06/07/12 平成18年度第2回目安に関する小委員会議事録について 平成18年度第2回目安に関する小委員会議事録 1 日 時  平成18年7月12日(水)17:00〜19:15 2 場 所  厚生労働省専用第17会議室 3 出席者    【委員】 公益委員   今野委員長、石岡委員、勝委員、樋口委員 労働者側委員 加藤委員、久保委員、須賀委員、中野委員         使用者側委員 池田委員、川本委員、杉山委員、原川委員    【事務局】厚生労働省  青木勤労者生活部長、前田勤労者生活課長、                名須川主任中央賃金指導官、                吉田副主任中央賃金指導官、梶野課長補佐 4 議事内容 ○今野委員長  ただ今から「第2回目安に関する小委員会」を開催いたします。最初に、前回議論が あった目安小委員会に提出する資料をどのように決めているかについて、事務局から説 明をお願いいたします。 ○前田勤労者生活課長  前回、樋口委員から都道府県別の失業率の資料を出してはどうかというご意見があり まして、目安制度のあり方に関する全員協議会でランク区分のABCDランクを区分け するときに、いわゆる20の指標ということで、どのような指標を使うかについては議論 し、決めているわけですが、目安審議に当たってどのような資料であるかということま で細かく決めているわけではないので、この小委員会でそのような資料を提出すること に合意いただければ、提出させていただくということです。 ○今野委員長  前回樋口委員から提案があった、「都道府県別の失業率の推移」の資料を提出してい ただき、見てみるということでいかがでしょうか。 (異議なし) ○今野委員長  それでは配っていただけますか。   (資料配付) ○今野委員長  説明をお願いいたします。 ○前田勤労者生活課長  労働力調査の失業率については都道府県別に、いわゆるモデル推計値ということで平 成9年からの数字が公表されております。直近が平成18年1月から3月ですが、都道府 県別に失業率を見ると、沖縄県が7.6%で最も高く、青森県7.3%、秋田県6.3%。Cラ ンクの中では福岡県が6.1%、大阪府はAランクですが5.8%。その他北海道は5.4%、 岩手県5.0%、京都府5.0%で5%以上となっています。逆に、低い所としては福井県が 2.3%と最も低く、滋賀県2.9%で、愛知県、富山県、山梨県、岐阜県といった辺りが3 %といった感じです。  全国的には平成14年辺りの失業率が最も高かったわけですが、各地域とも徐々に下が ってきているといった状況だと思います。ただ青森県など逆に悪くなっていくようなと ころもあり、地域の差が広がっているようです。 ○今野委員長  ただ今の説明について、何かご質問があればお願いいたします。ないようですので、 次に事務局よりお手元に配付されている資料について説明していただきます。 ○前田勤労者生活課長  資料No.1は平成18年の賃金改定状況調査の結果です。表紙でこの調査の概要について まとめておりますが、調査の地域としては都道府県庁所在都市と、都道府県ごとに原則 として人口5万人未満の市から選んだ、いわゆる地方小都市の両者です。調査産業につ いては、都道府県庁所在都市については製造業、卸売・小売業、飲食店,宿泊業、医療, 福祉、サービス業の5つです。地方小都市については製造業のみとなっています。調査 事業所ですが、今年6月1日現在で常用労働者30人未満の企業の民営事業所で1年以上 事業を継続している中から抽出し、数としては都道府県庁所在都市が約3,000事業所、 地方小都市が約1,000事業所の合計約4,000事業所です。このあたりは毎年同じような形 でやっております。調査労働者は約3万2,000人です。  調査の内容については、6月1日現在で事業所の属性、労働者の性、就業形態等につ いて調査しています。5の(2)ですが、昨年6月分と今年6月分について、月間の所 定労働日数、1日の所定労働時間数、所定内賃金額について調査しています。賃金改定 率は事業所ベースでみた賃金の改定状況ですが、今年1月から6月までの事実について 調査しています。年間所定労働日数については、平成16年度及び平成17年度について調 査しております。  次頁の第1表は「賃金改定実施状況別事業所割合」で、今年1月から6月までに賃金 の引上げを実施した、あるいは引下げを実施した、賃金改定を実施しない、7月以降に 改定を実施する予定という区分で事業所に聞き、事業所単位で集計したものです。左の 産業計でみていただくと、1月から6月に賃金引上げを実施した事業所の割合は36.5% で、括弧内が昨年ですが、昨年は35.9%ですので、0.6ポイント上がっております。1 月から6月に賃金引下げを実施した事業所の割合は2.0%、昨年は1.9%ですから、こち らも0.1ポイント上がっております。  一方、賃金改定を実施しない事業所については52.4%で、昨年は54.2%ですから、1.8 ポイント下がっております。7月以降に賃金改定を実施する予定の事業所は9.1%で、 昨年が8.0%ですので、1.1ポイント上がっております。ランク別に見ると、1月から6 月に賃金引上げを実施した事業所の割合はAランクが一番高くて41.0%、以下B、C、 Dの順に低くなっており、Dランクは32.1%という状況です。賃金改定を実施しない事 業所についてはDランクが一番高くて57.8%、次がBランクで52.8%、以下Cランク、 Aランクという順です。  産業別にみると、1月から6月に賃金引上げを実施した事業所の割合が一番高いのは 医療,福祉で57.5%、昨年は62.8%ですので若干下がっております。逆に、1月から6 月に賃金引上げを実施した事業所の割合が一番低いのは飲食店,宿泊業で22.0%ですが、 昨年は18.6%でしたので、こちらは若干上がっているという状況です。賃金改定を実施 しない事業所の割合は、飲食店,宿泊業が70.7%で一番高く、医療,福祉は32.7%で一 番低くなっております。  次頁の第2表は「事業所の平均賃金改定率」です。これも事業所単位で、1人当たり どの程度上げたかということを回答していただいたものを集計しました。左は賃金引上 げ実施事業所で、1月から6月までの間に賃金の引上げを実施した事業所について、平 均の賃金改定率がいくらであったかということで、産業計でいくと2.7%、昨年も2.7% ですので昨年と同じということです。ランク別ごとにみると、Aランクが3.0%、以下 2.7%、2.6%、2.6%となっております。産業別では飲食店,宿泊業が3.3%で、若干高 くなっております。  真ん中は賃金引下げを実施した事業所についてどの程度引き下げたか、その平均を事 業所単位で見たもので、産業計はマイナス5.0%、昨年はマイナス7.2%でしたので、下 げ幅は若干小さくなっております。ランク別に見ると、Aランクがマイナス8.1%で一 番高く、Cランクがマイナス2.6%で一番小さくなっています。産業別では卸売・小売 業がマイナス7.8%で最も引下げ幅が大きくなっています。  右は賃金改定を実施した事業所と凍結した事業所全体を加重平均し、改定率がどうで あったかを示したものです。産業計では0.9%の上昇、昨年は0.8%ですから0.1ポイン ト上がっております。ランク別ではAランクが1.1%で一番高く、以下B、C、Dとい うランク順になっています。産業別では医療,福祉が1.4%で一番高く、飲食店,宿泊 業が0.7%で一番低くなっております。  次頁の第3表は「事業所の賃金引上げ率の分布の特性値」で、賃金引上げを実施した 事業所について、その分布を見たものです。左の産業計では第1・四分位が1.0、中位 数が1.8で、いずれも昨年と同じです。第3・四分位が3.1、昨年が3.0でしたので0.1ポ イント上がっております。その関係で分散係数は0.58で、昨年は0.57でしたから若干大 きくなっております。ランク別ではAランクの分散が0.74で最も大きく、Cランクが 0.50で一番小さくなっています。産業別では飲食店,宿泊業の分散係数が0.83で最も大 きく、サービス業が0.45で一番小さくなっています。  次頁の第4表は「一般労働者及びパートタイム労働者の賃金上昇率」についてです。 産業計の男女計をみると、昨年6月の1時間当たりの賃金額は1,396円で、今年6月は 1,403円ですから、7円の上昇、率では0.5%となります。ランク別ではAランクが0.6%、 Bランクが0.6%、Cランクが0.4%、Dランクは0.0でした。男女でみると、男が0.4%、 女は0.7%ですから、女性の方が上がっております。産業別にみると、サービス業が0.9% で一番上がっており、以下医療,福祉0.6%、製造業0.4%、卸売・小売業0.3%、飲食 店,宿泊業0.2%となっております。  次頁の参考1は「賃金引上げの実施時期別事業所数割合」で、1月から6月に賃金引 上げを実施した事業所を100とし、引上げの実施時期が昨年と比べてどうかということ を示したものです。左は合計ですが、「昨年と変わらない」が86.2%、括弧内は昨年で 89.5%ですから若干下がっております。「早い」が3.0%で、昨年が2.3%ですから少し 増えております。昨年引上げを実施しなかった、あるいは会社設立が前年だったので、 今年初めて賃金引上げを実施するなどが「その他」に当たりますが、9.4%で昨年が6.7% ですから若干増えております。県庁所在都市と地方小都市とそれぞれありますが、それ ほど大きな差はないようです。  次頁の参考2は、賃金改定を6月までに実施していない事業所について、下の中程に (注)がありますが、事由別に5つに分けて集計しているものです。事由1、事由2、 事由5が今年は7月以降に実施する予定、その中で事由1は昨年も7月以降で今年も7 月以降、事由2は昨年は1月から6月に実施したが、今年は7月以降に実施、事由5は 昨年は実施しなかったが、今年は7月以降に実施の予定です。事由3と事由4は今年は 実施しないということですが、事由3が昨年は実施したが今年は実施しない、事由4は 昨年も今年も実施しない予定だということです。  産業計でみると、一番多いのが事由4で73.5%で、昨年は実施していないし、今年も 実施しない予定というのが最も多いということです。昨年は75.6%ですから、若干下が ったと言えます。次が事由3で、昨年は実施したが、今年は凍結の予定が11.8%。一方、 事由1が8.0%で、昨年同様7月以降というのも若干増えております。産業別にみると、 飲食店,宿泊業が事由4が86.7%で、昨年も実施しないし、今年も実施しないというの が一番多いということです。医療,福祉は事由4が59.2%で産業別では一番低く、逆に 事由3は20.8%で少し増えております。  次頁の参考3は「事業所の平均賃金改定率」で、先ほどの第2表を県庁所在都市と地 方小都市とに分けて集計したものです。県庁所在都市の賃金引上げ実施事業所について みると、産業計は2.7%、地方小都市も2.7%です。ただ、地方小都市は製造業だけです ので、県庁所在都市を製造業だけでみると2.8%ということで、若干高くなります。賃 金引下げ実施事業所については、県庁所在都市のマイナス5.2%に対して、地方小都市 はマイナス3.8%で若干低めですが、県庁所在都市の製造業はマイナス3.8%ですので、 製造業だけでみると同じです。全体の加重平均は県庁所在都市では0.9%で昨年と同じ、 地方小都市は0.8%で0.1ポイント低くなっております。ただ、これも製造業だけでみ ると、県庁所在都市も0.8%ですので、地方小都市と同様ということになります。  次頁の参考4は、第3表にあった賃金引上げ率の分布の特性値について、県庁所在都 市と地方小都市とに分けてみたものです。県庁所在都市の産業計の分散係数は0.58、地 方小都市は0.61で、地方小都市の方が若干大きくなっております。ただ、製造業を県庁 所在都市でみると0.74ですので、それよりは小さいと言えます。  次の参考5は、先ほどの第4表の「一般労働者及びパートタイム労働者の賃金上昇率」 を、県庁所在都市と地方小都市とに分けてみたものです。県庁所在都市では産業計は 0.5%の上昇、地方小都市は0.6%で0.1ポイント高くなっています。製造業は県庁所在 都市が0.3%ですので、地方小都市の方が少し上がっております。  最後の頁に付表がありますが、労働者構成比率の中で、パートタイム労働者の比率が 平成17年は23.2%でしたが、平成18年は24.5%と1.3ポイント上がっております。男女 別の労働者数の比率は、平成17年は男性55.5%、平成18年が55.3%、女性は平成18年が 44.7%で0.2ポイント上がっております。年間の所定労働日数は平成16年度が260.6日、 平成17年度が260.4日で0.2日減っております。以上が賃金改定状況調査の結果について です。  次に、資料No.2は春季賃上げの妥結状況です。前回の小委員会の時点での集計は前回 提出しておりますが、その後新たに集計が出されたので、現時点のものを出しておりま す。連合の中間集計は7月6日のものが一番新しく、平均賃上げ方式の規模計でいくと 1.83%で、昨年の同一対象が1.70%ですので0.13ポイント高くなっています。規模別も それぞれそこにあるとおりです。日本経団連の方は、大手は6月7日が最終ですから変 わっておりませんが、中小企業は6月28日の中間集計が最新で1.55%、昨年は1.45%で すから0.1ポイント上がっております。  次頁は夏季賞与・一時金の妥結状況について、連合、日本経団連が集計したものです。 連合の方は7月5日のものが最新で、夏季一時金については、月数でいくと2.39ヶ月、 昨年は2.34ヶ月ですから0.05ヶ月のプラスです。金額は74万164円で、昨年と比べると 2万769円のプラスでした。年間では4.92ヶ月で、昨年と比べると0.13ヶ月のプラスで した。回答額は159万720円で、昨年と比べると6万703円のプラスです。日本経団連の 方は6月28日の集計ですが、総平均で妥結額は今年が89万494円、昨年が87万1.535円で したから2.18%アップしております。製造業は3.23%のアップですが、非製造業は0.27 %のマイナスという結果です。 ○今野委員長  ただ今の説明について、ご意見、ご質問があればお願いいたします。 ○加藤委員  教えていただきたいのですが、資料No.1の最後の頁の付表で、パートタイム労働者比 率、男女別労働者数比率等が記載されていますが、例えば第4表の賃金改定状況調査に ついては、パートタイム労働者の変化を除去する、要するに、パートタイム労働者比率 を固定するということでしたが、昨年のパートタイム労働者比率に合わせて計算し直し たと理解していいのかどうかということが1点。それから第4表をみていたら、例えば 男女計があって、その下に男女別のデータの記載がありますが、Dランクについては男 性、女性とも一定の上昇が見られ、男女計になると0.0になっています。パートタイム 労働者の構成比の変化については除去した計算方法とのことですからその影響ではない と思いますが、どのような影響が考えられるのかを教えていただきたいと思います。 ○前田勤労者生活課長  第4表の計算については、平成16年の目安制度のあり方に関する全員協議会でパート タイム労働者比率の構成比の変化の影響を除去するために計算方式を改めたわけですが、 基本的には昨年のパートタイム労働者の比率で固定して、賃金上昇率を計算するやり方 になっております。2点目について、例えばDランクで男が0.1%上昇、女が0.2%上昇 となっていますが、男女の構成比の変化については、それほど大きくはなくなってきた ので構成比変化を除去することをやめており、この場合のDランクについては、女性の 比率が少し上がったということで、男、女それぞれ上がっているのですが、全体の平均 では0.0になることの影響ではないかと思います。 ○今野委員長  他にいかがですか。 ○中野委員  同じく第4表ですが、例えば医療,福祉の男女計のDランク、医療,福祉の男のBラ ンクについて、男女計のDランクは昨年1.6%の賃金上昇率で、今年はマイナス1.7%で すし、男のBランクはマイナス1.6%だった昨年に対して、今年は6.2%と数字が非常に 大きく変わっているように思うのですが、何か特別な原因があるのでしょうか。 ○前田勤労者生活課長  医療,福祉における女性の比率については、そもそもその産業内の労働者の中で非常 に高いということがあり、今回の調査でも女性が86.4%という割合になっています。特 に、Bランクの女性は89.2%で、女性の割合が非常に多く、逆に、男性のサンプルが非 常に少なく、たまたま調査対象となった方の賃金がかなり影響して、特にBランクなど はそのような影響があるのではないかと思っております。また、はっきりとは言えませ んが、医療,福祉の場合、病院などにたまたま医師がいらっしゃると、その部分でかな り高くなったりという影響はあると思います。 ○中野委員  医師がいらっしゃるというのは、新たに医師が採用されたという意味ですか。 ○前田勤労者生活課長  上昇という意味ではそうです。 ○中野委員  去年も医師はいて、今年もいらしたという意味での上昇ということですか。 ○前田勤労者生活課長  去年はいない所で、パートタイムのような形で、ある日だけ来る医師がいるとか、そ のような場合にそこが上がることはあると思います。 ○今野委員長  この調査は2時点で同時に働いていた人についてですね。 ○前田勤労者生活課長  同時に働いていた人ではなくて、昨年の平均と今年の平均ということですので、必ず しも両方いた人とは限らないです。 ○今野委員長  そうですか。 ○前田勤労者生活課長  はい。両方いた人でやると、そもそも構成比変化というのは関係ありませんので、その ようなことをやる必要はないのです。 ○今野委員長  わかりました。他に何かあればお願いいたします。 ○池田委員  対象事業所というのは、今年と継続している事業所の話でしたでしょうか。 ○前田勤労者生活課長  調査対象の事業所は、毎年変わっています。ただ、1つの事業所について、昨年6月 時点の賃金と今年6月時点の賃金と両方書いていただき、それで比較しているというこ とです。 ○池田委員  選ぶ場合は意識的に違うところを選ぶなど、そのようなことではないのですか。 ○前田勤労者生活課長  事業所センサスを基に、一定の割合で抽出するということです。 ○池田委員  偶然、同じ場合もあるということですか。 ○前田勤労者生活課長  否定はできないですが、あまりそのようなことはないと思います。 ○今野委員長  他にご意見があればお願いいたします。なければ、事務局から配付された資料につい ては以上とさせていただき、前回の小委員会でお願いしておりますが、今年度の目安に ついて、労使双方の基本的な考え方を表明していただければと思います。まず労働者側 からお願いいたします。 ○須賀委員  全体をまとめて、私から発言させていただきます。4つの点で述べたいと思います。 1つ目に、経済環境についての認識ですが、読み上げたいと思います。  景気は確実に回復を続けている。これまで、比較的に遅れているといわれた地方にも 及ぼうとしている。政府の経済見通しによると本年度は昨年を上回る2%台の名目成長 率を見込んでいる。企業業績は、産業や企業によるばらつきはあるものの、全体として 改善が進んでおり、収益力はこの10年間で最も高いレベルにある。  各種調査における中小企業の景況観をみると、昨年と同様、「緩やかな回復基調」の 流れのなかで、DI等の指標は引き続き改善の方向で推移している。欠損企業の比率や 倒産発生率なども、長期的にみれば平均的な水準まで下がってきている。このような状 況下にこそ経営努力が問われている。  一方、労働者生活はこの間置き去りにされたままである。厚生労働省の調査(「国民 生活基礎調査」)によると、「生活が苦しい」世帯が前年比0.3%増の56.2%に達し、 過去最悪を更新した。特に、世帯の年収が300万円未満の低所得層が増加する一方で、 1,000万円以上の高所得層が増加しており、所得の二極化が加速している。さらに、消 費者物価も上昇に転じ、低所得層の生活苦がさらに深刻化しており、低所得層の改善に 結びつく政策対応が急務である。  2つ目に、雇用環境と最低賃金の役割について読み上げます。  労働市場も改善が進んでいる。2006年5月の完全失業率は4.0%、有効求人倍率は1.07 倍となっており、人員不足ぎみとなっている職場・地域も増えている。こうした労働市 場の動きもあり、足下では時間当り賃金の上昇がみられる。  構造面の変化にも目をむける必要がある。すなわち、雇用形態の多様化が低所得・不 安定雇用の増加を伴って進んでいることである。雇用者に占めるパートや派遣労働者な ど、いわゆる非典型労働者の比率は、既に3人に1人の割合に達している。フリーター やニートが増加を続け、そこから抜け出すことが難しくなっているとの調査結果なども 報告されている。持続可能な安心して暮らせる社会であるために、社会的な職業能力開 発や就職支援などの雇用政策や国策としての少子化対策と同時に、「生活できる賃金」 をナショナルミニマムとして保障することが極めて重要になってきている。  3つ目として、最低賃金の水準について読み上げます。  現在の最低賃金時間額の全国加重平均は668円である。この水準は、生計費や実勢賃 金の動向からして低すぎる。  この水準は、仮に法定労働時間を目一杯働いたとしても、月額11万5,500円程度にし かならない。連合が、マーケットバスケット方式によって試算した、さいたま市におけ る若年単身労働者の必要最低生計費は月額14万6,000円(時間額840円)であり、これを 大きく下回っている。本年、宮崎県延岡市における最低生計費の調査も実施したが、そ こでも13万4,000円(時間額760円)との結果を得ている。  なお、連合の2006春季生活闘争の直近集計においても、平均賃金方式で1.80%の引き 上げ率になっており、パートの時給引き上げ額においても、11.2円と、確実に改善して いる。  一方、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」の一般労働者の所定内時間当たり賃金は、 1,830円であり、現在の最低賃金時間額の全国加重平均668円は、その36.5%にすぎな い。一般労働者の第1・十分位や高卒初任給と比べても、それぞれ67.1%、72.3%の水 準でしかない。また、同調査におけるパートタイム労働者の所定内時間当たり賃金は974 円であり、この水準も考慮する必要がある。  さらに、諸外国の最低賃金水準と比べ、制度面での違いはもとより、わが国の最低賃 金水準が見劣りするものであることにも、大きな問題がある。  また、この数年間の最低賃金の影響率は極めて低く、1998年以前は2%台であったも のが、ここ数年1%台前半に推移しており、その存在感は希薄になってきている。少な くとも、単身でも最低限の生活ができる水準を実現すべく、明確な水準改善を図ってこ そ、最低賃金の存在感を社会にアピールしていくことができる。  4つ目に今年の目安にあたって(見解)ということで読み上げます。  『存在感のある最低賃金とするために、生計費・各種賃金指標の現行水準や環境変化 の動向を踏まえ、2桁台の目安を提示すべきであり、少なくとも昨年を大幅に上回る必 要がある』と考えております。以上です。   ○今野委員長  他に追加することはありますか。なければ使用者側からお願いいたします。 ○杉山委員  使用者側委員を代表して、本年度の目安に関して3点ほど申し上げたいと思います。  第1は日本の景気の現状、特に地域経済の現状についてです。日本経済全体が回復基 調にあるにしても、地域間や産業間、企業規模間、さらには同じ地域あるいは同じ産業 の企業の間においても、景況、業況観にばらつきがみられるという事実をきちんと受け 止めておかなければならないと考えております。地域経済の現状について申し上げます と、日銀が発表した2006年7月の「地域経済報告」では、全体としては着実な回復基調 にある旨が記されているものの、「景気が拡大している地域」(東海・近畿)がある一 方で、「緩やかながら持ち直しの動きが続いている」(四国)、あるいは「持ち直しの 動きに足踏み感がみられている」(北海道)との地域もあることから、「依然として地 域間でばらつきがみられる」と指摘しております。  さらに、雇用環境について「地域間の格差は引き続き大きい」との記述や、所得環境 について、増加又は改善している地域が多くある一方で、「やや弱めの動き」(北海道)、 あるいは「低調に推移」(東北)といった地域があるとの分析を示しております。日本 経済全体の指標をみるにあたっては、すべての地域が同様の状況にあるのではないとい うことを留意する必要があるということであります。  第2に、最低賃金の影響を最も受けやすい中小零細企業の現状について申し上げます。 2006年版の『中小企業白書』では、中小企業の景況は改善しているものの、大企業に比 べて遅れがみられるとした上で、伸び悩んでいる地域(東北・中国・四国地方)や業種 (建設業・小売業等の非製造業)によってばらつきがみられ、依然として注視が必要で あると分析しております。  また、景気が全般的には良くなってきていると言われる中、企業倒産件数が増加傾向 にあることも見逃すことができないと考えております。帝国データバンクの調査では、 2005年度の倒産件数が四半期ベースで一貫して増加しておりますし、東京商工リサーチ の最新のデータ(2006年5月度)では、倒産件数が8ヶ月連続して前年同月を上回って おります。  さらに注目すべきはその内容であり、帝国データバンクの2005年度調査では、業績不 振などによって資金繰りに行き詰まり、やむなく倒産した、いわゆる不況型の倒産が倒 産件数の7割以上(73.0%)にのぼっているだけでなく、負債総額1億円未満の中小零 細企業の倒産が6割弱(55.7%)にも及んでおり、景気回復の波に乗り切れず、不況に あえぐ中小零細企業の厳しい実情が浮き彫りになっております。  そして、このことを裏打ちするかのごとく、6月の日銀短観によれば、中小零細企業 にとって生命線ともいえる資金繰り判断において、大企業は22ですが、中小企業は0で して、その間でかなりの温度差があり、同様の傾向は金融機関の貸出態度判断(大企業 25、中小企業11)でも認められます。  さらに、原油をはじめとする原材料費が高騰し、企業経営を圧迫し続けていることな どを背景に、最近の業況判断は再び悪化に転じており、中小零細企業の先行き不透明感、 不安感は高まっております。6月の日銀短観での業況判断によると、先行きの見通しに ついて、大企業のDIは全産業でプラス21であるのに対して、中小企業のDIはマイナ ス4となっており、中小企業の先行きに対する不透明感、不安感が数値としても顕著に 表れております。  このような先行き不透明感、不安感は、今後の事業活動に関係する設備投資計画にも 大きく影響を及ぼしており、設備投資を大企業が全産業平均で前年度比11.6%増と総じ て増やす中にあって、中小企業は製造業、非製造業ともに前年度比がマイナスであり、 全産業ではマイナス11.0%となっております。このことは、中小零細企業が単に現在の みならず、将来的な観点からしても引き続き厳しい状況に置かれる可能性があるという ことではないかと考えております。  さらに申し上げれば、日本経済の今後に大きく影響するアメリカや中国をはじめとす る国際経済情勢、あるいは為替や株価の動向、グローバル化の進展に伴う国際競争の激 化、ICT化による技術革新への対応など、企業経営を取り巻く先行きの不透明感、不 安定感の原因には枚挙にいとまがないというのが日本企業の現状であります。  このような厳しい状況下においても、日本企業は競争力の強化に努めるとともに、自 社の存続と従業員の雇用の維持を最優先に、労使で懸命な努力を続けているということ を念頭に置いた上で、今年の目安について考えるべきだと考えております。  最後に、第3として今年の目安に関する使用者側の見解を申し上げたいと思います。 先ほど事務局より平成18年の賃金改定状況調査結果の説明がありました。この第4表の 産業計・ランク計の賃金上昇率は0.5%となっておりますが、ランク別ではAランクと Bランクが0.6%に対して、Cランクは0.4%、Dランクは昨年に引き続き0.0%と厳し い現状を反映した結果が出ているとみております。同様の結果は他の集計結果にも表れ ておりまして、日本経団連が発表した今年の賃金交渉結果をみても、大手企業の最終妥 結結果は5,813円、アップ率は1.76%で、昨年より僅かに増額はしているものの、妥結 額平均が5年連続で5,000円台となるなど、ほぼ横這いで推移しております。  さらに、途中集計ではありますが、中小企業の回答状況3,910円(1.55%)も、大手 企業と同じくほぼ横這いとなっておりまして、自社の状況を踏まえて賃金交渉を行った 結果、賃金の底上げを意味するベースアップ、あるいは賃金改善を実施しなかった企業 労使が大多数を占めたということを意味しております。このことは、賃金改定状況調査 の第1表において、賃金改定を実施しない事業所の割合が52.4%と、5年連続して50% を超えていることからも明らかであります。この経年的な数値が持つ意味も十分認識し た目安にすべきであります。  したがって、今年の目安については、日本の景気が全体としては回復しているものの、 地域間や企業規模間のばらつきが大きいこと、特に最低賃金の影響を大きく受ける中小 零細企業においては自社の存続すら危ぶまれる厳しい経営環境にさらされ、先行きに対 する不透明感、不安定感が高まっていること、そして今年の賃金交渉において賃金の底 上げを意味するベースアップ、あるいは賃金改善を実施しなかった企業労使が大多数を 占めていることに加え、賃金改定を実施しない事業所の割合が5年連続して過半数を上 回っていることなどから考えると、基本的なスタンスとして、今年度の目安は賃金改定 状況調査の第4表で最も数値の低かったDランクの賃金上昇率である0を考慮すべきで あり、有額の目安を示すことは適当ではないというのが使用者側の見解であります。以 上です。 ○今野委員長  他に補足することがあればお願いいたします。 ○原川委員  お手元に資料を提出しておりますので、これについて説明させていただきます。平成 18年度中小事業所の賃金改定状況という横組みのコピーがあると思います。先ほど厚生 労働省の調査の第1表にあった賃金改定状況と同じような項目について、私ども全国中 小企業団体中央会は、毎年「中小企業労働事情実態調査」という調査を行っており、こ の調査の中に賃金改定の項目を盛り込んでおりますが、これを抽出し、速報的にまとめ たものです。2枚目に書いてあるように、この労働事情実態調査は、平成18年7月1日 時点で調査をしたものですが、従業員300人未満の事業所約5万事業所を対象に行った ものです。調査対象の業種の割合としては製造業55%、非製造業45%の割合で調査をし ており、毎年回収率は大体40%、2万事業所程度です。3頁目をご覧いただくと、賃金 改定状況の取りまとめは7月1日から6日までに寄せられた回答のうち、従業員規模が 29人以下の事業所4,914事業所について集計したものです。  1の表は従業員数29人以下の企業の賃金改定状況、その下が従業員数9人以下の企業 の賃金改定状況の結果です。私どもの調査では「引上げた」「引下げた」「7月以降に 引上げる予定」「7月以降に引下げる予定」、いわゆる凍結ですが「今年は実施しない」 「未定」といった項目で取っていますが、厚生労働省が調べた調査結果と比較する意味 で、右から3つ目の項目に「小計」というものを入れ、未定を除いた数3,471企業を100% として、括弧の中のゴシックの斜形で書いてある割合をご覧いただくと、「引上げた」 と「7月以降に引上げる予定」とを足すと、約4割になります。一方、「今年は実施し ない」という凍結事業所が52.6%になっており、「引下げた」あるいは「7月以降に引 下げる予定」という企業を合計すると6.5%となります。したがって、「今年は実施しな い」とする企業、「引下げた」、あるいは「引下げる予定」である企業を合計すると、 29人以下の企業においては59.1%となります。その下ですが、このうちの9人以下の所 では同じく「実施しない」ものと「引下げた」、「引下げる予定」のものを合計すると 70.2%となりまして、7割を超える企業が改定を実施しない、あるいは「引下げた」、 「引下げる予定」という結果になっております。  次の頁ですが、この4頁目と5頁目は最低賃金のランク別で見ております。29人以下 の所では、ABCDの4つのランクのうちで一番上のAランクと一番下のDランク、こ の2つがこの中でも厳しい状況になっていると言えるのではないかと思います。という のは、Aランクで言うと「今年は実施しない」が53.7%、「引下げた」あるいは「引下 げる予定」が6.6%で、これを合計すると60.3%、6割の企業になる。Dランクでは「今 年は実施しない」が54.5%、「引下げた」あるいは「引下げる予定」が8.3%ですから、 62.8%になります。さらに、その次の頁の9人以下の所では、「今年は実施しない」が 64.6%で、この29人以下よりもさらに高くなっておりまして、「引下げた」あるいは「引 下げる予定」が7.9%ですから、合計72.5%。Aランクでも7割を超えております。D ランクではこれがさらに72.3%という数字になっておりまして、特に小規模零細におい ては賃金改定の結果は非常に厳しい状況になっている。全体として厳しいわけですが、 特に厳しいこういう結果になっているということです。  それから、今の使用者側の見解を補足させていただきますが、6月の終わりに出まし た中小企業庁の4月から6月期の中小企業景況調査によると、中小企業の景況は全産業 の業況判断DI、これは前期比季節調整済の値ですが、マイナス20.0ということで、前 期1月から3月期の19.3よりも0.7ポイント悪化しているという、四半期ぶりにマイナ ス幅を拡大したということになっております。  この調査では、今回の特徴としましては原油の高騰が中小企業の経営に大きな影響を 与えているということを指摘しているわけです。特徴的なのは仕入価格の高騰に売上単 価の上昇が追いつかないということです。原材料や仕入価格のDI、これは前期20.7か ら今期28.7ですが、8ポイント跳ね上がっているわけです。これに対して売上単価、客 単価のDIはマイナス19.5からマイナス16.6と、2.9ポイントしか上昇していないとい うことで、価格転嫁をしにくい状況を表わしております。  さらに、同じく中小企業庁の「原油価格上昇による中小企業への影響調査」を見ると、 これは4月に調査したものですが、原油価格の上昇によって収益に影響を受けている中 小企業が1月の調査の時点では65.6%でしたが、それよりも増加して7割を超えており ます。また、価格転嫁が全くできないというのが70.4%、0から20%の転嫁が20.5%あ りまして、この両者を合わせると価格転嫁が困難な中小企業は9割にのぼっております。 今のところ、中小企業はこういう状況の中でその経営努力などによって必死に堪えてい るということです。今後の見通しにつきましては、引き続き9割以上の企業が転嫁は困 難であるとしておりまして、今後、中小企業の収益はますます悪化することへの懸念が 一層強くなっているということです。  このようにみていきますと、中小企業の状況は先行きが非常に不安で不透明で、とて も最低賃金を引き上げるような状況にはないということがこの調査によってもうかがい 知れるわけです。是非、この賃金改定を行う際には、非常に厳しい経営状況であるとい うことをしっかりと認識して検討すべきであると思います。以上です。 ○池田委員  今までの説明と重複するところがあると思いますが、お手元に置いてある資料で簡単 にご説明させていただきます。これは中小企業の置かれた状況を説明するということで 商工会議所のLOBOの調査をまとめたものです。1頁目は調査の概要ですが、全国の 400の商工会議所が約2,500の業種組合について、一部個店を含みますが、景気動向につ いてヒアリングをして日本商工会議所がまとめたもので、中小企業が地域の景気動向を どのように感じているかを示しております。一応、調査は毎月実施しておりまして、今 日お配りしたものは最新の6月の調査の結果です。これからご紹介する数値は売上・採 算などの実数ではなく、先ほどもお話しましたDIの値でありまして、プラスで上向き 傾向、マイナスで下向き傾向を示しております。  2頁目の調査結果のポイントですが、一番上にあるとおり、6月の全産業合計のDI は2カ月連続でマイナス幅を拡大しているということで、景気が下向き傾向という見方 が強まっております。そこは製造業など、いろいろと業種別に書いてありますが、4頁 目の下のグラフではこの値の過去2年間の推移を示しております。昨年の5月、今年の 5月としては上がっておりますが、ここ4月からずっと下降傾向にあるということであ りまして、今お話しました5月、6月と下がってきているという状況です。  それから、今のお話と同じように、今回の調査結果で仕入コスト上昇を訴えることが 非常に多くなりました。仕入につきましては7頁目の下半分ですが、表の一番上の全産 業合計で3カ月連続で仕入単価が上昇するという見方が強まっております。ちなみに、 6月のマイナスは27.1ということで、平成3年5月の調査以来最も低い値でありまして、 先行き見通しについて括弧内の1年前と比べて仕入単価が上昇するという見方が強まっ ているということです。  次に、9頁目ですが、仕入・輸送コストの上昇について各地で寄せられた声でござい ます。一番最初に「仕入コスト上昇」ということで、このためにここに書いてあります ので後ほどでもお読みいただきたいと思います。  11頁ですが、商工会議所を全国9つのブロックに分けておりまして、ブロック別・全 産業業況DIではすべてのブロックでマイナス幅が拡大しておりまして、景気が下向き 傾向ということが強まっております。好調を伝えておりました東海地区も例外ではない ということです。以上最近2カ月で中小企業の景況観が悪くなっておりまして、どの地 域でも例外ではないということで、中でも仕入コストの上昇が見込まれていることがお わかりいただけると思います。なお、この調査結果につきましてご質問等がありました ら後日確認して連絡することにさせていただきたいと思いますが、今の観点から、全国 の商工会議所の事業者の声を聞きますと、昨年同様、今年も賃金改定を凍結している所 が多く、賃下げを行った企業もあるということで、厳しい状況の中で中小企業は雇用を 維持しながら経営を安定させるために懸命の努力をしているという結果が現れていると 思います。全国の企業数の99.7%、従業員数の約7割を占める中小企業が依然として厳 しい環境に身を置いている現状を踏まえまして、商工会議所としても今年度の目安はゼ ロにすべきだと考えております。以上です。 ○今野委員長  それでは、労使から見解を表明していただきましたので、何かご質問、ご意見があり ましたらお願いします。 ○樋口委員  昨年のときにも議題に挙がった地域別の話をどうするかということで、ABCDで見 た場合に1つは雇用情勢についてもかなりの違いがある。これは有効求人倍率でも示さ れていますし、失業率においても厳しい地域があるということは否めない。その一方、 今回の調査におきましてもABCDで賃上げ率にかなり違いが出ているということで、 これも含めて是非議論していただきたいと思っております。 ○今野委員長  その辺についてはまたお考えいただいて、今回の第4表をみましても昨年もAランク とDランクの差が大きかったのですが、今年も同様で、かつ昨年と少し違うのはDラン クだけ置いていかれている程度が大きくなっているのです。つまり、第4表をみていた だくと、AランクとDランクで賃金上昇率に0.6%の差があるということは昨年と今年 も変わらないのですが、BCが上がっていますのでDが置いていかれている程度が大き くなっています。そういう点も踏まえて、またご検討いただければと思っています。  それとは別に、今、労使の見解を表明していただきましたのでご質問、ご意見をお願 いします。  私から伺いますが、原川委員からご説明いただいた資料で、3頁目で今年度の賃金改 定状況について詳しくお話をいただいたのですが、例えば従業員29人以下で引き上げた のが35.2%という数字でした。これは今年の状況ですよね。昨年と比べてどんな感じで しょうか。   ○原川委員  昨年に比べて大体横並びです。 ○今野委員長  横並びですか。ほぼこんな数字なのですね。 ○原川委員  ほぼ横這いです。それで、1つ言い忘れましたが、私どもの項目では「未定」という のがありますが、この未定は4月に引き下げる予定というのを除いた未定なのですが、 ご覧のとおり、わりあい、率が高い数字となっております。これは3割、あるいは9人 以下で言うと3分の1ぐらいが未定なのですが、ここにも中小企業の経営状況の厳しい 状況というか、先行き見通しがはっきりしていないということもありまして、まだ決め られないという状況の中小企業が多いということが言えると思います。 ○今野委員長  未定の比率も、この時期だと昨年と大体同じような感じでしょうか。 ○原川委員  未定も昨年とほぼ横這いです。 ○中野委員  2点申し上げます。規模間の業況の格差の問題とか地域間の業況の格差の問題が言わ れているのですが、例えば第1回の目安小委員会で配付された資料の主要統計の23頁な のですが、業況判断の推移というのがありまして、そのDIが出ているのです。中小企 業のDIは大企業、中堅企業に比べたら押し並べて低い数値ですので、どういうところ で比較するかということが問題になってくると思います。それで、23頁の右側にある業 況判断のピーク・ボトムの比較をすると、例えば製造業でいうと、その前の1989年まで さかのぼるとバブルの前ですから、バブル以降でいうと1997年6月でマイナス7である ものが最近の動きでは、これは3月調査ですから少し変わっていると思いますが、プラ ス7になっている。あるいは、非製造業においても、前々回で1996年の5月、11月でマ イナス6が最近でマイナス9であるとか、かなりピーク時に近い数値だというところを 押さえておくのは大事なことではないか。DIはベクトル、方向性をみるものだと思い ますので、その意味で言うと、過去の景気の良い時、ピーク時と遜色のないような状況 になってきているというのが1点あろうと思います。  もう1つは地域間の問題ですが、これは調査の関係でいろいろあるようですので一概 には言えないと思いますが、私が見たのは内閣府の政策統括官室が5月30日に出したも ので、2月と5月ですから次は8月だと思いますが、地域経済動向が出されております。 そこでは良い所と悪い所があるのですが、北海道・東北でも持ち直しているという表現 になっております。近畿・九州・四国については緩やかに回復をしているということに なっておりますので、ベクトルとしては良くなってきていると考えております。その意 味から言いますと、地域間の格差があることについて否定はしませんが、労働者側が須 賀委員から主張しましたように、押し並べて全体的に、規模間においても地域間におい ても景気拡大局面が波及してきて総じて良くなってきているという認識で審議をお願い したいと思います。  雇用との関係におきましても、今日配付していただいた各都道府県の失業率の推移を みると、平成17年と今年の1月から3月期を比べて悪化しているのはBランクの京都、 Cランクの福井、宮城、福岡、北海道、Dランクの岩手、秋田、青森ということで、悪 化した各ランクにおける都道府県の比率でいうと、BランクとCランクと比べた場合に 同じ16県同士ですので、Cランクは4県悪化している、Dランクは3県しか悪化してい ない。こういう状況を見ますと、去年との比較などを考えた際にその辺りのところもか なり詳細な分析をしていただいて議論をお願いしたいと思っているところでございます。 ○樋口委員  統計の見方ですが、1年間たたないと季節調整できないので、平成18年の1月から3 月は季節調整をしていない数字だと思うのです。それで、平成17年の平均と平成18年の 1月から3月を比較するのは難しいと思うのです。 ○中野委員  それは承知していますが、数値が出ている範囲の中で考えなければならないので、と りあえずそのように考えました。 ○川本委員  今いろいろとご意見があったようですが、私ども、先ほど見解を表明させていただき、 また、中央会並びに商工会議所から資料提示がありましたけれども、このDI値を見て いただいても、グラフがたくさん載っておりますので見ていただければ、要するにマイ ナス局面がずっと長く続いてきているということです。したがって、苦しい状況が長年 続いているというのは短期に非常に状況が悪くて苦しんでいる状況と意味合いが全然違 うわけでありまして、全国の中小企業を眺めた場合に、多くの所が非常に長い期間にわ たって厳しさにあえぎ、そして実際に賃金改定もほとんど行われない所が多いという実 態をよく認識しておく必要があるのではなかろうかと思っております。先ほど、ピーク とボトムの話がありましたが、この23頁を見ても、実は中小企業も、これは点線であり ますが、長らく水面下の中で波打っているわけでありまして、水面上に出た動きの中で 波を打っているという状況ではないと思います。そういう意味でも、長期にわたってい るということを是非ご理解いただいて資料を見ていただければと思います。 ○今野委員長  今言われた23頁というのは、先ほど中野委員が言われた前回の資料の23頁ですね。 ○川本委員  はい。それを見てもそうですし、その他、商工会議所の資料も下の方にグラフが載っ ておりますが、すべてゼロからマイナスのマイナス数値の中の動きが長く続いていると いうことを是非ご認識いただきたいという意味でございます。 ○原川委員  関連ですが、1つご紹介したいのですが、今の資料の26頁に中小企業景況調査の業況 判断DIの推移があります。これを見ながらDI値なるものをもう少しみていくと、こ れは前年同期比のDI値ですが、好転、不変、悪化と。好転の割合から悪化の割合を引 いたものの値ですが、これは1月から3月の数字ですが、全産業が好転が10.7%、悪化 が37.7%、不変が51.6%ということでDIはマイナス27.0となっております。製造業も 同じでありまして、好転が15.7%、不変が52.4%、悪化が31.9%ということで、前年同 期に比べて、好転した割合よりも悪化した割合の方が多いということです。割合が多い ということはそれだけ悪化していると言っている人の方が好転という人より多いと。し かも、全産業でいくと大体3倍強になっているわけですから、そういう点も考慮に入れ る必要があるということを申し上げたいと思います。 ○今野委員長  今おっしゃった何%という数字は26頁にはないですよね。 ○原川委員  26頁にはないです。この調査を前年同期比と前期比の両方でDIを出しているのです が、別の資料でございます。 ○久保委員  目安を上げると全部の労働者の賃金が上がるということではないと思うのですが、も のすごく単純化すると、第1回のときに出された資料で未満率若しくは影響率というも のが出されていますから、仮にその目安を出して法定最低賃金が上がったとしても、前 年の部分でいけば影響率の1.6というところまでの範囲の人たちが法律上そこまで上げ なさいと言われる人たちだという理解をすればいいのですよね。 ○前田勤労者生活課長  目安というよりは、地域別最低賃金で決めたときの問題ですね。 ○久保委員  要は、法定最低賃金が上がったことによって法で強制される。 ○前田勤労者生活課長  直接影響を受けるという所はその影響率のところに。 ○加藤委員  今、久保委員が言ったことに関連しますが、もちろん目安を審議するに当たっては経 済や企業を取り巻く環境について議論するということは重要だと思いますが、何よりも 大事なのは、最低賃金の絶対額ですから全国加重平均668円という現行の水準が適正な のかどうかということを十分踏まえた議論が必要なのだろうと思っています。そういう 意味では、今、久保委員が申し上げたとおり、影響率は際立って低いわけでありまして、 これは前年度になるのだと思いますが、賃金構造基本統計調査で推計した全労働者ベー スでの影響率はわずか1.3%ですか、ほとんど変化が見られない。だから、そうした実 情をよく踏まえて、我々が示そうとしている目安額は、それなりに絶対額との関連で検 討しながら社会的に影響力のあるものにしていかないと、時間をかけて何を議論してい るのかということになるのではないかと思っておりますので、そこをお願いしておきた いと思います。 ○川本委員  ただ今、未満率、影響率に対するご指摘があったのですが、実は、ここ何年か、各地 方における最低賃金を改定している所、あるいは改定せずにゼロの所、様々あるわけで すが、いずれにしても、目安もゼロのときもありましたし、示さなかったこともあるの で、そういう話合いの中の経済環境等も踏まえたものであったわけですが、地方最低賃 金審議会の審議の結果、上げた所でも非常に小幅ですので、影響率は結果として小さい 数字になってくるのは当然であろうかと思っております。したがって、影響率を上げる というように考えた場合は単純に最低賃金、地域別最低賃金をそれぞれ大幅に上げると いう話と全く同義だと思っておりまして、私どもは影響率はあくまでも結果であるとい う捉え方をしているということであり、今年の目安につきましてはゼロという考え方を とっているということです。  それから、先ほど労働者側の方から見解表明がありましたが、2点ばかり思っている ことがありまして、これは意見であります。1つは、所得の二極化というお話がありま したが、二極化というイメージは、どちらかというと、フタコブラクダというイメージ がどうしてもあろうかと思います。実際は、山の形をなしているものの、その端と端が どういう変化を起こしているかというのが実態であろうかと思いますので、私といたし ましては二極化という言葉には違和感を覚えているということは申し上げておきたいと 思います。  また、賃金につきましては、一般労働者の賃金との比較というのが出てくるわけです が、日本におきましては一般労働者における賃金は労働の対価としての部分も当然あり ますが、もう1つは企業における従業員の雇用政策、要は、どう長期に人に来ていただ くか、また、維持していくかという問題の中の雇用政策部分としての賃金部分も当然あ るわけでありまして、比較というのはそのことも踏まえて本来行われるべきであろうか と思っているということを申し上げておきたいと思います。 ○池田委員  労働者側見解の厚生労働省賃金構造基本調査のパートタイム労働者の974円というの はものすごく高い数字なのですが、実際は都心でも、特別な人でない限り、こんなにパ ートタイム労働者の人たちに払っている所はないのです。この調査というのはどういう ところから出てくるのですか。974円というのは基本調査で高い所ばかりをとっている のではないかと思って、非常に高いなと。前の840円というのは埼玉辺りだったらこれ ぐらいかなと思いますけれども、それよりも上回って974円というのは非常に高い数字 だと思います。 ○須賀委員  今のご質問にだけお答えします。前回の第1回資料の19頁です。そこに出ております 平成17年の974円のこの数字を指しておりますので、是非ご理解いただきたいと思いま す。 ○池田委員  厚生労働省の方に、どういうところをとって調査されたのかなということなのです。 974円というのは実態賃金と合っていないのではないかと。いや、今までのデータもそ う出ているのでしょうけれども、あまり実態と合っていないのではないかと思います。 パートタイム労働者の人の賃金ですからね。 ○前田勤労者生活課長  賃金構造基本統計調査では、所定労働時間が短いとか、所定労働日数が一般より少な いということでパートタイム労働者を定義して調査しまして、今、須賀委員が言われた ように、この19頁の所が企業規模10人以上のパートタイム労働者の所定内給与で支給し たのが、平成17年は974円という結果でございます。 ○池田委員  非常に高いということだけ申し上げておきます。 ○樋口委員  常用パート労働者ですね。 ○前田勤労者生活課長  常用です。いずれにしても、賃金構造基本統計調査ですから常用労働者ですので、期 間の定めがないとか、定めがあっても1カ月以上とか、月18日以上雇い入れられるとか、 そういう条件がかかってくるということです。 ○池田委員  特定の産業の特定の場所の所ならばあり得るかもしれませんけど。 ○前田勤労者生活課長  産業とか企業規模はすべてやっていますので、特定の産業のものではありません。 ○今野委員長  よろしいですか。 ○池田委員  まあ、高いということだけ申し上げておきます。経営者は実際にこれだけ払えない。 ○今野委員長  他にございますか。 ○須賀委員  先ほど、労働者側の委員から影響率、未満率のことについてそれぞれ意見を申し述べ たわけですが、私どもは影響率、未満率をどうこうしようということではなくて、全体 を支える最低賃金としてどういう水準が妥当なのか。もちろん、この場はその目安を出 すその目安の検討をする場ですから、ここは上げ幅になってくるのですが、私どもが言 っているのはどういう水準が最低賃金として妥当なのかと。結果において、それが前年 に比べていくら上げればいいのかということであろうと思っていまして、そういう趣旨 で影響率、未満率のことを気にしているわけですので、ここはひとつ念を押しておきた いと思います。  それから、これは私たちの発言のペーパーを事務方が先に配っていただいたのでやや こしかったのですが、配らなかったらいろいろとご質問もなかったかもしれませんが、 ご意見がありましたのでそれに2点だけ反論しておきたいと思います。二極化の意味と いうのはいろいろと捉え方があります。違和感を持たれようと持たれまいと構わないわ けですが、私どもの認識では真ん中の高さが落ちてきて右左の裾野が広がっているとい う意味での二極化というように理解をし、そういう意味で二極化という言葉を使わせて いただきました。  それから、一般労働者との比較の妥当性までは踏み込まれなかったのですが、企業の 雇用政策との関係の部分も考慮した水準での比較をすべきではないかと。裏を返せば、 最低賃金の対象者はそういった雇用政策を無視していいのだというようにも捉えられる 発言ではなかったかと受け止めましたので、そう受け止めたことだけ表明をしておきた いと思います。以上3点です。 ○中野委員  影響率の関係で1点申し上げたいと思います。今年の影響率がいくらという問題では なくて、それも重要な問題だとは思うのですが、去年3円上げた、しかし影響率はほと んど変わらなかったと。 ○今野委員長  ちょっとだけ動いています。 ○中野委員  ほんの少し動いています。 ○今野委員長  でも、増加率は大きいですよね。 ○中野委員  それはどう見るかですからいいのですが、ほとんど変わらないということだろうと思 います。3円上げてこれぐらいの影響率です。上がったと言っても前々年と一緒ですか ら、そういうところは一つ考えていただきたい。もう一つは、生活の面から言えば、去 年も含めて、一時金が今年も随分上がっているのです。最低賃金の労働者は一時金の対 象にならない人が多いわけですから、その意味で生活の面から考えれば、経営側も利益 の配分は一時金でと主張されているぐらいですからどうしてもそうなってきてしまって いるのですが、そこも考えていただかないと、生活の面から考えると、二極化の話では ないですが、最低賃金が対象になるような労働者と一般労働者の生活の差は広がるなと いうことがあると思います。したがって、最低賃金は働く者のセーフティネット、一番 大切なものですから、生活という側面から考えて判断をしなければならない。そういう 意味から言いますと、最後ですが、668円という水準が本当にいいのか。目安制度のあ り方に関する全員協議会でも労働者側は随分主張してきましたが、地域のランクの問題 もいろいろと出されておりますが、その水準で本当にいいのかというところを基本に置 いてご検討をお願いしたいと思います。 ○今野委員長  中野委員が言われたことをもっと強く言ってしまうと、他の労働者との比較というの は年収でやれという話になってきますかね。 ○中野委員  それは、セーフティネットという意味での生活と言えば、生活は年収でみるべきでし ょうね。賃金ということになればまた違う考え方がそこに入り込む余地があると思いま すが。 ○勝委員  今の未満率、影響率の問題なのですが、それ自体が上げるということが目標ではない というのは非常に理解できたのです。ただ、歴然としたデータの事実としてはランク別 でかなり大きな差がある。つまり、Aランクは非常に低いのに対してCDは高いという ことであるとすると、その絶対水準を探るための未満率、影響率であるということだと すれば、例えば地域別で傾斜させるというような考え方は労働者側にあるのでしょうか。 ○加藤委員  この場で意見交換をするのは少し荷が重いなと思っているのですが。 ○今野委員長  その点については順番に入れ替わり3人とも同じような発言があったのですが、少し ご検討いただけますかね。我々としてはそういうことも重要だと思っていますので、今 日は主に労使のご意見を聞くということにしていますので、ご検討いただいてまた次回 にでも。 ○加藤委員  個人的な意見ですが、荷が重いと言ったのは、今日発言するのが荷が重いというより は地域間格差の問題を議論するにはもう少し様々な角度で議論すべきではないかという 思いがあります。というのは、例えば今日議論したデータは規模30人未満の賃金改定状 況調査が対象であるということが1つで、それだけで議論をしていいのかということが あります。その他に、これは仕組みの問題でもあって、近年はずっと20数年にわたって 各ランク同率で引上げ額を示してきたのだけれども、別に、一律的にそうしなければい けないということは決めてないにしろ、慣行として20数年にわたって同率の引上げ額で 行ってきているわけです。そのことについて議論するのは荷が重いというのは、今日と いうよりも、この目安小委員会の今年の目安を決める議論の中でだけ議論するというの は少し荷が重いなという、それは印象です。 ○今野委員長  どういうことになるかわかりませんが、一応、我々としてはそういうことにすごく強 い関心を持っているということだけお伝えをしておいて、できればご検討いただければ と思います。それでどうするかというところまで考えているわけではないのですが、ご 検討いただけるといいなと思っているのです。 ○中野委員  検討してくれと言われている中身がもう1つはっきり明確にわかっていないのでお聞 きしたいのですが、例えば影響率の問題とか、あるいはそういうことが違ったりしてと いう議論が提案の中にあるとするならば、それはすぐさま絶対額水準ということになっ てくると思うのですが、それは絶対額水準で目安を出すということを含めて議論をしろ ということなのですか。 ○今野委員長  いや、これは昨年も同じような議論をしたわけですけれども、我々としては、先ほど も言いましたように、第4表の数字もああいう数字ですし未満率もこういう状況なので、 目安を出すときにこの地域間の格差の問題というのは少し考えるべきであろうと思って いるのです。ただ、そのときに、今、中野委員が言われたのはもっと先を言われたので す。それを今度絶対額で出すのかという先の問題を言われたわけですが、そこまで考え ているわけではないのですが、いずれにしても、私どもは非常に重要な論点だと考えて いるということなので、先ほど加藤委員から個人的な意見ということでご意見をいただ いたわけですが、労使にお願いをしたいのですが、中で少し考えてきていただければと 思うのです。 ○中野委員  考えろと言われれば、考えなければいけなくなるのかもわかりませんが。 ○今野委員長  嫌だというのも結論なのですが、広い意味で考えて。 ○中野委員  考えて嫌だと言うのも結論としてあると思いますし、それはいろいろあると思います が、考えるにあたって考慮しなければならない。それで、具体的にどういうことが求め られているのか。今は絶対水準まで求めてないということですから、そこはわかりまし た。そうすると、どういう理由でそういうふうにしなければならないかという明確な理 由が、去年は公労会議のような所で意見交換をしたと思うのできちんとした議事録が残 っていないのですが、提案の理由でこうだからこうなのだということを明確に言ってい ただかないと、いろいろな理由がある中だとどのように考えればいいのかわからないと 思うのです。 ○今野委員長  未満率を見ても、あるいは4表を見ても、例えば非常に単純な話ですが、ABCDを 同額でバッといくと地域に対する影響度が違いますよね。それでいいのかということな のです。 ○樋口委員  委員長は言いづらい面もあると思うのですが、これは私が考えていることですが、労 働経済学の視点に立って考えたときに最低賃金の引上げによって雇われる人の生活は改 善されるだろう。ところが、逆に今度は、雇われない人が増えてしまうようなことは考 慮に入れていく必要があるのではないか。要は、労働需要の側面で考えたときに賃金の 引上げということになりますから、労働需要曲線に沿って議論すれば、その分だけ逆に 雇用が減ってしまう可能性があるだろう。その点を考えると、労働者側としても賃金の 引上げが全部一律で行われることが望ましいのかどうか。特に、雇用情勢が片方で厳し いようなところがあるわけで、そこで賃金が上がった場合にさらに雇用機会が失われて しまうというようなことは公益委員としても考えていく必要があるのではないかという ような視点から申し上げている訳だと思います。 ○中野委員  それはわかるのですが、最低賃金の水準と実勢賃金の水準がどういう状態にあるかと いうことと大きくかかわるのではないかと思っておりまして、そういう意味から言うと、 名前は忘れましたが、アメリカの学者の中で最低賃金の引上げは雇用にあまり影響はな いという資料のようなものも出されていると漏れ聞いたことがありますし、地域によっ てもその状態が違うと思いますので、そういうことが大局的に一般論として今の実情の 中で言えるかどうかということをきちんとお示し願わなければ、一般論で具体的な地域 の最低賃金を決めることは不可能だと思います。もっと具体的に、なぜこうなのだとい うことを、例えば我々が地方の代表の方々に、あなた方の所はもうしょうがないのだと 言えるような材料をいただかないと議論の俎上には乗らないのではないかと思っており ます。それで検討をしろということですから、公益委員の要請ですから、検討はしなけ ればならないのだと思います。だけど、それを検討するときには「実態はどうなんだ、 そんなこと言われたって」と必ず言われますので、それを一般論でやれというのは非常 に難しいかなと思います。 ○樋口委員  一般論というよりも、影響率等々についてはそれぞれのランクについてはもう出てい るわけです。 ○中野委員  でも、その影響率も、Bランクの影響率の方がDランクよりも高い所もありますし。 ○樋口委員  ランク別に見るとですね。 ○中野委員  そうです。ですから、それは一概に言えないのです。Dランクのグルーピングの中で 全部がそういう傾向だということならばわかりますが、Dランクの中でも影響率が非常 に低い所と多少高い所、Aランクの中でも影響率の高い所もあるわけです。それをひっ くるめてABCDで言うことも非常に困難ではないかと思いますし、この実態に合わせ てどういうことかということをお示しいただきたいということです。 ○今野委員長  おっしゃるのはよくわかるのですが、ここはなかなか難しいところなのです。なぜか というと、我々はABCDランクベースでいろいろなことをやっているわけです。今、 たまたま、ここで話題になっているのが未満率とか影響率ですが、我々が検討しようと しているのは他にもたくさんあるのですが、それはランクの中で県別でばらついている わけです。でも、単純に言ってしまえば、そこは丸めてランクごととやっているわけで す。本当は、そこがものすごく変だったらランクの入れ替えとかで作業をするというこ とです。ですから、おっしゃるように、県によってばらつきが非常に大きいということ は私も認識しておりますが、考えとしてはランクごとでやろうということが1つのベー スになっていますので、中野委員の言われたこともわかりますが、全体的にランクごと で未満率などを見たらDランクとAランクでは状況がかなり違うなということは明らか だろうと思うのです。いずれにしても、今日は、我々はまたそういうところに関心があ るぞということを我々として表明したので、私どもはまた持ち出す可能性がありますの で、是非ともご検討いただいて、労使ともそうなのですが、それに対するご意見はいろ いろあり得ると思いますが、それにもかかわらず少しまた考えていただければと思うの です。 ○川本委員  今の件ですが、私、この話を聞いていて思っておりますのは、この目安制度を続けて きたのですが、目安ができて短期間の間にこういうやり方になったのですが、その目的 とするところは各県で決めていくと非常にばらつくだろう。したがって、ばらつきをな るべく押さえるために目安の出し方、全体の平均値を各ランクにかけていくというやり 方になってきたということです。今回、公益委員から示された考え方というのは、そう はいっても地域によってかなり状況が違うので、ランク間においてはある程度ばらつき を実勢に合わせてばらつかせていってもいいのではないか、ここに来てそのように考え 方を変えた方がいいのではないかというご提案であると捉えてよろしいでしょうか。 ○今野委員長  そういうことが重要だと思っていますので検討したいということです。ですから、こ こは私の考えですが、すぐ変えろということでもないかもしれないですが、先ほど樋口 委員から労働経済の立場から言っていただきましたが、負荷がかなり違ってきてしまっ ているということの認識があるのです。ですから、それについては考えるべき重要なポ イントの1つだと考えているということです。 ○川本委員  そういうお話がありましたので、私の方は持ち帰りまして検討させていただきたいと 思います。 ○樋口委員  平たく言えば、一律にしたときにどちらに引っ張られるかわからない、結局のところ はDランクの方に全部が押し寄せられてなっていく可能性もあるわけです。あるいは逆 に、Aランクの方の高い最低賃金の引上げ率という方向に収斂するかどうかわからない ので、我々は水準について申し上げているのではなくて、差をつけることの意味という ものをもう一度ご検討いただきたいということで申し上げているのでありまして、どち らが有利とか不利というつもりで言っているのではないということです。 ○須賀委員  確認ですが、ここ20数年来にわたって今の方式で一定率に基づいて各ランクごとの金 額を決める、それは結果的にばらついているのです。傾斜といっていいのかどうかわか りませんが、その構造を変えろと言っているわけですか。 ○今野委員長  私はすぐ変えるということを言っているのではないのです。それは非常に重要な論点 だと思っているということです。 ○須賀委員  そのことが重要な論点だということに関して意見を持ってこいという趣旨ですね。 ○今野委員長  極端なことを言うと、そんなことは重要でないと思っていらっしゃるのだったらそう いうことです。1つの可能性としてですが、重要だと思っているけれどもそういう制度 変更、慣行変更なのだからそれは違う手順があるだろうということがあれば、それもそ れで意見です。もともとそんなものは大したことないというのであれば、それはそれで 意見です。 ○樋口委員  だから、ある意味では、原点に戻って今までやってきたことがいいかどうかというこ とも含めてお考えくださいということなのではないでしょうか。 ○須賀委員  そのときに、樋口委員がおっしゃっている原点に戻るというのは、この場での検討の あり方そのものの原点なのか、純然たるデータベース、データを見る視点としての原点 なのか、ここを明確にしてください。 ○樋口委員  我々が公益として考えるのは、国民の立場に立ってという視点から考えていくわけで す。そのときに、今まで一律であったから今後も一律ということが望ましいのかどうか ということを考えているわけで、その点について労働者側はどう判断するのかというよ うなことです。 ○中野委員  それは昨年も申し上げたと思いますが、一昨年の12月に目安のあり方に関する全員協 議会報告を出しているではないですか。5年に一遍それを議論するということになって いますが、それとのかかわりはどうなのか。その原点に戻るというときは全員協議会で 議論をしてこれまでやってきたというルールも変わることになりますし。 ○樋口委員  それは伸び率を一律にするということも今までそれに入っているということですね。 ○中野委員  慣行としてということで入っているのではないですかね。 ○樋口委員  そこは確認しておいた方がいいと思いますが。 ○中野委員  この最低賃金決定要覧の176頁に書いてあるのですが、記の1の(2)の表示方法に ついて。「目安の表示方法については、上記(1)のランク設定の必要性と密接な関係 を有するが、ランク制度の維持を前提とするならばこれまでの慣行(目安は額で示すが、 その算定においては各ランク同率の引上げ率となるようにしてきたこと)が定着してい ることを踏まえ」云々となっているわけです。そうすると、ここでは各ランク同率の引 上げをするということは明確に慣行であると言っているわけですから、その慣行を変え るということになれば、それ相応の理屈と議論が必要だと私は思っているわけです。し たがって、先ほどの理由をお聞きしたいのも、どういう理由でこの慣行を変えなければ ならないのか。しかも一昨年の12月の報告ですから、それだったら一昨年のこの報告が そもそも間違いではないかということも言わなければいけないわけですし、事情は一昨 年とそんなに変わっていないと思いますので、その辺りについて納得できる説明ができ る材料が必要なのではないかと私は考えているということです。 ○今野委員長  私が考えているのは、我々が言ったことに対する、例えば地域に与える負荷がだいぶ 違ってくるのではないかという1つの認識の問題と、それをどう実現するかということ の手続とか進め方の問題と、両方あると思うのです。中野委員が言われたのは後者の問 題を言われたわけです。とりあえずどういう認識を持っていらっしゃるか。つまり、会 社もそうだと思いますが、進め方の問題でルールをつくっても、現場が動いていたのを フィードバックしながらルールも少し変更だというのであれば、ルールだから短期的に 難しいけれども長期的には変えようかという一種のフィードバックがいつも行われるわ けです。それと同じように、我々としては地域に対する負荷の違いがすごく大きいと考 えているので、少なくともそれについてどういう認識を持っていらっしゃるのかという ことについてはご検討いただければという趣旨だと受けとっていただきたい。さらに、 その認識が一致しないとそこから先も進みませんので。 ○加藤委員  負荷を何で測るかということもありますね。 ○今野委員長  それもありますね。 ○加藤委員  だから、一つは、負荷を測る物差の重要な一つは影響率だとは思っていますので、そ れで先ほどから影響率の話を出していたのですが、荷が重いと言ったのは今年の賃金改 定状況調査などの限られたデータで、しかも慣行の変更、いわば制度変更を議論するの に第3回目安小委員会という今年の目安を決める場でその制度変更なり、現状の評価な り分析なりを行うことが荷が重いという意味で言ったのです。それは中野委員が言った ことと同じです。 ○樋口委員  昨年、会長からの話でそこのところについては検討していくということが示されたよ うに記憶しているのですが、いかがだったでしょうか。 ○今野委員長  その負荷の程度の認識はいろいろあったとしても、こっちは非常に大変だと思ってい るし、中ぐらいだということもいろいろあると思いますが、そういう認識がもし一致す れば、この場ではないかもしれませんが、今度は慣行を変えるような議論をすることに なるのかもしれません。 ○中野委員  これは労働者側でまとめた意見ではないので私個人の意見なのですが、その負荷のか かり具合をどのように判断するのかということが議論の俎上にきちんと乗ることは、あ る意味では現行の水準そのものがその地域の中でどういう負荷になっているかというこ とを議論しなければ意味がないのではないかと思っているのです。そうすると、水準の 議論になりますので、かなり大きな議論であるので、少なくともこういう場ではない。 私は、全員協議会などの場で議論をしていただくことを否定しているつもりは全然あり ませんので、全員協議会の場はそういう場だと思っていまして、前回の全員協議会の場 での労働者側は水準で考えるべきだと主張した経緯もありますから、そういうことにつ いてはいいのではないか。ただ、ここの場で今年決めろとか何とかというのは、あと1、 2回しかない中で本当に可能なのだろうかと思っているということです。 ○杉山委員  全員協議会の報告に書いてあることの意味合いを考えてみる必要があるのです。ここ で検討したのは表示方法がいかにあるべきかということを検討したので、例えば各AB CDランク別に去年も結果的に3円とか2円とかの差があったわけですし、しかもそれ を論議する過程でDの所はゼロのベースアップ率に対して平均でいいのか、各ランク別 に1円の差をつけるとか2円の差をつけるという変化があってもいいのか、ということ 自身は去年も論議されたと思うのです。その結果として今年も平均の率を使ってそれぞ れのランクにかけようというのは結果でそうなったわけなので、それであれば去年の段 階でそういうこと自身が目安全協でやっているのだからという理由で門前払いをしない といけない筋合のことだったのだろうと思うのです。しかし、去年は門前払いをしてお りません。それを労使双方がある程度受け止めてそういう変化をつけることも含めて論 議をしたのだろうと思います。それに対して、去年論議したということも含めて、今年 は去年よりもさらに労使の中でそれを論議して、もう少しはっきりした態度を示しても らいたいというご希望だろうと私たちは受けとめるわけです。というのは、使用者の方 も、それぞれ各県の代表の意見もありまして、必ずしも賛成ばかりではない、反対もあ る。したがって、使用者は使用者の方でそれぞれの団体の中でもう少し地方の意見も聞 いて、ある程度の意見をまとめたいというように考えている次第なので、この目安制度 のあり方に関する全員協議会報告の意味合い、去年の論議の過程を考えて、門前払いを すべきようなことではないだろうと私は思いました。 ○今野委員長  今日、加藤委員からも中野委員からもご意見をいただきましたが、それぞれ、私ども が急に言った問題ですので個人的な意見として発言されたと思いますので、我々のこう いう問題提起をどう捉えるかということについてお考えいただいて次回以降にでもご意 見をいただければと思います。ということで、今日はこの辺で終わりますが、他にござ いますか。 ○前田勤労者生活課長  全国労働組合総連合から要望、DVDが出されていますので配付しております。 ○池田委員  次回でよろしいのですが、今、地域の問題もあるのですが、業種によってすごく違い があると思うのですが、医療介護などは国の援助もあるせいか、すごく金額も高いです し、パートタイム労働者比率が全体ではなくて業種別にどのぐらい推移があるかという こととか、それはデータで出ているのでしょうか。影響率が業種別にどのぐらいあるか という、先生方が悩んでいるのは地域もあるけれども、良い業種に引っ張られていると いう可能性もあるかもしれない。平均をとった場合に、すごく業績の良い業界にパート タイム労働者が増えているとかですね。 ○今野委員長  パートタイム労働者比率全体についてはここではお示ししているので、今のご意見は 業種別にどうかというお話だと思うのです。 ○前田勤労者生活課長  それは出る範囲で次回、この賃金改定状況調査のパートタイム労働者比率の業種別に ついてお出ししたいと思います。 ○今野委員長  それでは、それはお願いするということで、今日はこの辺で終わりたいと思います。 本日の署名ですが、須賀委員と原川委員にお願いしたいと思います。第3回の目安小委 員会は7月21日午後1時半からです。茜荘の2階の会議室で開催いたしますので、よろ しくお願いいたします。では、今日は終わります。                  【本件お問い合わせ先】                  厚生労働省労働基準局勤労者生活部                   勤労者生活課最低賃金係                   電話:03−5253−1111                        (内線 5532)