06/06/13 労働政策審議会労働条件分科会 第58回議事録            第58回労働政策審議会労働条件分科会                     日時 平成18年6月13日(火)                        17:00〜                     場所 厚生労働省18階専用第22会議室 ○西村分科会長 ただいまから、第58回労働政策審議会労働条件分科会を開催します。 本日は紀陸委員の代理として秋田さんが出席されています。また奥谷委員が少し遅れて 参加されるとの連絡をいただいています。本日の議題に入ります。前回の議論では、資 料No.1の「労働契約法制及び労働時間法制に係る検討の視点」のうち、労働時間法制に ついて御議論いただいたわけですが、「管理監督者の範囲等の見直し」以下の議論が残っ ています。本日は最初に前回の残りの部分を御議論いただきたいと思います。この点に ついて何か御意見等があれば、お願いしたいと思います。 ○渡邊佳英委員 「管理監督者の範囲の見直し」と、「現行裁量労働制の見直し」につい てですが、まず管理監督者の範囲の見直しについては、我々としては見直す必要はない のではないかと思っています。すなわち現行で十分であるということです。あと若干質 問なのですが、管理監督者を事業主と一体的な立場にある者として明確化するというの は、一体どういう意味なのか。そもそも明確化という意味があまりよくわからないとい うことが質問です。  次に裁量労働制の見直しについてですが、現行の裁量労働制は中小企業にとって非常 に使い勝手の悪い制度ですので、是非とも見直していただきたいと思っています。特に 企画業務型裁量労働制を導入する際に設置が義務づけられている労使委員会は、設置運 営に手間がかかるだけでなく、有効に機能していないと思っています。むしろ労使協定 で導入を可能にするなど、もっと中小企業で活用されるための方策を検討していただき たいと思っています。 ○原川委員 いまの渡邊委員の発言に関連するのですが、私も中小企業として申し上げ ますけれども、特に裁量労働制の企画業務型について、8頁の4つ目の○で書いていま すように、「企画業務型裁量労働制の導入要件について、労使の実質的な合意を担保した 上で、中小企業でもより活用されるための方策を検討してはどうか」とあります。私も いま渡邊委員が言われたように、導入要件である労使委員会が、中小企業にとっては非 常に大きなハードルになっているということがあります。それと対象範囲がかなり狭い という問題が言われています。そこで頑張る中小企業、努力する中小企業に対して、も う少し活用できるような制度にしていただきたいということをお願いしたいと思います。 ○西村分科会長 この点について労働側の委員の方、いかがですか。 ○田島委員 いま、中小企業で裁量労働制が導入できないというのは、制度が問題だと 提起されましたが、本当に制度の問題なのか。有効に活用されないのは中小企業にとっ て、それほど裁量労働制の必要性が高くないからではないか。現在、1年単位の変形労 働時間制という形で弾力的な運用というのはずいぶん進んでいますし、そういう制度で 十分だというのが現実問題だろうと思います。  労働組合がない所で労使委員会を作ろうと思えば、大手企業よりも中小企業のほうが、 はっきり言ってそんなに手間をかけなくて進められる制度だろうと思いますし、そうい う労使委員会でさえ、煩わしいから外せというのは全く納得いかない。本当に必要だっ たら労使委員会をきちっと作って制度に則って活用するというのは、いわゆる法の社会 では当たり前のことです。当たり前のことができないのに、そういう制度がおかしいか らもっと弾力化せよというのは全く納得いかないし、頑張る企業、努力する企業ではど こでもやっていることなのです。そういう所ほど裁量労働制を本当にやろうとなれば、 労使委員会を作るのは当然だろうと思います。  あと管理監督者の範囲の見直しで、そんな見直しは必要ないよということですが、最 近、不払残業等の残業が多いなかで、行政のデータがわかったら教えてください。不払 残業がたくさんあるなかで、いわゆる割増率をきちんと払っていない違反と、本来は時 間外手当は払わなければいけないのに、管理監督者の範囲を広げて、時間外手当を払わ なかったという所の分類ができているのかどうなのか。結果として、管理監督者の規定 があるにもかかわらず、それを拡大解釈している向きというのは、私たちが労働相談を しているとたくさんあります。その辺について、きちっと厳格に適用するというのは当 たり前のことであり、それをしっかりとやることがまず必要だと思います。その管理監 督者の範囲の見直しの問題について、お聞きしたいと思います。 ○大西監督課長 管理監督者の見直しについて御質問がありましたが、二つの点が書か れています。一つは、「労働条件の決定その他労務管理について事業主と一体的な立場に ある者」というのは、私どもの通達でこのように書かれていて、伝統的な管理監督者と いう範疇です。このほかに、いわゆる銀行等のスタッフ職という形で管理監督者に昭和 50年代から入ってきたものが二つあって、そういった結果、外縁部分で明確でない部分 があるということです。  そうした中で統計の数字ですが、業務統計になっている中では、不払いの中で割増賃 金の違反なのか、管理監督者とは本来違う人なのかというところについては統計があり ませんので、個別に調べる必要があると思います。私どもが監督している中で、これは 管理監督者ではないにもかかわらず、管理監督者に入っているというものについて厳正 に調べていくわけです。その趣旨が見直しの1つ目の○のところです。いわゆる本来的 な管理監督者というものについては誤解のないように、現在の通達の範囲を、例えば法 律に書くという形で明確にすることが必要ではないかということです。ここは幅を広げ るとか狭くするというよりは明確化するということで、本来、違う方はお引取りいただ くということです。  もう一つの管理監督をしていないスタッフ職については、前回、御議論いただいた自 律的な労働時間制度あるいは企画業務型裁量労働制度との関係で、管理監督者に置いて おくのがいいのか、あるいは、ここに分けて明確に位置付けておくのがいいのかという ことで、こちらのほうは範囲をどうするかという見直しの提起をしています。 ○田島委員 いまの監督課長の管理監督者の範囲については、労基法41条に係る通達で 昭和22年の基発17号、あるいは昭和63年の基発150号を、通達ではなくて法律に明記 したいという趣旨で理解してよろしいわけですね。 ○大西監督課長 伝統的なところは明記して、後半のスタッフ職のところはどのように するかということです。 ○田島委員 スタッフ職のところが、何でほかの所に移ろうとなるのですか。スタッフ 職でも管理監督者だから適用除外になっているわけですよね。それが別の所に移ろうと いうのはどういうことなのですか。 ○大西監督課長 そこのところが明確でない部分もあるので、管理監督者になる部分と、 あるいは自律的労働時間制又は企画業務型裁量労働制度との間で、切り分けをもう一度 見直してはいかがですかという御提案をしているわけです。 ○田島委員 もう一点、ここに書かれている自律的な労働時間制度と企画業務型裁量労 働制度の違いが、今まで論議していてもよくわからないのです。自律的な労働時間制度 と企画業務型裁量労働制度と、この違いというのは何なのですか。 ○大西監督課長 企画業務型裁量労働制度というのは、ご存じのとおり調査分析と企画 をする業務の範囲で区切っている型ということです。これはいまの法律になっています。 自律的労働時間制度のほうについては、7頁で前回御議論いただいているところですが、 私どもの提案の中では、「高付加価値の仕事を通じたより一層の自己実現や能力発揮を望 み、緩やかな管理の下で自律的な働き方をすることがふさわしい仕事に就く者」という ことです。どこが違うかと申しますと、労働時間の研究会の中で想定されていたのは、 管理監督者の手前に位置する者とか高度な技術・技能を持っている方ということで、業 務範囲とかで区切っていないという点で違っているのではないかと思います。 ○小山委員 管理監督者の範囲の見直しの問題で、この中の3番目の○に、「深夜業の割 増賃金に関する規定の適用を除外すること」という記載があります。管理監督者の労働 時間の把握をすれば、実態としてかなりの長時間労働になっているのではないか。管理 監督者といえども先ほど課長のお話にあったとおり、非常に幅が広い実態の中で経営側 と一体的なというよりは、一管理者として通常の従業員よりも長く働くという実態が、 むしろ見られるのではないか。それが労働災害という形で、この管理監督者のところに かなりしわ寄せされているのではないかと、前回、御提供いただいた資料からも明確に わかるわけです。それらの実態について厚生労働省として、こういう新たな除外措置を 設けようというのにあたり、どういう調査をし、どういう実態を把握しているのかをお 聞きしたいと思います。 ○大西監督課長 前回お出しした資料の調査結果を、まず厚生労働省としては把握して いるということです。いま小山委員が言われた中で二つの論点があって、事業主と一体 的な立場にある者として働いている人と、一労働者として働いている人があり、その一 労働者として働いている人はすべて管理監督者なのか、あるいは、本来管理監督者でな いはずの方が誤って入ってきているのか、そういう論点があると思います。本当の一労 働者であって管理監督者でない方であれば、お引取りいただくというのは明確化の1番 目の○です。  それと健康確保措置を講じた上で、深夜業の割増賃金に関する規定の適用を除外する ということは、本来、事業主と一体的な立場にある方であれば、いわゆる労働時間の適 用除外ということになっています。ではなぜ深夜業の割増賃金があるのかというと、そ れは健康に対する負担があるのではないかということからです。それを割増賃金という 形ではなく、健康確保措置が適正に講じられているという担保があれば、そういうよう な方向で実際に健康確保がなされるという道筋を付けることにより、適用除外するとい う考え方もあるのではないかという形の御提案です。  ですから、いまの制度の中で全部こうなるというわけではなく、当然お引取りいただ く方もあれば、きちんとしていただくこともあるという形で、明確化と見直しの両方が 入っているということです。 ○小山委員 いまのに関連して、とすれば明確化するにあたっては、もうちょっとどう 書くのかというのは、はっきりさせておかないといけないと思います。明確化させるの は必要なことだと思います。いまは非常に曖昧に管理職という扱いで時間管理がされな いという実態があるわけですから、伝統的な規定というのは、本当に自分で労働時間に ついて管理することができる立場を想定していたはずだと思うのです。ところが実態は そうではないとすれば、そういう実態に合わせた記載の仕方を明確にしていかないと、 今までの伝統的にと言われた書き方だけでは、区分が明確にならないのではないかと思 います。それが一点です。  前回、提供していただいた東京労働局の調査の結果についてですが、管理監督者の立 場にある方が、過重労働や健康障害を発生させた事業場に対する監督指導の結果として、 48名の被災者のうち、11名が管理監督者であったという報告をいただいたわけです。そ こにも勤務時間等を自己管理することができる者で工場長、店長、本社の部長等という ことで、この11名が記載されているわけです。  ですから、ここのところの健康確保措置というのは、ある意味では事後的であり、労 働時間が一体どういう実態にあって、そこをどう抑制するのかという具体的な策がなけ れば、体をこわしてからということに実態としてなりかねないのです。そのことについ ては管理監督者の範囲を明確にするとともに、管理監督者であれども労働時間の把握な り、その記録なりをきちっとしていかないと野放しの状態となり、野放しだけでなく見 えない世界になってしまうと実態がわからないということで、統計もデータも何もない ということになりかねないわけですから、むしろそういう労働時間の把握、一定の規制 的効果を持っている深夜労働についての割増賃金の規定については、継続して適用して いくべきだというふうに考えます。お考えがあればお聞かせいただきたいと思います。  特に健康問題で言えば、最近、厚生労働省が発表した脳・心臓疾患及び精神障害等に 関わる平成17年度の労災補償状況を見ても、前回出していただいたのと併せて、そのこ とが二重にこの管理監督者あるいは管理職と言われる人たちの労働実態のひどさという のが、明らかになっているのではないかと思います。改めて範囲を見直すとともに、そ の厳格な規定、これまでの深夜労働に対する適用を継続してやっていくべきだと考えま す。 ○新田委員 いま、小山委員が話されたのと変わらないのですが、これだけの法改正を しようというか見直そうという提起が、いま事務局の視点という形で出ているわけです が、現行法でやれることをどこまでやってきたのかということが、一度立ち止まってと いうか、きちんと考えてみないといけないのではないか。  例えば、いま管理監督者の話が出ているけれども、使用者側は今のままでいいのだと いう。だけど、ここにもあるように、一体的なものなのだということまで通達で出さざ るを得ないという曖昧さになっている。そういうことから言えば、管理監督者というの は何なのかということをもう一度きちんとする。そのことがあって、そして提起されて いる自律的な働き方をすることについて考えようということも、また考えられるかもし れないけれども、もっと曖昧な自律的な働き方ができる労働者を増やしていこうという ことになると、これは労災あるいは過労死予備軍をいっぱい作るようなものではないか。 そういう心配を私はしています。  そういう意味で経営者と一体的な者だけでなく、それだけの処遇を受けているとか、 もっと言えば自分で働くということをきちんとやっていける、判断できるのだというこ とを、きちんと確保することをまずやらなければいけない。そういうことを決めてはど うかというぐらいに思います。  そうでなければ、いま裁判でも出ていますが、結局、がんじがらめに縛られ、その店 を任されて管理職手当だとして出されているものが、それこそ大したことのないものを 出されて、それでひどい目になる。こういうのを救いようがないわけです。だから現行 法でどこまでできるのか、現行法によればどうなのかということを、もっとしっかりと 見た上で考えるべきです。そういう意味では、この項だけで言えば、管理監督者の範囲 をはっきりさせていくことは大変必要なことだと私も思っています。 ○小山委員 前回、東京労働局の資料の提供をいただいて、全国的な資料の整理をして いただけないかということで、お願いをしたわけですが、特に管理監督者の議論をする 上では欠かせないデータになるのではないかということで、お願いをしたわけです。そ れについてはどのような準備作業を進められているか、お聞きしたいと思います。 ○大西監督課長 いくつかございますが、最初の資料の件ですけれども、小山委員が言 われたのは労災の関係の資料ですね。 ○小山委員 そうです。 ○大西監督課長 それは管理職という区分があります。この中には管理監督者と、ただ 管理職と呼ばれている方と両方入っていて、これは個別に全数見ないとわかりませんの で、それは引き続き調べてみたいと考えています。また、その他の指摘事項で現在どう なっているか、あるいはどこを明確化するのかということですが、これは繰り返しにな る部分もありますけれども、8頁の管理監督者の範囲の見直しの1つ目の○については、 現在、通達でも言われていることを明確化するということで、例えば法律に上げていく ということが考えられると思います。また管理監督者であることを賃金台帳上明示する ということも、明確化の一つのアイデアではないかと思います。また健康確保措置は事 後措置ばかりであるという御指摘であったかと思いますが、例えば先の安衛法で導入さ れた面接指導をしっかり活用していくということで、事前に健康のチェックといったこ ともできるのではないかと思います。そういった措置を講じた上でどうするかという議 論になるのではないかと考えています。 ○西村分科会長 労働側から大分意見が出ましたが、いまの点についていかがですか。 ○秋田氏(紀陸委員代理) いまの深夜業の割増しのところで意見を言わせていただく とすれば、管理監督者は労働時間の適用が除外されているということがまずあります。 それなのに深夜の時間帯だけが適用されるというところが、若干無理があるのではない かと思います。管理監督者が朝から夜までずっと働いているという御指摘については、 健康確保措置というお話もございましたので、管理監督者の中には夕方から来て夜の管 理監督をする者もいると思います。その方は深夜の割増しが付き、そうではない昼の人 間は労働時間の適用が除外されているというところが、使用者側としては規定として実 務上、実態上、非常に矛盾があるのではないかというふうに思います。 ○平山委員 管理監督者のところですが、これはたぶん労務管理と一体になっているも のだと思いますけれども、仕事の指揮命令系統という側面と、一つ一つの仕事そのもの をどういう形で組織を組んで運営していくか。そういう具体的な業務の運営の仕方にか かってくる。たぶん組織の名称や括り方というのは、おそらくかつての組織のように部 があって課があって係があってという伝統的なものとは、相当に変わってきているとい うことだと思います。  先ほど渡邊委員から、いまので変更したり見直しをする必要はないのではないかとい うお話がありました。おそらく経営側でいまこの問題を考えれば、それぞれの実態に応 じたときに、指揮命令系統なり仕事の進め方、運営の仕方について管理する者と管理を 受ける者が、かなり妥当な仕切りで運営されていると実態的に認識しているということ だと思います。  伝統的な形で、例えば事業主との一体的な立場と言っても、たぶん労働条件の決定、 その他労務管理の一点だけではないだろうと思います。いくつかの視点があるでしょう。 先ほど言ったような観点から、多くの経営側は見直す必要はないと思っていると私も感 じています。ただし、もし見直すとするなら一律にはなかなか難しい。ある約束で世の 中は一律に切るわけにいきませんから、非常に個別具体的な問題ということになるのだ ろうなと思います。スタッフも、管理監督をしていないからスタッフ職だと。だけれど もプロジェクト的に仕事を進める局面はかつてに比べたらすごく多くなっている。その 中で指揮命令というのは業務でも労務管理でも発生するところですから、文章で読むと 労務管理の責任者だから、あるいは労務管理をしていないからスタッフ職だとすごく単 純に言えますが、実態は相当個別具体的な話になる。そこの妥当性というのを本当に法 で仕切れるのかどうかというのは、よほど慎重に議論する必要があると思います。 ○廣見委員 私、この管理監督者の範囲等の見直しについては、その前のひとつの大き な議論のポイントである、自律的労働時間制度の創設をどう考えるかということと深く 関わっているのではないかと思っています。自律的労働時間制度をどのようなものとし て、またその是非をどうするかという非常に大きな問題がありますが、私は基本的に今 までの流れの中を見ていくと、一定の必要性はあると思っています。ただ、それについ てはいろいろな前提条件の条件整備が必要ではないかと思っています。  と申しますのは、自律的労働時間制度そのものは、労側委員の皆さんが指摘しておら れるように自律的制度であるということから、非常に長時間労働につながっていく恐れ が内在的にあることは確かにあるわけです。しかし、それそのものは、かなり抑制的な ものとしてスタートさせることが基本ではないかと思っています。ただ、そこをいろい ろ議論し始めると、それそのものの議論になりますから、いまは自律的労働時間制度と いうものを考える時に、しかもそれがひとつの典型として管理監督者の一歩手前の人た ちというのが、一つのパターンとして想定されているという説明でもありますので、そ ういうことからすれば管理監督者というものは法律に今までも規定し、それなりに通達、 その他ではっきりさせる努力はされてきた。例えば金融機関の実態に即したかなりきめ 細かな通達等も出されているわけで、そういう努力はなされているわけですが、それに しても私は正直なところ、管理監督者の範囲の理解については問題のある実態があるこ とを心配しています。それは、いろいろ出された資料からも心配があるわけです。  そういう意味では、こういう機会に何らかの形で明確化する。管理監督者という概念 はそんなに大きく変わるものではないかもしれません。しかし、それをきちっとした形 で明確化し、通達その他でさらに細部を明らかにしていく。あまり画一的なことはそう 簡単にはできるものではないし、またやってはいけないのかもしれませんが、実態に即 したきめ細かな基準というものを設定し、より実態に即したものにしていく。あるいは 監督課長も言っておられるように、本来そうであるべきでない者が入っているとすれば、 当然それはきちっとしていかなければいけない。そういうようなものもひとつの前提条 件としてあるのではないか。  なぜなら、それは非常に近い層を捉えていく問題にもなるわけで、そういう面と、先 ほど来出ているような裁量労働制の問題の整理はどうしても出てきますから、管理監督 者の範囲の見直しは特に重要なものとして問題があるのかないのか。あるとすればどう いう実態なのか。そういう心配があるという前提で、ここはきちっと見直して一定の措 置を講ずることが是非必要なのではないかと思っています。 ○小山委員 管理監督者の定義というのは、私もよくわからないところがあるので教え ていただきたいのですが、その仕事の業務内容や実態で見るのか、あるいは企業の経営 者や取締役、役員に非常に近い企業全体の運営を司っていくような立場の人など、企業 の中の職階的、階層的なところから見るのか、そこの定義はどっちなのでしょうか。  大事なことは、どういう働く実態になっているのかということなのです。本当に会社 の役員とほぼ同じような立場でというのだったら分かるのですが、実態はそうではない ものですから、その辺の定義を改めてお聞きしたいのです。 ○大西監督課長 まず法律ですが、事業の種類にかかわらず管理監督の地位にある者と いうことで整理されています。これについて我が国では通常、いま言われたように職制 というのがとられています。この職制上の役付者のうち、例えば労働時間等の規制の枠 を超えて活動する。そういう要請をせざるを得ない重要な職務と責任を有している。あ るいは現実の勤務態様で労働時間等の規制に馴染まないような立場にいる方ということ で、管理監督者の概念が決まっているわけです。そうした場合、労働条件の決定、その 他、労務管理について事業主と一体的な立場にあるという整理です。ですから、この職 制だけで決められるわけではなくて、それは実態判断を伴うということです。 ○渡辺章委員 今までの行政通達に三つの判断基準があります。一つは勤務の要件で、 これは出退勤について自分の裁量が多く、就業規則上の始業、終業の時刻を適用されな いというか、自分で出退勤を判断するという勤務の要件です。二つ目は職務と責任の重 要性というか職務の要件です。三つ目はいま課長が言われなかった待遇の要件で、その 地位にふさわしい報酬を受けていることです。この基準はいろいろな裁判例の中でもほ ぼ支持されて、その基準に従って、訴訟になれば管理監督者かどうかということが判断 される。  いま、41条も管理監督の地位にある者というわけであって、仕事の内容だけで判断さ れるわけではない。そういうことで三つの基準を総合的に判断して、大切な労働時間の 規制を外していいものかどうかという点を考える。経営者と一体的な立場というのは、 全部を総合してそれに当たるという、いわば風呂敷のような考え方で、中身はその三つ の具体的な基準に即して判断していくというのが、今までの実際の処理の仕方ではない かと思います。まだ補足される公益委員の方がおられればしていただきたいのですが、 私の理解するところではそういうところです。 ○久野委員 私の理解する管理監督者の範囲というのは、最初のトラディション、事業 主と一体というのは、例えば資本を出している社長さんとその奥さんは管理監督者にな るのかなと理解しています。雇われていて管理監督を依頼されているような人は、管理 監督者と分けるというのを8頁に書いてあると解釈していますので、その辺でいいのか、 それとはまた違うのですか。 ○大西監督課長 日本の職制ですから、労働者で地位が上がっていって事業主と一体と なっている方と、そうでない管理監督の業務をしていないスタッフ職を分けるというこ とです。 ○久野委員 管理監督というのは、具体的にどういうことを言うのですか。賃金を決め るとかそういうことですか。 ○大西監督課長 例えば取締役に近い部長さんとか、そういう形で事業主と一体の立場 になるという範囲で区切っています。その具体的な判断基準というのは、先ほど渡辺委 員から御指摘いただいた三点ということで、私どもの通達で決まっているわけです。 ○久野委員 では必ずその三点に合致している人以外は、スタッフということになるわ けですね。 ○大西監督課長 その三点に合致している以外の人は、スタッフはスタッフの別の基準 になるわけですが、いま問題になっているのは、そうでない方で普通の労働時間管理を する労働者が、管理監督者のほうに入れられていることが問題になっているということ です。 ○久野委員 ではここにあるように賃金台帳とかで、きちんと明確にされたらいいので はないですかね。 ○小山委員 先ほど渡辺委員から三点の要件等の御説明をいただきましたし、いま実態 で言うと、普通は100人いたら2、3人が先ほど言った要件に当たるのではないかと私 は思うのですが、20〜30%の人が管理監督者になっているという事業所がいっぱいある わけです。ですから、そこのところは先ほど使用者側委員の方からは、いま、うまくい っているというようなお話がありましたけれども、実は残業代を払わない一つの道具に、 この管理監督者の適用除外というのがされているのではないか。そういうのが今の実態 だろうと思いますので、そこのところの区別は明確にするのと同時に、はっきりと書い たものにして法律に明記していかないと、通達だけでは駄目ですから、そこのところは 是非お願いをしたいと思います。  その上で、例えば店長、工場長、部長というクラスであっても、先ほど言ったような 労働災害の実例があるわけですし、そこのところの時間外労働、特に深夜労働等につい ては、きちっと継続した適用をしながら、抑制的効果をそこに持たせていくという役割 も是非、重視していただきたいと思います。 ○田島委員 もう一点、この管理監督者の範囲等の見直しの3つ目の○ですが、健康確 保措置を講じた上で深夜業云々とありますね。本当に労働時間問題を考えるときに健康 確保だけでいいのか。労基法32条の40時間とか8時間労働というのはどういうことか と言えば、単に健康問題だけではなくて、人間らしい文化的な生活というところではな いか。そこが抜け落ちてしまって、健康さえ害さなければ、ぎりぎりのところで働けば いいのかといったら、私はそんな問題ではないだろうと思います。そういう意味では今 回の労働契約法とか労働時間法制について、連合の委員で勉強会などを開きましたが、 ヨーロッパなどでは例えば休息時間制度というのがあって、平日には11時間、いわゆる 労働から労働の間に11時間を休みとして確保しなければいけないという制度を導入し ている国が多い。これは荒木先生に確認したいのですが、そういう形で単に健康確保と いう視点からの労働時間だけではなく、人間らしい、あるいは社会人として生活を踏ま えた形での基準づくりが必要ではないか。  先ほど廣見委員が言われた基準づくりというのは、健康問題からではなくて、やはり 労働時間をきちっとした規制の中でやっていくルールづくりというのが必要だろうと思 います。そういう意味では、この3つ目の○は厚生労働省の労働時間に対する考え方の 貧困さの表われではないかと思うのですが、いかがですか。 ○大西監督課長 ワークライフバランスという観点で、それは重要であるということに ついて別に異議を唱えるわけではないのですが、三つ目の○で書いてあるのは、管理監 督者というのは現在は32条の適用除外になっていますので、そこの点について別に新た に何かしようというわけではないわけです。こういう管理監督者というのは、そもそも 事業主と一体的な立場にあるということで、御自身のワークライフバランスは御自身で 考えていただくという整理のもとで、適用除外という効果はもう既にあって、そこで深 夜の割増賃金のところについて、どのようにすべきかというところの絞った議論になっ ています。そこのところに対して健康確保措置を代償で講ずるというのは、いかがです かという御提案というか、そういう記述になっているということです。前段の適用除外 の部分は今から別に新しく適用除外するのではなくて、今もそうなっているということ です。 ○田島委員 わかっています。 ○長谷川委員 文章はとてもきれいな健康確保措置を講じた上でとなっていますが、健 康確保措置というのはどういうことを指すのですか。 ○大西監督課長 これは先ほども御説明しましたが、予防的に健康をチェックしていく ということから、例えば安全衛生法の面接指導を、しっかりやっていただくということ が考えられるということです。 ○長谷川委員 この間改正になった安全衛生法の面接指導というのは、法律の改正のと きに1か月で100時間を超えて、2か月で努力で80時間というのですが、では管理監督 者の100時間とか80時間というのは、どうやって把握するのですか。 ○大西監督課長 安全衛生法の仕組みをそのまま持ってくるという趣旨ではなくて、そ ういう面接指導という手法を活用する。具体的に管理監督者であれば、自動的にそちら にやっていただくということも考えられるのではないかと思います。 ○長谷川委員 例えば私が管理監督者だとします。そのときに私の健康確保措置という のは、どうやって具体的にやるか教えてほしいのです。 ○大西監督課長 例えば定期的に何か月かに1回、面接をしていただくということが考 えられると思います。 ○長谷川委員 では管理監督者がいろいろなことにこだわらず、時間外の100時間とか 80時間とかにこだわらず、2か月に1遍とか3か月に1遍、自主的に面接指導を申し出 ていいという解釈ですか。 ○大西監督課長 2か月か3か月かについては御議論があると思いますが、ひとつの考 え方として、時間にかかわらず時期で何か月に1回というのもあると考えられます。 ○長谷川委員 そうすると管理監督者については、安全衛生法で言われている定期健康 診断及び今回の面接指導とは別途に、2か月に1遍とか3か月に一度、産業医との面接 指導をするということを、法律の中に書くという理解でよろしいのですか。 ○大西監督課長 そこの点は、法律のところに書くということについては御議論してい ただきたいと思うのですが、安全衛生法の80時間とか100時間ではなくて、期間で何か 月に1回という形の面接指導で、定期健康診断のほうは1年に1回ですので、これは自 動的にかかってくるということですから、そういうような手法があるのではないかとい う御提案だということです。 ○長谷川委員 定期健康診断は1年に1遍、特別検診が1年に2回となっていますが、 管理監督者については2か月に1遍健康診断をして、産業医の面接指導を行うと解釈し てよろしいのでしょうか。 ○大西監督課長 御意見としては、そういうのもあり得ると思いますが、そこはこの場 で御議論いただきたいと思います。 ○長谷川委員 私は、管理監督者の深夜業の割増賃金を適用除外にすることには反対で す。やはり夜働くというのは非常に負担がかかるわけですので、それに対して割増賃金 を払うのは当然だと思っていますので、ここを適用除外することには反対したいと思い ます。  それと管理監督者の明確化については、是非、法律の中できっちりと書いてほしいと 思っています。今日の議論でもおわかりのように、公益委員ですら解釈がかなり異なっ ているわけで、そういう意味ではコンメンタールだとかいろいろな行政指導や通達で書 かれている管理監督者について、先ほど渡辺委員から披露されたようなことについて、 きっちりと法律で明確化することが、職場における混乱を防ぐ意味ではとても重要なこ とではないかと思っています。  4つ目の○のスタッフ職について、「自律的労働時間制度や企画業務型裁量労働制の対 象とすることを明確に位置付けることが考えられないか」ということですが、企画業務 型裁量労働制というのは導入要件が決まっているわけですから、これは企画業務型裁量 労働制の要件について新たに設けるということなのかどうなのか、お聞きしたいと思い ます。なお、自律的労働時間制度については私は前回も反対だと言っていますので、こ こは全然考えていませんので、あえて申し上げたいと思います。 ○谷川委員 管理監督者の範囲について、明確化するということ自身はそれぞれの運用 でいいのだろうと思いますが、ただ、今日まで実績があることと、法律で明らかにする 部分と非常に労働実態というか、もっと言えば産業自体が非常に流動的な中で、この管 理者のあり方という部分もかなり多岐にわたり、あるいは流動性のある部分というのは かなりあるのだろうと思います。そういうのは基準の中で運用したほうが運用実態に合 うという部分もありますので、この辺は実際の現場の実態もよく踏まえていただいて、 法制化するなり基準化することを検討されたほうがいいのではないかと思います。 ○八野委員 実際に経営側または組合が運営していく中でも、管理監督者を法律で明確 にしていくことは、今後の企業運営を考えた上でも非常に重要なことなのではないか。 それが一つ、いま出てきている労務管理という中でのさまざまな労働条件を考えていっ た場合、またはワークライフバランスという観点で、私たちも組合員のことだけを言っ ているわけではなくて、そこで働いている従業員全体の中での長時間労働の問題、過労 死の問題、ワークライフバランスのことなど、それらを新たに考えていこうということ で言っているわけです。  ですから企業の管理的なもの、または指揮命令の中でやっていく管理職の位置付けと、 労基法上から、または労働時間等々の労務管理を考える上での管理監督者ということを、 この分科会でも明確にしてやっていかないと、ここの中でも議論が混在していると思い ますし、明確にしていかないと、ここの中でもコンセンサスがなかなか取れないと思い ます。いま管理監督者の範囲がきちんとなっていないという判断をとり、管理監督者と いうものを明確にしていくことは、今後、労働時間を考えていった時にも非常に重要に なってくるのではないかと思います。意見です。 ○山下委員 視点の中にある「事業主と一体的な立場にある者」という表現で、先ほど 渡辺委員が言われた三つの要件を聞くだけでも、ずいぶん範囲が違うなと個人的にも感 じますので、いまの意見と同じですけれども、もう一度見直すという作業は是非、やっ たほうがいいのではないかと思います。 ○新田委員 そこでもう一度原点というか、もともと考えなければいけないと思うのは、 1日8時間働いて賃金を払いますというのは大原則になるわけです。全部が同じ立場の 者ではないから、お前さんはこういう役割に就きなさい、この役割に就いた者について は8時間を超えていくら払うか、どういうふうに払うかは三六協定とかいろいろやるけ れども、その上で深夜働いているのに深夜の賃金を払わないように適用除外しますよと いう、大変なことを決めようとしているのは、どんな理由があるからなのかということ を元に戻って考える。そこはきちんとしておかないと、何か安易に「もう時代が変わっ ているのだ、働き方が変わっているのだ、意識が違うのだ」というふうなことで、労働 に対する報酬というものを、そんなふうなことで考えていっていいのかというのは、私 はものすごく疑問を持っています。  いちばん元にある考えから、どういうふうにはみ出ていって、そこをどんなふうに許 容していくのか。お互いにいいだろう、いや、それは駄目だというふうなところを、ど う決めるのかということが、もともとはどこにあるのかはっきりさせないと、何か本当 に曖昧になってきているのではないか。私はそれを大変心配しているわけです。そうい う意味ではっきりさせるということが、この段階で大変必要なことではないかと思って います。 ○松井審議官 はっきりさせるということについては、十分周知していないということ がよく分かったのですが、通達でこの解釈を決めているということで、どこまで決めて あるか御紹介することで役立てていただきたいと思います。監督または管理の地位にあ る者の範囲について通達上は、「一般的には部長、工場長等労働条件の決定その他労務管 理について経営者と一体的な立場にある者の意であり」というのを基本にして、次のセ クションですが、「法所定の割増賃金を支払うべきことは、すべての労働者に共通する基 本原則であり、企業が人事管理上あるいは営業政策上の必要等から任命する職制上の役 付者であればすべてが管理監督者として例外的取扱いが認められるものではないこと」 と解釈として書いています。  その上で、この適用除外の趣旨として、「これらの職制上の役付者のうち、労働時間、 休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動することが要請されざるを得ない、重要な 職務と責任を有し、現実の勤務態様も、労働時間等の規制になじまないような立場にあ る者に限って管理監督者として法第41条による適用の除外が認められる趣旨であるこ と。従って、その範囲はその限りに、限定しなければならないものであること」と書い ています。  そして具体的な実態に基づく判断という項を立てていて、「かかる資格及び職位の名称 にとらわれることなく、職務内容、責任と権限、勤務態様に着目する必要があること」 ということです。いま言われたようなことは、実は通達では概ね書いてあるわけです。 これをいわば再確認するとともに、スタッフ職などが入ってくるなかで一定の修正を加 えていますが、それをもう少し明確に最小限やることが必要ではないかというのが、こ の明確化の趣旨です。  それに加えて、いま言った解釈が法律の運用として通達でやられていますから、御意 見の中にあるように、その一部というか基本部分を法令で明確にするということもあり ましょうし、それが労使の、先ほど言われた弾力的に運用する必要があろうということ と、いまの運用が乱れているところについては、しっかりしたものにしなければいけな いという要請を踏まえて、どういったレベルで明確化するかということを是非議論して いただければ、もう少し議論は詰まるのではないかと思います。通達は、少なくともそ こまで既に書いてあります。 ○岩出委員 一点だけ、今回、深夜業の割増しがなくなると、つまり恒常的にある程度 の深夜業が行われることが前提とされた改正だと思われますので、現行法体系の、例え ば労働安全衛生法66条の2の深夜業務を行う者の自発的健康診断ですが、これが50条 の2で月平均4回ですか。ですから月に4回でもやれば自発的健康診断の対象になるわ けですから、現行の解釈としても、労働安全衛生法上の自発的健康診断の対象になると いう解釈をとってよろしいのでしょうか。確認したいと思います。もちろん、このまま 通ればですけれども。 ○大西監督課長 はい、そうです。 ○田島委員 元へ戻って、いま、松井審議官が読まれた基発150号の通達は、ここに私 自身も持っているのですが、先ほど長谷川委員が質問したことに対して全く答えていな いのです。あの質問というのは、ものすごく重要なことだろうと思うのです。いまの通 達の中で、スタッフ職の扱いについて書いていて、きちんとした処遇や役割が、管理監 督者と一緒だったら、スタッフ職もその管理監督者と同様に取り扱いなさいとなってい ます。企画業務型裁量労働制がすでにあることから、スタッフ職については管理監督者 として扱うか企画業務型裁量労働制で扱うかは現在でもできるはずです。4つ目の○で 新たにこういうように書かれているというのは、今回の労働時間法制について、企画業 務型裁量労働制も何らかの変更や別のことを考えているのかという質問に対して、何ら お答えになっていない。そこが一つのポイントだろうと思うのですが、いかがなもので しょうか。あえて、ここに企画業務型裁量労働制と書かれているのはどういう意味です か。 ○松井審議官 通達との関係だけ整理して申し上げますと、先ほど読まれた通達は、法 制定当時にはあまり見られなかった、いわゆるスタッフ職が云々と書いてあり、そのス タッフが企業内における処遇の程度等によっては、管理監督者と同様に取扱い云々とい うことで、スタッフ職はいろいろいますが、管理監督者として扱っていいスタッフ職も いますと書いています。  ここはその裏返しで見ていただくとわかりますが、管理監督をしていないスタッフ職、 管理監督者にならない者についてと整理して議論をしたいということを申し上げている と、御理解いただきたいと思います。スタッフ職は広いわけで、そういうものが出てき ている中で。 ○田島委員 ただ、あえてここに企画業務型裁量労働制というのは。 ○松井審議官 ですから、どこにもいま入っていない可能性がある部分について議論を していただけないか。スタッフ職で管理監督者に当たる者は、こうこうでやりましょう と書いておりまして、そうでない部分もあるので、スタッフ職だからといって、一律に 議論をするのではなくて、よく分析して、管理監督者とすべき者と、そうでない方がい るとすると、その方々、スタッフ職は例えば自律的、あるいは企画ということはできな いでしょうかと、区分けしているわけです。いまの通達の関係を申し上げました。そう いう議論を展開していただきたいということです。 ○長谷川委員 だって管理監督である者を、現在の基準法と通達で管理監督者の地位に ある者とはこういう者ですよと、ずっと縷々書いているわけです。そういう者であれば、 管理監督の地位にある者なのです。それ以外の者はどこに当てはまるかは、それはそれ ぞれでしょう。例えばその人が本当の通常の労働者で、割増賃金を払う労働者であった かもしれない。そうしたら割増賃金を払えばいい話です。企画業務型裁量労働制が適用 になる働き方であれば、それは企画業務型裁量労働制の労働者である。それなのに、ス タッフ職が、なぜ企画業務型裁量労働制のところにそのまま当てはめられるのか、自律 的労働時間制度にそのまま当てはめられるのか、あまりにも理論的飛躍があり、私の頭 脳では理解できないということを申し上げているのです。 ○松井審議官 御意見としてはわかりますが、問題提起をもう一度申し上げます。スタ ッフ職という括りで束ねられている労働者群のうち、すでに管理監督者と同等に扱うと いう範疇で整理された方もおります。そうされていない方がいる中で、さて、自律的労 働時間制度の提案とか、企画業務型裁量労働制がありますので、そういったものの対象 にすることを明確に位置付けるということは、議論できないでしょうか、考えられない でしょうかという提案です。しろとはいっておりませんので、是非そこで議論をしてい ただきたい。混同しないでいただきたい。管理監督者でスタッフ職が管理監督者である という者を引き出してやろうというのではなくて、そういう整理ができていない方につ いて未分化だからどうしましょうかと、提案申し上げていると理解いただきたいという ことです。 ○秋田氏(紀陸委員代理) 管理監督者のいろいろな条件の中に、時間外手当が支給さ れないので、それ相応の賃金の待遇があるという要素があると思うのです。いま各企業 の実態はばらばらです。実態に応じて使用者としてはやっていただきたいのですが、も しそのグレーな部分の管理監督者を明確化して管理監督者ではないと仮になったときに、 その方は賃金の中に時間外部分が払われないから、賃金をその分高くもらっているとい う実態があるわけですが、そうすると、今度時間管理をして残業を払わなければいけな いのですから、基準内賃金を下げてもよろしいのですかという、そういうことになって きます。必然的に、理論上は別として、実務上はそういう問題が起きるのではないかと 思うのです。 ○松井審議官 御意見としてはわかります。この場合はどう考えるかを聞いていただけ ればと思います。 ○島田委員 それまで言い出すと大変なことになるのですが、それは企業によってやり 方は違うわけです。役職手当として基本給とは別になっているとかいろいろな賃金体系 があるでしょう。しかし、基本から考えたら、これは明確化することを皆さんが認めら れているならば、まずそこをはっきりした上で、それが不利益変更なのかを含めて考え るしかないです。でも基準法である以上は、そこを明確にするのだったらしましょうと いう合意だけあって、やるのがいちばんです。基本はその後だと思うのです。 ○平山委員 管理監督者の範囲はこれを明確化するしないということ、これも議論があ りますけれど、4点目のスタッフ職のところは、先ほど松井審議官がおっしゃることは、 実態とそれぞれの持っている仕事の中身で、たぶん自律的労働時間制度にしろ、企画業 務型にしろ、要件があるはずです。それは仕事の中身であったり、処遇であったりと条 件がたぶんあるのです。  実態的にその辺を整理していこうではないかということについては、十分議論をした ほうがいいテーマではないかと思います。ここが自律的労働時間制度と対になっている のかどうかというところは、これからの議論だとは思いますが、実態も見て、その仕事 の要件、あるいは処遇などいくつかの観点はあるでしょうから、意味のある議論だと思 います。 ○山下委員 ただし、みんながわかりやすいように、いまの労働者がどういう制度でど ういう括りになっているかみたいな、図解みたいなものを作っていただいて、どこが審 議官がおっしゃっている未分化のスタッフ職なのかというところを取り出していただく。 そしてそれぞれのいまの制度に関して、どういう要件だからこのようなところに定義さ れていますというような、何か表みたいなものでも作っていただけると、それを基にみ んなで議論ができるのではないかと思います。 ○島田委員 単純なことで、スタッフ職というのは結局何なのですか。いま勝手にスタ ッフ、スタッフと使っていますが、それは部下を持たない管理者という意味なのですか。 ○松井審議官 通達もそこはわかっていないものですから、先ほど申し上げた法制定当 時にはあまり見られなかったいわゆるスタッフ職という、先ほど平山委員が言われたよ うに実態分析ができていない中で、皆さんがこれがスタッフ職だと呼ばれるわけです。 そこをしっかり解明して、どのように分類するかという問題提起だと考えていただけれ ばいいと思います。 ○渡邊佳英委員 この議論はエンドレスで、お互いに全部立場が違ってくると思うので す。いまの世の中というのは、いままでですと部長がいて、課長がいて、係長がいると いうピラミッド型になっていたかと思うのですが、いまはかなりそのピラミッドが崩れ てきています。いかに情報を短く伝達していくかということで、ほとんど3段階くらい になってきていると思います。そのときの管理監督者というのは何か。ますます平たく なってくると思うのです。ですから、こういう議論をやっていいのかどうかというのが、 なかなか難しい。この後、数年経つと、ますます管理監督者の定義は違ってくるのでは ないかと思うので、その辺のところをどう思われるかも含めてお願いします。 ○田島委員 したがって現在もこうやって通達が出されているにもかかわらず、さまざ まな理解がある中では、管理監督者というのはきちんと明確化すべき事項で、これを曖 昧にしておいて、本来的には管理監督者でないのに、あなたは管理監督者だということ で、労働時間の適用除外をさせられている、裁判で争っている事例も、私どもは聞いて います。そういう意味では、これは労使とも一致して明確化すべきだという課題だと思 います。それをしないと駄目です。審議会の委員というのは労働基準法をきちんと審議 するのだから、本来的にはきちんと勉強してくるのが前提のはずなのに、この通達はど うなっていますかという論議というのは、少し残念です。 ○長谷川委員 ただ、ここで管理監督者の範囲の見直しの○のところで、明確化するこ ととしてはどうかというのが出てきた背景の中には、管理監督者の範囲が昔よりも広が ったということがあります。だから私も自分の職場で、昔だったらこのくらいの地位の 人が管理監督者のはずはないと思う人たちも、管理監督者になっているのです。だから、 私はそういうときに、割増賃金を払わない労働者とすぐ言うのですが、そういう人たち が広がっていったことは事実です。それについてきちんと管理監督者の地位にある者と いうのをある意味で、新しく作るわけではないけれども、いままでグチャグチャと通達 でなっているところを、もう少しきちんとしましょうということは、労使にとっては幸 せだと思うのです。  Aという事業所ではこうで、Bという事業所ではこうで、Cという事業所ではこうで となるよりは、お互いにそれは明確化したほうが紛争がなくて幸せなことなので、明確 化することは必要なのではないか。新しいものを作ろうというわけではないわけですか ら。  ただ、いちばん最後の○のスタッフ職ですが、私から見るとそれは管理監督者ではな いと思うのです。そこについては一気に自律的労働時間制度と企画業務型裁量労働制の 対象とするとなっていますが、自律的労働時間制度は私は導入すべきではないというこ とで、これは考えられない。ただ企画業務型裁量労働制はもともと適用要件がきちんと 決まっているわけですから、それに基づいて対象者であれば対象にすればいい話だし、 その対象者にならないのならば、それは対象者ではないわけですから、そうだとすると 割増賃金を払う労働者で扱うしかないのだと思うのです。そこは法律に従って対応すれ ばいいのではないかと思います。  次の現行裁量労働制の見直しで、事務局に質問しようと思っていたら、使側の委員の 方から、労使の実質的な合意を担保した上で中小企業でもより活用されるための方策を 検討してはどうかとか、労使委員会は少しきついという話だとか、範囲が狭いという話 が出ました。中小企業が頑張っていることについては私も敬意を表するのですが、だか らといって、企画業務型裁量労働制の導入に労使委員会がないというのは、これは問題 だと思うのです。みなし労働時間制を使うわけですから、みなすということについては やはり労使できちんと議論をしないと、本来は労働時間は管理されて、それで8時間を 超えた者については割増賃金を払うという制度なのに、企画業務型裁量労働制のときに は8時間働いたとみなすとか、9時間働いたとみなすわけですから、それは労使委員会 がなければ無理だと思うのです。  使用者側は意見が分かれることはないわけですが、やはり使用者と労働者の複数の委 員で構成する委員会は必要なのではないか。企画業務型裁量労働制を導入したところで は、労使委員会できちんと話し合っているので、中小だけこれをなくすというのは、少 しおかしいと思います。いろいろな労働時間の適用が、ある意味で事業所規模によって そのように差別化することが本当に労働者にとって幸せかどうかというのは、もう少し 検討する必要があるのではないかと思います。  対象の範囲ですが、これも広げろということなのですが、これも本当に広げていいの かどうなのか。労働時間法制の変遷を見ていくと、この何年間かは労働時間は非常に弾 力化されてきたことが分かります。各種の変形制や、それとフレックスもあるし、企画 型裁量もあるし、専門型裁量もあるし、事業場外みなしもあるし、結構いっぱい労働時 間は弾力化も規制緩和もされているのだと思うのです。それ以外に、新しい制度を作る のが本当に必要なのかどうかというのを、使側の皆さんに聞きたいのです。私は、本当 に必要かどうかというのは疑わしいという感じがするのです。したがって、これを中小 のところと、中小以外の企業とに分けるという考え方については問題があると思います。 ○西村分科会長 だいぶ意見が出ましたが、ほかにいかがですか。 ○島田委員 裁量労働に入ったから言わないといけないのですが、いま長谷川委員が言 ったことに尽きるのかもしれません。いま書かれているこの4つの○の3つ目は、要す るに苦情処理や労使委員会で職場の働き方の実態について話し合いができている前提で の書き方なのです。性善説に立った書き方といえばいいのでしょうか。実質的な話し合 いがあるからうまくいっているとの情報が出たときには、改善できるようにしましょう。 これは普通当然やらなければいけない話です。もともと作ったときに、そういう苦情が 出たら、きちんと対処しましょうということだから、今回わざわざ書き直す話ではない と思います。その中で、特にみなし労働時間の設定について、労働時間を管理していな いから、たぶんこう書かれたのだと思うのです。本当だったら9時間に設定したけれど も、11時間だという部分を言ったら、それは労働時間を管理しているのだから、裁量型 ではないと言われるから、そちらは現実的にはそう書いたのだと思うのです。  ただ、疲労の状況、苦情処理の結果を踏まえて改善を図ることについてはどうか。使 用者側は職場実態を知っていなければならない話なのだから、こういう書き方ではなく て、本来は常に何年か、例えば、2年に一遍実労働時間計測をしなければいけない。使 用者側から言ったら、あるいは健康管理からいったら管理職であろうが、労働時間管理 を受けない人についても健康管理についても本来は見ておかなければいけないというの が通達上出ています。基本的には過労していないかどうか、時間を管理していないけれ ども、健康状態はどうか、把握しなさいというのがあります。そういう意味からいった ときに、「改善を図ることとしてはどうか」ではなくて、「改善を図らなければならない」 のです。そういう委員会が実質的にきちんとできていますというのが本来であって、こ こに書くということは、できていないからやろうと書いたのでしょうか。つまり、現実 問題として労使委員会は機能していないと。要するに、最初のスタートだけきちんとし た労使委員会をやって、あとの苦情処理も含めて何年間か経ったときに、もう何もでき ていない。だからこれを書かれたのでしょうか。いや、機能はしているけれども、問題 あるところを変えていないから書くのだと、いい方向に書きましょうという意味なのか、 この辺がわからないです。  私たちからいうと、これは労使委員会があって、苦情処理がきちんと機能していたら、 これは労使がある限りはきちんとしなければいけないし、労働組合がないところであっ ても、本来はそれができるということで裁量型労働は認めたはずなので、それがないと いうこと自身おかしいと思うのです。 ○大西監督課長 苦情処理のところについてはアンケート調査の結果、十分機能してい るところと、やや不十分なところがあったということで、過度の追加指示があって苦情 が多いということがありました。そういう苦情が多いということは、ある意味その苦情 処理は有効に機能していますが、それはどういう形で跳ね返るのかというところで、こ こで提案しているのが、個人が苦情を言ったらその個人の問題として処理をする手法が 一つあるのですが、そのほかに、個人が苦情を言ってもその苦情が二つ三つ重なったら、 その仕組み自体をもう一回見直していくというのが、3つ目の○で、みなし労働時間の 設定で、苦情の結果がいくつかあったら、制度自体の改善も図る機能を付け加えていく のはいかがでしょうかという提案です。 ○秋田氏(紀陸委員代理) 裁量労働制の2つ目の○のところで、個別の労働者の同意 を要件にすると書いてあるのですが、同じ専門業務をしている人が何人かいて、本人が いやだと言った人だけが時間管理をして、ほかの人は裁量労働になるというのは、実際 はあまりあり得ないような気がするのです。そういう意味ではなくて、この仕事は裁量 労働で、同意しなければほかの業務がありますと、ここはそういう意味なのでしょうか。 ○大西監督課長 両方あり得ると思います。要するに専門業務型裁量労働制に、普通最 初に結ぶときに、個別の同意を認めてはいかがか。これは企画業務型の裁量労働制のと ころで類似の要件があるので、それと同じように処理してはいかがでしょうかというこ とです。 ○松井審議官 現行の裁量労働制に戻るのですが、現行法の規定、専門業務型裁量労働 制は要件として、当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定などに関し、使用者が具体 的な指示をすることが困難なものとして労働省令で定める業務のうち、使用者がその中 から労働者に就かせることとする業務が見直しの対象になるという規定です。  そこで、後半のほうからいくと、いきなりその省令の中から使用者がただちに就かせ ることとする業務とするのではなくて、その前に一回、労働者の同意というのを噛ませ るのはどうかというのが二つ目のアイデアです。その前の苦情処理等に関しては、いま 省令で定められている業務があり、その中で実際に運用が行われてきています。そこで 苦情処理などをやってきて、いろいろな問題の集積があるのではないかとか、あるいは 過度な指示があったという事実があるのではないか。そうすると、この要件で過度の指 示がないと言っていますから、そういった視点から、例えばその対象を省令レベルで削 ることもあってもいいのではないか。つまり、いまある要件を理念的に考えているわけ です。そういうものを省令指定して選べる。だけど実際の運用上どうも仕事の性格が変 わってきて、具体的な指示があれば、そういうことを見直す必要はないでしょうかとい うことでやっていますから、制度を導入したときに完結したものでないという、そこか ら入っている。つまり、省令に落としているということはそういう部分があるのです。 運用を見ながらやらなければいけない。  それと同じようなところは、みなし労働時間の設定のところにもあり、みなし労働時 間制全体について、いまある運用などをよく見て、本当に本来の趣旨どおりにあるかど うかをここで改めて議論していただいて、そういうものの適用範囲を見直すことをやっ てはどうでしょうか。いやいや、それで十分で、いま健全に問題なく動いているのであ れば、直す必要はありませんし、お互いに問題があるかなというのであれば、そこの部 分を見直すという作業はできないでしょうかというぐらいの問題意識です。 ○渡辺章委員 苦情処理というのは要するに苦情の処理で、見直しというのは制度を変 えることでしょう。それはどういう関係になるのですか。専門業務型裁量労働制は労使 委員会ではなくて労使協定ですから、いま結ばれている労使協定そのものを修正しなけ ればならないところまでを見直しと言っているのか。苦情処理というのは現行制度の中 で出てきた苦情を個別的に処理するという問題なのですが、御説明が少しわかりません。 ○松井審議官 後半のほうはそのとおりですが、前半の苦情処理措置の改善というのは、 ここに至る前の研究会などの報告の中で、苦情処理をすることをコンセプトで裁量労働 制に取り込んでいるのです。その運用の中で、苦情処理が個別具体的な苦情を個々に措 置することを苦情処理と観念するのか、いろいろな要求を聞いて、それを制度として一 括して事業場内の管理を直すことをむしろ苦情処理として整理するほうがいいのではな いかという議論があったりしたものなので、この苦情処理の措置を改める余地があるか どうかという意味もあります。 ○渡辺章委員 苦情処理とは何か、労使が合議することではなくて、法律上は使用者が 措置するということになっているのです。 ○松井審議官 そうです。だから、それで個別対応なのか、いろいろなものを受けてそ れを発生させる根っこを断つ、制度そのものを直すことまで苦情処理の措置と考えるの はどうでしょうか、という議論があったので、それをここで改めてやっていただけない かというぐらいのもので、それを改善と称しています。 ○渡辺章委員 少し頭をすっきりしたいので。そうすると、現行制度は苦情処理という のは使用者が措置することになっているけれども、そこに何か労働者代表の意見も含ま せて、使用者だけの措置ではない、労使共同の何かのシステムにしたほうが良いという 意味ですか。 ○松井審議官 そういう御意見もあります。 ○渡辺章委員 いやいや、御意見ではなくて審議官のいまの説明です。 ○松井審議官 それはいま言った三種類の意見を議論していただきたくて並べています。 いま言われたように、使用者の責任を果たすためによく聞いて制度を直す。意見を聞か ずに、いろいろ苦情があってたまっていきますから、ポイント制度にしてこれはかなわ ないと、事業主が直す。それから個別対応して個々の問題を直すというのでも苦情処理 です。それぐらいの幅があるのですが、この苦情処理の措置をどのように意義づけるの がいいのでしょうか。実は制度設計もそこまで厳密にぎりぎりやっていないので、こう いったみなし労働制をしっかりしたものにするときに、その扱いをもう少し、ここでは 改善という言葉で言っていますが、改善する余地はないでしょうかというぐらいの問題 意識なのです。 ○原川委員 いままで私が最初に中小企業も裁量労働制を活用できるようにという発言 をしたことに対して御意見がありましたが、私は別に中小企業が裁量労働制を導入する 資格がない、そういう素地ができていないのにそういうことをやろうとする、また制度 のせいにして導入できないでいるということを言うつもりは毛頭ありません。また話合 いをせずに導入を認めろということを言うつもりもありません。この導入については労 使委員会ということになっていますが、別に労使委員会をやめてしまえとそれだけを言 っているのではなく、中小企業の実態を見て、労使協定でもできるような選択、いろい ろな話合いがありますから、その中で選択してできるような形にできないか。あるいは 企画立案、調査分析という範囲が、現場からはかなり狭くて厳格だというような指摘も あるので、そこはいい加減にやるという意味ではなく、もう少し業務の幅を広げること はできないのか、という発言をしたわけです。  中小企業の場合には、いろいろ組織的な面で十分に大企業のような対応力がないとい うところもありますが、そういうことを言っていたのでは、裁量労働という制度を導入 してもうまくいかないと思います。したがって、法律をしっかり守ってやることは前提 だと思っていますが、実態として、いまあまり採用されていない。もちろん活用したい という所は少なからずあるのですが、実態としては浸透していない。これからというこ とを考えると、これから新しい働き方については積極的に中小企業も大企業と同じよう なチャンスを活かしていくということをしていかなければ、企業としての将来はないと 考えますので、そういった点で中小企業にも配慮をすべきだということを申し上げたわ けです。 ○西村分科会長 ほかに御意見がなければ、この点についてはこれで一応終わらせてい ただきます。今日は前回までの分科会での議論を踏まえ、資料No.2、「労働契約法制及び 労働時間法制の在り方について」というものを用意してもらっています。時間が30分足 らずですから、その範囲内で説明をお願いいたします。 ○大西監督課長 それでは資料No.2について説明します。「労働契約法制及び労働時間法 制の在り方について」ということで、前回までの御議論を踏まえて、資料No.1を加筆修 正したものです。労働時間の部分は資料の11頁に、今日の御議論を踏まえて、次回まで に補充させていただきたいと考えております。本日は前のほうの労働契約法制の部分に ついて、説明します。  第1の「検討の趣旨」の部分です。変更点だけを簡潔に説明します。第2パラグラフ のところで、「予測可能性が低い状況にある」という文章が前にあって、読みにくいとい うことでしたので、これは修正しました。  また、第4パラグラフでは1番目の・のところで、労使自治の観点ということで「自 主的な決定」という文言を追加しました。第5パラグラフは4行追加しました。  第2の「検討の方向」のところ、労働契約法の総則事項という形です。(1)は分科会の 議論により、労働契約は労使の合意により締結、変更されるべきという御意見があり、 それを踏まえて修文させていただきました。  2頁の(2)です。「合意に資するよう、使用者は契約内容について情報を提供し」という こと、これも分科会の御意見を踏まえて修正しました。(5)の部分については、何をどの ように考慮すべきかという御意見がありましたので、「雇用形態にかかわらずその雇用の 実態に応じ、その労働条件について均衡を考慮したものとなるようにする」という表現 に改めました。(6)については分科会の御意見を踏まえ、文章を2行追加しました。  次に、「就業規則で定める労働条件と労働契約の関係等の明確化」の部分です。基本的 な考え方の部分については、労働者及び使用者の実質的に対等な立場における合意に基 づき締結される労働契約と、集団的労働協約、あるいは就業規則の関係について、分科 会の議論を踏まえて整理したものです。  (1)です。これは三つの点で変更があります。一つは使用者が労働基準法を遵守して定 めた就業規則がある場合ということで、他の法律をきちんと守っていただいていること が一つです。個別の労働契約との関係では、個別に労働契約で労働条件を定める部分以 外についてはということで、そこの切り分けを明確にしました。また、就業規則の中身 についても、就業規則に定める労働条件による旨の合意が成立しているものと推定する ということで、その三点について修正をしてあります。  (2)も労働契約法ができればそちらに移行するという形で修正しています。(3)は(1)と同 様の修正を加えた上で、「その変更によって労働者が被る不利益の程度、その変更の必要 性、変更後の就業規則の内容、変更に係る協議の状況その他の事情に照らして、その労 働条件に係る就業規則の変更が合理的なものであるときは、個別に労働契約で労働条件 を定める部分以外については、個別の労働者と使用者との間に、変更後の就業規則に定 める労働条件による旨の合意があるものと推定する」ということで、四つの考慮要素に ついて、明確に書き出しています。  (4)、(5)は事業場に過半数組合がある場合ですが、こちらについては、(4)の2行目にあ るように、当該事業場の労働者の見解を求めた過半数組合、これは公正な労働者の代表 ということで、合意している場合には、上記(3)の合意があるものと推定するということ を、表現ぶりがわかりにくいという御指摘を踏まえて、そのように書き直しました。但 し書では、労働者がその就業規則の変更が不合理なものであることの反証を行った場合 には、この推定は覆されるということで、これも御議論、質問を踏まえて書き直したと ころです。(5)の特別多数労働組合については、これも御議論を踏まえて、慎重に検討す るというように直してあります。  (6)、(7)、(8)、(9)については事業場に過半数組合がない場合ということで、労使委員会 のことも含めて記述していた部分ですが、この中においては、過半数代表者のところを、 労働者の代表としてどのように考えていくのか、という御議論がありましたので、(6)で、 基本的な考え方で、就業規則の変更等と労働契約の関係については、事業場に過半数組 合がない場合についても明らかにしておく必要がある。このため、使用者が事業場の労 働者を代表する者との間で合意したときは、上記(4)の過半数組合との間で合意したとき に準ずる法的効果を与えることについて検討すると書いています。ここでいう「使用者 が事業場の労働者を代表する者との間で合意したときは」というのは、3頁の1行目に 書いてある「変更に係る協議の状況」というところに代入されて、その合理性の判断の ところに戻っていくということで書いているわけです。  (7)です。上記(6)の検討を行う前提として、労働基準法の過半数代表者の選出手続等に ついて、現在省令で書いてあるわけですが、こういう選出要件の明確化をするというこ とで、具体的には注の1ということで3頁に書いてあります。そのような手続を経て選 出された複数の代表する者についても、事業場の労働者を代表する者として認めるとい うことについて検討してはどうかということです。  (8)で、その上で、使用者が、就業規則の作成・変更をするに当たって上記(7)により事 業場のすべての労働者を適正に代表する者を複数選出した上で、それらの者との間で合 意した場合には、先ほども申し上げた(3)のところで、変更に係る協議の状況のところに 代入して、(4)に準ずる法的効果を与えるということについて、検討をするのはいかがで しょうかと。  (9)です。複数の代表との合意について、労使委員会の決議との関係を代替的にすると いうことも検討するという形で、ここのところは構成の順番を検討の視点とは逆にした という形で、分科会での御審議を踏まえて変えたわけです。(10)と(11)は場所が移動してい ます。  「重要な労働条件に係るルールの明確化」のところでは、書面と法的効果については、 @、A、Bで分けて書いています。@の自律的労働にふさわしい制度については、書面 による合意が効力要件になるという趣旨。Aは出向、転勤の場合には、書面による明示、 説明も必要ではないでしょうか。これは効力要件ではありません。Bについては、転籍 の場合も書面による明示・説明が必要ではないか。書面は効力要件ではありませんが、 後ほど書く転籍の場合には、労働者の個別の承諾がないと無効であるということです。  5頁です。これは文言の整理が主です。(4)の@、A、Bについては基本的には文言の 整理で、Cのところは、出向に関する一般原則で、出向させることができる場合の話で す。2番目のパラグラフの「ここで」と書いてあるところについては、検討の視点にも あった内容ですが、ここの部分については労働者の個別の承諾を要せずして命ずること ができるというのを切り出した上で、その他の部分については、いわゆる従来の判例法 理に従って判断されるということです。また、3番目のパラグラフについては、出向に 関する権利濫用法理についても補充して書き出しています。ここは分科会でいろいろ御 議論があったところを踏まえて、このようになりました。  安全配慮義務の部分については、これも分科会での議論があって、ここに総則の部分 以外に書くのがいいのではないかということで、書き足したわけです。懲戒の部分につ いては文言の整理をしております。  労働条件の変更に係るルールのところについては、これも有期労働契約について、入 るのかどうかがあり、また、どのような労働条件なのかという御議論がありましたので、 個別の労働契約により決定されていた労働条件について、ということを書き足したわけ です。また、これについてはどのような解決方策があるのかということで、労働審判制 度や個別労働関係紛争解決制度というようないろいろなものがあります。これはすでに 御承知のとおり、いわゆる権利紛争になるかどうかで裁判にいけるかどうかということ が議論になるわけです。権利紛争にいく制度を(8)で作った場合には労働審判にいって、 そうでない場合には別の方策があるということになろうかと思います。(10)については分 科会の議論を経て2行追加しています。  6頁の「労働契約の終了の場面のルールの明確化」です。(1)は文言の整理です。(2)に ついては、整理解雇について議論があったことを踏まえ、一つは、一時に大量の失業者 を発生させ、大規模な紛争を生じさせる可能性があるものであることから、解雇権濫用 の判断の予測可能性を向上させ紛争を未然に防止するためのルールを明確化する必要が あるのではないかということを、はっきり書いたわけです。その上で、裁判例において 考慮すべき要素とされている4要素を含めて、総合的に考慮して、こういった判断をし ていくのがよろしいのではないかという御提案です。(3)の普通解雇のところについても 分科会でいろいろ議論があり、ここの部分については、紛争の未然防止、労使双方の意 思疎通を促す観点での明確化の必要があるのではないかという考え方を書いた上で、ま ず解雇をしようとする理由の明示はすべてやっていただいて、その上で普通解雇の態様 に応じて、是正機会や弁明機会を付与すると分けて書いたわけです。  7頁の解雇の金銭的解決の仕組みの検討についても、多数の議論がありました。ここ については、解雇をめぐる紛争の長期化、労使にとってコストが増えるということで、 そのようなことに鑑みて、労働審判制度の調停、あるいは個別労働紛争解決制度のあっ せんで、こういった労使双方が金銭による紛争の処理を申し出ることができる。これは 現在できるというところを一つ押さえた上で、さらに審判、裁判でどのようなところを 検討すべきかということを@、A、Bで書き加えています。  (6)です。これは、使用者は労働者に対して執拗な退職の勧奨及び強要を行ってはなら ないという規範についてで、これも分科会の議論を踏まえて書き加えたものです。  次は「有期労働契約をめぐるルールの明確化」です。(1)は文言の整理です。理由を示 した上で、その契約期間を適切なものとするよう努めなければならないという規範です。 (2)は文言の整理です。(3)については括弧書きの中で、一定回数を超えて継続しているも のを例えば3回ということでいかがでしょうかということです。これについてはそれを 超えた場合に、使用者は期間の定めのない契約の優先的な応募の機会を置かなければな らないという具体的な提案として検討してはいかがでしょうかということで、提案させ ていただいたものです。  8頁の(5)、(6)、(7)のところです。(5)の労働基準法のところは前回と同じです。(6)で、 基準法において更新の有無が書面で明示されなかった場合には、同一の労働条件で更新 されるということについて、いかがでしょうかということの提案です。(7)については再 掲です。  「国の役割」の部分については、紛争の未然防止を図っていくためには、労働契約法 で定めるルールを労使当事者をはじめとする国民に周知し、その理解を深めることが重 要であるということで、必要に応じて労働契約法の解釈を明らかにした上で、個別労働 関係紛争解決制度の活用も含め、関係者に対して必要な助言を行うことについて、引き 続き検討するという形で文章を直させていただきました。  「労働時間法制」のところですが、これは最後の部分がまだ完成されていませんので、 今日の説明は省略させていただきます。 ○西村分科会長 時間が10分程度になっていますので、議論というのはなかなか難しい かと思いますが、是非今日、聞きたいということがあればどうぞ。 ○小山委員 整理された文章は、「労働契約法制及び労働時間法制の在り方について (案)」となっているのですが、この文書の性格は何かということをお聞きしたい。とい うのは、検討の視点を基にしながら議論をしてきたわけですが、これは事務局がお作り になった文章だったわけです。労働契約法が一体どうあるべきかという議論をかなり根 本的な議論も含めて、労使で大きく隔たりがある中で議論してきたと思うのです。しか し、結局、事務局が作った文章をちょっと手直しされたものが出てきただけでした。こ れでこの文書を一体どうするのですかという質問です。 ○大西監督課長 私どもは検討の視点を出させていただきまして、多様な御議論があっ たわけですので、そういったものを踏まえて、それぞれ意見が出たところについて反映 して、さらに引き続き御検討をいただきたいということで御提案させていただいている ものです。  非常に隔たりがある部分もあり、修正部分が少ないのではないかという御指摘もあっ たかと思うのですが、分科会の御議論を踏まえ、かなり大量に文章としては直させてい ただいているつもりです。 ○平山委員 タイトルが労働契約法制と労働時間法制の二つが並列に並んでいるのです が、労働契約法制についてのこの場での特に経営側の意見として、基調としてあったの が、労使が自主的、自律的に決定していくと。対等の立場といってもいいかもしれませ んが、労使が自主的に決定していくということを、ある種サポートするような基本的な 考え方だという基調があったと思います。そういう意見もかなりくどく経営側から言っ てきたと思います。  見させていただいて、言葉としては「実質的に対等」という言葉が随分出てくるよう になっているのですが、これはいままで議論させていただいてきたことと、実態感覚な り、基調が変わっているということがあるのですか。 ○大西監督課長 1頁の下から2行目のところの「実質的に対等な立場」は、原案でも あったと思いますので、そこのところは変わっていないという理解です。いま平山委員 から御指摘があった労使自治の尊重ということは、そういう単語ではありませんが、1 頁の真ん中辺りに、「自主的な決定が行われるよう」ということで、基本的な考え方につ いては、御意見を踏まえて書き加えさせていただいたつもりです。 ○渡邊佳英委員 改めてもう一回私どもの論点を言いますと、いわゆる労働契約に関す るルールの整備は必ずしも新法による必要がないのではないか。労働基準法のように使 用者のみに罰則を設けている法律は、根本的に考え方が異なるもので、ルールの明確化 と称して使用者に一方的に義務や手続を課すものであってはならないと思っています。 あくまでも平山委員が言ったように、労使合意に基づく契約が重要で、双方が契約を締 結するインセンティブがなければ、このような法律は全く実効性が上がらないのではな いかと思います。 ○田島委員 いまのに関連して、前回の検討の視点のときにも就業規則は法律の範囲内 の事項・水準であるけれども、経営者側が一方的に定められると主張してきました。そ のような就業規則を契約法に置くべきではないというのは、労側の意見だったのが、結 局は今日の「労働契約法制及び労働時間法制の在り方について(案)」に入っています。 使用者側は必要ない、労側は就業規則を変更のベースに置くべきではないと主張してき たにもかかわらずです。とりわけ労基法93条を契約法にもってくるというのは、私は大 変なことだろうと思います。そういう意味では、労使の意見が合致した部分の検討をお こなうべきです。労使の合意の前提に就業規則がない中で、なぜ中心に据えるのかとい うのが訳がわからないし、最初の小山委員が聞いた、「労働契約法制及び労働時間法制の 在り方について(案)」というのが、どういう性格を持つのか。いわゆる最初の案ですと、 7月には厚生労働省としては中間取りまとめをしたい、これがその中間取りまとめのた めの素案なのか、あるいは違うのか。さらにこれに基づいてフリーに討論して、労使が きちんと契約法なら契約法について意見をぶつけて、案を作っていくのか、どういう性 格なのか、もう一度お聞かせ願いたいと思います。 ○大西監督課長 私どもとしても7月の中間取りまとめに向けて議論していくというこ とで、御議論を進めていっていただいているものです。 ○田島委員 ただそれには反対していますが、結論だけやるべきではないですから。 ○大西監督課長 その結論ありきではなくて、そういういろいろな御意見を踏まえて整 理をしていくと理解しているわけです。当然その検討の視点の中で、いろいろと議論が あったところを盛り込んでいって、徐々に整理をしていくという性格のものであると理 解していますので、これについてまた御議論をいただいて、それを直して、さらに整理 を進めていきたいという、そういうための「在り方」であると考えています。 ○新田委員 ということは、この案という意味はいまおっしゃったように、次は中間取 りまとめではないのですね。さらに整理していきたいとおっしゃったのですね。この案 で議論をして、次にまとめられたのは中間取りまとめではないですね。その案という意 味合いは何の案ですか。何に持っていく案ですか。言い方が違うのですが文書の性格は 何かと聞くのと一緒のことなのですが。 ○大西監督課長 それはもちろんそうですよ。御議論をしていただいて、それをできる だけまとめていきたいというものの案です。 ○新田委員 まとめていきたいというのはどういうことですか。 ○大西監督課長 それは、ここで検討の視点を基に御議論いただいていたものについて、 一致点を見つけていきたいということです。 ○新田委員 それで一致点が見つからなければ、中間取りまとめ以降にいかないのです ね。 ○大西監督課長 それはそこまで言われても困るのですが、それはもう一致点を見つけ るように頑張りましょうということで、そこから先のことをいまここでお約束すること はできませんので、是非、御議論いただきたいと考えます。 ○石塚委員 一致点を見つけるとか見つけないという以上に、私どもの理解としてはこ の案がたたき台になってまとめるというのではなく、よりこの案に基づいて議論を進め ていく。その中で議論を尽くしてみて、その先を決めていくと理解していますが、それ でいいのかどうかをひとつ質問します。その上で、今日は時間がないもので、中身に入 って議論いたしませんが、基本的な観点のところで、「実質的に対等的な立場における」 というのが前回の検討の議題に入っていましたが、今回は「合意」という言葉がきっち り入っています。私の意見としてはこの「合意」という言葉が重要だと思っていまして、 労働契約である以上は労使の実質的に対等な立場における合意であるという、これが外 せない原則だと思っています。  ただ、今日のをざっと見た感じでいきますと、全体として基本原則で合意という言葉 を入れていただいているわけですが、それに類したことはところどころに散りばめられ ていますが、合意に基づいてきっちりやっていくということに関しての具体的な展開が、 少し弱いのではないかというのが私の感覚ですので、次回からは、この労使の実質的に 対等な立場における合意に基づいて締結されるという、この合意に基づく意味合いを、 もう少し筋を通すべきだと私は思っていますので、この点から私どもの意見を申し上げ ていきたいと思っています。今日は具体的展開は省略いたします。 ○西村分科会長 そろそろ時間がまいりましたので、次回にこの議論をしたいと思いま す。次回の日程について、事務局からお願いします。 ○大西監督課長 次回の労働条件分科会は6月27日(火)、16時から18時まで、厚生 労働省5階の共用第7会議室で開催する予定です。 ○西村分科会長 それでは本日の分科会はこれで終了いたします。議事録の署名は田島 委員と渡邊佳英委員にお願いします。本日はお忙しい中をありがとうございました。                  (照会先)                     労働基準局監督課企画係(内線5423)