということを、素朴な疑問ということでお尋ねしたいと思います。 ○山本(精)構成員 ごちゃごちゃいろいろ言ったので、論点がぼけてしまいましたが、 いちばんの論点というか、私が強調したいのは4枚目のスライドです。要件定義をして、 教育をするというか、資格みたいなものがあって。それには教育機会も大事ですし、そ れをQualifyして認めて、そういう人が委員になると。また中央登録管理をして、質の 担保をするということが、いちばん言いたかったことです。  今おっしゃったことは、まさにそのとおりなのです。そこに関して最低限守らなけれ ばいけないような部分に関しては、事務局のような所が形式審査をして、科学性に関し ても専門家がやるということです。それはある程度ギブンというか、満たされた段階で 一般の人に入っていただいて、普通の直感的な観点から、普通の人の感覚からするとそ れはちょっとおかしいんじゃないですか、ということのみを言えるような形にするので す。その場合も教育というか、IRBではこれだけのことは議論されなければいけない ということは、もちろんその方にも分かっていただいてやる必要があります。そうでな いと何を議論していいかも分からないし、科学者でないから科学性も分からないのにと いうことで、本当に意見のほしいところに黙ってもらわれても困るわけです。是非意見 を言っていただきたいのです。  一言だけ付け加えさせていただきますと、私はNCIに1年半ぐらいいて、何回か向 こうのIRBに出たのですが、一般の方が出ても、もう本当にシャンシャンなのです。 というのは、その前に形式審査とサイエンティフィックな審査も済んでいて、そのこと に関して一般的な目から見てどうですかみたいなことで、よかったら次に行きましょう、 次に行きましょうといった感じだったのです。ですから見るべきことをはっきり見ると いうことを明らかにするのが、質の担保には必要ではないかと思います。 ○山本(晴)構成員 先ほどLocalとCentralのIRBの話が出たので、私も思うとこ ろを。1つには、患者がIRBに参加するというのは、欧米ではもうやられていること ですが、日本ではちょっと立ち遅れています。病院の昔の事務員を入れるぐらいだった ら、やはり一般の患者の代表をIRBに入れるべきだと思います。それにはやはり山本 精一郎構成員がおっしゃるように、教育や制度をもう少しきれいにして、参加しやすい 形にする必要があると思います。ただ、これは後半の治験の情報をどうやって一般の方 に伝えていくかというところにもかかってくると思うのです。IRBをクローズにした 上で、参加してください、参加してくださいということだけをオープンにしていくとい うのは、やはりちょっとおかしいと思います。ですから審査の過程も全部見せていくこ とが大事だろうと思います。  もう1つは、LocalとCentralという話です。フランスのIRBはたしか地区ごとに 分かれていて、地区の中のCentral IRBというのをつくっているはずです。日本での施 設に置くという基本は、たぶんイギリス、アメリカ系の考え方だと思いますが、別にそ れにこだわる必要はありません。もちろん参加するIRBを各施設に置くというのは、 内容が今いち担保されないとか、効率が悪いということがだいぶ出てきていますから、 ある程度セントラライズする必要はあると思うのです。しかし先ほど伊藤構成員がおっ しゃったように、出てくる施設が全くわからない形でやるというのは、もうかなり無理 があることなのです。私自身はある程度参加する施設が限られているというか、固定化 した所にIRBがCentralとしてあるほうが望ましいのではないかと思います。  国立病院機構はこれから多分あまり出入りがないと思いますので、例えば国立病院機 構の中にCentral IRBがあって、各病院のある程度の状況を把握した上でやっていき、 弱い所については、またさらに底上げを図ることもできます。そういう意味で言います と、各治験ネットワークを持っておられる所が、その本部にIRBを置いて、固定され た施設の中で中央で審査をするというのが、効率とある程度のLocalな状況も把握した 上できるということで効率的で、ある程度現状に合ったやり方ではないかと思います。 ○辻本構成員 議論を戻すようですが、IRBへの一般患者への参加について先の例で 申し上げると、地域の名誉職の方が選ばれていたと聞いたのです。しかし、それでは全 く意味がないわけです。「教育」という言葉をおっしゃいましたが、例えばその地域ある いは病院単位ということで、興味のある方たちの学習会のようなことをしていただき、 その中から選んでいくという教育システムもあります。それが逆に治験を普及していく、 理解してもらうということにつながるやもしれませんので、そんなこともあったらいい なと思いました。 ○山本(精)構成員 いまのは素晴らしいご意見だと思います。いまのご意見に似たこ とで、1回目にも言ったかもしれませんが、ほかの病院はわからないけれども、国立が んセンターではIRBの委員が○○長とか、要は偉い人ということで役職指定なのです。 なぜ役職指定かというと、いろいろなことがあった時、それに対処しないといけないか ら、責任を取れるような人たちということで入っていると思うのです。あるいは著名な 方とか。しかし要件定義をして、はっきりとサイエンティフィックな部分は現場のバリ バリや統計学者に見てもらって、法律などの要件に関しては、事務的にきっちりそれを 見てもらうということにすれば、何も役職指定で入れる必要はないのです。本当に一般 的なリスク・ベネフィットバランスがわかる人だということを入れればいいので、役職 指定よりは教育を受けた人ということにしたほうがいいのです。もうちょっとフットワ ークの軽い形に変えていくことが必要ではないかと思います。 ○伊藤構成員 私自身、IRBの一般の方に対する考え方は逆です。辻本構成員と逆の 考え方を持っております。あまり教育を受けていない一般の患者に、もし、あなたがこ の治験に参加するとしたら、この同意説明文書を読んでどういうようにお感じになりま すか、それに対してもし異議があるというか、違和感があるようでしたら教えてくださ いと。実際に国立病院機構で外部委員としてお願いしている先生は、近くの中学校の校 長先生です。また別の所のIRBの事務局もやっておりますが、そちらのほうでもIR Bの委員をお願いしている方は、別の地域の病院に行かれている元患者にお願いしてい ます。形式的な話やサイエンティフィックな話は、事務局で見る話だというようにお願 いしております。かえっていろいろ勉強されると、一般の方の感覚とずれるのではない かという危惧を持っております。いろいろな考え方があるのではないかと思っておりま す。 ○辻本構成員 私が教育ということでお願いしたかったのは、どんな場でも患者の立場 として発言できるという勇気です。私たちがどんなに勉強しても、科学的あるいは治験 そのものということに立ち入られるわけがありません。これはおかしいということを、 IRBというかなり緊張を強いられる会議の中で発言するのがこの役割である、という 教育をしていただきたいのです。今おっしゃったように、校長先生ならその発言ができ るのです。一般の患者にはできないのです。そこなのです。 ○山本(精)構成員 教育については、伊藤構成員がおっしゃることはもっともだと思 いますが、例えば「一般論としてRCTは倫理的ではない」とか、「人間に対して人体実 験をすべきでない」と言う人が入ったら困りますよね。というのは、ヘルシンキ宣言で はそれは必要悪だと言っているわけです。世の中で認められている科学的に妥当な方法 で行われていることというのが要件になっているので、それを「駄目だ」と言うような 人が入ってしまうと、IRBとしては機能しなくなってしまいます。ヘルシンキ宣言は 守らなくてもいいのだというのであればいいのですが、ある程度こういうことは分かっ ていただかないと、毎回RCTはよくないというような議論になってしまっても、何の ための会か分からなくなってしまいます。先ほど言った意味とは違う意味ですが、やは りある程度は分かっていただく必要があるのではないかとは思っています。 ○楠岡座長 IRBの委員への教育と言うと変ですが、1つには「教育」という言葉が、 日本では少しイメージが堅くて、型にはめるのが教育というようなイメージがあるよう です。そうではなく、いま辻本構成員がおっしゃったように、発言ができるような勇気 を与える教育が必要と思います。自分の言うことに根拠があればはっきり言えるわけで すから、その根拠がどういう根拠かということを知らせるという、もうちょっと広い意 味での教育ということで考えていきたいと思います。  この問題は、まさしくこの次の治験の啓発につながる問題です。IRBの教育に関し てはかなり議論が進んでしまいましたので、この辺りで次の課題に移りたいと思います。 Central IRBがいいのか、あるいはLocalがいいのかという体制の問題に関しては、治 験のあり方検討会のほうで検討していただきますが、これは長く続いている1つのトピ ックスであるかと思いますので、いまのご意見は是非治験のあり方検討会のほうでも、 是非していただきたいと思います。  審査管理課長がいらっしゃいますので伺いますが、治験のあり方検討会では、Central とかLocalに関して、どのような議論になっているのでしょうか。あるいは今後の方向 というのは、どうなのでしょうか。共同IRBが今年4月のGCPで一応片が付いたと いうことにはなっているのですが、GCP省令を読んでも共同IRBが読み取れないよ うな感じもまだあるのです。その辺はどのような状況になっていますか。 ○審査管理課長 いま楠岡座長からお話がありましたように、今年4月から共同のIR Bということになっています。この治験のあり方に関する検討会でもかなり議論があり まして、皆様方のお話にもあったのですが、確かにヨーロッパではCentralというのが 中央といいますか、ディストリクトごとになっているところもありますが、いわゆる病 院単位ではないIRBというのが一般的になってきています。それに比べて日本のGC Pはホスピタルベースドということで始めて、症例の中では非常に例外的なケースとし て外部に委託ができるという形になっていたわけです。今年の4月からそこについては いわゆる外部なのですが、これもCentral IRBという言葉を中央IRBと訳しますと誤 解を招くということで、Central IRBという形で言っていますが、そのCentralという のはいわゆる病院の群です。病院群、病院の群の中で、センターにIRBを置くことが できるという意味で、ある意味では外部なのです。  ただ、ヨーロッパで言っているような国レベルとかディストリクトレベルで、一括し て臨床研究とか治験を審査するという意味ではありません。そういうものができるよう になって、できるだけ充実した審査ができるためにはどうあるべきかという議論の中で、 従来の原則ホスピタルベースドのIRBをもう少し柔軟にということで、いわゆる Central IRBの設置が、病院群の中で合意されればできるという形になりました。2段 階の話とかいろいろ細かい話が実際問題としてありますが、そういう形でより柔軟に。 ただ、より良い審査を議論していただくために、そういうチョイスも作ろうという形の 中でできてきたということです。やや包括的なコメントですが、そういうことです。 ○楠岡座長 IRBに関してはまだ少し議論もあるかと思いますが、もうかなり時間を 過ぎておりますので、次のテーマに移って、尾芝構成員のほうから、クリニックに係る 現状と課題について、お話をいただきたいと思います。 ○尾芝構成員 もともといただいていたテーマは、「医療機関の体制について」というこ とだったのですが、医療機関の体制といいましても、体制というのはいったい何だろう かという議論もあり、構造設備からスタッフの問題までいろいろあるのかもわかりませ ん。この中でいままでの流れからすると、実施に係るスタッフにより近いところの話な のだろうと理解はしまして、これが私の話の1つ目のベースです。  もう1つは副題にありますように、診療所、クリニックについての話としております。 最近、診療所でも結構、治験というものが行われているのは認識されているところでは ありますが、どの程度かかわっているのだろうかとか、どういった問題があるのだろう、 どういったメリットがあるのだろう、どういった背景なのだろうかというのは、ここに いらっしゃる構成員の先生方はよくご理解いただいているとは思うのですが、一般的に はまだまだそこまではいっていないところもあります。ここでは、復習の意味も含めて、 SMOの代表でもありますので、診療所、特にSMOは主に診療所をターゲットとして いますので、診療所の現状や背景などをお話するのがいいだろうと考えております。  大病院、いわゆる病院、中核、基幹、いろいろな名前がありますが、そういった病院 での問題点は過去、幾度となく議論されております。その背景としてはいろいろな議論 が行われるときには、そういった施設、あるいは組織からの方々の間で議論されること が圧倒的に多いというところも背景としてあるというのは、ここで1つお話をしておき たいと思います。  2枚目の紙ですが、これは少し古いのですが、ベースメントの基礎的な資料として、 診療所ではどのぐらい治験が行われているのだろうか。そこの例にありますように、完 全に診療所とは書かれておりませんが、黄色の医療法人以外のところは、いわゆる基幹、 中核、大手の病院のところで、これが1996年以降急速に収縮している。それ以外の医療 法人と黄色のバーで示されているところは民間、全部ではありませんが、かなりの部分 がクリニックにかかわっている部分と想定はできます。そういうのは1999年以降のここ の資料でも、これはある製薬企業の資料ですが、実施される医療機関の件数ですが、件 数的には非常に増えてきているということです。件数が多いからマジョリティーになっ たということは一概には言えませんが、件数的には増えてきていることは事実ではあり ます。  次は、昨年の臨床薬理学会のシンポで発表されたものを引用したものです。これもも う少し新しいところで「実施医療機関の内訳」ということから考えますと、今回はクリ ニックというように完全に分かれており、件数からしても、アンケート調査のうちの4 分の1はクリニックで実施がされていると。いろいろなタイプの病院がある。それが例 えば10タイプあったのだから10分の1だろうというのではなくて、クリニック、診療 所のレベルというのは件数的にはかなり多いというのは、これもサポートしている資料 だと思います。  次の資料は、今度それぞれの医療機関でどのぐらいの症例数がこなされているか、エ ンロールされて実施されているかというところです。これは完全にコンプリートされた 症例について述べられているわけですが、これからするとクリニックでも件数としては 25%であったのが、さらに33%まで増えていると。クリニックの肩を持って言いますと、 これからすると1施設当たり、1医療機関当たりの実施症例数というのは、ほかと比べ ると比較的多いとは読み取れることはできます。ただ、実施しているプロトコール、あ るいは対象としている疾病が違いますので、一概にだからそちらが効率がいいというこ とは決して言えない話だと、そのように我田引水はよくないと思っています。  ここ数年というか、もう10年近くですが、診療所での治験の実施が増加した背景を簡 単にまとめてみました。ここでお話していることは、すべてステレオタイプ、極端な例 をとっていますので、その辺はご了解をいただきたいと思います。1番目、これは言葉 足らずで意味がわからないかもわかりませんが、現行GCPに移行したところで、新た な治験実施医療機関が必要となったと。よく言われているように、現行のGCPに移行 した当時、非常に手間がかかって、それ以前に行われていた治験実施医療機関でのキャ パシティーといいますか、それが非常にきびしくなって、たくさんの治験をこなせなく なってしまって、治験をする場所を新たに求めなければいけなくなってしまったという 社会的背景があったわけです。ということは、それまでに治験にあまり参加していなか った医療機関に参加をしてもらう、という選択肢が1つ出てきたわけで、その代表例が 診療所であったわけです。それ以前は診療所で行われる治験はOTCの治験など、非常 に簡単なオープンレベルの、どちらかというと使用経験に近いような治験が中心だった のですが、新薬の治験といったものまで診療所に落としていこうという基本的な話だっ たと。  これは治験を主に行っている製薬企業サイドの背景というか環境ですが、高齢化、長 寿になって、いわゆる「生活習慣病」の患者が増えましたので、当然、医療ニーズが増 えて、そういった薬剤・治療方法を開発しなければいけない、高度なフェイタルな疾病 ばかりではなくて、そういったものに対して目を向けないと製薬産業としてはやってい けないところがありますので、それをやらなければいけない。そうしたらどうするのか。 そうすると、開発するためには、やはりそういった患者の協力が必要になってくる。そ の患者を求めていくと、これは必然的と言ってもいいと思いますが、やはり診療所レベ ルでそういった患者のご協力をお願いしないと、これは高度的医療を行っている中核病 院でそういった患者に参加してもらおうにも、患者がいらっしゃらないという状況がも う1つあります。  さらに、今度は診療所サイドの都合ですが、当然いろいろな医療制度の改革等が行わ れました。簡単に言ってしまうと、診療所も経営されているわけですので、よく言われ ているように、こういったところの経営がかなり苦しくなってきているところがある。 そうすると、通常の保険診療収入以外の、はっきり言って収入というものを得たいとい う診療所の経営者、ドクターといった方も出てまいります。こういった人たちが注目し たのは、治験に伴う研究収入といったものに注目されてきた。これも無視できない背景 だと考えます。  今日は診療所のお話をしているわけですが、次の頁はこれこそ典型的な話ですが、病 院と診療所はどう違うのか。いくつかのファクターで並べてみたのがそこです。時間も 押していますので、それぞれすべてを説明いたしませんが、やはりかなり環境は違って いるだろうと思います。ここに出ていないところでも、もっと構造度設備的、組織的な ものであると、緊急対応に対する仕組みなどといったものも当然違います。診療所の場 合は院内で処理することはできませんので、何らかのバックアップ体制はとらなければ いけないという問題も含んではおります。  そういったことを文章でまとめてみました。7頁はそういったファクターをまとめた ものです。「治験実施に関連しての診療所の特性」と書いてありますが、治験の実施経験 が一般的に少なく、院内スタッフ数が絶対的に少ないです。決して大きい病院はスタッ フが余っていると言うつもりはありませんが、比較の問題として、やはり診療所のほう がスタッフ数が圧倒的に少ないということ。それから、経験が少ない、情報が来ないと いったところから、院外からの支援が必要な場合が非常に多い。この辺りが我々SMO が支援をしている背景の1つになっています。自分たちだけで完全に独立的にやれるこ とがあまりないということが1つあります。  一方、これは治験にとってはある面良いことなのかもわかりませんが、いわゆる診療 所というのは、典型的に言いますと、ホームドクター、プライマリーケアと呼ばれてい るように、日常、地域の患者と接する機会が多いので、比較的、患者との距離が近いあ るいは接する機会が多い、お話をする機会が豊富にあるというところから、被験者候補 を担当医の頭の中で考えたり、あるいは参加を持ちかけたりすることが、これは比較の 問題ですが容易ということがあるのではないか。  しかし、良いこと、悪いことが順番に出てきますが、圧倒的に施設が小さくてスタッ フ数も小さいので、1医療機関としてのキャパシティーは少ないわけです。ですから、 いくつかのプロトコールを並行的に行い難い。あるいは例えば先ほどのIRBにします と、ある診療所に1つIRBをつくってしまったりしますと、そこのIRBの審査効率 は非常に悪いもので、1プロトコールについてずっとやって、有害事象が起こるたびに、 そのためだけにやっているような効率の悪いことが起こってしまう可能性があります。  また今度良いことになりますが、院内が非常にシンプルでスタッフが小さいので意思 の統一が簡単である。意思というのは「ドクター」ではなくて「will」のほうですが、 みんなが「やるんだ」と言ってしまえば、みんながもうやっていることはわかっている し、その治験についてどうだこうだという議論が院内で起こることは少ないと思われま す。同じように、事務処理など、いろいろな処理にかかわる時間も意思統一が図られて いるので速やかであると。これも組織のシンプルさと関係がありますが、インセンティ ブ、特に経済的なインセンティブにかかわってきますが、これが見えやすい形で行われ ますので、インセンティブが働きやすい、前向きになってくる。医療機関全体、特に責 任医師が前向きになるという傾向は、無視はできない正直なところだと思います。  これらをまとめて「診療所の特性と関連しての問題点」をそこに書きましたが、1つ は我々が支援していても思うのは、先ほど言いましたように、実質上、実施を外部から の支援に頼らざるを得ないという状況になっているので、極端に言えば頼りっぱなしに なってしまって、そのノウハウや知識や学習されたものが、なかなか集積されることが ないだろうと。「診療所の先生たち、スタッフもいろいろな所の講習会に行ったり学会に 行って、学べばいいでしょう。病院のスタッフの人たちも、皆さんそのようにして勉強 しているのだから」という意見もよく聞かれるのですが、診療所の場合は休めないので す。その日その日で診療して、はっきり言ってそれを医療機関の収入としていますので、 休診イコール収入源を絶たれることになってしまう。病院で比較的バックアップのある 所でしたら、今日は休診です。あるいは研究日です。ということも可能かもわかりませ んが、そういった自由度というのは診療所の場合は非常に低い。それを理由にしている、 甘えにしているところもありますが、なかなか知識やノウハウが定着しなくて、要は進 歩しない、いつも人任せになってしまっているというのも実態です。  それから、先ほど言いましたように、1医療機関のキャパシティーが大きくないので、 1施設で1プロトコールについては、そこそこ10例とか15例とかを集めてくるかもし れませんが、トータルで1年間で、ある期間を区切って医療機関単位で見てみると、そ れほど多くの症例を集積していることにはならないということ。これにIRBの効率が 加わってきます、あるいはモニタリングの効率が加わってきますと、思っているほど高 い効率を保っているわけではありません。人手によって、診療所の治験というのは要は 人海戦術によって支えられているという1面はあります。  それと先ほど言いましたインセンティブが効きやすい、それも経済的なインセンティ ブが効きやすいところから、これが過度な効き方になってしまうと、無理な治験を引き 受けてしまって、あとから二進も三進もいかなくなって大きな問題となるというのは、 最近よく耳にされていることだと思います。  最後にこういったことについての課題なのですが、スタッフの教育ということです。 先ほど言いましたように、教育と言うのは簡単なのですが、これが実際やってもらえな い、出かけてもらえない。それをどうするのかというのを、そういった医療機関スタッ フでもできるようなことを考えなければいけない。「講習会をやったからいらっしゃい よ」では、診療所から人は来ないというようになります。ですから、1つはまず教育、 他人任せにしないように、自分たちで教育を学習しなければいけないという動機付けは しなければいけないだろう。それと、日常診療の合間に行われるような教育と言ってい いのか、学習ができるようなシステムも考えていかなければいけないのかと。これは私 の個人的な意見ですが、そのようには思っております。  それから、過度の経済的なインセンティブが発生しないような研究費算定の仕組みの 検討。具体的にはどうかわかりませんが、いま実際行われているのは、医療機関のほう は一定のポイント制などをとってしまって、作業は全部外部の人間にしてもらう。ポイ ント表の算定をした場合、極端に言えば、はっきり言って医療機関がやってもいないと ころの請求をできるような仕組みになってしまっている。これが日本の治験のコストア ップの体質になっているところもあるので、やはりやった分だけお取りなさい、やって いないことに関してはそれは違いますと。そうすると、やはり自分たちで学習して、よ り多くのことをやらなければいけないという、本当の意味でのインセンティブにもつな がってくるのではないか。いまはやらなくてもそれは請求ができるというようになって いるのが実質です。  それから、先ほど良いも悪いも診療所のいろいろな特性がありましたが、こういった ものを反映した適正な役割を果たせる仕組みづくり。極論を言いますと、診療所はそれ ぞれ単一で全部1から10まで治験をやり遂げることが、いちばん適正な、トータルなシ ステムづくりからして良いことなのだろうか。例えば被験者に近くて、生活習慣病の被 験者にお声をかけることができるのであれば、極端に言えばそういった役割に特化して しまって、それをどこかに集めるなどといった。ただ、それに対してはそのエフォート に対しての対価なり、インセンティブが働かなければいけないのかもわかりませんが、 先ほどから出てきている本当の意味でのネットワークづくりからすると、今日新聞に出 ていたセンター化構想もそうかもわかりませんが、そういった所と診療所がどうやって 組んでいけるのかということを考えないと。いまは病院は病院、診療所は診療所、それ ぞれやっています。「おたくのことは知りません。タイプが違いますから、全然違います」 というだけでは、話にならないでしょう。そういった意味での事前登録とか紹介システ ムのようなものを、フェアな形で考えていかないといけないのではないか。  それから、医療機関選定時の慎重なアセスメント。これは主に依頼者そしてSMOに よりますが、先ほど言いましたような過度なインセンティブがかかっているようなとこ ろで、どんどん形だけの医療機関登録をして、届出をしてあとから大騒ぎする場合だっ たら、ちゃんと慎重なアセスメントをする。それには何が必要かというと、これは診療 所に限りませんが、医師と依頼者やサポートする人間との十分なコミュニケーションを できるような仕組み、あるいはみんな自覚を持たなければいけないのかと思っています。 ゴールとしては簡単でして、無理な実施や無駄な作業を避けると。そのためには、いま 言ったような診療所というものを、体制からは少し離れるかもわかりませんが、どうい ったパズルのピースとして組み入れていけばより効率が上がるのかというのを、診療所 の問題ではなくて、トータルの問題として考えていく姿勢が必要なのかと思っています。 以上です。 ○楠岡座長 ただいまのご発表について、何かご質問等ありますか。 ○竹内構成員 1つだけご質問なのですが、いまご発表していただいた5枚目のところ で、生活習慣病に対しての必要性、もう1つのインセンティブは経営的な環境が厳しく なっているので、インセンティブが非常に働くと。ただ、この生活習慣病なのですが、 例えばうつ等に関して、薬効はそんなにないと。お薬を開発していくのに対して、新し いお薬が普通の患者を治していくために、そんなに薬効はない。それに対して、昔のハ ンディートータル等も、主要評価項目を使っておりますと、もし診療科の先生方が治験 に対してある程度の意識がしっかりしておられないと、たくさん診療科があって、各診 療科の患者が1人、2人で入ってきますとばらけてしまって、薬効が全く出てこないと いうことが最近非常にわかっております。やはりこのSMOをいかに治験の体制にして いくかということに対しては、これからやろうとしている治験または薬の開発は、何が 目的でどうされるのかということをある程度はっきりしていただかないと、折角人が集 まってきたはいいが、患者のばらつきが大きくて、とてもではないけれども薬効が出て こないということが、うつ等で起こっております。そういうところは少し、もちろんS MOとしてはいいと思うのですが、そういう生活習慣病に対してこれから開発しようと する薬に関して、そこら辺をはっきりしていただきたいというのが私の希望であります けれども。 ○尾芝構成員 おっしゃるとおりで、そういった施設間のばらつき、それぞれがリクル ートするときのばらつきは我々も経験しておりますし、明けてみると全然差が出なかっ たのでやり直しになっているものは絶対あります。それはSMOが関与する機会が増え ていいのではないかという議論ではなくて、それはやはり大きな問題にはなっておりま す。ただ、比較的、昔のタイプに比べると1施設当たりが少ない少ないとは言っても、 2桁以上は集まってきますので、ちょっとはましなのかな。ただ、それでも当然ばらつ きは出ます。  実際何が起こっているのかという実態を言いますと、依頼者のほうから先生に言って もわかってもらえないときに何が起こるか。これはコーディネーターとかSMOのほう に言うわけですね。そうすると、SMO、支援に入っている人間が、医師でもないのに 先生に「この程度の患者がリクルートする場合、ばらつきになって良くないんじゃない ですか」と、これは本当にそんなことがあっていいのという話すら出てくるような場合 もある。これは全部ではないのですが、たまにはそのようなことが見受けられる。  メーカーのほうもばらつきをなくしたいので、一定にしたいので、そういったとき、 先生にも言うけれども、先生以外に周りでサポートする人間たちも巻き込んでやらない と自信がない、というようになっているのは事実です。ただ、答えとしてはそういった 問題は十分わかりますし、実際、発生しているのは事実なので、先ほど言った医師のほ う、あるいは実際主役となるべき責任医師のほうの教育だとか、認識を上げることが大 切だと思います。 ○山本(精)構成員 医療機関を選ぶのは、SMOの人ではなくてスポンサーですよね。 そのときにどういう基準で選んでいるというか、そこで例えば何らかの教育をしてもら うとか経験があるなどということで、当然やってらっしゃるのでしょうけれども、そこ に手を入れるということはできないのですか。 ○尾芝構成員 実際、経験がある所などを選ぶときのクライテリアに挙げられているこ とは多いです。ただ、経験のある所となりますと、治験がボンボン増えてきますと、そ れはみんな枯渇してしまうわけです。その次には経験がなくても、以前大学病院でやっ た経験があるかとか、そういった所に落ちてくるのですが、先生は遠い昔にやったこと があるかもわからないけれども、医療機関としてはやったことがなくて、ほかの人たち は全くわからないと。先ほど言ったみたいに、先生は日常診療が忙しいもので、人任せ になっているときには大きな問題になると思います。  そのとき私が言いたかったのは、そういった先生にどうやっていくのかというのを、 施設選定のときによく選ばなければいけない。結構そのプロセスがわりと簡単に、それ よりも「先生、症例ありますか」とか、そういったところにシフトしているところも無 きにしも非ずで、それはSMOの悪いところでもあるのですが、SMOは選定はしませ ん。でも、できる所はありますと紹介をすることはするわけです。そうすると、依頼者 のほうからしたら、紹介してもらったのだから大丈夫かなと。そこをベースに考えてし まうと、当然選定が甘くなってくるところがある。いろいろなファクターがあるのです が、そこで問題になってしまって、あとから先生が落ち着いたら、IRBも終わってか ら、「プロトコール見て、俺はこんなことできねえよ」と言い出すようなことすら起こっ てしまう、とんでもない状況も見受けます。 ○山本(精)構成員 先ほどのIRBのところで教育と登録という話がありましたが、 もちろんそういうことも形的には可能なわけです。これだけのことをクォリファイされ た人のみが治験に患者さんを登録できるシステムもあり得ると思います。治験の分野の 具体例はよく知らないですが、例えばがんの臨床試験であれば、NCIに研究者として 登録されないと、NCIがスポンサーの臨床試験には患者さんの登録ができない。研究者 登録は誰でもできるのですが、臨床試験を実施していく中で、問題がある研究者は次か ら患者さんの登録をできないようなになります。研究者登録は、臨床試験参加への敷居 を上げるのではなくて、駄目な研究者だとわかった段階で研究に参加させないようにす るというブラックリストなのです。IRBのクォリフィケイションだけではなくて、研 究者のクォリファイもあり得るのではないかと思います。 ○楠岡座長 先ほど診療所スタッフ、責任医師の教育などという問題もありましたが、 我々の病院では必須にはしていないのですが、治験セミナーを受けないと担当してはな らないとしています。アメリカなどですと、大学の中でセミナーなどを受けて、簡単で すが試験を通らないと実施できない。日本の大学でも、そのようなシステムをとり出し ている大学もある。ただ、それは先ほど尾芝構成員がおっしゃったように時間の問題が あるのですが、大概はみんなeラーニングのシステムをとっていて、Webの中でやって います。最後にテストを受けて、合格だと合格証をプリントアウトして提出してくださ いみたいなものなので、この辺はITなどで対応ができていくところがあるのではない かと思います。  経済的な問題としては、医療機関が経済的な点から無理をするというお話だったので すが、SMOも同じようなところで無理をしてしまわないかという点はいかがでしょう か。 ○尾芝構成員 あまり私の口から言うとあれなのかもわかりませんが、傾向は否定する ことはできないと思います。やはり実施ができる医療機関をより多く紹介をする、とい うのがSMOの1つのビジネスですので、それは否定はできないです。だから、これは 協会などにも言っていますが、SMOにも高い倫理感というか、高いでなくてもいいの ですが倫理感はないといけないというようなことはあります。先ほど言ったインヴェス ティゲイターのクォリフィケイションもあるけれども、そういう点では紹介者サポート をしているSMOのクォリフィケイションに近いようなもの、あるいはとんでもないこ とをした所というのは、それなりのマークを付けるなりの方法は検討に値するのかもわ からないです。 ○辻本構成員 私どもは電話相談で患者のお声を聞いている立場なのですが、治験に関 しての相談は大体病院の問題なのです。いま伺っていて、これだけ開業医の方の治験参 加が増えているにもかかわらず、ほとんど届いてこないということはいったい何なのだ ろうというように考えながら、いまお聞きしておりました。密接がゆえにということで、 そして行け行けどんどんみたいなことで、一方的な押し付けの自己満足型になってしま っている中で、患者が断りにくいという側面がありはしないかという懸念が1つありま す。  もう1つ、いまSMOの倫理というお言葉が出たのですが、ドキッとしたのは「症例 はありませんか」ということを、先ほど尾芝構成員がおっしゃったのです。私たち患者 は症例ではないのです。そこのところが、やはりSMOの方たちの倫理感ということの 中にまだ欠けているとすると、患者は非常につらい立場に置かれますので。言葉の揚げ 足を取るようで申し訳ないのですが、これはほかの方にも聞いていただきたいお話で、 患者は決して症例ではないということを申し上げておきたいと思います。 ○榎本構成員 私は時々SMOのCRCの方とお話する機会があり、悩みや問題点など をお聞きすることがあります。SMOのCRCの方と病院のCRCの考え方が大きく違 うのは、どうも契約体制が大きく影響しているように感じられます。本来の姿としては SMO契約して、SMOからCRCや事務局要因を派遣していただき、その費用を病院 が治験収入から支払うという解釈でいいかと思います。  しかし、現状としましては、SMOと製薬企業との二者契約、または病院を含めた三 者契約で、治験費用に関する契約が取り交わされているということを以前お聞きしまし た。そのために、どうしてもSMOの方々は病院側の業務支援というよりは製薬企業側 の意向に沿うような形になり、今後も製薬企業から治験の依頼が受けられるような業務 態勢になってしまう場合もあるのではないでしょうか。CRCの方も板挟みになりなが ら、その辺を非常に苦悩されています。製薬企業側の要望により、症例を速く集めるた めに同意を取らなければならない。そして、製薬企業からのクエリに対して、有害事象 の判断などもクリニックの先生方はあまりよくわからないので、CRCが主体となって、 どうしても製薬企業の良いような形のCRFを仕上げていってしまう。それらに関して、 CRCが非常に悩んでいるということをよく耳にします。それらを改善するために、契 約体制を本来の姿に戻していただいて、CROは製薬企業側のサポート、SMOは医療 機関側のサポートということをもう少し明確にしていただけないかと思っています。ど うしてもスピードとコストダウンを求めるあまりに、そちらにシフトしすぎて、上がっ てくるデータの信頼性がもしかしたら損なわれてしまうのではないかと、私たちCRC レベルでも危惧することがありますので、SMOとの契約に関して厚労省のほうでも確 認いただけるシステムがあればいいのではないかと感じることがあります。 ○楠岡座長 いまの契約の問題も非常に重要な問題なのですが、これもまたどちらかと いうとあり方検討会のほうで検討していただくことになってくるかと思いますので、是 非お願いしたいと思います。三者契約等になるのは、実は昨年の作業部会のところでも 議論があり、税金面での対策など治験とは違うところの問題があって、結果的にそうい う三者契約になっているという問題もあるようですので、これは今後の検討事項になっ てくるかと思います。  だいぶ時間が過ぎてしまいましたので、もともとの論点のほうへ少し戻って議論をさ せていただきたいと思います。資料3の「医療機関の体制整備に係る論点」、先ほどの資 料4の途中報告、資料5の基礎資料、先ほどの山本構成員、尾辻構成員からの発表をベ ースにして、資料3にあるそれぞれの課題について、少しご議論をお願いしたいと思い ます。予定をかなり過ぎておりまして、終了時刻が20〜30分遅れる可能性があると思い ますので、ご了承願いたいと思います。まず、資料3の1「治験及び臨床研究の中核拠 点医療機関の育成」で、治験と臨床研究、それぞれの中核拠点、医療機関の育成という 問題が出ております。これについて、何かご意見はありますか。 ○小林構成員 資料3の論点に沿ってというところですが、違う視点になってしまうか もしれないのですが、スライドを用意したので紹介させていただきます。昨年度ありま した「治験を含む臨床研究基盤の整備に係る専門作業班報告書骨子」の中で、今日の資 料3の論点から入れられる「医療機関の治験実施体制の充実」といった項目がありまし た。この中で、治験に係る医療機関ネットワーク及び個々の実施医療機関のさらなる質 の向上方策の検討という中で、スライドで赤字で示している、日本医師会治験促進セン ターがやっている大規模治験ネットワークにおける中核事務局の機能強化を図ろうとい うことで、例示として依頼者窓口機能の強化といったものが謳われておりました。  これについてずっと考えていたのですが、先ほど来、尾芝構成員や山本構成員のやり 取りもあったのですが、依頼者が病院を選ぶのだと。依頼者がやりたい病院で、もちろ ん今もやっていると思うのですが、依頼者という立場からして、頭を下げてやってくだ さいといった構図が目に浮かぶわけですが、実際いま私どもが事業でやっております医 師主導治験ですと、こういった条件に合致する所、やりたい所は手を挙げてくださいと いうと、施設が手を挙げてやらせてくださいという形でやっており、これを企業治験に も応用できないかと考えております。  スライドの3頁ですが、この依頼者窓口機能の強化という意味で、製薬企業あるいは 医療機器企業が、依頼者となる治験の施設選定の協力に大規模治験ネットワークを活用 できないかということです。方法としては治験概略と、こんな施設、条件に合致する所 があればやりませんかといった案内をメール等で発信することで、やりたいところが手 を挙げる。先ほどの議論にもありましたように、依頼者が求める責任医師の要件、病院 全体の要件を提示して、まず応募要件をクリアしているかどうか。さらに、たくさん手 が挙がった場合は、その中で相対的な評価をして良い所を選んでいく。もちろん、それ だけで全部の施設が抱えられるかどうかわかりませんので、別途企業なりの情報で、こ こはやりたいなと思っている所があれば、そこと組み合わせてやることもできるかなと 思っております。  4枚目ですが、メリットとしては繰り返しになりますが、施設側がやりたいと手を挙 げる形になるので、非常に高い意欲でやってもらえるのではないか。企業の要求を提示 可能です。例えばモニターが紙を1枚もらいに行くのに、わざわざ行かなくてもメール・ 郵送で対応してくれますかとか、企業なりの要求は出して、それに応えられる所を選ん でいけば、これこそが企業から見れば、その治験に限りますが、効率的・効果的に進め る施設整備での方法ではないかと思います。  これは既に実例が2回にわたり、3本のプロトコールをこういった形で募集をしたこ とがあります。1つオーファンドラッグでうまくいった事例ですが、依頼者の企業がど この病院にどのぐらいいるかといった情報は既に持っていたのですが、今回そのときに こういう方法で募集をしたことで、ノーマークだった病院に案外患者がいたといったこ ともあって、そこも入ってくださって非常に効率よく組入れが進んだといった実例も既 に経験しています。あまり組入れが進まないとか、協力姿勢がちょっと下向きなところ があれば、依頼者だけではなくて、日本医師会としてもよろしくといったことをするこ とも可能かと思いますし、治験だけではなくて、製造販売後の臨床試験でもやれるかと。  これも既にいくつかの企業と話をしている中で出てきた話ですが、効能・効果は既に 承認されていて、新しい効能の承認を取ったあとの市販直後調査が求められたときに、 既に売られている薬ですので、ある病院がそのあと薬を買ったときに、既存の効能で買 ったのか、新しい効能のために買ったのかがすぐはわからないといったときも、こうい った形で調査をすれば追加効能で市販直後調査に協力してくれる所はありませんかと、 そういったあたりでも募集は可能で、依頼者側からしてもメリットもありますし、実施 医療機関側からしても、治験あるいは調査が受けられるチャンスが増えるという形で、 こういった形で今後取り組んでいきたいと思っております。以上です。 ○山本(晴)構成員 私も小林構成員がおっしゃる前に、先ほどの尾芝構成員のお話を 聞いているときに、クリニックにしても病院にしても、単独のところを拾い上げていく ような時代ではないのだろうなという気がして、別にどこかが全部を集約する必要はな いけれども、拠点があって、周辺にある程度病院なりクリニックが付いていてというと ころがないと。教育にしても、例えば患者に対する倫理的なことについても、単独のク リニックであれば、その先生の性格というか考え方で進んでしまいますが、ある程度ネ ットワークがあって、例えばその現状に合った教育体制とか、セミナー、あるいは情報 交換などがある程度できるような状況であれば、やはりその組織の中での他人の目は気 にすると思うのです。ですから、そのようなある程度ブレーキがかかるような環境もも う少し得られると思います。  私は直接は治験ネットワークについて存じあげないのですが、印象としては緊急対応 のできる大きな病院とクリニックという組合せが多いのではないかと思うのです。その 前に、結局、生活習慣病であれば、緊急対応のできる病院というのは、どちらかという と事務的なことを押し付けられてしまうような印象が多いと思うのですが、逆にお互い にサービスを提供し合うという形で、ウィンウィンの関係になっていくというのが一因 ではないかと。  これは治験ではないのですが、例えばうちの病院は臨床試験、臨床研究も非常に盛ん で、臨床研究をどんどんやりたいという先生も出ておられるのですが、どうしても病院 だけではできないアイディアをいろいろ考え付かれて。結局例えば予後調査をクリニッ クに変えるのですが、その人たちをそのまま置きたいとか、そういうところで慢性期の 治療についての試験を行いたいなどというのがあるのです。そういう治験ではない臨床 研究レベルになると、単独でクリニックを何人か集めてネットワークを形成するのもち ょっと無理なのです。ですから、やはり治験のネットワークが臨床研究、臨床試験のネ ットワークにも広がっていくのではないかと思いました。 ○楠岡座長 先生がおっしゃった後半の治験のネットワークと臨床研究ネットワークと いうのは、実は国立病院機構である程度モデルになるようなことが行われています。伊 藤構成員がいらっしゃいますが、そこそこうまくいっているようなモデルもありますの で、同じような使われ方は可能ではないかと思います。  中核拠点ということの考え方なのですが、こちらの中にも「備えるべき要件」「備える ことが望ましい要件」ということがあるのですが、具体的な役割ですね。要件ではなく て実際の役割として、当然治験そのものを行うこともあると思うのですが、先ほどの地 域での診療所などのネットワーク等のサポートも考えられます。単に患者への緊急時対 応などという問題だけではなくて、治験を行っている最中にいろいろな疑問点が出てき たときに、診療所の場合、言うならばセカンドオピニオンを求める所がないというのが 実情です。依頼者に聞いても、たぶん依頼者に都合のいいことしか言わないだろう、S MOに聞いても本当にそれが正しいのかどうか、失礼な言い方ですけれども。そういう ときもセカンドオピニオン的なものをいったいどこに聞くのかというのがいま確かにな いので、そういうものの受付窓口というか、いろいろな質問に答えることも役割として 考えられます。  「人材育成」ということですが、あまりに人材がありすぎると、拠点病院がSMOの 仕事を奪うことになってしまうわけですが、そこの相互関係も大切です。実際SMOが いまいちばん困っておられるのは、実習箇所がないことです。座学はどこでもできるの ですが、実習箇所がない、実習を受け入れてもらえる所がない。こういうところを拠点 病院が引き受けていくことも考えられます。  「患者への情報提供」、あるいは患者に対する相談窓口も、まさにがんの拠点病院がし ておられるような内容がそのままになるかと思うのです。どういうことを引き受けるか ということも明確にしていかないと、作ったのはいいのですが何をしたらいいか、選ば れた病院もわからないということになってしまうので、ここを少し明確化していく必要 があると思うのです。  臨床研究のほうは、今回もう既に基盤形成事業が始まっているのですが、治験に関し ては今回初めて出てきたことです。この点に関して、何かご意見はありますか。 ○中島構成員 中核拠点といいますか、拠点医療機関という意味では、ここでは(1)と(2)、 つまり治験と臨床研究があたかも個別に役割を担うようなものを想定されているように は解釈できるのですが、私どもとしてはむしろ拠点病院としては、(1)と(2)を両方備えて いる、1施設で両方備えているような拠点病院をなるべく数多くつくることが、結局は 重要ではないか、意義があるのだと思います。 ○楠岡座長 まさにそうだと思うのですが、具体的なことを申し上げると、例えば医学 統計専門家という方が、まず全国的にそんなにたくさんいらっしゃらない。それから、 少なくとも治験を行う場面においては、必ずしもそういう方が施設の中にいる必要がな い。おられればそれに越したことはないのですが、むしろいらっしゃらなくてもいい。 あるいはプロトコールなどの疑問が出たときに質問するという意味では、センターみた いな所、あるいはむしろ臨床研究の拠点病院におられる方に窓口になっていただく、と いう連携という形でいけると思うのです。少し揃えるスタッフ等から考えると、将来的 にはこれは当然1つになるべきものでしょうけれども、現段階では2段階でいったほう が現実的かなという気はいたします。 ○山本(晴)構成員 楠岡座長がおっしゃるように、目的と走る研究というか、治験の 内容によって、要求されるものが違うと思うのです。私は医師主導治験をやっておりま すが、ネットワークを作るためには、全国の高度な治療をやっている所を集めないとい けない。そういうのも必要だと思うのです。特に治験であっても臨床研究であっても、 非常に高度な内容の治験をするとき、あるいはオーファンの患者を対象にしたような治 験をするときというのは、大きな病院がネットワークを組んでやらないといけない。で も、大きな病院といっても、現状ではそれぞれが事務局をちゃんと持っているわけでは ないし、患者数はたくさん持っているけれども、私立病院で臨床研究などはほとんどや っていないというところもありますので、そういう中でも事務局的なことをしなければ いけない所が出てくると。  ただ、治験だけをやるということであれば、地区に自然発生的にできた所もあります し、日本医師会などが声をかけて、医師会を中心につくっておられる所もあります。そ ういうのは地域の特性によって違うと思いますが、わりと基本的な構造、それと必要な ことも似通ってきていると思うのです。例えば事務を全部自前でやるのか、ある程度S MOとタイアップしてやるのか。そのような所が少しずつ違うと思うので、私は現状と していろいろあるところの、少なくともうまくいっているモデルケースをできるだけ取 り上げていく。そういうモデルケースをみんなが真似できるような形にしていっていた だきたいと思う。どうしても見ていると、みんなそれぞれのところで拠点になるべく頑 張っているのですが、お互いにあまり情報を交換していないというか、失敗を共有でき ていないという感じがすごくあるので、こういうことをすると失敗する、こういうよう にしたほうがいいと。あとは例えばこういう様式を作ったから、これを使ったらどうか と、そういう情報を共有してできていくところに、さらにそれは厚労省なのかわかりま せんが、ある程度援助が入っていくという形が、いまのところは望ましいのではないか と思います。 ○荒川構成員 私は、中島構成員の言われたことは非常によく理解できるのです。大学 病院等では、医療技術とか医薬品の研究開発という観点からしますと、私どもは自主臨 床試験と呼んでいますが、そういったものを有効に機能させていかないと、なかなか効 率的な研究開発ができない。そういう所では治験と臨床研究、私どもでいう自主臨床試 験がダブルスタンダードであってはいけないと思うのです。やはりそれなりの信頼性を 確保して、ちゃんとスタイルを守ってやっていくということをやっていかないと、臨床 研究と治験を分けてしまうと、それぞれの道に進んでいってしまうという、むしろ弊害 が出てくると思うのです。 ○楠岡座長 私が申し上げたのは、既成制度を分けるというわけではなくて、基盤とし て2つを積み上げていくということであって、将来的に1つになるにしても基準は、例 えば今日山本構成員が話されたように、自主研究的な所も何らかの規制などをGCPレ ベルに合わせていく必要はあるかもしれない。そういう意味で、ダブルスタンダードで はなくて、拠点づくりという中で、同じゴールを目指すにしても少し分けてつくってい くほうが、よいのではないか。あまりに最初から同じレベルのものをつくろうとすると、 かえってつくれないのではないかということを危惧して申し上げたのです。 ○山本(精)構成員 私の知っているがんの臨床試験において、中核拠点医療機関とい うのは何にあたるのだろうと考えておりました。例えば先ほど山本晴子構成員の話でち ょっとイメージができたのですが、例えば米国では、大病院、がんセンターはフェーズ Iをやります。それに対して、地域の中核拠点病院はフェーズIIIに参加する、つまり患 者を登録するという役割を担っています。だから、地域中核病院には統計家は要らなく て、大病院は自分たちでフェーズIとかフェーズIIをやるから、リサーチスタッフが必 要である。そこでやると。ただ、1,000例規模のフェーズIIIをやるためには、大病院だ けでは患者が集まらないので、ネットワークを組んで中核拠点病院に患者登録をしても らう。そこは自分たちでは試験の計画を立案したりするのではなく、ほかの所がつくっ たフェーズIIIに参加する…という形があるので、やることが違うという意味において、 2つはあっていいのではないかと私は思います。  さらに大きなネットワークとして全米規模のCCOPというものがあります。NCIがス ポンサーして臨床試験に登録するには、ある程度病院としての資格が必要なのですが、 CCOPという資格を得るとNCIのすべてのフェーズIII臨床試験に登録できるようになりま す。CCOPであり続けるには、年間100例以上登録しなければならないですが、1例当た り2,000ドルもらえて、100例ですと大体2,500万ぐらいになります。2,500万の予算で CRCを2人雇い、ファーマシストを雇い、事務局員を雇うという形になっているので す。  CCOPネットワークの資格を得るには、1施設である必要はなく、その地域で3つか4 つ集まって、ひとつのコンソーシアムみたいなものをつくってもいいということになっ ています。このコンソーシアム自体が小さなネットワークのようなものです。  CRCがコンソーシアムの中の病院を巡回したり、コンソーシアムがカバーしている 地域内の病院と協力して臨床試験対象者の候補となる患者さんのリファレンスセンター となる、というような役割を担っています。まさに今議論されているシステムの実現と いえるかもしれません。これは臨床試験でも治験でも同じといえるし、ネットワークと してお金を管理したり、ボリュームディスカウントでCRCやシステムを持てるというこ ともあると思うのです。そういう意味でも、先ほど山本晴子構成員が言われたように、 良い例を調べて、そういうのを導入していけばいいのではないかと思います。 ○楠岡座長 既に議論が2番目の「治験等ネットワークの活性化」というところに入っ ておりますが、いかがでしょうか。 ○伊藤構成員 資料を持ってまいりましたので、国立病院機構というのは146のある意 味で大学病院と弱小病院の立場にあります。ただ、弱小病院でも集まって何ができるの かということで、私どもは臨床研究それから治験、両方に足場を置いてやっております。 特に大学病院などでは、珍しい病気とかオーファンなどという病気をおやりになられて いるのだと思いますが、私ども国立病院機構では、できるだけ多くの患者の協力を得て、 日本人のためのエビデンスを作っていきたいと思っております。それが昨年度始めたも のが約7,000名の患者の登録の同意を得て、いっているのもあります。  そういった形で、先ほどから出ていたのが評価をする、悪い所を弾くという視点だと 思いますが、私どもはそうではなくて、頑張っている所を支援していきたいと思ってお ります。臨床研究活動実績の評価項目と、治験の実施症例をやると2.5ポイントなので す。こういった形でポイントをつけて、実は3枚目のところに「平成18年度研究助成金」 と書いてあるとおりですが、臨床研究部や臨床研究センターに付けている、いわゆる助 成金の7割がこのポイント表に応じて配る形になっています。頑張っていただく所には、 大体1ポイントが8,000円ぐらいに相当する形で研究の助成金を配っています。  先ほど来議論が出ております、臨床研究の中核の拠点ということと、そういうプロト コールを作ったりという所はある程度必要だろうと思います。一方では、こういう形で 病院のネットワークを通じて症例を集めるということをしなければ、いくら素晴らしい プロトコールを作ったところで、絵に描いた餅に終ってしまうのではないかと思ってお ります。  もう1点は、国立病院機構の特性ではありますが、中核病院という形で整理をしてし まいますと、私ども神経難病の病院がいくつかあります。そういう所は治験も多くあり ませんし、特殊な患者だけを持っておりますので治験のプロトコールも多くはないです。 そういう所を切り捨てるということをしてしまいますと、神経難病とかアルコールにし てもそうかもしれませんし、てんかんにしてもそうかもしれませんが、そういう患者の データを得るような体制整備がなくなってしまうのは危惧するものです。 ○楠岡座長 全部を中核病院に集めるという考え方ではないと思います。先ほど言った ように拠点であって、その周りにサテライト的にと。先ほど先生がおっしゃったような、 神経難病中心の病院というのは、逆に言うと、常に持続的に治験があるというだけでは ない所もあるので、そういう場合には中核病院と連携しながらというやり方も考えられ るのではないかと思います。現に、機構でもそういう方向で進められていると伺ってい ます。  3番目のIRBに関しては先ほどかなり議論が出ておりましたが、だいぶ時間も過ぎ ておりますので、是非これだけはというご意見がありましたら追加でご発言いただけま すか。 (特に発言なし) ○楠岡座長 それでは、かなり予定の時間を過ぎておりますので、本日の議題の「患者 の治験等参加の促進について」に移ります。事務局のほうで、治験参加等の促進に係る 論点資料を準備していただいていますので、資料6及び資料8について説明をお願いい たします。 ○研究開発振興課長 資料8からご説明させていただきます。資料8の1頁の上の図は 治験の認知です。「ある程度知っている」「言葉は知っている」を合わせて40%強です。 右のほうを見ますと、新聞や雑誌の記事、広告・チラシ等が主な媒体です。2頁で、ど ういうパンフレット・ビデオ、学校教育、インターネット、啓発活動等が行われている かという例示があります。3頁は、医師もしくは医師以外のスタッフへの治験に関する 教育です。国立大学付属病院のほうではかなり熱心にしている、というのはおわかりい ただけるかと思います。  4頁では「情報提供の現状」ということで、2−1の(1)で、先ほどちょっと触れまし た、臨床研究の登録制度が日本でも始まっています。UMIN、JAPIC、医師会の 治験促進センターというところで、都合700数十件が日本でも登録されているというこ とです。(エ)のところにある国際製薬団体連合会のところでは登録件数が3万件です。 新薬情報、未承認薬検討会の検討が2−1の(3)のところで書いてあります。2−2「治 験に係る被験者募集」というところで、薬事法上の未承認薬の広告に関する規制の関係 があります。名称や記号等を表示しないということを前提として、被験者を募集するこ とになっております。  5頁の3「米国における治験の啓発活動」ということで、これはClinicalTrials.gov という所で、NIHでやっているサイトです。もともとは、Grantを提供するもののみ 登録ということだったようですけれども、現在のところは開放されていて、約3万2,000 件の登録があります。それから、2万9,000人の訪問が毎日にあるということです。ご 承知のとおり、臨床試験研究についての登録というのが、ランセットやニューイングラ ンド等のメジャーなジャーナルへの掲載の前提条件と昨年の9月からなりました。  7頁は、治験参加者に係るインセンティブに関係する制度です。40%程度の医療機関 で、具体的に参加していただける患者に何らかのメリットを考えて実施されています。 その内容が下に書いてあります。完全予約制であったり、診察や調剤、会計等で優先さ せていただくということが多いというようです。8頁は保険局から説明していただきま す。 ○医療課長補佐 8頁の(2)治験時の費用負担についてということです。医療保険制度で、 治験依頼者と適切な役割分担という観点から保険料を挙げているということです。網掛 けになっているのが、保険医療で請求している部分です。網掛けになっていないところ は、治験依頼者の負担になっている部分です。  それも、いろいろなパターンがあるわけですけれども、まず、医薬品の場合に「企業 依頼の治験」というのが最初に書いてあります。それで、企業が負担する部分というの は、検査などの診断、投薬審査というものになっています。医薬品ですので、投与開始 から最終投与日までというのが治験期間ということになっております。その実施期間に おいて一体の役割分担になっています。  次は「医師主導の治験」です。医師主導治験においては、検査、画像診断の部分は保 険でみるということになっております。投薬、注射と、治験薬に係る費用とありますが、 その部分については保険給付外という整理になっています。  次は医療機器ですが、医療機器も2つに分かれています。ここに出ている図は、企業 依頼の治験についてです。医療機器の場合は、前後の1週間という扱いになっています。 医薬品の場合は何回かの投与という形になりますけれども、医療機器の場合は手術1回 だけということがありますので、そういう特性を踏まえながら前後1週間という扱いに なっています。その網掛けの部分が保険で適用される部分ということで、検査、画像診 断、手術、処置というものが保険給付外となっているということです。  医師主導治験の場合に、医療機器の場合医薬品も同様ですが、検査、画像診断につい てまで保険にかかわってくるということですので、医師主導治験の場合はこの部分につ いては網掛けになるという形になっております。  次は(3)安全性確認試験ということです。治験の終了後も、別個の治験が計画されてい れば、承認まで事実上の治療継続となるということです。安全性確認試験においても、 治験と同様に特定療養費の対象になるという整理です。  (4)は生活保護対象者は特定療養費が適用されていないということです。 ○研究開発振興課長 いちばん最後の生活保護の関係については、座長からもご指摘が ありましたけれども、以前は特定療養費の世界の中で、治験とか、いまの新しい制度で いう選定療養、患者の選択に基づく療養の区別がつきにくかったという事情があり、生 活保護の場合は対象になっていなかったわけです。今度は評価療養と選定療養と分かれ ましたので、その辺について担当局としてどう考えていただけるのですか、ということ をいま相談しております。  資料6は論点です。1番は「啓発活動と情報提供」ということで、一般の方向けには、 先ほどどういうメディアからというのがありましたけれども、インターネット、新聞雑 誌、テレビというところが大きなメディアになってくるかということです。医療関係者 については、従事している方はもちろんですけれども、実際に治験に関係していない一 般の職員もそのような形で協力していただく場合がありますので必要であるということ。 治験窓口以外でも、情報提供が充実できるようにということで、例えば大規模ネットワ ークに入っている場合に、治験担当窓口には情報が行っているけれども、それ以外の所 にはなかなか来ていない状況もあるようですので、少し改善していければと思います。  (2)の情報提供のところで、最初のポツのところは、どの医療機関で、どういう医薬品 の治験が行われているかという情報も、もちろん薬事法上の広告に関する規制にも配慮 しながら、何らかの道が可能かどうかという検討が要ると思います。2番目の、一元的 な情報提供の必要性については、先ほどの臨床研究の登録制で一部実現できるのではな いかと思っております。  2「被験者の参加の促進」については、(1)のところにあるように十分な情報提供をき ちんとしていくべきだろう。実際に治験に入るときだけに情報提供するわけではなくて、 治験自体がどうなったのか、その後どうなったのかということも是非知りたいという方 もいますので、そういう情報もきちんと提供できるようにするべきだろうということ。 それから、先ほどもありましたが、審査承認のための治験終了後も、継続的に治験薬が 提供できるかどうかということについて、治験を延長してやるという場合は可能ですけ れども、そうでない場合もあるのでそこが問題点だということです。  (2)は、先ほど総合科学技術会議の報告にもありましたが、医療保険との併用について 何らかの手立てが必要ではないかということ。最後のところは、先ほど申し上げました 生活保護の関係です。 ○楠岡座長 個別の議論は後ほど行いますが、いまの論点の説明についてご質問はござ いますか。 ○山本(晴)構成員 間違っていたら訂正していただきたいのですが、医療課から説明 のありました、c)の治験終了後の継続治験というところで、治験が終了してから承認 までの間の未承認の状況での治療継続のときに、特定療養費が適用されるということに ついて、医薬品と機器でちょっと違いがあると聞いたことがあります。いまは、医薬品 も機器も両方こういう状況で適用されるのでしょうか。 ○医療課長補佐 いまは医薬品だけで、医療機器についてはまだ適用されていません。 ○山本(晴)構成員 それは、医療機器についての対応は、今後行われる可能性はある のでしょうか。ここでお聞きすることではないのかもしれませんけれども。 ○医療課長補佐 考え方的にはそれでいいのですが、これは保険局と医薬食品局にかか わってくることでして、治験というのをどこまでの範囲とみなすかということです。安 全性確認試験というのも、事実上治験と同様のものであると医薬品の場合はみなしたの でこういう扱いになっているということです。その辺の整理が行われれば、保険側とし ても検討することになるということだと思います。 ○山本(晴)構成員 その件についてですが、うちでは埋込み型の試験をすることが多 くて、特に人工心臓、補助心臓、ペースメーカー、ICBといったものは埋め込んであ る程度経てば治験を終了するのですけれども、結局メンテナンスはずっと発生します。 特に、補助人工心臓などは治験が承認されるまでに何年もかかります。その間に、必ず トラブルが起こりますし、その度に部品の交換であるとか、定期的なメンテナンスとい うものが必ず生じますので、安全性確認試験をやっているから治験でやる、というのは なかなか医療機器には適用しにくい状況もありますので、できれば将来的には整理して いただければと思います。 ○楠岡座長 安全性確認試験についてここの書きぶりなのですが、私の理解では、従来 は治験が終了した場合、継続試験という形が治験として組まれれば特定療養費の対象に なった。ここにある安全性確認試験というのは、継続試験の場合には、その前段階の治 験に入っているのが前提条件だったわけですけれども、安全性確認試験は、前段階の治 験には入っていなくても、新たにこの治験に加わることで未承認薬の提供が受けられる という解釈でよろしいわけですね。 ○医療課長補佐 そうです。 ○榎本構成員 いまの話とつながるのですけれども、資料6の治験論点の中の2の(1)の c)で、治験終了後の医薬品等の継続提供の必要性ということです。継続提供に関して、 最近では各治験依頼者のほうで、承認までの継続投与試験として組んでくださるケース が増えてきています。しかし、継続投与試験の準備がなされていない治験もまだ多く、 その際に治験依頼者に対して理由を確認しますと、「ほかに代替薬があるので準備してい ません」というお答えをいただくことが多いのです。  平成9年のGCP改正以前に、治験外提供という方法がありまして、通知が出ていた かと思います。どうしても患者にとってその薬が重要で、必要だということであれば、 製薬企業のほうに病院側から要望書を提出して、IRBで審査して、それで厚生労働省 のほうに報告すると、治験外提供が可能という制度があったかと思います。患者さまに とって治験外提供が本当に必要であれば、その制度は今でもまだ実施可能なのでしょう か。 ○審査管理課長 かなり限定的な話にはなりますけれども、そういうことはあります。 ただ、期間とか、反復、継続がどれぐらい行われるかということで、私ども審査の部局 と、監視指導の部局で協議させていただき、取扱いを個別に判断することになります。 ○楠岡座長 制度としてはまだ続いているのですか。 ○審査管理課長 制度といいますか、いわゆる人道上の見地から、やむを得ない措置と して認めているということです。 ○楠岡座長 まだ生きているという言い方でいいわけですね。 ○審査管理課長 はい。 ○中島構成員 追加させていただきますと、製薬協としての理解は、平成10年の審査管 理課長通知で出ている、あくまで治験の枠組みの中で投与されているものの継続という ことで、そこには抗癌剤、長期投与試験の対象になるようなもの、それ以外に生命等に 影響を及ぼすようなものという3つの対象に対しては、あくまで治験の継続ということ で許されているということです。  それ以外については、平成3、4年ごろに、内規的に投与してもいいということはあ ったようですが、それは、その後それはあくまで内規であって、あくまで治験の継続で なければ投与できないという解釈になっていると理解しております。 ○楠岡座長 我々の感じでは、治験が望ましいというような雰囲気と受け取っているの ですが。 ○審査管理課長 最終的には責任問題が発生する。治験が終了し、患者も非常に希望し ている。そうすると、企業の依頼で治験が行われたのであれば、それがその後も延長し てもらって、長期投与試験という形に組み入れられるという形がいちばん望ましいわけ ですが、そこはなかなかそういう具合にはいかない。したがって、治験としては一旦切 りたい、でも医療機関ないし主治医なり患者がどうしても欲しいという場合には、先ほ ど言ったようなものを、もちろん物によりケースによりということですけれども、全く 考えられないわけではないです。  ただ、その場合に何か起こったときの責任問題というのが非常に難しくなってまいり ますので、そういうことがいま中島構成員からお話があったのだろうと理解しておりま す。 ○楠岡座長 後でディスカッションの時間は取りますので、次に、こちらの検討会の報 告をしていただきます。「治験の啓発活動に関する現状調査班」の班長を務めていただい た小林真一参考人から途中経過の報告をお願いいたします。 ○小林真一参考人 資料5ですが、7と別添が付いております。いま議論がありました ように、患者の参加がなければ、被験者の参加がなければ治験は成り立たないわけです。 そういう面から、被験者への情報提供をどうすればいいか、現状ではどうなっているの か、ということを把握しなければいけないわけです。その意味で、7月中旬から8月中 旬にかけて治験に参加した患者、それから一般の病院に来ている患者、普通の一般生活 者とここには書いてありますけれども、そういう一般の方々を対象にしてアンケート調 査をいたしました。その結果が別添ですので、これを報告させていただきます。  アンケートですが、この治験の参加者は、聖マリアンナ医科大学、東京女子医大、大 阪市立大学附属病院、国立病院機構の8つの病院・センターで、これが治験の参加者で 185名です。これは、まだ中間報告であって最終的な報告ではありません。一般の患者 は、医師会のネットワークを利用させていただき、約299名の患者のアンケートを集め ました。一般生活者822名は、インターネット等を利用して取らせていただいた結果で す。  別添のほうをめくりますと、最初に「基本データ1」というのがあり、男女の性別は 大体同じぐらいで、トータルで1,306名です。データ2を見ますと、いちばん左の円グ ラフのいちばん左に、どういう年齢層かというのがあります。大体20代、30代、40代、 50代、60代がきれいに分かれておりますので、20代から60代までの人たちが入ってい るということでご覧いただければいいと思います。データ3には、それぞれの職種が書 いてありますが、このようなところです。  アンケートQ4で、治験という言葉あるいは内容を知っていましたかということです が、今回「知っていた」が55%ということで、これは予想より多かったわけです。この 1つの要因、これはまだ確定ではありませんが、これはいま分けた区分でいいますと、 患者だとか治験に入っている人はもう少しパーセントが低くて、40〜45%ぐらいです。 今回はインターネットの人の数が多いので、その人たちを含めると55%になるわけです。 そういうところが現状です。いままでよく言われていたのは、大体30〜40%というのが 一般的に言われていたところですので、そういう面ではこういうデータであるというこ とです。  アンケートQ5−1、治験についてどのような方法で知りましたかということです。 多いのは、テレビ、新聞・雑誌・広告、インターネット、医師、治験コーディネーター などの病院内職員ということです。これをもう少し細かく見ると、「インターネット」と 答えているのは一般の生活者が多いです。実際に治験に参加したりしている人たちは、 「医師、治験コーディネーターなどの病院内職員」から聞いたというのが多いわけです。 その両方を合わせたところで比較的多いのがテレビ、新聞・雑誌・広告というところで す。インターネットが多いのは、どちらかというと一般の方が多いというふうにご覧い ただいてもいいのではないかと思います。  ご覧になった情報についてどのようなものでしたかというのは、一般的な治験の情報、 内容、参加の案内というものです。よくわかりましたかというのが次にありますが、大 体よくわかったというところで書いてあります。  Q6、7ですけれども、医療先進国である「我が国での治験」はこれからも必要だと 思いますかということに関しては、約8割ぐらいの方々が「そう思う」と答えておりま す。さらに、治験を行うのはリスクを伴いますが、優れた医薬品を開発するためには治 験を行うことは必要だと思いますか、という質問に対しても約8割弱の人が「そう思う」 と答えています。一般の方々というか、患者側もこういうことは必要だと理解していた だいているということです。  Q8は、治験にはどういう印象を持っているかということです。これは、非常に建前 的な部分では、「医療の進歩に貢献できる」とか、「新薬の開発に貢献できる」というこ とですが、これ以後のクエスチョンでもこの2つは多いわけです。それからポンと飛び まして、下のほうに「最新の薬や医療機器を使うので、副作用などのリスクが不安であ る」ということで、リスクに対する不安というのはいずれのクエスチョンにもあります。 貢献できるけれども、リスクは心配だということがあり、当然といえば当然ですが、そ ういう数が多いということです。  Q9、10は、我々が調査班をやっていていちばん意義のあるところです。Q9で、我 が国では治験に関する情報提供が行われていると思いますかという質問に対して、「そう 思わない」が6割あります。「どちらともいえない」というのは分からないというところ ですが、少なくとも情報は十分行われているとはいえないという状況を彼らは答えてい るわけです。  情報は行われていないのですけれども、本当に情報を知りたいですかということにな ると、約7割、あるいはそれ以上の人たちが「そう思う」と答えているわけです。ここ ではっきりしていることは、情報提供が行われているとはいえない、ただみんなが知り たいということがはっきりしているわけです。  Q11は、知りたいと答えた人に対してですが、どんなことについて知りたいですかと いうことに対して、治験についての一般的な知識、どういう対象に治験が行われている か、病気の名前などということです。下のほうに来て多いのは、「治験参加に伴う医療上 のデメリット」というのが出てきます。その辺が一般の方々のアンケート結果です。ど のような方法で知りたいと思いますかと聞くと、インターネットから、医師、治験コー ディネーターなど病院内職員からというのと、それからテレビ、新聞・雑誌・広告から ということです。  もともとこういうデータが出てくるのは当たり前でして、治験情報というのは、一般 の人、治験とは全く遠い所にいる一般の人と、本当に治験に入りたいと思っている、自 分が疾患をもっている人とは当然求めている情報が違いますから、そういう意味で情報 の質も変わってくるだろうし、それから非常に一般的な啓発的な情報を知りたいと思っ ている人もいるし、本当に自分の病気について知りたいということがあります。そうい うディメンジョンが違いますから、こういうデータが出てきてある意味では当然だとい うことで、その辺もいま調査班では検討しているところです。  次の頁は家族についてです。もし家族が治験をやるとしたら、どのような方法で情報 を知りたいですかということです。これは、いままでとちょっと性格が異なって、「医師、 治験コーディネーターなど病院内職員から」知りたいというのがちょっと慎重なのです。 家族が入る場合には、より正確な情報を知りたい、というふうに一部で思っているよう なところが推測できます。そういう場合には、病院の職員からより正確な情報、要する にこんなことはいけないのかもしれませんが、インターネットでは不確実な情報がある かもしれないということに対する警戒かどうかわかりませんが、そういうことでこうい うデータが出ているのかもしれません。  Q14で、治験に関して望むことは何ですかということです。治験前や治験中に十分な 情報提供や説明がきちんとあるということと、さらに上市された後、その薬が市販され たかどうかということもきちんと教えてください。副作用が起きたときに補償がある、 というのは本来のGCPでは言われているのですが、このようなことまで知らないとい うことです。この辺はちゃんと徹底していかなければいけないということです。それか ら、終了後も健康相談に対応してくれること。こういうことで、いま治験で行われてい るようなことを望んでいるわけです。  実際問題として今回のアンケートにお答えいただいた方は、治験に入ったことがある 方が2割で、8割が入っていないということです。Q16にありますが、現状では参加し た人数は少ないのですが、病院などに行って、そこの職員やコーディネーター、医師か ら情報を得て入ったということです。現状ではそうだということです。  その次に、良かったことというのは先ほどと同じようなことです。医療の進歩に貢献 できた、新薬の開発に貢献できた、あるいは医師とよく話し合えた、治験コーディネー ターが相談にのってくれたというのはよく言われていることですが、こういうことがま さしく確認できたということです。良くなかったことというのは、「副作用等が起きるこ とに対して不安だった」というのは、ずっとそう思っているのですから、これがなくな ることはないと思います。  そういうことで、いちばん最後に総括として、今度また治験に参加したいと思います か、あるいはどうですかということを聞いてみると、治験に参加したいと思うのが、「そ う思う」とストレートに答えている方が61%、「わからない」「どちらともいえない」と いうのはある程度正しい答えだと思いますし、内容によるのだと思います。その人たち を含めますと、大体9割程度、これは我々が1年ぐらい前にやったものも大体こういう データが出ていますので、一般の方々というのは、治験に関して非常にポジティブな考 え方を持っているということが今回も示されたと思っています。  これは中間報告ですので、さらに調査班でもう少し検討をして結論を出していきたい と考えております。 ○楠岡座長 ただいまの説明に対してご質問はございますか。 ○山本(精)構成員 質問ではないのですが、この結果は治験参加者と、一般患者と、 一般生活者でかなり異なると思われるので、それぞれの参加割合によって結果はどうと でも変わってしまうので、それぞれ別々に出さないと間違った解釈につながる可能性が あります。いまのように説明していただければわかるのですが、これだけ見るとわから ないです。それぞれ数が少なくなるから一緒にしているのかもしれませんけれども、別々 か、あるいは同じグラフでも中で色を分けるとかしていただきたいと思います。 ○小林参考人 そうですね、それは検討していきたいと思います。本当は分かれると思 ったのです。思ったのですが、それほどきれいに分かれてこないということもあります。 ○山本(精)構成員 それもわかるので、違いを出してください。 ○楠岡座長 分けたほうがいいですね。次に、辻本構成員より、患者の立場から治験に 望むということで説明をお願いいたします。 ○辻本構成員 いま、一般の患者が治験に対してかなりポジティブであるというまとめ がありましたが、私どもの電話相談に届く患者の声というのは、かなり不信感を持った 方が全国各地から電話をしてきますので、少し意味合いの違うものが見えてきます。本 日の私の役割としては、治験だけに限らず、一般の患者の意識ということで少し説明さ せていただきます。  2頁でCOMLの役割をご了解いただいて、そして3頁ですが1990年から電話相談を 始めて現在までのデータで、16年で4万件弱の相談を受けております。この右肩上がり の数の推移ですが、1995年の小さい山は、阪神大震災のときの問合せなのですが、この ころ薬の名前を患者が知らされていなかったということで、小学校の体育館などに避難 している方の家族から、その薬が手に入らないのだけれどもという問合せの中で、何の 薬かと聞けば、「白い錠剤で、真ん中に三角のこんなマークが」という答えが返ってきて、 消費者感覚としてびっくりした記憶があります。  そして、どんどん右肩上がりになっているのですが、1995年の阪神大震災の後ぐらい に、HIVの問題やソリブジンの問題、さらには医療事故の報道が急増し、患者の不信 感がどんどん右肩上がりのグラフのごとくに高まっているということを感じております。  この右肩上がりのグラフの後ろから見えることで、患者の気持を考えますと、1つは 良くも悪くも権利意識がこの右肩上がりのままに、それから1997年第三次医療改革に加 わったコスト意識ということで、患者の意識はこれからもどんどん高まっていくであろ うということを感じます。  4頁で、私どもの赤いラインが電話相談の推移なのですが、その背景に何があるかと いうことをいろいろ考えると、1つの要因がマスコミの功罪。医療事故の報道の急増が 患者の漠然とした不信感を支えている、ということを感じるわけです。やはり、マスコ ミがイメージを作っておりますし、マスコミが日本人の常識を作ってくれている中で、 いま医療に対する患者の根深い不信感がピークにあって今こそ信頼関係の再構築をしな ければいけないということを、電話相談を受けながら私たちも感じています。  5頁は、2004年がオレンジ色、2005年が黄色ですが、電話相談で患者や家族がどのよ うなことを訴えてきているかということの大まかな分類です。トップ3は、やはりドク ターに関する不平や不満。患者・家族の話を聞いていると、100%医者に期待している。 チーム医療とは名ばかり、治験においてもCRCの姿が見えないというようなことで、 過剰な期待がドクターばかりに向いている。それを踏まえて考えていただくと、もう一 度チーム医療の再構築で役割分担、見える形で患者にサービスを提供していただくこと を医療現場がシステムとして考えていくことが必要かと感じます。  6頁は、電話相談から見えてくる患者の基本的なニーズです。1つは、やはり安全で あってほしいということ、もう1つは安心したい・納得したいということです。こうし た会議でも、あるいは厚生労働省の刷り物などには、安全と安心というキーワードがど こにも飛び交うのですが、私たち患者は安全と安心だけでは駄目なんです。納得ができ ないと次に半歩、一歩進めないわけです。この納得のために何が必要かというと、それ は医療者といかに情報を共有するか、即ちインフォームド・コンセントです。  そして、私どもの電話相談で最も強く患者が望んでいることは、医療者がどう向き合 ってくれたかというコミュニケーションの問題です。医療も看護もすべて人と人の間で 行われる行為、営みなだけに、最後は人間というところに問題が戻っていく、向かい合 ってくれたその人がどう対応してくれたかということが、患者にとって非常に大きな要 因であるということを学んでおります。  7頁は岡山大学で入手したものですが、どのように向き合ってほしいかということを、 患者の気持でピタリと言い当ててくれている8項目ということで添えておきました。8 頁電話相談の整理ということで、まだまだ二極化しているのが患者たちの声です。そこ までおっしゃるのですか、と私たちも開いた口がふさがらないぐらいの過度な要求、徹 底的追及などという激しい電話。受話器を置くと、今度はセカンドオピニオンを受けた いけれども、いままで診ていただいた先生になんだか申し訳なくてというような、保身 の遠慮という患者の二極化が浮かんできます。  ただ、相談の多くは技術的な問題ではないのです。先ほども言いましたように、どう 向き合ってくれたかです。言ってみれば、どう対応してくれたかという、私たちがレス トランへ行って味の文句を言うよりも、接遇ということに気持が移るのと同じようなも のが、医療でも患者が求めていることを感じています。  その不平・不満が究極の不信というところに辿り着く背景に何があるか、相談者の方々 の声から5つほどまとめてみました。対応がいい加減なんです、ちゃんと話を聞いてく れないんです、説明してくれない説明してくれないと盛んにおっしゃるので、いまどき インフォームド・コンセントを意識しない病院があるはずはないということで、さらに 話を聞いていくと、説明は受けているのです。だけど、“私”が理解できていない、納得 できていないその状況を、被害者意識の思い込みの激しい相談者が、一人称で自らの思 いを語ると、説明してくれないのですという表現になっていきます。これが、まさに治 験の場面にもそっくり当てはまる患者の不信という気持だということを添えておきます。  いまだにそんなことを本当に言う医者がいるのかとびっくりするような、怒鳴られた とか暴言を吐かれた話、個人情報保護法施行後、患者はプライバシーということに非常 に神経を研ぎ澄ませているということも感じております。9頁に、患者と医療者の置か れた立場の違いということを図にしてみましたけれども、やはり両者の行く手を阻む深 い河が流れています。医療者にとっての日常、でも私たち患者には非日常、1人の医師、 1人の看護師が何人もの人と向き合うけれども、私と向き合ってくれるのはたった1人 という患者の気持。この立場と役割が全く違う者同士が、1つのゴールに向かって、長 い治療というプロセスを二人三脚で息を合わせて、こけないように進んでいかなければ いけない。そこには何が必要かというと、インフォームド・コンセントとコミュニケー ションという心の架け橋ではないかということを感じています。  10頁はインフォームド・コンセントですが、かつて医師会生命倫理懇談会が説明と同 意と翻訳いたしましたが、そこには患者不在。患者としてはここに図式いたしましたよ うに、説明と同意は医療者の責務、そして患者の責務は理解と選択という、この役割分 担がきちんと横並びになっている、そうした人間関係をこれからもどんどん構築してい くことが必要であると考えています。  治験あるいはその他の臨床試験などでもそうですけれども、最近は説明文書がどんど ん分厚くなってきています。私も、名古屋大学医学部の倫理委員を務めていて、月に1 度申請を審査するのですけれども、こんな説明文書は読めないよというぐらいのものが 用意され、ちょっと行きすぎの感があると感じています。言葉を添えるということが非 常に大切である、という原点に立ち戻っていただきたいということを重ねて申し上げて おきます。  11頁は、患者側の話を伺っていく中で、微妙なのですけれども、世代によって求めて いるもの、納得の基準が違う。アンケートでは各世代が答えていたようですけれども、 私どもの電話相談も、それから現実にいま病院と向き合っているいちばん層の厚い患 者・家族ということでいえば50〜60歳代、この辺りが強く根拠に基づく情報を求めます し、人間関係を求めています。当面層厚くなるであろうこの50〜60代の攻略法というこ とで、医療現場にはインフォームド・コンセントとコミュニケーションのさらなる努力 をしてくださいというお願いを申しあげております。  12頁になりますが、めったにかかってこない、「とても良い病院で夫は亡くなりまし た」という奥さんの電話の中で語られた思い。患者・家族を大切に扱おうとしてくれた 医療者への感謝の言葉、そのことが何度も何度も涙まじりに、ときには嗚咽を漏らしな がらということで語ってくださいました。そして、わかりやすい説明だったということ も何度もおっしゃっておられました。さらに、あなたはどうしたのかと、患者にも家族 にも希望をしっかり聴いてくれた、そのことで夫は本当に良い病院で亡くなりました、 というこの奥さんの言葉が、なによりいま患者が求めていることではないかということ で、最後の1枚です。  13頁からは、元国立大阪病院、現在は国立病院機構大阪医療センターの一角、病院か らスペースを提供されて、私どもNPOが人と物を持ち込んで協働で、患者情報室を3 年前から展開しております。こうした場があると患者は学習をします。そして、ここで 患者同士の語り合いも展開されております。さらには、2カ月に1度、病院の医師の協 力をいただいて、病気の勉強会などをして、それを全部ボランティアの方がテープ起こ しをし、ドクターの目通しを願って、資料ということでこの情報室に備えております。  すると、外来で医師が「情報室に寄って僕がしゃべった資料があるから、あれをちょ っと勉強してね」というようなこともいまは増えてきております。これからの患者、例 えば治験という場面においても、インフォームド・コンセントとコミュニケーション、 それから誰かに相談できるという第三者機関、そして情報室という患者の支援システム がいちばん大切ではないかということを申し上げておきます。  20頁は後ほどお目通しいただければということで、具体的にどんな治験に纏わる相談 が届いてきているか、最近の2例をピックアップして添えております。これがCOML に届いている声だということでご理解願えればと思います。 ○楠岡座長 短時間でお話をしていただきまして申し訳ございませんでした。いまのお 話に関してご質問等はございますか。 (特に発言なし) ○楠岡座長 よろしければ、これまでの資料6「患者の治験等参加の促進に係る論点」、 資料8の基礎資料、それから小林真一参考人に示していただきました中間まとめ、辻本 構成員からの発表を基に少しディスカッションを加えていきたいと思います。かなり時 間が過ぎておりますので、資料6にある論点を中心に話を進めていただければと思いま す。「啓発活動と情報提供」に関してはいかがでしょうか。 ○中島構成員 資料6の(2)の情報提供のところですが、いちばん上のポツのところです。 小林構成員から説明がありました、国内に用意されているWebsiteについて4種出てい ました。その中のJAPICというのがあります。ここに掲載する項目について、事前 に監視指導・麻薬対策課のほうとも相談させていただいた折りに、例えばいくつかの項 目について、日本の現状では少し控えてはどうかという助言をいただいて省いたものが あります。例えば治験期間、治験実施施設というものについてはNIHのサイト等には もちろん載っているものですけれども、患者に広く治験情報、臨床試験情報を提供する という観点からは、今後この辺のところはもう少しグローバルスタンダードに移動する 方向で整理していく必要があるのではないかと思っております。 ○監視指導・麻薬対策課長 どのような相談をされたのか私は存じ上げないので申し訳 ないのですが、基本的にここにありますように、公的機関等が、資料8の4頁の2の2 −1の(1)の最後「参考」のところにありますように、公的機関等が薬物の情報提供を行 う場合には、これについては医薬品の広報には該当しないと私どもでは考えております。 いまおっしゃったような、中立的な正確な情報であれば、むしろ情報提供すべきだと私 どもは思っておりますので、その点については今後ご相談をいただくときに誤解のない ようにしたいと思います。 ○楠岡座長 広告の制限に関して「参考」にありますのは、製薬企業の広告というか募 集ということですけれども、医療機関側で募集する場合に関しては、その制約はどの辺 まであるのでしょうか。抗癌剤に関しては、患者には非常に関心が高く、未承認薬を個 人輸入されているような方もあるので、そういうものの治験というのは、薬の名前を出 すとかなり集まってくるということもあるのですけれども、それは、いまどの辺まで可 能になっているのですか。 ○監視指導・麻薬対策課長 いろいろな場合がありますので一概には申し上げられませ んが、私どもの考え方としては、4頁の下のほうの2−2に「参考」(1)というのがあり ます。ここに書いてありますように、個別の製薬企業が被験者を募集する際には、その 商品名あるいは治験記号のようなものは表示しないでくださいと。あえて反対に申し上 げますと、治験記号、あるいは商品名を表示しない限り、それこそ新聞広告で全紙大の 広告で、どういう疾病に対して、どういう効果を期待して治験を企画しているのかとい うことを広告しても構いません。いわゆる医薬品の承認前の広告には当たらないという 判断です。公的機関等が中立の立場で、科学的な情報を提供するということであれば、 これも広告には当たらない、という2点が私どもの基本的な考え方です。 ○楠岡座長 かつては、インターネットは広告に当たらないということで、医療機関の 治験管理室が、現在こういう治験をやっていますということで、いままでも医療機関で はかなり詳しいプロトコールの概要に近いようなことまで含んだものを、インターネッ トに載せているような状況も現にあるわけです。医療機関側が行う場合にはあまり問題 はないということでしょうか。 ○監視指導・麻薬対策課長 それもケース・バイ・ケースだと思います。実際に治験に 参加したいと患者が言って、実際にその治験に入る際にインフォームドするわけです。 その際には相当詳しい商品名も含めた情報が提供されるわけです。実際に患者と医療機 関の間の情報の提供、インフォームド・コンセントの成立に至るまでの情報の提供の中 ではこのような話は起きないと思います。 ○一木構成員 もし違っていたら訂正していただきたいのですけれども、最近いろいろ な患者募集広告を活用する試験を、製薬企業の試験でやらせていただくことがあります。 先ほど話題にのぼりました、施設名を出すという問題ですが、そのような場合には各実 施している施設側のIRBに、そういう広告で貴施設名を出すということ、どの媒体に いつ出すかまで全部届けておかないとトラブルになることがあります。先ほどは、出し てもいいのではないかとの話が出ましたが、治験広告みたいな場合であっても、施設名 を出すときは、それぞれの施設側の了解を取っておかないといけない部分も確かあった と思いますので、かなり微妙な問題ではないかと思っております。 ○監視指導・麻薬対策課長 それは、おっしゃるとおりだと思います。個別の治験の契 約の中で、どのような形で情報を公開するかということも関係あると思います。 ○中島構成員 確かに治験施設の開示という問題は、いまおっしゃったような、かなり 厄介な問題を含んでおりますので、これは実務として慎重な対応をする必要があるだろ うと思っております。 ○楠岡座長 先ほどのアンケートの中でも、情報を提供してほしいということで求めて いることもあるのですが、それがどういうバイアスにつながるかというのは、なかなか 難しいと思うのです。そういう問題がなければ、なるべく積極的に、特に医療機関の側 からすると、提供できるものは提供していきたいという考え方はあるかと思うのです。 ○山本(晴)構成員 私は前半でも言いましたけれども、ただ入ってくださいでは駄目 だと思うのです。入ってください、治験というのはいいものですよ、というのはとても 言えないことだと思います。入ってはいただきたいけれども、内容を十分熟知した上で 入っていただきたいというのがみんなの気持だと思います。  先ほどのIRBの話もそうですけれども、どういうふうに治験をしているかという中 身をもっと見ていただく必要があると思います。IRBに参加していただくということ も1つだと思います。実際にネットワークとか地域でやっている所は、例えば医師向け のセミナーを、一般に解放して、あまり変な人に来られると実質上困ると思いますけれ ども、患者が入りたい所には患者向けにある程度一般的なセミナーもやる。掛け値なし に、ベネフィットもあるけれどもリスクもあるのだということを、もっとオープンにし ていく必要があると思います。  もう1つは、治験というのをすごく不安感を持って見る患者がいる一方で、先端医療 とか先進薬とか、新しい薬と言われると飛び付く方もいるわけです。そういう人たちは 逆に危ないと思うのです。過度の期待をかけた上で来て、実際にやってみたら駄目だっ たとか、あるいは治験には当然いろいろな制約が付きまとうのですけれども、その制約 について非常に不平が出てくることになりかねないです。  治験についての一般啓発の中には、実際に参加していただける場を増やしていったほ うがいいだろうと思うことと、実際に治験を具体的にどういうものをどこでやっている かということについては、むしろ正確な情報を出していくということではないかと思い ます。それを調べてでも入りたいという方だったら、その内容をある程度理解していた だけると思います。それが難しい方については、個別にいままでどおりの医療関係者が 説明をして、納得をしたことを確認して入っていただく、このプロセスは絶対に欠くこ とのできないものだと思います。 ○山本(精)構成員 繰り返しになりますけれども、先生が言ったみたいに、過度な期 待も過度に怖がることも、どちらも正しくないと思うので、ちゃんと理解してもらえる ように伝えることが必要です。先ほど、辻本構成員のお話にもありましたとおり、要は 悪いことが起こっているのは事実なので、そこのところを改善しない限り、普及とか啓 発をしてはまずいので、そこをなんとかクリアしていく。だから、全部込みでやってい く。その中には普及ということもあると思うのです。  普及の話だと、例えば我々がやっているような臨床試験で資料を作ったり、今度がん 対策情報センターというのができるのですが、そこで臨床試験の説明、治験の説明をし たりします。そういう資料というのは、それぞれの臨床試験がやられたり、企業の方が やられたりするというのである程度あると思うのです。それが散在しているので、イン ターネットで、グーグルで探して出てきたものが正しいかどうか分からないみたいなと ころがあります。資料はどこかでうまく配れるようにしていくと、いろいろな形で見て いけるしということがあると思うのです。世の中にはいろいろな資料があると思うので、 なんとかそれを使えるような仕組みも必要ではないかと思います。 ○楠岡座長 情報提供と啓発活動を並行して行っていくときのバランスということも。 「被験者の参加の促進」に関してはいかがでしょうか。 ○中島構成員 ここに挙げられている項目のうち、2の(1)のc)ですけれども、先ほど 申し上げましたように、平成10年12月1日の審査管理課長通知で、3つの疾患に対し ては継続投与ができますということなのですが、これはあくまで治験ということで、G CP下での推進というところにつながってきます。医薬品の継続提供ということ自体は、 たぶん被験者の方々の参加の促進につながるのだと思うのです。  一方で、GCPにかかわる企業の負担という意味では、私どもとしてはどうかなとい うところがあります。これは、もう少し違う形での提供と。例えば、コンパショネイト ユースのような形ででも検討されれば、それは大変ありがたいことだと思います。  一方、これは今回の議論とは離れますけれども、安全性確認試験ということが昨年導 入されたわけです。あれについても治験下で行うということで、GCP対応ということ では同じ状況にありますので、この際この2つを1つの括りでご検討いただけるとあり がたいと思います。 ○山本(晴)構成員 コンパショネイトユースでご紹介しますと、これは別のことで視 察に行ったときに知ったのですが、フランスがオリジナルなのですけれども、コンパシ ョネイトユースを規制当局の管理下で登録して行う制度があります。1つは、患者を個 別に登録するというもの、もう1つは緩やかなプロトコールを作り、それで登録してい く。いずれにしても、あらかじめ規制当局が目を通して、個々の症例を登録していくわ けです。  最近詳しい話を聞くと、どうもドクターがそれを申請するというのがほとんどだと聞 いています。それは良い制度なので、EU全体に広げて適用されるようになっていると いう話を聞きました。責任の所在をどこにするか、あるいは補償体制をどこにするかと いうことはまた議論が必要だと思います。継続提供については、コントロールされてい るにしても、結局その安全性の情報などは収集できないことがほとんどで、単に仕方が ないから提供しているというような状況になってしまっていて、お互いにあまり良いこ とはないと思うのです。治験のほうにしては、企業はちょっと腰が引けてしまうところ があると思います。  それとは別に、コンパショネイトユースという枠組みで、なおかつそこへ出てくる、 特に安全性の情報についてはきちんと情報を取れるというようなスタイルの制度が必要 なのではないかと思います。 ○榎本構成員 いまの話に関連するのですけれども、私たちコーディネーターが同意説 明をしているときに、患者さまから「この薬は治験が終わっても続けられるのですか」 という質問をよく受けます。「残念ですけれども、ほとんどの治験が、終わったらそこで 治験薬の提供も終わりなのです」という説明をしますと、「それだと試されているような イメージが強い」という理由で患者さまが治験に参加されるかどうか悩まれる場合があ ります。  それに、先ほど中島構成員がおっしゃられたように、がんなど特殊な薬はもちろんの こと、患者さまにとってはどんな病気であっても、ご自分の治療が最優先ですので、治 験薬の継続使用ができることは大きな判断要因になっていると思われます。皮膚領域の 乾癬の治験を今やっていまして、その薬を使うと非常に治療効果がいいのですが、やめ てしまったらまた戻ってしまう。そこで患者さまからは、「この治験薬がもし非常に効い たらずっと使えるのですか」という質問があって、それに対してここまでしか使えない のですという説明をせざるを得ないのはCRCにとっても辛いことです。  やはり、有効な治験薬を継続して使用できるという患者さまのメリット(インセンテ ィブ)を高めてさしあげるということが重要であり、特定療養費の検査・画像診断費用 や、負担軽減費を承認まで支払わなければならないという治験依頼者の費用負担と切り 離して考える必要があるのではないでしょうか。「治験薬が自分に非常に合っているから ずっと使いたい。承認されて、保険で使えるようになるまで使い続けたい」という患者 さまの本質的な気持ちがあるので、その要望を叶えてさしあげられるように制度をもう 少し緩くしていただけないでしょうか。  当然未承認の薬を継続して使っていくわけですから、安全性情報だけはきちんと製薬 企業に提供する、といった形での継続提供の制度の道が作れれば、患者も安心して治験 に参加してくださるのかと感じています。 ○荒川構成員 私どもでも、そういうケースを経験しています。治験外提供でずっとや っていたことがあります。そういうニーズがある以上何らかの形で提供できるシステム を残してほしいと思います。ヘルシンキ宣言の2004年の注釈にもそれを謳っているわけ ですから、何らかの形でそれを治験のほうに取り入れていくことが必要なのではないか と思います。 ○山本(精)構成員 同じような話ですけれども、医師主導治験の枠でやるのも大変で すよね、無理だと思うのです。継続ではなくて承認までの間、最終的な治験が終わって から申請中と。ほかに薬がない人ということにすると、安全性も危ういような人たちが 多いわけですから、企業の人も医師もそのような人には新しい薬剤を用いるのも危険だ し、的確基準から治験には入れられないし、データとしてもちゃんと取れないので、治 験でやるという枠組み自体に無理がある。臨床試験という枠組みでやるのが基本として も、そのようなコンパショネイトユースのようなシステムがないと、結局個人輸入する とか、余計危険なほうに行ってしまうことになるので、そこの道は作っておかないとい けないと思います。  がんの世界でいうと、アメリカでは、コンプリヘンシブキャンサーセンターみたいな 大病院は、トリートメントリフェラルセンターといって申請すると未承認薬が使えると いうシステムがあります。いずれにしても、誰かの管理の下で使えるということなので、 制度としては難しいのでしょうけれども何らかの形で必ず入れないといけないのではな いかと思います。 ○安田構成員 ちょうど治験終了後の提供のことが出ましたので一言申し上げさせてい ただきます。先ほど山本晴子構成員から、治験終了後から承認までのメンテナンスとい う言葉が出ました。医療機器の場合は、特に治験を要する埋込みのような物に対しては、 治験終了後そのままずっと患者の体内にあるということで、承認までのメンテナンスも そうですし、あるいは何か起こった場合というのは制度的にはまだグレーのところがあ ります。それを依頼者が全部負うというのもどうかなという点もありますので、これは 別途どこかで議論していただければと思います。おそらく、こういう埋め込んで機能し ていくものに対するニーズは多いですので、この辺は被験者のほうからしても、そうい うものをやるときには情報提供、どうなのということは参加する前に明らかにして、納 得していくということが必要かと思います。 ○楠岡座長 先ほどの継続投与等の関係になると思うのですが、特定療養費のことです。 いまは保険者と被験者と製薬メーカーというか、依頼者の負担割合を考えて、いまの特 定療養費の制度になっていると思うのです。もともとこの特定療養費制度が平成9年に 入ってきたときから、医療費の構造も変わっていますし、治験も薬の場合だと投薬期間 中となっていますけれども、いまは後観察期がすごく長くなっているようなものも出て くると、どうしてその後観察期はカバーしてくれないのかという問題があります。  結局医療機関と依頼者の個別の交渉で、力関係で認められたり認められなかったりと か、本来特定療養費ができたときの経緯からちょっとかけ離れた状況が現実に起こって きてしまっている。いまの特定療養費の負担割合が本当に適正なのかどうかというのは、 ときどき見直す必要はあるかと思うのです。その辺について、医療課では何か検討して いるのでしょうか。 ○医療課長補佐 具体的に検討しているかというと、そういう話はまだ検討レベルまで にはいっていないかと思います。ただ、実際にこういうのを推進するに当たり、こうい うのが必要だということで要望をいただければ、そういうものを受けて、制度上の整合 性であるとか、そもそも医療保険制度と治験というものをどういう具合に整理していく のかということはあるのですが、その辺も整理しながらやっていくことは可能だと思い ます。 ○楠岡座長 当初の予定時間を1時間以上もすぎてしまいまして、本当に申し訳ござい ませんでした。しかし、非常に活発なご意見をいただきましたので、事務局で取りまと めて、今後の中間報告に盛り込んでいきたいと思います。次回は、企業の取組の促進、 治験のIT化、効率化及び臨床研究の推進という観点で議論を予定しております。最後 に事務局から連絡事項はありますか。 ○事務局 大変熱心に長時間ご議論いただきましてありがとうございました。次回第4 回は、構成員の方々の日程調整を踏まえ、平成18年9月26日(月)の10時から12時 ということで開催させていただきます。場所については追って連絡させていただきます。 第5回及び第6回について構成員の方々の日程調整をさせていただいた結果、第5回は 10月23日の16時から、第6回は11月21日の14時からをそれぞれ予定しております ので併せてお知らせいたします。  本日の議事録については、速記をやっていただいておりますので、作成が終了次第、 構成員の方々にご確認をお願いし、その後に公開という段取りにさせていただきますの で、併せてよろしくお願いいたします。前回の議事録につきましては、冒頭に申し上げ ましたように、既に各構成員の方々に修正をしていただいたものを机上に配付しており ますので、これでよろしければ公開ということにさせていただきたいと存じます。 ○楠岡座長 ただいま日程を報告していただきましたが、よろしくお願いいたします。 予定の時間を1時間以上上回ってしまいまして申し訳ございませんでした。活発なご意 見がありましたので、途中で打ち切ることもできず、延々と続いてしまいまして申し訳 ございませんでした。以上をもちまして、第3回の次期治験活性化計画策定に係る検討 会を終了いたします。どうもありがとうございました。 (照会先)   厚生労働省医政局研究開発振興課    (03)5253−1111(内線 2545)