資料4

第2回 看護基礎教育の充実に関する検討会 主な意見


1.看護基礎教育で習得する看護技術と臨床現場で求められるものとのギャップに関するもの

 ○問題は教える側にある。医師の場合、臨床をしながら教えているが、看護大学では、看護の現場に出ていながら教えている教員が少ない。その辺で現場との隔たりが出てくるのではないか。教える側の現場と教育の接点を多くしていくべき。

 ○臨地実習が非常に短くなり、中身も限られる。夜間の患者の状態や、1人ではなく複数の患者を看るという医療の現場を学ばずして臨床の場に出てくるというギャップは非常に大きい。今の臨地実習の時間内でそれを求めるのは難しい。

 ○演習の時間が大幅に減っており、やれないまま実習に出た上に、少ない体験回数だと、習得していくことが更に困難となっている。

 ○新人看護師であっても、蘇生術ができなかったりAEDが使えないのは、患者からは笑われる。

 ○教育に当たるものは、現場と乖離がないよう、例えば、アカウンティー・デベロップメントを設け、それぞれのレベルで教員がどれだけの能力を身につけるべきかという努力はしている。

 ○現場で実践的に即戦力とならない新卒看護師の評価は、病院側の視点であり、医師、患者あるいは新人看護師自体はどう感じているのか、議論がまだ十分でない。また、人を育てるという別の視点もある。ギャップとは何を問題としているのか明らかでない。

 ○大学卒であっても看護師になることが不安であると言っている。ヒヤリハット事例も1年目が最も多い。医療界の大変化の中で、ものすごく早い時期に独り立ちを求めている。

 ○医療技術が進展した状況で、即戦力として求められているのは何なのか、また、それを充実させるためにはどのようにしたらよいかについて前向きな議論が必要。問題点をもっと明確にして議論しないと国民不在の議論となっている。

 ○新卒看護師は、動いている現場に立ち、何かやらなければならないという脅迫観念に駆られ、何もできない状態で右往左往することが大変不安であると言っている。不安は、自分がそこにいること自体が不安とも言っている。


2.看護基礎教育と新人看護職員研修との役割分担に関するもの

 ○卒業してすぐできる方が少ない。医師も卒業した後、いろいろな所で技術を学び、できるようになっていく。それをどのように求めるかが問題である。

 ○診療の補助は医行為に関わるため制約を受けるが、療養上の世話については、もっと臨地実習の中でこなせるはずなのに、実際にはそれすらも経験があまりにも少ないという新卒者が多い。やはり、臨地実習の時間が非常に少なくなり、経験回数が非常に少ないことが原因。

 ○卒業時点での看護技術の到達目標を、基礎教育が考えているものと、卒業後の臨床側が考えるものの合意を得た上で、それをギャップとして捉えず、スムーズに移行していけるように育てていくことが大事ではないか。

 ○患者へのお願いやインフォームド・コンセントをとりながら実習をしているが、安全が重要視される中、実習で看護学生が与薬したり、モニター類を見たりするチャンスが非常に少なくなっている。臨地実習で一通り(母性、小児、成人など)経験するが、さらにその上のレベルとして、複数の患者を受け持つとか、与薬やME機器を用いたモニターのチェックや、そうした患者を危険なくケアする方法を学ぶチャンスが必要である。


3.看護基礎教育の内容に関するもの

 ○養成所の教員数は、最低7名と少ない。また実習は、時間が減っただけでなく、実習指導体制さえも、実習指導に専念できる臨床指導者は少なく、自分の実務で患者を看ながら実習指導もしなければならない所がほとんどであった。看護教育の非常に大事な臨床実習を担う人材が不足しており、それを充実させることによって看護教育を充実させることになる。

 ○看護技術の到達目標について研究したが、実際に学生たちに実習させることができない技術も多かった。そこにギャップが生まれている。

 ○到達目標について、文科省での報告書では、看護師が養成課程を出るときには、これだけの技術は到達すべきであると言うことを出している。

 ○医師あるいは他の医療職とチームを組んでいかなければならない看護職をどう育てていくかを、患者の立場に立って考えることが重要ではないか。

 ○実習の時間には根拠がなく、また、習得主義でなく履修主義になっているので、むしろ、例えば90時間で身につけたい力は何なのか、カリキュラムが実際どうなっているのか、カリキュラムが実行できるのかと言うことを議論しないといけない。その上で設置基準としては何が必要かということになる。

 ○いくら教育時間が長くなっても、実習の中身が制約を受けていたらできない。実習に行っても、やれないことがたくさんあると、やれないまま看護師になるが、それが何らかの形で踏み込めるようにしないといけないのではないか。

 ○基本的な実習は、1人の患者をきちんと看ることから始まるが、複数の患者を同時に持ち、複数の作業を同時にこなすという仕事が、ステップを踏まないで実際の業務に就いていることが大きなギャップの1つと考える。実習の中にそうしたステップを盛り込む工夫が必要である。

 ○基礎科目の中で薬理や機器に関しての基礎知識、医療安全に関して手厚くしてほしい。

 ○今の看護の社会では、保健師の方がいい、学校の先生の方がいいというように、どんどん楽な方にシフトしていっている現象は認めた上で教育を検討する必要がある。

 ○楽な方にシフトするという社会の流れと、新卒者が職場に適応できないことは違う問題としてとらえるべき。

 ○現在の若者の精神的な未熟さや弱さが、人間の生死に関わる場面で常に出てくる。そういう意味で教育の視点から言うと、自分が何かをしたことで患者が喜んだと体験できるような実習を通して、看護師として依って立つことのできる、自信が持てるような基準(クライテリオン)をカリキュラムの中に示していく必要がある。

 ○今の臨地実習は絶対的に患者と接する時間が少ない。今の実習は看護過程の展開に重点が置かれているが、看護を行う人としての基本的な体験を重視していくために、臨地実習の充実が必要。

 ○患者ケアのマネジメント、特に看護管理の部分はカリキュラムに加え、退院後も視野に入れた柔軟性のある実習ができるとよい。


4.教育期間に関するもの

 ○臨地実習が1,770時間から1,000時間に減らされたことが大きな問題。医療の現場が高度化していくのに、そこに行く時間を半分にするのは大きな間違い。

 ○教育と臨床が一緒にやることになったときに問題になるのは時間である。これは3年間の中でやりくりするには限界がある。急性期病院のように一瞬のうちに大きく変化する現場に対応するのは3年間では無理。

 ○実習が大事だから教育期間を延ばせと言うが、今の大学のカリキュラムで良いという意味ではなく、延ばすのであっても中身を変えなければだめだということか。

 ○本来すべきもの、本来国民に約束すべきものに抵触していいのかということに戻るべきだと思う。複数回の実習をし、学生がそれを体得するまでの期間を考えると、ゆとりある教育という名の下に、135時間を90時間に削ったこと自体が本当にそれで良かったのかと謙虚に立ち返るべきではないか。教育の工夫では対応しきれない、大枠の部分に触れなければならないギャップではないか。

 ○高度なものが必要になれば、期間延長も必要と考えるが、現在の教育期間で本当にできないのかを先に議論すべき。実習の時間が長くなっても中身に問題があるのでは無駄となる。臨地実習の中身を議論して、時間をかけただけの成果が出るような条件の下で、必要となる教育期間を議論してほしい。

 ○問題状況はすでにいくつかの報告書が出され、教員たちは教育の質を上げる工夫や努力をしてきている。それでも現場との乖離が見られる現状である。看護基礎教育の在り方はすでに検討がなされているため、本検討会で、それをもう1回振り出しに戻す必要はない。

 ○内容を整理して期間延長を検討すべき。実習を行うにあたり、病院と看護学校が乖離というか、近寄れない何かがある。両者が一緒に取り組める仕組み作りが必要。今はとにかくどちらも忙しすぎて、変化について行けないのが実態。


5.看護と保健、助産の位置づけに関するもの

 ○看護大学4年生というと、一般の方は看護師の教育課程が4年間と勘違いされる方が多いと思う。実際は保健師も含めて4年でやっているので、その辺をきちんと分けて考えないと議論がおかしくなる。看護大学といったときには、看護師教育だけの4年制と、今の4年制とをきちんと分けて考えてほしい。

 ○看護師の教育をベースとして考え、保健師、助産師をアドバンスに考えるかどうかという辺りが、これから大きな議論になるのではないか。

 ○大学の4年間で保健師と看護師を一緒に教えている現状を改善してほしい。4年間で看護師と保健師の教育を行う場合、保健師教育として薄まった教育しかできないため、保健師として就職したときに大変不安を感じるという問題がある。単にカリキュラムの改正にとどまるのではなく、保助看法の第21条にある看護師の国家試験の受験資格が3年以上ということについて、何とか議論に乗せていただいて、延長を図ってほしい。

 ○看護師が行う業務に保健指導が相当含まれていく時代であり、また、看護師も地域における家族や周辺の状況を見る能力が求められる時代になっていく。国も予防医療に力を入れているので、看護師の役割に保健指導も加えて検討すべき。

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