06/06/27 労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会第21回議事録 第21回労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会 1 日時 平成18年6月27日(火) 10:00〜 2 厚生労働省専用第17会議室(16階) 3 出席者  〔委員〕   公益代表  西村委員(部会長)、石岡委員、那須委員   労働者代表 佐藤委員、中桐氏(須賀委員代理)、高松委員、吉田氏(寺田委員代理)、真島委員   使用者代表 紀陸委員、杏委員、下永吉委員、横山委員、 4 議題 (1)「労働者災害補償保険法施行規則の一部を改正する省令案要綱」について(諮問) (2)振動障害の検査指針検討会報告書について (3)脳・心臓疾患及び精神障害に係る労災補償状況について (4)労働福祉事業に係る平成17年度の実績評価及び平成18年度の成果目標について 5 議事 ○部会長  ただいまから第21回労災保険部会を開催いたします。初めに、委員の変更がありまし たのでご紹介いたします。使用者側委員として、泉川正毅委員に代わりまして横山敬 一郎、日本通運株式会社執行役員兼総務労働部長です。本日は稲葉委員、岩村委員、金 城委員、内藤委員、早川委員、平山委員が欠席されております。紀陸委員は少し遅れて いらっしゃいます。また、須賀委員及び寺田委員より代理者の出席の申出がありました。 須賀委員の代理として中桐孝郎日本労働組合総連合会雇用法制対策局次長、また、寺田 委員の代理として吉田和道、JEC総研労働政策局長がそれぞれご出席です。  それでは、議事に入ります。本日の議題は「労働者災害補償保険法施行規則の一部を 改正する省令案要綱について」「振動障害の検査指針検討会報告書について」「脳・心臓 疾患及び精神障害等に係る労災補償状況について」「労働福祉事業に係る平成17年度の 実績評価及び平成18年度の成果目標の設定について」の4つであります。1つ目の議 題の労働者災害補償保険法施行規則の一部を改正する省令案要綱について、事務局から 説明をお願いいたします。 ○石原労災保険財政数理室長  最初に、室長補佐から本日諮問させていただく省令案要綱を読み上げます。 ○細越労災保険財政数理室長補佐  それでは、読み上げます。労働政策審議会会長菅野和夫殿。別紙「労働者災害補償保 険法施行規則の一部を改正する省令案要綱」について、貴会の意見を求める。平成18 年6月27日。厚生労働大臣川崎二郎。別紙です。「労働者災害補償保険法施行規則の一 部を改正する省令案要綱。第1.労働福祉事業等に要する費用に充てるべき額の限度の 改正。労働福祉事業(特別支給金の支給に関する事業を除く。)に要する費用及び労働者 災害補償保険事業の事務費に充てるべき額について、その限度として定められている労 働者災害補償保険に係る労働保険料の額及び労働保険特別会計の労災勘定の積立金から 生ずる収入の額並びに労働保険特別会計の労災勘定の附属雑収入の額及び同会計の徴収 勘定からの繰入附属雑収入(厚生労働大臣が定める基準により算定した額に限る。)の合 計額に対する割合を、120分の20(現行122分の22)とするものとすること。第2. 施行期日。この省令は、公布の日から施行するものとすること。」以上です。 ○労災保険財政数理室長  それでは、法令案要綱の内容につきましてご説明申し上げます。お手元の資料1の3 枚目ですが、参考1をご覧ください。この改正は労働者福祉事業等に要する費用に充て るべき額の限度について規定している労災保険法施行規則第43条の改正案です。この 第43条におきましては、限度額について規定がなされております。先般、労災保険率 の改定におきまして労働福祉事業等分の料率を従来の1,000分の1.5から1,000分の1.4 に引き下げたところです。これを踏まえまして、この限度額を計算するのに用いる122 分の22という割合が参考1の中ほどにありますが、この122分の22という割合につき まして、今回、120分の20に改正するというものです。私からの説明は以上でござい ます。 ○部会長  ただいまの事務局からの説明につきましてご意見ご質問等があれば承りたいと思いま す。特にご意見がないようですので、諮問のあった件につきまして当部会では妥当であ る旨労働条件分科会に報告したいと考えますが、いかがでしょうか。  (了承) ○部会長  それでは、そのようにさせていただきます。報告文につきましては私に一任というこ とでよろしいでしょうか。  (了承) ○部会長  それでは、そのようにさせていただきます。第2の議題は「振動障害の検査指針検討 会報告書について」であります。事務局から説明をお願いいたします。 ○只野職業病認定対策室長  職業病認定対策室から報告させていただきます。資料は資料2−1と資料2−2です。 資料2−2の報告書がまとまりました。随分厚いものですから資料2−1にその概要を まとめておりますので、資料2−1で説明させていただきます。振動障害は振動工具、 例えば林業でチェーンソーを使用する、あるいは建設業でさく岩機を使用すると手腕部 に振動が加えられ、さまざまな障害が出て、その労災認定もしているわけですが、検査 方法について見直したほうがよろしいという報告の内容です。  初めに、現行検査手技の問題点ということです。現行検査手技は昭和53年に策定さ れたものですが、そこで示された冷水浸漬皮膚温検査(5℃10分法)です。5℃の水に 10分間手を漬け、それから引き上げて血のめぐりの状況等を見るのですが、この検査で は強い疼痛を伴う、高齢になると高血圧の方もいらっしゃるものですから、手指を強烈 に冷やすということは血圧上昇につながりますので、心血管系に悪影響を及ぼす等の問 題がある。また、痛覚検査、振動覚検査、握力検査等では、主観性を排除できない等の 問題があるということが指摘されました。  このような検査手技の問題点、あるいはISOによる国際標準化作業の動向を踏まえ て、次の検査手技について振動障害群、対照群に対し実証検査を実施した。つまり、振 動障害の患者さんと振動障害ではない健常者の人たち両方に以下の7つの方法によって テストを行って、検査結果についてどういう違いが出てくるのかということを検討いた しました。その結果、3の評価基準の策定ということで、実証検査結果の解析から各検 査ごとに評価基準を作成しました。ただし、(1)の最初のポツですが、冷水浸漬皮膚温 検査(12℃5分法)については統計的に有意であるという数値を示すことができません でしたので参考値にいたしました。4番の新たな検査体系の提案ですが、振動障害の診 断に当たっては、まず基本検査を実施し、一定の場合には精密検査も行い、確定診断と するのが適切である。次の頁に(1)末梢循環機能検査、(2)末梢神経機能検査、(3) 運動機能検査についてありますが、各々の検査方法について基本検査と精密検査に分け て提案がありました。どのような場合に基本検査だけで終わるのか、あるいは精密検査 もすべきなのかというその判断の基準は、1頁のいちばん下の行ですが、精密検査を行 うのは、検査法の持つ特異度と敏感度、特異度というのは正常な人を正常と判断する割 合、敏感度というのは異常者を異常と判断する割合ですが、これは、医学的な検査にお きましては100%完璧ということはあり得ませんので、正常者を異常者と判断してしま う、あるいは異常者を正常者と判断してしまうことはありがちなことですが、そういっ た特異度、敏感度を考慮して、(1)末梢循環基本検査において「軽度の所見」と判断され た場合に精密検査を実施したほうがよろしい。(2)として、末梢神経基本検査において振 動感覚閾値検査と神経伝導検査の2つを基本検査としてやっていただくことになります が、いずれか一方のみに「所見あり」と判定された場合に精密検査をやったほうがよろ しい。(3)として、運動機能検査において臨床所見と検査所見との関係が合理的に説明で きない場合等所見が確定されない場合とするのが妥当であるということで報告がありま した。この報告を受けまして、検査方法の見直しについて、いま検討中ということでご ざいます。以上です。 ○部会長  ただいまの事務局からの説明につきましてご意見ご質問等があれば承りたいと思いま す。 ○中桐氏(須賀委員代理)  質問と意見を申し上げますが、今後の作業予定はどのようになっているのでしょうか。 ○職業病認定対策室長  この問題に対しまして関係する団体等々もありますので、それらの方に対する説明と か、あるいは私ども事務局的にはこの報告を受けて具体的にどういう検査体制が可能な のかということも含めまして検討し、なるべく早い時期に方向性をまとめていきたいと 考えております。 ○中桐氏  次に意見でございますが、先ほどの報告書の内容についてです。概要でお示しいただ いていますが、少し問題を感じております。大変分厚いものなのでなかなか読み切れま せんが、この報告書の全体のまとめが111頁にあります。そちらでは「検討会の出した 結論は、多彩で複雑にな症状を呈する振動障害を的確に診断できるかというと必ずしも そうではない」と。少し飛ばしますが、「今回の結果では必ずしも十分な客観性を示さな かった検査項目についても、今後、さらに症例数を増やし、データを蓄積し明確にする 必要がある」。さらに、「言うまでもないが、検討会において、基本検査、精密・鑑別診 断のための検査として提案した各検査については、各々その長所、短所、限界等があり」 と指摘しております。さらに、15頁ですが、新たな検査手段にかかわる評価基準の設定 では、「被検者の健康状態や検査機器の不具合により実施できないものがあった」と続き まして25頁ですが、「今後、さらに多数例での検討を行う必要がある」と。さらに、「I SOで標準化された方法に準じて行った検査結果では」ということで「国内外の関連報 告と矛盾するものであり、さらに検討が必要と考えられた」と指摘されている。さらに 55頁ですが、「今回の検討は、50歳から69歳の比較的高齢な健常者の検討によるもの であることから、今後、さらに多数例での検討を行う必要がある」と。まとめの所で「I SOで標準化された方法に準じて行った局所冷却による指動脈血圧検査結果を、今後、 さらに多数例での検討が必要と考えられた」。さらに70頁ですが、「ISOで標準化さ れた方法に準じて行った振動感覚閾値検査結果を、今後、今回の調査における問題点を 改善し、さらに広い年齢層での検討が必要と考えられた」と。さらに80頁ですが、「今 後の課題として、この神経伝導検査におけるクラス分類と他の検査とを組み合わせて総 合的な振動障害の評価基準の作成が必要である」と指摘しています。大変正直な起こし だと思いますが、こういったことを指摘されている中で、これを新たな認定基準にする にはデータの蓄積が必要ですし、もっと多数の例での検査が必要だということを指摘さ れているわけです。  そして、調査の問題点を改善して広い年齢層での検査も必要だと。そういうことを考 えると、追加的な実証検査が必要だということを参加した委員の方々のまとめで指摘を されているわけです。もう1点で言うと、他の検査と組み合わせて総合的な評価基準を つくることが必要だということです。これで新たな基準として確定できないということ は明らかだと思います。その不十分性が指摘されているということをこの概要ではなか なか読み取れなかったのですが、報告書を見ていくとそういうことがありました。  そのことに関しまして、報告書で指摘されたその事項につきまして追加の実証検査を する必要があるのではないかと考えます。これまで大変時間をかけてやってきておりま すが、報告書がそういうことを指摘しているわけですから、それをそのまま放置してま とめに入るということでは少し問題があろうかと思います。  それから、その後新たな検査基準案を作成する際には、先ほどもありましたが、その 追加検査の後ですが、関係する労使の代表を加えて基準の内容とか検査の手順、運用に ついても意見を聞くということを是非行うべきだと思いますので、先ほどの今後の作業 については賛成をいたします。  それから、今後検討された新たな検査基準で、また、その労使の意見も聞いたような 形での認定基準ができた場合は、その新たな検査基準で認定する場合またはこれを非認 定する場合、その労働者が十分納得ができることが重要だと思います。特に、現行の制 度で認定された方と新しい認定基準で認定される方との間に不平等とか不利益というこ とが生じないようなことも重要なことだと思いますので、労災保険制度の民主的で信頼 性の支持を得られるような制度にしていくために、是非そういうことをすることがいま 重要だと思いますのでお願いしたいと思います。 ○職業病認定対策室長  大変たくさんのことをご指摘されましたが、大きく分けて3つぐらいのことではない かと承りました。最初に、報告書の中で、いまの111頁ですが、まとめとして「検討会 の出した結論は、多彩で複雑な症状を呈する振動障害を的確に診断できるかというと必 ずしもそうではない」という部分で、まだ不十分さがあるのではないかと。これがその ことを代表していることだと思います。その次の所に「しかしながら」ということで、 「昭和53年当時の医学的知見に基づいた検査手技と比較して遥かに精度の高い、客観 的な検査手技を提示できたと考えている」と。今回のこれは、先ほどの説明の中で申し 上げましたが、特異度、敏感度という問題等から言えば、100%確実というものが示せ ればそれに越したことはないわけですが、この病気はそれが多彩で複雑なものですから ピタリと当てることができない。そういったことで、いろいろな検査を組み合わせてや られたらどうですかという提案になっているわけです。  ですから、これは、完璧を期せないうちは実施すべきではないということにはならな いのではないかということで、今後の検討も必要だということを報告書にいろいろ書い てあります。私どもとしましては、今回の評価基準をベースにしますが、今後新たな知 見が出てくれば、その時はその時で修正を加えていけばいいと考えているわけです。そ ういったことで、日本産業衛生学会の振動病研究会というものもありますので、そうい った所に研究を続けていただくようお願いしております。また、その応援もしていきた いと考えております。  それから、患者さんに対して新たな検査方法で認定された人が不平等、不利益になる ことがないようにというご指摘ですが、これは認定基準そのものを変えるということで はございません。検査方法を変えるだけでありまして、得られたデータからこれを障害 と判断するかどうかということは純粋に医学的な部分ですので、患者さんの不利益ある いは不平等ということにはならないのではないかと思われます。最初のところで、繰り 返しますが、この検査方法につきましては、この報告書では今回の実証検査のことにつ いても大変素直な反省点等も述べておりますが、この報告書で取り上げた検査方法、特 にISO基準でやっているものは、今回のこの検討会でやった実証検査以外にも国際的 にさまざまな所で検討が行われておりまして、その結果、ISOとしてこれでいこうと いうことで示したものですので、そういった流れに沿ったものだと思っておりますので、 その辺のところはご理解していただきたい。なお、最後におっしゃいました、患者さん 方に誤解などがないように十分に説明を尽くしていきたいと考えております。よろしく お願いいたします。 ○中桐氏  ISOは経産省の所管ですので厚労省さんはあまり好きではないのかと思っておりま したが、検査をきちっとやっていくという意味で私もそれに反対いたしませんが、先ほ どご指摘された全体をまとめた所の話ですが、私が指摘したように各項目で出ておりま す。その中身は、サンプル数が足りなかったとか機械の調子が悪かったとか、いろいろ なことがあります。それは、この参加した方々の良心としてそういうことをきちっと指 摘していくわけですから、その不備でもって何か新しいことをやろうというのは少し問 題がある、もっとやってほしいと私どもはとります。また、それを基にして何か進める ということならば、こういう問題点があるのでしたらそれを1つずつ潰すべきだと思い ます。産業衛生学会にお任せすることは結構ですが、できれば、その指摘事項をもう一 度調査し直すこと、そういう慎重さは必要だと思います。  それから、検査方法の件ですが、検査方法だから認定基準ではないとおっしゃいます けれども、その精密検査で引っかかってしまうとその方はたぶん認定されないでしょう。 今回はそれよりも少しハードルが高い、ある意味では精緻に検査をするということです から、そういうことを考えると、それは関係ないということではございません。この検 査のやり方によって認定されるかされないか大きく左右されると思いますので、そうい う判断は少し間違っているのではないかと、私どもとしては納得できる内容ではござい ません。 ○佐藤委員  中桐さんからほとんど言われたのですが、この検討会の中ではその検査方法を変える という内容で議論されたのですか。 ○職業病認定対策室長  報告書1頁の2の検討会の主な検討事項ですが、(1)現行の検査手技の医学的妥当性及 び有効性の限界について、(2)新たな検査手技に係る評価基準の策定について、(3)新たな 検査体系のあり方についてあります。こういった検査体系をつくるということを目的に なされた検討会でございます。 ○佐藤委員  いま中桐さんもおっしゃいましたが、111頁だったと思いますが、かなり自己批判的 に物事を書いていただいているので、以降、十分なこれのための検討は引き続き必要だ という趣旨ですよね。それで、この分厚いほうの3頁を見ていただくと、15回まで検討 会をやった。なお、第10回検討会では近藤真一先生、那須吉郎氏からヒアリングを行 ったと書いてあります。このヒアリング結果はこの報告書に出ているのですか。 ○職業病認定対策室長  近藤先生の分については、検討会としてはコメントしようがないということで取り上 げられませんでした。那須先生の分については、報告書の6頁から7頁にかけて研究成 果について報告されております。 ○佐藤委員  その難しい話はよくわかりませんが、近藤先生のヒアリングは検討の価値もない。 ○職業病認定対策室長  いや、そうは申し上げておりません。 ○佐藤委員  私が聞くとそう聞こえるので、取り上げることはなかったと。 ○職業病認定対策室長  細かいことになりますが、近藤先生が独自にやっている方法についての説明、報告が ありました。それは、5℃の部屋に下着1枚の格好で全身を冷やしてやる方法をやって いる。その結果について報告がありましたが、今回の検討会の方向性とは少し違うとい うことで報告書に具体的に取り上げることはいたしませんでした。 ○佐藤委員  あまりよくわかりませんが、この検査の中で対照となった人たちが徳島と北海道の病 院を対照にされています。それはなぜですか。 ○職業病認定対策室長  北海道という地域、これは患者数も多いです。それから、四国にも患者さんが多いと いうことで、当初の計画として、たくさんやれればそれに越したことはないのですが、 北海道と四国でやってみようということが研究計画として立てられました。 ○佐藤委員  わかりやすく聞きますが、徳島から何名、北海道から何名がこの検査客体になったの ですか。 ○職業病認定対策室長  それは15頁でございます。(6)ですが、徳島では振動障害群30名、対照群10名で す。北海道では2つの病院に参加していただきましたが、振動障害群は合わせて29名、 対照群は35名です。合計で、振動障害者群59名、対照群32名で91名となっておりま す。 ○佐藤委員  一般的に、こういう職業病と言われる認定基準なり検査方法を確定していく段階でこ れぐらいの検査数というのは妥当なものなのですか。 ○職業病認定対策室長  検討会でこの実証検査計画も立てましたが、14頁の(4)にありますように、総数で 80名から100名ぐらいということで研究計画を立てました。統計的な解析を加えてこ れぐらいあれば大丈夫という判断だったと思います。 ○佐藤委員  今後もまだいろいろと検討しなければならないという中身を具体的におっしゃってい ただけますか。 ○職業病認定対策室長  これは、各委員からいろいろと意見が出されましたが、先ほど中桐さんが読み上げた 場所で、例えば比較的高齢者の方ばかりだったのでもっと若い人にも広げてやったほう がいいのではないか。あるいは、12℃5分法はISOで提案されたものですが、ISO で検討された内容と少し矛盾する結果が出てきましたので、そういうことは引き続き検 討する必要がある、等々のことが言われております。 ○佐藤委員  ということは、認定基準は変えないけれども検査方法は変えることが前提になってい る。だけど、まだ慎重な検討が必要だと。今日の段階ではそういう受けとめでいいので すか。 ○職業病認定対策室長  いや、検討会の結論としましては、昭和53年当時の検査手技と比べてはるかに精度 の高い検査手技を提案することができたと言っているわけです。ですから、今の方法よ りは、はるかにいいですよということをおっしゃっているわけですから、そういう一定 の方向性が出たときに、より良い方法にスイッチしていくということはいいのではない かと考えております。 ○佐藤委員  部会長にお聞きしますが、そこが少しわかりにくいのです。 ○部会長  こういう医学的な問題をどのように判断するかというのはなかなか難しいと思うので すが、中桐さん、佐藤委員がおっしゃったことはよく理解できるのです。ただ、他方で、 ここに示されているように、現在の検査手技、検査方法が非常に強い疼痛を伴うとか心 血管系に悪影響を及ぼすという、いわば問題点が随分指摘されている。これをとらない ということであれば、今までのやり方をそのまま踏襲してやっていいのか、このままで いいのですか、という話ですから、この報告書に示された、まだまだ問題はあるけれど も、これより改善された方法のほうがいいのではないかと言われたらそちらをとって、 これで完璧だというパーフェクトではないけれども今までよりもはるかに良いというの であれば、そちらをとって別に問題はないという感じはする。問題はないと言っても、 問題はあるのでしょうけれども、現在よりもはるかに良いということは言えるのではな いでしょうか。 ○中桐氏  私、約10年近くになりますが、中央の労災審査の参与をしております。振動病の方々 もたくさん上がってきます。ある時期に固まっているケースが多いのですが、それは監 督署長に認定されなくて、三審制ですから、都道府県の審査を終えて中央の最後の審査 に上がってくるのです。大体、高齢者が多いのですが、彼らにとっては体はあまり動か ないし、認定を受ける受けないというのは自分が生活をしていく糧であるのです。それ を、監督署長なりの処分という言い方で言いますと、私は処分という言い方は大嫌いで すが、それは加齢なのだということです。しかし、本人は全然納得していない。主治医 のほうは、どうしても患者の心が移るのでしょうか、患者寄りの意見が多いのは確かな のですが、監督署長が任命した局医の方々は書類を見るだけで、もちろん検査をする方 もいますが、それだけで全く違う見解を出してくる。それで監督署、都道府県の審査会、 中央の審査会で結局認められなくて帰っていってしまう。この繰り返しが続いているわ けです。こういうのは改善していかなければいけないということはよくわかります。は っきり言えば100かゼロなのです。認定されるかされないかということですから、それ でその後の生活がガラッと変わりますので、これは慎重にしないと、間違って加齢の方 を認定してしまったという問題と、本当に職業病なのに認定されなかった方と、どっち がどれぐらい不幸かということは考えればすぐわかると思うのです。その精度を期すた めにはこういう進歩も大事だと思うのですが、実際にこれを検査した方々が問題がまだ 残っていると言っているのに突っ走っていくことがよくわからないですね。そのために 起こるいろいろな問題、先ほど最後に説明しましたが、不平等感などを含めて、それは 無視してはいけないことだと思います。そういうことを是非考えていただきたい。  それから、もう1点、これは余計な冗談ぼかして申し上げますが、この検査をするた めに多額な、高額な機材が必要だと聞いております。日本にもまだいくつもないという ことです。では、これを始めようということになれば、そういうものを整備しなければ いけない。例えば労災病院に全部設置していくとか、今はそういう財政状況でしょうか。 この後の議案に出てまいりますが、厳しく政府のほうからたたかれていますが、雇用保 険にしろ労災保険にしろ、今は削られるほうばかりに圧力がかかっております。新たに そういう貴重な財源を、はっきりしないような段階で検査を決めて各都道府県に配置し ていくことになれば、かなりな額がかかると思うのですが、こういう曖昧な、まだ問題 が残っているということがありながら決定してやっていくのは、保険料を納めている使 用者側の方を含めて、そんなことでいいのかということを労働側としても思いますので、 なぜもう少し慎重にできないのかなということが理解できないですね。もう少し時間を かければ、もう1回その言われたところを調査し直せば、2年かかるかわかりませんが、 そういう無駄はなくなると思うのです。それは、是非、手続としてやっていただかない と、そういうことをやっていると、また国のほうから何をやっているのというように言 われるのではないでしょうか。それを大変危惧いたします。 ○職業病認定対策室長  一言だけ。今の精密検査の機器が高額ではないかということでございますが、確かに 今の基本検査に使う機器と比べては相当高額なものになります。500〜600万するよう な機器になります。これは、いま現在、労災病院に6つの振動病センターというものが ございまして、こういう所で精密検査を実施していただこうかと考えております。もち ろん、振動病センターではなくて、自分の所でもそういう機器があるからという所はそ こで精密検査を実施していただければと思います。検査の方法を変えると言えば、そう いう患者を多く診ている医療機関も、少し値の張る機械ですが、更新するときに新しい 機械に変えていこうとするのではないかと思っております。 ○中桐氏  それは少しいかがなものでしょうか。今、診療報酬も下がって医者の方も困っている ときに、さらに高額な機械を買えなどということとつながるようなことはあまり言って いただくと。 ○職業病認定対策室長  買えと言っているわけではございませんが。 ○中桐氏  そのように聞こえますけど。 ○職業病認定対策室長  全国に配置するということではなくて、6つのブロック単位ぐらいにあれば、患者さ んも何千という患者さん方でもないので、47に全部そろえるほうが不経済でございます ので、いまの体制で十分ではないかと思っております。 ○中桐氏  それでは、高齢の方が多いのは私も存じておるのですが、いま置いていらっしゃるの は労災病院も6つですか、そこに行くということについてやはり大変なのです。そうい う移動をしていく、汽車に乗ったり飛行機に乗ったりして行くのかもわかりません。そ して、検査を受けるときにそういう環境が変わるとまた少し変わってくるわけです。そ うすると、精度をせっかく良くしたものでも、そういう長旅をしてきた方が、しばらく 休みをもらえばいいのでしょうが、そういう環境で受ければまた違った結果が出ること も可能性としてはあり得るわけですよね。ですから、あまり遠くに行って検査を受ける ことはいいことではないと思うのです。それも前提に予件として問題がないのだと言う のは少し乱暴ではありませんか。 ○那須委員  話が少し前に戻るのですが、先ほど、この調査が妥当なものだというお話がありまし たが、私は必ずしもそうは思えないのです。というのは、これは振動障害群が59名、 対照者が32名ということで、対照者が少ないです。対照者というのは非常に大事で、 対照者の選び方でプラスにもマイナスにもなりますので、せめて同数ないとなかなか難 しい。それから、対照者をどのように選ぶかということも非常に大切だと思います。疼 痛を伴うような検査は倫理的に許されませんし、それを変えていこうという姿勢は私は 大変結構だと思うのですが、検査方法が変われば診断基準も当然変わってくると思うの です。先ほど、私が間違って理解したのかもしれませんが、診断基準は変えないという ことをおっしゃったような気がしましたけれども、当然、検査方法が変われば診断基準 は変わってくるのではないかと思うのです。 ○職業病認定対策室長  私が申し上げたのは認定基準を変えないということでありまして、今回、検査方法が 変われば、いま先生がおっしゃるようなことは事実です。そのために実証検査をやりま して、例えば旧検査方法で認定された患者さん方が新しい検査方法でも患者さんとして 認定されるかどうか。そういうことをいろいろと検証していったわけです。そういう意 味では変わらないと申し上げたわけです。 ○那須委員  それから、特異度と感度のことがありましたが、特異度は90%で感度が30%という ところがあります。その感度30%というのは受け入れられないのではないかと思うので す。 ○職業病認定対策室長  循環検査のほうは敏感度が低く出ていまして、神経障害の検査のほうは敏感度、特異 度とも例えばISO基準ものでは90%以上になっていますので、かなり良い見分け方を しているなと思っています。先生のご専門のところでございますが、循環検査のほうは レイノー症状を有する人に限って見れば70%以上の特異度、敏感度を持っているのです が、レイノー症状のない方で、例えば少し手が冷えるだとか、そういう自覚症状をお持 ちの方をきちんと見分けることが現実的には難しい。 ○那須委員  ですから、私も今までの意見と同様で、もう少し慎重にされたほうがいいのではない かという意見です。 ○佐藤委員  501通達から309に変わったわけですよね。それで、私はずっと三重県の現場におり ましたからそういう経験をしたのですが、振動障害の認定で一定の給付を受けている人 たちが急激にこの縛りがかかって、はっきり言えば、もう振動障害ではないのだという 決定がなされていく過程があるのです。それは一定に政策的なものもあっただろうし、 はっきり言えば、認定基準は改正されたのだ、検査方法が改正されたのだということだ ったのだろうと思う。それで、そのころのことを説明してくれという意味ではなくて、 今回こういうものが出てくると再びそういうふうにして、その認定されている人たちま でも、あるいはそれに近い人たちも、非常に厳しい門をくぐっていかなければいけない。 中桐さんがおっしゃったように、審査会もなかなか通りにくいというような、労働者に とってはあまりプラスにならない。楽をして職業病で労災の給付日額で食っている、と いうことについてかなり批判があった時期もあったのを私は知っていますが、何も、そ ういう問題ではなくて、根底を変えていこうというところに多少矛盾があるのなら、今 日の意見としてはより慎重にやってもらいたい。部会長のおっしゃられることも、これ は医学界ではある意味では常識というようにおっしゃられましたが、地域は限定されて いるし客体は非常に少ないし、いま先生がおっしゃられたように問題点もあるというこ とから言えば、再度とは言いませんが、今日指摘されたことについて、追加して検討会 の皆さんに集まってもらってお伝えされる機会を持っていただけないでしょうか。 ○職業病認定対策室長  検討会はいま言ったような限界があるということをきちんとこの報告書に書いている わけです。それを踏まえた上で、なお変えるべきだという判断をしていただいたわけで す。 ○佐藤委員  それを言われてしまったら、問題点はありますよ、だけどもこれはこれでいいですと いう理屈で。 ○職業病認定対策室長  つまり、現行の検査方法の問題点のほうが大きすぎるということです。 ○佐藤委員  現行のものはね。だけども、今回も問題点は残っていると。 ○職業病認定対策室長  それは残っているということです。ただし、先ほども説明しましたが、これはISO で採用した検査法については各国の研究者がやられており、私どもの今回報告していた だいた実証検査と同じような傾向の数字が出ています。したがって、先ほどこの人数だ けでどうなのかというご批判もありましたが、いま国際的なレポートなどを見ても同じ 傾向が出ているので、そういう中で判断していくということはあっていいのではないか と思っております。 ○中桐氏  報告書はISOの結果と合っていないと指摘しているのではないですか。ISOで標 準化された方法でやったけれども検査結果はその国内外の関連報告と矛盾するものがあ ると書いてあるのではないですか。 ○職業病認定対策室長  それは12℃5分法が、ISOで提示された方法で今回やってみたけれども、今回のデ ータがきれいに取れなかったので引き続きやるということを言っているだけです。 ○中桐氏  ISOが何でもいいのだというような言い方ですが、いまおっしゃった見解はどこか ら出てきているのですか。今回の調査結果はISOをやっても問題がありますよという 指摘があるのに、なおかつ「ISOで、ISOで」と言うのはよくわからない。 ○職業病認定対策室長  今回やった検査はISO基準に基づくものは循環検査で12℃5分法とFSBP%と いうものをやりました。12℃5分法を、ISOでは提案しているのですが、今回の実証 検査ではデータがきちんと取れなかった。だから引き続きやる必要があると。FSBP についてはそういう指摘はありません。それは、各国の研究者も随分広くやっておりま して、いろいろなデータが報告されております。それから、この報告書にも載せていま すように、国内においては労災病院の那須先生を中心としたグループの報告でも、200 名以上の患者に対してやって1つの成果を出しています。この研究会報告と同じような ものになっています。 ○中桐氏  何か、良いとこ取りをしていませんか。都合のいいところだけ取ってきて、ここが問 題がありますというところは無視している。それは恣意的にある方向に持っていこうと しているとしか思えないのですが、新しい検査方法としてそれで労災患者の方々を納得 させられますか。そういう指摘もあるのですから、そこはきちんと答えてからというの が普通のやり方ではないですか。そういうものは無視して、都合のいいところだけある のでこれでいきましょうという、それでは納得できないのではないでしょうか。 ○部会長  いかがいたしましょうか。 ○森山労災補償部長  いろいろご議論いただきました。これは佐藤委員も中桐委員もご存じのように、昭和 53年の通達以来30年ぐらい掛かっていまして、その間の医学的進歩等もあるわけでご ざいます。また、実際の問題として私どもも、出先のほうでもう少し客観的なものでな いとなかなか判断に困るということも結構ある、ということがずっとあったわけです。 そこで、先生方に集まっていただいて検討いただいたわけでございまして、今おっしゃ ったような問題点もございます。率直にこの報告書の中でも書いてありますし、今のご 意見もありましたので、これから関係団体等のご意見をお伺いしたいと思っております し、また、衛生学会等についてもさらに検討をお願いすることも予定しているわけです ので、それを踏まえて、少しお時間をいただいて、内容について内部で検討させていた だきたいと思っています。またこの場でご報告なりをさせていただきたいと思っていま す。とりあえず、今の段階ではこういうご意見が出たということだけを私どものほうで 引き取らせていただいてやっていきたいと思っております。 ○佐藤委員  部会長に確認しますが、直ちに検査手法を変えるということではないという理解でよ ろしいですね。 ○労災補償部長  そこはこういう報告が出たということでございまして、この通達、以前が昭和53年 ですので、それからほぼ30年経っているということで、その間の医学的知識あるいは いろいろな検査技法の進歩、そういうものをどう踏まえていくのかという問題はあるわ けでございます。それを踏まえた上での検討でこの報告書が出たということですので、 とりあえず今日は報告書をご説明させていただいたということで、それに対してさまざ まな観点からご意見が出たということを事務局として引き取らせていただいて、また内 部で検討をするということにさせていただきたいと思います。 ○部会長  ほかの委員の方、何かございませんか。それでは、次の議題に移りたいと思います。 議題は「脳・心臓疾患及び精神障害等に係る労災補償状況について」であります。事務 局から説明をお願いいたします。 ○職業病認定対策室長  引き続き私のほうからご説明いたします。資料3でございます。脳・心臓疾患と精神 障害等に係る労災補償状況について、平成17年度分を取りまとめましたのでご報告い たします。2頁ですが、最初に、脳・心臓疾患の平成17年度の請求件数が869件、前 年度に比べて6.5%増加いたしました。業務上として認定されたのは330件、これは前 年に比べて12.2%増加しました。3頁ですが、業種別で見ると、運輸業が請求件数、認 定件数とも多い。続いて卸売・小売業、製造業とほぼ同じぐらいの水準です。4頁です が、職種別に見たものです。運輸業務に従事している方が82件で認定がいちばん多い。 その次は管理職の62件ということになっております。5頁ですが、年齢別に見ており ます。50歳から59歳代が143件、40歳から49歳が95件、この2つの年齢層で7割 を超えるわけですが、脳・心臓疾患の好発年齢という世代が多く認定されております。 6頁ですが、精神障害の補償状況についてまとめております。平成17年度の請求件数 は656件、対前年比25%ほど増加しています。それに対しまして、認定は127件△2.3% となりました。7頁ですが、業種別に見ると製造業が26件で全体の2割です。運輸業、 卸売・小売業がそれぞれ続いております。8頁ですが、職種別では専門技術職が40件、 技能職が20件です。年齢階層別では30歳から39歳が39件、29歳以下が37件、この 2つを合わせると6割ということで、先ほどの脳・心臓疾患と比較してこちらのほうは 若い方が認定されているということでございます。以上です。 ○部会長  いまの内容についてご意見、ご質問はいかがでしょうか。 ○吉田氏(寺田委員代理)  この前のご説明のときにも少しお話したのですが、労災統計全般もそうなのですが、 これもそうなのです。この前は統計上3つぐらいその他から外しましたよね。それを除 いても上記以外の事業というのが非常に多い。要するに、その他ですよね。その他をど うするかというのは私はずっと労組時代から言っているのですが、いつも冊子になるだ けであってそこの分析は全くないわけです。だから、その辺がどういう状況なのかをわ かる範囲で、ご説明をお願いいたします。 ○職業病認定対策室長  大分類ではひとまとめになっておりますが、その他をさらに中分類的に見ますと、不 動産業が3、娯楽業が3、それ以外は、その他のその他みたいに雑多なものになってお り、それらの積み上げが40件になっています。業種としてのまとまりがなかなかない。 ○吉田氏  だからそういうものの方向性というか、その辺まで踏み込まないと、毎年毎年こうい うのを出して、認定基準が変わったから増えていますよね、いろいろな意味でね。増加 していますよね、それぞれ。精神疾患も過労死も増えているのですが、その他が何で増 えているのかをきちんと分析したものを出さないと、やはり意味がないのではないかと 私は思っているわけです。ただ毎年こういうことが増えている、減っているという、そ れだけの話では、何やっているのかなということです。だから、その他が非常に業種的 にも拡大していて、職種もそうでしょうし、そういうものをどう見るかという問題がね。 昔の製造業中心とは違うわけだから、そういうことも含めて分析をしてほしいし、中災 防から出している安全の仕様とか、あるいは労働衛生のしおりなども含めて、そういう 分析の仕方を新たに考える時代に入ったのではないかということだけ申し上げたいと思 います。 ○佐藤委員  今日は労災保険部会ですが、労働者という立場からいうと、前にお見えになる皆さん は労働者でいらっしゃるわけで、こういう問題を社会的問題意識として捉えるのなら、 公務災害として扱われるものも資料としてお出しになったほうがいいのではないですか。 これはこれで資料としての価値はあるでしょうけれども。そのように思いますね。社会 状況なり、いまの職場の実態なり、そういったことを我々が問題にして、論議をするに ついては、それなりに私は必要だと思うので、できれば出してもらいたい。 ○職業病認定対策室長  資料としてはしていませんが、調べているものもありますのでご説明させていただき ます。人事院が公表しております16年度の公務災害で脳・心臓疾患で認定された方が 8人、精神障害の関係では10人おられます。地方公務員、地方災の発表では16年度、 脳・心臓疾患4人、精神障害11人の方が公務災害として認定されているようです。 ○部会長  それは平成16年度ですか。 ○職業病認定対策室長  16年度です。 ○部会長  17年度ではないのですね。 ○職業病認定対策室長  はい。 ○部会長  先ほど吉田さんがおっしゃった、この中身の分析というのは、どこかでやられている のでしょうか。事務局でも脳・心臓疾患については年齢が40〜59歳までが非常に多く、 精神障害は、むしろ若い人が非常に多いと分析的なことをおっしゃったのですが、そう いったことがなぜそうなっているのかというようなことは、どこかで何か分析的な検討 というか、そういうことは行われているのでしょうか。 ○職業病認定対策室長  脳・心臓疾患ですと何時間ぐらい働いている方が認定されているかといった分析など もしております。その前に、やはり業種については私ども日本標準産業分類を1つの指 標として、確かに14年から15年に切り替わっておりますけれども。また、当部会でも 料率に関して変えたりしておりますが、日本標準産業分類を手掛かりに振り分けている ものですから、なかなか独自のものとして出すことが、後は個々の事例を全部把握する ことになりますので統計的には難しいということがあります。  それでは、労働時間の関係で申し上げます。認定件数は330件ありますが、そのうち 長時間労働を理由として認定したものは311件あります。その311件の中で、80〜100 時間の間で認定された方が119件。100〜120時間の間で認定された方が74件。120〜 140時間が37件。140〜160時間が30件。160時間以上が29件。60〜80時間で認定 された方が22件。60時間未満の認定はありませんでした。 ○部会長  それはどこかで公開されているのでしょうか。 ○職業病認定対策室長  これは記者発表のとき説明を求められましたので、そのときに発表しました。もし必 要でしたらお配りしたいと思いますが。 ○部会長  お願いします。 ○吉田氏  精神障害等の関係は、おそらく労働条件分科会とも絡むと思うのですが、管理職間近 というか、そういう人が非常に多いのだろうと私は思っているのですが、その辺で労働 時間との関連とか、そんなことを調べられたことはありますか。 ○職業病認定対策室長  精神障害の認定は、例えば、ある何か大きな出来事に遭遇して、それが大きな精神的 なダメージになってというような構図を描いておりますので、労働時間が長ければとい うようなことで短絡的にはなりませんので、そういった分析はなかなか難しい。確かに、 ある出来事が起きて、それを解決するために長時間労働に追い込まれた、そのストレス も溜まってというようなことで認定されるケースもあります。さまざまですので、労働 時間だけに着目して分析することが果たして適切なのかということもあります。 ○吉田氏  そういうことも調べてはいるのですか。統計で出るか出ないかは別として。 ○職業病認定対策室長  もちろん見ております。 ○佐藤委員  精神障害といっても範囲が広いと思うのです。確定診断名では、どこかに資料は出て いるのですか。 ○職業病認定対策室長  127件認定しておりますが、ICD分類のF3、気分感情障害、すなわちうつ病等が69 件。ICD分類のF4、神経症性障害、ストレス関連障害が57件。残り1件がF0で 気質性の精神障害が認定されております。神経症性障害というのは、例えば神経症、急 性ストレス障害、PTSDといったものがF4の神経症性障害に入ります。 ○佐藤委員  請求件数と認定の間にものすごく乖離があるのですが、現われてくる症状はあまり変 わらないように思うのです。その決定的な差違はどこで、簡単に言葉では言えないかも わかりませんが、説明できますか。 ○職業病認定対策室長  私どもで精神障害を業務上と判断する基準を持っており公表しております。精神障害 は仕事上のストレスと、仕事以外の、例えば家庭といった別の所で起きるストレスは当 然あるわけです。それから個人的な、個体側要因と言っておりますが、資質的なものが あります。大きく言えばこの3つの要素の中で発症するものだというように考えており ます。私ども職場以外のことはなかなか、例えば家族関係はどうであったのかといった ことを調査する手立てがありません。全くないわけではないのですが、そこまで立入っ てということがありますので。  そこで職場で何があったのかを中心に調査し、職場であった事柄が、確かにこれは精 神障害を発病するほど重いものだと、精神医学的に認められるようなものについて補償 していくこととしています。そのための目安として、どういう出来事に遭遇したのか。 その出来事は、ストレス強度を1と見るか、2と見るか、3と見るかと。大中小でもい いのですが、そういう1つの指標を示しております。そしてその結果どのような変化が 起きたのですかということで、例えば労働時間が長くなった、責任がすごく重くなった といったことを私どもは調査します。それを労働局ごとに3人の精神科医を検討委員と してお願いしておりますが、その方々が3人で合議をされ、これはこういうことで精神 障害が発症したのであろう、というような見解を立てていただきまして、よって業務上 だ、よって業務外だという判断をしていただいております。 ○佐藤委員  人間が社会生活を営んでいく上においては、職場、家庭、地域、その他、もうごっち ゃですよね。そんなに単純に割り切れるものではなくて、お互い相互に関連し合ってい るように思うのです。だから非常に難しいだろうなと思います。職場が原因となって家 庭不和の問題もあるだろうし、救っていただけるような方向でやってあげたほうがいい のではないか。  いま分類の聴取りのことをおっしゃったのですが、実際に罹患している人から聴き取 るのは非常に難しいですよね。その場合はどうされているのですか。 ○職業病認定対策室長  それは主治医の方から、主治医がカウンセリングをして診察しているわけですから、 主治医の方から意見を求めております。ご本人からは直接そういうことはなかなか。私 どものほうで直接調査することが、そういう人の現在の症状との関係もありますので、 主治医を通じて聞いております。あるいは、主治医の許可があれば、直接お話を聞いて みてということがあれば、そういったこともやります。  問題は自殺された方です。この方はある日突然ということで治療歴がほとんどない方 です。その場合には、先ほどのさまざまな調査をして、3人の精神科医が総合的に見て、 これはこういうことだったんだろうねというか、こういうふうに精神医学的には理解で きますというような見解を立ててもらうことになっております。 ○那須委員  これはお願いです。いま例えば脳・心臓疾患などは、労働時間と関係があるというよ うなことをおっしゃったと思いますが、そういう資料を作って、是非ホームページに掲 載してほしいと思います。私たちは労働災害を予防していかなければいけないので、デ ータは可能な限り利用できる形にしていただきたいと思います。 ○中沖労災管理課長  いまの点ですが、昨年、安全衛生法が改正され、一定の長時間労働をした方について は医師の面接指導の義務が4月から施行されております。そういう点は当然ホームペー ジでも公告しておりますし、また私ども監督署などを通じて企業にも指導を行っている ところです。これは義務あるいは努力義務と両方あるわけですが、一定の残業がある場 合には、面接指導をお願いするということでやっております。その際にはメンタルヘル ス面のチェックもお願いすると。当然医師の面接指導ですから、そういった改正ですの で、こういった中で予防もきちんとしていくと。その上で、できるだけこういった認定 に至らないように、予防が大事だということでやらしていただいているところです。 ○那須委員  具体的に数値を見せると説得力があると思うのです。ですから利用できる形に是非し ていただきたいと思います。 ○部会長  では、その点よろしくお願いいたします。ほかにご意見ありませんでしたら、最後の 議題に移りたいと思います。本日最後の議題は「労働福祉事業に係る平成17年度の実 績評価及び平成18年度の成果目標の設定について」です。これを事務局から説明をお 願いいたします。 ○労災管理課長  資料4に基づき説明いたします。平成17年度成果目標の実績評価及び18年度成果目 標についてというものです。労働福祉事業については平成17年度より成果目標を設定 し目標管理を行っております。具体的には、保険類似の事業、あるいは調査研究の事業 など目標設定が困難と考えられる事業を除き基本的に目標設定の対象として、社会復帰 率を何パーセント以上とするなど、その事業がどれだけ役に立っているかという視点に 立った具体的、定量的なアウトカム目標とするよう努めております。これらについて実 績を踏まえ評価を行ったものです。  裏面に「評価概要」が出ております。評価対象事業、すなわち17年度に目標を設定 した事業です。ここに書いてありますとおり77事業あります。そのうち事業の廃止、 改善、合理化等、見直す必要があることが判明した事業は、これはすでに措置を講じた 事業を含めて合計で32事業、全体の40%強です。  評価類型のほうですが、目標を達成した事業は59事業で全体の約4分の3です。内 訳は、引き続き目標を適切に実施すべきものが25、施策の見直しを検討する必要がある ものが24、すでに事業を廃止したもの6、すでに事業の見直し、効率化等を行ったもの 8です。例えば、すでに事業の見直しを行っていて、かつ、今後さらに施策の見直しを 検討する必要があるという形で、2つの項目にダブッて出ているものもありますので、 合計数は一致しておりません。  目標未達成の事業は2事業があり、これらについては昨年度限りで事業を終了してお ります。実績の集計中、あるいは、独立行政法人評価委員会において評価を行うため、 今後、評価を行う事業は16事業です。なお目標に対する実績は、この中でも書いてあ りますので、こうした事業についても、ご意見等がありましたら承りたいと思っており ます。  こうした実績を踏まえながら、今般、平成18年度の成果目標を新たに設定しており ます。可能な限り多くの事業を目標設定の対象とすること。次に、有用であった旨の評 価を何パーセント以上得る、あるいは、利用者の満足度を何パーセント以上確保すると いった満足度の指標による、それだけの評価はやらないことにしております。設定目標 のさらなるアウトカム指標化に努めるなどの改善を行っております。その結果、評価概 要の3ですが、新たに目標設定した事業が11。そのうち17年度では目標設定をしなか ったものの、今回新たに目標設定をした事業が5。18年度新規事業で目標を設定した事 業は6。また、17年度目標を改善し、新しい目標を18年度目標として定めたものは23 で、かなり目標内容についても改めております。以上が概要です。  続いて個別事業について、主なものを私どもの補佐から説明をいたします。 ○永野労災管理課長補佐  個別事業についていくつかご紹介いたします。同じ資料の2頁目以降が個別事業の概 要になっております。資料4の2頁、被災労働者の社会復帰の促進事業です。こちらは 被災労働者のリハビリテーションに関する施設の運営等を行う事業です。ただし昨年度 もこの場でご報告いたしましたが、義肢や車椅子やアフターケアの事業などについては、 保険給付と一体的であり目標設定が困難であるということから、目標設定、評価の対象 から外しております。  1番目の医療リハビリテーションセンターの運営、これは独立行政法人の労働者健康 福祉機構の事業です。この事業は被災労働者の職業・社会復帰を支援するために、重度 の被災労働者に対して高度・専門的な医療を提供しているものです。平成17年度の目 標を見ていただきますと、そこは独立行政法人の中期目標と同じとなっておりますが、 被災されて、この医療を受けられて、それで退院された患者のうち自宅復帰、あるいは 職場復帰される方の割合を80%以上とするという目標にしております。こちらは独立行 政法人の事業ですので、外部有識者の方による独立行政法人の評価委員会において評価 をしていただく事業となっております。ただし実績は出ておりますので見てみますと、 医学的に職場・自宅復帰可能となった方は80.5%となっており、80%以上の目標は達成 しております。平成18年度も、同じ中期目標の期間ですので引き続き同じ目標に基づ きやっていきたいと考えています。  続いて1号の事業でもう1つご紹介します。5番目で5〜6頁に休養施設及び労災保 険会館の運営事業があります。こちらも先ほどと同じように独立行政法人の労働者健康 福祉機構の事業です。こちらの施策の概要については、特殊法人の整理合理化計画、こ れは平成13年12月に閣議決定されたもので、平成17年度末までにすべてを廃止する ことになっています。平成17年度においては、円滑な廃止に向けて施策を進めてきた ところで、平成17年度末ですべて廃止されたという結果となっております。  続いて2号の事業です。これは7頁以降となっております。2号事業は被災労働者と 援護事業で、被災労働者あるいはその遺族の方に対する援護の事業、あるいは保険給付 と一体的なレセプトのチェックなどの事業についてやっているもので、出来る限り目標 設定、評価をしているということです。いくつかご紹介しますが、まず8頁、事業番号 は9番の高齢被災労働者対策事業です。こちらは全国に8カ所ほど労災ケアセンターが あり、そこで高齢で非常に重度な被災労働者の方の障害の特性に応じた介護を提供する ための施設運営の事業です。こちらにいついての17年度目標として、入居率、あるい は入居者による評価を目標設定しており、入居率は90%以上、入居者による有用であっ たという評価が80%以上を目標としております。それでその目標は達成されています。 平成18年度においても同じ目標に基づき行いたいと考えております。  続いて、9頁11番は労災診療費審査対策事業で、レセプトの点検を行っている事業 です。これは円滑な保険制度を実施するためになくてはならない事業と考えております。 こちらの事業については、労災診療費の審査体制の強化を図ることにより、誤請求を行 ってしまう率を下げることを目標としております。平成17年度においては、誤請求率 を8.76%、これは平成15年度の実績以下とすることになっております。実績をご覧い ただきますと、平成17年度の誤請求率は8.59%で目標を達成しております。平成18 年度においてもさらに目標を1段階上げて、今度は8.59%を目標としてやっていきたい と考えております。  続いて3号の事業です。労働者の安全及び衛生の確保の事業で、10頁以降となってお ります。こちらは非常に事業の数が多くなっておりますが、業務災害の防止に関する活 動に対する援助、健康診断実施の事業などです。これは労災保険給付に対して直接的に 抑制の効果がある事業と考えております。ただし目標を見ますと、これまで目標が、例 えばユーザー指標と申しますか、ユーザーによる満足度などだけが目標となっていたよ うなものもありますので、そこについては、今回出来る限り改善していきたいと考えて おります。  まず目標改善した事業は、15頁、19番の事業をご覧ください。19番の事業は、建設 業における総合的労働災害防止対策事業です。建設業における労働災害を防止するため の研修・指導やマニュアルの開発などを行っている事業です。こちらについては、平成 17年度の目標として2つありますが、1番の目標は研修会等における参加者から安全管 理を行う上で有用であった旨の評価を80%以上得るとなっております。ただし、これは ユーザー指標の典型だと考えられますので、この目標は17年度は達成していますが、 18年度の成果目標については改善していきたいと考えております。18年度の成果目標 をご覧いただきますと、1番では事業実施事業場における労働災害発生件数の減少率等 を目標に加えて改善を図っているということです。また3番についても、厚生労働大臣 から表彰を受けた者が研修会の内容等を活用して、安全衛生活動を実施した割合を80% 以上とするという目標を新たに付け加えているところです。  もう1つだけ目標改善したものを紹介します。32番、23〜24頁にかけての事業です。 32番の事業は、過重労働・メンタルヘルス対策の推進事業です。こちらの17年度の目 標は、この事業を活用した事業場から過重労働・メンタルヘルス対策を進める上で有用 であった旨の評価を80%以上得るという目標だけとなっておりました。ただし、18年 度においては、実際この事業を活用した事業場において、新たなメンタルヘルス対策に 取り組む割合を80%以上とする、実際に対策を実施する事業場の割合を80%以上にす るという目標に改善しております。  もう1つ、先ほど新規事業についても新たに目標を設定したと紹介しましたが、これ は当然のことですが、この例として、32頁、45番の事業をご覧いただきたいと思いま す。45番の事業は石綿業務に従事した離職者の特別健康診断事業です。平成18年度の 新規事業ですが、こちらは過去に石綿業務に従事した離職者であって、石綿健康診断を 受診できない方に対して臨時に特別健康診断を実施する事業です。こちらは施策の対象 者の方が中皮腫、肺がん等のハイリスク・グループの方ですので、健康診断の結果をで きるだけ早く返してあげることが必要だということです。平成18年度の成果目標とし ては、受診者に対する健診結果を受診後1カ月以内に通知することとしております。  次は4号の事業で40頁以降です。4号の事業は適正な労働条件の確保のための事業 です。例えば賃金の支払いの確保や、労働条件に係る事項の管理に関する、事業主に対 する指導及び援助、その他適正な労働条件の確保を図るために実施する事業です。こち らも事業規模の大きなものについて紹介しますと、まず40頁にあります事業番号58番、 未払賃金の立替払いの事業です。こちらの事業は独立行政法人労働者健康福祉機構が実 施している事業で、労働福祉事業からは、実際に立替払いの経費に対する補助を実施し ているところです。平成17年度は目標が2つあり、1つ目は立替払いを円滑に実施す るという観点から、支払いまでの期間を平均で30日以内にするということです。2番 目は、ただ立替払いだけではなく回収も実施しないといけないので、2番目の目標につ いては、民事再生事案等に対する回収の実施を目標として督促、あるいは請求などをか けていくというようなことになっております。平成17年度においては、それぞれの目 標を達成しており、平成18年度においても同じ独立行政法人の中期目標の期間ですの で、同じ目標に基づきやっていきたいと考えております。  最後に4号事業についてもう1つ紹介いたします。65番、45頁で中小企業退職金共 済事業です。こちらの事業は独立行政法人の勤労者退職金共済機構が実施している事業 です。事業の内容ですが、制度がいくつかに分かれており、労働福祉事業からは、新た に一般の中退制度に加入した中小企業者に対し、加入後4カ月目から1年間、新規の方 に対し掛金助成をすることとなっており、これにより加入促進を図っているということ です。したがいまして、成果目標も、新たに加入する被共済者の方の人数を35万4,460 人以上確保することとなっております。実績としては、平成17年度には約44万人の新 規加入を得られたということで、平成18年度でも、同じように労働福祉事業から掛金 助成を行っているという趣旨に鑑み、新規の加入を被共済者の方の人数を目標としてい きたいと考えております。個別事業の説明は以上です。 ○部会長  ただいまの事務局の説明について、ご意見、ご質問等があれば、おっしゃっていただ きたいと思います。 ○佐藤委員  32頁の45番ですが、石綿の健診の問題で労災管理課長とよく話し合っているのです が、相当研修を進めて健診できる先生を増やしているということではありますが、四国 の丸亀、名前を言ってはいけないかもわかりませんが、そこの副院長さんが私どもの組 合の役員に言ったことなのですが、できれば何百人と受けさせてほしいと申し出ました ら、私1人ではとても対応し切れないというようなことを言ったそうです。それはそう だろうと思うのですが、いまアスベスト問題は少し波が引いたような感じになっており ますが、本質的な問題は全然解決しておりませんので、これから健診の業務は非常に重 要になります。そういうことから考えますと、このように簡単に目標達成をしていると いうことではないのではないかと思いますが、どうでしょうか。 ○労災管理課長  確かに委員ご指摘のような事案があれば私どもとしても問題あると思っております。 実際アスベストについては、ご存じのとおりアスベスト疾患センターを全国に相当数設 けまして、各労災病院で出来る限り研修はしてくださいと。というのは中皮腫としてき ちんと診断できる医師がいないということ自身が大変問題である。そういった医師が少 しでも早く増えるように、また、治療方法も、はっきり身につくように、できるだけ研 修をしてくださいということは再三再四お願いをしております。実は研修した人数だけ でも、ちょっといま手元に数字はありませんが、数千という数になっております。たま たま丸亀の先生は、やや意識として問題があったのかもしれませんが、少なくとも、か なり皆さん熱心にやっていただいていると聞いておりますので、その点につきましては、 また機構のほうに私どもからきちんと話をしたいと思います。 ○紀陸委員  いま労働福祉事業の見直しを徹底的に進めようという段階にきているかと思うのです が、大きく3つだけ申し上げたいと思います。1つは、今度1.4に、1,000の1下げら れましたが、これをもっと徹底的にやるという観点から、労働福祉事業というものをど うやって位置づけるかです。位置づけの見直しが必要ではないか。いま現在4つの分野 に分かれて働いておりますが、そういう観点をもう一度洗い直して、そもそも労働福祉 事業をどう位置づけるかについての論議が、私ども必要だと思っております。具体的に は法律の精神から導き出されることだと思いますが、1つは労災の防止、職場の改善、 労災保険給付の抑制に資する事業、というものに分野を絞るべきではないか。そういう 観点からいうと、例えば未払賃金の立替えの事業などを本来この事業の中に入れておく べきかどうか、そういう点の検討が必要ではないかというのが1点です。  2点目は、先ほどご説明のありました事業の評価の物差し、評価基準をどう作るかと いう話です。いくつか事例のご紹介がありましたが、例えば、参加者がこれを有用だと 感じたという、例えば80%と。1つ典型的な例は、先ほどの事例13、特定分野におけ る労働者の労働条件の確保・改善対策事業。集団指導した結果どのくらいの人が理解し たか、それは8割。それは当たり前の話で、こういうものを達成したからといって、そ れが評価の基準になり得るかというと、この基準はちょっと甘いのではないかという感 じがいたします。この評価基準の物差しをもう少しきちんと作るべきではないか。それ に関連していくつか事例がありますが、前年度の実績をどのくらいクリアしたかという 前年実績対比と。こういうのは当たり前の話でありまして、それがクリアされたからこ の事業は評価できるというもので本当にいいのかどうか。  もう1点は評価基準に関連してコストの観点です。どのくらいコストをかけないで制 度を運用するかという視点が抜けているような感じがいたしております。コストの削減 評価を目標の中に繰り入れて、それができないようなものであればやめるという、そう いうような厳しい視線も必要ではないかと思います。  もう1つ、それに関連して独立行政法人。非常に大きなウエイトを占めていると思い ますが、そういう所ほど事業規模が大きいわけでして、独法の事業の目標設定も含めて ですが、基本的なあり方としては、政府が、厚生労働大臣が目標を決めて、その運用・ 評価を独法の評価委員会が行うという格好になっておりますが、目標自体を政府が決め るのはいかがなものか。本来、これは独法の評価委員会の中での行っていいものではな いかと思っており、そういう大きな評価制度のあり方の見直しも視野に入れていただき たいということです。  3点目は、これはそもそも論になるのですが、毎年度の事業費総額の削減目標、いま 国の予算もそうですし、シーリング措置で入っているわけでして、それをずうっとどこ までやるかという問題はありますが、削減目標を大きく入れていくべきではないか。か つ、新しい事業をやる前に、これはここの分野だけではなく、雇用保険のところもある のですが、新しい事業をつくる場合にもうちょっと事前に実施の内容、こういう事業を やりますというオープンな論議をしていただきたい。たくさん数がありますから新しい 事業といっても細かいものと大きなものがあるのでしょうが、少なくともある程度のも のは、事前に新規事業を実施するかどうかの検討の場をつくっていただきたいと思って おります。以上、大きく3点ですが申し上げたいと思います。 ○労災管理課長  いろいろなご指摘で、私どもも大変もっともだというご指摘が多いわけでございます。  1点目の労働福祉事業の位置づけの問題ですが、これは皆様方ご存じのように、特別 会計の改革というのが、いま政府の大変重要な課題になっており、労働福祉事業につい ても抜本的な見直しを行うことが決定しております。そうした方向に沿い、費用負担者 であります事業主の皆様方のご意見を伺いながら、この事業をどうしていくかを現在検 討しているところです。そういった議論を踏まえた上で、当然労働福祉事業というのは、 労災保険制度の非常に重要な制度ですので審議会でもご議論をいただきたいと考えてお ります。ただ方向性としては、先ほど紀陸委員からご指摘のありました労災の防止、職 場環境の改善というような形で、労災保険を安定的に運営していく上で役に立つものに 絞っていくのは、非常に有効な方向ではないかと考えております。ただ未払賃金事業に ついては、できたときの経緯等もありますので、そこはまたそこできちんと議論しなけ ればいけないのかなと。確かにこの部会でも何年か前に議論がありまして、いろいろご 指摘があり、労使でちゃんと、まずお話しいただきたいという部会長のお引き取りがあ ったようなことも記憶しております。そういったことも含めて、きちんと議論しなけれ ばいけないだろうと考えています。  2点目の物差しですが、確かに私どもで、とにかく参加者が有用であったというよう な主観的な物差しでは駄目だということで、今回かなり改めたつもりでした。13番は、 私もうっかりしておりましたが、確かにこれは問題があるような気がいたしますので、 ここは再検討させていただきます。当然目標達成をしたからそれでいいのだということ ではなく、事業の評価のところで書いてありますように、目標達成をしても更に見直し をしなければいけないというものもたくさんあります。また目標達成したら次の年度は、 その実績をもとに更に目標を強化していくこともしておりますから、そういう形でどん どん、ハードルを上げていくのは当然必要だと思っております。そういう形で事業評価 をPDCAというサイクルの中で、きちんと回るようにしていきたいと考えております。  コストの影響の問題ですが、確かにコストの問題は非常にあります。例えば44番の 産業医学振興事業や、その他いくつか大きな事業があります。そういった事業において は、コストの問題も評価の中に書いたりしております。例えば32頁の44番の所では、 一般管理費16%、事業費6%縮減とか、ある程度大きなものについては、当然縮減する ような目標を書いてあるのもあります。当然、コスト意識も入れております。費用対効 果は大変重要な観点であると思っておりますので、そういった点も含めながらやってい るところです。  独法の関係ですが、確かに目標は私どもでつくるわけです。実は、その目標に基づく 計画は独法がつくる形になっております。また、目標、計画、どちらも評価委員会のほ うで議論をしていただくことになっております。今日参考までに独法の機構関係の目標 なり、事業評価を付けております。かなり詳細に議論をして、先生方から点数を付けて いただいてやっております。私どもとしてはかなり良い評価を得ているつもりですが、 法人によっては、事業内容、こんなのとんでもないと言われるような法人もあるわけで すので、第三者評価としてはかなり機能していると考えております。したがって、こう いった中で独法については厳しくやらせていただく。かつ独法の場合は、計画の中で何 年か先まで予算は必ず切るのだ、という目標が設定されております。その切り方は自由 で結構ですと。ただ切れなければそれ以上の金は出しませんという、かなり厳しい制度 をつくっておりますので、ここでもコスト意識を十分意識した仕組みになっていると。 これは独法制度ができてまだ数年で、評価はこれからという点はありますが、私どもが 見る限りでは、当初予定していたような効果を上げつつあるのではないかと。独法に変 わりまして、やはり意識が変わってきた。従来の特殊法人時代は、どうしても親方日の 丸という意識が抜けないところがありましたが、独法になって理事長自らが、こうしな ければいけないと。健康福祉機構の場合、今日資料を配っておりますが、実は給与カッ トなどもしております。特殊法人時代は、大きな給与カットは絶対できない話でしたが、 こういうことができるようになったというのも、やはり独法の成果ではないかと考えて おります。  毎年度の目標、あるいは新しい事業に対してオープンな論議ということですが、これ は確かに言われるとおりです。予算の話については、かなり機会を持ち、皆様方にでき るだけ早い時期にご説明を申し上げたいと考えております。費用負担者の関係で、使用 者の方々には労福懇のような場もありますので、そうした場も使いながら、できるだけ 事業の内容を精密に紹介し、既存の事業については当然ご批判をいただく、あるいは新 しい事業についても本当に必要なのかどうか、必要性についてもご議論をいただくと。 そうしたご意見を頂戴し我々の事業の中身をスリム化していきたいと考えております。 なお数字的に言いますと、労働福祉事業の場合、平成10年度には1,700億円あったも のが現在1,100億まで、ずっと減り続けております。確かに料率的な面でいろいろご不 満のある部分もあるかもしれませんが、額的にはかなり減っております。これは紀陸委 員をはじめとして、毎回いろいろ強い意見を賜っていることの反映かとも思いますが、 これからもそういう姿勢で、出来る限り予算をかけずに、しかし実績を上げるという方 向で事業としてやっていきたいと考えています。 ○部会長  ほかに何かご意見はありませんか。ありませんでしたら、本日の部会はこれで終了し たいと思います。本日の署名委員は、労働者代表の真島委員、使用者代表の横山委員に お願いいたします。今日はお忙しい中ありがとうございました。 照会先:労働基準局労災補償部労災管理課企画調整係 電話03-5253-1111(内線5436)