06/07/26 中央社会保険医療協議会薬価専門部会平成18年7月26日議事録 平成18年7月26日 中医協薬価専門部会            第32回議事録 (1)日     時  平成18年7月26日(水)9:30〜10:37 (2)場     所  厚生労働省専用18〜20会議室 (3)出  席  者  遠藤久夫部会長 土田武史委員 小林麻理委員 室谷千英委員 対馬忠明委員 小島茂委員 丸山誠委員 松浦稔明委員            竹嶋康弘委員 鈴木満委員 黒ア紀正委員 山本信夫委員            向田孝義専門委員 長野明専門委員 渡辺自修専門委員           〈日本製薬団体連合会〉            森田清意見陳述人 庄田隆意見陳述人 吉田逸郎意見陳述人              〈欧州製薬団体連合会〉            大橋勇郎意見陳述人 野口正喜意見陳述人            〈米国研究製薬工業協会〉            ニュートンF.クレンショー意見陳述人            平手晴彦意見陳述人 アイラ ウルフ意見陳述人            〈事務局〉 水田保険局長 原医療課長 赤川薬剤管理官 他 (4)議     題  ○薬価改定の頻度を含めた在り方について            (医薬品産業界からの意見聴取(1回目)) (5)議 事 内 容 ○遠藤部会長  それでは、定刻になりましたので、ただいまより、第32回中央社会保険医療協議会薬 価専門部会を開催したいと思います。  まず、本日の委員の出欠状況について御報告いたします。本日は、全員が御出席されて おります。  なお、宮島審議官は欠席させていただく旨の連絡を受けております。  次に、本日の総会において正式に御報告し、お諮りさせていただくことになるとのこと ですが、7月25日付で仲谷専門委員が退任され、その後任として同日付で長野明専門委 員が発令されており、土田会長から、薬価専門部会に所属していただくこととしていると 聞いておりますので、早速本日の部会から出席をいただいております。  それでは、新任の長野専門委員より一言御挨拶をお願いしたいと思います。 ○長野専門委員  今御紹介にあずかりました長野と申します。よろしくお願い申し上げます。 ○遠藤部会長  ありがとうございます。  それでは早速、記事に入らせていただきたいと思います。  本日は、7月12日の薬価専門部会における御議論を踏まえて、薬価改定の頻度を含め た薬価算定基準の在り方について論点を整理するため、医薬品産業界から意見聴取を行い ます。  今回は、日本製薬団体連合会、欧州製薬団体連合会(エフピア)及び米国研究製薬工業 協会(ファルマ)の3団体から意見聴取を行い、次回、日本医薬品卸業連合会から意見聴 取を行うことといたします。  本日の意見聴取につきましては、日本製薬団体連合会から、森田清日本製薬団体連合会 会長、庄田隆日本製薬団体連合会理事代理・日本製薬工業協会総括副会長、吉田逸郎日本 製薬団体連合会理事・医薬工業協議会会長、エフピアから、大橋勇郎エフピア会長、野口 正喜エフピア理事長、ファルマから、ニュートンF.クレンショー ファルマ在日執行委 員会委員長、平手晴彦ファルマ在日執行委員会副委員長、アイラ ウルフ ファルマ日本 代表の方々に御出席いただいております。本日は、お忙しい中、ありがとうございます。  それでは、議事に入りたいと思います。  日本製薬団体連合会、エフピア、ファルマの順で御発言をお願いしたいと思います。な お、御質問、御意見につきましては、一通りの御発言をいただいた後、まとめて行うこと としたいと思います。  それではまず、日本製薬団体連合会から、よろしくお願いいたします。 ○森田意見陳述人  日本製薬団体連合会の森田でございます。本日、この中医協薬価専門部会におきまして、 日米欧の製薬産業の団体に意見陳述の機会をお与えいただきまして、ありがとうございま す。日薬連の意見につきましては、私より陳述させていただきまして、今回は、薬価改定 頻度を含めた薬価算定の基準の在り方ということについての論点整理ということに伺って おりますので、そういう観点から意見陳述をさせていただきたいと思います。3点、冒頭 には「製薬産業をめぐる状況」、そして続いて「薬価制度改革に対する基本的なスタン ス」、最後に「薬価改定頻度に関する意見」を述べさせていただきたいと思います。  それでは、私どもの薬価基準制度に関する意見を、資料に沿いまして御説明をさせてい ただきたいと思います。最初に、「製薬産業をめぐる状況」でございますが、製薬産業の 使命は、優れた医薬品を創製し、市場を経て一日も早く患者さんのもとへお届けすること で国民医療に貢献することであると認識いたしております。  我が国製薬産業は、日本の持続的な経済成長を支えるリーディング産業の一つとして、 さらなる国際競争力が求められていると認識いたしております。参考資料にございますが、 特に平成18年度につきましては、経済成長戦略大綱の中で初めて医薬品産業が明確に取 り上げられ、我々としては特筆すべきことであると思いますし、責任の一端を感じている ところでございます。  一方で、信頼できる良質廉価な後発医薬品の使用促進に向けて、処方せん様式見直しな どの環境整備が着々と進められております。  生命科学をはじめとする技術革新の進展や治験環境整備の大幅な遅れにより、新薬の創 製・上市に必要な研究開発費は高騰しておりまして、その伸びは市場の伸びを大きく上回 っております。御参考のページ2にございますが、この15年間で、例えば米国では研究 開発費の伸びは市場と同様な伸びで、約6倍程度となっておりますが、日本におきまして は、市場がほとんど伸びない中におきまして研究開発費は3倍となっているのが現状でご ざいます。  近年のたび重なる薬剤費抑制策により我が国の医薬品市場は停滞しており、世界市場に おける相対的なポジションは低下する一方でございます。参考資料3でございますが、9 4年から2004年のこの期間におきまして、日本の市場は21%から、2004年には 11%と相対的に半減しているのが実態でございます。  新薬の上市につきまして欧米などの海外が先行し国内が遅れる、いわゆる「ドラッグ・ ラグ」の現象が最近問題視されております。参考資料4でございます。世界で売上上位1 50品目をとってみますと、日本では3割が未上市でありまして、また上市された中でも 4割が、先進諸国の5カ国の中では最も遅い上市という停滞が続いております。  続きまして、「薬価制度改革に対する基本的スタンス」を申し述べます。1つは、国民 皆保険制度における薬価基準制度ということでございまして、薬価基準制度は、公的医療 保険制度と自由経済をつなぐ大変よい仕組みとして重要な役割を担っていると認識をいた しております。現物給付・出来高払いを原則とする現行の保険医療制度の下で、医薬品 個々の償還価格を公定する薬価基準制度は、保険医療の当事者にとっても理にかなった仕 組みである、そして定着していると認識いたしております。  また、平成18年度薬価制度改革の評価及び今後の課題といたしまして、新薬収載医薬 品の薬価算定、この点につきましては、先般加算率拡大などの薬価算定ルールの見直しに 加えまして、薬価算定組織において意見の表明の機会を得られる、こういう仕組みができ ましたことは、算定プロセスの見直し等も含めまして、大変うれしく思っておりますし、 新薬の適正な価格評価に向けて一定の前進が得られたと理解をいたしております。  しかしながら、薬価算定方式につきましては、昨年11月に当連合会が提案させていた だきました「加算体系の見直し」の実現を含め、有用な新薬のさらなる評価充実、これに 向けまして検討を継続すべきと認識いたしております。特に、加算要件の緩和、そして率 の検討、こういうところが我々の重要な関心事でございます。  また、特に適切な類似薬の存在しない新薬につきましては、現行の原価計算方式では有 用性や新規性、医療上の必要性などがきちんと評価できないことから、これに代わる新た な方式を今後導入も含めて検討が進められるべきだと認識をいたしております。  また、既収載品の薬価改定でございますが、「後発品のある先発品」、これに対する 「特例引下げ」につきましては、市場実勢価格を割り込んで薬価を引き下げるものとして、 製薬業界がそもそも撤廃を強く要望していたものでございます。  にもかかわらず、改めて実施した上、財政事情により一定率が拡大され、さらに「特例 引下げ」が適用された過去の品目にまで遡及して、一定率のうち従来より拡大がされた分、 2%を追加して引き下げたことにつきましては、言葉は悪うございますが、我々といたし ましては、理不尽極まる措置であったと思っております。  このような、その時々の財政事情から実施される薬剤費抑制策としての薬価改定方式の 見直しは、市場の健全な成長を阻害するものであり、実施すべきではないと考えておりま す。  3番目といたしまして、今回の「薬価改定頻度に関する意見」でございますが、薬価改 定の頻度につきましては、昭和62年5月の中医協建議に「おおむね2年に1回」と明記 されております。それ以降、中医協において実質的な論議がなされないまま今日になって おりまして、この間、薬価改定方式につきまして、昭和62年の建議による、この時期に はバルクライン方式を基本とする算定方式、そして以降、R幅方式を経て現在の調整幅方 式へと見直されてきたわけでございますが、これらは2年に1回という改定頻度を前提と しての検討されたものと理解しておりますし、そういう認識でございます。したがいまし て、薬価の改定頻度のみを取り上げて議論するということは妥当ではなく、調整幅の在り 方などの薬価改定方式を含めた薬価制度全体について検討すべきであると今日は申し述べ たいと思います。  現行薬価基準制度と競争的な市場における自由取引という構造の下では、市場価格は必 然的に薬価より下で形成されることから、市場実勢価格に薬価を近づける薬価改定により、 薬価は必ず下落するという、こういう仕組みにつきまして、市場価格が常に薬価より下で 形成される構造的な欠陥を抱えていると思います。そういう点で、薬価基準制度の機能と 存在意義を踏まえ、必ず薬価が下落する薬価改定の実施をやむなく今までは受け入れてき たという認識でございます。  薬価の引き上げと引き下げの双方の可能性のある改定ルールであれば、制度として現行 ルールよりも公平なものであり、その中で頻度についても検討することは一考に値すると 我々としては考えますが、不採算品再算定等の人為的な措置を除けばすべて引き下げのみ となる構造的な欠陥を抱えた仕組みのままで改定頻度を引き上げることにつきましては、 不公平性を助長するだけであり、これについても反対でございます。  また、薬価改定を実施する際には正確な銘柄別市場実勢価格の把握が不可欠であります。 したがいまして、少なくとも未妥結・仮納入や総価取引などの解消が保障されていない状 況におきまして、薬価調査の頻度を引き上げるべきでないと考えます。  薬価改定頻度の引き上げは、新薬収載時の算定比較薬の薬価を著しく低下させるだけで なく、新薬の薬価を収載直後からさらに急速に下落させる可能性もあり、企業サイドとし ては新薬上市意欲を著しく損ない、いわゆる「ドラッグ・ラグ」現象の解消に向けた取り 組みの妨げとなるおそれがあります。このことは、日本国民の世界的に有用な新薬へのア クセスをより一層遅延させ、ひいては国民医療の向上を阻害することにつながりかねない と危惧いたしております。  さらに、評価が確立した古い有用な医薬品の薬価水準をただいたずらに著しく低下させ ることにより、その供給が困難となる事態の発生等も危惧いたしております。  以上の理由により、薬価改定頻度の引き上げにつきましては、断固反対でございます。  この10年間を振り返ってみまして、新薬の薬価算定につきましては、前進はいたして おります。しかし、いまだ十分なものとは言えず、特に既収載品につきましては薬価が上 がる仕組みがない現行薬価基準制度の下で、財政事情によりまして、特例引き下げや、さ らにその深掘り、こういうことが強行されてきました。そして、診療報酬改定、これにつ きましては、14年、16年、18年と、3回連続ゼロ以下で実施された中で、購入サイ ドのバイイングパワーの増大や不十分な環境整備の下で後発品使用促進が推進されてくる など、研究開発型製薬企業または医薬品産業全体にとって大変厳しい10年であったと認 識いたしております。世界に冠たる国民皆保険制度にふさわしい薬価基準制度の在り方と いう本質的な議論が不十分なままで、その時々の事情によって薬価基準制度を見直すこと は、長期的視点に立ちまして、現行制度の中で企業努力も限界に達しており、製薬企業に とっては全く理解できるものではなく、また制度をゆがめることにつながるため、強く反 対をしているところでございます。薬価改定頻度の引き上げも同様の理由ということで、 上段申し述べましたが、以上のことをポイントといたしまして、日本製薬団体連合会の陳 述を終わらせていただきます。  御清聴、ありがとうございました。 ○遠藤部会長  森田会長、ありがとうございました。  引き続きまして、エフピアから、よろしくお願いいたします。 ○大橋意見陳述人  欧州製薬団体連合会会長の大橋でございます。本日、意見陳述の機会を設けていただき ましたことに、改めて感謝の意を表したいと思います。  本題に入ります前に、私どもは、欧州諸国のさまざまな医療保険制度、薬価制度を経験 しております立場から、正確な情報提供と問題提起を行うことにより、日本における薬価 制度改革の検討に貢献できるものと考えております。このような観点に立って、今後とも 薬価制度をめぐる議論に積極的に参画してまいりたいと考えておりますので、どうぞよろ しくお願いいたします。  エフピアは、研究開発型の医薬品企業で構成されており、日本においても、革新的な医 薬品を可能な限り早く開発・提供し、日本国民の健康の増進に寄与することを使命として おります。  このような立場から、昨年12月に当部会において継続審議事項となりました薬価の頻 回改定の問題と、長期収載品についての成分加重平均方式の導入の問題につきましては、 昨年11月30日の当部会における意見陳述、本年6月9日付の厚生労働大臣への意見書、 6月5日の医薬品産業政策の推進に係る懇談会における意見陳述などの機会を通じて、強 く反対する旨の意見を一貫して明確に表明してまいりました。  本日は、このような機会が与えられましたので、改めて私どもの意見を述べさせていた だきます。  それでは初めに、薬価の頻回改定について述べさせていただきます。意見陳述書の1ペ ージの最後の部分をごらんいただきたいと思いますが、私どもは、現行の2年に1度の薬 価改定についても、3つの点で問題があると考えております。  第1に、特許期間中・再審査期間中の製品や、補正加算を受けた価値の高い製品なども 薬価改定の対象としていること。  第2に、薬価が市場価格形成の上限として機能するため、メーカーの責任範囲を超えた ところで薬価がスパイラル的に下がり続けるという結果を生じていること。  第3に、長期収載品の特例追加引き下げ、市場拡大再算定などの、銘柄別市場実勢価格 主義を逸脱した取り扱いが行われていることであります。  このように、現在でも問題のある薬価改定ルールを前提に、より頻回に薬価の引き下げ を実施することは、3つの点で問題があると考えます。  第1の、そして最大の問題は、頻回改定が医薬品産業の競争力を損なうという問題です。 頻回改定は、医薬品企業の財務体質を急速に悪化させることが明白であり、新薬の治験や 承認審査等の遅延の問題と相まって、日本の市場としての魅力度、競争力を阻害すること になると憂慮しております。  このことは、研究開発投資の抑制や、より治験環境の整った外国への研究開発投資の移 転等を通じて、日本の医薬品産業基盤への深刻な打撃を意味することになると考えます。 その結果、日本の患者の新薬へのアクセス、あるいは主要なグローバル医薬品へのアクセ スをさらに悪化させ、患者の利益を損なうという、政府の意図に反する極めて遺憾な結果 を引き起こすものと思われます。  日本オリジンの有用な医薬品でさえ、日本の患者へのアクセスが海外の患者に遅れをと っているというケースなど、最近とみにいわゆる「ドラッグ・ラグ」が大きな問題として 議論をされておりますが、薬価の頻回改定、これはこの傾向をさらに助長させるものと懸 念をいたしております。  第2は、生産・流通・営業の現場での混乱という問題です。現行の2年に1度の薬価改 定においても、医療機関の極端な買い控えに端を発する、卸を含む医薬品企業の煩瑣な在 庫調整・生産調整、銘柄別価格政策の変更とその後の価格交渉等、数カ月にわたる混乱が 生じております。このような混乱が毎年繰り返されることは、コスト面からも、また本来 業務の観点からも、私どもはぜひ避けたいと考えます。  第3は、市場価格の形成にかかわる問題です。医薬品の市場価格の形成には、薬価改定 後においてある程度の期間が必要であります。また、現在の医薬品流通市場は、未妥結・ 仮納入、いわゆる総価山買いという不適切な医薬品の取引慣行のため、銘柄別の市場実勢 価格が反映されていないという点で不完全であります。頻回改定の議論に当たっては、薬 価改定及び薬価調査の頻度を上げることによりもたらされる結果と、それに伴う手間暇、 経済的な負担の増加等について十分な考慮がなされるべきものと考えます。  以上のことから、薬価改定の前提となります薬価本調査の本年度実施に反対するととも に、薬価改定の頻度は2年に1回が現行制度の下では実態に即していることから、その維 持を求めます。  ここで、薬価改定についての議論の進め方について一言申し上げたいと存じます。薬価 基準制度については、これまで銘柄別市場実勢価格主義を基本的ルールとして改定が行わ れてきました。一方、長期収載品の取り扱い等、このルールから逸脱した改定が財政主導 で行われてきたことも事実であります。  このたび国会において、医療制度改革法案が成立し、中長期的、計画的な医療費適正化 の枠組みが整備されました。また、未妥結・仮納入等の不適切な取引慣行については、い わゆる流改懇において新たな体制の下での議論が開始されました。  加えて、今般閣議決定されました骨太方針においては、経済成長戦略と財政健全化は車 の両輪と位置づけられており、医薬品産業の国際競争力の強化も盛り込まれております。  このような重要な動きを踏まえ、今後は、短期的な医療保険財政を理由に基本的ルール から逸脱し、競争力強化を阻害することとなる薬価改定は行わないことを明確にしていた だくことがすべての議論の出発点であると考えております。  次に、成分加重平均方式の導入について述べさせていただきます。いわゆる長期収載品 の成分加重平均方式による薬価改定の導入については、銘柄別市場実勢価格主義を逸脱し たものであり、強く反対いたします。  長期収載品の成分加重平均方式による薬価改定は、特例追加引き下げ同様、後発品の普 及が遅れている現状の中での保険財政上の代償措置であると理解しております。今般閣議 決定された骨太方針では、後発医薬品市場の育成を図る方針が明確に打ち出されました。 また、4月の新処方せん様式の導入によりマーケットに変化があらわれており、後発品普 及への期待が高まっております。このようなことから、他の施策を講じる前に後発品の普 及促進のための政策が及ぼす影響を見極めることが重要と考えます。  最後に、薬価基準制度全体について述べさせていただきます。新薬の薬価について、今 般補正加算要件の拡大と加算率の引き上げ等が行われたことは私どもも評価をしておりま す。しかしながら、研究開発型企業が今後も継続的にイノベーティブな新薬を提供してい くためには、昨年7月に当部会においてエフピアとして提案いたしました薬価届出制を含 め、新たな薬価制度について早急に議論を開始し、結論を得ることが必要と考えます。  また、医療保険財政問題は長期的な問題であり、短期的・断片的に解消できる問題では ありません。そのため、薬価だけではなく、たばこ増税など、医療保険財政に関するさま ざまな問題についても関係者が包括的に議論できる場を持てるよう提案をいたします。  以上、エフピアを代表して、薬価の頻回改定、成分加重平均方式導入に重ねて反対をす るとともに、今後の薬価基準制度について包括的な議論を開始し、結論を得る必要がある という意見を述べさせていただきました。どうもありがとうございました。 ○遠藤部会長  大橋会長、ありがとうございました。  それでは続きまして、ファルマからお願いしたいと思います。よろしくお願いします。 ○クレンショー意見陳述人  おはようございます。クレンショーと申します。今日は、11社を代表いたしましてこ こでお話しできますことを非常にうれしく思っております。そしてまた、私たちのコメン トを中医協の前でお話しできますことを非常に光栄に思っております。  私どもの意見を申し述べたいと思います。まず、一般的なコメントを申し上げたいと思 います。日本の薬価制度におけます基本的な考え方、次に、その頻度につきまして、それ から私どもの考え方、それから長期収載品の恣意的な価格低減について申し上げたいと思 います。また、このプレゼンテーションの資料の後ろのところにいろいろテーブルがつい ておりますので、それについても申し上げたいと思います。  日本の現行の薬価制度には根本的な欠陥がありまして、優れた医薬品の価値が十分に薬 価に反映される仕組みとはなっていません。このような欠陥が改善されない限り、医薬品 供給の安定性や新薬への患者のアクセスは将来にわたって悪化し続けると考えています。  例えば、2年に1回の薬価改定は、類似薬効比較方式との組み合わせにより、日本の薬 価水準を急速かつスパイラル的に下落させてきました。これはスライド9に示すとおりで あります。日本のサイズの経済におきましては、現行の制度が維持される限り、そしてま た、ポーランドあるいはギリシャよりも価格が低いというのは、日本のような  ではな かなか信じられない状況であります。現行の制度が維持される限り、米国、EU諸国など、 海外との価格差は拡大し続け、ひいては国内の安定的な医薬品供給や患者の新薬へのアク セスを害することになります。  現在の市場では、必ずしも医薬品の価値を反映した市場価格が形成されていないと考え ております。また、この2%の調整幅の中では、総価格取引が拡大する中で、ほとんどの 競争相手がない優れた医薬品であっても薬価改定を避けられません。このような実態は、 市場価格を適切に薬価に反映するのが基本とされていることに反するものであると考えて おります。  医薬品の価値が市場価格に反映され、競争力のある医薬品の薬価が一定程度維持される 仕組みが必要であると考えております。これはパテントがある限り必要であると考えてお ります。  この医療費適正化の対策の一環として、長期収載品引き下げ、後発品使用促進策が今年 の4月に実施されたばかりであります。ファルマは、医療費適正化の必要性については十 分認識しており、日本政府に協力してこの問題解決に当たる用意はできております。しか し、今後数年間にわたり、一貫性のない薬価の引き下げが繰り返し行われることを大変懸 念しております。  場当たり的な制度変更が断続的に行われる見通しの悪い政策環境の下では、医薬品メー カーは積極的な投資を行うことができず、日本の医薬品産業に致命的な影響を及ぼしかね ません。  長期的な視点を欠いた財政重視の政策のために、日本の医薬品産業は既に空洞化しつつ あります。日本政府はこの点を重く受けとめるべきであります。これはスライド10に示 すとおりであります。ここでわかりますように、治験、日本の会社が始めるものは、特に 海外に移行しつつあるというのも現状であります。安定的な医薬品供給や患者の新薬への アクセスを害することのないよう、将来にわたって持続可能な薬価制度の構築に向けた包 括的な検討が必要であります。  次の2点は、持続的な薬価制度を構築するために不可欠な要素であります。まず第1番 目に、外国価格との価格差のさらなる拡大を防止しなければなりません。また、私どもは 既存の価格差を少なくするべきだと考えております。医薬品の価値に結びつく薬価制度の 実現が必要であります。  そして最後に3番目、公正な市場競争の中で、後発品が広く使用されるということが必 要であります。  では、4ページに移ります。現行の欠陥のある薬価制度の下で薬価改定の頻度を高める と、薬価の急速な下落、先進諸国との価格差の急速な拡大により、安定的な医薬品供給や 患者の新薬へのアクセスに壊滅的な影響をもたらすことは、次に挙げるような点から容易 に予想されます。  現行制度では、不採算の医薬品ですら薬価改定によって引き下げられます。不採算品再 算定により薬価を引き上げられた医薬品であっても、60〜80%はその後の薬価改定に よって薬価が引き下げられております。これはスライド11に示すとおりであります。こ れによりますと、ほとんどの薬剤は、この薬価改定を避けることができない。これは現行 制度に欠陥があるからです。  この2年に1回の薬価改定により、薬価は特許期間中に20〜30%下落します。薬価 改定が毎年実施されると40〜50%までに拡大する可能性があります。  発売直後からの急速な薬価の下落は、重要な効能を追加するための開発を困難なものと し、ひいては患者のアクセスを悪化させます。  日本の価格の水準は、1995年時点は主要欧米諸国の94%でありましたが、これは スライド12に示すとおりです、この2年に1回の薬価改定によります収載品品目の薬価 の下落並びにそれらの下落した類似薬の薬価に基づいて算定される新薬の薬価水準の下落 により、日本の薬価水準は過去10年間で欧米の50%まで低下いたしました。毎年改定 はこのような主要先進諸国との価格差の拡大を加速するものであります。  現時点でも、多くの薬効領域におきまして日本の価格水準は主要欧米諸国の水準を大幅 に下回っております。スライド13です。このような領域では、例えばCNS、糖尿病あ るいは心臓疾患などにおきましては、このような状況が起こるということは、日本の患者 に大きな影響を与えます。このような領域におきましては、毎年改定による急速な価格下 落は、医薬品の安定供給及び患者の新薬へのアクセスに致命的な影響をもたらします。  5ページに移ります。未妥結・仮納入といった不適切な取引慣行を改善しないまま頻回 に薬価改定を実施すると、市場に深刻な混乱をもたらすことが予想されます。さらに、不 適切な取引慣行を増加させることも懸念されます。  卸連調査(2002年度)によりますと、薬価改定後6カ月以内に妥結に至らなかった 割合(売上高ベース)は、200床以上の病院では73%、調剤薬局チェーンで52%に 上ります。通知によります2006年におきまして、このネゴシエーションはこの薬局及 び調剤では始まったばかりであります。もし毎年改定に移りますと、市場にさらなる混乱 をもたらすことになると考えます。  妥結率がこのように低い中で薬価調査を実施しても、信頼に足り得る情報を得ることは できず、このような情報に基づく市場価格の推計は、確実性、正確性の点で受け入れられ ません。  さらに、毎年改定への移行は、薬価調査前の妥結を避けるインセンティブを生じさせる 可能性があり、未妥結・仮納入の期間が長期化するという予期せぬ結果をもたらすことが 懸念されます。  6ページに移ります。それでは、薬価改定の頻度について最終的なコメントを申し上げ ます。日本政府は、後発品の安定的な供給と品質の向上を図る方針を打ち出しており、こ の政策目標を達成するために、近年数々の政策を打ち出しております。ファルマはこのよ うな目的をサポートいたします。  しかしながら、薬価の毎年改定は、これらの後発品促進政策の効果を打ち消す危険性を はらんでいると考えます。後発品メーカーにとって、たび重なる薬価改定を乗り越え、長 期にわたって供給し続けることは困難であり、2年に1回の薬価改定は後発品市場の安定 性を害する主な要因の一つであったと言えます。  現行のシステムの中では、後発品の主たる競争力の源泉は相対的に低い価格であるため、 薬価の毎年改定が実施される後発品市場は一層不安定なものとなり、安定供給や品質の向 上を図ることは困難になります。  それでは、最後のスライドですが、7ページに移ります。後発品のある先発品の恣意的 な薬価引き下げについてのコメントです。ファルマは、研究開発投資を促進し、より安全 で有効性の高い新薬に対する患者のアクセスを改善するためには、新薬に対して価値に基 づく薬価がこの特許期間を通じて維持されるとともに、後発品の使用が促進されることが 必要であると考えております。  しかし、後発品の参入によって、特許切れ医薬品の価格の適正化は、原則的に公正な市 場競争によって行われるべきであり、恣意的な薬価引き下げによって行われるべきではな いと考えております。  恣意的な薬価制度はインセンティブをゆがめ、研究開発型の製薬産業、後発品産業とも に将来の成長を阻害すると考えております。  ファルマは、ここでコメントさせていただきました機会を感謝しております。そしてま た、常にこの価格に関しまして、そしてその政策、これからの18カ月、皆様方とのコミ ュニケーションを続けていきたいと考えております。ありがとうございました。 ○遠藤部会長  それでは、ただいま3団体から御意見を伺ったわけでありますけれども、それにつきま して御質問あるいは御意見があればいただきたいと思います。20分程度の時間をとって おりますので、その間、意見交換ができればと思います。  なお、時間が限られておりますので、大変恐縮ではございますけれども、お一人の発言、 長くても2〜3分にまとめていただければと存じます。また、御発言の冒頭で、御質問な のか御意見なのかをおっしゃっていただいて、御質問であれば、どの団体に対する御質問 なのかをおっしゃっていただきたいと思います。また、各団体の方からの御発言につきま しても、各団体で原則お一人の方にお願いしたいと思います。また、発言時間は2〜3分 以内にまとめていただければと存じます。  それでは、御意見、御質問ございます方はいらっしゃいますでしょうか。 ○対馬委員  製薬団体連合会の森田会長に1点の質問と、それからクレンショー委員長に1点質問さ せていただきたいと思います。  日薬連の方ですけれども、3ページの丸の3つ目のところです。この未妥結・仮納入、 総価取引等、このあたりについては、いずれ卸の方の話も聞く場があるようですけれども、 日薬連としても、この問題は卸の問題ですということではないように思うのですけれども、 このあたりについてどういった方策が望ましいのか、ないしはそれに対してどういった御 努力なりをされているのかということを伺いたいということでございます。 ○遠藤部会長  では、お願いいたします。 ○森田意見陳述人  御回答させていただきます。  当然我々は流通について一定の責任があると認識をいたしております。したがいまして、 卸の問題というふうには切って捨てるつもりもございません。とにかく銘柄別収載の下に おいて、適正な価格が時々認識できるお取引をユーザーさんと卸さんの間できちんと締結 していただきたいと、こういう認識でございます。  また一方、特に総価買いにつきましては、すべての製品が価値と無関係にその取引状態 という実態において価格が決まるということについては、銘柄別薬価収載において非常に 不適切な流通慣行だと思いますので、これにつきましては、今御指導いただいていますよ うに、きちんと徹底して決着をつけていくことはやぶさかではございませんし、そういう ことに対して我々ができることにつきましては、別途当然十分議論に参画する用意もござ います。 ○遠藤部会長  ありがとうございます。  対馬委員、よろしゅうございますか。 ○対馬委員  はい。 ○遠藤部会長  では、もう1つの質問。 ○対馬委員  クレンショー委員長の方に伺いたいのですけれども、9ページでしょうか、日本の薬価 が大変低いのだというお話がありまして、その根拠としてのデータをお出しいただいてい るわけですけれども、この日本のデータというのは、これはどうなのでしょうか、いわゆ る我々の言う薬価基準での価格なのか、それとも実勢価格なのかということと、あと米国 のもとの数字ですけれども、これについても実勢価格なのか、それともこれはレッドブッ クというのでしょうか、リストプライスというのでしょうか、そういったことがベースに なっているのか、この点をお伺いしたいというふうに思います。 ○遠藤部会長  ファルマ、お答えください。 ○クレンショー意見陳述人  ここでの価格、9ページに出ておりますのは、これは商務省が出したデータでありまし て、OECD諸国の数字で、米国の価格はエックスマニファクチャーでありますので、レ ッドブックのベースではありません。また、その他の諸国でも同じであると考えておりま す。 ○対馬委員  それと、アメリカでもいろいろな問題はあると思うのですけれども、例えば米国の薬価 というのは確かに高いのですけれども、国民にとっては、その結果、例えばカナダの方に 行って購入するといったような、いろいろな問題がおありかというふうに思いますので、 価格が高いことがいいと、こういうふうに判断されているのか、それとも今申し上げたよ うなことを含めていろいろな問題点もある中でこういった実態にあると、こういうことな のか、その点をお伺いしたいと思います。 ○クレンショー意見陳述人  これはファルマのバリュー・ベースド・プライシング、価値をベースとした価格がいい と考えております。高い方がよいというようなことでは必ずしもありません。もちろん低 い方がよいということでも必ずしもありません。これは臨床的なエビデンス、また、この ヘルスエコノミックスの観点からどのようなベネフィットがあるのかということをベース として価格を決めるべきであると考えております。そしてまた、価格の安定性というのは、 特にパテントの期間では維持されるべきだと思います。これは、12年間でこの10億ド ルをかけて新薬を出すということを考えれば妥当であると考えております。その投資を回 収するためにも必要であると考えております。ですから、必ずしも高ければよいとは言っ ておりませんけれども、しかしながら、価値をベースとしたおのおのの銘柄別に競争力で あるとかR&Dの投資、そしてまた患者さんに対してのアクセスをより最大限にするため に、価値をベースとした価格を考えるべきだと申し上げているのであります。 ○遠藤部会長  対馬委員、よろしゅうございますか。 ○対馬委員  はい。 ○遠藤部会長  ほかに御意見。 ○鈴木委員  2点、日本製薬団体連合会に伺いたいと思いますけれども、2ページのところになりま しょうか、まず、原価計算方式でなく新たな方式の導入というような提言がありますけれ ども、具体的には何かこういう有用性・新規性・医療上の必要性なども評価できるような 方式というのをお考えなのかどうかというのが1点でございます。  それからもう1つは、後発品に関してでございますけれども、まず、「後発品のある先 発品」という、なぜその両者が混在するのかちょっとわからないようなところもあります けれども、ということは、後発品の品質に問題があるから先発品が存在しなければならな いのか、あるいは先発品のパテントが切れても、利益を上げ続けるためにその両者が存在 するのか、その辺がよくわかりませんので、よい薬を安く提供というのは、もうどなたも 賛成しておられるところなので、ある程度の引き下げは仕方がないような気がしますが、 いかがでしょうか。 ○森田意見陳述人  お答えいたします。  まず最初の原価計算の部分でございますけれども、1つは、先端技術に対する適正な評 価ということと、それから医療経済の中におきまして、医療全体の中でどういう価値があ るかという考え方を導入することが1つ。それからもう1つは、知的財産という局面の中 で、特許がある間に投資回収といいますか、企業でございますから、そういう観点からも 単純な原価計算、今までの原価計算の仕組みという部分だけでは御し切れない部分がござ いますので、そういう観点からの原価計算の在り方というものを少し広義にとって議論を していただければと、こんなふうに思っております。  2番目の部分でございますが、先発品と後発品の考え方でございますけれども、この辺、 ちょっと誤解のないようにしていただきたいのは、新薬がいわゆる先発品として上市いた しまして、それから長期収載になり、特許が切れて後発品が出るという仕組みでございま す。したがいまして、先発品・後発品という考え方が新しいかどうかということは、一定 のルールの中で、先に出たものが先発品で、後発品は基本的に後から出てくるのだと。質 がいいとか悪いとかという問題は、それはもう別の議論でございまして、やはり安定供給、 品質、そして情報提供、こういうものは当然でございます。そういうことに対して非常に いい仕組みがこの数年の議論によりましてこの4月から発足いたしておりますから、医療 の現場におきましても、私はよい定着をしていただきたいなと、こんなふうに念じている ところでございます。それから、国民の理解を得ることも重要だということでございます。  一方、先発品がなぜあるかと言われましても、これは先発品があるから後発品があると いう議論もあったかと思いますけれども、やはりこれは、それがいいと思って使っていた だける方、そしてそれはその価値に見合った形で継続して情報収集、そして情報提供と、 有効性・安全性につきましても、また、古くなってもまた効追という仕組みもございます から、そういう中で製薬企業としては先発メーカーの責任として、必要なものについては 続けているのが現状でございます。 ○遠藤部会長  ありがとうございます。  鈴木委員、よろしいでしょうか。 ○鈴木委員  何か米国のお話と後発品に対する位置づけというのは、日本とまた大分違っているよう な印象がいたしましたので、その辺は、やはり後発品の品質の向上というのは、日本にお いても心がけていただきたいと思っております。 ○森田意見陳述人  ありがとうございます。個別メーカー、そして団体としても、その辺につきましては行 政の御指導もございますし、またルールも明確になってきておりますから、全包装・容量 をそろえるとか、そういう中でも今努力しているところでございまして、必ずや日本の医 療の中で効率性を持って定着してくると、こういうふうに私は思っております。 ○遠藤部会長  ありがとうございます。 ○丸山委員  3者の方、どなたでも結構ですし、あるいは3者それぞれにお答えいただいても結構で すが、1つだけ心配な点がありますので、質問させていただきます。  患者本人あるいは健康保険組合等々、薬のお金を払う立場の者は、実勢価格で払ってい るわけではなくて、薬価基準の価格でお支払いしなければいけない立場なのです。だから、 支払う立場としては、それよりも低い実勢価格があるならば、極力それにしてほしいと願 うのは、これは、自然な願いであると思うのです。そこで、仮に改定頻度を上げていった 場合に、経営上の問題等々を、やや抽象的ではありますが、御説明いただいたのですが、 企業としてはそれを乗り越えなければいけないということになったときに、医薬品という 非常に特殊な、普通の工業製品と違いますから、特殊な特性を持っているものとして、患 者は今度はお金は安くなっても何か別の問題が出てくるのかどうか。それを乗り越えるた めの対応策上で、製薬業界で非常に苦労される問題点があるのかどうか。その辺の御説明 がちょっとなかったように思うのでお伺いしたいと思うのですが。 ○遠藤部会長  どちらがよろしいですか、丸山委員。それぞれの団体からお聞きしますか。 ○丸山委員  では、まず日本を代表して。 ○遠藤部会長  では、日薬連の森田会長、お願いいたします。 ○森田意見陳述人  お答えいたします。  2つ理由があったかと思います。患者様がお支払いするときに安い方がいいだろうと。 そして、それは支払側としては、そういうことなのだから安い方がいい。それは当然なこ とで、そういう点で我々は乗り越えるべきところは乗り越え切って、お示しいたしており ますデータのように、10年間ほとんど変わらない絶対額で日本の医療をきちんと支えて きたと、こういう認識でございます。特に総医療費が上がっている率を見ていただきます と、そういう中で薬剤費の絶対金額の伸びというのはほぼゼロに等しいわけで、そういう 点で、我々は10年間ここまで乗り切ってきたと。いよいよこれから少子高齢の中で日本 の医療を支え、そしてやはり新薬に先端技術にアクセスできるよう、日本の国民のための 幸せを願えば、もはやここで研究開発費が枯渇するような薬価基準制度では大変だという ことで声を上げているのが現状でございます。社会保障制度の充実と、それから一方では、 やはり産業の問題といたしまして、日本の産業として製薬企業はこれから世界に打って出 るにも重要な産業という認識をいたしておりまして、そういう両面から考えているところ でございます。  それから、安くなってもいいではないかという議論でございますが、今、薬価が上がる 仕組みというのは、血液製剤とか、本当に特殊な局方品のごく限られたものがメーカー個 別の原価の実態を御説明して、そして当局との折衝の中で上がる仕組みというのはござい ます。そういうものは薬価制度の中にビルトインされております。しかし、一般的に10 年、15年、20年とやっても新薬がなく、なおかつその疾病で苦しんでいる方々に提供 している薬がやはり数多くあるわけでございまして、そういう製品が、ただ今の薬価基準 制度の中ですと、薬価が下がり続けるわけで、最終的には提供もやはり困難になってくる と、こういう現実が、今日は製品名を挙げることは割愛いたしますけれども、そういう実 態もあるということで、これは情報提供、そして収集、そういう局面のコストもかかりま すので、こういう点も勘案した上がる仕組みを検討していただきたいというのが日本製薬 団体連合会としての考え方でございます。 ○遠藤部会長  ありがとうございます。  丸山委員、エフピアあるいはファルマからもお聞きいたしますか。 ○丸山委員  はい。 ○遠藤部会長  では、同じ内容につきましてエフピアから発言いただきたいと思います。 ○大橋意見陳述人  今の森田会長の御意見ですべてがあらわれていると思いますけれども、ちょっと話はず れるかもしれませんけれども、私どもは、やはり全体の制度を考えていかなければ国民に も製薬産業にもすべてにとっていいという形にはならない、そこにはやはり保険財政とい う問題に触れざるを得ないのではないかと、こんなふうに考えます。今後、社会保障費の 抑制というのは議論になることであると思いますけれども、特に医療費についても当然検 討の対象となるというふうに予想しておりますけれども、その際に、製薬産業の代表もそ のステークホルダーになって、全体にとってどうしたら一番いいのかという議論に参加し てしかるべきだと、このように考えております。ちょっと議論はずれるかもしれませんけ れども、全体を見て考えていくことが今から大切なのではないか、このように考えており ます。 ○遠藤部会長  ありがとうございます。  それでは、ファルマからお願いいたします。 ○クレンショー意見陳述人  薬価引き下げの医薬品の質に対する影響ですが、品質という点で、革新的な医薬品に対 するアクセスという点でお答えをしたいと思います。  まず、価格の上昇ということがもしなければ、国内的にも、あるいは外国の研究ベース の企業におきましても、やはり投資をして新薬を日本の患者さんにお届けするということ ができにくくなります。例えば日本の患者さんにとりまして、いろいろな形で文書も残さ れておりますが、それに伴う犠牲、すなわち薬価引き下げが継続して行われることによっ て、ベストな薬を日本の患者さんにできるだけ早く届けようという努力が損なわれている と言えます。特に主要なOECD諸国の中でその傾向があらわれております。また、さら に指したいのが、これは生産性あるいは品質に関しても、患者さんの生命に関して影響を 及ぼします。必ずしもベストな医薬品を入手することができないことによって、それ以外 の手術あるいは入院ということになり、そしてよりよい医療ということにつながっていか ない。  したがって、より広い形で考えるならば、制度として考えるならば、新薬、より早くこ の日本市場に提供していくということが、本来の日本政府の真の目標であるべきだと考え ますし、そして、それらの薬に対して適正な報酬を与え、そしてまた特許の存在中におい て、その適正な投資をできるだけ早く行ってやっていこうというのが筋だと思います。 ○遠藤部会長  丸山委員、よろしいでしょうか。 ○丸山委員  ありがとうございます。 ○遠藤部会長  ほかに御質問、御意見ございますでしょうか。 ○小島委員  各3団体の皆さんに質問をさせていただきます。今回の薬価改定の頻度の問題あるいは 薬価算定基準の問題について御意見をいただきました。その中で問題になっております流 通慣行の問題は、日本特有なのかどうかがあると思いますけれども、未妥結・仮納入、総 価山買いという商慣行の問題、これをまずは是正しろというのが各団体とも一致した御意 見です。厚労省からの通知一本ではなかなか解決できないということだと思います。では、 どういうことをすればこれが解決できるとお考えとか知恵がもしありましたら、お聞かせ いただければと思います。 ○遠藤部会長  ありがとうございます。  具体的な何か案があるかどうかということと思いますけれども、それでは、日薬連から お願いしたいと思います。 ○森田意見陳述人  基本的には、お得意様、病院、開業医あるいは調剤薬局それぞれと卸様の個別契約の問 題でございますから、立ち入ることは非常に難しゅうございますけれども、やはり薬は銘 柄別に薬価基準に収載されているので、一品一品の価値に見合った価格で我々としては御 提供、納入させていただきたいということを、契約上、やはりお取引の前にきっちりする べきだと認識いたしております。特に医療用医薬品というのは、生命関連だから、やむを 得ずずるずる納入するということではなしに、既に診療側と申しますか、やはりそういう 皆さん方もその重要性については十分認識いたしておると思います。そういう点で、きっ ちりお取引の前にお話しをしてお互いに理解を得るということが私は大切ではないかと、 こんなふうに思っております。 ○遠藤部会長  ありがとうございました。  それでは、エフピア、お願いします。 ○大橋意見陳述人  その問題に関しましては、流改懇というのが今存在をしておりまして、このたび私ども も製薬協の中で、エフピアの立場としても代表が中に入って今盛んに議論をやっていると ころだというふうに思いますので、そこに今検討をゆだねて、そこでその後どうしたらい いか、結論を出していったらいいだろうと、このように考えます。 ○遠藤部会長  ありがとうございます。  それでは、ファルマからどうぞ。 ○クレンショー意見陳述人  原則的には、私どもがぜひ、大橋さんが先ほどおっしゃられたように、その委員会にお いて必要なニーズを価格を各銘柄別の価格にすることによって、総価取引ですとか、ある いは未妥結・仮納入といった慣行を打ち破るのに役立つと思います。したがって、企業に おいて、やはり卸とともにパートナーシップを組むことによって、そして卸がその市場の 中で価格を形成していく中で、病院との再交渉は各銘柄別にするということをきちんとす ることによって、タイムリーな形で対応できるようになっていくと思います。 ○遠藤部会長  ありがとうございました。  小島委員、よろしいですか。 ○小島委員  はい。 ○山本委員  ただいまの件ですが、お三方の御意見を伺うと、大きな問題として取引慣行があるとい うお話が論点の中心にあって、それが直らなければ頻回改定については難しかろうという お答えのようですが、私は薬価制度そのものに問題がある、という指摘があることは承知 しておりますが、今の小島委員の御質問に対するお答えを聞くと、それぞれ論点の中心に 取引慣行を置きながら、実はご自分の問題ではないというようなお答えに聞こえるのです。 私は買う側ですが、では一体どこに問題があるのだという、疑問が残っています。確かに 契約の問題というのは重要だと思いますけれども、仕組み全体の問題について議論をしな がら、買う方が悪いと一方的に買う方に責任を押しつけるという姿勢は納得しかねます。 頻回改定については、私は前回も発言しましたように、決して賛成ではございません、む しろ反対であります。皆さんと同じ意見でありますが、その原因がどこにあるかというこ とについて、取引習慣を取り上げて議論をしながら、その解決策について何もおっしゃら ないというのは、これはどういうお立場なのか、お三方にお考えをお聞かせ願いたいので す。 ○遠藤部会長  それは、御意見ではなく質問ということですね。  それでは、今の点につきまして、同じく日薬連からお願いします。 ○森田意見陳述人  お答えいたします。  我々はとにかくお取引とか納入、あるいは宣伝ということにつきましては、メーカーと しての責任がございます。また一方では、取引上の問題として、どういう取引形態がいい かということに対して卸とまたユーザーの方々とのコミュニケーションをとることについ てはやぶさかではございません。ただ、非常にデリケートな問題でございますが、そこに、 価格という問題に入ってくると、非常に個別企業としては、今の流通慣行の中では問題だ というふうに言われておりますので、そういうところから遠ざかったというのがここ十数 年の実態というふうに理解いたしております。  そういう点で、山本委員の御質問にお答えになったかどうか、そこにつきましては、 我々は無責任にほうり出しているというつもりはございませんので、丁寧に、今後とも今 の通知が出ている中で、そういう仕組みは我々もお話をしていきたいと、こんなふうに思 っております。 ○遠藤部会長  ありがとうございます。  それでは、エフピア、お願いします。 ○大橋意見陳述人  私どもも今の山本委員の御質問で、買う側が責任があるとかということではないと思い まして、流通の問題がいろいろ検討する問題が現在存在しているということで流改懇で検 討を加えているというのが現状であるという中で、私どもの頻回改定に関する問題に関し ては、その前に検討をすることが重要なのではないか、現状の制度そのものにいろいろな 問題が包含されているので、もっと包括的にこれから薬価制度を考えていくことが重要な のではないかという観点から述べさせていただきました。 ○遠藤部会長  ありがとうございます。  それでは、ファルマ、お願いいたします。 ○クレンショー意見陳述人  ファルマは、この問題は、バイヤーに問題があるとは考えておりません。ですから、購 買者の方を批判するということは全く考えておりません。この問題は、まず、個々の製品 の価値をベースとして考えるべきだと申し上げているわけでありまして、ということで、 会社の責任として直接その問題に対して答えを出すべきだと思います。すなわち、適切な サポート、この医薬品の価値をサポートしていかなければならない。特に、この現在のシ ステムで、卸とそれから病院あるいは調剤薬局との間で行われている価値の会話の中に私 どもがサポートしていかなければならない。その価値を最もよく知っているのはメーカー でありますので、データを提供し、そしてサポートを提供し、そしてマーケットにおける 価値を維持するための役に立っていかなければならないと思います。より透明なシステム が必要だと考えております。そして、このような価値が個々の銘柄別に実現される、バル クベースではない、総価でなりますと、これは個々のこの銘柄を一緒にしてしまいますの で明確になりません。その他のメーカー、その他のブランドとごっちゃになってしまいま すので、これがよくないと私どもは考えております。 ○遠藤部会長  山本委員、よろしゅうございますか。 ○山本委員  はい。 ○遠藤部会長  ほかにございますか。  よろしいですか。それでは、本日の意見聴取はこのくらいにさせていただきたいと思い ます。  日薬連、エフピア、ファルマの皆様、本当にありがとうございました。  次回は、日本医薬品卸業連合会から意見聴取を行います。引き続いて、薬価改定の頻度 を含めた薬価算定基準の在り方について議論をしていきたいと思います。よろしくお願い いたします。  それでは、本日の薬価専門部会はこれにて閉会したいと思います。  次回の日程につきましては、追って事務局より連絡いたしますので、よろしくお願いい たします。  引き続き診療報酬基本問題小委員会が開催されますので、準備が整うまでの間、しばら くお待ちください。                【照会先】                 厚生労働省保険局医療課企画法令第2係                 代表 03−5253−1111(内線3276)