06/06/30 第6回社会保障審議会人口部会議事録 第6回社会保障審議会人口部会 ○ 日 時  平成18年6月30日(金)16:00〜18:00 ○ 場 所  厚生労働省 省議室(9階)  ○ 出席者  〈委員:五十音順、敬称略〉 阿藤 誠、岩渕勝好、鬼頭 宏、国友直人、小島明日奈、榊原智子        白波瀬佐和子、鈴木隆雄、津谷典子、樋口美雄、廣松 毅、宮城悦子 〈事務局〉 川崎二郎 厚生労働大臣、塩田幸雄 政策統括官(社会保障)        清水美智夫 参事官(社会保障)、城 克文 政策企画官 佐藤裕亮 社会保障担当参事官室長補佐        村山令二 大臣官房統計情報部人口動態・保健統計課長 高橋重郷 国立社会保障・人口問題研究所副所長 金子隆一 国立社会保障・人口問題研究所人口動向研究部長 亀田意統 総務省統計局国勢統計課長 ○ 議事内容 1.開 会 (城政策企画官)  定刻となりましたので、ただ今から社会保障審議会「人口部会」を開催いたします。  私は政策企画官の城と申します。よろしくお願いします。部会長選出までの間、議事 進行をさせていただきます。  委員の皆様におかれましてはご多忙の折お集まりいただき御礼申し上げます。審議に 入ります前に委員の紹介をさせていただきます。資料1-1に委員名簿を用意してござい ますのでご覧ください。  阿藤 誠委員、早稲田大学人間科学学術院教授でいらっしゃいます。岩渕勝好委員、東 北福祉大学教授でいらっしゃいます。鬼頭 宏委員、上智大学経済学部教授でいらっしゃ います。国友直人委員、東京大学経済学部教授でいらっしゃいます。小島明日奈委員、 毎日新聞社生活情報センター生活家庭担当部長でいらっしゃいます。榊原智子委員、読 売新聞東京本社生活情報部記者でいらっしゃいます。白波瀬佐和子委員、東京大学大学 院人文社会系研究科助教授でいらっしゃいます。鈴木隆雄委員、東京都老人総合研究所 副所長でいらっしゃいます。津谷典子委員、慶應義塾大学経済学部教授でいらっしゃい ます。樋口美雄委員、慶應義塾大学商学部教授でいらっしゃいます。廣松 毅委員、東京 大学大学院総合文化研究科教授でいらっしゃいます。宮城悦子委員、横浜市立大学医学 部産婦人科準教授でいらっしゃいます。  また本日はご欠席との連絡をいただいておりますが、山崎泰彦・神奈川県立保健福祉 大学教授、山田昌弘・東京学芸大学教育学部教授にも委員をお願いしております。また 幹事としまして関係省庁の方々にもご出席いただいております。  次に厚生労働省の事務局を紹介させていただきます。政策統括官の塩田でございます。 社会保障担当参事官の清水でございます。そのほか大臣官房統計情報部の村山人口動 態・保健統計課長、国立社会保障・人口問題研究所の高橋副所長及び金子人口動向研究 部長が出席しております。また本日は総務省より国勢調査抽出方法の説明のために、亀 田国勢統計課長にもお越しいただいております。なお、それぞれの委員の辞令につきま しては封筒に入れさせていただいておりますので、ご確認をいただければと思います。  それではまず初めに部会長の選出を行います。お手元の資料1-2の2ページ目、社会 保障審議会令第6条、第3項をご覧いただければと思います。部会に部会長を置き、当 該部会に属する委員の互選により選任する、ということになってございます。本人口部 会におきましては社会保障審議会の委員として3名の方が属しておられます。あらかじ めこの3名でご相談いただいたところ、廣松委員が適当ではないかという結論に達して おりますので、本人口部会では廣松委員に部会長をお願いしたいと思います。廣松委員 におかれましては部会長席への移動をお願いします。 ―部会長席へ移動―  それでは、以降の議事運営につきましては廣松部会長にお願いします。 (廣松部会長)  ただいま部会長にご推挙をいただきました廣松でございます。委員の皆様のご協力に よりこの人口部会の円滑な運営に努めてまいりたいと存じます。よろしくご協力のほど お願い申し上げます。  ただいまの部会長の選出と同じ社会保障審議会令の規定に基づき、部会長が部会長代 理を指名するということになっております。そこで、この部会長代理には阿藤委員にお 願いしたいと存じます。よろしくお願いします。では阿藤委員、どうぞ部会長代理席の 方へお移りください。 ―部会長代理席へ移動― (阿藤部会長代理)  廣松部会長よりご指名がありました阿藤でございます。皆様のご協力を得て部会長と 協力しながら円滑な議事運営に努めたいというように思っておりますので、よろしくお 願いします。 (廣松部会長)  どうもありがとうございました。本日はお忙しい中ではございますが、川崎厚生労働 大臣にご出席をいただいております。まず大臣よりごあいさつを承りたいと存じます。 大臣よろしくお願い申し上げます。 (川崎厚生労働大臣)  厚生労働大臣の川崎二郎でございます。廣松部会長を初め、委員の皆様にはご多用の ところをお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。どうぞよろしくお願い 申し上げます。  昨年の暮れに我が国の人口は減少段階を迎えました。例年ですと1月の元旦に発表す るところを、新年の我が国の一番大きな課題として、一人一人の国民に議論していただ きたいということで1週間ほど早めて発表させていただきました。通常考えていたより 2年ほど早く人口減社会に入ったことになります。  このような少子化の進行は我が国の経済社会に深刻な影響を及ぼし、次代の労働力が 減少することとなりますし、国全体の経済成長が低下することとなり、社会保障制度の 持続可能性を低下させることにもつながります。例えば年金制度について申し上げれば、 2050年までには合計特殊出生率が「1.39」に回復していくことを前提に制度設計されて おり、私どもは少子化に正面から向き合って対策を講じていくことにより、年金の信頼 性を高めていかなければならないと考えております。  この間、少子化の進行に大きな影響を与える要因として、この10年来の激しい雇用環 境の中で安定した職を得られなかった若者が、結婚や子育てに結びついていないことが 挙げられています。私どもは雇用政策についても少子化対策という視点を含め、取り組 んでいくことが重要であると考えております。  今後、このような政策展開を考えていく上においても、言うまでもなくしっかりとし た将来人口推計が不可欠であります。社会保障・人口問題研究所の作成する「将来推計 人口」が今後の我が国の姿を的確に示すものとなるよう、この人口部会における審議に おいて私がお願いしたいと考えておりますことは、 第一に、学問的にも様々な論議に耐え得るような質の高い議論をしていただきたい、 ということ。 第二に、アカウンタビリティが果たせるような、透明かつ堂々の議論をしていただき たい、ということ。 もう一つは、実は勝手なお願いなのですが、今年の予算委員会等の議論の中で、「人 口推計はどうなるのか」「いつ出せるのか」というご質問を3〜4人の委員からいただ き、私自身、答弁の中で「今年中に出す」と回答しております。  というのも、今年の12月予算のことが私の頭の中にあり、この予算は新しい総理の下 で作られるという意味で、まさに新しい総理のスタートになります。新しい総理がこれ からどのような日本の設計をしていくかという時に、今一番基礎となります将来人口推 計が定まっていないということになりますと、予算全体の審議や、私どもが設計をして いく政策展開にも大きな問題が出てくるだろうと考えているからであります。そのよう な意味で、できる限り早く推計が公表できるようにしていただきたい。年内に何とか皆 様の結論を出していただきたい。そして国民に広く公表したいと思っておりますので、 どうぞよろしくお願い申し上げます。  大変お忙しい中こうしてお集まりいただきまして、そして限られた日程の中でお願い 申し上げることは大変恐縮に思っておりますが、国の進むべき方向を決める一番大きな 要素でございますので、どうぞこの趣旨をご理解いただきまして積極的なご審議をお願 い申し上げたいと考えております。いずれにしましても、今日がスタートで、部会長を 始め、委員の皆様には大変お世話になりますし、結論を出していただく中で、私どもも 問題の解決に向かって歩んでいかなければいけないと思っておりますので、どうぞよろ しくお願い申し上げます。今日はどうもありがとうございます。 (廣松部会長)  大臣、どうもご丁寧なごあいさつをありがとうございます。我々に対する大変大きな サポートと同時に、叱咤激励をいただいたというように感じております。  大臣にはこの後若干お時間をいただけると聞いております。本部会の開催目的は国立 社会保障・人口問題研究所が次期人口推計を作成するに当たり、推計方法の考え方や仮 定値の設定について学術的な検証を行うというものでございますが、本日はせっかくの 機会でございますので、ここで部会の議事をいったん中断しまして、この部会の目的か ら離れますが、委員の方々と川崎大臣におきまして人口問題一般、あるいは少子化対策 について自由に意見交換を行いたいと存じます。  貴重な機会でもございますので、どうぞ委員の方、どなたからでも結構でございます のでご発言をいただければと存じますが、いかがでしょうか。 (岩渕委員)  長年、子育て支援策をウォッチしてまいりまして、最近かなり整ってまいりましたの で、そう遠くない時期に底入れも期待できるのではないかと、個人的には思っておりま す。これは推計とは全く関係がありませんが。  ただ日本が先進諸国に比べて一番欠けている点は何かと言いますと、子育ての意義、 あるいは価値、そのものに対する評価がまだまだ著しく低いということではないかなと いうように思います。それを是正するためには、もう既に雲散霧消してしまったようで すが、かつて国民会議を設置しておりましたけれど、そういうようなものをまた再構築 しまして、例えば退陣後の小泉さんあたりにやっていただけるともう少しパワーが出る のではないかというように期待しているところであります。具体的にどういうことをす るかというと、例えば家庭における男性の子育ての分担のあり方に対するいろいろな支 援というものも考えられるのではないかなというような感じで、淡い期待を持っている ところであります。  それからもう一点言わせていただきたいのですが、最近、大臣がNHKの番組などで 討論なさっているのを拝見しますと、その中で働き方の見直しとか、仕事と子育ての両 立支援という、女性の方々から強い意見が出されていまして、それはそのとおりだと私 自身も思うのでありますが、そういう意見を強調する余りといいますか、経済的な支援 は意味がないとか、あるいはそのことに対してあたかも反対のような意見も、まだ依然 として見られるという点は大変残念だなというように思います。  もちろん子育て支援、それから働き方の見直しが喫緊の課題であることは間違いない ことでありますが、かといって経済的な支援に対する否定的な見方というのもいかがな ものかというように思います。経済的に豊かな方、あるいは子育てに余り縁のない方で したらそういう見方をされるかもしれませんが、実際に子育ての場にある人というのは やはり経済的な負担というのはかなり大きい訳でございますので、赤ちゃんのミルクを 取り上げるようなことはなさらないように、そういう軽薄な意見に流されないようにお 願いしたいなというように思います。  その観点で行きますと、韓国が少子化対策に4兆円を出すというような報道もありま すが、日本でそういうようなことが可能とはとても思えませんけれども、これから概算 要求、それから年末の予算編成に向かって是非必要な財源をきちんと確保できるように 大臣の奮闘をお願いしたいというように思います。以上です。 (川崎厚生労働大臣)  ありがとうございます。 (鬼頭委員)  鬼頭でございます。私は現在、神奈川県の方でも次世代育成支援推進対策協議会のメ ンバーで現実に向かってやっておりますが、私自身の仕事は人口の歴史的な研究をやっ てまいりました。その点から具体的な提案ということではなくて、川崎大臣にお願いが ございます。  二点ございまして、一つは来年からすぐに合計特殊出生率が2.1近くまで上がったとし ても、人口の減少が止まるのは21世紀の後半であるということですし、現実的に考えれ ばもう21世紀中は人口の増加はあり得ない。これは数字の上ではっきりしております。 ですから今、岩渕委員からもご提案がありましたが、じっくりと腰を据えて施策を続け ていただきたいということです。途中であきらめないということを是非お願いします。  それからもう一点は、男女の役割の問題であるとか、働き方、ワークバランスなどの 問題がございます。過去にも人口が停滞したり減少したりした時代がございました。そ こから出生率がまた上がっていくとか、人口がまた増えていくのですが、どういうこと があったかと申しますと、経済社会の仕組みが大きく変わる、生活様式が大きく変わる、 今までの行き詰まった状態から何か新しいものが出てきた時に人口が増加しているとい うことです。いろいろな事柄を施策として入れていかなければいけないんですが、そう いうものをトータルに結びつけて大きく日本人の生活様式を変えていかない限りは、人 口の減少は止まらないと思っておりますので、ほかの省庁も是非巻き込んで強力な策を 打ち出していただきたいというように願っております。以上でございます。 (廣松部会長)  今の段階で大臣の方から何かご発言はございますか。 (川崎厚生労働大臣)  はい。岩渕委員が言われたとおり、今回の「新しい少子化対策」の冒頭では、「国民 意識」や「社会の意識」が変わっていかなければならないという書き出しになっていま す。  また、小泉内閣の政策において、一番の目玉としていたのは保育所を造ることであり、 待機児童ゼロ作戦を展開して参りました。そのことに対し、結果や成果が上がったのか、 という国会の質問が多いのですが、これらだけでは成果は上がらない、というのが現状 であります。少子化対策は経済的支援に加え、雇用の場の変化、特に女性の働き方など が互いに噛み合いながら、成果として現れてくるものだと考えております。したがって、 経済的支援も私どもは必要だと考えておりますし、保育所もまだまだ足りないと考えて おります。  さらには雇用の場も、働き方自体も全体的に変えていかなければいけないと思ってい ます。働き方に関する最近のアンケートを見てみると、結婚して子供をつくった夫婦か ら、3年ぐらいは子育てに専念したいという回答が多くなっています。  私どもの施策としては、女性は雇用され続けていた方がいいだろうと考えているので すが、他方で国民のアンケートによれば、女性は3年間ぐらい子育てに専念し、その後 仕事に戻りたいという回答が多くなっています。このように必ずしもワンパターンでは ない国民一人一人の意識を、どのように社会全体に合わせていくかという問題があると 私は考えております。  こういった議論の中に、どの部分に対して経済的支援をしていくべきかという観点か ら、乳幼児支援を手厚くすべきか、あるいは中学生・高校生まで拡大すべきかという論 争がありました。この点につきましては、結果的に乳幼児手当を強くした方がいいとい う結論に達しました。ただ実際に、どのような年末予算を組めるかはどなたが総理大臣 になるかによって、ある意味では変わるかもしれないと思っており、安倍さんや谷垣さ んや麻生さんに、総裁候補は少子化に対して言及してもらわなければできませんよと少 し刺激しているところであります。そのような意味からも、少子化問題を国民運動とし て、どのように盛り上げていくかが一番大事だと考えています。  それから鬼頭委員のお話のとおり、少子化対策は、最終的に国というものが変わって いかないと難しいと考えております。日本の社会は今までのままでも大丈夫、というス タンスをいつまでも持っていると変わらない。どこを出発点として社会全体が変わって いくのかを考えなければなりません。NHKでも私は申し上げましたが、扇谷さんから も発言があったように、「自分のお父さんには早く帰ってきてほしいが、日本という国 は365日、24時間働く社会に入っている。こんな社会は実は日本しかない。」元旦から3 日間ぐらいは皆休んでもいいという感じがするし、スーパーマーケットも本当に24時間 営業しなければならないのかとも思います。一つの問題として、そのような社会全体を どうするのか、しっかりと議論としていかなければならないと考えています。  それからもう一つの問題として、国際的な経済力を持ちたいからGDPの総和を日本 の経済力として見る考え方から、そろそろメジャーを人口一人当たりのGDPとかGN Pで考えていく必要があると思っています。結局は、一人が働いて生み出す生産高に人 口を掛けて国の規模が決まる。総和として、この規模をいつまでも保てと言われると、 外国人を入れる以外にはないという結論になってしまいます。その点についてはもう少 し皆の意識や現実の数字を見ながら、特に現実の数字を国民に示しながらやっていかな ければならないのではないかと思っております。そのような意味では、我々の主張を高 め、国全体のパイを人口が減っていく中で一挙に大きくするというのは無理な議論であ るということを申し上げさせていただきたい。  いずれにせよ、しっかり皆さまのご提言を受けながら、社会が変わる、という運動を 起こさなければならないと思っています。 (廣松部会長)  ありがとうございます。では樋口委員、どうぞ。 (樋口委員)  今、社会が変わることが必要だと。全くそのとおりだと私も思っています。また大臣 がおっしゃるように、雇用の見直し、働き方の改革といったものがやはり基本になって くるかなというように思っておりまして、それで今の少子化のというのは突き詰めると その原因は何だろうかということを考えれば、やはり労働市場の二極分化の問題がどう してもあるだろうと。あるいは働き方、社会のゆがみといったものがあるんじゃないか というように思っております。  それで、これを招いた原因というのは、やはり基本的にはどうも90年代に入っての低 成長というようなことが、それが長引いてきたということが一つの要因だろうと思いま すが、では景気が回復したらこれがもとの状態に戻るんだろうかということになります と、やはり大きな構造的な改革というものが世界的に起こっているというようなことが あり、グローバル化の問題であるとか、あるいは変化が非常に世界的に激しくなってき ている、そういうところにおける問題というのが顕在化してきているのではないかとい うように思います。  それで具体的にどのような施策をとるんだろうかということを考えますと、おっしゃ いましたように育児支援、経済的支援、あるいは働き方の改革、これは3本柱という形 で総合的にまとめていかなければならないと思います。その中で、例えば今まで政府が8 0年代にやってきた政策というものを考えますと、どうも必ずしも各省庁のやってきた政 策というものが同じ方向を向いていなかったんじゃないかというように思われるものが あります。例えば86年に男女雇用機会均等法が成立しまして、女性の社会進出をサポー トするというならば、そこにアクセルを踏んでいくということがありました。その一方 で大蔵省の方は、配偶者特別控除というような形で専業主婦が弱者であると、そこに控 除をつける。逆に、働くことが総体的に損になってしまうという制度をつくるというこ とですから、ブレーキを踏んだ。同じように厚生省の方は、厚生年金で第3号被保険者 を想定するというようなことで、これもブレーキを踏んだ。同じ内閣の中でアクセルと ブレーキが同時に踏まれていくというようなことを考えていきますと、どうも政策の方 向が省庁を超えて一本化していくということがなかったんじゃないかというように恐れ ています。  それで、これを考えますとやはり推進基本法をつくる必要がある。それで少子化につ いてはもうそれはできているということで、次世代育成の基本法ができているわけであ りますが、働き方については、ワークライフバランスについての基本法というものがど うもできていないんじゃないかと。これについての法的な根拠というものも、ほとんど 私は今のところ現存していないというように思っておりまして、これに向けた省庁を超 えた、あるいは局を超えた、さらには同じ局の中でも課を超えた施策の統合性というも のが必要になってきているというようなことから、是非そこのところをご検討いただき たいというように思っております。以上でございます。 (川崎厚生労働大臣)  樋口委員からのご指摘は、野党の意見も含めて働き方というものをきちんとしていく 必要があるということかと思います。私どもは労働法制全体で見ていきたいと言ってき たことも事実ですが、男女雇用機会均等法に必ずしも言える話ではないのですけれども、 ワークライフバランスという考え方をやはりどこかで打ち出していかなければならない と思っています。  先ほども申し上げましたが、「皆24時間、365日営業している一方で、家庭ではお父さ んやお母さんに早く帰ってきて欲しい」というのはちょっと無理な話になってきている から、そこの整合性を、例えば通産省と現実的なレベルですり合わせていかなければな らないかもしれません。言われるとおりだろうと私も思います。その点を論じるにあた ってはやはり国の優先順位として、少子化対策が優先順位の中でプライオリティが極め て高い、というところに持っていかなければならないと思います。言われるとおり、10 年前、20年前からそう言われながら、実際にはこの10年間は不況を克服することが最大 の課題になっていました。我が国は今「中国」という大きなライバルが出てきて、この ライバルに対してどのように克服し、自信を失った企業にどのように力を持たせるかと いう中、歩んできて、ようやく企業が良くなってきた。企業も女性の雇用を随分考える 時代になった。つい最近、松下や東芝の役員と会うと、すでに事務所の半分では女性の 従業員を50%採っているものの、理工系では、50%は女性を採りたいと思っている一方 で、残念ながら今は20%しか採れていない状態にある。こういった現状を文科省にしっか りと伝え、技術職の女性をもう少し育てていく。また技術職の方が先ほど言いましたよ うに、多少間が空いたとしても、また社会に復帰できる可能性が高い。そのような意味 から議論をさらに進め、経済環境が良くなってきたことを一つの契機に考えていきたい。  ただ、社会全体としては正規雇用が伸びていない。私は少子化が進んできた理由の一 つに、正規雇用が少ないことが挙げられると考えています。若者の正規雇用が弱い、こ れが大きな理由になっていると思います。やはり正規雇用がきちんとなされていくよう な時代を迎えなければならないと考えています。そこへ、やはり若者が結婚を考え、将 来を考えていくとよいのですが、どうも非正規雇用が余り多すぎるために、そこがうま くはまっていない。先ほど申し上げましたように、10年間は、そうは言うものの、日本 の経済は極めて厳しく、これを何とか回復することを優先させなければならなく、2年 ぐらい前、やっと一息ついてプラスになってきた。小泉さんが総理を引き受けた時は、 経済環境が底にあり、3年目ぐらいにようやく光が見えてきて、それで今日を迎えた。 それを大事にしながら、働き方の問題を大きく提言していかなければならない時代を迎 えていると思っています。 (廣松部会長)  ありがとうございます。ほかにご発言は。どうぞ阿藤委員。 (阿藤部会長代理)  一つは大臣のご発言の中に、この人口部会で学問的に論議に耐え得るような質の高い 議論をというご要望があって、これは大賛成でございまして、これまでも別に推計が何 かの影響力で行われたというようには私は思っておりませんが、今回ほどそういうこと がより強く要求されるということはないのではないかというように思いますので、我々 も心して科学的・学問的な議論をしていく必要があると考えております。  それで、人口問題・少子化の問題でありますが、私は一つ政治に要望したいのは、確 かに川崎大臣なり歴代の厚生労働大臣はこの少子化問題とか、あるいは内閣府で男女共 同参画の大臣がこの問題については発言するということではありましたが、どうもつい ぞ一国の総理の口から少子化問題、あるいは男女共同参画、こういう経済問題ではなく もう少し社会問題を、つまり将来の社会がどういうイメージのものだということを語ら れたということを余り聞いたことがないんですね。選挙でも専ら争点は年金問題であっ たり、経済の問題。さっきタイミングがいろいろそういう時期だったということもある のでしょうが、しかし我々が今求めているのは経済中心、経済オンリーの発想法ではな くて、あえて言えば経済外というか、いわゆる経済に対する社会、家族の在り方、社会 のシステムの在り方、男と女の関係の在り方、そういうものをもう少しビジョンとして 示していく。それをまた国のリーダーシップをとってくださる方が積極的に発言してい くと。  どういうイメージのものを我々は目指しているのか、ということがどうも少ないよう な感じがするんですね。その点が先ほども樋口委員からも、一方ではアクセルをかけて、 一方ではブレーキをかけるという、セクショナリズムの弊害となって現れるということ にもつながっているような気がするんですね。その辺をこれからの総理大臣に是非お願 いしたいなというように思っております。 (川崎厚生労働大臣)  ご指摘いただいたとおりで、小泉総理が大きな目標を置かれていたのは、一つは官か ら民へという流れを変える中で、日本の経済がもう一度自信を持って動き出すようにす るということであり、もう一つは財政再建にどう道筋をつけるかということであるとい うのは事実だろうと思います。一国の総理が日本の国家観、価値観を持ちながら、常に 目標を示すということは大事なことであり、小泉総理は例えば「郵政民営化」といった ように、目標を集約して国民に訴えかけられる、わかりやすい手法を使われた方です。  そのような意味で、先ほど申し上げましたように、次のリーダーには「日本の国家観」 というと多少抵抗のある方もいらっしゃるかもしれませんが、日本がこれからどうする のか、国民がどのような方向へ進むのかということをリーダーとして語りかけていく、 そして引っ張っていくことが一番求められてくるのだろうと思います。そのような意味 で、私は総裁選挙に期待しているし、猪口さんに3人を回って、このような問題につい て発言するよう仕掛けてよ、と話しているのです。何とかよい総裁選挙にしたいと思い ます。 (廣松部会長)  ありがとうございます。ほかにご発言は、どうぞ。 (宮城委員)  横浜市立大学の産婦人科の医師で宮城と申します。先日は川崎厚生労働大臣のところ に人口を増やす根底の場所にいます産婦人科の分娩の場所が少ないという、産む場所が ないということを直訴しに伺いました産婦人科医師の一人です。  それで、今日はそちらの方は先日十分に川崎厚生労働大臣にご理解いただいていると いうことがわかり安心しておりますが、今日は人口問題ということで委員にしていただ きまして少し医師の立場から、というか病院に働いている一人の労働者としていつも考 えていることでお聞きしたいことがあります。  「子育て支援」と言葉では言っても、どうしても日本の社会は私から見ると赤ちゃん を持っている女性に対してやはり厳しい社会という印象がどうしてもあります。冷たい と言ってもいいかもしれないぐらい厳しい印象があります。私自身も自分が学問的にも 技術的にも医師としての技量を磨く時期に子供が一人おりましたけれど、やはりそれと どうしても両立ができないために2人目の子供は産めずに少子化に貢献してしまってお りますが、どうしたら2人・3人子供を持っている、そして技術を持っている専門職の 女性が伸び伸びと働いて日本に貢献できるような社会になるのかということをいつも考 えてはいますが、答えが出ません。後輩たちのことを考えると本当に悲しくなります。  それで、社会で例えば2人・3人子供を持っている女性が伸び伸び働いている組織と いう方が社会的な評価が高まるようなシステム自体をつくるということは、一体どの省 庁にお願いすればいいのか、だれにお願いすればいいのか。お金を持っている企業の社 長さんなのか、それとも例えば私たちは病院で働いていれば厚生労働省の管轄ですから 厚生労働省の方にお願いして、例えば病院機能評価の中に保育所とかそういう子育てを している女性の支援のことをきちんとやっている病院が、職員に対してそういうことを やっているところが病院機能の評価が高いということをお願いすればいいのか。いろい ろな管轄によって、どこにお願いすれば本当にそういう社会ができるのかというのが全 くわからないというような状況の中で働いております。  それで、例えば企業や組織自体が子育てに投資するようなことは可能なのか、財源が いつもないという話になるのですが、景気が少し良くなったことでそういう財源を民間 とか別なところから引っ張ってくるとか、そういうことができないのかという、本当に 素人考えで申し訳ないのですが、いつも思っています。それが一点です。  それからもう一つは、人口問題からは外れるかもしれないのですが、私の専門はがん の治療をしております。婦人科がんの治療です。それで子宮がんは40歳代にピークがあ って、子宮がん検診を受けていればほとんどの方ががんにならずに済むのに、受診率が 低いために40歳で働き盛りの女性が命を失っています。乳がんもそうです。そういうよ うなところでがん対策基本法には非常に期待しておりまして、そういう働き盛りの女性 が命を落すような根底のところ、あとは検診で早期発見されていれば取らなくてもいい 子宮をとって涙を流している女性に相対している仕事をしているものですから、そうい う面からも本当にサポートをお願いしたいと思います。 (川崎厚生労働大臣)  この間、宮城委員ともお話ししましたが、今年研修を終えられて産婦人科医になられ る方の70%は女性です。ですから、あと10年経って、産婦人科に行けば、7割は女性医 師という時代を迎える。したがって、女性医師の働く環境を整備していない産婦人科、 病院は継続することができない時代になっていく。そこで、そういった部分は思い切っ て変えていかなければならない。この意識は、互いに整いつつあるんだろうと思います。  ただ、一方で問題点を指摘されたように、民間の病院ですと厚労省が所管するんです が、例えば市民病院ですと、自治省の管轄に入りますし、大学病院ですと文科省の管轄 になります。したがって、私どもは調整機能を持ちながら進めなければならないと考え ており、そのような意味では猪口さんのように、切り口を「少子化」という方向に合わ せた、もしくは「男女共同参画」という方向に合わせた一人の大臣をつくって、厚労省、 総務省、文科省、それぞれの役所も集まりながら皆で知恵を出して、世の中を変えてい きましょうというアプローチに変わったわけです。厚労省だけ行けば何とかなるもので はないということで、今回の内閣でもそのようなリーダーシップのとり方をさせていた だいたというようにご理解を賜りたいと思います。  財源の問題については、スウェーデンであれば国民負担率が70%、フランスなら67%、 ドイツでも50幾つという数字の中で、我が国だけ37%という数字でやっているのですから、 この負担率でいつまでも議論をしていても、限界が来ていると思っています。では企業 が自分たちで全部それを賄ってくれるのかというと、なかなか中小企業にも回っていか ないし、自営業にも回っていかない。このような話になりますので、最終的にはどの時 点で消費税について、国民に理解を求め、そしてその財源でもって、今言われたがん対 策や少子化対策、その他の必要な分野への対策を打っていかなければならないと考えて おります。これから2〜3年間で、どこまでなら国民に理解を求められるか、というと ころが一番大きな議論になってくるだろうと思います。  そのような意味では、年金を切り口に、年金は消費税でやればいいと野党が言われま したが、それをやってしまうと消費税の7%が年金に全部行ってしまいまして、今言っ た少子化の話やその他の必要な分野の問題が解決できません。総合的にこれをどのぐら い上げて、どのぐらいの支出が社会全体として必要になってくる、ということについて 国民の理解が得られる段階を私どもは迎えたと思っております。最近、民主党とも消費 税の問題は正面から議論できる時代に変わってきました。この間、「絶対に反対」とし ていた土井さんがおられた社会党でさえも、「消費税」とまでは言ってくれなかったけ れども、そろそろ財源論を議論しなければなりませんねというところまで入ってきた。 少しずつ変わりつつあるなと感じています。やはりもう少し社会の支出というものが増 えないと全体をカバーできないという意識が、私は芽生えつつあると思いますので、何 とか私どもはその方向で持って行きたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。 (廣松部会長)  ありがとうございます。では、もうひと方。 (津谷委員)  慶應の津谷でございます。私は専門が人口学、人口統計学で、普段は合計特殊出生率 とか人口の減少とかそういうことばかりやっているわけですが、これは恐らく最初で最 後の機会だと思いますので、ちょっともう少しミクロ的なことをここで一言。  先ほどから少子化、そして人口の減少と言いますとすぐにマクロ経済の影響、そして 年金への影響と、ある意味では経済的な側面ばかりが注目されて、もう少し社会的な面 を見ろという阿藤先生のご指摘でしたが、私も本当にそのとおりだと思います。  もう少し詳しく言いますと、少子化と言いまして、合計特殊出生率が1.25と言うんで すが、実際に産む側から見れば子供は端数では産めないわけですから、1人か2人か3 人かといった現場的な視点というか。ですから先ほどから、やってもなかなか効果が挙 がらない、すごく小泉政権の間、特に保育サービスに力を入れて市町村、地方自治体い ろいろやってきたんですが、出生率はずっと歯止めがかからずに低下を続けていると、 効果がないじゃないかということなんですが。  ちょっと極論になるかもしれませんが、そういうすべてその効果や成果を出生率や人 口減少その他に結び付けない姿勢がむしろ必要ではないかな。本当に極論すると、これ は日本人が選択して結婚する・しない、子供を産む・産まない、産めない状況いろいろ なことがあってその結果起こってきていることで、これはすべて出生率でもってその成 果を測ってしまいますとかえってうまく行かないし、いろいろな弊害がむしろ出てくる ように思うんです。  いつも思いますのは、前にこの少子化が問題になりましたころに厚生労働省の懇談会 で、そこで産む側のお母様とかいろいろな方たち、お父さんたちがいらして、そこでよ く言われた言葉が、子供を産んで育てることに夢が持てない。これは本当に何度も聞き まして、働くのも大変だと思いますし、ワークファミリーバランスも必要だと思います が、子供を持つことに夢が持てない社会ではいろいろなことをやってもなかなかうまく いかない。ですから、もっと社会的な広い意味での子供を持って育てることに夢がある 程度持てるように皆がやるしかない。非常に抽象論で申し訳ないんですが、すぐ経済的 なことに結びつけるということ自体が私は少し危険ではないかと思いました。  それで先ほど3年間は休みたいという話がありまして、たとえ育児休業ができても1 年、それで実際にそれが取れるかというと非常に少ないわけで、全事業所が実施しなけ ればいけないといっても罰則はありませんので、そういう制度を持たなくてもいいよう になっていますから、そういうような法律的なループホールを埋めるということが必要 かと思いますが、例えばお母さんが3年間休みたいというか、3年ぐらいは子供と一緒 にいたいとおっしゃるんだろうと思いますが、お母さんだけが3年休むということはこ れはかなりきついことで、実際に仕事をしていて3年休むと。これは休むならいいけれ ど、辞めてしまうともう戻れない。実際に保休をとっても戻ってこない方は非常に多い わけで、休むというときに3年お母さん一人でさせるのではなくて、お父さんもやる。  そして育児休業で3年というのはどこの国もやっていないわけで。3年休めるという とノルウェーとか北欧の国はやっているんですが、どうやってやっているかというと、 まず公的な部分はお母さんが、そのうちの1カ月とかはお父さんが取らなければいけな い。そしてあとは雇用主とのネゴですね。それを政府がある程度間に入って取りやすく してあげる。そしてその他いろいろな手当をもらわないかわりに休めるようにして、何 とか2年とか3年とか、いろいろなところから創意工夫してやはり3年。そういうよう にうまく社会が少しずつですが歩み寄ってやっていければ、省庁を含めて、やはり子供 を持って産んで育てていけることにもう少し夢が持てる社会ができるんじゃないかなと 思います。  やはり3年女性が休むということは、働いている女性にとってある意味仕事と家庭の 二者択一を、そのつもりはなくても迫ってしまうことにつながってしまうんじゃないか なと。日本の企業文化はそう簡単には変わらないと思いますし。以上です。 (川崎厚生労働大臣)  日本でも、今まで誰も言っていないという意味で、今のところ一番難しい議論だろう と思います。しかしアンケートではそうなってしまっている。要するに、子供を育てる 女性はやはり2〜3年間集中したいというお気持ちが強いということですね。 (津谷委員)  お父様がもし休んでくれれば、夫婦で3年というのはどうでしょうか。 (川崎厚生労働大臣)  以前、私が松下電器産業という会社に勤めていたときの話なのですが、1年先輩の上 司が結婚しまして、相手が西武百貨店の職員でした。そのとき、西武百貨店はそのこと を取り上げて、一面広告を出しました。「私は10年後に西武百貨店に戻ります。子供2 人を育ててから。」という内容の広告でした。しかしながら、その広告の内容は現実の ものになりませんでした。子供はつくられたけれど、現実にはその方は職場復帰されま せんでした。しかし当時、西武百貨店はそのような職場を一つの目標にしたことは事実 だと思います。一面広告まで打ったのですから。  一方で、今の社会は65歳から70歳まで働くように変わっていく中で、1年なら休める けれど2〜3年になると難しいのが現状です。しかし、今まさに子育てをしている女性 の意識と、私どもの進めている制度というのは実際には乖離があります。また、私ども が進めてきた制度もあまりうまくいっていなかったこともあり、実際には、会社に出産 しますと言うと辞めさせられる可能性が高かったという現実が今までありました。その 点について、今度の男女雇用均等法でかなり踏み込ませていただいて、だめですよとい うところまで持っていきました。  しかし、もう少しの議論が国民には必要なのかもしれません。国民が何を望んでいる のかということ、法律的に会社に対してどこまで踏み込めるのかということ、これらの 議論をしっかり詰めながらやっていかなければならないと思います。その点は北欧のよ うにできるのかというと、議論にあるとおりだと思います。  特にお医者様の中には様々な意見があると思います。例えば、私は3年間育児に専念 し、その後、技術を持っているから復帰したいといった意見もあると思います。  では3年間どのように技術や知識を維持するのか。医療現場との距離をどのようにつ なぎとめておくのか。例えば、1週間に1回は勉強して、様々な面で遅れないようにし ていく。このような問題もあって、実際は一様ではないと思っています。   ライフステージにはいくつかの段階があって、その中に「出産」というライフステ ージがあると私は思っており、いずれにしてもこの点については皆で議論したいと考え ております。この部会の中で決めていく話ではないのですが、皆で様々な議論しながら 進めていかないと、いずれにしても今の国のスタイル、社会のスタイルを続けていくこ とになり、子供は減るばかりだと思います。皆が意識を変えていかなければいけないと 思っております。 (廣松部会長)  あるいはまだご意見のある方がおいでになるかもしれませんが、一応お約束いただい た時間になりましたので、ここまでにさせていただきたいと思います。大臣、貴重なお 時間をどうもありがとうございました。 (川崎厚生労働大臣)  ありがとうございました。またどうぞよろしくお願いします。 (廣松部会長)  大臣はご所用のためここで退席なさいます。  本日は第1回目の部会であるということ、また、大臣のご好意もあり率直な意見交換 という形でいろいろご発言をいただきました。それではもう一度この人口部会の審議に 戻らせていただきたいと存じます。  お手元に議事次第がございますが、そのうちの1の部会長選出、部会長代理指名は終 わりましたので、この人口部会についてという議事から再開したいと思います。それで は、人口部会の設置の趣旨と今後のスケジュール等について事務局からご説明をお願い します。よろしくお願いします。 (城政策企画官)  それでは説明させていただきます。  資料2をご覧ください。人口部会のスケジュールを用意してございます。まず人口部 会そのものの趣旨でございますが、これは「将来推計人口」を作成するためのご審議を いただくということでございまして、作成に向けたスケジュールを用意させていただい ております。本日は正式には第6回と継続しておりまして、今回、第6回ではございま すが、資料上わかりやすいように、今後のスケジュールを第1回から第5回という形で 記載させていただいております。ご覧いただきますように、平成18年6月、本日から月 1回程度の開催を考えてございまして、年内をめどに、と先ほど大臣からございました とおり、年内をめどにできるだけ早期に推計結果を取りまとめるということでございま す。  第1回は本日でございまして、ご覧のような形で議事を用意しております。第2回目 以降についてでございますが、まず第2回目につきましては平成14年推計の方法、前回 推計の方法のことでございますが、前回推計の方法・実績について分析し、比較をして いくということを考えてございます。  第3回につきましては、次期人口推計の方法についてご議論をいただければというよ うに考えております。この頃に平成17年の国勢調査の確定値が公表されるであろうとい うことを考えておりますので、それを踏まえまして、第4回に引き続き次期人口推計の 方法についてご議論いただいて、第5回に推計結果についてご議論をいただき、できる だけここで取りまとめるという形にしていただけないだろうかと考えてございます。以 上でございます。 (廣松部会長)  ありがとうございました。ただ今ご説明をいただきましたスケジュール案に関して何 かご質問・ご意見はございますか。よろしいでしょうか。大臣から直々のご要望で、年 内に公表できるようにスケジュールを組むようにということでございますので、今年の 後半は少々慌ただしくなるかもしれませんが、委員の方々のご協力のほどをよろしくお 願い申し上げます。よろしゅうございますか。  それでは今後のスケジュールにつきましては、資料2のとおりに進めたいと存じます。  それでは続きまして議事の3、報告聴取でございます。本日は3点報告聴取を行いた いと存じます。最初が平成17年人口動態統計月報年計(概数)の概況についてでござい ます。これにつきましては統計情報部の村山人口動態保健統計課長にご説明をいただく ことにいたしております。それから2つ目が、第13回出生動向基本調査(夫婦調査)で ございますが、これに関しましては国立社会保障人口問題研究所の金子人口動向研究部 長にご説明をお願いしたいと思います。それから第3点目が、平成17年国勢調査抽出速 報と今後の公表予定でございます。これにつきましては総務省の亀田国勢統計課長より 説明をいただきたいと存じます。  それではこの順番に従いまして、まず平成17年人口動態統計月報年計(概数)の概況 について、村山課長よろしくお願いします。 (村山課長)  大臣官房統計情報部の人口動態・保健統計課長の村山でございます。資料3-1をご覧 いただきたいと思います。平成17年の人口動態統計月報年計(概数)の概況についてご 説明させていただきます。  1ページをおめくりいただきますと、資料は3枚で綴じたものと、それから本体の概 要、50ページ近くあるものと、その後に参考資料ということで5ページ程度のものがつ いておりますが、時間の関係もございますので最初の3枚を使ってご説明をさせていた だきます。  平成17年の人口動態統計月報年計(概数)の概況でございます。この人口動態統計で ございますが、これは市区町村に届けられます出生届、死亡届から調査票をつくって取 りまとめたものということでございます。全数の統計でございます。それからこの月報 年計につきましては6月1日に公表しておりますが、人口動態統計としましては、これ は「概数」と書いておりますように確定数ではありません。確定数のうち実数は例年ど おりに9月公表の予定。それから出生率等につきましては国勢調査の確定数の公表を待 ちまして12月に公表予定ということで、今回は概数のご説明でございます。  まずポイントでございますが、出生数は106万3千人ということで前年より4万8千人 減で、5年連続の減少。それから合計特殊出生率、これは平成17年におきます15〜49歳 の異なる世代の女性の年齢別出生率の合計でございますが、これが1.29から1.25に低下 した。この1.29から1.25に低下したことに加えまして、15〜49歳の女子人口の減少、そ れから高出生率の女子人口割合の低下という3つの要因で出生数が4万8千人減少した ということでございます。後で補足させていただきます。  それからコーホートの合計特殊出生率につきましては、35〜39歳の世代、昭和41年か ら45年生まれの世代では私どもの統計ではこれまでのコーホート合計特殊出生率は荒々 1.48ということで、晩産化の進行中でございますので、1.25というものは実際に「一人 の女性が一生の間に生む子供の数」とはなっていなくて、それより低いということをコ メントしてございます。  次に2番目に死亡数は108万4千人ということで、前年より5万5千人の増加というこ とです。これは高齢者数の増加とインフルエンザの流行の影響ということでございます。  3番目に自然増加数でございますが、出生数と死亡数の差というものを自然増加数と 申し上げておりますが、これにつきましては2万1千人の減少ということで、統計の得 られていない昭和19年から21年を除き、明治32年以来初めてのマイナスということでご ざいます。  それから婚姻件数につきましては71万4千組ということで、対前年度6千組減少、4 年連続の減ではありますが、減少幅が縮小しております。また平均初婚年齢は、夫が29. 8歳、妻28.0歳でともに上昇でございます。それから妻の初婚率、人口に対します初婚の 割合でございますが、これまで初婚率は20歳代は減少傾向でございましたが、20歳代前 半は17年は低下幅が縮小、20歳代後半は低下から横ばいに転じて、30歳以上は引き続き 上昇ということでございます。  離婚件数は26万2千組で、対前年9千組減少で3年連続減少ということです。  一枚おめくりいただきまして、先ほど申し上げた出生数の動向について、3つの要因 によって平成17年は減少したということにつきまして、少し整理したものでございます。 出生数につきまして、合計特殊出生率との関係で、合計特殊出生率の減少と出生数の減 少を混同している照会がございますので、あえて私どもの統計上の整理としまして合計 特殊出生率を用いまして出生数を3つの要素に分けてみたものということでございます。 出生数は15〜49歳の女子人口と合計特殊出生率の1/35、それと年齢構成の違いという 3つの数の掛け算で計算ができます。この場合の合計特殊出生率というのは、実際に一 生涯に産む子供の数ではもともとございません。そこに線が引いてありますように、仮 にどの年齢の女子の人数も同じとした場合のその年の出生率ということですので、女子 人口と合計特殊出生率/35を掛け算しますと、どの年齢の女子の人数も同じとした場合 にその年に見込まれる出生数となります。年齢構成の違いというのは、実際の女子人口 は年齢ごとに人数は異なっておりますから、どの年齢の女子人口も同じとした場合に比 べますと凸凹があります。それを率で表したものということで、おおむね高出生率のと ころに人口が多ければ1より大きく、低ければ1より小さいと、このようなものでござ います。  それで平成17年の出生数を3つの要素に分けたのがその枠の中でございまして、106 万3千人の出生数は15〜49歳の女子人口2,753万人に1.25/35を掛けて、それから年齢構 成の違い1.081を掛けたもの。これは第二次ベビーブーマーが出生率の高い30歳代前半に いますので、そのことで1より高い率が掛かっております。それで出生数はすぐ上にあ る平成16年から4万8千人減少している。率に直すと4.3%減少しておりますが、要素別 に見ますと15〜49歳の女子人口が0.9%の減、合計特殊出生率が3%の減、それからそこ の年齢構成の違いが0.5%の減ということでございまして、仮に合計特殊出生率が変わら なかった場合、※が付けてございますが、15〜49歳の女子人口の減と年齢構成の違いの 減だけで1.3%の減であったと見込まれます。  それでこの1.3%の減というのが先行きどうなるかというのが下のグラフでございま す。このグラフで15〜49歳の女子人口というのは25年近く、3千万人程度で一定でござ いましたが、平成9年から減少しております。これについての先行きにつきましては、 統計上現在0歳の出生までわかっていますので、15年程度先までわかるのですが、総務 省の方で2月に公表されたものを見ますと、15年後の15〜49歳、すなわち現在34歳未満 の人口が 約2,400万人というようになっておりますから、ごく粗く見ればその程度まで15年後には なる。  それから年齢構成の違いにつきましては、これは平成15年がピークとなりまして、今 はもう減少に入っている。どの程度まで減少するかというのは約30年前の第一次ベビー ブーム世代が出生率の高いところにいた昭和50年が参考となる。このときには昭和50年 がピークで、あと15年かけて平成2年の0.9まで低下したということなので、恐らく同じ ように15年程度かけて0.9に低下するであろうと見込みますと、平成17年から15年経った 平成30年前後には、15〜49歳女子人口が約2,400万人、合計特殊出生率が仮に変わらない として、年齢構成の違いが0.9ということで計算しますと出生数は平成17年より約3割減 る。ですから平成17年に1.3%ということで見た合計特殊出生率以外の減少要因は、15 年後には約30%の減という形で出るだろうと統計上は見ております。  次のページ、3枚目でございます。人口動態統計速報ということで、注にございます ように私どもが通常公表している統計より少々範囲が広いのでございますが、最近の4 月までの統計が出ておりますのでお示ししております。これは婚姻数と出生数の動向で ございます。婚姻数につきましては平成17年の減少幅は縮小したと申しましたが、見ら れますように、平成17年の6月を底として7月以降は増加傾向、4月まで引き続き増加 しておりまして、平成18年の2月には平成16年の実績を超えております。  それから出生数は半年ほど遅れて増加しておりますが、これは過去も婚姻数の増加が あったり減少したりすると出生数の上に影響が出たということでございまして、1月を 底として、2〜4月と3カ月連続して増加しております。  それで先ほど申し上げましたように、出生数の3つ要素が、女子人口と合計特殊出生 率と年齢構成の違いということで、合計特殊出生率以外の2つのものは必ず減る。少な くとも十数年は減るでしょうということですので、出生数が仮に横ばいであれば合計特 殊出生率は上昇するということがおおよそ統計上は見られるのではないか。以上でござ います。 (廣松部会長)  ありがとうございました。何かご質問はございますか。  それでは続けて報告をいただいた上で、まとめてご質問・ご意見をいただきたいと思 います。それでは金子部長、よろしくお願いします。 (金子部長)  国立社会保障・人口問題研究所の金子でございます。第13回出生動向基本調査(夫婦 調査)の結果の概要についてご報告いたします。資料の方は3-2をご覧ください。  まず最初に簡単に調査のご紹介をいたします。出生動向基本調査は日本における結婚 と夫婦出生力の実情並びに背景を定時的に調査・計量いたしております。この調査はこ れまで主として戦後につきまして5年置きに実施をしてきたものでございますが、今回 につきましては2年前倒しをして実施しております。  全体の調査は夫婦調査と独身者調査の2つの調査から構成されておりまして、今回ご 報告いたしますのはそのうちの13回調査の夫婦についての調査結果でございます。調査 期日の方は平成17年、昨年の6月1日でございます。調査の対象は全国の妻、年齢50歳 未満の夫婦に対する全国標本調査ということになっております。有効回収率は85.7%に なってございます。今回ご報告いたしますのは、そのうちの初婚同士の夫婦についての 分析結果ということになります。  資料の方の冊子の表紙をご覧いただきたいのですが、こちらの方に調査結果の項目が 挙げてございます。6つございまして、夫妻の結婚について、夫婦の出生力について、 子供数についての考え方、子育ての状況、妊娠・出産にかかわる健康、そして結婚家族 に関する妻の意識という6つの項目でございます。時間の制約がございますので、中身・ 結果につきましてポイントになると思われるところをかいつまんでご説明します。  2ページ、3ページを開いていただきたいと思います。本調査では出会いから結婚に 至る結婚の過程について調べてございます。全体としてこの結婚過程が徐々に変化して きておりまして、晩婚化が進行している様子がとらえられてございます。例えば図1- 1、2ページをご覧いただきますと、これは出会いから婚約を経て結婚に至る過程を年 齢軸上に棒グラフとして描いたものでございますが、今回の調査では夫妻ともに出会い 年齢が上昇しておりまして、また交際期間の延長傾向も続いております。そのような形 で晩婚化が更に進行している様子がとらえられてございます。  3ページの方で、夫妻が出会ったきっかけの構成について示してございます。表1- 2でございます。こちらで今回の特徴を申し上げますと、これまで最も多かった職場や 仕事の関係で出会ったというものが29.9%、3割を下回りまして、逆にこれまで2番目 であった友人・兄弟・姉妹を通じてという出会いが3割を上回りました。これによりま して首位が逆転しているということでございます。そのほか見合い結婚につきましては、 過去急速に減少いたしております。その様子は下の図1-2をご覧いただきますと、これ は本調査の特徴を生かした長期時系列によりまして、結婚の中身の変容の歴史的な転換 を示しております。  次に4ページにまいりますが、こちらでは夫婦の出生力について調べてございます。 全体としまして今回の調査では、90年代以降に生じました夫婦出生力の低下というもの の全体像がとらえられた形になってございます。まず表2-1でございますが、こちらで は夫婦の最終的な子供数、これを完結出生児数というように呼んでございますが、こち らの時系列を示してございます。そうしますと戦前から第6回調査にかけて、2.2という 数字まで急速に減少してきたということがご覧いただけるかと思いますが、その後前回 の調査、2002年の第12回調査までほぼ同じレベルで安定的に推移してきておりました。 しかし、今回の調査でははっきりとした減少を示しまして、2.09という数字になってご ざいます。この対象となりました夫婦と申しますのは1980年代後半に結婚した人たちで ございまして、主に90年代に出産・子育てを行ってきた人たちというように考えられま す。  それで、どのように数字が下がったのかというのを見たものが表2-2でございますが、 今回調査では子供数の分布としまして0人、1人のところが増えてございまして、逆に 3人のところで減っている。そのような形で平均の子供数が減っているということにな ります。  こうした夫婦の子供数の変化を世代別にとらえたものが5ページの方でございます。 こちらでは図2-2をご覧いただきたいと思いますが、こちらは夫婦の子供数の累積をし ていく過程を妻の世代別に比較したグラフでございます。横軸が妻の年齢でございまし て、夫婦が子供数を増やしていく様子がグラフとして描かれております。1950年代生ま れから描いておりますが、これを見ますと1960年代の前半○印のグラフのところで大き く減少が見られる。さらに次の1960年代後半生まれの妻の夫婦で更に減少が見られる。 このあたりが90年代に見られる夫婦出生力の低下というものの本体であるというように とらえてございます。  しかしながら1970年代、次の世代に至りますと一定の下げ止まりを見せております。 しかしながらこの辺の下げ止まりにつきましては、例えば婚前妊娠の増加というような 新しい傾向の影響もございまして、これが最終的な子供数の下げ止まりになるかどうか というのはここではわからないところでございます。  次に進みますと6ページの方でございますが、こちらでは子供数の考え方ということ につきまして、夫婦にとって理想的な子供の数、これを「理想子供数」、実際に持とう としている子供の数、これを「予定子供数」とそれぞれ呼ぶことにしまして、このよう な数字を調査してございます。そうしますと、理想も予定もどちらも90年代以降緩やか な低下傾向を示してきている訳でございますが、表3-1で今回調査の総数のところをご 覧いただきますと、2.48となっており、理想子供数が初めて2.5人を下回ったということ になります。その下の表で第13回調査総数のところの予定子供数が2.11人ということで ございますが、小幅な減少ではございますが前回を下回る数字ということになってござ います。  それで、この理想と予定の子供数のギャップ、なぜ理想の子供数を持たないのかとい うことについて関心が持たれるところでございますが、これについて調べたのが8ペー ジになります。表3-3でございますが、こちらでは予定子供数が理想子供数を下回る夫 婦につきまして、なぜそうであるのかという理由を尋ねております。表の方は多い順に 理由を並べてございますが、子育てや教育にお金がかかり過ぎるからというのが総数で6 5.9%、最も多いという形になっています。次に高年齢で生むのは嫌だから、38.0%。そ れで3番目には、これ以上育児の心理的・肉体的負担に耐えられないから、21.6%とい う形で理由がとらえられております。  この理由につきましてもう少し詳しく調べた結果がその下の表3-4でございます。こ ちらではまず左側に予定子供数が理想子供数を下回る夫婦の構成について示してござい ます。そうしますと、55.3という数字をご覧いただけるかと思いますが、こちらは理想 が3人で、しかしながら予定の子供数は2人であるという夫婦の割合です。これが過半 数を占めております。それで2番目に多いのは、理想は2人であるが予定は1人である という夫婦が2割ほど、20.4%おります。それで、それぞれの理由を見ますと、概して 多めの理想を持ってこれを実現できないというように答えている夫婦につきましては、 お金がかかり過ぎるから、あるいは家が狭いからという経済面の理由が多く選択されて おります。  これに対して通常の数か、あるいは少なめの理想を掲げているにもかかわらずこれを 実現できない夫婦の理由を見ますと、欲しいけれどできないからという理由が多く選択 されておりまして、必ずしも持たないというばかりではなくて、持てないという夫婦も 実質的な割合に上っているということが言えると思います。  9ページ以降、子育ての状況ということで妻の就業、育児制度、施設の利用、それか ら夫妻の親の育児援助、そのようなことと出生の関係を調べてございますが、若干時間 の制約がございますので少しこの辺は割愛しまして、13ページに移りたいと思います。  こちらの方では妊娠・出産にかかわる健康と子供数の関係について調べてございます。 不妊についてでございますが、これまで不妊を心配したことがあるという夫婦、これを 調べますと全体の25.8%が一度は心配したことがあると。4組に1組が心配したことが あるというように答えております。その中で実際に医療機関にかかって検査や治療を受 けたことがある夫婦につきましては、13.4%という数字になってございます。  これと子供数との関係を示したものが下のグラフでございますが、出生途上の夫婦に つきましてその比較をしますと、理想・予定につきましては心配したことがある、ある いは治療経験があるという人たちにとってもほとんど変わりはないのですが、実際の出 生のペースというものが遅いものになっているということがとらえられております。  それで最後に結婚と家族に関する妻の意識、15ページの方で簡単にご説明しますが、 こちらでは表6-1に示しましたような項目につきまして賛否を問う形で妻の意識を問 うております。全体的なことを申し上げますと、現代の既婚女性の意識は個人の目標を 大切にしながら、子供中心に考える家族観というようなパターンが伺えます。しかしな がら、16ページ、17ページの方でそのような意識の時系列的な変化をご報告しておりま す。これにつきましてはこれまで、特に90年代に大きく変わってきました意識の傾向が 今回の調査では逆転ないし揺らぎというものが見られると。そのようなことが挙げられ ております。  一つだけ例を挙げますと、16ページの最初のグラフでございますが、生涯を独身で過 ごすというのは望ましい生き方ではないという考えについてですが、これに対して賛 成・反対を調べています。これまでは生涯独身の容認派が増える傾向にあったわけでご ざいますが、今回につきましては若干の逆転を示しており、若干意識の流れに揺らぎが 生じているという、そのような結果になってございます。以上でございます。 (廣松部会長)  ありがとうございました。それでは続きまして総務省の亀田課長、よろしくお願いし ます。 (総務省亀田課長)  それでは平成17年国勢調査抽出速報と今後の公表予定についてご説明します。  抽出速報というのは、国勢調査の調査票の中から1%の調査票を抽出しまして、なる べく早い時期に日本のアウトラインを示すということを目的として、例年この国勢調査 の翌年の6月に公表しているものでございます。  資料ですが、一枚めくっていただきまして、中身は大きく4つの内容で構成されてお ります。少子・高齢化による人口の変化、就業面から見た人口の変化、産業・職業構造 の変化、世帯の変化ということです。  それで、まず順番に見ていきたいと思いますが、1ページ目、進行する少子・高齢化 ということで、我が国の人口構造の一層少子・高齢化が進行していることが示されてい ます。 4ページ目にございますように、65歳以上の人口の割合、これが21.0%に上昇して、こ れは世界でも最も高い水準、イタリアが20.0%ですので、それを超えて最も高い水準に なっているということでございます。今、世界と比較してと申しましたが、これは国連 の2004年版の人口推計で、人口10万人以上の192カ国と比較して高いということでござい ます。  それから5ページ目は、3にありますように今度は15歳未満人口の割合ですが、13.6% に低下してきたということで、世界でこちらは最も低い水準になったということでござ います。2000年の時にはイタリア、スペインあたりが日本より低かった訳です。  それから6ページ目は生産年齢人口ですが、これについて見ますと平成7年をピーク にして減少は続いておりまして、65.3%ということでございます。  それから7ページ目、未婚率の状況でございますが、これは女性の25〜34歳、男性の3 0歳代で大きく上昇しているということで、8ページの下にグラフを付けておりますが、 男性で特に上昇が大きいのが30〜34歳です。ここで約5ポイント上昇して47.7%、約5 割が未婚となっている。それから女性について見ますと、上の実線ですが、25〜29歳、 ここで未婚率の上昇が大きくて6ポイントほど上昇しまして59.9%、約6割が未婚であ るというような状況でございます。  それから少しめくっていただきまして、11ページ目から今度は就業面から見た人口の 変化ということで取り上げております。労働力人口は引き続き男性で減少、女性で増加 ということでございまして、先ほど申し上げましたように生産年齢人口が全体で減少す る中で、男性は減少していますが、女性は社会参画が進む等の理由で増加しているとい うことでございます。  それを端的に示すのが12ページで、年齢階級別に見たグラフ、図2-1に示してござい ます。男性では年齢別に見て若干若年層で下がる傾向が見てとれるということでござい ます。一方、女性ではいったん結婚・出産等で労働力から離れるということで、日本特 有のM字型カーブを示しているわけですが、このM字型の特に一番下がっているあたり、 30〜34歳代、これが前回の5年前と比較しますと4.9ポイント上昇しておりまして、M字 型カーブの緩和が進行している状況が見てとれます。17年度は61.9%ということになっ ております。  それで、ここには載せておりませんが、若干この未婚の女性と有配偶の女性について 分析してみたところでは、30〜34歳あたりで上昇している部分で、未婚の女性の労働力 の割合が大きいということが出ております。  13ページにこれを主要先進国と比較しておりますが、女性でこのようなM字型カーブ を示しているというのは日本特有の状況だということがおわかりいただけると思います。  それから今度は高齢の雇用者の状況ということで14ページ以降に解説しておりますが、 やはり高齢化を反映して65歳以上の雇用者数が増加しています。  また、15ページ目の中ほどから前期高齢者・後期高齢者というように分けてみますと、 前期高齢者が33万人増、後期高齢者が11〜12万人ということで、特に75歳以上の後期高 齢者の方で非常に著しい増加を示しているということがございます。  それからまた1ページ前に戻っていただきまして、65歳以上男性の労働力率を主要先 進国と比較をしてみますと、17ページ目の表2-8ですが、特に65歳〜69歳の男性のとこ ろを見ていただきますと、日本が50.2%に対して例えばフランスが4.1%等、1割未満の 国が西欧では多く、アメリカも32.6%と、日本の高齢者の労働力率が非常に高くなって いるということが見てとれます。  それから17ページ目に、今度は臨時雇用について見たわけですが、臨時雇用の雇用者 数が増加しているということで、5年前と比べまして89万人増加して761万人になってご ざいます。  それからもう一つ、19ページですが、今度は就業時間、これについて変化を見たもの ですが、平成12年の42.4時間に比べまして1.2時間減少して41.2時間ということで、縮小 しております。これは時短ということもございますが、パート等の短時間勤務とか臨時 雇用の増加というものも影響しているのではないかと思っております。  それから20ページ、これは通勤・通学者数の状況ということで、これは省略させてい ただきます。  22ページ以降に変化する産業・職業構造ということで掲載しておりますが、第三次産 業の就業者数は引き続き増加とか、それから25ページ目にございますように、産業別で 見ますと医療・福祉分野で就業者数増加率が大きい業種が多い。あるいは労働者派遣業、 これが2倍を超える増加を示しているというような結果が出ております。  それから26ページ目、今度は職業で見ていきますと、26ページの5のところですが、 就業者数の増加が大きい職業はサービス業従事者で、このうちのホームヘルパーが2.4 倍とか、介護職員が1.9倍というように、特に大きく増加しております。高齢化に対応し た職種が増加しているということが出ております。  それから最後に世帯の姿ということで、28ページですが、1世帯当たりの人員は2.60 人と減少しております。下の図4-1にございますように、やはり単身の世帯、単独世帯 の増加が寄与しているということで、下の薄い灰色のところにその割合を書いておりま すが、約1/3が単独世帯になっており、1,333万世帯となっています。  それから31ページ目、家族の変化ということで見ますと、夫婦と子供から成る世帯、 いわゆる標準世帯的な世帯、これが減少を続ける一方、夫婦のみの世帯、それから単独 の世帯が増加するという傾向が見られるということでございます。  それから32ページ、今度は高齢者について見ますと、一人暮らし高齢者が100万人以上 増加して405万人となりました。それで男女別に見ますと、これは女性が長寿ということ もありまして、男性の2.6倍という割合になっており、男性の10人に1人、女性の5人に 1人が一人暮らしというようになっております。  最後34ページですが、持家率と住宅の延べ面積、これについてもそれぞれ改善を示し ているということです。特に持家率は64.3%と非常に大きな伸びを示しております。ま た、住宅の延べ面積も95平米に拡大しているというようなことでございます。  以上が抽出速報集計の結果でございます。最後に資料3-3-2ということで、一番後 ろに今後の公表のスケジュールを添付しております。今後、第一次基本集計ということ で、これは「人口の確報」と呼ばれておりますが、人口・世帯・住居に関する結果等に ついて7月以降順次各都道府県別に公表を開始しまして、10月に全国の結果を公表する ということになっております。それ以降、第二次基本集計、これは産業分類の結果をク ロスで集計しているわけですが、労働力状態や就業状態別の産業別構成等の結果。それ から第三次基本集計ということで、職業別構成や母子世帯の状況等の結果、などが順次 公表になる予定でございます。  説明は以上でございます。 (廣松部会長)  ありがとうございました。ちょっと時間が押しておりますが、ただ今のご報告、3つ の資料の説明に関しまして何かご質問はございますか。まず、鬼頭委員の方からお願い します。 (鬼頭委員)  社人研の金子部長に一つだけ確認させていただきたいのですが、この資料の16ページ、 結婚についての意識です。その中で、「生涯を独身で過ごすというのは望ましい生き方 ではない」という質問に賛成という回答が増えておりますね。これは今後の初婚年齢と か生涯独身率にも影響するのかなと思いますが、これは夫婦の調査です。独身男女に関 してはいかがなものでしょうか。もしわかったら教えていただきたいと思います。 (金子部長)  はい、第13回調査の結果につきましては、独身調査の方の結果はまだまとまってござ いません。ただ、前回の12回調査、こちらの方で独身者については今回の夫婦に先んじ て、生涯を独身で過ごすというのは望ましい生き方ではないという問いについてもそう なのですが、幾つかほかの問いについても揺らぎと言いますか、これまでの傾向に対し て異なる動きというものが見られております。 (阿藤部会長代理)  国勢調査の結果を見ての感想で一番大きいのは、やはり8ページ、9ページの配偶関 係の変化がこの5年間で予想を上回るというか、すごい勢いで上がっていることですね。 本当に未婚化現象が止まっていないというか、当然これは非常に少子化を促進するまだ まだ最大要因だという感じが私にはします。それは今後の推計にも直接絡むことです。  今回の国勢調査でしばしば言われておりますように、人口の総数そのものはきちんと 調べられているということでありますが、かなり実際にインタビューができなかったケ ースがあって、例えば配偶関係不詳というようなものが例えば前回、前々回でも傾向的 にかなり大きく増えているのですが、そのことが例えばこういう数字にどれぐらい影響 を及ぼしているのか、その辺の感触というか、もしお話をいただけたらと思いますが。 (総務省亀田課長)  そこにつきましては確かに世帯から調査票が得られないケースが増加しているという ことがありますが、集計の過程でこれはいわゆる推計類似の手法、いわゆる補定という 手法を使って、全体の数を算出するというプロセスを経ていますので、そのような意味 で精度の高い結果が得られているのではないかと思っております。 (樋口委員)  人口動態統計について2点ほどお尋ねします。一点は1.25ショックでありますが、1. 29から1.25に落ちた、年齢別に見るとどこのところが出生率が落ちているのかというよ うなことを教えていただければと思います。  それでもう一点は、やはり気になりますのが4枚目の最近の動きで、結婚数とか、あ るいは婚姻数とか出生数がどうも反転しているように見える。これがなぜなのかという ことでありますが、前の方で3つの要因に分解して年齢の要因、あるいはTFRの要因 という形で分けていますが、どれが効いているというように何か把握していることがあ れば教えていただきたいということです。 (村山課長)  まず合計特殊出生数1.25の年齢別の状況でございますが、これにつきましては厚い資 料の6ページをご覧いただきたいと思います。表4-1でございます。これをご覧いただ きますと合計特殊出生率の年齢階級別の内訳が載っております。そこにあります表4- 1は各歳ごとに計算してあるのですが、それを5歳ごとに足してあります。もちろん縦 に全部足すと平成17年は1.25になるということで、16と17年の年齢階級ごとの差を足せ ば全体の差の 0.04になるということでございまして、ご覧いただければわかりますが、一番大きいと ころが25〜29歳の0.02。あとは30代前半の0.01ぐらい、もともと29歳以下はマイナスが 続いていて、30代前半は昨年若干プラスに転じたのですが、今回はまた大きく落ちたと いうのが年齢階級別の状況です。  それで、蛇足的にその下にありますのでご覧いただければ、表4-2ということで出生 順位別に見ると、第一子と二子がともに大きく落ちている。一子の方は先ほどご指摘に ありました婚姻に関係しております。それで二子の方は2番目の子ですから、1番目の 子を生まなければ2番目の子は生まない。2番目の子の生み方は大体2年ぐらいの間隔 が一般的ということで、平成15年に第一子が△0.02と落ちておりますね。これと同じ方 が平成17年に2人目を生むことになっていることが考えられるのではないかというよう なところです。  それからもう一つは、先ほどご説明させていただきました3枚紙の要点の横長で、出 生数・婚姻数の推移について、婚姻数が反転して出生数が若干上昇ぎみ。つかんでいる ことは何かということですが、まず婚姻数につきましては先ほど定性的にだけ申し上げ たんですが、本体の厚い資料の15ページをご覧いただきたいと思いますが、本体の厚い 資料のこの15ページの表9でございます。これは初婚率、5年間初婚率と言っています が、年齢階級別の女子人口に対する初婚の割合です。20〜24歳につきましては12年、13 年、ミレニアム婚とか21世紀婚と言われて高いところを過ぎた後、14、15、16年と1% 程度ずつ下がってきたのが、16、17年では0.3%程度の低下に非常に縮小している。25 〜29歳の20代後半の方は同じく落ちてきているのですが、16、17年は低下から横ばいに なったということ。それから30歳以上につきましては引き続き増加ということで、恐ら くこの傾向で初婚率が少し上がっているのかなと、そのため初婚が増えているのかなと いうのが一つの認識でございます。  それから出生が半年程度で遅れて増加しているというところにつきましては、一般的 に婚姻の後出生が上がるということのほかに、今年の3月に公表した統計ですが、第一 子の子供の出生があったときに、それまでの結婚の期間はどれぐらいであったかを調べ たところ、最近ですと6カ月ぐらい前に結婚していたというのが多い。婚前妊娠と言う のでしょうか、そのようなのが一つの山を作っているという統計結果がございますので、 そのようなことも考えられるのではないだろうかと見ております。 (国友委員)  夫婦調査についての質問です。この調査では地域的なばらつきとか、あるいは所得と か教育などの要素の影響はわからないのでしょうか。全国調査の数字といっても、例え ば大都市の人たちとそれ以外の人たちとは数値がかなり違うと思いますが、その辺はい かがでしょうか。私はこの調査についてよく知らないものですから教えてください。 (金子部長)  地域別につきましては、この調査は標本調査でございまして、今回の例えば夫婦の有 効票数で言えば6,836という数でして、都道府県別などそのような細かい地域に分けます と信頼性が低下するということで、そのような分析はしてございません。しかしながら、 都市地域とそれ以外の地域、人口集中地区というようなことですが、それらの別に差異 があるということは把握してございます。ただしこちらの概要の方につきましては、そ のような社会経済的な差異というのは多岐にわたりますので一応割愛してございまして、 報告書等で詳しい分析をしております。 (津谷委員)  先ほどのお答えの確認ですが、この第13回の調査はこれは加重平均では、つまりウエ イトはかけていらっしゃらないんですよね。 (金子部長)  はい、これは全国標本、ランダムサンプリングを基準にしておりまして、専門的に言 いますと層化無作為抽出ということを行っております。 (津谷委員)  回答率に若干の差があるということをおっしゃったので。 (金子部長)  回答率ではなくて、要するに内容について、都市やそれ以外のところでは結婚や出産 に関する行動が異なっているという結果がとらえられているということです。 (津谷委員)  そうですか、それの確認でした。 (廣松部会長)  あるいはまだご質問、ご意見等があるかと思いますが、少し時間が押しておりますの で、とりあえず報告聴取に関してはここまでにさせていただきまして、議事の4つ目、 将来人口推計の基本的考え方に移りたいと思います。これに関しまして金子部長から説 明をお願いします。 (金子部長)  はい、時間が押しておりまして全部の資料をご説明できるかどうかわかりませんが。 今回の部会におきましては、やはり最も基本的な部分からご議論をいただきたいという ことで、将来人口推計とは、その役割と仕組みというものを中心に一緒に考えてみたい というように思いました。  それで1ページ目のグラフでございますが、これは明治期から現在までの120年間の人 口の構成とその推移を示してございます。明治期から直線的に人口が増加して、最近の ところではその増加が終息している、あるいは構成を見ますと老年人口のところで若干 増加が見られます。このような長期のグラフを見まして、例えば私たちが全く予備知識 がなかったらこの先の将来像というのはどのようなものを描くのだろうかと思います。 例えばいったん終息していますが、その後再び増加するとか、終息した後に平坦にその まま横ばいで行くとか、あるいはこの現在をピークとしまして減少に転ずるとか、いろ いろな可能性があろうかと思います。  それにつきましては、次のページに平成14年1月公表の中位推計の結果を示してござ います。もちろん皆さんご存じのとおり、これによりまして今申し上げましたような再 び増加するというような考え方、あるいは平坦な推移をするというような見方はありそ うにないということがわかり、将来像に対する一定の判断基準を得ることができること になります。したがいまして、将来推計人口の役割としては、人口の規模と構成の将来 像に対する一定の見方の基準を与えるということがございます。  しかしながら、これは非常にきれいなグラフでございますが、次のグラフをご覧いた だきますと、やや見にくくなってございます。これにより将来というものは既に決まっ ているものでもなくて、また私たちがそれを知り得るものでもないという不確実性を考 慮することが必要であるということを示してございます。それで日本の将来推計人口に おきましては、高位・低位という幅を持って推計を行うことでこの不確実性に対処する ようにいたしております。  以上のような役割をまとめますと、5ページの方になりますが、将来人口推計の役割 とそこから来る性格についてまとめてございます。将来人口推計は施策計画、開発計画、 経済活動計画等の立案に際し、それらの前提となる人口の規模及び構造に関する基礎資 料として広範な分野において利用されるものとなってございます。  そのような役割から最も重要となるのが客観性・中立性ということであろうかと思い ます。しかしながら、先ほども申し上げましたように、将来は不確定であり不確実であ ります。科学的に将来の社会というものを定量的に正確に描くという方法は現在我々は 持ち得ておりません。それはなぜかと言うと、2つありますが、測定と手法の不完全性 ということが一つあります。そして、何よりも将来の出来事すべてを我々は把握するこ とはできないのであるということが厳然としてございます。  それではこれに対して科学的なアプローチとしてできることは何であろうかというこ とを考えますと、現状で求める最良のデータと最良の手法を組み合わせて客観的な推計 を行うということに尽きるということでございます。そのためには何が最良であるかと いうことに関しまして、その見極めとその実行を行うための高い専門性と、同時にその ような手法の性格、あるいはその結果の性質、使い方、そのようなことに対する説明責 任というものが重要になってこようかと思います。  そのように科学的に将来を見通すことができない、そのような予見できない将来をで きるだけ科学的に客観的に推計を行うためにはどうしたらよいのか。これに対して人口 学の分野では人口投影という考え方を用いております。人口投影、実を言うと将来人口 推計というのは「population projection」と申しまして、人口投影そのものなのですが、 日本語では「推計」というように呼んでおります。この人口投影とは出生、死亡、移動 などについて一定の仮定を設定し、将来の人口がどのようになるか計算したものである ということでございます。  これはどのようなことかと申しますと、例えば合計特殊出生率1.25、あるいは平均寿 命が例えば女性で85.6歳といった場合に、その数字だけを以てそれがどのぐらいの高齢 化社会を意味しているのかということはだれにもわからないわけでございます。これを 人口投影を行うことによりまして、実際に計算して示すことでその出生率や寿命の持つ 意味が明らかになってくる。これが人口投影の考え方でございます。  さらに国などの機関が行いますいわゆる公的将来人口推計におきましては、客観性・ 中立性を確保する立場からそのような前提となります出生・死亡・移動につきましても 仮定設定の段階で過去の推移や傾向を将来に投影するという考え方をとっております。  次のページは代表的な将来推計の方法でございますが、この中で重要となりますのは 3番目のコーホート要因法というものでございます。それについて説明したのが次の資 料でございます。詳しく説明を申し上げませんが、ここで重要となりますのは1年ごと の人口を推計してまいるわけでございますが、一番右下の四角の中にございますような (1)〜(3)の仮定値、これがこの方法の将来推計の人口をすべて決めている、100%この仮定 によって将来の人口は決まるというところでございます。  次にまいりますが、9ページの方、人口推計に必要な仮定値(1)、(2)、(3)、この重要な 仮定値を将来の行動や状況がわからない中でどのように設定したらよいかという問題で ございますが、これについては右側のグラフで模式的に示しますように仮定値について も投影を行うという考え方をとってございます。  次の10ページ、それから11ページ、12ページにつきましては、これらの具体的な例を 平成14年の1月中位推計の例を以て示してございます。まず、出生について、それから1 1ページは死亡について、そして12ページは移動についてでございます。このような形で 人口投影という考え方を背景にしまして、客観的な将来推計に努めるということでござ います。  それでは人口学的な指標だけを用いるという社会経済の変化はどうなっているのか、 全く考慮しないのかという議論がございますが、決してそうではございません。13ペー ジの方の図式はそれを示してございます。社会経済の過去の趨勢と申しますのは右側の 四角となりますが、観測された人口学的データの変化にすべて反映されているという考 え方でございます。それで将来推計人口は、そうした人口学的なデータや指標を投影す ることによって行われるということになります。  次のページは割愛しまして、社会経済状況の見通しや政策効果を人口推計に反映させ るという議論がございますが、以上に説明してきましたように将来人口推計の性質から そのことに対しては次のように言えるのではないかと思います。出生・死亡・移動など の人口変動要因と関連する社会経済要因は非常に多岐にわたっておりまして、個々の定 量的な関係を特定することが極めて難しいだけではなく、それらの相互作用をすべて勘 案するということは現状において科学的には不可能であろうということでございます。  また、将来人口推計は数十年に及ぶ長期的な推計でありますが、将来の社会経済状況 をそのような長期間にわたって見通すということ自体が困難でありまして、むしろ投影 に基づく人口推計というものよりも不確実性が増すであろうということでございます。 政策効果についても同様な観点から、推計に応用するということは難しい。したがいま して、諸外国におきましても将来人口推計においては、こうした効果を明示的に取り入 れているという例はございません。  以上、最後16ページの方に以上の議論をまとめてございます。最後には参考資料とし て諸外国の仮定設定の方法につきまして表にまとめてございます。以上でございます。 (廣松部会長)  ありがとうございました。ただいまのご説明に関しまして何かご質問、ご意見はござ いますでしょうか。どうぞ。 (宮城委員)  人口のことは全く素人で申し訳ありませんが、先ほど川崎厚生労働大臣がおっしゃっ た特殊出生率が2050年に1.39に回復することを前提で年金の制度を考えているというよ うに私は記憶しているのですが、その「1.39」という推計の数字は何がどのように改善 するから1.39になるというように試算されたのかを教えていただきたいんですが。 (金子部長)  この数字は平成14年、前回行われた将来推計人口の中位推計の数値でございまして、 年金財政の再計算におきまして基礎として使われた数字でございます。したがいまして、 その数字に依拠する限り財政についてもその計算の想定の範囲内で推移するという、そ のような根拠になろうかと思います。 (宮城委員)  特にこの部分が、例えば政策とか経済のこの部分が改善するからこのように回復する のだというような、何か根拠が学問的にはあったのでしょうか。 (清水参事官)  では私の方からご説明させていただきます。前回平成14年の1月に将来人口推計を社 人研で作っていただいたということが背景にございます。その際、人口投影を行って、 合計特殊出生率が1.39になった。この数値は平成14年1月の人口推計に基づいていたわ けで、それを基に平成16年に年金改正が行われたということでございます。つまり、平 成16年の年金財政の姿には、将来の合計特殊出生率1.39という考え方が様々な年金財政 の姿に組まれている。だから合計特殊出生率と出生数の落ち込みが一時的であって、将 来1.39に戻って行くということであるならば年金の信頼性というものの揺らぎはそれほ ど大きくないと考えており、合計特殊出生率が現実的にそのようにならなかった場合、 問題になると考えております。大臣の発言は、そのような背景に基づいているというわ けでございます。要するに、平成14年1月の将来人口推計に基づき、2050年において合 計特殊出生率が1.39になるという推計が行われ、その推計に基づき、2年前に年金財政 再計算が行われたということでございます。 (廣松部会長)  恐らくそれに関しましては、2回目に14年推計の方法及びその結果と実績の比較が行 われると思いますので、そこでもう少し詳しくご説明いただけると思います。金子部長 の方から何かございますか。 (金子部長)  今のことにつきまして簡単に示せる図が10ページの方にございます。「1.39」という 数字は決して何らかの政策を打って回復するというものを示しているわけではございま せんので、前回推計においてその時点における得られたデータを投影という形で将来に 投影して推計された結果であると。そのようにご理解いただきたいと思います。 (樋口委員)  第3回のときに人口推計の方法についてご議論いただくのだと思いますが、その時に やはり考えておきたいというように思いますのは、社会経済要因の扱いというものをど うするかということだと思います。  それで、ご説明がありましたように、これが非常に難しいということは十分承知した 上での話なんですが、今これだけ少子化対策というものを本腰を入れてやろうというよ うになっているときに、そういうものは今までと同じようにトレンドで進んでいきます よと。トレンドで進んだ場合、出生率はこうなりますよということだけでいいのかどう か。やはり無条件予測というのはそれは難しいわけですが、ある意味では政策シミュレ ーション的なこともやっていく必要があるのではないかと思います。こういう政策をと ればどのようになるのか。そこのところの安定性というものが非常にチャレンジャブル であるというようなことで、そのリスクを避けるためにはこういう今提示されたような 方法というようなことになるんだろうと思いますが、検討はしておく必要があるんじゃ ないかと思います。いろいろな施策がとられた場合に、今までと同じですよというのは 少し寂しすぎるというようなこともありまして、どのような政策をとった場合にどのよ うな上位・中位・下位が出てくるのかというようなものについて、そこは想定でも結構 ですから少し考えておく必要があるんじゃないか。特に経済学をやっている者からすれ ば、無条件予測というのはあり得ないわけで、そこの政府の取組、企業の取組、あるい は個人・社会・地域の取組といったものによって変わるというようなご説明だったと思 います。出生率自身が。だとすれば、そこを是非考えてほしい。あるいは我々は考えな ければいけないんじゃないかというように思っております。 (廣松部会長)  ありがとうございます。では津谷委員、どうぞ。 (津谷委員)  決して援護射撃をするわけではないんですが、前回のこの将来推計にも参加させてと いうか、この人口部会のメンバーであった者として、まず最初に樋口先生のおっしゃっ たことですが、実はここの第13回の出生動向基本調査のところにも少し書いてあるんで すが、1960年代生まれの女性、この動向を読むのが大変難しい。ちょうどその人たちは9 0年代の非常に不景気の時代に子供を生んで、それ以前の独身時代と言っていいんでしょ うか、バブルを謳歌して非常に消費志向の強い人たちで、そこのところが落ち込んでい るわけで、あれを一時的な専門用語で言いますと「コーホート効果」と見て、それでそ の後回復すると見るのか、その傾向がそのまま真っすぐ次の若いコーホートでも行くと 見るのか、さらにむしろこの60年代生まれの女性たちがある意味先駆けとなって更に下 がって行くのかという、この夫婦出生力の読み方が全く違うシナリオなんですが、それ はある程度考慮されていたんですね、前回では。ただ、今回はもうただただ、トレンド を投影するということでなく、上がるのか、真っすぐ行くのか、下がって行くのかとい う、ある意味非常に大きな影響力のある部分というのをもう少し、これは私たちもお手 伝いをして精査していくということが大変大事かと思います。  そして前回初めて実はモデルに導入されたパラメタがありまして、それはなぜかと言 うと、今までは結婚の、初婚のタイミングで夫婦出生力を見ていましたが、初婚が遅く なったらこれは当然落ちます。日本はもともと晩婚ですし。ただ、それプラス初婚のタ イミングの夫婦出生力への影響だけでなくて、夫婦出生力自身が落ちていくのではない かということで新しいパラメタを、もし私の理解が間違っていなければ、その推計を前 回の出生動向基本調査その他で、女性の学歴とか働き方とかいろいろな社会経済的な属 性を考慮してそういうパラメタを初めて導入した訳で、今回の推計ではそれを更に検証 して精査してモデルを緻密なものに、確実性の高いものに上げていくという課題がある。 ですから、やっていないわけではないのですね。  それで私は少しわかりませんが、先ほどのご質問ですが、どういう社会経済的な根拠 があって回復すると思っているのかと、そうではなくて、恐らく実はピリオドの、私た ちが毎年毎年聞いておりますこの「1.25」も、これはある年齢別の出生力を足したもの ですから、2つの要因で動くのですね。一つは、最終的に女性がどれぐらい子供を生む のかということと、後はいつ生むのかということで、いつ生むのかというのはある意味 横ばいのフラクチュエーションの元凶でして、それがある程度スムーズアウトすると上 がるというよりは、むしろその1.3、それぐらいで安定していくという結果であったとい うことで、何が根拠になって今よりも上がるのかということとちょっと、コーホートで 推計していますので、その辺のところはまた次回に金子部長その他がご説明くださると 思います。私はそういうように理解しました。 (阿藤部会長代理)  経済の先生は非常に大胆なことをおっしゃる。人口学者は非常に謙虚な姿勢でいつも 臨んでいるわけです。金子部長のご説明に、人口推計というのはプロジェクション、投 影だというご説明がありました。確かにそのとおりだと思いますが。ただ、それでも経 済の予測よりははるかに、人口の予測としては有意義であり、有効であり、長期に大変 役に立つということが確かなんですね。そこを間違えないでほしいということが第一点 ございます。ただし、その人口投影をしたときの仮定についてはそう簡単ではない。こ れも理解してほしいと思うんですね。ですから、先ほど金子部長は非常に謙虚におっし ゃいましたが、人口推計の人口のプロジェクションの部分というのはかなり予測的な要 素もあるわけですね。実際にかなり当たるわけですから。ただ、基礎となっている、例 えば出生率というのは今大変変動していて、どっちに向かっているかわからないと。こ れが1960年代、70年代であればかなり安定していましたから、ある意味単純だったんで すね。しかし、今のように1方向的に、しかも極端な形で動いている中でそれをどう見 るかというのは大変難しいですね。  実はその点でもう何か出生率の予測ができるという、私に言わせれば妄想は止めた方 がいいと思います。つまり、逆に言うとそういう観点からの批判が大変多いんですね。 そんなことはできるはずがないんです。ですから、それは金子部長がおっしゃったよう に、プロジェクションであるかもしれないし、あるいはある仮定の元にこうであればこ うなるだろうという、やはりそういう説明しかできないんですね。人口学者はその点で 非常につつましいというのは、そこのところは一生懸命に道具立てを用意して、出生率 というものを人口学的にさんざん分解して、そしていろいろなデータを基にして仮定を 立てるということでその場をしのいでいるというか、そういう形でやっているわけです ね。では逆に言って、例えば経済変数を入れた大胆な予測、そういうものが本当にでき るのかと。やはりこれは本来難しいことで、人口よりも経済の予測の方がはるかに難し いのであれば、経済変数を独立変数にして人口が予測できるかということは、およそ考 えるのは難しいのではないかと。私は常識でそう思います。  それで、できることは恐らくバックグラウンド資料として、そういう経済の変数と出 生率の関係のようにあるんだという、そういう分析資料というか、そういうものは有効 だと思います。ただ、それをそのまま推計に取り入れるとか、そういうことは世界の常 識ではあり得ない。国連でもアメリカという最も経済学が発達した国の人口推計でもそ んなことはしていないんですね。経済学による出生率の分析が散々やられているそうい う国でも、推計にそういうものを取り入れるということはしていないと思います。でき ないんですね。できないのであれば、余りそういう観点から人口推計の批判をするのは どうかなというように私は思います。  ですから、淡々と私は人口学的な要素の変化、そして人口モデルを踏まえながら、し かし同時に経済社会的な変化を横で見つめながらこの仮定設定をしていくというぐらい のスタンスが望ましいのではないかなというように思っております。 (廣松部会長)  ちょっと時間がオーバーしておりますので、樋口委員、国友委員、それからまだ今日 ご発言いただいていないお2人の委員の方から一言ずつご発言をいただいて終えたいと 思います。 (樋口委員)  大胆な経済学者としてあえて挑戦させていただきたいというように思いますのは、経 済シミュレーションをするときには当然政策シミュレーションというような形で出てく るわけで、それが人口問題の予測に難しいというのはこれは十分にわかっております。 その上で、例えば先ほどの仮定設定をどうするかというようなところで、今までのよう な、ここに書いてあるのがそのとおりだとすれば、社会経済環境の趨勢がこのまま続き ますよというような、トレンドで伸ばすというような仮定設定の仕方がよろしいのかど うかというようなところに経済的要因なり、あるいは政策的要因というものを考えてい く必要があるんじゃないでしょうかと思っております。  それで先ほど津谷先生の方から、前回もそうじゃないかというようなお話があったわ けですね。そうでありますので、多分やっているんだろうと思います。単にトレンドで 伸ばしますという話じゃなくて、幾つかの想定を置いてやっているというように思いま すので、そこのところを有効に生かすことはできないんでしょうかということなんです ね。 (国友委員)  私も経済学部に属して統計学を専攻しています。現在の人口統計的な人口推計のやり 方については、それに代替するような方法は余りないというように考えております。た だ、なぜ、この間の出生率の数値の報道が社会的にもかなりのインパクトがあるかとい うと、単に平成14年の推計方法と実績と比較という話だけではなく、もう少し長いスパ ンで考えたときに政府が発表している推計値と実績値がかなり食い違っているという問 題があると思います。  この問題は先ほどの話題に関係しますが、推計(プロジェクション、統計学の普通の 言葉では「予測(プレディクション)」)ですが、将来の予測を立てるときの仮定の置 き方について若干今まで非現実的な側面があったと思われるので、色々な社会的な混乱 を引き起こしていると解釈できます。今後はかなり誤解のないような説明の仕方、ある いは仮定の置き方について、より明確に議論すべきだと思います。以上です。 (廣松部会長)  ありがとうございました。では榊原委員、お願いします。 (榊原委員)  2点ありまして、一つは先ほどのご説明にはなかったんですが、最後に説明された資 料の一番最後のページに、参考資料として各国の将来人口推計というのを簡単に説明し ていただいておりますね。各国ではどういうように人口推計を出し活用しているのかと いう、この情報をできたらもう少し詳細なもので出していただけないでしょうか。特に 出生動向を反転させている国々で参考になりそうなところを、これは全部じゃなくても 結構ですからピックアップしていただきたい。例えばこれ以外にも北欧の国々などでこ うした人口推計をやっているところがあるのでしたら、そういうのも出していただきた いなというのがお願いです。  もう一点が、私は経済の予測の難しさというのはわかりませんが、実は考え方として は樋口委員がおっしゃったことに一部賛成なんですね。これまで中立性とか客観性とか 非常に大事にしてこられて推計を出してこられたというのは、長く私もウォッチさせて いただいて感じてきたところではあるんですが、余りにも過去のトレンドをそのまま延 長させてということで、対外的な説明をきちんとするようにというところが余りにも慎 重に考え過ぎていたために、世の中の動向の変化の早さについて行けなかったというと ころがあると思います。そこの時差というか、ギャップをどうするかという問題が多分 突きつけられているんだと思うんですね。その場合に一つのチャレンジとして、人口推 計そのものに入れるかどうかは確かに議論があると思いますが、もう一つ別の考え方と して参考資料のような形でもいいのかもしれないんですが、子育て世帯を取り巻く環境 がこう変わった場合というような仮定の置き方というのもあるのではないかというよう に思います。  例えば日本の出生動向をずっと見てきてとても特徴的なのが、ひのえうまの年に、19 66年ですか、ものすごい出生動向が落ちてまた上がるとか、またミレニアムの前後のと きに明らかに反応した動きがあるというように、社会の状況とか与えられた環境に反応 してやはり出生というのが起きているということが読み取れる部分があると思うんです ね。一方で、こちらでもいろいろな調査をされているけれど、生みにくい、育てにくい、 これだけ当事者世代が言うということは、経済社会環境のどの条件を、どう動かしたら、 どう変わるのかというところを、もう少し仮定を置いた予測の立て方をできないかと思 っています。(廣松部会長)  ありがとうございました。最後でございますが、小島委員から何か。 (小島委員)  私は1960年生まれで、少子化の元凶と言われる世代です。私はたまたま2人子供がい るんですが。今の後輩たちを見ていても、3年違うと意識が全然違う。就職状況や景気、 働き方とか、子育てに対する考え方、結婚に対する考え方が違うので、そのあたりの意 識をもう少しこの出生動向基本調査などで細かく見ていかないと、この先伸びるのか、 平行のまま行くのかということが、とても把握しきれないのではないか。そのあたりの データがもう少しあるといいかなと思います。 (廣松部会長)  ありがとうございました。委員の方々に大変ご熱心にご議論をいただきまして、少々 時間が超過してしまいました。とりあえず今日の審議はこれで終えたいと思います。本 日出ましたご意見、あるいはご要望に関しては次回に資料等の準備をよろしくお願い申 し上げます。  本日は長時間にわたり大変積極的にご議論をいただきまして誠にありがとうございま した。次回の開催日時につきましては、一応8月の前半を予定しております。ただ、詳 細は改めて事務局の方から委員の皆様方に問い合せをしますので、よろしくご協力のほ どをお願い申し上げます。それでは本日の審議はこれで終わりたいと思います。どうも ありがとうございました。 (終了) 照会先 厚生労働省政策統括官付社会保障担当参事官室 代)03−5253−1111(内線7714、7692) ダ)03−3595−2159 国立社会保障・人口問題研究所人口動向研究部 代)03−3595−2984(内線4474、4475) ダ)03−3595−2992