06/06/29 看護基礎教育の充実に関する検討会第3回議事録 照会先:医政局看護課 岩澤(2599)柴田(2599) 電話:03−5253−1111                  直通:03−3595−2206 第3回看護基礎教育の充実に関する検討会                     日時 平成18年6月29日(木)                        15:00〜                     場所 厚生労働省共用第7会議室 ○事務局(柴田) ただいまから、第3回「看護基礎教育の充実に関する検討会」を開 催します。委員の皆様方におかれましては、ご多忙にもかかわらず当検討会にご出席い ただき、ありがとうございます。最初に看護課長の田村から、今回初めて出席された委 員の紹介をさせていただきます。 ○看護課長 看護課長の田村でございます。本日はお忙しいところ、皆様、ありがとう ございます。第1回と第2回の検討会にご都合があって欠席された南裕子委員をご紹介 します。南裕子委員は国際看護師協会の会長、そして日本学術会議の会員としてご参加 いただいています。よろしくお願いします。それと村田委員が少し遅れるとの連絡をい ただいています。間もなくお見えになるかと思います。それでは座長、議事進行をよろ しくお願いします。 ○遠藤座長 皆様、本日はお暑いなか、ご参集いただきましてありがとうございます。 事務局より資料がいくつか出ていますので、その確認をお願いします。 ○事務局 お手元に配付している資料の確認をお願いします。議事次第、検討会メンバ ー、座席表、資料1〜資料4、参考資料です。資料1は「保健師教育について(16頁)」 資料2は「助産師教育について(15頁)」、資料3は「看護師教育について(1頁)」、 資料4は「第2回看護基礎教育の充実に関する検討会、主な意見(5頁)」、参考資料 として、「健康保険法等の一部を改正する法律案及び良質な医療を提供する体制の確立 を図るための医療法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(7頁)」です。また 本日は堀内委員、小山委員から資料が提出されています。第1回検討会議事録、及び参 考として小山委員が主任研究をされた平成16年度厚生労働科学研究「看護基礎教育の改 善に関する研究」報告書を委員に配付しています。乱丁、落丁がある場合には事務局ま でお知らせください。 ○遠藤座長 よろしいですか。早速議論に移りたいと思いますが、本日の議論の進め方 について、事務局からご説明をお願いしたいと思います。 ○岩澤補佐 前回、説明させていただきましたように、本日は保健師教育、助産師教育 についてご議論いただくこととしています。一方、前回検討の後、座長ともご相談して 看護師教育についてはもう少し議論が必要であろうと考え、本日、看護師教育について も若干議論していただき、次回の第4回で看護師教育や看護師・保健師・助産師教育の 位置づけに関することなど、本日までの議論を踏まえた議論をしていただければと考え ています。そのうえで、4回の議論を踏まえ、引き続き検討する事項は何か、ワーキン ググループで検討を重ねる事項は何かなどを整理する議論に入っていただければと考え ています。なお、委員の皆様のお手元には、本日の議論の参考として、第1回、第2回 の検討会を踏まえた保健師教育、助産師教育に関する主な議論についての資料をお配り しています。 ○遠藤座長 ただいま事務局からお話がありましたように、本日は3つの議題について ご議論いただく予定です。事務局から提出されている資料については、それぞれの議題 で議論する前に、それぞれご説明いただくことにしたいと思います。早速、最初に「保 健師教育について」という議題に入りたいと思いますが、それに先立ちまして「保健師 教育について」の資料の説明をお願いします。 ○岩澤補佐 資料1の保健師教育について説明します。1頁は、この10年間の保健師 学校養成所数の推移を、養成課程別に表とグラフで示しています。平成8年は103校で したが、平成17年には173校と増え、その中でも大学の占める割合が平成17年では73% になっています。  2頁は、保健師学校養成所の一学年定員数のこの10年間の推移です。平成8年は 4,742名ですが、平成17年には11,109名となっていて、学校数と同じように一学年定員 数も大学の占める割合が平成17年では85.9%になっています。  3頁は、過去3回の指定規則の改正による保健師教育の内容の変遷、時間数、単位の 変更について表にしたものです。昭和46年は実習も合わせて705時間であったものを、 平成元年にはゆとりのあるカリキュラムということもあり、合計690時間に改正されて います。また、平成8年には「公衆衛生看護学」について、改正の概要のところに書い てありますように、市町村・保健所を中心とした保健予防活動に焦点を置いた公衆衛生 看護と、在宅療養者に焦点を当てた継続看護を含む「地域看護学」という教育内容にな っています。また単位制が導入されています。この平成8年のカリキュラムで現行進め られているところです。  4頁は、実際に保健師養成所で実施されている教育内容別単位数(時間数)を示した ものです。上の表は1年間で教育を実施している保健師養成所18校について、教育内容 別の平均、最大、最小で示している単位数で、いちばん右が合計です。平均34単位、多 い所で57単位、最小の所でも21単位です。これ以外に指定規則外の科目も、これらの 学校では行われています。下の表は、保健師と助産師と合わせて1年で国家試験受験資 格が得られる養成所2校について、教育内容別単位数を示したものです。  5頁は、大学における地域看護学の教育内容ということで、内容としては行政・公衆 衛生看護、在宅看護、学校看護、産業看護別に、必修、選択、自由として置かれている 単位数の最大、最小、平均を示しています。右から2番目の列の必修と選択を合わせた 計の欄ですが、平均単位数が13.4単位、最大25単位、最小3単位となっています。こ れは78校のデータです。  6頁は、地域看護学実習として保健所、市町村で実習が行われるわけですが、それぞ れの場所での日数を示したものです。保健所での実習で最も多いのは5日で23.4%、続 いて2〜4日、あるいは10日の所が多くなっています。市町村実習は10日間が22.8% となっています。  7頁は、保健師学生の実習指導について、そのあり方を調査した研究事業からの抜粋 です。調査対象となったのは平成16年3月に卒業生を出した大学82校と、それらの学 校の学生を受け入れている保健所・市町村の実習担当者です。回収は大学が61校、地域 は保健所・市町村の実習担当者772名が回答し、それを分析したものが次からの頁にな ります。  8頁は、大学に行った調査で保健所・市町村で、1施設当たり何人の学生を実習に出 しているかというものです。保健所では平均9.3人、市町村へは平均5.7人の学生が実 習に出ています。また実習中の指導体制としては、巡回型が4分の3を占めています。 一方、これからの学生を受け入れている保健所・市町村の実習指導体制についてまとめ たのが下の表です。受け入れの学校としては、1校が最も多く58.2%になっています。 指導体制としては、いちばん下にあるとおり事業担当制あるいはグループ担当制で学生 を指導している所が多くなっています。  9頁は、卒業時、習得すべき実践能力ということで、ここに挙げている能力について 大学と地域の両方に問うたものです。「一人でできる」「指導下でできる」「理解して いる」という3段階で聞いていて、この中で大学側が考えている卒業時に習得すべき実 践能力と、地域が習得すべきと考えているもので大きな差があるのは、真ん中にある家 庭訪問の技術です。「1人でできる」というのが大学では27.9%、地域では47.5%とな っています。その下の面接相談の技術についても、大学と地域では20ポイントの差です。 健康教育の技術についても「1人でできる」としているのが、大学と地域で10ポイント の差があります。一方、実習で体験させたい項目のうち、実際に行っている項目は何か を大学に聞いた結果ですが、家庭訪問、地区診断、健康教育は、60〜70%の学校が実際 に行っていると答えています。  10頁は、保健師学生定員の変化と臨地実習場の変化を見たものです。右肩上がりに上 がっている棒グラフが一学年の保健師学生の定員数です。折れ線グラフの黄色は市町村 の数です。平成8年には3,200あったものが現在は1,800になっています。市町村保健 センターの数は1,400から1,800に、保健所数は833から535に変化してきています。  11頁は、保健師就業者数と保健師学生定員数の推移について見たものです。目盛が違 うのですが、棒グラフが一学年の保健師学生定員数になります。黄色が市町村の保健師 の数で13,000人から、この10年近くで22,000人と増加しています。保健所保健師は 8,900人から7,600人と減少している中で実習が行われています。  12頁は、国家試験受験資格を得た学生の国家試験の合格者数・合格率の推移を見たも のです。養成課程別に大学、短期大学専攻科、養成所とありますが、養成所の中には保 健師の教育を1年で行っている所、保健師と助産師を合わせて1年で教育を行っている 学校、保健師と看護師を合わせて4年間で教育を行っている養成所がありますので、そ の課程別に合格者数と合格率の推移を見たものです。平成10年の合格者3,700人から、 平成18年には倍以上の7,536人の合格者数が出ています。これは新卒についてです。  13頁は、保健師として就業する新卒者数です。平成8年に1,400人台、平成11年に は1,700人が保健師として就業しましたが、直近の平成17年には794人になっています。 これは大学の保健師国家試験合格者数の6.9%でしたが、それ以外の課程では合格者数 の30.3%が保健師として就業しているという実態です。  次に卒業後の状況について紹介します。14頁は初任者保健師が従事する業務内容につ いて調べたものです。都道府県、市町村、政令市に勤務する保健師で地域保健・福祉業 務に従事している者について、ここでは初任者を3年以内とし、3年以内の者2,900名 が回答した結果です。「よく従事する」「従事することがある」「従事しない」という ところで、60%以上のところに網掛けをしています。「よく従事する」内容としては中 ほどにある健康診査、健康相談、家庭訪問です。  15頁は、日本公衆衛生学会に置かれた「公衆衛生看護のあり方に関する検討会」の報 告書からの抜粋で、保健師の必須能力についてまとめられたものです。保健師にはこの ような能力が求められているというものです。  16頁は、地域保健従事者が新任時期に求められる能力としてまとめた資料です。ここ では5年以下の方を新任とし、新任時期に求められる能力として基本的能力、行政能力、 共通の専門能力があり、また保健師であれば保健師としての専門能力、医師であれば医 師としての専門能力ということで、持つべき能力はこのように分類されるというのがこ の表です。この詳細については検討会報告書の抜粋として付けています。 ○遠藤座長 ただいまご説明があった内容について、ご質問、ご意見等があれば承りた いと思います。いかがですか。 ○南委員 2回も欠席しまして申し訳ありませんでした。保健師の教育について今日が 初めてと伺っていますので、お聞かせいただきたいのですが、2点です。1点は保助看 法での保健師の定義がどうなっていたかということです。つまり法律的に保健師に求め られている目的は何なのかということと、保健師の教育を考えていくときに、今日お出 しいただいたデータは、すべて行政保健師のことに焦点を当てて保健所、保健センター など、いわゆる公的機関で働いている保健師ですが、保健師の中には資格を取って産業 保健師になる方もいるし、民間等では臨床保健師という名前のもとで患者さんの退院指 導などに携わっている人もいます。養護教諭の2種が取れるので養護教諭になっている 人もいるし、ある意味で健康相談とか外来での保健指導をするときに、保健師と看護師 の免許を持っている人たちが保健指導をしている。いわゆる法律に基づく仕事をしてい るということがあるのですが、そういう保健師が就業しているのはどういうところかと いうことは、今までがそうだったのでよくわかることですけれど、そういうデータがあ ればお示しいただきたいと思います。 ○看護課長 保助看法上の保健師の定義は第2条にあります。この法律において保健師 とは、厚生労働大臣の免許を受けて、保健師の名称を用いて保健指導に従事することを 業とする者をいうと書かれています。まさに業務としては保健指導ということが出てい ます。  2つ目の質問ですが、現在の就業状況と関連してくるかと思います。資料を提出して いませんが、現在、就業している実態としては、平成16年末現在で46,000人の保健師 が就業しています。保健所、市町村等の行政的な領域で働いている保健師は、合わせる と約3万人います。残りの16,000人ほどが診療所、病院、事業所で働いています。また 必要であれば資料等を提出させていただきます。 ○南委員 保助看法上の第2条ですね。名称独占なので、名称を用いて保健指導に従事 するのですね。 ○看護課長 そうです。 ○南委員 このことを目的とした保健師教育をどう考えていくか。そして就業者のうち、 確かに3分の2近くが行政で働いているけれど、3分の1は他の診療機関等で働いてい る。でも、今日お出しいただいたデータがすべて行政の保健師の実態とかで、そういう ふうにリードされる感じがするのですが、別にそういう意図ではないということですね。 ○看護課長 私どものほうで、これまで手元に集まってきている保健師の活動実態や求 められる能力に関しては、病院、診療所、あるいは産業の領域等に関しては、そうした まとまったデータを見つけられなかったということがあります。その観点と、これまで にある意味、行政で働いている保健師が非常に多く活躍されてきた結果、こうしたデー タの積み重ねがあったということではないかと思っています。 ○南委員 でも意図としては、別に行政だけにということではない。 ○看護課長 そういうことではありませんし、新卒者でだんだん就業者数が減ってきた ということを申しましたが、これは産業保健等で働く保健師として就業した人も含まれ ています。 ○南委員 ありがとうございました。 ○遠藤座長 村嶋委員、どうぞ。 ○村嶋委員 いま、南委員がご指摘なさいましたように、保健師の条項は保健指導を業 とするとなっています。では、保健指導は何かということですが、看護師が主に「ちょ っと病気かな」と自覚してから医療機関に来る患者さんを相手にするのに比べ、保健師 の場合は自覚症状の無い人を相手とします。それだけ、高度な技術が求められるわけで す。その技術のひとつとして、家庭訪問をすることが大変多くあります。保健指導の力 を発揮するためには、その方の暮らしぶりをきちんと見ていくことが大事です。例えば、 お子さんを育てているお母さんならば、本当にちゃんとお料理をしているのか、お風呂 に入っているのか、暮らしぶりはどうなのか、そもそも理解力はどのくらいなのかなど、 家に行くことによってわかることが大変多くあります。そういう意味で資料の14頁にも ありますように、新卒ですぐ求められる能力として8割の人たちが家庭訪問をすぐにし ないといけない。それも、近年は保健師がかなり手薄になっていますから、就職後直ぐ にして1人で家庭訪問しなければいけない状況があります。しかし、いまの実習ですと、 先ほどご覧いただいたように10日前後というのが大部分で、家庭訪問をしっかり身に付 けて、やっていく状況にないというのが残念ながら教育の実態です。  そういう意味では、保健師として必要な保健指導能力をきちんと身に付けるためには、 その方の家に行って、生活を見て一緒に考えていく。家庭訪問も法律に基づいて行く場 合が多いですし、このごろは少子高齢化の中で、育児不安を抱えるお母さん、虐待をし がちなお母さんもいます。国際化に伴って外国人母子も増えていますし、すごく問題が 複雑になってきています。そういうなかで複数回家庭に行って、いろいろケアしていく 能力が保健師には必要です。保健指導を十分機能させるためには、学生時代に家庭訪問 能力をしっかりと身に付けていく必要があると思います。  こういう家庭訪問能力は、相手の生活の場に行き、その生活を見るということですの で、産業保健師の場合には職場巡視に当たりますし、学校の場合には学校の中でのクラ ス訪問であるし、必要があれば家庭に行くこともあります。そういう意味では保健指導 を業とし、その機能を十分に発揮するためには、いまの2週間、3週間の実習ではとて も足りません。是非、その点を充実して社会に送り出したいというのが、保健師教育に 携わる私どもの願いです。 ○遠藤座長 既に議論の中身に入ってしまいましたが、とりあえず先ほど事務局が説明 した資料について、ご質問あるいは資料に直接関係するご意見がありますか。 ○石垣委員 資料の12頁です。素朴な質問で大学の看護師教育にあたっている先生に 是非お伺いしたいのですが、この合格率の年次推移について、養成所の所で平均は 83.3%、1年教育をした所は93.6%、保健師・助産師合同は95.2%です。その下に統合 カリキュラムの4年で62%とあります。この62%をどのようにお読みになっておられる のか。 ○遠藤座長 わかりました。これは事務局からお答えするといっても推測をして答える ことになるでしょうか。事務局からお答えできる範囲でまずお答をいただければと思い ます。 ○看護課長 私どもも1つ1つの学校の国家試験の合否の結果について、丁寧に分析を しているわけではなくて、155名の合格者で62%と、どうしてこれだけ低かったのかに ついて細かく申し上げられるだけの準備がありません。学校数としても確か5、6校の 結果だと思っています。 ○遠藤座長 教育に関係されている委員の先生方は大変多くおられますが、何か今の質 問についてコメントなり、ご見解なりがあれば承りたいと思います。 ○草間委員 大学のほうも81.9%ということで、保健師教育のみを専門にやっている養 成所に比べると若干低いデータが出ているかと思います。先ほどからご説明があります ように、卒業して就職する場合に、実際に保健師として就職できる学生というのは10% 未満なのです。そういうことを考えても、看護師はほとんどの学生が希望通りに看護師 として就職するわけですので、とにかく合格しないと職を失ってしまうということから、 かなり気合を入れてやるわけです。保健師の場合は、合格しなくても次の年に取れれば という気持も若干働くのではないかと思います。ただ、昨年あるいは16年度と比べて、 合格率ががくっと落ちているというのは、若干試験問題にも関係があるのではないかと 思います。この1、2年で合格率がこんなに変わるほど、大学教育が変わったとは思い ません。先ほどの南委員の質問に関連して、是非、私は行政にお願いしたい。保健師と しては今日ご説明いただいたように必ずしも行政保健師だけでなく、産業保健師や学校 保健師など、さまざまな所で活躍できるように教育しているわけです。いま、法律上で 保健師を置かなければならない、いわゆる「ねばならない」規定は、地域保健法の関係 で保健所に置かなければいけない、あるいは市町村保健センターには保健師を置かなけ ればいけないというかたちであるわけですが、例えば産業保健師に関しては労働安全衛 生法上、産業保健師という言葉は出てくるわけですけれども、産業医に関しては、例え ば1,000人以上だったら専任にしなければいけないということで、「ねばならない」規定 ですが、労働安全衛生法上、産業保健師を置かなければならないという「ねばならない」 規定ではないのです。そういうことで、保健師の活躍の場を広げるという意味では、何 らかの形で産業現場等も、先ほど村嶋委員が言われたように、職場巡視は労働安全衛生 法上は産業医に義務づけられている行為ですが、実際にやっているのは産業保健師です。 そういうことを考えると、是非、産業保健とか労働安全衛生法上など、そういった関連 したところに保健師を置かなければいけないような「ねばならない」規定を、是非作っ ていただくことが必要です。これだけ教育に力を入れている私どもとしては、お願いし ておきたいと思います。 ○遠藤座長 早速、もう議論に入っているようですが、ただ、この資料と直接関係する ようなご質問、ご意見があれば、続けてお聞きします。 ○南委員 先ほどの国試の結果の数との関係にも出てくるので、教えていただきたいの ですが、看護師は国家試験の合格率が1ポイントでも下がると臨床現場が非常に困り、 社会的な問題として大きな問題になりますけれども、保健師の場合の就業者数が最近は 激減しています。これは行政保健師の数でしょうか。 ○看護課長 新卒の就業者数ですか。 ○南委員 新卒の保健師ですが、例えば臨床で健康指導のために専ら保健師をやってい るというのでなく、基本的に行政の保健師とは限らないでしょうか。それが1点と、 需給見通しを立てているので、保健師の数が毎年、確実にどのくらいほしいと看護課は 試算されていますか。看護師はいろいろな場で働いてもらいたいのですが、数がないの で働いてもらえない。保健師の場合はこれだけの養成力があるので、働く場が広がって いくことの可能性も含めて、法律的に位置づけられることを考えると、いまの段階で保 健師の需給見通しをどういうふうに必要と考えているか、教えていただきたいと思いま す。 ○看護課長 最初のほうの質問で、13頁の保健師として就業する新卒者数の中は、学校 の入学者、卒業者調査を対象の中でのことで、保健師として採用された人となっていま すから、病院等で保健師として採用された人も、産業保健等で働く保健師もすべて入っ た数字です。例えば、大学卒業者の中で保健師として409人となっていますが、その最 も多い所は220人が市町村で就業していますし、工場等に就業した人は14人、学校6人、 病院に保健師として就職した人は74人といった結果が出ています。  需給見通しは、現在第6回を策定したところですが、第5回までは保健師・助産師・ 看護師・准看護師の全部の職種をまとめて計算してきました。今回の第6次の策定にあ たっては、助産師が業務独占規定もある職種であることもあって、別掲で策定したとこ ろです。保健師については、保健指導そのものについて、ある意味独占規定がなく特定 していません。したがって、看護課がいま持っている数字では、何人が今後必要である ということを申し上げられる状況にはありません。 ○遠藤座長 よろしいですか。 ○南委員 この794人の保健師が実質的に、いま社会で保健師として必要とされて就職 した、その数ですね。 ○看護課長 そうです。 ○南委員 したがって保健師としての資格を持った数よりも、かなり下回ると。 ○看護課長 少ないですね。 ○草間委員 今年からの介護保険法の制度改正に伴い、地域包括支援センターができ、 そこは一応、保健師を置かなければいけないことになっているわけですが、市町村が結 構民間に委託してということになるので、その場合は行政保健師のカテゴリーに入れる のでしょうか。その辺はわかりませんが、そういう意味で私どもは介護保険の改正に伴 い、保健師の就職口が少し増えるのかなという期待は持っていますけれども、その辺は どうでしょうか。 ○看護課長 まだ何とも私のほうで申し上げられる数字があるわけではありませんが、 確かに地域包括支援センターでの保健師の設置ということもありますし、今回の医療制 度改革に伴い、生活習慣病予防といったことが強調されてきているので、そういう中で 保健師への期待というのは、大変大きくなっていくのではないかということは申し上げ られるかと思います。 ○遠藤座長 浅田委員、お待たせしました。 ○浅田委員 素人なものですから、ちょっと質問します。教育単位数のところで保健師 課程のみの1年間は21単位で、合同で6カ月も21単位というのは、1年でやっている 教育内容を半年でやるということですね。同時に大学の場合の地域看護師の教育内容は、 平均単位数が13単位ぐらいですが、これに何か加えて保健師ということですか。つまり 合同カリキュラムでの内容と個別の養成との教育内容というのは、完全にオーバーラッ プしているのか、どういうふうにずれているのか、そこがよくわからないのですが、例 えば半年で同じ単位数をやるというのは、ものすごいぎゅうぎゅう詰めでやっているの か、何か相互乗入れでやっているのか、そのあたりを説明していただけないでしょうか。 大学の場合に保健師の資格に対して、もちろん国家試験だと思いますけれども、こちら は平均が13で、大学によって違うでしょうけれども、13で十分ということなのでしょ うか。つまり教育内容がずいぶん違うように思うのです。そういう機関によってばらつ きのある教育内容で、いまは養成されているということなのでしょうか。 ○岩澤補佐 資料の4頁が養成所での実際の教育内容別単位数なのですが、上の表で教 育内容の下に括弧で書いているのが、指定規則で示されている内容別単位数になります。 ですから、最低21単位をしていただかなければならないわけですが、1年間かけていま すので、平均34単位、多い所で57単位、少ない所で21単位の所がありますが、その少 ない学校は2校あり、指定外科目でそれぞれ28単位、25単位の一般教育あるいは養護 教諭1級を取るのに必要な教育原理、養護概説などが入った単位を、約400時間程度そ れぞれ1年間で保健師に必要な単位に加えて教育されています。  また、下の保健師・助産師合同カリキュラムでは、保健師に必要なのは21単位で、24 単位を実際にされていて、このほかに助産師に必要な22単位を加えた形で1年間教育し ている実態にあります。養成所についてはよろしいですか。 ○浅田委員 はい。ということは、保健師のみ半年で養成できるということですね。 ○岩澤補佐 法律上はそうなっています。 ○浅田委員 つまり教育内容とか、基本的にはそこを保障すればいいということですね。 ○岩澤補佐 制度上は6カ月以上です。 ○浅田委員 わかりました。大学はどういうふうになるのでしょうか。大学の場合に平 均13.4ということは、21単位に相当する教育内容をというのは単位数からいくと合わ ないのですが、どういう形でカバーされているのでしょうか。 ○文部科学省医学教育課長補佐 大学の関係につきましては、看護師、保健師一体とし て教育を統合カリキュラムというか、体系でとっているところが多くありますので、そ の中で実質21単位を担保しているところです。ただ、これは結局、ほかの分を読まない ところをもって単独の成案を選択ではなくて、資格を取るための必修の科目だけを抜粋 したものだと認識しています。 ○浅田委員 今のこの表のものが、必修の科目だけということですか。 ○文部科学省医学教育課長補佐 その学校において、必修科目のみを計上しているのだ と認識しています。 ○浅田委員 それ以外は、21単位を充足するための残りの単位数は選択必修という意味 なのですか。 ○文部科学省医学教育課長補佐 資格を取るためには選択必修です。 ○浅田委員 それについては、いくつあるかというのは分からないわけですね。つまり それを取らないと保健師の教育内容は、ここでは議論できないと思いますから、保健師 の教育となるとそれを含めてのはずですよね。 ○文部科学省医学教育課長補佐 当然、そうです。 ○草間委員 養成所の場合には看護師90何単位、保健師21単位、助産師22単位でし たか。大学の場合は、統合カリキュラムという形で125単位が卒業要件単位として、現 在、それぞれの大学に課せられています。その中で大学がどう読み替えるかというのは それぞれです。いま、ここに書いていただいているのは、指定規則と全く1対1で対応 するものを書いていただいていると読めばいいわけです。いずれにしても大学としては 125単位は統合カリキュラムで取るようにと規定されていますので、125単位が大学の最 低卒業要件になります。 ○浅田委員 それはわかります。先ほど保健師の教育内容を問題にしたわけですから、 保健師の教育内容として、大学はこの平均13だけでなく選択必修のものがあるはずです から、それが例えば保健師の養成というのと本当に対応しているかどうかを見ないと、 養成機関によって教育内容が違うということになりますから、そこをきちんと示してい ただきたいということを言っているわけです。その上で受験するわけですから、では大 学では違う教育をしているとそれは困るわけで、そこをきちっと対応させてくださいと いうことです。 ○看護課長 最初にも申しましたように、学校養成所指定規則というものは文部科学省 と厚生労働省と共同所管している省令です。その省令に基づいて大学が保健師学校とし て、そして、厚生労働省の所管する保健師養成所として指定していますので、その内容 をやっているということは文部科学省において確認して、学校として文部科学大臣の指 定を受けているということなのです。 ○浅田委員 もちろん、それはわかります。だからそこで見えないのは、ここの単位数 ということを言っているわけです。 ○看護課長 5頁の数字ですが、これは私どもが手に入れた資料ということで限られて いるのですが、実は地域看護学という保健師教育のすべての21単位に対するものではな くて、地域看護学というのは、全体では12単位と実習も含んで、合わせて15単位のも のとして、それらがこのような形で公表されているものとしてありましたので、出させ ていただいたという経緯です。 ○遠藤座長 まだいろいろと提出された資料に対するご質問、ご意見があると思います が、既に内容が教育の内容に入っていますので、これからの議論の中でまたご質問があ っても構いませんが、時間の制約もありますので保健師教育についてということで、ご 議論いただきたいと思います。看護師教育の場合は、学校で教わることと現場でのギャ ップは何だったかということをまずやって、それから学校で教わる教育と新人研修との ギャップは何だったかということを次にやり、では学校で教わる教育の内容についてど うか、その他という順でお話をしていったかと思います。  今回も、基本的にはそういうふうに分けてやるのがいいかと思いますが、実はこの後、 助産師と看護師をやらなければいけなくて、時間がオーバーしていて十分にとれません。 基本的にはそのギャップと、新人教育と学校教育、学校教育の中身といったことを頭に 入れていただきながら、ご議論いただきたいと思います。既にいくつかのことが出てい ますので、それを含めても構いませんが、大体16時05分ぐらいまでを目処に、ご議論 していただきたいと思います。いかがですか。先ほどのご質問、ご意見の中でまだ言い 足りないというところがあれば、そこを取っ掛かりでも結構です。 ○坂本(憲)委員 いま、保健師のお話を聞いていて、問題点というのがよくわからな いのです。私は普通に生活していて、保健師さんのお世話になったことがあまりなくて、 子どもを育てたときも訪ねて来られたようなこともないし、保健所で地域の保健の指導 などをやっていただいているから、私達日々の暮らしが大過なく過ごせているというの はわかるのですが、要するに保健師の教育の充実をもっとしたほうがいいということで、 この資料を出していただいたのでしょうか。細かいことを見て私が感じたのは、保健師 になる道がいくつかある中で、教育の内容にばらつきがあり、実習も1〜2日と10日と 差があることがわかりますが、そこで実習時間の差が、現場に行ったらものすごく差が 出てくるのだろうと思います。  お聞きしたい実習の話だと、要するに資格を取れば、それはそれなりの能力があると 認められているデータと解釈すればいいのでしょうか。  保健師の就職率が30.3%ですが、これは一体どういう理由でこんなに少なくなってい るのでしょうか保健師の教育を充実させる必要があれば、就職率がこんなに少なくなっ ていることが、どういう問題があるのかというのが、お聞きしていてわからなかったの です。その点を教えてい。、ただきたいと思います。 遠藤座長 それは事務局へということでしょうか。 ○坂本(憲)委員 そうですね。 ○遠藤座長 それでは事務局、答えられる範囲で結構ですが。もう少し具体的に質問を 絞っていただけますか。 ○坂本(憲)委員 ですから、保健師教育の充実が必要であるのなら、私はまず実際の 現場ですぐに求められる能力を充実させなければいけないと思います。そこの基本的な 考えになると、いまの現状ではこの資料から内容的に格差があるのではないでしょうか。 実際に求められるものがいろいろな道で違ってくるのでしたら、明らかにギャップはあ るわけです。だからそこの点を充実させていくことを、この資料で示しているのかとい うことと、充実させる必要があるのだったら、何で就職率がこんなに減っているのに、 その辺のニーズのバランスがよくわからないのです。 ○遠藤座長 わかりました。この資料の目的というのは特に会議のためにという目的で すし、意図した意味で出しているわけではありませんから、そのご質問はおそらく事務 局に対するものではなくて、患者のお立場からいま坂本委員がお話されたと思いますか ら、そういうような言葉があったわけですが、養成する側がそれに対してどのようにお 考えなのか、あるいはそのとおりだとすると、どういうふうに教育体制を変えていく必 要があるのか、こういうような話に持っていくと、教育の話につながるかと思います。 どなたか、いまの話を受ける形でご発言いただければと思いますが、いかがですか。 ○菊池委員 教育をしている立場ではないのですが、いまご質問にあった就職する場が 少なくなっているということについてですが、先ほど6.9%とか30%というデータの説 明がありました。これは就職する場が少なくなっているというよりは、養成数の一学年 定員が増えてきているために、保健師の教育を受けて免許を取った人が、すべて保健師 としては就業していないという結果で、1万人以上養成されているけれども、実際に保 健師として就業したのは700何人だということのデータだったと思います。  もう1つ、この検討会は看護の教育を充実することを検討している検討会だと思いま すが、保健師について今日出された9頁のデータを見ると、卒業時に習得すべき実践能 力というのを、実践能力別に大学と地域でそれぞれ答えていただいています。これを見 ると、卒業時点で1人でできるところまで到達していると判断している割合が、どの項 目においてもそれほど高くない。高いのは個人の健康問題アセスメントと援助計画と、 次の家族の健康問題アセスメントと援助計画で、ここは65%と52%が1人でできると大 学の関係者は判断しています。それ以外のところは、1人でできるところまで到達して いないというデータになっていると思います。その意味で保健師の教育も本当はもっと 充実させる必要があるのではないかと、このデータから見たのです。 ○村嶋委員 保健師の職場は確かに拡大していますし、すごく能力として求められてい るのですが、大学で教育をしている人間の1人としては、なかなか思うように実習の時 間がとれないというのは先ほども申し上げたところです。そういうことで非常に悩んで いるというのが実情です。  特に、本当に充実したいのは家庭訪問です。複数回お家に行って、その方をアセスメ ントして一緒に問題を考えていくということです。坂本委員のようなパワーのある方だ ったら自分で自分の問題は悩みながらも解決していかれるのだと思いますが、世の中は 必ずしもそういうふうに自分で自分の問題を解決できる方ばかりではありませんので、 本当に脆弱な家族が増えています。そういうところをきちっと丹念に複数回訪問するこ とにより、その方たちの問題を一緒に解決し、その方たちが自立していけるようになる ことを、保健師の教員としては心から願っています。そのためには、1人で家庭訪問を 1回だけではいけなくて、何回かやることによってラポールが形成される。しっかり信 頼関係ができていくということを学生に体験させることを、こ付れからやっていかない といけないなと思います。  いま、半年の教育期間ということが課題に挙がっていますが、実際に半年の教育期間 という現行の指定規則の中でも、保健師に特化して教育する学校では、大部分半年では なく1年かけてやっています。しかも単位もたくさん課している。実習にも力を入れて いるというところを是非、お考えいただきたいと思います。 ○南委員 私は、保健師の役割というのは非常に重要だと思っています。いまの需要以 上に保健師が活用されることをすごく期待しています。行政保健師のデータが主として ここで出されたので、特に行政保健師としては、先ほど村嶋委員が言われた家庭訪問も そうですが、もっと重要なのが地区診断であり、地域住民全体でいま何が必要で、どう いうふうに動いていっているかを判断し、どういう手立てが、どこに必要か、いわゆる 行政企画ができるという、そういう能力が非常に重要だと思います。  保健師の能力も、基礎教育を終えたときの能力と、さらに卒業後の教育が済んででき る能力と、看護師と同じようにいろいろなレベルがあって、基礎教育卒業者に何の役割 を期待するかというのが、いま、少し変わってきつつあるのではないかと私は思ってい ます。もちろん行政保健師の役割もそうですが、実は看護カリキュラムの変化の中で、 ここで在宅看護の「卒業時習得すべき実践能力」と書いてあります。家庭訪問というの は実は新しく科目ができて、在宅看護学論というのが看護師の免許に必要な教科として 出てきていたりします。昔は保健師だけが在宅看護ができたのですが、いまは看護師も 在宅看護ができるようになってきて、かなり医療度の高い人々の健康ニーズに対応して いるというのが現実だと思います。  在宅看護は非常に重要だし、保健師の教育もすごく重要だと思うのですが、保健師が 今まで見えにくかった。先ほどご発言があったように消費者の立場から見ると、本当に 何をしているか見えなかったということもある。それはポジションがあまりにも少ない というからだと私ははっきり思うのです。市町村の保健師も保健所の保健師ももっと増 えてほしいし、それ以上に私が先ほど伺っていてすごくうれしかったのは、新卒保健師 が病院に勤めるようになった。これは何をやっているかというと、生活習慣病の健康相 談をやったり、またはメンタルヘルスのほうで働いていたり、いろいろな役割が拡大し て、保健師も、前のように行政だけではなくいろいろ働く場が広がってきているのです。 大学の教育は、ここでは実習は保健所と市町村の日数しか書いてないのですが、実際は 健康相談で、いわゆる保健師のために必要なのは保健指導ができる能力ですから、保健 指導ができる場はいろいろな場があり、その場を活用した教育を実際はやっている。そ れが統合カリキュラムなのですね。看護師も必要だし、保健師も必要な能力だと思いま す。  そういう意味で、基礎教育に、卒業直後にどんな役割を期待するかということを私た ちは整理しないといけない。非常に高い能力も必要だし、多様な場に働きに出ていて、 ある数を満たすことができる基礎教育というのは何なのかというのは、保健師教育のカ リキュラム自体で変えていく必要があるのではないか。いままでは、実習も保健所と市 町村の限られたところでやっていたのが、実際はもっとカウントしてもよい場所がある のではないかと思います。 ○村嶋委員 南委員のご発言で1つだけ指摘させていただきたいと思います。私どもは 家に訪問する場合に、訪問看護と家庭訪問を分けて使っております。訪問看護は、今は 訪問看護ステーションが全国津々浦々5,000カ所にできて10万人程度が働いております が、働いているのは看護師です。それは在宅に医療を提供する看護です。そういう意味 では、相手が医療を求めていらっしゃいます。向こうから看護を求めて、最初に契約を 取り交わして、そして訪問看護を行います。  それに対して、保健師が行うのは家庭訪問です。それは相手が求める場合もあるけれ ども、求めない場合にも法律に基づいて行く場合がございます。例えば、精神障害者の 方がやっとお家で何とか暮らしていくところに、その方が妊娠をして子育てをしなけれ ばいけないというとパニックになってしまうのです。でも、その人はSOSを発するこ とができません。そういう方の所にも保健師が行きまして、その方がそこで生活できる よう、地域で生活できるように一緒に考えてケアをしていく。そういうところでは求め られなくても行かなければいけませんので、大変自律性の高い、高い技術が必要です。 保健師学生にはそれを是非身につけてから社会に出したいと考えております。 ○浅田委員 先ほどの話なのですが、例えば1年制の教育機関で規定上は21単位です ね。実際にはそれ以上にたくさん保健師の養成の授業をやっている。一部学校は養護の 授業をやっている。その養成機関はそれだけのものが保健師にとって必要だと考えてや っているのですか。つまり、規則上は構わないのですが、実際に働いていこうとすれば それだけのものが必要だと考えているので、1年間の所は、この値でいくと最大は57 単位ですから、21単位プラス30何単位をやっているし、そのときに科目としてこうい うものが必要だというのが出ているのだと思うのです。ということは、現在の教育の中 ではそれはとても必要であるという認識を現場は持っていらっしゃるというように考え ればいいのか。  もう1点は、先ほど出た統合カリキュラムなのですが、それは大学で統合カリキュラ ムをやるということは従来の看護師の教育をし、プラス保健師の教育をするのではなく て、看護師と保健師を統合するようなカリキュラムのほうがより良い人材が育つという 考え方に立っているのですか。それとも、大学だから、4年間にしなければいけないの でという意味なのか。つまり、統合カリキュラムのほうがメリットがあるのだというの であれば、当然、そのカリキュラムの良さを養成上も活かさなければいけないわけで、 大学がなぜ統合カリキュラムでやろうとしたのか。そのときに、先ほどいくつかおっし ゃったようなメリットもあると思いますし、逆にデメリットがあるかもしれない。その 点についてはどのように考えておられるのか。  規則上、指定するかどうかではなくて、実質、教育をした結果の効果としてどうなの かということを知りたいので、効果があるほうにやればいいわけですから、そこの点は どうなのかという質問です。前者の問題は事務局に、後者の問題は大学の方にお聞きし たいと思います。 ○看護課長 最初のご質問ですが、各学校が21単位以上に行っている場合には、先ほ どの補佐の説明の中にもあったように、養護教諭としての免許を与えるということを学 校の設置目的にしているような保健師養成所がありまして、そういう場合には、教育学 原論や対象の理解にかかる学習がなされているということがあります。ですから、保健 師としてというところだけではなくて、さらに、設置者において、より付随するいくつ かの教育を追加しているということがあろうかと思っております。 ○浅田委員 それは具体的にどういう科目であって、つまりここに挙がっている以外の ものがあるのだとすれば、当然そういうものが必要だという認識が学校現場にもあるわ けでしょう。いまの指定規則ではそれは入れていないわけですから。 ○看護課長 それは養護教諭として求めるものではないので。 ○浅田委員 はい。そこで、エキストラに入れていらっしゃる、学校独自の判断で入れ ていらっしゃる科目の内容はどういうものなのかという質問です。つまり、それが必要 だということが議論の対象になるのだと思うのです。 ○看護課長 例えば、ある学校の報告に基づくと、一般教養的な内容としては哲学や社 会心理学、経済学、法学などもなさっていたり、養護教諭として必要な教育原理、教育 心理、社会教育、養護概説、学校保健といったようなものを追加したり、さらにはコミ ュニケーション能力を高めていくことでの外国語コミュニケーションやカウンセリング 等のものが入ったり、学校の科目としてはいろいろと設定されております。 ○草間委員 いまの点ですが、例えば1年で養護教諭もとらせようとしている学校のカ リキュラムを参考にするのは保健師教育を考えるときにはおかしいと思うのです。なぜ かというと、養護教諭をとらせようとすると教育原理も必要、教育心理も必要という形 で、それぞれ養護教諭に必須な科目があるわけです。だから、学校としてはそれを売り にしているとすれば、保健師もとらせますよ、指定規則上の単位だけを満たせますよ、 養護教諭も満たせますよということなので、保健師のカリキュラムを考えるとすると何 が必要で、社会のニーズに合ったどういう教育をすべきかということで考えるべきであ って、すでにやっているところの6カ月教育でできるものを1年に時間延長したときに 何を追加しているのでという形では参考にならないと思います。  そういう意味では、保健師の教育として何がミニマムで、どこを卒業までにやらなけ ればいけないか。今日、日本公衆衛生学会で出していただいたコアカリキュラムに近い ものが21単位でやろうとしているのか。あるいは、この21単位の上乗せを考えてやっ ているのか。要するに、私たちがいま議論しなければいけないのは社会のニーズにあっ た保健師教育をするにはどうかということであって、いまやっている教育を参考にとい うのはあまり好ましくない方法だろうと思います。 ○浅田委員 言っていることが違うと思うのです。私は養護学校の免許についての単位 を言っているのではなくて、先ほどの資料の説明で21単位しかやっていない学校はプラ スで養護学校のカリキュラムとして余分にやっている。でも、そうではない学校は実際 にはそれ以外でやっているわけですから、それをなぜやっているのかということを聞き たいと言ったわけです。それは明らかにニーズがあってそういうことをやっているはず なのだから、その科目は何なのかということを言っているわけです。つまり、実際に養 成して送り出している学校が送り出すにあたって必要だと思う科目があるわけでしょう。 それが何なのか挙げてくださいということを申し上げたので、養護学校のことを参考に しましょうと言っているわけではありません。 ○草間委員 でも、魅力があってやっているのではないのでしょう。6カ月でとらせら れるから、もう1つ養護教諭をとらせる。たぶんそうだと思うのです。 ○浅田委員 いや、私は養護学校のことを言っているのではありません。つまり、それ とは違う学校で、保健師だけを養成している学校という先ほどの説明だったので、それ はどういう科目なのかということをお聞きしたのです。養護学校は私は全然関係ないの で、要するに保健師として21単位というのが指定規則で決まっていて、当然それをとれ ばいいわけですが、プラスアルファをやっている学校があるわけですね。それは養護と いう目的とは別にして、保健師を養成するために必要だと考えた学校はやっているのだ ろう、その科目は何ですかという質問をしているだけです。  それは実際のニーズとしてあるのだろうと思うのです。つまり、そこがいちばん近い 現場なのでしょう。送り出して役に立たないのではそれを変えていくのは当たり前なの ですから、そこがニーズではないですかと私は聞いただけであって、一般的なニーズは 何かということではなくて実際にやっている所が抱えているニーズを知りたいからそれ をお聞きしただけです。 ○武委員 坂本(憲)委員はそういう教育の中身の云々というのを聞いたのではないの です。市民の代表である消費生活アドバイザーの非常にシンプルだけれども国民が皆思 っている質問は何かといったら、平成11年に1,713人就職できたのが平成17年にはそ の半分以下の794人しか就職しない。その減少は何かということを誰かが説明しなけれ ばいけないと思います。私の解釈は、地方財政が破綻しかかって、もう行政保健師を入 れていく余裕がなくなってきたということが1つあると思います。  もう1つは、昼間に働く仕事だから、夜起きなくて済むから、看護師より楽です。だ から、看護師と比べて辞めません。それは誰か統計を持っていると思いますが、保健師 は辞めないというところがあって、後から入ってくる人が入る隙間が少ないわけです。 結論は何かというと、今の看護大学が持っている保健師養成コースは今から減らしてい かないといけないのではないかということがお答えになると思います。 ○南委員 やはりイメージが保健所保健師なのだなと思うのですが、保健師は、例えば 訪問看護ステーションにも、センターにも、地域にも欲しいし、外来にも保健師がいる と医療機関に来て健康相談をすることができます。これからは健康増進が非常に重要で、 医療機関は治療をしていればいいというものではなくて、私たちが持っている生活習慣 病と付き合いながら、またはそれを改善していくための保健指導が非常に重要なので、 私は病院でももうすでに保健師をニーズとして雇ってきているので、今まで本当に少な かったのが拡大していくだろう、もっと拡大していくニーズがあるだろうと思います。 それをいまのこの数字だけで見ると行政に必要な人数しか見ていないので、臨床の現場 でどれだけ保健師を必要としているかとか、産業保健や学校保健だけではなくて社会一 般のいろいろな所で保健師をどれだけ必要としているかということを考えていく時期に 来ていると思います。だから、基礎教育も行政保健師の実習だけを期待するのではなく て、もう少し広い分野でやれるということが大事です。  浅田委員がおっしゃっていた、大学はなぜ保健師と看護師の統合教育をずっとやるの か、3プラス1で免許が取れるからやったほうが得ということでやっているのではない かと。そういう見方もあるかもしれませんが、私たちは初めから看護師になる者も保健 師の知識が必要だと考えていたのです。だから、病気になった人の病気を治療する、ま た、病気の看護をすることだけが看護職ではなくて、その人が家に帰り、または、その 人の背景にある社会的なものも理解できていることが看護師として重要なので、看護師 にとっても保健師の教育は非常に重要なので統合カリキュラムができ、そういうもので あれば統合して、看護師になる全員が保健師の力を持っていることを期待していた。教 育学部がある当時は保健師が必ずしも免許に義務化されているわけではなかった。今、 多くがそういうようにしているのはそういうところがあるのだと思います。それが役に 立っているかどうかということだと思うのです。ほかの3年課程で病院で働く治療に強 い治療系の看護師と違って、同じように病院で働いている大卒ナースがそういう教育を 受けてきたことでどのように社会にとってメリットがあるのか。私は教育関係の者なの で、自分の経験から見て非常にメリットがあると思います。ただ、それはここのデータ にはないし、病院の中でどんな役割を果たしているかということもないので数字的には 何とも申し上げられない。だけど、そこがあって、免許だけの問題ではなくて、教育と して統合したほうがいいのではないかということで今までやってきたのです。 ○遠藤座長 わかりました。おっしゃりたいことがまだあると思います。しかし、これ は大幅に時間をオーバーしておりますので、これで今日はお話を終わりにするつもりは ありません。保健師の問題はもう一度やります。おそらく、いまの議論をしていけばま たほかの方が手を挙げるという形でどんどん展開していきます。とりあえず、この保健 師の問題につきましては終わりにしまして、また、次回やるときに浅田委員からいまの 問題を提示していただければと思います。次に、「助産師教育について」議論を移した いと思います。最初に、事務局から資料説明をお願いします。また、本日は堀内委員か ら関連する資料が提出されておりますので、引き続き堀内委員に資料説明をお願いした いと思います。 ○岩澤補佐 資料2「助産師教育について」15頁の資料をお配りしておりますが、2つ 脱落しておりますのでいま配付しております。これにつきましては後で説明させていた だきます。それでは、表紙をめくってください。保健師の資料とほぼ同じ構成になって おります。1頁目、助産師学校養成所数の推移です。上が表、下がグラフですが、平成 10年に116校が平成17年には145校、平成17年は大学・大学専攻科、大学が全体の62% を占めております。  2頁ですが、これは新卒の国家試験の受験者数です。大学の場合は、助産師学校とし て指定された場合、学生すべてが助産師学校の定員数となるのですが、実際の助産師国 家試験に必要な科目を修める方は限られていて選択になっておりますので、受験者数で 表わしております。平成10年は1,618名で、ほぼ1,600名台で推移しておりまして、平 成17年が1,590名。大卒以上の新卒受験者数は35.2%です。  3頁ですが、3回にわたる助産師の教育内容の変遷です。平成元年は、同じくゆとり のカリキュラムということだったのですが、助産師教育につきましては6カ月以上、 705時間から720時間になっております。また、平成8年には、時間制から単位制が導入 されて、教育内容も科目から教育内容というように大綱化されてきております。実習の 中に書いてありますが、分娩の取扱いは、平成元年までは10回以上とされていたものが、 平成8年には10回程度と改められております。  4頁、実際の養成所における教育内容別単位数です。助産師養成を1年間で行ってい る31校の平均が32.8単位、1,022時間行われております。規則上は22単位、720時間 以上です。最大50単位 1,200時間、最小24単位 775時間で実施されています。 また、保健師と合わせて1年間で教育を行っている2校については合計720時間 725時 間で実施されています。  5頁ですが、平成13年に保健婦助産婦看護師法の一部を改正する法律案がありまして、 そのときに参議院、衆議院それぞれの厚生労働委員会で附帯決議が付けられました。そ の中に助産師教育について触れた所がありますので抜粋しております。いずれの委員会 の附帯決議も2番になるのですが、助産師教育については、指定規則に定める十分な出 産介助実習が経験できるようにするなど、その充実に努めることとされております。こ れは平成8年の改正で「10回以上」が「10回程度」と改められた中で、充実に努めるこ とという附帯決議が付けられたものです。  6頁です。10回程度とは何回を指すのかということが明確ではありませんでしたが、 昨年、それについて参議院の議員より助産師に関する質問主意書が出まして、この中で 政府として助産学実習における分娩介助の考え方を示しております。1番の終わりに、 9回を下回った場合は10回程度に満たない。つまり、10回程度とは9回以上を指すと いうことです。2つ目の所で、分娩取扱い件数の1件の定義は何かということですが、 学生1人につき正常産を10回程度直接取り扱うとされていますので、1件の分娩を2人 で介助した場合や胎盤娩出の介助のみ行った場合は数えないとしております。  7頁です。これは平成15年度の全国助産師教育協議会が行いました報告の中の抜粋で す。年次は違うのですが、助産師教育を行っている大学と専門学校・短期大学に調査を しております。それの結果が8頁以降になりますが、今回は学生の到達状況に着目して 抜粋しております。妊娠期で、妊娠の診断、妊娠時期および経過の診断、安定した妊娠 経過の維持に関する診断とケア、出産・親準備教育、これらの項目について、「1人で できる」「助けがあればできる」「できない」ということで養成所・短大専攻科と大学 で占める割合を色別に示しています。9頁が分娩期になります。分娩開始の診断、進行 状況の診断、産婦と胎児の健康状態の診断、進行に伴うケア、異常発生の予防と早期発 見、臨時応急の手当てについてはこのような結果でした。10頁が産褥期、分娩後なので すが、産褥経過の診断、褥婦のセルフケアの指導、育児技術の支援、正常逸脱の判断と ケア、母乳育児の支援についてです。11頁は、新生児期です。出生直後の観察とケア、 早期新生児期のケア、1カ月間についてこのような状況になっております。いずれも教 師から見た学生の状況です。  12頁は、同じく助産師教育協議会がまとめております「コア内容におけるminimum requiermemts」 の項目ということで、学生が卒業時に自立できる最低限の到達レベル の教育内容です。小項目101項目、3頁にわたる内容ですが、どの教育機関でも助産師 教育としては最低これだけの教育内容が必要であろうとまとめられたものです。  15頁は新人に聞いた調査結果です。平成17年度に卒業して17病院に就職した97名 に聞いて73名から回答を得ています。就職時にここに書いてある項目についてどのよう なレベルであったのか。「とても良くできる」「良くできる」「あまりできない」 「できない」という4つの評価でつけていただいた自己評価になります。「とても良く できる」「良くできる」が下の項目に行くほど右にずれていっているのがわかるかと思 うのですが、褥婦のケアになると「あまりできない」と答える人が妊産婦、新生児に比 べて多くなっていることがわかるかと思います。  次に、追加で配りました資料について説明いたします。平成10年からの新卒の助産師 国家試験の合格者数と合格率の推移です。いちばん下にありますが、89%から99%まで、 比較的高い合格率で推移しておりまして、課程別で見ると合格率の高いときは大きな差 はありません。また、今年初めて出た大学院、大学専攻科の卒業生は全員合格をしてい るという状況です。  次の頁ですが、助産師として就業した者が何名いるかをグラフに示したものです。平 成17年は1,561名が合格しまして、実際に助産師として就業した者は1,455名おりまし た。そのうち、大学は448名中429名が助産師として就職し、短大養成所も高い割合で 助産師として就職していることがわかるかと思います。以上です。 ○堀内委員 お手元の堀内よりの提出資料をご覧ください。4枚ありますので説明させ ていただきます。最初に、私の背景について少しお伝えしたいのですが、私は聖路加看 護大学で教職の仕事をしております。聖路加看護大学は大学での助産教育を始めて今年 で37年目を迎えております。そのうち、私は若いころから携わりましたので、23年間、 大学の学部での助産教育に携わってきました。この大学の学部教育については、学内で 長年検討した結果、昨年度よりは大学院の修士課程でも助産の教育を始めております。 したがって、現在は1つの大学ですが2つの助産師学校の指定を受けている形になって おります。学部のほうは来年をもって養成はやめて、将来的には大学院で教育をしてい こうという考えがあります。そういう背景を持っております。  お手元の資料の1枚目ですが、現在の助産教育に置かれております現状を説明いたし ます。助産教育は指定規則の上で看護の基礎教育の後に6カ月以上の教育が必要とされ ております。まず、正常産を担う助産師の活用が求められる背景といたしまして、皆さ んもご存じのように、全国的に現在の産科医の不足、それから少子化に伴い病院におい ては産科棟が閉鎖されるというような現象が起こっております。新聞等で発表されてい ますように、吉川等の全国周産期医療データベースに関する実態調査では、全国で出産 を扱う医療機関が5,000以上あるという推定だったものが実際には病院が1,280、入所 診療所が1,783施設の計3,063施設に止どまっているということがわかります。  また、2004年度の出生数の出産がどこで行われたかということをざっと見ると、約 52%が病院で出産になり、46%が診療所での出産となり、わずか1%が助産所となって おります。ところが、助産師の就労先を見ると、病院には約7割が就労し、診療所には わずか17%、助産所には6.5%という就労で偏りが生じております。つまり、診療所で は多くの出産があるわけですが、出産の数に比べて助産師が少ない現状にあります。例 えば、1,000人の赤ちゃんが生まれることに対して、病院では30人の助産師、診療所で は8人の助産師がかかわることになっております。これは職能の問題としてですが、い かに診療所に助産師が働くようにというような動きはあります。  2点目は、育児が困難だと考える現代の母親にとって、子育てのスタートである妊娠、 出産においてはきめ細やかな助産師のケアが求められております。セルフケアの能力を 向上させて自信を持って育児につながっていけるような継続した助産師と妊婦、産婦と の関係が出産の満足につながり、また産みたいと思えるような出産につながっていくと 考えております。したがって、いまこそ正常産を担う助産師の活用が求められる背景が ここにあります。  さて、卒業時に学生がどれだけのことができているかということを見ると、先ほどの 厚生労働省の説明にもありましたように、教員の評価では、「1人でできない」と判断 されたところは妊娠経過の部分、分娩では異常の発生予防と早期発見、産褥に関しては 母乳・育児支援等があります。また、新人助産師の自己評価では、先ほどもありました が、産褥期のケア、母乳・育児ケア等が「1人ではできない」という項目になっており ます。おそらく、助産師教育は、正常分娩に関連する診断とケアは自立してできるよう にとそこに集中して教育を行う結果、妊娠期からの継続したケアあるいは産褥期のケア が十分ではないことがうかがえます。開業権を有する免許ですので、いかに自立した仕 事ができるようにその基礎力を養うかということが重要かと思います。  また、現状の多くの助産師が働く病院では、混合病棟化が進んでおります。75%が産 科以外に婦人科、小児科、内科、整形等々の病棟と重なって運営されております。そう しますとどのようなことが起こるかというと、助産師は新人として配置されて自立する 時期が非常に早くなります。特に、夜勤は一人夜勤になる率が非常に早く、6月ごろに は1人で夜勤をしなければいけません。他科はナースがケアをしているとしても、お産 になったときは1人でそれをすべてやらなければならないということが求められてきま す。したがって、教育として送り出すときにどのような力をつけて送り出すかというこ とが問われるわけです。  厚生労働省の「すこやか親子21」の課題にもなっている安全で快適な出産を支援する ためには妊娠期からの継続した関わりが必要であり、妊娠期から育児期までのトータル ケアができる、そして、異常の早期発見、適切な対応ができる人材の育成が急務です。 先ほどの円議員の資料のいちばん下にありましたが、妊娠期からの継続ケアを強化する べきであるということが指摘されております。つまり、分娩が正常に経過するためには、 その前に先立つ10カ月の妊娠期間にいかに健康管理をし、分娩の準備をするかというこ とがかかってきております。妊娠期からの継続したケア、あるいは信頼できる関係での ケアが正常分娩に導き、異常の発生を少なくするかというエビデンスもあります。  資料の2頁目です。助産学科目の必修単位がどのように履修されているかということ の調査の結果です。指定規則がいちばん左のカラムです。次が4年制大学、短期大学専 攻科、専門学校です。4年制大学は4年制の統合カリキュラムの中ですが、ほとんどの 大学は選択科目として位置づけられています。短期大学専攻科、専門学校はトータルで 2校を除きほとんどが1年で教育を行っております。合計の欄ですが、指定規則の22 単位に対し、1年コースの短期大学専攻科は平均29.6単位、専門学校は34単位となっ ております。ここの1年コースの場合は、最小22単位から最大50単位までありました。 一方、4年制の大学では16単位が平均であり、最小8単位から最大24単位までありま した。さらに、助産学実習のところですが、これは指定規則では8単位必要ですが、内 容としては、当然、10例程度の正常分娩の介助が含まれます。これに要している時間を 見ると、短期大学が12.3週、専門学校は平均16.5週、4年制の大学が8.3週となって おり、4年制大学の実習にかかっている時間は専門学校の約半分となっております。大 学で教育をしている者たちは4年間の中で看護教育、保健師教育、助産師教育をどのよ うにしていくかということで大変工夫が必要であり、悩むところでございます。  3頁です。少子化に伴う助産学実習の課題ですが、1点は、看護の基礎教育で行われ ている母性看護学実習が非常に変わってきていることがわかります。最初に申し上げま したように、昨年度より大学院での教育を始めまして、全国の大学から受験生がいらっ しゃいます。その学生たちの話を聞いていると、基礎教育で行ってきた母性看護学実習 の経験があまりに乏しいので愕然とします。新生児のケアは1日か2日、産褥のケアは 1日というところで、ほかは見学あるいは学級活動に参加するという経験のみでした。 そのような学生が複数おります。  さまざまな理由があるかと思いますが、1つの実習病院で多くの学生を短期間で実習 させるためには1人の実習経験が不十分になっているように思います。助産教育といた しましては、産褥期や新生児のケアはすでに終わっているものとして、その上にさらに 分娩の実習、妊娠期の診断を重ねたいのですが、そこへ来る前のケア技術の復習や取り 込みをせざるを得ない。つまり、助産師学校に入学してくる看護基礎教育を終えた学生 の実践能力の低さがあると思っております。  実際に、助産学実習の特徴の正常分娩10例というのはどのようにして行っているかと いうことを少しご紹介したいと思います。いちばん最後の頁ですが、これは大学の4年 課程での選択科目の中で12週間をこの助産学実習にかけている場合の例です。左側に A・B・C・D・Eと5人の学生で1グループとして実習する場合です。最初の4週間 を病院で分娩期5例の分娩介助を行う。真ん中は4週間、分娩から産褥、新生児までの 継続したケアを3例。いちばん最終の総合的な実習で助産所に4週間、これは妊娠期か らずっと継続したケースを2例受け持つのが目標で行います。お産は正常分娩ですので、 昼夜を問わず発生いたしますので24時間のオンコール体制、つまりお産で入院されると いったときに学生は起きて出かけて行くという体制で臨みます。  また、真ん中の段にブルーの四角がありますが、たとえ入院から分娩1期ケアをして きておりましても、1日、2日経ち分娩が遷延してしまった結果、帝王切開になったよ うな場合は介助の例数に含まれませんので、この学生はこれをやったとしても次にまた 入院に待機しなければならないということがあります。このように、本学では今年は14 人の学生に対し病院4カ所、助産所5カ所で行っております。したがって、工夫をして 助産実習場を拡大したり、24時間体制がとれるように臨床の方と相談をしたり、あるい はパートタイムの実習指導の補助者を入れたりという予算拡大や人を集める工夫をしな い限り、なかなか難しい現実があります。  あと、右下に指導体制を書きましたが、複数の病院や診療所を実習施設として確保す る必要があるのですが、それに伴い実習指導の教員が必要です。特に、診療所では出産 数が多いので実習を行いたいのですが、指導できる助産師の確保が難しいことがありま す。また、現代では女性にとって人生に1度か2度しかない貴重な出産体験ですので、 それを豊かなものにしたいという家族の希望から学生実習を断わられるケースもありま すので、指導者の十分な力量がその説明の際に問われることになります。  以上のように、現状の助産教育は妊娠期から分娩・育児期までのトータルなケアを自 律して行う専門職として教育するには1年の養成期間をかけても十分とは言えず、特に 現状の基礎教育の母性看護学実習の不十分さは助産教育を難しくしている背景になって いると言わざるを得ないと思います。以上です。 ○遠藤座長 ありがとうございました。最初に事務局からの資料が出ました。その後、 堀内委員からは、資料をベースにしたご意見といったことも含まれていたかと思います。 すぐ議論に移りたいのですが、最初の資料あるいは堀内委員が出された資料に対する質 問だけをお受けしたいと思います。 ○西澤委員 私の頭の中を整理するつもりで質問をするのですが、大学は4年間で保健 師、助産師、看護師の国家資格の受験資格を取得するということですが、いまの話では 必修科目だけをしたときは看護師と保健師だけで、助産師の場合はそれ以外に選択を受 けなければいけないという解釈できると思うのです。そのときの選択をとるのは4年間 の中でほかの方よりも余計に時間をかけていると考えていいのか。その場合にはどの程 度の時間をどういう形でかけているのかということをお聞きしたい。 ○看護課長 細かいことは私もわかりませんが、基本的には選択をした助産師コースの 学生は夏休みなどを使って時間を長く学習していると聞いております。堀内委員からも う少し追加していただければと思います。 ○堀内委員 そのとおりです。大体、大学の場合、4名ぐらいから16〜17名ぐらいま での範囲がありますが、全国の平均は1校当たり8名ぐらいです。多くの大学は夏休み あるいは3年の春休みを使って昼夜という形で実習を付加しております。 ○太田委員 堀内委員にお聞きしますが、助産師教育の場合には看護師教育がベースに なって、看護師教育の母性看護学での実習等がベースになっていく。その部分が非常に 弱くなっているということを1つご指摘いただきました。それは、施設での実習の制約 とか分娩件数等で実際に看護学校での母性看護学実習の内容が乏しくなっているという 現実を踏まえて、さらに看護師教育のところでの母性看護学の実習等の充実が望ましい のか。それとも、その辺の限界性では助産のほうできちんと充実していくべきなのか。 それによって看護師教育の中身というのもまた動いてくるかと思うのですが、その辺は いかがなのでしょうか。 ○堀内委員 前者のほうで、看護基礎教育の中での母性看護学実習を充実させていただ きたいということがあります。特に、産褥期においては、もちろん助産師も褥棟で働き ますが、産科の場合は看護師も当然働きますので現在の実習では非常に不十分かと思っ ています。 ○村田委員 保健師も助産師も教育の受ける時間数がそれぞれ違うようなのですが、教 育の単位数というのですか、時間数が違うことによって卒業して実際の現場で働く上で 受けた時間によって質の確保という面で違いが出るものなのか、それとも、全部変わら ないものなのか、その辺をお教えいただけるとありがたいです。 ○堀内委員 厚生労働省が説明しました資料の真ん中ぐらいにありましたが、円より子 議員より出された10回程度に関しての答弁がなぜ起こってきたかといいますと、それ以 前の現状として、10回程度の解釈がさまざまであったために、大学や助産師学校におき ましては2例ぐらいで終了して国家試験を受けて、そのまま病院で就職したいというこ とが起こってまいりました。そこで、10例程度というのはどこをもってやるのかという 話になりました。したがって、時間をかけず、あるいは設定のゴールを低くすれば就職 したほうでは全く1人では何もできないわけですから、即いろいろなケアができなくて 困っているということですから、かけた時間数や工夫をしてゴールに達成するまで教育 して出すことが必要かと思っております。 ○坂本(す)委員 受けるほうといたしまして実践の場におりましたのでお話しますが、 採用されたときには若干の差があります。しかし、数カ月するうちにある程度同じよう な形になってくるという実感はしております。ただ、私、堀内委員のお話をずっと聞い ていると、到達させて卒業させるということに大変熱意を持っていらっしゃるのですが、 6カ月で夜勤に入るとおっしゃいますが、6カ月で本当にその助産師を1人で夜勤に入 れるということは、現場はできません。だから、技術を全部到達させて卒業させるのか どうかということは、前にも基礎教育の中で問題が出ていましたが、どういう形でする かということをこれから大変考えていかなければいけないと思います。  現場はとにかく早くということを求めますが、実際はそんなに頼りにしていないとい うのがあって、それはリスクを大変きちんと考えているのであって、そこはリスクを大 変重要視して見ているということはあります。だから、どこまで本当に一生懸命やらせ て卒業させて皆が良かったと言うのかというのは大変難しい問題だと思います。 ○遠藤座長 すでに議論に入っておりますので、これからは質問ということではなくて 議論に切り替えたいと思います。それで、大変申し訳ないのですが、本日の予定が17 時までとなっておりますので、この議論は17時05分ぐらいを目処に終息させていただ きたいと思います。また次回続きがあるとお考えいただければと思います。 ○武委員 助産師の教育について今年までの考え方をすっかり変えないといけない状 況になっているわけです。それは、ご存じのように、産婦人科の医者不足で、福島県な どの公立病院の産婦人科で1人の所は全部引き上げてなくなりました。そして、拠点化 すると言うけれども、その拠点病院までは何十キロメートルと走らなければいけないの です。医師が出産をしてきた国はアメリカと日本が最右翼なのです。アメリカと日本だ けが助産師出産が少なかった。しかし、これから15年、日本の産婦人科医不足は続きま す。これは、構造的に、昭和40年近くまで人工妊娠中絶がたくさんありまして、産婦人 科医の仕事はたくさんあったのですが、お産以外のことで産婦人科医になっていた層が 今は現場から引き上げて行っているから少なくなる。それと、非常に厳しい状況で産婦 人科医のなり手がない。隠岐島、北海道、鹿児島の島などは医者がお産をできない状況 がどんどん出てきています。医者がお産をできないならば助産師がせざるを得ないので す。  そうすると、助産師が正常産を扱えるような教育をして、出していかないと、これか ら15年は、今までみたいに病院に産婦人科医がいて、その手助けをするのが助産師とい う考えではなくて、例えば鹿児島の助産師会は自分たちで建物とベッドを持っていてお 産をやっていて、難しくなれば私の市立病院から医者が行って助けたりしていたのです。  とにかく、イギリスとか北欧ぐらいに助産師もお産をするようにしないといけない。 日本の産婦人科医欠乏の窮状、あるいは公立病院から1人産婦人科医がいなくなるのは この半年でものすごいスピードで動いています。これから10年の助産師教育を考えるな らば助産師が1人あるいはグループで正常出産を行うこともあるということを頭に入れ てカリキュラムをつくっていただきたいというのが現場からの声です。 ○坂本(す)委員 例えば、4年間で助産師を取って、その教育は今までの教育のまま でいいということではなくて、研修体制を含めて教育体制を変えなくてはいけないと思 います。4年間で助産師と看護師を一緒にということになってくると学生たちは大変忙 しい状況にあるので、保健師も同じですが、これから例えば地域完結型の医療体制をと っていくならば、それに合ったような教育体制をしていかないといけない。だから、武 委員と同じでございます。 ○浅田委員 先ほど、堀内委員は来年から大学院に助産師の養成を移されると言われた と思うのですが、学部教育ではなくて大学院教育へ助産師を移されるのは何か理由があ るのですか。つまり、今の4年間の中で保健師何とかというのはとても大変で、むしろ 助産師は大学院に出したほうがいいとか、何か理由があれば教えていただければと。た ぶん、そこのところの議論だと思うのです。 ○遠藤座長 かなりスペシフィックな質問になっているのですが、先ほどのお2人の意 見を踏まえた形で、教育をするというお立場からご意見あるいは質問に対する答えをい ただければと思います。 ○堀内委員 これまでは学部でやってきましたが、いろいろなことが運用上、問題とし て起こってきて検討をした結果、学部の中で選択コースとしてやるのは、選択してやる 学生にとっては並行してやる本来の看護師の教育も圧迫してしまうし、助産師の教育は 非常に過密なカリキュラムの中でやらなければいけないということがありました。あと、 希望者が多いのにもかかわらず、選択に人数に限りがあるために希望者を受け入れるこ とができないということがありました。それで、さらに考えたのは、大学専攻科という 案と大学院の修士課程で育てるという2つの案を検討して、大学院のほうでということ になったわけです。これまでやってきた中で、カリキュラムの過密さであるとか、実習 は10年前までの実習と全然違いますし、学生も変わってきております。3日3晩寝ない でどんどんやれという一昔前の学生とは全然違いますので、それなりに時間が必要なの です。そういうことを考えたときに、4年間の中で選択コースとしてやるのにはもう限 界だろうという考えがあったので本学の場合は別な道を考えたということです。 ○浅田委員 先ほどの南委員の保健師の統合カリキュラムと同じで、助産師の教育を受 けることも、例えば看護師の教育あるいは保健師の教育に対して非常にメリットがある のだとすれば統合カリキュラムという考え方だと思うのですが、助産師はそういう形で 持っていくと非常に苦しい、それはむしろ別枠で考えたほうがいいという意味なのでし ょうか。それとも、その中で統合的なものを何か考えておくというのはお互いに相乗的 にメリットがあると考えたほうがいいのでしょうか。  つまり、そこのところで、保健師は外には出さないけれども助産師は大学院に出すと いうことは、カリキュラムの構造の問題だと思うのです。相互にメリットがあるから、 単に上に足すのではなくて統合型を考えるわけですね。看護があって保健や助産がある ということではないわけですから。一緒に並んでいることが意味があるというのが先ほ どのご意見ですよね。そうすると、助産師の教育も看護教育と並行してやるようなカリ キュラムを考えたほうがメリットがあるのか。先ほどのお話のように、母性看護学があ って、その上にまた助産があるということは累積的なことを考えているわけですが、そ ういう位置づけで助産師は考えなければいけないのかというので教育のあり方が随分違 うと思うのです。大学院に出されたということは、4年間では無理で上に足すというも ので、保健師等の考え方とはどうも違うように思ったのですが、その辺りは実際はどの ようにお考えなのか。むしろ、そういうのも相乗的なメリットがかなりあるのかどうか ということでも随分違ってくると思いますので、その辺り、私は専門外ですから、ご意 見があれば伺いたいと思ったのです。 ○南委員 私は専門ではないので詳しいことは申し上げられないのですが、統合カリキ ュラムの発想は、助産師の統合カリキュラムを組んだときもプラスアルファという形で 別個にということではなくて、保健師と同じようにある一定の母性看護学の知識が必要 なのだという根底があって組まれているのです。ただ、助産師の場合の違いは、選択を していくプロセスなので、統合カリキュラムなので専門学校より単位が少なくなってい るのは当然なのですが、全員がということではなくて、100人いらっしゃる所で10人と っている所もあるし、私たちの所は20人で教員の数を増やしてやるのですが、そういう 形もあり得るので保健師とは様相が少し違ってくる面があるということだと思います。  ただ、私はこの委員会に1つ注文をつけたいのです。助産師教育を大学院でやるのは まだまだ少ないです。専攻科が1校、大学院が2校しかない。聖路加も非常に長い間、 大学の中で努力されて優秀な助産師が輩出されている。10年前から違ったという認識で 聖路加はそういう道を選ばれたのですが、大学の4年の統合カリキュラムの中で助産師 を輩出して、その大学によってももちろんいろいろ違うし、輩出した人たちの性質がど うかということは違うと思いますが、今後も統合カリキュラムでやっていけるというこ とを考えている専門家がいます。堀内委員の意見をあれだけきちんと聞くのであれば、 もう1つの意見もヒアリングをするべきではないかと思います。それだと看護教育界全 体の一方しか聞いていないことになるのではないかと思います。 ○遠藤座長 おっしゃるとおりだと思います。できるだけ幅広いご意見を承りたいと思 いますし、そういうためにこれだけの方々に委員になっていただいているということで す。いま南委員がおっしゃったこと、あるいは堀内委員の先ほどのご発言に関連して何 かございますか。 ○坂本(す)委員 今回は基礎教育についてということと助産師、保健師を話し合って いるのですが、私自身が感じるいちばんの問題点は、臨床を教育の中でどのようにする かということが大きいと思うのです。そのように考えていくと、堀内委員の分娩件数の とり方とか、そういうものは大変苦労しているということがあります。そういう意味で は、これから先に考えていかなければいけない研修制度をどのように入れていくかとい うことも大変大きな問題であって、4年でいいのか何年がいいのかということもそうな のですが、臨床をどの立場でさせていくか。学生のままで分娩をいろいろな所でとって 助産をさせていただくのか、別の違う方法があるのかどうかということも検討しないと いけない。臨床側でいま私たちがいちばん感じていることは、新人が抱えている不安と いうことです。怖がる、就職するまでの間にも、学生はすごく不安がっている。そうい うことを感じます。よって、不安を、異常に感じさせないようなことも含めた基礎教育 を考えていかなければいけないと思います。 ○太田委員 統合カリキュラムのお話が出たのですが、看護師の専門学校の多くは統合 カリキュラムは現在とっていない。統合カリキュラムで保健師と看護師教育を並行でや ることのメリットは十分わかります。オーバーラップされる部分や強化される部分があ ります。では、統合カリキュラムがよいとなってしまったときに、現実的に、単独の看 護師教育の多くのカリキュラムの部分がどうなっていくのか、それでは不足なのかどう か。その統合カリキュラムと単独の看護師のベースのカリキュラムとの区別というもの をある程度きちんとしていかないと現実的には混乱をするような気がいたします。 ○菊池委員 助産師のことに関しまして、先ほど武委員がおっしゃったように、産科医 不足の中で助産師が自律的に動く場面を増やしていく必要があると思っています。それ だけの能力を持った助産師をきちんと教育する必要があるということです。  先ほど厚生労働省が示された8頁からの資料を見ると、その教育をする機関によって 到達状況が違うというデータがあります。養成所・短大専攻科と大学を比較すると、養 成所・短大専攻科のほうが、「1人でできる」という所の到達度が高いという状況が出 ています。これは、おそらく、大学の場合には4年間の中で看護師と保健師と助産師を 一緒にやることで、かなり過密なカリキュラムの中で教育が行われている。ところが、 養成所や短大専攻科は教育期間を1年間とってみっちり教育している。そこの違いが出 てきたと思いますので、これから高い能力が求められる助産師を教育するという上では 大学の中で一緒にやるのはかなり困難なのではないか、そういう状況に変わってきてい ると思います。 ○南委員 先ほど坂本(す)委員がおっしゃっていた研修というのは卒後研修のことを 意味しているのでしょうか。私は、先ほど武委員がおっしゃったように、今後は助産師 の役割が非常に拡大するだろう、社会にとって非常に重要な役割をするだろうと。その 助産の部分、または非常に複雑な技術の部分、または大学でも専門学校でもできていな い部分、そういうものをもっと充実させていくために、卒後研修の必修は医師と同じぐ らいの能力が助産師には必要になってくるということを考えると、分娩に関しては卒後 研修の必修の必要性というのが重要ではないかと思うのです。 ○坂本(す)委員 同じです。私はレジデント制度のような形をイメージしております。 ただ、それを教育側が全部負担するのかどうかということにおいては大変難しく、今後 話し合っていかなければいけないと思います。要するに、学生の身分だけでは実習にも 限界があるのです。だから、そのことが大変中途半端な状況にあると思います。研修方 法を解決することを私自身は考えます。保健師と看護師においても同じというところが ある。この中では共通して、臨床におけるどのようなやり方をすればよいのかというこ とがあると思います。 ○村嶋委員 先ほど、統合カリキュラムについてのお問い合わせが浅田委員からありま した。保健師と看護師の統合カリキュラムですが、看護師の分野を幅広くすることはと てもよかったと思います。それで、先ほど、南委員が保健師の就職先として病院保健師 という手もあるのではないか、これからどんどん広がるのではないかとおっしゃいまし た。確かにそうでありまして、私が調べたときにも、病院保健師は来た方に対する健康 相談だけをやっているのではありません。先ほど、保健師の特徴は自分から出かけてい くことだと申し上げましたが、病院の患者さんの中で共通性のある患者さん、例えば口 蓋裂を持った患者さんたちを集めて支え合いの会をつくっていく。つまり、一人ひとり の問題を集めて共通性を出してその人たちのサポートグループをつくっていくような、 個を通して集団にしていくというところに保健師の働きかけの大きな特徴があります。  先ほど南委員が、地区診断、施策化がこれから保健師にとってとても重要だとおっし ゃいました。それに付随して、私は訪問看護と家庭訪問の違いというものを申し上げま した。訪問看護は看護師が行っておりまして、その方やその家族をケアいたします。一 方で、家庭訪問はその方たちの家に行くのですが、その方たちを通して地域の問題を見 ている。そういう違いがあります。これから生活習慣病に対する保健指導が随分重要に なってまいりますが、そのときに、その方たちに個別に対応しているだけで本当に済む だろうか。答えはノーでございます。生活習慣病は食生活がとてもかかわってまいりま すが、その食生活を支える地域の食物流通、レストランのあり方、地域の食文化、そう いうものを含めて働きかけなければいけませんので、そういう意味では住民の方と一緒 にやっていくということが大事でございます。 ○遠藤座長 保健師に関してはまた次回もありますので。 ○村嶋委員 大変失礼いたしました。先ほどの浅田委員の問題にお答えさせていただき ました。そういう意味では、免許に必要なそれなりの時間が必要だということを申し上 げたいと思います。 ○遠藤座長 おそらく、助産師についてもまだまだ議論があるかと思いますが、スケジ ュールを大変オーバーしておりますので、また次回に助産師も議論させていただきたい と思います。本日はこの辺で議論を収めさせていただきたいと思います。終了の時間を 過ぎたものですから、もし飛行機等々の予定で退席なさらなければならない方がいらっ しゃいましたら、どうぞご退席ください。早急に次のケースですが、最後は看護教育に ついてということで、これは小山委員から資料が提出されております。時間もありませ んので、今回はこの内容についてご説明いただいて、検討は次回行うことにさせていた だきます。それでは、資料の説明をお願いします。 ○小山委員 お手元の「現行の看護基礎教育カリキュラムの実態と課題」というパワー ポイントの資料をご覧ください。前回、ここでカリキュラムについてのいろいろな意見 交換がありましたが、実際に教育の現場では現行のカリキュラムをどのようにとらえて いるかについての実態調査をしましたので、現場の意見をここに反映させていただくと いうことでご報告させていただきます。去年の1月に、全国の看護基礎教育機関のうち、 すでに卒業生を出している3年課程及び大学計580校のカリキュラム責任者への全数調 査を質問調査で行いました。  卒業生を出した学校は580校でしたが、そのうちの298校が回答を寄せてくださいま して回収率51.4%です。卒業までに必要な単位数、あるいは時間数をそこに書いており ますが、一応、指定規則では93単位となっておりますが、それぞれの学校がそれ以上の 単位数や時間数を実施しております。  次の表では、「現行のカリキュラムの単位・時間数の認識」について、それぞれのカ リキュラムの分野ごとに聞いております。基礎科目については「ほぼ適切であると思う」 という回答が多いのですが、専門基礎、専門科目になると「時間数が足りない」という 回答が非常に多くなってまいります。特に専門科目では約40%が「時間数が足りない」 と回答していました。「教育内容」についてですが、基礎科目、専門基礎では65%以上 が「ほぼ適切」と回答していましたが、専門科目については「学習内容を追加/再検討 する必要がある」が半数以上になっております。  「基礎科目」は「科学的思考の基盤」や「人間と人間生活の理解」ということで、各 学校が自由裁量で科目を設定することができるようになっております。その位置づけに ついて、一般教養としての基礎科目なのか、専門科目の基礎なのか、つまり、看護をす る人向けの基礎科目として選んだほうがいいのかという迷いがあるようでした。そして、 基礎科目を追加する必要があると思われるものは、理解力や文章力など、今日の基礎学 力低下を補うための教育内容を基礎科目に取り入れる必要があるという回答が特に養成 所で多く見られておりました。そのほか、倫理、人間学、人間理解、コミュニケーショ ンスキル等をもっと充実させる必要があるという意見もありました。  「専門基礎科目」というのは、薬理、病態生理、病理学、解剖生理等、看護の専門科 目ではないけれども、看護を実践していく上で非常に重要な科目です。その内容は実際 には「看護に活かされにくい内容で教えられている」ということが訴えられておりまし た。また、看護と関連づけて学ぶための時間数や方法が不足しているということです。 例えば、薬理学が実践に活かせる内容であることを考えると、臨床薬理学のほうが重要 ではないか。しかし、臨床薬理学を学ぶには「薬理学」が必要なのか。そうすると、時 間数が多くなってしまうというジレンマ等も見られております。また、看護と関連づけ た教育にするには、ほとんどの学校・養成所では看護以外の人に非常勤等で依頼してお りますが、その講師への依頼のしかたの指針となるような内容の吟味が必要であるとい う課題が提示されております。  「専門科目」の教育内容での課題としましては、前回のカリキュラム改正以後、医療 現場が変化してきておりますが、それに伴って医療安全、安全管理、看護倫理、災害看 護、フィジカルアセスメント等、そこに書いているような内容をもっと強化する必要が あるということが言われております。「追加・強化する必要がある内容」は、実際には すでに教育の場で実施しておりますが、どの科目で入れるかという合意がないために、 いろいろいな科目で入れているために、結果としてカリキュラムが過密になり、重複し ていたり大事な科目の内容が抜けていたりするということでした。  そのために、「基礎看護学の内容として何を含めるのか」「時間数が足りない」等の 意見が多く見られておりました。また、技術教育では不足ということがこちらのほうで も十分に認識されておりまして、不足しているけれども効果的に教育する方法や時間数 がもう少し必要であるということが言われております。  また、少子化に伴いまして、小児看護学や母性看護学の実習場の確保が非常に難しい ことから、その内容や時間数の検討が必要であるという意見が見られております。   臨地実習における指導体制としましては、大学や短期大学では教員や臨床指導者が常 在している所が比較的多いのですが、養成所に関しましては臨床指導者が主として行う という所も多く見られております。  実習は看護教育で重要でありますが、実習の受入れ側についての問題が多く挙げられ ておりました。例えば、「入院期間が短縮化され、継続して患者を受け持つことが困難 である」「担当する患者が高齢者に偏っていて成人看護学の実習が難しい」「臨床の指 導体制が十分でないために目が行き届かなくなる」等の意見が出ております。臨地実習 で困っていることは大きく3つ挙げられております。指導体制として、「専任の指導者 が不在のために指導が不十分である」「教員が講義と実習指導が重なり負担が大きい」 等の意見がありました。  実習場の確保として、小児、母性看護学等は少子化に伴いまして実習場の確保が大変 難しいということがたくさん書かれておりました。それと、在宅看護実習等では、複数 校が実習先を争うようになっていることも課題であるということが出ております。   実習時間数につきましては、「実践力を養う時間数が少ない」「単位数になったこと によって養成所では実習時間の換算で過密になる」という意見等が出ております。  臨地実習の課題としましては、「実習指導体制で教員や実習指導者が常在できない」 「人員不足のために臨床指導者が業務と兼任せざるを得ない」という現状があります。 このことは、実習で患者への安全面の配慮、学生の実践能力が問われておりますが、そ の習得のためには教育と臨床の両側面からヒューマンリソースを充実させることが非常 に重要であると思います。小児、母性、在宅、成人、急性期、老年看護学等は実習場の 確保が困難な状況があります。社会の変化に対応した実習のあり方について、枠組み、 内容、実習時間数の再吟味が必要です。実践能力育成のために、複数患者の受け持ちや 実践での技術教育のあり方など、教育方法の検討も必要であるということも言われてお ります。  まとめに書かれているのは今まで述べたことです。述べていないことは6番です。臨 床の場で求められる能力と基礎教育内容のギャップについてはこの報告でも出ておりま して、「基礎教育卒業時の到達基準を明確にする必要がある」ということが訴えられて おります。具体的には、お手元に報告書を入れておりますので読んでいただければと思 います。以上です。 ○遠藤座長 ありがとうございました。本検討会の検討課題そのものと直結するような ことのアンケート結果であったと思います。ただいまの調査結果につきましてご質問及 びご意見もありましたら承りたいと思います。 ○武委員 またこの次にしてください。 ○遠藤座長 そういうご意見も出ましたが、よろしいですか。特にないということであ れば、このような資料も含めて次回にまた看護師も検討させていただく形にしたいと思 います。本日は私の司会のミスでだいぶ時間をオーバーしまして申し訳ございませんで した。次回は基本的には看護教育について追加の議論と、保健師、助産師の教育全体に ついて、もう少し議論をすることにさせていただきたいと思います。それでは、次回以 降の日程につきまして事務局から説明をお願いいたします。 ○事務局 次回第4回検討会は7月21日金曜日14時から開催する予定でございます。 また、第5回は8月4日金曜日15時から、第6回は9月4日月曜日14時からを予定し ております。場所等については決まり次第別途ご案内をお送りいたします。本日はお忙 しいところをご出席いただきましてありがとうございました。 ○遠藤座長 ありがとうございました。 1