06/08/01 ボイラー等の自主検査制度の導入の可否に関する検討会第1回議事録 第1回 ボイラー等の自主検査制度の導入の可否に関する検討会 日時 平成18年8月1日(火) 14:00〜 場所 厚生労働省専用第21会議室 ○中央産業安全専門官 ただいまより、第1回「ボイラー等の自主検査制度の導入の可否 に関する検討会」を開催いたします。本日は、大変お忙しい中お集まりいただきまして誠 にありがとうございます。  議事に先立ち、本日の配付資料の確認をさせていただきます。「第1回ボイラー等の自主 検査制度の導入の可否に関する検討会議事次第」が1枚目になっている資料の下のほうに、 「配付資料一覧」が付いています。資料No.1「出席者名簿」から資料No.15「今後の検討の 進め方(案)」までが一綴りになっております。通し番号を打っており、議事次第が1頁、 最後が44頁です。「日程調整表」については、第3回検討会の調整用です。議事の最後の ほうでご説明させていただきます。  議事に先立ち、厚生労働省の小野安全衛生部長から挨拶を申し上げます。 ○安全衛生部長 安全衛生部長の小野です。どうぞよろしくお願いいたします。本日は、 皆様方お忙しいところ、この検討会のためにお集まりいただきましてありがとうございま す。日ごろから、私どもの安全衛生行政につきまして、専門のお立場からいろいろな機会 にご指導いただいておりますことにつきまして、改めてこの場をお借りいたしまして御礼 申し上げます。  今回の検討会はご案内のように、ボイラーについては戦後日本の経済成長を大きく支え た設備であることはもとよりですけれども、現在でも各分野で、多くの産業で使用されて いるということです。やはり、その性質上、爆発あるいはさまざまな破裂等の危険もあり、 そういうことから安全管理を怠った場合には、近隣の住民も含めて大きな災害につながる こともあり、現在、労働安全衛生法の中において、第三者機関である登録制の検査機関に よる定期的な性能検査を義務付けています。最近も、いろいろな分野でいろいろな事故が 多発しているということもあります。ボイラーの面でも、そういう意味でしっかり性能検 査をしていただこうということが現在の制度の趣旨です。  今回お集まりいただきましたのは、後ほど事務局から具体的にご説明させていただきま すけれども、本年3月に閣議決定された規制改革・民間開放推進3カ年計画の中において、 この性能検査について、平成18年度中に一定の安全管理基準を満たす事業者において自主 検査が可能となる認定制度・基準について、安全の確保を前提に検討する。その結果、認 定制度・基準が整備された場合には、認定基準に合致する事業者について自主検査を認め ると明記されているところです。  こういうことを踏まえ、今回労働安全衛生法におけるボイラー等の自主検査認定制度・ 基準の導入について、その可否を含めて調査・審議を行うということで皆様方にこの検討 会にお集まりいただきました。  検討内容については後ほど具体的にご説明させていただきますが、ボイラー等の連続運 転認定事業場における問題点、自主検査制度を導入している他法での設備の安全水準、遵 法水準、日本の企業における内部統制の現状、問題点などについて多面的な視点からご検 討いただいて、一つの目安としては来年1月ごろを目途に、この検討会としての取りまと めをいただければと考えております。大変お忙しい中ですけれども、どうぞよろしくお願 い申し上げます。 ○中央産業安全専門官 本日ご参集いただきました皆様と、事務局の紹介をさせていただ きます。本日ご欠席の方はいらっしゃいませんので、配付資料の2頁目の資料No.1の出席 者名簿を付けておりますので、こちらの順番でご紹介させていただきます。  千葉科学大学学長の平野先生です。横浜国立大学大学院工学研究科教授の安藤先生です。 関西大学工学部教授の小澤先生です。芝浦工業大学工学部機械系教授の鴨志田先生です。 桐蔭横浜大学法科大学院教授の郷原先生です。立教大学経済学部客員研究員の田中先生で す。白鴎大学法学部教授の畠中先生です。  事務局を紹介いたします。厚生労働省労働基準局安全衛生部長の小野です。安全課長の 高橋です。安全課主任中央産業安全専門官の田中です。安全課副主任中央産業安全専門官 の毛利です。私は、安全課中央産業安全専門官の大崎です。  本検討会の座長をご選出いただきます。委員の皆様から、座長にご推薦いただける方が おられましたらご発言いただきたいと思います。 ○畠中委員 平野先生にお願いしてはいかがと思います。 ○中央産業安全専門官 ありがとうございます。ただいま、平野先生をご推薦いただきま したけれども、皆様いかがでございましょうか。 (異議なし) ○中央産業安全専門官 ありがとうございました。それでは、平野先生に座長をお願いい たします。以後の議事進行は平野座長にお願いいたします。 ○平野座長 この自主検査制度はなかなか微妙なところがあり、安全というのは成功する とほとんど結果として現れてこない。そうかといって手を抜くと事故がたくさん起こるこ とになって、今度は社会的な批判を受けることになる。監督官庁は大変だと思います。  そのようなことで、安全に対してはしっかり行うべきだということと、非常にお金がか かって対費用効果がないという意見が対立しています。既に規制緩和のときの課題になっ ております。数年前に、労働省、消防庁、経済産業省と、保安四法に関する検討会を、各 省庁課長級のベテランを集めて検討したことがありました。なぜ、そういう重要なことを 部長級、あるいは局長級で話さないかというと、そこが微妙なところであるのですが、そ んなことで検討会をやりました。  そのときも、各省庁の特色が現れておりました。そのときの対応が引き継がれて、ここ 数年の間に少しずつ現実のものになってきていると思います。そういう意味でいうと、こ の自主検査制度導入も社会の要請があったとはいえ、厚生労働省の立場に立って検討して いかなければいけないと思っております。特に、今回は毛利さんがいろいろな所を走り回 って先生方にご説明されたと思うのです。相当幅の広い専門分野の方にお集まりいただい ています。  ということは、その回答は、例えば技術者の皆さんが出す回答とはちょっと違ったもの になることは当然考えられます。そういうことになるためには、先生方に忌憚のないご意 見を言っていただかないと、どういうところが問題であるかということすらわからないと いうことになります。もちろんご専門もそうなのですが、もう1つは先生方がこれまで過 ごしてこられた環境の中で、これは常識だというようなことも是非ご発言いただきたいと 思います。これが、たぶん厚生労働省の立場だと理解しておりますので、よろしくお願い いたします。  議事に入ります。まず、本検討会の目的、検討内容について事務局から説明をお願いい たします。 ○副主任中央産業安全専門官 資料No.3です。先ほどから話が出ていますが、規制改革・ 民間開放推進3カ年計画、平成18年3月31日閣議決定の該当部分を載せております。「生 活・ビジネスインフラの競争促進」というところで、「保安四法における規制の合理化」と いう項目が設けられ、この中で(2)の(2)で労働安全衛生法についての記述がされており ます。「労働安全衛生法の認定制度では、ボイラー及び第一種圧力容器について、高圧ガス 保安法のような自主検査が認められていない。したがって、一定の安全管理基準を満たす 事業者において自主検査が可能となる認定制度・基準について、安全の確保を前提に検討 する。その結果、認定制度・基準が整備された場合には、認定基準に合致する事業者につ いて、自主検査を認める」。このように記載をされております。  資料No.2の3頁の冒頭に「目的」として、いまの規制改革・民間開放推進3カ年計画の 部分を挙げております。「このため、労働安全衛生法におけるボイラー等の自主検査認定制 度・基準の導入について、可否を含めて調査審議を行うことを目的とし、各分野の学識経 験者により検討を行うこととする。」、このように、開催要綱で書いております。  2の「検討事項」として、いま平野座長からお話がありましたとおり、各学識経験者に お集まりをいただいておりますので、いろいろな問題点を取り上げて議論したいというこ とです。1番目は、我が国における労働災害の発生状況、2番目はボイラー等の連続運転 認定事業場における問題点、3番目は自主検査制度を導入している他法令の設備の安全水 準及び遵法水準、4番目は日本企業における内部統制の現状及び問題点を挙げております。  これらについて、大まかな1年弱の進め方については資料No.15に案ということで、「今 後の検討の進め方」を付けておりますので、後ほどご意見があればいただければと思いま す。  本日が第1回です。明日、関係業界団体、それから事業場からのヒアリング(非公開) を行います。第3回以降は今後日程を決めていくわけですが、大まかに2カ月に1回とい うペースで、性能検査機関からのヒアリングを行ったり、連続運転認定の事前審査からみ た事業場の問題点について、あるいは改正会社法や内部統制の現状、問題点といった話を お聞きした上で、第4回、第5回と報告書にまとめていく作業をしたいと考えております。 これが、大まかな流れと考えています。この進め方については、最後にご議論いただけれ ばと考えております。 ○平野座長 いま説明をしていただいた開催要領、今後の計画についてご意見、ご質問が ありましたらお願いいたします。 (特に発言なし) ○平野座長 日程だけ見るとゆっくりしているようなのですが、実はそんなにゆっくりし たペースではなくて、数箇月で結論を出すということですのでよろしくお願いいたします。 3回ぐらいしかやらない場合は、言い忘れたというときにはなかなか取り返しがつかない ですので、是非忌憚のないご意見をお願いいたします。よろしいようでしたら、この計画 に従って進めさせていただきます。それでは、事務局から資料の説明をお願いいたします。 ○副主任中央産業安全専門官 資料No.4から資料No.9を用いて、ボイラー及び圧力容器は どういうものかというところから、検査制度の現状についてご説明いたします。既にお詳 しい委員の方には恐縮ですが、しばらくお付き合いをいただきたいと思います。  6頁の資料No.4で、ボイラー及び圧力容器が何かということです。ボイラーとは、水を 火気などで加熱して、大気圧を超える蒸気又は温水を作り、他に供給する容器をいいます。 ここに示しておりますのは、ごく小さなものですけれども、非常に大型のボイラーになる と高さが10数mというように、ビルの3、4階のような大きさで、圧力も数十気圧という ものもあります。  バーナーの火で、水を沸騰させます。そうすると、体積が1,000倍というように膨張い たします。火が管に接しているということ、熱膨張・収縮というように条件が過酷な中で 圧力がありますので、ちょっとでも漏れ出せば高圧によって一気に外に出てくるおそれが あります。  7頁の(3)で、ボイラーの大きさによる労働安全衛生法上の区分を挙げております。 この絵で0.1MPaというのが1気圧です。ゲージ圧で書いておりますので、ちょうど大気圧 の2倍のところで線を引いているということで、そういう大気圧との差が1気圧を超える もの、又は伝熱面積といっていますが、壁面を通じて加熱をされる、その合計の面積が1 平方メートルを超える青色の部分が、安全衛生法のボイラーといっているものです。これに対しては、 第三者による1年ごとの性能検査が義務付けられており、併せて1カ月ごとの定期自主検 査が義務付けられているということです。この青色の部分が5万基ということです。  もう少し能力の小さいものについては、まず小型ボイラーですけれども、これは第三者 検査ではなくて、1年ごとの定期的な自主検査でよいとなっております。さらに小さい簡 易ボイラーについては、定期検査の義務がないというように、これらは危険性に応じた検 査制度を採用しているということです。今回の規制緩和の要望というのは、青の部分のボ イラーについて、小型ボイラーのような自主検査でいいことにしてほしいということにな るかと思います。  次は圧力容器です。圧力容器とはということで、内部の圧力が大気圧を超える容器であ り、ボイラーを除くものとなっています。この中には熱交換器、消毒器、オートクレーブ とさまざまなものがあり、大まかには4つに分けて次の頁以降に絵を付けております。ま ず、蒸気などの熱媒によって固体、液体を加熱するもの、これを加熱器といっていますが、 8頁にこうしたものの代表である熱交換器の絵を入れております。蒸気を入れて、液体を 絡ませて暖めるもので、多数の細かい管が中に通っているというものです。  2番は反応器です。この絵はオートクレーブの例です。加工するものを中に入れて、高 温・高圧で長時間にわたって化学反応させるというものです。3番は抽出器とか蒸留器な どの蒸発器。4番は蓄圧器と書いてあります。代表的にはこの4種類のものが圧力容器と いうことになります。  規制の区分については、9頁にグラフで書いております。圧力Pと内容積のVを掛け合 わせたP×Vが内部エネルギーを表すことになりますので、エネルギーの大きいものほど 危険が大きいということになりまして、こういった反比例のグラフになります。第一種圧 力容器というのは、P×Vがいちばん大きい領域のもので、これについては第三者による 性能検査を義務付けておりますし、また併せて1カ月ごとの定期自主検査を事業主に義務 付けております。第一種圧力容器が12万基あります。  エネルギーがより小さい小型圧力容器、2本の反比例のグラフに挟まれた部分になりま すが、これについては定期自主検査を1年に1回のみです。簡易容器は、定期検査の義務 はありません。さらに下には、そもそも適用が全くないというものまで、圧力容器は危険 性に応じて検査制度を採用しています。  これらとは範疇が別なものを9頁のイに挙げております。これは、内部に圧縮気体のみ を有するもので水が沸騰して体積が1,000倍になるという危険はないということで別にし ております。ここにはガスホルダを挙げておりますが、こういうものなどが該当し、10頁 のように圧力と内容積が大きいものについては第二種圧力容器と呼んでいます。これは第 三者検査はなく、定期自主検査のみとなっております。  次にこれらボイラー及び圧力容器の危険性についてです。ここに挙げてあるものは、機 械のように挟まれる危険があって、見てわかるというものではなくて、外から見えない容 器の内部に非常に大きなエネルギーの危険源があり、突然破裂したりするので、災害が起 こりやすいということです。  こういう圧力を受ける容器なり管にほんの小さな穴でもあいていたらどうなるか、とい う危険性は、一昨年起こりました美浜の原子力発電所での5人の死亡災害に示されている のではないかと考えております。あの災害は、流体により管壁が削られた結果、高圧の管 に非常に小さな穴があき、そこから一気に鉄管が裂けたというものです。  ボイラーと第一種圧力容器に関する災害の事例を11頁から付けており、11頁は、ボイ ラーの災害事例です。これは水管ボイラーで1.4MPaですから14気圧ほどのものです。伝 熱面積は900平方メートルということでかなり大きいボイラーです。これは、調整作業をしていた最 中に失火をしたので、再着火を試みていたところ、気化した燃料に引火をして爆発が起こ ったということで3名が亡くなった災害です。災害の原因としては、点火前に換気しなか ったことなどが挙げられます。下に写真を付けておりますが、円筒型になったものがボイ ラーですが、非常に大きく破損している状況です。  12頁は、オートクレーブの災害です。発生時点は平成6年となっておりますが、同種の 事例は平成13年にも2件発生しております。最高使用圧力は0.14MPaですから、大気圧よ り1.4気圧ほど高いぐらいの、圧力はそれほど高くないものなのですが内容積は大きいも のです。この中に電柱を入れ、それを蒸気によって加熱・加圧する仕組みにしていたもの ですが、この蓋が外れ、そこから水蒸気が激しく噴出してロケットのように200m爆走し て、写真の上のほうの建屋を突き抜けるという、すさまじいエネルギーの噴出があった災 害です。この事故で1人が亡くなっています。  13頁には、近年のボイラー及び第一種圧力容器の事故災害を挙げております。4年間で 16件あります。以上でボイラー、第一種圧力容器のイメージはつかめていただけたのでは ないかと思います。また、後ほどご質問いただければと思います。  資料No.5に、ボイラー等の性能検査の制度について概要を示しております。この性能検 査というのは、一定の使用期間ごとに検査をするものです。原則的には1年ごとに中を開 き、きれいにして検査をするということです。この性能検査の実施機関については、登録 性能検査機関の登録の基準が決まっていて、これに該当する所がいま3つあって挙げてあ ります。この登録基準については、検査の設備がきちんとある、検査員の数あるいはそれ なりの資格を持った人がいる、というようなことが定められています。  5番目に線を引いておりますが、これは検査の公正にかかわることです。ボイラーを作 っているメーカーや整備業者に支配されていないことも条件にしております。7番目には 公正に検査をしなければいけないということが定められております。最後に、利害関係者 のボイラー等については、登録性能検査機関自身が自分の所のものをやってはいけないこ とになっております。そういうことで検査の公正をきちんと法律に書いて担保していると いうことです。  15頁は、性能検査の項目です。こうしたボイラー及び第一種圧力容器については、水蒸 気あるいは原油の硫黄分などが鉄の腐食性を持つものですから、1年ごとに使用している 間にきちんと中の状態をチェックすることになっており、その項目を挙げております。本 体については割れ、摩耗、腐食の有無を見ます。燃焼装置は、損傷等の有無。あとは自動 制御装置や安全弁、圧力計などの附属装置についても、そうした機能の不良や劣化の有無 などをチェックすることになっております。こうした性能検査の結果ですが、大まかに言 えば大体2割程度のボイラー及び第一種圧力容器に何らかの問題があるということで、改 善指導等が行われている状況にあります。  16頁の資料No.6ですが、性能検査は原則1年ですが、管理がきちんとできている優良な 事業場については例外を設けているというのが、連続運転の認定制度です。原則1年の検 査なのですけれども、その1年の検査というのは、ボイラーを停止し、中を掃除し、内面 をちゃんとチェックする開放検査ということになります。この認定を受けると、開放検査 は4年に1回又は2年に1回にすることができます。そこに○と●が書いてありますが、 原則は毎年運転を停止して開放検査をするということですが、2年の連続運転の認定を受 けると、1年置きに開放すればいい、真ん中の2年目のところは運転時検査ということで、 運転を止めないで外から検査ができるということです。4年連続運転の認定を受けると、 4年に1回開放検査をすればいいということになっております。  連続運転の認定については、3にある認定要件に合致しているかどうかを見ているとい うことで、その要件というのは、過去の運転の実績、性能検査に過去3回きちんと合格し ている、法令の違反や災害がないということ。3番目は技術的な内容にかかわりますけれ ども、安全管理や運転管理がきちんと実施されているかどうか、そういう組織があるかど うかというものを含めてきちんとチェックするということです。  4の4年連続運転になると、いまの2年連続運転の要件をすべて満たした上に、さらに 付加的な要件を満たすこと、というのが認定の要件になっております。その3番のところ に、余寿命を有し、適切な経年損傷防止対策と書いてありますけれども、管が内側から流 体などにより、1年に0.何ミリかずつ削られていくということで、構造体が厚目に作っ てありますので、その0.何ミリかが蓄積して何ミリまでなっても大丈夫、つまり何年も つというような計算がある程度はできるわけですが、この経年損傷の防止対策をきちんと やっていくことができる、というのがこの4年連続運転の認定要件に加えてあります。  認定手続のところですけれども、それを性能検査機関と、学識者からなる委員会で事前 審査をしていただき、監督署長が認定をすることになっております。本日の委員の中で、 安藤委員と鴨志田委員におかれましては、この学識者からなる委員会の委員を務めていた だいております。  15頁に戻りまして、この認定を受けると、検査項目のいちばん下に書いてある運転時検 査を受けることができます。この運転時検査というのは、検査の項目としては変わらない わけですけれども、損傷を受けやすい内面を直接見ることをしなくても、外側からの目視 検査や肉厚の測定というもの、あるいは事業場が行った自動制御装置や附属品などに関す る検査記録により確認するということで、この性能検査の内容が簡素化される効果がある ということです。  こうした認定を受けている事業場の数は、2年連続運転がいちばん新しいデータで174 事業場、4年連続運転の事業場が56事業場あります。これらの多くは石油精製や石油化学 の事業場になっています。これらの認定事業場にあるボイラー及び第一種圧力容器の数が 1万2,000基です。先ほど、ボイラーが5万基、第一種圧力容器が12万基と申し上げまし たが、認定事業場にあるものが2つ合わせて1万2,000基という割合になっているという ことです。  17頁の資料No.7です。ここにあるのは認定を受けた事業場ということですので、安全管 理が優良ということで認定をしたわけですけれども、事故を起こしてしまったり、ボイラ ーの管理が不十分だったり、虚偽報告があったりという場合には、あらかじめ取消基準が 定められていて、それに該当する場合には行政処分として認定の取消しを行っています。 ここにありますのは、それを行った事業場です。  平成11年以降、次の頁に今年6月の太陽石油の事故を受けた取消しまで13件あります。 そういう数の事業場が認定を受けたけれども、取り消されたという状況です。  19頁の資料No.8で、定期自主検査制度の概要です。先ほど申し上げましたように、ボイ ラーについては第三者による性能検査と併せて、1カ月に1回の定期自主検査制度が義務 付けられていますが、その定期自主検査のことです。定期自主検査内容について簡単に書 いてありますが、ここにある項目は外から見てわかるものです。通常、運転しながらとい うことになりますので、そういうものが中心になっているということを示しています。20 頁に、この定期自主検査の項目が示されております。  ところが、この定期自主検査の実施状況には問題がある、というのが21頁の資料No.9で す。労働基準監督署のほうで、事業場に対して監督指導を行っておりますけれども、その 結果、定期自主検査がきちんと行われていないと判明したものが、これは化学工業だけで すが、2,254事業場のうち、269事業場ということで、11.9%に何らかの定期自主検査の違 反があったということです。この中には、連続運転の認定を受けていた事業場も6事業場 含まれておりました。この中には、検査を全く実施していない機械等があるというもの、 あるいは定められた期間ごと、1か月とか1年とかその期間ごとに検査を実施していない 機械等があるものが非常に多かったということです。  21頁のいちばん下には、ボイラー及び第一種圧力容器の事故のうち、定期自主検査がき ちんとされていなかったものが8件と書いてあります。上の16件というのは、過去4年間 に16件というのが13頁にありましたけれども、この発生原因を見ていくと定期自主検査 や日常点検がきちんとされていないことによるものが8件だったということを示しており ます。 ○平野座長 厚生労働省が担当しているボイラー関係の事故の情報、いま自主検査をどの ように行っているかという話をしていただきました。この辺りについて皆さんからご質問 などがありましたらお願いいたします。 ○小澤委員 余寿命評価のところは、エロージョンで肉厚が薄くなるという話がありまし たが、それだけで決めているわけですか。どういうふうに決めているのですか。要するに、 エロージョンだけではなく、施設そのものの老朽化などいろいろなものがあると思うので すが、それらも含めて総合的に評価しているわけですか。そうでもないのですか。 ○安藤委員 現実に定点の測定を行い、減肉のトレンドを取り、減肉に対しては余寿命開 放期間が4年に対して、測定の誤差、あるいは全面測定をしていないので、測定した点が 必ずしも最大の減肉ではないということを考慮し、余寿命の8年を要求しているところで す。経年劣化ということは別個にやります。 ○鴨志田委員 2年連続と4年連続の委員を仰せつかっておりますので、いくつか経験し ています。小澤委員がおっしゃったように、例えば、多くは石油化学なり石油精製なりの プラントです。プラントのシステムとしての審査をすることはありません。ただ、それに 大体近い形でしておりますが、特に4年連続の場合には、そのボイラーなり第一種圧力容 器なりが非常に古いということ。大体が昭和40年とか昭和43年というように、何年か経 っている機械に関しては特別にチェックを入れることをしています。ですから、システム 全体を見るというわけにはいかないです。  ただ気になっていますのは、前々からその委員会でも私は発言しているのですが、プラ ントならプラントのシステムとしての全体を見る何かの方策を考えなければいけないだろ うということは常々発言しています。 ○畠中委員 素人の質問ですが、15頁の開放検査ではなくて運転時検査の場合、ボイラー 本体の外側からの肉厚測定というのは、超音波検査とか放射線検査とか、そういう厳密な 検査を要求しているのですか、それともトントンと叩く程度ですか。 ○中央産業安全専門官 超音波の測定器を使ってやっています。 ○畠中委員 トータル1万2,000基だという説明がありましたが、これによる経済的効果 というのでしょうか、要するに開放検査をやろうとすれば、1週間程度コンビナート全体 を止めなければいけないわけですが、止めなくてもいいということによる経済的効果は相 当あるのではないかと思うのです。これは何百億円ぐらいかという試算はありますか。私 は、だいぶ前にどこかの協会の試算で800億円という数字を見たことがあるのですが、こ の制度を設けるに当たって、その辺りについて特段議論したことはないのですか。これは、 規則改正でやられたのだと思いますが。 ○副主任中央産業安全専門官 特に、いくらになるかというような試算はしておりません。 ただ、コンビナートを、まるまる止めなければいけないということになりますので、1日 でも10億円のオーダーだとか、そのような経費がかかるということからすると、先ほど言 われたような数字も驚くような数字ではないかもしれません。 ○安全課長 もともとこれが出てきたのは、規制緩和要望です。やはり運転を止めること によるコストアップといいますか、逆に運転を連続することによるコストダウンを図るこ とができるという、明らかに目的ははっきりしておりますので、しかるべき業界別に聞け ば、おそらく試算は出てくると思います。 ○畠中委員 18頁の認定の取消事案の12番は、発電用ボイラーですから、労働安全衛生 法適用ではないような気がするのですが。 ○中央産業安全専門官 適用ではありませんけれども、同じボイラーだと。確かに用途は 違うわけですけれども、発電用のボイラーについて事故が発生するというのは、私ども適 用のボイラーにおいても同種の危険性があると考えておりまして、同様の危険性を秘めた 事業場であるということで認定取消の対象をしております。 ○畠中委員 同じ事業場の中でということですか。 ○中央産業安全専門官 はい。 ○主任中央産業安全専門官 ボイラーが何基もあります。 ○鴨志田委員 これは、先ほどの2年、4年の連続のところで審査したと思うのですけれ ども、廃熱ボイラーのほうです。ですから、発電用といっても廃熱ボイラーとしての2年、 4年連続で審査したものということです。 ○郷原委員 17頁の認定取消事案ですが、もし認定が取り消された場合は、一定期間新た に認定を受けることができなくなるのでしょうか。 ○中央産業安全専門官 はい。 ○郷原委員 その期間というのは、事案の軽重や事故原因などによって違ってくるのです か。 ○中央産業安全専門官 取消しを受けた、ということでは一律です。 ○郷原委員 どのぐらいの期間ですか。 ○中央産業安全専門官 3年間です。 ○郷原委員 どういう問題を起こしたときに、この取消しになるのかということについて 基準のようなものはあるのですか。 ○中央産業安全専門官 簡単ではありますけれども、資料の16頁のいちばん最後で3つに 分けております。基本は認定要件を一旦はクリアしていただいているのですが、それを何 らかの形で満たさなくなってしまったという場合。2番目は、不正に当たりますけれども、 認定をした事項について、変更の手続を経ることなく、事業場が勝手に変更してしまった 場合。3点目は、実際に連続運転の認定を受けているボイラーが検査を受けて不合格にな った場合。  認定要件を満たさなくなったものについては、上に認定要件がいくつかありますけれど も、例えば違反がない、事故を起こしていないといったものが要件になっておりますので、 事故を起こしてしまいますと、その時点で要件に合致しなくなったということで取り消さ れることになります。事故も大きな事故がメインになります。 ○郷原委員 不可抗力的な事故でも、悪質な違反による事故でも、認定の取消しの期間は 変わらないということですか。 ○中央産業安全専門官 はい、そうです。 ○安全課長 この辺は通達による制度なのですが、労働安全衛生法の体系の中でも、例え ば免許の取消しとか、登録機関の取消しも事案の軽重によって再度取得できるまでの期間 に濃淡は付けておりませんので、それにならったという感じでした。畠中委員、それでよ かったですね。 ○畠中委員 はい。 ○田中委員 印象的なことで恐縮ですが、21頁の下のほうを見ますと、この該当期間に事 故件数が16件ある中で重点検査、日常の点検をやっていないというのが8件あります。こ ういう分野の人から見たら当たり前なのかもしれませんが、私どもの企業不祥事とかコン プライアンスの見方から見るとこれは大変なことなのです。事故の半分もが、本当はやる べきものをやっていなく、未然に防げたのに防げていないということですから大変なこと なのです。それを、ただ大変なことではなくて、私の感じでは経営母体としてこういうの が見逃されているということがガバナンス上大変なのです。なぜそういうのが見逃されて きたのか。  それと同時にご指摘のありました経費の点もありますが、もっと違う視点から見ると、 最近は企業行動に対して、企業の社会的責任という面から、非常に見方が厳しくなってい るわけです。事故が起こったときに、環境その他に非常に悪影響が出てくると、単なる事 故ではないとなるわけです。したがって私の感じとしては検討の中でこういうところは、 いま世の中の見方が変わってきている、企業行動の安全についても企業の社会的責任の目 からも、厳しく批判される時代になってきているというのを認識して検討を進めてはどう かという印象を、これを見て受けました。 ○平野座長 確かにこれはすごい数字です。特に、これまでいくと厚生労働省が非難され るという感じです。そういう意味もあって、今回皆さんに議論していただきます。 ○小澤委員 いまの田中委員の発言にもかかわるのですが、ボイラー検査よりも、例えば ASMEのボイラー構造などでも1800年代から研究をやって、ようやく1910何年にその ボイラー構造の組織ができて、しかも第三者性というのを維持しながらここまでやってき た。その結果、いまのレベルの事故のところまで減っているということを忘れてはいけな いと思うのです。  それを、自主検査というのは、面倒くさいとか、そこで自分の所で検査をする手間を省 けばそれだけコストダウンになるのはわかりきった話です。その結果的に事故を起こす芽 をちょっとでも摘まないといけないのに、それを残してしまう、温存してしまうというこ とになりかねないと思うのです。  資料の後ろのほうにも書いてありましたが、昔なら現場のおっちゃんがよくわかってい て「これは、このようなもんや」と知っている経験者がいたにもかかわらず、最近はあち こちで、例えば溶接の火花で焼いてしまうというような事故がやたらと多発していると思 うのです。我々の大学の学生を見ていても、将来本当にちゃんとした技術者になるのかど うか、教えているこっちが心配になります。そういう時代を迎えて、非常に危ないことで はないかと思っています。 ○平野座長 最初の挨拶のときに、ボイラーというのは非常に長い歴史があると申し上げ たと思います。長い歴史というのは、安全整備をちゃんと構築するほうもきちんとできて いますが、ごまかすほうもちゃんと歴史があるので、そこはちゃんと見ていかないといけ ないと思います。本当は摘めた芽が、実は摘めていなかったという話ですね。 ○鴨志田委員 厚生労働省から発言がありましたように、ボイラーで5万基で、第一種圧 力容器で12万基で、都合17万基になります。実際にいま認定にかかっているのが1万 2,000基ということですから1割にも満たないわけです。あとの残りに関しては毎年やっ ているわけです。  つい最近委員会が開かれて、そこで審査して、いまおっしゃった、何年でリカバリーで きるのですかという話が郷原委員からもありましたが、3年になったのです。これは、私 も前に審査をして通しているわけです。水管ボイラーだったのですけれども、水管ボイラ ーにすすが付くのですが、それを拭くために、当然構造上の欠陥が最初からわかっている わけです。たぶん指摘はされていたと思います。それが、そこで割れてしまった。その写 真が付いていましたけれども、見事な割れ方です。死傷者が出なかったのは幸いだったの ですが、それで取消しになって今回受けているわけです。  おっしゃっているとおりで、いわゆるスキルな方が少なくなってきてしまった。その現 場での検査をするにしても、見るにしても、それをちゃんと指摘する人が少なくなってき ているということは事実です。ですから、起こり得るべくして起こった事故であって、本 来ならば人身事故ではないから取消しということはあり得ないのかもしれませんけれども、 やはり日々の検査というか、厚生労働省で決めた検査体制に乗っていなかったという意味 においては、確かに危惧する事故であると思いました。それと小澤委員がおっしゃったよ うに、検査するというか、それを守る人たちが少なくなってきているということも考えな ければいけないと思います。 ○安全課長 誤解があるといけませんので申し上げておきます。先ほど16頁の連続運転認 定制度のところでお話しましたけれども、これはあくまでも性能検査、いわゆる第三者機 関である登録性能検査機関が実施する検査の一環ですので、これが自主検査とみなされて いるわけではありません。そこは誤解のないようにお願いいたします。先ほどお話しまし た自主検査というのは、事業主が自分でやるということです。  連続運転も、施設を止めて開放して検査を実施しないだけであって、外部から何らかの 形で厚みを見たりしておりますので、連続運転というのは第三者機関による性能検査の変 形といいますか、特例であるとご理解いただきたいと思います。 ○平野座長 21頁のいちばん下の、16件中8件というのは、両方とも非常に困った数字で、 点検してあっても8件の事故が起こっているわけです。そうすると、その第三者機関とい うのは大丈夫なのか。それから、やっていなくて起こしたのは事業主の責任ですので、両 側から議論を進めたほうがいいと思います。  次に、高圧ガスの説明をお願いいたします。 ○副主任中央産業安全専門官 規制改革のほうで、高圧ガス保安法のような自主検査が認 められていないという記述がありますので、25頁からの資料No.10に、高圧ガス保安法制度 の概要について資料をご説明いたします。高圧ガス保安法は、ガスの製造設備について、 一部を除いて10気圧以上のガス製造設備の全体について、定期的な検査を定めております。  26頁に、第一種圧力容器との区分を示しておりますが、このように区分はきちんとして おりまして二重規制はないということです。  25頁に戻って1のところで、高圧ガス保安法の設備の定期的な検査については、原則は 第三者検査ですけれども、この認定を受けると、ボイラー・第一種圧力容器のように連続 運転ができるというだけではなくて、自主検査ができるようになる点が異なります。3行 目に、「自ら保安検査を行い」とあるのがその部分です。自ら保安検査を行うことができて、 都道府県知事が行う保安検査を受ける必要がないというのが、第三者ではなくて自主検査 でよくなるというところです。  この認定要件については3のところに書いてあるように、安全の管理などを見ていると いう点では、ある程度類似した認定の要件になっています。認定保安検査事業場といいま すけれども、自主検査ができる認定を受けた事業場が、約90事業場あるということで、こ れはほとんどが石油精製、石油化学の事業場ということになっています。  5番目に認定の取消しの要件を挙げています。27頁で、高圧ガス保安法の連続運転、か つ自主検査ができるということで認定を受けた事業場が、その後、取り消された事案をこ こに列挙しています。ここにあるものは、自主検査をやるということで決められた検査を 実施しなかったにもかかわらず、実施をしたという虚偽の検査記録を知事に届け出たとい う不正の事案で、11件挙がっているということです。中には自主検査の初年度から5年間、 ずっと虚偽報告をしていたというような事業場もあります。  28頁です。ここにあるのは爆発、火災の事故を起こした事業場のうちで、その要因が腐 蝕、摩耗、亀裂などにあったというものの事故を数で示しています。この腐蝕、摩耗、亀 裂というものが爆発の原因になったということは、やはり何らかの安全管理上の失敗があ ったと考えざるを得ないということで、2のところで例えば平成14年の石油精製で4件と なっています。その中の1件の話で、監督署でも災害調査を行ったものとして、大分県の 石油精製事業場で高圧ガスの水素を流して圧力を調整していたときに、配管が腐蝕してい て破れて引火、爆発したということで、配管付近の労働者1人が大火傷を負ったというも のがあります。  この災害については、配管の当該箇所が局部的に雨水によって著しく腐蝕しやすい環境 にあったにもかかわらず、その部分を肉圧測定箇所にしていなかったということで破れ、 それが爆発に至ったということです。そういう意味では自主検査ができると認定された事 業場ですが、災害の原因となった設備の腐蝕は、自主検査を適正に行っていれば防げたは ずのものであると考えられるわけです。  そういった事故が3年間で高圧ガス保安法の適用設備において14件発生している。括弧 内の数がそうですが、これらの事業場は自主検査に委ねられていながら、測定すべき箇所 の的確な選定や適切な期間での測定を実施することによって、自主検査を適切に行って、 安全に運転を遂行する能力があったとは言えないのではないかと考えられます。  29頁から後ろは産業事故災害全般の状況です。平成15年に非常に事故災害が多発した ことから高圧ガス保安法を所管する経済産業省、消防法を所管する消防庁と私どもと合わ せて3省庁で、産業事故防止対策について連携し、事故災害の動向、問題点などをまとめ ました。その報告書がこの29頁の資料です。長いのでポイントだけ説明したいと思います。  2のところでまず「産業事故の動向」とあります。原典にはありませんが、わかりやす いように線を引いていますが、まず、危険物施設の火災・漏洩事故は、平成6年ごろを境 に増加傾向に転じ、平成12年に過去最多の511件を記録した。その後は横ばいと書いてあ ります。29頁のいちばん下には、高圧ガスの災害については、平成10年から一貫して増 加傾向にあり、平成14年は137件と過去最高の件数となっていると書いてあります。  この報告書以降の統計も加えたグラフを36、37頁に付けています。まず、消防のほうで は平成12年511件が過去最多で、その後は横ばいだったのですが、結局その後また増えて いるということで、平成17年には580件になったというのが上のグラフです。事故発生率 もどんどん上昇している状況にあるということです。  高圧ガス保安法のほうは35頁です。上のグラフで137件で過去最多になったと書いてあ りましたが、その後も増加を続けて163件になったというのが、これも過去最高件数とい うことです。  労働災害は厚生労働省の統計が34頁に付けてあります。労働災害全体ということで見ま すと、34頁の上のグラフにあるように、死亡者など休業4日以上の災害などは減少してい るわけですが、こと重大災害、これは一度に3人以上が怪我、または死亡した災害ですが、 そういうものでいうと、昭和60年を底に増加をしている状況です。  38頁で、最近発生した爆発火災災害を入れています。15年は非常に多発をした年と申し 上げましたが、その後も発生をしており、40頁で、平成18年に入ってからもすでに精油 所の爆発火災だけでも3件が発生しているということです。以上が事故災害の発生状況で す。  29頁に戻っていただき、冒頭でこの背景に触れています。設備の老朽化、維持補修投資 の減少、省力化・合理化ということで人員が減少し、そういうものの影響が懸念されてい ると記述しています。  30頁の真ん中辺に線を引いてありますが、生産活動に従事する人員数、経費は相対的に 減少傾向にあるといったこと、あるいは安全管理のレベルの低下を招くことが懸念される ということが書いてあり、ここから後ろにも繰り返し同じような記述をしている箇所があ ります。  いまの報告書は産業全体を取り上げた報告書ですが、石油の業界についてどうかという ことで、少しデータを付けています。まず41頁の図1は、設備の年齢、「設備経年数」と 書いてありますが、それがどうかということです。この中で縦軸が少し見にくくて恐縮で すが、設備の経年数で、横軸が西暦の年数を取っています。この中で▲が石油・石炭製品 工業で、今回のコンビナートもここに入るわけです。もともと製造業全体の中でも、この 設備年齢は石油・石炭製品製造業は非常に長い業種であったということなのですが、さら に伸び続けているという状況が見てとれるわけです。  図2は、通常その形からバスタブ曲線と言われています。設備の年齢が伸びますと、こ の右のほうの摩耗、故障期間という領域に入ってきて、縦軸に故障率を取ってありますが、 故障発生率が高くなってくるということです。ですから、ここには適切な維持補修投資が 不可欠になるわけです。  ところが、それがどうなっているかというと、42頁の図3ですが、上のほうで色が濃い 部分が設備保全費になっていて、2003年度で7.3兆円となっており、中期的には減少して いる状況が見てとれるかと思います。そういう設備保全費削減の影響として、このプラン トメンテナンス協会では、事故など安全衛生上の問題が懸念されると、アンケートに回答 しています。  43頁です。私どもで平成15年の事故多発を受けて、大企業などに自主点検をお願いし た結果です。自社の労働者数を減らした事業場が、化学工業で75%になっており、全産業 の平均よりは多いということです。  保安の経費や人員の減少については石油業界だけのデータは少し前のものはあり、例え ば定期修理にかける費用が平成6年度には756億円だったものが、そこをピークとして平 成13年度には280億円と、半減以下になり、人の問題についても防災専従要員と、コンビ ナートの災害防止担当の人の数についても、この間に2割以上減少したというような顕著 なデータもあります。ただ、データの時点が少し古いということで、本日の資料には入れ ておりません。この点は明日のヒアリングで、業界から詳しく示されるのではないかと考 えています。  以上、非常に量の多い資料でしたが、説明を終わります。よろしくお願いいたします。 ○平野座長 高圧ガス保安法の制度、最近の事故の傾向、その他ご説明をいただきました が、ご説明いただいた範囲、あるいはそれをはみ出しても結構ですが、何かご指摘、ご質 問いただくことがありましたらお願いします。 ○小澤委員 35頁の高圧ガス保安法関係のものが、平成11年ぐらいからえらい勢いで増 えているというのは、設置台数そのものが、ここで急に増えたということはないのでしょ うね。そんなに変わらないのではないかと思うのですが、事故の件数だけが増えていると 読んだらいいのか、設置台数そのものが増えて、確率的には同じようなものなのか。 ○副主任中央産業安全専門官 この辺りは私どもにはそのデータはないのですが、基本的 にそれほどある年に増えるということはないと考えています。 ○平野座長 このころから高圧ガス関係の例えば高圧ガスのバルク供給になったり、いろ いろなことでエネルギー関係その他で、増えていることは確かだと思います。ただ、これ ほど増えているかどうかは別ですが、水素の容器だとかが増えていることは確かです。 ○安藤委員 13頁にボイラー及び第一種圧力容器の事故災害の最近4年間のデータが示 されているわけですが、大体年平均4件ということです。これをもう少し長いスパンで見 ますと、ほぼ同じなのです。ボイラー協会のホームページから見ると、14年間ぐらいで大 体同じ、ほとんど減っていないということがあります。死傷者数という数値が出ています が、どういう方がそういう傷害を受けられるかというのを見てみますと、少し力が弱い人 とか、情報を持たない人です。安全というのは、いつも力のある人対力のない人、情報を 持つ人対持たない人という間で起きてきている。損害を受ける人は、必ず持たないほうの 人である。そうすると、そこにバランスを取るためには、何らかの強い力が作用していか ないと、どうしても立場が保持できないということが起こり得る可能性が高いと思われる わけです。  そうしたときに、その力になるものはモラルか、外的な力だということになるわけで、 27頁を見てみると、90事業場で11事業場がということになると、これは12%を超えるわ けです。そうすると、このデータからモラルだけでいいのかという感覚が出てくるわけで す。力のアンバランスを是正するには何らかの力が要るだろうというような気がしている わけで、そういう意見を申し述べさせていただきました。 ○平野座長 いまの13頁のデータと27頁のデータは対象が違っていて、後者は高圧ガス 関係ですね。 ○小澤委員 ええ、後者は高圧ガスです。 ○平野座長 高圧ガスを見ますと、ボイラー関係の事故よりは割合がかなり高いのです。 委員が先ほどおっしゃったようにボイラーは非常に長い歴史を持っているので、私の印象 では圧力関係の装置ではいちばん安全なものだと思っています。そこで、委員がおっしゃ られたようなことがもしあるとすれば、これはきちんとした対策を立てなければいけない と思います。 ○小澤委員 何年か前に私の師匠の関係から事故統計をずっとやったことがあり、日本の 戦後のボイラー第一種圧力容器で何人死んでいったかという事故の件数を調べていました ら、最近はデータを集めていないのですが、もう10年ほど前ぐらいの段階で、大体ボイラ ー、あるいは第一種圧力容器が1台あると1万年に1回1人の人間が死ぬ。1万台あると 毎年1人死ぬというぐらいの統計でした。いまこの辺の数字を見ていたら、大体それが当 たっていて、あまり変わらないように思うのです。だから、ようやくいまの段階まできて いるのだという認識が非常に大事だと思うのです。いまの枠組みがやっとここまできたの だという、それを簡単に外していいものかどうか。非常に危ないと思います。 ○平野座長 ボイラーの事故というのは安藤委員どうですか、やはり作業をしている人が 犠牲になることが多いでしょう。 ○安藤委員 結局そういうことですね。あるいは本社の方でない方とか。 ○小澤委員 派遣社員ですね。 ○田中委員 また、ちょっと印象的なところで恐縮ですが、例えば27頁の注を見ますと、 虚偽の報告をしているというところがあります。また、38頁以降、こういう爆発火災災害 のことがあると。結局問題になるのは2つありまして、例えばこういう虚偽の報告云々と いうのは1件ごとが問題というよりは企業体質にかかわる部分があるわけです。そのほう が手っ取り早いではないか。事故はそんなに起こらないからいいよ、という体質のはずで、 これは担当者ができるわけではなくて、その上司も認めているはずなのです。そうすると、 極端な言葉を使うと、組織ぐるみだという形になりかねない案件なのです。そういうもの を許容する企業体質が残っているというのをどう是正していくかが、1つあろうかと思う のです。  38頁以降の災害のところも、日本の統計上、小澤委員のおっしゃるようにいろいろと分 析しているのでしょうが、各々1件ずつの災害に対して、どういう原因でどのようにこれ を改善し、どうするかという計画書というのは、厚生労働省に当然提出されているのです ね。つまりそういう各々の報告書から、共通項でどのように対応すればいいか、汲み取る 教訓があるはずです。そういうところから教訓を導き出して、それを産業界にどうフィー ドバックするかというのも行政として、非常に重要だと思うのです。民間ではそういう部 分の情報がなかなか集められないので、そういうものをきちんと情報を開示して、報告す ることも重要ではないかと思います。  いまお話の中に少し出ていましたが、現場では正社員と非正社員の比率が、従来どんど ん変わってきて、重要な作業を非正社員がやっている事例が増えているわけです。そこに はコミュニケーションギャップとか、社員に対する教育研修の不徹底さ、正社員にはかな り徹底しているけれども、非正社員にはそこまで辿り着いていないという部分もあって、 非常に全体としては災害を防止するような仕組みは定着しつつあっても、教育研修や社員 の構成の変化によって会社の思いどおりの、例えば上層部の思いどおりの意思が事業場の 末端に行き届いていないということもあると思うのです。そういうものをきちんと考慮し ながら、この案件を検討する必要があるかなという印象を受けました。 ○鴨志田委員 実際に委員をやっていて、いつも気になるのが、いわゆる高圧ガスの法律 と厚生労働省側のボイラー等の間の考え方の違いがあります。どちらかというと高圧ガス のほうは機器そのものを相手にしていて、厚生労働省のほうは人という考え方で、そのず れがあるわけです。というのは、例えばある会社で石油精製絡みだとか、プラントでも結 構なのですが、多くはその2つのどちらかなのですが、例えば高圧ガスで事故を起こした としても、ボイラー側のほうでは人的な被害とか障害があったわけでないからという形で、 実際には同じ機器で隣り合って、同じプラントの中に入っていて、本当に目と鼻の先に分 かれていて、こちら側が高圧ガスで、隣の扱いはいわゆる厚生労働省ボイラーだと。起こ ってもこちらのほうで通ってしまうわけです。  審査をするときにこの整合性に非常にいつも不安を感じているのです。というのは、報 告者は当然各ベテランの方が報告して、こういう事故がありました、という話をしてくれ るわけです。ですけれども、それは我々のほうは厚生労働省側のフィルターをかけて、審 査するわけですから、人的な被害がなければそれでいいという。  それでちょっとお聞きしたいのは、すごく気になっているのが27頁の認定を取り消した 事業と、先ほどの労働安全法に基づいての事故があります。これと会社は結構重なってい ますね。ここの非常に重なっているというのが気になるところなのです。ですから、たぶ ん両方とも同じような体質を持っている。結局はきちんとした検査をするとか、日常の点 検をするとか、全社を挙げて全体的に安全にどう取り組むかという機器の保守点検をどう するかということに対しての欠陥があるのだろうなという感じを持っています。 ○小澤委員 それに関連して、ちょっとお聞きしたいのですが、先ほどの29頁の経済産業 省と消防庁と厚生労働省との会合の話がありましたが、日常的に例えば高圧ガス保安法に 触れるようなトラブルが起こったときに、厚生労働省にはそういう報告などの行き来は始 終あるのですか。 ○中央産業安全専門官 いま鴨志田委員からもお話があったのですが、高圧ガス保安法の 設備が仮に破裂したり、爆発したりすれば、基本的には私どものほうの法令でも報告の義 務があります。そういった事故があると認定は基本的にできないことになっています。で すから、それは我々のほうに報告がされていない可能性が非常に高いと思われます。法律 上は義務があります。 ○小澤委員 いちばん最初の今回のこの会議の義務みたいなところに、ある種の規制緩和 がどうのこうのというのがありましたが、その規制緩和というのは法律上の、例えば経済 産業省であるとか、厚生労働省の法律上の整合性をとって、それを規制緩和にするべきで あって、検査とかそういう話ではないと思うのです。あっちもこっちも認定を受けなけれ ばいけないという装置によっては出てきます。そちらの不整合のほうが問題であると思い ます。 ○平野座長 そうですね、これは経団連、同友会辺りの経済人が要求してくることで、そ れに関してこちらはどこを取るかというのは、こちらのインテリジェンスの問題ではない かと思います。先ほど派遣社員が犠牲になっているというのだけれども、もう1つ、別の 意味での犠牲になっているのです。私はここだけではなくて、いろいろな所の事故調査を 頼まれたりして、外に出てこないものもありますが、ある重大事故が起こったときに、協 力会社の人が犯人にされる。例えば、実例を挙げていいと思うのだけれども、ブリジスト ンのタイヤ火災がありました。随分たくさん燃えたのですが、犠牲者は1人も出なかった という。実は犠牲者がいたのです。溶接している溶接工が犯人だということで、みんなに 責められて自殺しました。そういうところにどうやって我々が配慮していくかということ も1つ必要になってきます。そういう意味で派遣社員とか、いわゆる孫請けという人たち を守るというのも、厚生労働省の仕事ではないですか。そういうことにも配慮しながら、 これは経済的にはこうなのだけれども、実際には人的被害はそうだけれども、ここで止め ておくというのがあってもいいと思います。  それと第三者調査というのも絶対に必要で、実はどんな小さなことでも、第三者調査が 入るような格好にしておいたほうがいいと思います。私が頼まれたのは、ほとんど厚生労 働省だと第三者が調べなければいけないというので、我々も協力したのですが、ほとんど 第三者が事故調査していました。ほかの所で、例えばテレビの放映などでも、自分の所で 「お前の所ではいつ押さえられる」と、どこかの省庁が言っているというのは、ちょっと おかしいというか、それをやったら全く原因がわからないです。だから、こういうのはそ ういう議論をする場にして、きちんとした規則に反映させるようにしておいたほうがいい ですね。要件の中に、何か起こったときは第三者調査が入りますよというような格好にし ておいたほうがいいと思います。 ○郷原委員 先ほど来指摘されている官庁と官庁との間の隙間、法令と法令との間のギャ ップの問題に対しては、何か今後改めていこうという経済産業省と厚生労働省との間で、 その辺の隙間を埋めていこうというような動きは、いまのところはないのですか。 ○中央産業安全専門官 技術的な面については、共通基準を作って法令が変わったら全然 違う基準で作らなければいけないとか、そういうことがないような配慮はされています。 また、それ以外の制度的な面でも、これもいま規制改革で確かに指摘されていることでは あるので、やはり情報交換を適宜行っており、そういった面で、できる限り共通化できる ものは、平野座長の先ほどご挨拶の中でもありましたとおり、関係法令の制度面での合理 化の話とかは、適宜これまでもやってきてはいます。 ○平野座長 共通認識という点では、少しずれがあるというか、それぞれ立場が違うから それは当然なのですが、すみ分けをきちんとすることに主眼点を置くと、ほかの管轄のと ころで、例えば高圧ガス保安法で規制されている厚生労働省は、人身事故がなければ入っ ていけないというような感じです。だけど、使うほうや被害を受けるほうの立場になると、 どんな法律で規制されていても同じなのです。死ぬとか怪我するというのは同じなので、 そこら辺はもう少しやる必要があるのではないでしょうか。最近でも先ほどの話ではない けれども、いろいろとすり合わせはやっているのでしょう。 ○副主任中央産業安全専門官 いろいろとご意見をいただいたものにできるだけお答えし ようと思いますが、まず、例えば28頁の下のほうで示しましたが、高圧ガス保安法の認定 事業者ということで書いてはありますが、基本的にはここにあるものはすべて労働基準監 督署が入って調査をしたものです。というのは、必ずしも人身事故でなくても、爆発とか 火災という事象があったということであれば、労働基準監督署が入って調査をすることに なっていますので、その点はできていると思います。  ただ、先ほどからご指摘のようにいろいろ違う点があるということについてですが、ま ず、請負というような話がありましたので1点申し上げますと、先ほど私どもの取消しの ほうで6月に取り消したいちばん最後の事案、18頁のいちばん最後の事案については、私 どもが最近取り消したわけですが、これなどはまさに請負人がタンクの中を整備をしてい た間の火災ということです。  我々はこういうものを精油所側、その作業を発注した側の管理も問うて取消しにしてい るわけですが、高圧ガス保安法のほうではこういうものを問うのかどうかはわかりません が、我々のほうはそういうものも問うているということです。  まさにこういう事故などでいろいろ要因が出てきたものなどについて、共有すべきでは ないかというようなお話もありましたし、郷原委員からも法令の隙間みたいなものを少し でも埋めるべく、協議していくべきではないかということについては、是非この委員会を 受けた私どもの宿題として、きちんと対応していく必要があるのではないかと考えていま す。 ○小澤委員 それに関連するかもしれないのですが、事故が起こって、例えば先ほどの高 圧ガス保安法に関係する事故、トラブルが起こると、多分出てくるのは経済産業省の委員 が出てきたり、厚生労働省関係のほうが出てくると、今度はこちらが出てくるという、事 故調査そのものがどこが主体的に行われるのか。例えば航空機事故・鉄道事故調査委員会 は国土交通省の内局にありますが、あれはすべてにわたって出てくるわけでもないと思い ますし、そうすると、どこが調査するかによって、その結果がどこにどう反映するのかと いうのが、下手をすると変わってくる可能性があるのではないかと思うのです。  その辺の日本の体制そのものがあまり十分に整備できていないのではないか。いちばん 多いのは警察が出てきて、証拠物件で全部持って帰るというのがいちばん多くて、その結 果、世間、産業界、あるいは法令に反映されるかどうかというのは、かなり怪しい。予見 可能性があったかどうかだけで警察のほうは動くでしょうし、その結果、どこにシステム として問題があったかというのは、産業上は全然反映されないような危険性もある。その 辺の法整備のほうが、実は本当は大事なのではないかと思うのです。 ○平野座長 ちょっと生臭い話になりますが、事故がたくさん起こった年の苫小牧のタン ク火災も、現場の力関係なのです。結局、消防庁でどうも手に負えなさそうだからと、私 が出ていきました。消防庁を中心にいろいろやっているのですが、規則上は都道府県なの です。だから、北海道の中の消防学校の校長先生みたいな方が仕切ることになっているの ですが、すべてというか、消防庁の意向を伺いながらやったと。同時に経済産業省の原子 力安全保安院から審議官が来ていたのです。それは私たちがよく知っている人なのですが、 私なんかが出て行ったからだと思うのですが、ある所でパッと切り換えて、全部こちらの いうとおりに動いてくれたというようなことがあり、随分生臭いのです。  労働基準局はかなりパワーを持っていまして、何か事故が起こったとき、厚生労働省が 出ていけばこれがたぶんいちばんだと思います。産業に関係のある所だと、経済産業省が 出てきますが、事故調査などだと、警察、消防がやはり強いです。消防は非常に悪い癖が あって、第三者を入れないで現地消防が調べたがるのです。これで警察と争うと、大体警 察に負けてしまって、証拠を押さえられるとか、そういう生臭い話があるのですが、それ はそれとして、ある意味で労働基準局とか厚生労働省に頑張ってもらわないといけないと いうところはあります。  ちょっと余分なところにいきましたが、結論からいうと、現場の力関係で決まる。です から、本来火災だと消防に調査権はあるのですが、それは字句の上だけで、ほとんど警察 に押さえられてしまうというのがいまの状況です。畠中委員辺りはそういうところは非常 に敏感にお感じになっているのではないでしょうか。 ○郷原委員 いまのお話ですけれども、一般的には人が死傷した場合には警察の犯罪捜査 が必ず行われることになります。その一方で、行政調査は事故原因を調査するための組織 に特別の権限があれば、警察の犯罪捜査と並んで事実解明についての調査がかなり積極的 に行われることになります。それの1つが、原子力安全保安院のような組織、航空鉄道事 故調査委員会も何年か前の法改正で特別の行政調査権限が与えられました。そうでない場 合は、おそらく行政庁の調査というのは、特別の権限があるとしても、法令違反について の調査権限だけということになるので、事故原因の究明について特別の調査が行われるこ とはないと思うのです。  それ以外に、今度は刑事司法の関係での権限が重複する場合があるのです。いまおっし ゃったような警察、消防、海難審判庁の3つが交錯したのが、私が長崎地検の次席検事を やっていたころに起きたダイヤモンド・プリンセスという客船が火災を起こしたときです。 これが、ちょうど3つの関係機関がものすごく仲違いをしていて、大変な事故だったので す。基本的には警察が収めることになりますが、船の事故だということで海難審判庁も放 っておけないし、火災ですから消防も放っておけない。たまたま労働者に被害は出ません でしたから、あまり労働基準監督署のほうの話は出ませんでしたが、そうやって関係機関 が入り乱れてくると、その調整がものすごく難しくなります。 ○平野座長 あのとき、ちょうど私は消防研究所の理事長をやっていて、消防庁はもうお 手挙げだったのです。これはまず出て行かなければ駄目だというので、いま言われたよう な結構強い態度で行ったのだと思うのですが、あれはきちんと調査しないと、本当に火災 原因などわかりませんから、そういうことで進めて消防庁もちょっと強気になってやり始 めたのです。前にやはり厚生労働省の依頼があって、繋留中の船の火災を調査したことが あるのですが、繋留中ですと、いわゆる海上保安庁ではなくて、労働基準監督署の管轄に なるのです。だからあの場合は、繋留中だから本当は海上保安庁が出てくるというのは、 ちょっと筋が違うという感じはしたのですが、やはりかなり船だからということだったの でしょうが、いろいろありましたけど、結局現場の力関係で。 ○郷原委員 ちょっとご参考までに言いますと、あの事故に関して、あまり言われていな いことなのですが、人的被害が全く出なかったのです。なぜかというと、あれは船は燃え てしまったけれども、中に働いていた人が全員安全が確認されるまでは人が死ぬような消 化活動はやらなかったということが原因だと言われています。ですから、労働者の命は守 ったと。その代わり船は全部燃えたと。そういう意味では労働者の安全を守るという意味 では、かなりよくやった事案といえるのかもしれません。マイナスの面ばかりがいつも取 り上げられるのですが、労働者の安全を確保するためには、どういう措置が必要なのかと いうプラスの面も、考える必要があるということなのかもしれません。 ○畠中委員 先ほどの郷原委員のお話の中で、法令違反は別として、災害の原因の調査と いうものについて、権限が与えられている行政庁はそれほど多くないというお話があった のですが、労働安全衛生法では「労働災害の原因の調査」という言葉をまともに立てて、 労働災害の原因の調査を行うために、立ち入り権限、質問権限、物件の検査権限が与えら れているのです。労働安全衛生法の93条なのですが、産業安全専門官、衛生専門官の権限 として、まず産業安全専門官、衛生専門官の職務として、労働災害の原因の調査とありま して、その権限としていま言いましたような立入り調査、質問権限が与えられる。だから、 そういう意味では労働災害という点に関しては労働安全衛生法というのは、ある意味で非 常にまとまった法律なのです。 ○小澤委員 それはある種の強制捜査権みたいなものですか。 ○畠中委員 はい、強制調査権です。この強制的な立入り調査権限のところには罰則が付 いていますので、拒否したら罰則が科せられます。 ○郷原委員 それは行政調査権限ですよね。拒否したら罰則と。それとは別に労働基準監 督官としての司法警察職員としての権限も別にあって、刑事の面と行政の面と両立てにな っているのですね。そういう意味では全体がきちんとまとまっている法体系という意味で すね。その両方の権限行使が、若干関係が問題になったりするということもあるかもしれ ませんが、いずれにしても両方が備わっているということですね。 ○平野座長 捜査権は意外な所で意外な外力が働いていて、厚生労働省で調査できるのは いわゆる重大災害以外は、ほとんど来るなと。特にある災害のときに、ある国会議員の人 に聞いたのですが、私がその権限というか、アドバイスをして、ほかの都市の消防の援助 は全部断ったのです。なぜ断ったかというと、そこの都市が来ると調査権を持っています から、みんなわかってしまうという、そんなことがあります。だから、先ほど申し上げた 力関係みたいなものがあって、法律ではこう決まっているのだけれども、ここはこう入っ てこないようにしようとか、いろいろなことを政治的に動くこともあるということです。 ○郷原委員 そこは本当は、私も検事の仕事をしているときに、そういう事故の事件に随 分かかわりましたが、検察官がある程度コーディネート機能を果たすことが、本当はある 程度効果的な場合があると思うのです。先ほどのダイヤモンド・プリンセスの事故のとき にも、警察と海上保安庁と消防署の間をどうするかということで、全部地検に集まっても らって、いろいろその間の調整をしたことがあったのですが、最終的にはいずれも刑事処 分になる可能性があるということになれば、ある程度の指揮監督ができますし、何といっ ても公益の代表者という立場でもあるので、検察官のコーディネート機能ももっと発揮で きてもいいかなという感じもするのです。 ○平野座長 大変な仕事を手がけられたのですね。 ○鴨志田委員 いまかなり詳しく法律上の問題をお聞きして、日ごろの委員会での活動と 照らし合わせて、それをフィルターにして考えたときに、第三者機関がそれを認定する行 為でなく、自主的にそれをやる基準としたときに、その自主検査ができるという認定をし たところが最終的には法律的に罰せられるわけですか。この自主検査が通ると、事故が起 こったときには誰が罰せられることになるのですか。 ○郷原委員 自主検査を。 ○鴨志田委員 例えばメーカーが自主検査をしますね。例えば自主検査ができるというこ とができて、そうするとそのメーカーがある要件を満たしていればいいわけですから、自 主検査を認定するわけですね。そうすると、最終的には法律上は認定をした人が罰せられ るわけですね。 ○郷原委員 それは可能性は非常に低いと思います。認定したことと災害が起きて人が死 傷したこととの因果関係はかなり遠いです。 ○鴨志田委員 やはり遠いですか。 ○郷原委員 ええ。それは認定を受ける際に、こんないい加減な事業者に、なぜそんな認 定をしたのかと言われるような認定をすれば別ですが、一応それなりの根拠を持って認定 しているのに、その後の運用業務の中で、重大な問題があって事故が普通発生するのだと 思いますし、そこに責任が及んでくる、少なくとも刑事責任がかかってくるということは、 ちょっと考えられないですね。 ○鴨志田委員 そうなると、少し気になるのは、やはり具体的な自主的な検査基準という のが作りにくいのではないかと思うのです。検査基準という1つの枠を決めて、こういう 検査基準でやりなさいということを、自主検査をする会社に認定するわけですから、そう なると自主検査という枠をはめた行為者が罰せられるべきですね。基準を作るわけですか ら。そういうことですよね。その基準どおりに私たちはやっていたのだけれども、起こっ てしまったのだというときに。 ○郷原委員 その基準自体に問題があったということが、後ではっきりしたときに。 ○鴨志田委員 ええ、たぶんそれがいちばん難しい。ですから、これを受けたときに、私 が気が付いていちばん気になったのは、基準をどうやって作るつもりなのか。いわゆる第 三者認定というか、第三者がいま一生懸命審査をしているわけですね。それ以外にないと きに、自主的に検査をしたときに基準を作らないといけないわけですね。その基準をここ で考えなければいけない。そうすると、基準はこういうように基準でやりなさいというこ とを受けながら、メーカー側はそれを受けてやって、事故が起きたときに、メーカー側は それに対して法廷で「いや、そのとおりにやりました」となったときに、その基準自身が 誤ったということになるわけですね。 ○郷原委員 その基準は少なくとも安全を確保できるような基準だということを十分に検 討した上で決めるわけですね。 ○鴨志田委員 そうですね。 ○郷原委員 そうだとすると、それでもなおかつ事故が起きたというのは、それは基準を 作ったことによる責任とは、普通は言えないと思うのですが、それで刑事責任を問われる ということは、ちょっと考えにくいですね。 ○鴨志田委員 そうすると、最終的にそれで死傷者が出たときに、その自主検査を行った 者が責任を問われるのですか。 ○郷原委員 それもその基準どおりにやったのだけれども、事故が起きたとすると、結局 は不可抗力ということになってしまうかもしれませんね。 ○鴨志田委員 そうすると、それがまさに下請会社になると浮かばれないですよね。 ○安全課長 少し問題の整理をしたいのですが、いま我々に規制改革会議から要求されて いることを端的に言いますと、高圧ガス保安法で自主検査制度があって、なんで労安法で ないのか。端的にはこういうことなのです。その場合、それをちょっと言い換えますと、 検査基準というか、認定基準を作るのは行政なわけです。ここに書いてあります25頁の高 圧ガス保安法に基づく保安検査認定制度の概要とあります。ここの認定基準3の認定基準 とか、取消基準は労安法でもできるではないか、というのが規制改革会議の主張です。  我々のいちばん端的な反論は何かというと、27頁にあるような90分の11のところで、 不正がやられている。こんな制度設計はうちではやれない。こんな無責任な、経済産業省 に悪いですが、こんな無責任な制度設計をうちはまねることはできませんというので反発 して、いまあるような最初にご説明した答申文、すなわち、「万が一、そういう基準ができ たならば、そういう基準を利用しましょう」ということですので、基準を先に作らないと いけないという大前提に立っていただく必要はありません。例えば、これだけ不正ができ ているのなら時期尚早であるという結論もあるであろうし、次回以降、企業内の統制みた いな議論もしていただきますが、自主的な検査に任せることは、我が国の企業では会社法 は改正されたにもかかわらず、まだまだこれは十分に浸透しておらず無理であろうとか、 そういう話もあるわけです。  だから、いまご指摘になったどちらに責任があるかというのはさて置きまして、いずれ にしても労働安全衛生法の中で、自主検査にすべて任せていいような、優良な企業の基準 ができるかどうか。そこを議論していただきたいと思います。 ○鴨志田委員 私が申し上げたのもそこのところで、なおかつ高圧ガスと違うのは、かな り熱という問題があり、全然違うわけです。そこなのです。そのことをいまお話しようと 思っているわけです。高圧ガスと違って技術的な基準が作れないというのは、熱がかかっ てくるという大きな問題が横たわっているのをどうするかということを、これから言おう と思ったのです。それで基準をどうするのかという話で、基準が先にあるべきと考えてい たわけではないのですが。 ○安全課長 まさしく委員がおっしゃるような技術的な面から不可能であるということが 立証できればいちばんいいかなと思うのですが。 ○鴨志田委員 そういうことなのですね。 ○小澤委員 いまの点は、海外のいわゆる先進国、アメリカやあの辺で第一種圧力容器な ど、この辺にかかわるような事故の発生の件数というか割合と、日本が特に多いというこ とはたぶんないと思うのです。そんなに変わらない水準であろう。そうすると、向こうが どこまで自主検査を拡大しているのかというものが、ある程度参考になるのではないかと 思うのですが、その辺はどうなのでしょうか。 ○副主任中央産業安全専門官 なかなかそこまでは調査が及んでおりません。というのが 現状です。 ○平野座長 知っておいていい話ですから、調べておいていただきたいと思います。たぶ んヨーロッパとアメリカではだいぶ違うと思います。 ○郷原委員 この27頁の認定取消事案の件ですが、この取消事由の法令に定める検査の一 部を実施しなかったにもかかわらず、実施したという虚偽の内容の検査記録を届け出たと いう、この事案の中身なのです。私は経済産業省と環境省とで合同でやっている公害防止 環境対策に関する検討委員会というところに出ているのですが、そういう公害関係でも虚 偽報告やデータの改ざんが問題になっているのです。 ○安全課長 排ガスデータの改ざんですね。 ○郷原委員 ええ、排ガスとか大気汚染防止とか。ところがあの事案のかなりの部分は、 何か異常な条件下で排出量が基準を超えてしまった。それをそのまま報告すると、すぐに いろいろ処分がくるので、そこはつい仕方なく改ざんしてしまったというところが、だん だん恒常化していったというケースが結構多いらしいのです。ですから、自主的にみると、 そんなにトータルで排出量が大きく基準を上回っているわけではないけれども、とにかく 一旦改ざんし始めたら、流れがついてしまったというケースが多いようなのです。  この事案の場合に、なぜそういう虚偽の報告をするに至ったのかという原因のところを 押さえておかないと、本当に危険なものなのかどうか。基準とか法令が硬直化しているか ら、たまたまこういうことになったけれども、実はそんなに大したことはないのだという ことであるとすると、この90事業場のうち11事業場ということだけをもって、全然駄目 だとはなかなか言いにくいと思うのです。これは安全にかかわる問題なので、そんな環境 の問題とは全然違うと思うのですが、もう少しどういう事案なのかという中身がわかった ら、そのほうが対策を取り易いと思います。 ○安全課長 一応1件1件について1つずつ細かいプレス発表が出されておりまして、中 身を見てみますと、やらなかったのにやったという検査としては、肉圧の検査が多いです。 あとは気密検査とか耐圧検査の一部を除いて実施しなかったにもかかわらず、これを実施 したとする虚偽の内容の検査記録などがあります。その背景要因となると、なぜ検査しな かったかというのは、プレス発表ではちょっと読めないのですが。 ○郷原委員 普通に考えたら、環境の問題というのは自分がそんなにそれによって危険を 受けるわけではない。だから何となくいい加減にしてしまう要素があると思うのですが、 こういうものというのは本当に危険だとしたら、虚偽のデータを虚偽の報告をしたりする。 それで危険を放置しておくということになると、自分とか自分の仲間にかかわってくる問 題です。なぜそれなのにこんなことをやってしまうのか。やはり何か原因があると思うの です。その辺がもう少し詳しくわかれば。 ○平野座長 そうですね、類似の例はたくさんありますから、調べてみていただくとわか るのですが、これは儒教国独特のやり方ですね。もうやらなくてもわかっているからとい う。この前、別の委員会でそんなことがありましたから、規則をチェックするというとき に、前に決めた規則だから間違いない。だからチェックしたことにしようというから、い や、それは駄目だと言って、私どもに送ってもらって、いま見ているのです。間違いがた くさんあります。ですが、精神的には去年やって大丈夫だった、一昨年も大丈夫だった。 今年も大丈夫だろうというものと、もう1つは、外に見えないようにしてから報告する。 例えば何か間違いがあったとき、事後処理をしてから報告するというのはこの国独特のス タイルです。そういうようなものが根底にあるというのは確実ですね。そういうことがあ るから、行政が強くなって、行政が強くなると、ますますその傾向が強くなるという。い まのはオフレコですから。  ですが、もし調べられたら、調べてみると面白いと思います。 ○安全課長 背景事情まで個々に調査している部分もあるかもしれませんね。 ○平野座長 そうですね、背景事情はたぶん出てこないと思います。そんなことを言った ら、また叱られるから、先ほどの話ではないですが。 ○小澤委員 そういうのをタイタニック・シンドロームというのだそうです。 ○平野座長 そうですか。いや、何シンドロームですか。 ○小澤委員 タイタニック・シンドロームです。タイタニックの要するに絶対に沈まない と。だから救命ボートは要らないという、ああいう発想です。1回うまくいくと、2回目 もたぶんうまいこといくだろうと。3回目はもう絶対に確実だと。4回目は事故など起こ るはずはないというのはスペースシャトルと一緒です。 ○平野座長 日本の原子力行政もそうですね。 ○小澤委員 何か関連の虚偽の報告とかというのがありましたが、新聞などのニュースの 報道だと、8,000件検査報告のミスがあって、101件が虚偽報告という。電力会社でもその くらいのことをやっているわけですから、要するにローカルに見ればこれぐらいはかまわ ないかと、適当に数字を鉛筆なめて丸めてしまうというようなのが、積算するとこのぐら いの数になるという。それはものすごく危ないですね。コンプライアンスという以前に、 もっと危ないことをやっているような気がします。社会的な影響というのはものすごく大 きいですから。 ○田中委員 いまの点は経営上の立場からしますと現場、いわゆる工場側、あるいは事業 場側と経営を管理するほう、あるいは企画、法務、そういう部署との認識の違いがあるの です。現場のほうは技術者が中心で、そんなことをほかの方に言われなくても俺たちに任 せてくれればできるのだという形で、この程度は大丈夫だという報告になってしまうので す。  ところが、経営管理をしているほうから見たら、コンプライアンス上の視点から、きち んと報告をしなければいけないのだと。それによる会社の被る被害は後で大きいよという 形で言っているのですが、それが現場とのコントロール、そこまで現場に強く言い出せな い部分もあって、現場のほうが力が強い。特に原子力の場合は現場のほうが力が強くて、 とうてい本社が細かいことに口出しできないという部分もあるわけです。そういう会社経 営上のいわゆるこういうものに対する姿勢の微妙なところが、これも出ているのではない かと思われます。 ○小澤委員 実質は、例えば先ほどの自主検査なども、実際に運用している我々がいちば んよく知っているのだから、日ごろ見ているから大丈夫だと。でも知らないことも実際に はいっぱいあるわけです。経年変化などというのは、まさにそのとおりで、いままでその ボイラーは10年なら10年使ってきた。でも11年目のことはわからないわけですから、に もかかわらず大丈夫だという。まさしく私が言いましたタイタニック・シンドロームと同 じことをやることになってしまうのではないかと思います。 ○鴨志田委員 先ほど畠中委員の話で冒頭に少し、実際に検査のために止めると、どのく らいかかりますかという話が出ました。いまの話にかかわってくるのですが、現場サイド では例えば原子炉の細管という言葉はかなり一般化してきて、新聞にも出てきたのでわか ると思うのですが、熱交換器の細いチューブがピンホールを起こして、不具合が起きると、 それを栓をしてプラグを打って止めてしまうわけです。プラグをずっと打っても、その熱 交換器としては機能を果たすように、安全率をすごく高く取っておくわけです。  最近はもっとすごい発言を聞いて、これはびっくりしたのですが、熱交換器ごと取り換 えてしまったほうが安いという、そういう安価な発想になってきているわけです。ですか ら、先ほどの止めて10億云々というところが、本当にそうなのかという、非常に安価な考 え方になってきたところで、例えばそこでそういう事故が、熱交換器がかなり高級な材料 を使っているのに不具合が起きていることは、上流側なり下流側なりでも起きているわけ です。  そういうことに対しての現場サイドでの技術者がいなくなってしまった、安全に対する 見方が変わってきていることは確かです。それが今、まさにシンドロームです。そういう ことがあります。それでびっくりしましたけど、全部取り換えてしまうからいいですとい う返答だったわけです。これはその部分だけ我々は審査しているわけですから、言えなく なってしまうわけです。それで、ではわかりましたということになるわけです。だけれど も、問題は違うわけです。 ○平野座長 この問題は、もうすでに連続運転を認めているということで、厚生労働省に いろいろな所から要請がくるのは当然な話です。ただ、それについて、こういう理由でと いうのをきちんとやらなければいけないし、場合によったら、むしろ非常に高い割合には なるのだけれども、ある一定の線を示して、皆さんにはそこまで努力していただくという ような格好もあり得ると思いますので、今後も少しヒアリングも含めて話を進めていった ほうが面白いと思います。  今日は私なども随分と新しい知見が入ってきまして、随分勉強になりました。毛利専門 官から、何かコメントがありましたら、いまのうちに言っておいていただいたほうがいい のではないでしょうか。 ○副主任中央産業安全専門官 いろいろご意見をいただいた点について、きちんと受け止 めたいと思います。特に先ほど個々の事例についてどういう問題があって、そういう不正 なり、事故に至ったのかというようなことについては、少し調べてみたいと考えています。 ○田中委員 もう1つ、最後の頁にずっと今後の進め方がありますが、この最後のところ で、こういうことができるか、是非ご検討いただきたい。普通官庁は報告書を作って、こ れで終わりというのが多いのですが、私はこういう案件の場合には、終わったら厚生労働 省主催で公開のシンポジウムを開いたほうがいいと思うのです。つまり、これの案件で報 告書がまとまったのですが、ここの趣旨ではこういうようなことが議論されたのだと。そ して結果はこうなのだけれども、いわゆる企業に対しての呼びかけです。シンポジウムを して説明責任を果たすということが重要だと思うのです。そうすると、報告書の内容を公 開すること以上に、そこのシンポジウムで各委員がいろいろと発言することをじかにその シンポジウムに参加する人がわかり、報告書の趣旨もよく理解できるという形で、非常に 社会に対するアピールとして浸透するのではないかと思います。そういう機能も厚生労働 省が果たすことによって、こういう部分が非常に積極的な姿勢として、企業側にきちんと 伝わるということで、是非そういうシンポジウムとか、フォーラムを最終的には、そうい うところまできちんとやるということをご検討いただければと思います。 ○平野座長 では、少し検討してみていただけますか。今日結論を出せという話ではなく て。 ○安全課長 ご提言として承っておきます。 ○田中委員 現実に私は、内閣府の公益通報者保護法に関する民間事業者ガイドラインと いうのを委員長でやりました。そこは内閣府がきちんとシンポジウムを東京と大阪でやり ました。また、今年も下期にかけてやりたいというのです。というのは、官庁がいろいろ と説明する以外に何がポイントかというと、民間の人が集まってシンポジウムをやるとい うところがポイントなのです。官庁で言う以外に各委員がどういう発言をして、これをま とめたのか。そこで問題点は何かということを言うと、たぶん今日も傍聴している方がい らっしゃいますが、傍聴している人が納得するのです。「あっ、ここまで議論を詰めて、こ れをやってくれたのか」と、報告書そのものの理解度、納得度が非常に高まるのです。  是非、その辺を工夫していただければと思います。 ○平野座長 ありがとうございました。それでは畠中委員お願いします。 ○畠中委員 この25頁と27頁なのですが、認定保安検査実施者になろうとする場合には、 経済産業大臣の検査を受けなければならないということなのですが、どの程度の検査なの か。書面審査だけなのか、実地検査も入っているのか。この27頁の取消事由を見ますと、 認定事業者からこういう虚偽の検査記録が出てくるような、これなどは田中委員の言葉を お借りしますと、とんでもない話なのだろうと思うのです。コンプライアンスという観点 から見ると、こういうものが、やすやすとパスしてしまう程度の検査なのかという気がし ないでもないのです。具体的なやり方等がもしわかる程度で結構なのですが、いずれ教え ていただければと思います。 ○中央産業安全専門官 いまわかります。実地調査も確かにやっています。多くは但書に あります高圧ガス保安協会といったものが事前にやるというのがメインになっています。 それでやった結果を付けて経済産業省が審査をするという形がメインになります。その場 合の調査はやはり現地に行き、数日かけてプレゼンテーションを受けたり、実物を見たり で、かなり詳細な調査をしているのは事実のようです。原則3日となっています。 ○畠中委員 27頁を見ますと、それでもなおかつ信頼性が確立できないようです。先ほど の90分の11という、こういう話は、一体どこに原因があるのか、その辺りも。 ○平野座長 高圧ガス保安協会の中の問題で、実は高圧ガス保安協会はこれ以外にも大臣 認定というのがあって、それはやはり専門家が議論してやるのですが、その専門家が誰に なるか、誰を選ぶかというのは選ぶ立場の人であって、高圧ガス保安協会が経済産業大臣 の代わりに選んでいるのです。ですから、そこに議論を集中すると、やはり選んだ者の責 任という話になります。もちろんほかの国土交通省でも建築基準法に合わないような建物 を建てたときに、やはり大臣認可というのがあるのですが、それもある特定の団体が、特 定の専門家を選んで、そこで議論させてやっています。  ですから本当に大臣が出て行ってやるかというと、そんなことはないです。しかも、大 臣の側近が行くかというと、それもない。ある特定の機関で、特定の範囲の彼らの知って いる範囲の中で人を選んでやっているというのが実情だと思います。 ○副主任中央産業安全専門官 1点補足いたしますと、経済産業省の名誉のためにといい ますか、この27頁で実際に取消しを受けた事案というのは、国が立ち入り検査を実施した ことが発端になっていますので、そういう意味では一度認定したら終わりということでは なく、事後チェックをきちんとやっているかどうかを国が立ち入り検査をする仕組みにな っています。それでできていないということが判明したので、取消しをしたという事情で す。 ○小澤委員 その検査の立ち入りはどのくらいの頻度でやるのですか。 ○副主任中央産業安全専門官 すみません、ちょっとそこまでは。 ○小澤委員 厚生労働省絡みで労働基準監督局が自主検査をやっているものについて立ち 入り検査をやったりします。それもどのくらいの頻度で見ているのか。 ○中央産業安全専門官 事業場の数と監督官の数の関係ですので。 ○安全課長 業種によりますが、かなり低いです。そんなに頻繁に行けるものではありま せんので。それと、いまの毛利副主任の話の補足ですが、25頁の認定の基準が、果たして 不正を防止するためのシステムを見ているかどうかという、そこだと思うのです。だから、 いくら認定基準を、我々のいう技術的な面での安全性について、いままでの事故歴、点検 のノウハウの蓄積度にしたとしても、不正というのは別次元の問題であって、そこを果た して認定基準化できるかどうか、そこだと思います。 ○小澤委員 そうですね。 ○安藤委員 ちょっと教えていただきたいのですが、自主検査の推進ということは文書で はわかるのですが、その本当の精神というのは経済性、競争力の向上にあるのでしょうか ということです。5頁の指示に対する回答を考える上に、自主検査を推進するという考え 方です。経済性にあるとするならば、2年連続、4年連続、場合によっては6年連続も実 施されている現在、かなり経済性は向上してきて、そんなに重荷になっているとは現在思 わないわけです。そこのところを教えていただければありがたいと思います。 ○畠中委員 いまのご質問は明日の要求側の団体のヒアリングがありますので、それをま ず直接お聞きいただいて、その後議論したほうがよろしいのではないでしょうか、非常に 大事な質問だと思いますので。  それから、先ほどどれくらい立ち入り検査をやっているのかというお話がありました。 私がつい最近書いた「労働安全衛生法のはなし(改訂版)」という本から抜き出しますと、 全国の労働基準監督官の数は約3,700人、労働基準法や労働安全衛生法の適用される事業 場数は442万です。それで現在行われている臨検、要するに立入検査の数は年間16〜17 万件程度で、これはトータルの数です。だから、その中で特別にボイラー、圧力容器を対 象とした立入検査を行った事業場数がどうかということはちょっと分かりませんが、必要 な立入検査の人・日を確保するというのは極めて大変なことなのです。監督官も含めて全 公務員がいま削られていっている中で、それはもう不可能を強いられているようなもので す。 ○小澤委員 不可能に近いですね。 ○平野座長 比較的事情がいい厚生労働省でさえそうだということですね。それでは、ま だ委員の先生方から、これだけは発言しておきたいということがありましたら、残り時間 が少なくなりましたがご発言いただいて、もしないようでしたら課長か毛利専門官から締 め括りをしていただきたいと思います。 ○安全課長 それでは今後のスケジュールについて、先ほどは簡単にご説明しましたので、 もう一度詳しく、44頁で説明します。 ○副主任中央産業安全専門官 資料No.15、44頁です。連日で恐縮ですが、明日、第2回目 については関係業界団体、及び関係事業場からのヒアリングを非公開で行いますので、よ ろしくお願いいたします。  第3回以降についてはご意見もいただきながらご相談ですが、とりあえずいま考えてい るのは事業場側の要望、あるいは根拠を含めて明日お聞きしますので、もう一方、その検 査機関がどのように見ているか、性能検査の実情をお聞きするというのが1つです。  連続運転の認定の事前審査から見た事業場の問題点ということで、先ほど鴨志田委員か らもご発言がありましたが、是非こういう点について発表いただけないかと考えていると ころです。  本日も少しありましたが、日本企業における内部統制についても、ご発表いただけると ありがたいと考えているところです。そうしたものを受けて意見交換ということで考えて います。第4回、第5回においては少しまとめていくことができればと考えています。第 3回において、先ほどありましたような不正や事故の背景みたいなものもできるだけ資料 として出せるかと、考えていきたいと思います。 ○平野座長 先ほどちょっと話が出ていましたが、第3回までに、できたら外国の事情辺 りをお願いしたいということと、3回以降は公開ですか。 ○安全課長 公開です。 ○平野座長 2回だけ非公開にした理由は。 ○安全課長 2回目は事業場からヒアリングをしますので、当然それぞれの事業場のノウ ハウ等が関係しますので。 ○平野座長 かなり微妙なところは公開してほしくないという感じですか。むしろ厚生労 働省側の事情ではなくて、事業者側の事情ということですね。 ○副主任中央産業安全専門官 はい。 ○安全課長 ただ一般的に個別企業から事情を聞く場合は、非公開にしています。という のは、もし、資料の中では非公開とすべき事項が出なかったとしても、やり取りの中で公 開できないようなことも当然出てくると思われますので。 ○平野座長 では資料は非公開ではないと。 ○安全課長 資料ももちろん非公開です。 ○平野座長 結果は何かホームページか何かで出すのですか。 ○安全課長 2回目についてはおそらく出せません。 ○平野座長 出してもかなり曖昧な形ですか。 ○安全課長 ええ、ちょっと検討いたしますが、出すとしても骨子とか、要約で出せるか どうか、内容次第だと思います。 ○平野座長 私はわかりました。 ○副主任中央産業安全専門官 この第3回の性能検査機関についても、そういう配慮が必 要なのではないかと考えております。 ○平野座長 ほかに何かございませんでしょうか。ございませんようでしたら、これで今 日は閉会にしたいと思います。どうも皆さんご協力ありがとうございました。                   (照会先) 厚生労働省労働基準局安全衛生部 安全課機械班(内線5504)