資料4

第3回 看護基礎教育の充実に関する検討会 主な意見


【保健師教育について】

1.看護基礎教育で習得する看護技術と臨床現場で求められるものとのギャップに関するもの、及び 2.看護基礎教育と新人看護職員研修との役割分担に関するもの

 現場ですぐに求められる能力を充実させなければいけないなら、現状として教育内容に格差があるのではないか。一方、就職先がこんなに減っているのに、教育を充実させる必要があるのか。

 卒業時点に1人でできると判断している割合が、どの項目においてもそれほど高くない。保健師教育ももっと充実させる必要があるのではないか。

 保健師の就職者が減少したのは、地方財政の問題から行政保健師を雇用する余裕がなくなってきたということと、看護師より楽なので保健師は辞めない傾向にあり、新たな就業の隙間が少ないこと。結論は、今の看護大学が持っている保健師養成コースは今から減らしていかなければならないのではないか。


3.看護基礎教育の内容に関するもの

 1年課程と合同カリキュラムでの内容がどのようにオーバーラップしているのか、どういうふうにズレているのか。教育課程、養成機関によって教育内容が違うことになるので、きちんと示してほしい。

 保健師に特化して教育する学校では、大部分が半年でなく1年でやっている。単位をたくさんやり、実習に力を入れている。

 1年間で教育を行っている所では、どのような科目が必要であるとして21単位を超える教育を行っているのか。それは現場が必要だと認識している内容なのか。大学で統合カリキュラムはどういう考えに立っているのか。また、メリットとデメリットについてどう考えるのか。教育をした結果の効果としてどうなのか。

 保健師教育として何がミニマムで卒業までに何をやらなければならないのか。議論しなければいけないのは社会のニーズにあった教育をするにはどうかということ。

 21単位以上の教育を実際に行っている学校の理由を聞きたい。ニーズがあるは ずだから、その科目は何なのか。

 実習も保健所と市町村に限られていたが、実際はもっとカウントしてもよい場所があるのではないかと思う。

 これから保健師は、訪問看護ステーション、地域、医療機関の外来にも必要となる。生活習慣病に対する保健指導が非常に重要なので、病院でももうすでに保健師を雇ってきているので、それがもっと拡大していく。基礎教育も行政保健師の実習だけを期待するのではなくて、もう少し広い分野でやることが大事。


4.その他

 保健師には、産業保健師、臨床保健師という名前のもとで患者さんの退院指導などに携わっている人、養護教諭になっている人もいる。保健師のほとんどが行政に就職しているわけでない。

 新卒であっても8割の人たちが家庭訪問をすぐにしないといけない状況にあるが、家庭訪問技術をしっかり身に付ける状況にないのが実態。その能力は、産業保健、学校保健にも応用できるが、現在の2週間、3週間の実習では足りない。

 需要以上に保健師が活用されることを期待している。特に行政保健師としては、地区診断も重要であり、いわゆる行政企画ができるという能力が非常に重要。看護基礎教育に在宅看護論が盛り込まれ、保健師だけでなく看護師も在宅看護ができるようになり、保健指導も病院などいろいろな場で実施されるようになってきた。在宅看護も保健指導も、看護師、保健師双方に必要な能力。だから統合カリキュラムの意味がある。

 訪問看護と家庭訪問を分けて考える必要がある。保健師が行う家庭訪問は、相手が求めなくても法律に基づいて訪問する場合があり、自律性のある、高い技術が必要だ。

 看護師になる者も保健師の知識が必要。データはないが、3年課程の看護師と違い、大卒ナースが統合カリキュラムで教育を受けてきたことで社会にとってメリットがある。



【助産師教育について】

1.看護基礎教育で習得する看護技術と臨床現場で求められるものとのギャップに関するもの、及び、2.看護基礎教育と新人看護職員研修との役割分担に関するもの

 採用されたときには若干の差があるが、数カ月するうちにある程度同じような形になってくる。しかし、6カ月で新人助産師を1人で夜勤に入れるということは現場ではできない。現場はとにかく早くということを求めますが、実際はそんなに頼りにしていない。それはリスクをきちんと考えているから、技術を全部到達させて卒業させるのか、ということをこれから考えていかなければいけない。

 一番の問題点は、臨床を教育の中でどのようにするかということ。学生のままで分娩をいろいろな所でとっていくのか、違う方法があるのか。臨床側で感じることは、大学生はものすごく不安がっている。

 今後は助産師の役割が非常に拡大し、社会にとって非常に重要な役割をする。医師と同じぐらいの能力が助産師には必要になってくることを考えると、分娩に関しては卒後研修の必修が重要ではないかと思う。

 レジデント制度のような形をイメージしているが、学生の身分だけではいろいろな所に手を出せず、大変中途半端な状況にあるので、臨床でどのようなやり方をすればよいのか、考える必要がある。


3.看護基礎教育の内容に関するもの

 助産師教育の場合には、看護師教育の母性看護学での実習等がベースになっていく。施設での実習の制約等で看護学校での母性看護学実習の内容が乏しくなっているが、看護師教育での母性看護学の実習等の充実が望ましいのか。それとも、助産師のほうを充実していくべきなのか。 

 看護基礎教育の中での母性看護学実習を充実させたい。特に、産褥期は、産科の場合、看護師も当然働くので現在の実習では非常に不十分。

 これから15年、日本の産婦人科医不足が続く。医者がお産をできないならば助産師がせざるを得ない。今までみたいに病院に産婦人科医がいて、その手助けをするのが助産師という考えではなくて、助産師が1人あるいはグループで正常出産を行うことを頭に入れてカリキュラムをつくっていただきたい


4.その他

 保健師も助産師も教育を受ける時間数がそれぞれ違うようだが、卒業して実際の現場で働く上で、受けた時間によって質の確保という面で違いが出るものなのか。それとも、全部変わらないものなのか。

 4年間で助産師を取って、その教育は今までの教育のままでいいということではなくて、研修体制を含めて教育体制を変えなくてはいけない。4年間で助産師と看護師を一緒にということになってくると学生たちは大変忙しい状況にある。保健師も同じ。これから地域完結型の医療体制をとっていくならば、それに合ったような教育体制をしていかないといけない。

 学部の中で選択コースとしてやるのは、選択してやる学生にとっては併行してやる本来の看護師の教育も圧迫してしまうし、助産師の教育は非常に過密なカリキュラムの中でやらなければいけないこと、また、希望者が多いにもかかわらず、選択に人数に限りがあるために希望者を受け入れることができない。カリキュラムの過密さであるとか、実習は10年前までの実習と全然違う。学生も変わってきており、3日3晩寝ないでどんどんやれという一昔前の学生とは全然違う。そういうことを考えたときに、4年間の中で選択コースとしてやるのにはもう限界だろうと考えた。

 助産師の統合カリキュラムも、ある一定の母性看護学の知識が必要なのだという根底があって組まれている。統合カリキュラムなので専門学校より単位が少なくなっているのは当然。助産師の場合、選択をしていくので全員が履修ということではない。

 看護師の専門学校の多くは統合カリキュラムをとっていない。統合カリキュラムと単独の看護師のベースのカリキュラムとの区別というものをきちんとしていかないと現実的には混乱をする。

 産科医不足の中で助産師が自律的に動く場面を増やしていく必要があり、それだけの能力を持った助産師をきちんと教育する必要がある。教育をする機関によって到達状況が違うというデータがある。養成所・短大専攻科と大学を比較すると、1人でできるという所が養成所・短大専攻科のほうが到達度が高い。大学の場合には4年間の中で看と保と助を一緒にやることで、かなり過密なカリキュラムの中で教育が行われ、養成所や短大専攻科は教育期間を1年間とってみっちり教育していることの違いが出てきたのではないか。高い能力が求められる助産師を教育する上では大学の中で一緒にやるのはかなり困難なのではないか。

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