06/06/05 医薬品産業政策の推進に係る懇談会議事録   (照会先)医政局経済課 担当・内線 西平(2524)   代表 5253−1111 直通 3595−2421 医薬品産業政策の推進に係る懇談会 議 事 録             開催日:平成18年6月5日(月)             場 所:厚生労働省専用第15会議室 ○二川課長  ただいまより、医薬品政策の推進に係る懇談会を開催いたします。私は、司会進行を させていただきます医政局経済課長の二川でございます。どうぞよろしくお願いいたし ます。  なお、本日はクールビズということで、事務局は軽装で失礼しておりますが、上着を お召しになっている方も脱いでいただくなど涼しい格好になっていただければと思いま す。  それでは、最初に厚生労働事務次官の戸苅よりごあいさつを申し上げます。戸苅次官、 よろしくお願いいたします。 ○戸苅次官  厚生労働事務次官の戸苅でございます。本日は、大変お忙しいところを御出席いただ き、ありがとうございます。また、皆様方には日ごろから厚生労働行政に格別の御理解、 御協力をいただいておりますことに、改めて感謝を申し上げる次第でございます。  厚生労働省では、平成14年8月、『医薬品産業ビジョン』を策定・公表し、策定時か らみて10年後の医薬品産業の将来像を提示するとともに、策定後5年間を「イノベーシ ョン促進のための集中期間」と位置づけ、国の支援策をアクションプランとして提示し、 施策の推進に努めているところであります。  このアクションプランの計画期間が本年度で切れることもあり、今年度は、新しい医 薬品産業ビジョン及びアクションプランの策定について検討する必要も出てくると思い ますが、その点については、後ほど事務局から説明させたいと思います。  御案内のとおり、本年も、4月末に平成17年度末時点における『医薬品産業ビジョン』 のアクションプランの進捗状況等を取りまとめ、発表したところであります。  昨年度の懇談会においては、アクションプラン全体の進捗状況としては、おおむね一 定の評価をいただいたと理解しておりますが、治験環境の整備、審査の迅速化、薬価に おける評価のあり方などにつき、厳しい御意見も賜りました。厚生労働省としても、こ うした御意見を踏まえ、アクションプランの着実な実施を図るなど施策の推進に努めて きたところであります。  アクションプランを着実に推進し、実りあるものとするためには、少なくとも1年に 1度、関係者の皆様とともにその道のりを振り返って点検し、評価していただくことが 必要であると考えております。  本日は、アクションプランの今後の進め方や新ビジョンの策定に向けて、皆様が考え ておられる課題や提案等を含め、広く医薬品政策全般について、関係者の皆様から忌憚 のない御意見を承り、一層の施策の充実に努めてまいりたいと考えております。どうぞ 率直な御意見、活発な御議論を賜りますようお願い申し上げまして、冒頭のあいさつと させていただきます。 ○二川課長  続きまして、本日の出席者の御紹介をすべきところですが、時間の節約の観点から座 席表をもってかえさせていただきたいと思います。なお、本日は、意見発表をしていた だく医薬品産業にかかわる方々のほか、日本医師会の竹嶋副会長、日本薬剤師会の山本 副会長、健康保険組合連合会の対馬専務理事、独立行政法人医薬品・医療機器総合機構 の岸田理事にも御出席いただいております。  また、事務局は、おくれている者もおりますが、医薬品・医療機器産業政策推進本部 員でございまして、医薬品の関係課の課長、室長等々が出席しております。よろしくお 願いいたします。  それでは、議事次第に従いまして進めてまいります。  最初の議題は、新しい医薬品産業ビジョンの策定についてですが、この点につきまし ては私から概略を御説明申し上げたいと思います。  医薬品産業ビジョンのアクションプランの計画期間は2002年度から2006年度までの 5年間となっておりまして、今年度が最終年度です。したがいまして、来年度からはビ ジョンのアクションプランがないということになりますので、次の産業ビジョン、アク ションプランの策定に向けた作業を進めていかなければいけないだろうと考えておりま す。次のビジョン及びアクションプランの策定にあたりましては、産業界の皆様方をは じめ、関係の方々の意見を十分に伺いながら策定していくことが重要であると考えてお りまして、私どもの「医薬品産業政策推進本部」の下で、皆様方の御意見を十分にお聞 きしながら作業を進めていくことにしたいと考えております。  時期的なところはまだわかりませんが、仮に年度内には作るということですと、年内 ぐらいまでの間は、産業界をはじめとした関係各方の皆様方と定期的に何度かお目にか かる場を設けまして、御意見等を伺うことになると考えております。御多忙かとは思い ますが、何卒御理解の上、御協力いただきたいと思っております。産業ビジョンの策定 につきましてはこれからの作業でして、そのように御報告させていただきたいと思いま す。  それでは、本日の議題ですが、各医薬品産業界から御出席の皆様から順次御発言いた だきたいと思います。なお、平成17年度末までの医薬品産業ビジョンのアクションプラ ンの進捗状況等につきましては参考資料をお配りしておりますので、適宜、御覧いただ きたいと思います。  本会議は、医薬品産業ビジョンの「国際競争力強化のためのアクションプラン」の進 捗状況に関する評価のための会議ではありますが、ただいま申し上げましたように、本 日のこの会から次の医薬品産業ビジョンの策定に向けた作業が始まっているとお考えい ただいても構いません。そういう観点も含めて、現行のアクションプランの進捗状況に 限らず、医薬品産業の今後の国際競争力強化のための産業政策全般についての御意見や、 団体や傘下企業等における国際競争力強化に向けた具体的な取り組みや我々に対する要 望など、幅広い見地から忌憚のない御意見をいただければ幸いでございます。  進め方につきましては、お手元の議事次第の順番で、日本製薬団体連合会の森田会長 からお願いしたいと思います。大変恐縮ですが、お一人10分以内、できれば6〜7分以 内ということでお願いしたいと思います。  皆様に御発言いただきまして、そのあと、残った時間を意見交換という形で進めさせ ていただきます。  それでは最初に、日本製薬団体連合会の森田会長からお願いいたします。 ○森田会長  日本製薬団体連合会の森田でございます。本日は私ども産業界のためにこういう場を 設けていただきましてまことにありがとうございます。  冒頭にお話がありましたように、平成14年の暑い夏に医薬品産業ビジョンを公表して いただきまして、我々はそれを熱心に読んだことを覚えております。以来、4月末には アクションプランの進捗状況を公表していただき、こういう場につながったということ は連続性という点で大変よい仕組みができつつあり、新しいビジョンづくりについても、 連続性の中で大変心強く思っているところでございます。  日薬連の加盟団体は14業態ありまして、研究開発に特化した創薬の現場から大衆薬、 ジェネリック、家庭薬といろいろあるわけですが、本日はポイントを絞ってお話をさせ ていただきたいと思います。  お手元に資料1として、「我が国医薬品市場の健全な発展に向けて」という4枚の資 料を配らせていただいております。  1ページは産業別(製造業)の2004年の納税力という円グラフを示していますが、製 造業の中では医薬品産業が11.2%を占めています。医薬品産業は、納税という形で国庫 に利益還元しており、国益に資する産業であることを高付加価値の観点からも御理解を 深めていただきたいと思います。  2ページは平成元年から15年までの薬剤市場の伸び率と研究開発費の伸び率を示し たグラフです。  医薬品産業の研究開発費率は売上比率15〜20%と全産業を通じて突出していますが、 それだけ競争が激しく、ハイリスク・ハイリターンということは、グローバル競争の中 でも周知のことであります。  参考までに、アメリカの薬剤市場、日本の薬剤市場の伸びをプロットしております。  日本の薬剤市場が15年間ほとんど成長のない中で、研究開発費は3倍を超えるような 伸びを示していることがおわかりいただけるかと思います。  アメリカの大手8社の研究開発費もお示ししていますが、アメリカの場合は薬剤市場 の伸びと研究開発費の伸びがリンクしています。日本の場合は研究開発費の伸びはアメ リカと比べ低い状況にありますが、原因は、15年に亘り成長のない国内のマーケットに あるということを理解していただきたいと思います。母国においてこのような状況が続 けば、いかに我々産業界が企業努力を続けましても、国際競争力を一段と伸長させるこ とは非常に困難が伴うわけです。企業の大小の問題ではなくて、我々はベースが非常に 厳しい状況に置かれているということを御理解いただきたいと思います。  このような状況を踏まえまして、本日は研究開発面で1点、薬価の面で1点、お願い しておきたいと思います。  3ページは日米の政府研究開発投資の負担率ですが、左が日本、右がアメリカです。 ライフサイエンスの分野において、アメリカでは国策としてNIHが22%を占めている のに対して、日本の厚生労働省はわずか4%ということを強調するつもりはありません が、国庫からの研究開発費に対する支援がなされることが、今後、よりよい成果を生む のではないかと思います。  そこで1点目にお願いしたいことは、ヘルスケア分野の研究開発に対して、厚生労働 省を中心として文部科学省、経済産業省との省庁間の連携を一層密にしていただき、日 本発の医薬品創製に向けた必要予算を確保していただきたい。2次、3次にわたる予算 もついているわけですが、ヘルスケアに特化した形でぜひお願いしたいと思います。  2点目は薬価制度に関することですが、日本の医薬品市場の健全な発展が研究開発投 資を促し、国際競争を向上させると思っておりまして、4ページに次の3点を挙げてお ります。  1点目は、優れた新医薬品が適切に評価されることによって初めて国民医療への貢献 が促進されていくのではないかと思っております。したがいまして、市場の健全な発展 に資する薬価制度の構築をお願いしたいと思います。  2点目は、良質な後発医薬品の使用促進です。ここ数年、精力的に後発品の使用促進 の仕組みがつくられてきましたので、我々や医療界全体として、良質・廉価な製品を適 切な情報活動のもとで安定的に供給するために、今こそ体制整備と将来に向けた行動が 必要であると認識しております。  3点目は、魅力ある医薬品市場の構築です。その時々の財政事情から実施される薬剤 費抑制政策は、市場の健全な成長を阻害するものであり、実施すべきではないと思いま す。  何はともあれ、医薬品産業の発展のために産業ビジョンが制定され、これからは第2 次産業ビジョンの策定ということですので、大変よい産業成長の基盤が整ったというこ とで、積極的にこれに参画させていただきまして、アクションプランの作成と進捗、そ して新しい計画に我々も一緒に汗をかいてまいりたいと思います。  日本の経済発展のために製薬産業はリーディング産業としての素質を備えていると私 は思っております。そういう点で、今後のアクションプランづくりにつきましても希望 をもって参画させていただきたいので、今後ともよろしくお願い申し上げたいと思いま す。 ○二川課長  ありがとうございました。  続きまして、日本製薬工業協会の青木会長にお願いいたします。 ○青木会長  青木でございます。本日はこのような討議の場を与えていただきましてありがとうご ざいます。製薬協を代表いたしましてお話しさせていただきます。私どもの資料は2− 1と2−2と2つございます。  4月28日に厚生労働省から「国際競争力強化のためのアクションプランの進捗状況」 ということで、各項目にわたって進捗の状況をレビューされた書類をいただきました。 それを見させていただきまして、その中でさらにこのようなことをお願いしたいという 要望等について整理したのが資料2−2です。これは細部にわたっておりますので、き ょうは省略いたしまして、後で目を通していただければありがたいと思います。  その中から特に我々が問題を感じております主要な点について4点ほど抜き出してま とめたのが資料2−1です。こちらをごらんいただきたいと思います。  まず1ページです。医薬品産業は科学技術の中核であり、国民の健康増進への貢献を 果たすとともに、国の経済成長の牽引力ともなるべきソフトパワーの中核であると我々 は考えております。このような意味から、医療の中における医薬品産業振興策をこれか らきちんと考えていただきたいということがございます。  2ページですが、医薬品産業は社会保障制度の中に位置づけられており、いろいろな コントロール下にあります。したがって、リーディング産業への成長のための環境整備 が非常に重要になりまして、その中の重要なものを書き出してあります。青と赤に塗り 分けてありますが、赤い色で書いてあるところが我々として特に問題を感じておりまし て、本日、いろいろな面からお願い申し上げたいということです。まず治験環境の問題、 承認審査制度の問題、薬価の問題、研究開発促進税制の問題です。  3ページにまいりまして、臨床研究(治験)体制ですが、現在のところ日本の治験は コストが高い、遅いということが大きな問題になっておりまして、日本の治験の空洞化 が問題になりつつあります。これについて抜本的な強化が必要です。  すぐれた新薬を速やかに開発・提供し世界の医療に貢献するため、臨床研究(治験) に関して4つの条件を四角で囲んであります。  一番上にありますように、臨床研究の基盤を整備していただきたい。そのためには、 臨床研究に対する予算配分を大幅に増額していただきたい。その中で人材を育成してい ただきたい。トランスレーショナルリサーチなど臨床に関連する研究テーマがいろいろ ありますが、先進医療だけでなく、手術手技の開発、機器・ロボット等の開発、医療シ ステムの整備などにも力を入れて頂きたい。健全な医療体制がない限り、臨床研究(治 験)だけを改善しようとしても無理ではないかと思います。  右側の医療機関の治験体制整備については、国立病院機構とか医師主導治験とかいろ いろなことを考えていただいておりますが、これも医療の体制が整備されないと難しい ととらえております。  左側の治験相談・審査の充実と迅速化ですが、これはPMDA(医薬品・医療機器総 合機構)の審査体制及びキャパシティの問題です。私ども製薬産業は機構と密接に議論 を進めさせていただきまして、解決すべき問題は解決しつつありますが、まだ解決でき ない問題が多く残っています。その一つはキャパシティです。中計の中で総数約350人、 審査実務担当者約100人という枠が決められていまして、その中でやっていただいてお りますが、これだけではどうしてもキャパシティが足りないということがあります。  審査実務担当者の大幅増員が必要ではないかと考えます。4ページに要望として書い ておりますが、治験相談については特にキャパシティに問題を感じております。  審査担当者の能力の問題がありますが、これについては産業間との人材の交流、討議、 教育の機会等を整備して、人材の能力向上を図っていただきたい。  総合機構の場合、我々のユーザーフィーが財源の大きな部分を占めていて、人員を増 員するための財源もフレキシブルに考えられるのではないでしょうか。必要な機能を増 強するためには、一律に何年間に何%要員削減するとか、中計で決められた予算を超え てはいけないとか、リジッドなコントロール下にあるのではなくて、必要に応じて必要 な機能を備えるという自由度のある自律性の高い組織にしていただきたい。製薬産業が 影響を及ぼしたいということではありません。行政が必要と思われる時は必要なキャパ シティをふやせるような組織をつくっていただきたいと考えております。  医療の場の改善、承認審査の場の改善によって我々の薬の開発を促進していただきた いと考えています。  5ページは薬価制度についてですが、できあがった薬の価値を十分に反映するような 薬価をお願いしたい。現在の銘柄別市場実勢価格に基づく償還というのは決まっている 仕組みですので、これに反対するわけではありませんが、その時の財政状況によって特 例的に引き下げの影響をこうむるというのは非常に大変ですので、経営の面からいって も、このような特例は受け入れがたいと考えております。  6ページは研究開発促進税制です。これは今までもいろいろ考慮していただいて促進 税制をつくっていただいておりますが、会社によっては売り上げの20%ぐらい研究開発 に投入していますので、さらなる税制の優遇をお願いできないでしょうか。控除限度額 が法人税額の20%という上限がありますので、ほとんどの会社が促進税制の控除率をフ ルにエンジョイすることができません。したがって、控除限度額の引き上げが特にお願 いしたい点です。これはいろいろ抵抗の多いことはわかっていますが、我々の研究開発 費は他産業に比して飛び抜けて高いということも考慮していただきたいということで す。  7ページにいきまして、新しいビジョンの中でもお願いしたいと思いますし、政府与 党で考えておられる「経済成長戦略大綱」の中でも触れていただいておりますが、政府 と産業の対話の場を設置していただきたい。いろんな問題を解決しながら、国民の健康 のために、これから成長の可能性のある医療、医薬品産業を政府、産業、医療担当者の 方々と一緒になって考えていく対話の場を設置していただきたいということをお願いし ているわけであります。  以上、我々が特にビジョンの関連でお願いしたい4点についてお話し申し上げました。 ○二川課長  ありがとうございました。  続きまして、欧州製薬団体連合会の大橋会長にお願いいたします。 ○大橋会長  欧州製薬団体連合会会長の大橋でございます。本日は意見陳述の機会を与えていただ きましてありがとうございます。私どもは欧州における多様性に富んだ制度を経験して おります立場から情報提供をし、問題提起等を行うことによって、日本における医薬品 産業政策及び医療に貢献できればと考えておりまして、そのような議論の場に積極的に 参画していきたいと考えております。  それでは、資料3に沿って説明させていただきます。  平成14年8月の医薬品産業ビジョンの策定は画期的なことであり、EFPIAは当所 よりこのビジョンに賛同し、一貫してこれをサポートしてまいりました。それだけにビ ジョンは実行され、当初に期待されていた成果をもたらすものでなければならないと考 えます。  当ビジョンは10年後の姿を想定して作成されたものですが、本年は5カ年のアクショ ンプランの最終年度という節目の年であり、各論に入る前に全体的な総括をしたいと考 えます。  この4年間を振り返り、進展したものとしては、2ページにお示ししている3点があ ったと考えております。一方、引き続き課題を残したものとしては、ガイドラインの整 備など国際共同治験ができる環境整備、PMDAのさらなる機能の強化、新薬の薬価上 におけるイノベーションのさらなる評価などが挙げられます。  3ページにいきまして、総括の(2)ですが、医薬品産業ビジョンの趣旨は何かという観 点から申し上げます。当ビジョンが目指していることの一つは、日本を国際的な競争力 のある、魅力的なマーケットに育て、内資・外資が競って我が国で研究開発等を行うこ とにより、日本の国民に新薬へのアクセスを保証し、日本への投資や日本での雇用が促 進される。このようなことであると理解しておりますが、この点に関しての達成度は極 めて不十分で、今後一層の努力が必要であると考えております。  4ページの「世界売上上位医薬品の未上市製品数」という表を見ていただきたいんで すが、典型的な問題が国民の新薬へのアクセスの問題です。この問題は本年3月7日の 参議院予算委員会でも取り上げられまして、小泉総理も日本オリジンの新薬が海外で先 に上市されている現状は問題だとする趣旨の発言をされております。日本の現状は早急 に改善されなければならないと考える次第です。  3ページに戻りまして、日本における新薬へのアクセス問題を解決するためには、国 際共同治験への対応のガイドラインの作成、PMDAにおける事前相談の改善、承認審 査の効率化、イノベーションの価値を反映するための薬価制度の見直し、8年間のデー タ保護期間の早期実現等の多面的な施策が重要であると考えております。  以上のような基本的な認識の上に立って各論を簡単に述べさせていただきます。  5ページですが、まず(1)治験環境の整備については、治験ネットワークの構築と治験 推進3カ年計画により改善をもたらしつつあると私どもは実感しております。今後、臨 床研究の位置づけを高め、大学病院が積極的に治験に参加できる環境を整備するなど、 さらなる治験環境の改善の推進を期待するものであります。  (2)国際共同治験については、日本における研究開発経費が高く、長期間を要すること、 日本人のみを対象としたデータの取得に対する考え方が不明瞭であることによって外国 との同時開発が極めて難しい環境にあります。アジアにおいて日本が中心的な地位を占 め続けるためにも、ここにあります3点を踏まえた国際共同治験推進のための環境と審 査制度の早急な整備を強く求めたいと思います。  (3)治験相談と承認審査業務の改善ですが、新相談制度、優先審査制度の導入について は一歩前進ととらえております。さらなる効率化と質の向上のための努力をお願いいた します。  海外でスタンダードとなっている薬剤の日本への早期導入については、現状において は抗がん剤、抗エイズ薬等に対象が限られています。今後、適用範囲の拡大を図るとと もに、さらに新たなスキームについても検討していただきたいと考えております。  最近、日本における審査期間の急速な短縮が当局から報告されています。効率化に向 けたPMDAの努力についてはよく承知しておりますが、我々が期待するレベルでの短 縮が実感できないというのが実情であります。3極における同時申請、同時承認が可能 となり、新薬の医療現場への早期提供ができるよう、さらなる審査担当者の増員と質の 向上、部門間の均一性の確保等による効率化を推し進めていただくことを強く要望いた します。  7ページですが、(4)薬価です。新薬の算定方式においてイノベーションへの評価が高 まったことは一歩前進と受けとめております。今後、新ルールの運用を見守っていきた いと考えています。しかし、これらの改正でも類似薬の価格による制約からは逃れられ ず、真のイノベーションの評価には至っておりません。  薬価改定については、7ページにありますが、従来から主張してまいりました4点に ついて引き続きお願いしたいと思います。  新たな論点となっております頻回の薬価改定については、私どもは強く反対するもの であります。去る2日の私どもEFPIAの総会において厚生労働大臣あての要望書を 取りまとめたところであることを申し添えます。  いずれにしても、革新的な新薬に対しては、新薬の価値に見合った薬価という基本的 な考え方を具現化するため、新しい薬価制度について本格的な議論をする時期にきてい ると考えております。  8ページですが、(5)データ保護期間の問題です。私どもは8年間のデータ保護期間の 創設を求める日薬連要望書について、可能な限り速やかな実現を強く希望しております。  欧州では8年間のデータ保護期間を含めて10年間の販売保護期間、及び新たな効能を 得た場合は販売保護期間を1年延長する、いわゆる8+2+1方式が認められています。  私どもは国際的な競争力を強化し、日本における新薬の開発をさらに促進するため、 将来的には欧州と同等の高い水準のデータ保護を実現するべきであると考えておりま す。  9ページですが、EFPIAの意見のまとめです。現行の産業ビジョンの見直しを行 い、それに基づいた次期5カ年アクションプランの作成を要望いたします。その際、留 意すべき重要と考える4点を示しています。  1点目は、立案段階での業界の参画は必要不可欠であると考えております。  2点目は、可能な限り、検証可能な明確な目標と年次別マイルストーンの設定を希望 します。  10ページの「総医療費と医薬品費の伸び率」のグラフを見ていただきたいと思います。 財政問題及び急速に進みつつある少子・高齢化に対応してきた結果、日本の医療費は国 際的にみれば低く抑えられてきたことがわかります。こうした中で日本の製薬産業の成 長は大きく抑制されてきました。  9ページに戻りまして、3点目ですが、政府においては一方で歳入・歳出一体改革が 議論され、他方、経済成長戦略大綱の策定も進められています。こうした中で、医療費 の抑制という観点のみならず、患者の利益を図る観点から医薬品産業ビジョンを厚生労 働省にとどまらず、政府レベルのものとする意味は大きいと思います。  最後に、年1回のこのような意見陳述の場を与えられていることを深く感謝しており ます。ビジョンをより実効あるものとするため、今後、産業界と政府間のよりハイレベ ルでの対話の場の設置を強く希望いたします。御静聴ありがとうございました。 ○二川課長  ありがとうございました。  続きまして、米国研究製薬工業協会のクレンショー委員長にお願いいたします。 ○クレンショー委員長  クレンショーと申します。本日は、アメリカの11の研究志向の会社を代表しています。 医薬品産業ビジョンのアクションプランに対し、本日、PhRMAの意見を表明する機会を いただいたことを感謝いたします。  PhRMAは、2002年に公表された医薬品産業ビジョンを歓迎いたします。このビジョン は、日本の保健医療制度が直面する多くの重要課題を明らかにし、それらの課題を解決 するために不可欠となる医薬品産業の役割をまとめたすばらしい文書です。またビジョ ンには、日本の医薬品産業が国際競争力を一層高め、日本の患者が当然享受すべき世界 水準の保健医療の提供を強化するための改革の青写真も定められています。  しかしながら、ビジョンの発表から4年を経た今、PhRMAはアクションプランのこれ までの実施状況に失望を感じざるを得ません。つまり、アクションプランの実施に余り にも時間がかかり、しかも断片的にしか進捗していないのです。  その結果、次のことが挙げられます。多くの先進諸国の患者にとっては既に使用可能 な画期的医薬品を、日本の患者が入手できるようになるまでに、依然として相当の期間 を要し、日本の医薬品産業は世界の医薬品産業に競争力の面でおくれをとりつつあり、 そして他の先進諸国、さらには一部のアジア諸国の規制当局と日本の規制当局との隔た りは、今もなお解消されていません。  ビジョンが公表された時、私どもは日本の保健医療制度の違約部分を改革する取り組 みの根底となるいくつかの展望に、特に感動を覚えました。以下に、ビジョンの主な要 素と、それぞれの実施状況に対するPhRMAの評価を述べたいと思います。  第1に、ビジョンは「国際競争力のある医薬品産業の発展により、日本の国民は最先 端医療へのアクセス、生活習慣病への対処、慢性疾患を伴う患者の生活の質の向上、大 手術の回避が約束される」と言明しています。しかし、先ほども述べたように、日本の 国民は、世界的には入手可能な最先端の医薬品の多くを今もなお入手できない状況にあ ります。  添付資料Aにありますように、世界の主要薬100製品のうち31製品をいまだに日本の 患者は入手することができません。また入手可能な主要薬の多くも、米国や欧州、一部 のアジア諸国に導入されてから何年もたって、ようやく日本に導入されています。これ は深刻な問題です。残念なことに、ビジョンを十分に実施できなかったために、これら の分野にはごくわずかな改革しかみられません。  第2に、ビジョンは「適切な保健医療が、経済、社会、そして患者とその家族にもた らすさまざまな恩恵を考慮した保健医療コストの体系的な分析の必要性」を強調してい ます。  患者の現在と未来の生活の質を向上するために、今すぐに行える対策があります。治 療における早期介入と予防の重要性は高く、健康・予防ケアプログラムはいかなる保健 医療制度にあっても不可欠な要素を構成しています。したがって、疾患の予防と、慢性 疾患再発の長期的抑制を目的に開発された医薬品は償還制度に含まれるべきだと考えま す。  しかし、償還制度はいまだに保健医療の直接コストの削減と短期的な予算目標の達成 という目的に基づいており、患者に提供される保健医療の総対的な質に、このようなコ ストの削減が与える影響は、ほとんど考慮されていないのが実情です。保健医療は、人 々、社会、そして経済への投資であって、単なる予算コスト削減の一部門として考える べきではありません。  最近、画期的医薬品に対する補正加算の対象拡大などを含む償還制度の調整が行われ ました。しかし、この償還制度の変更により製薬会社は、世界最先端の画期的医薬品へ のタイムリーなアクセスを日本の患者に保証することが一層困難になりました。以下に、 償還制度の変更によって新たに発生した問題をいくつかまとめています。  外国価格調整の計算方法の変更により、調整対象となる適応範囲が狭まり、調整のメ リットも低減しました。  添付資料Bにありますように、現在提案中の薬価改定制度の隔年から年次改定への変 更が実施された場合、画期的な医薬品の価格が下がるスパイラルが加速し、画期的な医 薬品の開発に報いるというよりは、むしろ罰することになります。  第3に、ビジョンは「治験の空洞化による日本の保健医療水準や医薬品産業の国際競 争力への計り知れないマイナス影響」に懸念を示しています。しかし、4年前にビジョ ンで指摘された問題点の多くは依然として未解決のままです。  日本では、他国に比べて治験にかかる時間が長く、治験にかかる費用も高く、また質 にも問題があることは、日本がしばしば国際的に調和された規格よりも独自の細かい規 格を採用していることとともに広く知られています。日本の医療機関、医師、研究者、 製薬企業は治験に参加することによって得られる最新の技術情報の恩恵を受けられずに います。世界的に通用する治験体制を支援するインフラを整備し、日本、アジア、米国、 欧州の治験データを完全に統合し、新薬の真の世界同時開発を実現できる体制を創り上 げることで、費用を削減しながらも、日本の患者に画期的な医療へのより早いアクセス を提供することは可能だと思います。  しかしながら、日本の治験環境に満足のいくような建設的変化は見られません。これ は、1994年には21%だった世界医薬品市場における日本のシェアが、10年後には11% にまで落ち込んだ主な要因でもあります。これは添付資料Cをごらんください。  治験に参加する患者のインセンティブ、治験を実施する研究者へのインセンティブ、 治験の実施体制の改善など、ビジョンで言及された問題点を改善するためにやるべきこ とは数多くあります。PhRMAはこうした問題の解決に向けた早急な取り組みを要望しま す。  PhRMAは、経済産業省が「新経済成長戦略大綱」に「国際競争力を強化する観点から 医薬分野のイノベーションの加速化と製薬産業の育成に向けた官民一体の対話の場」を 盛り込むよう産業構造審議会・新成長政策部会に提案されたという最近のニュースに勇 気づけられています。PhRMAは、数年間にわたって日本における包括的な保健医療改革 の必要性を提起し、この問題に対する政府、製薬業界、その他ステークホルダーの間で のオープンかつ建設的な対話の場を提唱してきました。日本における包括的な保健医療 改革の展開と実施を監督するために、閣僚レベルのグループを組織することも可能では ないかと考えます。  PhRMAは、2002年に公表された医薬品産業ビジョンの実施の最終年が2007年となると いう点に懸念を抱いております。今後12カ月間の進展が、過去4年間と同じペースで進 むとしたら、ビジョンのアクションプランに対し、「成功」という評価を下すことはで きないでしょう。したがって、PhRMAは、厚生労働省に対し、以下のとおり、謹んで提 言させていただきます。  1点目は、ビジョンに掲げられた全容を完全に実施するための真剣な取り組みがなさ れること。  2点目は、厚生労働省による新たなビジョンの策定、もしくは現ビジョンの延長が行 われること。いずれの場合も、ビジョンの実施計画書となり、その実施の成功の可否を 評価する仕組みともなる、具体的かつ詳細にわたる明確なベンチマークを設定する必要 があります。  3点目は、新たなビジョン、あるいは延長されたビジョンの内容、そのビジョンの実 施状況、実施施策のあらゆる評価に関して、明確に定義された仕組みに基づき定期的に 厚生労働省と協議する機会を製薬業界に与えられることを望みます。PhRMAとその加盟 企業は、世界中の保健医療制度に関する経験に裏打ちされた知識を持っています。また 製薬業界は、研究開発への数兆円規模の投資を通じて、医薬品の開発と商品化において 重要な役割を果たしています。したがってPhRMAは、政策決定者が保健医療政策を検討 する際に独自の情報源を提供することができると自負しています。  最後に、全ステークホルダーの間でのオープンかつ建設的な対話の重要性を踏まえ、 また日本での画期的医薬品の上市に占めるPhRMA加盟企業のシェアの伸びからも判断で きるように、日本の保健医療制度における外国製薬企業が果たす役割の重要性がますま す高まっているという事実を考慮していただき、PhRMAは外国製薬業界を中医協の正式 メンバーとして迎えていただくことを要望いたします。外国企業の中医協への参加によ り、世界市場の最新情報を踏まえた政策決定が可能になると信じております。  病気は、予防や早期治療、医薬品の購入にかかる費用を矮小化してしまうほど、膨大 な負担を人に、経済に、そして社会に課します。日本では高齢化社会の進展とともに、 こうした負担が増加の一途をたどっています。日本が疾病の予防や管理をより強化し、 患者に新しくより良い治療法へのアクセスをこれまで以上に保証しない限り、こうした 人的、経済的、社会的負担は今後も増大し続け、コントロール不能なほど急上昇する可 能性もあります。日本がこのような状況を回避するためには、疾病の予防・管理を強化 し、より良い治療法への患者アクセスを拡大するほかに道はありません。  PhRMAは、医薬品産業ビジョンのアクションプランの実施、及び日本の保健医療制度 改革に関する多岐にわたる問題についてPhRMAとしての意見を表明する機会をいただい たことを感謝いたします。PhRMAとその加盟企業は、こうした問題へのソリューション の発見やソリューションの実現のために、厚生労働省を初めとしたステークホルダーと のワーキングに建設的に参加していくことを今後も楽しみにしております。 ○二川課長  ありがとうございました。  続きまして、医薬品産業情報研究会(PIフォーラム)の長井副会長にお願いいたし ます。 ○長井副会長  長井でございます。本日は意見を申し述べる機会を与えていただきましてありがとう ございます。私どもの会は医薬品の非専業メーカーということで、森田会長等の御発言 の趣旨とは若干ニュアンスが違うところもあろうかと思いますが、御容赦願いたいと思 います。  資料5をごらんいただきたいと思いますが、医薬品産業政策の推進に係る件につきま して、私どもの会としては、ここに書いてあるとおりの意見を述べさせていただきたい と思います。大枠につきましては、日薬連、製薬協の会長さんから細かい数字とともに 出されまして、私どもの要望もほとんど重なりますが、私どもの立場として意見を述べ させていただきます。  1.全般ですが、医薬品産業を我が国のリーディング産業として育成し、またグロー バルに伍して戦える産業とするためのさまざまな施策がとられているものの、いまだ最 終目標の実現には至っていないと考えます。また、グローバル化の波は欧米に限らずア ジア圏内でも起きており、その中で我が国は孤立しつつあるようにも感じられます。今 後、さらなる産業育成のための政策推進をお願いしたいと思います。  2.アクションプラン(治験・審査・薬価)についてです。  (1)治験の活性化については、国内治験活性化のためのさまざまな施策が行われてきま したが、国内の治験は依然として減少傾向にあります。治験費用の高価格化、低い症例 集積率、長い治験期間がその原因として挙げられます。もはや国内のみによる治験では 医薬品開発が進まない状況であり、速やかなアジア圏レベルでの治験体制の構築が望ま れます。アジア圏内でのグローバル治験・開発体制のリーダーシップを確立するために も、厚生労働省、医薬品・医療機器総合機構による体制構築の推進をお願いしたいと思 います。  (2)審査については、審査料金を値上げしたにもかかわらず、審査の迅速性、相談の親 切度が満足のいくレベルには達してないというのが実感です。スピードという点ではグ ローバルな観点からは、いまだ速いとは言えないと思います。料金が上がったにもかか わらずサービスレベルが下がるということはあってはならないと考えます。審査期間と しては少なくとも世界のFirst in Classレベルのサービス水準を実現できるように、改 めて具体的な到達目標とタイムラインを示していただきたいと思っております。  (3)薬価制度ですが、今般の薬価改定は、製薬企業にとって大変厳しいものとなりまし た。現在の薬価制度のもとでは、製薬企業の経営が国家政策に大きく左右されます。さ らに薬価の頻回改定について議論されているようですが、これにより製薬企業はさらに 窮地に追い込まれ、ひいては開発費を捻出することが厳しくなります。開発費の減少は、 先端技術を利用した画期的な医薬品開発を困難にし、海外への技術・開発力の流出、そ して国内医薬品企業の衰退につながります。特に、特例的な薬価改定はないようにお願 いしたい。また、医療上価値のある新薬の薬価算定について、フレキシブルな対応が可 能となるようお願いしたいと思います。以上です。 ○二川課長  ありがとうございました。  続きまして、医薬工業協議会の吉田会長にお願いいたします。 ○吉田会長  医薬工業協議会会長の吉田でございます。本日はこのような席にお招きいただきまし てまことにありがとうございます。アクションプランの進捗状況につきまして、医薬工 業協議会を代表して意見を述べさせていただきます。  昨年12月1日に発表されました「医療制度改革大綱」において、薬剤に関する2つの 大きな考え方が示されました。画期的な新薬の適正な評価とジェネリック医薬品の使用 促進であります。この中の1つであるジェネリック医薬品の使用促進という考え方に従 って、今年4月の診療報酬改定の際、処方せん様式の変更がなされました。また、調剤 薬局においてジェネリック医薬品を処方した場合、患者のコスト意識を喚起するため、 情報提供の項目の中に薬剤料の説明義務が加えられました。この2点が、我々ジェネリ ック業界にとって大きく前進したということで高く評価し、感謝しております。  アクションプランの内容に「中長期的な観点から薬価制度、薬剤給付のあり方につい て検討する」とありますが、この検討を進めるにあたって、今後広く議論していただき たいことがございます。現行の薬価制度、市場価格主義銘柄別薬価収載方式というもの は健康保険法第63条の「薬剤は現物給付」という考えをもとにつくられた制度であると 理解しております。  一方、社会保障を憲法25条から見ますと、ナショナルミニマムという考え方で「必要 最小限の水準を保障する」ということであると理解しています。現物給付とナショナル ミニマム、どちらの考え方が正しいかという議論ではなくて、どちらの考え方がこれか らの少子・高齢社会にあって国民皆保険制度という大事な制度を維持していけるのかと いうことを広く議論していただきたいと思います。我が国の医薬品産業の発展は、社会 保障制度を健全に持続していくという前提で論じられるものと思っておりますので、ぜ ひよろしくお願いいたします。  現物給付の考え方に基づいた現行薬価制度は長年にわたって検討されていますので、 今後、議論をするたたき台としては、ナショナルミニマムの考え方に近い考えに基づい た薬剤給付基準額制度という医薬工業協議会で検討した試案がありますので、是非御利 用いただきたいと思います。試案の詳細については別の機会にご紹介させていただきま す。  続きまして、医薬工業協議会の立場から、ジェネリック医薬品の使用促進をするため の要望事項を述べさせていただきます。  医薬協として最も望むところは、先ほどの現行薬価制度の抜本的な改革を実施すると いうものです。ただし、このことは中長期的な議論が必要ですので、その間、ジェネリ ック医薬品の使用促進のために次の5項目を要望したいと思います。  1点目は、独立行政法人国立病院機構あるいはそれに準ずる医療機関では処方せんの 医師の署名に関して国から指導していただくようお願いしたいと思います。  2点目は、ジェネリック医薬品の薬価収載を年2回としていただきたい。  3点目は、ジェネリック医薬品の処方せん料並びに調剤料のさらなる加算と、院内処 方にも同じ加算をする処置を導入していただきたい。  4点目は、小包装100錠の安定供給の観点から、最低薬価の引き上げを行っていただ きたい。できましたら最低薬価、1錠当たり10円としていただきたいと思います。  5点目は、国によるジェネリック医薬品のさらなる広報活動をお願いしたいと思って おります。  我々医薬工業協議会は必要な情報収集、提供を心がけるとともに、高品質で経済的な 医薬品を安定的に供給することで社会貢献をしていきたいと考えております。本日御出 席の先生方、並びに厚生労働省の先生方にはぜひ御理解いただき、今後ともジェネリッ ク医薬品の使用促進のために御支援、御協力をよろしくお願い申し上げます。本日はど うもありがとうございました。 ○二川課長  ありがとうございました。  続きまして、日本大衆薬工業協会の上原副会長にお願いいたします。 ○上原副会長  上原でございます。大衆薬工業協会を代表いたしまして意見を述べさせていただく機 会ができましたことを感謝いたしております。  2002年11月、「セルフメディケーションにおける一般用医薬品のあり方について」 という中間報告が発表されましたが、この骨格は3つから成っていると考えております。  1つ目は、国民のニーズを反映した医薬品の範囲の見直しを考えるという観点ですが、 その具体的な対応策として新薬効領域を検討する。さらにはスイッチOTC、漢方生薬、 剤形の拡大、効能の見直し等を実現することによって国民のニーズを反映するというこ とであります。  2つ目は、国民を守るための安全対策、情報提供をさらに強化・拡充する必要がある ということです。  3つ目は、承認審査の流れを改善し、これを促進する。この3つの点だったと考えて おります。  その後、2004年に中間報告の進捗状況を報告させていただきましたが、それぞれの項 目について進捗した点と、さらに問題点を残す2つの領域があると考えております。  1つ目の国民ニーズの反映という点はまだまだ問題がありますので、最後にさせてい ただきます。  2つ目の安全対策、情報提供の拡充・強化については、現在、衆議院で審議されてお ります販売制度改正に関する薬事法改正案に発展し、国民のリスクを守るという観点か ら、OTC薬の分類、その販売制度のあり方、資格をどういう人に与えるか、そういう ところに発展、結実していると思いますし、初めて薬事法で一般用医薬品のジャンルが 定義されたことは大変喜ばしいことだと考えております。  3つ目の承認審査の流れの改善というのは切実な問題でして、関係の皆様方にお願い し、一時よりは進捗しておりまして、申請区分も6区分あったのが4区分に統合されて います。不完全ながらも改善されつつあるのが現状ですが、今後、地方への承認権の分 離などをお進めいただけたらと考えております。  私どもが一番お願いしたいのは、新領域の範囲を見直し、拡大していただきたいとい う点であると考えております。日本における大衆薬事業は過去数年マイナスでして、縮 小しています。海外の先進国では毎年1〜2%から2〜3%ほど伸びていますが、既存 の領域ではほとんど伸びておりません。スイッチOTCの領域が取り入れられて、伸び ています。英国ではスタチン系がスイッチOTCになる。アメリカでは抗アレルギー剤 がスイッチになり、国民に対して使いやすい情報を添付して、莫大な新しい市場になっ ています。スイッチOTCは欧米と比べておくれておりますので、その辺をぜひ推進し ていただきたいと思います。  西洋ハーブに代表されます生薬の製剤については、日本で使われてない新しい成分の 場合は新薬と同じようなデータの提供が求められています。WHO等が管理しているデ ータベースを使うことによって、ICSと同じように国際間におけるデータの活用とい う観点から対応していただきたいということで、現在、そういう方向で進んでいますが、 これを早く実現していただきたいと思います。  もう一つ大きなポイントは、生活習慣病の症状発現の予防や生活改善薬ですが、長い 目で見ると日本の医療費の中でも大きなシェアを占めると思います。専門家のアドバイ スがあって初めて成り立つことですので、専門家の方々との連携のあり方等も含めて、 前向きに考えていただきたいと思います。販売制度のあり方の再検討の過程で、こうい った方面の解決策が出てくるのではないかと期待しております。  最近、機能性食品、サプリメントも含めて特定保健用食品のヘルスクレイムや広告表 現等で思い切った効能が認められているということを考えますと、医療用の医薬品と特 定保健用食品の中間にある大衆薬、OTCの効能のあり方、表現のあり方が見直されな ければいけないのではないか。私どもメーカーが積極的な提案をさせていただいて始ま ることですが、特定保健用食品との境界線、表現のあり方等の問題についてお考えいた だけたらと思います。 ○二川課長  ありがとうございました。  最後に、日本医薬品卸業連合会の岩崎常任理事にお願いいたします。 ○岩崎常任理事  日本医薬品卸業連合会常任理事の岩崎でございます。本日はこのような場にお招きい ただき、発言の機会を与えていただきましてありがとうございます。流通の立場から4 点ほど意見を述べさせていただきます。  まず第1点は医薬品コードの標準化についてです。  厚生労働省の「コード表示標準化検討会」では、メーカー、卸、医療機関の三者の間 で医薬品コードの標準化に関する検討が行われ、昨年9月に、新コード体系の概要がま とまりました。その後、実施方法及び実施時期について検討が行われ、本年3月には、 パブリックコメントの受け付けが行われるに至っております。調整が難しく、長期にわ たる議論に一応の終止符を打ち、具体的な一歩を踏み出したものと考えております。  しかし、今回のコード表示案は、生物由来製剤を中心にした注射剤への表示に焦点が 当てられており、その他の製剤については方向性を示すにとどまっています。全メーカ ーの対応を勘案すれば、現実的な方策として、段階を踏んだ導入案は理解できます。一 方、IT化を進めることにより医薬品使用の安全確保と医薬品流通の効率化を図る観点 から、新しいコード表示方式(ロット番号、有効期限のバーコード表示)が、全製剤に 早期に拡大することが望ましいと考えます。したがいまして、全医薬品について、導入 スケジュールを明らかにする必要があると考えます。全製剤ロット有効期限表示のスケ ジュール化についてよろしくお取り計らいいただきたく要望いたします。  また、医薬品コードデータベースの運用管理を行うナショナルセンターとして、医療 情報システム開発センター(メディス)がその任に当たることとなりましたが、医薬品 コードデータベースの信頼性を確保するためには、迅速かつ正確なメンテナンスが不可 欠であります。メンテナンスの滞りなきよう、行政による継続的な御指導をお願いいた します。  第2点は医薬品流通の適正化についてであります。  細かい項目を2つ挙げておりますが、1つは未妥結・仮納入の問題です。  薬価調査の時点で価格未妥結の場合は調査の対象外となり、正確な市場実勢価格が薬 価改定に反映されません。  中医協においては、平成18年度の薬価改定に際し、薬価調査の信頼性確保の観点から 未妥結・仮納入の是正を図ることを合意し、それを受けて厚生労働省で改善指導等の措 置が講じられることになったことは大きな前進であります。これを機に、この悪しき流 通慣行の是正に向けて私どもは努力をいたす所存ですので、一方の当事者である医療機 関・薬局におかれても、早期の妥結に向けて価格交渉の場に臨んでいただくよう要望す るとともに、厚生労働省の実効ある改善指導を強く希望いたします。  2つ目は総価取引問題であります。  現行の薬価制度は、市場で製品の銘柄ごとの価値に基づいた市場価格が形成されるこ とを前提とした銘柄別収載方式を採用しています。したがって、個別銘柄の価格交渉を 行わず、取引対象の全銘柄の総価でのみ価格交渉を行う総価取引は、現行の薬価制度の 内実をむしばむものであり、関係者及び行政が一致協力して是正を図らなければならな い問題であると考えます。公的医療保険制度の健全な運営を期する観点から、行政とし ての適切な是正策が講じられる必要があると考えております。  第3点は薬価基準制度のあり方についてであります。  アクションプランでは、「今後の薬価制度・薬剤給付のあり方について、中長期的な 観点から、定期的に情報収集や意見交換等を実施」するとされています。医薬品卸業と しては、公的医療保険制度のもとでの企業発展を期しておりますので、ぜひその方針を 堅持していただきたいと思います。  2つほど項目がありますが、1つは調整幅についてです。調整幅については、取引条 件の差異をカバーする原資として位置づけられています。現行の2%は「薬剤流通の安 定のため」には今後とも維持すべき必要最低限の水準であると考えます。  もう1つは算定のルールですが、薬価と市場実勢価の乖離部分の合理的な解消のため に行われる薬価調査については、卸業としてその必要性を十分に認識し調査に協力をし てまいりました。しかし、財政上の必要性に基づいて、調査結果が出てから薬価算定ル ールを改め、調査結果に基づかない強制引き下げを行うことは、算定ルールを恣意的に 変更する「後出しジャンケン」のようなやり方であり、フェアではありません。今回の 薬価改定においても、強制引き下げ率をさらに拡大するルールが採用されたことは大変 遺憾であります。薬価基準制度の原則である銘柄別市場実勢価格主義を最大限に尊重し た運用を強く望みます。薬価制度の透明性と安定的運用は、医薬品関連企業の中長期的 な経営計画を策定する上で基本的な要件であると考えております。  第4点は大衆薬市場の活性化についてであります。  国民の健康志向の高まりとともに広義のセルフメディケーション市場は拡大を続けて いますが、その一方で、大衆薬市場は過去10年にわたり減少の一途をたどっております。 セルフメディケーションの推進を図るためにも、ヘルスケア市場における軽治療分野の 充実が必要であり、効き目のすぐれたスイッチOTC薬等の出現が望まれます。大衆薬 市場の活性化を図るため、メーカー、行政には、スイッチOTC薬の開発、承認を推進 されますよう希望いたします。  卸業としては、国民のセルフメディケーションを推進し、大衆薬市場の活性化に寄与 するため、どのような役割を担い、卸機能をどのように高度化していくべきか、その方 向性について検討を行い、昨年10月、「大衆薬卸業将来ビジョン」として取りまとめま した。どうぞお目通しいただきまして、忌憚のない御意見をお寄せくださいますようお 願いいたします。お手元に添付しております。  以上、医薬品卸業の立場から意見を申し述べました。医薬品卸業は、医薬品という商 品の特性から、国民の生命と健康を守る社会的活動を行うという役割を担っているもの と考えます。  近年、社会情勢が複雑化する中で、「安全・安心・信頼」に対する国民の関心は急速 に高まっており、災害、テロ、感染症の流行といった国家的規模の危機的状況における 安全保障体制の整備が求められています。  我々は、医薬品卸業としてその社会的活動としての側面を充実させるため、危機的状 況における医薬品流通の取り組みについて検討しております。行政から適切な情報提供 と御支援を賜りますようお願いいたします。以上です。 ○二川課長  ありがとうございました。  医薬品産業界の皆様からの御発言は以上で終了いたしました。  それでは、意見交換に入らせていただきます。これまで皆様方の意見発表にありまし た論点は主に5点ほどかと思います。1点目が医薬品産業の国際競争力の強化、2点目 が研究開発の関連、3点目が治験・審査、4点目が薬価、5点目がジェネリック医薬品、 その他として、予防の関係、流通特有の問題、大衆薬特有の問題もあったかと思います。  議論を効率よく行うために、今申し上げました論点に整理しまして、意見交換をさせ ていただきたいと思います。  まず1点目、医薬品産業の国際競争力の強化というテーマで御議論いただきたいと思 います。これにつきましては、研究開発促進税制の拡充・延長、データ保護期間の延長 といった御意見がありました。これらの問題は経済課が所管している部分ですので、答 えられる範囲で私からお答えしたいと思います。  まず税制につきましては、研究開発税制の特例措置があったんですが、昨年、それが 途切れました。なんとか延長ということで業界の皆様も強く要望されましたし、私ども 役所としても頑張ったんですが、税制のところの議論を突破することができませんでし た。特例措置が完全になくなったわけではありませんが、特例措置があった時期よりは 研究開発税制が少し後退してしまったというのは事実だろうと思います。  ただ、今まで認められなかった長年の懸案であったオーファンドラッグの研究開発に 係る税制が認められました。産業界全体にとってはごく一部のことかもしれませんが、 拡充された部分もあります。  国際競争力の強化という点では税制が一番大事な手段だと思いますが、医薬品産業だ けに特化した税制措置を講じるのは大変で、産業界全体での議論になります。現実に医 薬品産業では多くの研究開発が必要であることは理解しているつもりですが、税制の中 で議論するのは大変だなと感じております。  データ保護期間につきましては、政府で策定しております知的財産推進計画の2006 年版が知的財産戦略本部会合における決定を経て、6月8日に公表される予定です。  私からは以上ですが、医薬品産業の国際競争力の強化につきまして、御意見等がござ いましたら御発言いただきたいと思います。 ○森田会長  日本の開発促進については、薬事法の改正もありましたし、ルール、制度が変化して きていると思います。独法化などによって、ベンチャーの設立がスピード化して、彼ら が会社をつくって機能させていくなど、日本において新しい構造ができつつありますし、 国際競争力のある産業を育てるのに非常にいい仕組みが芽生えつつある。そういう時期 ですから、その点に対して一つ一つ丁寧に、我々もフォローする必要もあるし、行政か らもそういう観点からのフォローもしていただきたい。  ベンチャーがシーズを見つけて、それがいい会社に育って、それを薬にするのはメー カーの本分ですから、そういうものを薬につなげていくことによって、日本をホームグ ラウンドとして製品ができていくという、これをぜひやっていただきたいと思います。  そういう点で、治験に対する参画とか、治験をやられる先生方のインセンティブとか、 社会貢献しようという雰囲気づくりとか具体的なシナリオとか、今日もたくさん発表が ありましたが、ぜひやっていただきたい。日本の患者は、世界の主要薬100製品のうち 31製品をいまだ入手できないという話がありましたが、日本が考えた医薬品が日本で最 初に発売されるのは当然のことで、こういう構造に変えていくことを明確にして、新し いビジョンにもつなげたいと思っています。 ○二川課長  国際競争力の強化といっても全体にかかわりますので、これだけで議論するのは難し いと思いますので、次のテーマに入ります。また戻っていただいても結構です。  2番目、研究開発というテーマですが、臨床研究の基盤整備とか、特にアメリカの予 算と日本の予算の規模が全然違うという資料も出していただきました。基礎研究の充実 その他、御指摘があったかと思います。  これにつきまして、厚生労働省から何かありますでしょうか。 ○鈴木課長  研究開発振興課長の鈴木でございます。私の課では研究開発の支援、治験環境の整備 を所掌しておりますが、研究開発の支援についてお答えさせていただきます。  委員の先生方から御指摘いただいた中で2点について、我々も是非留意しなくてはい けないと思っています。1つは、政府が支援する研究の中でも基礎研究に加えて、臨床 研究もしくは臨床研究への橋渡しのトランスレーショナルリサーチに重点を置いてほし いということで、まさにそのとおりだと思います。  もう1つは、治験そのものだけではなくて、治験はあくまでも臨床研究、臨床試験の 一部だということですので、幅広く臨床研究、臨床試験を支えられるような仕組みづく りを今後考えていきたいと思います。  政府の取り組み状況ですが、政府全体としては、内閣府の総合科学技術会議で、今般、 第3期の「科学技術基本計画」ができました。その中で、今後5年間で優先的に資源を 配分する重点戦略分野というのができまして、その1つがライフサイエンス分野ですの で、政府をあげてこの分野を重点的な分野としてプライオリティを設定しているという ことです。  厚生労働省としての取り組みですが、平成17年4月、大阪にあります医薬基盤研究所 というものをつくりました。まだ1年数カ月ですので、これから皆様方と御相談をして、 きちっと成果が出せるようにしたいと思います。  先ほど来、しっかりした臨床研究の基盤を整備すべきではないかという御意見があり ましたが、平成18年度から私どもで「臨床研究の基盤整備推進事業」というものを開始 しまして、人づくり、治験等の倫理審査の体制づくり、データマネジメントや生物統計 の体制づくりを支援できるような形で考えております。  平成19年度以降の対応ですが、治験活性化計画を新しいものにしようということで、 検討を進めております。今後の研究費の対応についても、皆様方の御意見をいただきな がら考えていきたいと思っております。 ○林研究企画官  厚生科学課でございます。厚生科学課も厚生労働科学研究費補助金を所管しておりま して、その関係で、今の研究開発課長のコメントに対して補足をさせていただきたいと 思います。  厚生労働科学研究費補助金を支える柱の1つとして先端医療の実現ということを標榜 しておりまして、そこに必要な研究費を投入しています。その中で臨床研究の推進とか、 ゲノム研究、ポストゲノム研究の成果を活用した創薬に資する研究を推進してきている ところです。  先ほど話がありましたが、平成17年4月に医薬基盤研というものが大阪に発足してお りまして、その中でも医薬品等の実用化をサポートする研究推進事業とか、ベンチャー 企業支援を含む様々な支援事業を行っているところです。  政府全体としてライフサイエンス研究をサポートしていく体制が必要ではないかとい う御指摘がありましたが、第3期科学技術基本計画でも基礎研究から実用化の研究まで いかにスムーズにつなげていくか、そのために関係府省がどうやって緊密に連携してい くかということが重視された内容になっておりまして、厚生労働省としても第3期基本 計画の方向性に沿って今後も関係府省が緊密に連携して、ライフサイエンス分野を着実 に進めてまいりたいと考えております。 ○二川課長  研究開発についての現状なり役所が進めていることについて発言がありましたが、研 究開発というテーマで、御意見等がありましたらお願いいたします。 ○青木会長  製薬協の青木でございます。臨床試験にいろいろ力を入れていただいて非常にありが たいのですが、我々から拝見していますと、研究費の配分をもう少し重くしていただけ ないかと思います。ビジョンの進捗のところにありますように、トランスレーショナル リサーチに使っているお金は10億円レベルでありまして、厚生労働省の1千何百億円の 予算の中で非常に少ないように考えられます。  最近の傾向として、ライフサイエンス、バイオロジーというと先端の方へ先端の方へ と進みますけど、そんなに先端に行かなくても、今ある薬を使いこなすことによって疾 病をコントロールすることが大事だと思います。最近、厚生労働省の指導で始められた 大型のアウトカムスタディ「do it 3」というのがありますが、あのようなスタディが 非常に大切になってくると思いまして、ああいうことにもっと力を入れていただきたい。 それによって臨床研究のシステムも整備されて、治験にもいい影響が出てくると考えて います。 ○二川課長  臨床研究の予算が十分でないという御指摘もあり、アメリカとの差という数値も出し ていただきまして、ずいぶん差があるなと感じます。先ほど担当から御説明したような ことで、前向きには取り組んでいるんだと思いますが、なかなか進まないということだ と思います。今後もこういった点について皆様方の御意見をいただいて進めてまいりた いと思います。  それでは3番目のテーマ、治験・審査に入りたいと思います。治験・審査につきまし ては、ほとんどの方々から治験の進行が遅い、治験実施率が低い、治験費用が高い、治 験参加者数、国際共同治験の推進のための環境整備、治験相談や審査の迅速化、審査体 制のさらなる充実といった御指摘がありました。アクションプランができた時には大変 期待したが、4年経って一番がっかりしているのはここだという御指摘もあったかと思 います。  この件につきまして厚生労働省、あるいは医薬品・医療機器総合機構の岸田理事にも 来ていただいておりますので、それぞれ少し御発言いただければと思います。 ○鈴木課長  私から最初の2点、治験が遅く、質が低く、値段が高いのではないかということと、 治験に参加する症例なり医療機関を増やすべきではないかという点について、現在の取 り組み状況等を説明させていただきます。  遅い、質が低い、値段が高いという3点セットについては従来からずっと指摘されて きたわけですが、質の問題については、最近では日本国内でオーバークオリティといわ れているぐらいに質はきちっと見ているのではないかという指摘もあります。  実施率というのは、例えば20件の治験をやりますといって、その支払いを受けながら、 実際は8件しか実施しないということですが、支払いのやり方も含めて、そういうとこ ろに課題があるのではないかという指摘もされています。  遅い、値段が高いということについては、1機関当たりの症例の集積性、つまりどの くらい症例を集められるかということに大きな課題があると認識しています。それにつ いては、「治験活性化3カ年計画」の中で大規模治験ネットワークに1,162の医療機関 に入っていただいておりますが、そういうところで将来的には1機関当たりの患者さん の集積性を高めて、なるべくスピードを速くして、モニターの負担を軽減したいと思っ ています。それが1点目です。  2点目は、医療機関と企業の間のさまざまな契約について書式が違っていたり、電子 化をすることによって負担を軽減できるということがありますので、この2点について は御意見を伺いながら、簡略化、負担軽減の方向で進めさせていただきたいと思います。 ○川原課長  審査と治験相談についてコメントさせていただきたいと思います。審査と治験相談と 2つのステップがありますが、実際に申請が出てからの審査期間については日米でそれ ほど差がないことは皆様にも御理解いただいていると思います。そういうことから、国 際的に同時進行で共同開発ができれば同時申請もできて、同時に上市ということもでき るのではないかという前向きのお話もあったのだろうと思っております。  先ほどのいくつかのデータにもありましたが、日本の場合は、欧米で先に上市されて いる品目の売り上げのリストですので、そういうもので見ると、日本の場合、申請自体 が遅く来ているものがかなりあって、そのために最終的に審査の時期も遅くなっている という部分がかなりあるのではないかと思います。なぜそういうふうになっているかと いうことにつきましては、いろいろな要因があるのだろうと思いますし、その中には治 験相談の充実という御指摘の部分もあるのだろうと思います。  2点目は、2004年ごろの欧米で売り上げ上位の品目で、日本では未承認のものが多い というお話がありました。申請自体がおくれているとすれば、2004年には日本で未承認 であったけど、現時点では日本でも発売されている品目もいくつか入っているのではな いかと思いますので、その数字自体が変動している可能性があると思います。  先ほどありましたリストの中には日本では開発していない品目もありました。その中 に、日本で開発されていれば医療の幅を広げるとか、医療のレベルアップにつながるも のがあれば、それは日本でもっと進んで開発されるべきものなのでしょうから、申請も 出てくるかなと思うんですが、日本に代替薬があるために開発がされてなくて、海外で は売り上げが上の方にあるという品目であれば、それについてはいろんな見方があり得 るのだろうと思います。  百数十品目とか、きょうは80いくつのうちいくつという話がありましたが、これにつ きましては数そのものではなくて、その薬剤の医療上の必要性を個別に精査をするよう な形で議論することも必要ではないかと思いました。2点目は私の個人的な意見になり ます。 ○岸田理事  医薬品・医療機器総合機構から、少しダブるかもしれませんが、2点に絞って申し上 げたいと思います。  1点目は、審査体制の整備というところで大幅増員という温かい御支援のお言葉があ りました。総合機構ができてから審査員の採用を最重点課題として取り組んでまいりま して、現在、その見通しがついております。来年4月までの間に、中期計画で定める定 員を満足する状況までになっておりますので、あとは採用した審査員をいかに訓練し育 成していくか、また、審査、治験相談の充実を図っていくかということになります。  審査に要する期間が長いのではないかということに関して、審査管理課長から米国と それほど差はないという説明がありましたが、米国と比べて1けた少ない審査員の中で、 審査に要する期間が米国と同じレベルにまで達していると言えるかと思います。ただ、 実感がわかないという御意見がありましたが、それは機構が設立される前の滞貨分の承 認審査に、当初、かなりの精力を費やしていた関係で、そういう印象を持つことになっ たのかなと思います。滞貨分の処理につきましては今年度の半ばには見通しがついてま いりましたので、今後さらに審査の迅速化に向けて成果が上がっていくものと思ってお ります。  治験相談につきましては、研究開発をスピーディーに効率よく行う上で非常に重要な 事業であると総合機構でも思っております。治験相談の事業を立ち上げるにあたって、 審査と治験相談を一元化してやろうということで人員体制を組んだのですが、治験相談 に寄せる業界の需要が予想以上に多く、こちらの対応よりオーバーフローしてしまった という状況が一時ありました。そういうわけで、急きょ、相談枠の枠数を上げる、治験 相談の担当者をふやす、チーム数をふやすといった対応によりまして、かなりの部分が 需要にこたえつつあるのではないかと思います。  さらに需要も多くなると見込んでおりますので、さらなる治験相談の体制整備、フレ キシブルな相談体制が必要かなということで、今後、それに取り組んでいきたいと思っ ております。  欧米で承認されてから日本で申請するものが多いというお話が審査管理課長からあり ましたが、17年度に承認した新薬を見てみますと、欧米で承認されてから日本に申請が 出てくるまでの期間が5〜6年かかっているものがかなりあります。こうした事情を解 消していかなければ、すぐれた新薬を国民が受けることができませんので、世界同時開 発、同時申請という状況にするため、私どもとしてもいかに協力していこうかと考えて おります。  共同開発に向けたもろもろの問題に対して、審査の考え方はどうあるべきか、あるい はファーマコゲノミクスなどの先端技術を用いた新薬開発に対する相談体制を充実して いくなど、さまざまな対応をしていきたいと思っております。  また、欧米のみならずアジア諸国との連携強化も必要ではないかと思っております。 本年10月にAPECの会議が東京で開催されます。この会合では、グローバル開発の中 でのアジアの取り組み、主に治験関係、審査関係になろうと思いますが、そういったと ころをテーマに挙げております。厚生労働省と機構で一緒にこの会を成功させたいと思 いますので、関係団体の方々には御参画をお願いしたいと思います。 ○二川課長  治験・審査の問題に関して厚生労働省及び総合機構から現状、考え方について発言が ございましたが、ほかに御意見等がありましたらお願いしたいと思います。 ○対馬専務理事  1カ月ほど前に進捗状況表を事務局から送っていただきまして、ありがとうございま した。昨年の懇談会でも治験、審査についてはずいぶん議論がありましたし、中医協の 場でもこの問題について大分議論があったんですね。そのあたりがどういった整理にな っているのか関心をもって進捗状況表を見たんですが、書きぶりが去年と全く同じなん ですね。この資料の目的がplan、do、check、actionで、checkして、またactionにつ なげていくということだと思うんですね。  今日お話を伺ってますと、いろんな形で前向きな御努力もされてますし、いろいろさ れてるのはわかるんですが、資料のつくり方も、実態とか問題意識をどのようにもって いけばいいのかというのをわかるような形でまとめていただければ、今後、ビジョンな りアクションプランを新たにつくっていくということもあるようですので、そのあたり についても工夫なり御努力をお願いしたいと思います。 ○二川課長  例年と同じようなことで、わかりやすくない資料になっているかと思います。これを まとめた経済課の知恵もなかったかなということで反省しております。今後は改善した いと思います。 ○クレンショー委員長  治験の環境と審査についてコメントさせていただきます。まず、厚生労働省がどのく らい投資ができるか、また、どのくらい投資をしてきたかですが、税制的に優遇措置を 講じて、治験担当者のトレーニングにインセンティブを与えるということです。内部的 な競争を考えますと、健全な競争が治験担当者の間に生まれてくれば、それによって自 然に質が上がってくる。そしてコストも下がってくる。SMOが高いコストを請求して るので、どんどんコストが上がっていくことになりますけど、競争が導入されればコス トも下がります。  厚生労働省としては患者が治験に参加したいという意欲が必要だとおっしゃいまし た。今日だけでなく将来のリサーチのためにもそれは非常に重要です。そういうことに 対して処置がなされたということは重要だと思います。こういったことがなされないと 環境整備もうまくいきません。  まず一つはインセンティブの問題を申し上げたい。もう一つはハーモナイゼーション の問題です。世界的に同時に治験をするということですけど、法律の面において日本が 世界的な開発プログラムに参加できるようにすれば新薬の上市が早くなり、新薬申請が おくれることがなくなります。  数年前にハーモナイゼーションの話をした時にはブリッジングというのがうまく使わ れるんじゃないかと期待が高まったんですが、実際はそうはなりませんでした。政府や 省庁の方の中には、世界同時開発というのは、日本で同時に他の国と一緒に治験の開発 を始めることだと考えてる方があるかもしれませんが、私たちとしては、日本の患者さ んが一つのコホートとしてグローバルスタディの中に参加できる。その中にアジアの他 の国の人も、それ以外の欧米の人も入ってくる。それによって日本が同じ土俵に乗るこ とができます。  現在、日本はおくれています。日本で治験をやろうとすると大きなコストがかかるか らです。ハーモナイゼーションという考え方は非常に重要です。PMDAと厚生労働省 の間で、同時開発というのは何なのかということをよく理解していただきたい。PhRMA としても、業界の代表としても、そのあたりを見直していただければと思います。 ○青木会長  臨床だけでなく開発全体の問題ですけれど、私が見ている感じでは、日本では患者の 組み込みは海外に比べて遅いし、いろんな事務的な手続が遅い。それからIRBが分散 化していまして、少数例しか入らない病院でも、いちいちIRBにデータを出して相談 しながらやっていかなくてはならない。事務的な手間もかかるということがあります。  したがって、全体的に医療の状況を変えなくてはいけないということはありますが、 日本の場合は病院が分散していまして、アメリカの半分ぐらいの人口のところに倍ぐら いの数の病院があって、しかも専門病院に特殊な疾患が集中することもありません。日 本は完全に分散化していますので、治験をやるには余り良い環境ではない。  進捗状況の資料を拝見して、我々の開発の人たちの意見も聞いてみますと、医師の方 々、PMDAの方々、個々の場面では非常に努力してくださって、産業とのコミュニケ ーションもよくなって、解決できる問題はどんどん解決している。それでも余り早くな らない。  基本的な問題があって、一つは患者が分散化しすぎている。もう一つは、先ほどイン センティブというお話がありましたが、なぜ病院で治験をやるのかということがはっき りしない。病院が忙しすぎるのですね。そういう中で治験をやるのはどういう意味があ るということがはっきりしてない。  アメリカでは臨床研究だけの、例えばNIHなら千床近い治験病院がありますが、日 本では臨床研究に特化した病院がありませんし、一番もとになるインフラストラクチャ ーが整備されてないということがあります。いろんなところで個々の努力はされている のですが、根本のところで片がついてない。  グローバルな開発については、ICHでいろいろお話しされるのですが、専門家が出 てきて、細かいところですり合わせを話される。そこでいくらでも問題が出てくるから、 時間がかかって、なかなか解決しない。何のためにグローバルな治験をやるのか良く考 えて、ここは我慢してでも、これだけのデータでお互いに承認しようという高度なレベ ルの決断がないと、グローバルな開発は進まないと思います。それぞれの専門家が集ま って、それぞれがディテールについて自分の経験をもとにして議論をしたら、なかなか 進みません。ICHへ時々行って拝聴していて感じるのはそういう点でありまして、早 くするのだという意志がもっと上の方から働かないといけないのではないかと思いま す。  次のビジョンを検討する時には、我々としては日本の医療をこうするのだという強い 意志をもって、現場における細かい差異は乗り越えてでもやるのだという、そういった ビジョンにしないと、細部から積み上げるビジョンでは、いつまでたっても問題は解決 しないような気がします。 ○二川課長  全体的な今後の見直しにつながるようなお話もありますが、他国データの受け入れと か、個別のことでお話しになりたいことはございますか。 ○岸田理事  先ほどPhRMAの代表の方から、外国で先に治験を進め、そのデータを日本が受け入れ てはどうか、ブリッジングを進めてはどうかという趣旨のお話があったかと思いますが、 そういう状況が続く限り、欧米で先に承認になり、日本に後で申請がされるという状況 は変わらないのではないか。  先ほど私が申し上げたかったのは、いろんな事情があるでしょうけど、開発の早い時 期に我が国での開発を同時に進めていただきたいということです。海外の規制当局との ハーモナイズも非常に重要だということはよくわかります。青木会長が言われたICH での難しさということはわかりますが、ICHという3極の業界団体と規制当局の考え 方をハーモナイズしていくという努力が国際共同開発を進めていく上では重要なキーワ ードではなかろうかと思いますので、御理解をお願いしたいと思います。 ○長井副会長  全体に大きく審査体制を変えるということは時間がかかりますので、そういう観点か ら慎重かつ大胆に進めていけばいいと思います。現実的な対応のところで、審査当局、 特に機構さんは少ない人員でよく頑張っていただいてると思いますが、頑張り方のやり 方を、もう少し中で考えてみたらどうなのか、もっと効率的にできる余地はないのかな と思います。  事例をあげれば、まず機構で申請した時に、申請の窓口で対応する方は経験の浅い方 が担当されるということで、最初の窓口の処理で意外と時間がかかってしまう。窓口を ベテランの人がやるようにしたらどうか。  人員の問題は、先ほど岸田さんが来年までめどがついてるんだというお話をされまし たけど、人員の中身ですね。例えば機構全体で100人ふやしたとして、その中で本当の 意味での審査の人数を一定の配分で振り分けられてるんだろうと思います。従来の枠に とらわれない形で担当の数をふやすとか、そういった現実の対応を考えられないのか、 ぜひ御検討をお願いしたいと思います。 ○岸田理事  業務改善について、さらなる努力をということかと思います。私どもとしても今のや り方でいいとは思っておりませんので、内部でも審査業務についてさらなる改善に向け た検討グループを設けて検討しております。機構全体の業務がもう少し効率的にできな いかという意味での業務診断というものを外部の法人に見ていただいて、そういったと ころからの指摘を生かしていきたいと思っております。  申請の窓口の話がありましたが、申請窓口の一本化をしませんと混乱するということ がありますので、新薬でも一般薬でも、後発品も医薬部外品も申請の窓口を一本化して おります。オールマイティーの人間を窓口に備えることは難しいんですが、御指摘のと ころにつきましては、事務手順書なるもので、混乱のないようなやり方にもっていきた いと思っております。  審査員の重点配備をどう考えているのかという御指摘については、新薬関係では100 名ぐらいですが、審査関係全体では倍ぐらいおりまして、業務の状況を見て、審査、治 験相談にこれまで重点的な配置を行ってきております。安全対策というのも車の両輪と して必要ですので、そちらの対策も充実してまいっておりますが、審査体制の充実とい うのは新薬だけでなく、後発品、一般薬も含めて充実を図ってきております。 ○川原課長  機構の指導・監督をする立場からコメントさせていただきたいと思います。岸田理事 からお話があったとおりですが、機構は16年4月に発足いたしまして、新しい人材が入 ってきております。私どもも人材のトレーニング等について機構にお願いしておりまし て、どんどん鍛えていただいてると思いますが、人材養成には時間がかかる部分はある かと思います。専門分野を持っていても、いろいろなレベルのいろんな情報が入ってき ますので、めりはりをつけた判断ができる人間をという意味だろうと思いますが、そう いう人の養成に向かって努力するようにという指導を行っておりますので、御理解いた だきたいと思います。 ○二川課長  治験・審査の問題につきましては、厚生労働省、総合機構からいろいろな努力をして いるという話があったかと思います。産業界の方々はなかなかフラストレーションがお さまらないというのが事実のようでして、こういう場で議論をしていただくこと自体、 意味があるなと考えますが、今後も意見交換の場をさまざまな形でとっていただければ、 経済課としても御支援申し上げたいと思います。  この件につきましてはこのくらいにしたいと思います。  続きまして4番目のテーマ、薬価に移りたいと思います。薬価につきましては、この 場で議論いたしましても、どうこう変えるという決定権はありませんで、中医協で御議 論いただきませんと何も決まらないんですが、薬価についていくつか御意見、要望等が あったかと思います。これらについて、医療課から何かありますでしょうか。 ○赤川薬剤管理官  保険局医療課の薬剤管理官でございます。平成18年度の薬価制度改革につきまして は、昨年12月の政府与党医療改革協議会において「医療制度改革大綱」がまとめられ、 大綱で「画期的新薬の適正な評価を行う一方、後発品の状況等を勘案した先発品の薬価 引下げを行う」とされましたので、それを受けて中医協でも18年度の改革の骨子をおま とめいただいたわけです。この中で新薬の加算について、画期性加算あるいは有用性加 算の加算率の引上げ、要件の緩和がなされ、その一方で後発品のある先発品の特例引下 げの拡大ということで、これは医療制度改革大綱を受けて、まさにめりはりのある改革 をやらせていただいたということです。中長期的に、あり方そのものに御意見はあろう かと思いますが、この辺は中医協なりで引き続き関係者の中で御議論いただければと思 っております。 ○二川課長  薬価につきまして、御意見等がありましたら御自由に御発言ください。 ○吉田会長  薬価制度に関して、これからもう一度、中長期的に議論されるということですが、先 ほどお話しさせていただきましたように、今の薬価制度は現物給付という健康保険法を 基準にした考え方でつくられていると思います。この制度は昭和53年には銘柄別薬価収 載方式が導入されるなど、これまで色々と修正や改正が行われてきたので完成された制 度だと言われております。しかし、今後国民皆保険制度を維持するためには、社会保障 という立場からナショナルミニマムという考え方に基づいた新制度について、議論して いただきたいと思いますので、是非よろしくお願いいたします。 ○二川課長  薬価につきましては、こういった場もございますし、正式には中医協ですが、それ以 外に薬価に限っての業界との定期協議の場もありますし、もう少し事務的な薬剤給付の 研究会という場もありますし、いろんな場で意見交換を常にさせていただいております。 そういった場を活用していただいて、業界の方々の御意見を聞かせていただきたいと思 っております。  ほかに何かございますでしょうか。 ○森田会長  薬価制度は完成度が高いという発言がありましたが、薬剤比率の問題、R幅、新薬に 対する評価、いろいろな形で評価され、ジェネリックに対する使用促進とか、いろいろ なことが薬価制度の中で完成度が高く、長い時間をかけてやってきている。そういう制 度を抜本的に見直すのであれば、それ相応に時間をかけて、ルールに基づいてきちっと 検討することが重要であろうと思います。  産業政策としても、医療費における薬剤の価値について、新薬は新薬、普及されるジ ェネリックはジェネリック、包括医療における薬剤の価値、こういうことを総括的に、 また、R幅も調整幅という表現に変わり、2というところまで収斂して、そこにおける 薬剤費の損耗とか、そういうところを議論して、知り尽くしたところの実態であるだけ に、さらにいろいろな形で検討するのなら、十分に時間をかけてやらないと産業政策と 連動しないだろうと思っております。 ○山本副会長  薬価の話になりますと私どもにも関係があるわけですが、開発されてから上市される までの議論につきましては、時間の問題等があることは十分理解したつもりですので、 その仕組みをどう組み上げていくかというのが今後の問題であろうと思います。上市さ れた後は我々も医薬品を扱う者として直接影響が出てまいります。財政上の観点のみか ら、費用がふえることについて医薬品だけを悪者扱いという視点でとらえ、単に薬価だ け何とかすればいいんだという御意見については理解しがたい部分がございます。  いくつかの御意見にもありましたように、現行の薬価制度は完成されたものだと思い ますし、薬価制度のあり方と国際競争力の関係については、この場でも十分な議論が出 ていないような気がいたします。薬価を下げれば国際競争力がつくのかというと、必ず しもそうではないでしょうし、薬価が上がれば国際競争力が弱まるのかというと、必ず しもそうではないはずです。医薬品が適切に供給される体制がつくられて、その中で、 新しい薬を出す環境と、それをうまく使っていく政策がマッチした時に初めて国際競争 力がつくのだろうと考えております。  先ほど森田会長からもございましたように、長いあいだ使っている薬、長いあいだな じんできた仕組みを直されるのであれば、簡単な議論だけで済むのではなくて、さまざ まな側面・観点から十分に議論した上で、適切な方向に進むことをお考えいただくこと が必要だろうと思います。そのあたりにつきましては現状を追うあまり拙速に事を進め ることがないようにお願いしたいと思います。 ○クレンショー委員長  PhRMAとしてのポジションはクリアにお伝えしておりますので、価格については申し 上げません。ただ、2つのリクエストをしたいと思います。まず1つは、価格の改定は 一つ一つ戦略で行うのではなくて、総合的な観点から行うべきだと思います。価格のシ ステムを変えるのは2年に1回から1年に1回にするとか、外国価格を取り入れるとよ くなるかというと、かえって悪くなります。私どもとしては包括的なアプローチをとる べきだと思います。ただ単に新薬の価格だけではなくて、安定度を上げるとか、市場価 格の実勢に基づいた価格にするとか、パテントがある間はずっと保証されるとか、3つ のことから薬剤の価格が考えられると思います。  もう1つは、総合的な改革をするには、もっと頻繁により深く話し合う場を是非とも 持つ必要があると思います。その場にPhRMAは積極的に参加します。そうすると細かい テクニカルなところまでオープンな形で、総合的な話の中で話せると思いますし、2008 年に間に合うと思います。  今申し上げておりますのは単に企業の話ではなく、治験の話も出てきましたし、価格 の話、こういったことが整備されて初めて製薬業界の国際的な競争力がつくのです。そ れがあって初めてR&Dに投資ができると思います。こういったことがうまくいけば、 二川さんのお話にありましたように、私どもの競争力も上がると思います。 ○二川課長  いろんな観点があろうかと思います。医療保険制度で保険償還するのが薬価でありま して、まさにそのためのものなんですが、経済課は医薬品産業を所管しておりまして、 医薬品産業の発展を考えております。そうした観点から、私ども経済課としては薬価制 度も産業政策の一つの重要なツールと考えております。そういう観点だけで決めるべき ものではないのかもしれませんが、そういった観点も取り入れてほしいということを常 々、厚生労働省内では発言しておりまして、今後ともそういった視点で、どういうふう にするのが日本の医薬品産業の競争力の強化につながっていくかという視点で考えてい きたいと思っております。 ○大橋会長  EFPIAの大橋でございます。今の議論の中での国際競争力の強化というのは大き な課題だと思います。その意味で、先ほどもお話しさせていただいた業界と政府間の対 話の場というのが大変重要ではないかと我々は考える次第であります。医薬品産業その ものが政府の強い規制下にある産業だと理解しておりますが、その中でいろいろな改革 を進めていくことになりますと、財政当局とか関連省庁において競争力強化の必要性を 理解していただいて、そしてコミットをしていただく必要があるのではないかと考えま す。  欧州主要国においては、英国では首相のもとに業界との対話の場が設けられておりま すし、フランスではそこに財政当局も参画するとか、国によってさまざまだと思います が、いずれも産業政策の一環として業界との対話の場が存在しておりまして、医薬品産 業の強化というのが政府レベルでのコンセンサスが得られる、ここが大変重要なのでは ないかと我々が考える次第であります。  最近、新経済成長戦略が提出されましたが、その取りまとめの過程においても対話の 場が実現できるように要望したいと思います。 ○対馬専務理事  中医協の一委員の立場として、ここにはそういったことに対して造詣の深い方々がた くさんおられますので、余り申し上げることもないんですが、先ほどクレンショー委員 長がおっしゃった対話の必要性を私どもも十二分に理解しております。そういう方向で ということで、中医協でも何度かやってるんですが、いろいろ意見を闘わせていきたい。 産業政策とのかかわりはもちろんあるわけですが、中医協の立場としては、将来にわた って医療制度の持続可能性をいかに確保していくかという視点も重要だと思いますの で、多面的なことを議論していきたいと思います。 ○二川課長  それでは最後に5番目、ジェネリック医薬品の使用促進策というテーマに移りたいと 思いますが、この点につきましては私からお答えしたいと思います。  ジェネリック医薬品の使用促進につきましては、昨年の骨太の方針でも「後発医薬品 市場の育成を図る」ということが政府の閣議決定のレベルで明記されました。具体的に は、後発医薬品メーカーの信頼度を高めるという意味で安定供給とか全規格収載という ことをお願いし、患者さんの選択の機会を増やすという意味で処方せんの様式変更とい うことを保険局でとっていただきまして、今年から使用が促進されるものと期待してお ります。  医薬協からさらなる提案もありまして、必要ならばそういったこともやらなくてはい けないと思いますが、国による広報ということも言われまして、経済課においていくつ か実施しております。メジャーな媒体で広報するというのは私どもはできておりません で、各企業のテレビコマーシャルの方が目立つという状況かと思いますが、政府広報の ホームページにはコーナーを作ってありまして、そういったところにエントリーしたり して、後発医薬品の使用促進に努めております。  ジェネリック医薬品というテーマで、御意見等がありましたらお願いいたします。 ○竹嶋副会長  この問題につきましては私どもが現場で直接かかわりあっているところです。この懇 談会は、医薬品を産業政策の一つとして進めるという会ですので、医療を地域で提供し ている立場から申しますと、水を差すような形になりますが、私どもはあくまで医薬品 は国民の命・健康を推進していく医療の一環であると位置づけておりまして、ジェネリ ック医薬品の推進そのことには反対ではございません。  ただ、資料1の4ページに「良質な後発医薬品の使用促進」とありますが、実際に安 全で良質であってほしいと思うんですね。そのあとに「廉価」とありますが、私どもも 財政が逼迫していることは十分わきまえておりますので、むだのない効率的な医療を提 供していくことが大事だと思います。しかしながら、安かろう、悪かろうじゃなくて、 まずは良質ということを出していただきたい。  広報の問題ですけど、テレビのコマーシャルは国民に対して責任はないと思うんです。 ホームページとおっしゃいましたけど、ホームページを開いて見る人は国民のどのくら いおりますか。そういうところじゃなくて、本当に進めるのでしたら、そういう広報を きちっとやっていただきたい。隣の岩崎常務も情報公開をもっとやってくれとおっしゃ いましたが、私も同感です。  中医協の場でも何度も言ってきましたが、主成分は同じでも、いろいろ添加物が加わ ってくれば必ずしも一緒じゃないということもありますので、そのあたりは十分検証し なくてはいけないということがあります。  もう一つは、私も医師で実際に診療しておりますが、ジェネリック医薬品ですという ことで処方しますと、今の段階では患者さんは困惑します。こちらから押しつけるよう な形になる。現場ではその辺がスムーズにいってない。そこで必要なのは情報なんです ね。ジェネリック医薬品を前に進めていただくとすれば、十分な情報を出してほしい。 これは医療の現場から切にお願いしたいと思います。  もう一つは、最後に希望として述べたいと思ったんですが、治験促進のところもそう なんですね。どなたかがおっしゃって、いいことを言っていただいたと思ったんですが、 日本の医療制度全体を考えていただかなくてはいけない。よくアメリカの例を出されま すが、日本は、専門性をもった病床のたくさんある病院とクリニックというのではあり ませんで、日本は中小病院が多い。経済界でいえば中小企業ですね。そういう歴史があ ります。そういうところでは、まとめてパッとやることはできないし、病院の医師が忙 しいこともあります。  治験は大学でという話が出ましたが、大学は人がいなくなったというので困っていま す。国の臨床研修制度というのも十分なシミュレーションがないままに出してきた。そ れによって大学に人がいなくなってきたし、研修生を指導する中堅になる方たちが治験 の中心になってやらなくてはいけないんですが、そういう方たちが研修医の指導にかか わっているので、そういう意味での忙しさがあるということです。これも私は決して否 定するんじゃないんですが、産業界の皆さんがお考えになるような形ではいかない。医 療の現場のそういうところを十分に勘案していただいて、その上で、日本的にはどうい うふうに進めたらいいのか。アメリカはこうだ、どこどこはこうだというのではなくて、 日本としてはどう進めたらいいかということまで考えていただけたらと思います。 ○吉田会長  竹嶋先生からジェネリック医薬品の品質についてはいまひとつ信頼が置けないという お話がありましたが、我々の情報提供に努力不足というところがあるかと思いますので、 我々も引き続き御理解を賜るような活動をさせていただきたいと思っております。基本 的な効能効果は一緒ということで、そういうデータもございます。そういうことに関し て改めて御説明申し上げたいと思いますので、よろしくお願いいたします。  我々としてはそういう活動をしていくわけですが、当人が言ってることが信用できる かという話もございますので、第三者にも品質に対してそういうデータをお出ししてい るわけでして、厚生労働省としても大丈夫だということを言っていただけると非常にあ りがたいと思いますので、よろしくお願いいたします。 ○川原課長  ジェネリック医薬品の関係では、今まで私どもは繰り返し御説明しているところです が、当初、承認の際に同等性というものを確認しまして、内用固形剤については再評価 という形で溶出性までチェックをして、品質についてはチェックをしてきているところ でございます。  竹嶋先生から御指摘のありました情報提供の関係につきましては、企業の方の情報提 供が大事な部分ですが、私どもとしても関係の課が添付文書での情報提供の充実とか、 そういったところの取り組みを始めているところです。  ジェネリックメーカーはいろいろありますので、品質に問題があるような事例があれ ば、製造工程の問題がなかったのかどうかを個別に調べる仕組みづくりも進めていかな ければならないと考えているところです。 ○クレンショー委員長  一つ質問があります。オリジナルドラッグに比べて溶解を見て、その情報を公開する ということですけど、質の評価というのは既に第三者がやっているのでしょうか。この 点の進捗についてお聞きしたいと思います。 ○川原課長  溶出試験につきましては第三者機関、地方衛生研究所等の協力をいただいて進めてお ります。 ○二川課長  ジェネリック医薬品につきましてもいろいろとあるかと思います。審査管理課長が申 しましたように、それなりの評価はされているようですが、なかなか簡単には信頼度が 高まっていかないというのも事実のようですので、産業界の皆様にもそういった点の御 努力をお願いしたいと思います。  ジェネリック医薬品につきましてはこの辺で終わりにいたしまして、その他というこ とですが、大衆薬あるいは医薬品の流通について何かございますでしょうか。スイッチ OTCについても御意見があったかと思いますが。 ○川原課長  セルフメディケーションの関係で検討会が行われて、その中間報告の関係で上原委員 から御要望があったかと思います。安全対策の関係とか、必ずしも承認審査にかかわら ない部分のお話もありましたが、スイッチOTCの話とか、西洋ハーブの取り扱いとい った観点で私どもの課にも今後も取り組みを進めてほしいという要望がありましたの で、それについては承っておきたいと思います。 ○二川課長  医薬品の流通につきましては経済課の私から現状をお話し申し上げたいと思います。 昨年、中医協でも未妥結・仮納入という問題については是正を図ろうという決定があり まして、私ども経済課と保険局医療課が共同で、未妥結・仮納入が長期にわたるものに ついては是正を図ってくださいという通知を3月にお示ししました。お願いをするだけ ではなかなか直らないと思いますので、実際の状況を把握し、どうしても指導が必要な 場合には指導もさせていただこうという方針でおります。  総価取引についても御指摘をいただいております。「医療用医薬品の流通改善に関す る懇談会」という組織がありまして、医療関係者、流通、メーカーなど関係の方々が広 く入っておられますので、そういったところで今後また御議論いただければと思ってお ります。 ○岩崎常務理事  流通を担当しております医薬品卸の者ですが、未妥結・仮納入につきましては薬価調 査と同時に調査が行われるということで、私どもも大変力強く思っておりますし、不適 切な流通慣行の是正については力いっぱい取り組んでいきたいと考えております。ただ、 これはアクションプランが出るずっと以前から長く続いた商習慣でして、これを変える にはよほどのエネルギーが必要だろうと思いますし、関係団体そろって前を向いて進ん でいかなくてはいけないなという認識ですので、これからも限りないお力添えをよろし く申し上げます。 ○二川課長  先ほど途中で出ておりました「官民対話の場の設置」という御要望が多数ございます。 厚生労働省としてはこれまでもそれなりに場は設けてきているつもりですが、もっと積 極的にという御意見だろうと思いますので、省内、政府内で議論をさせていただきたい と思っております。  最後に、どうしてもこれだけは言っておきたいということがありましたら御発言いた だきたいと思います。 ○森田会長  日本の医療費に占める薬剤費の比率ということが長年いわれていますが、20%前後か なと思っています。少子・高齢化における労働力確保、予防、慢性・急性の治療などの 問題がある中で、医療費に占める医薬費が20%は高い、低いはあると思うんですけど、 メーカー個別では論証できにくいんですね。一つ一つの事業性というのは検証できます けど。  次なるアクションプランの中で国をあげて検討することによって、もうかってる、も うかってない、いいとか悪いの話でなしに、このくらいの負担をすることが日本の社会 保障制度、あるいは日本の国民の健康を保持するためにいい仕組みである。そういう中 で効率性はグローバルに求めながら、しっかり競争力をつけていくという仕組みを考え てみたいなと、私的な局面で考えています。行政の方々の方がデータを持っておられる し、我々は一緒に勉強しながら、そういう部分も取り入れていただいたらどうかなと思 っております。 ○二川課長  経済課としてはそういう視点も重要だと思っておりますので、今後、議論をさせてい ただきたいと思います。  そのほか何かございますでしょうか。特にないようでしたら、このあたりで意見交換 を終わらせていただきたいと思います。  最後に、事務次官の戸苅から一言ごあいさつを申し上げます。 ○戸苅事務次官  本日は、大変御熱心に御審議いただきましてありがとうございました。この懇談会は、 医薬品産業のグローバル化が進む中で国際競争力を高めていこうということがメインで ございまして、2002年に医薬品産業ビジョンを策定し、毎年、アクションプランの進捗 状況を評価するということでお集まりいただいております。本日は厳しい御意見もいた だきました。それぞれの課題について取り組ませていただいておりますが、治験のスピ ードアップがなかなか進まないじゃないかというお話が再三ございました。私のところ にも製薬業界の方あるいは外国の製薬メーカーの方が来られるといつもそういうお話が 出ます。  先ほど来いろいろお話が出ましたが、医薬品産業は医療制度と密接不可分なところが ありますし、国民の健康と直結しています。厚生労働省は業所管官庁として医薬品産業 の発展を図っていくということとあわせて、医療制度の持続可能性というものも図って いかなくてはいかん、国民の健康もきちんと確保しなくてはいかん、いろんな制約の中 で取り組んでいるわけでございます。  ビジョン策定以来、本日お集まりのメーカーの方々の期待は非常に高くなっているこ とは我々も十分認識しておりますので、今後ともよろしくお願いしたいと思います。  本日はメーカーのそれぞれの団体、流通の団体の方とあわせて健保連、医師会、薬剤 師会などいろんな立場からの意見交換が行われて、非常に意義のある会議になったので はないかと思っております。  本年度は、新医薬品産業ビジョンの策定に向けて、産業界を初め関係各位に御協力を 願う機会が増えると存じますが、何とぞ御理解いただき、より実効性のある医薬品産業 政策のあり方を議論できればと考えております。  皆様方にはお忙しい中、本懇談会のためにお時間をとっていただきまして、感謝を申 し上げます。今後とも厚生労働行政に御協力を賜りますようお願い申し上げます。  本日はどうもありがとうございました。 ○二川課長  以上をもちまして本日の懇談会を閉会といたします。 (終了) - 2 -