資料No.4

ボイラー及び圧力容器について

1. ボイラーについて
(1) ボイラーとは
 水を火気などで加熱して、大気圧を超える蒸気又は温水を作り他に供給する容器をいい、蒸気を作る蒸気ボイラーと、温水を作る温水ボイラーがある。
 ボイラーから供給される蒸気や温水は、工場にある反応器や加熱器、ビルの暖房や給湯に利用される。

(2) 最も基本的なボイラーの例
 ア. 蒸気ボイラー(炉筒煙管ボイラー)
蒸気ボイラー(炉筒煙管ボイラー)の図

 イ. 温水ボイラー(立て温水ボイラー)
温水ボイラー(立て温水ボイラー)の図

(3) ボイラーの区分
 ボイラーは、圧力、伝熱面積(*)、内容積などによって危険性が異なり、労働安全衛生法では、その危険性に応じた規制を行っている。
 最高使用圧力と伝熱面積による蒸気ボイラーの区分と、それぞれの区分に必要な定期検査を次図に示す。

(*)   水は管などの壁面を通じて熱を受けて加熱されるが、その熱をうける壁面の面積を伝熱面積という。

図

2. 圧力容器について
(1) 圧力容器とは
 内部の圧力が大気圧を超える容器であって、ボイラーを除くものである。
 代表的なものとして、熱交換器、消毒器、オートクレーブなどがある。

(2) 圧力容器の区分
 圧力容器は、圧力、内容積、内容物などによって危険性が異なり、労働安全衛生法では、その危険性に応じた規制を行っている。

 ア. 内部に液体、固体等を保有する圧力容器
 次の4種類がある。
  (1)  加熱器
 蒸気その他の熱媒によって固体又は液体を加熱するもので、次のものが代表的である。
熱交換器(蒸気で水や油などを加熱するもの)
蒸煮器(製紙用、醸造用、食品用などの原料を加熱処理するもの)
消毒器(医療器具、食器類などを消毒するもの)
(熱交換器の例)
熱交換器の例の図

  (2)  反応器
 化学反応などによって内部に蒸気が発生するもので、代表的なものとして、オートクレーブ(薬品などを加熱、撹拌して化学反応させるもの)がある。
(オートクレーブの例)
オートクレーブの例の図

  (3)  蒸発器
 液体の成分を分離するために加熱し、蒸気を発生させるもので、次のものが代表的である。
抽出器(物質の中から目的とする成分を溶液に溶かして取り出すもの)
蒸留器(液体の中から目的とする成分を蒸発させて取り出すもの)

  (4)  蓄圧器
 大気圧での沸点を超える温度の液体を保有するもので、次のものが代表的である。
蓄熱器(ボイラーの蒸気を蓄えておき、必要なときに取り出すもの)
液化ガス貯蔵タンク(ガスに高圧をかけ液体にして貯蔵するもの)

   最高使用圧力と内容積による圧力容器の区分と、それぞれの区分に必要な定期検査を次図に示す。
図

 イ. 内部に圧縮気体を保有する容器
 ガスホルダ(圧縮ガスを貯蔵するもの)、給食用の二重釜(蒸気で加熱して調理をするもの)などがある。
(ガスホルダの例)
ガスホルダの例の図

   最高使用圧力と内容積による圧力容器の区分と、それぞれの区分に必要な定期検査を次図に示す。
図

3. ボイラー及び圧力容器の危険性
 ボイラーや圧力容器は、高温高圧、可燃の内容物を保有していることから爆発や破裂の危険があり、経年劣化等により爆発や破裂が発生すると、容器の一部や破片が周囲数百メートル以上飛び散ることがあるため、近くで作業をしている労働者だけではなく、近隣住民も巻き込む大きな災害となるおそれがある。

4. ボイラー及び圧力容器に対する他の規制
 ボイラー及び圧力容器については、爆発や破裂による労働災害を防止するため、労働安全衛生法に基づく構造規格が定められている。
 特に、危険性が最も高いボイラー(小型ボイラー及び簡易ボイラーを除く。)及び第一種圧力容器に対しては、定期的な検査のほか、次のような規制がある。
(1)  製造許可及び製造時等検査
(2)  作業主任者の選任等の作業の管理

5. ボイラー及び第一種圧力容器の災害事例
(1) ボイラーの災害事例
 ア. 発生年月
 平成14年10月

 イ. ボイラーの概要
  (1)  種類 水管ボイラー
  (2)  最高使用圧力 1.4MPa
  (3)  伝熱面積 899m2

 ウ. 災害発生の概要
 ボイラーの調整作業中に燃料の種類を替えたら失火したため、再着火を試みていたところ爆発が起こった。

 エ. 被災状況
 死亡者 3名(1名は事業主)

 オ. 災害発生原因
  (1)  点火前に換気しなかったこと。
  (2)  ボイラー技士免許を有していない者がボイラーを運転し、ボイラー取扱作業主任者が作業指揮等を行っていなかったこと。

ボイラー
ボイラーの図

(2) 第一種圧力容器の災害事例
 ア. 発生年月
 平成6年6月

 イ. 第一種圧力容器の概要
  (1)  種類 オートクレーブ
  (2)  最高使用圧力 0.14MPa
  (3)  内容積 334m3

 ウ. 災害発生の概要
 オートクレーブに製品を入れ、蒸気により加熱、加圧したところ、蓋が外れ、水蒸気等が激しく噴出して、オートクレーブが200m吹き飛んだ。

 エ. 被災状況
 死亡者 1名

 オ. 災害発生原因
 蓋を本体に固定するリングストッパー(施錠環)が、本体に十分かかっていなかったこと。

図

(3) ボイラー及び第一種圧力容器の事故災害

発生年 設備 業種 事故の内容 死傷者数 原因
17 第一種圧力容器 その他の化学製品製造業 爆発 3 作業手順誤り
ボイラー 旅館その他の宿泊所の事業 本体溶融 0 作業手順誤り
定期自主検査未実施
日常点検未実施
16 第一種圧力容器 電気機械器具製造業 破裂 0 定期自主検査未実施
第一種圧力容器 有機化学工業製品製造業 破裂 0 製造時検査等未受検
定期自主検査未実施
ボイラー 建設業 爆発 3 連絡体制不備
ボイラー 有機化学工業製品製造業 本体溶融 0 定期自主検査未実施
ボイラー ガスの製造供給の事業 爆発 0 作業手順誤り
15 第一種圧力容器 ゴム製品製造業 破裂 1 作業手順誤り
ボイラー 鉄鋼業 爆発 0 作業手順誤り
ボイラー 有機化学工業製品製造業 爆発 0 作業手順誤り
日常点検未実施
ボイラー 繊維工業 爆発 0 作業手順誤り
日常点検未実施
ボイラー パルプ・紙製造業 爆発 0 日常点検未実施
ボイラー 食料品製造業 爆発 0 作業手順誤り
14 第一種圧力容器 ゴム製品製造業 破裂 3 作業手順誤り
ボイラー 医薬品製造業 爆発 3 作業手順誤り
日常点検未実施
ボイラー パルプ・紙製造業 爆発 0 作業手順誤り

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