資料4−2

第4回 振動障害等の防止に係る作業管理のあり方検討会 資料
   「電動工具の騒音測定と重量表示について」
  標記の件、電動工具の騒音測定と重量表示について、個別に説明する。
2006年7月28日
日立工機(株)開発研究所
主管研究員
大津 新喜

I. 電動工具の騒音測定について

   現在、電動工具の騒音に関する指令は欧州のみに有り、当社はその欧州指令に従って騒音を測定し、表示している。以下、騒音に関する指令と騒音測定の概要を示す。

1. 欧州における騒音に関する指令と騒音測定
 現在、欧州における騒音に関する指令は、機械指令と屋外使用機器騒音指令の2つがある。以下、2つの指令と騒音測定について示す。

1.1 機械指令(Directive 89/392/EEC, Amended 98/37/EEC)
 機械指令は、欧州で販売する電動工具を含む全ての機械について、取扱説明書に騒音値の表示を義務づけた指令であり、1995年1月より施行されている。また、機械指令に整合する規格としてEN 60745(手持形電動工具の安全に関する規格)があり、騒音測定方法が規定されている。当社は、この規格に基づいて騒音を測定し、取扱説明書に騒音値を表示している。

1.2 屋外使用機器騒音指令 ( Directive 2000/14/EC, Amended 2005/88/EC)
 屋外使用機器騒音指令は、屋外で使用する一部の機械について、本体及び取扱説明書に騒音値の表示を義務づけ、更にその中の一部の機械については、限度値によって騒音規制する指令である。この指令は2002年1月より施行されている。なお、この指令に対応する具体的な騒音測定方法は、指令の中に規定されている。当社においても、一部の電動工具が該当し、指令に基づいて本体及び取扱説明書に騒音値を表示している。以下に、該当する機械の例を示す。
(1)騒音値の表示義務だけの機械(41種類)
チェンソー、モルタルミキサ、高圧洗浄機、ヘッジトリマ など
(2) 騒音値の表示義務と限度値により騒音規制される機械(22種類)
手持ち式コンクリート破砕機とピック、
芝刈り機、芝エッジトリマ、発電機(400kW 未満) など

2. 騒音測定方法
 機械指令に基づく騒音測定方法と、屋外使用機器騒音指令に基づく騒音測定方法を示す。

2.1 機械指令に基づく騒音測定方法
 騒音の測定方法は、機械指令に整合する規格EN 60745(手持形電動工具の安全に関する規格)に規定されている。この規格には、電動工具に共通する騒音測定条件を示した規格と、製品ごとに定めた製品個別の規格がある。この製品個別の規格を要約すると、無負荷にて騒音測定する場合と負荷にて騒音測定する場合に分かれる。以下、共通の騒音測定条件と、無負荷および負荷にて騒音測定する例を示す。

2.1.1 電動工具に共通する騒音測定条件
電動工具を、半無響室または屋外自由空間の反射面上の高さ1mにセットし、工具を中心とする半径1mの位置の5箇所(図1)にマイクロフォンを設置して測定する。
図
図1 マイクロフォンの位置
(EN 60745-1:2003より抜粋)

2.1.2 無負荷にて騒音測定する例
 無負荷にて騒音測定する例として、ディスクグラインダを例にあげて示す。
(1) ディスクグラインダの外観
 図2にディスクグラインダの外観を示す。
(2) 騒音の測定方法
負荷最高回転速度にて無負荷運転する。
測定回数無負荷の場合、3回測定しその平均値を求める。
図
図2 ディスクグラインダの外観

(3) 取扱説明書への騒音に関する表示
機械指令に従った表示例を図3に示す。準拠する規格と騒音値を表示している。
図
図3 騒音に関する表示
(当社、取扱説明書より抜粋)

2.1.3 実負荷にて騒音測定する例
 実負荷にて騒音測定する例として、ハンマドリルの例をあげて示す。
(1)ハンマドリルの外観
 図4にハンマドリルの外観を示す。
(2) 騒音の測定方法
負荷圧縮強度40N/mm2以上のコンクリートブロックを穿孔する。(図5)
製品質量により使用するビット径と有効長さを選択する。
押付け力は製品が安定する荷重とする。
測定回数実負荷の場合、5回測定しその平均値を求める
図 図
図4 ハンマドリルの外観 図5 ハンマドリルの測定方法
(EN 60745-2-6:2003より抜粋)

(3) 取扱説明書への騒音に関する表示
 機械指令に従った表示例を図6に示す。図3と同様、機械指令では負荷、無負荷などの騒音測定方法にかかわらず、同じく表示する。
図
図6 騒音に関する表示
(当社、取扱説明書より抜粋)

2.2 屋外使用機器騒音指令に基づく騒音測定方法
 屋外使用機器騒音指令には、製品ごとに測定条件、測定方法が定められており、当社において該当するハンマを例にあげて示す。
(1) ハンマの外観
 図7にハンマの外観を示す。
図
図7 ハンマの外観
(2) 騒音の測定方法
測定条件工具を中心とする仮想の半球面を想定し、半球面上の6箇所にマイクロフォンを設置する(図8)。質量10kg未満の製品では、仮想半球面の半径rは2mとし、10kg以上の製品では仮想半球面の半径rは4mとする。
負荷地中に埋設されたコンクリ−トブロックに先端工具を固定し(図9)、ハンマ本体を鉛直下向きに取付け、安定した連続打撃運転が得られるのに十分な力を鉛直下向きに加える。
 なお、屋外使用機器騒音指令により限度値で規制される機械は、第三者評価が必要であり、欧州の認証機関に騒音測定を依頼している。
図 図
図8 マイクロフォンの位置
(Directive 2000/14/ECより抜粋)
図9 ハンマの測定方法
(Directive 2000/14/ECより抜粋)

(3) 取扱説明書および機体への騒音に関する表示
 屋外使用機器騒音指令に従った表示例を図10、図11に示す。図10は取扱説明書への表示例で、準拠する規格、製品重量、認証機関、騒音値を表示している。
図11は機体への表示例で、騒音値を規定のマークにて表示している。
図
図10 騒音に関する表示
(当社、取扱説明書より抜粋)


図
図11 機体への表示
(当社、ハンマの表示例)


II. 電動工具の重量表示について

 電動工具への重量表示について、現状と課題を示す。

1. 重量表示の現状
 現在、カタログや取扱説明書に重量を表示している。

2. 重量表示の課題
 見やすい箇所(例えば、機体の銘板)に重量表示する場合、印刷版の変更に膨大な時間とコストが掛かる。

以上

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