06/07/28 第1回社会保障審議会統計分科会疾病、傷害及び死因分類専門委員会議事録 第1回 社会保障審議会統計分科会 疾病、傷害及び死因分類専門委員会議事録 1.日 時:平成18年7月28日(金) 10:00〜12:00 2.場 所:厚生労働省専用第15会議室 3.出席者:   <五十音順> 飯野靖彦委員、飯森眞喜雄委員、五十嵐敦之委員、石名田洋一委員、 大井利夫委員、大江和彦委員、長村義之委員、北村聖委員、木下靭彦委員、 木原和徳委員、黒岩義之委員、相楽裕子委員、菅野健太郎委員、高橋姿委員、 田中紘一委員、土屋了介委員、中田正委員、林同文委員、藤原研司委員、 柳澤正義委員、横田順一朗委員、吉田謙一委員、渡辺英寿委員   事務局   統計情報部長、人口動態・保健統計課長、保健統計室長、   疾病傷害死因分類調査室長 4.議 題  (1)委員長の選任  (2)国際疾病分類(ICD)の動向について  (3)ICD−10(2003年版)適用の影響等について  (4)当面の検討課題について  (5)その他 5.議事内容 ○疾病傷害死因分類調査室長 それでは、予定の時刻となりましたので、第1回「社会保障審議会統計分科会疾病、 傷害及び死因分類専門委員会」を開催させていただきます。 各委員の先生方におかれましては、お忙しいところ御出席を賜り、誠にありがとうご ざいます。 私は本日進行を務めさせていただきます、統計情報部人口動態・保健統計課疾病傷害 死因分類調査室長の首藤と申します。どうぞよろしくお願いいたします。 まずお手元の資料の確認をさせていただきます。 本日お配りしている資料でございます。次第、座席表、委員会の委員名簿、社会保障 審議会運営規則。 資料1、資料2、資料3−1、資料3−2、資料3−3は、「分類に関するWHOの ビジネス・プラン」。 資料3−4「最近のICDの動向について」 資料4、資料5、資料6。 以上が本日配付させていただいております資料です。過不足等ございましたら、お知 らせいただけますでしょうか。 それでは、資料の確認は以上でございます。 本日は第1回目の会議でございますので、委員の皆様方をこちらより紹介させていた だきます。 事務局から見て左手前から、日本医科大学教授、飯野委員です。 東京医科大学教授、飯森委員です。 NTT東日本関東病院部長、五十嵐委員です。 三鷹病院常勤顧問、石名田委員です。 日本診療録管理学会理事長、大井委員です。 東京大学大学院教授、大江委員です。 東海大学教授、長村委員です。 東京大学医学教育国際協力研究センター教授、北村委員です。 神奈川歯科大学教授、木下委員です。 東京医科歯科大学大学院教授、木原委員です。 横浜市立大学大学院教授、黒岩委員です。 横浜市立市民病院部長、相楽委員です。 自治医科大学教授、菅野委員です。 新潟大学大学院教授、高橋委員です。 先端医療振興財団先端医療センター長、田中委員です。 国立がんセンター中央病院長、土屋委員です。 日興フィナンシャル・インテリジェンス株式会社副理事長、中田委員です。 東京大学大学院助教授、林委員です。 横浜労災病院長、藤原委員です。 日本子ども家庭総合研究所長、柳澤委員です。 市立境病院副院長、横田委員です。 東京大学大学院教授、吉田委員です。 自治医科大学教授、渡辺委員です。 続いて、事務局を紹介いたします。 統計情報部長の桑島です。 統計情報部企画課長の宮田です。 人口動態・保健統計課長の村山です。 人口動態・保健統計課保健統計室長の中野です。 なお、本日御欠席の委員は、岩下委員、落合委員、増田委員、松岡委員の4名でいら っしゃいます。 それでは、議事に先立ちまして、統計情報部長の桑島より、ごあいさつを申し上げま す。 ○統計情報部長 委員の皆様方におかれましては、大変御多忙のところ、この委員会に御出席を賜りま して、誠にありがとうございます。 国際疾病分類でございますが、死因に関する国際的な標準分類といたしましては、10 0 年以上の歴史を有しておりまして、今日まで死因統計や疾病統計などに関しまして、 経時的かつ地理的な比較可能性を担保してまいったところでございます。 また、医学の進歩など、その時々のニーズに対応すべく、ほぼ10年程度のサイクルで 改訂を重ねてまいりまして、直近の第10版、いわゆるICD−10につきましては、199 0年の第43回世界保健総会で採択されております。 その後、WHOは2004年10月にICD−10の一部改正の勧告を行いまして、我が国 におきましても国内への適用を検討するために、社会保障審議会統計分科会の下に「疾 病、傷害及び死因分類部会」を設置いたしまして検討が行われ、本年1月より適用され ているところでございます。 我が国におきましても、医療保険分野におきます適用など、ICDの汎用性は近年ま すます高まってきております。国内における適切な運用を確保するためにも、さまざま な問題点に関する恒常的な検討の枠組みが必要となっております。併せまして、WHO が進めようとしておりますICDの一部改正や改訂に向けまして、我が国の考え方、ま た意見など適切な形で反映させるための枠組みも必要となっています。 こうした国内外における情勢を踏まえまして、社会保障審議会統計分科会におきまし て、ICDに関する恒常的な検討体制の必要性が認められ、本委員会の発足に至った次 第でございます。 昨今ICDは単なる1つの分類として活用されるだけではなくて、WHOも推奨いた しているように他の分類などの利活用も推進しながら複合的な観点から、保健・医療に 関するさまざまな事象を評価し、かつ円滑な情報伝達のツールといたしましての発展が 望まれております。 他方、このような医療情報の質的向上への寄与及び多様なユーザーへの汎用性の維持 を果たすために解決すべき課題も山積しているところでございます。 本委員会におきましては、ICDに関する問題点、またその改善の方向につきまして、 WHOにおける審議・検討の過程を踏まえながら、我が国としての意見を集約していた だきますとともに、その適切な普及・啓発の在り方などにつきましても、御助言を賜り たく存じます。 委員の皆様方におかれましては、極めて御多忙でいらっしゃるとは存じますけれども、 本委員会の趣旨を十分に御理解いただきまして、御協力を賜りますよう、何とぞお願い 申し上げまして、この専門委員会の発足に当たりましての私からのごあいさつとさせて いただきます。よろしくお願いいたします。 ○疾病傷害死因分類調査室長 ありがとうございました。業務の都合上、統計情報部長は途中退席をさせていただき ますので、御了承願います。 (統計情報部長退室) それでは、議事に先立ちまして、事務局について、まずこの委員会の運営について簡 単に御説明をさせていただきます。 お手元に配付させていただきました「社会保障審議会運営規則」がございますが、本 委員会の運営につきましては、基本的にはこの社会保障審議会運営規則に準じて運営が 行われることになっております。 したがいまして、会議は原則公開という形になっております。御議論いただきました 議事録はとりまとめの上、原則公開をされるということにつきまして、御了承いただき たいと思います。 委員長が選任されるまで、引き続き事務局にて議事を進めさせていただきます。 議事1の本委員会の委員長の選任を行いたいと存じます。委員長は委員の互選により 選任をすることになっておりますが、各委員の先生方、いかがでございましょうか。 ○柳澤委員 私は、藤原委員を本委員会の委員長に推薦したいと思います。 藤原委員は以前から臨床現場の立場で、ICDの抱えている問題点等について積極的 に発言して来られ、ICDに関する政府による検討に際しましても「疾病、傷害及び死 因分類専門委員会」「疾病、傷害及び死因分類部会」、そして今回の専門委員会と継続 的に参加しておられ、その成果に際し大変寄与されていらっしゃいます。そのようなこ とから、私は藤原委員を本委員会の委員長に推薦いたしたいと存じます。どうぞよろし くお願いいたします。 ○疾病傷害死因分類調査室長 今、柳澤委員の方から、藤原委員の御推薦の弁をいただきましたが、いかがでござい ましょうか。 (拍手) ○疾病傷害死因分類調査室長 それでは、本委員会の委員長には、藤原先生に御就任いただきたいと思います。藤原 先生、座長席の方によろしくお願いいたします。 ○藤原座長 ただいま柳澤委員から御推薦いただきました、横浜労災病院の藤原と申します。 私は、今の御紹介の中にもありましたように、ちょうど3年前だったでしょうか、日 本消化器病学会の責任者をさせていただいたときに、このICD問題を現場からの声と して指摘し、火付け役をしたことがございます。 そして、隣にいらっしゃる菅野委員は、現在の消化器病学会の理事で、自治医科大学 の教授をお務めですが、先生にその後、ICD問題について実務的に推進していただい たという経緯もあり、今回このように委員長の御指名をいただいたものと存じます。 先ほど、統計情報部長のお話にもございましたように、そもそもこの国際疾病分類と いうのは疫学的発想から生まれたもので、これに学術性が加わって改正・改訂を重ね、 問題が複雑化してきた。そのところに更に我が国では近年になりまして、これが日常診 療の現場に利活用されたために、多くの問題を生じているものと理解しております。幸 いその解決に向けて、今回このような形で専門委員会が発足しましたことは、誠に喜ば しいと存じます。 そして、その成果が我が国ばかりではなくて、国際的にも貢献できることを期待し、 努力してまいりたいと存じます。皆様方、どうぞよろしくお願いいたします。 ○疾病傷害死因分類調査室長 統計情報部長のあいさつにもありましたように、昨年、統計分科会の下に「疾病、傷 害及び死因分類部会」がございまして、北村惣一郎国立循環器病センター総長が部会長 をしていらっしゃったんですけれども、北村先生からこの委員会の発足に当たりまして の所感をいただいておりますので、この場で披露させていただきたいと思うのですが、 よろしいでしょうか。 ○藤原座長 どうぞ。 ○疾病傷害死因分類調査室長 北村惣一郎前ICD部会長所感ということでお預かりをしておりますので、ご紹介さ せていただきます。 ICD−10の一部改正の我が国の適用に関して検討が行われた昨年7月の「疾病、傷 害及び死因分類部会」の場におきまして、各委員から昨今のICDの汎用性の高まり及 びその重要性について再認識されるとともに、WHOが進めようとしているICDの改 訂に向けて、我が国がもっと貢献をしなければならないこと。また、ICDを国内に適 切に適用するためにも、恒常的にその問題点を検討する枠組みが必要である旨の発言が なされました。 「疾病、傷害及び死因分類部会」は、平成17年10月の総務省告示、更に平成18年1 月の国内への適用をもってその役割を終え、平成17年12月をもって閉会することとな りましたが、当該部会における各委員からのこのような御意見等を踏まえ、今回、専門 的な委員会が開催される運びとなったことは、前部会長といたしましても大変喜ばしく 思っております。 本委員会が我が国の英知を総括し、もって国際的な貢献に努め、その結果が適切に我 が国に還元されることを切に願い、所感とさせていただきます。 以上が北村元部会長の所感でございます。 ○藤原座長 ありがとうございました。 それでは、早速、議事2「国際疾病分類(ICD)の動向について」につきまして、 事務局から御説明をお願いいたします。 ○疾病傷害死因分類調査室長 お手元に配付しております資料1、2、3−1〜3−4までを続けまして、事務局の 方から説明をさせていただきます。 この内容につきましては、実は昨年のICD部会で委員でいらっしゃった方も何名か 再度この委員会に御参画をいただいており、前回説明した内容と一部重複しているとこ ろや若干冗長等見られるところがあるかもしれませんが、この会としては初めての回で ございますので、初めて参加していただいた委員の先生方への説明も含めてということ で御了承いただきたいと思います。 資料1「ICDのこれまでの経緯について」でございます。 「1.WHOによるICD−10一部改正の勧告」です。国際疾病分類は、死因に関す る国際的な標準分類として、100 年以上の歴史を有しまして、その後は疾病の分類にも 適用されることになりまして、我が国に適用されてまいりました。 おおむね10年のサイクルで改訂が行われておりまして、現在のものは1990年の第43 回世界保健総会で採択をされたICD−10のいわゆる1999年版でございます。それに つきましては、我が国でも1995年1月から適用されております。 その後、WHOはICD−10のままで改正を行われた2003年までの改正を集めまし て、2004年10月にICD−10の一部改正、これをICD−10の(2003年版)と読んで おりますが、行っております。つまりICDは順番に8〜10とバージョンが上がったわ けなんですが、ICD−10のままで内容を一部改正したものでございます。 我が国においても国内の適用のために、社会保障審議会統計分科会の下に「疾病、傷 害及び死因分類部会」を設置し、検討が行われ、本年1月より適用されております。 「2.国際疾病分類(ICD)を巡る状況の変化」でございます。ICDの利活用に つきましては、WHOはお手元の資料3−3「分類に関するWHOのビジネス・プラン」 にとりまとめられておりまして、これがICDに関するWHOの活動指針とも言えるも のでございまして、そこで目標や方向性を定めております。 そのビジネス・プランにおいては、ICD−10の中での改正(アップデート)を行い つつ、2015年の施行を目途としまして、ICD−11への改訂(リビジョン)という計画 も併せて盛り込まれております。 ICDの改訂プロセスにつきましては、新しい科学知識の維持に努めながら、構造的 な変化や新しい疾病項目を取り入れた、エビデンスに基づいた大規模なレビュープロセ スをたどり、進めることとなっております。 現在、WHO−FICネットワーク、これについては後で説明申し上げますが、IC D等を議論する国際的なネットワークでございます。その中でも新たに疾病に関する専 門的な委員会を今年の秋に正式に設置する方向で検討が進められているところでござい ます。これが国際的な状況でございます。 1ページをおめくりいただきまして「3.社会保障審議会統計分科会疾病、傷害及び 死因分類専門委員会の設置」についてでございます。ICDに係るこのような国際的情 勢の変化を踏まえつつ、しかも我が国としても時代の趨勢に対応したICDの適用が求 められていることから、統計の基本事項として社会保障審議会統計分科会における審議 を経まして、WHOから発信される最新のICDに関する情報を検討し、積極的にIC D−10のままの改正、いわゆるアップデート、及びICD−11への改訂、これをリビジ ョンと呼んでおりますが、これらに積極的に関与していく必要性があること及びICD の正しい普及・啓発を図る必要があるということが審議されました。 しかし、ICDというのは広範囲にわたる専門的な知識を必要とすることから、社会 保障審議会統計分科会において既に承認されております「『疾病、傷害及び死因分類』 に係る委員会の設置の規定」に基づきまして、統計分科会の了解を得まして、このよう な専門的な事項を検討する場といたしまして、常設の「疾病、傷害及び死因分類専門委 員会」が設置されたということが本委員会発足の経緯でございます。 続きまして、資料2の説明でございます。資料2の1枚目はそのときの社会保障審議 会統計分科会でお認めいただいた規約を参考までに添付しております。 資料2の参考1「ICD−10に関連する状況」については、人口動態・保健統計課長 より説明をさせていただきます。 ○人口動態・保健統計課長 資料2の参考1をごらんいただきたいと思います。 「ICD−10に関連する状況」でございます。ICD−10というよりはむしろICD と傷病名です。ICDと実際に現場で使われている病名との関係につきまして、念のた めの御確認ということでとりまとめさせていただいたペーパーでございます。 「1 傷病名」とくくった部分でございます。これには大きく2つの種類があると考 えております。 1つは、カルテに実際に書かれる病名と、通常の一般レセプトに書かれる病名。それ はICDとの関係では、複数書かれるカルテの病名、レセプトに書かれる病名、それを 1つのコードに集約したものがICDのコードです。 1ページおめくりいただきますと図がございます。「ICDに関する状況(図)」と 書いてあるところですが、左側をごらんいただきたいと思います。左の枠の中、カルテ 病名と仮に名前を付けておりますが、カルテには例えば「かぜ」、「症候群」等々いろ いろな病名を実際に付されることと存じますが、それは標準病名に集約されます。それ でもICDの分類とは異なります。 ICDにおきましては、それを更に1つのコード。この場合ですとJ00で「急性鼻咽 頭炎」というコードに集約されるという関係にございます。実際の病名とICDのコー ドはこのような関係になっております。 前のページに戻っていただきまして、これが傷病名の1つの種類でございます。 この傷病名につきましては、1ページ目の1の2)ですが、カルテ病名あるいは一般 レセプト傷病名につきましては、厚生労働省におきまして、マスターが整備されている ということでございます。 厚生労働省の医政局の方では、カルテあるいは病歴管理などのために「ICD10対応 電子カルテ用標準病名マスター」がございます。保険局では「レセプト電算処理システ ム用傷病名マスター」を作成しており、その相互の対応が付いているという状況にある のが1つでございます。 もう一つ、私どもの方で仮にDPC傷病名とよばせていただきますと、DPCにおき ましても傷病というものがございます。DPCにおきます傷病といいますのは通常のカ ルテで書かれる名前とも異なりますし、ICDに書かれる病名とも異なる。これは、別 途、厚生労働省の方から告示されている500 〜600 くらいしかない分類で、臨床病名で もございません。 具体的なことにつきまして、次のページの「ICDに関する状況(図)」の右下の一 番隅のところに「参考」と書いてありますが、私どもは仮にDPC傷病名と名前を付け させていただいておりますが、これはどのように付けられるかといいますと、まず、実 際にカルテに書かれる病名を見まして、このカルテの病名から、ICDのコードを探り 当てまして、そのICDコードが属するこのDPC傷病名、これは500 〜600 しかあり ませんが、その病名を設定するということになっているわけでございます。 実際の臨床病名ということから、ICDのコードを経てDPCの傷病名コードが付さ れるということでございまして、前のページに戻っていただきますと、そのことを文章 で書いてございます。いわゆる傷病名には、カルテの病名とレセプトに書かれる病名。 まとめて臨床病名とよばせていただきますと、そのほかに、DPCで用いられている病 名がありますが、すべてICDとは異なっているということでございます。 では、ICDとは何かというのが「2 ICD−10と傷病名」でございますが、IC Dは統計分類として、統計法に基づく政令により告示されているもので、総務省の告示 という形で規定されているものでございます。その詳細につきましては私ども統計情報 部で発行しております提要に載っております。 具体的には提要にはコードの内容ですとか、実際の臨床病名からどのように分類をす るか。先ほど申しましたような、たくさんある実際の病名からコード1つ設定するとい うルール。その他、臨床病名からの索引とから成っております。 この病名に対応しますコードの選択設定にはICDは関わりますけれども、実際の具 体的な病名、カルテの病名、一般レセプトの病名、更には勿論DPCにおきます病名の 設定には関わらないという形でございます。 次のページの「ICDに関する状況(図)」でもう一言申し上げなければいけないの は、ICDは日本においては、「統計のための分類」という形で告示されているもので あり、その立場で私ども統計情報部は扱っている。一方、カルテ、レセプトあるいは保 険局のようなそれぞれの政策部局は、統計のために設定した分類を、ICDの活用とい う立場から政策に活用しているという関係になっているところを御理解いただきたいと 思います。以上でございます。 ○疾病傷害死因分類調査室長 引き続きまして、資料3−1〜3−4まで、これは主にWHOを中心とする国際的な 枠組み、ICDに関してICDがどのように開発・普及されているのかという枠組みを 少し説明させていただきたいと思います。 資料3−1でございます。これがWHO−FICネットワークという図でございます。 FICというのは Family of International Classificationsということで、国際分類 ファミリーと呼ばれております。 このようなICDを中心とした国際分類の一連の集まりをWHOの本部だけでは維持 ・管理が非常に厳しいので、このように世界各国から協力センターを募る形にしており まして、その協力センターからこのようなネットワークを構成しております。 このネットワークは基本的には委員会単位での活動ということになっておりまして、 各種分類に対して普及に努める普及委員会、その分類の中身をアップデートとかリビジ ョンをしていく分類改正委員会、コードあるいはもろもろのコーディングルール等に関 する教育を行う教育委員会、その成果物の磁気媒体化等、いろいろな意味でITに対応 した活動を行う電子媒体委員会、更に国際分類ファミリー自体の拡大、あるいはある分 類をこのファミリーに加えるか否かといったような検討を行う国際分類ファミリー委員 会があります。 このような委員会形式で通常検討が行われておりまして、そういう委員会ごとに集ま って会議をしつつ、更にその全体の運営を企画するのが企画実行委員会でございます。 これらのメンバーが毎年1度集まる、WHO−FICの年次総会、アニュアルミーテ ィングが毎年秋くらいに行われておりまして、そこでいろいろなWHO−FICの全体 の意思決定が行われる構成になっております。 昨今の動きにつきましては、ICDに関して、分類改正委員会の下に死因分類改正グ ループ(MRG)ということで、死亡(モータリティー)をベースとしたICDのコー ディングに関する議論等を行う組織がございましたが、昨今の医療分野における汎用性 等の高まりに対応するために、WHO−FICネットワークでは今年の秋をめどに、専 門的な委員会、3つの新しいグループを立ち上げることで予定されております。右下に あります。 1つは生活機能分類グループといいまして、ICDではなくICFという国際生活機 能分類という別の分類があるんですが、その議論をするグループ。 次は疾病分類グループで、これは疾病(モービディティー)の観点からICD等を議 論するグループでございます。 もう一つは、ターミノロジー・レファレンス・グループというターミノロジーを議論 するグループ。 こういったグループが今年の秋に立ち上がり、正式にこの枠組みの中に入り、ネット ワークとして拡大するというお話を聞いております。 資料3−2です。これが今、説明に出ました「世界保健機関国際分類ファミリー」で ございまして、FICと呼んでおります。その中心となる分類は国際疾病分類(ICD)、 国際生活機能分類(ICF)というものです。この国際生活機能分類というのは、もと もと国際傷害分類というICDの補助分類であったものが独立して1つの分類となった ものでございます。 この2つが今、WHOの中心分類として中核をなしておりまして、医療行為の分類は 現在開発中でございます。 中心分類と非常に関係をしている、ある特定の分野等、特定の目的等に使用するため に、その中心分類から少し派生をさせて、よりその該当する分野を詳解にしたものとい う意味で派生分類が存在しております。例えば国際疾病分類腫瘍学第3版、ICD−O −3と呼んでおりますが、これは基本的にはICDをベースに特に腫瘍学部分のところ により詳細な解説等を加えて、例えばがん登録であるとか病理診断等に適用できるよう な分類として発展させたものでございます。 そのような中心分類との関連性があるものが派生分類でございまして、一方関連分類 というのはWHO自体が開発したものではなく、他の国際機関的なところが開発をして いるというものでございます。内容はWHOの中心分類とある程度親和性があり、直接 はリンクしていないんですけれども、関連性が深いということで、このファミリーの一 員として加えているということで、WHOはそれぞれの分類の開発発展もそうですが、 これらのファミリー全体を統合的に管理しながら維持・開発をしていくように取り組ん でいるところでございます。 資料3−3です。これが「分類に関するWHOのビジネス・プラン」でございまして、 WHO本部が公式に定めているものでございます。 基本的にはこのWHO−FICの中身につきまして、特に重点的に力を入れて発展さ せていこうというものにつきましては、専門的なアドバイザリー等を迎えた会議を踏ま えて、このようなものを決定しております。 これは適宜会議を重ねてバージョンアップしていくとされているところでございます。 現行における最新版の中には、6つの柱を掲げております。 これはWHOの活動すべてを網羅しているという意味ではなく、特に中心的あるいは 優先的に活動を進めていきたいというものをあげているものでございまして、その中の 例えば「2.1 インフォメーションパラドックス」というのはWHOがよく使う言葉 でございますが、特に情報が必要な国ほど情報がないという意味です。 例えばWHOが政策的に介入をしていきたいような途上国や死亡率の非常に高い国ほ どその情報が上がってこないというものを、WHOはインフォメーションパラドックス と呼んでおりまして、そのギャップを埋めるために努力をしていかなければいけないと いう柱を立てております。 あるいは「2.3 ICDの改訂」とございますが、ICDの改訂につきましても、 これは後で資料3−4でも御説明をいたしますが、ICDの改訂につきまして、これま では10年単位の改訂だったんですが、今はその改訂だけのサイクルでは医学の進歩等に は追い付かないということで、改訂の間に一部改正、いわゆるアップデートというサイ クルを盛り込みながら、ICD−11に向けて努力をしていくといった内容が盛り込まれ ております。以上、量が多いので、ビジネス・プランの説明はこの程度で省略をさせて いただきます。 資料3−4です。ICDの改訂というものにつきましては、WHOはどのように考え ているのかを簡単に説明をさせていただきたいと思います。 資料3−4「最近のICDの動向について」で、これはWHOの公表資料でございま す。 1枚目のスライド「HIS及びITを用いたWHO分類」でございます。いろい ろなエッセンスが盛り込まれているのですが、簡単に説明をいたしますと、基本的には 電子化が進む、今後医療の分野においては急速に電子化、IT化が進む、そういう電子 保健記録システムのデータから専門的な用語等を抽出し、マッピングにより、それをI CD、ICF、ICHIといったような分類基準に従って分類分けできるように、ター ミノロジーと分類をリンクした形での保健情報システムというのを構築しておくと、電 子保健記録のデータが国の保健業務、臨床的なこと、病院等の管理運営業務、あるいは 各種報告業務と、さまざまな目的に効率よく使用することが可能になるのではないだろ うかという提唱をしております。 つまりはICD単独ではなく、全体としての保健情報システムの中にさまざまなもの を組み入れ、それらが相互にリンクしながら発展して、将来的には全体として非常に汎 用性の高いものにしていく。そういう意識を持ちつつ、ICDを改訂していかなければ いけないのではないかというのがWHO側の現在の主張でございます。 2ページ目「ICD改訂のプロセス」です。基本的にこのような分類のガイドライン とか、マッピングのガイドラインをつくりまして、それから全体の構造を設計して、各 章の検討。そして、ICD全体をアルファ版とかベータ版というものを使いながら、フ ィールドトライアルをしていって最終的な草稿に至るということで、これは通常のIC Dの改訂のプロセスに準じたものであると思います。 「改訂作業ストリーム」です。WHOはその改訂作業としては3つのメインのストリ ームを考えておりまして、それは科学ストリーム、臨床ストリーム、公衆衛生ストリー ムで、ICDというものがやはり各種目的にそれぞれ対応していかないといけない。 非常に現実的な分類でございますので、分類のための分類であってはいけない。具体 的にどのように使用されるのかという視点から、適切な形に誘導をしていかないといけ ないということで、その視点としましては、科学的な視点からICDをもう一度検証し なければならない。あるいは臨床的な応用性を考えて、ICDを見ないといけない。こ の辺りがまさに冒頭、藤原委員長が御指摘された中身、ICDの抱える問題点等への対 応についての解決策の1つであると考えているようでございます。 同じように行政的にも使う。あるいは疫学的にも使えるように公衆保健ストリームと いうものも考えないといけないというものでございます。 3ページ目「ICD改善アプリケーション」についてです。ICD−10の1990年版 のときは、まだIT化等は十分進んでいない時代でございましたので、電子メールとい ったものもまだこの世の中には十分普及していなかったころでございます。 当時のICDの改訂は年に何度か専門家が集まり、会議の場で意見交換をしつつ、普 段は電話であるとか手紙郵送等の手段を用いて意見交換をしていたのですが、今回は基 本的にはIT技術、例えばウェブ上のポータルサイトのようなものを利用するという形 での開発といったような手段も考えているところでございます。 具体的な改訂のプロセスの構造につきましては、先ほどの資料3−1で、分類改正委 員会というのがございます。これはWHO−FICのさまざまな分類を改訂(リビジョ ン)、一部改正(アップデート)の検討を行う委員会でございますが、その委員会の下 に専門的な検討を行うコーディネーターグループというものをつくりまして、そこが基 本的にはリビジョンのプロセス全体を俯瞰しながらコントロールをしていく。その下に はいろいろな観点から見る幾つかの専門的な検討チームというのを設置して、全体とし て構造を構成していくというものが現時点でWHOが提唱している改訂プロセスでござ います。 その後にはフィールドテストやウェブ上のKMS(ナレッジ・マネージメント・シス テム)ポータルといったものも活用しながら、効率的にアップデート、リビジョンを進 めていこうと考えているというのが、特に改訂についての最近のICDの動向でござい ます。 以上、資料1〜3の説明を事務局より終わらせていただきます。 ○藤原座長 ありがとうございました。 それでは、ただいまの事務局の御説明に対しまして、御質問等ございましたら、いか がでございますか。 ○飯野委員 国際貢献が必要だということはよくわかるのですが、このWHO−FICの協力セン ターに日本が入っていないというのは何か経緯があるんですか。これからやはり頑張っ ていかなければいけないと思うんですけれども、オブザーバーとしては入っていますが、 なぜ入らなかったのですか。 ○人口動態・保健統計課長 まずWHOという組織は世界190 か国が加盟国となっている、国がスポンサーとなっ て行っている組織ということでございます。 この協力センターというのは、資料3−1に「WHO−FIC協力センター」として 各センターの名前が載っておりますが、これは言語圏あるいは地域等でWHOが指名し ている研究所あるいは大学です。先ほどお話したように、年に1回ネットワーク会議で 集まって各センターから意見を求めるという形でやっています。 日本はどうなっているかというと、日本は大臣官房統計情報部がこのICDについて 扱っているということです。日本はスポンサーのレベルなんです。ところがこの協力セ ンターのレベルというのは大学あるいは研究所のレベルです。同格のはずがなく、日本 はもっと上なんです。 したがいまして、これは私どもは当然機能としては日本語の地域ということもあり、 協力センターとしての機能を果たしてまいりましたし、当然果たしていくんですが、立 場上WHOから指名されるいわれはない。スポンサーなので、もっと上の立場にあるの でオブザーバーになっている。実際そういう話はWHOとしておりまして、そういう認 識の下になっております。えらいのでオブザーバーになっている。オブザーバーという 言葉が適当でないんですが、ほかに適切な言葉がないのでオブザーバーという名前にな っておりますが、立場上はそういうことでございます。 ○藤原座長 日本の国際的な地位が低いということではないんですね。 ○人口動態・保健統計課長 そういうことです。 ○藤原座長 ほかにどなたかございますか。 ○渡辺委員 私は余りよく知らないので、変な質問かもしれないんですけれども、この委員会で話 された内容というのが、最終的にはWHOのICD−11に対する提案としてかなり機能 するんでしょうか。それとも、ただ話しているだけに終わるのか。 ICD−10あるいはWHOで決めたものというのは、そのままの枠組みで恐らく日本 語化されて使うということになるのが基本だと思うんですが、決定する方にどのくらい フィードバックの権限があるのかという展望を教えていただきたいんです。 ○疾病傷害死因分類調査室長 先生の御指摘の内容がまさに本委員会立ち上げの趣旨でございまして、基本的にはW HO、ICDに関しましては、リビジョン、アップデートという改善の枠組みで進めて おりますが、そのWHOが定めたものを決まったものとして日本に適用するという、W HOから日本への一方通行だけというのではよくないのではないか。 日本はこれだけ の医学的なベース、バックグラウンドがありつつ、このような英知を集めるような会議 もできる状況にあるのであれば、やはりここは日本側から意見をとりまとめて、WHO 側にICDというのはこうあるべきではないかというのを積極的に提言していく。 当然、その中で提言したことすべてが決定されるわけではないんですけれども、議論 にのせて、その結果決まったものについては、基本的にWHOの定めたものとして日本 で適用する形になります。国際的なディスカッションの場に日本として意見を提言して いく。日本からWHOへ、そしてWHOで決まったものを日本に適用するという日本と WHOのサイクル、輪を形成するための場として、この委員会の御意見を参考にさせて いただきたいと思っております。 具体的に意見を提出するプロセスとしましては統計情報部のICD室、私のポジショ ンが毎年年次総会等に出て意見を言う機会がございます。その枠組みがございますので、 意見出しのプロセスとしては全部つながっております。そのように御理解いただければ と思います。 ○藤原座長 よろしゅうございますか。ほかにどなたかございますか。 たしか前に伺ったのでは、精神科の分野で日本から挙げられたものが現在かなり活用 されているという話を伺ったような記憶もありますが、いかがでしたか。事務局は御存 じですか。 ○疾病傷害死因分類調査室長 調べて、次回お答えさせていただきたいと思います。日本の意見というのは、精神科 に限らず、これまでも一部盛り込まれているものが当然ございます。 ○藤原座長 以前の会議でも話しましたが、このような形で、医学会が介入しながら意見を挙げて いくというのは、我が国が恐らく一番活発だろうと理解しています。 ○人口動態・保健統計課長 若干の補足でございます。ICD−10の1990版が制定されるに至る過程につきまし て、私どもがICD−10を実際に使う際に用いている疾病、傷害および死因統計分類提 要、第1巻総論の中に経緯が書いてございます。 やはり当時も統計情報部の審議会で、ICD−10を決定する前の段階で医学界の皆さ んの御意見を伺い、意見をとりまとめてWHOに提出しました。一部は実際に反映され たということでございます。 先ほどのICD部会の部会長の所感の中で、委員の先生方の御発言の紹介があったと 思うんですが、その中の1つに、ICD−10のときには、その審議会自体がかなりIC D−10への改訂の終局に近い段階で意見を述べたということを実際に関わった先生方 が発言をされております。そのときの反省といたしまして、次の改訂であるICD−11 について、これからはプランの段階から日本で検討をスタートしようということでござ います。当時の先生からは、早い段階からいろいろなプロセスの中に関わることによっ て、日本の意見もしっかり主張し、かつ取り入れてもらうことができるのではないだろ うかと言われておりまして、現在プランが出ている段階ではございますが、早い段階か ら常設の委員会で御検討を進めていただき、私どもの方で参考にしながら意見を述べさ せていただけるようにしようという趣旨でもございます。 ○藤原座長 ありがとうございました。ほかによろしゅうございますか。 ○菅野委員 前回の部会に加わっておりまして、若干経緯を知っておりますので、少し述べさせて いただきます。 実は日本で昨年社会保障審議会統計分科会の主催でこのWHOの会議が開かれたんで す。そのときのオーガナイゼーションがよかったということと、そのバックグラウンド になっている医学領域の支援があるということをWHOの方は非常に認識されたという ことが1つあります。 また日本病院会が金銭的なファンドをドーネーションして、WHOの活動をサポート するということがそのときに表明されまして、それを非常に高く評価されたという経緯 があって、日本の従来ICD−10のときのコミットメントと比べて、日本に対する期待 度と評価が非常に高くなっていることがあります。 日本に対する期待というのもありますし、またその評価も高くなっているという実情 を考えますと、今後ICD−11に向けて、日本のコミットメントに対する期待と同時に その評価が取り入れられる可能性が非常に高いのではないかと考えますし、またそうい ったことに対して貢献していく必要がやはりあるだろうということがございます。先ほ どの北村前部会長の所感というのにも、そういった継続性あるいは国際貢献の必要性が 表明されているんだと私なりに理解しているんです。 ですから、この委員会の役割は恐らく今後非常に重要になってくる。そういう意味で は使命が高いのではないかと考えております。 ○藤原座長 ありがとうございました。 それでは、議事3に移らせていただきます。「ICD−10(2003年版)適用の影響等 について」につきまして、事務局より御説明をお願いします。 ○人口動態・保健統計室長 資料4をごらんいただきたいと思います。 資料4「ICD−10(2003年版)適用に伴う人口動態統計月報(概数)における死因 統計の変動等について」でございます。これは右上に日づけがございますように、7月 18日に私どもの課の方から公表させていただきまして、厚生労働省のホームページにも 掲載されているものでございます。 内容でございますが、先ほど説明申し上げましたとおり、ICD−10の2003年版は 平成18年1月分の調査から適用ということで定められました。 当課では、人口動態統計月報、死因統計をまとめていますが、この1月号が2003年版 適用の最初の統計結果ということで、当然ながら分類の変更がございましたので、どの ようなところで統計の変動があったかを公表させていただいたものでございます。 どんな変更があったかということで5ページです。「ICD−10(2003年版)・主な 変更点」ということで「II ICD−10(2003年版)の主な改正点」でございます。 ICD−10の2003年版は勿論英文でWHOの方から出てきているわけですが、日本 におきましては勿論、国際比較可能性を担保しつつも、日本独自の事情といったところ を織り込みながら日本で適用している。そのためにICDの部会でも議論をしていただ いたということでございます。 主な改正点ですが「1.WHO勧告に基づく改正」で、(1)新たな分類項目の設定。 それから、(2)項目の移動、これが本来の2003年版の適用勧告です。 6ページで「(3)分類項目の廃止及び新設」も勧告です。 (4)がこれから説明申し上げる死亡統計に関する勧告ですが「死亡統計における原 死因選択ルール等の変更」で、死亡統計におきます原死因の選択につきましてのコーデ ィングルールの変更です。 コーディングルールというのは、死亡診断書に書かれる複数の病名から実際のICD のコードを対応させるルールですが、これの一部変更が行われ、適用例が具体的に示さ れるという変更がありました。 適用例というのは実際このような複数の臨床病名の場合には、どういうコードを付け なければいけないとか、結構複雑なものがございますが、そういった例の変更等を加え たということです。 これがいわゆる本来の意味の勧告ですが、当然ながら日本に適用するに際しまして、 日本としての事情、あるいは日本におきますさまざまな御意見等ということで「2.法 令の改正等に基づく名称の変更」。これは「等」ということで法令改正以外のものもあ ります。 「3.医学の進歩等に対応した名称の変更」。これは学会の意見等々でございますが、 主な変更点で申し上げました。このような改正がありまして、新しく1月の統計結果か ら適用されたということでございます。 7ページは実際にまとめられた人口動態の死因統計でございます。この死因統計は死 因簡単分類と申しまして、130 くらいのものですが、毎月この分類で死因統計を公表し ております。これは、1月分の結果でございます。 結果は毎月出しているんですけれども、ここでごらんになっていただけるのが約130 項目ということでございます。  どのような形で死因統計が得られているかを申し上げますと、死亡診断書の様式は皆 さんよく御存じのとおりでございますが、実際に人が亡くなられたときに、直接死因、 その原因、またその原因と死亡診断書に書いていただきます。 その死亡診断書とともに遺族の方が死亡届を市町村に届け出ます。市町村は当然戸籍 処理をいたしますが、そのあと、その死亡診断書の内容と死亡届の内容をそのまま人口 動態の調査票、死亡票という死亡の調査票がございまして、それにすべて書き写しまし て、一枚一枚が一枚一枚のまま、私どもの人口動態・保健統計課にまいります。 私どもの方で、直接死因あるいはその原因と複数書かれている死亡診断書の内容を見 まして、恐縮ですが4ページの一番下の(注2)にありますが、WHOの定めます原死 因、Underlying cause of deathと言っているんですが、原死因ということで私どもの 方で1人の死亡の方について、ただ一つの原死因を決定いたします。 原死因という考え方は何かと申しますと、死亡の防止という観点から、死亡に至る病 的事象の連鎖を切る、あるいはある時点でその疾病を治すことが重要であって、公衆衛 生活動の目的はその活動によって原因を防止するということであるとして、WHOの方 で定義されたものです。私どもは普通は死因と言っていますが、もともとはこういうも のです。 具体的には、直接に死亡を引き起こしたものを指すのではなくて、直接に死亡を引き 起こした一連の事象の起因となった疾病もしくは損傷を原死因ということです。それ以 外に自殺ですとか致命傷を負わせた事故、もしくは暴力の状況と直接的なこういうもの がございますけれども、この2つが原死因というものでございまして、これに基づきま す。 このような原死因に関する統計ということです。どのような分類を扱っているかと申 しますと、4ページの(注1)にあるように、ICDの勧告しているコードは1万4,00 0 ございます。それを実際に私どもは約110 万件近くの死亡票の一枚一枚につきまして、 すべてコードで1万4,000 の分類を行っております。 これが人口動態・統計年報というのに載っております。月報には、全体はカバーして いますが、その1万4,000 を集約した死因簡単分類という132 に分類したものが載って おります。あとは選択死因分類とか幾つかを簡単にまとめた分類を載せているというこ とです。 今回御紹介するのは月報への影響ということで、7〜8ページが全体の概観した132 の分類への影響。 9〜10ページは、感染症対策のためということで、こういう全体を概観する死因分類 の統計のほかに、感染症分類を特に定めまして、そのニーズに合わせたのが9〜10ペー ジです。これについても毎月こういう形で公表させていただいております。 前置きが長くなって恐縮ですが、このような背景を持ちました人口動態統計の死因統 計でございます。それに先ほど申しましたICD−10の2003年版への変更改正の影響 がどうなったかでございます。 1ページ目、数字の面での御説明を申し上げますが、なお書きにありますように、各 死因におきます件数の変動につきましては、当然ながら分類の変更(新たな死因分類と か、振り分けのルールの適用による影響)のほかに各死因固有の変動というのが入って おりますので、必ずしも分類で増えた減ったということとその数字の影響はパラレルで ない状況がございます。そこは御留意いただきたいと思います。 まず1番目にC型肝炎ということですが、C型肝炎の一部を慢性として取り扱うこと による影響ということです。これは急性ウイルス性肝炎ということで、先ほど申しまし た感染症分類への影響の部分でございますが、期間が不明または6か月が慢性とされる ということでございまして、月報の感染症分類の方では急性から抜けるということで、1 7年までの444 件から36件といきなり1割ぐらいに減ってしまうという統計の分類の変 更に伴う結果の変動がございます。一方、C型ウイルス肝炎という分類の統計。先ほど 言いました死因簡単分類の方ではございますが、これは慢性も急性も含むので、変更は ないということでございます。 慢性と急性別の統計は、先ほど言いました一番最大の1万4,000 分類の中では区分さ れ分類されておりますので、人口動態統計年報の中でこの急性慢性別の数字の動きもご らんいただけるということになっております。 2番目に、先ほどの改正点の概要の中では新たに付け加えられた分類があると言いま した。人口動態統計の死因の分類の中で影響がある部分を見ますと「2.耐性菌に関す る新分類の追加による改変」がございまして、ここにありますように5つほど新たな分 類が追加となっております。 パンコマイシン等々ここにございますような形で、実際に今回1月の統計でメチシリ ンIN538 と書いてあるんですが、ここにあります件数が実際に統計として新たに計上さ れる結果に至っているということでございます。 3番目の3ページの方はやや込み入った話で、先ほど原死因、アンダーライングコー ズオブデスということで申し上げました原死因の選択ルール。死亡診断書に複数書かれ ます死因あるいは原因から、ただ一つ原死因を決定するに関しますルールが変更になっ ているということでございます。 原死因による統計ということで、死亡届に記載されます死亡診断書からルールに基づ き選択・決定されております。このルールの適用は機械的に行えるものでなく、経験、 熟練が必要な専門的なものですので、多様なことがあり複雑に入り組んでいるんですが、 簡単に申し上げますと大きく3つほどの例を掲げています。 (1)は心停止、低血圧、循環器障害、急性呼吸不全あるいは呼吸不全というような 状況につきましては、従来は一定の分類があったんですけれども、今回は死亡診断書の 情報を更によく見て、ほかの病態を原死因に選択することになったということ。 (2)で書いてあるのは、貧血あるいは低栄養というような状況で、死亡診断書に自 立能力の制限を来す病態といったようなことがあった場合にはそちらにするということ。 (3)は脳内出血、脳梗塞については脳血管疾患による認知症といったことになる。 詳細なことは皆様によくごらんいただける方がかえってよろしいかと思うんですが、そ のようなことで同じ死亡診断書につきましても原死因の決定につきましてのルールの変 更で分類が異なるということでございます。それぞれ定性的に件数の増加または減少の 方向に働くということでございます。 4ページには、詳しい説明は申し上げませんが、今の(1)(2)(3)のルール変 更に伴いまして、関連する死因についての件数の動きを見たものでございます。必ずし も件数が減っていなかったり、あるいは逆に増えるはずが増えていなかったりという状 況もございます。 これは1ページの冒頭にございましたように、その分類の変更による影響以外の固有 の変動というのが結構含まれております。必ずしもそこは対応しておらないというとこ ろを御留意いただければと存じます。資料4の説明は以上でございます。 ○藤原座長 ありがとうございました。ただいまの御説明に何か御質問はございますか。 ○中田委員 統計のユーザーの観点から1点ほど申し上げたいと思うんですが、統計のユーザー、 使う方からしますと統計の継続性というのは非常に重要でございます。極端な場合には、 例えばある死因による死亡数が去年と比べて増えたのか減ったのかも、わからないよう になってしまうことがありまして、同じような状態で毎年調べていただくのは非常に重 要なことになるわけでございます。 ところが、ICDが変更になりますと、往々にしてその継続性は守れないということ があり得るわけでございます。だからといってICDをずっと変えないというのも、医 学進歩その他、世の中は変わっていますので、それもまたおかしいということで、これ はある意味では変えざるを得ないところがあるかと思います。 したがいまして、そうした改正が行われた場合は、特定の死因のデータを見た場合に、 なぜ件数の変化が起きたかということを十分調査していただきまして、その理由、結果 を公表していただきたい。公表した統計について使う側が間違って使うということがな いようにしていただきたいということでございます。 ○藤原座長 ありがとうございました。それは当然視野に入れてお考えになっていますね。 ○人口動態・保健統計課長 はい。そういうことで対応させていただきます。 ○藤原座長 ほかにどなたか、いかがでございますか。 それでは、次に議事4「当面の検討課題について」に入りましょうか。事務局で御説 明をお願いします。 ○疾病傷害死因分類調査室長 資料5の1枚紙に基づきまして、当面の検討課題について説明をさせていただきます。 これまでの経緯あるいは現状について説明をさせていただいた状況でございまして、 この委員会で一体何を検討するのかというお話が次第の4でございます。 そこで当面の検討課題と書かせていただいておりますのは、実は先ほどから何度か説 明がございますように、この委員会は基本的にはICDに関わる問題点あるいは国際的 な意見発出に向けて、恒常的に御議論をいただくということになっておりますので、何 かショートタームでその都度いろいろなことを御検討いただき、おまとめいただく形に なりますが、基本的には恒常的な委員会として設立をさせていただいたものでございま す。 議論の過程等あるいは社会的な要請等に応じまして、この委員会で検討していただく 事項というのは当然増える可能性はございます。現時点において検討が求められている 課題について、以下の3点の御説明をさせていただきます。 まず「1.疾病、傷害及び死因分類のわが国への適用のあり方及び恒常的見直しのあ り方について」でございますが、これは基本的には国内に向けてというイメージでとら えていただければと思います。 昨年のICD部会でも議論があったんですけれども、WHOがバージョンを変えたも のを日本に適用する際に、WHOが変えたところ以外にも、長年ICDをそのまま置い ておきますといろいろな問題点が発生をします。 単純に言うと、例えば医学的に使われている用語がもう10〜20年前のもので、現在と はそぐわない、古いといった御指摘もございまして、そういったものを10年に1度会議 を開いて、WHOの勧告を適用するときに併せて議論をすると非常に無理があるであろ うということ。そういうものについては恒常的にやはり検討しておく枠組みが必要であ ると指摘がございましたので、そのような御検討をいただく場として、この委員会で御 意見をいただければと考えております。 ただ、基本的に我々統計情報部はICDを統計上の分類として扱っていますので、I CDをそれぞれの施策へどう適用するかにつきましては、政策の担当部局の判断による ところもございますので、そういう汎用性の高いものとして、質的にいかに維持改善を していくかというのが本委員会の御検討いただく内容であると御理解いただきたいと思 います。以上が1点目でございます。 「2.疾病、傷害及び死因分類の改善に向けてのわが国の意見の集約について」で、 これは国際的、対WHO、WHO−FICへの意見の提出。それに向けて我が国の皆様 方の英知と申しますか、組織的な医学的分野における意見の集約をして、情報として発 信していこうということです。 これは当然、WHO側のフレームワークはどうあるのかということで、先ほど説明さ せていただきましたICDの改訂に向けてのリビジョンの会議、コーディネーター会議 につきましても、実はまだ1回目も開催されていない。今は1回目の会議の計画段階で あるということですので、パーツパーツでは改定のプロセスは始まってはおりますが、 具体的に大きなキックオフがなされている状況ではございません。 言わば日本としては最初の段階からそこに関与していく俎上ができているところでご ざいますので、それに向けてどのように意見を集約していくのかを御検討いただきたい と考えております。 「3.普及啓発について」ですが、これは先ほど言いましたWHOのインフォメーシ ョンパラドックスという意味では、国際的にも途上国で大きな問題になっておるんです が、ICDを日本国内にいかに普及啓発をしていくか。特に情報化が進んでいく中にお きましては、いろんな処理をするに当たっても、医師が正しく病名を記し、それが正し く分類されたものが磁気化されていって、初めて有用なデータのセットになるわけであ ります。最初のインプットの段階で非常に誤った情報が入ってしまえば、いかに大量の 情報を処理するフレームワークができたとしても、情報の意味としては価値としては低 いものになってしまいます。どういうふうに普及啓発をしていった方がいいのかに対し てアドバイス、助言等をいただければと考えております。 以上が当面の検討課題の3点でございます。 ○藤原座長 ありがとうございました。内容がかなり広範に及びますので、一つひとつ整理した形 で討論を進めてまいりたいと思いますが、まずは恒常的見直しに関しまして、いかがで ございますか。 ○大井委員 これからの作業は多分膨大な量になるだろうと思います。各委員から意見を集約して、 それをまとめて、この委員会の結論と持っていくためには、紙ベースでやっていたので はとても膨大になり過ぎてしまって、非常に非効率になります。 私の提言なんですが、先ほどのWHOの説明の中にもありましたけれども、ITを活 用した意見収集とか集約方法の在り方について、事務当局でも是非検討していただけれ ばということを提言したいと思います。よろしくお願いいたします。 ○藤原座長 ありがとうございました。事務局いかがですか。 ○疾病傷害死因分類調査室長 はい。実はこれは昨年、我々も非常に痛感したところでございます。各先生方から意 見出しをいただいたときに、紙に手書きでいろんな意見が寄せられてきたのを、人海戦 術でべた打ちをしてまとめたという作業がございまして、それは今の時代としては非常 に非効率であるということで、今後できればそのような意見集約をしていくに際しまし ても、最低でも磁気媒体による情報の伝達、あるいはもう少し発展させた形といったよ うな効率的に集約できるような形を可能な限り検討はさせていただきたいと考えており ます。 ○藤原座長 よろしゅうございますか。 ほかにどなたか御意見はございますか。 ○横田委員  今回のご提案は、国内に向けてその運用上の改善点を検討しようということ、その結 果生まれたことをWHOに提言しようということを、並行してやる話と理解しました。 例えば、我々は日常の診療で感ずることは、啓発を受けてICD−10を使いましょうね と言われても、整合性の悪いところが多々ございます。DPCがいい例なんですけれど も、記述病名をICDに変更しようにも困難を感じ、次の改善策が具体的に見えてこな いときがございます。私どもは外傷登録など救急医療の傷病登録をしていますが、やは りICD−10をベースにするのが難しいときがあります。  1つの提言なんですが、そのような場合、ICD−9のCM、すなわちクリニカル・ モディフィケーションをやっている米国やオーストラリアのようにICD−10をモデ ィファイしたものを一度つくってみて、それをたたき台にして、次の改訂のあるときに 提言するというプロセスがあると思うんです。私は一番最初、厚生労働省がICD−10 を採用されたとき、どうしてICD−10JPみたいな臨床的な形にしていただけなかっ たのかと思っていました。そういう意味でICD−10を啓発していく過程で、同時にこ ういう分類に変更すればどうなんだろうということを関係各位から収集して、改訂のひ な形を考えながらやっていけないのかなというのが私の提言でございます。 ○藤原座長 ありがとうございました。ただいま御意見をいただきましたのは、この課題の2つ目 にも関連することでございまして、我が国の意見をどのように集約していくかというこ とになろうかと思いますので、そちらの方に進めさせていただきましょう。 内容は幾つかあろうかと思いますが、いかがですか。まず一つ整理を進めてまいりた いのは、URCへの対応ということでは、事務局としては何か。 ○疾病傷害死因分類調査室長 委員長から御指摘のありましたURCへの対応というのは背景を少し説明させていた だきます。 まず用語の整理ですが、実はリビジョンは日本語では改訂と訳してりまして、ICD −10からICD−11にいくのをリビジョンと訳しております。 ICD−10のままバージョンが2003年版とか2006年版とか3年周期で改正しており まして、それにつきましてはICD−10のままでの内容の改善のことをアップデート、 改正と呼んでおります。 このURCというのは、アップデート・アンド・リビジョンコミッティーで、要する にアップデートもリビジョンも両方やる委員会なんですが、基本的には今の活動は先ほ ど申し上げましたように、リビジョンがまだ具体的に大きくは始まっておりませんので、 アップデートの対応が中心という形になっております。 毎年、年に1回年次総会で決定される数か月前から、今年はこういうようなところを アップデートしたいが、それに対して日本として意見はどうかと照会がなされておりま した。それについては、基本的にはこのような御議論をいただく専門的な委員会はござ いませんでしたので、我々の方で関係学会等に相談したり協力をいただきながら、事務 局の方で意見をとりまとめてWHOに提出をしてきていたのが、これまでのURCへの 対応でございます。 このような専門的な委員会が設立された契機に、この通常のアップデートへの対応と いうものにつきましても、どうあるべきかを少し御議論をいただければと考えておりま す。 ○藤原座長 ありがとうございました。これに関連していかがでございますか。 ○大井委員 実際にそのURCから意見を求めてくる中には、必ずしも医学的、専門的な問題だけ ではなくて、実技上のコーディングの問題とか、そういうこともたくさん含まれており ます。そういうことに関しては私どもの診療録管理学会というのは、大勢の診療情報管 理士を抱えておりますし、実際面としては大変お役に立つことがあろうかと思います。 私どもだけですべてができるというわけではありませんが、是非そういう診療情報管 理士を抱えているという立場から御利用いただくということを、この専門委員会で御指 示いただければ大変ありがたいと思います。 ○藤原座長 大変ありがたいお申し出でございます。皆様方におかれましても、今後必要に応じて 御協力願いたいと思います。 土屋先生、どうぞ。 ○土屋委員 私も先ほどの横田委員のおっしゃった意見に賛成で、意見の集約を一本筋を通したと いいますか、ある基本的なルールをつくって、それに応じて主張していくべきではない か。言わば理論武装をして持っていく必要があるのではないか。 やはり我が国から出すのは一貫性があって、ある基本的なルールにのっとって主張し ている。特に私はUICCのTNM分類委員会にも関与しているんですが、10年に1度 改訂するときに、既にパブリッシュされたデータであるかどうか。それが特にガバナン ス・コントロールスタディーのようなことがやられているかどうか。更にマルチバリュ ーということでマルチアナリシスをやられているかどうか。 そういうようなことがエビデンスのレベルとして大変高いものであるということを集 約して持っていく方が意見が取りやすいと思うんです。 恐らくこの分類についても、先ほどお配りいただいた資料3−4の2ページ目の下の 「改訂作業ストリーム」の1番目に「科学ストリーム」がありますので、これはガイド ラインをつくるときのエビデンスレベルあるいは推奨グレードということで、何かそれ に近いようなルールを日本として決めて、各臓器ごとあるいは疾患ごとに統一性のある 主張をしていくと、私どもが日常使いやすい分類を主張できるのではないかと思います。 ○藤原座長 ありがとうございます。理論武装をしてサイエンティフィックに挙げていくというこ とのようです。 ○大井委員 確かにそのサイエンティフィックに理論武装していくというのは非常に大切だと思い ます。しかし、この改訂のストリームの2番目に「臨床ストリーム」が入ってきていま すが、これは理念ベースで進める作業とは別に個別の具体的な現在の問題点を、その実 技に携わっている診療情報管理士等から収集していき、拾い上げていく作業も大切では ないでしょうか。それを行いながらICDの抱えている問題点とか方向性を見つめなお す。それにより一定の指針を抽出できる可能性があると思うんです。 土屋先生のおっしゃっている理念ベースというのは非常に大切だと思いますが、その 話と並行して、そのような作業も行っていったらよろしいのではないかと思いますので、 御提案したいと思います。 ○藤原座長 ありがとうございます。ほかにどなたかございますか。 ○長村委員 長村と申します。病理の話が出ましたのでお話しさせていただきます。  私は病理学を担当しておりますが、御遺族の御承諾を得て剖検を行ったものを、全国 的に集計しまして、社団法人 日本病理学会より、剖検輯報を毎年発行し、全国レベル で報告してございます。 現在の剖検輯報は、ICD−10に対応しており、剖検結果を示しておりますので、か なり直接的なものです。例えば、死因や死亡診断、あるいは、それに付随した病変など が、詳しく記載され、検索できるようになっております。そのICD−10を共通の言語 とし、このように全国レベルで集計を行っているのは、恐らく、世界でも日本だけだと 思われます。 ですから、日本の今後のICD−10の見直しの際に活用していただくと同時に、世界 に向けても、かなり誇れるものとして、発信できるのではないかと考えております。こ れは、御遺族の個人情報を重視しながら行っておりますので、プロセスは必要かもしれ ませんが、是非、御活用いただきたいと思っております。 ○藤原座長 貴重な御発言をありがとうございました。 ○中田委員 基本的なルールを設定されるというのは非常に結構だと思います。その場合に勿論医 学的な観点からそういうルールを設定されるということだと思うんですが、それだけで なく、やはりICDに関しましては統計的な視点からというのも少しお考えいただきた いと思います。 ICD自体は恐らく全体として疾病とか、あるいは死亡の構造をとらえるという意味 もあろうかと思うんですが、そういった面から見ますと、やはりどうしても出現頻度の 低いような疾病とか死亡を項目として取り出すのは、統計の分類としては難しいという 面があろうかと思いますので、そうした面も考慮していただけたらと思います。以上で ございます。 ○藤原座長 ありがとうございました。 ○菅野委員 我々の消化器病学会は大分前、藤原先生が理事長をされておられたときに、こういっ たICD−10の問題点に突然気づきまして、活動を開始したわけでございます。やはり 実際にお使いになっていらっしゃる部分、先ほど診療情報管理士の方からの問題の御指 摘もあろうかと思いますし、我々が実際にそれに直面してみますと、いろんな学問的な スキームでかなりおかしい部分がたくさんあることがございまして、さまざまな改訂が 必要であると認識しました。 その際には、土屋先生が先ほどおっしゃいましたように、科学的な理論武装も必要で ございますし、大江先生がいらっしゃいますけれども、標準病名とか日本での利用の仕 方についても、周知している臨床の部分との調整も必要でございます。 学会レベルでも、日本でのICD−10の改正の枠組みをつくるときも、学会ごとにか なり言葉が違っていたりしまして、調整が必要な部分がありました。 そういう意味で医学会を含んだ全体的な枠組みを考えていく必要があるのではないか と考えておりますし、私どもの学長がたまたま医学会の会長もしておりまして、そうい った先生にもお願いして、理論的あるいは実際との整合性といった枠組みを考えていく 必要があるのではないかと思います。そういう意味ではその調整を必要とする部分があ ると思っております。 ○藤原座長 先生の方から何か御提案もいただけるんですね。 ○菅野委員 それはすぐにというのは難しいのかもしれませんが、そういったことを考えないと基 本的にはスムーズに行けませんし、そういった理論的な背景、先ほどのWHOの3つの ストリームを踏まえてやっていく必要がある。 それから、御意見をいただきました、パブリックへルス・ストリームに非常に貴重な 疾患等の取り上げというのが入るんだろうと思いますし、そういった部分を3つそろえ ていくというのは日本でも考えないといけない枠組みだろうと思います。ここの場でデ ィスカッションすると恐らく切りがないと思いますが、御出席になっていらっしゃらな い学会も多数あろうかと思いますので、そういったところとの調整を図る部分としては、 医学会も利用していく必要があるのではないかと感じております。 ○藤原座長 ありがとうございます。いろんな視点から、問題あるいは推進方法等も御提案をいた だいておりますので、またこちらの方で整理しまして個別にお願いすることになろうか と思います。 時間もございますので、ICDに関する普及啓発についてに関しまして、いかがです か。 ○人口動態・保健統計課長 恐縮でございます。資料3−3「分類に関するWHOのビジネス・プラン」ですが、 先ほど説明があった10ページの「2.1 インフォメーションパラドックス」の話でご ざいます。 このビジネス・プランの中にもWHOの方では途上国等におきますICDの普及につ いても力を入れている。特に先ほど説明させていただきましたように、ニーズのあると ころの統計がないというインフォメーションパラドックスで、先ほど申しましたWHO −FICのネットワーク会議というのが毎年あるわけですが、今回開催されるチュニジ アの会議ではこれも大きなテーマとして取り上げられる予定となっております。 特に初日には、アジア各国の参加者から成ります初めての試みですけれども、第1回 目のアジアセッションを開催いたしまして、アジアにおきますICDの普及に関する現 状と課題、今後の方向性等につきまして議論が行われる予定でございます。 アジアにおきます普及の状況につきましては、このビジネス・プランの36ページにA FRO、AMRO、EMRO、EURO云々とありますが、これはWHOが世界的に業 務を推考するに際しまして、事務所を置いている区分でございますけれども、アジアと いうのは下から2つのSEARO、WPROです。 SEARO、東南アジア地域の加盟国11か国のうちICD−10が普及されていない のは3か国だけです。 その下のWPROです。日本もこちらに属するんですが、WHO西太平洋地域と言っ ていますが、27か国のうちICD−10を普及したのが7か国、オーストラリア、中国、 日本、ニュージーランド、パプアニューギニア、韓国だけで、残りの20か国は実際には 普及していない。ビジネスプランではそういう整理になっておりまして、こういうとこ ろについて普及が必要という議論が行われる予定でございます。 このアジアセッションはまた後ほど説明させていただく予定ですが、WHOのネット ワーク会議は昨年は日本で開催したんですが、今年はチュニジアで開催される予定でご ざいます。来年につきましては、アジアセッションでございますので、是非アジアで開 催してはどうかということが計画されておりまして、実はWHOの方から日本に対して 会議運営についてサポートしてくれないかという依頼が寄せられている状況でございま す。 ○藤原座長 それに関連して何か先立つもの。資金援助ですね。日本病院協会の方でいただいてい るとも伺っておりますが、これが活用されるのでございますか。 ○疾病傷害死因分類調査室長 先ほど菅野委員の方からも少し御発言がございましたが、実は日本病院会はWHO− FICの特にICDの普及と改善のためにということで資金を拠出されておりまして、 WHOの方から聞くところによると、その資金の一部を活用してこのアジアセッション を開催したいと伺っております。 ○大井委員 私は今日、日本診療録管理学会の理事長の立場で出席しているんですが、同時に日本 病院会の副会長でもあります。私どもの診療録管理学会の親団体が日本病院会になるわ けですが、今、事務局から御説明のございましたように、確かに日本病院会はICDの 改善と普及に向けて、資金面とかあるいは技術面においてもサポートしていきたいとW HOに申し出て、具体的な活動や資金の拠出について今年度から着手しております。 私どもは実際に途上国に対する普及活動は非常に大切だということで、そういうふう に踏み切って活動を開始したのですが、これは単に一方的に普及するというだけではな くて、逆に普及を目指すことによって問題点が明らかになり、私ども自身が学ぶことが 非常に大きいことを経験的に知ったからでもあります。教えることは即学ぶことだとい うのを痛切に感じています。 そういう意味で、WHOからもし我が国に対して協力要請があって、アジアセッショ ンをきちんとやっていきたい、協力してほしいと要望がはっきりしてきましたら、我が 国のICD室の取組みにも関係するわけなんですが、日本病院会あるいは診療録管理学 会としても可能な限り協力させていただきたい。そのように努力させていただきたいと 思っております。 ○藤原座長 ありがとうございました。確かにアジアとの協力はこれから非常に重要な課題である と思いますので、事務局としても是非よろしく推進していただきたいと存じます。 ○土屋委員 今、世界的シェアから見て、アジアへの普及というのは大変大事だと思うんですが、 もう一つは足元の我が国の中で、やはりICDに対する理解を深めるような事業という のもお考えていただいた方がよろしいのではないか。 先ほど、死亡診断書の原死因のところも、こういう委員会に出ていらっしゃる方は大 変深く理解されるんですが、私が現場を見ていて、現場への浸透というのはいま一つで はないかと思うんです。 ですから、ICD−9からICD−10に変わるとき、同時に死亡診断書の書き方が変 わり、大変きれいな書き方の手本が出ましたけれども、ああいう活動を恒常的にやって いきたい。基礎データになる診療録から管理士の方が情報を拾い上げることになります が、診療録の作成において、まだICD−10に対する理解が不十分ではないかと思いま すので、是非そういう理解を我が国の中で深めるような事業をお考えいただけたらあり がたいと思います。 ○藤原座長 確かにこれは我々医師の中でも、この重要性を余り認識していない者が多いかと存じ ますが、今度の医師の国家試験にこれは入るんでしたか。 ○菅野委員 私はたまたま国家試験の委員もしておりまして、前のブループリントはその試験範囲 を決める枠組みで、入ってなかったんですが、医師の認識が非常に乏しかったというこ とがございまして、今度改定のときにこれは是非入れないといけないということで入れ てもらいまして、既に入っております。 ○藤原座長 ありがとうございます。 それでは、この今後の課題について、全体にわたって何か御発言はございますか。ど うぞ。 ○林委員 東京大学の林です。一番最初に事務局の方から、医療のIT化が今後急速に進んでい くという形で、その後いろいろな先生のお話をお聞きさせていただいて、委員長の方か らも冒頭で、その臨床現場において今のICD−10が非常に使いにくいという形で、今 後やはりそういう形のものをどんどん使えるような形にしていくという印象で私は受け ていたんですけれども、いろいろな問題があって、その医療のIT化もあり、レセプト がオンライン化されていく。そして、その中で病名が統一化されていって、特に一番大 切なのが臨床現場にどんどん使われるような分類がされる。 それをすることによって、勿論疫学調査的なものもされていくので、こういった病名 が統一されることによって、そういった医療情報の二次活用も含めて、どんどんそうい う形でいろんな意味で発展していくのではないかというようなニュアンスで私は考えて いたんですけれども、今後、土屋先生や横田先生の話を聞いていても、恐らくそういう イメージでおっしゃられているのではないか。そういうルールとか何か筋を一本通して という形でおっしゃられているのではないかと思うんですけれども、そういう認識でよ ろしいんでしょうか。 ○藤原座長 よろしいかと存じますが、何か御意見はございますか。 ○疾病傷害死因分類調査室長 少し補足をさせていただきますと、基本的にはWHOの主張しているのは先生のおっ しゃられていることとほとんど同じことをWHOも主張しておりまして、それは非常に 道理であると思っております。 片やICDというのは歴史的に経緯もありまして、例えば死因統計とかを国際比較を するためにも用いられておりますので、例えば途上国などは医療のIT化とかにはまだ 縁遠いところにありますが、ICDというものを用いて国際的にいろいろ比較をしてい くツールとして使われておりますので、そういう近代的なITに対応し得る情報伝達の ツールあるいは分類のツールと同時に、そのペーパーレスの国にも対応しつつという二 面性を併せ持って発展していかないといけないという少し難しい課題に接しております。 ですので、そういう状況において、どちらにも役に立たないようになってしまうのが 最悪の事態でございますので、そういう2つの課題を達成しつつ、どう発展させていく のかが今後の国際標準としてのICDの在り方になります。 それを国際的な比較性を担保しつつ、我が国においてどう適用していくのかというの は、今、原則として、WHOが採用したのと同じものとして日本に適用しておりますけ れども、その適用の在り方についても恐らく今後ここで御議論いただく形になるんだと は思っております。 ○林委員 非常によくわかりました。 ○藤原座長 それでは、時間も押しておりますので、「その他」に移らせていただきます。 1つ はICD−O−3に関しまして、土屋先生、どうぞ。 ○土屋委員 先ほど、長村委員も病理の重要性を申されたんですが、やはりICDの派生したもの でICD−O−3ですね。これは我々は腫瘍学をやっているもので大変重要なんですが、 まだ解釈にかなりばらつきがある。ですから、その辺も含めて御検討いただければと思 います。できれば病理のパネルとか、そういうもので統一性をもって普遍性の高いもの にしていく必要があるのではないかと思います。 ○藤原座長 ありがとうございました。これに関連して事務局。 ○人口動態・保健統計課長 ICD−O−3につきましては、先ほど説明させていただきました資料3−2「世界 保健機関国際分類ファミリー」にございます。 この絵の中の右のところに「派生分類」とございまして、この一番上に国際疾病分類 腫瘍学第3版、これがICD−O−3ということでございます。私どもの方では派生分 類というのを補助分類とも言っておりまして、このICD−O−3は補助分類という位 置づけでございましたので、実際に日本でも適用するということで、数年前のことです が、社会保障審議会の統計分科会の下に疾病、傷害及び死因分類の腫瘍学委員会を設置 いたしまして、専門的な御議論をいただき、本としてまとめたという経緯がございます。 今のICD−O−3の普及という課題の中で、現に何年か経っておることもございま すので、関係するところとも調整の上、また情報提供もさせていただくような対応をさ せていただこうと思っておりますので、よろしくお願いいたします。 ○藤原座長 ありがとうございました。どうぞ。 ○長村委員 先程の剖検輯報も、ICD−O−3を取り入れ、現在まとめようとしておりますので、 然るべき情報をいただき、機会を設けていただければ、積極的に対応したいと考えてお ります。 ○藤原座長 たしかに病理の御参加が非常に大事だと思いますが、これに関連して何か御意見はご ざいますか。どうぞ。 ○大井委員 ICDの中に病理学的な検討というか、御参加が大切だという長村先生の御意見は大 変ありがたく拝聴したんですが、私自身の希望としては病理といっても臨床病理の参加 からの厚い御支援をいただけると本当にありがたいと感じております。 ○長村委員 病理診断という面でございますね。私共もそのつもりでおります。 ○藤原座長 確かに重要な点を御指摘いただいておりますが、是非ただいまいただいた御意見を中 心に事務局で検討願えればと存じます。 それでは、最後に資料6について、今後の予定を御説明願えますか。事務局よろしく お願いします。 ○疾病傷害死因分類調査室長 お手元の資料6に基づきまして、御説明します。 ICDの今後の予定ですが、先ほどからも何度か出ておりますように、年に1回のW HO−FICのネットワーク会議ですが、今年はチュニジアで開催されます。10月29 日日曜日〜11月4日土曜日でございます。これは基本的にはクローズドの会議でござい まして、参加に当たりましてはWHO及び協力センターの承認を得たもののみが参加す る形になっております。例年十数か国100 名程度の者が参加をしております。 この会議の初日に先ほど話がありましたアジアセッション、WHO−FICのアジア 地域会議が開催される予定になっておりまして、各委員会等の審議を経まして、最終的 には全体として総会が開かれ、採択をされて、議事録が作成されて、とりまとめになる 形になっております。 このWHO−FICのネットワーク会議の詳細あるいは報告につきましては、改めて 事務局より報告をさせていただきたいと考えております。これが今後の予定でございま す。 ○藤原座長 ありがとうございました。是非御報告願いたいと思います。 そろそろ時間でございますが、最後に何か御発言はございますか。 ○菅野委員 前回改定は全くただ働きで改正の作業をやって、この中には一緒にやられた先生もい らっしゃると思いますが、今後、WHOに向けて我が国の取組みを考えていく場合、何 らかの作業に携わる、あるいはその研究をしていくための資金面を含めた国としての支 援のあり方を考える必要がある。更に大きく言えば、こういったセンターがないという 話が冒頭に出ましたけれども、センターの設立とかいったことも考えた方がいいのでは ないかとも思いますが、その辺りはいかがでしょうか。 ○藤原座長 確かに国内向けの資金も必要ですよということに聞こえますが、事務局いかがですか。 ○人口動態・保健統計課長 センターにつきましては先ほど私から説明申しましたように考えております。研究に ついては室長の方からお答えさせていただきます。 ○疾病傷害死因分類調査室長 研究につきましても、必要が生じた場合には関係部局と調整の上、対応すべく努力を させていただきたいと思っています。 ○横田委員  1つ追加で質問なんですけれども、やはりデータベース的なものをもって話をする必 要があります。今、DPCが始まって、様式1などでいわゆる調査項目を取っておりま すけれども、ああいった資料を上手に使う、あるいは逆にこの委員会からの提言を様式 1で取り上げてもらえばデータが集まるのではないかと思います。保険局にこの委員会 の意見を組み入れていただいて、協力願うことということは可能なんでしょうか。 ○人口動態・保健統計課長 先ほどICDの位置づけを申し上げましたが、まずICDは一義的に統計分類であっ て、そのICDを活用している保険局ということで、保険局は保険局の立場でICDを 政策にお使いになるという立場でございますので、今のお話は勿論保険局の方にもお伝 えしますが、結果的にどのようになるかは、まさしく御相談の結果次第と理解しており ます。 ○藤原座長 是非よろしくお願いいたしたいと思います。 以上で本日準備させていただきました議題が済みました。これで第1回目の委員会を 終了とさせていただきます。 どうも御協力ありがとうございました。 照会先 厚生労働省大臣官房統計情報部人口動態・保健統計課     疾病傷害死因分類調査室     電話 (代表)03-5253-1111(内線)7493