06/07/21 薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会 平成18年7月21日議事録 薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会 議事録 1.日時及び場所   平成18年7月21日(金)  10:30〜 厚生労働省専用第21会議室 2.出席委員(15名)五十音順    飯 沼 雅 朗、◎池 田 康 夫、 上 原 至 雅、 折 笠 秀 樹、     岡   慎 一、 守 殿 貞 夫、 神 谷   齊、 川 嵜 敏 祐、     後 藤   元、 土 屋 文 人、 早 川 堯 夫、○堀 内 龍 也、     三 瀬 勝 利、 山 口 一 成、 吉 田 茂 昭  (注)◎部会長 ○部会長代理  他 参考人2名    欠席委員(1名)   溝 口 昌 子 3.行政機関出席者 川 原   章(審査管理課長)、   豊 島   聰(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長)、   浦 山 隆 雄(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役)、   牧 野 ゆり子(独立行政法人医薬品医療機器総合機構新薬審査第三部長)、   田 中 克 平(独立行政法人医薬品医療機器総合機構生物系審査部長) 他 4.備  考   本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。 ○審査管理課長 定刻を過ぎましたので、薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会を開催 させていただきます。  本日は、お忙しい中お集まりいただきましてありがとうございます。当部会委員数16 名のうち、堀内委員が遅れておられますが、15名の委員の御出席を頂いておりますので、 定足数に達しておりますことを御報告いたします。欠席は溝口委員でございます。審議 官も少し遅れてまいります。  それでは、池田先生、以後の進行をよろしくお願いいたします。 ○池田部会長 おはようございます。先生方にはお忙しいところお集まりいただきまし てありがとうございます。それでは、まず、事務局から配付資料の確認と資料作成に関 与された委員の報告をお願いします。 ○事務局 資料の確認をさせていただきます。お手元に議事次第、座席表、当部会委員 の名簿を配らせていただいております。その議事次第にございます資料1〜7はあらか じめお送りさせていただいた資料でございます。本日の配付資料といたしまして、資料 2-2「ニューモバックスNP」、資料3-1'「生物学的製剤基準の一部改正について」は 差し替え版でございます。資料7-2「優先審査品目指定の審査結果について」は追加の 資料でございます。資料8「優先対面助言品目の指定について」、資料9「審議品目の 薬事分科会における取扱い等の(案)」、資料10「専門委員のリスト」を配布させていた だいております。  関与委員の御報告でございます。平成13年1月23日の薬事分科会申合せに基づきま す、資料作成に関係された委員の確認でございますが、審議事項の議題1「注射用アナ クトC」につきまては池田部会長が関与されておりますので、池田先生におかれまして は、本品目の審議の間は別室で御待機いただきたいと思います。このため、議題1につ きましては、堀内部会長代理に議事進行をお願いいたします。  また、本日、議題1「注射用アナクトC」における参考人といたしまして、奈良医科 大学小児科助教授の嶋緑倫先生、議題2「ニューモバックスNP」における参考人とい たしまして、国立感染症研究所細菌第一部第三室長の和田昭仁先生にお越しいただいて おりますので、御紹介申し上げます。  議題1の嶋先生でございますが、11時前に御到着いただく予定でございますので、恐 縮でございますが、本日は議題の順番を入れ替えていただきまして、議題2から先に御 審議いただければと思います。よろしくお願いいたします。 ○池田部会長 ありがとうございました。先生方、資料はおそろいでしょうか。本日は、 審議事項が3議題、報告事項が5議題でございます。事務局から話がございましたよう に、議題2から始めさせていただきます。ニューモバックスNPの輸入承認の可否等に ついて、機構から審査の概要を説明してください。 ○機構 議題2、資料2、ニューモバックスNPの輸入承認の可否等について、医薬品 医療機器総合機構より説明させていただきます。  本剤は、23種類の肺炎球菌莢膜血清型ポリサッカライドを有効成分とするワクチン で、申請者が既に、高齢者や脾臓摘出患者等における肺炎球菌による感染症の予防の効 能・効果で承認を取得しております「ニューモバックス」の製造方法、規格及び試験方 法を大幅に変更したものでございます。  製造方法の主な変更点としましては、23種類の血清型の肺炎球菌すべてについて新し いマスターシードを調製するとともに、ウシ等の動物由来原料をほとんど使用しない培 養方法に変更したこと、精製方法を、有機溶媒による分画を主体として各莢膜血清型ご とに異なる条件で精製されていたものを、凝集沈殿、セルロースフィルターによるろ過 及び有機溶媒による分画を組み合わせた23種類の莢膜血清型共通の精製方法に変更し たこと、また、規格試験につきましても従来の生化学的な分析手法からNMR等の分析 手法を用いる等、大きく変更しております。  申請区分でございますが、マスターシードの変更を行っていることから、新有効成分 含有医薬品1-(1)として取り扱われております。  本剤の専門協議に御参加下さいました専門委員は、本部会委員の後藤先生、本日お越 しいただいております参考委員の和田先生を始め、資料10にお示ししております8名の 委員でございます。  次に審査の概略について御説明させていただきます。まず品質についてですが、製造 工程については、提出された申請資料及び回答からは、微生物汚染の管理を含め、製造 工程全体の管理状況を確認したいところがございますが、平成17年4月に施行された改 正薬事法に基づき8月後半に米国メルク社の工場にGMPの実地調査が予定されており ますので、その調査において大きな問題がないことを併せて確認しておけばと考えてお ります。  規格及び試験方法でございますが、原薬のエンドトキシン含量、O-アセチル含量、平 均分子量、製剤の実容量試験等の規格値につきまして、実測値に基づいて適切に修正い たしました。しかし、一部の血清型につきましては、今後の製造実績に基づいて見直す という条件を付けております。  また、本薬につきましては、動物を用いた力価試験が設定されておりませんので、有 効性の重要な指標となる規格項目として平均分子量が設定されております。しかしなが ら、試験方法の妥当性が十分示されていないことから、機構は、さらにこれを確認する 必要があると考えております。  製剤の規格及び試験方法については、規格値設定の根拠となる新製法製剤の実測値の 一部が提出されておりませんでしたので、現在、取得している途中でございます。これ は7月末に提出される予定となっております。  製剤の有効期間に関してですが、当初、2年として申請されておりましたが、長期安 定性試験の試験項目が不十分であり、2年の時点で有効成分が分解する可能性が示唆さ れていることから、暫定的に有効期間を1年と変更することにいたしております。  現行ニューモバックスと本剤の品質の比較も行われております。有効性・安全性に影 響を及ぼす可能性が否定できない違いとしては、有効性の指標である平均分子量に違い があるほか、本剤では不純物であるC-ポリサッカライド含量が現行ニューモバックスよ り増加しております。  また、国立感染症研究所において実施されました特別審査において、本剤による異常 毒性否定試験における体重減少は現行ニューモバックスより大きいという違いが見られ ております。しかしながら、同程度の体重減少で検定不合格となりました現行ニューモ バックスにおいて見られております血液学的・病理学的な異常所見は、新製剤では観察 されておりませんので、現行ニューモバックスと本剤とは反応性が異なるものと考えて おります。  臨床試験につきましては、本剤と現行ニューモバックスによる血中抗体価上昇につい て、20歳〜40歳の健康成人を対象として1群65例による二重盲検比較試験が実施され ております。この結果、23種類のうち4種類の血清型において抗体反応率の差の90%信 頼区間が0を下回っていたものの、新旧製剤の血中抗体価上昇はおおむね同程度であり、 抗原性という観点からは新旧製剤は同等であると判断しております。  しかしながら、肺炎球菌ワクチンの予防効果発現には、抗体価のみならず、補体活性 化や貪食能の増強も必要であり、血中抗体価と感染予防効果との関係は現在でも明確に されていないこと、これにつきましては、感染予防を確実に行うとされる血中抗体価等 も国際的にも明らかにされていないという事情がございます。  安全性につきましては、臨床試験において、本剤と現行ニューモバックスとで大きな 違いは観察されませんでしたが、海外で新製剤への切替えが行われた2004年以降、出荷 数当たりの有害事象報告数が増加していることから、現行ニューモバックスと比べて安 全性プロファイルが異なる可能性は否定できません。  以上のように、本剤の品質の妥当性は十分確認されておらず、本剤と現行ニューモバ ックスの品質に違いが見られていること、臨床試験成績からは、本剤と現行ニューモバ ックスの臨床的同等性が十二分には確認されていないこと、出荷数当たりの有害事象報 告数の増加から安全性プロファイルが異なる可能性があることに加え、近年、肺炎球菌 ワクチンの有効性に疑問を呈する論文報告が相次いでおります。  このように、現時点までの機構における審査の結果、本剤の品質・有効性・安全性は 十分には確認されているとは言えない状況ではございますが、本剤の接種により免疫の 賦活化が期待できること、近年の薬剤耐性肺炎球菌の増加によって今後ますます感染予 防の重要性が増加していくことが予想されること、他に本剤と同様の効能・効果を有す る予防薬がないこと、今年の秋に現行ワクチンの供給が終了することから、社会的必要 性にかんがみて、次の三つの事項に適切な対応がなされれば本剤を承認することは可能 であると機構は判断いたしました。  一つ目は、追加提出予定の品質に関する情報、及びGMP実地調査において本剤の製 造工程及び品質に大きな問題がないことが確認されることが必要と考えております。  二つ目は、本剤の有効性に関する疑問を呈する論文報告が相次いでいることもありま して、本剤の有効性に関する最近の文献報告等について、客観的な情報を適切に臨床現 場に提供する必要があると考えております。これにつきましては、当日配布資料として お配りさせていただきました資料2-2に、添付文書(案)を示しております。表に付けて おりますのが、機構が現在考えております添付文書(案)でございます。「1.8 添付文書 (案)」のタブの後ろにございますのが、申請者が提出しております添付文書(案)でござ います。  基本的には、これまでに公表されている臨床研究、臨床試験の中からエビデンスレベ ルの高いものを選び、添付文書に記載するよう指示いたしました。これについて、申請 者側の示しますように、六つの臨床試験成績が添付文書に記載されております。  これらの報告を選んだ根拠でございますが、肺炎球菌ポリサッカライドワクチンの有 効性の根拠とされております1970年代の南アフリカの金鉱労働者を対象とした比較試 験の結果とともに、試験デザインの客観性、精密性の観点から南アフリカで行われた試 験と同等以上の質を有すると思われる比較試験の結果を掲載しております。  しかしながら、申請者の提出しました添付文書(案)につきましては、6報のうち3報 は有効性が確認され、残り3報は有効性が確認できなかったという報告でございます。 有効性が確認できなかったとする理由が「考察」として記載されておりますが、これに つきましては、添付文書において客観的な情報提供をするという観点からは、主観的な 考察を載せるのは好ましくないということで、それらを削除したものが機構(案)として 資料2-2の表に示してあります。これらの添付文書(案)について御意見を賜りたく存じ ます。  三つ目は、本剤の有効性を確認する製造販売後調査が迅速かつ適切に実施されること が必要と判断しております。申請者から提出された調査計画が、資料2-2の「1.11 市販 後調査」のタブの後ろに記載されております。基本的にはコホート内ケース・コントロ ール研究でございまして、試験の大枠としては機構も同意をしておりますが、大きな問 題点といたしまして、肺炎球菌による肺炎の診断方法の改善が必要と考えております。  すなわち、申請者は血液培養によって、本剤に含まれる23種類の血清型の肺炎球菌が 検出されたものを主に評価するとしております。探索的に尿中抗原検査等も実施すると しておりますが、機構は、現在の肺炎診断のガイドライン等に則して尿中抗原検査を探 索的に実施するのではなく、主要な検査として基本的に全例において実施するような調 査体制、調査計画にする必要があると考えております。  また、申請者は現行ワクチンと新製法ワクチンが混在する形での調査を実施するとし ておりますが、機構は現行ワクチンではなく新製法ワクチンである本剤について評価す ることが本調査の目的であると考えておりまして、それに則した調査例数、調査実施地 域等を再検討する必要があると考えております。これら三点の事項に適切な対応がなさ れた上であれば、本剤を承認することは可能であると判断しております。  以上、審査の結果、本剤と現行ニューモバックスとでは、臨床的同等性を十分確認で きたとは判断できないことから、販売名をニューモバックスNP、「NP」は「New Process」の略でございますが、販売名をニューモバックスNPに変更した上で、再審査 期間を6年とし、劇薬及び生物由来製品に該当すると判断いたしました。御審議のほど、 よろしくお願いいたします。 ○池田部会長 ありがとうございました。ニューモバックスNP、「New Process」とい うことで、新しい製造方法によって作られたものを肺炎球菌のワクチンとして使いたい ということです。現在使っているものの生産が終了して、秋以降は供給できないという 状況が背景にあるということですが、幾つかの問題点が機構の説明で指摘されたわけで す。まず、和田先生から御意見を頂きたいと思います。よろしくお願いします。 ○和田参考人 感染研では、販売会社から提出されました規格に沿いまして、承認前の 検査を行いました。肺炎球菌ワクチンは、その原材料となる原薬と、それを溶かして小 分けにした二つの製品から成り立ちます。  原薬に関しましては、提出されました9つの規格のうち8つの試験を行いまして、そ のうちの3つが不適と判定されました。これは、主として、彼らが提出した資料の不備 によるものであります。ただ、文面上の不備というよりは、国内の輸入販売会社が自分 たちの規格及び試験方法を十分に理解していないことが原因であります。  小分け製品に関しましては、13の規格のうち12の試験を行いまして、そのうちの1 つで不適と判定されました。これも、輸入販売会社が自分たちの規格及び試験方法を細 かいところまで理解していないことが原因であります。  中で細かいことを申し上げますと、原薬の中に微生物が幾つか見られていたのですが、 芽胞を形成し、アルコールやフェノールに非常に耐性を示す菌が見られました。これは、 製造工程の中で微生物管理が不十分であり、そのようなものが最終的に原薬の中に含ま れてきたものと考えております。  また、製造工程の中でグラム陰性菌に由来すると考えられるエンドトキシンが非常に 高頻度で見付かっておりますが、提出された試験品は共にエンドトキシンがとてもきれ いなものでありました。ただし、輸入販売会社が示しているエンドトキシンの規格は 10EU/mLと、本来彼らが作れるものに対してかなり高めの規格が提出されております。 これは、途中にエンドトキシンを産生するグラム陰性菌の汚染を想定しているものかも しれません。  モルモットの異常毒性否定試験では、2001年〜2004年の旧製法3ロットの2日目の体 重減少率が9%〜11.5%であったのに対し、新製法3ロットによる体重減少率は14.2% 〜15%と、新製法、旧製法間では同一と考えることができないほどの激しい体重減少率 を示しました。ただし、新製法によるものでは病理所見、血液毒性は見られておりませ ん。これが検定不合格となった旧製法のものと大きく違うところです。以上、製造工程 での微生物管理の甘さ、規格の甘さを指摘した特別審査の報告書を提出いたしました。 ○池田部会長 ありがとうございました。和田先生から製造工程について特に検討した 結果を御報告いただいたのですが、それも踏まえて、委員の先生方からニューモバック スNPの輸入承認の可否についての御意見を伺いたいと思います。いかがでしょうか。 飯沼先生、どうぞ。 ○飯沼委員 秋からサプライできないという話でしたが、既存のワクチンをやめた理由 は何ですか。 ○審査管理課長 今まで動物由来、特にウシ由来の原材料を用いていたものを、予防的 な措置と言いますか、製造工程でそういうものをできるだけ使わないものに切り替えて いくという中で行われたと承知しております。  欧米では2004年ごろを中心にこの製剤に切り替わっていまして、日本はまだ切り替わ っていない状況にございます。ただ、審査をしてみるといろいろな問題点はあるという ことでございます。 ○池田部会長 米国、ヨーロッパ等では2004年からこの製品に切り替わって、実際に使 われているそうです。後藤先生、何か御意見を頂けますか。 ○後藤委員 専門協議に出席させていただきまして、専門協議では幾つかの問題点が指 摘されたわけです。最初の問題点として、本薬の有効性をどのように評価するかという ことが問題になりました。提出された資料から考えて、抗体価の上昇に関しては、旧製 法のワクチンと新しいワクチンにそれほど大きな差異はないと考えていいのではないか ということがございますので、抗体価の上昇が有効性とどのように関連してくるかにつ いて議論をさせていただいたわけです。  このワクチンに関しては有効だとする論文、また有効性がないという論文も出ており ますので、その二つについて専門協議で検討したわけです。  一つの大きな問題点は、これまで肺炎球菌性肺炎に関して大規模なサーベイをすると きに、それが本当に肺炎球菌性肺炎であると確定する診断方法が具体的にはほとんどあ りませんでした。グラム染色をして肺炎球菌を見付けるなり、血液培養から肺炎球菌を 見付けるなり、そういう形で肺炎球菌がきちんとすべての症例において検出されている のであれば、そのデータについては非常に信頼性を持ってディスカッションできるであ ろうが、これはすべての肺炎や推定される肺炎球菌による肺炎ということですので、そ こにはかなりのノイズが入ってきているであろうと。ですから、データすべてをこれで いい、悪いと現時点で判断できるほどの材料はないのではないかということがあります。  その中で、血液の中から肺炎球菌が出てきたインベイシブな症例に関しては、肺炎球 菌に起因する疾患と考えていい可能性が高い。そういうものについては、比較的有効で あるというデータが多いという一定の傾向が見られます。ですから、ある程度きちんと したグループにこのワクチンが使われていくのであれば、このワクチンの有効性に関し て必ずしも否定すべきものではないと考えられるのではないかということになります。  いずれにしましても、有効性については今後更に検討していく必要があります。その ときにバックグラウンドとして考えなければいけないのは、多剤耐性の肺炎球菌がかな り増えている中で、ワクチンはどうしても臨床現場で必要になってくる可能性があると いうことが一点。それから、欧米を含め、世界の多くの国で2004年に切り替わって、こ のワクチンが現在使われている。そういう中で、日本も使えるような状況を整備してお くことが医療現場として必要であるということが一点。その二つの条件については勘案 することが必要ではないかという議論がされたと記憶しております。  二番目の問題点として、このデータに関しては、情報伝達として、これが有効であっ たというデータと、無効であったというデータを公平に公表する必要があるということ を議論しました。これに関しましては、協議委員の中で特に異論はなく、そういう形で 進めた方がいいのではないかという結論であったと理解しております。  その有効性を我が国のデータでどのように論証していくかということが三番目の論点 になったわけです。これに関しては、非常に難しい状況にあることは、専門協議に参加 された先生方の共通の認識であったと思うのです。ただ、日本では尿中抗原が保険適用 になって、肺炎球菌性肺炎という非常に診断が難しい疾患について、かなりの精度で特 異性が高く診断できる時代が始まっています。ですから、ノイズが入らないグループに 関するワクチンの有効性が評価できる時代が始まっているということが一つ。  それから、この薬剤に関しては、日本中の幾つかの地区で公費負担が行われています ので、それが始まっている地域が増えてきています。そういう所であれば、このワクチ ンが使用される65歳以上の高齢者のグループを、ある程度まとまった数として、検討で きる対象として確保できる可能性があります。ですから、尿中抗原とその二つを組み合 わせ、ある程度の工夫をすれば、臨床的な有効性の検討も我が国で進められる可能性が あるのではないか。この三つについて議論がされたと理解していただきたいと思います。 ○池田部会長 ありがとうございました。専門協議に参加されたお二人の先生から、一 つは製造工程から品質に関する問題、もう一つは臨床上の有用性について、それぞれ御 議論の経過をお話いただいたのですが、委員の先生方、何か御質問はございますか。神 谷委員、どうぞ。 ○神谷委員 和田先生にお伺いしたいのですが、製造工程における問題点で、最終プロ ダクトで見た場合には、もちろん安全性については問題ないということでいいのですか。 ○和田参考人 最終プロダクトはフェノールを加えた後にフィルトレーションをします ので、それは保証されていると考えております。 ○神谷委員 途中経過では製造上の問題がありますが、製品となればオーケーというこ とですね。 ○和田参考人 そうです。 ○神谷委員 もう一つ、エンドトキシンユニットのことですが、10とおっしゃいました。 WHOが決めている許可の基準は500ぐらいですから、確かに測定値は少し高いかもし れません。例えばDPTに比べれば少し高いとは思いますが、それなら許せない範囲で はないということでいいのでしょうか。 ○和田参考人 10という値は、彼らが出してきた25という値を機構の方で下げていた だいた値です。もともとグラム陽性菌ですから、きちんと工程管理がされれば、理論的 には0。ただ、注射用水は0.25ですから、そこのレベルまでは下げることは可能である と思います。 ○神谷委員 先ほどエンドトキシン濃度は細菌では高いというお話がありました。しか し、私はこのぐらいであったらいいのではないかと思います。  それから、後藤先生がおっしゃったことで、これが肺炎球菌に効くのか、効かないの かというのは今までのワクチンでも分かっていないことだと思うのです。ただ、このワ クチンに入っている菌の血清型で見ますと、日本で流行している菌の80%ぐらいがカバ ーできているということは大体分かっている事実であります。尿中で調べると、それ以 外のものも一緒に調べることになるとは思うのです。尿抗原が100%出るかどうかとい うのは分かりませんが、かなり高い率で分かると思いますので、それを組み合わせなが ら見ていけばいいのではないかと思います。  肺炎球菌は確かに高齢者が一番大事であると思いますが、高齢者でも、65歳になって すぐの方と80歳を超えている人では、調べてみると免疫機能が少し違うのです。個人差 がある問題ですし、人間は雑種ですから、なかなかそこを一律には行けないのです。後 はフェース4スタディでしっかり調べなければ分からないと思います。今までのものが かなり世の中で使われてきている現状では、これを認めて、その後フェース4スタディ で細かいことを見ていく方向でよいと思います。  お年寄りで三重県の内科の先生方が今のワクチンでスタディをやっているのですが、 それで見ると、初めから接種するかしないかの二つにグループを分けてしまうと患者さ んはかなり嫌なのです。やりたい人とやりたくない人をランダマイズするのはなかなか 難しいのです。  このあとの調査にも書いてありましたが、ある程度ケース・コントロール・スタディ のやり方を考えればそこのデータは出てくると思いますので、そういう方向で進めるよ りしょうがないのではないかと私は思います。 ○池田部会長 ありがとうございました。山口先生、どうぞ。 ○山口委員 品質管理の観点から申し上げたいと思います。旧製法で最後に出てきたロ ットが、不合格になっています。今回、新しい肺炎球菌ワクチンが出て検定を行ったと きに、旧製法のものとかなり違いがあった。  前回は血液毒性、例えば白血球が2,000ぐらいまで減少した。今回は全くありません。 それがないのはいいことなのですが、体重減少に関しては前よりも下がっています。体 重減少が何を意味するかは別として、品質管理の立場で言えば、もう少し同じものを出 してきてほしいということです。  品質管理の面では、今回はその条件を余り満たしていない。しかし、これはGMPの 問題だと思います。それについて、査察その他を今度やられるということですので、そ の結果は是非知りたいと思います。 ○池田部会長 ありがとうございました。三瀬先生、どうぞ。 ○三瀬委員 山口先生が言われた問題はあると思いますが、私の意見は後藤先生や神谷 先生の御意見と同じです。特に後藤先生は自分で調査・研究をしておられるので、おっ しゃらなかったと思いますが、毎年、肺炎球菌の薬剤耐性を調べておられて、今、PR SPやPISPというペニシリンが効かない肺炎球菌、これらは他の抗生物質も効かな いのですが、そういうものが我が国では6割も占めているのです。肺炎球菌に抗生物質 が効かなくなっているので、ワクチンを使うやり方で肺炎球菌による肺炎を制御してい かないといけないのではないかと思っています。それが一点です。  もう一つは、添付資料でも少し疑問があるのですが、このワクチンの効果について、 いろいろなところで疑念が出ているのですが、調べられている症例数が余りにも少ない という問題があります。我が国などの先進国では、肺炎で亡くなられる方の半数近くは 肺炎球菌によって死亡していますが、他の菌の感染でも死亡しています。例えば、イン フルエンザ菌、緑膿菌、黄色ブドウ球菌などいろいろな菌が肺炎を起こします。そのた め、症例数をたくさん取らなければならないのに、今までのレポートはせいぜい数万、 場合によっては数千のオーダーで効く、効かないと言っている。効かないと言っている 人も、症例数が少ないことは認めている論文が多いのです。  一番迫力があり、信頼性が高いと思われるものは、カロリンスカ研究所とスウェーデ ンのCDCに当たる所の報告で、26万人の肺炎患者を調べています。その中で、このワ クチンを打った方と打たない方、それからインフルエンザのワクチンも同時に打ったか どうかも比べて、大規模なデータがランセットなどに出ているのです。そこには効果が あるという形で出ているのですが、メルクもメルク萬有も、その論文を申請書に引用し ていないのは残念です。このワクチンは日本人に肺炎を起こす肺炎球菌の大体80%以上 をカバーしているところからも、ここで承認しておく必要があると思っています。 ○池田部会長 ありがとうございました。ただ今、承認について必要であろうという御 意見を頂いたわけですが、そのために、先ほど機構から品質に関する情報、GMP調査 において問題がないことが確認される、有効性に関する文献等を臨床現場に届ける、市 販後調査をきちんと行っていくという条件が付いたようです。その辺も含めて、委員の 先生方から更に御意見を伺いたいのですが、いかがでしょうか。折笠先生、どうぞ。 ○折笠委員 市販後の計画のことです。ネステッド・ケース・コントロールでいいと思 うのですが、資料2-2の市販後調査基本計画書(案)を拝見すると、3,000例を目標にし て、肺炎発症例(ケース)を677例ぐらいと予想されているのです。この677例に達する までどのぐらい掛かるのかなという気がするのです。この研究はいいと思うのですが、 余り症例(ケース)が起こらない状況で、しかも判定を厳しく正確にやるということで、 677例の肺炎発症例(ケース)を見付けるまで時間が掛かりそうです。どのぐらいで結果 が出るのでしょうか。 ○池田部会長 機構で何か。 ○機構 これに関しては申請者から説明がありまして、現在公費負担が行われている市 町村を全部ひっくるめまして、それらの市町村の中から高齢者の肺炎発症率を予測して おります。それによりますと、約5年〜7年ぐらい掛かるのではないか。これは、全国 の公費負担されている所をすべてカバーしたという仮定でございます。  しかしながら、それらの症例数は血液培養によって陽性となった肺炎球菌性肺炎を基 に算出しておりますので、尿中抗原検査を用いることによって高感度に肺炎球菌性肺炎 を検出することができれば、更に症例を集めることは可能かと思われます。 ○池田部会長 時間が相当掛かるような気がしますが、いかがでしょうか。神谷委員、 どうぞ。 ○神谷委員 今のことですが、公費負担をやっている所はかなり接種率が上がっていま す。そういう人たちは本当は効いていてかからないはずですから、今やっていない所か らかなり症例を集めなければいけないと思うのです。  そうした場合に、5年で本当に行けるかどうかというのは難しいかもしれません。少 し時間が掛かっても、きちんとしたデータを出す方が私はいいと思うのです。少し時間 を与えて、その代わりしっかりやりなさいという格好で行くよりしょうがないのではな いかと思うのです。折笠先生、どうですか。掛かり過ぎますか。 ○折笠委員 コントロールにしては少し長い気がしますが、やむを得ないですね。 ○池田部会長 上原先生、どうぞ。 ○上原委員 資料2-2を見ますと、調査実施予定期間は開始後より2年間と。この「2 年間」はどういう意味でしょうか。結論を出す期間が2年間ということなのでしょうか。 ○機構 説明させていただきます。調査実施予定期間2年間というのは、安全性に関す る調査を1,000例行う期間が2年間ということでございます。 ○池田部会長 吉田委員、何か御意見はございますか。 ○吉田委員 市販後に関していろいろ注文を付けるのはいいと思うのですが、例えばG MPの査察を待ってそれを条件にするというのは、前例としてあるのですか。国内の場 合、GMPの査察もしないで臨床試験をやったことになるのでしょうか。そうすると、 とてもまずいことになるのではないかと思ったのですが。 ○審査管理課長 機構から後で詳細を追加していただきたいと思いますが、基本的には 欧米で承認されておりますので、FDAなどのインスペクションは受けた上での製品が 治験には使われていると思うのです。それから、FDAの査察レポートなどもある程度 入手していると思うのですが、それを日本で再度審査したところ少し疑問の点があった ということで、そこは確認をしたいということであると思います。 ○吉田委員 要するに、日本の企業の体制が悪い。その不十分な技術で造った薬を使っ たということですか。 ○審査管理課長 製造場所はアメリカです。 ○吉田委員 再査察の問題は、国内の問題ではなくて米国の問題なのですね。 ○池田部会長 アメリカに調査に行くのですね。 ○機構 説明させていただきます。この品目につきましては、旧法申請でございますの で、輸入承認ということで、海外GMPは行われないことになっております。GMP調 査というものは、審査が行われた後に実地調査を行って、品質管理が適切になされてい るかどうかを判断するもので、基本的に審査とは別の枠で実施されているものでござい ます。たとえ承認が下りたとしても、GMP調査によって問題が起きれば出荷停止に陥 るということでございます。  ただ、本品目に関しましては、旧法下の申請でございましたが、新法下になりまして、 岡崎工場が閉鎖されてしまうなど、もろもろの条件によって米国メルクの工場に査察に 行かざるを得ない状況になってきたということで、それも併せまして、今回、ちょうど いいタイミングにそれが来たということでございます。  そもそもGMPに合致していなくても、「治験薬GMP」という基準がございますの で、それに従って製造されている製剤を用いて治験を実施すること自体は問題はないと。 ただ、最終的にはGMP査察を行って確認するということでございます。 ○吉田委員 各国で承認する前に、通常、インスペクションに行くということですか。 ○機構 それは各国の状況によります。日本は、旧法下では承認後にGMPに行く体制 でございましたが、新法下では承認前にGMPの査察を行い、適切に製造ができること を確認した上で承認ということになっております。その辺の差は若干あります。 ○生物系審査部長 新法導入によって海外にも工場査察に行くという新しい制度が導入 されましたので、そういう意味で、今までと少し違うやり方だなと思われたのだと思い ます。 ○池田部会長 そのほかにいかがでしょうか。 ○神谷委員 添付文書が二つあります。これをどうするかを相談しなければいけないと 思います。 ○池田部会長 これについて御意見を伺おうと思ったのですが、是非先生に。 ○神谷委員 確かに、先方が出したものの「臨床成績」の網掛けの部分について、機構 の方が変更した理由はなるほどと思うことがあります。これは論文を読めば分かること なので、添付文書でここまで説明する必要があるのかなとも思います。  ただ、表6だけは、免疫不全の代表としてHIVのみが挙がっているので、ここにつ いては説明をしておかないと、読んだ先生は分からないかもしれません。このまま書く かどうかはともかくとして、少しこういうことの追加があった方がいいのではないかな と思います。 ○池田部会長 ありがとうございました。神谷委員から添付文書の件について御意見を 頂いたのですが、資料2-2の最初に付いているのが機構が提示しているもの、その後ろ に付いているのが企業から提示されたもので、特に網掛けの部分について先生方の御意 見を伺いたいということです。神谷委員からは、多くのところは必要ない、HIVの記 載について少し工夫が必要ということを頂きました。堀内委員、どうぞ。 ○堀内部会長代理 添付文書が二つ出てくるのは極めてまれなケースであると思いま す。一般的にはメーカー側との話合いで合意に達したものが出てくると思いますが、機 構の案をメーカー側は認めていないと考えてよろしいのでしょうか。 ○池田部会長 機構、いかがですか。 ○機構 水曜日の時点までは、機構が示しております案でほぼ了解していたのですが、 昨日になりまして、米国メルク社からの指示により急きょ二つ目の案を提出されました。 やはり納得できないということで、いまだ平行線が続いているところでございます。 ○池田部会長 逆に言うと、この部会で御議論を頂いて、その考え方を意見としてまと めるということでよろしいですね。どういう添付文書が適切か、先生方から御意見を伺 いたいということでございますが、いかがでしょうか。神谷委員からは、ここまで書か なくてもいいのではないか、むしろ網掛けの部分は不要であると。上原委員、どうぞ。 ○上原委員 事前に配付されていた添付文書の中には、こういう情報提供がありません でした。有効性に疑問を呈する報告があることと安全性の問題についても臨床の現場に 伝えなければいけないと言いながら、なかった。それが、今日、添付文書に追加された 形で出てきました。これは機構の御指導があってのことと思います。その点は非常に良 かったと思いますので、是非こういうものを載せた形で、それと、客観的な情報のみに 限った方がよろしいのではないかと私は思います。 ○池田部会長 機構から、どうぞ。 ○機構 補足説明をさせていただきます。機構(案)といたしまして、2ページの「臨床 成績」の「有効性」で、「肺炎球菌ワクチンの有効性を検証する上では、次のような問 題があると考えられる」という網掛けの部分でお示ししております。  このような書き方にいたしますと、有効性が認められた、確認できなかった、両方の 試験について、同じように統計的な問題は存在すると。肺炎球菌性肺炎を診断する限界 というか、そのような問題点も両方の試験に係るものであると。それが実際には真実で あると考えております。  個々の試験について統計的な検出力が十分でなかった等の説明をするのではなく、こ れまでに行われた臨床試験すべてについてこういう問題がございますという説明を付け るのであれば、機構としては了承できる添付文書(案)と考えております。その点につい て、委員の先生方に御意見を頂ければと考えております。 ○池田部会長 折笠先生、何か御意見を頂けますか。 ○折笠委員 臨床成績の有効性の網掛けのところですか。 ○池田部会長 そうです。企業(案)には「これらの試験成績では侵襲性肺炎球菌性疾患 に対しておおむねワクチンの予防効果が示されているものの、肺炎球菌性肺炎に対して は予防効果が示されていない」という文章がありました。 ○折笠委員 「次のような問題があると考えられる」というのは、個々の試験について ですか。 ○機構 これまでに有効性を検討した試験すべてについてそのような問題が含まれてい るという形でございます。 ○折笠委員 すべてについて検出力が十分でないこともありますが、六つの研究結果の 違いに関して良いという論文や悪いという研究がある方が、検出力うんぬんよりも問題 であると思います。ですから、「有効性はないという研究も一部にはあるが」などの表 現にしておけばいいような気もします。  六つの表のオッズ比を見ますと、良い研究と悪い研究が3対3ぐらいに分かれてしま っているのですが、まじめに読む人は、本当にいいのかな、悪いのかなと逆に思ってし まいます。私は、アメリカのように文章で問題点があることを書いておいた方が紛らわ しくないというか、こういうのを出すと逆に間違った理解や心配を招く気がするのです。 ○池田部会長 守殿委員、どうぞ。 ○守殿委員 私は折笠委員が発言されましたことに全く同感です。ここに出席されてい る専門家の先生なら、これらのことを斟酌して、結果的に患者さんに投与されるかもし れませんが、一般の臨床医にとっては理解しにくい面があるので、これならばやめてお こうということになります。  欧米等で通常使われている形のことが一番根拠になっている気がいたしますので、添 付文書でここまで丁寧に解説する必要性はないのではと思います。 ○池田部会長 ありがとうございました。基本的には客観的なことだけを書いて、あれ もある、これもあるという格好で詳しく記載することを避けるということですね。上原 委員、そういう考え方でよろしいですか。 ○上原委員 抗がん剤などによく書かれますが、今の時点では、「本剤は、術後補助療 法としての有効性、安全性は確立されていない」というワクチンではないかなと。市販 後調査でその有効性がきちんと確認されるまでは、そういうことが伝わるような文章の 記載がどこかに必要ではないかと思います。 ○池田部会長 機構、いかがですか。 ○機構 添付文書におきます臨床試験成績の記載につきましては、「ワクチン類等の添 付文書記載要領」の中におきまして、「精密かつ客観的に行われた臨床試験の結果を記 載する」という基本的な決まりがございます。ただし、ワクチン等、歴史の古いものに つきましては、自社で行われた臨床試験成績がない場合が多くございます。その場合に は、公表されている信頼性の高い臨床試験の成績を、被験者数、有効率等について明確 にグラフで示す形で、他のワクチンも添付文書に記載しております。  それに当てはめまして考えたときに、本剤の肺炎球菌ワクチンの有効性の根拠となる ものは、やはり南アフリカの金鉱労働者に対して行われた試験であります。そうすると、 それを載せる必要が基本的にあると。ただ、その試験だけを載せてしまうと、それ以降、 数多くの比較試験が行われていますが、その中には有効性が認められているものと認め られていないものがあると。そのような状況で、基となる南アフリカの試験と精密性、 客観性の観点から見て同等以上の信頼性があると思われる試験について記載すると、こ のような案になってしまうということでございます。  また、文書で有効性について示す案もございますが、文書を書く際に恣意的な部分が 必ず出てきてしまうという問題がございます。薬事法に添付文書の記載禁止事項がござ いまして、虚偽あるいは誤解を招く可能性のある表現は記載することができないことに なっております。そうしますと、苦肉の策ではございますが、有効性が認められている 報告と有効性を確認することができなかった論文、その両者をバランスよく載せること が最善の策と判断したところでございます。 ○池田部会長 ですから、上原委員が言われたことと同じことで、現時点での客観的な 考え方を述べるという格好でよろしいのではないかと思います。 ○機構 そのようにさせていただきます。 ○池田部会長 堀内委員、どうぞ。 ○堀内部会長代理 報告書にも出ておりますが、このメーカーは、治験相談で虚偽のデ ータを出したとか、米国メルク社の資料を単に機械翻訳したような意味不明の文書を出 すとか、社内監査体制の整備を要請したが□□□□□□□□□□□□□□□とか、いろ いろな問題点があると思います。  これらの問題点に加えて、特に有効性、安全性については必ずしも確認されていない わけですから、今後の市販後調査、あるいは文献等による情報の提供が極めて求められ る医薬品であると思います。その辺の体制をどう保障するかについて、どのように考え るのか、指導する立場から教えていただきたいと思います。それから、先ほど条件を出 しましたが、添付文書にはその条件が入っていないのです。記載する必要がないかどう かについてはいかがでしょうか。 ○審査管理課長 最初の件につきましては、ここの審議を受けまして、個別の市販後調 査の計画など、いろいろなものを詰めてまいります。そういう中で、市販後の安全対策、 情報提供の指導をしております部署とも連携して、きちんと指導していきたいと考えて おります。  承認の三つの条件でございますが、GMP等につきましては、私どもの方で確認をし たということで、次の部会で御報告させていただく形になると思います。いわゆる承認 条件というものとは少し違うかなと思います。添付文書につきましては、添付文書を確 定するまでに関係の先生方には御確認を頂くことになると思います。 ○池田部会長 添付文書の件に関しては、先生方から頂いた意見を参考にもう一度書き 直していただいて、整理をしていただければよろしいかと思います。神谷委員、どうぞ。 ○神谷委員 添付文書の細かいところなのですが、この製剤は動物由来の原材料を工程 から排除していることになっているわけですが、最初の添付文書の「製法の概要及び組 成・性状」で、「製造工程においてウシの乳由来成分を使用している」という表現は一 般的には誤解されると思うのです。もう少し分かりやすくした方がいいのではないかと 思うのですが。 ○池田部会長 その点はいかがですか。 ○機構 御説明させていただきます。ウシの乳由来成分というのはカゼインでございま す。これは、原産国等の厳しい規制が課せられてない成分ということで、使用が認めら れているのです。ただ、動物由来成分を使用している場合には原則として添付文書等に 情報提供していただくということで、記載をしております。 ○神谷委員 その知識がある人はいいのですが、その知識がない人にとっては誤解する 書き方であると思うのです。 ○機構 では、カゼインということで明記をさせていただきたいと思います。 ○池田部会長 そうしてください。よろしいでしょうか。先生方からいろいろ御意見を 頂きました。肺炎球菌のワクチンということで、その必要性は後藤委員も強調されたよ うに、大事なものであると。そして、現行のワクチンの供給がこの秋にはなくなってし まうということで、どうしても必要はあるだろうと。  しかし、この部会としては、今、御議論を頂いた内容をきちんと企業に伝えて、対処 していただかなければいけない点がたくさんございます。特に品質の問題、市販後調査 の問題、情報提供の問題等、この際、もう一度企業に確認をしていただくということで 進めていきたいと思いますが、いかがでしょうか。  これ以上御意見がございませんでしたら、条件を付けて、承認を可とすることで行き たいと思いますが、よろしいでしょうか。ありがとうございました。それでは、承認を 可として、薬事分科会に報告をさせていただきます。今、議論していただいたことを企 業にきちんと伝えていただくことをお願いしたいと思います。それから、その結果をこ の部会にもう一度報告していただきたいと思います。よろしいですか。 ○審査管理課長 はい、そのようにさせていただきます。 ○池田部会長 ありがとうございました。続きまして、議題3を先に進めさせていただ きます。事務局から概要を説明していただきたいと思います。 ○事務局 それでは、議題3につきまして、事務局より御説明させていただきます。議 題3は、生物学的製剤基準の一部改正が2題ございます。  1題目は、資料3-1でございますが、今、御審議を頂きましたニューモバックスNP の輸入承認に伴う生物学的製剤基準、肺炎球菌ワクチンの改正でございます。本日、改 正案を差し替えでお配りさせていただいております。1週間ほど前に資料をお送りさせ ていただいておりますが、最終的な見直しをした際に、他の各条の表現に合わせるため の若干の変更を加えさせていただいております。  2題目は、資料3-2でございますが、生物学的製剤基準、ポリエチレングリコール処 理人免疫グロブリンの改正でございます。株式会社ベネシスが製造販売承認を取得して おります献血ヴェノグロブリン-IHヨシトミ及びヴェノグロブリン-IHが販売されて おります。 これらにつきましては、ウイルスの不活化・除去を目的として、製造工程において加熱 処理及び35nm孔径のフィルターを用いたろ過を導入しておりますが、ウイルスに対する 安全性の更なる向上を目的として、ろ過に用いるフィルターの孔径を35nmから20nmに 変更するための一部承認変更申請がなされました。 当該変更ですが、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□、□□□□□□pHを 現行の5.0〜6.0から3.9〜4.4に変更するとともに、pHを酸性側に維持することによっ てウイルスに対する不活化効果があることから、小分製品においても□□□□pHを保つ こととされております。このため、生物学的製剤基準、ポリエチレングリコール処理人 免疫グロブリンの3.1、pH試験でございますが、この規格を5.0〜6.0から3.9〜4.4に 改正するものでございます。以上でございます。 ○池田部会長 ありがとうございました。ただ今の説明に対して何か御意見を頂けます でしょうか。ポリエチレングリコール処理人免疫グロブリンのpHを5.0〜6.0から3.9 〜4.4に改めるということでございます。山口先生、何か御意見はございますか。 ○山口委員 細かいところは業務委員会や検定協議会で十分議論しております。pHを変 えて品質に問題はないという議論をしております。 ○池田部会長 そういうことですので、特別に先生方から御意見がございませんでした ら、これについては、基準の一部改正を可とさせていただいて、薬事分科会に報告させ ていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。ありがとうございました。それで は、そのようにさせていただきます。  続きまして、議題1でございますが、事務局から先ほどお話がありましたように、私 は関与委員でございますので退席させていただいて、堀内部会長代理にお願いしたいと 思います。よろしくお願いします。 ── 池田部会長退席 ── ○堀内部会長代理 それでは、池田部会長に代わりまして、進行させていただきます。 議題1、アナクトC2,500単位につきまして、総合機構から審査の概要の説明をお願い いたします。 ○機構 議題1、資料1、注射用アナクトC2,500単位の製造承認事項一部変更承認の 可否等について、医薬品医療機器総合機構より御説明させていただきます。  本剤は、乾燥濃縮人活性化プロテインC製剤でございまして、人血漿由来のプロテイ ンCをアフィニティクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーで精製後、ト ロンビンを用いまして活性化し、さらにイオン交換クロマトグラフィー等を用いて精製 したものでございます。  既に先天性PC欠乏症に起因する深部静脈血栓症及び急性肺血栓塞栓症の効能で承認 を取得しておりますが、今回、先天性PC欠乏症に起因する電撃性紫斑病の効能を追加 するものでございます。  本品目の専門協議に御参加くださいました専門委員は、本日お越しいただいておりま す嶋委員を初めとする4名の委員でございます。  有効性に関しましては、国内第II相試験(PC-8)において評価資料とされました2エピ ソード(2例)とも全般改善度は「著明改善」。参考資料とされました3エピソード(3例) は、全般改善度は「著明改善」1、「中等度改善」1、「悪化」1でございました。な お、全般改善度につきましては資料1の2.5の20ページにフローチャートでお示しさせ ていただいておりますが、あらかじめ定めました評価基準のマトリックスに基づきまし て、総合臨床所見改善度と凝血学的改善度を全般改善度として表してございます。  本剤の既承認の用法・用量は200〜300単位/kg/日でございます。既承認時の国内第II 相試験(PC-4-B)では不採用でございましたが、今回の申請用量相当500〜900単位/kg/ 日を投与した電撃性紫斑病症例がございまして、この症例において一定の有効性が認め られたことから、本申請における臨床試験の用法・用量として採用されております。な お、1日目は100単位/kgのボーラス投与、その後600〜800単位/kg/日、2日目以降は 600〜900単位/kg/日で設定されております。  安全性につきましては、評価資料のPC-8試験において、副作用は特段認められており ません。また、既承認の参考資料のPC-4-B試験においては、5エピソード中2エピソー ドで軽度の好酸球増加が認められましたが、その他の重篤な副作用は認められておりま せん。申請効能であります先天性PC欠乏症に起因する電撃性紫斑病は極めてまれでご ざいまして、必ずしも十分に有効性、安全性情報が得られているとは言えませんので、 全例を対象とした製造販売後調査を承認条件とすることが適当ではないかと判断いたし ました。  また、本疾患は極めて重篤、かつ緊急に治療開始が望ましいという専門委員等の御意 見も頂いておりましたことから、原則として、初回発症時には先天性PC欠乏症の確定 診断を待たずに投与することもやむを得ないものと判断しております。ただし、病状安 定期に確定診断を行い、診断の適切性に関する情報を製造販売後調査において収集する ことも必須であると考えております。なお、本剤は平成5年に本疾患を予定効能とした 希少疾病用医薬品の指定を受けております。  以上のとおり、機構での審査の結果、症例数は極めて少数ではございますが、本剤の 先天性PC欠乏症に起因する電撃性紫斑病に対する一定の有効性が認められましたこと から、承認して差し支えないと判断いたしました。また、本剤は希少疾病用医薬品であ ることから、再審査期間は10年とすることが適当と判断いたしました。御審議のほど、 よろしくお願いいたします。 ○堀内部会長代理 どうもありがとうございました。既に市販がされているアナクトC を電撃性紫斑病に適応追加するということです。用量の設定については、実際に使用し て有効性があった濃度を基に決定をしているというお話であると思います。まず、参考 人の嶋先生、何か御追加がありましたら、よろしくお願いいたします。 ○嶋参考人 この疾患の臨床的位置付けをもう再確認させていただきたいと思うのです が、本症の発症率は20万〜30万あるいは50万〜70万人に1人という非常にまれな疾患 で、この20年間に約10名ぐらいの報告しかありません。  症状の重篤度ですが、生後数時間からも発症し得る。急速に出血性の壊死を来たして、 放っておきますと切断せざるを得なくなる。さらに、全身に微小の血栓が多発しまして、 DIC所見も呈してきます。それによる臓器不全により死に至る危険性も高い。ほとん どの症例で目の出血あるいは頭蓋内出血などを起こしまして、後遺症の合併は極めて高 く、重度の障害を呈している場合がほとんどです。  非常に重篤な疾患で、直ちに治療を開始する必要があるのですが、今行われている新 鮮凍結血漿による治療あるいはワルファリンによる治療は、いずれも、必ずしも有効性 は確立していない状態です。専門協議では、このような本疾患の背景を前提に、効能追 加について議論を行ったのです。  議論のポイントは三つあります。第1のポイントは、有効性及び安全性について十分 検討されているかということであったのですが、非常にまれな疾患であります。臨床試 験で症例数を増やして検討することは実際不可能である。症例数は少ないですが、今ま での臨床試験あるいは使用成績調査で特に重篤な副作用が見られなかったこと、臨床的、 凝血学的に有効性が認められたこと、本症の重篤性あるいは既存の治療法が不十分であ ることなどから考えまして、許容してもいいのではないかと判断しました。  第2のポイントは、一番議論の対象になった点ですが、初回発症時、確定診断ができ ていないままで本剤を投与してもいいのかです。この疾患の予後は、いかに早く治療を 開始するか。生後数時間から発症する例もあることから考えますと、確定診断を待って やっていたのでは遅い。確定診断というのはプロテインCの測定なのですが、これは、 緊急でその施設でできている場合はほとんどありません。検査会社に出すと最低でも数 日あるいは1週間掛かる。それを待ってからでは全く意味がありません。  それから、本症でない場合に使ってしまって問題ないのか。一番本症に近いのは基礎 疾患のある一般的なDICであると思うのですが、過去にDICを対象とした臨床試験 も行われていました。有効性については十分示すことができなかったわけですが、臨床 的問題点となる副作用はなかったことから考えて、確定診断がされていない状況であっ ても、本製剤を使うのは許容せざるを得ないのではないかという判断になりました。も ちろん、確定診断はいずれ必要であるのは間違いないわけで、症状が安定してから確定 診断を行うべきであると考えました。  それから、出血斑が初めに出てきますので、当然、出血斑を呈する出血性疾患は通常 のスクリーニングで判断可能と思います。かつ、基礎疾患のあるDICの場合は敗血症 や感染兆候などで臨床的にある程度スクリーニングできると考えます。もちろん、市販 後調査で確定診断をしていくというのが前提ですが、総合的に、確定診断が至らないま まで使用を許容してもいいのではないかと判断しました。  第3のポイントは、用法・用量はこれでいいのかということです。残念ながら、これ についても十分検討すべき症例数が少ない。投与量を更に評価する検査学的な治験もな いのが現状です。したがいまして、既承認のときの臨床試験で、電撃性紫斑病に対して 200〜300単位/kg/日では効果がなく、600〜900単位/kg/日で有効性が見られたと。それ から、副作用が認められなかったということで、現時点では、この投与量設定は妥当で あると判断いたしました。  しかしながら、例えば6日以上の投与は駄目なのか、あるいはこの投与量を増やすと 更に有効性が出るのか、医学的にはまだ解決すべき課題として残っています。全例の市 販後調査でこの点についても継続して調査し、検討していく必要があると思います。  以上の3点が主な議論のポイントです。繰り返すようでありますが、本製剤は、根本 的な治療は確実で、極めて予後不良な疾患である電撃性紫斑病に対して、足りない因子 を補うという、理にかなった治療製剤です。徹底した全例市販後調査を前提に承認をし ていく判断は妥当ではないかと考えました。以上です。 ○堀内部会長代理 どうもありがとうございました。有効性、安全性の問題、確定診断 の問題、用量の問題を中心に御意見を頂きましたが、委員から何か御質問あるいは御意 見はございますか。神谷先生、何かございませんでしょうか。 ○神谷委員 私も余り症例として経験したことがないのですが、こういうのを見付けれ ば当然緊急を要すると思います。プロテインCの測定はどこでできるのですか。 ○嶋参考人 検査会社です。 ○神谷委員 大きな会社なら大体できますか。 ○嶋参考人 エスアールエルなどの一般的な検査会社であれば可能です。 ○神谷委員 そうであれば、そこまでしかしょうがないと思います。この段階で認めて、 使いながら経験が増えていくことになると思います。大切な薬であると思います。 ○堀内部会長代理 ありがとうございました。ほかに御意見はございませんでしょうか。 症例数が大変少ないということで、ある面では十分検証されておらず、用量等も経験的 に設定されているわけですが、副作用等については余り大きな問題はないと考えられる と思います。  20年間で10症例ぐらいという大変少ない症例ですので、全症例フォローがどうして も必要であると思いますが、きちんとした臨床研究としてやるのはなかなか難しい気も いたします。ただ、神谷委員からもお話がありましたように、大変必要な薬ということ は皆さん御異議はないのではないかと思います。  これは遺伝的なものであると思いますが、症例数が少ないから実際上やることがどれ だけ意味があるかどうか分かりませんが、遺伝的な検査をやることは可能なのでしょう か。 ○機構 御説明申し上げます。遺伝的な検査も確定診断の中で必要ではないかというこ とで、かなり議論はさせていただいたところであります。個人情報の問題もございます ので、全部において同意を取得することは難しいということで、マストということには できないと。ただ、既承認時の添付文書の確定診断の中にもございますが、五番目とし て遺伝子検査等も挙げられております。同意さえ取得すれば、行っていただければと思 っております。 ○堀内部会長代理 ありがとうございました。川嵜先生、どうぞ。 ○川嵜委員 教えていただきたいのですが、足りないものを補充するということで、最 も合理的な方法であると思うのですが、実際に補充している量は、本来あるべき量から 見たときに、どれぐらいになるのですか。投与量を増やせばこういうものにも効くとい う話のようですが、クリティカルな値がその辺りにあるのかどうか。治験として何かそ ういうことはあるのですか。 ○機構 既承認時の資料ということでございますが、ここでは血漿中の濃度がナノグラ ムオーダーで示されており、単位当たりのオーダーではないので直接の比較はつきかね ます。ナノグラムオーダーで行きますと、PC欠乏症の患者さんに80〜100単位/kgの 投与直後では150〜350ng/mL程度になるかと思います。これは投与量にもよると思いま す。  ただ、この活性化プロテインCは半減期が非常に短くて、8分〜9分という形になっ ておりますので、投与を終了した時点でほぼ体の中から活性としては失われてしまうと 思っております。また、今回の症例に関しましては凝固反応がかなり進んでいるという こともございますので、速やかに血中の濃度を上げて凝固を抑制していくことが重要で はないかと判断しております。 ○堀内部会長代理 ほかにはよろしいでしょうか。これはプロテインCの活性体という ことですが、製造過程ではどのようにして活性化しているのでしょうか。また、活性化 することによって不安定になることはないのでしょうか。 ○機構 活性化につきましては、まず、アフィニティクロマトグラフィー、イオン交換 クロマトグラフィーで血漿からプロテインCを精製しておりまして、活性化の工程で人 のトロンビンを加えてございます。その後、イオン交換クロマトグラフィーによってト ロンビンの除去、未活性体のプロテインCの除去を行っております。  安定性につきましては、活性化することによる安定性の消失は検討されていないと思 いますが、製剤としての安定性は検討されております。添付溶解液で溶解化した場合の 安定性につきましても24時間までは80%以上を保っているということで、その辺につ きましては、既承認時に安定性の資料という形で提出されております。 ○堀内部会長代理 よろしいでしょうか。かなり症例数が少ないので、検討されるべき 点はいろいろあると思いますが、必要な医薬品であるということを考えて、電撃性紫斑 病について適応追加をするということで、承認を可として、薬事分科会に報告させてい ただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。それでは、そのようにさせていただき ます。どうもありがとうございました。それでは、池田先生に御入室をお願いしたいと 思います。 ── 池田部会長入室 ── ○池田部会長 堀内先生、どうもありがとうございました。続いて、報告事項に移りま す。報告事項の5議題について、順次説明していただきたいと思います。 ○機構 報告事項、議題1、医薬品ティーエスワンカプセル20、同25の製造承認事項 一部変更承認について報告いたします。資料4を御覧ください。本剤は、テガフール、 ギメラシル及びオテラシルカリウムを含有する抗悪性腫瘍剤であり、現在、胃癌、結腸 ・直腸癌等の効能・効果で承認されております。今般、大鵬薬品工業株式会社から、「膵 癌」に関する効能・効果の追加について、製造承認事項一部変更承認申請がなされたも のでございます。総合機構における審査の結果、本剤を承認して差し支えないと判断い たしました。  続きまして、議題2、医薬品ストロメクトール錠3mgの輸入承認事項一部変更承認に ついて報告いたします。本剤は、イベルメクチンを有効成分とする半合成経口駆虫薬で あり、現在、腸管糞線虫症の効能・効果で承認されております。今般、萬有製薬株式会 社より、疥癬に対する有効性及び安全性について、研究開発振興課長・審査管理課長の 2課長通知、「適応外使用に係る医療用医薬品の取扱いについて」に基づき、医学薬学 上公知として、効能追加の一部変更承認申請がなされたものでございます。総合機構に おける審査の結果、本剤を承認して差し支えないと判断いたしました。  続きまして、議題3、医療用医薬品の再審査結果について報告いたします。資料6-1 〜6-4の医薬品再審査確認等結果通知書「ロムルチド」、「レノグラスチム(遺伝子組換 え)」、「フィルグラスチム(遺伝子組換え)」及び「ナルトグラスチム(遺伝子組換え)」 を御覧ください。これらの品目について、市販後の使用成績調査の成績、特別調査等に 基づいて再審査申請が行われ、審査の結果、薬事法第14条第2項各号に掲げられている 承認拒否事由のいずれにも該当しないこと、すなわち、効能・効果、用法・用量等の承 認事項については変更の必要のない「カテゴリー1」と判定したものであります。 ○事務局 議題4、優先審査品目の指定につきましての御報告でございます。資料7及 び資料7-2を御覧ください。優先審査の取扱いにつきましては、資料7の2ページに、 概要を示しておりますので、説明は省略させていただきます。  資料7の1ページでございます。一つ目でございますが、タルセバ錠(エルロチニブ) でございます。申請効能は「手術不能又は再発非小細胞肺癌」でございます。本剤は、 上皮増殖因子受容体(EGFR)を標的といたしますチロシンキナーゼ阻害剤でございま す。  手術不能又は再発非小細胞肺癌に対する化学療法といたしましては、一般に、初回治 療には白金製剤を含む併用療法、二次治療としてはドセタキセル、三次治療としてはゲ フィチニブが使用されておりますが、特に二次、三次治療につきましては標準的治療が 確立されているとは言い難い状況にございます。化学療法歴を有します手術不能又は再 発非小細胞肺癌患者に対します国内第II相試験におきまして奏効率28.3%(17/60)でご ざいます。それから、1又は2レジメン以上の化学療法歴を有します非小細胞肺癌患者 を対象とした海外の第3相試験におきまして、本剤群はプラセボ群に比べまして有意な 生存期間の延長が認めらたということでございます。これらの点を勘案いたしまして、 医療上の有用性を総合的に評価し、優先審査品目に指定するということでございます。  二つ目でございますが、アバスチン点滴静注用(ベバシズマブ)でございます。申請効 能は「治癒切除不能な進行・再発結腸・直腸癌に対する他の抗悪性腫瘍剤との併用療法」 でございます。  本剤につきましては、海外臨床試験におきまして、イリノテカン・フルオロウラシル 急速静注・ホリナート併用療法(IFL療法)に本剤を上乗せすることで有意な生存期間 の延長が示されております。それから、別の試験でございますが、ホリナート・フルオ ロウラシル持続静注・オキサリプラチン併用療法(FOLFOX4療法)というレジメンの療法 でございますが、それに本剤を併用することで生存期間の有意な延長が見られている。 これらの点を勘案いたしまして、優先審査品目に指定するということでございます。  資料7-2に移らせていただきます。三つ目でございますが、悪性胸膜中皮腫を申請効 能といたしますアリムタ注射用(ペメトレキセド)でございます。それから、それと併用 して用いますランダ注・ブリプラチン注他(シスプラチン)、これは後発品の製剤も含ま れておりますので、「他」と書いてございます。ペメトレキセドにつきましては、新規 の葉酸代謝拮抗剤でございまして、複数の葉酸代謝酵素を同時に阻害することで抗腫瘍 効果を発揮するということでございます。  悪性胸膜中皮腫は、胸膜表面を覆う中皮やその下の結合組織の未分化な間葉細胞に由 来する腫瘍でございますが、職業環境及び生活環境から吸入した石綿との関連が高いこ とが知られておりまして、治癒が困難な致死的な疾患でございます。外国における第3 相試験におきまして、本剤とシスプラチンを併用した群で、シスプラチン単独群に比べ まして生存期間を延長するという結果も示されておりまして、本剤及び本剤と併用して 用いるシスプラチン製剤につきまして、優先審査品目に指定するということでございま す。 ○機構 続きまして、医薬品優先対面助言品目指定の結果について、本日配付いたしま した資料8-1〜8-4により報告いたします。優先対面助言品目指定制度は、「医療上特に 必要性が高いと認められるもの」となることが期待される開発中の薬剤について、他の 品目に優先して機構が対面助言、すなわち治験相談を行うものでございます。  資料8-1でございますが、アムジェン株式会社のPanitumumabでございます。優先対 面助言の対象効能は「治癒切除不能な進行・再発結腸・直腸癌」でございまして、この 疾患は生命に重大な影響がある疾患であると判断いたしました。  本邦において、結腸・直腸がんに対し効能・効果を有する薬剤としては、フルオロウ ラシル、塩酸イリノテカン、オキサリプラチン等がありますが、これらの化学療法施行 後に病勢の進行が認められた結腸・直腸癌に対する有効な治療薬は承認されておりませ ん。このような現状の中、本剤については、標準的な化学療法施行後に病勢の進行が認 められた患者を対象に実施された海外臨床試験において、無増悪生存期間が延長されて いることから、当該疾患の治療において、高い有用性が期待できると判断し、優先対面 助言品目に指定したものでございます。  資料8-2でございますが、エーザイ株式会社のエリトラン テトラソディウムでござい す。優先対面助言の対象効能は「重症セプシス」でございまして、この疾患は生命に重 大な影響がある疾患であると判断いたしました。  医療上の有用性に関しましては、当該疾患の治療は対症療法が主体であり、必ずしも 十分な効果を有する治療法が存在しない中で、本剤については、海外の臨床試験におい て死亡率の低下を示唆する成績が得られていることから、当該疾患の治療において、高 い有用性が期待できると判断し、優先対面助言品目に指定したものでございます。  資料8-3でございますが、ノバルティス ファーマ株式会社のメシル酸イマチニブでご ざいます。優先対面助言の対象効能は「好酸球性白血病、好酸球増多症候群」でござい まして、この疾患は概して、日常生活に著しい影響を及ぼす重篤な疾患に該当すると判 断いたしました。  医療上の有用性に関しましては、本邦において、好酸球性白血病、好酸球増多症候群 を適応とする薬剤は承認されておらず、必ずしも十分な効果を有する治療法は存在しな い中で、本剤については、海外で実施された臨床研究において、症例のほぼ全例で血液 学的寛解が認められる等、優れた治療効果を示唆する成績が得られていることから、当 該疾患の治療において、高い有用性が期待できると判断し、優先対面助言品目に指定し たものです。  資料8-4でございますが、富山化学工業株式会社のT-705(成分名は未定)でございま す。優先対面助言の対象効能は「A型(H5N1型)インフルエンザウイルス感染症」で ございまして、「H5N1型インフルエンザウイルス」の感染が確認された症例におけ る致死率は高いことが明らかにされておりますので、この疾患は生命に重大な影響があ る疾患であると判断いたしました。  医療上の有用性に関しましては、インフルエンザウイルス感染マウスを用いた非臨床 試験において、本剤はH5N1型インフルエンザウイルス感染に対して優れた治療効果 を発現する可能性が示唆されております。一方、現時点では、本剤の臨床試験は開始さ れておらず、原則として後期第II相試験までの成績を必要とする、優先対面助言品目の 選定基準を満たしておりませんが、世界的にH5N1型インフルエンザウイルスによる パンデミックの危険性が警告されており、その対策が急務とされていることを勘案する と、本剤について迅速かつ適切な臨床開発が実施されるよう、治験相談を優先的に行う 意義は大きいと考え、優先対面助言品目に指定したものでございます。以上でございま す。 ○池田部会長 ありがとうございました。五つの報告事項を頂きました。2品目につい ては適応の追加、再審査結果、優先審査品目指定の審査結果、優先対面助言品目の指定 でございます。先生方から御質問はございますでしょうか。堀内委員、どうぞ。 ○堀内部会長代理 優先審査品目の指定になっているエルロチニブやベバシズマブは5 月に指定になっているわけですが、実際に審査が終わるのはいつぐらいの予定でしょう か。 ○審理管理課長 現時点で審査の見通しは申し上げられないのですが、機構で鋭意審査 をしていただいております。機構での審査の区切りが付きましたら、この部会で御審議 を頂くことになると思います。 ○堀内部会長代理 できるだけ早く審査してください。 ○池田部会長 吉田委員、どうぞ。 ○吉田委員 それに関してなのですが、最近、プロミッシングな薬がどんどん出てきて おります。優先審査は大いに勧迎したいのですが、機構もマンパワーに限界があるだろ うし、優先と言っても、どこまでできるのですか。これは相当大変であると思うのです。 余り優先ばかりに行くと、本当に優先でなくなってしまう可能性もあります。今のとこ ろは大丈夫だと理解してよろしいのでしょうか。 ○審査管理課長 場合によっては審議官、センター長から御発言いただきたいと思うの ですが、かなり未承認薬の問題などがございまして、欧米と比べても少ないマンパワー の中で、機構には頑張っていただいております。そういう意味では、今の吉田先生の御 発言は温みもありまして、大変有り難いと思っております。  これからも、人を増やしていくなど、そのようなところは御理解を頂かなくてはいけ ないと思っております。治験相談から優先審査という形でタイムリーに処理していくこ とが、最終的に日本が欧米に余り遅れずに薬が使えるようになることのためには必要か と思いますので、先生方にもより一層の御理解を頂ければと思っております。 ○池田部会長 センター長、何かございますか。 ○審査センター長 吉田委員の御発言で、我々も非常に勇気付けられたところだと思い ます。確かに、がんだけでなく、優先審査品目が増えています。それらは非常に重要な 薬なものですから、私どもの審査担当者たちは頑張ってくれています。ただ、余り増え ますとパンクしてしまいますので、その辺のところも先生方に御理解を頂きたいと思っ ています。 ○池田部会長 上原委員、どうぞ。 ○上原委員 今のことに関連してですが、優先対面助言品目が四つ出ました。その二つ 目のエーザイのものは、アメリカでは1999年にファーストトラックということで優先的 に審査が行われていたはずのものであると。その年から考えますと、もう結果が出てい る品目ではないのでしょうか。これについての今の状況はどのようになっていますか。 ○審査センター長 恐らく、ファーストトラックということですので、相談から始めて いますから、治験に入るずっと前からの話と思われます。私どもの対面助言と同じよう な形であると思います。 ○審査第一部長 海外においては、現在、フェーズ2のプロミッシングな結果が出てい まして、まだ審査に掛かって、もうゴール間近という状況にはたどりついていないと聞 いています。日本においても、できるだけ早くキャッチアップするということで、日本 での治験として何ができるかを急いで検討できるように、今回、指定するということで ございます。 ○池田部会長 よろしいでしょうか。そのほかに、報告事項について、先生方から何か 御意見はございますか。もしなければ、この報告事項については御確認いただいたとい うことにさせていただきます。少し長くなってしまいましたが、本日の議題は以上です。 最後に、事務局から報告をお願いします。 ○事務局 ありがとうございました。次回の第二部会の御案内でございますが、8月25 日(金)午後2時から開催させていただきますので、よろしくお願いいたします。以上で ございます。 池田部会長 早川委員、どうぞ。 ○早川委員 ニューモバックスの件について、品質について非常にネガティブな印象を 持たれた方がいるとすれば、これはそうではないということです。例えば、感染研に出 された資料がどういう経緯でそうなったのか私は分かりませんが、GMP上できちんと やっていけばいいわけです。  不合格品というのは、規格に外れたから不合格品になるのであって、逆に言えば、規 格がしっかりしているということなのです。ですから、外れたものが世の中に出ていっ て、それが臨床に掛けられるという意味では全くありません。その辺を明確にしておき たいと思います。  これから品質について詰めていかれるということですが、品質というのは有効性と安 全性を守るためのものですので、品質のための品質管理では必ずしもないのです。これ からもしメーカーを御指導いただくのであれば、そういう観点で見ていただければと思 います。  例えば、先ほど出ましたエンドトキシンの話も、実測値からすればそうかもしれない のですが、一般にその値で安全なのか、安全でないのかと考えるような視点も一方では 必要なのではないかと思います。そういう点で、少し余分なことかもしれませんが、よ ろしくお願いいたします。 ○池田部会長 ありがとうございました。追加の御意見を頂きました。それでは、本日 はこれで第二部会を終了させていただきます。どうもありがとうございました。 ( 了 ) 連絡先: 医薬食品局 審査管理課 課長補佐 山本(内線2734)