06/06/19 第3回振動障害等の防止に係る作業管理のあり方検討会議事録 振動障害等の防止に係る作業管理のあり方検討会(第3回) 日時 平成18年6月19日(月) 10:00〜 場所 経済産業省別館825号会議室 ○副主任中央労働衛生専門官 ただいまから、第3回「振動障害等の防止に係る作業管理 のあり方検討会」を開催いたします。本日は、委員の皆様方におかれましては、ご多忙の ところお集まりいただきまして誠にありがとうございます。本日は、井奈波委員がご欠席 です。  本日は、振動や騒音の測定器メーカーの方から話をお伺いするということです。私ども より、リオン株式会社の吉川取締役殿にお願いいたしましたところ、趣旨をご理解いただ いて応じていただきました。お忙しいところをありがとうございます。議事に入ります前 に、吉川様よりご挨拶を賜ります。 ○吉川委員 吉川です。本日は、このような席にお招きをいただきましてありがとうござ います。振動障害については、ここにいらっしゃいます前田委員をはじめ、皆様のこれか らの尽力に係るところが大変多いと思います。計測器メーカーとしては、国際整合化を図 るための活動をやってきております。それについて、本日少しでも話を聞いていただけれ ばと思っております。 ○副主任中央労働衛生専門官 どうもありがとうございました。なお、当課の課長は少し 遅れてまいりますのでご了解を賜りたいと思います。資料の確認をさせていただきます。 議事次第、配布資料一覧がリストされておりまして、資料3−1から資料3−7までが掲 上されております。資料3−3は前田委員の説明内容です。資料3−4も前田委員の説明 内容です。資料3−5も前田委員の提出資料で、EU指令です。資料3−6は、本日お話を いただく畝山委員が作成したものです。資料3−7は、リオンの吉川様作成の資料です。 以後の進行は相澤座長にお願いいたします。 ○相澤座長 国際労働衛生会議がちょうど終わり、皆さんお疲れのことと思いますけれど もよろしくお願いいたします。まず、前回の議事要旨の報告を事務局からお願いいたしま す。 ○副主任中央労働衛生専門官 前回の議事の概要を申し上げます。1番目は、榊原委員が 日本産業衛生学会手腕振動の許容基準の提案に係る基礎データを説明されました。その内 容は、10年間ばく露された場合で、白指有症率が3%を超えない、という振動レベルを求 めるということで検討された結果、2.8m毎秒毎秒が提案されたということです。その数式 にEUの2.5m毎秒毎秒を当てはめると2.3%程度、5m毎秒毎秒を当てはめると4.5%で あるという紹介がありました。  一方、ISOでは10%の有症率になる場合の観点で計算がされているという紹介がありま した。その場合、EUの2.5m毎秒毎秒を当てはめると12年間、5m毎秒毎秒だと5.8年間 で10%に達するという紹介がありました。  一方、日本のものについて計算すると、2.5m毎秒毎秒で11.8年間ばく露されると2.6% になるという紹介がありました。日本の試算データと、ISOで計算したデータとわりとよ く似た数値になるという紹介がありました。  次に前田委員が、振動工具を実際に使用している現場で測定した結果の発表がありまし た。各種の工具について測っていただいたわけですが、中には8時間使用で2.5m毎秒毎 秒というレベルを超えている機械もあったということでした。それに続いて前田委員から、 ISOの規格についての説明が数点なされました。その中でISOが決めている振動の測定に 関する基準にJISが整合性を取って設定をする方向であるという紹介がありました。結論 的な話として、工具が発する振動のデータをメーカーが示すことにより、それを使うほう は当該振動工具のハザードがわかることからリスクの管理ができるであろうという話があ りました。  その後、委員の方々の間で議論があり、その中で2、3取り上げると、振動の振動数に よる補正ということでは10Hzが人体への影響がいちばん強いということで扱われている。 それから、振動工具がエミッション・レベルで測れますけれども、人体という観点ではエ クスポージャー・レベルということで概念が多少異なってくる。したがって、工具に表示 できるのはエミッション・レベルであるということでした。防振手袋は、場合によっては 60%程度まで振動レベルを下げ得るわけですが、10Hz程度の振動については非常に効果が 薄いということがありました。  前田委員から、建設現場等で使われている振動工具についての紹介をしていただいたわ けですが、チェーンソーについても情報を得たいという話がありました。前回の概要は以 上です。 ○相澤座長 榊原委員、前田委員、これでよろしいでしょうか。 ○榊原委員 よろしいです。 ○前田委員 よろしいです。 ○相澤座長 これは議事録になると思いますけれども、何かご意見がありましたらお願い いたします。 (特に発言なし) ○相澤座長 早速ですけれども、議題1「諸外国の取組み状況について」を事務局からお 願いいたします。 ○副主任中央労働衛生専門官 私どもが入手いたしました、主に欧州諸国の振動に関する 法令等を仮訳し、それを見たものを取りまとめましたのが資料3−1と資料3−2です。 資料3−1は、主に法令の発効日という観点でまとめたものです。1日当たりのばく露対 策値は各国とも全く同じです。EU指令に従って2.5m毎秒毎秒にしていて、かつ、ばく露 限界値は5m毎秒毎秒にしているということで横並びです。異なるのは法令の発効日です。 大体が2005年に各々発効しています。ただ、イタリアだけがよくわからない状況でした。  これら2.5m毎秒毎秒とか5m毎秒毎秒というものをどのように扱っているかというこ とです。その概略を書いたのが資料3−2です。左のほうにstartと書いてありますが、 まずは振動ばく露によるリスクを排除しましょうと。具体的には、振動を伴わないような 工具、あるいは工法に置き換えようということです。それができない場合、やむを得ず使 うわけですが、対策を実施していただく。そのときには、科学技術の進歩を勘案しつつ、 いつも同じことではなくて、できるだけよい手段を取り入れてリスクを抑制していきまし ょうということです。  case1と書いてありますが、これを右の枠で括ってありますけれども、1)から9)ま で項目が並んでいます。これらの項目に掲上されております内容を実行する。それによっ てできるだけリスクを低減しようというのがcase1です。  計画に当たって考慮すべき事項として、右の欄で9つ並べております。1番目は代替手 段、2番目は振動の少ない工具、3番目は減衰手段、4番目はメンテナンス、5番目は作 業をする方たちの休憩施設等、6番目は教育訓練、7番目は時間の制限(振動強度と時間 との関係で制限をする)、8番目は作業計画を適切に立てよう、9番目は寒さ防止等の話で す。これらの項目に従って対策を取っていただくということです。その取るべき対策の下 限値が2.5m毎秒毎秒ということです。  case2ということで、ばく露限界が5m毎秒毎秒を超えた場合です。これは、原則とし ては超えてはならないということですが、超えてしまう場合は下に書いてあるような(1)(2) (3)を可及的速やかといいますか、遅滞なく所要の対策を講じる。そして、なぜ超えたか原 因を明らかにする。3番目に、再発防止を講ずるという構成になっているということを事 務局として学んだということです。  詳細については、本日前田委員から資料を出していただいておりますので、より詳しい 内容を説明していただけると期待しております。事務局からは以上です。 ○相澤座長 「ばく露対策値」と「ばく露限界値」を設定するということですか。 ○副主任中央労働衛生専門官 はい。2.5m毎秒毎秒と5m毎秒毎秒の扱い方が違っている。 2.5m毎秒毎秒を下回った場合にはここに乗ってこないというか、特段の対策は要らないと いうことです。具体的にはリスクを下げるに越したことはないのですけれども、これらの 対策を講ずる義務は生じないということです。 ○相澤座長 そのようなことですけれどもいかがでしょうか。それから、何かご質問はご ざいますか。 (特に発言なし) ○相澤座長 それでは、前田委員から補足をお願いいたします。 ○前田委員 前回、チェーンソーのデータを示せるようでしたらということでしたので作 ってみました。資料3−3ですが、チェーンソーが使われている現場へ実際に行きました。 そこで、チェーンソーで木を切るときには「枝ぎり」「玉ぎり」というのがありました。チ ェーンソー大、チェーンソー小というのもありましたので、それを実際に測ってきました ので、そのときのデータを用意させていただきました。  測定方法は前回と一緒で簡単な測定装置ということで、アメリカのHVM100を持ち込み、 チェーンソーのハンドルを握る部分の手とハンドルの間にアダプターを入れて振動を計測 するという方法で測定しました。そのときの測定値ということで、ハンドルのX・Y・Z方 向の周波数補正振動加速度実効値を測定しました。データは後ほど示させていただきます。  実際の計算の流れ図は2枚目にあります。ハンドルの振動、測定器があって、周波数補 正後の振動が出てきます。それを、こういう式に乗って計算する、という方法が機械に用 意されています。そのときに、23人の作業者がたまたまその現場におりました。年齢、1 日のチェーンソー等の使用時間、従事年数を聞きましたのが2頁にあります。  この現場は森林組合へ寄せていただいたのですけれども、アンケートで書いていただい たときに、ほとんどの人が2時間規制の2時間以内でやっていますという答えが返ってき ました。中には、4時間と書かれる方もおりました。その平均を取ると2.7時間でした。 従事年数の平均は出していないですけれども、長い人では40何年、短い人では2年ぐらい の範囲でおりました。白指的なことがありますか、という質問に対する答えとしては、ど なたも「なかった」という回答でした。  次の所は測定結果です。これは、簡単に何回か測ったものをまとめています。チェーン ソーの大きいのと小さいので、タイプはすぐには出てこなかったのですけれども、エンジ ン・タイプで大きいのと小さいのということです。玉ぎりと枝ぎりを実際にやっていただ いて測定しています。X・Y・Z、それからVsumというのでX・Y・Zの3軸合成値、それを 見ていくと、その値は4ぐらいです。玉ぎりの場合も4m/s^2rms、チェーンソーの小さ いほうが多少値が大きくなっています。  チェーンソーの大と小で、得られた合成値からEUの許容時間、先ほど説明がありました がばく露限界値を5にして、1日にこのチェーンソーだったらどれぐらい使用できるかと いう時間を求めてみました。枝ぎりでは12.4時間とか9時間までは大丈夫。玉ぎりの場合 は非常に長い時間まで使えそうということが見えてきました。チェーンソーの小では5.3 から8.6ぐらいの範囲で1日に使っていても、ばく露限界に達するまでの時間から見たら 大丈夫だという時間がこう出ています。  たまたま横にブッシュカッター、刈払い器がありましたので、それも測らせていただき ました。これは振動が小さく、合成値で3ちょっとです。これから計算すると非常に長い 時間使えるということで、ブッシュカッターでは1日8時間使える可能性があります。こ れは、その表のちょっと下に式がありますけれども、t=T×これこれで、この計算式から求 めた結果です。  この3軸、それからチェーンソー大・小、ブッシュカッター等を見てみて、チェーンソ ーだけ見ると振動の大きさには大と小では差があります。それと、大と小で許容できる時 間に倍ほどの違いがありそうだということがちょっと見えました。  大体、皆さん2時間ぐらいの範囲で使っているということで、それから見ますと許容時 間も長いですから、2時間以内で使われているということは、この現場では発症する可能 性は低いような感じです。基本的に林業での振動障害の発症率がいまは減ってきています ので、こういうことから見ても、チェーンソーに関してはそんなに大きく問題はないかと いう感じでした。  それと、8時間で5という許容ばく露限界から見たときに、チェーンソー作業、ブッシ ュカッター作業というのは時間的にすごく長く使えそうだということで、限界に達するま でにだいぶ時間があるということが見えてきました。ですから、前回の建設現場での工具 等と比べると、許容時間が大きく違うというのが見えました。比較すると、こういう林業 の所ではそんなに問題はない。ただし、建設現場ではもっと大きい加速度がありましたの で、それからすると大きな違いがあるということです。こっちに関してはこんな感じでし た。 ○相澤座長 貴重なデータをお示しいただきましたが、ご意見、ご感想はいかがでしょう か。 ○榊原委員 チェーンソーの小のときの作業は何をやっていたのですか。 ○前田委員 チェーンソー小では枝ぎりです。小で、玉ぎりというので木を1本切るのは ちょっとしんどいようです。ここへ寄せてもらって驚いたのは、チェーンソー自身のハン ドルに、排気をうまく流して、ハンドルの温度をうまく温めていて、指の冷えを減らすチ ェーンソーがここには導入されていました。そういう試みがメーカーでなされているとい うことを、ここへ行って初めて知りました。 ○相澤座長 小さいほうが振動が大きいというのは、重量が重いのでしょうか。 ○前田委員 小さいと、エンジンと近いということがあります。それで高くなるのかなと 思いました。 ○畝山委員 全体重量とのかかわりが出てくるのだろうと思うのです。これは、エンジン はスプリングでフローティングされています。大きいほうが、そういうフローティング機 構を作るのが楽なのです。小さいのだと、スプリングを入れても、スプリングが底づきし てしまうケースがあります。  もう1つは、40cc以上だと、日本では林野庁で型式認定を取らなければならない。小さ いほうは25ccとかその辺だと思いますので制限がありません。メーカーのほうでも、大き いのはビンビンに気をつけてやるけれども、小さいほうはそこそこの振動になっていれば ということがあるのではないかという感じがします。 ○宮下委員 これは、ベテランの方で想定されているのですか。 ○前田委員 はい、ベテランです。このアンケートで聞かせてもらったときも、もう30 年ぐらい使っていますという方にやっていただきました。私たちが当たるとだいぶ違うと 思うのです。 ○相澤座長 よろしければ、外国のほうも続けてお願いいたします。 ○前田委員 資料3−4で、振動や騒音に関する諸外国の取組み状況ということです。ま ず振動のほうですけれども、去年の7月6日にEUのPhysical Agent Directiveというの が発効されました。それに対して、各EU加盟国が、それをそれぞれの国の法律として取り 入れて作り、それを守ってやっていくという流れができてきました。  先ほど事務局からありました、イギリス、イタリア、スウェーデン、フィンランド、フ ランスのほかにもまだあるのですけれども、これらの各国がそれに従って法律を作り、値 を決めたというふうに動いてきています。  それのもともとのスタートというのは、EU DirectiveのMachinery Safety Directive (MSD)というのは、1998年に、工具から出る振動や音に対しての基準を決めてきたとい いますか、この値、この値とはっきりさせ、物を作って我々に供給するメーカーに対して、 こういうことに努力しなさいというのが出ています。  その中で謳われているのを振動の部分で取り上げると、「機械の設計・製作は、特に振動 原での振動低減技術の発展とその方法の利用可能性を考慮の上、振動による危険を最低レ ベルに抑えるようにすること」ということで、とにかく振動のレベルを低くする努力をし なさいというのが謳われてきました。  その中でいちばん大きかったのは、ある試験規則で、工具それぞれについて当たりまし て、そのエミッション、工具から出る値を測定し、その値が、工具に対して振動対策をす るかしないかの2.5を超しているか超していないかということに対してのすごい義務付け です。2.5を超した場合は、この機械は2.5を超していて、値はいくらですというのを表 示する義務付けをここで謳ってきています。2.5を超さない場合は、値は2.5よりも低い ですということで問題ないということを示すようにしなさいとしています。限界のほうの 5というのも、実はここで謳われています。ここでは書かなかったのですけれども、とに かく義務付けられたということが1つ大きなところです。これが1998年に出て、この後、 国内外のメーカーはこの値より極力低い値の工具を作るような努力がスタートし始めたの がこの時期です。  次の頁で、その後EU DirectiveのPhysical Agent Directiveというので、振動という のが2002年6月25日に出ました。ここで言われましたのは、2002年の3年後に、ここに 書かれてある人間の体に入る振動の物理量エクスポージャーを抑えるようにする。各国こ れを法律として取り入れてやっていきなさいと。目標が2005年7月6日ということでした ので、先ほどの事務局からのも、この日にちの前後、あるいはちょっと遅れている所もあ りますけれども、それぞれの国が、実現場でばく露される振動のばく露値をある値以下に、 2.5とか5という限界値、あるいは対策値以内に抑えていくようにということでできて、 それを受け入れて法律を作るということで動き出しています。  実際にEUで動き出しているのが下の図であります。横軸に時間があって、縦軸に振動加 速度。点線のほうが対策値の2.5で、これ以下だと問題ないのですけれども、これを超し ていくと、ばく露時間と加速度の関係で何らかの対策をしなければいけない。実線のほう は5で、これを超したら作業を止めなさい、という非常にきついDirectiveが2002年に出 て、2005年に採択されて、各国で動き出しているという流れできています。  そのときに、限界としては、8時間等価で置いて5、これをもし作業的に超した場合は、 事業主は全部仕事をやめる。要するに、作業者に仕事をさせたらいけません。対策をして、 その値を超さないようなことができるまでは、できないということで非常に厳しくなって います。それを、いろいろな国がみんな呑み込みますという流れできています。それを実 施するためのいろいろな努力がいまなされていっています。後でイギリスの話をさせてい ただきます。  あといろいろ書いたのですけれども、手腕振動以外に、全身振動の話も入っています。 全身振動も同じように、対策値としては0.5という値があります。3頁の下から4頁の上 にかけてですが、同じようにPhysical Agent Directiveに含まれています。建機とか自動 車など乗物の座席で、Z方向の振動が1日8時間で0.5を超したら対策を講じて、1.15を 超す場合はそこでストップさせなさいという話が同じようにできています。これも、全身 を考える場合には必要です。  もう1つは音です。これも先ほどと一緒で、1998年のMachinery Safety Directiveの 中で、音もこういうふうにあるべきだということが示されています。音の場合は、個々の 工具から出る場合と、環境の場合と両方動いたのですけれども、ここでは工具から出る音 に関しての話だけさせていただきます。エミッションとして、工具から出る音に対しては こういうふうにということで、その頁に測り方等があります。  そこで取扱説明書といいますか、それぞれの製品に対して、例えば4頁の1.7.4のとこ ろの3番目「機械から発生する騒音が」云々と書かれていますけれども、パワーレベルで 測るとかそんなのもあります。あとは、実際に測る規定の仕方が書かれてきています。  基本的には6頁目に、音の場合のばく露限界値、それからばく露対策値がこのように示 されています。翻訳がまずかったりしているところもあるのですが、ばく露限界値という のは、1日等価の騒音ばく露レベルということで、これはISO1999で規定されている内容 なのですけれども、それが87dB(A)を超した場合はばく露限界ですので作業をやめる。 上限対策値が85dB、下限対策値ということで80〜85dBの範囲であるのですけれども、こ の辺をどう見るかというのは考えなければいけないところです。  こういう基準を決めてきて、ばく露限界値を適用するときは、労働者に影響を与えるば く露の測定は労働者が着用する個別の聴力保護具によって音が入るのを減らす対策も考え なければいけません。やはり、超えていくと作業を止めるという話で、音のほうでもこう いう流れが出てきて、工具に対しての音がどのぐらいか、というのも出しなさいという流 れが出てきています。  それと、エミッションと実際にその工具を使って、現場でガリガリやりますけれども、 そのときに耳に入るときのレベルがそれを超す・超さないということで、聴力への影響を 抑えて、聴力損失を減らすという意味でこちらのほうの動きも出てきています。  両方の流れが出て、音のほうも2003年2月6日に出て、実際今年の5月に各国でこれを 採択して、音も法律にして動くという話になっています。ですから、振動も音も両方エミ ッション、それからエクスポージャーに対してヨーロッパでの動きが出たということです。  それから振動ですけれども、実はまだ今日は資料が届いていないのですが、ヨーロッパ EU加盟国は全部それを受けて動いています。それにそっくり同じ基準を、アメリカも採択 し、AGCIHでアメリカも規格が動き出しました。ですから、アメリカ全体もEUと同じ流れ でエミッション、それからエクスポージャーを捉えて、作業現場で働く人を守っていこう という話になってきました。  その中で、具体的にここで考えていかなければいけないラベリングといいますか、工具 がどれぐらいの振動を発生するか。それを、作業者あるいは事業主が把握できてハザード がわかって、リスク管理ができるようにする。ここでは1つの例として、イギリスがすご く動いていますので、その話をカラー印刷のところからさせていただきます。  イギリスでは、労働者あるいは事業主が、工具をパッと見ることによって、あるいは工 具を買う前に、それぞれ売られている工具の危険性がどれぐらいあるのかがわかるような システムを作ろうということで、工具を貸しているレンタル会社みたいなのが中心になっ てすごい動きが出ています。それを、HSEというイギリスの団体がバックアップしながら 動き出しています。  ここでの例は、例えばこういう色分けをしています。振動加速度が、メーカーから提示 された値が5m/s^2よりも低い場合というのはグリーンマークを付けて、8時間までだ ったら使用できます。5〜10の間ぐらいですとオレンジ色を付けて、2時間までだったら この工具は使えます。10を超す場合は作業時間も非常に短くなるし、危険度が高いという ことで、使用する場合には注意が要りますということで色分けをしています。グリーン、 ダイダイ、レッドという分け方をして進めようというのが1つ出ています。これを、向こ うではTraffic Light Systemと呼んでいました。信号の色ということです。  次の頁に表があります。これは、メーカーから提供されたデータが、メーカーと工具別 に対してデータが出てきます。いちばん左端がメーカーの名前でBoschとかいろいろあり ます。もちろん、日本からヨーロッパへ輸出している工具メーカーも全部含まれています。 それに対して、それぞれの工具の名前があって、それに対してその工具から出るエミッシ ョンの値がここに示されています。この数値は、工具から出る値です。それに対して評価 をしているわけです。グリーンとかレッドということで、こういうデータベースをきっち り作っています。  それから、カタログに、名前の横に色分けして、この工具はグリーンですとか、ダイダ イですとか、レッドですというようなこともやり始めています。このデータベースも資料 としてためていますので、どの工具を選ぼうかというときにはこれを見て、安全なものを 選ぶことができるようになっています。  これはデータベースとか表だけですので、実際に工具を見て判断できませんから、もう 1つ彼らがやっている試みは3頁目にあります。先ほどの基準に対して、グリーン、ダイ ダイ、レッドと分けていて、それをこういうラベルみたいにしています。この左と右とで 何が違うかというと、そういうことをやっている会社が違います。左のほうをやっている 会社は、真ん中に丸い穴があいています。ここに輪ゴムを通して、これを工具に付けるよ うにしています。右のほうはこういうラベルで、剥がしたら裏が粘着テープになっていま して、それを貼り付けられるようになっています。  下に例題がありますけれども、工具のある部分に全部こういうのが貼ってあります。写 真が見づらいのですけれども、工具に貼ってあって、実際に買いに行ったとき、あるいは この工具を借りに行ったときに、その工具を見ることによってグリーンのラベルだとか。 例えば、グラインダーが何種類か並んでいて、メーカーが違うものが並んでいた。それを 見たときに、いちばん安全なグラインダー、グリーンが付いているものがいちばんレベル が低く、リスクが低いということなので選びやすいように、こういうのを貼り付けるとい うことをイギリスではやり始めています。  もう1つ、これは色分けなのですけれども、ポイント制で何点までだったら使える。100 で2.5、400で5というポイント制というのをHSEで言われています。点数とともに見せて、 100を超しているか超していないか、というやり方もとろうとしています。少なくとも、 パッと行って、並んでいる機械を見て、グリーンか、ダイダイか、レッドかという判断が すぐできて、8時間まで使えるか、2時間までか、もっと短い時間の30分以内という判断 ができるような流れがもう出来上がってきています。  基準としては、8時間等価で5というばく露限界を超さない範囲で見ていっているので すけれども、多少時間と限界との兼ね合いで8時間使えるもの、それから2時間までのも の、それ以内のものという分け方でやってきています。基本的な式は、次の頁のA(8)=ahw √T/T0ということで、メーカーから提示された値を、ahwに入れることによってこれを計 算しますと、1日の限界が5ですと、それに対応する時間を出すことができるようになっ ています。こういうのを、それぞれデータを集めては更新し、皆さんにデータを出せるよ うなシステムを作っています。  あとは、こういうので工具メーカーによってはデータが出せない所には、実際の現場で 何回か測って、そのときの値をエミッション値にするという試みもあります。メーカーか らの値を信用しない所もありまして、それを実際に測ってみて、さらにデータベースを強 化している所もありました。  今後は、日本がこういう流れのものを取り入れて、作業者あるいは事業主に、現場で使 う工具の安全性を理解していただくとか、どの工具を使えばいいか、というのを見ていっ てもらう。データをどう作るかという話もありますので、一応ばく露限界5mを目標の値 にし、最後から2頁目で、例えばA(8)で見て、最大8時間まで使えるかどうかとか、5 時間から10時間、これはA(8)となっていますけれども、実際は加速度とも対応してい ます。こういう3色で分けるのがいいかとか、もうちょっと細かくするのがいいかという 話はあります。これは、メーカーから出た値をどこで切るかだけで色分けは可能だと思い ます。この値を5にして、こういう考え方を取り入れるかどうか。  少なくともこれが取り入れられて、こういうことが実現しますと、購入する人、使う人、 あるいは現場の安全管理者は、どの工具が安全で、リスクが高いかということがわかりま す。少なくとも、それを守る範囲で作業を進めていただける指標には使える可能性がある と思います。  最後の頁ですが、こういうのを考えてやっていくときに、いろいろ問題があるかもしれ ません。1つは、国内の工具メーカーがこういうデータを出せるのかどうか。そういうデ ータを出していただくための試験規則JISが必要ですのでそれがあるかどうか。あとは、 イギリスのように動いてくれる会社が国内にはない可能性がありますので、そういうメー カーから出てくる宣言値、エミッションの値をどこで集約してラベリングし、フィードバ ックできるようなシステムにするかです。あとは、零細で宣言値を出せない所はどうかと いう問題はありますけれども、それなりに解決はできるだろうと思います。  こういう流れの中で、私が思います結論としては、ラベリングを実施することによって、 より安全な方向へ作業を進められるだろうと思います。それから、EUと同じような考え方 で、A(8)=5としたときの色分け、Traffic Lightみたいに考えるのがいいのではない かと思いました。それと、それを工具メーカーのほうで実施してもらうことになると、買 うほうはわかりやすいということです。  そういうのがはっきりしてくることにより、いちばん下に書いておきましたが、振動工 具の使用限界が示されて、作業者、事業主がわかりますし、それを守っていただけるよう になれば、振動障害の罹患率は減少できる可能性が高まるだろうという感じです。 ○相澤座長 EUの現状と、日本のご提案までいただきました。大変詳細なご報告をいただ きましてありがとうございます。ご質問、コメントがありましたらお願いいたします。 ○榊原委員 EUに輸出している工具メーカーは、全部こうやって測定をしてカタログを付 けないと売れないことになるのですか。 ○畝山委員 カタログではなくて、取扱説明書にその旨を謳えと。振動であれば2.5mに 満たないという場合は、2.5mにいっていませんと。2.5mを超える場合は何メートルです、 というのを取扱説明書に謳わないと、これは後で述べますけれども、CEマークを取る基準 になりますから、これがないとCEマークが付けられません。CEマークがないということ は、ヨーロッパ域内での販売ができないということとイコールですから、否応なしにやら ざるを得ません。  CEマークというのは、欧州の安全マークです。これは、機械指令に要求される事項をす べて満足していると。これは自己申告制ですから、どこかの機関がということではないの ですけれども、それを全部満たしておりますという宣言をしないと、このCEマークを付け ることはできません。 ○鈴木委員 騒音のほうには、2006年5月に採択されたということですが、頭に「附属書」 と書いてあります。これは、ISOの規格などと一緒で、附属書となると拘束力の点などで 本規格と違うのでしょうか。それとも、附属書の中でも、インフォーマティブなものとそ うでないものとあるのでしょうか。 ○前田委員 両方分かれています。 ○鈴木委員 拘束力等は、振動と騒音でいま議論されているのは、同じ重みで議論されて いるということですか。 ○前田委員 そうです。 ○吉川委員 いまの前田委員のお話なのですが、英国の場合にはレンタル会社がラベリン グの主な受け皿のような報告でしたが、国内ではそういうのは全くないのですか。国内で は、振動工具のレンタルと、一般の事業者が購入する比率はどの程度なのですか。 ○畝山委員 イギリスでは、レンタル屋からのレンタルが8割を超していると言われてい ます。これはいろいろ理由があるのですが、少なくともイギリスにおいては動力工具は、 3カ月おきに完全な整備をしなくてはならないという法律があります。はっきり言って、 これを一般企業でやることは非常に困難です。部品も持たなければいけない、銭もかかる、 時間もかかるということで、レンタル屋から1カ月借りて返せば、レンタル屋は機械を管 理していますから、3カ月経ったものは、物によっては完全分解修理をやる。物によって は、点検をやってグリスアップするというように整備をして、法律に適合してくるように して出しますので、レンタル屋に頼るのがいちばん楽だということです。  もう1つは、動力工具自身、特に振動と騒音の問題が出てから、ますますその傾向が強 いのですけれどもどんどん進歩しています。例えば、これは建築会社にとってもそう安い 買物ではないですから、自分の所で持っていたら、それは寿命まで使わなければいけない けれども、レンタル屋からであれば、絶えず最新の物が借りられる。グラインダーといっ ても、大きさや性能がいっぱいあります。その都度その都度必用な物がレンタルできると いう非常に有利な面があります。現実に、うちのマキタの英国の現法の販売を見ていても、 8割以上はレンタル屋に流れています。  日本の場合も、レンタルというのもあることはあるようです。この間も国内営業に聞い てみたら、そんなのは1%にもいっていないという感じでした。 ○相澤座長 それでは、関連することで振動工具の現状について畝山委員からお願いいた します。 ○畝山委員 いま、メーカーがどういうことをやっているかという紹介を、資料3−6で やらせていただきます。我々メーカーとしては、特に振動工具に分類される部分を含めて、 動力工具自身が、手腕振動障害の原因になっていることに関しては承知しております。そ れでは、なぜいままでやってこなかったのだというお叱りもあるかと思います。  いままで、日本ではそういうものをヨーロッパ並みにギチギチに規制してやらざるを得 ないという状況には至っていませんでした。一方ヨーロッパでは、特にEU指令が出て、こ れをやらないことには商売はできないという規制が入ってきましたのでどんどんやってい きます。なんで、日本と欧州とここまで違うのだろうか、という疑問を抱きながらもいま までやってきたというところです。こういう検討会ができて、労働者を保護するという形 での何らかの規制が軌道に乗っていけばということは非常に期待しております。  まずヨーロッパですが、前田委員から何回も紹介のありました、Machinery Directive (機械指令)は、基本的に作業者を保護するという立場がベースにあります。これについ ては機械指令、欧州指令だけでそういうことを謳っているのかというと、実は規格がバッ クにあります。新しいのでいくと、ISO12100のPart1、Part2というのがあります。これ は、機械の本質安全設計、それに対する設計上の技術的な指標といったものを定めたISO はENをベースにして出てきています。これは、去年日本でもJIS9701でJIS化されていま す。それから、リスクアセスメントに関する規格といったものが背景にいっぱいあります。  だから、機械指令で謳って出せば、背景にそういうものがありますから、そういうもの を持ってきてどうのこうのという評価ができる、検証もできるというシステムが出来上が っています。初めての方にこういう話をすると、機械指令というのはそれだけ効力がある のか、そこまで細かいことを規定できるのかという聞かれ方をします。それを取り巻く法 律、規格といったものは十二単のごとくゴソッと周りを取り囲んでいますから、逆に我々 としても、機械指令一本だけを見て、どうしましょうというわけにはいきません。これに 謳っている法律は何だ、規格は何で引っ張ってくればいいのだろうということで、それぞ れやってきているのが現状です。  先ほど前田委員からもお話がありましたように、振動と騒音はほとんどセットで取り扱 われます。後で紹介しますが、私どもでは振動と騒音は一緒に測定しております。ただ、 今回は振動のほうに限って紹介いたします。必要があれば騒音のほうも紹介いたします。 98/37/ECというのは、それ以前にありました指令を統合したものであり、それ以前から 同じことが謳われています。  現状有効な指令としては、98/37/ECです。この中の2.2のPortable hand-held and/or hand-guided machineryにessential health and safety requirements。必須事項として、 取説にこれを謳え、謳わなくてはならない。その内容は先ほど紹介がありましたように、 2.5m/s^2未満であれば、その旨を謳え、超していればその数値を謳えということです。  ここで言っている2.5というのは、工具振動値エミッション値です。逆に言いますと2.5 mということは、8時間フルに使ってもA(8)は2.5であるということです。とにかくこ れで謳わないと駄目だということです。それをどう謳うかということで、次の頁に例を出 しておきました。どこへどう謳え、ということは規定されておりません。  いちばん上のは弊社の例です。赤のポツポツの下線を打ったところですが、The typical weighted root mean square acceleration value is 4m/s^2と。これは、ENの60745 に従っていますということを、CE適合宣言と一緒に謳い込んでいます。  その下はBasch社の例ですが、これもCE適合宣言の前で、同じものとして謳っています。 この場合は、上にありますように、according to EN50144となっています。  いちばん下はHilti社の例です。これは、機械のスペックの一部として謳い込んでいま す。ここでもaccordance with EN50144というのを謳っていまして、振動値8m以下です という記載の仕方をします。  先ほどから、前田委員が言われているように、カタログへ謳ったらどうだということが あるのですが、これは内輪の話で、弊社でも欧州のカタログへ謳い始めたことがあります。 そしたら欧州の工具メーカーからクレームが付きました。そのときのクレームは、カタロ グに謳うと、不当な競争力を煽ることになる。欧州指令には、カタログに謳えとは規定し ていない、ということでクレームが付きました。そのときに何社かは、EU指令の姿勢から いってカタログへ謳っていいのではないかということをやっていたのですが、EPTA (European Power tool Association)のまとまった議論として、謳ってはならないという ことが決まってしまい潰されました。これは7、8年前の話なのですが、こういう経過が あります。  現状、振動値に関しては取扱説明書にもこういう形で謳い込む。それを、特にハイヤー メーカーの共同体、そこにメーカーも入ってきますし、コンストラクターも入っていきま すが、共同体でそういった数値をピックアップして、自分たちでデータベースにまとめて 表にして、ハイヤーメーカーのカタログには明確に謳っています。そのように、ヨーロッ パでもメーカーによって足並みが揃わないというか、ぎくしゃくしたところはあるのです が、とにかく謳えという規制はあります。ですから、これをやらないことには売れない。 それをやるための下地として、ヨーロッパの場合はEN規格(欧州規格)というのが整って いますので、それに関してお話します。  まず「測定する」と一言で言っても、どうやって測定するのかというのが、いちばん問 題になってきます。振動の測定の場合、前田委員が調査されたものでも明らかですが、同 じ工具でも使い方によって、エミッションが全然変わってきます。ある一定レベルで比較 しようとすると、測定の仕方を規定しなくてはならないという問題が出てきます。その主 なものとして、3頁の(2)にまとめました。ISOもいっぱいありますし、EN規格もいっ ぱいあります。具体的に個別の工具群で測定方法を指定しているのは、まずISO8662シリ ーズのPart2〜14で、各種工具群に対する具体的な測定方法を規定しています。ヨーロッ パではEN50144という規格がありました。これもシリーズで全18部あって、個別のものを 規定しています。  このEN50144は、いま新しくEN60745という規格に入れ替えつつあります。実際には切 り替わっているのですが、振動測定の部分だけは旧のEN50144を臨時にそのままはめ込ん で運営しているという面があります。これが10数機種の工具群に対して具体的にこういう 材料で、こういう刃物で、こういう条件の下で、こういう測定をやって得た値を宣言値と しろということを謳っております。ヨーロッパの場合はそういった規格がいっぱいありま すが、適用規格は欧州規格を最優先としています。すなわちEN規格が最優先になります。 該当するEN規格がない場合は、ISOもしくはIEC等の国際規格を使えと。EN規格にも国際 規格にも該当するものがない場合は、加盟各国の国内規格を探せということですが、これ は至難の業です。それでもない場合は、測定方法を詳細に記載しろということです。現実 にはほとんどのEN規格でカバーできますので、ほとんどのメーカーはEN50144、もしくは EN60745を用いて測定した値を、取扱説明書に記載することになっております。  ただEN60745、EN50144というのは、電動工具のほうの規定です。空気圧工具に関しては ENもあるのですが、実際には空気圧工具用のENの測定規定というのは、ISO8662そのまま です。ですから現実に空気圧工具は、ISO8662をそのまま適用するわけです。またフォレ ストリー、アグリカルチャーの関係で、エンジン工具のチェーンソーや刈払い器に関して は、ISO22867です。ISOの場合、古くは刈払いとチェーンソーは別々の規格だったのです が、こちらに統合されています。こういった規格があって、それぞれ欧州の場合は優先順 位に従って規格を選択し、それによって測っていきます。したがって、弊社の場合ですと 電動工具がメインですので、現状はEN60745の欧州規格を適用して測っています。  どうせ測るのならというわけではないのですが、以前は単軸でしたが、一応開発したす べての製品に関しては、ここ6、7年、すべて3軸データをENに準拠した形で測定し、一 応データのプールをしています。ただ、出さなくてはならないということはありませんの で、ヨーロッパ以外では開示はしておりません。逆に言うと、欧州規格に準拠した形でも いいということであれば、開示はできます。実は厚生労働省のほうにも3年ぐらい前に単 軸でしたが、マキタの製品で代表的な機種を60機種ぐらい出させていただいたことがあり ます。問題は、EN60745がEN50144から移行中であることです。またISO規格の8662が、 実は旧ISO5349をベースにした規格で、単軸なのです。2001年にISO5349がPart1、Part2 にリニューアルされ、そこでA(8)の概念が出てきて3軸測定になったために、測定規格 がこれにまだ追随していないのです。実はいま、改定もしくは制定の真っ最中です。  次の頁に長々と、具体的にどういう工具が入ってきているかというのを出しておきまし た。分類されているのは、こういう感じでされています。この中できっちりと3軸対応で 新しい規格を制定しているものは、まだありません。いちばん近いのがISO8662のPart4 のグラインダーです。これがいまファイナル、FDISになっているはずです。DISのボート がもう終わっているはずですから、今年中か来年ぐらいに改定されるのではないかという 感じです。ISO8662のPart7のインパクト関係は、私も加わって今、改正作業をやってお りますが、まだ途半ばという感じです。またISOの中には、まだ手も着けられていないも のもあります。  実はEN50144というのは、それまでにEN規格で散在していた規格をごっそり集めて、電 気安全ということでつくったものですが、EN60745というのは、IECの60745をそのまま持 ってきて、振動と騒音の測定規格をくっ付けたものです。ですから振動・騒音の測定規格 以外EN60745は、国際規格と完全に一致しています。ところが振動に関しては、3軸に対 応した新しい測定方法を決めなくてはなりません。これをCENERECがやっていますが、時 間がかかっています。この中のほとんどがEN50144の単軸測定を臨時に使うという形で、 あとは順次改正をかけて3軸に置き替えていくという形で、いま動いています。  これは日本でも当然考えていかなくてはならないことですが、EN60745は電気で駆動さ れるモーター動力工具ということになっています。ISO8662は、実は ISO/TC118:Compressors,pneumatic machinery & toolsということで、空気圧工具のほう のTCで扱われている関係上、基本的に空気圧もしくは油圧をメインにしています。ISO8662 の中には、一部電気を動力にしているものも含むというPartもあるのですが、今度の改正 に合わせて、すべて動力源に制限を付けるなという形で動いております。私が絡んでいる Part7でも、一応動力工具はすべてのものを含むという具合に改正するという承認は得て いますが、ほかの工具でもだんだんそうなっていくはずです。  ただ、そうなりますと同じ工具にかかわらず、ISO8662とEN60745とで、測定方法が違 ってくる可能性が出てきます。実は現状でもISO8662とEN50144とでは、結構違う面があ るのですが、最初のときにも申しましたように、少なくとも日本では同じような仕掛けで 同じような仕事をする工具に関しては、同じ測定規格でやっていけるような手順をつくり たいと考えております。この辺は我々もかなり悩んでいる面です。いま欧州の評価は3軸 A(8)でやるけれども、宣言値のほうはまだ単軸のものが多いのでどうするかということ で、いまCENのほうでTRの15350、一応ISO8662で得た値は、エバリュエーション用には 何倍しろといった換算率表を制定する動きもあるようです。実際にTRとしてはもう出てい るのですが、前田委員の調査では、あまり適合していないということでした。日本でこう いったことが始まれば、例えばメーカーが表示した値と、実際の作業で出てくる値とどう なのかということが、おそらく最初に問題になってくるのではないでしょうか。  私どもにはよくゼネコンや労働基準局からも問合わせがきます。その場合、うちがプー ルしている、いわゆる形式試験データではなく、伺った作業条件に近い状態、場合によっ てはポータブルを抱えてそこまで出向くこともあります。そこで測定をして、こうですよ ということで現実的な対応はさせていただいているのですが、実際の作業状態と形式試験 で測定したデータとは、明らかに異なるケースが多いのです。その辺も将来的に問題にな って、どう対応するかというのは出てくると思います。  当面、我々がどういう形で測定しているかというのを写真付きでご紹介しておきました。 この後、リオンの吉川さんのほうからもご紹介があると思いますが、当然のことながらISO、 国際規格に準拠したものということで、ISO5349のPart1、ISO8041に一致したものという ことが前提です。いま我々が持っているのは世界標準器と言いますか、B&K社のPULSE システムです。この16chと12chが各1セットです。実際の測定には12chのほうを使用し ています。ポータブルでは前田委員も使われたLarson DavisのHVM100が2台と、RIONの 最新版のVM-54をフィード用として使っています。  測定室は次の頁の写真にもありますように、ENの場合は同じ条件で振動と騒音を測定す ることになっておりますので、一緒に測ってしまいます。具体的には各3軸の両手の振動、 マイクを水平面上4個と垂直面1個の合計5個、合計11chプラス予備1chの12chで全部 測れるので、こういうシステムを採っております。当然のことながら騒音も測りますので、 ISO3745に合致する半無響室です。要するに床面は反射面、床面以外はすべて吸音面とい うことで、無限大の地表面を想定したことになります。その半無響室の大きさは10.2mと 5.5m、高さ3mということで、ここでやっております。  測定治具や諸々のものは、メインとしてEN50144もしくはEN60745、場合によっては ISO8662に適合したものをすべて揃えております。問題は被削材で、これも相当な量にな ります。極端に言いますと、コンクリートブロックが1mの60cmの50cmです。このコン クリートブロックを常時100個ほど持っています。これには圧縮強度の問題がありますか ら、放置しておかなければいけないものです。そのほか諸々があります。  振動測定をやる場合にいちばん問題になるのが、試験者(オペレータ)です。私どもも 過去に何度か苦い目を見ております。早い話が、ヨーロッパで提示するときに、うちでは どう測っても競合メーカーのほうの振動値が大きいのに、謳っている競合メーカーの振動 値が低いということがあります。そこでいろいろやったあげく、結局ベテランを持ってく るとその値が出て、あまり慣れていない人たちがやると、振動値がドンと上がってしまう ということがあったのです。  そういうことで、実は6年がかりで専用の試験者、この人に任せておけば絶対に間違い ない数字が出るという人を3人育てました。メンバーとしては15年選手です。ただ、あま り大きなものを扱うのはかわいそうだということで、測定と分析のほうをメインにやらせ ています。あと4人ほどやってもらえる人がおり、10数名の体制でやっています。特に振 動測定をやる場合には、工具の特性や使い方を十二分に知り尽くし、なおかつ扱いに慣れ ている、ISOやENでskilled operatorと言っている、それだけの熟練者が必要になって きます。  次の頁にありますが、こういう感じで真ん中で防音バッグを置いています。これは電動 ハンマー用の測定です。10頁にあります。ISOもENも同じ治具を指定していますが、こう いったものが真ん中の白い箱の中に入っています。左下の写真にあるのは若い人ですが、 ほとんど試験専任でやっているような人間です。  そして、いちばん問題になるのがピックアップです。3軸測定ですので、3軸ピックア を使うのが、いちばん手っ取り早いのですが、1つは3軸のほうが大体大きいということ があります。もう1つは3軸の場合、1軸イカれてしまうと他の2軸も全部パーにしなけ ればいけないということなど、いろいろあります。  いま私どもではこれを使っております。ピックアップはこれだけの物です。0.65gです。 これに3軸を組み合わせてアダプタ式で使っております。実は、これは1個10何万円とい う、とんでもない代物ですが、ピックが大きければ大きさがゆえに邪魔をしますし、小さ ければ今度は逆に感度が落ちるというように、いろいろな問題があります。これはB&K 製のもので、8頁の写真に出してあるアダプタも、B&Kに特注して計算尽で作っていた だいたものです。  どう取り付けるか云々でも、しょっちゅう問題になるのですが、一応手持ちアダプタを 手とハンドルの間にはさみ込んで使うものです。接着剤でくっ付ける、ネジ止めする、鉄 バンドでギューギューに締め付けるなど、我々も検証試験でいろいろなことをやってみた のですが、誤差の範囲内ぐらいしか出ないので、うちでは適用できるものに関しては、こ のアダプタを使おうということでやっております。しかし特にヨーロッパメーカーの場合、 そういう測り方はどうのこうのと、いちゃもんを付けてくる場合があります。この間もあ りました。「うちでお前さんの所のものを測ったら、こういうデータだったよ」と言ったら、 「合ってるな」という形で収まった場合があります。どういうピックを選択してどこへど う付けるかというのが、振動測定では大きな問題になってくるかと思います。  次に参考用として、ENではこういう感じで規定しているというものです。全部で18部 とか21部というように、積み上げると5cmぐらいの厚みになるのですが、振動・騒音の測 定自身は、各パートでせいぜい2、3枚です。こういう治具を使えとか、こういうコンク リートブロックを使えとか、こういう押付け力で、こういうビットでという細かい指定が されますので、それに従ってやれば、どのメーカーがどこでいつやっても、比較に値する データが出るという仕掛けになっております。  いままで言ったことをもう一遍まとめます。各工具、使い方、使う人、使う現場によっ て発生する振動は、よくもここまでというぐらいに変わってきます。私が実際に目の前で びっくりしたのは、いわゆるコンクリートのハツリ作業です。朝測って夕方、「もう一遍測 ろうか」と言ったら、同じ人がやったにもかかわらず5倍違うのです。なぜか。これはブ ルポイントの磨耗です。朝は新品の非常にシャープなブルポイントで、それを何人かで使 い回しているうちに丸くなってしまい、それでやると一気に振動が上がってくるのです。 そういったケースもあるので、その辺を。  ですから基本的には形式試験として、比較用のデータを取るための測定方法と、現実に 使っている現場での振動値がどうなっているかというのと、両方が必要だと思うのですが、 現場での測定というのは非常に困難を伴うし、膨大な数になります。その辺をCENの TR15350のような形で、形式試験値を参考値に置き換えるような方法が取れるかどうか、 それも検討する必要があるのかと思います。  それと、私どもは会社のほうでも、とにかくしっかりやれということで、装置・設備は 整えておりますが、知っている範囲でも、あのメーカーでは測定などできないのではない かというメーカーもあります。簡単なポータブルなものでも十分にデータが取れますので、 そういったものでもいいと思うのですが、やはりきちんとした分析、データ記録をやろう と思うと、やはり測定機器自身もある程度の金額がかかります。そういったときにどこが どう対応するのか。前田委員もご指摘されておりましたように、こういう規制をかけた上 でその辺が、やはり1つのネックになるのではないでしょうか。  実は、私どもでは非公式ですが、電気・エンジン・空圧メーカーの大手9社で、振動診 断に関する工具ネットワークというのを組んでおります。情報公開もやっております。そ ういった所は、例えばISOを持ってこられてもENを持ってこられても、すぐに測れるだけ の体制があります。以前、ネットワークを組むときに調べてみようということで調べただ けで、詳しくはわかりませんが、大雑把に言って動力メーカーは日本に300以上あります。 その中にはメインの事業は別にあって、片手間で動力工具を作っている所もいっぱいあり ます。また動力メーカーとしてはかなり名が通っているけれど、聞いてみたらある単一工 具だけでやっていて、規模はそう大したことではない所もあります。そういったことを全 部ひっくるめて、工具の製造業者をどう網に掛けるかというのも、また難しい問題かとい う気がしております。  簡単ですが、メーカーのほうでは一応こういう感じでやっているということを紹介させ ていただきました。 ○相澤座長 ありがとうございました。大変具体的にお示しいただいて、わかりやすかっ たと思います。いかがでしょうか。何かご質問はありますか。 ○榊原委員 ISOやENに従って測定するシステムをつくるには、費用などはかなりかかる のですか。 ○畝山委員 程度によりけりです。はっきり言いますと、私どもですと一応3軸測定がで き、分析までのシステムを入ようという話が始まったのが、8、9年前です。それから大 雑把に言ってほぼ7,000万〜8,000万円の測定設備を注ぎ込んでいます。また、その周辺 のいわゆる治具や破壊用の工作具もあります。治具のほうはこの間ザッと見積もって、全 部ひっくるめて数百万円ではないかということでしたが、一応試験部隊のほうで出してい るコンクリートブロック、木材、金属板、その他試験に使う諸々のものが、年間予算で大 体200万円ぐらいを消費しています。それらを考えると、結構な金額にはなります。 ○吉村委員 騒音のほうの規制もあるそうですが、試験方法を見ると、周辺への放射の音 圧を測定していると思うのです。考え方としては作業者自身の耳の位置で取るというのと、 環境への影響を考えるというのと、どちらのほうに主眼があるのですか。 ○畝山委員 ENの場合、あくまでも作業者がメインです。1つにはLWAで難聴、ピークで 耳の破壊、鼓膜破損というのがあります。いわゆる瞬間的にボーンときて鼓膜をやられて しまうものと、いわゆる習慣性の難聴とがありますが、こちらのほうが目的で2種類が規 定されています。  ただ、騒音に関してはこの前に屋外使用機器の騒音規制というのがあって、屋外で使用 する機器に関しては、もうすでに第二次の規制が始まっていますから、大きなブルドーザ ーから始まって、これ以上の騒音を出すものは販売できないのです。我が社の製品で言い ますと、電動ハンマー関係です。重量、種類、その他によって、このカテゴリーのものは これ以上の放出があったら販売できないという規定がされています。それに関しては大き なマークをベタッと本体に貼ることになっています。  実は振動とは違い、騒音のほうにはイヤーマフという逃げがあります。騒音も何とかし なければいけないけれど振動ほど、こちらの騒音がこちらの機械より大きいから、こちら を使おうか、こちらをやめようかという話はあまりないようです。ただ、静かなものにこ したことはないというお客さんからの声があるので、メーカーとしてもマンパワーの配分 として、やはり低騒音のほうにマンパワーを配分していきます。低振動にマンパワーを配 分して、その中でできれば同時的に低騒音を測っていくという取組みをやらざるを得ない のかと思います。メーカー間でも振動競争は熾烈ですが、騒音競争はあまり目立つほどの ものはないです。 ○相澤座長 7頁の写真ですが、どこに振動工具を置くのですか。 ○畝山委員 この下にハンマーがありますよね。 ○相澤座長 上は音のほうですよね。 ○畝山委員 上は音です。マイクが4カ所と、上に1本ぶら下がっています。 ○相澤座長 いや、振動工具はどこに置くのですか。 ○畝山委員 下の写真のこの上にです。これがハンマーの治具です。この上にハンマーを 突っ込んで、ハンマーのメインハンドル、サイドハンドルのほうへ振動ピックアップを付 けたこのアダプタを付けて、騒音と同時に測るということを今やっております。 ○相澤座長 5本のマイクの5本目は、天井にぶら下がっているのですね。 ○畝山委員 はい、ちょっと薄いのですが、天井から真上にブラッと黄色のものがぶら下 がっています。 ○相澤座長 ほかによろしいでしょうか。それでは3番目の議事、「振動と騒音測定器の現 状」について、吉川委員からよろしくお願いします。 ○吉川委員 いま前田委員および畝山委員から、機械の規格についてのお話がありました が、資料3−7にある「国際規格に対応した振動・騒音測定器の現状」ということで、少 し整理をしてみましたので、1.から若干の説明をさせていただきます。振動測定器の現 状として、国際規格の動向の評価法、測定法、JISの動向という3つに分けてみました。 国際規格の評価法の動向では1974年に、「全身振動に対するばく露の評価に対する指針」 というのが発行され、これを受けて日本ではJISC1510(振動レベル計)およびJISC1511 (手持工具用振動レベル計)が、国内で発行されている機械の規格になりました。  実はJISC1510というのは環境用で、一般環境の道路の振動や工事の振動といったものを 対象にした振動レベル計で、もともとは全身振動という人体の全身振動を対象にしたもの です。このいちばんの特徴は、表示がdBであることです。近年の計測器、測定器について は、評価法や測定装置の規格を受けて、m/s^2という表記にすることが第一義に挙げら れておりますので、そこに大きな違いがあります。JISC1511というのは手持工具用振動レ ベル計で、工具が発生する振動の振動レベルを測る機械です。ですから手腕系に入力され る振動は参考値であって、そこを測るものではありませんから、そこが大きな違いだろう と認識しております。  そういうことで、国際的には1974年にISO2631が発行され、その後、1985年から1989 年にかけて、全身振動のばく露に対する評価の規格として、ISO26311〜26313と、手腕系 の振動の規格のISO5349が、相次いで発行されました。しかし測定器の規格は、この時点 まで何もありませんでした。したがって測定器としては、評価法の規格を基にしたものが いくつか検討されていたというのが、それまでの流れです。ここにきて1997年にISO2631-1 が改正され、ISO5349も2001年に改正されました。これを受けて、測定器としては1990 年にISO8041の規格が発行されました。そして最近のISOの評価法の規格の改正に伴い、 2005年にISO8041(2005年版)が発行されました。  「人体振動の測定装置の現状」ですが、先ほども申し上げたように、従来JISには振動 レベルというものの2つの測定器の規格しかありませんでしたが、人体振動の測定器の規 格として、JISB7760-1と7761-1、これはISO8041の2005年版が発行される前に、2003年 からISO規格委員会の中で検討されていた内容を、日本でも早めに測定器の規格としなけ ればいけないという、前田委員からのご提案がありまして、ドラフトの段階でJIS化に取 り組んだ結果です。JIS7760-1、7761-1というのは、ISO8041の規格の趣旨を100%取り入 れたものですが、ISO8041は手腕系の振動にも全身振動の測定用にも、1つの規格で扱っ ております。  その辺の全体を眺めていただけるように、4頁をご覧いただきたいと思います。ここに いろいろなグラフを載せております。このグラフの中で、「ISO-8041 DIS『人体振動測定装 置』の代表的な周波数補正特性」と書いてあります。ISO8041は人体振動を扱うための測 定器を扱うということで、低い周波数では0.1Hz以下です。これは揺度で、主に対象とし ているのは、高層ビルの風による揺れや目まいを対象にしたところから、高いほうでは 5,000Hzぐらいまでで、こちらは手腕系の振動を対象にしています。  この中にはいろいろな補正係数がたくさん出てまいります。人体振動を扱う範囲が非常 に広いので、特に日本ではISO8041の完全翻訳版ではなく、使用される場面に合わせて規 格を2つにしようということで検討いたしました。そしてJISB7760-1は、全身振動関係を 扱う測定器の規格、JISB7761-1は、手腕系振動に特化した規格に分離しようということで、 JISの規格化が行われました。これは昨年発行されました。その後、JISが発行された後、 ISO8041の正式版が発行されました。現在、人体振動の測定器としては、ここにきて国際 整合化がやっとできたというように認識しております。  今日は「人体振動の測定装置の現状」ということで、当社が作った機械として、いちば ん最後にサンプルを載せております。カタログもお持ちしました。測定器本体としては、 人体振動全体が扱える機械に仕上げており、使用する現場に合わせております。例えばこ こに、3つのプログラムカードを載せてあります。「VX-54WS」と書いてあるのが何かとい うと、主に船の中の振動を測る、居住環境を測る専用のものに仕上げております。VX-54WH というのは、手腕系振動を測ることに特化したプログラムです。VX-54WBというのは、全 身振動を測るものです。  その使用現場に合わせて、使う人がプログラムによっていろいろな機能を選ぶのではな く、プログラムにフィックスするという考え方の機械を提供するように考えました。国際 的な他メーカーを見ますと、全部ISO8041の規格を入れて、使用者はそれなりの技術を持 った人が使ってくださいという考え方が主ですが、日本の作業現場というのは、使われる 方が機械の操作や測定器の操作もするという場面が非常に多うございます。そういうこと で使い勝手を考えて、こういう形で提供しております。  その中でいちばん大変なのが、やはりピックアップです。先ほど畝山委員からもいくつ かお話がありましたが、下に3種類のピックアップの絵を載せております。同じ振動を測 るのでも、それぞれ測定する環境に合わせて使用するピックアップが違ってまいります。 まず、この中で「PV-83CW」と書いてあるのは、ISO2631-2ということで、居住環境を測る ための振動ピックアップで、0.5〜80Hzまでを扱っています。実は、これは船用に作った ものです。船は全部鉄板でできておりますから、この写真では見えませんが、取り付ける 脚の所にマグネットが付いております。マグネットで船の鉄板にガチャンと付けられます。 脚の形によって、振動の特性は変わってまいりますが、マグネットを付けても本来求める 特性は得られるという評価をして、そういうものを付けているピックアップです。  その横は、「PV-62」と書いてありますが、これは座席振動用のもので、国際規格の中に 基準があります。サイズと中のピックアップ感度、そういうものが寸法はこうでなければ いけないというのが記述されており、それに合わせたものです。実際に振動を測る場合は、 座席の下に敷いてその上に人間が乗って測るのが、この座席振動ピックアップです。  いちばん下に書いてあるのが、手腕系振動のピックアップです。これには先ほど畝山委 員も言われたサイズと、3軸と1軸というのがあって、対象とする機械によって感度を非 常に重視します。小さな振動を測りたいものは、自ずとサイズが大きくなってしまいます。 また、そこそこの振動は出ているけれども、できるだけ小さなサイズがいいというように、 いくつか選べるようになっております。  これらは使用場面によって、適宜ピックアップを選ばざるを得ません。場合によっては その工具に合わせたピックアップを新規に作らなければいけない、ということも発生いた します。ここに載せているのは、一般には標準品として提供しているもので、これでは役 に立たないというお話も、いくつかいただく場合もありますので、その場合は我々で開発 を行います。いずれにしても機械を供給するほうから言いますと、マーケットがまだ小さ いというのが最大のネックです。これが現在の人体振動の測定器の現況です。  国際的に見ますと、人体振動測定器として専用器を出しているのは、日本とアメリカで す。ヨーロッパでは2社ほど、最近出し始めたというようにうかがっております。この分 野で測定器を提供しているメーカーは、国際的にも非常に少うございます。これは前田委 員に聞いた話ですが、日本で人体振動測定器を作っているのかと驚かれたそうです。要す るに日本など、そんなことはやっていないだろうという評価があったとかないという話を うかがっております。  その次に、「騒音測定器の現況」です。実は、騒音については国際的に共通化された認識 が、非常に高い分野です。音響に関する国際規格は、ISO/TC43というセクションで審議 されます。現在、その規格を調べてみましたら、ISO規格の中では150件が審議対象です。 その中で騒音の測定法や評価法に関するものが7割程度に及びました。中でも聴力保護に 関する規格として、「防音保護具」ISO4869-1、「防音保護具の装着状態での実効A特性レベ ルの推定」ISO4869-2というのが発行されていますが、これに対応するJISは、現時点で はありません。  国際規格の測定器としての状況ですが、音を測る測定器としては、もともとOIML(国際 度量衡規定)の中に騒音計というのがあり、国際的な単位その他の標準が定められており ます。騒音測定器の規格を扱う国際審議の場面はIEC/TC29で、現在、IEC61672というの が最新の騒音計の規格です。国内の対応で言いますと、JIS規格はほとんどこのIEC規格 に連動しており、遅れても2年ぐらいの遅れで大体改正が済んでおります。なおかつ国内 では環境規制の関係で、計量法の中に騒音計が取り入れられております。また一般の自動 車等の工具の評価のためにも、騒音計が用いられます。したがって騒音測定器というのは、 国際整合が非常に進んでいる分野の1つだろうと考えております。  実は、規格等についての一覧表を作成しようとしたのですが、あまりにも膨大すぎるの で、今日は参考資料として本を持って参りました。学会が発表しているものの2004年版で、 全規格について一覧表にしたものが「騒音制御」で特集されております。ここに記述して おけば、必要な方がおられればここから学会に、この資料を求めてくださいというつもり で記述させていただきました。何かの参考にしていただければありがたいと思います。  騒音計にしても人体振動測定器装置にしても、両分野ともここにきて国際整合化という のが、かなり進んでいるというように認識しております。3枚目の頁に現在までのISO規 格と、それに対応したJISがどのように発行されてきたのか、ISOの発行された年、それ に対応する規格、右のほうに内容が書いてあります。その内容の中のいちばん下の行に、 対応JISがこういうようにできていますということで、現在まで進んでいるものをまとめ てまいりました。この測定法や評価法の中では、まだJIS化が進んでいない、または本当 に国内で取り入れて、JIS化すべきかどうかという議論が進んでいない分野も、いくつか あります。  もう1つは、日本でやっているISO規格に整合させる必要がないのではないかというこ とも、当然対象であるべきだろうと思います。これについては測定法や評価法があって、 測定器の規格ができていくという流れが、順当な方向であろうと考えております。人体振 動については、ここにきて測定法、評価法が順次整備され始めてきています。それに併せ て測定器の規格が一応できました。測定器としてはこの先、それぞれの応用に合わせて専 用器化するものが、いくつか出てくるだろうと考えております。特に先ほど前田委員から もお話がありましたように、ばく露時間をきちんと評価するようなものが、使用現場では 必要になってきます。ただ単に測るのではなく、今後は管理するための測定器の必要性が あるのではなかろうかと考えておりますが、どのような格好が望ましいのかという議論を したことはまだありませんので、今後の課題として考えたいと思います。 ○相澤座長 ありがとうございました。振動と騒音の測定器の製造のお立場から、詳細な ご報告をいただきました。いまの吉川委員へのご質問等はありませんか。それでは前田委 員、畝山委員、吉川委員からご説明いただいたわけですが、全体的なご質問、あるいはコ メントがありましたらお願いします。よろしいでしょうか。  今日は大変貴重な資料のご説明をいただきました。お3人の委員に、改めて感謝申し上 げたいと思います。今日はEUを中心に規格と基準を取り上げていただきましたが、米国の 規格・基準も知らなければいけないので、米国での騒音と振動についての基準と規格を、 次回にお願いしたいと思います。メーカーについては事務局に一任するということでよろ しいですね。次回の日程について、事務局からお願いします。 ○副主任中央労働衛生専門官 次回は7月28日の金曜日、午後3時からを予定しておりま すので、よろしくお願いいたします。 ○相澤座長 今日は大変実りある検討会になりました。これで終了いたします。どうもあ りがとうございました。 照会先 労働基準局安全衛生部労働衛生課物理班(内線5496)